ヒト病原体の感染を低減する際に使用する組成物
ヒト病原体の感染を減少させる際に使用するためのポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物。その組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料から作られる保護用のフェイス・マスクのような装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、「保護用のフェイス・マスク」と題されて2009年5月29日に出願された国際特許出願番号PCT/US09/45621から優先権を主張し、「ポリプロピレンの疎水性を減少させるための組成物」と題され2010年1月25日に出願された米国特許仮出願番号61/298,194の利益を主張すると共に、それらの内容はこの明細書において参照によって組込まれる。
【背景技術】
【0002】
[背景]
細菌、真菌およびウイルスなどのヒト病原体によって引き起こされるヒト気道感染症などの感染性ヒト疾患がさまざまに存在している。例えば、伝染性ヒト疾患(及び、それらの関連する疾患)のウィルス性の原因は、(2009 H1N1株のような『豚インフルエンザ』を含む)インフルエンザA型ウイルス;インフルエンザBCウイルス(コリーザ;『風邪』);ヒト・アデノウイルスAC(種々の気道感染症;肺炎);ヒト・パラ−インフルエンザウイルス(コリーザ;『風邪』偽膜性喉頭炎);ムンプス・ウイルス(流行性耳下腺炎);麻疹ウイルス(はしか);風疹ウイルス(風疹);ヒトRSウイルス(RSV)(コリーザ;『風邪』);ヒト・コロナウイルス(SARSウイルス)(SARS);ヒト・ライノウイルスA−B(コリーザ;『風邪』);パルボウイルスB19(第五病);痘瘡ウイルス(天然痘);水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペス・ウイルス)(水痘);ヒト・エンテロウイルス(コリーザ;『風邪』);百日咳菌(百日咳);髄膜炎菌(髄膜炎);ジフテリア菌(ジフテリア);肺炎マイコプラズマ(肺炎);ヒト型結核菌(結核);化膿レンサ球菌/肺炎(連鎖球菌性咽頭炎、髄膜炎、肺炎);及び、ヘモフィラス・インフルエンザB型菌(喉頭蓋、髄膜炎、肺炎)を含む。
【0003】
ヒト気道感染症の多くは、かなりの罹患率と死亡率という結果となる。例えば、インフルエンザ・ウイルスの季節的流行は、世界中でおよそ300万〜500万人が感染するとされ、年間250,000から500,000人の人を死に至らしめる。その上、例えば、世界中で2000万〜5000万人の人が死亡した1918年のインフルエンザの発生のような、周期的なインフルエンザウイルス世界的流行病が生じる。
【0004】
これらの伝染性のヒト疾患の伝染のモードには、感染者の気道から放出される伝染性粒子の空気感染によるものがあり、これは感染者の咳、若しくはくしゃみによるものであり、又は、単なる呼気によるものであり、それまでは非感染者であった者の呼吸により胃腸又は呼吸器系システムに達するものである。伝染のこのような形態と戦うために、フェイシャル・マスク(facial masks)が開発されてきており、機械的に伝染性粒子を遮断(intercept)すること又は伝染性粒子を不活性化すること、或いは、機械的に伝染性粒子を遮断し且つ伝染性粒子を不活性化することの両方を、多様なメカニズムで行っている。
【0005】
保護用のフェイシャル・マスクは、感染者が感染の伝染防止のために、及び、非感染者が感染してしまうことを防止するために、装着するように設計されている。生産コストを妥当なものにしておくため、フェイシャル・マスクは、僅かな数のサイズ違い又は1つのサイズだけで一般に生産される。しかしながら、たった2、3のサイズ違い又は1つのサイズだけで生産される従来のフェイシャル・マスクを使うことに関する問題は、空気感染性の粒子の出入りをほぼ完全に防止するために、そのフェイシャル・マスクが大部分の人にとって顔の回りにおいて、特に、着用者の鼻の周りにおいて、十分にぴったりとフィットしなくなりがちであることである。この欠陥に対処するために、フェイシャル・マスクは、適所にフェイシャル・マスクを保持する力を増加させることによって着用者の顔に対してそのフェイシャル・マスクを密閉状態にするように、耳の周りにかかる弾性バンドのような機械的な構造を組込むように設計されてきたが、このようにして、着用者の顔によりぴったりとフィットするようにそのフェイシャル・マスクの周辺部を変形させるのである。その問題は軽減されるものの、このような機械的な構造は、着用者に対して長期にわたり圧力の不快な感覚を生じさせるものであり、フェイシャル・マスクが着用され得る期間を制限しがちである。これは、不快感に対して耐性が低い子供たちにとって、特に真実である。更に、従来のフェイシャル・マスクは、フェイシャル・マスクと着用者の顔の間に入る伝染性粒子の相当な部分を不活性化しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、これらの問題に対処する新しい保護用のフェイシャル・マスクの必要性があるのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[要約]
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる材料又はポリプロピレン系織物(fabric)をコーティングするための組成物が提供される。その組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)と、ポリビニルアルコールと、クエン酸との水溶液からなる。1の実施例において、ポリビニルアルコールは部分的に加水分解される。別の実施例において、組成物は0.5%から4%のクエン酸、及び、0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールを含む。別の実施例において、組成物は1%から3%のクエン酸、及び、1%及び3%の間のポリビニルアルコールを含む。1の実施例において、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンである。1の実施例において、組成物は、0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含む。1の実施例において、組成物は、0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含む。別の実施例において、組成物は、2%のポリビニルアルコールと、2%のクエン酸と、0.5%の非イオン界面活性剤とを含む。1の実施例において、組成物は、殺菌性剤、殺真菌性剤、又は、殺ウィルス性剤の1又はそれ以上を更に含む。1の実施例において、薬剤は、多価の金属イオンである。別の実施例において、薬剤は、2価の金属塩である。別の実施例において、薬剤は、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される。1の実施例において、組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含む。1の実施例において、組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む。
【0008】
本発明の別の実施例によると、本発明による組成物でコーティングされているポリプロピレン系織物を提供する。本発明の別の実施例によると、複数の層のうち1又はそれ以上の層が本発明によるポリプロピレン系織物を含み、その複数の層を含むポリプロピレン系材料を提供する。
【0009】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置を提供する。その装置は、本発明によるポリプロピレン系の織物、若しくはポリプロピレン系の材料を含む。
【0010】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、本発明によるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料からなる。1の実施例において、フェイシャル・マスクは、1又はそれ以上の反応染料を更に含む。
【0011】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。フェイシャル・マスクは、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料からなるが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0012】
本発明の別の実施例によると、フェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。フェイシャル・マスクは、a)その表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含む本体と、b)本体−フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部とを含むものであって、ここで、該フラップ部はその表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含むが、前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料からなるが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0013】
本発明の別の実施例によると、フェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、a)その表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部と、中央の縫い目を含む本体と、b)本体−フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部であって、そのフラップ部はその表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含むが、このようなフラップ部と、c)前記フラップ部の背面に付けられた弾性部材と、d)前記本体に取り付けられた変形可能な小片と、及び、e)着用者の頭にフェイシャル・マスクを固定するように本体に取り付けられる1又はそれ以上の延長体と、を含むものであるが、ここで、本体の周辺部が、右側縁と、前記周辺部の底接合部で右側縁に接続される左側縁と、左側縁へと右側縁を接続する上側縁と、を含み、前記フラップ部の周辺部が、連続して、右垂直側と、右円弧状側と、中央の湾曲領域と、左円弧状側と、及び、本体−フラップ部接合部を部分的に形成し右垂直側を左垂直側に接続するベース部とを含むが、前記フラップ部の形が、底接合部を下に向けた本体の背面又は本体の表面を見るときに、逆さまにされたU字形であり、前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料を含むが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0014】
本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。その方法は、a)本発明によるフェイシャル・マスクを提供するステップ、及びb)そのフェイシャル・マスクを着用するステップを含む。
【0015】
[図面]
本発明のこれらの及びその他の特徴、側面、及び有利な点は、以下の明細書、添付されるクレーム、及び伴う図面に関してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、従来のフェイシャル・マスクの1つのタイプの正面斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す従来のフェイシャル・マスクの背面斜視図である。
【図3】図3は、本発明によるフェイシャル・マスクの1の実施例の正面斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の正面−横向き斜視図である。
【図5】図5は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の背面斜視図である。
【図6】図6は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の、6−6線に沿って切られた部分、切り取り、横向き斜視図である。
【図7】図7は、図3から図6に示すフェイシャル・マスクの実施例が着用者によって着用された状態での正面斜視図である。
【図8】図8は、最終的に組み立てられる前の状態であって、図3に示すフェイシャル・マスクの一部の背面斜視図である。
【図9】図9は、図3に示すフェイシャル・マスクの部分、切り取り、正面斜視図であり、フェイシャル・マスクの本体の多層を示すものである。
【図10】図10は、本発明による織物の部分正面斜視図である。
【図11】図11は、図10に示される織物を含む、本発明による材料の部分、切り取り、正面斜視図であり、3つの層を含む。
【図12】図12は、図10に示される織物を含む、本発明による材料の部分、切り取り、正面斜視図であり、4つの層を含む。
【図13】図13は、着用者によって着用される、図1及び図2に示すフェイシャル・マスクの実施例の正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[説明]
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる、例えば織物又は材料のようなポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物を提供する。その組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)と、ポリビニルアルコールと、クエン酸水溶液とを含む。1の実施例において、その組成物は、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される薬剤のような、殺菌性剤、殺真菌性剤、又は殺ウィルス性剤の1又はそれ以上のものを更に含む。本発明の別の実施例によると、本発明による組成物でコーティングされているポリプロピレン系織物を提供する。本発明の別の実施例によると、複数の層のうち1又はそれ以上の層が本発明によるポリプロピレン系織物を含むが、その複数の層を含むポリプロピレン系材料を提供する。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置を提供する。その装置は、本発明によるポリプロピレン系の織物、若しくはポリプロピレン系の材料を含む。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、本発明によるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を含む。1の実施例において、フェイシャル・マスクは、1又はそれ以上の反応染料を更に含む。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。その方法は、a)本発明によるフェイシャル・マスクを提供するステップ、及びb)そのフェイシャル・マスクを着用するステップを含む。その組成物、織物、材料、装置、及び方法は、ここにより詳細に開示されるであろう。
【0018】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、この開示書において使用されるように、用語「を含む」及びこの用語のバリエーションである「を含んでいる」、「((三人称単数)が)を含む」、及び、「が含まれる」のようなものは、他の添加物、要素、数、若しくはステップを排除しないことが意図される。
【0019】
この開示書において特定されるすべての寸法は、本発明の1又はそれ以上の実施例の例示によるものにすぎず、制限することを意図しない。本開示書を参照して当業者に理解されるように、本開示書に開示した如何なる装置又は装置の一部の実際の寸法は、意図される使用により決定されるであろう。
【0020】
この開示書において使用されるように、「ヒト病原体」は、バクテリア、菌類、及びウイルスを含み、或いは、ヒト気道感染を引き起こす他の微生物を含む。
【0021】
この開示書において使用されているように、「フラップ」は、フェイシャル・マスクの本体の背面に向かって本体―フラップ接合部で折り返されるときに、本体の多層材料に関しフラップの多層材料を反転する一片のフェイシャル・マスクを意味する。従って、従来のフェイシャル・マスクのプリーツ(ひだ)は、本開示書内において「フラップ」ではない。なぜならば、従来のフェイシャル・マスクの使用の間に、そのプリーツが如何に開かれ又は閉じられようと、多層の材料のそのような反転は起こらないからである。
【0022】
この開示書内において使用されるように、材料は、本発明による織物の層のような、複数の層を含む。
【0023】
この開示書において使用されているように、「弾性部材」は、圧縮後、その元の形に容易に回復する基板を意味し、ここで、弾性部材は、圧縮力の適用の前に第1の厚みを持ち、該圧縮力の適用後に第2の厚みを持ち、該圧縮力の停止後に第3の厚みを持つが、第2の厚みは第1の厚みの75%以下であり、第3の厚みは第1の厚みの90%及び100%の間であり、厚みは前記基板を厚み方向に横切る如何なる位置でも測ることができる。
【0024】
本開示書において使用されるように、「結合物質」は、ヒト病原体の空間的通過に対する物的障壁だけを提示するだけというよりは、ヒト病原体に化学的に結合する化学基を意味する。同様に、「結合する」、並びに、「結合する」、「結合している」、及び「結合作用」のような関連用語は、化学プロセスに言及するものであり、単にヒト病原体の空間的移動に対する物理的障壁だけを単に表現するものではない。
【0025】
本開示書において使用されるように、「セルロースの」は、「セルロースを含んでいる」ことを意味する。
【0026】
この開示書において使用されるように、物質の全ての量は、別途特定されない限りは、全重量の百分率としてのその物質の重量において与えられる。例えば、「0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールの水溶液・・・」は、「100グラムの水溶液が0.5グラムのポリビニルアルコール及び4グラムのポリビニルアルコールの間のものを含むこと」を意味する。
【0027】
ここで、図1及び図2を参照して、それぞれ、従来のフェイシャル・マスクの1つのタイプの正面斜視図(図1)と、図1に示されるフェイシャル・マスクの背面斜視図(図2)とを示している。示されるように、従来のフェイシャル・マスク10は、ヒトの着用者の口及び鼻を覆うための本体12を含み、更に、その着用者の頭へ、そのフェイシャル・マスク10を固定するための、本体12に接続される1又はそれ以上の延長体を含む。その本体12は、表面18及び対向する背面20を持つ材料16を含む。その本体12は、上端縁24、底縁26、及び、これらの上端縁24及び底縁26にそれぞれ接続される2つの外側縁28、30を含む周辺部22を更に含む。本体12は、各々が1つの側縁28から他方の側縁30に延び、フェイシャル・マスク10の着用者のフェイシャル・カーブにより密接に近づくように拡大時に本体12の表面18に向かって凸形を中央に形成するように本体12が拡大することを許すような複数のプリーツ32を更に含む。
【0028】
本発明によると、そのフェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。ここで、図3、図4、図5、図6、図7、及び図8を参照して、それぞれ、本発明によるフェイシャル・マスクの1の実施例の正面斜視図が示され(図3)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面−側面斜視図が示され(図4)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の背面斜視図が示され(図5)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の6−6線に沿って切り取られた部分、切り取り、側面斜視図が示され(図6)、着用者に着用されている図3から図6において示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面斜視図が示され(図7)、最終組み立て前であって図3に示されるフェイシャル・マスクの一部の背面斜視図が示され(図8)、そして、フェイシャル・マスクの本体の多層を現わしている、図3に示されるフェイシャル・マスクの部分、切り取り、正面斜視図が示されている(図9)。見られ得るように、フェイシャル・マスク100は、ヒトの着用者300の口及び鼻302を覆うための本体102を含み、更に、本体―フラップ部の接合部106で本体102に付けられるフラップ部104を含む。本体102は、その本体102の表面108と、その本体102の対向する背面110と、その本体102の形を規定する本体102の周辺部112とを含む。本体102の形は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者によって理解され得るように、意図される目的のために如何なる妥当な形にでもなり得る。1の実施例において、本体102の形は、不規則形、楕円形、円形、正方形、及び三角形からなる群から選択される。好ましい実施例において、図3の中で最も明らかに示されるように、本体102の周辺部112によって規定される本体102の形は、右側縁114(そのマスクを着用するときに着用者の視点から与えられる方位)と、その周辺部112の底接合部118で右側縁114に接続される左側縁116と、左側縁116に右側縁114を接続する上端縁120と、を含むが、ここで、正面から見たときに本体102の周辺部は、示されるような形において基本的に三角形である。上端縁120は、図5及び図6において最も明確に現わされ得るように、本体―フラップ部の接合部106を部分的に形成する。1の実施例において、本体102は、更に中央の縫い目122を含む。
【0029】
再び図3、図5、図6、及び図7を参照し、フェイシャル・マスク100のフラップ部104は、そのフラップ部104の表面124(フェイシャル・マスク100の最終構成へとフラップ部104を折り畳む前に与えられる方位)と、そのフラップ部104の対向する背面126と、及びそのフラップ部104の形を規定するフラップ部104の周辺部128と、を含む。そのフラップ部104の形は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者によって理解され得るように、意図される目的のために如何なる妥当な形にでもなり得る。1の実施例において、そのフラップ部104の形は、五角形、長方形、及び三角形からなる群より選択される。好ましい実施例において、図3、図5、及び図7の中で最も明らかに示されるように、フラップ部104の周辺部128によって規定されるフラップ部104の形は、本体102の表面108を、又は下を向く底接合部118を持つ本体102の背面108を見ると、逆U字形である。本開示書において使用されるように、用語「U字形」は、図3、図5、及び図8(但し、図8では逆ではない)において描かれるフラップ部104の形である。図7において特に見られることができるように、この逆U字形は、特に有利であるが、それは、五角、長方形、又は三角形の形よりも着用者の鼻302のベース部において着用者の鼻302の突起を補うことによってフェイシャル・マスク100が着用者300によって着用されるときに、着用者300の鼻302により密接にフラップ部が近付くことを許すからである。図5及び図8において最も明らかに見られ得るように、本発明の1の実施例において、フラップ部104の周辺部128は、右から左へと連続して(マスクを着用するときに着用者の視点から与えられる方位)、右垂直側部130と、右円弧状側部132と、中央湾曲領域134と、左円弧状側部136と、左垂直側部138と、特に本体―フラップ部の接合部106を形成し、垂直側部130と及び左垂直側部138を接続するベース部140と、を含む。
【0030】
再び図3及び図6を参照して、好ましい実施例において、そのフェイシャル・マスク100は、本体102又はフラップ部104に付けられる弾性部材142を更に含む。弾性部材142をフェイシャル・マスク100に組み込むことは、特に有利である。なぜならば、弾性部材142は、着用者300の鼻302の種々の曲線に対して補うことにより着用者によってフェイシャル・マスク100が着用される際にフェイシャル・マスク100が着用者300の鼻により密接に近付くことを許すからである。1の実施例において、弾性部材142は、本体12の背面20に、又は、フラップ部104の表面124に付けられる。しかしながら、図6に特に示される好ましい実施例において、フラップ部104の背面126に弾性部材142が付けられる。なぜならば、フラップ部104の表面124が以下に開示するような感染性の粒子と結合するヒト病原体の伝染を減少させる際に使用されるための織物を含むときに、フラップ部104の表面124へと本体12の周辺部22の上端縁24を超えてフェイシャル・マスク100に入り又はから出る感染性の粒子に暴露されるところ、この方位ではより多くの潜在的な着用者に対してフェイシャル・マスク100のより良いフィットを作り出すからである。弾性部材142は、この開示書を参照して本技術分野の当業者によって理解され得るように、意図された目的にふさわしい如何なる物質をも含むことができる。好ましい実施例において、弾性部材142は、スポンジである。好ましい実施例において、弾性部材142は、ポリウレタンを含む。
【0031】
再び図3、図4、図6と図7を参酌して、好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は、更に、本体102又はフラップ部104に付けられる変形可能な小片144を含む。変形可能な小片144は、特に有利である。何故ならば、変形可能な小片144は、フェイシャル・マスク100が着用者の鼻302の種々な曲線を補うことによって着用者により着用されるとき、着用者300の鼻302により密接に近づくようにフェイシャル・マスク100が着用者300によって調整されることを許可するからである。1の実施例において、変形可能な小片144は、本体12の背面20に、又は、フラップ部104の表面124、若しくはフラップ部104の背面126に取り付けられる。好ましい実施例において、図4及び図6に特に示されるように、変形可能な小片144は、フラップ部に横たわる上端縁24の近くであって本体102の表面108に付けられ、変形可能な小片144の変形は、弾性部材142及びフラップ部104の残りの部分への変形を与えるが、このことは、この開示書を参照することにより本技術分野の当業者によって理解され得るであろう。変形可能な小片144は、着用者300によって容易に変形可能である物質からなる。変形可能な小片144は、この開示書を参照して本技術分野の当業者によって理解され得るように、意図された目的にふさわしい如何なる物質をも含むことができる。好ましい実施例において、変形可能な小片144はプラスチックからなるか、プラスチックの中に入れられたばね鋼ワイヤーからなる。好ましい実施例において、変形可能な小片144は、展性のあるアルミニウムからなる。
【0032】
好ましい実施例において、再び図3、図4、図5、図7、及び図9を参照し、フェイシャル・マスク100は、そのフェイシャル・マスク100を着用者300の頭に固定するため、本体102に付けられた1つ又はそれ以上の延長体146を更に含む。延長体146は、天然ゴム、又は合成ゴムは他の伸縮性のポリマーのような弾力性のある物質からなることができ、又は、弾力性のない布、若しくはプラスチックのような弾力性のない物質からなることができ、そして、図に示されるように調整部材(adjusters)148の有無にかかわらず、着用者の耳304、若しくは顔306を囲むひもの形式又は耳かけであることができる。1の実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、着用者の顔306へのフェイシャル・マスク100取り付けを許す一連の接着性小片である。
【0033】
本発明の1の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるための織物を提供する。ここで図10を参照すれば、本発明による、その織物の部分正面斜視図が示される。見受けられるように、1の実施例において、本発明による織物200は、結合物質202からなる。別の実施例において、この開示書において開示されるように、織物200は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物202からなる。1の実施例において、その織物は、スパンボンド・ポリプロピレン繊維からなる。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置が提供されるが、その装置は、本発明によると織物200からなる。1の実施例において、その装置は、例えばフェイシャル・マスク100のような、本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、本体102及びフラップ部104の両方は、本発明による織物200からなる。
【0034】
本発明の1の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるための材料が提供される。ここで、図11及び図12を参照して、それぞれ、図10に示される織物からなる、そして、三層からなる(図11)、本発明による材料の、部分切り取り、正面斜視図が示される。見受けられるように、1の実施例において、材料204は、本発明による織物200からなる。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置が提供されるが、その装置は、本発明による材料からなる。1の実施例において、その装置は、例えばフェイシャル・マスク100のような、本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、本体102及びフラップ部104の両方は、本発明による材料204からなる。
【0035】
本発明による材料204は、複数の層を含むが、1又はそれ以上の層が織物200からなる。材料204は、本開示を参照する当業者であれば理解し得るように、二層、三層、四層、又はそれ以上の層を含むことができる。特に好ましい実施例において、複数の層は、(図11において、A、B、及びCと称されて示されるように)三層である。別の特に好ましい実施例において、複数の層は、(図12において、A、B、C、及びDと称されて示されるように)四層である。特に好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100の本体102及びフラップ部104は、本発明による材料204からなり、そして、本体102の表面108及びフラップ部104の表面124の両方は、本発明による織物(fabric)200からなる。
【0036】
材料204の少なくとも1層は、本発明による(層Bとして図11及び図12において示される)織物200からなる。好ましい実施例において、材料204の2つの層は、織物200からなる。1の実施例において、材料204の1又はそれ以上の層は、ポリプロピレン、ポリエステル、及び不織布の酢酸セルロース織物からなる群より選択される熱成形型織物のような、熱成形型織物16である。1の実施例において、熱成形型織物は、(スパンボンド不織布のポリプロピレンとも呼ばれる)スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)からなる群から選択される。1の実施例において、熱成形型織物は、例えばMS、SM、SMS、SSMS、SMSS、SMSMS、SMMSS、及びSSMMSのような、交互のスパンボンド(S)及びメルトブロー層(M)からなる、スパンボンド/メルトブロー織物複合材からなる。そのような熱成形型織物は、本発明による加熱又は超音波溶着を用いたフェイシャル・マスクの成形を可能にする。そのうえ、そのような熱成形型層は浮遊微小粒子をトラップするが、疎水性であるので、感染性のある微小粒子含有液滴は、たとえその微小粒子含有液滴が層内にトラップされ、本発明による織物200が感染性のある微小粒子に結合することを許したとしても、通常分裂されない。更に、疎水性の層は、湿気をはじき、そして、それゆえに、本体102の背面110が疎水性の層であるとき、フェイシャル・マスク100の着用者300は、彼らの顔306に対して湿気又は湿りを感じない。
【0037】
好ましい実施例において、図11に示すように、材料204は、三層からなり、第1の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、そして、第3の層はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)である。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。1の実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、15g/m2及び25g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、18g/m2である。特に好ましい実施例において、図11に示すように、材料204は、三層からなり、第1の層は45g/m2の密度があるスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、そして、第3の層は18g/m2の密度があるスパンボンド/メルトブロー繊維複合材(層C)である。
【0038】
好ましい実施例において、図12に示すように、材料204は、四層からなり、第1の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、第3の層はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)であり、そして、第4の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層D)である。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。1の実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、15g/m2及び25g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、18g/m2である。特に好ましい実施例において、図12に示すように、材料204は、四層からなり、第1の層は45g/m2の密度を持つスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、第3の層は18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)であり、そして、第4の層は25g/m2の密度を持つスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層D)である。
【0039】
1の実施例において、本発明による織物200は、1又はそれ以上の型のヒト病原体に結合する1又はそれ以上の結合物質202からなる。好ましい実施例において、織物200は、インフルエンザのようなヒト気道感染症を引き起こす、1又はそれ以上のインフルエンザウイルスのような型のウイルスに結合する1又はそれ以上の結合物質を含む。ヒト病原体を本発明のフェイシャル・マスク100の織物200に結合させることにより、例えば、ウイルス含有液滴が織物(fabric)200内で蒸発するとき、例えばウィルス粒子の放出を妨げるようなことによりその織物200はヒト病原体の伝染を減少させる。
【0040】
本開示書を参照する本技術分野の当業者であれば理解し得るように、1又はそれ以上の結合物質202は、その結合物質にヒト病原体を化学的に付着させるための1又はそれ以上のヒト病原体の結合基を含む。好ましい実施例において、結合物質202は、更に、織物200に結合物質を付着させるための(例えばビニルスルホン基のような)リンカー基を含む。
【0041】
例として、1の実施例において、織物200に結合されるヒト病原体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)からなる群より選択され、これらのウイルス粒子がヒト細胞の細胞膜の表面オリゴ糖上の末端シアル酸基を介してヒト細胞に結合するので、ヒト病原体結合基はシアル酸基である。しかしながら、シアル酸基は、繊維又は織物(fabric)への付着に適した形態で生産するのは比較的にコストが高いので、好ましい実施例においては、結合物質202は、インフルエンザウイルス上のシアル酸基の結合作用を模倣するが、本発明による結合物質を含む織物の工業規模の生産用の構成要素としてコスト効果の高い物質である。
【0042】
本発明の1の実施例によれば、1又はそれ以上の結合物質202は、(例えば、硫酸化単糖又は硫酸化オリゴ糖のような)硫酸基、及び、(例えば、スルホン化単糖又はスルホン化オリゴ糖のような)スルホン酸基からなる群より選択されるヒト病原体結合基を含むが、その理由は、硫酸基及びスルホン酸基が本発明による織物200において工業規模の生産のためにコスト効果の高い仕様の繊維又は織物上の遊離ヒドロキシル基及び遊離アミノ基に直接結合するところ、その硫酸基及びスルホン酸基の両方は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、並びに、他のヒト病原体においてシアル酸基の結合作用を模倣するからである。好ましい実施例において、織物200は、セルロース織物であり(即ち、セルロースを含み)、1又はそれ以上の結合物質202は、硫酸基を含むヒト病原体結合基を含むことで、非ハイドロゲル硫酸セルロースを含む織物を生み出す。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、ヒト病原体の結合基は、1又はそれ以上のスルホン酸基を含む1又はそれ以上の反応染料である。好ましい実施例において、織物200は、セルロース織物(即ち、セルロースからなる)であり、そして、結合物質202は、スルホン酸基を含む1又はそれ以上の反応染料であり、セルロース・スルホン酸塩からなる織物200を生み出す。
【0044】
反応染料は、繊維及び織物、例えば(アセテート、綿、及びレーヨンのような)セルロース繊維及びセルロース織物、並びに(ウール、ナイロン、及びポリエステル、若しくはポリオレフィンから作られる織物のような)非セルロース繊維及び非セルロース織物の両方を染色するために使用される物質の類(class)である。反応染料は、染浴中で繊維に施与されると、繊維又は織物上のヒドロキシル基と共有結合を形成する、通常ハロ複素環又は活性二重結合である反応性リンカー基を含む。反応染料は、染料を繊維又は織物に付着させるリンカー基のカテゴリに応じて分類される。1の実施例において、結合物質は、アミノクロロトリアジン(aminochlorotriazine)(Procion7 H)、アミノクロロトリアジン−サルフェートエチルスルホン(aminochlorotriazine-sulfatoethylsulfone)(Sumafix Supra)、アミノフルオロトリアジン(aminofluorotriazine)(Cibachron F)、アミノフルオロトリアジン−サルフェートエチルスルホン(aminofluorotriazine-sulfatoethylsulfone)(Cibacron C)、ビス(アミノクロロトリアジン)(bis(aminochlorotriazine))(Procion7 H-E)、ビス(アミノニコチノトリアジン)(bis(aminonicotinotriazine))(Kayacelon React7)、クロロジフルオロピリミジン(chlorodifluoropyrimidine)(Drimarine K)、ジクロロキノキサリン(dichloroquinoxaline)(Levafix7 E)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)(Procion MX)、サルフェートエチルスルホン(sulfatoethylsulfone)(ビニル・スルホン;Remazol7)、サルフェートエチルスルホンアミド(sulfatoethylsulfonamide)(Remazol7 D)、トリクロロピリミジン(trichloropyrimidine)(Drimarine X)からなる群より選択される1又はそれ以上の反応染料である。反応染料は、更に、染料に特有の色を与える発色団を含む。発色団は、多環芳香族基を通常含むが、多環芳香族基は、水溶性を低減させる傾向があるので、反応染料はたいてい、水溶性を増大させるために1又はそれ以上のスルホン酸基をさらに含む。反応染料のスルホン酸基は、本発明の織物の結合物質のヒト病原体結合基として機能することができ、反応染料の反応性リンカー基は、結合物質のリンカー基として機能することができる。
【0045】
所与の染料は、しばしば幾つかの商標名を有しているが、染料に対する一般名称(色素指数、CI)は、次の書式を含む[カテゴリ(酸性、塩基性、直接性、又は反応性);色;及び番号]。本発明の1の実施例によれば、1又はそれ以上の結合物質202は、各々が、本発明による1又はそれ以上のヒト病原体に結合するのに適したヒト病原体結合基として機能するスルホン酸基を含み、各々が、更に、結合物質(染料)を織物に付着させるのに適したリンカー基を含む、CIリアクティブブルー4、CIリアクティブブルー21、CIリアクティブブルー140、CIリアクティブブルー163、CIリアクティブブラウン23、CIリアクティブオレンジ4、CIリアクティブレッド1、CIリアクティブレッド2、CIリアクティブレッド6、CIリアクティブレッド11、CIリアクティブレッド78、CIリアクティブイエロー39、及びCIリアクティブイエロー86からなる群より選択される反応染料である。特に好ましい実施例において、結合物質は、リアクティブブルー21である[銅(29H、31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32)−スルホ((4−((2−スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アミノ)スルホニル誘導体]([copper, (29H, 31H -phthalocyaninato(2-)-N29,N30,N31,N32)-, sulfo((4-((2-sulfooxy)ethyl)sulfonyl)phenyl)amino) sulfonyl derivs])(CAS登録番号73049−92−0)、即ち、セルロース繊維及び織物を含む、繊維及び織物に染料を付着させるビニル・スルホン・リンカー基を持つスルホン化銅フタロシアニン染料(sulfonated copper phthalocyanine dye)である。CIリアクティブブルー21を付着させるための条件を含めた、反応染料を繊維及び織物に付着させるための適切な反応条件は、当該技術分野の当業者に良く知られており、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、染料製造者の説明書並びに標準的な繊維業界の参考文献においても、見出すことができる。
【0046】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、結合物質202は、本発明によるフェイシャル・マスク100の本体内にその織物200が組み込まれるとき、その織物を非通気性にすることはできない。なぜならば、そのような非通気性は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、そのフェイシャル・マスク100が機能しなくなるからである。例えば、ヒト病原体結合基が硫酸基である場合、硫酸セルロースハイドロゲルが顔マスクを通る空気を遮ることによりフェイシャル・マスクを機能させなくするので、硫酸基は、織物内に硫酸セルロースハイドロゲルを形成してはならず、従って、本発明による織物の成分に言及する際の用語「硫酸セルロース」及びその関連用語の使用は、硫酸セルロースハイドロゲル、又はフェイシャル・マスクを通る空気の通過を遮ってフェイシャル・マスクを機能させなくする(すなわち着用者がフェイシャル・マスクを通して十分な呼吸ができないようになる)非通気性の形態を含まない。本発明によるフェイシャル・マスク100の織物200において結合物質202として反応染料を使うことは、織物に結合する反応染料の量が、その反応染料中のスルホン酸基がその織物中でヒドロゲルを作る要因になるほど十分には決して高くないので、特に有利である。
【0047】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸セルロース及びスルホン酸セルロースの両方は、界面活性剤特徴を有しており、その結果硫酸セルロース、若しくはスルホン酸セルロースを含む織物200は、ウイルスを含んだ液滴を分解し、そのウイルス粒子を硫酸セルロース上の硫酸基に、及びスルホン酸セルロース上のスルホン酸基に晒し、それによってウイルス粒子を織物200内にトラップする。
【0048】
1の実施例において、織物200は、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、結合物質202や織物200の繊維以外に、1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば、多価の銅イオン、多価の銀イオン、又は多価の亜鉛イオンのような1又はそれ以上のタイプの多価の金属イオンである。特に好ましい実施例において、金属的塩は、例えば、二価銅の塩及び二価亜鉛の塩からなる群より選択される1又はそれ以上の二価の金属塩のような、二価金属塩である。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、例えば、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である酢酸銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群より選択される金属の塩のような、金属塩である。
【0049】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、セルロースを含む織物200上に硫酸基又はスルホン酸基を含む結合物質202を使用することは、インフルエンザウイルス及び他のヒト病原体の伝染から多くの人々を保護するため、本発明によるフェイシャル・マスク100の工業規模の生産にとって比較的安価で、かつ、妥当である。更に、織物200は、例えば、ウイルス粒子が織物200に接触した後に織物200から、そのウイルス粒子が浸出しないように織物200内にそのウイルス粒子を結合させることにより、かつ、あるフェイシャル・マスクにおいて使用される毒性のある抗菌性の化合物を置き換えることにより、ヒト及びペットの両方にとって安全となる。更に有利には、その織物200については、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するように設計された幾つかの織物に関して1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するための照明及び一重項酸素の発生を、必要としない。
【0050】
1の実施例において、織物200は、例えば織布レーヨンのような織ったものである。別の実施例において、織物200は、例えば不織布レーヨンのように織っていないものである。本発明の1の実施例によると、フェイシャル・マスク100は、本発明によって1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる際に使用される織物200からなる。1の実施例において、この開示書において開示され、図10で示されるように、フェイシャル・マスク100は、織物200からなる。別の実施例において、この開示書において開示され、図11及び図12に示されるように、フェイシャル・マスク100はある材料からなる。
【0051】
本発明の別の実施例によると、例えば、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスのような、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるために本発明によるフェイシャル・マスク100を構成する際に使用されるための織物200を作るための方法が提供される。1の実施例において、その方法は、本発明による織物200を生産する。次に、その方法は、ヒト病原体結合基として硫酸基を含む結合物質を有するセルロースを含む織物(この例ではレーヨン)を作製することに関してのみを主とする例として開示されるが、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、同じ織物、及び本発明による(スルホン酸基のような)他の結合物質を有する相当する織物を生産するために他の方法も使用することができる。
【0052】
1の実施例において、その方法は、最初に、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するための織物200に使用するのに適した繊維を提供するステップを含む。1の実施例において、織物はセルロースを含む。好ましい実施例において、織物は(セルロースの形態の)レーヨンを含む。商業的な目的のセルロース繊維の最も重要な供給源は、木材パルプからであるが、木材パルプから直接得られるセルロース繊維は、本発明による織物に織り込むには短か過ぎ、且つ粗過ぎ、木材パルプ由来のセルロースは、比較的有機溶媒には不溶性であり、細繊維に押出成形することはできない。それに反して、レーヨン繊維は、木材パルプ及び他の植物由来の自然発生するセルロースポリマーから生産される。レーヨン繊維を形成するために、セルロースは、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、最初に(例えば酢酸塩のような)可溶化基で誘導体化され、紡糸繊維に形成され、次いで可溶化基が取り除かれて、織物に織られ得るセルロース繊維が生み出される。
【0053】
次に、その方法は、1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加するステップを含む。結合物質の繊維への付加は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、当業者に知られている技術を用いて達成することができる。好ましい実施例において、付加される結合物質は、本発明による結合物質である。例として、その方法は、硫酸基を含むヒト病原体結合基を含む結合物質であって、それによって硫酸化セルロース繊維を生じさせる結合物質に対して開示される。この実施例において、1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加することにより、織物の構造又は強度を崩壊させることなく、織物においてセルロース由来の繊維の硫酸化がもたらされる。更に、これらのステップは、硫酸基を(レーヨンのような)セルロース繊維に共有結合で結び付けることに関して開示されているが、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸基を他のセルロース織物、(例えば、ポリエステル又はポリオレフィンから作製された繊維のような)セルロース由来及び非セルロース由来の繊維の混合物、及び遊離ヒドロキシル基又はアミノ基を含む非セルロース由来の繊維に付加するために同等のステップを使用することができる。
【0054】
セルロースは、その各々が3個の遊離ヒドロキシル基を有するグルコース単位の線状ポリマーである。セルロースの硫酸化度(DS)は、1単糖あたりの硫酸基の平均個数として当技術分野で定義されている。DS3が最大限であり、すべての利用可能なヒドロキシル基が完全に硫酸化されていることを示唆している。硫酸化度1は、1グルコース単位あたり平均1個の硫酸基が存在していることを示唆しており、DS0.1は、例えば10グルコース単位ごとに平均1個のヒドロキシル基が硫酸化されていることを示唆している。本発明の重要な態様は、本発明による繊維又は織物へのウイルス及び他のヒト病原体の結合が、ヒト病原体を繊維又は織物上の2つ以上の固定化された硫酸基又はスルホン酸基に結合させ、それによって結合物質とヒト病原体の間の相互作用の親和性を強く増大させることを伴うことである。
【0055】
硫酸化度は、例えば元素分析などによって硫酸塩、スルホン酸塩、又は全硫黄を測定する任意の適した分析的方法によって決定される。結合物質が付着されていないセルロース繊維、又は非色素化されていないセルロース繊維、若しくは織物の硫黄成分は、極めて少ないか検出不能である。本発明の1の実施例によれば、本発明の方法は、0.02及び2の間の硫酸化度をもたらす。本発明の好ましい実施例において、本発明の方法は、0.05及び0.5の間の硫酸化度をもたらす。特に好ましい実施例において、本発明の方法は、0.09及び0.21の間の硫酸化度をもたらす。硫酸化又はスルホン化の繊維又は織物の硫酸化度は、必要とされる硫酸化度を有する繊維を生産するために、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸化又はスルホン化反応における時間、温度、又は試薬濃度を調整することによって調節することができる。
【0056】
セルロース織物の硫酸化度が0.2を超えて増大すると、液体の水又は水蒸気に晒されたときに繊維の水溶性が増し、それによって織物がハイドロゲルを形成し、織物を通る通気性を低減させる。こうした可溶化の傾向は、比較的に空気の通過を妨げないことが要求されるフェイシャル・マスクに使用される織物には受け入れられない。従って、本発明の1の実施例において、その方法は、更に、織物の繊維を互いに化学的に結び付けて可溶化を防止する1又はそれ以上の架橋剤を用いて織物を処理することによって、結合物質を付着する前又はその後に織物の繊維を架橋(クロスリンク)するステップを含む。1の実施例において、織物を架橋剤で処理するステップは、織物を例えば水酸化ナトリウムのようなアルカリと接触させて、セルロース織物の場合はアルカリ化されたセルロースを与え、次いで、その織物を架橋剤で反応させるステップを含む。1の実施例において、架橋剤は、ジクロロアルカン、ジメチロール尿素、ホルムアルデヒド、及びトリメチロールメラミンからなる群より選択される。好ましい実施例において、架橋剤は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、グリセリンジグリシジルエーテル、及びビニルシクロヘキセンジオキシドからなる群より選択されるエポキシ化合物である。
【0057】
硫酸ヒト病原体結合基を含む1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加することは、例えば最初に織物を、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルホルムアミド(DMF)のような適した溶媒に接触させることによって達成することができる。織物を溶媒に接触させる時間は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、繊維の膨張を最適化し、それによって繊維表面上のヒドロキシル基の硫酸化への暴露を増大させるように調整される。
【0058】
次に、溶媒で処理した織物を、例えば硫化試薬のような結合物質と接触させる。適した硫化試薬は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、使用する溶媒による。例えば、1の実施例において、溶媒はジメチルスルホキサイドであり、硫化試薬は、三酸化硫黄(DMSO−SO3)で処理されたDMSOである。別の実施例において、溶媒はジメチルホルムアミドであり、硫化試薬は、三酸化硫黄(DMF−SO3)で処理されたジメチルホルムアミドである。結合物質との接触は、結合物質と繊維の共有結合が満足のいく程度に達するまで、ただし過剰な結合物質が繊維に結合する前まで維持され、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、過剰な結合物質が繊維に結合すると、硫酸の場合は織物が液体の水又は水蒸気との接触時に非通気性になるはずである。
【0059】
1の実施例において、その方法は、更に、織物を、例えば(DMSO−SO3)及び(DMF−SO3)のような溶媒ですすぎ、次いで例えば水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は重炭酸ナトリウムなどの適した塩基と接触させて酸性の硫化剤などの酸性の結合物質を中和する、或いは結合物質を織物に付加する間に形成された酸を中和するステップを含む。
【0060】
次いで、織物を、例えば水または単純アルコール(エタノール又はイソプロパノール)のような適した溶媒で洗浄して未反応の試薬を取り除き、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスを含む1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するのに使用されるのに適した硫酸化織物を生じさせる。
【0061】
別の実施において、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するために、本発明によるフェイシャル・マスクを構成する際に使用される織物を作製するための方法は、最初、セルロースパルプ又はセルロース粉末から作製された、0.2を上回る硫酸化度、好ましくは繊維を水溶性にするのに十分である0.5を上回る硫酸化度を有する硫酸セルロース材料を提供するステップを含む。次に、可溶性の硫酸セルロースは、次いで織物に適応され、上記で開示し、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、架橋剤を用いて織物の繊維に共有結合で架橋される。本方法のこの実施例において、織物は、比較的厳しい硫酸化条件及び試薬には晒されず、可溶性の硫酸セルロース及び架橋試薬、並びに架橋結合の条件だけに晒されるため、硫酸化反応が良好に制御されない場合に起こり得る織物に対する損傷の可能性を減少させる。可溶性の硫酸セルロースの濃度は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、特に織物が本発明によるマスクに使用されるとき、フェイシャル・マスクを通るガス交換に適した受け入れ可能な圧力降下特徴を有する織物が得られるように試験によって選択される。
【0062】
本発明の1の実施例において、方法は、更に、織物をヒト病原性に必須のヒト病原体の特徴を化学的に崩壊させる1又はそれ以上の物質に接触させるステップを含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の物質は、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば多価の銅、多価の銀、若しくは多価の亜鉛のような多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、そのすべてが殺菌性、殺ウイルス性、及び抗菌性である、例えば酸化銅、酢酸亜鉛、酢酸銅、又は硫酸銅のような金属塩である。好ましい実施例において、その金属塩は二価の金属塩である。酢酸塩は、揮発性であり、蒸発によって織物から取り除くことができるので陰イオン塩成分として有利であるが、他の陰イオンもまた、塩化物、酸化物、ヨウ化物、及び他の化合物を含め、塩の成分として適している。1又はそれ以上の物質の織物への付加は、ヒト病原体を織物へ結合させることに加えてメカニズムを使用することにより、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減することにおいて本発明のフェイシャル・マスクの効能を増大させる。
【0063】
本発明の1の実施例において、本方法は、結合物質を含む繊維以外の、例えばポリエステル繊維又はポリプロピレン繊維のような、1又はそれ以上の種類の繊維を織物の中に組み込むステップを更に含む。
【0064】
別の実施例において、ステープル又はトウの形態のセルロース繊維は、本開示書で開示されたように織物に対して使用される同じ種類の硫酸化反応によって硫酸化され、次いでこの硫酸セルロース繊維は洗浄され、その後セルロースステープル又はトウを糸に紡糸する従来の方法によって不織布又は織布に形成される、或いは直接不織布に形成される。
【0065】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるため、本発明によるフェイシャル・マスク100を構成する際の使用のため、織物200を作るための本発明の方法は、ここで以下の例に関して開示されるであろう。
【0066】
[実験例1]
[硫酸化レーヨン織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、硫酸化レーヨンは本発明によって次のように調製された。最初、60mlイソプロパノールを氷上で冷し、0.2グラムのMgSO4をイソプロパノールに加えて水を取り除いた。次に、前に氷上で冷した240mlの硫酸をイソプロパノールに加えた。次いで、70グラム/平方メートルの密度を有する不織布のレーヨン織物を17.5cm×22.5cmの長方形に切断し、ほぼ同じ大きさのポリプロピレンメッシュ上に載せた。次に、メッシュ上のレーヨン織物を冷した酢酸に15分間浸した。次いで、イソプロパノール/硫酸混合物を氷上に静置されているポリエチレンの箱(約30cm×37.5cm)に注いだ。次に、ポリエチレンメッシュ上のレーヨン織物をイソプロパノール/硫酸混合物に5分間又は10分間浸し、最初に低温のイソプロパノールで、次いで100mlあたり酢酸ナトリウム3グラムを含有する低温のイソプロパノールで、その後低温のイソプロパノールですすいで硫酸化レーヨン織物を作り出した。次に、このレーヨン織物を次いでポリエチレンメッシュ上にあるままで乾燥させた。硫酸化レーヨン織物のサンプルを、硫黄及び炭素成分に対して分析した。すすぎ前の5分の反応時間は、約0.1の硫酸化度(DS)を生じさせることが見出され、一方ですすぎ前の10分の反応時間は、約0.2の硫酸化度(DS)を生じさせることが見出された。
【0067】
[実験例2]
[スルホン化レーヨン織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、スルホン化レーヨン織物を本発明によって次のように調製した。最初、30グラムの硫酸ナトリウムを600グラムの蒸留水に加え、続いて、4グラムのCIリアクティブブルー21染料(スルホン化結合物質)を加えて溶液を調製した。次に、30グラムの70グラム/平方メートルの密度を有する不織布のレーヨン織物をこの溶液に加え、均一に浸り湿潤するまで静かに旋回させた。次いで、12グラムの炭酸ナトリウムをかき混ぜながら加え、この混合物を35分間30ECに保った。次に、温度を追加の60分間で70ECまで上昇させて、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いて)スルホン化レーヨン織物を生じさせた。次いで、このスルホン化レーヨン織物を、遊離染料が溶出しなくなるまで流水ですすぎ、スルホン化レーヨン織物を空気乾燥させた。
【0068】
[実験例3]
[1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を破壊する1又はそれ以上の物質を含む織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された硫酸化セルロース織物又は実験例2によって作製されたスルホン化セルロース織物を、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を破壊する、結合物質以外の、1又はそれ以上の追加の物質を含むように以下のように調製した。最初、硫酸化レーヨン織物を実験例1に開示したプロセスによって作製し、或いは、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を実験例2に開示したプロセスによって作製した。次いで、いずれも二価の金属塩である硫酸銅及び酢酸亜鉛を、1グラム/水100ミリリットルの濃度の金属塩を用いて、40μl/cm2織物でエアロゾルによって織物に施与した。次いで、追加の物質を含む織物を空気乾燥させ、二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含む硫酸化レーヨン織物又は二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を生じさせた。
【0069】
[実験例4]
[二価の金属塩を含むスルホン化レーヨン織物の調製のための工業的プロセス]
本発明の1の実施例によると、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物で二価金属塩を含むものを、本発明によって以下のように調製した。最初に、70グラム/平方メートルの密度を持つ100%のスパンレース(spunlace)・ビスコース・レーヨン織物を、20:1の液体対固体の比率で、CIリアクティブブルー21(Novacron7 Turquoise H-GN)で染色した。次に、50g/Lの硫酸ナトリウム、20g/Lの炭酸ナトリウム、及び体積で12%の染料(120ml/L)を染浴に加え、連続撹拌で完全に混合した。次いで、レーヨン織物を染浴内に35分間30ECの温度で浸漬し、続く60分間70ECの温度で浸漬して、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を作り出した。次に、スルホン化レーヨン織物を流水ですすぎ、空気乾燥させた。次いで、水1リットルあたり酢酸銅及び酢酸亜鉛それぞれ50gグラムを、スルホン化レーヨン上に0.08L/m2の割合で噴霧して、二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を作り出した。二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を、再度空気乾燥させた。
【0070】
[実験例5]
[抗ヒト病原体特性に対する織物の評価]
標準的な量のウイルスを1枚の試験用織物上に施与することによって、(抗ヒト病原体特性の代用として)織物の抗ウイルス特性の試験を行う。次いで、試験用織物を細胞培地中でかき混ぜて、如何なる機能するウイルス粒子、即ち、織物に接着することによって、或いは試験用織物に対して別のことによって不活性化がなされないウイルス粒子を溶出する。細胞培地中に溶出された機能するウイルス粒子は、ウイルスにより致死になりやすい細胞を備える培地に接触させられて、細胞死の定量的な読み取りを確保して、ウイルスの活性に対して評価される。溶出培地中の細胞死の低減は、織物へのウイルス接着による試験用織物によって、或いは試験用織物によって別様に、ウイルスの不活性化が増大したことを示す。
【0071】
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸レーヨン織物、実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び実験例3によって作製された硫酸銅及び酢酸亜鉛の両方を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を、抗ウイルス特性のために評価した。最初、硫酸レーヨン織物、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び硫酸銅及び酢酸亜鉛の両方を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物の試験用サンプルを、ヒト病原体単純疱疹ウイルス(HSV)を非活性化する織物の能力を評価するためにMicrobiotest Inc.社(米国、バージニア州、スターリング)に提出した。試験用織物の5cm×5cmの面積に対して、同様にレーヨン対照用の織物の非硫酸、非スルホン化の一片に対して、そして、(水100mlあたりそれぞれ1グラム、1平方センチメートルあたり40マイクロリットルで施与したもので)硫酸銅及び酢酸亜鉛のみで処理されたレーヨン織物の一片に対して、HSVをエアロゾルで施与した。HSV処理した織物サンプルを1分間保ち、次いで抽出培地の個々の20mlアリコート内に置き、静かな撹拌に5分間かけた。抽出サンプルのアリコートを希釈培地中で連続的に10倍に希釈し、宿主細胞上に接種した。各々のサンプルからの抽出培地中の残留した感染性ウイルスを検出し、そのウイルスにより誘導された細胞変性効果によって定量化した。
【0072】
【表1】
【0073】
示されるように、実験例1によって調製された硫酸化レーヨン織物は、非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて1.87という対数の値だけの減少を有した。硫酸銅及び酢酸亜鉛を非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物内に組み込むことにより、非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて2.0という対数の値だけの減少を生じさせ、このとき病原体ウイルスの減少は二価の塩の単独の存在に起因した。実験例2によって調製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、非硫酸化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて0.37という対数だけの値の減少を有した。
【0074】
この評価システムにおける検出の下限は3.13という対数の値だけの量であったため、硫酸銅及び酢酸亜鉛で処理された、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物に対するHSV力価における最低減少は、4.47という対数の値だけの量であった。従って、同量の二価の金属イオンを組み込む非硫酸化、非スルホン化レーヨン織物と対比すれば、最低2.47という対数の値だけの更なるウイルス不活性化又はトラッピングが、スルホン化及び二価の金属イオンによって達成された。これらの結果は、織物のスルホン化及び二価の金属塩の織物への組み込みとの間の抗ヒト病原体の活性に対する予期せぬ相乗効果を立証した。
【0075】
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された0.1又は0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸化レーヨン織物、実験例4によって作製された0.2の硫酸化度(DS)を有し、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む硫酸化レーヨン織物、実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び実験例3によって作製された、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、並びに非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物、及び二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含むレーヨン織物を、それらの抗ウイルス特性に対して評価した。インフルエンザA型ウイルスの4.70という対数の値の量をエアロゾルで試験用織物の5cm×5cmの面積に施与し、施与されたインフルエンザA型ウイルスを有するこの試験用織物の各々の3つのサンプルを、ウイルス施与後1分、5分、又は15分間静置し、次いで抽出培地の個々の20mlアリコート内に置き、静かな撹拌を5分間行った。抽出バッファの連続希釈を孵化卵に施し、胚期の生存能力およびそのような卵からの尿膜腔液の赤血球凝集素検査による病原体インフルエンザA型ウイルスの力価を評価した。
【0076】
試験の結果は、実験例1によって作製され、0.1又は0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸化レーヨン織物が、試験された時間点(1分、5分、及び15分)の各々においていずれも検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、織物に施与されたウイルス量に比べ、試験の各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値の減少を示すものであった。同様に、0.2の硫酸化度(DS)を有し、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む実験例1によって作製された硫酸化レーヨン織物もまた、試験された各々の時点(1分、5分、及び15分)において検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、織物に施与されたウイルス量に比べ、試験された各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値だけの減少を示した。
【0077】
実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、1分の試験時間で1.95、5分の試験時間で2.33、15分の試験時間で3.08の対数の値だけの減少でインフルエンザAウイルスを減少させた。実施例3によって作製された、二価の金属塩の硫酸銅および酢酸亜鉛を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、試験された各々の時点(1、5、及び15分)において検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、試験された各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値だけの減少を示した。
【0078】
好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は本発明によれば織物200からなるが、その織物200は本発明によれば結合物質202を含む。好ましい実施例において、その織物200は、結合物質以外に、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、本発明による1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、例えば、多価の銅、多価の銀、及び多価の亜鉛からなる群より選択される多価金属イオンのような、多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される金属塩のような、金属の塩である。特に好ましい実施例において、金属塩は、二価の塩である。特に好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は、結合物質202としてCIリアクティブブルー21染料を含む織物200からなり、その織物200は、多価の銅及び多価の亜鉛を更に含む。
【0079】
本発明の別の実施例によれば、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスを含む、1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる際に使用するため、本発明によるフェイシャル・マスク100を作る方法を提供する。1の実施例において、フェイシャル・マスク100は、本体102、フラップ部104、及び、着用者の顔306に固定するために本体102に付けられる1又はそれ以上の延長体146を含む。1の実施例において、その方法は、本開示書において開示されるような1又はそれ以上の熱成形型織物で、本開示書において開示されるような織物200を囲む又は包囲するステップを含む。そのような熱成形型織物は、フェイシャル・マスク100の熱、若しくは超音波溶着でマスクを成形することを許す。
【0080】
1の実施例において、本開示書において開示されるように、その方法は、最初に、織物200を提供するステップを含む。好ましい実施例において、その織物200は、結合物質202以外に、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、本発明による1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、例えば、二価の銅又は二価の亜鉛のような、多価の銅、多価の銀、又は多価の亜鉛のような、多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上のその物質は、例えば、酸化銅、酢酸亜鉛、酢酸銅、又は硫酸銅のような金属塩である。特に好ましい実施例において、その金属的塩は、二価の銅及び二価の亜鉛からなる群より選択される1又はそれ以上の二価金属塩のような、二価の金属塩である。
【0081】
1の実施例において、織物200は、フェイシャル・マスク100の形に切られ成形され、1又はそれ以上の延長体146がフェイシャル・マスク100の本体102に取り付けられる。
【0082】
別の実施例において、フェイシャル・マスク100の本体102及びフラップ部104は、本開示書に開示されるような材料204のような複数の層を含む材料からなる。特に好ましい実施例において、複数の層は、図11に示される材料204のような3つの層(三層)である。特に好ましい実施例において、複数の層は、図12に示される材料204のような4つの層(四層)である。フェイシャル・マスクが本発明による材料204からなるとき、その方法は、1又はそれ以上の層からなる材料204を形成するために、本発明による織物200を提供するステップを含む。
【0083】
1の実施例において、織物200、又は材料204、又は織物200及び材料204の両方は、第1のサイズのロール上に提供され、そのロ−ルは、フェイシャル・マスク100を作るために第2のサイズへと切られる。
【0084】
次に、本体102及びフラップ部104の形へと、織物200を切るステップ又は多層の材料204を切るステップをその方法は含む。
【0085】
1の実施例において、フェイシャル・マスク100は、複数の層からなる材料204からなり、そして、その方法はその層の順に材料204の複数の層を組み立てるステップと、それらの層を接合するステップとを含む。1の実施例において、複数の層からなる材料204は、フラップ部104の周辺部128及び本体102の周辺部112を作るように接着剤で接合される。好ましい実施例において、多層の材料204は、フラップ部104の周辺部128及び本体102の周辺部112を作るように超音波溶着で接合される。
【0086】
1の実施例において、その方法は、フェイシャル・マスク100の起源又はその内容を特定する、又は、そのフェイシャル・マスク100を着用する際の説明を提供する、テキスト、又はグラフィックス、又はテキスト及びグラフィックスの両方をフェイシャル・マスク100にラべリングするステップを更に含む。
【0087】
1の実施例において、図8に見られるように、この段階で、本体102及びフラップ部104は、示されるような形を含み、そして、その方法は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者が理解し得るように、如何なる妥当な方法によったとしても、本体102の中央の縫い目122を作るステップを更に含む。1の実施例において、本体102の中央の縫い目122は、接着剤を適用することによって作られる。好ましい実施例において、本体102の中央の縫い目122は、超音波溶着によって作られる。
【0088】
1の実施例において、その方法は、本体102に1又はそれ以上の延長体146を取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、接着剤の適用によって本体102に取り付けられる。好ましい実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、超音波溶着によって本体102に取り付けられる。
【0089】
1の実施例において、その方法は、弾性部材142をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、弾性部材142をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップは、接着剤を弾性部材142に、又は、フラップ部104に、又は、弾性部材142及びフラップ部104の両方に、適用するステップと、弾性部材142及びフラップ部104に圧力を印加することにより、弾性部材142をフラップ部104に接合するステップと、を含む。
【0090】
1の実施例において、その方法は、変形可能な小片144をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、変形可能な小片144をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップは、接着剤を変形可能な小片144に、又は、本体102に、又は、変形可能な小片144及び本体102の両方に適用するステップと、圧力を変形可能な小片144及び本体102に印加することによって、変形可能な小片144を本体102に接合するステップを含む。
【0091】
次に、図8に見られるように、その方法は、フラップ部104の背面126が本体102の背面110に面するように、フェイシャル・マスク100の本体−フラップ部の接合部でフラップ部104を折るステップを更に含む。フェイシャル・マスク100は、ここで着用される準備ができている。
【0092】
本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。1の実施例において、その方法は、本発明によるフェイシャル・マスク100を提供するステップと、フェイシャル・マスク100を着用するステップと、を含む。
【0093】
本発明の1の実施例によるフェイシャル・マスク100は、2つの利点がある。ここで図13を参照するが、それは、着用者によって着用された状態で、図1及び図2に示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面からの斜視図である。見られるように、本発明によるフェイシャル・マスク100への第1の利点は、本発明によるフェイシャル・マスク100のフラップ部104が、着用者300の鼻302の周りにおける従来のフェイシャル・マスク10より良いフィットを与えることであり、これにより、従来のフェイシャル・マスク10を着用することと比べたとき、本発明によるフェイシャル・マスク100を着用することが、フェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間から外に空気感染性の粒子の排出(上向き矢印として示される)を減少させ、フェイシャル・マスク100の周辺部112周りから空気感染性の粒子がフェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間へと吸入されること(下向き矢印として示される)を減少させ、又は、フェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間から外に空気感染性の粒子の排出(上向き矢印として示される)を減少させ、かつ、フェイシャル・マスク100の周辺部112周りから空気感染性の粒子がフェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間へと吸入されること(下向き矢印として示される)を減少させる。この利点のため、第三者から伝染性の粒子で本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300が感染することを防止することによりそして、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300から第三者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させることにより、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる。
【0094】
更に、図面において見られるように、本発明によるフェイシャル・マスク100の第2の利点は、フェイシャル・マスク100の本体102の背面110の方へ本体―フラップ部の接合部106において、フラップ部104を折り曲げることであり、本体102の多層の材料204についてフラップ部104の多層の材料204を反転させる。方位のこの反転は、着用者300から追い出される、又はフェイシャル・マスク100の周辺部112の外から着用者300の顔306及びフェイシャル・マスク100の間の空間進入する空気感染性の粒子が、織物200に出会うようにする。そのため、感染性の粒子の幾らかは織物200に結合し、第三者からの感染性の粒子で、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300の感染を防止することにより、及び、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300から1又はそれ以上のヒト病原体の第三者への伝染を減少させることにより、1又はそれ以上のヒト病原体を減少させる。
【0095】
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる、例えば織物又は材料のようなポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物を提供する。1の実施例において、組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の疎水性を減少させる。そして、それによって、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を通してヒト病原体の伝染を増加させる。別の実施例において、組成物は、追加の直接的な殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性活性を持つ。その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に付着する耐久的なコーティングを提供する。熱可塑性ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料からなる保護用のフェイス・マスクの超音波成形及び溶着のような高速製造プロセスと両立できる。好ましい実施例において、その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面の上にコーティングされる。好ましい実施例において、その組成物は、ポリプロピレン系材料の2又はそれ以上の層のうち2つの層の上にコーティングされる。
【0096】
1の実施例において、その組成物はクエン酸(また、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸(2-hydroxypropane- 1,2,3-tricarboxylic acid)としても、また、3−ヒドロキシペンタン二酸−3−カルボン酸(3-hydroxypentanedioic acid-3-carboxylic acid)としても、又は、ハイドロゲン・シトレート(hydrogen citrate)としても知られる)を含み、ポリビニルアルコール(また、Alkotex、Alvyl、Covol、Ethenol、Gelvatol、homopolymer、Lemol、Mowiol、Poly(Ethenol)、Polyviol、PVA、PVOH及びVinolとしても知られる)を含む。好ましい実施例において、ポリビニルアルコールは、(非イオン界面活性剤の有無によらず)クエン酸と混合されたときに、また、耐久性のあるコーティングを形成するところ、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に最適に組成が付着することを許すような部分的に加水分解された形である。1の実施例において、ポリビニルアルコールは、Elvanol(登録商標)51-05(E.I.デュポン・ディスタルエンド28ニューマース・アンド・カンパニー・コーポレーション、デラウェア、メリーランド州 アメリカ合衆国(E. I. du Pont Distal end 28 Nemours and Company Corporation, Delaware, MD US))である。
【0097】
好ましい実施例において、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤を更に含む。ヒト病原体を含むエーロゾル液滴と、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を処理する組成物とを接触させると、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を通して、クエン酸の分散を増大させることにより、かつ、病原性の粒子に直接働きかけることにより、その組成物でコーティングされるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性を非イオン界面活性剤は増大させる。1の実施例において、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(polyoxyethylene (20) sorbitan)(また、モノラウレート(monolaurate)、ポリソルベート20(polysorbate 20)、PEG(20)ソルビタン・モノラウレート(PEG(20) sorbitan monolaurate)、及びツイーン20(Tween 20)としても知られる)である。
【0098】
1の実施例において、その組成物は水溶液である。好ましい実施例において、その水溶液の水の部分は、蒸留水である。
【0099】
1の実施例において、その組成物は、0.5%から4%のクエン酸、及び0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールの水溶液を含む。別の実施例において、その組成物は1%及び3%の間のクエン酸、及び、1%及び3%の間のポリビニルアルコールの水溶液を含む。好ましい実施例において、その組成物は、2%のポリビニルアルコール及び2%のクエン酸の水溶液を含む。1の実施例において、その組成物は、0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含む。別の実施例において、その組成物は、0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含む。好ましい実施例において、その組成物は0.5%の非イオン界面活性剤を含む。特に好ましい実施例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び、0.5%の非イオン界面活性剤を含む水溶液である。
【0100】
好ましい実施例において、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物は、1又はそれ以上の種類の、殺菌性の、殺真菌性の、又は、殺ウイルス性の薬剤を更に含む。その殺菌性の、殺真菌性の、又は、殺ウイルス性の薬剤は、その組成物の他の構成要素(クエン酸、ポリビニルアルコール、及び非イオン界面活性剤)と物理的に両立できる殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の如何なる薬剤であり得る。1の実施例において、その薬剤は、その全てが、殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば、多価の銅、多価の銀、又は多価の亜鉛のような、多価の金属イオンである。特に好ましい実施例において、その金属イオンは、その全てが殺菌性、殺ウイルス性、及び抗菌性である、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される二価の金属塩のような、二価の銅の塩及び二価の銀の塩からなる群から選択される1又はそれ以上の二価の金属塩のような、二価の金属の塩である。1の実施例において、その組成物は、酢酸銅及び酢酸亜鉛を含む。1の実施例において、その組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、その組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、その組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含む。1の実施例において、その組成物は、3%の酢酸銅及び3%の酢酸亜鉛を含む。
【0101】
有利なことに、その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の上でその組成物が乾燥させられるときに、(例えば、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、又はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)を通して)ポリプロピレン系織物の親水性、又は、ポリプロピレン系材料の親水性を増やす。このことは、液体の透過を増加させ、ヒト病原体を含むエアゾール液滴が、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面の上に留まる代わりに、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面を通って通過することを許し、その結果、1又はそれ以上の二価の金属の塩を含む、若しくは反応染料を含む殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させ、本発明による、例えば一層の織物のような、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によるヒト病原体の伝染を減少させるもう1つの層に、ヒト病原体を含むエアゾール液滴が遭遇する。その組成物のクエン酸構成要素の酸性の性質は、ポリビニルアルコールに対する親水性可塑剤として働き、その上、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の織物に寄与する酸性の環境を提供する。
【0102】
その上、その組成物は、有利なことに気流を妨げることがなく、そのため、保護用のフェースマスクの一部として使われるポリプロピレン系織物及びポリプロピレン系材料の上での使用にその組成物は適することとなる。
【0103】
本発明のその組成物は、本開示書を参照する当該技術分野の当業者によって理解され得るように、如何なる妥当なプロセスによっても作ることができる。例えば、1の実施例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む水溶液であり、その組成物は、蒸留水で、クエン酸、ポリビニルアルコール、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンを溶解することにより、ポリビニルアルコールが完全に溶解するまで80℃で溶液を沸騰させることにより、そして、次にその溶液を使用する前に室温まで冷却することを許すことにより、作られる。別の実験例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む水溶液であり、そして、その組成物は、前述の実験例に従って作られた溶液の中に、十分な量の酢酸銅の粉末及び酢酸亜鉛の粉末を溶かすことにより、作られる。
【0104】
その組成物は、本開示書を参照して、当該技術分野の当業者によって理解され得るように、如何なる妥当な方法で、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に適用される。例えば、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をその組成物中に浸すことによって、そして次に、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を乾燥することによって適用されるのである。1の実施例において、乾燥ステップは、その組成物がコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を室温において空気乾燥させることを許すステップを含む。別の実施例において、例えば、その組成物がコーティングされたポリプロピレン系織物又はその組成物がコーティングされたポリプロピレン系材料を生産ラインにおける加熱されたローラに接触させることによるように、強制空気又は熱を用いるステップを乾燥ステップは含む。
【0105】
本開示書を参照する当該分野の当業者によって理解され得るように、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をその組成物でコーティングするステップは、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料のロールがその組成でコーティングされて乾燥される連続生産プロセスを使用して達成することができる。そして、次に、コーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料は、例えば、保護用のフェイス・マスクのような微細構造を生産するために製造装置に直接的に供給され得るか、又は、後の使用のために貯蔵され得る。
【0106】
この開示書を参照する当該技術分野の当業者によって理解され得るように、その組成物は、例えば、保護用のフェイス・マスクに組み込まれるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料のような、如何なるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の上において使用できる。1の実施例において、例えば、MS、SM、SMS、SSMS、SMSS、SMSMS、SMMSS、及びSSMMSのような、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(S)及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(M)の交互の層を持つ、組成物をコーティングしたポリプロピレン系材料を提供する。1の実施例において、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(S)及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(M)の交互の層を持つポリプロピレン系材料は、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させる、本発明による、例えば一層の織物のような、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させる、1又はそれ以上の数の層を、更に含む。1の実施例において、交互の層を持つポリプロピレン系材料は、保護用のフェース・マスクに組み込まれる。
【0107】
ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための本発明による組成物の抗ウイルス性効果は、4種類の材料を使ってテストされたが、各種類の材料は以下の順序で四つの層を備えた。
層#1 スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、
層#2 レーヨン、
層#3 メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)、そして、
層#4 スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)。
4種類の材料は、次の通りであった。
材料#1: (対照コントロール)層1の上に組成物のコーティング無;層2において結合物質無、
材料#2: 層#1の上に組成物のコーティング無;本発明により、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む層#2、
材料#3: 層#1は、本発明による2%のポリビニルアルコール及び2%のクエン酸を含む水溶性の組成物に浸漬され、水切りされ、空気乾燥される;層#2は、本発明による、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む;そして、
材料#4: 層#1は、本発明による、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン(polyoxyethylene (20) sorbitan)を含む水溶性の組成物に浸漬され、水切りされ、空気乾燥される;層#2は、本発明による、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む。
【0108】
0.4mlの体積の緩衝食塩水に、材料の5cm×5cmの正方形の上に、9.6という対数の値の量だけ生きているA型インフルエンザ(Influenza A (H1N1))ウイルスを噴霧することによって、4つの材料の各々が、抗ウイルス性の活性度に対してテストされた。1分又は5分の露出時間の後、各々の材料は、残存する生きているウイルスを抽出するために、細胞培養培地へ移された。そして、当該技術分野の当業者に知られている技術によって、テスト細胞系において、伝染力によって定量化された。
【0109】
ここで、表2を参照すれば、見受けられるように、材料#1(コントロール)は、1分及び5分の何れの接触時間にもウイルス量を減らさなかった。材料#2は本発明による材料を含むが、1分及び5分の接触時間においてそれぞれ2及び2.5という対数の値だけウイルス量を減少させた。材料#3は本発明による組成物で層#1がコーティングされていること以外は、材料#2と同一であるが、ここでその組成物は2%のクエン酸及び2%のポリビニルアルコールを含み、この材料#3では、1分及び5分においてそれぞれ4.25という対数の値だけウイルス量を減らした。材料#4は、本発明による組成物で層#1がコーティングされていること以外は材料#2と同一であるが、ここでその組成物は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含み、材料#4では、1分及び5分においてそれぞれ5.5及び6という対数の値だけウイルス量を減らした。
【0110】
【表2】
従って、これらのデータから評価できるように、本発明による組成物でポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングすることは、その材料の抗ウイルス性の活性を相当に増加する結果となる。
【0111】
更に、本発明による組成物で、ポリプロピレン系織物をコーティングすることによる、そのポリプロピレン系織物の親水性を増加させる効果は、材料#2及び材料#4のサンプルの層#1(スパンボンド・ポリプロピレン層)に施与される水溶性の液滴の吸収速度を比較することにより実証された。上述で示されるように、材料#4が層#1に対して2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物のコーティングを備えていること以外は、材料#2及び材料#4は同一であった。蒸留水の一滴(1マイクロリットル)が、材料#2の層#1及び材料#4の層#1の表面の上に落とされた。吸収のプロセスは、材料#2に対して10分毎に及び材料#4に対して5秒毎にイメージが捉えられ、そしてまた、完全な液滴の吸収時においても追加のイメージが捉えられるように、顕微鏡に取り付けられたCCD(charge-coupled device)カメラで記録された。これらの試験の結果は、外側のポリプロピレン層の上に親水性のコーティングがない、材料#2の内に1マイクロリットルの液滴の完全な吸収のために必要な時間が42分であり、材料#2の内には22秒であったことを示している。従って、その組成物で材料#4をコーティングすることは、その組成物がない場合よりも約100倍速い水の吸収という結果となった。
【0112】
ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための本発明による別の組成物の抗ウイルス性の有効性は、以下のような3種類の織物、及び2、4層の材料を用いて試験された。
織物#1: (コントロール)組成物のコーティングがない不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
織物#2: 2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
織物#3: 2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、2%の酢酸銅、及び2%の酢酸亜鉛を含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
材料#4: 層#1を含む4層材料:スパンボンド不織ポリプロピレン繊維(SBPF);層#2:2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2);層#3:メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF);及び層#4:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF);及び、
材料#5: 層#1を含む4層材料:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF);層#2:本発明によるリアクティブブルー21染料、酢酸銅、及び酢酸亜鉛の組成物で処理されたレーヨン;層#3:メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF);及び層#4:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)。
3つの織物及び2つの材料の各々は、0.4mlの緩衝食塩水の中で、5cm×5cmの正方形の織物及び材料の上に生きているインフルエンザB(B/Lee/40)ウイルスの6.35という対数の値だけを噴霧することにより抗ウイルス性の活性に対してテストされた。5分の暴露時間の後、各々の織物及び材料は、残存し生きているウイルスを抽出するために細胞培養培地へ移され、当該技術分野の当業者に知られ得る技術によって、テスト細胞株における伝染力によって定量化された。
【0113】
ここで表3を参照すれば、見受けられるように、示されたように本発明による異なる組成物でポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングすることは、同程度の抗ウイルス性活性という結果となった。
【0114】
【表3】
【0115】
本発明の1の実施例によると、1つの表面又は2つの表面のいずれかの上に組成物を含むポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を提供する。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる装置を提供するが、その装置は、本発明による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を含む。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる方法を提供するが、その方法は、本発明による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料含む装置を提供するステップと、その装置を使用するステップとを含む。1の実施例において、その装置は本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、その装置は、本発明によるフェイシャル・マスクであるが、そのフェイシャル・マスクの本体(及び、存在する場合はフラップ部)は、前から後ろに向かって4つの層を備え、層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、その繊維は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、その繊維は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む本発明による組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0116】
特定の好ましい実施例を参照して本発明をかなり詳細に論じてきたが、他の実施例も可能である。従って、付属のクレームの範囲は、本開示書に包含された好ましい実施例の記述に限定されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、「保護用のフェイス・マスク」と題されて2009年5月29日に出願された国際特許出願番号PCT/US09/45621から優先権を主張し、「ポリプロピレンの疎水性を減少させるための組成物」と題され2010年1月25日に出願された米国特許仮出願番号61/298,194の利益を主張すると共に、それらの内容はこの明細書において参照によって組込まれる。
【背景技術】
【0002】
[背景]
細菌、真菌およびウイルスなどのヒト病原体によって引き起こされるヒト気道感染症などの感染性ヒト疾患がさまざまに存在している。例えば、伝染性ヒト疾患(及び、それらの関連する疾患)のウィルス性の原因は、(2009 H1N1株のような『豚インフルエンザ』を含む)インフルエンザA型ウイルス;インフルエンザBCウイルス(コリーザ;『風邪』);ヒト・アデノウイルスAC(種々の気道感染症;肺炎);ヒト・パラ−インフルエンザウイルス(コリーザ;『風邪』偽膜性喉頭炎);ムンプス・ウイルス(流行性耳下腺炎);麻疹ウイルス(はしか);風疹ウイルス(風疹);ヒトRSウイルス(RSV)(コリーザ;『風邪』);ヒト・コロナウイルス(SARSウイルス)(SARS);ヒト・ライノウイルスA−B(コリーザ;『風邪』);パルボウイルスB19(第五病);痘瘡ウイルス(天然痘);水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペス・ウイルス)(水痘);ヒト・エンテロウイルス(コリーザ;『風邪』);百日咳菌(百日咳);髄膜炎菌(髄膜炎);ジフテリア菌(ジフテリア);肺炎マイコプラズマ(肺炎);ヒト型結核菌(結核);化膿レンサ球菌/肺炎(連鎖球菌性咽頭炎、髄膜炎、肺炎);及び、ヘモフィラス・インフルエンザB型菌(喉頭蓋、髄膜炎、肺炎)を含む。
【0003】
ヒト気道感染症の多くは、かなりの罹患率と死亡率という結果となる。例えば、インフルエンザ・ウイルスの季節的流行は、世界中でおよそ300万〜500万人が感染するとされ、年間250,000から500,000人の人を死に至らしめる。その上、例えば、世界中で2000万〜5000万人の人が死亡した1918年のインフルエンザの発生のような、周期的なインフルエンザウイルス世界的流行病が生じる。
【0004】
これらの伝染性のヒト疾患の伝染のモードには、感染者の気道から放出される伝染性粒子の空気感染によるものがあり、これは感染者の咳、若しくはくしゃみによるものであり、又は、単なる呼気によるものであり、それまでは非感染者であった者の呼吸により胃腸又は呼吸器系システムに達するものである。伝染のこのような形態と戦うために、フェイシャル・マスク(facial masks)が開発されてきており、機械的に伝染性粒子を遮断(intercept)すること又は伝染性粒子を不活性化すること、或いは、機械的に伝染性粒子を遮断し且つ伝染性粒子を不活性化することの両方を、多様なメカニズムで行っている。
【0005】
保護用のフェイシャル・マスクは、感染者が感染の伝染防止のために、及び、非感染者が感染してしまうことを防止するために、装着するように設計されている。生産コストを妥当なものにしておくため、フェイシャル・マスクは、僅かな数のサイズ違い又は1つのサイズだけで一般に生産される。しかしながら、たった2、3のサイズ違い又は1つのサイズだけで生産される従来のフェイシャル・マスクを使うことに関する問題は、空気感染性の粒子の出入りをほぼ完全に防止するために、そのフェイシャル・マスクが大部分の人にとって顔の回りにおいて、特に、着用者の鼻の周りにおいて、十分にぴったりとフィットしなくなりがちであることである。この欠陥に対処するために、フェイシャル・マスクは、適所にフェイシャル・マスクを保持する力を増加させることによって着用者の顔に対してそのフェイシャル・マスクを密閉状態にするように、耳の周りにかかる弾性バンドのような機械的な構造を組込むように設計されてきたが、このようにして、着用者の顔によりぴったりとフィットするようにそのフェイシャル・マスクの周辺部を変形させるのである。その問題は軽減されるものの、このような機械的な構造は、着用者に対して長期にわたり圧力の不快な感覚を生じさせるものであり、フェイシャル・マスクが着用され得る期間を制限しがちである。これは、不快感に対して耐性が低い子供たちにとって、特に真実である。更に、従来のフェイシャル・マスクは、フェイシャル・マスクと着用者の顔の間に入る伝染性粒子の相当な部分を不活性化しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、これらの問題に対処する新しい保護用のフェイシャル・マスクの必要性があるのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[要約]
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる材料又はポリプロピレン系織物(fabric)をコーティングするための組成物が提供される。その組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)と、ポリビニルアルコールと、クエン酸との水溶液からなる。1の実施例において、ポリビニルアルコールは部分的に加水分解される。別の実施例において、組成物は0.5%から4%のクエン酸、及び、0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールを含む。別の実施例において、組成物は1%から3%のクエン酸、及び、1%及び3%の間のポリビニルアルコールを含む。1の実施例において、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンである。1の実施例において、組成物は、0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含む。1の実施例において、組成物は、0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含む。別の実施例において、組成物は、2%のポリビニルアルコールと、2%のクエン酸と、0.5%の非イオン界面活性剤とを含む。1の実施例において、組成物は、殺菌性剤、殺真菌性剤、又は、殺ウィルス性剤の1又はそれ以上を更に含む。1の実施例において、薬剤は、多価の金属イオンである。別の実施例において、薬剤は、2価の金属塩である。別の実施例において、薬剤は、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される。1の実施例において、組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含む。1の実施例において、組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む。
【0008】
本発明の別の実施例によると、本発明による組成物でコーティングされているポリプロピレン系織物を提供する。本発明の別の実施例によると、複数の層のうち1又はそれ以上の層が本発明によるポリプロピレン系織物を含み、その複数の層を含むポリプロピレン系材料を提供する。
【0009】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置を提供する。その装置は、本発明によるポリプロピレン系の織物、若しくはポリプロピレン系の材料を含む。
【0010】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、本発明によるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料からなる。1の実施例において、フェイシャル・マスクは、1又はそれ以上の反応染料を更に含む。
【0011】
本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。フェイシャル・マスクは、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料からなるが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0012】
本発明の別の実施例によると、フェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。フェイシャル・マスクは、a)その表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含む本体と、b)本体−フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部とを含むものであって、ここで、該フラップ部はその表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含むが、前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料からなるが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0013】
本発明の別の実施例によると、フェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、a)その表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部と、中央の縫い目を含む本体と、b)本体−フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部であって、そのフラップ部はその表面と、その対抗する背面と、その形を規定する周辺部とを含むが、このようなフラップ部と、c)前記フラップ部の背面に付けられた弾性部材と、d)前記本体に取り付けられた変形可能な小片と、及び、e)着用者の頭にフェイシャル・マスクを固定するように本体に取り付けられる1又はそれ以上の延長体と、を含むものであるが、ここで、本体の周辺部が、右側縁と、前記周辺部の底接合部で右側縁に接続される左側縁と、左側縁へと右側縁を接続する上側縁と、を含み、前記フラップ部の周辺部が、連続して、右垂直側と、右円弧状側と、中央の湾曲領域と、左円弧状側と、及び、本体−フラップ部接合部を部分的に形成し右垂直側を左垂直側に接続するベース部とを含むが、前記フラップ部の形が、底接合部を下に向けた本体の背面又は本体の表面を見るときに、逆さまにされたU字形であり、前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4の4つの層を含むポリプロピレン系材料を含むが、ここで、層#1は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#2は、45g/m2の密度を持ち、2%のクエン酸と2%のポリビニルアルコールと0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンと3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされたスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は、25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0014】
本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。その方法は、a)本発明によるフェイシャル・マスクを提供するステップ、及びb)そのフェイシャル・マスクを着用するステップを含む。
【0015】
[図面]
本発明のこれらの及びその他の特徴、側面、及び有利な点は、以下の明細書、添付されるクレーム、及び伴う図面に関してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、従来のフェイシャル・マスクの1つのタイプの正面斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す従来のフェイシャル・マスクの背面斜視図である。
【図3】図3は、本発明によるフェイシャル・マスクの1の実施例の正面斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の正面−横向き斜視図である。
【図5】図5は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の背面斜視図である。
【図6】図6は、図3に示すフェイシャル・マスクの実施例の、6−6線に沿って切られた部分、切り取り、横向き斜視図である。
【図7】図7は、図3から図6に示すフェイシャル・マスクの実施例が着用者によって着用された状態での正面斜視図である。
【図8】図8は、最終的に組み立てられる前の状態であって、図3に示すフェイシャル・マスクの一部の背面斜視図である。
【図9】図9は、図3に示すフェイシャル・マスクの部分、切り取り、正面斜視図であり、フェイシャル・マスクの本体の多層を示すものである。
【図10】図10は、本発明による織物の部分正面斜視図である。
【図11】図11は、図10に示される織物を含む、本発明による材料の部分、切り取り、正面斜視図であり、3つの層を含む。
【図12】図12は、図10に示される織物を含む、本発明による材料の部分、切り取り、正面斜視図であり、4つの層を含む。
【図13】図13は、着用者によって着用される、図1及び図2に示すフェイシャル・マスクの実施例の正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[説明]
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる、例えば織物又は材料のようなポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物を提供する。その組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤(nonionic surfactant)と、ポリビニルアルコールと、クエン酸水溶液とを含む。1の実施例において、その組成物は、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される薬剤のような、殺菌性剤、殺真菌性剤、又は殺ウィルス性剤の1又はそれ以上のものを更に含む。本発明の別の実施例によると、本発明による組成物でコーティングされているポリプロピレン系織物を提供する。本発明の別の実施例によると、複数の層のうち1又はそれ以上の層が本発明によるポリプロピレン系織物を含むが、その複数の層を含むポリプロピレン系材料を提供する。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置を提供する。その装置は、本発明によるポリプロピレン系の織物、若しくはポリプロピレン系の材料を含む。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活動により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるフェイシャル・マスクを提供する。そのフェイシャル・マスクは、本発明によるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を含む。1の実施例において、フェイシャル・マスクは、1又はそれ以上の反応染料を更に含む。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。その方法は、a)本発明によるフェイシャル・マスクを提供するステップ、及びb)そのフェイシャル・マスクを着用するステップを含む。その組成物、織物、材料、装置、及び方法は、ここにより詳細に開示されるであろう。
【0018】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、この開示書において使用されるように、用語「を含む」及びこの用語のバリエーションである「を含んでいる」、「((三人称単数)が)を含む」、及び、「が含まれる」のようなものは、他の添加物、要素、数、若しくはステップを排除しないことが意図される。
【0019】
この開示書において特定されるすべての寸法は、本発明の1又はそれ以上の実施例の例示によるものにすぎず、制限することを意図しない。本開示書を参照して当業者に理解されるように、本開示書に開示した如何なる装置又は装置の一部の実際の寸法は、意図される使用により決定されるであろう。
【0020】
この開示書において使用されるように、「ヒト病原体」は、バクテリア、菌類、及びウイルスを含み、或いは、ヒト気道感染を引き起こす他の微生物を含む。
【0021】
この開示書において使用されているように、「フラップ」は、フェイシャル・マスクの本体の背面に向かって本体―フラップ接合部で折り返されるときに、本体の多層材料に関しフラップの多層材料を反転する一片のフェイシャル・マスクを意味する。従って、従来のフェイシャル・マスクのプリーツ(ひだ)は、本開示書内において「フラップ」ではない。なぜならば、従来のフェイシャル・マスクの使用の間に、そのプリーツが如何に開かれ又は閉じられようと、多層の材料のそのような反転は起こらないからである。
【0022】
この開示書内において使用されるように、材料は、本発明による織物の層のような、複数の層を含む。
【0023】
この開示書において使用されているように、「弾性部材」は、圧縮後、その元の形に容易に回復する基板を意味し、ここで、弾性部材は、圧縮力の適用の前に第1の厚みを持ち、該圧縮力の適用後に第2の厚みを持ち、該圧縮力の停止後に第3の厚みを持つが、第2の厚みは第1の厚みの75%以下であり、第3の厚みは第1の厚みの90%及び100%の間であり、厚みは前記基板を厚み方向に横切る如何なる位置でも測ることができる。
【0024】
本開示書において使用されるように、「結合物質」は、ヒト病原体の空間的通過に対する物的障壁だけを提示するだけというよりは、ヒト病原体に化学的に結合する化学基を意味する。同様に、「結合する」、並びに、「結合する」、「結合している」、及び「結合作用」のような関連用語は、化学プロセスに言及するものであり、単にヒト病原体の空間的移動に対する物理的障壁だけを単に表現するものではない。
【0025】
本開示書において使用されるように、「セルロースの」は、「セルロースを含んでいる」ことを意味する。
【0026】
この開示書において使用されるように、物質の全ての量は、別途特定されない限りは、全重量の百分率としてのその物質の重量において与えられる。例えば、「0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールの水溶液・・・」は、「100グラムの水溶液が0.5グラムのポリビニルアルコール及び4グラムのポリビニルアルコールの間のものを含むこと」を意味する。
【0027】
ここで、図1及び図2を参照して、それぞれ、従来のフェイシャル・マスクの1つのタイプの正面斜視図(図1)と、図1に示されるフェイシャル・マスクの背面斜視図(図2)とを示している。示されるように、従来のフェイシャル・マスク10は、ヒトの着用者の口及び鼻を覆うための本体12を含み、更に、その着用者の頭へ、そのフェイシャル・マスク10を固定するための、本体12に接続される1又はそれ以上の延長体を含む。その本体12は、表面18及び対向する背面20を持つ材料16を含む。その本体12は、上端縁24、底縁26、及び、これらの上端縁24及び底縁26にそれぞれ接続される2つの外側縁28、30を含む周辺部22を更に含む。本体12は、各々が1つの側縁28から他方の側縁30に延び、フェイシャル・マスク10の着用者のフェイシャル・カーブにより密接に近づくように拡大時に本体12の表面18に向かって凸形を中央に形成するように本体12が拡大することを許すような複数のプリーツ32を更に含む。
【0028】
本発明によると、そのフェイシャル・マスクのヒトの着用者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染、及び、ヒトの着用者からの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクを提供する。ここで、図3、図4、図5、図6、図7、及び図8を参照して、それぞれ、本発明によるフェイシャル・マスクの1の実施例の正面斜視図が示され(図3)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面−側面斜視図が示され(図4)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の背面斜視図が示され(図5)、図3に示されるフェイシャル・マスクの実施例の6−6線に沿って切り取られた部分、切り取り、側面斜視図が示され(図6)、着用者に着用されている図3から図6において示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面斜視図が示され(図7)、最終組み立て前であって図3に示されるフェイシャル・マスクの一部の背面斜視図が示され(図8)、そして、フェイシャル・マスクの本体の多層を現わしている、図3に示されるフェイシャル・マスクの部分、切り取り、正面斜視図が示されている(図9)。見られ得るように、フェイシャル・マスク100は、ヒトの着用者300の口及び鼻302を覆うための本体102を含み、更に、本体―フラップ部の接合部106で本体102に付けられるフラップ部104を含む。本体102は、その本体102の表面108と、その本体102の対向する背面110と、その本体102の形を規定する本体102の周辺部112とを含む。本体102の形は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者によって理解され得るように、意図される目的のために如何なる妥当な形にでもなり得る。1の実施例において、本体102の形は、不規則形、楕円形、円形、正方形、及び三角形からなる群から選択される。好ましい実施例において、図3の中で最も明らかに示されるように、本体102の周辺部112によって規定される本体102の形は、右側縁114(そのマスクを着用するときに着用者の視点から与えられる方位)と、その周辺部112の底接合部118で右側縁114に接続される左側縁116と、左側縁116に右側縁114を接続する上端縁120と、を含むが、ここで、正面から見たときに本体102の周辺部は、示されるような形において基本的に三角形である。上端縁120は、図5及び図6において最も明確に現わされ得るように、本体―フラップ部の接合部106を部分的に形成する。1の実施例において、本体102は、更に中央の縫い目122を含む。
【0029】
再び図3、図5、図6、及び図7を参照し、フェイシャル・マスク100のフラップ部104は、そのフラップ部104の表面124(フェイシャル・マスク100の最終構成へとフラップ部104を折り畳む前に与えられる方位)と、そのフラップ部104の対向する背面126と、及びそのフラップ部104の形を規定するフラップ部104の周辺部128と、を含む。そのフラップ部104の形は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者によって理解され得るように、意図される目的のために如何なる妥当な形にでもなり得る。1の実施例において、そのフラップ部104の形は、五角形、長方形、及び三角形からなる群より選択される。好ましい実施例において、図3、図5、及び図7の中で最も明らかに示されるように、フラップ部104の周辺部128によって規定されるフラップ部104の形は、本体102の表面108を、又は下を向く底接合部118を持つ本体102の背面108を見ると、逆U字形である。本開示書において使用されるように、用語「U字形」は、図3、図5、及び図8(但し、図8では逆ではない)において描かれるフラップ部104の形である。図7において特に見られることができるように、この逆U字形は、特に有利であるが、それは、五角、長方形、又は三角形の形よりも着用者の鼻302のベース部において着用者の鼻302の突起を補うことによってフェイシャル・マスク100が着用者300によって着用されるときに、着用者300の鼻302により密接にフラップ部が近付くことを許すからである。図5及び図8において最も明らかに見られ得るように、本発明の1の実施例において、フラップ部104の周辺部128は、右から左へと連続して(マスクを着用するときに着用者の視点から与えられる方位)、右垂直側部130と、右円弧状側部132と、中央湾曲領域134と、左円弧状側部136と、左垂直側部138と、特に本体―フラップ部の接合部106を形成し、垂直側部130と及び左垂直側部138を接続するベース部140と、を含む。
【0030】
再び図3及び図6を参照して、好ましい実施例において、そのフェイシャル・マスク100は、本体102又はフラップ部104に付けられる弾性部材142を更に含む。弾性部材142をフェイシャル・マスク100に組み込むことは、特に有利である。なぜならば、弾性部材142は、着用者300の鼻302の種々の曲線に対して補うことにより着用者によってフェイシャル・マスク100が着用される際にフェイシャル・マスク100が着用者300の鼻により密接に近付くことを許すからである。1の実施例において、弾性部材142は、本体12の背面20に、又は、フラップ部104の表面124に付けられる。しかしながら、図6に特に示される好ましい実施例において、フラップ部104の背面126に弾性部材142が付けられる。なぜならば、フラップ部104の表面124が以下に開示するような感染性の粒子と結合するヒト病原体の伝染を減少させる際に使用されるための織物を含むときに、フラップ部104の表面124へと本体12の周辺部22の上端縁24を超えてフェイシャル・マスク100に入り又はから出る感染性の粒子に暴露されるところ、この方位ではより多くの潜在的な着用者に対してフェイシャル・マスク100のより良いフィットを作り出すからである。弾性部材142は、この開示書を参照して本技術分野の当業者によって理解され得るように、意図された目的にふさわしい如何なる物質をも含むことができる。好ましい実施例において、弾性部材142は、スポンジである。好ましい実施例において、弾性部材142は、ポリウレタンを含む。
【0031】
再び図3、図4、図6と図7を参酌して、好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は、更に、本体102又はフラップ部104に付けられる変形可能な小片144を含む。変形可能な小片144は、特に有利である。何故ならば、変形可能な小片144は、フェイシャル・マスク100が着用者の鼻302の種々な曲線を補うことによって着用者により着用されるとき、着用者300の鼻302により密接に近づくようにフェイシャル・マスク100が着用者300によって調整されることを許可するからである。1の実施例において、変形可能な小片144は、本体12の背面20に、又は、フラップ部104の表面124、若しくはフラップ部104の背面126に取り付けられる。好ましい実施例において、図4及び図6に特に示されるように、変形可能な小片144は、フラップ部に横たわる上端縁24の近くであって本体102の表面108に付けられ、変形可能な小片144の変形は、弾性部材142及びフラップ部104の残りの部分への変形を与えるが、このことは、この開示書を参照することにより本技術分野の当業者によって理解され得るであろう。変形可能な小片144は、着用者300によって容易に変形可能である物質からなる。変形可能な小片144は、この開示書を参照して本技術分野の当業者によって理解され得るように、意図された目的にふさわしい如何なる物質をも含むことができる。好ましい実施例において、変形可能な小片144はプラスチックからなるか、プラスチックの中に入れられたばね鋼ワイヤーからなる。好ましい実施例において、変形可能な小片144は、展性のあるアルミニウムからなる。
【0032】
好ましい実施例において、再び図3、図4、図5、図7、及び図9を参照し、フェイシャル・マスク100は、そのフェイシャル・マスク100を着用者300の頭に固定するため、本体102に付けられた1つ又はそれ以上の延長体146を更に含む。延長体146は、天然ゴム、又は合成ゴムは他の伸縮性のポリマーのような弾力性のある物質からなることができ、又は、弾力性のない布、若しくはプラスチックのような弾力性のない物質からなることができ、そして、図に示されるように調整部材(adjusters)148の有無にかかわらず、着用者の耳304、若しくは顔306を囲むひもの形式又は耳かけであることができる。1の実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、着用者の顔306へのフェイシャル・マスク100取り付けを許す一連の接着性小片である。
【0033】
本発明の1の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるための織物を提供する。ここで図10を参照すれば、本発明による、その織物の部分正面斜視図が示される。見受けられるように、1の実施例において、本発明による織物200は、結合物質202からなる。別の実施例において、この開示書において開示されるように、織物200は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物202からなる。1の実施例において、その織物は、スパンボンド・ポリプロピレン繊維からなる。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置が提供されるが、その装置は、本発明によると織物200からなる。1の実施例において、その装置は、例えばフェイシャル・マスク100のような、本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、本体102及びフラップ部104の両方は、本発明による織物200からなる。
【0034】
本発明の1の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるための材料が提供される。ここで、図11及び図12を参照して、それぞれ、図10に示される織物からなる、そして、三層からなる(図11)、本発明による材料の、部分切り取り、正面斜視図が示される。見受けられるように、1の実施例において、材料204は、本発明による織物200からなる。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる装置が提供されるが、その装置は、本発明による材料からなる。1の実施例において、その装置は、例えばフェイシャル・マスク100のような、本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、本体102及びフラップ部104の両方は、本発明による材料204からなる。
【0035】
本発明による材料204は、複数の層を含むが、1又はそれ以上の層が織物200からなる。材料204は、本開示を参照する当業者であれば理解し得るように、二層、三層、四層、又はそれ以上の層を含むことができる。特に好ましい実施例において、複数の層は、(図11において、A、B、及びCと称されて示されるように)三層である。別の特に好ましい実施例において、複数の層は、(図12において、A、B、C、及びDと称されて示されるように)四層である。特に好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100の本体102及びフラップ部104は、本発明による材料204からなり、そして、本体102の表面108及びフラップ部104の表面124の両方は、本発明による織物(fabric)200からなる。
【0036】
材料204の少なくとも1層は、本発明による(層Bとして図11及び図12において示される)織物200からなる。好ましい実施例において、材料204の2つの層は、織物200からなる。1の実施例において、材料204の1又はそれ以上の層は、ポリプロピレン、ポリエステル、及び不織布の酢酸セルロース織物からなる群より選択される熱成形型織物のような、熱成形型織物16である。1の実施例において、熱成形型織物は、(スパンボンド不織布のポリプロピレンとも呼ばれる)スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)からなる群から選択される。1の実施例において、熱成形型織物は、例えばMS、SM、SMS、SSMS、SMSS、SMSMS、SMMSS、及びSSMMSのような、交互のスパンボンド(S)及びメルトブロー層(M)からなる、スパンボンド/メルトブロー織物複合材からなる。そのような熱成形型織物は、本発明による加熱又は超音波溶着を用いたフェイシャル・マスクの成形を可能にする。そのうえ、そのような熱成形型層は浮遊微小粒子をトラップするが、疎水性であるので、感染性のある微小粒子含有液滴は、たとえその微小粒子含有液滴が層内にトラップされ、本発明による織物200が感染性のある微小粒子に結合することを許したとしても、通常分裂されない。更に、疎水性の層は、湿気をはじき、そして、それゆえに、本体102の背面110が疎水性の層であるとき、フェイシャル・マスク100の着用者300は、彼らの顔306に対して湿気又は湿りを感じない。
【0037】
好ましい実施例において、図11に示すように、材料204は、三層からなり、第1の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、そして、第3の層はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)である。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。1の実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、15g/m2及び25g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、18g/m2である。特に好ましい実施例において、図11に示すように、材料204は、三層からなり、第1の層は45g/m2の密度があるスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、そして、第3の層は18g/m2の密度があるスパンボンド/メルトブロー繊維複合材(層C)である。
【0038】
好ましい実施例において、図12に示すように、材料204は、四層からなり、第1の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、第3の層はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)であり、そして、第4の層はスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層D)である。1の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、10g/m2及び50g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、25g/m2である。特に好ましい別の実施例において、そのスパンボンド・ポリプロピレン繊維の密度は、45g/m2である。1の実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、15g/m2及び25g/m2の間にある。特に好ましい実施例において、そのメルトブロー・ポリプロピレン繊維の密度は、18g/m2である。特に好ましい実施例において、図12に示すように、材料204は、四層からなり、第1の層は45g/m2の密度を持つスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層A)で、第2の層は本発明による織物(層B)で、第3の層は18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維(層C)であり、そして、第4の層は25g/m2の密度を持つスパンボンド・ポリプロピレン繊維(層D)である。
【0039】
1の実施例において、本発明による織物200は、1又はそれ以上の型のヒト病原体に結合する1又はそれ以上の結合物質202からなる。好ましい実施例において、織物200は、インフルエンザのようなヒト気道感染症を引き起こす、1又はそれ以上のインフルエンザウイルスのような型のウイルスに結合する1又はそれ以上の結合物質を含む。ヒト病原体を本発明のフェイシャル・マスク100の織物200に結合させることにより、例えば、ウイルス含有液滴が織物(fabric)200内で蒸発するとき、例えばウィルス粒子の放出を妨げるようなことによりその織物200はヒト病原体の伝染を減少させる。
【0040】
本開示書を参照する本技術分野の当業者であれば理解し得るように、1又はそれ以上の結合物質202は、その結合物質にヒト病原体を化学的に付着させるための1又はそれ以上のヒト病原体の結合基を含む。好ましい実施例において、結合物質202は、更に、織物200に結合物質を付着させるための(例えばビニルスルホン基のような)リンカー基を含む。
【0041】
例として、1の実施例において、織物200に結合されるヒト病原体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)からなる群より選択され、これらのウイルス粒子がヒト細胞の細胞膜の表面オリゴ糖上の末端シアル酸基を介してヒト細胞に結合するので、ヒト病原体結合基はシアル酸基である。しかしながら、シアル酸基は、繊維又は織物(fabric)への付着に適した形態で生産するのは比較的にコストが高いので、好ましい実施例においては、結合物質202は、インフルエンザウイルス上のシアル酸基の結合作用を模倣するが、本発明による結合物質を含む織物の工業規模の生産用の構成要素としてコスト効果の高い物質である。
【0042】
本発明の1の実施例によれば、1又はそれ以上の結合物質202は、(例えば、硫酸化単糖又は硫酸化オリゴ糖のような)硫酸基、及び、(例えば、スルホン化単糖又はスルホン化オリゴ糖のような)スルホン酸基からなる群より選択されるヒト病原体結合基を含むが、その理由は、硫酸基及びスルホン酸基が本発明による織物200において工業規模の生産のためにコスト効果の高い仕様の繊維又は織物上の遊離ヒドロキシル基及び遊離アミノ基に直接結合するところ、その硫酸基及びスルホン酸基の両方は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、並びに、他のヒト病原体においてシアル酸基の結合作用を模倣するからである。好ましい実施例において、織物200は、セルロース織物であり(即ち、セルロースを含み)、1又はそれ以上の結合物質202は、硫酸基を含むヒト病原体結合基を含むことで、非ハイドロゲル硫酸セルロースを含む織物を生み出す。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、ヒト病原体の結合基は、1又はそれ以上のスルホン酸基を含む1又はそれ以上の反応染料である。好ましい実施例において、織物200は、セルロース織物(即ち、セルロースからなる)であり、そして、結合物質202は、スルホン酸基を含む1又はそれ以上の反応染料であり、セルロース・スルホン酸塩からなる織物200を生み出す。
【0044】
反応染料は、繊維及び織物、例えば(アセテート、綿、及びレーヨンのような)セルロース繊維及びセルロース織物、並びに(ウール、ナイロン、及びポリエステル、若しくはポリオレフィンから作られる織物のような)非セルロース繊維及び非セルロース織物の両方を染色するために使用される物質の類(class)である。反応染料は、染浴中で繊維に施与されると、繊維又は織物上のヒドロキシル基と共有結合を形成する、通常ハロ複素環又は活性二重結合である反応性リンカー基を含む。反応染料は、染料を繊維又は織物に付着させるリンカー基のカテゴリに応じて分類される。1の実施例において、結合物質は、アミノクロロトリアジン(aminochlorotriazine)(Procion7 H)、アミノクロロトリアジン−サルフェートエチルスルホン(aminochlorotriazine-sulfatoethylsulfone)(Sumafix Supra)、アミノフルオロトリアジン(aminofluorotriazine)(Cibachron F)、アミノフルオロトリアジン−サルフェートエチルスルホン(aminofluorotriazine-sulfatoethylsulfone)(Cibacron C)、ビス(アミノクロロトリアジン)(bis(aminochlorotriazine))(Procion7 H-E)、ビス(アミノニコチノトリアジン)(bis(aminonicotinotriazine))(Kayacelon React7)、クロロジフルオロピリミジン(chlorodifluoropyrimidine)(Drimarine K)、ジクロロキノキサリン(dichloroquinoxaline)(Levafix7 E)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)(Procion MX)、サルフェートエチルスルホン(sulfatoethylsulfone)(ビニル・スルホン;Remazol7)、サルフェートエチルスルホンアミド(sulfatoethylsulfonamide)(Remazol7 D)、トリクロロピリミジン(trichloropyrimidine)(Drimarine X)からなる群より選択される1又はそれ以上の反応染料である。反応染料は、更に、染料に特有の色を与える発色団を含む。発色団は、多環芳香族基を通常含むが、多環芳香族基は、水溶性を低減させる傾向があるので、反応染料はたいてい、水溶性を増大させるために1又はそれ以上のスルホン酸基をさらに含む。反応染料のスルホン酸基は、本発明の織物の結合物質のヒト病原体結合基として機能することができ、反応染料の反応性リンカー基は、結合物質のリンカー基として機能することができる。
【0045】
所与の染料は、しばしば幾つかの商標名を有しているが、染料に対する一般名称(色素指数、CI)は、次の書式を含む[カテゴリ(酸性、塩基性、直接性、又は反応性);色;及び番号]。本発明の1の実施例によれば、1又はそれ以上の結合物質202は、各々が、本発明による1又はそれ以上のヒト病原体に結合するのに適したヒト病原体結合基として機能するスルホン酸基を含み、各々が、更に、結合物質(染料)を織物に付着させるのに適したリンカー基を含む、CIリアクティブブルー4、CIリアクティブブルー21、CIリアクティブブルー140、CIリアクティブブルー163、CIリアクティブブラウン23、CIリアクティブオレンジ4、CIリアクティブレッド1、CIリアクティブレッド2、CIリアクティブレッド6、CIリアクティブレッド11、CIリアクティブレッド78、CIリアクティブイエロー39、及びCIリアクティブイエロー86からなる群より選択される反応染料である。特に好ましい実施例において、結合物質は、リアクティブブルー21である[銅(29H、31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32)−スルホ((4−((2−スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アミノ)スルホニル誘導体]([copper, (29H, 31H -phthalocyaninato(2-)-N29,N30,N31,N32)-, sulfo((4-((2-sulfooxy)ethyl)sulfonyl)phenyl)amino) sulfonyl derivs])(CAS登録番号73049−92−0)、即ち、セルロース繊維及び織物を含む、繊維及び織物に染料を付着させるビニル・スルホン・リンカー基を持つスルホン化銅フタロシアニン染料(sulfonated copper phthalocyanine dye)である。CIリアクティブブルー21を付着させるための条件を含めた、反応染料を繊維及び織物に付着させるための適切な反応条件は、当該技術分野の当業者に良く知られており、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、染料製造者の説明書並びに標準的な繊維業界の参考文献においても、見出すことができる。
【0046】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、結合物質202は、本発明によるフェイシャル・マスク100の本体内にその織物200が組み込まれるとき、その織物を非通気性にすることはできない。なぜならば、そのような非通気性は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、そのフェイシャル・マスク100が機能しなくなるからである。例えば、ヒト病原体結合基が硫酸基である場合、硫酸セルロースハイドロゲルが顔マスクを通る空気を遮ることによりフェイシャル・マスクを機能させなくするので、硫酸基は、織物内に硫酸セルロースハイドロゲルを形成してはならず、従って、本発明による織物の成分に言及する際の用語「硫酸セルロース」及びその関連用語の使用は、硫酸セルロースハイドロゲル、又はフェイシャル・マスクを通る空気の通過を遮ってフェイシャル・マスクを機能させなくする(すなわち着用者がフェイシャル・マスクを通して十分な呼吸ができないようになる)非通気性の形態を含まない。本発明によるフェイシャル・マスク100の織物200において結合物質202として反応染料を使うことは、織物に結合する反応染料の量が、その反応染料中のスルホン酸基がその織物中でヒドロゲルを作る要因になるほど十分には決して高くないので、特に有利である。
【0047】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸セルロース及びスルホン酸セルロースの両方は、界面活性剤特徴を有しており、その結果硫酸セルロース、若しくはスルホン酸セルロースを含む織物200は、ウイルスを含んだ液滴を分解し、そのウイルス粒子を硫酸セルロース上の硫酸基に、及びスルホン酸セルロース上のスルホン酸基に晒し、それによってウイルス粒子を織物200内にトラップする。
【0048】
1の実施例において、織物200は、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、結合物質202や織物200の繊維以外に、1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば、多価の銅イオン、多価の銀イオン、又は多価の亜鉛イオンのような1又はそれ以上のタイプの多価の金属イオンである。特に好ましい実施例において、金属的塩は、例えば、二価銅の塩及び二価亜鉛の塩からなる群より選択される1又はそれ以上の二価の金属塩のような、二価金属塩である。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、例えば、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である酢酸銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群より選択される金属の塩のような、金属塩である。
【0049】
本開示書を参照する当業者が理解し得るように、セルロースを含む織物200上に硫酸基又はスルホン酸基を含む結合物質202を使用することは、インフルエンザウイルス及び他のヒト病原体の伝染から多くの人々を保護するため、本発明によるフェイシャル・マスク100の工業規模の生産にとって比較的安価で、かつ、妥当である。更に、織物200は、例えば、ウイルス粒子が織物200に接触した後に織物200から、そのウイルス粒子が浸出しないように織物200内にそのウイルス粒子を結合させることにより、かつ、あるフェイシャル・マスクにおいて使用される毒性のある抗菌性の化合物を置き換えることにより、ヒト及びペットの両方にとって安全となる。更に有利には、その織物200については、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するように設計された幾つかの織物に関して1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するための照明及び一重項酸素の発生を、必要としない。
【0050】
1の実施例において、織物200は、例えば織布レーヨンのような織ったものである。別の実施例において、織物200は、例えば不織布レーヨンのように織っていないものである。本発明の1の実施例によると、フェイシャル・マスク100は、本発明によって1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる際に使用される織物200からなる。1の実施例において、この開示書において開示され、図10で示されるように、フェイシャル・マスク100は、織物200からなる。別の実施例において、この開示書において開示され、図11及び図12に示されるように、フェイシャル・マスク100はある材料からなる。
【0051】
本発明の別の実施例によると、例えば、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスのような、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるために本発明によるフェイシャル・マスク100を構成する際に使用されるための織物200を作るための方法が提供される。1の実施例において、その方法は、本発明による織物200を生産する。次に、その方法は、ヒト病原体結合基として硫酸基を含む結合物質を有するセルロースを含む織物(この例ではレーヨン)を作製することに関してのみを主とする例として開示されるが、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、同じ織物、及び本発明による(スルホン酸基のような)他の結合物質を有する相当する織物を生産するために他の方法も使用することができる。
【0052】
1の実施例において、その方法は、最初に、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するための織物200に使用するのに適した繊維を提供するステップを含む。1の実施例において、織物はセルロースを含む。好ましい実施例において、織物は(セルロースの形態の)レーヨンを含む。商業的な目的のセルロース繊維の最も重要な供給源は、木材パルプからであるが、木材パルプから直接得られるセルロース繊維は、本発明による織物に織り込むには短か過ぎ、且つ粗過ぎ、木材パルプ由来のセルロースは、比較的有機溶媒には不溶性であり、細繊維に押出成形することはできない。それに反して、レーヨン繊維は、木材パルプ及び他の植物由来の自然発生するセルロースポリマーから生産される。レーヨン繊維を形成するために、セルロースは、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、最初に(例えば酢酸塩のような)可溶化基で誘導体化され、紡糸繊維に形成され、次いで可溶化基が取り除かれて、織物に織られ得るセルロース繊維が生み出される。
【0053】
次に、その方法は、1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加するステップを含む。結合物質の繊維への付加は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、当業者に知られている技術を用いて達成することができる。好ましい実施例において、付加される結合物質は、本発明による結合物質である。例として、その方法は、硫酸基を含むヒト病原体結合基を含む結合物質であって、それによって硫酸化セルロース繊維を生じさせる結合物質に対して開示される。この実施例において、1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加することにより、織物の構造又は強度を崩壊させることなく、織物においてセルロース由来の繊維の硫酸化がもたらされる。更に、これらのステップは、硫酸基を(レーヨンのような)セルロース繊維に共有結合で結び付けることに関して開示されているが、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸基を他のセルロース織物、(例えば、ポリエステル又はポリオレフィンから作製された繊維のような)セルロース由来及び非セルロース由来の繊維の混合物、及び遊離ヒドロキシル基又はアミノ基を含む非セルロース由来の繊維に付加するために同等のステップを使用することができる。
【0054】
セルロースは、その各々が3個の遊離ヒドロキシル基を有するグルコース単位の線状ポリマーである。セルロースの硫酸化度(DS)は、1単糖あたりの硫酸基の平均個数として当技術分野で定義されている。DS3が最大限であり、すべての利用可能なヒドロキシル基が完全に硫酸化されていることを示唆している。硫酸化度1は、1グルコース単位あたり平均1個の硫酸基が存在していることを示唆しており、DS0.1は、例えば10グルコース単位ごとに平均1個のヒドロキシル基が硫酸化されていることを示唆している。本発明の重要な態様は、本発明による繊維又は織物へのウイルス及び他のヒト病原体の結合が、ヒト病原体を繊維又は織物上の2つ以上の固定化された硫酸基又はスルホン酸基に結合させ、それによって結合物質とヒト病原体の間の相互作用の親和性を強く増大させることを伴うことである。
【0055】
硫酸化度は、例えば元素分析などによって硫酸塩、スルホン酸塩、又は全硫黄を測定する任意の適した分析的方法によって決定される。結合物質が付着されていないセルロース繊維、又は非色素化されていないセルロース繊維、若しくは織物の硫黄成分は、極めて少ないか検出不能である。本発明の1の実施例によれば、本発明の方法は、0.02及び2の間の硫酸化度をもたらす。本発明の好ましい実施例において、本発明の方法は、0.05及び0.5の間の硫酸化度をもたらす。特に好ましい実施例において、本発明の方法は、0.09及び0.21の間の硫酸化度をもたらす。硫酸化又はスルホン化の繊維又は織物の硫酸化度は、必要とされる硫酸化度を有する繊維を生産するために、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、硫酸化又はスルホン化反応における時間、温度、又は試薬濃度を調整することによって調節することができる。
【0056】
セルロース織物の硫酸化度が0.2を超えて増大すると、液体の水又は水蒸気に晒されたときに繊維の水溶性が増し、それによって織物がハイドロゲルを形成し、織物を通る通気性を低減させる。こうした可溶化の傾向は、比較的に空気の通過を妨げないことが要求されるフェイシャル・マスクに使用される織物には受け入れられない。従って、本発明の1の実施例において、その方法は、更に、織物の繊維を互いに化学的に結び付けて可溶化を防止する1又はそれ以上の架橋剤を用いて織物を処理することによって、結合物質を付着する前又はその後に織物の繊維を架橋(クロスリンク)するステップを含む。1の実施例において、織物を架橋剤で処理するステップは、織物を例えば水酸化ナトリウムのようなアルカリと接触させて、セルロース織物の場合はアルカリ化されたセルロースを与え、次いで、その織物を架橋剤で反応させるステップを含む。1の実施例において、架橋剤は、ジクロロアルカン、ジメチロール尿素、ホルムアルデヒド、及びトリメチロールメラミンからなる群より選択される。好ましい実施例において、架橋剤は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、グリセリンジグリシジルエーテル、及びビニルシクロヘキセンジオキシドからなる群より選択されるエポキシ化合物である。
【0057】
硫酸ヒト病原体結合基を含む1又はそれ以上の結合物質を繊維に付加することは、例えば最初に織物を、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルホルムアミド(DMF)のような適した溶媒に接触させることによって達成することができる。織物を溶媒に接触させる時間は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、繊維の膨張を最適化し、それによって繊維表面上のヒドロキシル基の硫酸化への暴露を増大させるように調整される。
【0058】
次に、溶媒で処理した織物を、例えば硫化試薬のような結合物質と接触させる。適した硫化試薬は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、使用する溶媒による。例えば、1の実施例において、溶媒はジメチルスルホキサイドであり、硫化試薬は、三酸化硫黄(DMSO−SO3)で処理されたDMSOである。別の実施例において、溶媒はジメチルホルムアミドであり、硫化試薬は、三酸化硫黄(DMF−SO3)で処理されたジメチルホルムアミドである。結合物質との接触は、結合物質と繊維の共有結合が満足のいく程度に達するまで、ただし過剰な結合物質が繊維に結合する前まで維持され、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、過剰な結合物質が繊維に結合すると、硫酸の場合は織物が液体の水又は水蒸気との接触時に非通気性になるはずである。
【0059】
1の実施例において、その方法は、更に、織物を、例えば(DMSO−SO3)及び(DMF−SO3)のような溶媒ですすぎ、次いで例えば水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は重炭酸ナトリウムなどの適した塩基と接触させて酸性の硫化剤などの酸性の結合物質を中和する、或いは結合物質を織物に付加する間に形成された酸を中和するステップを含む。
【0060】
次いで、織物を、例えば水または単純アルコール(エタノール又はイソプロパノール)のような適した溶媒で洗浄して未反応の試薬を取り除き、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスを含む1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するのに使用されるのに適した硫酸化織物を生じさせる。
【0061】
別の実施において、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減するために、本発明によるフェイシャル・マスクを構成する際に使用される織物を作製するための方法は、最初、セルロースパルプ又はセルロース粉末から作製された、0.2を上回る硫酸化度、好ましくは繊維を水溶性にするのに十分である0.5を上回る硫酸化度を有する硫酸セルロース材料を提供するステップを含む。次に、可溶性の硫酸セルロースは、次いで織物に適応され、上記で開示し、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、架橋剤を用いて織物の繊維に共有結合で架橋される。本方法のこの実施例において、織物は、比較的厳しい硫酸化条件及び試薬には晒されず、可溶性の硫酸セルロース及び架橋試薬、並びに架橋結合の条件だけに晒されるため、硫酸化反応が良好に制御されない場合に起こり得る織物に対する損傷の可能性を減少させる。可溶性の硫酸セルロースの濃度は、本開示書を参照する当業者が理解し得るように、特に織物が本発明によるマスクに使用されるとき、フェイシャル・マスクを通るガス交換に適した受け入れ可能な圧力降下特徴を有する織物が得られるように試験によって選択される。
【0062】
本発明の1の実施例において、方法は、更に、織物をヒト病原性に必須のヒト病原体の特徴を化学的に崩壊させる1又はそれ以上の物質に接触させるステップを含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の物質は、そのすべてが殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば多価の銅、多価の銀、若しくは多価の亜鉛のような多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、そのすべてが殺菌性、殺ウイルス性、及び抗菌性である、例えば酸化銅、酢酸亜鉛、酢酸銅、又は硫酸銅のような金属塩である。好ましい実施例において、その金属塩は二価の金属塩である。酢酸塩は、揮発性であり、蒸発によって織物から取り除くことができるので陰イオン塩成分として有利であるが、他の陰イオンもまた、塩化物、酸化物、ヨウ化物、及び他の化合物を含め、塩の成分として適している。1又はそれ以上の物質の織物への付加は、ヒト病原体を織物へ結合させることに加えてメカニズムを使用することにより、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を低減することにおいて本発明のフェイシャル・マスクの効能を増大させる。
【0063】
本発明の1の実施例において、本方法は、結合物質を含む繊維以外の、例えばポリエステル繊維又はポリプロピレン繊維のような、1又はそれ以上の種類の繊維を織物の中に組み込むステップを更に含む。
【0064】
別の実施例において、ステープル又はトウの形態のセルロース繊維は、本開示書で開示されたように織物に対して使用される同じ種類の硫酸化反応によって硫酸化され、次いでこの硫酸セルロース繊維は洗浄され、その後セルロースステープル又はトウを糸に紡糸する従来の方法によって不織布又は織布に形成される、或いは直接不織布に形成される。
【0065】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるため、本発明によるフェイシャル・マスク100を構成する際の使用のため、織物200を作るための本発明の方法は、ここで以下の例に関して開示されるであろう。
【0066】
[実験例1]
[硫酸化レーヨン織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、硫酸化レーヨンは本発明によって次のように調製された。最初、60mlイソプロパノールを氷上で冷し、0.2グラムのMgSO4をイソプロパノールに加えて水を取り除いた。次に、前に氷上で冷した240mlの硫酸をイソプロパノールに加えた。次いで、70グラム/平方メートルの密度を有する不織布のレーヨン織物を17.5cm×22.5cmの長方形に切断し、ほぼ同じ大きさのポリプロピレンメッシュ上に載せた。次に、メッシュ上のレーヨン織物を冷した酢酸に15分間浸した。次いで、イソプロパノール/硫酸混合物を氷上に静置されているポリエチレンの箱(約30cm×37.5cm)に注いだ。次に、ポリエチレンメッシュ上のレーヨン織物をイソプロパノール/硫酸混合物に5分間又は10分間浸し、最初に低温のイソプロパノールで、次いで100mlあたり酢酸ナトリウム3グラムを含有する低温のイソプロパノールで、その後低温のイソプロパノールですすいで硫酸化レーヨン織物を作り出した。次に、このレーヨン織物を次いでポリエチレンメッシュ上にあるままで乾燥させた。硫酸化レーヨン織物のサンプルを、硫黄及び炭素成分に対して分析した。すすぎ前の5分の反応時間は、約0.1の硫酸化度(DS)を生じさせることが見出され、一方ですすぎ前の10分の反応時間は、約0.2の硫酸化度(DS)を生じさせることが見出された。
【0067】
[実験例2]
[スルホン化レーヨン織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、スルホン化レーヨン織物を本発明によって次のように調製した。最初、30グラムの硫酸ナトリウムを600グラムの蒸留水に加え、続いて、4グラムのCIリアクティブブルー21染料(スルホン化結合物質)を加えて溶液を調製した。次に、30グラムの70グラム/平方メートルの密度を有する不織布のレーヨン織物をこの溶液に加え、均一に浸り湿潤するまで静かに旋回させた。次いで、12グラムの炭酸ナトリウムをかき混ぜながら加え、この混合物を35分間30ECに保った。次に、温度を追加の60分間で70ECまで上昇させて、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いて)スルホン化レーヨン織物を生じさせた。次いで、このスルホン化レーヨン織物を、遊離染料が溶出しなくなるまで流水ですすぎ、スルホン化レーヨン織物を空気乾燥させた。
【0068】
[実験例3]
[1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を破壊する1又はそれ以上の物質を含む織物の調製]
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された硫酸化セルロース織物又は実験例2によって作製されたスルホン化セルロース織物を、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を破壊する、結合物質以外の、1又はそれ以上の追加の物質を含むように以下のように調製した。最初、硫酸化レーヨン織物を実験例1に開示したプロセスによって作製し、或いは、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を実験例2に開示したプロセスによって作製した。次いで、いずれも二価の金属塩である硫酸銅及び酢酸亜鉛を、1グラム/水100ミリリットルの濃度の金属塩を用いて、40μl/cm2織物でエアロゾルによって織物に施与した。次いで、追加の物質を含む織物を空気乾燥させ、二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含む硫酸化レーヨン織物又は二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を生じさせた。
【0069】
[実験例4]
[二価の金属塩を含むスルホン化レーヨン織物の調製のための工業的プロセス]
本発明の1の実施例によると、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物で二価金属塩を含むものを、本発明によって以下のように調製した。最初に、70グラム/平方メートルの密度を持つ100%のスパンレース(spunlace)・ビスコース・レーヨン織物を、20:1の液体対固体の比率で、CIリアクティブブルー21(Novacron7 Turquoise H-GN)で染色した。次に、50g/Lの硫酸ナトリウム、20g/Lの炭酸ナトリウム、及び体積で12%の染料(120ml/L)を染浴に加え、連続撹拌で完全に混合した。次いで、レーヨン織物を染浴内に35分間30ECの温度で浸漬し、続く60分間70ECの温度で浸漬して、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を作り出した。次に、スルホン化レーヨン織物を流水ですすぎ、空気乾燥させた。次いで、水1リットルあたり酢酸銅及び酢酸亜鉛それぞれ50gグラムを、スルホン化レーヨン上に0.08L/m2の割合で噴霧して、二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を作り出した。二価の銅及び二価の亜鉛イオンの両方を含むスルホン化レーヨン織物を、再度空気乾燥させた。
【0070】
[実験例5]
[抗ヒト病原体特性に対する織物の評価]
標準的な量のウイルスを1枚の試験用織物上に施与することによって、(抗ヒト病原体特性の代用として)織物の抗ウイルス特性の試験を行う。次いで、試験用織物を細胞培地中でかき混ぜて、如何なる機能するウイルス粒子、即ち、織物に接着することによって、或いは試験用織物に対して別のことによって不活性化がなされないウイルス粒子を溶出する。細胞培地中に溶出された機能するウイルス粒子は、ウイルスにより致死になりやすい細胞を備える培地に接触させられて、細胞死の定量的な読み取りを確保して、ウイルスの活性に対して評価される。溶出培地中の細胞死の低減は、織物へのウイルス接着による試験用織物によって、或いは試験用織物によって別様に、ウイルスの不活性化が増大したことを示す。
【0071】
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸レーヨン織物、実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び実験例3によって作製された硫酸銅及び酢酸亜鉛の両方を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物を、抗ウイルス特性のために評価した。最初、硫酸レーヨン織物、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び硫酸銅及び酢酸亜鉛の両方を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物の試験用サンプルを、ヒト病原体単純疱疹ウイルス(HSV)を非活性化する織物の能力を評価するためにMicrobiotest Inc.社(米国、バージニア州、スターリング)に提出した。試験用織物の5cm×5cmの面積に対して、同様にレーヨン対照用の織物の非硫酸、非スルホン化の一片に対して、そして、(水100mlあたりそれぞれ1グラム、1平方センチメートルあたり40マイクロリットルで施与したもので)硫酸銅及び酢酸亜鉛のみで処理されたレーヨン織物の一片に対して、HSVをエアロゾルで施与した。HSV処理した織物サンプルを1分間保ち、次いで抽出培地の個々の20mlアリコート内に置き、静かな撹拌に5分間かけた。抽出サンプルのアリコートを希釈培地中で連続的に10倍に希釈し、宿主細胞上に接種した。各々のサンプルからの抽出培地中の残留した感染性ウイルスを検出し、そのウイルスにより誘導された細胞変性効果によって定量化した。
【0072】
【表1】
【0073】
示されるように、実験例1によって調製された硫酸化レーヨン織物は、非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて1.87という対数の値だけの減少を有した。硫酸銅及び酢酸亜鉛を非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物内に組み込むことにより、非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて2.0という対数の値だけの減少を生じさせ、このとき病原体ウイルスの減少は二価の塩の単独の存在に起因した。実験例2によって調製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、非硫酸化レーヨン対照用の織物に比べ、病原体ウイルスにおいて0.37という対数だけの値の減少を有した。
【0074】
この評価システムにおける検出の下限は3.13という対数の値だけの量であったため、硫酸銅及び酢酸亜鉛で処理された、(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物に対するHSV力価における最低減少は、4.47という対数の値だけの量であった。従って、同量の二価の金属イオンを組み込む非硫酸化、非スルホン化レーヨン織物と対比すれば、最低2.47という対数の値だけの更なるウイルス不活性化又はトラッピングが、スルホン化及び二価の金属イオンによって達成された。これらの結果は、織物のスルホン化及び二価の金属塩の織物への組み込みとの間の抗ヒト病原体の活性に対する予期せぬ相乗効果を立証した。
【0075】
本発明の1の実施例によれば、実験例1によって作製された0.1又は0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸化レーヨン織物、実験例4によって作製された0.2の硫酸化度(DS)を有し、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む硫酸化レーヨン織物、実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、及び実験例3によって作製された、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物、並びに非硫酸化、非スルホン化レーヨン対照用の織物、及び二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含むレーヨン織物を、それらの抗ウイルス特性に対して評価した。インフルエンザA型ウイルスの4.70という対数の値の量をエアロゾルで試験用織物の5cm×5cmの面積に施与し、施与されたインフルエンザA型ウイルスを有するこの試験用織物の各々の3つのサンプルを、ウイルス施与後1分、5分、又は15分間静置し、次いで抽出培地の個々の20mlアリコート内に置き、静かな撹拌を5分間行った。抽出バッファの連続希釈を孵化卵に施し、胚期の生存能力およびそのような卵からの尿膜腔液の赤血球凝集素検査による病原体インフルエンザA型ウイルスの力価を評価した。
【0076】
試験の結果は、実験例1によって作製され、0.1又は0.2の硫酸化度(DS)を有する硫酸化レーヨン織物が、試験された時間点(1分、5分、及び15分)の各々においていずれも検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、織物に施与されたウイルス量に比べ、試験の各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値の減少を示すものであった。同様に、0.2の硫酸化度(DS)を有し、二価の金属塩の硫酸銅及び酢酸亜鉛を含む実験例1によって作製された硫酸化レーヨン織物もまた、試験された各々の時点(1分、5分、及び15分)において検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、織物に施与されたウイルス量に比べ、試験された各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値だけの減少を示した。
【0077】
実験例2によって作製された(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、1分の試験時間で1.95、5分の試験時間で2.33、15分の試験時間で3.08の対数の値だけの減少でインフルエンザAウイルスを減少させた。実施例3によって作製された、二価の金属塩の硫酸銅および酢酸亜鉛を含む(結合物質としてCIリアクティブブルー21染料を用いた)スルホン化レーヨン織物は、試験された各々の時点(1、5、及び15分)において検出可能な病原性ウイルスを生じさせず、試験された各々の時点において3を上回るインフルエンザウイルスの対数の値だけの減少を示した。
【0078】
好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は本発明によれば織物200からなるが、その織物200は本発明によれば結合物質202を含む。好ましい実施例において、その織物200は、結合物質以外に、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、本発明による1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、例えば、多価の銅、多価の銀、及び多価の亜鉛からなる群より選択される多価金属イオンのような、多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上の物質は、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される金属塩のような、金属の塩である。特に好ましい実施例において、金属塩は、二価の塩である。特に好ましい実施例において、フェイシャル・マスク100は、結合物質202としてCIリアクティブブルー21染料を含む織物200からなり、その織物200は、多価の銅及び多価の亜鉛を更に含む。
【0079】
本発明の別の実施例によれば、ヒト気道感染症を引き起こすウイルスを含む、1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる際に使用するため、本発明によるフェイシャル・マスク100を作る方法を提供する。1の実施例において、フェイシャル・マスク100は、本体102、フラップ部104、及び、着用者の顔306に固定するために本体102に付けられる1又はそれ以上の延長体146を含む。1の実施例において、その方法は、本開示書において開示されるような1又はそれ以上の熱成形型織物で、本開示書において開示されるような織物200を囲む又は包囲するステップを含む。そのような熱成形型織物は、フェイシャル・マスク100の熱、若しくは超音波溶着でマスクを成形することを許す。
【0080】
1の実施例において、本開示書において開示されるように、その方法は、最初に、織物200を提供するステップを含む。好ましい実施例において、その織物200は、結合物質202以外に、1又はそれ以上のヒト病原体の病原性能力を減少させる、本発明による1又はそれ以上の追加の物質を更に含む。好ましい実施例において、1又はそれ以上の追加の物質は、例えば、二価の銅又は二価の亜鉛のような、多価の銅、多価の銀、又は多価の亜鉛のような、多価の金属イオンである。別の実施例において、1又はそれ以上のその物質は、例えば、酸化銅、酢酸亜鉛、酢酸銅、又は硫酸銅のような金属塩である。特に好ましい実施例において、その金属的塩は、二価の銅及び二価の亜鉛からなる群より選択される1又はそれ以上の二価金属塩のような、二価の金属塩である。
【0081】
1の実施例において、織物200は、フェイシャル・マスク100の形に切られ成形され、1又はそれ以上の延長体146がフェイシャル・マスク100の本体102に取り付けられる。
【0082】
別の実施例において、フェイシャル・マスク100の本体102及びフラップ部104は、本開示書に開示されるような材料204のような複数の層を含む材料からなる。特に好ましい実施例において、複数の層は、図11に示される材料204のような3つの層(三層)である。特に好ましい実施例において、複数の層は、図12に示される材料204のような4つの層(四層)である。フェイシャル・マスクが本発明による材料204からなるとき、その方法は、1又はそれ以上の層からなる材料204を形成するために、本発明による織物200を提供するステップを含む。
【0083】
1の実施例において、織物200、又は材料204、又は織物200及び材料204の両方は、第1のサイズのロール上に提供され、そのロ−ルは、フェイシャル・マスク100を作るために第2のサイズへと切られる。
【0084】
次に、本体102及びフラップ部104の形へと、織物200を切るステップ又は多層の材料204を切るステップをその方法は含む。
【0085】
1の実施例において、フェイシャル・マスク100は、複数の層からなる材料204からなり、そして、その方法はその層の順に材料204の複数の層を組み立てるステップと、それらの層を接合するステップとを含む。1の実施例において、複数の層からなる材料204は、フラップ部104の周辺部128及び本体102の周辺部112を作るように接着剤で接合される。好ましい実施例において、多層の材料204は、フラップ部104の周辺部128及び本体102の周辺部112を作るように超音波溶着で接合される。
【0086】
1の実施例において、その方法は、フェイシャル・マスク100の起源又はその内容を特定する、又は、そのフェイシャル・マスク100を着用する際の説明を提供する、テキスト、又はグラフィックス、又はテキスト及びグラフィックスの両方をフェイシャル・マスク100にラべリングするステップを更に含む。
【0087】
1の実施例において、図8に見られるように、この段階で、本体102及びフラップ部104は、示されるような形を含み、そして、その方法は、この開示書を参照して当該技術分野の当業者が理解し得るように、如何なる妥当な方法によったとしても、本体102の中央の縫い目122を作るステップを更に含む。1の実施例において、本体102の中央の縫い目122は、接着剤を適用することによって作られる。好ましい実施例において、本体102の中央の縫い目122は、超音波溶着によって作られる。
【0088】
1の実施例において、その方法は、本体102に1又はそれ以上の延長体146を取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、接着剤の適用によって本体102に取り付けられる。好ましい実施例において、1又はそれ以上の延長体146は、超音波溶着によって本体102に取り付けられる。
【0089】
1の実施例において、その方法は、弾性部材142をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、弾性部材142をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップは、接着剤を弾性部材142に、又は、フラップ部104に、又は、弾性部材142及びフラップ部104の両方に、適用するステップと、弾性部材142及びフラップ部104に圧力を印加することにより、弾性部材142をフラップ部104に接合するステップと、を含む。
【0090】
1の実施例において、その方法は、変形可能な小片144をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップを更に含む。1の実施例において、変形可能な小片144をフェイシャル・マスク100に取り付けるステップは、接着剤を変形可能な小片144に、又は、本体102に、又は、変形可能な小片144及び本体102の両方に適用するステップと、圧力を変形可能な小片144及び本体102に印加することによって、変形可能な小片144を本体102に接合するステップを含む。
【0091】
次に、図8に見られるように、その方法は、フラップ部104の背面126が本体102の背面110に面するように、フェイシャル・マスク100の本体−フラップ部の接合部でフラップ部104を折るステップを更に含む。フェイシャル・マスク100は、ここで着用される準備ができている。
【0092】
本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法を提供する。1の実施例において、その方法は、本発明によるフェイシャル・マスク100を提供するステップと、フェイシャル・マスク100を着用するステップと、を含む。
【0093】
本発明の1の実施例によるフェイシャル・マスク100は、2つの利点がある。ここで図13を参照するが、それは、着用者によって着用された状態で、図1及び図2に示されるフェイシャル・マスクの実施例の正面からの斜視図である。見られるように、本発明によるフェイシャル・マスク100への第1の利点は、本発明によるフェイシャル・マスク100のフラップ部104が、着用者300の鼻302の周りにおける従来のフェイシャル・マスク10より良いフィットを与えることであり、これにより、従来のフェイシャル・マスク10を着用することと比べたとき、本発明によるフェイシャル・マスク100を着用することが、フェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間から外に空気感染性の粒子の排出(上向き矢印として示される)を減少させ、フェイシャル・マスク100の周辺部112周りから空気感染性の粒子がフェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間へと吸入されること(下向き矢印として示される)を減少させ、又は、フェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間から外に空気感染性の粒子の排出(上向き矢印として示される)を減少させ、かつ、フェイシャル・マスク100の周辺部112周りから空気感染性の粒子がフェイシャル・マスク100及び着用者300の顔306の間の空間へと吸入されること(下向き矢印として示される)を減少させる。この利点のため、第三者から伝染性の粒子で本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300が感染することを防止することによりそして、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300から第三者への1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させることにより、1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる。
【0094】
更に、図面において見られるように、本発明によるフェイシャル・マスク100の第2の利点は、フェイシャル・マスク100の本体102の背面110の方へ本体―フラップ部の接合部106において、フラップ部104を折り曲げることであり、本体102の多層の材料204についてフラップ部104の多層の材料204を反転させる。方位のこの反転は、着用者300から追い出される、又はフェイシャル・マスク100の周辺部112の外から着用者300の顔306及びフェイシャル・マスク100の間の空間進入する空気感染性の粒子が、織物200に出会うようにする。そのため、感染性の粒子の幾らかは織物200に結合し、第三者からの感染性の粒子で、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300の感染を防止することにより、及び、本発明によるフェイシャル・マスク100の着用者300から1又はそれ以上のヒト病原体の第三者への伝染を減少させることにより、1又はそれ以上のヒト病原体を減少させる。
【0095】
本発明の1の実施例によると、ヒト病原体の伝染を減少させる際に用いられる、例えば織物又は材料のようなポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物を提供する。1の実施例において、組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の疎水性を減少させる。そして、それによって、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を通してヒト病原体の伝染を増加させる。別の実施例において、組成物は、追加の直接的な殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性活性を持つ。その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に付着する耐久的なコーティングを提供する。熱可塑性ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料からなる保護用のフェイス・マスクの超音波成形及び溶着のような高速製造プロセスと両立できる。好ましい実施例において、その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面の上にコーティングされる。好ましい実施例において、その組成物は、ポリプロピレン系材料の2又はそれ以上の層のうち2つの層の上にコーティングされる。
【0096】
1の実施例において、その組成物はクエン酸(また、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸(2-hydroxypropane- 1,2,3-tricarboxylic acid)としても、また、3−ヒドロキシペンタン二酸−3−カルボン酸(3-hydroxypentanedioic acid-3-carboxylic acid)としても、又は、ハイドロゲン・シトレート(hydrogen citrate)としても知られる)を含み、ポリビニルアルコール(また、Alkotex、Alvyl、Covol、Ethenol、Gelvatol、homopolymer、Lemol、Mowiol、Poly(Ethenol)、Polyviol、PVA、PVOH及びVinolとしても知られる)を含む。好ましい実施例において、ポリビニルアルコールは、(非イオン界面活性剤の有無によらず)クエン酸と混合されたときに、また、耐久性のあるコーティングを形成するところ、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に最適に組成が付着することを許すような部分的に加水分解された形である。1の実施例において、ポリビニルアルコールは、Elvanol(登録商標)51-05(E.I.デュポン・ディスタルエンド28ニューマース・アンド・カンパニー・コーポレーション、デラウェア、メリーランド州 アメリカ合衆国(E. I. du Pont Distal end 28 Nemours and Company Corporation, Delaware, MD US))である。
【0097】
好ましい実施例において、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物は、1又はそれ以上の非イオン界面活性剤を更に含む。ヒト病原体を含むエーロゾル液滴と、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を処理する組成物とを接触させると、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を通して、クエン酸の分散を増大させることにより、かつ、病原性の粒子に直接働きかけることにより、その組成物でコーティングされるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性を非イオン界面活性剤は増大させる。1の実施例において、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(polyoxyethylene (20) sorbitan)(また、モノラウレート(monolaurate)、ポリソルベート20(polysorbate 20)、PEG(20)ソルビタン・モノラウレート(PEG(20) sorbitan monolaurate)、及びツイーン20(Tween 20)としても知られる)である。
【0098】
1の実施例において、その組成物は水溶液である。好ましい実施例において、その水溶液の水の部分は、蒸留水である。
【0099】
1の実施例において、その組成物は、0.5%から4%のクエン酸、及び0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールの水溶液を含む。別の実施例において、その組成物は1%及び3%の間のクエン酸、及び、1%及び3%の間のポリビニルアルコールの水溶液を含む。好ましい実施例において、その組成物は、2%のポリビニルアルコール及び2%のクエン酸の水溶液を含む。1の実施例において、その組成物は、0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含む。別の実施例において、その組成物は、0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含む。好ましい実施例において、その組成物は0.5%の非イオン界面活性剤を含む。特に好ましい実施例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び、0.5%の非イオン界面活性剤を含む水溶液である。
【0100】
好ましい実施例において、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物は、1又はそれ以上の種類の、殺菌性の、殺真菌性の、又は、殺ウイルス性の薬剤を更に含む。その殺菌性の、殺真菌性の、又は、殺ウイルス性の薬剤は、その組成物の他の構成要素(クエン酸、ポリビニルアルコール、及び非イオン界面活性剤)と物理的に両立できる殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の如何なる薬剤であり得る。1の実施例において、その薬剤は、その全てが、殺菌性、殺真菌性、及び殺ウイルス性である、例えば、多価の銅、多価の銀、又は多価の亜鉛のような、多価の金属イオンである。特に好ましい実施例において、その金属イオンは、その全てが殺菌性、殺ウイルス性、及び抗菌性である、例えば、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される二価の金属塩のような、二価の銅の塩及び二価の銀の塩からなる群から選択される1又はそれ以上の二価の金属塩のような、二価の金属の塩である。1の実施例において、その組成物は、酢酸銅及び酢酸亜鉛を含む。1の実施例において、その組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、その組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含む。別の実施例において、その組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含む。1の実施例において、その組成物は、3%の酢酸銅及び3%の酢酸亜鉛を含む。
【0101】
有利なことに、その組成物は、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の上でその組成物が乾燥させられるときに、(例えば、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、又はメルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)を通して)ポリプロピレン系織物の親水性、又は、ポリプロピレン系材料の親水性を増やす。このことは、液体の透過を増加させ、ヒト病原体を含むエアゾール液滴が、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面の上に留まる代わりに、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の表面を通って通過することを許し、その結果、1又はそれ以上の二価の金属の塩を含む、若しくは反応染料を含む殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させ、本発明による、例えば一層の織物のような、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によるヒト病原体の伝染を減少させるもう1つの層に、ヒト病原体を含むエアゾール液滴が遭遇する。その組成物のクエン酸構成要素の酸性の性質は、ポリビニルアルコールに対する親水性可塑剤として働き、その上、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の織物に寄与する酸性の環境を提供する。
【0102】
その上、その組成物は、有利なことに気流を妨げることがなく、そのため、保護用のフェースマスクの一部として使われるポリプロピレン系織物及びポリプロピレン系材料の上での使用にその組成物は適することとなる。
【0103】
本発明のその組成物は、本開示書を参照する当該技術分野の当業者によって理解され得るように、如何なる妥当なプロセスによっても作ることができる。例えば、1の実施例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む水溶液であり、その組成物は、蒸留水で、クエン酸、ポリビニルアルコール、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンを溶解することにより、ポリビニルアルコールが完全に溶解するまで80℃で溶液を沸騰させることにより、そして、次にその溶液を使用する前に室温まで冷却することを許すことにより、作られる。別の実験例において、その組成物は、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む水溶液であり、そして、その組成物は、前述の実験例に従って作られた溶液の中に、十分な量の酢酸銅の粉末及び酢酸亜鉛の粉末を溶かすことにより、作られる。
【0104】
その組成物は、本開示書を参照して、当該技術分野の当業者によって理解され得るように、如何なる妥当な方法で、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料に適用される。例えば、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をその組成物中に浸すことによって、そして次に、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を乾燥することによって適用されるのである。1の実施例において、乾燥ステップは、その組成物がコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を室温において空気乾燥させることを許すステップを含む。別の実施例において、例えば、その組成物がコーティングされたポリプロピレン系織物又はその組成物がコーティングされたポリプロピレン系材料を生産ラインにおける加熱されたローラに接触させることによるように、強制空気又は熱を用いるステップを乾燥ステップは含む。
【0105】
本開示書を参照する当該分野の当業者によって理解され得るように、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をその組成物でコーティングするステップは、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料のロールがその組成でコーティングされて乾燥される連続生産プロセスを使用して達成することができる。そして、次に、コーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料は、例えば、保護用のフェイス・マスクのような微細構造を生産するために製造装置に直接的に供給され得るか、又は、後の使用のために貯蔵され得る。
【0106】
この開示書を参照する当該技術分野の当業者によって理解され得るように、その組成物は、例えば、保護用のフェイス・マスクに組み込まれるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料のような、如何なるポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料の上において使用できる。1の実施例において、例えば、MS、SM、SMS、SSMS、SMSS、SMSMS、SMMSS、及びSSMMSのような、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(S)及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(M)の交互の層を持つ、組成物をコーティングしたポリプロピレン系材料を提供する。1の実施例において、スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(S)及びメルトブロー・ポリプロピレン繊維(M)の交互の層を持つポリプロピレン系材料は、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させる、本発明による、例えば一層の織物のような、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性によってヒト病原体の伝染を減少させる、1又はそれ以上の数の層を、更に含む。1の実施例において、交互の層を持つポリプロピレン系材料は、保護用のフェース・マスクに組み込まれる。
【0107】
ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための本発明による組成物の抗ウイルス性効果は、4種類の材料を使ってテストされたが、各種類の材料は以下の順序で四つの層を備えた。
層#1 スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)、
層#2 レーヨン、
層#3 メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF)、そして、
層#4 スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)。
4種類の材料は、次の通りであった。
材料#1: (対照コントロール)層1の上に組成物のコーティング無;層2において結合物質無、
材料#2: 層#1の上に組成物のコーティング無;本発明により、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む層#2、
材料#3: 層#1は、本発明による2%のポリビニルアルコール及び2%のクエン酸を含む水溶性の組成物に浸漬され、水切りされ、空気乾燥される;層#2は、本発明による、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む;そして、
材料#4: 層#1は、本発明による、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン(polyoxyethylene (20) sorbitan)を含む水溶性の組成物に浸漬され、水切りされ、空気乾燥される;層#2は、本発明による、リアクティブブルー21、酢酸銅、及び酢酸亜鉛を含む。
【0108】
0.4mlの体積の緩衝食塩水に、材料の5cm×5cmの正方形の上に、9.6という対数の値の量だけ生きているA型インフルエンザ(Influenza A (H1N1))ウイルスを噴霧することによって、4つの材料の各々が、抗ウイルス性の活性度に対してテストされた。1分又は5分の露出時間の後、各々の材料は、残存する生きているウイルスを抽出するために、細胞培養培地へ移された。そして、当該技術分野の当業者に知られている技術によって、テスト細胞系において、伝染力によって定量化された。
【0109】
ここで、表2を参照すれば、見受けられるように、材料#1(コントロール)は、1分及び5分の何れの接触時間にもウイルス量を減らさなかった。材料#2は本発明による材料を含むが、1分及び5分の接触時間においてそれぞれ2及び2.5という対数の値だけウイルス量を減少させた。材料#3は本発明による組成物で層#1がコーティングされていること以外は、材料#2と同一であるが、ここでその組成物は2%のクエン酸及び2%のポリビニルアルコールを含み、この材料#3では、1分及び5分においてそれぞれ4.25という対数の値だけウイルス量を減らした。材料#4は、本発明による組成物で層#1がコーティングされていること以外は材料#2と同一であるが、ここでその組成物は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含み、材料#4では、1分及び5分においてそれぞれ5.5及び6という対数の値だけウイルス量を減らした。
【0110】
【表2】
従って、これらのデータから評価できるように、本発明による組成物でポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングすることは、その材料の抗ウイルス性の活性を相当に増加する結果となる。
【0111】
更に、本発明による組成物で、ポリプロピレン系織物をコーティングすることによる、そのポリプロピレン系織物の親水性を増加させる効果は、材料#2及び材料#4のサンプルの層#1(スパンボンド・ポリプロピレン層)に施与される水溶性の液滴の吸収速度を比較することにより実証された。上述で示されるように、材料#4が層#1に対して2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物のコーティングを備えていること以外は、材料#2及び材料#4は同一であった。蒸留水の一滴(1マイクロリットル)が、材料#2の層#1及び材料#4の層#1の表面の上に落とされた。吸収のプロセスは、材料#2に対して10分毎に及び材料#4に対して5秒毎にイメージが捉えられ、そしてまた、完全な液滴の吸収時においても追加のイメージが捉えられるように、顕微鏡に取り付けられたCCD(charge-coupled device)カメラで記録された。これらの試験の結果は、外側のポリプロピレン層の上に親水性のコーティングがない、材料#2の内に1マイクロリットルの液滴の完全な吸収のために必要な時間が42分であり、材料#2の内には22秒であったことを示している。従って、その組成物で材料#4をコーティングすることは、その組成物がない場合よりも約100倍速い水の吸収という結果となった。
【0112】
ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための本発明による別の組成物の抗ウイルス性の有効性は、以下のような3種類の織物、及び2、4層の材料を用いて試験された。
織物#1: (コントロール)組成物のコーティングがない不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
織物#2: 2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
織物#3: 2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、2%の酢酸銅、及び2%の酢酸亜鉛を含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2)、
材料#4: 層#1を含む4層材料:スパンボンド不織ポリプロピレン繊維(SBPF);層#2:2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされた不織ポリプロピレン織物(45g/m2);層#3:メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF);及び層#4:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF);及び、
材料#5: 層#1を含む4層材料:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF);層#2:本発明によるリアクティブブルー21染料、酢酸銅、及び酢酸亜鉛の組成物で処理されたレーヨン;層#3:メルトブロー・ポリプロピレン繊維(MBPF);及び層#4:スパンボンド不織布ポリプロピレン繊維(SBPF)。
3つの織物及び2つの材料の各々は、0.4mlの緩衝食塩水の中で、5cm×5cmの正方形の織物及び材料の上に生きているインフルエンザB(B/Lee/40)ウイルスの6.35という対数の値だけを噴霧することにより抗ウイルス性の活性に対してテストされた。5分の暴露時間の後、各々の織物及び材料は、残存し生きているウイルスを抽出するために細胞培養培地へ移され、当該技術分野の当業者に知られ得る技術によって、テスト細胞株における伝染力によって定量化された。
【0113】
ここで表3を参照すれば、見受けられるように、示されたように本発明による異なる組成物でポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングすることは、同程度の抗ウイルス性活性という結果となった。
【0114】
【表3】
【0115】
本発明の1の実施例によると、1つの表面又は2つの表面のいずれかの上に組成物を含むポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を提供する。本発明の別の実施例によると、殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる装置を提供するが、その装置は、本発明による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料を含む。本発明の別の実施例によると、1又はそれ以上のヒト病原体の感染を減少させる方法を提供するが、その方法は、本発明による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料含む装置を提供するステップと、その装置を使用するステップとを含む。1の実施例において、その装置は本発明によるフェイシャル・マスクである。特に好ましい実施例において、その装置は、本発明によるフェイシャル・マスクであるが、そのフェイシャル・マスクの本体(及び、存在する場合はフラップ部)は、前から後ろに向かって4つの層を備え、層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、その繊維は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む本発明による組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、その繊維は2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む本発明による組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含む。
【0116】
特定の好ましい実施例を参照して本発明をかなり詳細に論じてきたが、他の実施例も可能である。従って、付属のクレームの範囲は、本開示書に包含された好ましい実施例の記述に限定されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト病原体の感染を減少させる際に使用されるための、例えば織物又は材料のような、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物であって、その組成物は、
a)クエン酸、
b)ポリビニルアルコール、及び
c)1又はそれ以上の非イオン界面活性剤、
の水溶液を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールは、部分的に加水分解されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.5%から4%の間のクエン酸と、0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1%から3%の間のクエン酸と、1%及び3%の間のポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
2%のポリビニルアルコール、2%のクエン酸、及び0.5%の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
更に、1又はそれ以上の種類の殺菌性の、殺ウイルス性の、又は抗菌性の薬剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤は、多価の金属イオンであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記薬剤は、二価の金属塩であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬剤は、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
当該組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
当該組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
当該組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%の非イオン界面活性剤、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1、8、13、又は16による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物。
【請求項18】
複数の層を含み、その複数の層の1又はそれ以上が、請求項17によるポリプロピレン系織物である、ポリプロピレン系材料。
【請求項19】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項17によるポリプロピレン系織物を含む装置。
【請求項20】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項18によるポリプロピレン系織物を含む装置。
【請求項21】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項17によるポリプロピレン系織物を含むフェイシャル・マスク。
【請求項22】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項18によるポリプロピレン系織物を含むフェイシャル・マスク。
【請求項23】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、表面から背面に向かって層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなるポリプロピレン系材料を含み、
前記層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項24】
フェイシャル・マスクのヒトの着用者へ及びからの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクであって、
a)本体の表面と、本体の対向する背面と、及び本体の形を規定する本体の周辺部とを含む本体と、
b)本体―フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部とであって、該フラップ部はフラップ部の表面と、フラップ部の対向する背面と、フラップ部の形を規定するフラップ部の周辺部とを含むが、
前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向けて層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなるポリプロピレン系材料を含んでおり、
層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項25】
フェイシャル・マスクのヒトの着用者へ及びからの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクであって、
a)本体の表面と、本体の対向する背面と、及び本体の形を規定する本体の周辺部と、及び中央の縫い目と、を含む本体と、
b)本体―フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部と、ここで、該フラップ部はフラップ部の表面と、フラップ部の対向する背面と、フラップ部の形を規定するフラップ部の周辺部とを含むが、
c)前記フラップ部の背面に取り付けられる弾性部材と、
d)前記本体に取り付けられる変形可能な小片と、及び
e)着用者の頭にフェイシャル・マスクを固定するように前記本体に取り付けられる1又はそれ以上の延長体と、を含み、
前記本体の周辺部が、右側縁と、前記周辺部の底接合部で右側縁に接合される左側縁と、左側縁へと右側縁を接続する上側縁と、を含み、
前記フラップ部の周辺部が、連続して、右垂直側と、右円弧状側と、中央の湾曲領域と、左円弧状側と、及び、本体−フラップ部接合部を部分的に形成し右垂直側を左垂直側に接続するベース部と、を含み、
前記フラップ部の形が、底接合部を下に向けた前記本体の背面又は前記本体の表面を見るときに、逆さまにされたU字形であり、
前記本体及び前記フラップ部の両方は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなる材料を含み、
層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされ、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされ、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項26】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項21に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項27】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項22に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項28】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項23に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項29】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項24に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項30】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項25に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項31】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項21によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項32】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項22によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項33】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項23によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項34】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項24によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項35】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項25によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項1】
ヒト病原体の感染を減少させる際に使用されるための、例えば織物又は材料のような、ポリプロピレン系織物又はポリプロピレン系材料をコーティングするための組成物であって、その組成物は、
a)クエン酸、
b)ポリビニルアルコール、及び
c)1又はそれ以上の非イオン界面活性剤、
の水溶液を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールは、部分的に加水分解されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.5%から4%の間のクエン酸と、0.5%及び4%の間のポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1%から3%の間のクエン酸と、1%及び3%の間のポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
0.1%及び1%の間の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.2%及び0.7%の間の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
2%のポリビニルアルコール、2%のクエン酸、及び0.5%の非イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
更に、1又はそれ以上の種類の殺菌性の、殺ウイルス性の、又は抗菌性の薬剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤は、多価の金属イオンであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記薬剤は、二価の金属塩であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬剤は、酢酸銅、酸化銅、硫酸銅、及び酢酸亜鉛からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
当該組成物は、各々が0.5%及び5%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
当該組成物は、各々が1%及び4%の間の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
当該組成物は、各々が3%の1又はそれ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%の非イオン界面活性剤、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1、8、13、又は16による組成物でコーティングされたポリプロピレン系織物。
【請求項18】
複数の層を含み、その複数の層の1又はそれ以上が、請求項17によるポリプロピレン系織物である、ポリプロピレン系材料。
【請求項19】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項17によるポリプロピレン系織物を含む装置。
【請求項20】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項18によるポリプロピレン系織物を含む装置。
【請求項21】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項17によるポリプロピレン系織物を含むフェイシャル・マスク。
【請求項22】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、請求項18によるポリプロピレン系織物を含むフェイシャル・マスク。
【請求項23】
殺菌性の、殺真菌性の、及び殺ウイルス性の活性により1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるものであって、表面から背面に向かって層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなるポリプロピレン系材料を含み、
前記層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項24】
フェイシャル・マスクのヒトの着用者へ及びからの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクであって、
a)本体の表面と、本体の対向する背面と、及び本体の形を規定する本体の周辺部とを含む本体と、
b)本体―フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部とであって、該フラップ部はフラップ部の表面と、フラップ部の対向する背面と、フラップ部の形を規定するフラップ部の周辺部とを含むが、
前記本体及び前記フラップ部は、表面から背面に向けて層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなるポリプロピレン系材料を含んでおり、
層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンを含む組成物でコーティングされており、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛を含む組成物でコーティングされており、層#3は18g/m2の密度を持っているメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持っているスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項25】
フェイシャル・マスクのヒトの着用者へ及びからの1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させるためのフェイシャル・マスクであって、
a)本体の表面と、本体の対向する背面と、及び本体の形を規定する本体の周辺部と、及び中央の縫い目と、を含む本体と、
b)本体―フラップ部の接合部で本体に取り付けられるフラップ部と、ここで、該フラップ部はフラップ部の表面と、フラップ部の対向する背面と、フラップ部の形を規定するフラップ部の周辺部とを含むが、
c)前記フラップ部の背面に取り付けられる弾性部材と、
d)前記本体に取り付けられる変形可能な小片と、及び
e)着用者の頭にフェイシャル・マスクを固定するように前記本体に取り付けられる1又はそれ以上の延長体と、を含み、
前記本体の周辺部が、右側縁と、前記周辺部の底接合部で右側縁に接合される左側縁と、左側縁へと右側縁を接続する上側縁と、を含み、
前記フラップ部の周辺部が、連続して、右垂直側と、右円弧状側と、中央の湾曲領域と、左円弧状側と、及び、本体−フラップ部接合部を部分的に形成し右垂直側を左垂直側に接続するベース部と、を含み、
前記フラップ部の形が、底接合部を下に向けた前記本体の背面又は前記本体の表面を見るときに、逆さまにされたU字形であり、
前記本体及び前記フラップ部の両方は、表面から背面に向かって、層#1、層#2、層#3、及び層#4と、4つの層からなる材料を含み、
層#1は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、及び0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンとを含む組成物でコーティングされ、層#2は45g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含み、2%のクエン酸、2%のポリビニルアルコール、0.5%のポリオキシエチレン(20)ソルビタン、3%の酢酸銅、及び3%の酢酸亜鉛とを含む組成物でコーティングされ、層#3は、18g/m2の密度を持つメルトブロー・ポリプロピレン繊維を含み、層#4は25g/m2の密度を持つスパンボンド不織布ポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするフェイシャル・マスク。
【請求項26】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項21に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項27】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項22に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項28】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項23に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項29】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項24に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項30】
更に1又はそれ以上の反応染料を含む、請求項25に記載のフェイシャル・マスク。
【請求項31】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項21によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項32】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項22によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項33】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項23によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項34】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項24によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【請求項35】
1又はそれ以上のヒト病原体の伝染を減少させる方法であって、
a)請求項25によるフェイシャル・マスクを提供するステップと、及び
b)そのフェイシャル・マスクを着用するステップとを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−528255(P2012−528255A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513146(P2012−513146)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035864
【国際公開番号】WO2010/138426
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502155884)フィリジェント リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035864
【国際公開番号】WO2010/138426
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502155884)フィリジェント リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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