説明

ヒト及び動物の胃腸管にコロニーを形成することができ、併せて、腸内生存性、腸内結合性、感染保護性及び繊維発酵性から選ばれる少なくとも2種の利点を有する少なくとも2種の乳酸菌株を含むプロバイオティック組成物

少なくとも2種の乳酸菌株を含むプロバイオティック組成物において、当該株は、ヒト及び動物の胃腸管にコロニーを形成することができ、併せて、少なくとも2つの利点を有する。この性質は、腸内生存性、腸内結合性、感染保護性及び繊維発酵性を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なプロバイオティック組成物に関する。より正確には、本発明は、腸細菌生態系の維持、胃腸障害の予防及び治療、及び胃腸管にコロニーを形成するために少なくとも2つの重要な性質を有する少なくとも2種の乳酸菌株を含む、プロバイオティック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内フローラは、人体の総細胞数の約95%を含む。ミクロフローラ、及びより具体的には成人の胃腸管での生理学的及び病理生理学的進行におけるその組成物の重要性は、ますます明らかになっている。
【0003】
腸内ミクロフローラにおける変化に関連する健康効果は、宿主の健康に有益な効果を与える生存微生物(細菌又は酵母)によるものである。乳酸菌の存在は、腸内微生物生態系の維持に重要であることが見出されている。これらの微生物は、長年、プロバイオティックと呼ばれていることから、それらが取り込まれる宿主の健康に有益な効果を及ぼす生存微生物として一般的には定義されている。従って、プロバイオティックは、胃腸管における取り込みミクロフローラの性質を改善することによって宿主に影響を与える、生存能力がある微生物の単一培養物又は混合培養物として定義することができる。現在、多発性胃腸障害の予防及び治療のために多数の商業品が入手可能である。
【0004】
欧州特許出願公開第 EP 1 020 123 Al号には、非ミルクマトリクス中の凍結乾燥生乳酸菌の混合物と組み合わせた飲料が記載されている。凍結乾燥生乳酸菌の混合物は、ブレビバクテリウム・ブレベ(Brevibacterium breve)、ブレビバクテリウム・インファント(B. infants)、ブレビバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ブレビバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・ブルガリア(L. bulgaricus)、ラクトバシラス・カゼイ(L.casei)、ラクトバシラス・プランタラム(L. plantarum);ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)及びストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faecium)から選ばれる少なくとも3種を含む。飲料は、腸内ミクロフローラの供給及びバランス、並びに他の有益な栄養補助食品例えばビタミン類及び抗酸化剤の消費者への供給を意図している。
【0005】
しかしながら、文献は、それらの提案された利点について多くの矛盾した意見を含み、及び対応する作用メカニズムは多くの場合、明らかにされていない。
【0006】
おそらく、成功したプロバイオティック株は、典型的には発酵ミルク製品に組み込まれてきた。新規微生物及び改変生物の場合には、それらの安全性の疑問及び取り込み危険性間の利益率が推定されてきた。食品中の乳酸菌は安全使用の長い歴史がある。
【0007】
ここ数年間で、これらの生物は機能性食品及び健康関連製品中に含まれてきた。プロバイオティックの定義は、それらが人の健康に影響を及ぼすメカニズムの理解を高めながら徐々に変化してきた。健康主張は、徐々に科学者及び消費者に受け入れられているが、多くの主張されたプロバイオティック性の基本にある分子メカニズムについては、未だに意見が分かれている。
【0008】
有益なプロバイオティック性を示す乳酸菌は、首尾よく単離され、かつ同定されてきた。これらの性質は、胆汁寛容の証明、酸耐性、宿主上皮組織への粘着、及び潜在的な病原性微生物のin vitro拮抗作用、又は炎症促進と関連してきた性質を含む。
【0009】
市場では、乳酸及び細菌を含む多数のミルク及び果物型製品が存在する。胃腸管との特異的相互作用は、わずかであれば記載されていることがあるが、用量はほとんど特定されていない。
【0010】
プロバイオティック微生物は、工業的条件下で製造されなければならない。更に、それらは、保存中及びそれらがそこにマイナスの効果を生じることなく取り込まれる食品中に、生存している必要があり、かつそれらの機能を維持しなければならない。研究は、市場製品中のプロバイオティクスの生存可能性が低いことを示している。
【0011】
ヒト又は動物におけるプロバイオティクスとしての乳酸菌の投与に関しては、新生児の胃腸管とは著しく異なっている成人の胃腸管の特定の条件に採用されるべきである。しかしながら、これまで、健康な成人の主なミクロフローラに所与の株を移植できた成功例はほとんど存在しない。かかる移植は、誕生時、又はプロバイオティック生物が、極端にバランスを崩した腸内ミクロフローラを有する、例えば長期の抗生物質治療後の患者に投与される場合にのみ成功する。
【0012】
様々なプロバイオティクスの様々な製品が、異なったプロバイオティクスの供給から得られる健康上の利益を頻繁に主張する。ほとんどのケースでは、これは根拠がなく、真実ではない。真実は、少数の乳酸菌のみが、求められる健康上の潜在能力を有する、ことである。市場のほとんどのプロバイオティクスは、胃又は小腸の胆汁酸量の酸性下では生存できず、結腸粘膜に粘着せず、時には胃にコロニーを形成しないことさえある。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、ヒトだけでなく、より小さい消化管を有しそのため対応する腸内ミクロフローラを有する動物の胃腸管で生存し、かつここにコロニーを形成する最適能力を有するプロバイオティック組成物を提供することによって、当該技術の状況に従う上記問題点を克服することである。
【0014】
この目的を達成するために、本発明に従う方法は請求項1の特徴を有する。
【0015】
本発明に従う組成物は、異種の2以上の乳酸菌(LAB)株がヒトへの取り込みに有益であるはずの性質を併せ持ち、同時に移植ミクロフローラの効果を刺激するはずである、ということに基づく。胃腸での生存及び/又はコロニー形成の確立した基準を特定する少なくとも2つの性質を一緒に有することによって、可能性のある健康上の利益及び腸内フローラに与える影響が高まる。本発明によれば、特定の好ましい機能を有する、活性な有益生物の新規プロバイオティックLAB株を提供する。
【0016】
本発明に従う組成物のための異種のLAB-株は、胃腸管の疾患以外の他の原因で死亡した人、及び少なくとも死の2ケ月前に抗生物質によって治療されていない人のヒト大腸粘膜から単離された(F-株及び2362)。他の株は発酵ライから単離した。
【0017】
異種のLAB-株はAPI 50CHによって種類レベルに分類し、及びリボタイプに分類した(スウェーデン食品研究所)。
【0018】
本発明に従うプロバイオティック組成物に用いられる具体的株は、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) F5、ラクトバシラス・プランタラム 2592、ラクトバシラス パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) (paracasei) F19、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus penosaceus) 16:1、ラクトバシラス・プランタラム 50:1、及びロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesentorides) 77:1である。
【0019】
菌株は、2001年6月19日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約におけるブタペスト条約の要件に従い及び当該要件を具備して、ベルギーの微生物保存機関(BCCM), Gent, Belgiumに、ラクトバシラス・プランタラム F5については受託番号LMG P-20604、ラクトバシラス・プランタラム F26については受託番号LMG P-20605、ラクトバシラス・プランタラム 2592については受託番号LMG P-20604、ロイコノストック・メセンテロイデス 77:1については受託番号LMG P-20607及びペディオコッカス・ペントサセウス 16:1については受託番号LMG P-20608で寄託した。
【0020】
ラクトバシラス・プランタラム 50:1は、2001年6月21日に、受託番号P-20609で、ベルギーの微生物保存機関に寄託した。
【0021】
ラクトバシラス パラカゼイ(ラクトバシラス パラカゼイ) (パラカゼイ) F19は、受託番号LMG P-17806で、より早期にベルギーの微生物保存機関に寄託した。
【0022】
異種の全てのLAB-株は、37℃で24時間、MRSアガーで好気的に培養した。更なる実験では、異なった温度での培養を測定した。全ての株を4℃〜40℃又は45℃の温度で増やすことができた。全ての株はスキムミルクアッセイ(24時間、好気的に、37℃)によって決定されるようにプロテアーゼ(類)を産生した。いずれの株も亜硝酸塩又は硝酸塩を生じなかった。
【0023】
異種の全てのLAB-株は、単一の炭素源としてかかる繊維を含むYNB培地での培養によって決定されるように、プロバイオティクス、例えばイヌリン及びアミロペクチンを利用することができたが、β-グルカンは利用することができなかった。当該株は繊維を発酵するので、結腸フローラに有益な効果を及ぼす。繊維分解の増加はまた、粗繊維消化率を増加させる。
【0024】
本発明に従う組成物では、球菌及びバシラス菌の混合物が最も好ましい。これは、球菌及びバシラス菌が異種世代を有し、バシラス菌が球菌よりもかなり速く増殖するためである。最も好ましい培養は、好ましくは、組成物中に少なくとも1種の乳酸バシラス菌株及び少なくとも1種の乳酸球菌株を含むことによって達成される。
【0025】
乳酸菌株の増殖を促進し、及び宿主の胃腸管の上皮のコロニー形成及び感染性疾患に対する耐性の獲得を成功させるために、本発明に従う組成物は、腸内生存性、腸内結合性、感染保護性及び繊維発酵性を有する。
【0026】
重要な腸内生存性は、胆汁の存在下で増殖する能力である。請求のLAB-株全ては、20%胆汁(ヒト及びブタ)の存在下で増殖することができ、その後、選択的圧力が除かれた後及び再適用された後でも、胆汁寛容を維持することができる。
【実施例】
【0027】
異種の全てのLAB-株は、pH 2.0〜3.0の酸性に供した場合でも生存した。更に、以下の表1に示すように、この酸耐性は、それらの内の3株(L. プランタラム F5、L. プランタラム F26及びL. プランタラム 50:1)において、0.3%ペプシンを添加しても維持した(37℃で24時間)。
【0028】
【表1】

【0029】
従って、酸及び胆汁寛容株は、ストレス条件下で、親株を越える増殖効果を有した。
【0030】
BalbCマウスに本発明の乳酸菌を胃内的に与えた。使用したLAB-株は、L. パラカゼイ(パラカゼイ) F19、L. プランタラム 2592、P. ペントサセウス 16:1、及びL. メセンテロイデス 77:1であった。所与の4株の分泌物は、培養によって得た。投与後6週間、これらの分泌物を検出することができた。これは、宿主の胃腸管のコロニー形成を示した。
【0031】
ほとんど致死量に近い適用可能な酸条件(pH 5.0で60分間)に暴露された場合に、これらのLAB-株の酸反応は、次の致命的pH (pH 3.0)への暴露に対する高い保護レベル及び異なった環境ストレス(酸化的ストレス、エタノール暴露及凍え)を与えることが見出された。
【0032】
pH 5.0の適応中に生じた酸寛容反応は環境ストレスに対する細胞生存に影響を与えた。適応した培養液は、エタノール(20%)に対する寛容、凍え(-20℃)に対して寛容及び酸化問題(10 mM H202)に対して寛容を生じたが、熱(60℃)及び浸透圧衝撃(3 M NaCl)に対しては示さなかった。適応段階でのクロラムフェニコールの存在は、細胞耐性を部分的に阻害した。この適応は、de novoタンパク質合成に依拠することが見出された。
【0033】
1時間のpH 5.0での酸ストレスへの暴露は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるように、10.1〜68.1 kDaの分子量(MW)の9種の新規タンパク質を誘導し、それによって当該タンパク質を過剰発現させることができた。他の全てのタンパク質を抑え付け、これらは塩基性又は中性を示した。
【0034】
ラクトバシラス プランタラム 2592は、19 kDaの分子量を有する大量の特徴的タンパク質を産生した。
【0035】
アミノ酸類縁体の取り込みが反応を阻害したので、酸寛容反応中に誘起されたタンパク質は活性のはずである。
【0036】
多数の誘起及び過剰発現タンパク質はまた、先に述べた熱ショックタンパク質と交差反応をすることが分かった。分子量10、24及び43 kDaのタンパク質は、各々、cochaperons GroES、GrpE及びDnaJと交差反応した。分子量70及び55 kDaのそれほど過剰発現しないタンパク質は、各々、GrpE及びGroESと交差反応した。
【0037】
従って、酸ストレス条件下での生存は、適応ストレス反応の発現と関連することが見出された。かかる反応は、特定のタンパク質の一時的誘導及び生理学的変化によって特徴付けられ、過酷な環境条件に耐える異種LAB-株の能力を亢進する。次いで、酸環境、例えば胃腸における請求LAB-株によって誘起される特定のタンパク質の継続タンパク質合成は、前から存在するタンパク質の安定性を向上させるだろう。
【0038】
異種LAB-株の更なる感染保護性は、その抗酸化性であり、それによって、炎症性産物によるフリーラジカル作用は妨げられる。
【0039】
LAB-株は、乳酸菌株の溶解物中に、分光学的アッセイ(Total Antioxidant kit, product no. NX 2332、Randox, San Diego, CA, USA.製)によって測定される抗酸化剤を産生した。フリーラジカルに対して効果的である抗酸化剤が産生され、かつ酸化性鎖反応を終了させる、ことが判った。全てのLAB-株は、2.7〜8.9mgタンパク質/lの量で抗酸化剤を産生した。P. ペントサセウス 16:1株及びL. プランタラム F26株に続いてL. パラカゼイ(パラカゼイ) F19は、大量の抗酸化剤を産生した。
【0040】
糖尿病マウスに、12日間毎日、同一用量でLAB-株を与えた。マウスに12日間、胃内的に以下の4株(L. パラカゼイ(パラカゼイ)F19、L. プランタラム 2592、P. ペントサセウス 16:1及びL. メセンテロイデス 77:1)を1日に2回、1010細胞で与えた。動物のコレステロールレベルは減少した。当該株の安全性は、試験の最後に、全く増殖してなかったマウスの血液培養物を採取することによって確認した。
【0041】
同様に、52健常人(14〜87歳)は、逆効果を示すことなく、3ケ月間毎日、4異種LAB-株の1010菌を摂取した。
【0042】
好ましくは、本発明の組成物の感染保護性は、免疫増強効果であり、それによって、陽性免疫反応が得られる。当該株は、ドットブロットによって決定されるように、NF-カッパーBを細胞核に転写する異なった能力を有することが見出された(Wilson L他, Gastroenterol 1999; 117: 106-114 ;及びSplecker Mら, J Immunol 2000; 15 (March): 3316-22)。NF-カッパーBの誘導は、前炎症性又は抗-炎症性のいずれかのサイトカイン反応を生じた。
【0043】
球菌ではなくラクトバシラス株、特にL. パラカゼイ (パラカゼイ) F19は、マクロファージ細胞株U973中でNF-カッパーBを転写し、インターロイキンIL-1β及びIL-8の合成をもたらした。誘導されたサイトカインは、前炎症性型であった。
【0044】
本発明に従う組成物の更なる重要な局面は、本明細書に記載の本発明に従うプロバイオティックLAB-株が、それらの機能性を発揮することができるように、腸内結合性を有するだろう、ということである。1つのかかる結合性は、当然、それらが腸管に強い粘着性を示す、ことである。プロバイオティックとして働くために、乳酸菌株は、腸ムチン層にコロニーを形成することができるに違いない。
【0045】
請求の株はまた、ELISA法において、ブタムチン(II型, Sigma Chem Co, StLouis, CO, USA))結合をスクリーニングすることによっても得られた(Tuomola EMら, FEMS Immunology and Med Microbiol 26 (1999) 137-142)。結果を以下の表2に示す。結果を市販株ラクトバシラス ラムノーサス(Lactobacillus rahmnosus) GG (Valio)と比較した。
【0046】
【表2】

【0047】
ムチン結合以外に、本発明の組成物におけるプロバイオティックLAB-株は、ヒト胃腸管の細胞表面疎水性を示すことができるだろう。細胞表面疎水性は、Salt Aggregation Test (SAT)によって測定した(Rozgoynyi Fら, FEMS Microbiol Lett 20 (1985) 131-138)。以下の表1には、フィブロネクチン(Vn)の粘着性、pH 3.5でのフィブロネクチン、フェツイン(Ft)、アシアロフェツイン及びpH 3.5でのアシアロフェツインを示した。
【0048】
【表3】

【0049】
粘着微生物は、固定化粘液に堅く固定されることが分かった。5株は細胞表面疎水性を示し、及びその他の3株は中程度の細胞表面疎水性を示した。細胞表面疎水性及びLAB-株の粘着能力には何の関連性も認められなかった。
【0050】
異種のLAB-株について、粒子凝集アッセイ(PAA)におけるウシ顎下腺及びブタII型ムチン(Sigma)への結合も試験した(Paulsson Mら, J Clin Microbiol 30 (1992) 2006-20012)。一般的に、ウシ粘液への結合はより強いことが見出された。多細胞生物の組織の多くの細胞が分泌タンパク質及び多糖からなる細胞外マトリクスに埋め込まれていることから、本発明に従う異種LAB-株を胃腸細胞外マトリクスタンパク質とのそれらの相互作用を基準に試験した。細胞外マトリクスタンパク質及びグルコサミノグリカンの結合を上記固定型(PAAアッセイ)で試験した。全てのLAB-株は、pH 3.5で、I型及びIII型コラーゲン、フィブロネクチン及びヘパリンへの結合を示した。L. パラカゼイ (パラカゼイ) F19株、L. プランタラム F26株及びL. プランタラム 2592も、pH 3.5で、フェツインへの結合を示した。
【0051】
更に、L. プランタラム 2592及びL. メセンテロイデス 77:1を除く全ての異種LAB-株は、ビトロネクチンへの結合を示した。しかしながら、pH 3.5では、これらの株は弱い結合を示した。
【0052】
本発明に従うプロバイオティク組成物のLAB-株の更なる重要な腸内生存性は、感染保護性を有することである。
【0053】
ヘリコバクターピロリは、世界中に最も流行している感染症の1つである急性及び慢性胃炎の病原である。これは、萎縮性胃炎、腺癌及びMALTリンパ腫に進行する可能性がある。
【0054】
本発明のラクトバシラス属は、乳酸濃度及びin vitroでのpHに起因する10株のH.ピロリの増殖を阻害する。この阻害効果は、pHが6.0を調整した場合に消失した。更なる分析は、D-乳酸又は酢酸ではなくL-乳酸が60〜100 mMの濃度で増殖を阻害したことを示した。H.ピロリのCagA表現型及び乳酸寛容間には何の関連性も認められなかった。当該阻害は株特異的であった。
【0055】
更なる感染保護性は、バクテリオシンによって仲介される相互作用によって増大した。L. プランタラム F5を除く全ての異種LAB-株は、無細胞上清に、抗菌活性を有する産物を分泌する。製造産物は、タンパク質様であることが分かっており、そのためバクテリオシンと呼ばれる熱安定性菌化合物であった。バクテリオシンは、グラム陽性生物に対して活性を示した。グラム陰性生物(H.ピロリ株)に対して活性なものもあり、酵母(カンジダ株)に対して活性であった。抗菌効果は、酸の産生には直接には関連しなかった。
【0056】
更に、H.ピロリ細胞は、その形状において細菌性であり、球菌ではなかった。これは、観察された阻害が生存能力の誘導よりもむしろ細菌効果に関連し、培養できない球菌型には関連しない、ことを示す。殺菌効果は、溶解後に放出された、細胞間の28 kDaタンパク質によって見出された。細胞間タンパク質のタンパク質分解処理は、抗菌活性の欠如を招いた。この欠如は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動の手段により復元して、排除することができた。
【0057】
マウスにおけるH.ピロリ胃炎樹立モデルでは、本発明に従う種類の投与は、炎症を減少させて感染症を阻害した。この阻害効果は、種特異的であるよりむしろ株特異的であるように見えた。LAB-株のin vitro活性は、H.ピロリに対する活性と関連性が高かった。
【0058】
本発明に従うプロバイオティック組成物の調製物は、冷蔵、冷凍又は凍結乾燥された少なくとも10 CFU/gの生菌を、食品又は飼料中のプロバイオティック添加物として含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の乳酸菌株を含むプロバイオティック組成物であって、当該少なく2種の乳酸菌株が、ヒト及び動物の胃腸管にコロニーを形成することができ、併せて、腸内生存性、腸内結合性、感染保護性及び繊維発酵性から選ばれる少なくとも2つの利点を有し、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) F5 (LMG P-20604)、ラクトバシラス・プランタラム F26 (LMG P-20605)、ラクトバシラス・プランタラム 2592 (LMGP-20606)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus penosaceus) 16:1 (LMG P-20608)及びロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesentorides) 77:1 (LMG P-20607)、ラクトバシラス・プランタラム 50:1 (P-20609)、及びラクトバシラス パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) (paracasei) F19 (LMG P-17806)を含む群より選ばれることを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌株が、少なくとも1010 CFU/gの生菌であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項3】
前記腸内生存性が、胆汁の存在下で増殖する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項4】
前記腸内生存性が、低pHで生存する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項5】
前記低pHで生存する能力が、ペプシンの存在下に低pHでの生存であることを特徴とする、請求項4記載のプロバイオティック組成物。
【請求項6】
前記腸内生存性が、ストレスタンパク質を産生する能力であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載のプロバイオティック組成物。
【請求項7】
前記ストレスタンパク質が、熱ショックタンパク質と交差反応することを特徴とする、請求項6記載のプロバイオティック組成物。
【請求項8】
前記腸内結合性が、ムチンに結合する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項9】
前記腸内結合性が、細胞外マトリクスタンパク質に結合する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項10】
前記腸内結合性が、グルコサミノグリカンに結合する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項11】
前記腸内結合性が、細胞表面疎水性を示す能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項12】
前記感染保護性が、バクテリオシンを産生する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項13】
前記バクテリオシンが、グラム陽性菌に対して活性を有することを特徴とする、請求項12記載のプロバイオティック組成物。
【請求項14】
前記バクテリオシンが、グラム陰性菌に対して活性を有することを特徴とする、請求項12記載のプロバイオティック組成物。
【請求項15】
前記バクテリオシンが、酵母に対して活性を有することを特徴とする、請求項12記載のプロバイオティック組成物。
【請求項16】
前記感染保護性が、抗酸化剤を産生する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項17】
前記感染保護性が、前炎症性サイトカイン反応を誘起する能力であることを特徴とする、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項18】
前記繊維発酵性が、アミロペクチン及びイヌリンを発酵する能力である、請求項1記載のプロバイオティック組成物。
【請求項19】
食物又は飼料中のプロバイオティック添加物としての、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) F5 (LMG P-20604)、ラクトバシラス・プランタラム F26 (LMG P-20605)、ラクトバシラス・プランタラム 2592 (LMGP-20606)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus penosaceus) 16:1 (LMG P-20608)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesentorides) 77:1 (LMG P-20607)、及びラクトバシラス・プランタラム 50:1 (P-20609)からなる群より選ばれる乳酸菌株の単独使用又は併用。

【公表番号】特表2007−502858(P2007−502858A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532207(P2006−532207)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000796
【国際公開番号】WO2004/103083
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505432865)シンバイオティクス アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】