説明

ヒト樹状細胞および上皮細胞205(DEC−205)に結合する抗体

樹状細胞(DC)は免疫系の特殊な細胞である。DCは、細胞表面主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドの形態で抗原を提示することによってTおよびBリンパ球の一次および二次応答を惹起する固有の能力を有する。樹状細胞の抗原提示機能は、ヒト樹状細胞および上皮細胞205受容体(DEC−205)の高レベル発現と相関している。ヒトDEC−205に結合する単離モノクローナル抗体ならびに関連する抗体ベースの組成物および分子を開示する。該抗体を含む薬学的組成物ならびに抗体を使用するための治療方法および診断方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2007年11月7日に出願された米国仮特許出願第61/002253号および2008年9月10日に出願された米国仮特許出願第61/191551号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第61/002253号および米国仮特許出願第61/191551号の内容は、参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
樹状細胞(DC)は免疫系の特殊な細胞である。DCは、細胞表面主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドの形態で抗原を提示することによってTおよびBリンパ球の一次および二次応答を惹起する固有の能力を有する。樹状細胞の抗原提示機能は、ヒト樹状細胞および上皮細胞205受容体(DEC−205)の高レベル発現と相関している(非特許文献1)。
【0003】
DEC−205は、樹状細胞で最初に見出されたが、B細胞、脳毛細血管、骨髄間質、腸絨毛および肺気道の上皮、ならびに末梢リンパ器官のT細胞領域中の胸腺および樹状細胞の皮質上皮上にも見出されるエンドサイトーシス受容体である。DEC−205は、リンパ器官のT細胞領域中のDC上に高レベルで発現される(非特許文献2;非特許文献3)。DEC−205は、in vivoでMHCクラスII産物上の有効な抗原のプロセシングおよび提示を媒介する10の膜外の連続したC型レクチンドメイン(Id.;非特許文献4)を有する(非特許文献5)。DEC−205吸着経路によってDCにターゲティングした少量の注入抗原が固体末梢CD8T細胞寛容を誘導することができることが示されている(非特許文献6)。
【0004】
近年の樹状細胞の特徴づけの進歩にもかかわらず、樹状細胞特異的受容体(DEC−205など)に関してほとんど知られておらず、樹状細胞に特異的な試薬はほとんど利用可能でない。DEC−205などを介して樹状細胞と特異的または優先的に反応する試薬(特に、抗体)は、腫瘍抗原または感染症抗原に対する強い免疫応答を誘導するためのターゲティング薬としての大いなる可能性を有する。これらの細胞特異的ターゲティング薬を、骨髄および臓器移植術または他の自己免疫障害に毒素を送達させて強い抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を排除するように操作することもできる。したがって、かかる樹状細胞特異的結合剤は、大きな治療的および診断的な価値を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jiangら(1995)Nature 375(11)151
【非特許文献2】Kraalら(1986)J.Exp.Med.163:981
【非特許文献3】Witmer−Packら(1995)Cell.Immunol.163:157
【非特許文献4】Mahnkeら(2000)J.Cell Biol.151:673
【非特許文献5】Hawigerら(2001)J.Exp.Med.194:769
【非特許文献6】Bonifazら(2002)J.Exp.Med.196(12):1627
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、ヒトDEC−205に結合して特定の性質を示す単離抗体(例えば、ヒト抗体)を提供する。本発明はまた、かかる抗体を含むワクチン抱合体、二重特異性分子、および治療組成物を提供する。したがって、本発明の抗体および組成物を種々の樹状細胞ターゲティング療法で使用して、例えば、抗原提示を増強し、そして/または種々の標的細胞または病原体に対するT細胞応答(細胞傷害性T細胞(CTL)応答など)を誘導するか、抗原提示細胞(APC)媒介疾患を治療することができる。
【0007】
1つの実施形態では、本発明の抗体は、1つまたは複数の以下の性質を示す:(1)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に少なくとも10−1の親和定数でヒトDEC−205に結合すること、(2)DEC−205を発現するヒト樹状細胞への結合後の内在化、(3)MHCクラスIおよび/またはクラスII経路のいずれかによって適切に媒介される抗原(抗体に連結することができる)に対するヒトT細胞応答(例えば、CD4+およびCD8+(CTL)T細胞応答)の生成または増強、および(4)末梢CD8T細胞寛容の誘導。さらに、抗体は、非ヒト霊長類の樹状細胞または他の種の樹状細胞上のDEC−205と交差反応することができる。なおさらに、抗体は、1つまたは複数のさらなる性質(例えば、以下が含まれる)を適切に示すことができる:(1)ヒトDEC−205の細胞外ドメイン(例えば、システインリッチドメイン、FnIIドメイン、または10のC型レクチン様ドメインのうちの1つまたは複数のうちの1つまたは組み合わせ)上に存在するエピトープへの選択的結合、および(2)細胞内の抗原プロセシング区画への局在化。
【0008】
本発明の抗体の特定の例は、特定のヒト生殖系列を使用する(すなわち、生殖系列遺伝子によってコードされる)が、抗体成熟中に起こる遺伝子の再配列および変異(例えば、体細胞変異)を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む。1つの実施形態では、本発明の抗体の重鎖可変領域は、ヒト生殖系列V3−33遺伝子を使用し、配列番号95と比較して配列番号4、16、28、40、52、76、および88のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。あるいは、重鎖可変領域は、ヒト生殖系列Orph−C16遺伝子を使用し、配列番号96と比較して配列番号64および70のいずれかにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
別の実施形態では、抗体の軽鎖可変領域は、(a)ヒト生殖系列VK1−L15遺伝子を使用し、配列番号94と比較して配列番号10にアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含むか、(b)ヒト生殖系列VK1−L4遺伝子を使用し、配列番号93と比較して配列番号22または82のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含むか、(c)ヒト生殖系列VK3−L6遺伝子を使用し、配列番号92と比較して配列番号34、46、58のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む領域からなる群から選択される。
【0010】
別の実施形態では、重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号7、19、31、43、55、67、73、79、91、およびその保存的配列修飾物(例えば、保存的アミノ酸置換物)からなる群から選択される。抗体は、配列番号13、25、37、49、61、85、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択される軽鎖可変領域CDR3配列をさらに含むことができる。別の実施形態では、重鎖CDR2およびCDR1配列は、それぞれ、配列番号6、18、30、42、54、66、72、78、90、および配列番号5、17、29、41、53、65、71、77、89、ならびにその保存的配列修飾物から選択される。軽鎖CDR2およびCDR1配列は、それぞれ、配列番号12、24、36、48、60、84、および配列番号11、23、35、47、59、83、ならびにその保存的配列修飾物から選択される。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明は、DEC−205に結合し、以下:
(i)配列番号5を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号6を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号7を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号11を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号12を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号13を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物;
(ii)配列番号17を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号18を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号19を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号23を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号24を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号25を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物;
(iii)配列番号29を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号30を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物;
(iv)配列番号41を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号42を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号43を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号48を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号49を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物;
(v)配列番号53を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号54を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号55を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号59を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号60を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号61を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物;
(vi)配列番号77を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号78を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号79を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号83を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号84を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号85を含む軽鎖可変領域CDR3;または
その保存的配列修飾物
からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む単離抗体を提供する。
【0012】
例えば、単離抗体は、ヒトDEC−205に結合し、
配列番号29を含む重鎖可変領域CDR1
配列番号30を含む重鎖可変領域CDR2
配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3
配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR2;および
配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0013】
別の実施形態では、重鎖可変領域CDR3配列は、コンセンサス配列:(A,G,Y,S,P,−)(P,W,S,R)(Y,A,H)FD(Y,L,V)(配列番号99)(ここで、「―」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)から選択されるアミノ酸配列を含む。抗体は、コンセンサス配列:QQ(R,Y,F)(R,N)(T,S,N)(Y,W,−)(P,−)(Y,L,H,−)(T,−)(配列番号102)(ここで、「―」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列をさらに含むことができる。別の実施形態では、重鎖可変領域CDR2配列は、コンセンサス配列:(V,I,F,T,A)I(W,G)(Y,T)(D,G)G(S,G,Y)(N,T)(K,P)Y(Y,A,V)(A,G,−)DSVKG(配列番号98)(ここで、「―」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域CDR2配列は、コンセンサス配列:(D,A)AS(N,S)(R,L)(A,Q,E)(T,S)(配列番号101)から選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、重鎖可変領域CDR1配列は、コンセンサス配列:(I,N,T,S)Y(G,N,A)M(H,Y)(配列番号97)から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域CDR1配列は、コンセンサス配列:RASQ(S,G)(I,V)SS(Y,W,A)LA(配列番号100)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、DEC−205に結合し、以下:
(i)コンセンサス配列:(I,N,T,S)Y(G,N,A)M(H,Y)(配列番号97)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(ii)コンセンサス配列:(V,I,F,T,A)I(W,G)(Y,T)(D,G)G(S,G,Y)(N,T)(K,P)Y(Y,A,V)(A,G,−)DSVKG(配列番号98)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(iii)コンセンサス配列:(A,G,Y,S,P,−)(P,W,S,R)(Y,A,H)FD(Y,L,V)(配列番号99)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(iv)コンセンサス配列:RASQ(S,G)(I,V)SS(Y,W,A)LA(配列番号100)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(v)コンセンサス配列:(D,A)AS(N,S)(R,L)(A,Q,E)(T,S)(配列番号101)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(vi)コンセンサス配列:QQ(R,Y,F)(R,N)(T,S,N)(Y,W,−)(P,−)(Y,L,H,−)(T,−)(配列番号102)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3(ここで、「―」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)
を含む重鎖および軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む単離抗体を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明の単離抗体は、ヒトDEC−205に結合し、配列番号4、16、28、40、52、64、70、76、88、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。抗体は、配列番号10、22、34、46、58、82、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含むことができる。
【0016】
なおさらなる実施形態では、本発明の単離抗体は、ヒトDEC−205に結合し、以下:
(a)それぞれ配列番号4および10ならびにその保存的配列修飾物;
(b)それぞれ配列番号16および22ならびにその保存的配列修飾物;
(c)それぞれ配列番号28および34ならびにその保存的配列修飾物;
(d)それぞれ配列番号40および46ならびにその保存的配列修飾物;
(e)それぞれ配列番号52および58ならびにその保存的配列修飾物;および
(f)それぞれ配列番号76および82ならびにその保存的配列修飾物
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0017】
任意の上記配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれを超える配列同一性を有する重鎖および軽鎖可変領域を含む単離抗体も本発明に含まれる。上記で引用した値の中間の範囲(例えば、任意の上記配列と少なくとも80〜85%、85〜90%、90〜95%、または95〜100%の配列同一性を有する重鎖および軽鎖可変領域)も本発明に含まれることが意図される。
【0018】
別の実施形態では、単離抗体は、ヒトDEC−205に結合し、配列番号4、16、28、40、52、64、70、76、88からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域または重鎖可変領域のフレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が対応する生殖系列残基と置換された配列を含む。抗体は、配列番号10、22、34、46、58、82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域または軽鎖可変領域のフレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が対応する生殖系列残基と置換された配列をさらに含むことができる。置換アミノ酸残基には、抗原と直接非共有結合する残基;CDRに隣接する残基;CDR相互作用残基;VL−VH界面に関与する残基、カノニカル残基、バーニアゾーン残基、または鎖間充填残基が含まれ得る。
【0019】
本発明の抗体とDEC−205への結合を競合する単離抗体も本発明に含まれる。
【0020】
本発明の抗体は、全長(例えば、以下のアイソタイプのいずれか:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、およびIgE)であり得る。あるいは、抗体は、抗原結合部分または単鎖抗体などのフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、単鎖Fvフラグメント、単離相補性決定領域(CDR)、または2つ以上の単離CDRの組み合わせ)であり得る。
【0021】
本発明はまた、抗原(フラグメント、エピトープ、および抗原決定基が含まれる)(病原体成分、腫瘍抗原、または自己抗原など)に連結した本発明の抗体を含む分子抱合体を提供する。例えば、抗原には、腫瘍抗原(βhCG、gp100またはPmel17、CEA、gp100、TRP−2、NY−BR−1、NY−CO−58、MN(gp250)、イディオタイプ、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC−1、MAGE−A3、および高分子量黒色腫関連抗原(HMW−MAA)MART1、メラン−A、NY−ESO−1、MAGE−1、MAGE−3、WT1、Her2、メソセリン、または高分子量黒色腫関連抗原(HMW−MAA)など)が含まれ得る。
【0022】
本明細書中で使用する場合、用語「腫瘍抗原」は、好ましくは、腫瘍細胞上に存在し(または会合し)、正常細胞では典型的にはそうではない任意の抗原または抗原決定基、正常(非腫瘍)細胞よりも大量に腫瘍細胞上に存在するか会合する抗原または抗原決定基、または正常(非腫瘍)細胞で見出されるものと異なる腫瘍細胞上に存在する抗原または抗原決定基を意味する。したがって、この用語には、腫瘍特異的抗原(腫瘍特異的膜抗原が含まれる)、腫瘍関連抗原(腫瘍関連膜抗原が含まれる)、腫瘍上の胚抗原、成長因子受容体、成長因子リガンド、および癌に関連する任意の他の抗原型が含まれる。腫瘍抗原は、例えば、上皮癌抗原、(例えば、乳房、胃腸管、肺)、前立腺特異的癌抗原(PSA)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)、膀胱癌種抗原、肺(例えば、小細胞肺)癌抗原、結腸癌抗原、卵巣癌抗原、脳腫瘍抗原、胃癌抗原、腎細胞癌抗原、膵臓癌抗原、肝臓癌抗原、食道癌抗原、頭頸部癌抗原、または結腸直腸癌抗原であり得る。
【0023】
用語「フラグメント」は、全長タンパク質またはポリペプチドの一部(例えば、約8アミノ酸長と約1500アミノ酸長との間、適切には約8アミノ酸長と約745アミノ酸長との間、適切には約8〜約300アミノ酸長(例えば、約8〜約200アミノ酸、約10〜約50アミノ酸長、または100アミノ酸長))であるアミノ酸配列をいう。
【0024】
別の実施形態では、分子複合体は、治療薬(細胞毒性薬、免疫抑制薬、または化学療法薬など)をさらに含む。
【0025】
本発明はまた、抗体と異なる結合特異性を有する第2の機能的部分に連結した本発明の抗体を含む二重特異性分子を提供する。
【0026】
本明細書中に記載の抗体、分子抱合体、または二重特異性分子および薬学的に有効なキャリアを含む組成物も提供する。組成物は、治療薬(例えば、免疫抑制薬または本発明の抗体と異なる抗体)をさらに含むことができる。
【0027】
本発明の抗体をコードする核酸分子ならびにかかる核酸を含む発現ベクターおよびかかる発現ベクターを含む宿主細胞も本発明に含まれる。さらに、本発明は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス(このマウスは本発明の抗体を発現する)ならびにかかるマウスから調製されたハイブリドーマ(このハイブリドーマは本発明の抗体を産生する)を提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、抗原に連結した細胞上の受容体に結合する分子(例えば、前述のDEC−205抗体)の投与による、被験体における細胞(例えば、抗原提示可能な細胞(末梢血単核球(PBMC)、単球(THP−1など)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCLなど)、および単球由来DCなど))への抗原のターゲティング方法を提供する。1つの実施形態では、ターゲティングされた細胞(B細胞であり得る)は、MHCクラスI拘束性T細胞を刺激する。
【0029】
本発明の抗体および他の組成物を使用して、被験体における抗原に対する免疫応答(例えば、T細胞媒介性免疫応答)を誘導または増強することもできる。したがって、1つの実施形態では、本発明は、抗原と抗原提示細胞上の受容体(例えば、ヒトDEC−205)に結合する抗体との抱合体の形成による、抗原に対するCTL応答を誘導または増強する方法を提供する。次いで、抗原に対するCTL応答(例えば、CD8細胞傷害性T細胞によって媒介される応答)を誘導または増強する様式で抗原を内在化し、プロセシングし、T細胞に提示するように、抱合体をヒトDEC−205を発現する細胞とin vivoまたはex vivoのいずれかで接触させる。別の実施形態では、これは、抗原に対するヘルパーT細胞応答(例えば、CD4ヘルパーT細胞によって媒介される応答)を誘導するのにも役立つ。したがって、免疫応答を、MHCクラスI経路およびMHCクラスII経路の両方を介して誘導することができる。DEC−205を発現する細胞を、アジュバント、樹状細胞の増殖を刺激するサイトカイン、および/または免疫応答をさらに増強するための免疫賦活薬と接触させることもできる。
【0030】
別の実施形態では、(a)抗体とDEC−205との間の複合体を形成させる条件下でサンプルを本発明の抗体と接触させることおよび(b)サンプル中の抗体とDEC−205との間の複合体の形成を検出することによる、サンプル中のDEC−205またはDEC−205を発現する細胞の存在を検出する方法を提供する。
【0031】
本発明の組成物(例えば、抗体、分子抱合体、多重特異性分子、および二重特異性分子)および、任意選択的に、使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬(サイトカインまたは補体など)または1つまたは複数の本発明のさらなるヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体と異なる樹状細胞上のエピトープに結合する補体活性を有するヒト抗体)をさらに含むことができる。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1A〜1Iは、LSR(商標)装置(BD Biosciences、NJ、USA)を使用した蛍光分析によるヒトDEC−205を発現するCHO−S細胞へのヒト抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10)の結合を示すグラフを含む。
【図2】図2A〜2Iは、フローサイトメトリーによるヒト樹状細胞上のDEC−205へのヒト抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10)の結合を示すグラフを含む。
【図3】図3は、ELISAを使用してDEC−205へのヒト抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10)の結合を示したグラフである。
【図4】図4A〜4Cは、共焦点顕微鏡法を使用してコントロール(FITC−ヒトIgG1)と比較したFITC標識HuMab(FITC−3G9−2D2)の樹状細胞への内在化を示す。
【図5】図5は、抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5C3−2−3F6、1E6−3D10)のVHおよびVK配列を用いたヒトVHおよびVK生殖系列配列のアラインメントである。図は、それぞれ、出現順に、配列番号92、34、46、58、93、82、22、94、10、95、4、16、103〜105、76、88、96、106、および70を開示する。
【図6】図6は、ヒト抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、3C7−3A3、2D3−1F5−2A9、1E6−3D10、5C3−2−3F6、5D12−5G1)のVH CDR1、CDR2、およびCDR3配列のアラインメントを示す。
【図7】図7は、ヒト抗DEC−205抗体(3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、3C7−3A3、5C3−2−3F6)のヒト抗DEC−205 HuMab VK CDR1、CDR2、およびCDR3配列のアラインメントを示す。
【図8】図8は、抗DEC−205/抗原融合APCターゲティングしたワクチン構築物の例の略図を示す。
【図9A】図9AおよびBは、末梢血の単核球(PBMC)、単球(THP−1)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCL)、および単球由来DCにおける3G9−βhCG APCターゲティングしたワクチン抱合体を使用した抗原特異的活性を示すグラフを含む。
【図9B】図9AおよびBは、末梢血の単核球(PBMC)、単球(THP−1)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCL)、および単球由来DCにおける3G9−βhCG APCターゲティングしたワクチン抱合体を使用した抗原特異的活性を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒトDEC−205に結合する抗体(例えば、ヒト抗体)を提供する。一定の実施形態では、抗体は、種々の機能的性質(例えば、表面プラズモン共鳴によって測定したところ、少なくとも10−1の親和定数でヒトDEC−205に結合すること、DEC−205を発現するヒト樹状細胞への結合後の内在化、抗体に連結することができる抗原に対するヒトT細胞応答(例えば、CD4+、CD8+(CTL)、またはNKT細胞応答)(例えば、MHCクラスIおよびクラスII経路の両方によって媒介されるCTL応答)の生成および増強、樹状細胞中の抗原プロセシング区画への局在化、末梢CD8T細胞寛容の誘引、または非ヒト霊長類または他の種の樹状細胞上のDEC−205との交差反応)を示す。他の実施形態では、抗体は、特定のヒト生殖系列遺伝子を使用し、特定の構造的特徴(特定のCDR配列など)を含む、重鎖および軽鎖可変領域を含む。本発明は、さらに、かかる抗体、かかる抗体を含む分子抱合体および二重特異性分子抗体、ならびに抗体を含む組成物の作製方法を提供する。本発明はまた、例えば、本発明の抗DEC−205抗体の使用による、in vitroまたはin vivoのいずれかでの抗原提示細胞(例えば、末梢血単核球(PBMC)、単球(THP−1など)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCLなど)、および単球由来DCへの抗原のターゲティング方法を提供する。本発明の方法には、被験体における抗原に対する免疫応答(例えば、T細胞媒介性免疫応答)を誘導および増強する方法も含まれる。かかる方法は、MHC−I抱合体および/またはMHC−II抱合体の成分としての抗原提示細胞(例えば、DEC−205)上の受容体を介した抗原提示を含む(例えば、T細胞応答は、CD4+およびCD8+T細胞の両方または細胞傷害性T細胞またはヘルパーT細胞によって媒介される)。1つの実施形態では、ターゲティングされた細胞(B細胞であり得る)は、MHCクラスI拘束性T細胞を刺激する。
【0035】
本発明をより容易に理解することができるように、一定の用語を最初に定義する。さらなる定義を、詳細な説明に記載する。
【0036】
用語「ヒト樹状細胞および上皮細胞205受容体」(DEC−205)には、細胞によって天然に発現されるDEC−205の任意のバリアントまたはイソ型が含まれる(例えば、受入番号AAC17636でGENBANK(登録商標)に寄託されたヒトDEC−205および受入番号AAL81722でGENBANK(登録商標)に寄託されたマウスDEC−205)。したがって、本発明のヒト抗体は、ヒト以外の種由来のDEC−205と交差反応することができる。あるいは、抗体はヒトDEC−205に特異的であり得、他の種といかなる交差反応示さないかもしれない。DEC−205またはその任意のバリアントおよびイソ型を、これらを天然に発現する細胞または組織(例えば、ヒト、マウス、およびカニクイザルの細胞)から単離することができるか、当該分野で周知の技術および/または本明細書中に記載の技術を使用して組換えで産生することができる。
【0037】
Genbank(登録商標)(受入番号AAC17636A)は、以下のヒトDEC−205のアミノ酸配列を報告している(配列番号1):
【0038】
【数1】

ヒトDEC−205の主なドメインを以下のように示すことができる。
N−CR−FNII−CTLD1−CTLD2−CTLD3−CTLD4−CTLD5−CTLD6−CTLD7−CTLD8−CTLD9−CTLD10−TMC
式中、NはN末端であり、CRは「Cysリッチ」ドメインを示し、FNIIは「フィブロネクチンII型」ドメインを示し、CTLD1〜CTLD10は10の「C型レクチン様」ドメインを示し、TMCは膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを示す。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「樹状細胞」には、未熟および成熟樹状細胞ならびに樹状細胞に分化することができる関連骨髄性前駆細胞または関連抗原提示細胞(例えば、単球およびマクロファージ)(樹状細胞と同様に抗原を発現するという点で)が含まれる。本明細書中で使用する場合、用語「関連する」には、一般的な前駆細胞または細胞系譜由来の細胞が含まれる。1つの実施形態では、樹状細胞への本発明の抗体の結合は、定義された機能を有する分子または細胞(例えば、腫瘍細胞、エフェクター細胞、微生物病原体)の樹状細胞へのターゲティングによって樹状細胞の成長および/または機能への影響を媒介する。さらなる実施形態では、樹状細胞への本発明の抗体の結合により、樹状細胞によって抗体が内在化する。
【0040】
「MHC分子」には、2つの分子型(MHCクラスIおよびMHCクラスII)が含まれる。MHCクラスI分子は特異的CD8T細胞に抗原を提示し、MHCクラスII分子は特異的CD4T細胞に抗原を提示する。APCに外因的に送達された抗原は、主にMHCクラスIIとの会合のためにプロセシングされる。対照的に、APCに内因的に送達された抗原は、主にMHCクラスIとの会合のためにプロセシングされる。しかし、特異的条件下で、DCは、MHCクラスII分子に加えてMHCクラスI分子への結合のために内部区画に外因性抗原を接近させる固有の能力を有する。この過程は、「クロスプライミング」または「交差提示」と呼ばれる。
【0041】
本明細書中で使用する場合、用語「免疫賦活薬」は、APC(DCおよびマクロファージなど)を刺激することができる化合物をいう。例えば、本発明での使用に適切な免疫賦活薬は、APCの成熟過程が加速され、APC増殖が増加し、そして/または共刺激分子(例えば、CD80、CD86、ICAM−1、MHC分子、およびCCR7)および炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−6、IL−12、IL−15、およびIFN−γ)の動員または放出が上方制御されるようにAPCを刺激することができる。適切な免疫賦活薬はまた、T細胞増殖を走化させることができる。かかる免疫賦活薬には、CD40リガンド;サイトカイン(IFN−α、IFN−β、IFN−γ、およびIL−2など);コロニー刺激因子(G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)およびGM−CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)など);抗CTLA−4抗体;LPS(内毒素);ssRNA;dsRNA;カルメット・ゲラン桿菌(BCG);塩酸レバミソール;および静脈内免疫グロブリンが含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、免疫賦活薬は、Toll様受容体(TLR)アゴニストであり得る。例えば、免疫賦活薬は、TLR3アゴニスト(二本鎖イノシン:シトシンポリヌクレオチド(Poly I:C(例えば、Hemispherx Bipharma,PA,USのAmpligen(商標)として入手可能))またはPoly A:U)など);TLR4アゴニスト(モノホスホリルリピドA(MPL)またはRC−529(例えば、GSK、UKから入手可能)など);TLR5アゴニスト(フラジェリンなど);TLR7またはTLR8アゴニスト(イミダゾキノリンTLR7またはTLR8アゴニスト(例えば、イミキモド(例えば、Aldara(商標))またはレシキモドおよび関連イミダゾキノリン薬(例えば、3M Corporationから入手可能))など);またはTLR9アゴニスト(非メチル化CpGモチーフ(いわゆる「CpGs」(例えば、Coley Pharmaceuticalから入手可能))を有するデオキシヌクレオチドなど)であり得る。かかる免疫賦活薬を、抗体および本発明の構築物と同時、個別、または連続的に投与することができ、抗体および構築物に物理的に連結することもできる。
【0042】
本明細書中で使用する場合、用語「連結する」は、2つ以上の分子の会合をいう。連結は、共有性または非共有性であり得る。連結はまた、遺伝的であり得る(すなわち、組換え融合する)。かかる連結を、広範な種々の当該分野で認識された技術(化学的抱合および組換えタンパク質産生など)を使用して行うことができる。
【0043】
本明細書中で使用する場合、用語抗原「交差提示」は、APC上のMHCクラスIおよびクラスII分子を介したT細胞への外因性タンパク質抗原の提示をいう。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「T細胞媒介応答」は、T細胞(エフェクターT細胞(例えば、CD8細胞)およびヘルパーT細胞(例えば、CD4細胞)が含まれる)によって媒介される任意の応答をいう。T細胞媒介応答には、例えば、T細胞の細胞傷害性および増殖が含まれる。
【0045】
本明細書中で使用する場合、用語「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答」は、細胞傷害性T細胞によって誘導される免疫応答をいう。CTL応答は、主にCD8T細胞によって媒介される。
【0046】
本明細書中で言及される用語「抗体」には、全抗体および任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)またはその単鎖が含まれる。「抗体」は、1つの好ましい実施形態では、ジスルフィド結合によって相互連結した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖またはその抗原結合部分を含む糖タンパク質をいう。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVと略す)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。V領域およびV領域を、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分類することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端で以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Clq)が含まれる)への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語、抗体の「抗原結合部分」(または簡潔に「抗体部分」)は、抗原(例えば、ヒトDEC−205)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能を全長抗体のフラグメントによって実行することができることが示されている。用語、抗体の「抗原結合部分」内に含まれる結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント(V、V、CL、およびCH1ドメインからなる1価のフラグメント);(ii)F(ab’)フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント);(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(v)VドメインからなるdAbフラグメント(Wardら,(1989)Nature 341:544−546);および(vi)単離相補性決定領域(CDR)または(vii)合成リンカーによって任意選択的に連結することができる2つ以上の単離CDRの組み合わせが含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VおよびV)が個別の遺伝子によってコードされるにもかかわらず、組換え法を使用して合成リンカーによってこれらを連結して単一のタンパク質鎖として作製することができ、ここで、VおよびV領域が対合して1価の分子(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)を形成する。かかる単鎖抗体は、用語、抗体の「抗原結合部分」の範囲内に含まれることも意図される。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来技術を使用して得られ、フラグメントをインタクトな抗体と同一の様式での有用性についてスクリーニングする。抗原結合部分を、組換えDNA技術またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的または化学的切断によって産生することができる。
【0048】
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、種々の方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結が含まれる)によって産生することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら,J.Immunol.148,1547−1553(1992)を参照のこと。
【0049】
本明細書中で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体をいう。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および任意選択的な定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体をいう。1つの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体を、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得たB細胞を含むハイブリドーマによって産生する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、用語「組換えヒト抗体」には、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離された全てのヒト抗体((a)ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入または染色体導入された動物(例えば、マウス)またはこれから調製されたハイブリドーマから単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞(例えば、トランスフェクトーマ)から単離した抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体など)が含まれる。かかる組換えヒト抗体は、生殖系列遺伝子によってコードされる特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を使用する可変領域および定常領域を含むが、例えば、抗体成熟中に起こるその後の再配置および変異を含む。当該分野で公知のように(例えば、Lonberg(2005)Nature Biotech.23(9):1117−1125を参照のこと)、可変領域は、再配置されて外来抗原に特異的な抗体を形成する種々の遺伝子によってコードされる抗原結合ドメインを含む。再配置に加えて、可変領域を、外来抗原に対する抗体の親和性を増加させるための複数の単一アミノ酸変化(体細胞変異または超変異と呼ばれる)によってさらに改変することができる。定常領域は、抗原に対するさらなる応答を変化させるであろう(すなわち、アイソタイプスイッチ)。したがって、抗原に応答して軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする再配置された体細胞変異核酸分子は元の核酸分子と配列が同一でなくて良いが、その代わりに、実質的に同一であるか類似しているであろう(すなわち、少なくとも80%同一)。
【0051】
用語「ヒト抗体」には、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列の可変領域および定常領域(存在する場合)を有する抗体が含まれる。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸配列(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的変異誘発またはin vivoでの体細胞変異によって導入される変異)を含むことができる(Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859);Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Lonberg,N.and Huszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93,およびHarding,F.and Lonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546を参照のこと)。しかし、用語「ヒト抗体」には、別の哺乳動物種(マウスなど)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフティングされた抗体(すなわち、ヒト化抗体)は含まれない。
【0052】
本明細書中で使用する場合、「異種抗体」を、かかる抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物に関して定義する。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物からならず、一般にトランスジェニック非ヒト動物以外の種に由来する生物で見出されるものに対応するアミノ酸配列またはコードする核酸配列を有する抗体をいう。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、ヒトDEC−205に特異的に結合する単離抗体は、ヒトDEC−205以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、エピトープに特異的に結合する単離抗体は、異なる種由来の他のDEC−205タンパク質と交差反応性を有することができる。しかし、抗体は、好ましくは、ヒトDEC−205に常に結合する。さらに、単離抗体は、典型的には、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まない。本発明の1つの実施形態では、異なるDEC−205特異性を有する「単離」抗体の組み合わせを、充分に定義された組成物中で組み合わせる。
【0054】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位をいう。エピトープを、タンパク質の三次折り畳みによって並置された連続アミノ酸または不連続のアミノ酸の両方から形成することができる。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露の際に保持されるのに対して、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理の際に喪失される。エピトープは、典型的には、固有の空間的高次構造中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のアミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造の決定方法には、当該分野の技術および本明細書中に記載の技術(例えば、X線結晶学および二次元核磁気共鳴(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照のこと))が含まれる。この場合、エピトープは、好ましくは、ヒトDEC−205の細胞外ドメイン(例えば、システインリッチドメイン、FnIIドメイン、またはヒトDEC−205の10のC型レクチン様ドメインのうちの1つまたは複数の1つまたは組み合わせ)中に存在する。
【0055】
本明細書中で使用する場合、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、および「特異的に結合する」は、所定の抗原上のエピトープに結合する抗体をいう。典型的には、抗体は、分析物として組換えヒトDEC−205およびリガンドとして抗体を使用したBIACORE2000装置での表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーによって決定した場合に、およそ10−7M未満(およそ10−8M、10−9M、もしくは10−10M未満など)またはそれ以下の平衡解離定数(K)で結合し、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのその親和性の少なくとも2倍の親和性で所定の抗原に結合する。句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」を、本明細書中で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に使用する。
【0056】
同一のエピトープに結合する抗体および/または本明細書中に記載の抗体とヒトDEC−205への結合を競合する抗体も本発明に含まれる。同一のエピトープを認識するか結合を競合する抗体を、日常的な技術を使用して同定することができる。かかる技術には、例えば、一方の抗体が標的抗原への別の抗体の結合を遮断する能力を示す免疫アッセイ(すなわち、競合的結合アッセイ)が含まれる。競合的結合を、試験下で免疫グロブリンがDEC−205などの共通抗原への基準抗体の特異的結合を阻害するアッセイで決定する。多数の競合的結合アッセイ型が公知である。例えば、固相直接または間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら,Methods in Enzymology 9:242(1983)を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら,J.Immunol.137:3614(1986)を参照のこと);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと);I−125標識を使用した固相直接標識RIA(Morelら,Mol.Immunol.25(1):7(1988)を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら,Virology 176:546(1990));および直接標識RIA(Moldenhauerら,Scand.J.Immunol.32:77(1990))。典型的には、かかるアッセイは、これら(非標識試験免疫グロブリンおよび標識基準免疫グロブリン)のいずれかを保有する固体表面または細胞に結合した精製抗原の使用を含む。競合的阻害を、試験免疫グロブリンの存在下での固体表面または細胞に対する標識の結合量の決定によって測定する。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合する抗体が過剰に存在する場合、この抗体は、共通の抗原への基準抗体の特異的結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、またはそれを超えて阻害するであろう。
【0057】
他の技術には、例えば、エピトープマッピング法(エピトープの原子分解が得られる抗原:抗体複合体結晶のX線分析など)が含まれる。他の方法は、抗原フラグメントまたは抗原の変異したバリエーションへの抗体の結合をモニタリングし、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾に起因する結合の喪失がエピトープ成分を示すとしばしば見なされる。さらに、コンピュータによる組み合わせエピトープマッピング方法も使用することができる。これらの方法は、目的の抗体がコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリー由来の特異的な短いペプチドをアフィニティ分離する能力に依存する。次いで、ペプチドを、ペプチドライブラリーをスクリーニングするために使用する抗体に対応するエピトープの決定のためのリードと見なす。エピトープマッピングのための計算アルゴリズムも開発されており、これにより、高次構造の不連続なエピトープがマッピングされることが示されている。
【0058】
本明細書中で使用する場合、用語「K」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数をいうことを意図する。典型的には、本発明のヒト抗体は、分析物としての組換えヒトDEC−205およびリガンドとしての抗体を使用したBIACORE2000装置での表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーによって決定した場合に解離平衡定数(K)およそ10−8M以下(10−9Mまたは10−10M未満またはさらに低い値など)でDEC−205に結合する。
【0059】
本明細書中で使用する場合、用語「kd」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についてのoff速度定数をいうことが意図される。
【0060】
本明細書中で使用する場合、用語「ka」は、抗体の抗原との会合についてのon速度定数をいうことが意図される。
【0061】
本明細書中で使用する場合、用語「EC50」は、in vitroまたはin vivoアッセイのいずれかにおいて、最大応答の50%(すなわち、最大応答とベースラインとの間の中間)である応答を誘導する抗体またはその抗原結合部分の濃度をいう。
【0062】
本明細書中で使用する場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgGl)をいう。1つの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、IgG1アイソタイプの抗体である。別の実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、IgG2アイソタイプの抗体である。
【0063】
用語「固定化DEC−205に結合する」は、本発明のヒト抗体が、例えば、細胞表面上に発現したか固体支持体に付着したDEC−205に結合する能力をいう。
【0064】
本明細書中で使用する場合、用語「交差反応する」は、本発明の抗体が異なる種由来のDEC−205に結合する能力をいう。例えば、ヒトDEC−205に結合する本発明の抗体はまた、カニクイザルDEC−205に結合することができる。本明細書中で使用する場合、交差反応性を、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)における精製抗原との特異的反応性またはDEC−205を生理学的に発現する細胞への結合、そうでなければ機能的相互作用の検出によって測定する。交差反応性の決定方法は、例えば、Biacore(商標)2000SPR装置(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用したBiacore(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析による本明細書中に記載の標準的な結合アッセイまたは例えば、フローサイトメトリー技術による関連する種由来のDEC−205を発現する細胞(例えば、樹状細胞)への結合を含む。
【0065】
本明細書中で使用する場合、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス(すなわち、アイソタイプ)があるIgクラスから他のIgクラスの1つに変化する現象をいう。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「非スイッチングアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチングが起こらなかった場合に産生される重鎖のアイソタイプクラスをいう。非スイッチングアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能的に再配置されたVDJ遺伝子からすぐ下流の第1のCH遺伝子である。アイソタイプスイッチングは、古典的または非古典的アイソタイプスイッチングとして分類されている。古典的アイソタイプスイッチングは、導入遺伝子中の少なくとも1つのスイッチ配列領域を含む組換え事象によって起こる。非古典的アイソタイプスイッチングは、例えば、ヒトσμとヒトΣμとの間の相同組換えによって起こり得る(δ関連欠失)。別の非古典的スイッチング機構(特に、導入遺伝子間および/または染色体間組換えなど)が起こり、アイソタイプスイッチングを実施することができる。
【0067】
本明細書中で使用する場合、用語「スイッチ配列」は、スイッチ組換えを担うDNA配列をいう。「スイッチドナー」配列(典型的には、μスイッチ領域)は、スイッチ組換え中に欠失されるべき構築物領域の5’(すなわち、上流)であろう。「スイッチアクセプター」領域は、欠失されるべき構築領域と置換定常領域(例えば、γ、εなど)との間に存在するであろう。組換えが常に起こる特異的部位が存在しないので、最終遺伝子配列は、典型的には、構築物から予想不可能であろう。
【0068】
本明細書中で使用する場合、「グリコシル化パターン」を、タンパク質、より詳細には免疫グロブリンタンパク質に共有結合する炭水化物単位のパターンと定義する。異種抗体のグリコシル化パターンが、導入遺伝子のCH遺伝子が由来する種よりも非ヒトトランスジェニック動物の種におけるグリコシル化パターンに類似すると当業者に認識される場合、異種抗体のグリコシル化パターンを、非ヒトトランスジェニック動物種によって産生される抗体上で天然に起こるグリコシル化パターンに実質的に類似すると特徴づけることができる。
【0069】
本明細書中で使用する場合、用語「天然に存在する」は、対象物に適用する場合、対象物を天然に見出すことができるという事実をいう。例えば、供給源から事実上単離することができ、実験でヒトによって意図的に改変しなかった生物(ウイルスが含まれる)中に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0070】
本明細書中で使用する場合、用語「再配置された」は、それぞれ完全なVドメインまたはVドメインを本質的にコードする高次構造中のD−JまたはJセグメントに直接隣接してVセグメントが配置される重鎖または軽鎖の免疫グロブリン遺伝子座の立体配置をいう。再配置された免疫グロブリン遺伝子の遺伝子座を、生殖系列DNAとの比較によって同定することができる。再配置された遺伝子座は、少なくとも1つの組換えヘプタマー/ノナマー相同性エレメントを有するであろう。
【0071】
Vセグメントに関して本明細書中で使用する場合、用語「非再配列」または「生殖系列 立体配置」は、DまたはJセグメントに直接隣接するようにVセグメントが組換えられていない立体配置をいう。
【0072】
本明細書中で使用する場合、用語「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0073】
DEC−205に結合する抗体または抗体の一部(例えば、V、V、CDR3)をコードする核酸に関して本明細書中で使用する場合、用語「単離核酸分子」は、抗体または抗体の一部をコードするヌクレオチド配列がDEC−205以外の抗原に結合する抗体または抗体の一部をコードする他のヌクレオチド配列を含まない核酸分子をいうとを意図し、この他の配列はヒトゲノムDNA中の核酸に天然に隣接し得る。例えば、配列番号2、3(シグナルペプチドを含む)/4(シグナルペプチドを含まない)、および配列番号8、9(シグナルペプチドを含む)/10(シグナルペプチドを含まない)は、それぞれ、本発明のヒト抗DEC−205抗体3D6−2F4の重鎖(V)および軽鎖(V)可変領域を含むヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に対応する。特に、配列番号2および3/4は、それぞれ、3D6−2F4抗体のVのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に対応し、配列番号8および9/10は、それぞれ、3D6−2F4抗体のVのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に対応する。
【0074】
本発明はまた、配列番号2〜91に記載の配列の「保存的配列修飾物」(すなわち、ヌクレオチド配列によってコードされるかアミノ酸配列を含む抗体の抗原への結合を排除しないヌクレオチド配列およびアミノ酸配列修飾物)を含む。かかる保存的配列修飾物には、保存的ヌクレオチドおよびアミノ酸置換物ならびにヌクレオチドおよびアミノ酸付加物および欠失物が含まれる。例えば、修飾物を、当該技術で公知の標準的技術(部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発など)によって配列番号2〜91に導入することができる。保存的アミノ酸置換物には、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換する置換物が含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ヒト抗DEC−205抗体中の予想される非必須アミノ酸残基を、好ましくは、同一側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基と置換する。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換物を同定する方法は当該分野で周知である(例えば、Brummellら,Biochem.32:1180−1187(1993);Kobayashiら Protein Eng.12(10):879−884(1999);およびBurksら Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412−417(1997)を参照のこと)。
【0075】
あるいは、別の実施形態では、飽和変異誘発などによって抗DEC−205抗体コード配列の全てまたは一部に沿って変異を無作為に導入することができ、得られた修飾抗DEC−205抗体を結合活性についてスクリーニングすることができる。
【0076】
核酸について、用語「実質的相同性」は、適切にアラインメントして比較した場合に2つの核酸またはその指定配列が、適切なヌクレオチド挿入物または欠失物と少なくとも約80%のヌクレオチド、通常少なくとも約90%〜95%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約98%〜99.5%のヌクレオチドが同一であることを示す。あるいは、選択的ハイブリッド形成条件下でセグメントが鎖の相補物とハイブリッド形成する場合に実質的相同性を示す。
【0077】
2配列間の同一率は、2つの配列の至適なアラインメントのために導入する必要があるギャップ数および各ギャップの長さを考慮して、配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、相同率=同一の位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較および2配列間の同一率の決定を、以下の非限定的な例に記載の数学アルゴリズムを使用して行うことができる。
【0078】
2ヌクレオチド配列間の同一率を、NWSgapdna.CMP行列およびギャップウェイト40、50、60、70、または80、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を使用したGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)中のGAPプログラムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一率を、PAM120ウェイト残基表、ギャップレングスペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用した、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers and W.Miller(CABIOS,4:11−17(1989))のアルゴリズムを使用して決定することもできる。さらに、アミノ2酸配列間の同一率を、Blossum 62行列またはPAM250行列のいずれか、およびギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を使用した、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)中のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0079】
本発明の核酸配列およびタンパク質配列を、例えば、関連配列を同定するための公共データベースで検索するための「クエリー配列」としてさらに使用することができる。かかる検索を、Altschul,ら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を使用して行い、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を使用して行い、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸を得ることができる。比較のためのギャップアラインメントを得るために、Altschulら,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載のようにGapped BLASTを使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0080】
核酸は、ホールセル、細胞溶解物、または部分精製された形態もしくは実質的に純粋な形態中に存在し得る。標準的な技術(アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動、および当該分野で周知の他の技術が含まれる)によって他の細胞成分または他の夾雑物(例えば、他の細胞核酸またはタンパク質)から精製された場合、核酸は、「単離される」か「実質的に純粋になる」。F.Ausubel,ら,ed.Current Protocols in 分子生物学,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)を参照のこと。
【0081】
未変性配列(修飾された制限部位などを除く)中であることが多いが、cDNA、ゲノム、またはその混合物のいずれか由来の本発明の核酸組成物を、遺伝子配列を得るための標準的な技術にしたがって変異させることができる。コード配列のために、必要に応じて、これらの変異はアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、未変性のV配列、D配列、J配列、定常配列、スイッチ配列、および本明細書中に記載の他のかかる配列と実質的に同一であるか、これらに由来するDNA配列を意図する(ここで、「由来する」は、ある配列が別の配列と同一であるか別の配列から修飾されていることを示す)。
【0082】
核酸が別の核酸配列と機能的な関係におかれている場合、核酸は「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、これらが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列に関して、「作動可能に連結された」は、連結されるDNA配列が連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、連続し、且つ読み枠中に存在することを意味する。スイッチ配列について、「作動可能に連結された」は、配列がスイッチ組換えすることができることを示す。
【0083】
本明細書中で使用する場合、用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子をいうことが意図される。1つのベクター型は「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントをライゲーションすることができる環状の二本鎖DNAループをいう。別のベクター型は、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができるウイルスベクターである。一定のベクターは、ベクターが導入される宿主細胞中で自律複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物非エピソームベクター)を宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、一定のベクターは、ベクターに作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。かかるベクターを、本明細書中で、「組換え発現ベクター」(または、簡潔に、「発現ベクター」)という。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるので、本明細書中で、「プラスミド」および「ベクター」を交換可能に使用することができる。しかし、本発明は、等価な機能を果たすかかる他の発現ベクター形態(ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など)が含まれることを意図する。
【0084】
本明細書中で使用する場合、用語「組換え宿主細胞」(または、簡潔に、「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞をいうことが意図される。かかる用語が特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫もいうことが意図されると理解すべきである。変異または環境の影響のいずれかによって一定の修飾が後世で起こり得るので、かかる子孫は、実際、親細胞と同一でなくてよいが、本明細書中で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0085】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、その表面上でMHCと複合体形成した外来抗原を示す細胞である。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識する。APCの例には、樹状細胞(DC)、末梢血単核球(PBMC)、単球(THP−1など)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCLなど)、および単球由来樹状細胞(DC)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかのAPCは、食作用または受容体媒介エンドサイトーシスのいずれかによって抗原を内在化する。APC受容体の例には、C型レクチン(ヒト樹状細胞および上皮細胞205受容体(DEC−205)など)およびヒトマクロファージマンノース受容体が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
用語「抗原提示」は、APCが抗原を捕捉し、例えば、MHC−I抱合体および/またはMHC−II抱合体の成分としてT細胞によって認識することができる過程をいう。
【0087】
用語「免疫応答の誘導」および「免疫応答の増強」を交換可能に使用し、これらは、特定の抗原に対する免疫応答(すなわち、受動的応答または適応応答のいずれか)の刺激をいう。
【0088】
本明細書中で使用する場合、用語「treat」、「treating」、および「treatment」は、本明細書中に記載の治療手段または予防手段をいう。「治療」方法は、障害または再発した障害を防止、治癒、遅延するか、その重症度を軽減するか、1つまたは複数の症状を改善するためか、かかる治療の非存在下で予想される生存を超えた被験体の生存を延長するためのかかる治療を必要とする被験体(例えば、特定の抗原に対する免疫応答の増強を必要とする被験体またはかかる障害を最終的に獲得し得る被験体)への本発明のヒト抗体の投与を使用する。
【0089】
用語「有効用量」または「有効投薬量」を、所望の効果を達成するか少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義する。用語「治療有効用量」を、既に疾患を罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒するか少なくとも部分的に停止させるのに十分な量と定義する。この使用に有効な量は、治療される障害の重症度および患者自身の免疫系の一般的状態に依存するであろう。
【0090】
用語「患者」には、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物被験体が含まれる。
【0091】
本明細書中で使用する場合、用語「被験体」には、任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。例えば、本発明の方法および組成物を使用して、免疫障害を有する被験体を治療することができる。用語「非ヒト動物」には、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物および非哺乳動物(非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類など)が含まれる。
【0092】
本発明の種々の態様を、以下の小節にさらに詳細に記載する。
【0093】
I.DEC−205に対する抗体の産生
本発明は、抗体(例えば、DEC−205に結合する完全なヒト抗体(例えば、ヒトDEC−205))を含む。DEC−205に結合する例示的なモノクローナル抗体には、3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、5C3−2−3F6、1E6−3D10、および3A4−1C10が含まれる。
【0094】
本発明のモノクローナル抗体を、種々の公知の技術(Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)に記載の標準的な体細胞ハイブリッド形成技術など)を使用して産生することができる。体細胞ハイブリッド形成手順が好ましいが、原則として、他のモノクローナル抗体の産生技術(例えば、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性の形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用したファージディスプレイ技術)も使用することができる。
【0095】
したがって、1つの実施形態では、ヒトDEC−205に結合する抗体の産生のためにハイブリドーマ法を使用する。この方法では、マウスまたは他の適切な宿主動物を適切な抗原で免疫化してリンパ球を誘発し、免疫化のために使用される抗原に特異的に結合する抗体を産生するか産生することができる。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化することができる。次いで、リンパ球を、適切な融合剤(ポリエチレングリコールなど)を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成することができる(Goding,Monoclonal Antibody:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地を、抗原に指向するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準的な方法によって成長させることができる(Goding,Monoclonal Antibody:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この手順に適切な培養培地には、例えば、D−MEM培地またはRPMI−1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞を、動物中で腹水腫瘍としてin vivoで成長させることができる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体を、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィなど)によって培養培地、腹水、または血清から分離することができる。
【0096】
別の実施形態では、ヒトDEC−205に結合する抗体および抗体の一部を、例えば、McCaffertyら,Nature,348:552−554(1990),Clacksonら,Nature,352:624−628(1991),Marksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)およびHoet et al(2005)Nature Biotechnology 23,344−348;Ladnerらの米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;および同第5,571,698号;Dowerらの米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号;McCaffertyらの米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号;ならびにGriffithsらの米国特許第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号;および同第6,593,081号に記載の技術を使用して生成した抗体ファージライブラリーから単離することができる。さらに、鎖シャフリング(Marksら,Bio/Technology,10:779−783(1992))ならびに非常に巨大なファージライブラリーの構築ストラテジーとしての組み合わせ感染およびin vivo組換え(Waterhouseら,Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生も使用することができる。
【0097】
特定の実施形態では、ヒトDEC−205に結合する抗体を、Hoetら,前出に記載のファージディスプレイ技術を使用して産生する。この技術は、ヒトドナーから単離し、多様な合成重鎖CDRを有する免疫グロブリン配列の固有の組み合わせを有するヒトFabライブラリーの生成を含む。次いで、ライブラリーを、ヒトDEC−205に結合するFabについてスクリーニングする。
【0098】
本発明の抗体を産生するハイブリドーマを生成するための好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は当該分野で周知であり、免疫化プロトコールおよび免疫化脾細胞の単離および融合のための技術が含まれる。
【0099】
1つの実施形態では、DEC−205に指向する抗体を、マウス系よりもむしろヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックマウスまたは導入染色体マウスを使用して生成する。1つの実施形態では、本発明は、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活化するターゲティングされた変異と共に非再配列ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む、本明細書中で「HuMAbマウス」と呼ばれるトランスジェニックマウスを使用する(Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現が減少し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラススイッチングおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.ら(1994),supra;reviewed in Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Lonberg,N.and Huszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93,およびHarding,F.and Lonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546)。HuMAbマウスの調製は、以下のセクションIIおよびTaylor,L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen,J.ら(1993)International Immunology 5:647−656;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:3720−3724;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−123;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Lonbergら,(1994)Nature 368(6474):856−859;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101;Taylor,L.ら(1994)International Immunology 6:579−591;Lonberg,N.and Huszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93;Harding,F.and Lonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci 764:536−546;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851に詳述されている。さらに、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および同第5,770,429号(全てLonberg and Kay,and GenPharm Internationalに付与);Suraniらの米国特許第5,545,807号;1998年6月11日公開の国際公開特許WO98/24884号;1994年11月10日公開のWO94/25585号;1993年6月24日公開のWO93/1227号;1992年12月23日公開のWO92/22645号;1992年3月19日公開のWO92/03918号を参照のこと。
【0100】
免疫化
DEC−205に対する完全なヒト抗体を生成するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウスまたは導入染色体マウス(例えば、HCo12マウス、HCo7マウス、またはKMマウス)を、例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwildら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851およびWO98/24884号に記載のように、DEC−205抗原の精製または富化調製物および/またはDEC−205を発現する細胞で免疫化することができる。本明細書中に記載のように、HuMAbマウスを、免疫原としての組換えDEC−205タンパク質またはDEC−205を発現する細胞株のいずれかで免疫化する。あるいは、マウスを、ヒトDEC−205をコードするDNAで免疫化することができる。好ましくは、マウスは、最初の注入の際に6〜16週齢であろう。例えば、組換えDEC−205抗原の精製または富化調製物(5〜50μg)を使用して、HuMAbマウスを腹腔内で免疫化することができる。DEC−205抗原の精製または富化調製物を使用した免疫化によって抗体が得られない事象では、マウスを、免疫応答を促進するためのDEC−205を発現する細胞(例えば、細胞株)で免疫化することもできる。例示的な細胞株には、DEC−205を過剰発現する安定なCHO細胞株およびRaji細胞株が含まれる。
【0101】
種々の抗原を使用した経験の蓄積により、フロイント完全アジュバントを含む抗原にて腹腔内(IP)または皮下(SC)での最初の免疫化およびその後のフロイント不完全アジュバントを含む抗原での隔週のIP/SC免疫化(全部で10回まで)の際にHuMAbトランスジェニックマウスが最良に応答することが示された。免疫応答を、眼窩後出血によって得た血漿サンプルでの一連の免疫化プロトコールにわたってモニタリングすることができる。血漿をELISA(下記)によってスクリーニングすることができ、十分な力価の抗DEC−205ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合に使用することができる。マウスを、屠殺して脾臓を取り出す3日前に抗原にて静脈内で追加免疫することができる。
【0102】
DEC−205に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
DEC−205に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウス由来の脾細胞およびリンパ節細胞を単離し、適切な不死化細胞株(マウス骨髄腫細胞株など)に融合することができる。次いで、得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫化マウス由来の脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を、50%PEG(w/v)を使用してSP2/0−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1580)に融合することができる。細胞を、およそ1×10で平底マイクロタイタープレート中にプレートし、その後に通常試薬である10%胎児クローン血清、5〜10%origenハイブリドーマクローニング因子(IGEN)、および1×HAT(Sigma)を含む選択培地中で2週間インキュベートすることができる。およそ2週間後、細胞を、HATがHTに置換された培地中で培養することができる。次いで、各細胞を、ヒト抗DEC−205モノクローナルIgM抗体およびIgG抗体についてELISAによってスクリーニングするか、DEC−205を発現する細胞(例えば、DEC−205を発現するCHO細胞株)の表面への結合についてFLISA(蛍光結合免疫吸着アッセイ)によってスクリーニングすることができる。一旦大規模なハイブリドーマ成長が起こると、通常は10〜14日後に培地を観察することができる。抗体分泌ハイブリドーマを再プレートし、再度スクリーニングし、依然としてIgGについて陽性である場合、抗DEC−205モノクローナル抗体を限界希釈によって少なくとも2回サブクローニングすることができる。次いで、安定なサブクローンをin vitroで培養して、特徴づけのために組織培養培地中で抗体を生成することができる。
【0103】
DEC−205に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
本発明の抗体を、当該分野で周知のように、例えば、組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法との組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生することもできる(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0104】
例えば、1つの実施形態では、目的の遺伝子(例えば、ヒト抗体遺伝子)を、WO87/04462号、WO89/01036号、およびEP338 841号に開示のGS遺伝子発現系または当該分野で周知の他の発現系などによって使用される真核生物発現プラスミドなどの発現ベクターにライゲーションすることができる。クローン化抗体遺伝子を有する精製プラスミドを、真核生物宿主細胞(CHO細胞もしくはNSO細胞または他の真核細胞様植物由来細胞、真菌細胞もしくは酵母細胞など)中に導入することができる。これらの遺伝子を導入するために使用される方法は、当該分野で説明された方法(エレクトロポレーション、リポフェクチン、またはリポフェクタミンなど)であり得る。宿主細胞中へのこれらの抗体遺伝子の導入後、抗体を発現する細胞を同定および選択することができる。これらの細胞はトランスフェクトーマに相当し、次いでこれらをその発現レベルを得るために増幅し、アップスケールして抗体を産生することができる。組換え抗体を、これらの培養物上清および/または細胞から単離および精製することができる。
【0105】
あるいは、これらのクローン化抗体遺伝子を、他の発現系(E.coliまたは完全な生物など)で発現させるか、合成的に発現させることができる。
【0106】
インタクトな抗体を発現するための部分的抗体配列の使用
抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に存在するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも各抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用を担うので、異なる性質を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上にグラフティングされた特異的な天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターの構築により、特異的な天然に存在する抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann,L.ら,1998,Nature 332:323−327;Jones,P.ら,1986,Nature 321:522−525;およびQueen,C.ら,1989,Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.86:10029−10033を参照のこと)。かかるフレームワーク配列を、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースから得ることができる。これらの生殖系列配列は、成熟抗体遺伝子配列と異なるであろう。なぜなら、これらはB細胞成熟中のV(D)J連結によって形成される完全にアセンブリされた可変遺伝子を含まないからである。生殖系列遺伝子配列はまた、可変領域にわたって一様に個体で高親和性二次レパートリー抗体の配列と異なるであろう。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域のアミノ末端部分で相対的に稀である。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分およびフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分で比較的稀である。さらに、多数の体細胞変異は、抗体の結合特性を有意に変化させない。このため、元の抗体と類似の結合特性を有するインタクトな組換え抗体を再作製するために特定の抗体の全DNA配列を得る必要はない(1999年3月12日出願のPCT/US99/05535号を参照のこと)。CDR領域に及ぶ部分的な重鎖および軽鎖配列は、典型的には、この目的に十分である。部分的配列を使用して、どの生殖系列の可変性および連結する遺伝子セグメントが組み換えられた抗体可変遺伝子に寄与していたかを決定する。次いで、生殖系列配列を使用して、可変領域の喪失部分を充填する。重鎖および軽鎖のリーダー配列をタンパク質成熟中に切断し、これらは最終抗体の性質に寄与しない。喪失配列を付加するために、クローン化cDNA配列をライゲーションまたはPCR増幅によって合成オリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。あるいは、全可変領域を短い重複オリゴヌクレオチド組として合成し、PCR増幅によって組み合わせて、完全に合成の可変領域クローンを作製することができる。この過程は、特定の制限部位の排除もしくは含有または特定のコドンの至適化などの一定の利点を有する。
【0107】
ハイブリドーマ由来の重鎖および軽鎖転写物のヌクレオチド配列を使用して、天然配列と同一のアミノ酸コード能を有する合成V配列を作製するための重複する合成オリゴヌクレオチド組をデザインする。合成重鎖およびκ鎖配列は、以下の3つの様式で天然配列と異なり得る:オリゴヌクレオチド合成およびPCR増幅を容易にするために一連の繰り返しヌクレオチド塩基が介在していること。Kozak規則にしたがって最適な翻訳開始部位が組み込まれていること(Kozak,1991,J.Biol.Chem.266:19867−19870)、および翻訳開始部位の上流のHindIII部位が操作されていること。
【0108】
重鎖および軽鎖可変領域の両方について、至適化されたコード鎖配列および対応する非コード鎖配列を、対応する非コードオリゴヌクレオチドのおよそ中点で30〜50ヌクレオチドに分解する。したがって、各鎖について、オリゴヌクレオチドを、150〜400ヌクレオチドのセグメントに及ぶ重複二本鎖組にアセンブリすることができる。次いで、プールを、150〜400ヌクレオチドのPCR増幅産物を産生するためのテンプレートとして使用する。典型的には、1つの可変領域オリゴヌクレオチド組を2つのプールに分解し、これを個別に増幅させて2つの重複PCR産物を生成するであろう。次いで、これらの重複産物をPCR増幅によって組み合わせて、完全な可変領域を形成する。また、発現ベクター構築物に容易にクローン化することができるフラグメントを生成するためにPCR増幅物中に重鎖または軽鎖定常領域の重複フラグメント(κ軽鎖のBbsI部位またはγ重鎖の場合のAgeI部位が含まれる)を含むことが望ましいかもしれない。
【0109】
次いで、再構築した重鎖および軽鎖可変領域を、クローン化プロモーター配列、リーダー配列、転写開始配列、リーダー配列、定常領域、3’非翻訳配列、ポリアデニル化配列、および転写終結配列、発現ベクター構築物を形成するための配列と組み合わせる。重鎖および軽鎖発現構築物を、単一ベクターと組み合わせ、宿主細胞に同時トランスフェクションするか、連続的にトランスフェクションするか、個別にトランスフェクションし、次いで融合して、両鎖を発現する宿主細胞を形成することができる。
【0110】
PCR増幅されたV重鎖およびVκ軽鎖のcDNA配列を使用して完全な重鎖および軽鎖ミニ遺伝子を構築することができるように、発現ベクターの構築で用いるプラスミドを構築した。これらのプラスミドを使用して、完全なヒトIgGκまたはIgGκ抗体を発現することができる。本発明の完全なヒト抗体およびキメラ抗体には、IgG2、IgG3、IgE、IgA、IgM、およびIgD抗体も含まれる。類似のプラスミドを、他の重鎖アイソタイプの発現またはλ軽鎖を含む抗体の発現のために構築することができる。
【0111】
したがって、本発明の別の態様では、本発明の抗DEC−205抗体の構造的特徴を使用して、本発明の抗体の少なくとも1つの機能的性質(例えば、表面プラズモン共鳴によって測定したところ親和定数が少なくとも10−1でのヒトDEC−205への結合;DEC−205を発現するヒト樹状細胞への結合後の内在化;ヒト樹状細胞中の抗原プロセシング区画への局在化;DEC−205を発現するヒト樹状細胞の活性化;非ヒト霊長類樹状細胞または他の種の樹状細胞上でのDEC−205の交差反応;およびMHCクラスIおよびクラスII経路の両方によって媒介される抗原に対するヒトT細胞(CTLなど)応答(好ましくは、CTL応答)の生成または増強など)を保持する構造的に関連する抗DEC−205抗体を作製する。
【0112】
1つの実施形態では、本発明の抗体の1つまたは複数のCDR領域を、既知のフレームワーク領域およびCDRと組換え的に組み合わせて、さらなる組換え的に操作された本発明の抗DEC−205抗体を作製することができる。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、同一または異なる抗体配列に由来し得る。抗体配列は天然に存在する抗体の配列であり得るか、いくつかの抗体のコンセンサス配列であり得る。Kettleboroughら,Protein Engineering 4:773(1991);Kolbingerら,Protein Engineering 6:971(1993)and Carterら,WO 92/22653を参照のこと。
【0113】
したがって、別の実施形態では、本発明は、(1)重鎖フレームワーク領域および重鎖CDR(少なくとも1つの重鎖CDRが配列番号5、6、7、17、18、19、29、30、31、41、42、43、53、54、55、65、66、67、71、72、73、77、78、79、89、90、または91に示されるCDRのアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む)および(2)軽鎖フレームワーク領域および軽鎖CDR(少なくとも1つの軽鎖CDRが配列番号11、12、13、23、24、25、35、36、37、47、48、49、59、60、61、83、84、または85に示されるCDRのアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む)を含み、DEC−205に結合する能力を保持する抗体を調製する工程を含む、抗DEC−205抗体の調製方法を提供する。抗体がDEC−205に結合する能力を、標準的な結合アッセイ(実施例に記載のアッセイ(例えば、ELISAまたはFLISA)など)を使用して決定することができる。
【0114】
抗体の重鎖および軽鎖CDR3ドメインが抗原に対する抗体の結合特異性/親和性で特に重要な役割を果たすことが当該分野で周知である(Hallら,J.Imunol.,149:1605−1612(1992);Polymenisら,J.Immunol.,152:5318−5329(1994);Jahnら,Immunobiol.,193:400−419(1995);Klimkaら,Brit.J.Cancer,83:252−260(2000);Beiboerら,J.Mol.Biol,296:833−849(2000);Raderら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8910−8915(1998);Barbasら,J.Am.Chem.Soc.,116:2161−2162(1994);Ditzelら,J.Immunol.,157:739−749(1996)を参照のこと)。したがって、上記のように調製された本発明の組換え抗体は、好ましくは、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の重鎖および/または軽鎖CDR3を含む。抗体は、さらに、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10のCDR2を含むことができる。抗体は、さらに、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10のCDR1を含むことができる。抗体は、さらに、CDRの任意の組み合わせを含むことができる。
【0115】
したがって、別の実施形態では、本発明は、さらに、(1)重鎖フレームワーク領域、重鎖CDR1領域、重鎖CDR2領域、および重鎖CDR3領域(ここで、重鎖CDR3領域は、3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10のCDR3から選択される(例えば、配列番号7に示す3D6−2F4の重鎖CDR3領域))および(2)軽鎖フレームワーク領域、軽鎖CDR1領域、軽鎖CDR2領域、および軽鎖CDR3領域(ここで、軽鎖CDR3領域は、3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10のCDR3から選択される(例えば、配列番号13に示す3D6−2F4の軽鎖CDR3領域))を含み、DEC−205に結合する抗DEC−205抗体を提供する。抗体は、さらに、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の重鎖CDR2および/または軽鎖CDR2を含むことができる。抗体は、さらに、3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の重鎖CDR1および/または軽鎖CDR1を含むことができる。
【0116】
修飾配列を有する抗体の生成
別の実施形態では、本発明の抗DEC−205抗体の可変領域配列またはその一部を修飾して、結合(すなわち、未修飾抗体と同一のエピトープへの)を保持し、それにより、機能的に等価である構造的に関連する抗DEC−205抗体を作製する。抗原結合を除去することなく変化させることができる残基の同定方法は当該分野で周知である(例えば、Marksら(Biotechnology(1992)10(7):779−83(monoclonal antibodies diversification by shuffling light chain variable regions,then heavy chain variable regions with fixed CDR3 sequence changes),Jespersら(1994)Biotechnology 12(9):899−903(selection of human antibodies from phage display repertoires to a single epitope of an antigen),Sharonら(1986)PNAS USA 83(8):2628−31(site−directed mutagenesis of an invariant amino acid residue at the variable−diversity segments junction of an antibody);Cassonら(1995)J.Immunol.155(12):5647−54(evolution of loss and change of specificity resulting from random mutagenesis of an antibody heavy chain variable regions)を参照のこと)。
【0117】
したがって、本発明の1つの態様では、上記の操作された抗体のCDR1、2、および/または3領域は、本明細書中に開示の抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10のアミノ酸配列として正確なアミノ酸配列を含むことができる。しかし、本発明の他の態様では、抗体は、依然として効率的にDEC−205に結合する能力を保持する、3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の正確なCDR配列由来の誘導体を含む。かかる配列修飾物には、1つまたは複数のアミノ酸の付加物、欠失物、または置換物(例えば、上記の保存的配列修飾物)が含まれ得る。配列修飾物は、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の特定のCDR1、CDR2、およびCDR3配列についての上記のコンセンサス配列にも基づき得る。
【0118】
したがって、別の実施形態では、操作された抗体は、例えば、抗体3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10の1つまたは複数のCDRと90%、95%、98%、または99.5%同一である1つまたは複数のCDRから構成され得る。中間から上記で引用した値までの範囲(例えば、1つまたは複数の上記配列に対して90〜95%、95〜98%、または98〜100%同一のCDR)も、本発明に含まれることが意図される。
【0119】
別の実施形態では、CDRの1つまたは複数の残基を、理想的な結合定数が達成されるようにより好ましいオン結合速度、より好ましいオフ結合速度、またはその両方を達成するために結合が修飾されるように変化させることができる。このストラテジーを使用して、超高結合親和性(例えば、1010−1以上)を有する抗体を得ることができる。当該分野で周知の親和性成熟技術および本明細書中に記載親和性成熟技術を使用して、CDR領域を変化させ、その後に得られた結合分子を所望の結合の変化についてスクリーニングすることができる。したがって、CDRが変化するにつれて、結合と低免疫原性とが最良に組み合わされるように抗体が至適化されるように結合親和性および免疫原性の変化をモニタリングし、スコアリングすることができる。
【0120】
CDR内の修飾物に加えてまたはその代わりに、これらの修飾物が抗体の結合親和性を排除しない限り、抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域の1つまたは複数のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、およびFR4内を修飾することもできる。例えば、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のフレームワーク領域中の1つまたは複数の非生殖系列アミノ酸残基を、生殖系列アミノ酸残基(すなわち、抗体が有意な配列同一性を有する重鎖または軽鎖可変領域のヒト生殖系列配列中の対応するアミノ酸残基)と置換する。例えば、抗体鎖を有意な配列同一性を共有する生殖系列抗体鎖とアラインメントすることができ、抗体フレームワーク配列と生殖系列鎖フレームワークとの間で適合しないアミノ酸残基を、生殖系列配列由来の対応する残基と置換することができる。抗体可変フレームワーク領域と等価なヒト生殖系列配列可変フレームワーク領域との間でアミノ酸が異なる場合、アミノ酸が以下のカテゴリーのうちの1つに含まれると妥当に予想される場合に、抗体フレームワークアミノ酸を通常は等価なヒト生殖系列配列アミノ酸と置換すべきである。
(1)抗原に直接非共有結合するアミノ酸残基、
(2)CDR領域に隣接するアミノ酸残基、
(3)他の方法でCDR領域(例えば、コンピュータモデリングによって決定したところCDR領域の約3〜6Å以内)と相互作用するアミノ酸残基、または
(4)VL−VH界面に関与するアミノ酸残基。
【0121】
「抗原に直接非共有結合する」残基には、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、および疎水性相互作用などによって確立された化学力にしたがって抗原上のアミノ酸と直接相互作用する可能性が高いフレームワーク領域中の位置のアミノ酸が含まれる。したがって、1つの実施形態では、本発明の抗体のフレームワーク領域中のアミノ酸残基を、抗原に直接非共有結合する対応する生殖系列アミノ酸残基と置換する。
【0122】
「CDR領域に隣接する」残基には、抗体の一次配列中の1つまたは複数のCDRに直接隣接する位置(例えば、Kabatによって定義されたCDRまたはChothiaによって定義されたCDRに直接隣接する位置)(例えば、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901(1987)を参照のこと)のアミノ酸残基が含まれる。したがって、1つの実施形態では、本発明の抗体のフレームワーク領域内のアミノ酸残基を、CDR領域に隣接する対応する生殖系列アミノ酸残基と置換する。
【0123】
「他の方法でCDR領域と相互作用する」残基には、二次構造分析によってCDR領域に影響を及ぼすのに十分な空間的配置にあると決定された残基が含まれる。かかるアミノ酸は、一般に、CDR中のいくつかの原子の約3オングストローム単位(Å)内の側鎖原子を有し、確立された化学力(上記列挙の化学力など)に従ってCDR原子と相互作用することができる原子を含まなければならない。したがって、1つの実施形態では、本発明の抗体のフレームワーク領域内のアミノ酸残基を、他の方法でCDR領域と相互作用する対応する生殖系列アミノ酸残基と置換する。
【0124】
フレームワーク中のいくつかの位置のアミノ酸は、多数の抗体中のCDR高次構造(例えば、CDRと相互作用することができる)の決定に重要であることが公知である(Chothia and Lesk,supra,Chothiaら,supra and Tramontanoら,J.Mol.Biol.215:175(1990)(その全てが本明細書中で参考として援用される))。これらの著者は、いくつかの公知の抗体の構造の分析によるCDR高次構造に重要な保存されたフレームワーク残基を同定した。分析された抗体を、限定数のCDRの高次構造に基づいて構造的または「カノニカル(canonical)」クラスに分類した。カノニカルクラスのメンバー内の保存されたフレームワーク残基を、「カノニカル」残基という。カノニカル残基には、軽鎖の残基2、25、29、30、33、48、64、71、90、94、および95ならびに重鎖の残基24、26、29、34、54、55、71、および94が含まれる。さらなる残基(例えば、CDR構造決定残基)を、Martin and Thorton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法論にしたがって同定することができる。特に、軽鎖の2位、48位、64位、および71位ならびに重鎖の26〜30位、71位、および94位のアミノ酸(Kabatにしたがってナンバリング)は、多数の抗体中のCDRと相互作用することができることが公知である。軽鎖の35位および重鎖の93位および103位のアミノ酸はまた、CDRと相互作用する可能性が高い。CDRの高次構造に影響を及ぼし得るさらなる残基を、Foote and Winter(1992)J.Mol.Biol.224:487の方法論にしたがって同定することができる。かかる残基を、「バーニア」残基といい、CDRに密接に関連する(すなわち、CDR下で「プラットフォーム」を形成する)フレームワーク領域中の残基である。
【0125】
「VL−VH界面に関与する」残基または「パッキング残基」には、例えば、Novotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4592−66(1985)またはChothiaら,前出によって定義されたVLとVHとの間の界面の残基が含まれる。
【0126】
時折、特定のアミノ酸が1つまたは複数の上記カテゴリーに分類されるかどうかについていくらか不正確である。かかる場合、別の変異抗体を産生する。この変異抗体の一方は特定の置換を有し、他方は持たない。このようにして産生された別の変異抗体を、本明細書中に記載のいずれかのアッセイで所望の活性について試験し、好ましい抗体を選択することができる。
【0127】
フレームワーク領域内置換のさらなる候補は、抗体についてその位置で通常でないか「稀な」アミノ酸である。これらのアミノ酸を、ヒト生殖系列配列の等価な位置またはより典型的な抗体の等価な位置由来のアミノ酸と置換することができる。例えば、抗体のフレームワーク領域中のアミノ酸がその位置について稀であり、生殖系列配列中の対応するアミノ酸が免疫グロブリン配列中のその位置について一般的である場合、または、抗体中のアミノ酸がその位置について稀であり、生殖系列配列中の対応するアミノ酸も他の配列と比較してまれである場合、置換が望ましいかもしれない。期せずして抗体に典型的である生殖系列配列由来のアミノ酸との通常でないアミノ酸の置換により、抗体の免疫原性を低くすることができることが意図される。
【0128】
本明細書中で使用する場合、用語「稀な」は、代表的な配列サンプル中の配列の約20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、さらにより好ましくは約3%未満、さらにより好ましくは約2%未満、さらにより好ましくは約1%未満でその位置に生じるアミノ酸を示し、本明細書中で使用する場合、用語「一般的な」は、代表的サンプル中の配列で約25%を超えるが、通常は約50%を超えて生じるアミノ酸を示す。例えば、全ての軽鎖および重鎖可変領域配列は、それぞれ、相互に特異的に相同であり、一定の重大な位置で同一のアミノ酸を有する配列の「下位集団」に分類される(Kabatら,前出)。抗体配列中のアミノ酸が配列間で「稀」または「一般的」であるかどうかを決定する場合、抗体配列と同一の下位集団中の配列のみを考慮することがしばしば好ましいであろう。
【0129】
一般に、抗体のフレームワーク領域は、これらが由来するヒト生殖系列配列のフレームワーク領域と通常は実質的に同一であり、より通常には同一である。勿論、フレームワーク領域中の多数のアミノ酸は、抗体の特異性または親和性にほとんどまたは全く直接寄与しない。したがって、フレームワーク残基の多数の各保存的置換を、得られた免疫グロブリンの特異性または親和性を非常に変化させることなく寛容することができる。したがって、1つの実施形態では、抗体の可変フレームワーク領域は、ヒト生殖系列可変フレームワーク領域配列またはかかる配列のコンセンサスと少なくとも85%の配列が同一である。別の実施形態では、抗体の可変フレームワーク領域は、ヒト生殖系列可変フレームワーク領域配列またはかかる配列のコンセンサスと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列が同一である。
【0130】
簡潔に結合するDEC−205に加えて、例えば、以下:
(a)表面プラズモン共鳴によって測定した場合に少なくとも10−1の親和定数でヒトDEC−205に結合すること;
(b)DEC−205を発現するヒト樹状細胞への結合後の内在化;
(c)樹状細胞中の抗原プロセシング区画への局在化;
(d)DEC−205を発現するヒト樹状細胞の活性化;
(e)非ヒト霊長類樹状細胞または他の種の樹状細胞上のDEC−205との交差反応;
(f)MHCクラスIおよびクラスII経路の両方によって媒介されるヒトT細胞応答(好ましくは、T細胞応答)の生成または増強;
(g)ヒトCD4+、CD8+、またはNKT細胞応答の生成または増強;および
(h)末梢CD8T細胞寛容を誘導すること
などの本発明の抗体の他の機能的性質のその保持について抗体を選択することができる。
【0131】
DEC−205に対するモノクローナル抗体の特徴づけ
本発明のモノクローナル抗体を、種々の公知の技術を使用してDEC−205への結合について特徴づけることができる。一般に、抗体を最初にELISAによって特徴づける。簡潔に述べれば、マイクロタイタープレートを精製DEC−205を含むPBSでコーティングし、次いで、PBSで希釈したウシ血清アルブミン(BSA)などの無関係のタンパク質でブロッキングすることができる。DEC−205免疫化マウス由来の血漿の希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tween20で洗浄し、次いで、アルカリホスファターゼに抱合したヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬と37℃で1時間インキュベートする。洗浄後、プレートをABTS基質で発色させ、OD405で分析する。好ましくは、もっとも高い力価を生じるマウスを融合に使用するであろう。
【0132】
上記のELISAアッセイを使用して、抗体についてスクリーニングし、したがって、DEC−205免疫原と正の反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることができる。次いで、好ましくは高親和性でDEC−205に結合するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに特徴づけることができる。次いで、親細胞の反応性をを保持する各ハイブリドーマ由来の1つのクローン(ELISAによる)を、細胞バンクの作製および抗体精製のために選択することができる。
【0133】
抗DEC−205抗体を精製するために、選択したハイブリドーマを、回転ビン、2リットルのスピナーフラスコ、または他の培養系で成長させることができる。上清を濾過し、濃縮した後、プロテインA−セファロース(Pharmacia,Piscataway,NJ)を使用してアフィニティクロマトグラフィを行ってタンパク質を精製することができる。PBSへの緩衝液交換後、濃度を、吸光係数1.43を使用したOD280または好ましくは比濁分析によって決定することができる。IgGを、ゲル電気泳動および抗原特異的方法によってチェックすることができる。
【0134】
選択された抗DEC−205モノクローナル抗体が固有のエピトープに結合するかどうかを決定するために、各抗体を、市販の試薬(Pierce,Rockford,IL)を使用してビオチン化することができる。ビオチン化MAb結合を、ストレプトアビジン標識プローブで検出することができる。精製抗体のアイソタイプを決定するために、当該分野で認識された技術を使用してアイソタイプELISAを行うことができる。例えば、マイクロタイタープレートのウェルを、10μg/mlの抗Igにて4℃で一晩コーティングすることができる。5%BSAでのブロッキング後、プレートを10μg/mlのモノクローナル抗体または精製アイソタイプコントロールと周囲温度で2時間反応させる。次いで、ウェルをIgGlまたは他のアイソタイプ特異的抱合プローブのいずれかと反応させることができる。上記のようにプレートを発色させ、分析する。
【0135】
DEC−205を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を試験するために、フローサイトメトリーを使用することができる。簡潔に述べれば、膜結合DEC−205を発現する細胞株および/またはヒトPBMC(標準的な培養条件下で成長)を、種々の濃度のモノクローナル抗体を含む0.1%BSAおよび0.01%NaN3を含むPBSと4℃で1時間混合する。洗浄後、細胞を、一次抗体染色と同一の条件下でフルオレセイン標識抗IgG抗体と反応させる。サンプルを、1細胞をゲーティングさせる側方散乱性を使用したFACScan装置によって分析し、標識抗体の結合を決定することができる。蛍光顕微鏡法を使用した別のアッセイを、フローサイトメトリーアッセイ(に加えてまたはその代わりに)使用することができる。細胞を上記のように正確に染色し、蛍光顕微鏡法によって試験することができる。この方法により、各細胞が視覚化可能であるが、抗原の密度に依存して感度が低下し得る。
【0136】
抗DEC−205 IgGを、ウェスタンブロッティングによってDEC−205抗原との反応性についてさらに試験することができる。簡潔に述べれば、DEC−205を発現する細胞由来の細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離した抗原を、ニトロセルロース膜に移し、20%マウス血清でブロッキングし、試験すべきモノクローナル抗体で探索する。IgG結合を、抗IgGアルカリホスファターゼを使用して検出し、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO)を使用して発色させることができる。
【0137】
種々の抗DEC−205抗体の結合親和性、交差反応性、および結合反応速度の分析方法には、当該分野で公知の標準的なアッセイ(例えば、本明細書中の実施例2に記載のBiacore(商標)2000SPR装置(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用したBiacore(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析)が含まれる。
【0138】
II.分子抱合体/免疫毒素
本発明は、APC上の受容体に結合する抗体(例えば、DEC−205に結合する抗体)に連結した抗原(腫瘍抗原またはウイルス抗原など)を含む種々の治療分子抱合体(例えば、ワクチン抱合体)を提供する。これにより、APC(DEC−205を発現する細胞など(例えば、樹状細胞およびB細胞))に抗原をターゲティングして、抗原に対するプロセシング、提示、および最終的な免疫応答(例えば、CTL応答)を増強することができる。かかる抱合体の略図を図8に示す。示した例では、抗原を、実質的に完全な抗DEC−205抗体の各重鎖のCH3ドメインに遺伝的に融合する。しかし、以下でさらに考察されるように、抗原をかかる抗体またはそのフラグメントの他の部分に代替的に連結することができ、抱合(化学的抱合など)の他の形態も使用することができることが認識されるであろう。
【0139】
本発明での使用に適切な抗原には、例えば、予防的または治療的免疫応答が望ましい感染症抗原および腫瘍抗原(例えば、腫瘍細胞または病原性生物によって発現される抗原または感染症抗原)が含まれる。例えば、適切な抗原には、癌の防止または治療のための腫瘍関連抗原が含まれる。腫瘍関連抗原の例には、βhCG、gp100またはPmel17、HER2/neu、WT1、メソセリン、CEA、gp100、MART1、TRP−2、メラン−A、NY−ESO−1、NY−BR−1、NY−CO−58、MN(gp250)、イディオタイプ、MAGE−1、MAGE−3、MAGE−A3、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、およびMUC−1抗原、ならびに生殖細胞由来腫瘍抗原の配列の全部または一部を含む配列が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍関連抗原には、血液型抗原(例えば、Le、Le、LeX、LeY、H−2、B−1、B−2抗原)も含まれる。あるいは、1つを超える抗原を、本発明の抗原−抗体構築物内に含めることができる。例えば、MAGE抗原を、アジュバント(GM−CSFまたはIL−12など)と共に他の抗原(メラニンA、チロシナーゼ、およびgp100など)と組み合わせ、抗APC抗体に連結することができる。
【0140】
他の適切な抗原には、ウイルス疾患の防止または治療のためのウイルス抗原が含まれる。ウイルス抗原の例には、HIV−1gag、HIV−1env、HIV−1nef、HBV(表面抗原またはコア抗原)、HPV、FAS、HSV−1、HSV−2、p17、ORF2、およびORF3抗原が含まれるが、これらに限定されない。細菌抗原の例には、Toxoplasma gondiiまたはTreponema pallidumが含まれるが、これらに限定されない。本発明の抗体−細菌抗原抱合体を、炭疽病、ボツリヌス中毒、破傷風、クラミジア、コレラ、ジフテリア、ライム病、梅毒、および結核などの種々の細菌疾患の治療または防止で使用することができる。
【0141】
上記抗原の配列は当該分野で周知である。例えば、MAGE−3 cDNA配列の例は米国特許第6,235,525号(Ludwig Institute for Cancer Research)に記載されており、NY−ESO−1核酸配列およびタンパク質配列の例は米国特許第5,804,381号および米国特許第6,069,233号(Ludwig Institute for Cancer Research)に記載されており、メラン−A核酸配列およびタンパク質配列の例は米国特許第5,620,886号および米国特許第5,854,203(Ludwig Institute for Cancer Research)に記載されており、NY−BR−1核酸配列およびタンパク質配列の例は米国特許第6,774,226号および米国特許第6,911,529号(Ludwig Institute for Cancer Research)に記載されており、NY−CO−58核酸配列およびタンパク質配列の例はWO02090986号(Ludwig Institute for Cancer Research)に記載されており、HER−2/neuタンパク質のアミノ酸配列の例はGENBANK(登録商標)受入番号AAA58637で利用可能であり、ヒト癌胎児性抗原様1(CEA−1)のヌクレオチド配列(mRNA)はGENBANK(登録商標)受入番号NM__020219で利用可能である。
【0142】
本発明の薬学的組成物および方法で使用することができるHPV抗原には、例えば、HPV−16抗原、HPV−18抗原、HPV−31抗原、HPV−33抗原、および/またはHPV−35抗原が含まれ得、HPV−16抗原および/またはHPV−18抗原が適切である。HPV−16のゲノムはVirology,145:181−185(1985)に記載されており、HPV−18をコードするDNA配列は米国特許第5,840,306号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。HPV−16抗原(例えば、HPV−16のElおよび/またはE2タンパク質の血清反応領域)は米国特許第6,531,127号に記載されており、HPV−18抗原(例えば、HPV−18のLlおよび/またはL2タンパク質の血清反応領域)は米国特許第5,840,306号に記載されている(その開示が本明細書中で参考として援用される)。同様に、HBVの完全なゲノムはGENBANK(登録商標)受入番号NC_003977(その開示が本明細書中で参考として援用される)で利用可能である。HCVのゲノムは、欧州特許出願番号318 216号(その開示が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。PCT/US90/01348(本明細書中で参考として援用される)は、HCVゲノムのクローンの配列情報、HCVウイルスタンパク質のアミノ酸配列、ならびにHCVタンパク質およびこれに由来するペプチドを含むHCVワクチンのためのかかる組成物の作製および使用方法を開示している。
【0143】
タンパク質の抗原ペプチド(すなわち、T細胞エピトープを含むもの)を、当該分野で周知の種々の様式で同定することができる。例えば、ウェブベースの予測アルゴリズム(BIMASおよびSYFPEITHI)を使用してタンパク質配列を分析し、CTLによって以前に定義された10,000の十分に特徴づけられたMHC結合ペプチドの内部データベースに適合する潜在的なMHCクラスIおよびII結合ペプチドを得ることによってT細胞エピトープを予想することができる。高スコアのペプチドをランキングし、所与のMHC分子に対する高親和性に基づいて「興味深いもの」として選択することができる。
【0144】
T細胞エピトープを含む抗原ペプチドの別の同定方法は、組換え的に産生することができるか、合成で産生することができるか、タンパク質の化学的切断によって一定の制限された条件下で産生することができる所望の長さの非重複のペプチドまたは所望の長さの重複ペプチドにタンパク質を分割し、免疫原性(例えば、T細胞応答(すなわち、増殖またはリンホカイン分泌)の誘発)について試験する。
【0145】
例えば、精巧なマッピング技術によってタンパク質の正確なT細胞エピトープを決定するために、T細胞生物学技術によって決定した場合にT細胞刺激活性を有し、それにより、少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドを、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでのアミノ酸残基の付加または欠失によって修飾し、試験して修飾ペプチドに対するT細胞反応性の変化を決定することができる。T細胞生物学技術によって決定した場合に未変性タンパク質配列中の重複領域を共有する2つ以上のペプチドがヒトT細胞刺激活性を有することが見出された場合、かかるペプチドの全てまたは一部を含むさらなるペプチドを産生することができ、これらのさらなるペプチドを類似の手順によって試験することができる。この技術の後、ペプチドを選択し、組換え的または合成的に産生する。ペプチドを、種々の要因(ペプチドに対するT細胞応答の強度(例えば、刺激指数)が含まれる)に基づいて選択する。次いで、これらの選択されたペプチドの物理的および化学的性質(例えば、溶解性、安定性)を試験して、ペプチドが治療組成物での使用に適切であるかどうか、または、ペプチドが修飾を必要とするかどうかを決定することができる。
【0146】
さらに、ワクチン抱合体は、抗原に対する免疫応答も増強する1つまたは複数の免疫賦活薬を含むことができる。本発明の抗体−抗原ワクチン抱合体を、遺伝的または化学的に作製することができる。いずれかの場合、抱合体の抗体部分は、全抗体または抗体の一部(Fabフラグメントまたは単鎖Fvなど)からなり得る。さらに、1つを超える抗原および/または免疫賦活薬を抱合体中に含めることができる。
【0147】
化学的に構築された抗体−抗原抱合体を、種々の周知且つ容易に利用可能な架橋試薬を使用して作製することができる。これらの架橋試薬は、同種機能性化合物または異種機能性化合物(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセタート(SATA)、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)など)であり得、これらは抗樹状細胞抗体および選択された抗原上の異なる反応性アミノ酸または炭水化物の側鎖と共有結合を形成する。他のカップリング剤および架橋剤を使用して、共有結合を生成することもできる(プロテインA、カルボジイミド、およびo−フェニレンジマレイミド(oPDM)など)(例えば、Karpovskyら(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu,MAら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照のこと)。他の方法には、Paulus(Behring Ins.Mitt.(1985)No.78,118−132);Brennanら(Science(1985)229:81−83),およびGlennieら(J.Immunol.(1987)139:2367−2375)に記載の方法が含まれる。好ましい抱合剤は、SATAおよびスルホ−SMCC(共にPierce Chemical Co.(Rockford,IL)から利用可能)である。免疫賦活薬を、上記と同一の連結方法を使用して本発明の分子抱合体に化学的に連結することもできる。
【0148】
別の実施形態では、本発明の抗体を、治療部分(細胞毒素、薬物、または放射性同位体など)に連結する。細胞毒素に抱合する場合、これらの抗体抱合体を「免疫毒素」という。細胞毒素または細胞毒性薬には、細胞に有害な(例えば、死滅させる)任意の薬剤が含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログまたはホモログが含まれる。治療薬には、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の抗体を放射性同位体(例えば、放射性ヨウ素)と抱合して、樹状細胞関連障害(自己免疫疾患または炎症性疾患など)または移植片対宿主疾患の治療のための細胞傷害性放射性医薬品を生成することができる。
【0149】
本発明の抗体抱合体を使用して所与の生物学的応答を修飾することができ、薬物部分は、古典的な化学治療薬に制限されないと解釈される。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質には、例えば、酵素活性毒素またはその活性部分(アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素など);腫瘍壊死因子またはインターフェロン−γなどのタンパク質;または生物学的応答調節物質(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子など)が含まれ得る。
【0150】
かかる治療部分の抗体への抱合技術は周知である(例えば、Arnonら,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinsonら(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(eds.),pp.475−506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(eds.),pp.303−16(Academic Press 1985),and Thorpeら,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと)。
【0151】
別の実施形態では、本発明の抗体を使用して、ホールセル(例えば、腫瘍細胞、エフェクター細胞、または微生物病原体)を樹状細胞に直接ターゲティングすることができる。例えば、本発明の抗体をコードする核酸配列を含むベクターでの細胞のトランスフェクションまたは形質導入によって抗DEC−205抗体を細胞表面上に直接発現することができる。例えば、膜貫通ドメインおよび抗樹状細胞抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質をコードする核酸での標的細胞のトランスフェクションによってこれを行うことができる。かかる核酸、融合タンパク質、かかる融合タンパク質を発現する細胞の生成方法は、例えば、米国特許出願第09/203,958号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。あるいは、抗樹状細胞抗体またはその抗原結合フラグメントを、化学的リンカー、脂質タグ、または他の関連する方法の使用によって細胞または病原体に結合させることができる(deKruif,J.ら(2000)Nat.Med.6:223−227;Nizard,P.ら(1998)FEBS Lett.433:83−88)。表面係留抗DEC−205抗体を有する細胞を使用して、細胞(例えば、腫瘍細胞または微生物病原体)に対する特異的免疫応答を誘導することができる。
【0152】
III.薬学的組成物
別の実施形態では、本発明は、薬学的に許容可能なキャリアと共に処方した本発明のモノクローナル抗体の1つまたは複数の組み合わせを含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。本発明の抗体を含む二重特異性分子または分子抱合体を含む組成物も提供する。1つの実施形態では、組成物は、複数の(例えば、2つ以上の)本発明の単離抗体の組み合わせを含む。好ましくは、組成物の各抗体は、DEC−205の予め選択した異なるエピトープに結合する。
【0153】
本発明の薬学的組成物を、併用療法で(すなわち、他の薬剤と組み合わせて)投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つまたは複数のさらなる治療薬(抗炎症薬、DMARD(疾患修飾抗リウマチ薬)、免疫抑制薬、および化学療法薬など)を含む本発明の組成物を含むことができる。本発明の薬学的組成物を、放射線療法と併せて投与することもできる。他の抗体(CD4特異的抗体またはIL−2特異的抗体など)との同時投与も本発明の範囲内である。CD4特異的抗体またはIL−2特異的抗体とのかかる組み合わせは、自己免疫疾患および移植片拒絶の治療に特に有用であると見なされる。CTLA4、CD40などに対する抗体との組み合わせは、癌および感染症の治療で特に有用である。
【0154】
別の実施形態では、APCによって迅速に内在化されるワクチン抱合体を、樹状細胞の抗原提示細胞活性(例えば、免疫賦活性サイトカインの放出)を増強するモノクローナル抗体と組み合わせることができる。
【0155】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能なキャリア」には、生理学的に適合する任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、キャリアは、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮投与(例えば、注射または注入による)に適切である。投与経路に依存して、活性化合物(すなわち、抗体、二重特異性分子、および多重特異性分子)を、材料中にコーティングして、化合物を不活性化し得る酸および他の天然の条件の作用から化合物を保護することができる。
【0156】
本発明の抗体および構築物と共に使用することができるアジュバントの例には、フロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Mich.);Merckアジュバント65(Merck and Company,Inc.,Rahway,N.J.);AS−2(SmithKline Beecham,Philadelphia,Pa.)、アルミニウム塩(水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなど);カルシウム塩、鉄塩、または亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオンまたはアニオン誘導性ポリサッカリド;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフィア;サイトカイン(GM−CSF、インターロイキン−2、−7、−12、および他の同様の因子など);3D−MPL;CpGオリゴヌクレオチド;およびモノホスホリル脂質A(例えば、3−デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A)が含まれる。
【0157】
MPLアジュバントは、Corixa Corporationから利用可能である(Seattle,Wash、例えば、米国特許第4,436,727号、同第4,877,611号、同第4,866,034号、および同第4,912,094号を参照のこと)。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドがメチル化されていない)が周知であり、例えば、WO96/02555号、WO99/33488号、および米国特許第6,008,200号および同第5,856,462号に記載されている。免疫賦活剤のDNA配列も、例えば、Satoら,Science 273:352,1996に記載されている。
【0158】
さらなる別のアジュバントには、例えば、サポニン(Quil Aまたはその誘導体(QS21およびQS7(Aquila Biopharmaceuticals Inc.,Framingham,Mass.)が含まれる);エスチン;ジギトニン;またはカスミソウもしくはキノアのサポニンなど);モンタニドISA 720(Seppic,France);SAF(Chiron,California,United States);ISCOMS(CSL)、MF−59(Chiron);SBASシリーズのアジュバント(例えば、SBAS−2またはSBAS−4、SmithKline Beecham,Rixensart,Belgiumから入手可能);Detox(Enhanzyn(商標))(Corixa,Hamilton,Mont.);RC−529(Corixa,Hamilton,Mont.)、および他のアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP);ポリオキシエチレンエーテルアジュバント(WO99/52549A1号に記載のものなど);合成イミダゾキノリン(イミキモド [S−26308、R−837](Harrison,ら,Vaccine 19:1820−1826,2001など);およびレシキモド[S−28463、R−848](Vasilakos,ら,Cellular immunology 204:64−74,2000;抗原提示細胞およびT細胞の表面上で構成性発現されるカルボニルおよびアミンのシッフ塩基(ツカレソール(Rhodes,J.ら,Nature 377:71−75,1995)など);タンパク質またはペプチドのいずれかとしてのサイトカイン、ケモカイン、および共刺激分子(例えば、炎症促進性サイトカイン(インターフェロン、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、TGF−α、およびTGF−βなど)、Th1インデューサー(インターフェロンγ、IL−2、IL−12、IL−15、IL−18、およびIL−21など)、Th2インデューサー(IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、およびIL−13など)、ならびに他のケモカインおよび共刺激遺伝子(MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、TCA−3、CD80、CD86、およびCD40Lなど)が含まれる);免疫賦活薬ターゲティングリガンド(CTLA−4およびL−セレクチンなど)、アポトーシス刺激タンパク質およびペプチド(Fasなど);合成脂質ベースのアジュバント(バックスフェクチン(Reyesら,Vaccine 19:3778−3786,2001)、スクアレン、α−トコフェロール、ポリソルベート80、DOPC、およびコレステロールなど);内毒素、[LPS](Beutler,B.,Current Opinion in Microbiology 3:23−30,2000);Th1誘導性サイトカインを産生するようにToll受容体を誘発するリガンド(合成微生物リポタンパク質、微生物タンパク質p19、ペプチドグリカン、テイコ酸、および脂質Aなど);およびCT(コレラ毒素のサブユニットAおよびB)およびLT(大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシンのサブユニットAおよびB)、熱ショックタンパク質ファミリー(HSP)、およびLLO(リステリオリシンO;WO01/72329号)が含まれる。これらおよび種々のさらなるToll様受容体(TLR)アゴニストは、例えば、Kanzler et al,Nature Medicine,May 2007,Vol 13,No 5に記載されている。
【0159】
「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、且ついかなる望ましくない毒物学的影響に影響を及ぼさない塩をいう(例えば、Berge,S.M.,ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。かかる塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸(塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、および亜リン酸など)および非毒性有機酸(脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、ならびに脂肪族および芳香族スルホン酸など)由来の酸付加塩が含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムなど)および非毒性有機アミン(N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、およびプロカインなど)由来の塩基付加塩が含まれる。
【0160】
本発明の組成物を、当該分野で公知の種々の方法によって投与することができる。当業者に認識されるように、投与経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化するであろう。活性化合物を、化合物を急速な放出から保護するキャリア(放出制御処方物(植込錠、経皮貼布、およびマイクロカプセル化送達系が含まれる)など)を使用して調製することができる。生分解性生体適合性ポリマー(エチレンビニルアセタート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸など)を使用することができる。かかる処方物の多数の調製方法に特許権が与えられているか、一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0161】
一定の投与経路によって本発明の化合物を投与するために、その不活化を防止するための物質で化合物をコーティングするか化合物と同時投与する必要があり得る。例えば、適切なキャリア(例えば、リポソームまたは希釈剤)を含む化合物を被験体に投与することができる。薬学的に許容可能な希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝液が含まれる。リポソームには、水/油/水型CGFエマルジョンおよび従来のリポソーム(Strejanら(1984)J.Neuroimmunol.7:27)が含まれる。
【0162】
薬学的に許容可能なキャリアには、滅菌注射液または注射懸濁液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒質および薬剤の使用は当該分野で公知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の薬学的組成物中でのその使用が意図される。追加の活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0163】
治療組成物は、典型的には、製造および保存条件下で無菌且つ安定でなければならない。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適切な他の秩序構造として処方することができる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウム)を組成物中に含めることが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物中に含めることによって注射用組成物の吸収を遅延させることができる。
【0164】
上記列挙の成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、必要に応じてその後に滅菌精密濾過を行うことによって滅菌注射液を調製することができる。一般に、上記列挙の塩基性分散媒および必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルへの活性化合物の組み込みによって分散液を調製する。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、その予め濾過滅菌した溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0165】
最適な所望の反応(例えば、治療反応)が得られるように投薬レジメンを調整する。例えば、単回ボーラスを投与することができるか、いくつかの分割用量を長期間にわたって投与することができるか、治療状況の緊急性に比例して用量を増減することができる。例えば、本発明の抗体を、皮下注射によって1週間に1回または2回投与することができるか、皮下注射によって1ヶ月に1回または2回投与することができる。
【0166】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために単位投薬形態で非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書中で使用する場合、単位投薬形態は、試験すべき被験体の単位投薬量として適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は必要な薬学的キャリアと組み合わせて所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投薬形態の仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴および達成すべき特定の治療効果、および(b)個体の感受性を治療するためのかかる活性化合物の調剤技術に固有の制限によって規定され、これらに直接依存する。
【0167】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には、(1)水溶性抗酸化剤(アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなど);(2)脂溶性抗酸化剤(アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、およびα−トコフェロールなど)、および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸など)が含まれる。
【0168】
治療組成物について、本発明の処方物には、経口、鼻腔内、局所(口内および舌下が含まれる)、直腸、膣および/または非経口投与に適切な処方物が含まれる。処方物を都合よく単位投薬形態で示すことができ、薬学分野で公知の任意の方法によって調製することができる。単回投薬形態を産生するためにキャリア物質と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される被験体および特定の投与様式に応じて変化するであろう。単回投薬形態を産生するためにキャリア物質と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果が得られる組成物の量であろう。一般に、100%のうち、この量は、約0.001%〜約90%の有効成分、好ましくは約0.005%〜約70%、最も好ましくは約0.01%〜約30%の範囲であろう。
【0169】
膣投与に適切な本発明の処方物には、当該分野で適切であることが公知のかかるキャリアを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、または噴霧処方物も含まれる。本発明の組成物の局所または経皮投与のための投薬形態には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性化合物を、薬学的に許容可能なキャリアおよび必要であり得る任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と滅菌条件下で混合することができる。
【0170】
本明細書中で使用する場合、句「非経口投与」および「非経口で投与する」は、腸内および局所投与以外の投与様式(通常、注射による)を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0171】
本発明の薬学的組成物中で使用することができる適切な水性および非水性のキャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびに注射可能な有機エステル(オレイン酸エチルなど)が含まれる。適切な流動性を、例えば、コーティング物質(レシチンなど)の使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0172】
これらの組成物はまた、アジュバント(防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤など)を含むことができる。微生物の存在を、滅菌手順(前出)および種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、およびフェノールソルビン酸など)を含めることの両方によって確実に防止することができる。等張剤(糖および塩化ナトリウムなど)を組成物に含めることも望ましいかも知れない。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収を、吸収を遅延させる薬剤(モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)を含めることによって延長することができる。
【0173】
本発明の化合物を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、本発明の化合物を、単独で投与するか、例えば、0.001〜90%(より好ましくは、0.005〜70%(0.01〜30%など))の有効成分を薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物として投与することができる。
【0174】
選択された投与経路と無関係に、適切な水和形態で使用することができる本発明の化合物および/または本発明の薬学的組成物を、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容可能な投薬形態に処方する。
【0175】
本発明の薬学的組成物中の有効成分の実際の投薬レベルを、患者に有毒でなく特定の患者の望ましい治療反応、組成物、および投与様式を達成するのに有効な有効成分の量が得られるように変化させることができる。選択される投薬レベルは、種々の薬物動態学的要因(使用した本発明の特定の組成物、そのエステル、またはそのアミドの活性、投与経路、投与期間、使用した特定の化合物の排泄率、治療の持続時間、使用した特定の組成物と組み合わせて使用した他の薬物、化合物、および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、および病歴、ならびに医学分野で周知の要因が含まれる)に依存するであろう。当該分野の通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物中で使用される本発明の化合物を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルより低いレベルで投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を段階的に増加させることができる。一般に、本発明の組成物の適切な1日用量は、治療効果を得るのに有効な最も低い用量である化合物の量であろう。かかる有効用量は、一般に、上記要因に依存するであろう。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であることが好ましく、標的部位の近位に投与することが好ましい。必要に応じて、治療組成物の有効な1日用量を、任意選択的に単位投薬形態で1日を通して適切な間隔で個別に投与する2、3、4、5、6、またはそれを超える分割用量として投与することができる。本発明の化合物を単独で投与することが可能であるが、薬学的処方物(組成物)として化合物を投与することが好ましい。
【0176】
治療組成物を、当該分野で公知の医療機器を使用して投与することができる。例えば、好ましい実施形態では、本発明の治療組成物を、無針皮下注射デバイス(米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556に開示のデバイスなど)を使用して投与することができる。本発明で有用な周知のインプラントおよびモジュールの例には、以下が含まれる:米国特許第4,487,603号(制御された速度での投薬のための植込み可能な微量注入ポンプを開示);米国特許第4,486,194号(皮膚を介した薬物の投与のための治療デバイスを開示);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度での薬物送達のための薬物注入ポンプを開示);米国特許第4,447,224号(連続薬物送達のための変流量植込み式注入装置を開示);米国特許第4,439,196号(多室区画を有する浸透圧薬物送達系を開示);および米国特許第4,475,196号(浸透圧薬物送達系を開示)。多数の他のかかるインプラント、送達系、およびモジュールは、当業者に公知である。
【0177】
一定の実施形態では、本発明の抗体を、確実にin vivoで適切に分配されるように処方することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多数の高親水性化合物を排除する。確実に本発明の治療化合物がBBBを通過するために(必要に応じて)、これらを、例えば、リポソーム中に処方することができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送され、それにより、ターゲティングされた薬物送達が増強される1つまたは複数の部分を含むことができる(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照のこと)。例示的なターゲティング部分には、葉酸塩またはビオチン(例えば、Lowらの米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawaら,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owaisら(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)Am.J.Physiol.1233:134)、本発明の処方物および本発明の分子の成分を含むことができる異なる種;p120(Schreierら(1994)J.Biol.Chem.269:9090)が含まれる(K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も参照のこと)。本発明の1つの実施形態では、本発明の治療化合物をリポソーム中に処方し、より好ましい実施形態では、リポソームはターゲティング部分を含む。最も好ましい実施形態では、リポソーム中の治療化合物を、腫瘍または感染の近位にある部位へのボーラス注射によって送達させる。組成物は、容易にシリンジで使用される範囲の流動物でなければならない。組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対して保存されなければならない。
【0178】
化合物が癌を阻害する能力を、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの性質を、当業者に公知のアッセイによる化合物の阻害能力(in vitroでのかかる阻害)の試験によって評価することができる。治療有効量の治療化合物は、被験体における腫瘍サイズを減少させることができるか、そうでなければ、症状を改善することができる。当業者は、被験体のサイズ、被験体の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路などの要因に基づいてかかる量を決定することができるであろう。
【0179】
抗体が種々の標的細胞または病原体に対する抗原提示を増強するか細胞傷害性T細胞(CTL)応答を誘導する能力を、当該分野で周知の方法に従って評価することもできる。
【0180】
組成物は、無菌であり、且つ組成物がシリンジによって送達可能な範囲の流動物でなければならない。水に加えて、キャリアは、等張緩衝化生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、および塩化ナトリウム)を組成物中に含めることが好ましい。吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩またはゼラチン)を組成物中に含めることによって注射用組成物の吸収を延長ことができる。
【0181】
活性化合物が適切に保護される場合、上記のように、化合物を、例えば、不活性希釈物または吸収可能な食用キャリアと共に経口投与することができる。
【0182】
IV.本発明の使用および方法
1つの実施形態では、本発明の抗体、二重特異性分子、および分子抱合体を使用して、種々の疾患および容態を治療および/または防止(例えば、免疫化)することができる。
【0183】
本発明の抗体を使用して治療することができる原発性疾患の適応症の1つは癌である。これには、結腸癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌腫、膵臓癌腫、膀胱癌腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、肥満細胞腫、乳腺腺癌、白血病、またはリウマチ様線維芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。別の原発性疾患の適応症は、感染症(HIV、肝炎(例えば、A、B、およびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア属、マラリア、リーシュマニア属、黄色ブドウ球菌、緑膿菌が含まれるが、これらに限定されない)である。別の原発性疾患の適応症には、自己免疫疾患が含まれる。
【0184】
治療で使用するために、本発明のワクチン抱合体を、単独または免疫賦活薬と共に被験体に直接(すなわち、in vivoで)投与することができる。1つの態様では、免疫賦活薬を抱合体に連結する。あるいは、最初に抱合体をAPC(樹状細胞など)と接触させ(例えば、培養またはインキュベーションによる)、その後に被験体に細胞を投与する(すなわち、ex vivoで)ことによって、抱合体を被験体に直接投与することができる。投与前に抱合体がAPCによってプロセシングおよび提示されるような抱合体のAPCとの接触および送達も、抗原または細胞「負荷」という。APCへの抗原負荷技術は当該分野で周知であり、例えば、Gunzer and Grabbe,Crit Rev Immunol 21(1−3):133−45(2001)およびSteinman,Exp Hematol 24(8):859−62(1996)が含まれる。
【0185】
全ての場合において、ワクチン抱合体および免疫賦活薬を、その所望の治療効果を発揮するのに有効な量で投与する。用語「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するのに必要であるか十分な量をいう。例えば、有効量は、腫瘍、癌、または細菌、ウイルス、もしくは真菌の感染を排除するのに必要な量であり得る。任意の特定の適用についての有効量は、治療を受ける疾患もしくは容態、投与される特定の抱合体、被験体のサイズ、または疾患もしくは容態の重症度などの要因に応じて変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とせずに特定の多重特異性分子の有効量を経験的に決定することができる。
【0186】
ワクチン抱合体に好ましい投与経路には、例えば、注射(例えば、皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内)が含まれる。注射は、ボーラス注射または連続注入であり得る。他の投与経路には、経口投与が含まれる。
【0187】
本発明のワクチン抱合体を、アジュバントおよび他の治療薬と同時投与することもできる。本明細書中で使用する場合、用語「投与する」には、本発明の抗体および抱合体とアジュバントおよび他の薬剤の同時投与、個別の投与、または連続投与(投与レジメンの一部としての投与が含まれる)が含まれると認識されるであろう。抱合体を、典型的には、薬学的に許容可能なキャリアのみまたはかかる薬剤と組み合わせて処方する。かかるキャリアの例には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、およびエマルジョンなどが含まれる。薬学的活性物質のためのかかる媒質の使用は当該分野で周知である。分子との使用に適切な任意の他の従来のキャリアは、本発明の範囲内に含まれる。
【0188】
ワクチン抱合体との同時投与に適切な薬剤には、他の抗体、細胞毒素、および/または薬物が含まれる。1つの実施形態では、薬剤は、免疫応答を補助するか誘導することが公知の抗CTLA−4抗体である。別の実施形態では、薬剤は化学療法薬である。ワクチン抱合体を、照射と組み合わせて投与することもできる。
【0189】
腫瘍の治療における本発明の抗体および抱合体との同時投与に適切な化学療法薬には、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログまたはホモログが含まれる。さらなる薬剤には、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、およびテモゾロミドが含まれる。
【0190】
例えば、免疫細胞(例えば、調節性T細胞、NKT細胞、マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞、未成熟または抑制性樹状細胞)によって免疫抑制活性を欠失または阻害する薬剤または、腫瘍または腫瘍の局所微小環境中の宿主細胞によって産生される抑制因子(例えば、TGFβ、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ−IDO)を、本発明の抗体および抱合体と共に投与することもできる。かかる薬剤には、抗体および小分子薬物(1メチルトリプトファンまたは誘導体などのIDOインヒビターなど)が含まれる。
【0191】
別の実施形態では、本発明の抗体を使用して、自己免疫障害、免疫系障害、または炎症性障害(樹状細胞による免疫調節に関連する異常または望ましくない免疫活性によって特徴づけられる障害)を有する被験体を治療することができる。本発明の抗樹状細胞での治療から恩恵を受け得る自己免疫障害、免疫系障害、および炎症性障害には、関節リウマチ、多発性硬化症、免疫化介在性糖尿病または1型真性糖尿病、重症筋無力症、悪性貧血、アジソン病、シェーグレン症候群、乾癬、エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、強皮症/レイノー症候群、ライター症候群、および自己免疫性甲状腺疾患(橋本甲状腺炎およびグレーブス病など)が含まれる。例えば、自己免疫障害を罹患した被験体は、自己抗原の樹状細胞媒介性提示の阻害から恩恵を受け得る。
【0192】
本発明の抗体を、アレルギーおよびアレルギー性障害の全ての形態(アレルギー性眼科障害(アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季角結膜炎、および巨大乳頭性結膜炎が含まれる);アレルギー性鼻部障害(アレルギー性鼻炎および副鼻腔炎が含まれる);アレルギー性耳障害(耳管掻痒が含まれる);上気道および下気道のアレルギー性障害(内因性喘息および外因性喘息が含まれる);アレルギー性皮膚障害(皮膚炎、湿疹、および蕁麻疹が含まれる);およびアレルギー性胃腸管障害が含まれるが、これらに限定されない)の防止および治療のために使用することもできる。
【0193】
かかる免疫障害の治療のための本発明の抗体との同時投与に適切な薬剤には、例えば、免疫抑制薬(ラパマイシン、シクロスポリン、およびFK506など);抗TNFa薬(エタネルセプト、アダリムマブ、およびインフリキシマブなど);およびステロイドが含まれる。特定の天然ステロイドおよび合成ステロイドの例には、例えば、アルドステロン、ベクロメタゾン、βメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、イコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、およびトリアムシノロンが含まれる。
【0194】
本発明の抗DEC−205抗体を使用して治療することができる疾患の1つの例には、移植片拒絶および移植片対宿主疾患が含まれる。
【0195】
移植片拒絶
ここ数年、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、および骨髄などの組織および臓器の外科的移植技術の効率が非常に改善されている。おそらく、主な未解決の問題は、レシピエントにおける移植した同種移植片または臓器に対する免疫寛容を誘導するのに満足なな薬剤の欠如である。同種細胞または同種臓器を宿主に移植する場合(すなわち、ドナーおよび被提供者が同種由来の異なる個体である)、宿主免疫系は移植片中の外来抗原に対して免疫応答を開始し(宿主対移植片疾患)、それにより、移植組織が破壊される可能性が高い。CD8+細胞、CD4+細胞、および単球は全て移植用組織の拒絶に関与する。本発明の抗体は、被提供者における樹状細胞媒介性の同種抗原誘導性免疫応答を阻害し、それにより、かかる細胞の移植組織または臓器の破壊の関与を防止するのに有用である。
【0196】
移植片対宿主疾患
本発明の抗体の関連する用途は、「移植片対宿主」疾患(GVHD)に関与する免疫応答の調整での使用である。GVHDは、免疫適格細胞を同種レシピエントに導入した場合に起こる潜在的に致命的な疾患である。この状況では、ドナーの免疫担当細胞がレシピエント中の組織に攻撃し得る。皮膚、腸上皮、および肝臓の組織は常習的な標的であり、一連のGVHD中に破壊され得る。この疾患は骨髄移植などにおいて免疫組織が移植された場合に特に深刻な問題を示すが、他の症例(心臓移植および肝臓移植が含まれる)でも重症度の低いGVHDが報告されている。本発明の治療薬を使用して、宿主抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)の活性を阻害する。
【0197】
本発明を、さらに、以下の実施例によってさらに例示するが、実施例によってさらに制限されると解釈すべきではない。本出願を通して引用された配列表、図面、ならびに全てのリファレンス、特許、および公開された特許出願の内容は、本明細書中で参考として明確に援用される。
【実施例】
【0198】
(実施例1)
DEC−205特異的ヒトモノクローナル抗体(HuMab)の生成
ヒト抗DEC−205モノクローナル抗体を、HuMAb(登録商標)トランスジェニックマウス(「HuMab」はMedarex,Inc.,Princeton,New Jerseyの登録商標である)のHC2/KCo7株の可溶性ヒトDEC−205抗原での免疫化によって生成した。HC2/KCo7 HuMAbマウスを、米国特許第5,770,429号および同第5,545,806号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように生成した。
【0199】
抗原および免疫化:抗原は、抗体Fcドメインと融合したDEC−205細胞外ドメイン(10個全てのレクチン結合ドメインを含む)を含む可溶性融合タンパク質であった。ヒトDEC−205の核酸配列およびアミノ酸配列は、PCT特許公開番号WO96023882号(Steinman)に記載されている。抗原を、最初の免疫化のためのフロイント完全(Sigma)アジュバントと混合した。その後、抗原をフロイント不完全(Sigma)アジュバントと混合した。さらなるマウスを、可溶性DEC−205タンパク質を含むRIBI MPL plus TDMアジュバント系(Sigma)で免疫化した。5〜25μgの可溶性組換えDEC−205抗原を含むPBSまたはヒトDEC−205の表面発現のためにトランスフェクションした5×10CHO細胞を含むPBSを、アジュバントと1:1で混合した。マウスの腹膜腔内に、100μlの調製した抗原を14日毎に注射した。抗DEC−205力価を生じた動物に、10μgの可溶性組換えDEC−205抗原を融合の3〜4日前にiv注射した。マウス脾臓を採取し、単離下脾細胞をハイブリドーマ調製のために使用した。
【0200】
ハイブリドーマの調製:P3x63Ag8.653マウス骨髄腫細胞株(ATCC CRL1580)を融合のために使用した。10%FBSを含むRPMI1640(Invitrogen)を使用して、骨髄腫細胞を培養した。さらなる培地用サプリメントをハイブリドーマ成長培地に添加した。この培地は、3%Origen−ハイブリドーマクローニング因子(Igen)、10%FBS(Sigma)、L−グルタミン(Gibco)、0.1%ゲンタマイシン(Gibco)、2−メルカプトエタノール(Gibco)、HAT(Sigma;1.0×10Mヒポキサンチン、4.0×10−7Mアミノプテリン、1.6×10−5Mチミジン)、またはHT(Sigma;1.0×10−4Mヒポキサンチン、1.6×10−5Mチミジン)培地を含んでいた。
【0201】
脾臓細胞を653骨髄腫細胞と6:1の比率で混合し、遠心分離によってペレット化した。融合を容易にするために慎重に混合しながらポリエチレングリコールを滴下した。ハイブリドーマを、視覚可能なコロニーが確立されるようになるまで1〜2週間成長させた。上清を採取し、ヒトκ鎖特異的捕捉を使用したELISAおよびヒトFc特異的検出によってヒトIgGの最初のスクリーニングのために使用した。次いで、IgG陽性上清を、フローサイトメトリーまたはDEC−205ELISAの使用によってDEC−205特異性についてアッセイした。
【0202】
特異的HuMabIgGを産生するハイブリドーマをサブクローニングし、拡大した。次いで、産生されたHuMabを、標準的な条件にしたがったプロテインAカラムクロマトグラフィによって精製して、特に興味深い多数の抗体を単離した。
【0203】
(実施例2)
表面プラズモン共鳴(SPR)によるHuMabの親和定数および速度定数の決定
実施例1由来の種々のヒト抗DEC−205抗体の結合親和性および結合反応速度を、製造者のガイドラインにしたがってBiacore(商標)2000SPR装置(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用したBiacore(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析によって試験した。
【0204】
精製した組換えヒトDEC−205融合物(またはコントロール)のタンパク質を、製造者のガイドラインに従ってBiacore提供のアミンカップリングキット(BIAcore製品番号BR−1000−50、カップリング試薬N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)を含む)を使用した標準的なアミンカップリング化学を使用してBiacore(商標)CM5センサチップ(金表面と共有結合したカルボキシメチル化デキストラン;Biacore製品番号BR−1000−14)に共有結合させた。低レベルのリガンドを固定して、認められたRMAXがほぼ200RUであるように動態パラメータに及ぼす分析物の任意の物質移行の影響を制限した。
【0205】
HBS−NP緩衝液(HBS−N緩衝液、Biacore製品番号BR−1003−69:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)0.24%、塩化ナトリウム0.88%、十分量の水を含み、ろ過/脱気し、P20の2000倍希釈物で室温に予め平衡化した)中のセンサチップ上に抗体を1.25〜200nMの濃度および流速35μl/分で流すことによって結合を測定した。抗原−抗体の会合速度および解離速度を、それぞれの場合についておよそ300〜600秒間追跡した。
【0206】
「バックグラウンド」減算のために無関係のタンパク質を使用して、各場合における対応するコントロール実験を行った。18mM NaOHの35μl/分で17秒間の単回注射を、研究を通して再生条件として使用した。
【0207】
それぞれの場合にBiacoreの動態学ウィザードを使用して、HBS−NPランニング緩衝液で希釈した一連の濃度の分析物から動態パラメータを誘導した。製造者のガイドラインに従ってBiacore(商標)動態学ウィザードソフトウェア(Biacore AB)を使用して、会合および解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした。決定した親和性パラメータおよび動態パラメータ(バックグラウンド減算した)を、以下の表1に示す。各抗体について、示した図は、それぞれの場合に個別に調製したセンサチップを使用した2つの個別の一連の実験の平均である(ここで、ka=会合速度定数、kd=解離速度定数、K=解離平衡定数(親和性の基準)、K=会合平衡定数、Rmax=最大SPR応答シグナル)。
【0208】
【表1】

(実施例3)
ヒトDEC−205を発現する細胞へのHuMabsの結合
抗DEC−205HuMabがその表面上のヒトDEC−205を発現するCHO−S細胞上のDEC−205に結合する能力を、以下のようにフローサイトメトリーによって調査した。
【0209】
その表面上のヒトDEC−205を発現するCHO−S細胞への結合について抗体を試験した。プロテインA精製したHuMabである3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10を、ヒトDEC−205を発現するCHO−S細胞およびCHO−Sコントロール細胞と4℃でインキュベートした。全抗体を、飽和濃度で使用した。1時間後、細胞を、0.1%BSAおよび0.05%NaN(PBA)を含むPBSで洗浄し、結合した抗体を、PE標識したヤギ抗ヒトIgGFc特異的プローブとの細胞の4℃でのインキュベーションによって検出した。過剰なプローブをPBAを使用して細胞から洗い流し、細胞に結合した蛍光を、製造者の説明書にしたがってLSR(商標)装置(BD Biosciences,NJ,USA)を使用した分析によって決定した。結果を図1に示す。
【0210】
図1に示すように、HuMabは、ヒトDEC−205を発現するCHO−S細胞への高レベルの結合を示した。これらのデータは、これらの抗体がコントロール細胞を比較して生きているCHO−S細胞上に発現したヒトDEC−205に有効且つ特異的に結合することを証明する。
【0211】
(実施例4)
ヒト樹状細胞へのHuMabの結合
ヒト末梢血単核球(PBMC)を、Leukopak血小板除去調製物の密度勾配遠心分離によって得た。単球を、2時間の組織培養フラスコへの接着によって単離し、次いで、2ng/ml GM−CSFおよび10ng/ml IL−4を含むマクロファージ無血清培地(Gibco)との5〜7日間のインキュベーションによって樹状細胞に分化させた。
【0212】
抗DEC−205 HuMabが上記のように調製したヒト樹状細胞上のDEC−205に結合する能力を、以下のようにフローサイトメトリーによって調査した。
【0213】
プロテインA精製したHuMabである3D6−2F2、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9、3C7−3A3、5D12−5G1、1G6−1G6、および3A4−1C10、ならびにアイソタイプコントロール(ヒトIgG)を、ヒト樹状細胞と4℃でインキュベートした。全抗体を飽和濃度で使用した。1時間後、細胞を、0.1%BSAおよび0.05%NaN(PBA)を含むPBSで洗浄し、結合した抗体をPE標識したヤギ抗ヒトIgG Fc特異的プローブとの細胞の4℃でのインキュベーションによって検出した。過剰なプローブをPBAを使用して細胞から洗い流し、細胞に結合した蛍光を、製造者の説明書にしたがってLSR(商標)装置(BD Biosciences、NJ、USA)を使用した分析によって決定した。結果を図2に示す。これは、HuMabがアイソタイプコントロールと比較してヒト樹状細胞への高レベルの結合を示すことを示す。
【0214】
(実施例5)
DEC−205に対するHuMAbの結合特性を決定するためのELISAアッセイ
マイクロタイタープレートを可溶性DEC−205/Fc融合タンパク質を含むPBSでコーティングし、次いで、5%ウシ血清アルブミンを含むPBSでブロッキングした。プロテインA精製したHuMabおよびアイソタイプコントロールを飽和濃度で添加し、37℃でインキュベートした。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで、アルカリホスファターゼに抱合したヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬と37℃でインキュベートした。洗浄後、プレートをpNPP基質(1mg/ml)で発色させ、マイクロタイタープレートリーダーを使用してOD405〜650で分析した。結果を図3に示す。これは、アイソタイプコントロールと比較してHuMabが高レベル結合を示すことを示す。
【0215】
(実施例6)
抗体内在化アッセイ
ヒト単球由来樹状細胞5×10/アリコートをヒトIgG(1mg/ml)とインキュベートして、非特異的結合をブロッキングした。次いで、細胞を、結合のために100μg/mlのFITC抱合抗Dec−205HuMabである3G9−2D2を含むブロッキング緩衝液と氷上で30分間インキュベートし、内在化のためにその後に37℃に0、10、30、60、および120分間移した。同一濃度のFITC抱合ヒトIgG1をコントロールとして使用した。次いで、細胞を洗浄し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。固定した細胞を洗浄し、水に再懸濁し、顕微鏡スライド上にサイトスピンした。Zeiss LSM510 Meta共焦点顕微鏡で画像を捕捉した。結果を図4に示す。これは、FITC標識HuMabがコントロールと比較して樹状細胞に有効に内在化されることを示すことを示す。
【0216】
(実施例7)
抗体の配列決定
実施例1に記載するように、特異的HuMab IgGを産生するハイブリドーマ由来のHuMabをプロテインAカラムクロマトグラフィによって精製し、特に興味深い8つの抗体(「HuMab」)が単離された。HuMabである3D6−2F4、3D6−4C8、3G9−2D2、5A8−1F1、2D3−1F5−2A9(V領域)、3C7−3A3、1E6−3D10(V領域)、および5C3−2−3F6のVおよびVコード領域を、対応するハイブリドーマ由来のRNAを使用して同定した。RNAをcDNAに逆転写し、Vコード領域をPCRによって増幅し、PCR産物を配列決定した。以下は、HuMabのVおよびV領域の核酸配列およびアミノ酸配列である(アミノ酸配列の場合、相補性決定領域(CDR)に下線を引いている)。
【0217】
【化1】

【0218】
【化2】

【0219】
【化3】

【0220】
【化4】

【0221】
【化5】

【0222】
【化6】

【0223】
【化7】

【0224】
【化8】

【0225】
【化9】

【0226】
【化10】

【0227】
【化11】

【0228】
【化12】

参照のために、提案した対応する生殖系列配列のアミノ酸配列(偏見なく割り当てた)を以下に示す。
【0229】
【化13】

【0230】
【化14】

例示のみを目的として、提案した対応する生殖系列配列に対するV配列およびV配列の配列アラインメントを図5に示す。
【0231】
(実施例8)
3G9−βhCG APCターゲティングしたワクチン抱合体
DEC−205ターゲティングしたワクチン抱合体を、上記実施例7由来のHuMab 3G9−2D2(カニクイザルDEC−205との交差反応性も決定されている)へのβhCG抗原の連結によって生成した。遺伝子融合による抗体重鎖への抗原の共有結合によって連結した。
【0232】
抗体3G9−2D2重鎖のCH3ドメインおよび3G9−2D2軽鎖に融合したβhCGコード配列を含む、ネオマイシンおよびジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を含むプラスミドを生成した。得られたプラスミド構築物を、標準的プロトコール(Qiagen Inc,Valencia,CA)を使用してCHO細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を、抗生物質G418を含む培地中で選択した。選択後、細胞を限界希釈によってクローニングし、安定なクローン株を使用して、さらなる研究のための細胞バンクを生成した。3G9−βhCG構築物の発現を確認するために、還元条件下および非還元条件下にてSDS−PAGEで泳動したタンパク質のウェスタンブロット分析を行った。この融合タンパク質は、推定分子量であり、且つ適切にアセンブリされていることが認められた(すなわち、重鎖融合物および軽鎖の両方を含む)。具体的には、ワクチン抱合体および抗体のみを、変性条件を使用したSDS−PAGEによって分析し、ウェスタンブロット分析によって検出した。次いで、ブロットを、ヤギ抗ヒトIgGおよびβhCG C末端ペプチドに特異的なmAb(US Biologicals)を使用して個別に探索した。結果により、融合産物の適切なサイズおよび組成によって証明されるように、形質転換したCHO細胞が3G9−βhCGワクチン抱合体を特異的に発現したことが確認された。
【0233】
(実施例9)
3G9−βhCG APCターゲティングしたワクチン抱合体を使用した抗原特異的活性
抗原提示可能な細胞はヒト起源であり、末梢血単核球(PBMC)、単球(THP−1)、Bリンパ芽球様細胞(C1R.A2、1518B−LCL)、および単球由来DCの多岐にわたっている。全細胞は、フローサイトメトリーによって評価した場合にDEC−205の細胞表面発現について陽性であった。
【0234】
ベクターpk:3G9−hCGβをCHO細胞にトランスフェクションした。安定なクローンをG418を使用して選択し、その後にサブクローニングした。上清中の細胞によって産生された融合タンパク質(3G9−βhCGワクチン抱合体;実施例8)を回収し、プロテインAカラムで精製した。
【0235】
T細胞を、通常の健康なドナーのロイコパックから得た。3G9−hCGβでターゲティングした自己DCでの2〜3週間毎の刺激によって抗原特異的T細胞をin vitroで生成し、CD8+およびCD4+T細胞について富化した後、GrBまたはIFNγELISpotアッセイ(MabTech)によって種々のAPC(上記)を使用して抗原特異的活性について試験した。サイトカインIL−7およびIL−2を添加して、3〜4日毎にエフェクターの増殖および活性を維持した。抗原特異的T細胞を、Miltenyi−MACST細胞増殖キットにて低用量のIL−2の存在下で10〜12日間増殖させた。CD40L(Alexis Biochemicals)を使用して、DCの成熟を誘導した。図9Aに示すように、CD8+T細胞応答をDCおよび単球(THP−1)で達成し、Bリンパ芽球様細胞(図9B)で達成した。したがって、DEC−205受容体を介したB細胞への抗原ターゲティングにより、MHC−クラスI拘束T細胞が刺激された。
【0236】
等価物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するか確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離ヒトモノクローナル抗体であって、該抗体が、ヒト樹状細胞および上皮細胞205受容体(DEC−205)に結合し、以下の性質:
(a)表面プラズモン共鳴によって決定した場合に少なくとも10−1の親和定数でヒトDEC−205に結合すること;
(b)DEC−205を発現するヒト樹状細胞への結合後に内在化すること;
(c)抗原に対するヒトCD4+T細胞応答を生成または増強すること;
(d)抗原に対するヒトCTLまたはNKT応答を生成または増強すること;
(e)樹状細胞中の抗原プロセシング区画に局在すること、または
(f)末梢CD8T細胞寛容を誘導すること
の少なくとも1つを示す、単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記ヒトT細胞応答が、MHCクラスI経路またはMHCクラスII経路またはその両方のいずれかによって媒介される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトDEC−205の細胞外ドメイン上に存在するエピトープに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項4】
ヒトDEC−205に結合し、(a)ヒト生殖系列V3−33遺伝子を使用し、(b)配列番号95と比較して配列番号28、4、16、40、52、76、および88のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項5】
ヒトDEC−205に結合し、(a)ヒト生殖系列Orph−C16遺伝子を使用し、(b)配列番号96と比較して配列番号64および70のいずれかにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項6】
前記抗体が、(a)ヒト生殖系列VK3−L6遺伝子を使用し、配列番号92と比較して配列番号34、46、58のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み、(b)ヒト生殖系列VK1−L4遺伝子を使用し、配列番号93と比較して配列番号22または82にアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み、(c)ヒト生殖系列VK1−L15遺伝子を使用し、配列番号94と比較して配列番号10にアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む領域からなる群から選択される軽鎖可変領域をさらに含む、請求項4または5に記載の抗体。
【請求項7】
単離モノクローナル抗体であって、前記抗体は、ヒトDEC−205に結合し、
(i)ヒト生殖系列V3−33遺伝子を使用し、配列番号95と比較して配列番号28、4、16、40、52、76、および88のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含むか、
(ii)ヒト生殖系列Orph−C16遺伝子を使用し、配列番号96と比較して配列番号64および70のいずれかにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む、重鎖可変領域を含み、
前記抗体は、
(a)ヒト生殖系列VK3−L6遺伝子を使用し、配列番号92と比較して配列番号34、46、58のいずれか1つにアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含むか、
(b)ヒト生殖系列VK1−L4遺伝子を使用し、配列番号93と比較して配列番号22または82にアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含むか、
(c)ヒト生殖系列VK1−L15遺伝子を使用し、配列番号94と比較して配列番号10にアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む、軽鎖可変領域をさらに含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項8】
単離モノクローナル抗体であって、前記抗体は、ヒトDEC−205に結合し、配列番号28、4、16、40、52、64、70、76、または88およびその保存的配列修飾物からなる群から選択される重鎖可変領域ならびに配列番号34、10、22、46、58、または82およびその保存的配列修飾物からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項9】
ヒトDEC−205に結合する単離モノクローナル抗体であって、前記抗体は、
CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびに
CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号31、7、19、43、55、67、73、79、91、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項10】
前記軽鎖可変領域CDR3配列が、配列番号37、13、25、49、61、85、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記重鎖可変領域CDR2配列が、配列番号30、6、18、42、54、66、72、78、90、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域CDR2配列が、配列番号36、12、24、48、60、84、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
前記重鎖可変領域CDR1配列が、配列番号29、5、17、41、53、65、71、77、89、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域CDR1配列が、配列番号35、11、23、47、59、83、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択される、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記保存的配列修飾物が保存的アミノ酸置換物である、請求項9から12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
ヒトDEC−205に結合し、以下:
(i)配列番号29を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号30を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR3;
またはその保存的配列修飾物;
(ii)配列番号17を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号18を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号19を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号23を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号24を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号25を含む軽鎖可変領域CDR3;
またはその保存的配列修飾物;
(iii)配列番号5を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号6を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号7を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号11を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号12を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号13を含む軽鎖可変領域CDR3;
その保存的配列修飾物;
(iv)配列番号41を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号42を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号43を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号48を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号49を含む軽鎖可変領域CDR3;
またはその保存的配列修飾物;
(v)配列番号53を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号54を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号55を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号59を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号60を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号61を含む軽鎖可変領域CDR3;
またはその保存的配列修飾物;および
(viii)配列番号77を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号78を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号79を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号83を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号84を含む軽鎖可変領域CDR2;
配列番号85を含む軽鎖可変領域CDR3;
またはその保存的配列修飾物
からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項15】
ヒトDEC−205に結合し、以下:
配列番号29を含む重鎖可変領域CDR1;
配列番号30を含む重鎖可変領域CDR2;
配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3;
配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR1;
配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR2;および
配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項16】
ヒトDEC−205に結合する単離モノクローナル抗体であって、前記抗体が、
CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびに
CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域CDR3配列が、コンセンサス配列:(A,G,Y,S,P,−)(P,W,S,R)(Y,A,H)FD(Y,L,V)(配列番号99)から選択されるアミノ酸配列を含む(ここで、「−」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)、単離モノクローナル抗体。
【請求項17】
前記軽鎖可変領域CDR3配列が、コンセンサス配列:QQ(R,Y,F)(R,N)(T,S,N)(Y,W,−)(P,−)(Y,L,H,−)(T,−)(配列番号102)から選択されるアミノ酸配列を含む(ここで、「−」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
前記重鎖可変領域CDR2配列が、コンセンサス配列:(V,I,F,T,A)I(W,G)(Y,T)(D,G)G(S,G,Y)(N,T)(K,P)Y(Y,A,V)(A,G,−)DSVKG(配列番号98)(ここで、「−」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域CDR2配列が、コンセンサス配列:(D,A)AS(N,S)(R,L)(A,Q,E)(T,S)(配列番号101)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
前記重鎖可変領域CDR1配列が、コンセンサス配列:(I,N,T,S)Y(G,N,A)M(H,Y)(配列番号97)から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域CDR1配列が、コンセンサス配列:RASQ(S,G)(I,V)SS(Y,W,A)LA(配列番号100)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
ヒトDEC−205に結合し、以下:
(i)コンセンサス配列:(I,N,T,S)Y(G,N,A)M(H,Y)(配列番号97)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(ii)コンセンサス配列:(V,I,F,T,A)I(W,G)(Y,T)(D,G)G(S,G,Y)(N,T)(K,P)Y(Y,A,V)(A,G,−)DSVKG(配列番号98)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(iii)コンセンサス配列:(A,G,Y,S,P,−)(P,W,S,R)(Y,A,H)FD(Y,L,V)(配列番号99)から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(iv)コンセンサス配列:RASQ(S,G)(I,V)SS(Y,W,A)LA(配列番号100)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(v)コンセンサス配列:(D,A)AS(N,S)(R,L)(A,Q,E)(T,S)(配列番号101)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
(vi)コンセンサス配列:QQ(R,Y,F)(R,N)(T,S,N)(Y,W,−)(P,−)(Y,L,H,−)(T,−)(配列番号102)から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3(ここで、「−」はその共通の位置にアミノ酸残基が存在しないというオプションを示す)
からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項21】
ヒトDEC−205に結合し、配列番号28、4、16、40、52、64、70、76、88、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項22】
配列番号34、10、22、46、58、82、およびその保存的配列修飾物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】
ヒトDEC−205に結合し、以下:
(a)それぞれ配列番号28および34ならびにその保存的配列修飾物;
(b)それぞれ配列番号16および22ならびにその保存的配列修飾物;
(c)それぞれ配列番号4および10ならびにその保存的配列修飾物;
(d)それぞれ配列番号40および46ならびにその保存的配列修飾物;
(e)それぞれ配列番号52および58ならびにその保存的配列修飾物;
(d)それぞれ配列番号76および82ならびにその保存的配列修飾物
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項24】
ヒトDEC−205に結合し、アミノ酸配列である配列番号28を含む重鎖可変領域およびアミノ酸配列である配列番号34を含む軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項25】
ヒトDEC−205に結合し、配列番号28、4、16、40、52、64、70、76、および88からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項26】
配列番号34、10、22、46、58、および82からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
ヒトDEC−205に結合し、以下:
(a)それぞれ配列番号28および34;
(b)それぞれ配列番号16および22;
(c)それぞれ配列番号4および10
(d)それぞれ配列番号40および46;
(e)それぞれ配列番号52および58;および
(f)それぞれ配列番号76および82
からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項28】
ヒトDEC−205に結合し、アミノ酸配列である配列番号28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域およびアミノ酸配列である配列番号34と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項29】
ヒトDEC−205に結合し、配列番号28、4、16、40、52、64、70、76、および88からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域または前記重鎖可変領域のフレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が対応する生殖系列残基と置換された配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項30】
配列番号34、10、22、46、58、および82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域または前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基が対応する生殖系列残基と置換された配列をさらに含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
前記少なくとも1つの置換アミノ酸残基が、抗原と直接非共有結合する残基;CDRに隣接する残基;CDR相互作用残基;VL−VH界面に関与する残基、カノニカル残基、バーニアゾーン残基、および鎖間充填残基からなる群から選択される、請求項29または30に記載の抗体。
【請求項32】
前記抗体が、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、IgM抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgAsec抗体、IgD抗体、およびIgE抗体からなる群から選択される、請求項1〜31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項33】
請求項1から2または4から31のいずれか1項に記載の抗体と結合を競合する単離抗体。
【請求項34】
ヒトDEC−205に結合する単離モノクローナル抗体であって、前記抗体が、以下:
(a)それぞれ配列番号26および32;
(b)それぞれ配列番号14および20;
(c)それぞれ配列番号2および8;
(d)それぞれ配列番号38および44;
(e)それぞれ配列番号50および56;および
(f)それぞれ配列番号74および80;
または(a)〜(f)の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列からなる群から選択される核酸配列によってコードされる重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項35】
前記抗体がヒト抗体である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
ヒトDEC−205に結合する抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖と重鎖の両方の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項37】
請求項1から34のいずれか1項に記載のヒトDEC−205に結合する抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖と重鎖の両方の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項38】
請求項36または37に記載の発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項39】
抗原に連結した請求項1から34のいずれか1項に記載の抗体を含む分子抱合体。
【請求項40】
前記抗原が病原体成分を含む、請求項39に記載の分子抱合体。
【請求項41】
前記抗原が、腫瘍抗原、アレルゲン、または自己抗原を含む、請求項39に記載の分子抱合体。
【請求項42】
前記抗原が腫瘍抗原を含む、請求項39に記載の分子抱合体。
【請求項43】
前記腫瘍抗原が、βhCG、gp100またはPmel17、HER2/neu、WT1、メソセリン、CEA、gp100、MART1、TRP−2、NY−BR−1、NY−CO−58、MN(gp250)、イディオタイプ、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC−1、MART1、メラン−A、NY−ESO−1、MAGE−1、MAGE−3、MAGE−A3、および高分子量黒色腫関連抗原(HMW−MAA)からなる群から選択される、請求項42に記載の分子抱合体。
【請求項44】
前記腫瘍抗原が、βhCG、NY−ESO−1、メソセリン、またはHER2/neu由来の配列である、請求項43に記載の分子抱合体。
【請求項45】
前記抗原が、HIV、HPV、HBV、またはHCVに由来する、請求項40に記載の分子抱合体。
【請求項46】
治療薬をさらに含む、請求項40から45のいずれか1項に記載の分子抱合体。
【請求項47】
前記治療薬が、細胞毒性薬、免疫抑制薬、および化学療法薬からなる群から選択される、請求項46に記載の分子抱合体。
【請求項48】
抗体と異なる結合特異性を有する分子に連結した請求項1から34のいずれか1項に記載の抗体を含む二重特異性分子。
【請求項49】
請求項1から34に記載の抗体、請求項39から47のいずれか1項に記載の分子抱合体、または請求項48に記載の二重特異性分子、および薬学的に有効なキャリアを含む組成物。
【請求項50】
治療薬をさらに含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記薬剤が免疫抑制薬である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記治療薬が抗体である、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR5アゴニスト、TLR6アゴニスト、TLR7アゴニスト、LTR8アゴニスト、またはTLR9アゴニストから選択される免疫賦活薬を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項54】
請求項49に記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体におけるDEC−205への抗原のターゲティング方法。
【請求項55】
請求項49に記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体における抗原に対する免疫応答を誘導または増強する方法。
【請求項56】
前記免疫応答が、MHC−I抱合体および/またはMHC−II抱合体の成分としての抗原の提示を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
抗原に対するT細胞媒介性応答を誘導または増強する様式で、抗原がプロセシングされてT細胞に提示されるように、請求項49に記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、抗原に対する被験体のT細胞媒介性免疫応答を誘導または増強する方法。
【請求項58】
前記T細胞応答がCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方によって媒介される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記T細胞応答が細胞傷害性T細胞またはヘルパーT細胞によって媒介される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
請求項49に記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体を免疫化する方法。
【請求項61】
前記組成物を樹状細胞によるサイトカイン放出を誘導するのに十分な量で投与する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
有効量の請求項48に記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体の障害を治療する方法。
【請求項63】
前記障害が、結腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、腎癌、肝臓癌、食道癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌腫、膵臓癌腫、膀胱癌腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、肥満細胞腫、乳腺腺癌、白血病、およびリウマチ様線維芽細胞腫からなる障害の群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記障害が、細菌、真菌、ウイルス、および寄生虫の感染症からなる障害の群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記障害が、アレルギー、移植片拒絶、および自己免疫疾患からなる障害の群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記障害が、関節リウマチ、多発性硬化症、1型真性糖尿病、重症筋無力症、悪性貧血、アジソン病、シェーグレン症候群、乾癬、エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、レイノー症候群、ライター症候群、橋本甲状腺炎、またはグレーブス病からなる自己免疫障害の群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
生物学的サンプル中のDEC−205の有無を検出する方法であって、
(a)生物学的サンプルを請求項1から34のいずれか1項に記載の抗体と接触させる工程であって、前記抗体が検出可能な物質で標識されている、接触させる工程、および
(b)DEC−205に結合した前記抗体を検出し、それにより、前記生物学的サンプル中のDEC−205の有無を検出する工程
を含む、方法。
【請求項68】
B細胞がMHCクラスI拘束性T細胞を刺激するように抗原に連結したB細胞の表面上の受容体に結合する分子を含む分子抱合体を被験体に投与する工程を含む、被験体におけるB細胞に抗原をターゲティングする方法。
【請求項69】
B細胞がMHCクラスI拘束性T細胞を刺激するように抗原に連結したB細胞の表面上の受容体に結合する分子を含む分子抱合体を被験体に投与する工程を含む、被験体における抗原に対する免疫応答を誘導または増強する方法。
【請求項70】
B細胞がMHCクラスI拘束性T細胞を刺激するように抗原に連結したB細胞の表面上の受容体に結合する分子を含む分子抱合体を被験体に投与する工程を含む、抗原に対して被験体を免疫化する方法。
【請求項71】
前記受容体がC型レクチン受容体である、請求項68から70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記受容体がDEC−205である、請求項68から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記受容体に結合する分子が抗体である、請求項68から72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体が抗DEC−205抗体である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記B細胞が共刺激経路を介して活性化される、請求項68から74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記抗原がB細胞によってMHCクラスI分子上に提示される、請求項68から75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗原がHLA−A2.1分子上に提示される、請求項68から76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項68から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記腫瘍抗原がβhCGである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記抗原が病原体である、請求項68から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
障害が、結腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、腎癌、肝臓癌、食道癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌腫、膵臓癌腫、膀胱癌腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、肥満細胞腫、乳腺腺癌、白血病、およびリウマチ様線維芽細胞腫からなる障害の群から選択される、被験体の障害を治療するための請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記障害が、細菌、真菌、ウイルス、または寄生虫の感染症からなる障害の群から選択される、被験体の障害の治療のための請求項80に記載の方法。
【請求項83】
請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体によって結合したエピトープに結合する単離ヒト抗体または単離ヒト化抗体。
【請求項84】
請求項4から31のいずれか1項に記載の抗体によって結合したエピトープに結合する単離抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2011−503014(P2011−503014A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532344(P2010−532344)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082745
【国際公開番号】WO2009/061996
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510122326)セルデックス セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】