説明

ヒト第VII因子を産生するトランスジェニックウサギ

本発明は、乳腺においてヒト第VII因子を生成するトランスジェニックウサギに関する。該トランスジェニックウサギの乳は、組換えヒト第VII因子の生成のための原料として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスジェニックウサギの乳中における組換えヒト第VII因子の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
第VII因子は、血液凝固プロセス、特に外因性凝固経路の開始に関与する血漿タンパク質である。第VII因子は、ビタミンK依存性糖タンパク質であるが、シグナルペプチド(残基1〜20)とプロペプチド(残基21〜60)とを含んでなる466アミノ酸からなる前駆体の形態で肝臓において合成される。血漿中を循環する第VII因子は、406残基を含有する53kDaのペプチドで構成される酵素原(又はプロ酵素)である。これは幾つかの転写後改変から生じる:シグナルペプチドの切断、プロペプチドの切断、6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位及び35位の最初の10個のN-末端グルタミン酸のガンマ-カルボキシル化、63位のアスパラギン酸の部分的β-ヒドロキシル化、52位及び60位のセリンのそれぞれグルコース(キシロース)0-2単位及びフコース単位でのO-グリコシル化、並びに145位及び322位のアスパラギンの複合体(優勢には二分岐でシアル酸付加された構造)でのN-グリコシル化。第VII因子は、152位のアルギニンと153位のイソロイシンとの間でのタンパク質分解性切断により活性化されて、第VIIa因子が得られる。第VIIa因子は、N-末端に由来し、およそ20kDaの分子量を有する152アミノ酸の軽鎖と、C-末端に由来し、およそ30kDaの分子量を有する254アミノ酸の重鎖とで構成され、これらは互いに、135位と262位のシステイン同士間のジスルフィドブリッジにより共有結合されている。
【0003】
循環性の第VII因子は、内皮下線維芽細胞により産生される組織因子(TF)と、該組織因子が血管内皮の破損の発生に際して放出されたときに複合することができる。この複合体の形成は、第VIIa因子を生じる第VII因子の活性化に付随する。TF-VIIa複合体は、第IX因子及び第X因子を活性化して、第IXa因子及び第Xa因子の形成を導き、これらが次にプロトロンビンからトロンビンへの変換を活性化し、このことがフィブリノゲンからフィブリンへの変換を可能にして、凝血塊の形成をもたらす。
【0004】
第VII因子/第VIIa因子は、長年、止血障害(例えば、第VIII因子欠損に相当する血友病A、第IX因子欠損に相当する血友病B又は遺伝性第VII因子/第VIIa因子欠損が挙げられる)及び種々の原因の出血事象(例えば卒中又は出血性外傷)を患う患者を治療するために用いられている。
【0005】
初期には、用いられた第VII因子製剤はヒト血漿から取得された。しかし、精製の困難性、血液由来製品の使用に伴う健康上の危険性及びヒト血漿の供給限界のため、現在では、例えば出願EP 0 200 421に記載されるような、ヒト第VII因子を発現するように形質転換された哺乳動物細胞により産生された組換え第VII因子製剤が、前記血漿由来製剤より好まれている。
【0006】
形質転換細胞の培養によって治療上の興味対象のタンパク質を製造することに対する代替法は、トランスジェニック動物による、特に該トランスジェニック動物の乳中における製造である。このアプローチは、理論的に多くの利点、具体的には高い収率、細胞培養における製造より低い製造コスト及び工業レベルでの製造能力のより容易でより柔軟な増加を有する。しかし、トランスジェニックマウスの乳中で、天然型ヒトタンパク質の生物学的特性と同様の生物学的特性を有する組換えタンパク質であるプラスミノゲンインヒビター(tPA)を製造できる可能性は何年も前に証明されたにもかかわらず(Gordonら, Bio Technol, 5, 1183-7, 1987)、ヒトに使用する医薬品の開発及び工業的製造に適合する条件下でトランスジェニック動物の乳中で製造することに成功したタンパク質の数は、未だに非常に限られている。これは、第一には発現されるべき興味対象タンパク質に特異的な、第二には該タンパク質を発現することが望まれる宿主種に特異的な多くの要因が、興味対象タンパク質/宿主種の組合せの成功又は失敗を左右しているからである。
【0007】
これら要因には、特に、天然型ヒトタンパク質の翻訳後修飾と同様の翻訳後修飾を有するタンパク質を工業化可能な量で産生する宿主種の能力が含まれる。この要因は、翻訳後修飾が数多く変化に富み(シグナルペプチド及びプロペプチドの切断、γ-カルボキシル化、β-ヒドロキシル化、O-グリコシル化及びN-グリコシル化)、肝臓で天然に産生される(第VII因子のような)タンパク質を組換え形態で乳中において製造することを構想する場合、特に必須である。これは、乳腺細胞が、肝細胞の翻訳後修飾能力とは異なる翻訳後修飾能力を有するからである。
【0008】
例えば、ヒトプロテインCを乳腺中で発現するトランスジェニックマウスが、プロペプチド切断及びγ-カルボキシル化を正確に行い得ないことが観察されている(Drohanら, Transgenic Res., 355-64, 1994)。プロテインC及び第IX因子について、トランスジェニックブタで同様のことが観察されている(Leeら, J Biochem., 118, 81-7, 1995; Van Cottら, Genet Anal., 15, 155-60, 1999)。
【0009】
更に、タンパク質のO-グリコシル化及びN-グリコシル化は、関係する哺乳動物種に応じて、質的及び量的に変動し得る。よって、ヒトタンパク質は、ガラクトシルガラクトースα(1-3)ガラクトースモチーフ(Galα1-3Galモチーフ)を含まない。これは、このモチーフの合成を担うアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、ヒト及び旧世界(欧州、アジア)のサルでは不活化されているが、他の哺乳動物には存在することに起因する。
【0010】
結果的に、このモチーフ(α-Galエピトープともよばれる)は、ヒトにおいて非常に免疫原性である(Galiliら, Blood, 82(8): 2485-2493, 1993)。したがって、活性アルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを有する哺乳動物において組換え形態で産生されるグリコシル化ヒトタンパク質は、大量のGalα1-3Galモチーフ及び相当な望ましくない免疫反応を引き起こす危険性を提供し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本発明者らは、今回、驚くべきことに、ヒト第VII因子をコードする配列を乳腺中で発現するトランスジェニックウサギが、正確に切断されることに加えて非常に僅かなGalα1-3Galモチーフのみを含有するか又は該モチーフを含有しない組換え第VII因子を乳中で産生することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の主題は、ヒト第VII因子を乳中で発現するトランスジェニックウサギである。
本発明によるトランスジェニックウサギは、該ウサギの乳腺細胞における特異的発現を可能にするプロモーターの転写制御下に配置された、ヒト第VII因子をコードするポリヌクレオチドを含んでなるトランスジーンの1以上のコピーをゲノム中に含有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語「トランスジーン」は、子孫に代々伝達される、宿主生物のゲノム中に安定に挿入された核酸構築物を意味することを意図する。本発明の場合、トランスジーンは、トランスジェニック宿主動物の乳における興味対象のタンパク質(第VII因子)の発現を可能にする。
【0015】
ウサギ乳腺の細胞における特異的発現を可能にするプロモーター自体は公知である。これらは、例えば、カゼイン又は乳清タンパク質の遺伝子のプロモーターであり得る。特に、α-、β-若しくはκ-カゼインプロモーター、β-ラクトグロビンプロモーター、α-ラクトアルブミンプロモーター、WAP(ホエー酸性タンパク質)プロモーター又はラクトフェリンプロモーターが挙げられる。これは、ウサギを起源とするプロモーター(例えば、出願EP0527063に記載されるWAPプロモーター)又は別の哺乳動物種を起源とするプロモーターであり得る。
【0016】
ヒト第VII因子をコードするポリヌクレオチドは、好ましくはcDNA又はそのコーディング部分(ORF)である。これは、配列自体は公知であり(例えばアクセッション番号M13232で)データベースで入手可能な第VII因子の天然cDNA又は(特に、活性を増大させ及び/又は望ましくない効果を抑制するように)改変されたヒト第VII因子の変形体(variant)をコードする配列であり得る。例えば、出願2008/0010693に記載される変形体又はSorensenら(Br. J. Haematol., 137(2): 158〜65, 2007)による文献に記載された変形体を挙げることができる。
【0017】
有利には、ウサギ乳腺での発現に最適化されたDNA配列を用いることができる。このような配列は、潜在的スプライス部位、mRNA-不安定化A/Tリッチ配列、潜在的に寄生性であるポリアデニル化部位及びTATAボックス並びにCpG島を除去するために、及び乳タンパク質の産生についてのウサギ乳腺細胞の嗜好性(preference)を反映させてコドンを最適化するために、当業者に周知の技術によりインシリコで取得することができる。
【0018】
有利には、トランスジーンは、プロモーター及び第VII因子をコードする配列に加えて、組換えタンパク質の転写及び/又は翻訳を最適化することを意図した他のエレメントを含有する。このようなエレメント自体は当業者に公知である(例えば、Carl A. Pinkert(編), Vector Design for Transgene Expression Transgenic Animal Technology, 第2版, New York: Academic Press., 419-458, 2002中のHoudebineらを参照)。
【0019】
前記エレメントは、具体的には、下記のものであり得る:
− 組み込まれたトランスジーンのコピー数に依存するが、動物ゲノム中のトランスジーンの組み込み部位には依存しないタンパク質発現レベルを保証する、プロモーターの5'側に位置する強力なインスレーター:例えば、ニワトリベータ-グロビン遺伝子の5'HS4領域を挙げることができる(Taboit-Dameronら, Transgenic. Res., 8: 223-235, 1999; Rival-Gervierら, Transgenic. Res., 12: 723-730, 2003);
【0020】
− 1以上の転写若しくは翻訳エンハンサーを含有し得る1以上のエキソン/イントロン対:例えば、SV40ウイルスゲノムの初期及び後期遺伝子のイントロン、ベータ-グロビン遺伝子の最初のイントロン、EF1-アルファ遺伝子のイントロン、アルファ-s1カゼイン遺伝子のイントロン、WAP遺伝子のイントロン、ヒト及びウシの成長ホルモン遺伝子のイントロンを挙げることができ;エンハンサー配列は、特に、HTLVウイルス若しくはMMTVウイルス(マウス乳癌ウイルス)のLTR配列に存在するもの、免疫グロブリン遺伝子のエンハンサー配列、アルファ-s1カゼイン遺伝子のエンハンサー配列及びベータ-グロビンのエンハンサー配列から選択できる。エンハンサー配列は、Rival-Gervierら(Mol. Reprod. Develop., 63: 161-167, 2002)により記載され、出願EP1 217 071に記載されるような、WAP遺伝子の上流(140kbpまで)の末端領域又はWAP遺伝子の下流(少なくとも10kbp)の末端領域でもあり得る;
【0021】
− 転写の効率的な終結を保証する強力なターミネーター:例えば、SV40ウイルス初期若しくは後期遺伝子、ベータ-グロビン遺伝子、WAP遺伝子又はヒト若しくはウシの成長ホルモン遺伝子のターミネーターを挙げることができる。
【0022】
遺伝子導入(transgenesis)は、それ自体公知の従来法により行うことができる。有利には、トランスジーンをマイクロインジェクションにより受精胚の前核に導入し、受精胚を次いでキャリアの雌に再移植する。トランスジェニック動物は、核移入クローニング及び続くレシピエントの雌への胚移入により得ることも可能である。
【0023】
本発明の主題はまた、本発明に従うトランスジェニックウサギにより産生される乳、及び組換えヒト第VII因子の生成用出発材料としてのこの乳の使用である。
組換えヒト第VII因子は、例えば米国特許第6268487号に記載されるような、それ自体公知の方法によりこの乳から精製できる。
【0024】
本発明は下記の更なる説明からより明確に理解される。下記では、乳中で第VII因子を発現するトランスジェニックウサギの作製について記載する非限定的な実施例に言及する。
【実施例】
【0025】
実施例1:ヒト第VII因子をコードする配列を含有する遺伝子導入ベクターの構築
中間ベクターにおけるPCRによる第VII因子cDNAのクローニング
5'位で独特な制限部位MluIに隣接し、3'位で独特な制限部位NheIに隣接したヒト第VII因子をコードするDNA配列を合成し、アンピシリン耐性遺伝子及びCol E1細菌複製起点を含有するpUcプラスミドに由来するプラスミドベクター中にクローニングした。
【0026】
遺伝子導入ベクター
クローニングに用いた遺伝子導入ベクターは、アンピシリン耐性遺伝子及びCol E1細菌複製起点を有するpPolyIIIプラスミドに由来する。この遺伝子導入ベクターは、以下のものを含んでなる発現カセットを含有する:6.3kbpのウサギWAPプロモーター(ホエー酸性タンパク質; Genbank X52564)(Rival-Gervierら, Transgenic Res., 6: 723-730, 2003)の上流のニワトリベータ-グロビン遺伝子の5'HS4インスレーター配列の二量体(Genbank U78775)(Recillas-Targaら, Proc. Natl. Acad. Sci., 10: 6883-6888, 2002)、転写エンハンサーを含有するウサギベータ-グロビン遺伝子の最初のイントロン(Genbank V00882);HTLV-1のR領域とU5領域の開始部とに融合された、SV40初期遺伝子の5'UTR配列を含有する第2の転写エンハンサー(SUR 1.2.3)(Attalら, FEBS Lett., 392, 220-224, 1996);マウスIgG重鎖のmu領域(Genbank J00440)(Gilliesら, Cell 33, 717-728, 1983)に由来する第3の転写エンハンサー(Igμ2)、及びヒト成長ホルモンの転写ターミネーター(Genbank M13438)。このカセットは、第2の転写エンハンサーと第3の転写エンハンサーとの間に位置するMluI部位及びNheI部位を含有する。このカセットは両側でNotI部位に挟まれ、配列がpPolyIIIプラスミドから切り出されることが可能である。
【0027】
中間ベクターからMluI/NheI消化により回収される第VII因子をコードするDNAの挿入断片を、発現カセットのMluI部位とNheI部位の間に挿入した。
得られる遺伝子導入ベクターを図1に示す。これは、5'-3'方向に、i)ニワトリベータ-グロビン遺伝子の5'HS4インスレーター配列の二量体、ii)6.3kbpのウサギWAP(ホエー酸性タンパク質)プロモーター、iii)第1の転写エンハンサーを含有するイントロン、iv)第2の転写エンハンサー、v)ヒト第VII因子cDNA、vi)第3の転写エンハンサー、及びvii)転写ターミネーターで構成される挿入断片を含有する。
【0028】
以前と同様に、組換えベクターを含有するコロニーをアンピシリン耐性に基づいて選択し、次に挿入断片の存在を制限フラグメント、次いで配列決定により検証した。
【0029】
実施例2:ヒト第VII因子を乳腺で発現するトランスジェニックウサギの作製
トランスジェニックウサギは、従来のマイクロインジェクション技術により得た(Brinsterら, Proc. Natl. Acad. Sci., 82: 4438-4442, 1985)。
【0030】
遺伝子導入用挿入断片の準備
組換え第VII因子をコードする配列を含有する遺伝子導入ベクターをNotI制限酵素で消化し、トランスジーンを含有する挿入断片をアガロースゲル上で単離し、次いで製造業者の指示に従ってElutipD (Schleicher-Schuell, Ecquevilly, France)で精製し、エタノール沈殿させ、その後0.1mM EDTA含有10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中に採取した。
【0031】
ドナー及びレシピエントの雌性ウサギの準備
胚ドナーの雌性ニュージーランドウサギ(16〜30週齢)にブタFSH(卵胞刺激ホルモン)を3日間皮下処置して卵胞発育を刺激する。3日目に、雌性ウサギにhCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモン)を静脈内注射し、その後交配させる。
レシピエントの雌性ウサギは18〜20週齢である。これらの雌を、昼間が長いサイクル(16時間の光)に1週間維持した後、精管切除雄と交配させるか又はホルモン処理(FSH/LH過排卵)するかによって、同期偽妊娠を誘導する。
【0032】
取り出した卵母細胞のマイクロインジェクション及び移植
DNAマイクロインジェクションを行うため、4日目に、交配の18〜19時間後、胚をドナーの雌性ウサギから取り出す。DNAマイクロインジェクションは胚を取り出した直後(交配の15〜25時間後)に行う。一細胞段階の胚を、Normarsky対物レンズとマイクロマニピュレータとを備えた倒立顕微鏡下、培地の微小滴中に置く。ピペットを用いて、個々の胚を位置決めして固定する。トランスジーンを0.1mM EDTA含有10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中1ng/μl〜6ng/μlの範囲であり得る濃度に希釈し、注入ピペットを用いて優先的に胚の雄性前核中にマイクロインジェクトする。
【0033】
マイクロインジェクション後、胚を、1〜5時間インビトロでの培養に維持する(35〜40℃、空気中3〜7%のCO2)。次いで、マイクロインジェクトした胚の質を、立体顕微鏡下で素早く評価する。次いで、インタクトな単一細胞胚を、全身麻酔下にて、同期レシピエント雌性ウサギの卵管の管腔内に(各卵管に10個の胚)、外科的手法(開腹術により卵管を体外に出す)により再移植する。分娩は胚移入の29〜31日後に自然に起こり得る。必要であれば、31日目にオキシトシンを注射することにより分娩を誘発することができる。再移植胚の数に対する産まれた仔ウサギの数は、約5%〜20%である。
【0034】
実施例3:トランスジェニックウサギの選択及び特徴付け
胚発生プロセスの間、マイクロインジェクトした組換えDNAは、無作為にゲノムに組み込まれる。新生ウサギ(10日)をトランスジーンの存在について耳生検で検査する。ゲノムDNAを抽出し、組換え挿入断片に特異的なプライマーを用いてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)分析を行う。
トランスジーンが証明されたウサギを「F0創始体」という。
【0035】
F0-創始体系列はまた、i)ゲノムに組み込まれたトランスジーンのコピー数の分析、及びii)組込み部位の数の決定によって特徴付けた。
各F0-創始体系列のゲノム中に組み込まれたトランスジーンのコピー数は、定量PCR及びサザンブロッティングにより決定した。この数は、系列により、細胞あたり1コピーから細胞あたり200コピー超まで変動する。
組込み部位の数もサザンブロッティングにより決定した。この数は、系列により、ゲノムあたり1部位から5部位超まで変動する。
【0036】
実施例4:トランスジェニックウサギの乳中の組換えヒト第VII因子の発現の評価
ヘミ接合F1子孫を得るため、性的成熟F0ウサギ(雌については4ヶ月、雄については5ヶ月)を非トランスジェニック動物と人工受精で交雑させ、乳中のヒト第VII因子の発現レベルを種々のF0-創始体系列及びF1-子孫系列について評価した。
【0037】
このために、選択したF0雌及びF1雌の各々に由来する乳サンプルを、5000×gにて20分間4℃で遠心分離して、乳中化合物を脂質から分離した。脱脂乳のサンプルをLaemmli緩衝液で希釈し、5分間沸騰し、次いでSDS-PAGEゲル電気泳動により分離した。次いで、タンパク質をPVDFメンブレンに移し、その後抗ヒト第VII因子抗体を用いてウェスタンブロッティング分析を行った。化学発光(Amersham Biosciences)により検出を行い、得られた乳の各々についてヒト第VII因子濃度を決定した。90μg/ml〜11mg/mlの範囲の第VII因子発現レベルが観察された。
【0038】
発現レベルに対するトランスジーンのコピー数の影響も調べた。結果を図2に示す。図は、トランスジーンのコピー数と、トランスジェニック動物の乳中の第VII因子の発現レベルとの間の相関関係を示す。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウサギ乳腺細胞における特異的発現を可能にするプロモーターの転写制御下に配置された、ヒト第VII因子をコードするポリヌクレオチドを含んでなるトランスジーンの1以上のコピーをゲノム中に含有することを特徴とするトランスジェニックウサギ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスジェニックウサギの乳。
【請求項3】
請求項2に記載のトランスジェニックウサギの乳の、組換えヒト第VII因子の製造用出発材料としての使用。

【公表番号】特表2011−517562(P2011−517562A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501259(P2011−501259)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000396
【国際公開番号】WO2009/118460
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510253789)バイオプロテイン テクノロジーズ エスエー (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOPROTEIN TECHNOLOGIES SA
【住所又は居所原語表記】Chez SLGP, 5, place Bellecour, F−69002 Lyon, FRANCE
【Fターム(参考)】