説明

ヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体およびその断片、並びにそれらの利用方法

本発明のヒト由来のヒト抗ヒトIL−18抗体は、ヒトIL−18に対する抗体であり、以下の(a)または(b)のポリペプチドからなるH鎖の相補性決定領域と、(c)または(d)のポリペプチドとからなる、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖の相補性決定領域とを含むものである。(a)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。(b)(a)に記載のポリペプチドの改変体であって、H鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。(c)配列番号10〜12に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。(d)(c)に記載のポリペプチドの改変体であって、L鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。これにより、ヒト抗ヒトIL−18抗体およびその利用方法を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体およびその断片、並びにそれらの利用方法に関し、より詳細には、ヒトインターロイキン−18(以下、ヒトIL−18とする)に結合し、その生理活性を阻害するヒト抗ヒトIL−18抗体およびその抗体フラグメント、並びにそれらの利用方法に関するものである。この抗体及び抗体フラグメントは、IL−18が原因となって惹起される炎症、免疫異常性疾患の治療薬として期待される。
【背景技術】
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis(AD))は、主に外的刺激に対する炎症性皮膚病変で、慢性反復性の強い掻痒を伴う疾患である。AD発症のメカニズムは不明な点が多いが、AD発症には遺伝的背景があり、AD患者の血清中には高いレベルのIgEが存在する。また、AD発症のメカニズムには、活性化T細胞、好塩基球、肥満細胞が深く関与する。特に、アレルゲンによる肥満細胞あるいは好塩基球上のFcε受容体(FcεR)に結合したIgE分子の架橋によって、これらの細胞が活性化される。その結果、2型ヘルパーT(Th2)細胞由来のサイトカインとケミカルメディエーターとの産生が起こり、ADが発症すると考えられている。Th2サイトカインとして重要なのは、IL−4、IL−5、IL−9、IL−13等であり、ケミカルメディエーターとして重要なのは、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエン等である。
ヘルパーT細胞(Th)は、抗原刺激を受けるとサイトカインを産生するが、その産生パターンから2つの亜集団(Th1とTh2細胞)に分類される。1型ヘルパーT(Th1)細胞が刺激を受けるとIFN−γ、IL−2、TNF−βなどのTh1サイトカインを産生し、2型ヘルパーT(Th2)細胞が刺激を受けるとIL−4、IL−5、IL−10、IL−13などのTh2サイトカインを産生する。前者(Th1細胞)はおもに細胞性免疫を誘導し、後者(Th2細胞)は液性免疫を誘導し、ときにはアレルギー応答を誘導する。ナイーブT細胞は、IL−12の存在下で抗原刺激を受けるとTh1細胞に、またIL−4の存在下で抗原刺激を受けるとTh2細胞に分化する。
IL−18は、発見当初、T細胞やNK(ナチュラルキラー)細胞からIFN−γの産生を誘導する因子として注目されていた(Okamura,H.et al.Nature 378,88(1995).)。しかし、IL−18がこの様な機能を発揮するのはIL−12が共存した場合である(Nakanishi,K.et al.,Annu.Rev.Immunol.,19,423(2001))。また、Th1サイトカインであるIFN−γは、Th2サイトカインであるIL−4の作用を阻止するので、IFN−γを誘導するIL−18は、Th2細胞による免疫反応を抑制し、抗アレルギー作用を示すと考えられた。
寄生虫をマウスに感染させると、Th2細胞が誘導されIgE産生がおこる。発明者は、感染直後からIL−12とIL−18とを投与すると、T細胞、NK細胞、B細胞などから、IFN−γの産生が誘導されIgE産生が抑制されることを明らかにした(Yoshimoto,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,94,3948(1997))。
さらに、IL−18だけを投与するとIgE産生が増強されることも明らかにした(Yoshimoto,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,96,13962(1999))。また、その後の解析から、IL−18を正常なマウスに投与するとIgE産生が誘導されることも明らかとなった(Yoshimoto,T.et al.,Nat.Immunol,.1,132(2000))。
生体内に投与されたIL−18は、CD4陽性T細胞(CD4T細胞)に作用してCD40リガンド(CD40L)の発現と、IL−4、IL−5、IL−13等の産生とを誘導する(Yoshimoto,T.et al.,J.Exp.Med.,197,997(2003))。また、生体内でB細胞は、IL−18の刺激を受けたCD4陽性T細胞が発現するCD40Lと、IL−4との刺激を受けてIgEを産生する。
IL−18は、in vitroで、IL−3によって誘導された好塩基球と肥満細胞とに作用して、IL−4、IL−13、ヒスタミン等の産生を誘導する(Konishi,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11340(2002))。
従来の定説では、初めに述べた様に、肥満細胞上のFcεRにFc部位を介して結合する複数のIgE分子に、アレルゲンが結合して、これらのIgE分子を架橋することによって、肥満細胞が活性化されると考えられていた。今もこの定説は正しいが、発明者らはIL−18が、アレルゲンおよびIgEの介在無しに、直接的に肥満細胞や好塩基球を活性化してIL−4、IL−13、ヒスタミン等の産生を誘導することを明らかにした(Yoshimoto,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,96,13962(1999))。この様な場合もアレルギー性炎症がおこる。
IL−18は、生物学的に不活性な前駆体(IL−18前駆体)として産生され、カスパーゼ1の作用で開裂されて活性型となり、細胞外に分泌される(Gu,Y.et al.,Science,275,206(1997))。発明者は、皮膚のケラチノサイトで、IL−18前駆体が産生されて蓄積されていることから、皮膚のケラチノサイト特異的にカスパーゼ1を過剰発現させたマウス(カスパーゼ1トランスジェニックマウス)を作製した(Yamanaka,K.et al.,J.Immunol.,165,997(2000))。その結果、このマウスは、生物学的に活性のあるIL−18を大量に産生した。また、このマウスは、血中に大量のIgEを産生していた(Yoshimoto,T.et al.,Nat.Immunol,.1,132(2000),Konishi,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11340(2002))。さらに、このマウスは、アレルゲンのない環境で飼育されているにも関わらず、強いアトピー性皮膚炎を発症した(Konishi,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11340(2002))。
ところで、IL−4とIL−13のシグナルは、Stat 6を介して標的細胞の核内に伝達されることで、これらのサイトカインの作用を発揮することが明らかにされている。発明者らは、stat6を欠損させたマウスが、IgEを産生しないことを明らかにした(Takeda,K.et al.,Nature,380,627(1996))。そして、この様なStat 6遺伝子を欠損させたマウスと、皮膚のケラチノサイト特異的にカスパーゼ1を過剰発現させたマウス(カスパーゼ1トランスジェニックマウス)とを交配して、stat6遺伝子欠損カスパーゼ1トランスジェニックマウスを作製した。その結果、このマウスは、全くIgEを作らなかったが、強いアトピー性皮膚炎を発症することが明らかとなった(Konishi,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11340(2002))。
一方、発明者は、IL−18遺伝子を欠損したマウスとカスパーゼ1トランスジェニックマウスとを交配することにより、IL−18欠損カスパーゼ1トランスジェニックマウスも作製した。その結果、このマウスは、IgE産生を抑制されてはいたが、なおも大量のIgEを血中に認めた。ところが、このマウスは、IgEを産生しているにもかかわらず、アトピー性皮膚炎の発症が完全に抑制されていた(Konishi,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11340(2002))。
これらの結果から、IgEの産生を抑制することよりも、IL−18の作用を抑制することが、アトピー性皮膚炎の治療に有効と考えられる。
IL−18は、発見当初IFN−γ誘導因子とよばれていたように、IL−12と相乗的に、Th1細胞やNK細胞に作用してIFN−γの産生を強力に誘導する(Okamura,H.et al.Nature 378,88(1995).、Nakanishi,K.et al.,Annu.Rev.Immunol.,19,423(2001))。さらに、IL−18は、これらの細胞上にFasリガンド(FasL)の発現を増強する(Tsutsui,H.et al.,J.Immunol.,159,3961(1997))。FasLは、三量体になると、細胞のアポトーシスを誘導する。
発明者は、Propionibacterium acnesを投与したマウスの肝臓に存在するKupffer細胞が、Fasを発現しており、FasLの刺激を受けると、活性型のIL−18を産生することを示した(Tsutsui,H.et al.,Immunity,11,359(1999))。さらに、IL−18は、NK細胞およびTh1細胞に作用してFasLの発現を増強する。このように、IL−18とFasLとの間には、正の相関性(positive feedback loop)があることも明らかになった(Tsutsui,H.et al.,J.Immunol.,159,3961(1997)、Tsutsui,H.et al.,Immunity,11,359(1999)、Tsutsui,H.et al.,Immunol.Rev.,174,192(2000))。そのため、生体内でIL−18が過剰に産生されると、肝臓や腸管で重篤な臓器障害が起こることが明らかとなった。このように、IL−18は、いわゆるTh1病の原因にもなる。
このような疾患以外にも、Th1細胞に誘導される気管支喘息、その他の様々な疾患において、IL−18の病態への関与が指摘されている。
以上のように、IL−18の産生あるいは活性の制御は、このようなIL−18依存性のアトピー性皮膚炎をはじめとする、IL−18依存性疾患の治療法として、あるいはIL−18の過剰産生が原因となり疾患の発症を誘導あるいは増悪するTh1病の治療法として、極めて重要である。
それゆえ、IL−18の生理活性を中和する特異的なモノクローナル抗体を開発することができれば、IL−18の関与する多くの疾患の有効な治療手段になることが期待される。
ところが、ヒトIL−18に対するする抗体(抗ヒトIL−18抗体)としては、マウスやラット由来のモノクローナル抗体がいくつか取得されているに過ぎない(例えば、日本国公開特許公報 特開2000−236884号(2000年9月5日公開)、WO00/56771の国際出願(2000年9月28日公開))。
しかしながら、従来の抗ヒトIL−18抗体は、主に、ヒト以外の異種動物由来のモノクローナル抗体であるため、ヒトに対して投与した場合、異物として認識・排除される。したがって、従来の抗ヒトIL−18抗体を、ヒトIL−18の関与する疾患の治療薬剤として利用することは困難である。特に、慢性の自己免疫性疾患の治療では、長期間の継続投与が行われるので、投与抗体に対する抗体の出現が問題となる。
この問題を解決する方法として、ヒトIL−18に対するマウスモノクローナル抗体を、遺伝子工学的手法を用いてヒト化することが考えられる。
しかしながら、マウスモノクローナル抗体をヒト化すれば、抗原性は低下するものの、慢性の自己免疫性疾患患者に対する反復投与や長期投与を行った際には、そのヒト化抗IL−18抗体の活性を阻害するような抗体(阻止抗体)が作り出される可能性も否定できない。その結果、顕著な治療効果は期待できず、場合によっては重大な副作用が生じる可能性もあるという問題を有している。
それゆえ、反復投与や長期投与を行った場合でも、安全性の高い抗ヒトIL−18抗体の開発が強く望まれている。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、安全性と治療効果を兼ね備えたヒト抗ヒト抗インターロイキン−18抗体およびその断片を提供するとともに、それらの利用方法を提案することにある。
【発明の開示】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意に検討した結果、健常人の末梢血Bリンパ球より調製した免疫グロブリンH鎖およびL鎖の可変領域(V,V)をコードする遺伝子を発現したファージディスプレイライブラリーから、完全ヒト抗ヒトIL−18抗体の1本鎖可変領域(scFv)分子(抗体断片)を取得し、そのアミノ酸配列およびそれをコードするcDNAの塩基配列を明らかにした。さらに、このscFvが、ヒトIL−18の生理活性を阻害することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、医学上または産業上有用な方法・物質として下記A)〜X)の発明を含むものである。
A)ヒトインターロイキン−18に対する、ヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
B)以下の(a)または(b)のポリペプチドからなるH鎖の相補性決定領域と、(c)または(d)のポリペプチドからなるL鎖の相補性決定領域とを含む上記A)に記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
(a)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(b)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。
(c)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(d)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。
C)以下(e)または(f)のポリペプチドからなるH鎖可変領域と、(g)または(h)のポリペプチドからなるL鎖可変領域とを含む上記A)またはB)に記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖可変領域となるポリペプチド。
(g)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(h)配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖可変領域となるポリペプチド。
D) 以下(e)または(f)のポリペプチドからなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体(ヒト抗ヒトIL−18抗体)のH鎖可変領域断片。
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖可変領域となるポリペプチド。
E)以下(g)または(h)のポリペプチドからなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体(ヒト抗ヒトIL−18抗体)のL鎖可変領域断片。
(g)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(h)配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖可変領域となるポリペプチド。
F)上記B)に記載のH鎖の相補性決定領域を含むH鎖可変領域断片または上記D)に記載のH鎖可変領域断片と、上記B)に記載のL鎖の相補性決定領域を含むL鎖可変領域断片または上記E)に記載のL鎖可変領域断片とを連結してなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体の1本鎖可変領域断片。
G)上記B)に記載のH鎖の相補性決定領域を含むH鎖可変領域断片または上記D)に記載のH鎖可変領域断片、および/または、上記B)に記載のL鎖の相補性決定領域を含むL鎖可変領域断片または上記E)に記載のL鎖可変領域断片に、ヒト由来の定常領域を連結してなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体(ヒト抗ヒトIL−18抗体)またはその断片。
H)上記抗体の断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scAb、またはscFvFcである上記G)に記載の抗体の断片。
I)上記A)〜H)のいずれかに記載の抗体またはその断片に、修飾剤が結合されてなる修飾抗体。
J)上記A)〜H)のいずれかに記載の抗体またはその断片をコードする遺伝子。
K)配列番号1または7に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する上記J)に記載の遺伝子。
L)上記J)またはK)に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
M)上記J)またはK)に記載の遺伝子が導入された形質転換体。
N)上記J)またはK)に記載の遺伝子を宿主に発現させることによって、ヒト由来のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体またはその断片を生産する方法。
O)上記A)〜H)のいずれかに記載の抗体またはその断片、または上記I)に記載の修飾抗体を用いたヒトインターロイキン−18検出器具。
P)上記A)〜H)のいずれかに記載の抗体またはその断片、または上記I)に記載の修飾抗体を含むヒトインターロイキン−18検出試薬を用いて、被検試料中のヒトインターロイキン−18量を測定する免疫疾患の診断キット。
Q)上記P)に記載の検出試薬を用いて測定した被検試料中のヒトインターロイキン−18量に基づいて免疫疾患を診断する方法。
R)ヒトインターロイキン−18アンタゴニストを有効成分とするヒトインターロイキン18活性阻害剤。
S)上記ヒトインターロイキン−18アンタゴニストが、以下のいずれかの物質である上記R)に記載のヒトインターロイキン18活性阻害剤。
以下のいずれかの物質を含むヒトインターロイキン−18活性阻害剤。
i)上記A)〜C)のいずれかに記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体
ii)上記D)〜H)のいずれかに記載の抗体の断片
iii)上記I)に記載の修飾抗体
iv)上記i)〜iii)のいずれかに記載の抗体、抗体の断片、または修飾抗体が認識するヒトインターロイキン−18上の抗原決定領域に基づいて分子設計された低分子化合物。
T)上記J)またはK)に記載の遺伝子を含む遺伝子治療剤。
U)上記R)またはS)に記載のヒトインターロイキン−18活性阻害剤、または上記T)に記載の遺伝子治療剤を含む免疫疾患治療剤。
V)上記U)に記載の免疫疾患治療剤を投与することによる免疫疾患の治療方法。
W)抗原とヒトインターロイキン−18とによる刺激によってヘルパーT1細胞から産生するサイトカインを阻害することを特徴とする上記U)に記載の免疫疾患治療剤。
X)ヒトIL−18が関与するアレルギー、炎症、慢性免疫異常疾患に適用するものであることを特徴とする上記U)またはW)に記載の免疫疾患治療剤。
本発明によれば、これまでのようにキメラ抗体またはヒト化抗体ではなく、ヒト由来のヒトIL−18に対する抗体およびその断片、並びにそれらの利用方法を提供できる。それゆえ、ヒトIL−18が直接または間接的に関与する疾病の治療において、反復投与や長期投与を行っても、顕著な治療効果と高い安全性とを維持した治療薬を提供できる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1において分離したクローンscFvのヒトIL−18に対する特異性をELISAによって評価した結果を示すグラフである。
図2は、実施例1において精製したヒト由来のscFvのヒトIL−18に対する特異性をELISAによって評価した結果を示すグラフである。
図3は、実施例1におけるscFv(h18−40、h18−108)が、IL−18によるヒト骨髄単核球KG−1細胞からのINF−γの産生を阻害することを示すグラフである。
図4は、実施例1におけるscFv(h18−108)が、IL−18のヒト骨髄単核球KG−1細胞への結合を阻害することを示すグラフである。
図5は、図4において、scFv(コントロール)の結果を示すグラフである。
図6は、scFv(h18−108)のウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
図7は、scFv(h18−108)のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図8は、実施例2における、Th1細胞およびTh2細胞の刺激により、各細胞から産生されたサイトカインの量を示すグラフである。
図9は、実施例2における、Th1細胞およびTh2細胞の刺激により、各細胞の表面のIL−18Rα鎖の発現レベルを示す図である。
図10は、実施例2における、IL−18の用量と、Th1細胞からのサイトカインの産生量との関係を示すグラフである。
図11は、実施例2における、Th1細胞への刺激後の培養時間と、Th1細胞からのサイトカインの産生量との関係を示すグラフである。
図12は、実施例2において、IL−18刺激を受けたTh1細胞における、細胞質IFN−γおよび/またはIL−13に陽性のCD4T細胞の割合を、FACS分析した結果を示す図である。
図13は、実施例2における、抗CD3抗体刺激を受けたTh1細胞中の、IFN−γTh1細胞の割合と、IFN−γTh1細胞の陽性選別例とを示す図である。
図14は、実施例2における、IFN−γTh1細胞を、抗CD3とIL−18とにより刺激した場合の、サイトカインの産生量を示すグラフである。
発明を実施する最良の形態
本発明の具体的態様について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)本発明の抗体およびその断片
本発明者は、ヒトインターロイキン−18(IL−18)に対するヒト抗ヒトIL−18抗体について検討した結果、ファージディスプレイ法によって得られたヒト由来の1本鎖可変領域断片(scFv)が、ヒトIL−18により誘導されるシグナル伝達およびINF−γ産生を阻害することを明らかにした。さらに、この1本鎖可変領域断片(scFv)における、相補性決定領域(CDR)、H鎖およびL鎖の可変領域のアミノ酸配列およびそれらをコードする遺伝子の塩基配列を同定した。
配列番号3には、V鎖のアミノ酸配列が示される。配列番号4〜6は、このV鎖における相補性決定領域(CDR1〜3)のアミノ酸配列が示される。すなわち、配列番号3に示すV鎖のアミノ酸配列において、31番目〜35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号4)、50番目〜66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号5)、99番目〜108番目のアミノ酸配列がCDR3(配列番号6)に対応している。
一方、配列番号9は、V鎖のアミノ酸配列を示している。配列番号10〜12は、このV鎖における相補性決定領域(CDR1〜3)のアミノ酸配列を示している33番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号10)、49番目〜55番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号11)、88番目〜98番目のアミノ酸配列がCDR3(配列番号6)に対応している。
本発明の抗体およびその断片は、上記V鎖およびV鎖、並びにそれらのCDRとして、配列番号3〜6および9〜12に示される配列に限定されるものではなく、それらの一部が改変された変異ポリペプチドであってもよい。
すなわち、V鎖のCDRとしては、(a)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、のみならず、(b)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖の相補性決定領域となるポリペプチド、も含まれる。
一方、V鎖のCDRとしては、(c)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、のみならず、(d)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖の相補性決定領域となるポリペプチド、も含まれる。
また、V鎖可変領域は、(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、のみならず、(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖可変領域となるポリペプチド、も含まれる。
同様に、V鎖可変領域は、(g)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、のみならず、(h)配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖可変領域となるポリペプチド、も含まれる。
ここで、上記「1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、及び/又は付加できる程度の数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されることを意味する。したがって、例えば、上記(b)のポリペプチドは、上記(a)のポリペプチドの変異ペプチドであり、ここにいう「変異」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然(例えばヒト)に存在する同様の変異ポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
なお、上記「変異」は、後述のように本発明の抗体またはその断片を、治療薬として利用する場合(ヒトに投与する場合)には、ヒト由来の構造またはヒトが免疫反応を起こさない範囲で行い、検出器具や診断キットなどとして利用する場合(ヒトに投与しない場合)には、特に制限されない。また、本発明の抗体またはその断片を、ヒトに投与する場合、抗原を認識するCDRの高次構造を維持する範囲で、変異を行うことが好ましい。
また、本発明に係る抗体およびその断片は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。このようなポリペプチドが付加される場合としては、例えば、HisやMyc、Flag等によって本発明のタンパク質がエピトープ標識されるような場合が挙げられる。
なお、CDRは抗原を認識する領域であるため、ヒトIL−18は、本発明にかかる抗体またはその断片の相補性決定領域(CDR)に認識される。したがって、少なくとも上記CDRを有する抗体は、ヒトIL−18を特異的に認識できる。すなわち、上記V鎖およびV鎖は、少なくとも前記V鎖およびV鎖のCDRを含んでいればよく、それ以外は、ヒト由来のV鎖およびL鎖のアミノ酸配列であればよい。これにより、ヒトIL−18に対する特異性は保持される。ただし、CDRは、H鎖およびL鎖の可変領域の1次構造と高次構造とによって、特異的に構築されている。このため、少なくとも前記V鎖およびV鎖のCDRを含み、それ以外を、ヒト由来のV鎖およびL鎖からヒト抗IL−18抗体を構成する場合、ヒトIL−18に対する特異性を有する抗体とすることが可能である。例えば、少なくともCDRの高次構造を維持することによって、ヒトIL−18に対する特異性を有する抗体とすることが可能である。
より具体的には、本発明にかかる抗体およびその断片としては、ヒト由来のものであって、例えば、以下に示すイ)〜ニ)に示すものが挙げられる。
イ)上記(a)または(b)に記載のH鎖の相補性決定領域を含むV鎖、
ロ)上記(e)または(f)のポリペプチドからなるV鎖、
ハ)上記(c)または(d)に記載のL鎖の相補性決定領域を含むV鎖、
ニ)(g)または(h)のポリペプチドからなるV鎖、
ホ)上記イ)またはロ)のV鎖および上記ハ)またはニ)のV鎖とを連結してなる1本鎖可変領域断片(scFv)、
ヘ)上記イ)またはロ)のV鎖および/または上記ハ)またはニ)V鎖にヒト由来の定常領域を連結してなる断片などであってもよい。
上記ホ)およびヘ)において、上記V鎖とV鎖とを連結する場合、通常、適当なペプチドリンカーなどによって連結される。このペプチドリンカーとしては、例えば、10〜25アミノ酸残基からなる任意の1本鎖ペプチドが用いられる。
また、上記ヘ)に記載の上記V鎖および/またはV鎖にヒト由来の定常領域を連結してなる断片(フラグメント)は、Fab、Fab’、F(ab’)や、少なくとも一部のFc部を有したscAb、またはscFvFc、さらには完全抗体であってもよい。なお、scAbとはscFvにL鎖またはH鎖の定常領域の一部のドメイン(Cドメイン)が結合したもの、scFvFcとはscFvにH鎖およびL鎖の全定常領域が結合したものである。
さらに、本発明の抗体およびその断片には、安定性や抗体価を向上させるために、修飾剤が結合されていてもよい。すなわち、本発明の抗体およびその断片は、修飾抗体であってもよい。この修飾剤としては、例えば、糖鎖や高分子などが挙げられる。糖鎖修飾を行った場合には、その糖鎖が何らかの生理活性を有する可能性があるが、ポリエチレングリコール(PEG)などの単純な高分子修飾を行った場合にはそれ自体生理活性を示さない。さらに、PEG化によって肝臓での吸収を抑制したり、血中での安定性を向上したりする可能性がある。つまり、修飾剤としては、PEGなどの単純高分子が好ましい。
なお、本発明の抗体およびその断片の修飾剤による修飾は、前述の変異ペプチドの作製と同様に、治療薬として利用する場合には、ヒトが免疫反応を起こさない範囲で行い、検出器具や診断キットなどとして利用する場合には、特に制限されない。また、本発明の抗体またはその断片を、ヒトに投与する場合、抗原を認識するCDRの高次構造を維持する範囲で、修飾することが好ましい。
また、上記抗体は、抗体と構造的に関連したタンパク質も包含する意味、すなわち免疫グロブリンの意味である。さらに、本発明の抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの何れのクラスでもよい。言い換えると、単量体であってもよいし、2量体、3量体、4量体、5量体といった多量体であってもよい。
後述する実施例に示すように、上記scFvについて詳細な解析を進めた結果、後の実施例において詳述するように、その作用・性質について以下の知見が得られた。
〔1〕ヒトIL−18と特異的に結合する。
〔2〕ヒトIL−18により誘導されるシグナル伝達およびINF−γの産生を阻害する。
このように、上記scFvは、ヒト由来のアミノ酸配列を有しているため、抗体の活性を阻止する阻止抗体が形成される可能性は極めて低い。さらに、ヒトIL−18と強く結合することにより、その生理活性を阻害する作用があるので、ヒトIL−18によって惹起される種々の免疫応答を阻害することができる。よって、上記scFvおよびそれを含む抗体またはその断片は、ヒトIL−18が直接または間接的に関与する疾患、例えば、この免疫応答によって惹起されるアレルギー、炎症、および慢性免疫異常疾患の治療のために利用することができる。このような治療薬が開発されれば、ヒトIL−18が関与する疾患の新しい治療方法の確立が期待される。
(2)本発明にかかる遺伝子
本発明にかかる遺伝子は、上記(1)で説明した抗体またはその断片をコードする遺伝子であり、配列番号1または7に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)領域として有する遺伝子、およびその塩基配列の一部を改変した改変遺伝子などが含まれる。
上記の遺伝子は、本発明の抗体またはその断片をコードしているので、適当な宿主(例えば細菌、酵母)に導入して、本発明の抗体またはその断片を発現させることができる。
さらに、上記「遺伝子」は、上記(1)の抗体またはその断片をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。例えば、配列番号1または7に記載の配列をベクター配列につないで本発明の遺伝子を構成し、これを適当な宿主で増幅させることにより、本発明の遺伝子を所望に増幅させることができる。また、本発明の遺伝子の一部配列をプローブに用いてもよい。また、後述するように、本発明の遺伝子は、ヒトIL−18が関与する疾患用の遺伝子治療剤(遺伝子治療薬)として利用できる。
(3)本発明の抗体およびその断片の取得方法・生産方法
上記(1)に記載の抗体およびその断片は、例えば、後述する実施例に示すように、いわゆるファージディスプレイ法を利用することにより、取得することができる。また、上記(1)に記載の抗体およびその断片は、上記(2)に記載の遺伝子を宿主に発現させることによって、生産することができる。なお、抗体およびその断片の取得方法および生産方法は、これに限定されるものではない。
より具体的には、健常人の末梢血Bリンパ球からmRNAを抽出し、免疫グロブリン遺伝子のV鎖、V鎖を、その両端を規定するプライマー対を用いてRT−PCR法により増幅し、多様な配列を有するH鎖、L鎖のV領域集団を得る。次に、更にペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅して、H鎖、L鎖のV領域のランダムな組み合わせによる多様なscFv DNA集団を調製する。得られたscFv DNAをファージミドベクターpCANTAB5Eに組込み、scFvディスプレイファージライブラリを作製する。このライブラリをプラスチックチューブに固相化したヒトIL−18と反応させ、洗浄により未反応のscFvディスプレイファージを除去した後に、ヒトIL−18と結合しているscFvファージクローンを酸で溶出する。分離したファージクローンからscFv DNAを調製し、これを発現ベクターに組み込み、該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って培養して目的のscFv蛋白のみを得るというものである。
なお、配列番号1および7は、ファージディスプレイ抗体法によって、取得したヒトIL−18に対する1本鎖可変領域(scFv)のV鎖およびV鎖をコードするcDNAの塩基配列である。
scFv DNAの発現方法としては、例えば、大腸菌で発現させることができる。大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列等、発現させるscFvを機能的に結合させて発現させることが出来る。例えば、プロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーター等を挙げることができる。scFvの分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに発現させる場合、pelBシグナル配列(Lei,SP.,et al,J.Bacteriol.,1987,169:4379−4383)を用いるとよい。培養上清中に分泌させるにはM13ファージのg3蛋白のシグナル配列を用いることもできる。
前記のように発現されたscFvは細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本願発明で発現されるscFvは、そのC末端にE tag配列が付加されているので、抗E tag抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて、容易に短時間で精製することができる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を組み合わせて精製することも可能である。例えば、限外濾過、塩析、ゲル濾過/イオン交換/疎水クロマト等のカラムクロマトグラフィーを組み合わせれば抗体を分離・精製することができる。
このようにして得られたscFv蛋白(ポリペプチド)は、後述する実施例に示すようにヒトIL−18に対する結合活性を有することが明らかになった。本発明のヒト抗ヒトIL−18抗体の抗原結合活性を測定する方法としては、ELISA、BIAcore等の方法がある。例えばELISAを用いる場合、ヒトIL−18を固相化した96穴プレートに目的の抗IL−18抗体や抗体フラグメントを含む試料、例えば大腸菌の培養上清や精製抗体を加える。次にアルカリホスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、発色基質パラニトロフェニルホスフェートを加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することが出来る。
さらにまた、本願発明により得られたscFv蛋白は、ヒトIL−18により誘導されるヒト骨髄単核球KG−1細胞からのIFN−産生を容量依存的に抑制することも明らかとなった。
従って、このscFv蛋白は、ヒトIL−18の生物活性を抑制する事から、IL−18の作用により惹起される疾患の予防または治療に有効であると期待される。
(4)本発明の組換え発現ベクター等
本発明の組換え発現ベクターは、前記(2)の遺伝子、すなわち、上記(1)の抗体またはその断片をコードする遺伝子を含むものであり、例えば、配列番号1又は7に示される何れかの塩基配列を有するcDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。
このように、組換え発現ベクターは、本発明の遺伝子を含むものである。ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、ホスト細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係る遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。
本発明の遺伝子がホスト細胞に導入されたか否か、さらにはホスト細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、ホスト細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明の遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとしてホスト細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明の遺伝子の導入を確認することができる。あるいは、本発明に係る抗体またはその断片を融合タンパク質として発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係る抗体またはその断片をGFP融合タンパク質として発現させてもよい。
上記ホスト細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、上記(2)遺伝子が全長DNAの場合のホスト細胞としては、ヒト又はマウス由来の細胞をはじめとして、線虫Caenorhabditis elegans、アフリカツメガエル(Xenopas laevis)の卵母細胞、各種哺乳動物(ラット、ウサギ、ブタ、サル等)の培養細胞、あるいは、キイロショウジョウバエ、カイコガ等の昆虫の培養細胞等などの動物細胞が挙げられ、DNAフラグメントの場合のホスト細胞としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
上記発現ベクターをホスト細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
本発明の形質転換体は、前記(2)の遺伝子、すなわち、上記(1)の抗体またはその断片をコードする遺伝子が導入された形質転換体である。ここで、「遺伝子が導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味する。また、上記「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、動物個体を含む意味である。対象となる動物は、特に限定されるものではないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどの哺乳動物が例示される。特に、マウスやラット等の齧歯目動物は、実験動物・病態モデル動物として広く用いられており、なかでも近交系が多数作出されており、受精卵の培養、体外受精等の技術が整っているマウスが実験動物・病態モデル動物として好ましく、ノックアウトマウス等は、上記抗体やその断片の更なる機能解析、ヒトIL−18が関与する病気の診断方法の開発や、その治療方法の開発などに有用である。
なお、上記(1)の抗体またはその断片は、本発明の組換え発現ベクターを用いて作製した、本発明の形質転換体によっても生産することが可能である。
(5)本発明の抗体およびその断片の利用方法
(5−1)ヒトIL−18検出器具・免疫疾患の診断キット・診断方法
上記(1)の抗体、その抗体断片、または修飾抗体は、ヒトIL−18に対して、特異的に強く結合するため、ヒトIL−18の検出・測定などに利用できる可能性がある。すなわち、上記ヒトインターロイキン−18検出器具によれば、例えば、血液や尿などの試料中に含まれるヒトIL−18を高精度に検出できる。それゆえ、ヒトIL−18が関与する疾患の判定や治療効果の評価を行うための診断用、治療用として利用できる。
なお、本発明のヒトIL−18検出器具は、本発明の抗体における少なくともCDRのアミノ酸配列を用いればよい。ヒトIL−18検出器具は、種々の条件下でのIL−18の検出・測定などに利用できる。本発明のヒトIL−18検出器具としては、例えば、ヒトIL−18と特異的に結合する本発明の抗体またはその断片を基盤(担体)上に固定化した抗体チップや抗体カラム等が挙げられる。
また、本発明の抗体またはその断片は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによるヒトIL−18の精製にも極めて有用である。この精製方法は、本発明の抗体またはその断片をヒトIL−18とそれ以外の物質の混合物に接触させて抗体またはその断片にヒトIL−18を吸着させる工程と、吸着したヒトIL−18を抗体またはその断片から脱着させ、採取する工程を含むものである。この精製方法によれば、IL−18を短時間かつ高精度に精製できる。
本発明の抗体またはその断片、およびそれらの修飾抗体は、ヒトIL−18を検出するための試薬(ヒトIL−18検出試薬)としても広範な用途を有する。すなわち、これらの抗体またはその断片によるラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイなどの標識イムノアッセイを適用するときには、被検試料中のヒトIL−18を迅速且つ正確に定性又は定量分析することができる。この標識イムノアッセイでは、上記抗体またはその断片は、例えば、放射性物質、酵素及び/又は蛍光物質により標識して用いられる。また、これらの抗体およびその断片は、ヒトIL−18に特異的に反応し、免疫反応を呈するので、その免疫反応を標識物質を指標に測定すれば、被検試料中のごく微量のヒトIL−18を精度良く検出することができる。標識イムノアッセイは、バイオアッセイと比較して、一度に数多くの被検試料を分析できるうえに、分析に要する時間と労力が少なくてすみ、しかも、分析が高精度であるという特徴がある。
本発明の免疫疾患の診断キット、および免疫疾患を診断する方法は、このようなヒトIL−18の検出方法に従い、被検試料(血液や体液、組織など)中のヒトIL−18量を測定し、その測定結果に応じて免疫疾患の診断を行うものである。なお、上記「免疫疾患」は、ヒトIL−18が関与する疾患であり、例えば、アトピー性皮膚炎、気道炎症、気道過敏性(AHR)、喘息などが例示される。
このように、本発明のヒトIL−18の検出器具による検出方法は、ヒトIL−18を製造する際の工程管理や製品の品質管理に有用である。また、本発明の免疫疾患の診断キットおよび診断方法は、組織や体液におけるヒトIL−18のレベルを指標とする種々の感受性疾患の診断や、各種免疫疾患の治療評価を行うために極めて有用である。
なお、一般に診断用に用いる抗体は、マウス、ウサギ、ヤギなどのヒト以外の動物を免疫して作成される。しかし、動物の免疫系では、自己の体を構成する分子に結合する抗体を産生するリンパ球は、排除または不活性化される。つまり、動物を免疫して作成した抗ヒトIL−18抗体のうち、ヒトIL−18と動物のIL−18とで酷似した部分を抗原決定領域とした抗体は含まれない。
これに対し、本発明の抗体は、ヒト抗ヒトIL−18抗体を提示させたファージライブラリーからスクリーニングされた抗体である。このファージには、動物のように抗体を排除または不活性化する機構は存在しない。それゆえ、本発明の抗体には動物の免疫では作製できない、ヒト、サル、その他各種の動物のIL−18に共通した抗原決定領域に結合特異性を示す抗IL−18抗体が含まれる。このような抗体を本発明の検出器具や診断キットに用いれば、ヒトのみならずサルをはじめとする各種動物疾患モデルにおけるIL−18関連疾患を診断することができる。
(5−2)ヒトIL−18活性阻害剤など
上記(1)の抗体は、ヒトIL−18を特異的に認識するヒト由来のヒト抗ヒトIL−18抗体である。さらに、この抗体は、ヒトIL−18に特異的に結合するとともに、ヒトIL−18の受容体への結合を阻害してこの受容体を介したシグナル伝達も阻害し、さらには、ヒトIL−18によって誘導されるIFN−γの産生も阻害する。
したがって、この抗体は、言い換えれば、ヒトIL−18アンタゴニストである。そして、このヒトIL−18アンタゴニストは、ヒトインターロイキン−18活性阻害剤として利用することができる。
上記「ヒトIL−18アンタゴニスト」としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のi)〜iv)の物質が挙げられる。
i)上記(1)に記載の本発明の抗体。
ii)上記(1)に記載の本発明の抗体の断片。
iii)上記(1)に記載の本発明の抗体またはその断片の修飾抗体。
iv)i)〜iii)に記載の抗体、抗体の断片、または修飾抗体が認識するヒトIL−18上の抗原決定領域に基づいて分子設計された低分子化合物。
ここで、上記「ヒトインターロイキン−18活性阻害剤」は、ヒトインターロイキン−18の活性を抑制するのはもちろん、ヒトインターロイキン−18の受容体への結合も拮抗的に阻害するもの、さらには、ヒトIL−18とIL−18受容体との複合体に結合して、シグナル伝達を阻害するものであってもよい。
また、上記(2)に記載の本発明の遺伝子は、ヒトIL−18が関与する免疫疾患における遺伝子治療剤として利用することができる。この遺伝子治療剤を摂取すれば、体内で本発明の抗体またはその断片が形成されるので、上記ヒトIL−18活性抑制剤と同様の効果が得られる。なお、ヒト抗IL−18抗体が、生体内で形成され続けると、ヒトIL−18の作用を過剰に抑制してしまうが、ヒトの場合、IL−18が欠失したとしても、IL−1がIL−18と同様の作用を示すため、特に問題は生じない。
本発明の抗体は、ヒトIL−18を特異的に認識するヒト由来のヒト抗ヒトIL−18である。すなわち、この抗体のアミノ酸配列は、従来のキメラ抗体やヒト化抗体とは異なり、すべてヒト由来である。
したがって、本発明の抗体の作用を阻止する抗体(阻止抗体)が形成される虞はない。それゆえ、たとえ、この抗体を反復投与または長期投与したとしても、高い安全性を保持したまま、効果も持続することが可能である。
それゆえ、本発明のヒトIL−18活性阻害剤および遺伝子治療剤は、ヒトIL−18が関与する免疫疾患の治療法として有用な免疫疾患治療剤(免疫治療薬)として利用可能である。
なお、本発明の免疫疾患治療剤は、体内でその効果を発揮すればよいので、例えば、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(またはこれを含むヒトIL−18活性阻害剤)を投与してもよいし、プロドラッグ化して体内で代謝されて当該ポリペプチドが発現されてもよい。すなわち、本発明の免疫疾患治療剤は、上記i)〜iv)のヒトIL−18アンタゴニスト(ヒトIL−18活性阻害剤)または上記遺伝子治療剤がプロドラッグ化されていてもよい。すなわち、体内で、活性代謝物となるように、免疫治療薬剤を修飾してもよい。
また、本発明の免疫疾患治療薬剤には、1種類以上の賦形剤、1種類以上の結合剤、1種類以上の崩壊剤、1種類以上の滑沢剤、1種類以上の緩衝剤などのように、医薬品として許容される添加物が含まれていてもよい。
以上のように、本発明の抗体(ヒトモノクローナル抗体)及び、当該抗体フラグメント分子は、ヒト由来抗ヒトIL−18抗体の可変領域を有し、ヒトIL−18と強く反応して、IL−18とIL−18受容体間の結合に阻害作用を示す。さらに、IL−18によって惹起される種々の免疫応答を阻害することができ、当該免疫応答により惹起されるアレルギー、炎症及び免疫異常性疾患の予防または治療薬、例えば、抗炎症剤あるいは自己免疫疾患の治療及び予防のための薬剤として使用することができる。
また、本願発明のヒトIL−18に対するヒト由来scFvは、IL−18と特異的に結合し、IL−18により誘導されるシグナル伝達及びIFN−産生を阻害するものであることが示された。従って、当該scFv及びscFvのV鎖及びV鎖をヒト定常領域またはその一部と結合させたヒト抗ヒトIL−18抗体またはその抗体フラグメントは、IL−18の関与する疾患、例えば慢性炎症性疾患や自己免疫疾患等の治療への適用が期待される。また、IL−18とは結合するが抑制作用を示さなかった抗体を含めてこれらの抗体で、IL−18の血中濃度を測定し、病態の症状の変動をモニターすることもできる。
なお、前述のように本発明の抗体は、IL−18に対するシグナル伝達及びINF−γ産生を阻害するので、そのような特性を有する抗体とヒトIL−18との結合特異性を示すIL−18上の抗原決定領域を明らかにすれば、低分子化合物の免疫疾患治療薬の開発への応用が可能となる。この抗原決定領域を、エピトープという。このエピトープは、アミノ酸の1次配列そのものである場合や、もしくは、ペプチド鎖の折り畳まれ方で構築た立体構造である場合がある。いずれの場合でも、例えば、本発明者等が提案した「モノクローナル抗体を用いた分子鋳型デザイン法」によって、エピトープの類似化合物(ミミック分子)をデザインすることができる(T.Fukumoto et al.,Nature Biotechnology,16:267−270,1998.)。ここで、「低分子化合物」とは、例えば、ペプチドや抗体などの比較的分子量の大きい化合物(分子量1万以上)のものではなく、一般に低分子医薬として用いられている、分子量1万未満、好ましくは、分子量3000未満の化合物を示している。なお、低分子化合物の分子量は、小さいほど好ましい。
なお、上記低分子化合物として、ペプチドやさらに低分子量の化合物を創製する場合、このミミック分子の分子構造に着目して分子設計を行う、いわゆるin sillicoプロセスによって、設計することができる。このように、in sillicoによる分子設計を行うことにより、安価かつ迅速に、治療薬となりうる低分子化合物を、リード化合物として選抜できる。
具体的には、例えば、後述の実施例では、ヒト抗ヒトIL−18scFv抗体のCDRは、配列番号4〜6,10〜12に示されている。一般に、抗体において、CDRは、抗原を認識する領域(部位)である。すなわち、CDRは、抗体の活性中心となる。つまり、実施例1に示したscFvは、CDRによって、ヒトIL−18を特異的に認識する。従って、このCDRの高次構造と略一致(好ましくは完全に一致)するように、低分子化合物を設計すれば、その低分子化合物は、低分子医薬品として利用できる。言い換えれば、低分子化合物は、CDRのコンフォメーションに近づくように設計する。なお、in sillicoプロセスの方法は、特に限定されるものではないが、例えば、SBDD(Structure Based Drug Design),CADD(Conputer−Aided Drug Design)などにより、CDRが有する官能基や、CDRの高次構造に基づいて、コンピューター上で設計できる。
このようにして設計した低分子化合物は、抗体のようなタンパク質(ペプチド)に比べて、安定性が高い。このため、この低分子化合物は、取り扱いやすい医薬品として利用できる。
(5−3)免疫疾患治療薬剤の適用例−1
前述のように、本発明のヒトIL−18活性阻害剤および遺伝子治療剤は、ヒトIL−18が関与する免疫疾患の治療法として有用な免疫疾患治療薬剤となる。ここで、免疫疾患治療薬剤の適用例について説明する。
Th1細胞優位な免疫応答は、一般に、自己免疫疾患の病態に検討される。しかし、Th1細胞優位な免疫応答は、Th2細胞が関与する疾患(喘息・アトピーなど)に対して、防御的である。しかしながら、最近の研究で、Th1細胞が、Th2細胞が関与する気道過敏を増大させることに関与することが明らかとなった。さらに、Th1細胞が、好中球の増加と活性化によって、気道過敏性(AHR)を誘導することが示された。
実際、喘息患者の気道は、好中球数の増加だけでなく、IFN−γ,TNFα,およびIL−8レベルの増加も見られる場合がある。それにもかかわらず、どのようにTh1細胞がTh2細胞の影響を妨げ、病態を示すのか、そのメカニズムは、未だ解明されていない。従って、気道炎症および気道過敏性が誘導された場合の、Th1細胞の病態への関与を解明することは重要である。
IL−18は、本来は、抗CD3抗体およびIL−12存在下、Th1細胞から産生するIFN−γを増加させる因子として、発見された。このため、IL−12とIL−18との混合物を注入すると、in vivoでIFN−γ産生細胞を誘導して、Th2細胞が誘導するIgE応答を阻害する。しかしながら、本発明者等の最近の研究によって、in vitroで誘導した抗原特異的Th1細胞あるいはTh2細胞を、ナイーブホストマウス(非感作性ホストマウス)に受動移入後、ホストマウスを約1ヶ月間、無処置で放置しておくと、移入した各細胞が、メモリー表現型のTh1細胞あるいはTh2細胞となること、および、これらの細胞を、経鼻的に投与した抗原、または、抗原とIIL−18とにより刺激された場合に、ホスト動物が、気道炎症を発症することが明らかとなった(T.Sugimoto et.al.,J.EXP.Med.,2004,199,535−545.)。従来の報告は、IL−13の中和は、Th2細胞が移入されたマウスの、好酸球の増加とAHRとを阻害するというものであった。これに対し、同様の処理をしたTh1細胞が移入されたマウスでは、たとえ、この処理が、著しく気道の好酸球の増加を減少させるものであっても、AHRが阻害されない。
これらの結果は、Th1細胞が、Th2細胞とは全く異なる様式で、AHRを誘導することを示唆している。Th1細胞は、抗原とIL−18とによる刺激に対して、ユニークな応答を示し、Th1サイトカイン(IFN−γ),Th2サイトカイン(IL−9,IL−13),ケモカイン(RANTES,MIP−1α(マクロファージ由来炎症性タンパク質−1α),およびGM−CSFを産生する。Th2サイトカインとGM−CSFは、主に、気管支喘息を誘導する因子として、広く認められている。いくつかの研究から、Th1細胞とTh2細胞とは互いに阻害しあうものではなく、むしろ共同することで、気管支喘息の発症を誘導するとともに、その症状を増幅することが示唆されている。実際、IFN−γとIL−13との同時投与は、最も重篤な気管支喘息を誘導する。本発明者等が見出したTh1細胞の新規機能は、抗原とIL−18とで刺激を受けると、Th1サイトカイン,Th2サイトカイン,GM−SCFおよびケモカインを産生することにより、様々な炎症性病態を誘導することである。
従って、ヒトTh1細胞も、同条件下で、病態を示す可能性がある。
後述の実施例2では、ヒトTh1細胞が、抗原とIL−18存在下で、Th1サイトカイン,Th2サイトカイン,GM−SCFおよびケモカインを産生することが確認された。この実施例では、新たに誘導されたIL−18Rαを強く発現するTh1細胞が、抗CD3抗体とIL−18とによる刺激によって、IFN−γ,IL−13,GM−CSF,およびIL−8の産生を著しく増加させることが示された。この結果は、Th1細胞が、Th1サイトカイン,Th2サイトカインだけでなく、GM−CSF,IL−8の産生により、組織の損傷を誘導する可能性を示している。
このように、IL−18は、抗原と共同してTh1細胞を刺激することにより、重篤な気道炎症およびAHRを発症する。従って、例えば、前述したヒトIL−18アンタゴニスト(前述のi)〜iv))は、その治療薬となる。
(5−4)免疫疾患治療薬剤の適用例−2
次に、免疫疾患治療薬剤の別の適用例について説明する。
これまで、アトピー性皮膚炎は、アレルゲン特異的IgE抗体依存性の獲得型アトピーとして考えられていた。このため、アレルゲン特異的IgE抗体を標的とする、IgE抗体阻害剤や、抗アレルギー剤などが、アトピー性皮膚炎の治療薬として用いられてきた。しかし、これらの治療薬では治癒できない、または、再燃を繰り返すアレルギー患者が、年々増加している。
従来のように、獲得型アトピー性皮膚炎(IgE抗体依存性アトピー性皮膚炎)を照準とした治療法では無効な、自然型アトピーの発症および重症度には、IL−18が重要な役割を果たしている。
しかし、そのような症例に対する有効な治療法は、未だ確立されていない。
Th2細胞の機能に対し拮抗作用を示すTh1細胞を、CpGDNA投与するなどの方法で誘導できるが、同時に誘導されるIL−18はTh1細胞に作用して、TH1型の気管支喘息を誘導することが問題となる。
獲得型アトピー性皮膚炎(IgE抗体依存性アトピー性皮膚炎)の治療法として、抗原特異的減感作療法が知られているが、その分子機構は、未だ解明されておらず、治療の有効性も低い。なお、減感作療法とは、IgE抗体が関与する即時型アレルギー反応(I型アレルギー反応)の原因抗原であるアレルゲン,特に吸入性アレルゲンを生体内に投与し(一般には注射)、アレルゲンに対する過敏反応を軽減させようとする治療法である。
IgE抗体のFc部に特異的で、FcR1部への結合を阻害するヒト型マウス抗体が、Genentic社で開発され、アレルギー治療薬として有効であることが報告されている(Milgrom H.et al.,N.Engl.J.Med.,1999:341,1966−73.)。
また、、Th2サイトカイン阻害剤は、抗IL−4抗体,抗IL−5抗体,抗IL−13抗体、および、これらの受容体に対する抗体は、アレルギー治療薬としての抗体医薬(医薬品)になり得ると考えられるが、未だ、有効な抗体医薬は開発されていない。
FK506に代表される低分子免疫抑制剤の低量使用は、抗アレルギー作用を発揮するが、副作用として、腎障害などが報告されている。
TLR(Toll Like Receptor)を介する刺激を加え、IL−12の産生を誘導する手段として、CpGDNAが注目されている。このCpGDNAは、非メチル化CpGモチーフを有するDNAである。CpGDNAは、特にTh1反応(マクロファージを活性化する反応)を強く惹起し、臨床面での応用が期待されている分子である。しかし、CpGDNAは、前述のように、同時に誘導されるIL−18はTh1細胞に作用して、TH1型の気管支喘息を誘導することが問題となる。
このように、アトピー性疾患は、これまで、アレルゲン特異的IgE依存性の獲得型のアトピー疾患として論じられ、それを照準としたIgE阻害剤や抗アレルギー剤などが、治療薬として用いられている。しかし、これらの治療薬では、治癒しない、あるいは、再燃を繰り返す患者が年々増加している。
すなわち、従来の獲得型アトピーを照準とした治療法では、無効な自然型アトピーが存在しており、その発症には、IL−18が重要な役割を果たしている。
従来の免疫学の考え方では、Th1細胞誘導は、Th2細胞機能を抑制することによって、抗アレルギー作用を発揮するものと考えられてきた。しかし、本発明者等は、IL−18が、Th1細胞をin vivo条件下で刺激することにより、INF−γ,IL−8,9,13などを産生し、難知性の気管支喘息を誘導することを見出した。これは、アレルギー性炎症発症が、Th1とTh2とのバランスが原因であるという、従来の定説を覆すものである。つまり、従来のバランス是正を目指す治療法を明確に否定するものである。
IL−4,5,9,13は、重要なTh2サイトカインである。一方、ロイコトリエン、ヒスタミン、セロとインなどは、重要なケミカルメディエーターである。これらを個々に抑制(阻害)する技術はあっても、その上流から阻止するものではない。すなわち、各サイトカインに直接作用して、それらの機能を抑制(阻害)する技術はあっても、各サイトカインの産生を上流で、阻害する技術はない。IL−18は、上記各サイトカインの上流にあることから、IL−18の活性を阻害することによって、アレルギー性疾患(アレルギー性炎症)に有効であると考えられる。
アレルギー性疾患の発症メカニズムには、活性化T細胞,好塩基球,および肥満細胞が深く関与する。特に、アレルゲンによる肥満細胞または好塩基球上のFcεRに結合したIgE分子の架橋によって、これらの細胞が活性化される。その結果、Th2サイトカインとケミカルメディエーターとが産生され、アレルギー性炎症(アレルギー性疾患)が誘導されると考えられている。しかし、アレルゲンやIgE関与がなく、感染を契機にアレルギー性炎症が誘導される場合がある。抗アレルギー剤,免疫抑制剤など、非特異的な治療法は存在するものの、IL−18を特異的に抑制する技術は開発されていない。
そして、これまで作製されている抗IL−18抗体は、マウス抗体をヒト化したものであるため、臨床応用できる抗体医薬にはなりえない。
本発明の抗体は、自然型アトピー(IL−18依存性疾患)を誘導するIL−18に対する、ヒト由来のヒト抗ヒトIL−18モノクローナル抗体(完全ヒト型抗体)である。これまで、ヒトIL−18に対する完全ヒト抗体は、開発されておらず、本発明の抗体が、国際的に唯一のものである。この抗体は、臨床適用しても、マウス抗体のように、抗原性を示さない。従って、この抗体は、副作用のない優れた抗体医薬として利用できる。これにより、アレルギー性疾患,自然型アトピー,および喘息などの新規な治療法を確立できる。例えば、この抗体は、従来型の獲得免疫系の異常に基づく獲得型アトピー(IgE依存性)を照準とした治療法では無効な、自然型アトピー(IL−18依存性)を標的とした新規な治療法と確立できる。
後述する実施例に示すように、この抗体は、種々のin vitro系で、IL−18の活性を抑制した。特に、この抗体は、抗原とIL−18とによる刺激によって生じるTh1細胞からのTh1サイトカインとTh2サイトカインとの産生抑制機能を有している。この機能は、IL−12の作用を損なわない点で重要である。
従って、上記免疫疾患治療薬は、現在の難病の1つであるアレルギー性炎症の治療標的として、重要な役割を果たす。さらに、上記免疫疾患治療薬は、従来のアレルギー性炎症治療薬と全く異なる新しいタイプの治療薬を創製するために有用である。
以上のように、IL−18は、Th1細胞を刺激して、気管支喘息を誘導する。
また、IL−18は、樹状細胞、マクロファージなどの免疫系の細胞だけでなく、皮膚ケラチノサイト、腸管上皮細胞、気道上皮細胞など、種々の非免疫系の細胞からも産生する。
また、IL−18は、IL−12の存在下で、様々な免疫系または非免疫系の細胞から、IFN−γの産生を誘導する。一方、IL−18は、IL−12の非存在下で、NKT細胞、T細胞、NK細胞から、IL−4,IL−13などのTh2サイトカイン(ヘルパーT2細胞から産生するサイトカイン)の産生を誘導して、抗原非特異的にIgE産生を誘導する。
また、IL−18は、抗原刺激を受けたTh1細胞を刺激して、Th1サイトカインに属するIFN−γの産生を増強するばかりか、Th2サイトカインに属するIL−9,IL−13、さらに代表的なケモカインであるIL−8の産生を誘導する。
また、IL−18は、OVA特異的Th1型メモリーT細胞を移入したマウスに、経鼻的にOVAと共に投与する(IL−18とOVAとを投与)ことにより、肺胞と間質内への好中球・リンパ球・マクロファージ・好酸球の強い湿潤像と、気道過敏性とを特徴とするTh1型の気管支喘息を誘導できる。
また、IL−18は、抗原/IgE非依存的に、直接、肥満細胞や高塩基球を刺激する。その結果、様々なサイトカインや化学伝達物質の産生を誘導し、自然型アトピー(IL−18依存性炎症)を誘導する。
Th2細胞依存性の喘息は、抗IL−5抗体、あるいは、抗IL−13抗体によって、抑制できる。しかし、抗原とIL−18とにより刺激されたTh1細胞が誘導する喘息に対しては、これらの抗体による治療は無効である。本発明の抗体は、上記の抗体では無効な喘息の治療に有効である。すなわち、本発明の抗体は、IL−18によって誘導される喘息(感染が原因で発症する喘息)に対して有効である。
本発明は、IL−18が関与する喘息病態の発見を含み、かつ、従来型の獲得免疫系の異常に基づく獲得型アトピー(IgE依存性)を標準とした治療法では無効な自然型アトピー(IL−18依存性)を標的とする新規な治療法を確立する上で重要となる。
また、本発明の抗体は、自然免疫系と獲得免疫系とを結合する上で重要な役割を果たすヒトIL−18に対するヒトIL−18モノクローナルヒト抗体(抗ヒトIL−18抗体)である。
この抗体は、従来型の獲得免疫系の異常に基づく獲得型アトピー(IgE依存性)を照準とした治療法では無効な自然型アトピー(IL−18依存性)を標的とした新しい治療法を提供するものである。
さらに、この抗体は、アトピー性皮膚炎疾患だけでなく、喘息や鼻炎,その他のアレルギー性疾患に対する新規な治療法を提供するものである。特に、IL−18は、Th1細胞を刺激して、難治性の気管支喘息を発症する。このため、気道上皮に感染して、気道上皮細胞からIL−18の産生を誘導する作用を示す病原体は、気管支喘息を発症する原因となる。従って、この抗体は、感染によって発症した喘息に対して有効な治療薬となる。
本発明にかかる抗体およびその断片は、ヒトIL−18の受容体への結合を阻害するヒト抗ヒトIL−18抗体およびその断片である。従って、ヒトIL−18が原因となる様々な炎症性疾患の治療薬(治療方法)または予防薬(予防方法)として利用可能である。
また、本発明は、例えば、後述の実施例に示した、scFv抗体のうち、CDRの高次構造に基づき、低分子化合物を設計することにより、IL−18依存の低分子医薬品(化学合成薬剤)の開発に重要な手段を提供する。
本発明で得られたヒト抗IL−18抗体は、感染を契機に増悪するアトピー性皮膚炎、難知性の気管支喘息の治療に対して有効である。
本発明のヒト抗IL−18抗体は、アレルゲン/IgEを原因としないIL−18依存性炎症(例えば、自然型アトピー)に対して新規な治療法を確立できる。
前述のように、本発明のヒト抗IL−18抗体は、IL−18の受容体への結合を阻害する。従って、この抗体は、上記のような、IL−18が原因となって発症する、様々な炎症性疾患の治療と予防に有効となる。
本発明では、ヒト1本鎖抗体(scFv)を提示するファージディスプレイライブラリから、IL−18に特異的に結合するscFvの単離に成功した。この1本鎖抗体も、IL−18の受容体への結合を、特異的に阻害することが可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例の記載に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例1】
(1−1)健常者からのファージライブラリーの構築
ファージライブラリーの構築は、J.D.Marksら(J.Mol.Biol.,222:581−597,1991)により報告されている方法を参考に、健常者20名の末梢血由来リンパ球を出発材料として行った。構築したVH(Y)−V、VH(Y)−Vλ、VH(μ)VK、、VH(μ)−Vλの各サブライブラリーは、それぞれ1.1×10、2.1×10、8.4×10、5.3×10クローンの多様性を有すると評価された。
(1−2)パンニング
ヒトIL−18を0.1M NaHCO1mLに溶解し、35mmのディッシュ(岩城)に4℃で一晩反応させて固定化した。次いで、0.5%ゼラチン/PBSを用いて20℃で2時間ブロッキングした後、0.1%Tween20−PBSで6回洗浄した。これに、健常人由来の抗体ファージライブラリー(1本鎖可変領域断片(scFv)提示ファージ液)を0.9mL(1×1012tu/mL)加え、反応させた。
次に、この反応液を、0.1%Tween20−PBSで10回洗浄した後、1.0mLのグリシン緩衝液(pH2.2)を加え、IL−18と結合するscFv提示ファージを溶出した。溶出したファージに、1M Tris(hydroxymethyl)aminomethane−HCl,(pH9.1)を加えてpHを調製した後、対数増殖期の大腸菌TG1に感染させた。感染後のTG1を3000×g,10分で遠心分離して、上清を除き、200μLの2×YT培地で懸濁し、SOBAGプレート(2%グルコース、100μg/mlのアンピシリン含有SOBプレート)に播き、30℃のふ卵器中で一晩培養した。生じたコロニーは適量の2×YT培地を加えスクレイパー(Costar)を使って懸濁、回収した。
このTG1液50μLを、30mLの2×YTAG培地に植え、ヘルパーファージを用いてレスキューし、スクリーニング後のファージライブラリーを調製した。健常人由来ファージライブラリーVH(Y)−V、VH(Y)−Vλ、VH(μ)−V、V(μ)−Vλ、それぞれについて、前述のIL−18固定化プレートを用いてパンニングを計2回行った。2回目のパンニング後に、SOBAGプレートから任意にクローンを抽出し、scFvの発現の確認及びIL−18 ELISAによる特異性の確認(スクリーニング)と塩基配列の解析とを行った。
(1−3)IL−18 ELISAによるスクリーニング
分離したクローンをスクリーニングするためのELISAは、ヒトIL−18をELISAプレートに固定化して行った。具体的には、2μg/mLのヒトIL−18、2.5μg/mLのヒト血清アルブミン(HSA)を、40μL/wellのELISAプレート(Nunc)に入れ、4℃で16時間静置し、固定化した。固定化プレートは、0.5%BSA、0.5%ゼラチン及び5%スキムミルクを含むPBS溶液400μL/wellをELISAプレートに入れ、4℃で2時間静置し、ブロッキングを行った。
次に、このELISAプレートに、scFv提示ファージを含む試料液40μL/wellを入れて反応させた後、試料液を捨て洗浄液で5回洗った。続いて、この固定化されたscFvファージに、ビオチン標識した抗M13モノクローナル抗体(Pharmacia biotech)を加え、アルカリフォスファターゼ(AP)標識した抗マウスIgG抗体を二次抗体として反応させた。この反応液を洗浄液で5回洗った後、発色基質液(1g/mL p−nitrophenyl phosphate(Wako)、10%ジエタノールアミン(Wako)を含むPBS溶液)を50μL/well入れ、遮光し、室温〜37℃で、5〜10分発色させた。マルチプレートオートリーダーNJ−2001(Inter Med)で405nmの吸光度を測定した結果、評価したクローン全てが、IL−18に特異的であることが確認できた。その結果を図1に示す。
(1−4)クローンの配列分析
次に、単離したクローンのscFv遺伝子のV鎖及びV鎖遺伝子のDNA塩基配列をDye terminator cycle sequencing FS Ready Reaction kit(Applied Biosystems)を用いて決定した。ELISA及び配列分析の結果、単離したクローンは2種に分類された(h18−40、h18−108)。
なお、配列番号1および7にはクローン番号h18−108のV鎖及びV鎖遺伝子の塩基配列がそれぞれ示される。また、配列番号3および8にはこのV鎖及びV鎖のアミノ酸配列が示される。
(1−5)ヒト抗IL−18 scFvの発現と精製
前記(1−2、3)で単離したヒトIL−18に反応するscFvクローン(h18−40・h18−108)からプラスミドDNAを回収して、常法に従って大腸菌HB1251を形質転換した。2%グルコース及び100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地でこれらの大腸菌を一夜前培養後、グルコースフリーの2×YT培地に一部移植し、終濃度1mM IPTG、100μg/mlのアンピシリンを加えて更に一夜培養してscFvの発現誘導を行った。培養終了後菌体を遠心回収し、1mM EDTAを含むPBSに懸濁して氷中に30分菌体を放置した。次いで8,900×gで30分間遠心し、上清を回収して0.45μmフィルター濾過後、ペリプラズム画分からscFvを精製するための出発材料とした。
このようにして調製した精製のための出発材料を、抗E tag抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて、常法に従って精製した。PBSで透析後、エンドトキシン除去カラムDetoxi−gel(PIERCE社)で添付のプロトコルに従いエンドトキシンを除去した。分子量カット10,000のCentricon(Amicon社)で濃縮後、0.45μmフィルター濾過して精製標品とした。
(1−6)精製scFvのIL−18に対する結合性
次に、精製scFv(h18−40・h18−108)のIL−18に対する結合性をELISA法で測定した。PBSで0.5μg/mLに調製したヒトIL−18を固相化した96穴プレート(NUNC.MAXISORP)に、精製scFvを100μL加えて37℃で1時間反応させた。0.05%Tween−PBS(以下PBSTと省略することもある)で5回洗浄後、パーオキシダーゼ標識抗E tag抗体と更に37℃で1時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、発色基質液を加えて呈色させ、405nmの吸光度を測定して結合性を評価した。その結果を図2に示す。同図に示すように、2種の抗体(h18−40・h18−108)は全てIL−18と特異的に結合した。
(1−7)IL−18に刺激されたヒト骨髄単核球KG−1細胞からのIFN−産生に対する作用
IL−18(20ng/100μL)とscFvとを反応させた後に、KG−1 cell(3×10cells/100μL)培養液に加え、24時間後の培養上清中におけるIFN−γ量をELISA(Biosource)により測定した。scFv(h18−40・h18−108)に関してIL−18阻害活性をKG−1 cellのIFN−γ産生で調べた結果、コントロールおよびscFv(h18−40)では阻害活性は見られなかったが、scFv(h18−108)は濃度依存的にKG−1 cellのIFN−γ産生を抑制した。図3に、その結果を示す。
(1−8)IL−18のヒト骨髄単核球KG−1細胞への結合阻害作用
ビオチン標識IL−18(400ng/50μL)とscFv(コントロールまたはh18−108)とを反応させた後にKG−1 cell(1×10cells/50μL)培養液に加え、phycoerythrin標識ストレプトアビジン(Becton Dickinson)を反応させフローサイトメトリー解析(Beckman Coulter)を行った。
図4および5に示すように、scFv(h18−108)がIL−18のKG−1 cellへの結合を阻害するかをフローサイトメトリー解析で調べた結果、コントロールscFvはIL−18の結合に変化は見られなかったが(図4)、h18−108はIL−18のKG−1 cellへの結合を濃度依存的に阻害した(図5)。
(1−9)scFv(h18−108)の特性
ヒトIL−18に対する特異性を示したscFvh18−108について、ウェスタンブロッティングを行った結果、図6に示すように、分子量は約30kDaであった。また、ゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果、図7に示すように、分離パターンから、9割がモノマーのscFvを形成し、残りの1割がダイマーを形成していることが確認された。
【実施例2】
実施例2では、IL−18によって刺激したTh1細胞およびTh2細胞から産生するサイトカインについて検討した。
(2−1)試薬
組み換えヒトIL−2,IL−4,IL−12,およびIFN−γは、R&D(Minneapolis,MN)から入手した。組み換えIL−18は、MBL社(名古屋日本)から入手した。FITC(フルオレセインイソチオシアネート)−抗ヒトCD4mAb(モノクローナル抗体)またはCyChrome(シトクロム)−抗ヒトCD4mAb,FITC−抗ヒトCD45RAmAb,FITC−抗ヒトIFN−γmAb,PE−抗ヒトIL−13mAb,および抗ヒトIL−12mAbは、Pharmingen(San Diego,CA)から入手した。PE−抗ヒトIL−18RαmAb(クローン70625),抗ヒトCD3εmAb、および抗ヒトIL−4mAbは、R&Dから入手した。
(2−2)in vitroでのTh1細胞またはTh2細胞の作製
健常なドナー末梢血から、ナイーブCD4CD45RAT細胞(CD4およびCD45陽性T細胞)を単離した(K.Nakanishi et.al.,Int.Immunol.12:151.)。PHA(1μg/mL),IL−12(50μg/mL),および中和抗IL−4mAb(500ng/mL)、または、PHA(1μg/mL),IL−4(200μg/mL),および中和抗IL−12mAb(10μg/mL)とともに、24ウェルプレートで、CD4CD45RAT細胞(1×10/mL)を培養することにより、Th1細胞およびTh2細胞を作製した。このようにして刺激したT細胞を、3日目に洗浄し、培地にIL−2を100U/mLを加え、さらに4日間培養した。
(2−3)IFN−γTh1細胞の単離
IFN−γTh1細胞を単離するため、分極化したTh1細胞を、固定化抗CD3(5μg/mL)およびIL−2(100U/mL)とともに、24ウェルプレート中で培養した。次に、その培養物に、生存するTh1細胞がIFN−γの発現を豊富にする処理を行った。3時間後、付着細胞のみを、回収し、抗CD45/抗IFN−γ二重特異性抗体(Miltenyi Biotec)と共に、5分間氷上でインキュベートした。処理した細胞を50mLの底部が円錐状の試験管に移し、その試験管を37℃の水浴に配し、20mlの温めた培養液中で5×10細胞/mlの濃度で細胞を培養した。30分後、冷却した0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液溶液(PBS)で、細胞を洗浄した。細胞表面で捕捉されたIFN−γを、PE−抗ヒトIFN−γを用いて検出した。また、自動MACSを用いる抗PEマイクロビーズにより、表面にIFN−γを発現したTh1細胞を、確実に単離した。
(2−4)in vitro培養
新たに分極化したTh1細胞およびTh2細胞、および、新たに分極化したTh1細胞から選別したIFN−γ細胞を、種々の濃度のIL−18存在下、固定化抗CD3(5μg/mL)を含んだ1×10/0.2mL/ウェルで再培養した。培養開始から6時間から72時間経過後、上澄を回収し、IL−4,IL−5,IL−8,IL−13,IFN−γ,およびGM−CSFの含有量を、ELISA(R&G)により測定した。
(2−5)フローサイトメトリー
分極化したTh1細胞(1×10/mL)を、24ウェルプレートで、固定化CD3のみ、および、固定化CD3とIL−18(100ng/mL)とにより、72時間再刺激した。最後の3時間は、サイトカインの分泌を阻害するため、2μMのモネンシンを添加した。細胞質内のIFN−γ、および/またはIL−13細胞の染色による分析は、文献(K.Nakanishi et.al.,J.EXP.Med.,2004,199,535−545.)に従って行った。Th1細胞およびTh2細胞上のIL−18Rαの発現量を測定するため、ヒトIgGによるFcRのブロッキング後、各細胞を、FITC抗ヒトCD4、およびPE抗ヒトIL−18Rα鎖mAbまたはコントロールPE−マウスIgG1mAbにより、30分間、4℃で、1%FCSを含むPBS中でインキュベーションした。このようにして得られたサンプルを、FACS Calibur(BD Bioscience,San Jose,CA)によって分析した。
(2−6)実験結果
(2−2)〜(2−5)に従い、健常なドナー末梢血から単離したナイーブCD4CD45RAT細胞を、in vitroで、Th1細胞およびTh2細胞を誘導する条件下、連続して7日間刺激した。
その結果を、図8に示す。なお、図8では、固定化抗CD3のみにより刺激した結果(α−CD3)と、固定化抗CD3とIL−18とにより刺激した結果(α−CD3+IL−18)を示している。
図8に示すように、固定化抗CD3を用いた試験では、Th2細胞は、かなりの量のIL−4,IL−5,およびIL−13を産生したが、IFN−γを産生しなかった。また、Th1細胞は、主に、IFN−γ,IL−8,GM−CSFを産生した。
また、図8に示すように、固定化抗CD3に加えてIL−18により刺激しても、Th2細胞からのTh2サイトカインの産生は、増加しなかった。これに対し、その処理によって、Th1細胞からのIFN−γ,IL−8,IL−13,およびGM−CSFの産生は、著しく増加した。
Th1細胞とTh2細胞とのIL−18に対する応答の違いの根本となるメカニズムは、主に、Th1細胞上へのIL−18Rα鎖の発現の選択性によって説明できる。図9は、上記の刺激による、各細胞の表面のIL−18Rα鎖の発現レベルを示す図である。図9に示すように、ヒトTh1細胞は、高レベルのIL−18Rα鎖を発現するのに対し、Th2細胞は、IL−18Rα鎖の発現量は、わずかである。したがって、IL−18Rを発現するTh1細胞は、抗CD3とIL−18とに応答して、Th1サイトカイン,Th2サイトカイン,およびGM−CSFを産生する性質を示す。
同時に、固定化抗CD3により刺激を受けたTh1細胞の、IL−18投与量による応答性(IFN−γ,IL−8,IL−13の産生)について検討した。そこで、Th1細胞を、種々の濃度のIL−18(〜500ng/mL)により、固定化抗CD3存在下、3日間、刺激した。図10は、IL−18の用量と、Th1細胞からのサイトカインの産生量との関係を示すグラフである。図10に示すように、Th1細胞は、IL−18存在下、用量依存的に、IFN−γ,IL−8,IL−13の産生が増加した。なお、抗CD3刺激を受けたTh2細胞を、IL−18によりさらに刺激しても、サイトカイン産生の応答は、増加しなかった。したがって、図10に示すように、ヒトTh1細胞のみが、抗原とIL−18との刺激に応答し、Th1サイトカイン、Th2サイトカインばかりでなく、GM−CSF,IL−8を産生するという、特有の作用を示した。
このように、IL−18は、分極化したヒトTh1細胞からのIFN−γ,IL−8,IL−13およびGM−CSF産生を誘導した。
次に、抗CD3とIL−18による刺激後のサイトカインの産生の速度論を検討した。図11は、Th1細胞の刺激後の培養時間と、Th1細胞からのサイトカインの産生量との関係を示すグラフである。図11に示すように、Th1細胞は、刺激後、比較的早期に、IFN−γを産生し始めた。抗CD3による刺激の24時間後でさえ、大量のIFN−γが検出された。これに対し、その時点では、IL−8もIL−13も検出されなかったが、刺激から72時間後、IL−8およびIL−13が検出された。通常は48時間の測定を行うため、当初、Th1細胞は、IFN−γのみを産生するとみなしていた。しかし、図11に示すように、72時間後に、IL−8およびIL−13を検出することができた。抗CD3に刺激されたTh1細胞を、さらにIL−18によって刺激することにより、上記のサイトカインを、より早く、より多く産生することが、最も重要である。このように、IL−18刺激は、Th1細胞からのIFN−γ,IL−8,IL−13の産生を促進し、増加させた。
前述のように、IL−18刺激は、用量依存的に、抗CD3の刺激を受けたTh1細胞からのIFN−γ,IL−13の産生を誘導する(図10)。しかし、Th0細胞が、抗原とIL−18とに対する応答に、IFN−γおよびIL−13を産生する可能性を排除する必要がある。そこで、この可能性を排除するために、IL−18刺激を受けたTh1細胞における、細胞質IFN−γおよび/またはIL−13に陽性のCD4T細胞の割合を、FACS分析によって検討した。その結果を、図12に示す。
図12に示すように、固定化抗CD3とIL−18とにより刺激されたヒトTh1細胞の5.65%が、細胞質INF−γおよびIL−13に陽性であった。ところが、抗CD3のみによって処理したTh1細胞のわずか1.21%が、細胞質INF−γおよびIL−13に陽性であった。細胞内IFN−γまたはIL−13染色の特異性は、アイソタイプが適合するコントロール抗体では染色されないことから示されている。さらに、このような染色は、過剰の組み換えヒトIFN−γ、または、IL−13による前処理によって完全に阻害される(データは示さず)。このように、Th1細胞が、抗CD3とIL−18とにより刺激された時に、IFN−γおよびIL−13を産生した。
次に、IL−18によるIFN−γTh1細胞からのIL−13産生の誘導について検討した。IFN−γを産生するTh1細胞も、抗CD3とIL−18とによる刺激を受けると、IL−13を産生する可能性を検討することは重要である。そこで、IFN−γを発現するヒトTh1細胞から分泌されたIFN−γを、そのTh1細胞の表面に固定化した抗IFN−γ抗体によって得ることにより精製した。
図13は、抗CD3抗体刺激を受けたTh1細胞中の、IFN−γTh1細胞の割合と、IFN−γTh1細胞の陽性選別例とを示す図である。図13に示すように、抗CD3抗体で刺激を受けたTh1細胞の23.1%が、細胞表面でIFN−γを発現した。次に、IFN−γを細胞表面に発現するTh1細胞(IFN−γTh1細胞)を、自動MACSを用いて、陽性選別した。99%の純度でIFN−γCD4Th1細胞を、精製できた。得られたIFN−γTh1細胞を、抗CD3とIL−18と共に培養し、刺激した。図14は、この刺激による、IFN−γTh1細胞からのサイトカインの産生量を示すグラフである。図14に示すように、その刺激によって、IFN−γ,IL−8,およびIL−13の産生は、かなり増加するが、IL−4の産生は増加しなかった。従って、高度に精製されたIFN−γを発現する生きたヒトTh1細胞は、その細胞表面にIL−18Rα鎖を強く発現しており、抗CD3とIL−18とによる刺激を受けると、IFN−γ,IL−8,およびIL−13を産生すると結論づけることができる。この結果は、ヒトTh1細胞が、そのTCR(T細胞抗原レセプター)に抗原が結合し、さらに、IL−18が作用すると、刺激を受けたTh1細胞が、IFN−γ,IL−8,およびIL−13の産生を増強することを示している。なお、図8,10,11,13および14では、独立した4回の実験の代表値であり、各実験では、同様の結果が得られた。
以上のように、Th1細胞が、抗原とIL−18とによって刺激されると、Th1サイトカイン(IFN−γなど),Th2サイトカイン(IL−9,IL−13),ケモカイン(RANTES,MIP−1α,およびGM−CSFを産生する。気管支上皮に対するIFN−γとIL−13との刺激が、最も重篤な気管支喘息を誘導する。従って、実施例1のscFvを投与して、IL−18の活性を阻害することにより、重篤な気管支喘息の治療が可能となる。
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用の可能性】
以上のように、本発明のヒトIL−18に対する抗体およびその断片は、ヒト由来のものである。それゆえ、ヒトIL−18が直接または間接的に関与する疾病の治療において、反復投与や長期投与を行っても、顕著な治療効果と高い安全性とを維持した治療薬を提供できるという効果を奏する。
【配列表】










【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン−18に対する、ヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
【請求項2】
以下の(a)または(b)のポリペプチドからなるH鎖の相補性決定領域と、(c)または(d)のポリペプチドからなるL鎖の相補性決定領域とを含む請求の範囲1に記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
(a)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(b)配列番号4〜6に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。
(c)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(d)配列番号10〜12に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖の相補性決定領域となるポリペプチド。
【請求項3】
以下(e)または(f)のポリペプチドからなるH鎖可変領域と、(g)または(h)のポリペプチドからなるL鎖可変領域とを含む請求の範囲1または2に記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体。
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖可変領域となるポリペプチド。
(g)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(h)配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖可変領域となるポリペプチド。
【請求項4】
以下(e)または(f)のポリペプチドからなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体のH鎖可変領域断片。
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するH鎖可変領域となるポリペプチド。
【請求項5】
以下(g)または(h)のポリペプチドからなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体のL鎖可変領域断片。
(g)配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(h)配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトインターロイキン−18に対するL鎖可変領域となるポリペプチド。
【請求項6】
請求の範囲2に記載のH鎖の相補性決定領域を含むH鎖可変領域断片または請求の範囲4に記載のH鎖可変領域断片と、請求の範囲2に記載のL鎖の相補性決定領域を含むL鎖可変領域断片または請求の範囲5に記載のL鎖可変領域断片とを連結してなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体の1本鎖可変領域断片。
【請求項7】
請求の範囲2に記載のH鎖の相補性決定領域を含むH鎖可変領域断片または請求の範囲4に記載のH鎖可変領域断片、および/または、請求の範囲2に記載のL鎖の相補性決定領域を含むL鎖可変領域断片または請求の範囲5に記載のL鎖可変領域断片に、ヒト由来の定常領域を連結してなる、ヒトインターロイキン−18に対するヒト由来の抗体またはその断片。
【請求項8】
上記抗体の断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scAb、またはscFvFcである請求の範囲7に記載の抗体の断片。
【請求項9】
請求の範囲1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその断片に、修飾剤が結合されてなる修飾抗体。
【請求項10】
請求の範囲1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその断片をコードする遺伝子。
【請求項11】
配列番号1または7に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する請求の範囲10に記載の遺伝子。
【請求項12】
請求の範囲10または11に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
【請求項13】
請求の範囲10または11に記載の遺伝子が導入された形質転換体。
【請求項14】
請求の範囲10または11に記載の遺伝子を宿主に発現させることによって、ヒト由来のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体またはその断片を生産する方法。
【請求項15】
請求の範囲1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその断片、または請求の範囲9に記載の修飾抗体を用いたヒトインターロイキン−18の検出器具。
【請求項16】
請求の範囲1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその断片、または請求の範囲9に記載の修飾抗体を含むヒトインターロイキン−18検出試薬を用いて、被検試料中のヒトインターロイキン−18量を測定する免疫疾患の診断キット。
【請求項17】
請求の範囲16に記載の検出試薬を用いて測定した被検試料中のヒトインターロイキン−18量に基づいて免疫疾患を診断する方法。
【請求項18】
ヒトインターロイキン−18アンタゴニストを有効成分とするヒトインターロイキン18活性阻害剤。
【請求項19】
上記ヒトインターロイキン−18アンタゴニストが、以下のいずれかの物質である請求の範囲18に記載のヒトインターロイキン18活性阻害剤。
i)請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載のヒト抗ヒトインターロイキン−18抗体
ii)請求の範囲4〜8のいずれか1項に記載の抗体の断片
iii)請求の範囲9に記載の修飾抗体
iv)上記i)〜iii)のいずれかに記載の抗体、抗体の断片、または修飾抗体が認識するヒトインターロイキン−18上の抗原決定領域に基づいて分子設計された低分子化合物。
【請求項20】
請求の範囲10または11に記載の遺伝子を含む遺伝子治療剤。
【請求項21】
請求の範囲18または19に記載のヒトインターロイキン−18活性阻害剤、または請求の範囲20に記載の遺伝子治療剤を含む免疫疾患治療剤。
【請求項22】
請求の範囲21に記載の免疫疾患治療薬を投与することによる免疫疾患の治療方法。
【請求項23】
抗原とヒトインターロイキン−18とによる刺激によってヘルパーT1細胞から産生するサイトカインを阻害することを特徴とする請求の範囲21に記載の免疫疾患治療剤。
【請求項24】
ヒトIL−18が関与するアレルギー、炎症、慢性免疫異常疾患に適用するものであることを特徴とする請求の範囲21または23に記載の免疫疾患治療剤。

【国際公開番号】WO2004/097019
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505960(P2005−505960)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006403
【国際出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】