説明

ヒト癌で発現される新規蛇行性膜貫通抗原およびその使用

【課題】細胞表面蛇行性膜貫通抗原の新規ファミリーを提供する。
【解決手段】前立腺で発現され、特定の配列を有する蛇行性膜貫通抗原(STRAP)ファミリーの原型となるメンバーであるSTRAP−1蛋白質であって、構造的には6つの膜貫通ドメインならびに細胞内N-およびC末端を有する分子トポロジーを特徴とする339アミノ酸の蛋白質、前記タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターおよび前記発現ベクターを含む宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書で述べる発明は、STRAPと命名した、新規遺伝子のファミリーおよびそれらによりコードされる蛋白質ならびに腫瘍抗原、ならびに前立腺癌、結腸癌、膀胱癌、卵巣癌および膵臓癌を特に含む種々の癌のコントロールに有用な診断および治療方法ならびに組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、冠動脈疾患に次いで2番目に多いヒトの死因である。世界中で毎年何百万もの人々が癌で死亡している。米国だけでも毎年50万人をはるかに上回る人々が癌が原因で死亡しており、毎年140万人が新たに癌と診断されている。心疾患による死亡は大幅に減少しているが、癌による死亡は全体として増加しつつある。次世紀の初頭には、癌が死因の第1位になると予想されている。
【0003】
世界的にみて、いくつかの癌は主な死因として顕著である。特に、肺、前立腺、乳房、結腸、膵臓および卵巣の癌は、癌による死亡の主な原因である。これらの癌および事実上すべての他の癌には致死性という共通の特徴がある。極めてわずかな例外を除き、癌の転移は致死的である。さらに、原発癌による死亡を免れた癌患者であっても、生活は大きく変化することが一般的な経験から示されている。多くの癌患者は、再発または治療の失敗が起こりうるという可能性を認識しているために強い不安を抱く。多くの患者では治療後に身体衰弱がみられる。
【0004】
一般的にみて、極めて致死性の高い癌の管理における基本的な問題は、有効でしかも毒性のない全身療法がないことである。分子医学は、まだ極めて初期の段階にあるに過ぎないが、これらの癌の管理のあり方の見直しにつながると期待される。言うまでもなく、癌の診断および治療のための新たな分子的アプローチの開発を目指した取り組みは世界中で盛んに行われている。例えば、診断および予後判定マーカーならびに/または治療標的もしくは薬剤として用いうると考えられる真に腫瘍特異的な遺伝子および蛋白質を同定することには大きな関心が集まっている。これらの領域における研究の取り組みは有望であり、有用な分子技術が数多く利用可能になっていることから、癌に関する有意義な知見がますます得られるようになっている。しかしながら、進歩は遅々としており、一般的には一様でない。
【0005】
最近、種々の免疫療法または低分子療法のための標的として有用と思われる細胞表面腫瘍特異抗原を同定することに特に強い関心が集まっている。このような細胞表面抗原は数多く報告されており、その中には1つまたは複数の癌と確実に関連することが示されているものもある。これらの抗原を標的とする新たな治療戦略の開発には多大な関心が寄せられている。しかし、真に有効な癌免疫療法はほとんど得られていない。
【0006】
固形癌の治療に腫瘍特異的または過剰発現抗原に対するモノクローナル抗体を用いることは有益である。抗体療法は約20年間にわたり詳細に研究されてきたが、これに対応する医薬品が実現したのはごく最近になってのことである。その一例は、HER2/neu受容体を過剰発現する転移性乳癌の治療を目的とする使用に関して最近承認されたヒト化抗HER2/neuモノクローナル抗体であるハーセプチン(Herceptin)である。もう一つの例は、非ホジキンリンパ腫の治療に関して承認されたヒト/マウスキメラ抗CD20/B細胞リンパ腫抗体であるリツキサン(Rituxan)である。ほかにもいくつかの抗体が臨床試験または前臨床研究で癌の治療に関して評価中であり、これには上皮増殖因子受容体に対して特異的な完全ヒトIgG2モノクローナル抗体が含まれる(Yangら、1999、Cancer Res. 59:1236(非特許文献1))。明らかに、抗体療法は長期に及んだ発達初期段階から脱却しつつある。しかし、抗体の適用および他の生物療法のためには、より特異的な新たな腫瘍抗原に対する極めて大きな需要がなお存在する。さらに、より早期の診断および予後判定精度の向上の開発につながると期待される、抗体に基づく診断および画像化法のためのマーカーとして有用と思われる腫瘍抗原に関しても、相応した需要がある。
【0007】
以下に述べる通り、前立腺癌の管理は、分子生物学がもたらした診療の現実的な進歩が限定的な程度に過ぎないことを示す好適な一例である。若干の例外はあるが、上記の他の主な癌についても状況はほぼ同じである。
【0008】
前立腺癌は世界的にみて男性で4番目に有病率の高い癌である。米国および北欧では、これは男性で最も多い癌であり、死因としても男性で2番目に多い癌である。米国だけでも毎年4万人をはるかに超える男性がこの疾患で死亡しており、これは肺癌に次いで第2位である。このように大きな数字に上るものの、転移性前立腺癌に対して有効な治療法は現在もない。主な治療手段は現在も外科的前立腺切除術、放射線療法、ホルモン除去療法および化学療法である。残念ながら、これらの治療法は多くの患者に対して明らかに無効である。さらに、これらの治療法はしばしば望ましくない重大な結果をもたらす。
【0009】
診断面では、血清PSAアッセイ法が極めて有用なツールとなっている。しかし、PSAの特異性および全般的有用性にはいくつかの点で欠点があると広くみなされている。PSA検査も、ほかのいずれの検査または生物的マーカーも、早期癌を確実に発見できることは証明 されていない。同様に、致死的であることが典型的な転移癌の出現を予測するために用いうるマーカーもない。転移性前立腺癌の診断は、外科的もしくは腹腔鏡下骨盤リンパ節摘出術、全身核医学スキャン、骨格X線検査および/または骨病変生検分析によって行われる。明らかに、優れた画像診断法および他の比較的侵襲性の低い診断法により、このような処置が患者に与える苦痛は軽減され、治療上の選択肢も改善されると期待される。しかし、早期癌の発見、転移の起こりやすさの予測および腫瘍の正確な画像化を確実に行える前立腺腫瘍マーカーが得られるまでは、前立腺癌の管理は極めて困難であり続けると考えられる。したがって、前立腺癌の管理にはより特異的な分子腫瘍マーカーが明らかに必要である。
【0010】
前立腺で主として発現されるマーカーとしては、ラットニューロペプチダーゼとの一致率が85%の加水分解酵素である前立腺特異的膜抗原(PSM)など、いくつかが知られている(Carterら、1996、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 93:749(非特許文献2)、Bzdegaら、1997、J. Neurochem. 69:2270(非特許文献3))。しかし、PSMが小腸および脳でも発現されており(Israeliら、1994、Cancer Res. 54:1807(非特許文献4))、それが脳内でのニューロペプチド分解に関与する可能性があることから、抗PSM療法には神経毒性のおそれがあるという懸念が生じた。インジウム111で標識した抗PSMモノクローナル抗体を再発性前立腺癌の画像化に用いた予備結果はある程度有望と思われるものであった(Sodeeら、1996、Clin Nuc Med 21:759〜766(非特許文献5))。さらに最近になって同定された前立腺癌マーカーには、PCTA-1(Suら、1996、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 93:7252(非特許文献6))および前立腺幹細胞抗原(PSCA)(Reiterら、1998、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 95:1735(非特許文献7))が含まれる。新規ガレクチンであるPCTA-1は発現細胞の培地中に主として分布され、前立腺癌の血清診断マーカーとして有望な可能性がある(Suら、1996(非特許文献6))。GPI連鎖型細胞表面分子であるPSCAはLAPC-4 cDNAからクローニングされたものであり、正常前立腺組織の基底細胞および癌上皮で主として発現されるという点で独特である(Reiterら、1998(非特許文献7))。前立腺癌に対するワクチンも、PSMおよびPSAを含む種々の抗原を用いて精力的に開発が進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yangら、1999、Cancer Res. 59:1236
【非特許文献2】Carterら、1996、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 93:749
【非特許文献3】Bzdegaら、1997、J. Neurochem. 69:2270
【非特許文献4】Israeliら、1994、Cancer Res. 54:1807
【非特許文献5】Sodeeら、1996、Clin Nuc Med 21:759〜766
【非特許文献6】Suら、1996、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 93:7252
【非特許文献7】Reiterら、1998、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 95:1735
【発明の概要】
【0012】
本発明は、細胞表面蛇行性(serpentine)膜貫通抗原の新規ファミリーに関する。このファミリーに属する蛋白質のうち2つは独占的または優先的に前立腺で発現され、前立腺癌でも同様であるため、このファミリーのメンバーを「STRAP」(前立腺の蛇行性膜貫通抗原(Serpentine TRansmembrane Antigens of the Prostate)の頭文字)と命名した。本明細書では4種類の個々のヒトSTRAPの記載および特徴分析を行っている。ヒトSTRAPはそれ同士の間では構造が高度に保存されているが、既知のいずれのヒト蛋白質とも明らかな構造的類似性は認められない。
【0013】
STRAPファミリーの原型となるメンバーであるSTRAP-1は、正常ヒト組織では前立腺細胞で主として発現されるIIIa型膜蛋白質と思われる。STRAP-1は構造的には6つの膜貫通ドメインならびに細胞内N-およびC末端を有する分子トポロジーを特徴とする339アミノ酸の蛋白質であり、このことから「蛇行(serpentine)」式に折れ曲がって3つの細胞外および2つの細胞内ループを形成することが示唆される。STRAP-1蛋白質の発現は前立腺癌の異なる病期を通じて高レベルに維持される。さらに、STRAP-1はヒトの他のいくつかの癌でも高度に過剰発現される。特にSTRAP-1の細胞表面発現はさまざまな前立腺および前立腺癌細胞、膀胱癌細胞ならびに結腸癌細胞ではっきりと確認されている。これらの特徴は、STRAP-1が前立腺、膀胱、結腸および他の癌で高レベルに発現される特異的な細胞表面腫瘍抗原であることを示している。
【0014】
本明細書ではSTRAP-2、STRAP-3およびSTRAP-4も記載する。これらはすべて構造的に関連があるが、特有の発現プロファイルを示す。STRAP-2はSTRAP-1と同じく正常ヒト組織では前立腺特異的であり、前立腺癌でも発現される。これに対して、STRAP-3およびSTRAP-4は異なる限定的な発現パターンを示すように思われる。
【0015】
本発明は、STRAP蛋白質およびその断片をコードするポリヌクレオチド、STRAP遺伝子もしくはmRNA配列またはその断片に対して相補的なDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドおよび関連分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、およびSTRAP遺伝子、mRNAまたはSTRAPをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む、好ましくは単離された形態のSTRAP遺伝子、mRNAおよび/またはコード配列の全体または一部に対応する、または相補的なポリヌクレオチドを提供する。また、STRAPをコードするcDNAおよび遺伝子を単離するための手段も提供する。STRAPポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子、このような分子による形質転換または形質導入を受けた細胞、およびSTRAP遺伝子の発現のための宿主-ベクター系も提供する。本発明はさらに、STRAP蛋白質およびそのポリペプチド断片を提供する。本発明はさらに、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、マウスおよび他の哺乳動物抗体、キメラ抗体、ヒト化および完全ヒト抗体、ならびに検出マーカーで標識した抗体、および放射性核種、毒素または他の治療的組成物が結合した抗体を含む、STRAP蛋白質およびそのポリペプチド断片と結合する抗体を提供する。本発明はさらに、種々の生物試料におけるSTRAPポリヌクレオチドおよび蛋白質の存在を検出するための方法、ならびにSTRAPを発現する細胞を同定するための方法を提供する。本発明はさらに、特に抗体、ワクチンおよび低分子療法を含む、前立腺癌を治療するための種々の治療的組成物および戦略を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A−1】STRAP-1の構造。STRAP-1(8P1B4)クローン10 cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列(それぞれ配列番号:1および2)。開始メチオニンはアミノ酸残基の1位に太字で示し、6つの膜貫通ドメインと推定される部分は太字で示した上に下線を施した。
【図1A−2】図1A−1の続きを示す図である。
【図1B】STRAP-1の構造。STRAP-1の膜貫通型配置の模式図。図1Aの付番方式に対応する形で、細胞外ドメインと推定される部分に接するアミノ酸残基を示している。
【図1C】STRAP-1の構造。クローン10およびクローン3の重複配列によって決定した高G/C含有5'非コード配列。
【図2】STRAP-1の前立腺組織における顕著な発現。最初のストランドのcDNAは16種の正常組織、LAPC異種移植片(4AD、4AIおよび9AD)およびヒーラ(HeLa)細胞から調製した。標準化はアクチンおよびGAPDHに対するプライマーを用いるPCRによって行った。STRAP-1(8P1D4)cDNA(図1A)に由来するプライマーを用いた半定量的PCRでは、STRAP-1が正常前立腺およびLAPC異種移植片で主に発現されることが見てとれる。STRAP-1の増幅には以下のプライマーを用いた:8P1D4.1 5'ACTTTGTTGATGACCAGGATTGGA 3'(配列番号:7)、 8P1D4.2 5'CAGAACTTCAGCACACACAGGAAC 3'(配列番号:8)
【図3A】STRAP-1が前立腺組織で主に発現されることを示す、種々の正常ヒト組織および前立腺癌異種移植片におけるSTRAP-1発現のノーザンブロット分析。完全長STRAP cDNAクローン10(図1A、配列番号:1)によるプローブ検索を行った2つの複数組織ノーザンブロット(Clontech)。側方にサイズ標準物質をキロベース(kb)単位で示している。各レーンは、β-アクチンプローブを用いて標準化したmRNA 2μgを含む。
【図3B】STRAP-1が前立腺組織で主に発現されることを示す、種々の正常ヒト組織および前立腺癌異種移植片におけるSTRAP-1発現のノーザンブロット分析。発現が明らかに検出される他の組織と比べて前立腺における発現がほぼ5倍強いことを示す、STRAP-1 cDNAクローン10(図1A、配列番号:1)によるプローブ検索を行った複数組織RNAドットブロット(Clontech、ヒトマスターブロット(Human Master Blot)カタログ番号7770〜1)。
【図4−1】ノーザンブロット(図3A)上の4kbのmRNAに対応するSTRAP-1 GTH9クローンのヌクレオチド配列(配列番号:9)。この配列は、図1AのSTRAP-1クローン10の配列に対して2399塩基対のイントロンを含む。コード領域はヌクレオチド96〜857および3257〜 3510である(太字で示している)。開始ATGは太字および下線で示し、停止コドンも太字および下線で示しており、イントロン-エクソンには下線を施している。
【図4−2】図4−1の続きを示す図である。
【図5】前立腺ならびに複数の癌細胞株および前立腺癌異種移植片におけるSTRAP-1の発現。異種移植片および細胞株のフィルターは、各レーン当たり10μgの全RNAを用いて調製した。ブロットはSTRAP-1クローン10をプローブとして用いて分析した。RNA試料はすべて、臭化エチジウム染色およびそれに続くβ-アクチンプローブを用いる分析によって標準化した。図5A:種々の癌細胞株および異種移植片ならびに前立腺における発現。各レーンは以下の通りである:(1)PrEC細胞、(2)正常前立腺組織、(3)LAPC-4 AD異種移植片、(4)LAPC-4 AI異種移植片、(5)LAPC-9 AD異種移植片、(6)LAPC-9 AI異種移植片、(7)LNCaP細胞、(8)PC-3細胞、(9)DU145細胞、(10)PANC-1細胞、(11)BxPC-3細胞、(12)HPAC細胞、(13)Capan-1細胞、(14)CACO-2細胞、(15)LOVO細胞、(16)T84細胞、(17)COLO-205細胞、(18)KCL-22細胞(急性リンパ性白血病、ALL)、(19)HT1197細胞、(20)SCABER細胞、(21)UM-UC-3細胞、(22)TCCSUP細胞、(23)J82細胞、(24)5637細胞、(25)RD-ES細胞(ユーイング肉腫、EWS)、(26)CAMA-1細胞、(27)DU4475細胞、(28)MCF-7細胞、(29)MDA-MB-435s細胞、(30)NTERA-2細胞、(31)NCCIT細胞、(32)TERA-1細胞、(33)TERA-2細胞、(34)A431細胞、(35)HeLa細胞、(36)OV-1063細胞、(37)PA-1細胞、(38)SW 626細胞、(39)CAOV-3細胞。図5B:マウスの皮下で増殖したLAPC異種移植片(sc)におけるSTRAP-1の発現と、脛骨内で増殖したLAPC-4およびLAPC-9異種移植片(it)における発現との比較。
【図6】組織および複数の細胞株におけるSTRAP-1蛋白質の発現に関するウエスタンブロット分析。前立腺癌異種移植片および細胞株から調製した細胞可溶化物のウエスタンブロットを、ポリクローナル抗STRAP-1抗体調製物(詳細は実施例3C参照)によりプローブ検索した。試料は蛋白質20μgを含み、ウエスタンブロットの抗Grb-2プローブ検索によって標準化した。
【図7】STRAP-1の細胞表面ビオチン化。図7A:ベクター単独または6Hisを付加した(6His-tagged)STRAP-1をコードするcDNAを含むベクターによるトランスフェクションを受けた293T細胞の細胞表面ビオチン化。細胞可溶化物を特異抗体によって免疫沈降させた後に膜に移し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンによるプローブ検索を行った。レーン1〜4および6は、STRAP-1を発現する293T細胞から調製した可溶化物からの免疫沈降物に対応する。レーン5および7は、ベクターによるトランスフェクションを受けた細胞からの免疫沈降物である。免疫沈降は以下の抗体を用いて行った:(1)ヒツジ非免疫、(2)抗ラージT抗原、(3)抗CD7I(トランスフェリン受容体)、(4)抗His、(5)抗His、(6)抗STRAP-1、(7)抗STRAP-1。図7B:前立腺癌(LNCaP、PC-3、DU145)、膀胱癌(UM-UC-3、TCCSUP)および結腸癌(LOVO、COLO)細胞株には可溶化前にビオチン化処理(+)を行うか、または非処理(-)とした。ストレプトアビジン-ゲル精製蛋白質のウエスタンブロットに抗STRAP-1抗体によるプローブ検索を行った。分子量マーカーをキロダルトン単位(kD)で示している。
【図8】抗STRAP-1ポリクローナル抗体を用いたSTRAP-1発現の免疫組織化学的分析。組織は10%ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋した。N末端ペプチドを標的とする抗STRAP-1ポリクローナル抗体を用いて組織切片を染色した。試料は以下のものを含む:(a)N末端STRAP-1ペプチド1の存在下でプローブ検索を行ったLNCaP細胞、(b)LNCaP+非特異的ペプチド2、(c)正常前立腺組織、(d)グレード3の前立腺癌、(e)グレード4の前立腺癌、(f)LAPC-9 AD異種移植片、(g)正常膀胱、(h)正常結腸。画像はすべて倍率400倍である。
【図9】STRAP-2(98P4B6)クローンGTA3 cDNAの部分ヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列(配列番号:11)。このクローンの5'末端配列は173アミノ酸からなるORFを含む。
【図10】STRAP-1の蛋白質配列によるdbestデータベースの検索によって同定された、このほかのSTRAPファミリーのメンバーのヌクレオチド配列。STRAP-1のほかに、GenBank受入番号を有するSTRAPファミリーのメンバーがさらに3つ認められた。これらのうち1つは、SSHによって同定された遺伝子98P4B6に対応する。
【図11A】STRAPファミリー蛋白質の一次構造の比較。STRAP-1(8P1D4クローン10、配列番号:2)およびSTRAP-2(98P4B6、配列番号:11)配列のアミノ酸配列の整列化。 整列化は、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)検索ランチャーウェブサイト(Search Launcher Web site)のSIM整列化プログラムを用いて行った。その結果、 171アミノ酸の重複部における一致率61.4%、スコア:576.0、ギャップ頻度:0.0%であった。
【図11B】STRAPファミリー蛋白質の一次構造の比較。PIMAプログラム(PIMA 1.4プログラム、インターネットアドレス<http://dot.imgen.bcm.tmc.edu:9331/multi-align/multialign.html>)を用いた、STRAP-1とSTRAP-2およびファミリーのメンバーと推定される他の2つの蛋白質の部分ORF配列とのアミノ酸配列の整列化。SOSUIプログラム(インターネットアドレス<http://www.tuat.ac.jp/~mitaku/adv_sosui/submit.html>で入手可能)によって同定した膜貫通ドメインを太字で示している。
【図12】AI139607の胎盤および前立腺における顕著な発現。最初のストランドのcDNAは16種の正常組織から調製した。標準化はアクチンおよびGAPDHに対するプライマーを用いるPCRによって行った。AI139607に対するプライマーを用いた半定量的PCRでは、25サイクルの増幅後に、胎盤および前立腺においてAI139607の顕著な発現が認められる。AI139607の増幅には以下のプライマーを用いた:AI139607.1 5'TTAGGACAACTTGATCACCAGCA 3'(配列番号:16)、 AI139607.2 5'TGTCCAGTCCAAACTGGGTTATTT 3'(配列番号:17)
【図13】R80991の肝臓における顕著な発現。最初のストランドのcDNAは16種の正常組織から調製した。標準化はアクチンおよびGAPDHに対するプライマーを用いるPCRによって行った。R80991に対するプライマーを用いた半定量的PCRでは、25サイクルの増幅後に肝臓においてR80991の顕著な発現が認められる。R80991の増幅には以下のプライマーを用いた:R80991.1 5'AGGGAGTTCAGCTTCGTTCAGTC 3'(配列番号:18)、 R80991.2 5'GGTAGAACTTGTAGCGGCTCTCCT 3'(配列番号:19)
【図14】STRAP-2(98P4B6)の前立腺組織における顕著な発現。最初のストランドのcDNAは8種の正常組織、LAPC異種移植片(4AD、4A1および9AD)およびヒーラ(HeLa)細胞から調製した。標準化はアクチンおよびGAPDHに対するプライマーを用いるPCRによって行った。98P4B6に対するプライマーを用いた半定量的PCRでは、正常前立腺およびLAPC異種移植片における98P4B6の顕著な発現が認められる。STRAP IIの増幅には以下のプライマーを用いた:98P4B6.1 5'GACTGAGCTGGAACTGGAATTTGT 3'(配列番号:20)、 98P4B6.2 5'TTTGAGGAGACTTCATCTCACTGG 3'(配列番号:21)
【図15】ノーザンブロット分析により判定した、前立腺癌異種移植片における前立腺特異的STRAP-2/98P4B6遺伝子の低発現。ヒト正常組織のフィルター(AおよびB)はクローンテク(CLONTECH)社から入手したもので、1レーン当たり2μgのmRNAを含む。異種移植片のフィルター(C)は1レーン当たり10μgの全RNAを用いて調製した。ブロットは、SSHで得た98P4B6クローンをプローブとして用いて分析した。RNA試料はすべて臭化エチジウム染色によって標準化した。
【図16】ノーザンブロット分析により判定した、前立腺および主な癌細胞株におけるSTRAP-2の発現。異種移植片および細胞株のフィルターは1レーン当たり10μgの全RNAを用いて調製した。ブロットはSSHで得た98P4B6クローンをプローブとして用いて分析した。RNA試料はすべて臭化エチジウム染色によって標準化した。
【図17】STRAPファミリーメンバーの染色体上の位置。本明細書で述べるSTRAP遺伝子の染色体上の位置は、ジーンブリッジ4(GeneBridge4)照射ハイブリッドパネル(Research Genetics、Huntsville Al)を用いて決定した。STRAP-2およびAI139607のマッピングは、スタンフォードG3(Stanford G3)照射ハイブリッドパネル(Research Genetics、Huntsville Al)を用いて行った。
【図18】ヒトSTRAP-1遺伝子のORF内部のイントロン-エクソン境界の模式図。合計3つのイントロン(i)および4つのエクソン(e)を同定した。
【図19】さまざまな種におけるSTRAP-1遺伝子のズーブロット(Zooblot)サザン分析。ゲノムDNAは、ヒト、サル、イヌ、マウス、ニワトリおよびショウジョウバエを含む、いくつかの異なる生物から調製した。各10μgのDNA試料をEcoRIで消化し、ニトロセルロース上にブロット化した後、STRAP-1プローブによる検索を行った。側方にサイズ標準物質をキロベース(kb)単位で示す。
【図20】STRAP-1プローブによるマウスBACのサザンブロット分析。DNAは、ゲノムDNAを単離するためのヒト細胞、およびfrom a マウスSTRAP遺伝子を含むマウスBACクローン(12P11)から調製した。各DNA試料をEcoRIで消化し、ニトロセルロース上にブロット化した後にプローブ検索を行った。8μgのゲノムDNAを250ngのマウスBAC DNAと比較した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語、表記およびその他の科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されている意味をもつものとする。いくつかの場合には、明確さおよび/または参照の便宜を図るために、意味が一般に理解されている用語の定義を本明細書で行っているが、このような定義を本明細書に含めたことは、当技術分野において一般に理解されているものと実質的に異なることを意味するとは必ずしもみなされるべきではない。本明細書で記載または参照する技法および手順は、当業者に一般によく理解されており、例えば、サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に記載された、広く用いられている分子クローニング法などの慣例的な方法を用いて一般に行われている。市販のキットおよび試薬を用いる手順は、別に特記する場合を除き、適宜、製造者が指示した手順および/またはパラメーターに従って一般に行われる。
【0018】
本明細書で用いる「進行前立腺癌」「局所進行前立腺癌」「進行癌(advanced disease)」および「局所進行癌(locally advanced disease)」という用語は、前立腺被膜を越えて進展した前立腺癌のことを意味し、米国泌尿器学会(American Urological Association)(AUA)の分類体系によるステージCの癌、ホイットモア-ジュエット(Whitmore-Jewett)分類体系によるステージC1〜C2の癌、ならびにTNM(腫瘍、リンパ節転移、臓器転移)分類体系によるステージT3〜 T4およびN+癌を含むものとする。一般に、局所進行癌の患者に対しては外科手術は推奨されず、臨床的に局所的な(臓器限局性の)前立腺癌の患者と比べて、これらの患者の転帰はかなり悪い。局所進行癌は臨床的には、前立腺の外側縁を越える硬化、または前立腺基部の非対称性もしくは硬化の触知所見によって発見される。局所進行前立腺癌は現在、根治的前立腺摘除術の結果、腫瘍が前立腺被膜を浸潤もしくは貫通して外科領域(surgical margin)に達していたか、または精嚢に浸潤していた場合に病理学的に診断される。
【0019】
本明細書で用いる「転移性前立腺癌」および「転移性癌(metastatic disease)」という用語は、所属リンパ節または遠隔部位まで波及した前立腺癌のことを意味し、AUA分類体系によるステージDの癌およびTNM分類体系によるステージTxNxM+を含むものとする。局所進行前立腺癌の場合と同じく、転移性癌の患者にも外科手術は一般に適応とはならず、ホルモン(アンドロゲン除去)療法が好ましい治療手段となる。転移性前立腺癌の患者は治療開始から12〜18カ月以内に最終的にはアンドロゲン不応状態となり、これらの患者のほぼ半数はその後6カ月以内に死亡する。前立腺癌転移が最も起こりやすい部位は骨である。前立腺癌の骨転移は、代謝平衡の面では破骨性ではなく造骨性であることが特徴的である(すなわち、正味の骨形成をもたらす)。骨転移は脊椎に認められる頻度が最も高く、大腿骨、骨盤、胸郭、頭蓋骨および上腕骨がこれに次ぐ。転移が起こりやすい他の部位には、リンパ節、肺、肝臓および脳が含まれる。転移性前立腺癌は、外科的もしくは腹腔鏡下骨盤リンパ節摘出術、全身核医学スキャン、骨格X線検査および/または骨病変生検分析によって診断されることが典型的である。
【0020】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、または改変型のいずれかの種類のヌクレオチドである、長さが少なくとも10塩基または塩基対の重合型ヌクレオチドを意味し、一本鎖型および二本鎖型のDNAを含むものとする。
【0021】
本明細書で用いる「ポリペプチド」という用語は、少なくとも10アミノ酸からなる重合体を意味する。本明細書の全体を通じて、アミノ酸に関する標準的な三文字または一文字表記を用いる。
【0022】
本明細書で用いる「ハイブリダイズする(hybridize)」「ハイブリダイズしている」「ハイブリダイズする(hybridizes)」などの用語は、好ましくはハイブリダイゼーションのための温度が37℃を上回り、0.1×SSC/0.1%SDS中での洗浄のための温度が55℃を上回る、50%ホルムアミド/6×SSC/0.1%SDS/100μg/ml ssDNA中でのハイブリダイゼーションなどの通常のハイブリダイゼーション条件、最も好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を意味する。
【0023】
アミノ酸配列の比較の文脈における「一致率(identity)」という用語は、同じ相対的位置にある同一なアミノ酸残基の比率を表すために用いられる。同じくこの文脈において「相同性(homology)」という用語は、当技術分野で一般的に理解されているBLAST解析の保存的アミノ酸の基準を用いた、同じ相対的位置にある同一または類似したアミノ酸残基の比率を表すために用いられる。このような基準の下で保存的とみなされるアミノ酸置換に関する詳細は以下に提示する。
【0024】
このほかの定義は以下のサブセクションの全体を通じて提示する。
【0025】
STRAPの分子的および生化学的特徴
本発明は、STRAPと命名した新規ファミリーの蛋白質に関する。本明細書では4種類のSTRAPに関し、構造的、分子的および生化学的特徴の点から詳細に述べる。以下の実施例でさらに説明する通り、STRAPの特徴分析はさまざまな形で行っている。例えば、STRAPファミリー内で保存されている構造要素を同定するために、ヌクレオチドのコード配列およびアミノ酸配列の解析を行った。種々のSTRAP mRNAを発現する正常および癌組織の範囲を確定するために、STRAP mRNA発現に関する広範なRT-PCRおよびノーザンブロット分析を行った。STRAPの蛋白質発現プロファイル、細胞表面局在および全体的な分子形態を明らかにするために、STRAP蛋白質の発現に関するウエスタンブロット、免疫組織化学およびフローサイトメトリー分析も行っている。
【0026】
STRAPファミリーの原型となるメンバーであるSTRAP-1は、339アミノ酸からなる6回膜貫通型の細胞表面蛋白質であり、既知のいずれのヒト蛋白質とも相同性は認められない。ヒトSTRAP-1のcDNAヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を図1Aに示す。細胞膜内部に組み込まれたSTRAP-1蛋白質の全体構造の模式図を図1Bに示す。STRAP-1の発現は、正常組織では主として前立腺特異的である。具体的には、正常ヒト組織におけるSTRAP-1 mRNAおよび蛋白質発現の広範な分析により、STRAP-1蛋白質が主として前立腺で発現され、はるかに程度は弱いものの膀胱でも発現されることが示されている。STRAP-1 mRNAも相対的にみて前立腺特異的であり、他のいくつかの正常組織で極めて低レベルの発現が認められるのみである。癌の場合、STRAP-1 mRNAおよび蛋白質は前立腺癌においてすべてのステージを通じて常に高レベルで発現される。STRAP-1は他の癌でも発現される。具体的には、STRAP-1 mRNAは膀胱、結腸、膵臓および卵巣癌(さらに他の癌も同様)において極めて高レベルに発現される。さらに、STRAP-1蛋白質の細胞表面発現は前立腺、膀胱および結腸癌で確認されている。したがって、STRAP-1は、特に前立腺、結腸および膀胱癌を含む、いくつかの癌を治療するための優れた治療標的に求められる特徴をすべて有する。
【0027】
STRAP-2は、異なる遺伝子によってコードされる極めて相同な膜貫通型蛋白質である。STRAP-1およびSTRAP-2配列の間では構造が高度に保存されており、特に膜貫通ドメインと予想される部分では全体を通じてそうである。STRAP-2のcDNA部分ヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を図9に示す。STRAP-1およびSTRAP-2遺伝子はいずれも第7番染色体上にあるが、位置する腕は異なる。STRAP-2はSTRAP-1と対比して著しく異なるmRNAおよび蛋白質発現プロファイルを示すが、このことはSTRAPファミリーのこれらの2つのメンバーが異なる調節を受けている可能性を示唆する。種々の正常組織において有意なmRNA発現が認められないことから、STRAP-2は極めて前立腺特異的であると思われる。STRAP-2の発現は少なくとも一部の前立腺癌ではダウンレギュレートされるため、前立腺癌においてもSTRAP-2はSTRAP-1と対比して異なる経過をたどるように思われる。さらに、ユーイング肉腫ではSTRAP-2(STRAP-1と同じく)高レベルの発現が認められたものの、検討した前立腺以外の癌におけるSTRAP-2発現は一般は認められないように思われた。
【0028】
STRAP-3およびSTRAP-4は、STRAP-1およびSTRAP-2の両方と構造レベルで近似するように思われ、いずれも膜貫通型蛋白質であるように思われた。STRAP-3およびSTRAP-4は特有の発現プロファイルを示す。例えば、STRAP-3は胎盤に主に限定された発現パターンを有するように思われ、程度は弱いものの前立腺でも発現が認められるが、検討した他の正常組織では認められない。STRAP-4は主として肝臓で発現されるように思われる。STRAP-3およびSTRAP-4はいずれも、高レベルのSTRAP-1およびSTRAP-2発現を呈する前立腺癌異種移植片では発現されないように思われる。
【0029】
本明細書で述べる4種類のSTRAPのうち3種類はヒト第7番染色体にマッピングされている(STRAP-1、-2および3)。興味深いことに、STRAP-1は、対立遺伝子獲得(allelic gain)を示す大規模な領域が原発性および再発性のいずれの前立腺癌についても報告されている7p22中(7p22.3)にマッピングされており(Visakorpiら、1995 Cancer Res. 55:342、Nupponenら、1998 American J. Pathol. 153:141)、このことは癌におけるSTRAP-1のアップレギュレーションにゲノム機構が関与する可能性を示唆する。
【0030】
STRAPの機能は不明である。6回膜貫通ドメインを含む他の細胞表面分子には、イオンチャネル(DollyおよびParcej、1996 J Bioenerg Biomembr 28:231)および水チャネルすなわちアクアポリン(Reizerら、1993 Crit Rev Biochem Mol Biol 28:235)が含まれる。構造研究により、いずれの種類の分子も集合して四量体複合体となることで機能性チャネルを形成することが示されている(Christie、1995、Clin Exp Pharmacol Physiol 22:944、Walzら、1997 Nature 387:624、Chengら、1997 Nature 387:627)。前立腺におけるSTRAP-1の免疫組織化学染色は細胞間境界で濃く、内腔側で認められる染色はこれよりも薄いように思われた。このことはSTRAP-1が密着結合、ギャップ結合または細胞接着に一定の役割を果たすことを示唆すると思われる。このような可能性を検討するには、STRAPがイオンチャネルとして働くかどうかを明らかにするために、STRAPを発現するアフリカツメガエル卵母細胞(または他の細胞)を膜電位固定およびパッチクランプ実験を用いて分析することが考えられる。STRAPが水チャネルの特性を示すかどうかを明らかにするために、卵母細胞の細胞容積を測定してもよい。STRAPがチャネルまたはギャップ結合蛋白質として働くならば、それらは例えば、発現または機能を阻害しうる抗体、低分子およびポリヌクレオチドを用いる阻害のための優れた標的として役立つ可能性がある。正常組織における発現が限られていて癌組織における発現が高レベルであることは、STRAPの機能を妨げることによって癌細胞が選択的に死滅される可能性を示唆する。
【0031】
STRAP遺伝子ファミリーは主として上皮細胞で発現されるため、STRAP蛋白質は上皮細胞の機能においてイオンチャネルまたはギャップ結合蛋白質として働くことが考えられる(Lalaniら、1997、Cancer Metastasis Rev 16:29)。ラットおよびヒト前立腺癌細胞は、ナトリウムチャネルの発現レベルが相対的に高いものおよび低いものという細胞のサブポピュレーションを含む。ナトリウムチャネルの発現レベルの高さはインビトロでの浸潤性の高さと相関する(Smithら、1998、FEBS Lett. 423:19)。同様に、ナトリウムチャネルの特異的遮断によってインビトロでのPC-3細胞の浸潤性が抑制され(Laniadoら、1997、Am. J. Pathol. 150:1213)、一方、LNCaP細胞におけるカリウムチャネルの特異的阻害によって細胞増殖が抑制されることも示されている(Skrymaら、1997、Prostate 33:112)。これらの報告は、前立腺癌においてイオンチャネルが一定の役割を果たすことを示唆するほか、イオンチャネルの機能を抑制する低分子が前立腺癌の増殖を妨げる可能性があることも示している。
【0032】
STRAPポリヌクレオチド
本発明の1つの局面は、STRAP蛋白質およびその断片をコードするポリヌクレオチド、STRAP遺伝子もしくはmRNA配列またはその断片に対して相補的なDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドおよび関連分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、およびSTRAP遺伝子、mRNAまたはSTRAPをコードするポリヌクレオチド(「STRAPポリヌクレオチド」と総称する)とハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む、好ましくは単離された形態のSTRAP遺伝子、mRNAおよび/またはコード配列の全体または一部に対応する、または相補的なポリヌクレオチドを提供する。本明細書で用いるSTRAP遺伝子および蛋白質は、STRAP-1およびSTRAP-2遺伝子および蛋白質、ジーンバンク(GeneBank)受入番号AI139607およびR80991(それぞれSTRAP-3およびSTRAP-4)に対応する遺伝子および蛋白質、ならびに他のSTRAP蛋白質および上記のものと構造的に類似する変異体に対応する遺伝子および蛋白質を含むものとする。このような他のSTRAP蛋白質および変異体は、STRAP-1および/またはSTRAP-2コード配列との相同性が高いコード配列を一般に有すると考えられ、好ましくはアミノ酸の一致率が少なくとも約50%であってアミノ酸の相同性(BLASTの基準を用いる)が少なくとも約60%であり、より好ましくは相同性(BLASTの基準を用いる)が70%またはそれ以上である。
【0033】
本明細書で記載するSTRAPファミリーのメンバーの遺伝子配列は、それらと他の蛋白質を区別する、STRAP蛋白質が共有する特有の高度に保存されたアミノ酸配列ドメインをコードする。これらの特有の高度に保存されたアミノ酸配列ドメインを1つまたは複数含む蛋白質は、STRAPファミリーのメンバーと関連があるか、または新たなSTRAP蛋白質であると考えられる。完全なSTRAP-1および部分的なSTRAP-2蛋白質配列のアミノ酸配列を整列化した図11Aを参照すれば、STRAP-1およびSTRAP-2配列の一致率は61%で相同性は79%であり、膜貫通ドメインと予想される部分の配列は特によく保存されている。STRAPファミリーの4種類のメンバーに関して得られているアミノ酸構造を整列化した図11Bを参照すれば、重複領域、特に第4および第5の膜貫通ドメイン、ならびにそれらの間の細胞内ループと推定される部分が極めてよく保存されていることが明らかである。アミノ酸配列の比較により、(1)STRAP-2およびSTRAP-3の重複配列における一致率は50%で相同性は69%であること、(2)STRAP-2およびSTRAP-4の重複領域における一致率は56%で相同性が87%があること、(3)STRAP-3およびSTRAP-1の重複領域における一致率は37%で相同性は63%であること、(4)STRAP-3およびSTRAP-4の重複領域における一致率は38%で相同性は57%であること、ならびに(5)STRAP 4およびSTRAP-1の重複領域における一致率は42%で相同性は65%であることが示されている。
【0034】
STRAPポリヌクレオチドには、図1Aに示すヒトSTRAP-1のヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくは図9に示すヒトSTRAP-2のヌクレオチド配列(配列番号:10)を有するポリヌクレオチド、上記のもののいずれか一方に対して相補的な配列、または上記のもののいずれかのポリヌクレオチド断片が含まれうる。もう1つの態様には、図1Aに示すヒトSTRAP-1蛋白質のアミノ酸配列(配列番号:2)をコードする、もしくは図9に示すヒトSTRAP-2蛋白質のアミノ酸配列(配列番号:11)をコードするポリヌクレオチド、上記のもののいずれか一方に対して相補的な配列または上記のもののいずれかのポリヌクレオチド断片が含まれる。もう1つの態様には、図1Aに示すヒトSTRAP-1 cDNA(配列番号:1)またはそのポリヌクレオチド断片とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしうるポリヌクレオチドが含まれる。もう1つの態様には、図9に示すヒトSTRAP-2 cDNA(配列番号:10)またはそのポリヌクレオチド断片とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしうるポリヌクレオチドが含まれる。
【0035】
特に考慮の対象となるものは、天然の源に由来するものか合成されたものかを問わず、ゲノムDNA、cDNA、リボザイムおよびアンチセンス分子のほか、代替的な骨格に基づくか、または代替的な塩基を含む核酸分子である。例えば、アンチセンス分子はRNAでもよく、ペプチド核酸(PNA)、またはDNAもしくはRNAと塩基対依存的な様式で特異的に結合するホスホロチオエート誘導体などの非核酸分子を含む他の分子でもよい。当業者は、本明細書で開示するSTRAPポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド配列を用いて、これらの物質群(class)に属する核酸分子を容易に入手しうる。
【0036】
本発明のこの局面のさらに詳細な態様には、本発明のポリヌクレオチドまたはその任意の特定の部分の特異的増幅を可能とするプライマーおよびプライマー対、ならびに本発明の核酸分子またはその任意の部分と選択的または特異的にハイブリダイズするプローブが含まれる。プローブは例えば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素などの検出マーカーで標識してもよい。このようなプローブおよびプライマーは、試料中のSTRAPポリヌクレオチドの存在を検出するために、およびSTRAP蛋白質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。このようなプローブの例には、図1Aに示すヒトSTRAP-1 cDNA配列(配列番号:1)の全体または一部を含むポリペプチド、および図9に示すヒトSTRAP-2 cDNA配列(配列番号:10)の全体または一部を含むポリペプチドが含まれる。STRAP mRNAを特異的に増幅しうるプライマー対の例は、以下の実施例でも述べる。当業者には理解されると思われるが、本明細書で提示する配列に基づいて極めて多くの異なるプライマーおよびプローブを調製し、STRAP mRNA、またはSTRAPファミリーの特定のメンバー(例えば、STRAP-1)をコードするmRNAを増幅および/または検出するために有効に用いることができる。
【0037】
本明細書において用いられるように、ポリヌクレオチドは、STRAP遺伝子以外の遺伝子に対応するか、もしくはそれに対して相補的な、またはSTRAP遺伝子産物もしくはその断片以外のものをコードする混入ポリヌクレオチドから実質的に分離されている場合に「単離された」という。当業者は、単離されたSTRAPポリヌクレオチドを得るために核酸単離手順を容易に用いることができる。
【0038】
本発明のSTRAPポリヌクレオチドは、STRAP遺伝子、mRNAもしくはその断片の増幅および/または検出のためのプローブおよびプライマーとして;前立腺癌およびその他の癌の診断および/または予後判定のための試薬として;STRAPポリペプチドの発現を指令しうるコード配列として;STRAP遺伝子の発現および/またはSTRAP転写物の翻訳を調節もしくは抑制するためのツールとして;ならびに治療薬としての使用を非制限的に含む、さまざまな目的に有用である。
【0039】
STRAPをコードする核酸分子を単離するための方法
本明細書に記載するSTRAP cDNA配列は、STRAP遺伝子産物をコードする他のポリヌクレオチドの単離のほか、STRAP遺伝子産物の相同体、選択的スプライシングを受けたアイソフォーム、対立遺伝子変異体(対立遺伝子variant)および変異型のSTRAP遺伝子産物の単離を可能にする。STRAP遺伝子をコードする完全長cDNAを単離するために用いうる種々の分子クローニング法が周知である(例えば、サムブルック(Sambrook、J.)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Press、New York、1989、分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、アウスユーベル(Ausubel)ら編、WileyおよびSons、1995を参照)。例えば、市販のクローニングシステム(例えば、Lambda ZAP Express、Stratagene)を用いて、λファージクローニング法を都合良く行うことができる。STRAP遺伝子のcDNAを含むファージクローンは、標識したSTRAP cDNAまたはその断片をプローブとして検索することによって同定しうる。例えば、1つの態様では、STRAP-1 cDNA(図1A)またはその一部を合成し、STRAP遺伝子に対応する重複性および完全長cDNAを回収するためのプローブとして用いることができる。同様に、STRAP-2 cDNA配列も用いうる。STRAP遺伝子は、ゲノムDNAライブラリー、細菌人工染色体ライブラリー(BAC)、酵母人工染色体ライブラリー(YAC)などをSTRAP DNAプローブまたはプライマーによってスクリーニングすることによって単離することが可能である。
【0040】
組換えDNA分子および宿主-ベクター系
本発明は、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC、BACのほか、当技術分野で周知の種々のウイルス性および非ウイルス性ベクター、ならびにこのような組換えDNAまたはRNA分子による形質転換またはトランスフェクションを受けた細胞を非制限的に含む、STRAPポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNA分子も提供する。本明細書で用いる組換えDNAまたはRNA分子とは、インビトロ分子操作を受けたDNAまたはRNA分子のことである。この種の分子を作製するための方法は周知である(例えば、Sambrookら、1989、前記を参照)。
【0041】
本発明はさらに、STRAPポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子を適した原核または真核宿主細胞内に含む、宿主-ベクター系も提供する。適した真核宿主細胞の例には、酵母細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞もしくは昆虫細胞(例えば、Sf9細胞などのバキュロウイルス感染性細胞)などの動物細胞が含まれる。適した哺乳動物細胞の例には、LnCaP、PC-3、DU145、LAPC-4、TsuPr1などの種々の前立腺癌細胞株、トランスフェクションまたは形質導入が可能なその他の前立腺癌細胞株のほか、組換え蛋白質の発現のためにルーチンに用いられる数多くの哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、293、293T細胞)。より詳細には、STRAPのコード配列を含むポリヌクレオチドは、ルーチンに用いられる当技術分野で周知の任意の数の宿主-ベクター系を用いて、STRAP蛋白質またはその断片を作製するために用いうる。
【0042】
STRAP蛋白質またはその断片の発現のために適した宿主-ベクター系は幅広い種類のものが入手可能である(例えば、サムブルック(Sambrook)ら、1989、前記、分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、1995、前記を参照されたい)。哺乳動物細胞における発現のために好ましいベクターには、pcDNA 3.1myc-His-tag(Invitrogen)およびレトロウイルスベクターpSRαtkneo(Mullerら、1991、MCB 11:1785)が非制限的に含まれる。これらの発現ベクターを用いると、例えば293、293T、rat-1、3T3、PC-3、LNCaPおよびTsuPr1を含む、いくつかの前立腺癌および非前立腺細胞株におけるSTRAPの好ましい発現が得られる。本発明の宿主-ベクター系は、STRAP蛋白質またはその断片の産生のために有用である。このような宿主-ベクター系を、STRAPおよびSTRAP変異の機能的特性を研究するために用いてもよい。
【0043】
STRAP遺伝子またはその断片によってコードされる蛋白質には、抗体の産生、ならびにSTRAP遺伝子産物と結合するリガンドおよび他の作用物質ならびに細胞成分を同定するための方法におけるものを非制限的に含む、さまざまな用途があると考えられる。STRAP蛋白質またはその断片に対して産生された抗体は、診断および予後判定アッセイ法、画像診断法(特に癌画像診断を含む)、ならびに前立腺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌および膀胱癌、卵巣癌、精巣癌および膵臓癌などのSTRAP蛋白質の発現を特徴とするヒトの癌の管理における治療方法において有用と思われる。さまざまな種類の放射免疫アッセイ法、固相酵素免疫アッセイ法(ELISA)、固相酵素免疫蛍光アッセイ法(ELIFA)、免疫細胞化学法などを非制限的に含む、STRAP蛋白質の検出のために有用な種々の免疫アッセイ法が考慮の対象となる。このような抗体を標識し、前立腺細胞を検出しうる免疫学的画像化試薬として用いることも可能である(例えば、放射シンチグラフィー画像法において)。また、STRAP蛋白質は以下に詳細に述べる癌ワクチンの作製にも特に有用である。
【0044】
STRAP蛋白質
本発明のもう1つの面は、種々のSTRAP蛋白質およびそのポリペプチド断片を提供する。本明細書で用いるSTRAP蛋白質とは、図1Aに提示するヒトSTRAP-1のアミノ酸配列(配列番号:2)、図9に提示するヒトSTRAP-2(配列番号:11)、他の哺乳動物のSTRAP相同体および変異体、ならびにSTRAPの生物活性を有するこれらの蛋白質の対立遺伝子変異体および保存置換変異体のアミノ酸配列を有するか、それを含む蛋白質のことを意味する。
【0045】
本発明のSTRAP蛋白質には、本明細書で具体的に同定されたもののほか、以下に概説する方法に従った過度の実験を行わなくとも単離/作製および特徴分析を行いうる対立遺伝子変異体、保存置換変異体および相同体が含まれる。異なるSTRAP蛋白質またはその断片の部分を組み合わせた融合蛋白質のほか、STRAP蛋白質と異種ポリペプチドとの融合蛋白質も含まれる。このようなSTRAP蛋白質は、STRAP蛋白質、本発明の蛋白質またはSTRAPとして総称するものとする。本明細書で用いる「STRAPポリペプチド」という用語は、少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも15アミノ酸からなるポリペプチド断片またはSTRAP蛋白質を意味する。
【0046】
STRAP蛋白質の1つの具体的な態様は、図1Aに示すヒトSTRAP-1のアミノ酸配列(配列番号:2)を含む。STRAP蛋白質のもう1つの態様は、図9に示すSTRAP-2部分アミノ酸配列(配列番号:11)を含むポリペプチドを含む。もう1つの態様は、図11Bに示すSTRAP-3部分アミノ酸配列(配列番号:4)を含むポリペプチドを含む。さらにもう1つの態様は、図11Bに示すSTRAP-4部分アミノ酸配列(配列番号:5)を含むポリペプチドを含む。
【0047】
一般に、ヒトSTRAPの天然の対立遺伝子変異体は、高度の構造的同一性および相同性を有すると考えられる(例えば、一致率が90%またはそれ以上)。典型的には、STRAP蛋白質の対立遺伝子変異体は、本明細書に記載するSTRAP配列中に保存的アミノ酸置換を含むか、またはSTRAP相同体における対応位置に由来するアミノ酸置換を含むと考えられる。ある部類のSTRAP対立遺伝子変異体は、特定のSTRAPアミノ酸配列の少なくともわずかな領域とは高度の相同性を有するものの、非保存的置換、切断、挿入またはフレームシフトといった配列との根本的な差異をさらに含む蛋白質であると考えられる。このような対立遺伝子は、同じ生物機能をもたないか、または生物的特徴のすべては有していないことが典型的である変異型STRAP蛋白質である。
【0048】
保存的アミノ酸置換は、蛋白質の立体構造および機能をいずれも変化させずに蛋白質に加えることがしばしば可能である。このような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)およびロイシン(L)のいずれかによるそれ以外のこれらの疎水性アミノ酸の置換、アスパラギン酸(D)によるグルタミン酸(E)の置換およびその逆、グルタミン(Q)によるアスパラギン(N)の置換およびその逆、ならびにセリン(S)によるトレオニン(T)の置換およびその逆が含まれる。蛋白質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境およびその役割によっては、その他の置換も保存的とみなしうる。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)はしばしば互換的であり、アラニン(A)およびバリン(V)についても同様である。比較的疎水性が高いメチオニン(M)は、ロイシンおよびイソロイシンとしばしば互換的であり、時にバリンと互換的である。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の顕著な特徴がその電荷にあって、これらの2つのアミノ酸残基のpKの違いが重大でない位置ではしばしば互換的である。特定の環境においては、さらに他の変化も「保存的」とみなすことができる。
【0049】
STRAP蛋白質は多くの形態として具現化しうるが、単離された形態が好ましい。本明細書における用い方では、蛋白質は、物理的、機械的または化学的方法を用いて、STRAP蛋白質が、蛋白質に通常付随する細胞成分から切り離された場合に「単離された」という。当業者は標準的な精製法を容易に用いて単離されたSTRAP蛋白質を得ることができる。精製されたSTRAP蛋白質分子は、STRAPと抗体または他のリガンドとの結合を妨げる他の蛋白質または分子を実質的に含まないと考えられる。単離および精製の性質および程度は、意図する用途によって決まると考えられる。STRAP蛋白質の態様には、精製されたSTRAP蛋白質および機能的な可溶性STRAP蛋白質が含まれる。1つの形態において、このような機能的な可溶性STRAP蛋白質またはその断片は、抗体または他のリガンドとの結合能を保持している。
【0050】
本発明は、図1Aに示すSTRAP-1(配列番号:2)、図9に示すSTRAP-2 (配列番号:11)または図11Bに示すSTRAP-3(配列番号:4)またはSTRAP-4(配列番号:5)のアミノ酸配列の一部に対応するポリペプチドなどの、STRAPアミノ酸配列の生物活性断片を含むSTRAPポリペプチドも提供する。本発明のこの種のポリペプチドは、STRAP蛋白質に付随するエピトープと特異的に結合する抗体の産生を誘発する能力というようなSTRAP蛋白質の特性を示す。特定のSTRAP蛋白質に特有な(他のSTRAP蛋白質と比較して)アミノ酸配列を含むポリペプチドは、その特定のSTRAP蛋白質と特異的に反応すると思われる抗体を産生するために用いうる。例えば、図11Aに示すSTRAP-1およびSTRAP-2構造のアミノ酸の整列化物を参照すれば、各分子がその構造に特有な配列鎖(stretch of sequence)を含むことを当業者は容易に理解すると考えられる。これらの特有の配列鎖は、STRAP-1またはSTRAP-2特異的抗体の作製のために用いることができる。
【0051】
STRAPポリペプチドは、本明細書で開示するヒトSTRAP蛋白質のアミノ酸配列に基づき、当技術分野で周知の標準的なペプチド合成技術または化学的切断法を用いて作製しうる。または、STRAP蛋白質のポリペプチド断片をコードする核酸分子を得るために組換え法を用いることも可能である。この点に関して、本明細書で述べるSTRAPをコードする核酸分子は、STRAP蛋白質の規定断片を作製するための手段を提供する。STRAPポリペプチドは、ドメイン特異的抗体(例えば、STRAP蛋白質の細胞外または細胞内エピトープを認識する抗体)の作製および特徴分析、STRAPファミリーのメンバーに対して特異的な抗体(例えば、抗STRAP-1、抗STRAP-2抗体)の作製、特定のSTRAPまたはSTRAPドメインと結合する作用物質または細胞因子の同定、ならびに癌ワクチンを非制限的に含む種々の治療状況において特に有用である。特に興味深い構造を含むSTRAPポリペプチドは、例えば、シュウ-ファスマン(Chou-Fasman)、ガルニエ-ロブソン(Garnier-Robson)、カイト-ドゥーリトル(Kyte-Doolittle)、アイゼンバーグ(Eisenberg)、カープラス-シュルツ(Karplus-Schultz)もしくはジェームソン-ウルフ(Jameson-Wolf)の分析方法を含む当技術分野で周知のさまざまな分析技法を用いて、または免疫原性に基づいて、予想および/または同定することが可能である。このような構造を含む断片は、サブユニット特異的な抗STRAP抗体の作製、またはSTRAPと結合する細胞因子の同定に特に有用である。
【0052】
STRAP抗体
本発明のもう1つの局面は、STRAP蛋白質およびポリペプチドと結合する抗体を提供する。最も好ましい抗体は、STRAP蛋白質とは選択的に結合するが、STRAP以外の蛋白質およびポリペプチドとは結合しない(または結合が弱い)ものと考えられる。特に考慮の対象となる抗STRAP抗体には、モノクローナルおよびポリクローナル抗体のほか、これらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1つもしくは複数の相補性決定領域を含む断片が含まれる。本明細書で用いる抗体断片とは、その標的と結合する免疫グロブリン分子の可変領域、すなわち抗原結合領域の少なくとも一部と定義される。
【0053】
用途によっては、特定のSTRAP蛋白質および/または特定の構造ドメイン内部のエピトープと特異的に反応する抗体を作製することが望ましいと思われる。例えば、癌療法および画像診断の目的に有用な好ましい抗体は、癌細胞で発現されたSTRAP蛋白質の細胞外領域におけるエピトープと反応するものである。このような抗体は、本明細書で述べるSTRAP蛋白質を、またはその細胞外ドメインと予想されるものに由来するペプチドを免疫原として用いて産生させることができる。この点については、図1Bに示すSTRAP-1蛋白質の構造の模式図に見るように、膜貫通ドメインであることが示された部分の間の細胞外ループ内の領域を、細胞外特異的抗体を産生させるために適した免疫原の設計に用いるために選択してもよい。
【0054】
本発明のSTRAP抗体は、前立腺癌の治療戦略、診断および予後判定アッセイ法ならびに画像診断法において特に有用である。本発明は、STRAPおよび変異型STRAP蛋白質ならびにポリペプチドの検出および定量的評価のために有用な種々の免疫アッセイ法を提供する。このようなアッセイ法は一般に、STRAPまたは変異型STRAP蛋白質を認識してそれと結合しうる1つまたは複数のSTRAP抗体を適宜含み、さまざまな種類の放射免疫アッセイ法、固相酵素免疫アッセイ法(ELISA)、固相酵素免疫蛍光アッセイ法(ELIFA)、免疫細胞化学法などを非制限的に含む、当技術分野で周知のさまざまな免疫アッセイ法形式の範囲内で行うことができる。さらに、標識したSTRAP抗体を用いる放射シンチグラフィー画像法を非制限的に含む、前立腺癌を検出しうる免疫学的画像化法も本発明によって提供される。この種のアッセイ法は、前立腺癌、特に進行前立腺癌の発見、モニタリングおよび予後判定において臨床的に有用と思われる。
【0055】
また、STRAP抗体を、STRAPおよび変異型STRAP蛋白質ならびにポリペプチドを精製するため、ならびにSTRAP相同体および関連分子を単離するための方法において用いることも可能である。例えば、1つの態様において、STRAP蛋白質の精製方法は、STRAP抗体のSTRAPとの結合を許容する条件下で、固体基質に結合させたSTRAP抗体をSTRAPを含む可溶化液または他の溶液とともにインキュベートすること、不純物を除去するために固体基質を洗浄すること、および結合した抗体からSTRAPを溶出させることを含む。本発明のSTRAP抗体のその他の用途には、STRAP蛋白質を模倣する抗イディオタイプ抗体の作製が含まれる。
【0056】
STRAP蛋白質の生物活性を調節もしくは阻害すること、またはSTRAP蛋白質を発現する前立腺癌細胞のターゲティングまたは破壊を行うことにより、STRAP抗体を治療的に用いることも可能である。前立腺およびその他の癌の抗体療法については、以下の別のサブセクションでさらに詳細に説明する。
【0057】
抗体の調製のためのさまざまな方法が当技術分野では周知である。例えば、単離形態または免疫複合形態にあるSTRAP蛋白質、ペプチドまたは断片を用いて適した哺乳動物宿主を免疫化することにより、抗体を調製することができる(抗体:実験マニュアル(Antibody:A Laboratory Manual)、CSH Press、Harlow and Lane編(1988)、Harlow、抗体(Antibody)、Cold Spring Harbor Press、NY(1989))。さらに、STRAP GST融合蛋白質などのSTRAPの融合蛋白質も用いうる。1つの特定の態様においては、図1Aのアミノ酸配列のオープンリーディングフレームの全体または大部分を含むGST融合蛋白質を作製し、適切な抗体を産生させるための免疫原として用いることができる。STRAPを発現または過剰発現する細胞を免疫化に用いてもよい。同様に、STRAPを発現するように操作された任意の細胞を用いることも可能である。このような戦略は、内因性STRAPの認識能力が高いモノクローナル抗体の産生をもたらすと思われる。もう1つの有用な免疫原は、ヒツジ赤血球の形質膜と結合したSTRAP蛋白質を含む。
【0058】
図1Aに示すSTRAPのアミノ酸配列(配列番号:2)を、抗体の作製を目的としてSTRAP蛋白質の特定の領域を選択するために用いてもよい。例えば、STRAPアミノ酸配列の疎水性および親水性分析を用いて、STRAP構造における親水性領域を同定することができる。シュウ-ファスマン(Chou-Fasman)、ガルニエ-ロブソン(Garnier-Robson)、カイト-ドゥーリトル(Kyte-Doolittle)、アイゼンバーグ(Eisenberg)、カープラス-シュルツ(Karplus-Schultz)もしくはジェームソン-ウルフ(Jameson-Wolf)分析などの当技術分野で知られた他の種々の方法を用いて、免疫原性構造が認められるSTRAP蛋白質の領域のほか、他の領域およびドメインを容易に用いることもできる。変異型STRAP蛋白質を特異的に認識する抗体を作製するためには、変異体に特有な(野生型STRAPと比較して)アミノ酸配列が好ましい。
【0059】
免疫原として用いるための蛋白質またはポリペプチドを調製するため、および蛋白質とBSA、KLHまたは他の担体蛋白質などの担体との免疫原性結合物を調製するための方法は当技術分野で周知である。ある状況では例えばカルボジイミド試薬を用いる直接的結合を用いることができ、別の状況ではピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL)が供給している結合剤が有効と思われる。STRAP免疫原の投与は一般に、当技術分野で一般に知られた適切な期間にわたる注射および適切なアジュバントを用いて行う。免疫化期間中には、抗体形成が十分なことを判定するために抗体力価を測定することが可能である。
【0060】
好ましいものはSTRAPモノクローナル抗体であり、これは当技術分野で周知のさまざまな手段によって作製しうる。例えば、一般に知られた、リンパ球または脾細胞の不死化をもたらすケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)の標準的な方法または変法を用いて、望ましいモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株を調製することができる。望ましい抗体を分泌する不死化細胞株は、STRAP蛋白質またはSTRAP断片を抗原とするイムノアッセイ法によってスクリーニングする。望ましい抗体を分泌する適切な不死化細胞培養物が同定された時点で、細胞を増殖させてインビトロ培養物または腹水から抗体を得ることができる。
【0061】
上記の通り、数多くのSTRAPポリペプチドを、伝統的な方法を用いてモノクローナル抗体を産生させるための免疫原として用いうる。1つの具体的な態様は、STRAP-1コード配列を有する発現プラスミドによるトランスフェクションを受けた293T細胞であってSTRAP-1蛋白質を発現するトランスフェクト細胞を免疫組織化学的に染色するが、トランスフェクションを受けていない293T細胞を免疫組織化学的に染色しない抗体を含む。このような抗体の特徴分析のためのアッセイ法を本明細書の実施例5に示す。
【0062】
もう1つの態様では、STRAP-1の細胞表面エピトープを認識するmAbを産生させるための免疫原としてSTRAP-1を発現するNIH 3T3細胞を用いて、STRAP-1モノクローナル抗体を作製することが可能である。反応性mAbは、STRAP-1を過剰発現するPC-3細胞を用いる細胞式(cell-based)ELISAによってスクリーニングしうる。もう1つの具体的な態様では、STRAP-1蛋白質の細胞外領域である3種のペプチド(具体的には、REVIHPLATSHQQYFYKIPILV(配列番号:22)、RRSYRYKLLNWAYQQVQQNKEDAWIEHDVWRMEI(配列番号:23)およびWIDIKQFVWYTPPTF(配列番号:24))を免疫化のためにヒツジ赤血球と結合させる。もう1つの具体的な態様では、適切な発現系(例えば、バキュロウイルス発現系pBlueBac4.5、Invitrogen)を用いて作製したアミノ末端にHis-タグを有する組換えSTRAP-1蛋白質を、ニッケルカラムを用いて精製し、免疫原として用いる。
【0063】
最新技術を用いる組換え手段によって抗体または断片を作製することもできる。STRAP蛋白質の望ましい領域と特異的に結合する領域を、複数の種に由来するキメラ性またはCDR接枝(CDR-grafted)抗体の文脈において作製することも可能である。ヒト化またはヒトSTRAP抗体を作製することもでき、これは治療状況における使用には好ましい。このようなヒト化抗体を作製するための種々のアプローチが知られており、これにはキメラおよびCDR接枝法が含まれる。完全ヒトモノクローナル抗体を作製するための方法には、ファージディスプレイおよび遺伝子導入法が含まれる(Vaughanら、1998、Nature Biotechnology 16:535〜539を参照)。
【0064】
完全ヒトSTRAPモノクローナル抗体は、大規模なヒトIg遺伝子コンビナトリアルライブラリー(すなわち、ファージディスプレイ)を用いるクローニング技術を用いて作製しうる(Griffiths and Hoogenboom、インビトロ免疫系の構築:ファージディスプレイライブラリーに由来するヒト抗体(Building an in vitro immune system:human antibodies from phage display libraries)、ヒトにおける予防的および治療的用途のための抗体分子の蛋白質工学(Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man)、Clark, M.(編)、Nottingham Academic、pp 45〜64(1993)、Burton and Barbas、コンビナトリアルライブラリーに由来するヒト抗体(Human Antibodies from combinatorial libraries)、同書、pp 65〜82)。1997年12月3日に刊行されたPCT特許出願・国際公開公報第98124893号、クチャーラパティ(Kucherlapati)およびジャコボビッツ(Jakobovits)らに記載された通りに、完全ヒトSTRAPモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックマウスを用いて作製することも可能である(Jakobovits、1998、Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4):607〜614も参照されたい)。この方法では、ファージディスプレイ技術に必要なインビトロ操作が避けられ、高親和性の信頼しうるヒト抗体が効率よく得られる。
【0065】
STRAP抗体とSTRAP蛋白質との反応性は、STRAP蛋白質、ペプチド、STRAP発現細胞またはその抽出物を適宜用いるウエスタンブロット法、免疫沈降法、ELISAおよびFACS分析を含む既知の数多くの手段によって確認しうる。
【0066】
本発明のSTRAP抗体もしくはその断片を検出マーカーで標識して、または細胞毒性物質などの第2の分子と結合させて、STRAP陽性細胞に対する第2の分子のターゲティングのために用いることもできる(Vitetta、ES.ら、1993、免疫毒素療法(Immunotoxin therapy)、DeVita, Jr., V.T.ら編、癌:腫瘍学の原理および実践(Cancer:Principles and Practice of Oncology)、第4版、J.B. Lippincott Co.、Philadelphia、2624〜2636)。適した検出マーカーには、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が非制限的に含まれる。
【0067】
STRAPの検出のための方法
本発明のもう1つの局面は、STRAPポリヌクレオチドおよびSTRAP蛋白質を検出するための方法、ならびにSTRAPを発現する細胞を同定するための方法に関する。
【0068】
より詳細には、本発明は、血清、骨、前立腺および他の組織、尿、精液、細胞調製物などの生物試料におけるSTRAPポリヌクレオチドの検出のためのアッセイ法を提供する。検出可能なSTRAPポリヌクレオチドには、例えば、STRAP遺伝子またはその断片、STRAP mRNA、選択的スプライス変異型のSTRAP mRNA、およびSTRAPポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNA分子が含まれる。STRAPポリヌクレオチドの増幅および/またはその存在の検出を行うための数多くの方法が当技術分野では周知であり、本発明のこの面の実践に用いることができる。
【0069】
1つの態様において、生物試料中のSTRAP mRNAを検出するための方法は、少なくとも1つのプライマーを用いる逆転写によって試料からcDNAを作製すること、そのようにして作製したcDNAをその中のSTRAP cDNAを増幅するためにSTRAPポリヌクレオチドをセンスおよびアンチセンスプライマーとして用いて増幅すること、ならびに増幅されたSTRAP cDNAの存在を検出することを含む。もう1つの態様において、生物試料中のSTRAP遺伝子を検出するための方法は、試料からゲノムDNAをまず単離すること、単離されたゲノムDNAをその中のSTRAP遺伝子を増幅するためにSTRAPポリヌクレオチドをセンスおよびアンチセンスプライマーとして用いて増幅すること、ならびに増幅されたSTRAP遺伝子の存在を検出することを含む。STRAP-1(図1A、配列番号:1)、STRAP-2(図9、配列番号:10)、STRAP-3(図10、配列番号:14)またはSTRAP-4(図10、配列番号:15)に関して提示したヌクレオチド配列から適宜、任意の数の適したセンスおよびアンチセンスプローブの組み合わせを設計し、この目的に用いることができる。
【0070】
また、本発明は、血清、骨、前立腺および他の組織、尿、細胞調製物などの生物試料の組織中のSTRAP蛋白質の存在を検出するためのアッセイ法も提供する。STRAP蛋白質を検出するための方法も周知であり、これには例えば、免疫沈降法、免疫組織化学分析、ウエスタンブロット分析、分子結合アッセイ法、ELISA、ELIFAなどが含まれる。
【0071】
例えば、1つの態様において、生物組織中のSTRAP蛋白質の存在を検出するための方法は、試料をまずSTRAP抗体、そのSTRAP反応性断片またはSTRAP抗体の抗原結合領域を含む組換え蛋白質と接触させること、およびそれに対する試料中のSTRAP蛋白質の結合を検出することを含む。
【0072】
STRAPを発現する細胞を同定するための方法も提供する。1つの態様において、STRAP遺伝子を発現する細胞を同定するためのアッセイ法は、細胞内のSTRAP mRNAの存在を検出することを含む。細胞内の特定のmRNAを検出するための方法は周知であり、これには例えば、相補的DNAプローブを用いるハイブリダイゼーションアッセイ法(標識したSTRAPリボプローブ、ノーザンブロット法および関連技法を用いるインサイチューハイブリダイゼーションなど)および種々の核酸増幅アッセイ法(STRAPに対して特異的な相補的プライマーを用いるRT-PCR、および例えば分枝DNA、SISBA、TMAなどを用いる他の増幅型検出法)が含まれる。または、STRAP遺伝子を発現する細胞を同定するためのアッセイ法は、細胞内の、または細胞が分泌するSTRAP蛋白質の存在を検出することを含む。蛋白質を検出するためのさまざまな方法が当技術分野で周知であり、STRAP蛋白質およびSTRAP発現細胞の検出に用いることができる。
【0073】
STRAP発現解析は、STRAP遺伝子の発現を調節する作用物質の同定および評価のためのツールとしても有用と思われる。例えば、結腸、膀胱、膵臓、卵巣およびその他の癌ではSTRAP-1の発現が著しくアップレギュレートされる。STRAP-1の過剰発現を抑制しうる分子または生物的因子が同定されれば、癌の治療における治療的意義があると考えられる。このような作用物質は、RT-PCR、核酸ハイブリダイゼーションまたは抗体結合によりSTRAP発現の定量化を行うスクリーニングを用いて同定しうる。
【0074】
STRAPの発現状態を判定するためのアッセイ法
個体におけるSTRAP発現パターンの状態の判定は癌の診断に用いることができ、適切な治療選択肢を定める上で有用な予後判定情報をもたらすと思われる。同様に、STRAPの発現状態は特定の病期に対する感受性、進行および/または腫瘍の悪性度を予測するために重要な情報をもたらすと思われる。本発明は、STRAP発現状態の判定およびSTRAPを発現する癌の診断のための方法およびアッセイ法を提供する。
【0075】
1つの局面において、本発明は、被験細胞または被験試料におけるSTRAP mRNAまたは蛋白質発現の有意な増加を、対応する正常細胞または組織における発現レベルと対比して検出することを含む、個体における癌の存在を判定する上で有用なアッセイ法を提供する。1つの態様では、結腸、膵臓、膀胱、卵巣、子宮頸部、精巣または乳房の組織試料におけるSTRAP-1 mRNAの存在を評価する。対応する正常組織はSTRAP-1 mRNAを発現しないため、これらのいずれかの組織中にSTRAP-1発現の有意な発現が存在すれば、これらの癌の発生、存在および/または重症度を知る上で有用と思われる。関連する1つの態様では、STRAP-1の発現状態を核酸レベルではなく蛋白質レベルで判定する。例えば、このような方法またはアッセイ法は、被験組織試料中の細胞によって発現されるSTRAP-1蛋白質のレベルを判定すること、およびこのようにして判定したレベルを対応する正常試料中で発現されるSTRAPのレベルと比較することを含むと考えられる。1つの態様では、STRAP-1蛋白質の存在を、例えば免疫組織化学的な方法を用いて評価する。STRAP蛋白質の発現を検出しうるSTRAP抗体または結合パートナーは、この目的のために当技術分野で周知のさまざまなアッセイ法形式に用いることができる。
【0076】
末梢血では、STRAP-1の発現を検出するためのRT-PCRを用いて、前立腺、結腸、膵臓、膀胱および卵巣癌を含む癌細胞の存在に関するアッセイ法を都合よく行いうる。RT-PCRで増幅可能なSTRAP-1 mRNAが存在することは、これらの種類の癌の存在を示す指標となる。末梢血中の腫瘍細胞に関するRT-PCR検出アッセイ法は現在、数多くのヒト固形腫瘍の診断および管理における使用に関して評価が進められている。前立腺癌の分野では、これらにはPSAおよびPSMを発現する細胞を検出するためのRT-PCRアッセイ法が含まれる(Verkaikら、1997、Urol. Res. 25:373〜384、Ghosseinら、1995、J. Clin. Oncol. 13:1195〜2000、Hestonら、1995、Clin. Chem. 41:1687〜1688)。RT-PCRアッセイ法は当技術分野で周知である。
【0077】
もう1つのアプローチでは、最近報告された、血液中のガン細胞の検出および特徴分析のための高感度アッセイ法を用いることができる(Racilaら、1998、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4589〜4594)。このアッセイ法は、免疫磁気濃縮を多パラメーターフローサイトメトリーおよび免疫組織化学分析と組み合わせたもので、血液中の癌細胞の検出に極めて高感度であり、末梢血1ml中の1個の上皮細胞も検出できることが報告されている。
【0078】
本発明の1つの関連した局面は、個体における癌の発症に対する感受性を予測することに向けられる。1つの態様において、癌に対する感受性を予測するための方法は、その存在によって癌に対する感受性が示され、存在するSTRAP mRNA発現の程度が感受性の程度と比例するような、組織試料中のSTRAP mRNAまたはSTRAP蛋白質の検出を含む。
【0079】
本発明のもう1つの関連した局面は、腫瘍の悪性度を評価するための方法に向けられる。1つの態様において、腫瘍の悪性度を評価するための方法は、正常試料と対比した腫瘍試料におけるSTRAP mRNAまたはSTRAP蛋白質の発現の程度が悪性度の程度を示すような、腫瘍の試料中の細胞により発現されるSTRAP mRNAまたはSTRAP蛋白質のレベルを測定すること、そのようにして測定したレベルを同じ個体から採取した対応する正常組織または正常組織基準標本で発現されるSTRAP mRNAまたはSTRAP蛋白質のレベルと比較することを含む。
【0080】
STRAP mRNAまたは蛋白質の発現を検出または定量化するための方法は本明細書に記載しており、当技術分野で周知の標準的な核酸および蛋白質の検出および定量化の手法を用いる。STRAP mRNAの検出および定量化のための標準的な方法には、標識したSTRAPリボプローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーション、STRAPポリヌクレオチドプローブを用いるノーザンブロット法および関連技法、STRAPに対して特異的なプライマーを用いるRT-PCR解析、ならびに例えば分枝DNA、SISBA、TMAなどを用いる他の増幅型検出方法が含まれる。1つの具体的な態様では、以下の実施例で述べるように半定量的RT-PCRを用いてSTRAP mRNA発現の検出および定量化を行う。この目的にはSTRAPを増幅しうる任意の数のプライマーを用いることができ、これには本明細書で詳細に述べる種々のプライマーのセットが非制限的に含まれる。この目的のためには蛋白質の検出および定量化のための標準的な方法を用いることができる。1つの具体的な態様では、野生型STRAP蛋白質と特異的に反応するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生検組織の免疫組織化学アッセイ法に用いうる。
【0081】
ヒト癌の画像診断
STRAP-1およびSTRAP-2の発現プロファイルは、それらに対して特異的な抗体がある種の癌の核医学イメージングおよび他の形態の画像診断に特に有用であることを示している。例えば、STRAP-1蛋白質の免疫組織化学分析により、正常組織ではSTRAP-1は主として前立腺および膀胱に限定されることが示唆される。STRAP-1(およびおそらくはSTRAP-2も)の膜貫通型配置から、細胞外エピトープと特異的に反応する抗体によって容易に同定される標的が提供される。この組織限定的な発現、およびSTRAPが多くの癌の細胞表面に局在することからみて、STRAPは画像診断のための理想的な候補である。このため、インビボ画像化法を用いて、STRAP蛋白質を発現するヒト癌を画像化しうると思われる。
【0082】
例えば、いくつかのヒト癌、特に前立腺、膀胱、結腸および卵巣癌ならびにユーイング肉腫では、細胞表面STRAP-1蛋白質が極めて高レベルに発現される。さらに、正常組織におけるSTRAP-1蛋白質の発現は主に前立腺に限定されている。したがって、STRAP-1の細胞外エピトープと特異的に反応する放射標識抗体は、上記の癌の固形腫瘍のインビボ画像化に特に有用と思われる。このような標識化抗STRAP-1抗体は、これらの癌の転移の検出に関して極めて高いレベルの感度をもたらすと考えられる。
【0083】
本発明の画像診断法にはモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
【0084】
癌免疫療法および癌ワクチン
本発明は、STRAPおよびSTRAP抗体に対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチドを用いる、抗体療法、インビボワクチンおよびエクスビボ免疫療法を含む、前立腺癌を治療するための種々の免疫療法を提供する。これらの治療的用途については以下のサブセクションでさらに述べる。
【0085】
本出願者らは、前立腺内部の腺上皮細胞および前立腺癌細胞の表面全体にわたってSTRAP-1が強く均一に発現されるという強力かつ有力な証拠を数多く得ている。詳細については、実施例3Dおよび3Cに提示したSTRAP-1蛋白質発現の免疫組織化学およびウエスタンブロット分析、ならびに実施例3A,3Bおよび1に提示したノーザンブロット法およびRT-PCRによるデータから得られたSTRAP-1 mRNA発現プロファイルを参照されたい。特に、免疫組織化学分析の結果は、ヒト前立腺上皮細胞(正常および癌)の表面がSTRAP-1によって均一に覆われていると思われることを示している。生化学分析の結果、その6回膜貫通型の一次構造要素によって、および免疫組織化学染色により明瞭に可視化された細胞周囲染色によって最初に推測されたSTRAP-1の細胞表面局在が確認された。
【0086】
STRAP-1は前立腺上皮の表面に高レベルで均一に発現されており、これは細胞外STRAPエピトープを標的とする免疫療法介入戦略にとっては理想的な状況である。STRAP免疫反応性組成物を全身投与すると、STRAP-1細胞外エピトープとの結合を介して、組成物の前立腺上皮細胞との広範な接触が生じると考えられる。さらに、正常ヒト組織におけるSTRAP-1蛋白質発現がほとんどないことを考慮すれば、この免疫療法組成物と標的でない臓器および組織上のSTRAP-1との結合によって引き起こされる有害な非特異的および/または非標的(non-targtet)効果を伴わない、優れた感度が得られると予想するに足る理由は十分にある。
【0087】
前立腺および前立腺癌細胞におけるSTRAP-1の発現レベルが高いことに加えて、STRAP-1は膀胱、結腸、膵臓および卵巣癌を含むさまざまな他のヒト癌でもかなり過剰発現されるように思われる。 特に、検討した前立腺癌組織および細胞株のすべて、ならびに検討した膵臓、結腸および膀胱癌細胞株の大部分では、高レベルのSTRAP-1 mRNA発現が検出された。いくつかの卵巣癌細胞株においてもSTRAP-1の高レベルの発現が認められた。いくつかの乳癌、精巣癌および子宮頸癌細胞株では低レベルの発現が認められた。ユーイング肉腫細胞株でも極めて高いレベルの発現が認められた。本出願者らは、膀胱および結腸癌では細胞表面STRAP-1蛋白質が発現されるが、正常結腸では細胞表面(または細胞内)STRAP-1蛋白質が検出されず、正常膀胱における発現は弱いことを示している。STRAP-1の細胞外ドメインと特異的に反応する抗体は、細胞の増殖または機能を阻害しうる毒素もしくは治療薬結合物もしくは裸の(naked)抗体として、これらの癌の全身治療を行うために有用と思われる。
【0088】
STRAP-2蛋白質も前立腺癌で発現されており、他の癌でも発現されている可能性がある。RT-PCRおよびノーザンブロット法によるSTRAP-2 mRNA分析では、正常組織における発現は前立腺に限定され、いくつかの前立腺、膵臓、結腸、精巣、卵巣およびその他の癌でも発現されることが示されている。このため、STRAP-2と反応する抗体は、前立腺およびその他の癌の治療に有用と思われる。同様に、本出願者らはまだ特徴決定に至っていないものの、STRAP-3およびSTRAP-4(ならびに他のSTRAPも)の発現はいくつかの癌と関連があるように思われる。したがって、STRAPファミリーのメンバーであるこれらの蛋白質と反応する抗体も治療的に有用な可能性がある。
【0089】
抗体が癌細胞上のSTRAPと結合し、細胞の破壊を媒介し、および/または細胞もしくは腫瘍の増殖を阻害するように、STRAP抗体を患者に導入することも可能である。このような抗体が治療効果を発揮する機序には、補体媒介性細胞溶解、抗体依存性細胞傷害、STRAPの生理的機能の調節、リガンド結合もしくはシグナル伝達経路の阻害、腫瘍細胞分化の調節、腫瘍血管新生因子の性質の変化、および/またはアポトーシス誘導が含まれると考えられる。毒物または治療薬を結合させたSTRAP抗体を治療的に用いて、STRAPを有する腫瘍細胞に毒物または治療薬を直接送達することも可能と思われる。
【0090】
抗STRAP抗体を用いる癌免疫療法は、結腸癌(Arlenら、1998、Crit Rev Immunol 18:133〜138)、多発性骨髄腫(Ozakiら、1997、Blood 90:3179〜3186、Tsunenariら、1997、Blood 90:2437〜24.44)、胃癌(Kasprzykら、1992、Cancer Res 52:2771〜2776)、B細胞リンパ腫(Funakoshiら、1996、J Immunther Emphasis Tumor Immunol 19:93〜101)、白血病(Zhongら、1996、Leuk Res 20:581〜589)、結腸直腸癌(Mounら、1994、Cancer Res 54:6160〜6166)、Veldersら、1995、Cancer Res 55:4398〜4403)および乳癌(Shepardら、1991、J Clin Immunol 11:117〜127)を非制限的に含む、その他の種類の癌に対して首尾良く用いられているさまざまなアプローチによって得られた教示に従うことができる。
【0091】
STRAP抗体療法は上記の癌のすべての病期に対して有用と思われるが、抗体療法は進行性または転移性癌に特に適していると思われる。化学療法をまだ受けていない患者には本発明の抗体療法を化学療法または放射線療法と併用することが好ましいと思われるが、化学療法を1回または複数受けた患者には本発明の抗体療法が適応になると考えられる。さらに、特に化学療法薬の毒性に対する忍容性がそれほど高くない患者では、抗体療法により、併用化学療法に用いる投薬量を減らすことも可能になると考えられる。
【0092】
前立腺以外の癌患者では、好ましくは腫瘍組織の免疫組織化学的評価、定量的STRAP画像化またはSTRAP過剰発現の存在および程度を確実に示しうる他の技法を用いて、STRAP過剰発現の有無および程度を評価することが望ましいと思われる。この目的のためには、腫瘍生検または外科手術標本の免疫組織化学分析が好ましいと思われる。腫瘍組織の免疫組織化学分析のための方法は当技術分野で周知である。
【0093】
前立腺およびその他の癌の治療に有用な抗STRAPモノクローナル抗体には、腫瘍に対する強力な免疫応答を誘発しうるもの、および細胞傷害を導きうるものが含まれる。この点に関して、抗STRAP mAbは補体媒介性または抗体依存性細胞傷害(ADCC)機構によって腫瘍細胞溶解を誘発しうるが、これはいずれも、免疫グロブリン分子がエフェクター細胞のFc受容体部位または補体蛋白質と相互作用するための完全なFc部分を必要とする。さらに、本発明の実践には、腫瘍増殖に対して直接的な生物効果を及ぼす抗STRAP mAbが有用である。このような直接的な細胞傷害性mAbが作用する機序として考えられるものには、細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍血管新生因子の性質の調節、およびアポトーシスの誘導が含まれる。特定の抗STRAP mAbが抗腫瘍効果をもたらす機序は、当技術分野で一般に知られたADCC、ADMMC、補体媒介性細胞溶解などを判定するために設計された任意の数のインビトロアッセイ法を用いて評価しうる。
【0094】
特定の抗STRAP mAbまたは複数の抗STRAP mAbの配合物の抗腫瘍活性は適した動物モデルを用いてインビボで評価することができる。例えば、ヒト前立腺癌移植片または継代異種移植片組織をヌードマウスまたはSCIDマウスなどの免疫不全動物に導入した異種前立腺癌モデルが前立腺癌には適しており、記載がなされている(Kleinら、1997、Nature Medicine 3:402〜408)。例えば、1998年4月23日に刊行されたPCT特許出願・国際公開公報第98/16628号、ソーヤーズ(Sawyers)らは、原発性腫瘍の発生、微小転移および後期癌の特徴である造骨性転移の形成を再現しうるヒト前立腺癌のさまざまな異種移植片モデルを記載している。腫瘍形成、腫瘍退縮または転移の抑制などを測定するアッセイ法を用いて、有効性を予想することが可能と思われる。
【0095】
マウスまたは他の非ヒトモノクローナル抗体、ヒト/マウスキメラmAbの使用により、一部の患者では中等度から高度の免疫応答が誘発されるおそれがあることは指摘しておく必要がある。最も重篤な症例では、このような応答は大量の免疫複合体の形成につながる可能性があり、最終的には腎不全を引き起こすおそれがある。したがって、本発明の治療方法の実践に用いる好ましいモノクローナル抗体は、標的である20P1F12/TMPRSS2抗原と高い親和性で特異的に結合するが、患者における抗原性は低いか全くない完全ヒトまたはヒト化抗体である。
【0096】
本発明の方法では、単一の抗STRAP mAbの投与のほか、異なるmAbの併用または「カクテル」を考慮している。このようなmAbカクテルには、それらが異なるエフェクター機構を用いるmAbを含むか、または直接的な細胞傷害性mAbと免疫エフェクターの機能に依拠するmAbとの併用である場合には、いくつか利点があると思われる。このようなmAbの併用は相乗的な治療効果をもたらすと思われる。さらに、抗STRAP mAbの投与を、種々の化学療法薬、アンドロゲン拮抗薬および免疫調節薬(例えば、IL-2、GM-CSF)を非制限的に含む他の治療薬と組み合わせることもできる。抗STRAP mAbは「裸の(naked)」または非結合形態で投与してもよく、治療薬と結合した形態でもよい。
【0097】
本発明の方法の実践に用いる抗STRAPモノクローナル抗体を、望ましい送達法のために適した担体を含む薬学的組成物へと製剤化することもできる。適した担体には、抗STRAP mAbと配合した際に抗体の抗腫瘍機能を損なわず、しかも対象の免疫系と反応しないような任意の材料が含まれる。この例には、滅菌リン酸緩衝生理食塩液、滅菌精製水などの任意の数の標準的な薬学的担体が非制限的に含まれる。
【0098】
抗STRAP抗体製剤は、抗体を腫瘍部位へと送達しうる任意の経路を介して投与することができる。有効と考えられる経路には、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内などが非制限的に含まれる。好ましい投与経路は静脈内注射である。静脈内注射のために好ましい製剤は、滅菌精製水の保存溶液、新鮮滅菌水、および/または米国薬局方(USP)の0.9%滅菌塩化ナトリウム注射液を含むポリ塩化ビニルもしくはポリエチレンバッグ中に希釈された形で抗STRAP mAbを含む。抗STRAP mAb製剤は凍結乾燥し、好ましくは真空下にて滅菌粉末として保存した上で、注射前に例えばベンジルアルコール防腐剤を含む滅菌精製水、または滅菌水で再構成することができる。
【0099】
治療には一般に、静脈内注射(IV)などの許容しうる投与経路を介して、典型的には約0.1〜約10mg/kg体重の範囲の投与量で、抗STRAP抗体製剤の反復投与が行われると考えられる。1週間当たり10〜500mg mAbの投与量であれば有効であって忍容性も十分と思われる。転移性乳癌の治療におけるハーセプチン(Herceptin)mAbの臨床的経験に基づくと、抗STRAP mAb製剤の約4mg/kg(患者体重)IVの初回投与後に毎週約2mg/kg IVを投与するのが許容しうる投薬方式と思われる。初回投与は90分間またはそれ以上にわたる注入によって行うことが好ましい。定期的な維持投与は、初回投与量に対する忍容性が十分であれば30分間またはそれ以上にわたる注入によって行う。しかし、当業者は理解すると思われるが、個々の症例における理想的な投薬方式にはさまざまな因子が影響すると思われる。このような因子には、例えば、用いるmAbまたは複数のmAbの結合親和性および半減期、患者におけるSTRAP過剰発現の程度、流血中の脱落STRAP抗原の程度、抗体の望ましい定常濃度レベル、投与頻度、ならびに本発明の方法と併用する化学療法薬の影響が含まれる。
【0100】
選択的には、最も有効な投薬方式および関連した因子を決定する一助とするために、患者の血清における流血中脱落STRAP抗原のレベルを評価する必要がある。このような評価は、治療期間を通じてモニタリングの目的に用いることもでき、他のパラメーター(前立腺癌療法における血清中PSA濃度など)の評価と組み合わせて治療成績を評価するためにも有用である。
【0101】
癌ワクチン
本発明はさらに、STRAP蛋白質またはその断片を含む前立腺癌ワクチンを提供する。抗癌療法において体液性および細胞性免疫を生じさせるためのワクチンにおける腫瘍抗原の使用は当技術分野で周知であり、ヒトPSMAおよび齧歯類PAP免疫原を用いて前立腺癌に使用されている(Hodgeら、1995、Int. J. 癌 63:231〜237、Fongら、1997、J. Immunol. 159:3113〜3117)。このような方法は、STRAP蛋白質もしくはその断片、またはSTRAP免疫原を発現して適切に提示することが可能なSTRAPをコードする核酸分子および組換えベクターを用いることにより、容易に実施しうる。
【0102】
STRAPをコードする核酸分子を送達するためには、例えば、ウイルス性遺伝子送達システムを用いることができる。本発明のこの面の実践に用いうるウイルス性遺伝子送達システムはさまざまであり、これにはワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスおよびシンドバス(sindbus)ウイルス(Restifo、1996、Curr. Opin. Immunol. 8:658〜663)が非制限的に含まれる。抗腫瘍応答を誘発させるためにSTRAP蛋白質またはその断片をコードする裸のDNAを患者の体内(例えば、筋肉内)に導入する、非ウイルス性送達システムを用いてもよい。1つの態様では、完全長ヒトSTRAP cDNAを用いうる。もう1つの態様では、特定の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープをコードするSTRAP核酸分子を用いることができる。CTLエピトープは、特定のHLA対立遺伝子と最適に結合しうるSTRAP蛋白質内部のペプチドを同定するための特定のアルゴリズム(例えば、Epimer、Brown University)を用いて決定することができる。
【0103】
さまざまなエクスビボ戦略を用いることもできる。1つのアプローチでは、患者の免疫系に対してSTRAP抗原を提示するために樹状細胞を用いる。樹状細胞はMHCクラスIおよびII、B7副刺激因子ならびにIL-12を発現するため、非常に特殊化した抗原提示細胞である。前立腺癌では、前立腺癌患者の免疫系を刺激することを目的に前立腺特異的膜抗原(PSMA)のペプチドによるパルス刺激を行った自己樹状細胞を用いる第I相臨床試験が進行中である(Tjoaら、1996、Prostate 28:65〜69、Murphyら、1996、Prostate 29:371〜380)。樹状細胞は、MHCクラスIおよびII分子を背景としてT細胞にSTRAPペプチドを提示するために用いることができる。1つの態様では、MHC分子と結合しうるSTRAPペプチドによって自己樹状細胞のパルス刺激を行う。もう1つの態様では、完全なSTRAP蛋白質で樹状細胞のパルス刺激を行う。さらにもう1つの態様では、アデノウイルス(Arthurら、1997、Cancer Gene Ther. 4:17〜25)、レトロウイルス(Hendersonら、1996、Cancer Res. 56:3763〜3770)、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、DNAトランスフェクション(Ribasら、1997、Cancer Res. 57:2865〜2869)および腫瘍由来RNAのトランスフェクション(Ashleyら、1997、J. Exp. Med. 186:1177〜1182)などの当技術分野で知られた種々の実装(implementing)ベクターを用いて、樹状細胞においてSTRAP遺伝子が過剰発現するように操作する。
【0104】
STRAP蛋白質を発現する細胞に対する免疫応答を誘発するためのワクチンとして、抗癌療法において抗イディオタイプ抗STRAP抗体を用いることも可能である。具体的には抗イディオタイプ抗体の作製は当技術分野で周知であり、STRAP蛋白質上のエピトープを模倣する抗イディオタイプ抗STRAP抗体を作製するために容易に適合化しうる(例えば、Wagnerら、1997、Hybridoma 16:33〜40、Foonら、1995、J Clin Invest 96:334〜342、Herlynら、1996、Cancer Immunol Immunother 43:65〜76を参照)。腫瘍抗原を標的とする他の抗イディオタイプ抗体を用いて現在行われているように、このような抗イディオタイプ抗体は抗イディオタイプ療法に用いることができる。
【0105】
STRAPを発現する癌細胞に対する予防的または治療的な体液性および細胞性免疫応答を生じさせるために、遺伝子免疫化法(genetic immunization method)を用いてもよい。STRAP蛋白質/免疫原をコードするDNAおよび適切な調節配列を含む作製物を対象の筋肉または皮膚に直接注入し、筋肉または皮膚の細胞が作製物を取り込んでコードされたSTRAP蛋白質/免疫原を発現するようにさせる。STRAP蛋白質免疫原の発現により、前立腺癌に対する予防的または治療的な体液性および細胞性免疫がもたらされる。当技術分野で知られたさまざまな予防的および治療的な遺伝子免疫化法を用いることができる(総説については、インターネットアドレスwww.genweb.comで発表されている情報および参考文献を参照されたい)。
【0106】
キット
本発明は、上記において記載および提案した診断的および治療的用途における使用のためのキットも提供する。このようなキットは、バイアル、管などの1つまたは複数の容器手段を密に拘束して収容するために区画化された担体手段を含み、容器手段のそれぞれは本方法に用いる別々の要素の1つを含む。例えば、容器手段の1つは、検出可能な標識がなされているか、またはそれが可能なプローブを含む。このようなプローブは、STRAP蛋白質またはSTRAP遺伝子もしくはmRNAに対してそれぞれ特異的な抗体またはポリヌクレオチドであってよい。標的核酸を検出するためにキットが核酸ハイブリダイゼーションを利用する場合には、キットは標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチドを含む容器、および/または酵素性、蛍光性もしくは放射性ヌクレオチド標識などのレポーター分子を結合させたアビジンまたはストレプトアビジンなどのビオチン結合蛋白質などのレポーター手段を含む容器も有しうる。
【実施例】
【0107】
以下のいくつかの実施例により、本発明のさまざまな面の説明および例示をさらに行うが、これらはいずれも発明の範囲を制限するためのものではない。
【0108】
実施例1:
STRAP-1遺伝子のcDNA断片の単離
材料および方法
細胞株およびヒト組織
本研究に用いたヒト癌細胞株はすべてATCCから入手した。細胞株はすべて10%ウシ胎児血清を加えたDMEM中で維持した。PrEC(初代前立腺上皮細胞)はクローンティクス(Clonetics)社から入手し、増殖因子(Clonetics)を添加したPrEBM培地中で増殖させた。
【0109】
ヒト前立腺癌異種移植片はすべて、最初はチャールズ・ソーヤーズ(Charles Sawyers)(UCLA)によって提供されたものである(Kleinら、1997)。LAPC-4 ADおよびLAPC-9AD異種移植片はレシピエントの雄性SCIDマウスにおいて小型の組織塊としてルーチン的に継代した。LAPC-4 AIおよびLAPC-9 AI異種移植片は以前の記載通りに入手し(Kleinら、1997)、虚勢雄または雌性SCIDマウスにおいて継代した。良性前立腺肥大の組織試料は患者から採取した。
【0110】
RNAおよび蛋白質分析用のヒト組織は、UCLA(Los Angeles、CA)のヒト組織資源センター(Human Tissue Resource Center)(HTRC)およびクアルテク社(QualTek, Inc.)(Santa Barbara、CA)から入手した。
【0111】
RNAの単離
全RNAを単離するために、腫瘍組織および細胞株をトリゾール(Trizol)試薬(Life Technologies、Gibco BRL)中にて10ml/ g組織または10ml/ 細胞10個の濃度で用いてホモジネート化した。ポリA RNAは、キアゲン(Qiagen)社のオリゴテックス(Oligotex)mRNAミニ(Mini)およびミィディ(Midi)キットを用いて全RNAから精製した。全RNAおよびmRNAを分光光度分析(O.D. 260/280nm)により定量化し、ゲル電気泳動によって分析した。
【0112】
オリゴヌクレオチド:
HPLCで精製した以下のオリゴヌクレオチドを用いた。

【0113】
抑制サブトラクション・ハイブリダイゼーション
良性前立腺肥大と比較してアンドロゲン依存性前立腺癌でアップレギュレートされると思われる遺伝子に対応するcDNAを同定するために、抑制サブトラクション・ハイブリダイゼーション(SSH)を用いた。
【0114】
クローンテック(CLONTECH)社のPCR-セレクトcDNAサブトラクションキットおよびプライマーとして1ngのオリゴヌクレオチドRSACDNを用いて、上記の通りに異種移植片およびBPH組織から単離した2μgのポリ(A)RNAから、LAPC-4 AD異種移植片(テスター)およびBPH組織(ドライバー)に対応する2本鎖cDNAを合成した。第1および第2ストランドの合成は、キットのユーザーマニュアル手順書(CLONTECH手順書第PT1117-1号、カタログ番号K1804-1)に記載された通りに行った。この結果得られたcDNAをRsaIにより37℃で3時間消化した。消化したcDNAをフェノール/クロロホルム(1:1)で抽出し、エタノールで沈殿させた。
【0115】
ドライバーcDNA(BPH)は、マウス遺伝子がテスターcDNA(LAPC-4 AD)から確実に差し引かれるように、RsaIで消化したBPH cDNAをマウス肝臓由来の消化cDNAと4:1の比率で配合することによって作製した。
【0116】
テスターcDNA(LAPC-4 AD)は、RsaIで消化したLAPC-4 AD cDNA 1μl(400ng)を水5μlで希釈することによって作製した。続いて、400uのT4DNAリガーゼ(CLONTECH)を用いて、希釈したcDNA(2μl、160ng)と2μlのアダプター1およびアダプター2(10μM)を、総容積を10μlとする16℃、一晩の別々の連結反応で連結した。0.2M EDTAを1μl添加し、72℃で5分間加熱することによって連結を停止させた。
【0117】
第1のハイブリダイゼーションは、アダプター1およびアダプター2と連結させたテスターcDNA 1.5μl(20ng)を含む2本のチューブのそれぞれに対して、1.5μl(600ng)のドライバーcDNAを添加することによって行った。最終容積4μlとした試料の上に鉱油を重層し、MJリサーチ(MJ Research)社のサーマルサイクラー中で98℃、1.5分間の変性処理を加えた後に68℃で8時間ハイブリダイズさせた。続いて、2つのハイブリダイゼーション物を1μlの新鮮な変性ドライバーcDNAを加えた上で混合し、68℃で一晩ハイブリダイズさせた。この第2のハイブリダイゼーション物を、20mM Hepes、pH 8.3、50mM NaCl、0.2mM EDTAからなる200μl中に希釈し、70℃で7分間加熱して-20℃で保存した。
【0118】
SSHにより得られた遺伝子断片のPCR増幅、クローニングおよびシークエンシング
SSH反応によって得た遺伝子断片を増幅するためにPCR増幅を2回行った。第1のPCR反応では、希釈した最終的なハイブリダイゼーション混合物1μlを、1μlのPCRプライマー1(10μM)、0.5μlのdNTP混合物(10μM)、2.5μlの10×反応バッファー(CLONTECH)および0.5μlの50×アドバンテージcDNAポリメラーゼ混合物(Advantage cDNA polymerase Mix)(CLONTECH)に添加し、最終容積25μlとした。PCR 1は以下の条件を用いて行った:75℃ 5分間、94℃ 25秒間の後、94℃ 10秒間、66℃ 30秒間、72℃ 1.5分間を27サイクル。各実験に関して第1のPCR反応を別々に5回ずつ行った。産物は集積し、水で1:10に希釈した。第2のPCR反応では、集積および希釈した第1のPCR反応物1μlに対して、PCRプライマー1の代わりにプライマーNP1およびNP2(10μM)を用いた点を除いてPCR 1に用いたものと同じ反応混合物を添加した。PCR 2は、94℃ 10秒間、68℃ 30秒間、72℃ 1.5分間を10〜12サイクル用いて行った。2%アガロースゲル電気泳動を用いてPCR産物を分析した。
【0119】
T/Aベクタークローニングキット(Invitrogen)を用いてPCR産物をpCR2.1中に挿入した。形質転換した大腸菌に対して青/白およびアンピシリン選択を行った。白色のコロニーを摘出し、96穴プレート中に配列した上で、液体培養下で一晩増殖させた。挿入物を同定するために、細菌培養液1mlに対して、PCR1の条件およびプライマーとしてNP1およびNP2を用いるPCR増幅を行った。PCR産物は2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
【0120】
細菌クローンは96ウェル形式で20%グリセロール中にて保存した。プラスミドDNAを調製してシークエンシングを行い、ジェンバンク(GenBank)、dBestおよびNCI-CGAPデータベースの核酸ホモロジー検索を行った。
【0121】
RT-PCR発現解析
第1ストランドのcDNAは、ギブコ社(Gibco-BRL)のスーパースクリプト・プレ増幅システム(Superscript Preamplification system)を用いるオリゴ(dT) 12-18プライミングにより、1μgのmRNAから作製した。製造者の手順を用いたが、これは逆転写酵素とともに42℃で50分間インキュベートした後にRNAse H処理を37℃で20分間行うことを含む。反応を終えた後、水を加えて容積を200μlに増やしてから標準化を行った。16種の異なる正常ヒト組織に由来する第1ストランドのcDNAはクローンテック(Clontech)社から入手した。
【0122】
複数組織に由来する第1ストランドのcDNAの標準化は、β-アクチンを増幅するためのプライマー5'atatcgccgcgctcgtcgtcgacaa3'(配列番号:32)および5'agccacacgcagctcattgtagaagg 3'(配列番号:33)を用いて行った。第1ストランドのcDNA(5μl)は、0.4μMのプライマー、0.2μMの各dNTP、1×PCRバッファー(Clontech、10mM Tris-HCL、1.5mM MgCI2、50mM KCI、pH8.3)および1×クレンタック(Klentaq)DNAポリメラーゼ(Clontech)を含む総容積50μl中で増幅した。18、20および22サイクルの時点でPCR反応物5μlを採取し、アガロースゲル電気泳動に用いた。PCRは、MJリサーチ(MJ Research)社のサーマルサイクラーを以下の条件で用いて行った:最初に94℃ 15秒間の変性処理を行った後、94℃ 15秒間、65℃ 2分間、72℃ 5秒間を18、20および22サイクル。72℃での最後の伸長処理は2分間行った。アガロースゲル電気泳動を行った後、複数組織で得られた283bpのβ-アクチンバンドのバンド強度を肉眼で比較した。22サイクルのPCRの後のすべての組織におけるβ-アクチンバンド強度が等しくなるように、第1ストランドのcDNAに関する希釈係数を算出した。22サイクルのPCR後のすべての組織におけるバンド強度が等しくなるまでには標準化を3回行う必要があった。
【0123】
8P1D4遺伝子の発現レベルを判定するために、標準化した第1ストランドcDNA 5μlを、(MIT、詳細についてはwww.genome.wi.mit.eduを参照)の助けを借りて設計した以下のプライマー対を用い、25、30および35回の増幅サイクルを用いるPCRによって分析した:

【0124】
半定量的発現解析は、薄いバンド強度が得られるサイクル数でPCR産物を比較することによって行った。
【0125】
結果
前記の材料および方法の項に記載した通りにSSH実験をいくつか行い、候補となる遺伝子断片クローンを数多く単離した。対応する遺伝子の同一性に関する情報を得るため、および特定遺伝子の発現の差を分析するための決断を導く一助とするために、すべての候補クローンのシークエンシングを行い、主要な公的遺伝子およびESTデータベース中の全配列に対してホモロジー解析を行った。一般に、検索したいずれのデータベース中の既知の配列とも相同性がなく、このため新規遺伝子と考えられる遺伝子断片、ならびにこれまでにシークエンシングがなされた発現配列タグ(EST)との相同性が認められた遺伝子断片に対して、RT-PCRおよび/またはノーザン分析による差分的発現解析を行った。
【0126】
8P1D4と命名したcDNAクローンの1つは436bp長であり、NCI-CGAP腫瘍遺伝子データベース中のEST配列と相同性が認められた。続いてこのcDNAを用いて、8P1D4遺伝子をコードする完全長cDNAを単離し、新たにSTRAP-1と命名した(以下の実施例2)。8P1D4 cDNAのヌクレオチド配列は、図1に示すSTRAP-1 cDNA配列ヌクレオチド残基150から585までに対応する。28P3E1と命名した561bp長のもう1つのクローンは、NCI-CGAP腫瘍遺伝子データベース中または他のデータベース中の多数のEST配列と相同性を示した。28P3E1配列の一部(356bp)は、ヒト胎児組織に由来するESTと同一であった。完全長STRAP-1 cDNAを入手してシークエンシングを行ったところ、このクローンがSTRAP-1(より具体的には、図1Aに示すSTRAP-1ヌクレオチド配列の残基622から3'末端まで)とも対応することが明らかになった。
【0127】
8P1D4 cDNAクローンに由来するプライマーを用いるRT-PCRによる示差的発現解析により、8P1D4(STRAP-1)遺伝子が正常前立腺ならびにLAPC-4およびLAPC-9異種移植片(図2、図面A)でほぼ等しいレベルで発現されることが示された。16種の正常組織由来の第1ストランドcDNAのRT-PCR発現解析をさらに行った結果、前立腺における8P1D4の発現レベルが最も高いことが示された。いくつかの他の正常組織(すなわち、結腸、卵巣、小腸、脾臓および精巣)における発現レベルはかなり低く、脳、膵臓、結腸および小腸(図2、図面BおよびC)では30回の増幅サイクルの場合にのみ検出可能であった。
【0128】
実施例2:
完全長STRAP-1をコードするcDNAの単離
8P1D4/STRAP-1遺伝子をコードする別のcDNAを単離するために、436bpの8P1D4遺伝子断片(実施例1)を用いた。簡潔に述べると、436bpの8P1D4 cDNAから作製した標識プローブにより、正常ヒト前立腺cDNAライブラリー(Clontech)をスクリーニングした。陽性クローンの1つであるクローン10は1195bp長であり、既知のヒト遺伝子または蛋白質のいずれとも明らかな相同性がないヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列を有する339アミノ酸の蛋白質をコードする(国際出願・国際公開公報第98/53071号に最近記載されたラット腎損傷蛋白質との相同性は認められる)。コードされる蛋白質は膜貫通モチーフと予想されるものを少なくとも6つ含んでおり、これは細胞表面に配置することを意味する(図1A参照、膜貫通モチーフと予想される部分には下線を施している)。これらの構造的特徴から、「前立腺の蛇行性膜貫通抗原(Serpentine TRansmembrane Antigens of the Prostate)」の頭文字である「STRAP」という命名に至った。後に別のSTRAP蛋白質が同定されたため、8P1D4遺伝子産物を「STRAP-1」と新たに命名した。STRAP-1 cDNAおよびコードされるアミノ酸配列は図1Aに示しており、これはそれぞれ配列番号:1および2に対応する。STRAP-1 cDNAクローン10は、1998年8月26日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(「ATCC」)(Mannassas、VA)にプラスミド8P1D4クローン10.1としての形でATCC受入番号98849として登録されている。STRAP-1 cDNAクローンは、EcoRI/XbaI二重消化(5'末端にEcoRI、3'末端にXbal)を用いてそれから切り出すことができる。
【0129】
実施例3:
STRAP-1遺伝子および蛋白質発現解析
STRAP-1の生物的特徴を明らかにする手始めとして、種々のヒト組織標本におけるSTRAP-1 mRNAおよびSTRAP-1蛋白質の発現に関する詳細な評価を行った。この評価には、多数の正常ヒト組織、ヒト前立腺癌異種移植片および細胞株ならびに他のさまざまなヒト癌細胞株におけるSTRAP-1発現に関するノーザンブロット法、ウエスタンブロット法および免疫組織化学分析を含めた。
【0130】
実施例3A:正常ヒト組織におけるSTRAP-1 mRNA発現に関するノーザンブロット分析
正常ヒト組織におけるSTRAP-1 mRNAの発現に関する分析はまず、標識したSTRAP-1クローン10をプローブとして用いる、クローンテック(Clontech)社(Palo Alto、California)から入手した合計16種の異なる正常ヒト組織を含む2種類の複数組織ブロットに対するノーザンブロット法によって行った。RNA試料はβ-アクチンプローブを用いて定量的に標準化した。その結果を図3Aに示す。正常前立腺における発現レベルが最も高く、結腸および肝臓で検出された発現レベルはこれより約5〜10倍低かった。これらのノーザンブロットでは約1.4kbおよび4.0kbの2つの転写物が認められたが、このうち前者はSTRAP-1のオープンリーディングフレーム全体をコードする完全長STRAP-1クローン10 cDNAに対応する。長い方の転写物は正常前立腺ライブラリーから3627bp cDNAとして別個にクローニングされており、その配列は2399bpのイントロンを含む(図4)。
【0131】
37種の正常ヒト組織(Clontech、Palo Alto、CA;Human Master Blot(商標))のRNAドットブロットマトリックスの分析にSTRAP-1クローン10プローブを用いることにより、この最初の分析を進展させた。その結果を図3Bに示すが、前立腺のみで強いSTRAP-1発現が認められる。肝臓、肺、気管および胎児肝組織で認められたSTRAP-1 RNAの発現レベルは非常に低く、おそらく前立腺と比べて5分の1と思われる。これ以外の組織では発現が全く検出されなかった。これらの分析に基づけば、正常組織におけるSTRAP-1の有意な発現は前立腺特異的と思われる。
【0132】
実施例3B:前立腺癌異種移植片および細胞株におけるSTRAP-1 mRNA発現に関するノーザンブロット分析
ヒト癌組織および細胞株におけるSTRAP-1の発現を分析するために、ヒト前立腺癌異種移植片ならびに一連の広範な前立腺および非前立腺癌細胞株に由来するRNAを、STRAP-1 cDNAクローン10をプローブとして用いるノーザンブロット法によって分析した。RNA試料はすべて、臭化エチジウム染色およびそれに続く標識β-アクチンプローブによる分析によって定量的に標準化した。
【0133】
図5に提示した結果は、LAPC異種移植片のすべておよび前立腺癌細胞株のすべてで高レベルのSTRAP-1発現が認められることを示している。LAPC-9異種移植片におけるSTRAP-1発現はLAPC-4異種移植片と比べて高度であり、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性亜株の間には有意差は認められなかった(図5A)。LAPC-4異種移植片における発現は、正常前立腺における発現と同程度であった。前立腺の基底細胞部分であるPrEC細胞(Clonetics)で検出された発現レベルはこれよりも低かった。前立腺癌細胞株の分析では、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株であるLNCaPにおける発現レベルが最も高かった。アンドロゲン非依存性細胞株であるPC-3およびDU145でも著明な発現が検出された。前立腺癌骨転移モデルとしてマウス脛骨内で増殖させたLAPC-4およびLAPC-9腫瘍でも高レベルのSTRAP発現が検出された(図5B)。
【0134】
重要なことに、分析した非前立腺ヒト癌細胞株の多くでも極めて強いSTRAP-1発現が検出された(図5A)。ユーイング肉腫(EWS)に由来する細胞株であるRD-ES細胞では特に高いレベルの発現が検出された。また、いくつかの結腸癌細胞株(例えば、CaCo-2、LoVo、T84およびColo-205)、膀胱癌細胞株(例えば、SCABER、UMUC-3、TCCSUPおよび5637)、卵巣癌細胞株(例えば、OV-1063およびSW 626)および膵臓癌細胞株(例えば、HPAC、Capan-1、PANC-1およびBxPC-3)においても極めて高いレベルの発現が認められた。これらの結果を対応する正常組織では強い発現が認められないこと(図3)と総合すれば、STRAP-1はこれらの種類(ならびに他の種類)のヒト癌で一般にアップレギュレートされると思われることが示される。
【0135】
実施例3C:前立腺およびその他の癌におけるSTRAP-1蛋白質発現に関するウエスタンブロット分析
図1Aに示すSTRAP-1アミノ酸配列のアミノ酸残基 14から28までに対応する15量体ペプチド(WKMKPRRNLEEDDYL)(配列番号:36)を合成し、以下の通りに、この蛋白質のアミノ末端に対するヒツジポリクローナル抗体(抗STRAP-1)を作製するためのヒツジの免疫化に用いた。このペプチドをKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)と結合させた。ヒツジにまず完全フロイントアジュバント中に含めた400μgのペプチドによる免疫処置を行った。続いてこのヒツジに、不完全フロイントアジュバント中に含めた200μgのペプチドによる追加免疫処置を2週毎に行った。affi-gel 10(Bio Rad)と結合させたSTRAPペプチドを用いて、ヒツジ血清から抗STRAP抗体をアフィニティー精製した。精製した抗体は、0.1%アジ化ナトリウムを加えたリン酸緩衝生理食塩水中で保存する。
【0136】
抗体の特異性を検討するために、STRAP-1のcDNAをレトロウイルス発現ベクター中にクローニングした(pSRαtkneo、Mullerら、1991、MCB 11:1785)。STRAP-1をコードするレトロウイルスにNIH 3T3細胞を感染させ、G418中で2週間選別を行った。感染および非感染NIH 3T3細胞の蛋白質抽出物に対するウエスタンブロット分析では、見かけの分子量36kDの蛋白質の発現が感染細胞のみで認められた(図6、「3T3STRAP」および「3T3」と表記したレーン)。
【0137】
抗STRAP-1ポリクローナル抗体を用いて、さまざまな前立腺癌異種移植片組織、前立腺癌細胞株およびその他の非前立腺癌細胞株から調製した細胞可溶化物のウエスタンブロットのプローブ検索を行った。蛋白質試料(各20μg)は、抗Grb-2抗体を用いたブロットのプローブ検索によって定量的に標準化した。
【0138】
その結果を図6に示す。STRAP-1蛋白質は、LAPC前立腺癌異種移植片のすべて、前立腺癌細胞株のすべて、初代前立腺癌標本およびそれとマッチさせた正常前立腺対照において検出された。最も高度なSTRAP-1蛋白質の発現が検出されたのはLAPC-9異種移植片およびLNCaP細胞であり、これは直前に述べたノーザンブロット分析の結果と一致している。膀胱癌細胞株UM-UC-3でも高レベルの発現が認められた。他の癌細胞株でも発現が検出された(図6)。
【0139】
実施例3D:前立腺腫瘍生検および手術標本におけるSTRAP-1蛋白質発現に関する免疫組織化学分析
臨床材料におけるSTRAP-1蛋白質発現の程度を判定する目的で、さまざまな前立腺癌生検および外科標本から免疫組織化学分析のための組織切片を調製した。組織を10%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋した上で、標準的な手順に従って切片を作製した。ホルマリン固定し、パラフィン包埋したLNCaP細胞の切片を陽性対照として用いた。STRAP-1のN末端エピトープを標的とする抗STRAP-1ポリクローナル抗体(直前に述べた通り)で切片を染色した。ポリクローナル抗体(ペプチド1)の作製に用いたSTRAP-1 N末端ペプチド免疫原またはSTRAP-1蛋白質の異なる領域に由来する非特異的ペプチド(ペプチド2;YQQVQQNKEDAWIEH(配列番号:37))の過剰量の存在下でLNCaP切片を染色した。
【0140】
その結果を図8に示す。LNCaP細胞のすべての細胞が均一に強い細胞周囲染色を呈した(図8b)。過剰量のSTRAP N末端ペプチド(ペプチド1)は抗体染色の競合阻害能を有したが(図Ba)、ペプチド2は無効であった(図8b)。同様に、LAPC-9(図8f)およびLAPC-4前立腺癌異種移植片でも均一に強い細胞周囲染色が認められた(非提示データ)。これらの結果は明瞭であり、染色がSTRAP特異的であることを示唆する。さらに、これらの結果ではSTRAPの形質膜への局在が認められており、これは以下の実施例4で示された生化学所見の裏付けとなる。
【0141】
種々の臨床標本で得られた結果を図8c(正常前立腺組織)、図8d(グレード3の前立腺癌)および図8e(グレード4の前立腺癌)に示すが、これらは表1に示す結果の概要にも含めた。検討したすべての前立腺癌試料の腺上皮ならびに正常前立腺または良性疾患に由来するすべての試料で軽度から高度の染色が認められた。シグナルは上皮細胞の細胞膜、特に細胞間結合部で最も強いように思われ(図8c、dおよびe)、同じく過剰量のSTRAP N末端ペプチド1によって抑制された(非提示データ)。正常前立腺では基底細胞にもある程度の染色が認められ (図8c)、萎縮腺を検討した場合にはさらに明らかであった(非提示データ)。低いグレード(図8d)、高いグレード(図Be)および転移性前立腺癌(LAPC-9により表す、図8f) がすべて濃染されたことからみて、STRAP-1は前立腺癌のすべての病期で発現されるように思われる。
【0142】
一連の多様な正常非前立腺組織の免疫組織化学染色では、27種のこれらの正常組織のうち24種でSTRAP-1の発現は検出不能であった(表1)。何らかの程度の抗STRAP-1染色が認められたのは3種類の組織標本のみであった。具体的には、正常膀胱は移行上皮において低レベルの細胞表面染色を呈した(図8g)。膵臓および下垂体は低レベルの細胞質染色を呈した(表1)。ノーザンブロット法では膵臓におけるSTRAP-1発現はほとんどまたは全く認められなかったため(図3)、観察された細胞質染色が特異的なものか、または抗体の非特異的結合によるものかは不明である。正常結腸はノーザンブロット法では膵臓よりも高いmRNAレベルを示した(図3)が、抗STRAP抗体による染色は検出不能であった(図8h)。これらの結果は、正常組織におけるSTRAP-1の細胞表面発現は前立腺および膀胱に限定されると思われることを示している。
【0143】
(表1) 抗STRAP-1ポリクローナル抗体によるヒト組織の免疫組織化学染色

*1つの組織について複数の試料を分析した場合には、染色分類/分析した総数に対応する試料の数を括弧内に示している。
**前立腺癌の等級は、グリーソン(Gleason)分類の等級3から5までの範囲である。
【0144】
実施例4:
TRAP-1蛋白質の生化学的特徴分析
STRAP-1蛋白質の特徴をまず分析するために、カルボキシ末端に6Hisを付加したものをコードするpcDNA 3.1Myc-Hisプラスミド(Invitrogen)中にcDNAクローン10(配列番号:1)をクローニングし、293T細胞へのトランスフェクションを行った後に抗Hisモノクローナル抗体(His-probe、Santa Cruz)ならびに上記の抗STRAP-1ポリクローナル抗体を用いるフローサイトメトリーによって分析した。細胞の染色は無傷細胞ならびに透過処理細胞に対して行った。その結果、いずれの抗体でも透過処理細胞のみが染色され、このことからSTRAP-1蛋白質の両端は細胞内に位置することが示唆された。このため、STRAP-1蛋白質の1つまたは複数の末端は、形質膜ではなく細胞内オルガネラに付随することが可能である。
【0145】
STRAP-1蛋白質が細胞表面で発現されるか否かを明らかにするために、STRAP-1をトランスフェクトした無傷293T細胞を、生細胞内には入らないビオチン化試薬で標識した。続いて抗Hisおよび抗STRAP抗体を用いて、STRAP-1を細胞抽出物から免疫沈降させた。293T細胞で高レベルに発現される細胞内蛋白質であるSV40ラージT抗原および内因性細胞表面トランスフェリン受容体を、それぞれ陰性および陽性対照として免疫沈降させた。免疫沈降後に蛋白質を膜に移行させ、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンによって可視化した。この分析の結果を図7に示す。ビオチンで標識されたのはトランスフェリン受容体(陽性対照)およびSTRAP-1のみであり、SV40ラージT抗原(陰性対照)の標識は検出されなかった(図7A)。この手法では細胞表面蛋白質のみが標識されたことからみて、STRAP-1が細胞表面蛋白質であることはこれらの結果から明らかである。フローサイトメトリー分析によって得られた結果と総合すれば、STRAP-1が細胞内にアミノおよびカルボキシ末端を有する細胞表面蛋白質であることは明らかである。
【0146】
さらに、上記の結果をSTRAP-1の二次構造の予想と総合することにより、STRAP-1が6つの膜貫通ドメインと思われるもの、3つの細胞外ループ、2つの細胞内ループおよび2つの細胞内末端からなる分子構造を有するIIIa膜蛋白質であることが示される。細胞膜との関連でみたSTRAP-1蛋白質の構造の模式図を図1Bに示す。
【0147】
さらに、ビオチン化試験により、前立腺、膀胱および結腸癌細胞をSTRAP-1の細胞表面発現に関して直接分析した。簡潔に述べると、ビオチン化された細胞表面蛋白質をストレプトアビジン-ゲルでアフィニティー精製し、上記の抗STRAP-1ポリクローナル抗体によるプローブ検索を行った。ストレプトアビジンで精製した蛋白質のウエスタンブロット法の結果、検討したすべての前立腺(LNCaP、PC-3、DU145)、膀胱(UM-UC-3、TCCSUP)および結腸癌(LoVo、Cob)細胞、ならびにSTRAP-1をコードするレトロウイルスを感染させたNIH 3T3細胞では内因性STRAP-1の細胞表面ビオチン化が明らかに認められるが、陰性対照として用いた非発現性NIH 3T3細胞では認められない(図7B)。さらに別の陰性対照である、非ビオチン化STRAP発現細胞からのストレプトアビジン沈降物でもSTRAP-1蛋白質は検出されなかった(図7B)。
【0148】
実施例5:
STRAP-2およびヒトSTRAPファミリーのその他のメンバーの同定および構造分析
STRAP-1には既知のいずれのヒト遺伝子とも相同性がない。STRAP-1と相同な別の遺伝子を同定するための試みとして、公的EST(発現配列タグ)データベース(dbest)にあるファミリーのメンバーを同定するために、STRAP-1の蛋白質配列を電子プローブとして用いた。NCBI(米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information))の「tblastn」機能を用いて、STRAP-1蛋白質配列によるdbestデータベースの照会を行った。以下にさらに説明するように、この解析によって別のSTRAP-1相同体またはSTRAPファミリーのメンバーと推定されるものが判明した。
【0149】
さらに、本出願者らのクローニング実験からも、STRAP-1と関連したSSH cDNA断片であるクローン98P4B6が同定された。このクローンは、正常前立腺cDNAをテスターとして用い、LAPC-4 AD cDNAをドライバーとして用いるSSHクローニングによって単離された。この後に98P4B6クローンの比較的長い部分配列が正常前立腺ライブラリーから同定された。このクローンはSTRAP-1の一次構造と密接な相同性を有する173アミノ酸のORFをコードしていたため、STRAP-2と命名した。
【0150】
STRAP-2の部分ヌクレオチドおよびコードされるORFのアミノ酸配列を図9に示す。STRAP-1および部分的なSTRAP-2一次構造のアミノ酸を整列化したものを図11Aに示す。STRAP-1および-2の171アミノ酸残基の重複部にわたる一致率は61%である(図11A)。相同ではあるものの、正常および癌性の組織および細胞におけるSTRAP-1および-2の発現パターンは著しく異なり、ヒト第7番染色体の対側の腕上という明瞭に異なる位置にマッピングされる(以下の実施例6および7参照)。
【0151】
STRAP-1蛋白質配列による電子プローブ検索によって同定された2つのESTであるAI139607およびR80991は、STRAP-1およびSTRAP-2配列と密接な相同性を有するORFをコードし、このためさらに別の2種類のSTRAPであると思われる。それらのヌクレオチド配列を図10に示し、それらにコードされるORFのSTRAP-1様アミノ酸配列を図11Bに示す。これらのESTによってコードされるORFは独特なものであるが、STRAP-1およびSTRAP-2の両方と、特に保存的な膜貫通ドメインにおいて極めて明瞭な構造の類似が認められる。したがって、これらのESTはSTRAPファミリーの異なるメンバーに対応すると思われるため、STRAP-3(AI139607に対応する)およびSTRAP-4(R80991に対応する)と命名した。
【0152】
STRAP-1の全蛋白質配列とSTRAP-2、STRAP-3およびSTRAP-4の予想される部分アミノ酸配列とのアミノ酸整列化物を図11Bに示す。これらのうち3つに関しては部分配列情報が得られているに過ぎないとはいえ、この整列化物は、4種のSTRAPファミリー蛋白質すべての間に、特に膜貫通ドメインと予想される部分において密接な構造の類似が認められることを示している。STRAP-3およびSTRAP-4蛋白質は、STRAP-1またはお互い同士よりもSTRAP-2とよく類似するように思われる。具体的には、STRAP-3のSTRAP-2との一致率は50%で相同性は69%であり、これに対してSTRAP-1との一致率は37%で相同性は63%である。STRAP-4のSTRAP-2との一致率は56%で相同性は87%であるのに対して、STRAP-1との一致率は42%で相同性は65%である。STRAP-3およびSTRAP-4の一致率は互いに38%であって相同性は57%である。これらの数字は不完全な配列情報に基づくものである。しかし、これらの数字は膜貫通ドメインの少なくとも一部が保存されていることを示唆しており、このことは機能的特徴は仮に異なるにせよ、構造的特徴は共通である可能性を示唆する。
【0153】
実施例6:
STRAP-2およびヒトSTRAPファミリーのその他のメンバーに関する発現解析
実施例6A:正常ヒト組織におけるSTRAPファミリーのメンバーの組織特異的発現
正常組織におけるSTRAPファミリーのメンバーの発現解析をRT-PCRによって行った。STRAPファミリーのメンバーはすべて組織限定的な発現パターンを呈するように思われた。胎盤および前立腺では25回の増幅サイクル後にAI139607の発現が検出された(図12)。30サイクル後には他の組織でもAI139607の発現が検出された。R80991の発現は正常肝臓で最も高度であったが、30回の増幅サイクルの後には他の組織でも発現が検出された(図13)。LAPC前立腺癌異種移植片ではRT-PCRによってR80991の発現もAI139607の発現も検出されなかった。
【0154】
STRAP-2のRT-PCR分析では、LAPC前立腺癌異種移植片のすべておよび正常前立腺で発現が認められる(図14、図面A)。8種の正常ヒト組織の分析では、25回の増幅サイクル後に前立腺特異的な発現が認められる(図14、図面B)。他の組織では30回の増幅サイクル後にのみ低レベルの発現が検出された。STRAP-2に関するノーザンブロット法では、前立腺のみで(およびLAPO異種移植片で極めて低いレベルで)発現される 2つの転写物(サイズが約3および8kb)が認められ、分析した他の15種の正常ヒト組織ではいずれも発現は検出されなかった(図15、図面C)。したがって、正常ヒト組織におけるSTRAP-2の発現は極めて前立腺特異的であるように思われる。
【0155】
実施例6B:種々の癌細胞株におけるSTRAP-2の発現
上記のRT-PCRの結果は、STRAPファミリーの異なるメンバーは異なる組織発現パターンを呈することを示唆する。興味深いことに、極めて前立腺特異的であると思われるSTRAP-2の発現レベルはLAPC異種移植片では低いように思われる。これは正常および悪性前立腺組織の両方で高発現されるSTRAP-1とは対照的である。
【0156】
STRAP-2の前立腺癌発現プロファイル(STRAP-1と対比して)に関して推測されるこの差異の特徴をさらに調べるために、STRAP-2特異的プローブ(標識したcDNAクローン98P4B6)を用いて、LAPC異種移植片ならびにいくつかの前立腺および他の癌細胞株に由来するRNAに対してノーザンブロット法を行った。その結果を図16に示すが、これは以下の通りに要約しうる。STRAP-2は、正常前立腺ならびにいくつかの前立腺癌異種移植片および細胞株で高発現される。より具体的には、LAPC-9AD異種移植片およびLNCaP細胞では極めて強い発現が認められた。他の前立腺癌異種移植片および細胞株で著しく弱い発現が認められるか、または発現が全く認められなかった。ユーイング肉腫細胞株RD-ESでも極めて強い発現が認められた。膀胱、結腸、膵臓および卵巣腫瘍に由来する癌細胞株で高発現がみられたSTRAP-1とは異なり、これらの同じ細胞株におけるSTRAP-2の発現は低いか全く認められなかった(図5との比較)。興味深いことに、前立腺の正常基底細胞区画を代表するPrEC細胞でもSTRAP-2の発現は検出されなかった。これらの結果は、STRAP-1およびSTRAP-2の発現が異なる調節を受けることを示唆する。STRAP-1は癌において一般にアップレギュレートされる遺伝子と思われるが、STRAP-2は正常前立腺および前立腺に対してより限定的な遺伝子であると思われる。
【0157】
実施例7:
STRAP遺伝子の染色体上の位置
ジーンブリッジ4(GeneBridge 4)ヒト/ハムスター放射ハイブリッド(RH)パネル(Walterら、1994、Nat. Genetics 7:22)(Research Genetics、Huntsville Al)を用いてSTRAP-1の染色体上の位置を決定し、STRAP-2およびSTRAP相同体はスタンフォード(Stanford)G3放射ハイブリッドパネル(Stewartら、1997、Genome Res. 7:422)を用いてマッピングした。
【0158】
STRAP-1に関しては以下のPCRプライマーを用いた:

【0159】
この結果得られた、放射ハイブリッドパネルの93種のDNAに対するSTRAP-1マッピングベクター(210000020110101000100000010111010122100011100111011010100010001000101001021000001111001010000)およびインターネットアドレス<http://www-genome.wi.mit.edu/cgi-bin/contig/rhmapper.pl>で入手可能なマッピングプログラムにより、STRAP-1遺伝子の位置はD75531のテロメア側にある染色体7p22.3にマッピングされた。
【0160】
98P4B6/STRAP-2に関しては以下のPCRプライマーを用いた:

【0161】
この結果得られたベクター(00000100100000000000000000000000100100000000001000100000000000001000010101010010011)およびインターネットアドレス<http://www-shgc.stanford.edu/RH/rhserverformnew.html>で入手可能なマッピングプログラムにより、98P4B6(STRAP-2)遺伝子は染色体7q21にマッピングされる。
【0162】
AI139607に関しては以下のPCRプライマーを用いた:

【0163】
この結果得られたベクター(00000000100000000000000000001000100000200000001000100000001000000100010001010000010)およびインターネットアドレス<http://www-shgc.stanford.edu/RH/rhserverformnew.html>で入手可能なマッピングプログラムにより、AI139607は染色体7q21にマッピングされる。
【0164】
R80991に関しては以下のPCRプライマーを用いた:

【0165】
この結果得られたベクター(00000000000200001020000000010000000000000000000010000000001000011100000001001000001)およびインターネットアドレス<http://www-shgc.stanford.edu/RH/rhserverformnew.html>で入手可能なマッピングプログラムにより、R80991はD252591付近の染色体2q14-q21にマッピングされる。
【0166】
以上をまとめると、上記の結果は、図17に模式的に示した通り、ヒトSTRAPファミリーのメンバーと推定される3つのものが第7番染色体に位置することを示している。具体的には、STRAP-1遺伝子は第7番染色体短腕の遠位のテロメア領域である7p22.3に位置するが、STRAP-2およびAI139607は第7番染色体の長腕である7q21に位置する(図17)。R80991は染色体2q14-q21にマッピングされている。
【0167】
実施例8:
STRAP-1のイントロン-エクソン境界の同定
STRAP-1配列を含むBACクローンに関してジェンバンク(GenBank)を検索することによってSTRAP-1に関するゲノムクローンを同定したところ、受入番号AC004969(PAC DJ1121E10)およびAC005053(BAC RG041D11)が同定された。STRAPに関するPACおよびBACクローンに由来する配列を用いて、イントロン-エクソン境界を規定した(図18)。STRAP遺伝子のコード領域中に合計4つのエクソンおよび3つのイントロンが同定された。STRAP-1遺伝子の正確なエクソン-イントロン構造に関する知見はイントロン配列中にあるプライマーの設計に用いることができ、これは続いてエクソンのゲノム増幅に用いうる。このような増幅により、癌と関連する多型を検索するための一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析が可能となる。変異型または多型エクソンのシークエンシングを行い、野生型STRAPと比較してもよい。このような解析は、悪性度の高い前立腺癌、ならびに他の種類の癌、特に結腸癌、膀胱癌、膵癌、卵巣癌、子宮頸癌および精巣癌に対する感受性の高い患者を特定するために有用と思われる。
【0168】
サザンブロット分析では、STRAP-1遺伝子がマウスを含むいくつかの種に存在することが示されている(図19)。このため、STRAP-1に対するヒトcDNAを用いて、マウスBACライブラリー(マウスES 129-VリリースI、Genome Systems、FRAC-4431)をスクリーニングした (クローン10、実施例2)。12P11という陽性クローンが1つ同定され、サザンブロット法によって確認された(図20)。ヒトSTRAPに関するイントロン-エクソン境界の情報は、マウスSTRAP-1コード配列の同定に用いうる。
【0169】
マウスSTRAP-1ゲノムクローンは、発生および腫瘍形成期間におけるSTRAP-1の生物的役割を検討するために用いることができる。具体的には、当技術分野で一般に知られた方法を用いてマウス遺伝子の標的破壊を行うために、マウスゲノムSTRAP-1クローンを遺伝子ノックアウト(K/O)ベクター中に挿入するとよい。さらに、代謝過程および上皮細胞機能におけるSTRAPの役割を解明することもできる。STRAPが悪性度の高いまたは低い前立腺癌および転移性前立腺癌の発生および進行に影響を及ぼすか否かを明らかにするために、この種のK/OマウスをTRAMPモデル(Greenbergら、1995、PNAS 92:3439)などの他の前立腺癌マウスモデルと交配してもよい。
【0170】
本出願の全体を通じて、種々の刊行物を括弧内で参照している。これらの刊行物の開示は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0171】
本発明は、本発明の個々の面を単に例示することを意図した本明細書で開示する態様によって制限されるものではなく、機能的に同等なものはいずれも本発明の範囲に含まれる。本明細書で述べるものに加えて、上記の説明および教示から本発明のモデルおよび方法に対するさまざまな改変が当業者には明らかであると思われ、これらは同様に本発明の範囲に含まれる。このような改変または他の態様は、本発明の真の範囲および精神を逸脱することなく実践可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1Aに示すアミノ酸配列(配列番号:XX)を有する単離されたSTRAP-1蛋白質。
【請求項2】
請求項1記載の蛋白質の少なくとも15個の連続したアミノ酸からなる単離ポリペプチド。
【請求項3】
図1Aに示すアミノ酸配列(配列番号:XX)と全長にわたって少なくとも90%一致しているアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項4】
(a)TがUであってもよい、図1Aに示す配列(配列番号:XX)を有するポリヌクレオチド、(b)アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に受入番号98849として登録されたプラスミド8P1D4クローン10.1中に含まれるcDNAによって配列がコードされるSTRAP-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および(c)請求項1記載のSTRAP-1蛋白質をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4記載のポリヌクレオチドに対して完全に相補的である、単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項6記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
ポリペプチドの産生のために十分な条件下で請求項7記載の宿主細胞を培養すること、および培養物からSTRAP-1蛋白質を回収することを含む、STRAP-1蛋白質を生産するための方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法によって生産されるSTRAP-1ポリペプチド。
【請求項10】
図9に示すアミノ酸配列(配列番号:XX)を含む単離STRAP-2蛋白質。
【請求項11】
請求項10記載の蛋白質の少なくとも15個の連続したアミノ酸からなる単離ポリペプチド。
【請求項12】
(a)TがUであってもよい、図9に示す配列(配列番号:XX)を有するポリヌクレオチド、および(b)請求項10記載のSTRAP-2蛋白質をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される、単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12記載のポリヌクレオチドに対して完全に相補的である単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
(a)請求項1記載のSTRAP-1をコードする発現プラスミドによるトランスフェクションを受けた293T細胞であってSTRAP-1蛋白質を発現するトランスフェクト293T細胞を免疫組織化学的に染色し、かつ(b)トランスフェクションを受けていない293T細胞を免疫組織化学的に染色しない抗体。
【請求項15】
293T細胞が、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に受入番号98849として登録されたプラスミド8P1D4クローン10.1中のSTRAP-1コード配列を含む発現プラスミドによるトランスフェクションを受けた、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
請求項1記載のSTRAP-1蛋白質または請求項2記載のポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体。
【請求項17】
請求項16記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
請求項17記載の抗体の断片。
【請求項19】
請求項17記載の抗体の抗原結合ドメインを含む組換え蛋白質。
【請求項20】
検出マーカーで標識された請求項17記載の抗体。
【請求項21】
毒素と結合した請求項17記載のモノクローナル抗体。
【請求項22】
治療薬と結合した請求項17記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
検出マーカーで標識された請求項18記載の抗体断片。
【請求項24】
検出マーカーで標識された請求項19記載の組換え蛋白質。
【請求項25】
請求項10記載のSTRAP-2蛋白質または請求項11記載のポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体。
【請求項26】
請求項25記載のモノクローナル抗体。
【請求項27】
検出マーカーで標識された請求項26記載の抗体。
【請求項28】
毒素と結合した請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項29】
治療薬と結合した請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項30】
試料を請求項20記載の抗体、請求項23記載の抗体断片、または請求項24記載の組換え蛋白質と接触させること、およびそれに対する試料中のSTRAP-1蛋白質の結合を検出することを含む、生物試料中のSTRAP-1蛋白質の存在を検出するためのアッセイ法。
【請求項31】
試料を請求項27記載の抗体と接触させること、およびそれに対する試料中のSTRAP-2蛋白質の結合を検出することを含む、生物試料中のSTRAP-2蛋白質の存在を検出するためのアッセイ法。
【請求項32】
下記の段階を含む、生物試料中のSTRAP-1ポリヌクレオチドの存在を検出するためのアッセイ法:
(a)試料を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)に受入番号98849として登録されたプラスミド8P1D4クローン10.1中に含まれるSTRAP-1 cDNAまたは図1Aに示すポリヌクレオチド(配列番号:XX)もしくはその相補物と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと接触させる段階、および
(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在によって試料中にSTRAP-1ポリヌクレオチドが存在することが示されるような、プローブと試料中のSTRAP-1ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって形成されるハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する段階。
【請求項33】
下記の段階を含む、生物試料中のSTRAP-2ポリヌクレオチドの存在を検出するためのアッセイ法:
(a)試料を、請求項12記載のポリヌクレオチドまたはその相補物と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブと接触させる段階、および
(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在によって試料中にSTRAP-2ポリヌクレオチドが存在することが示されるような、プローブと試料中のSTRAP-2ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって形成されるハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する段階。
【請求項34】
生物試料中のSTRAP-1 mRNAの存在を検出するためのアッセイ法であって、
(a)少なくとも1つのプライマーを用いる逆転写によって試料からcDNAを作製する段階、
(b)そのようにして作製されたcDNAを、その中のSTRAP-1 cDNAを増幅するために、STRAP-1ポリヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いて増幅する段階、
(c)増幅されたSTRAP-1 cDNAの存在を検出する段階を含み、
センスおよびアンチセンスプローブとして用いるSTRAP-1ポリヌクレオチドが図1Aに示すポリヌクレオチド(配列番号:XX)を増幅しうるアッセイ法。
【請求項35】
生物試料中のSTRAP-2 mRNAの存在を検出するためのアッセイ法であって、
(a)少なくとも1つのプライマーを用いる逆転写によって試料からcDNAを作製する段階、
(b)そのようにして作製されたcDNAを、その中のSTRAP-2 cDNAを増幅するために、STRAP-2ポリヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いて増幅する段階、
(c)増幅されたSTRAP-2 cDNAの存在を検出する段階を含み、
センスおよびアンチセンスプローブとして用いるSTRAP-2ポリヌクレオチドが図9に示すポリヌクレオチド(配列番号:XX)を増幅しうるアッセイ法。
【請求項36】
STRAP-1の細胞外ドメインと結合する請求項17、21または22記載の抗体を含む、前立腺癌の治療のための組成物。
【請求項37】
STRAP-1の細胞外ドメインと結合する請求項17、21または22記載の抗体を含む、結腸癌の治療のための組成物。
【請求項38】
STRAP-1の細胞外ドメインと結合する請求項17、21または22記載の抗体を含む、膀胱癌の治療のための組成物。
【請求項39】
STRAP-2の細胞外ドメインと結合する請求項26または28記載の抗体を含む、前立腺癌の治療のための組成物。

【図1A−1】
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【図1A−2】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−50434(P2012−50434A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188088(P2011−188088)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2000−552151(P2000−552151)の分割
【原出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(500553659)アジェンシス,インコーポレイテッド (35)
【Fターム(参考)】