説明

ヒト胎盤のコラーゲン組成物、これらの調製方法、これらの使用方法及び組成物を含むキット。

本発明は、ヒト胎盤コラーゲンを含む組成物、該組成物を調製する方法、これらの使用方法及び該組成物を含むキットを提供する。該組成物、キット及び方法は、例えば哺乳動物の組織を増大し、又は置換するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 発明の分野)
本発明は、ヒト胎盤コラーゲンを含む組成物、該組成物を調製する方法及びこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2. 発明の背景)
コラーゲンは、腱、骨、歯、並びに皮膚及び内部臓器を支持するシートを含む体の多くの構造を形成するタンパク質である。コラーゲンは、三重らせんに巻きついた三本鎖で構成される。該構造は、3アミノ酸の繰り返しから生じる。らせん体において、3アミノ酸毎にグリシンがあり、残りのアミノ酸の多くは、プロリン又はヒドロキシプロリンである。
【0003】
コラーゲンは、商業的に、及び臨床的にしばらくの間使用されてきた。現在では、コラーゲンは、皮膚、腱、軟骨、骨及び間質などの硬又は軟結合組織を置換し、又は増大するために使用することができる。固体コラーゲンは、外科的に移植されてきたが、現在は、注射用コラーゲン製剤をより便利な投与のために利用できる。現在では、ザイダーム(Zyderm)(登録商標)、ザイプラスト(Zyplast)(登録商標)、コスモダーム(Cosmoderm)(登録商標)及びコスモプラスト(Cosmoplast)(登録商標)を含むいくつかの注射用コラーゲン組成物が市販されている。
それぞれのコラーゲン組成物は、特定の技術におけるその使用について、有利又は不利であり得る特定の物理的性質を有する。従って、当該技術分野において、当業者が利用できる組成物の選択を拡大するために、更なる物理的特性をもつコラーゲン組成物に対する需要が依然として残っている。
【発明の開示】
【0004】
(3. 発明の要旨)
本発明は、一部において、例えば哺乳動物の組織を増大し、又は置換するために有用であるコラーゲン組成物の発見に基づいている。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、有利な耐久性及び注射可能性を示す。例えば、ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、注射後に有利な耐久性を示す。本発明のある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、有利なことに、低毒性を示す。本発明のある実施態様において、コラーゲン組成物は、有利な流動特性を示す。
【0005】
一つの態様において、本発明は、架橋されたコラーゲンを含む組成物を提供する。ある実施態様において、コラーゲンは、架橋剤1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋されている。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、アテロペプチドコラーゲンを含む。
本発明のこの態様において、コラーゲン出発材料を、当業者に公知のいずれのコラーゲンとすることができる。ある実施態様において、コラーゲン出発材料は、酸可溶性アテロペプチドコラーゲンである。特定の実施態様において、コラーゲン出発材料は、胎盤コラーゲンである。更に特定の実施態様において、コラーゲン出発材料は、哺乳動物コラーゲンである。一つの例は、ヒトコラーゲンである。特定の実施態様において、コラーゲンは、ヒト胎盤由来である。コラーゲン出発材料を、当業者に公知のいずれの方法に従って調製することができる。
【0006】
ある実施態様において、コラーゲン出発材料は、下記に詳述したものなどの本発明の態様に従って調製される。コラーゲンは、当業者に公知のコラーゲンのいずれの型であることもできる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、I型及びIV型コラーゲンに富んでいる。更なる実施態様において、コラーゲン組成物は、III型コラーゲンが減少している。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、I型及びIII型コラーゲンに富んでいる。更なる実施態様において、コラーゲン組成物は、IV型コラーゲンが減少している。
【0007】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を調製する方法を提供する。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、コラーゲン出発材料を架橋形成のために適切な条件下で架橋剤1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルと接触させることによって調製される。特定の実施態様において、重量基準でコラーゲンに対して約4〜1の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが使用される。特定の実施態様において、架橋反応は、ピリジンなどの触媒によって触媒される。
【0008】
もう一つの態様において、本発明は、酸可溶性胎盤コラーゲンを調製する方法を提供する。胎盤組織の供与源は、いずれの哺乳動物であることもできるが、ある実施態様においてヒト胎盤が使用される。胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性又は両方であるかにかかわらず、羊膜、絨毛膜及び臍帯を含む胎盤のいずれの部分由来であることも、又は胎盤全体由来であることもができる。ある実施態様において、酸可溶性胎盤コラーゲンは、臍帯の除去後のヒト胎盤全体から調製される。
【0009】
ある実施態様において、本方法は、胎盤組織の浸透圧ショックを含む。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、浸透圧ショックは、組織の細胞を破裂させ、これにより細胞、細胞成分及び血液成分の除去を容易にすることができると考えられる。浸透圧ショック工程により、本発明のコラーゲン組成物を有利な純度で得ることができる。浸透圧ショックは、当業者に公知のいずれの浸透圧ショック条件で行うこともできる。特定の実施態様において、浸透圧ショックは、高い塩条件におけるインキュベーション、続く水溶液中でのインキュベーションによって行われる。インキュベーションは、当業者の判断に従って繰り返すことができる。
【0010】
浸透圧ショックに続いて、生じるコラーゲン組成物を酸性条件下で洗浄することができる。酸性条件は、当業者に公知のいずれの酸性条件であることもできる。酢酸は、酸洗浄のための有用な酸の一例である。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、酸洗浄により、一部のポリペプチドを可溶化すると共に、一方でコラーゲン組成物に混入するかもしれないより低分子量(例えば、30〜60kDa)のポリペプチドを沈殿させること、及び除去を容易にすることができると考えられる。
【0011】
アテロペプチドコラーゲンが望まれるある実施態様において、コラーゲン組成物は、コラーゲンからテロペプチドを除去することができるか、又は部分的若しくは完全に除去する酵素と接触される。当業者には明らかなように、この工程は、アテロペプチドコラーゲンが望まれないときは使用されない。該酵素は、コラーゲンからテロペプチドを除去することができる当業者に公知のいずれのタンパク質分解酵素であることもできる。ある実施態様において、該酵素は、ペプシン又はパパインである。一般に、該酵素は、当業者に公知のテロペプチドの除去のために適切な条件下でコラーゲン組成物と接触される。ある実施態様において、該酵素は、高温にてコラーゲン組成物と接触される。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、高温では、最終的なコラーゲン組成物におけるI型コラーゲンの収率を改善することができると考えられる。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、テロペプチドを除去するために十分な時間、23〜27℃にてペプシンと接触される。
【0012】
更なる工程において、コラーゲン組成物は、塩析によって精製することができる。塩析は、当業者に公知のいずれの塩析であることもできる。しかし、ある実施態様において、最初の低塩での塩析の後に、高塩での塩析が続く。本発明のコラーゲン組成物のために望まれるコラーゲンは、これらの方法において低塩での塩析の上清に残り、高塩での塩析で沈殿する。特定の実施態様において、低塩での塩析は、約0.2M NaClであるが、高塩での塩析は、約0.7MのNaClである。それぞれの沈澱にて、本発明のコラーゲン組成物は、当業者に明らかであろう遠心分離、濾過、再懸濁及び濃縮などの標準的技術により、上清又は沈殿物から回収することができる。それぞれの塩析を当業者の判断に従って繰り返することができ、沈殿物を当業者の判断に従って必要に応じて洗浄することができる。
【0013】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、低分子量フィルターで濾過して試料を濃縮すること、及び内毒素を取り除くことができる。例えば、コラーゲン組成物は、100kDaフィルター若しくは30kDフィルター又は両方で濾過して、濃縮し、かつ/又は内毒素を除去することができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、高分子量フィルターで濾過してウイルスを除去することができる。後述するように、高分子量フィルターは、コラーゲンを保持するが、ウイルス粒子を通過させる。例えば、当業者に公知のHIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス、パルボウイルス及びその他のウイルス混入物などのウイルスを除去するために、コラーゲン組成物を1000kDa、750kDa又は500kDaで濾過することができる。
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、原繊維化によって更に処理され得る。原繊維化は、当業者に公知のコラーゲンを原繊維化するためのいずれの技術によって行うこともできる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、3mg/mlコラーゲン、30mMリン酸ナトリウム、pH 7.2にて、約32℃において約20〜24時間原繊維化される。
【0014】
望まれる場合、本発明のコラーゲン組成物は、架橋することができる。ある実施態様において、架橋は、原繊維化の後に行われる。架橋は、当業者に公知のいずれの架橋剤によることもできる。例えば、ある実施態様において、架橋剤は、グルタルアルデヒドであることができ、架橋は、当業者に公知のコラーゲンのグルタルアルデヒド架橋法に従って行うことができる。その他の実施態様において、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル又はゲニピンであることができる。特定の実施態様において、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。架橋は、当業者に明らかな技術又は本明細書に記述したものによって行うことができる。ある実施態様において、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルでの架橋は、ピリジンなどの触媒と共に行われる。
【0015】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物を、還元することができる。還元は、本発明のコラーゲン組成物を当業者に公知の任意の還元剤と接触させることによって達成することができる。ある実施態様において、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。特定の実施態様において、コラーゲンは、還元剤での還元前に架橋される。
【0016】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知の方法に従って、機械的剪断によって更に処理することができる。例示的な剪断技術は、米国特許第4,642,117号に記述されており、その内容は、それらの全体において引用により本明細書に取り込まれている。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、組織ホモジナイザーで剪断される。
【0017】
本発明の処理によって調製されるコラーゲン組成物は、示した有利な特性を有する。例えば、本発明の特定のコラーゲン組成物は、いくつかの実施態様において、2〜13%の間のIV型コラーゲンの相当量を含んでいる。更に、本発明の特定のコラーゲン組成物は、ある実施態様において、約5%の少量のIII型コラーゲンを含んでいた。典型的には、本発明の組成物の残りのコラーゲンは、ある実施態様において約80〜90%のI型コラーゲンであった。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、相当量の炭水化物、例えばコラーゲンの重量に基づいて少なくとも10μg/mgの炭水化物を含む。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、高い炭水化物濃度は、IV型コラーゲンの炭水化物含量によるものと考えられる。従って、一定の態様において、本発明は、上記特性を有するコラーゲン組成物を提供する。
【0018】
更なる実施態様において、本発明の特定のコラーゲン組成物は、0〜13%の間のIV型コラーゲンを含む。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、約0〜5%のIII型コラーゲンを含む。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、約80〜95%のI型コラーゲンを含む。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、80%、85%、90%、95%、98%又は99%を超えるI型コラーゲンを含む。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、実質的に炭水化物がなく、例えば、炭化水素は、コラーゲンの重量に基づいて、約0.1、0.25、0.5、1、2、5、7.5又は10μg/mg未満である。
【0019】
もう一つの態様において、本発明は、ヒアルロン酸を更に含む、本発明のコラーゲン組成物を提供する。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、ヒアルロン酸の包含により、本発明のコラーゲン組成物への、又は、本発明のコラーゲン組成物を介した線維芽細胞の遊走を促進することができると考えられる。ヒアルロン酸を含むコラーゲン組成物は、本発明のコラーゲン組成物を当業者に明らかな任意の適切な条件下でヒアルロン酸と接触させることによって調製することができる。ある実施態様において、組成物のコラーゲンは、架橋されている。更なる実施態様において、組成物のヒアルロン酸は、架橋されている。更なる実施態様において、コラーゲン及びヒアルロン酸の両方が架橋されている。特定の実施態様において、両方が共に架橋されている。架橋剤は、本明細書において論議したグルタルアルデヒド、ゲニピン及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルを含む当業者に公知の任意の適切な架橋剤であることもできる。
【0020】
更なる態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することにより、哺乳動物の組織を増大し、又は置換する方法を提供する。ある実施態様において、哺乳動物は、ヒトである。コラーゲン組成物は、当業者に公知のいずれの技術に従って投与することもできる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、注射によって投与される。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の流動特性は、有利となる。
【0021】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するためのキットを提供する。キットは、典型的には当業者に配布するための便利なパッケージ内に本発明のコラーゲン組成物を含む。キットは、本発明のコラーゲン組成物を哺乳動物に投与するための手段を更に含むことができる。手段は、注射器、注射器及び針、カニューレその他などの当業者に公知のコラーゲン組成物を投与するためのいずれの手段であることもできる。ある実施態様において、手段は、本発明のコラーゲン組成物と共に予め充填されている。
上記に、及び下記の節において詳細に記述したように、本発明の組成物、工程、方法及びキットは、コラーゲン組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するための有用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(4. 本発明の詳細な説明)
(4.1 定義)
本明細書に使用される以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
「コラーゲン」という用語は、当業者に公知の任意のコラーゲンをいう。
「アテロペプチドコラーゲン」という用語は、1つ以上のテロペプチド領域を欠いている、当業者によって認識されるとおりのコラーゲンの形態をいう。ある実施態様において、以下に詳細に論議したように、テロペプチド領域は、プロテアーゼ消化によって除去することができる。
【0023】
本明細書に使用される「生体適合性」又は「生体適合性の」とは、生体組織において中毒性、有害性又は免疫学的な反応若しくは拒絶反応を生じないことにより、生物学的に適合性である特性をいう。未知の材料に対する身体反応は、体に人工材料を使用するときの主要な懸念であり、それ故、材料の生体適合性は、このような材料の重要な設計事項である。
【0024】
本明細書に使用される「非発熱性」とは、試験して、0.5EU/mL以下の発熱物質、例えば内毒素を含むことが見いだされた材料をいう。1EUは、1ミリリットルあたりおよそ0.1〜0.2ngのエンドトキシンであり、調査される参照により異なる。
「被験体」という用語は、制限されないが、霊長類(例えば、ヒト)ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、その他を含む哺乳動物などの動物をいう。ある実施態様において、被験体は、ヒトである。
【0025】
「ラベル」という用語は、物品の容器に直接書かれ、印刷され、又は描かれた事項の表示、例えば医薬として活性な薬剤を含むバイアルに示される書面の物をいう。
「ラベリング」という用語は、全てのラベル及びその他の任意の物品に対して書かれ、印刷され、又は描かれた物品、或いはその容器若しくは包装紙又はこのような物品を収容するもののいずれか、例えば医薬として活性な薬剤の容器を収容する、若しくは付随した添付文書又は説明ビデオテープ若しくはDVDをいう。
【0026】
(4.2 本発明の実施態様)
本発明は、コラーゲン組成物、コラーゲン組成物を調製する方法、コラーゲン組成物を含むキット及びこれらの使用方法に向けられる。
【0027】
(4.2.1 本発明のコラーゲン組成物)
一つの実施態様において、本発明は、例えば哺乳動物の組織を増大し、又は置換するために有用なコラーゲン組成物を提供する。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、有利な耐久性、注射可能性及び流動特性を有する。
【0028】
本発明の本態様において、コラーゲンは、当業者に公知のいずれのコラーゲンであることもできる。ある実施態様において、コラーゲンは、哺乳動物コラーゲンである。特定の実施態様において、コラーゲンは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ラット又はカンガルーコラーゲンである。一定の非哺乳動物の実施態様において、コラーゲンは、魚コラーゲンである。コラーゲンは、これらの供与源のいずれに由来することもできるが、ヒトコラーゲンが具体例である。
【0029】
コラーゲンは、供与源のいずれの部分に由来することもできる。有用な供与源には、ウシ皮膚、子ウシ皮膚、ラット尾、カンガルー尾及び魚皮膚を含む。特定の実施態様において、コラーゲンは、胎盤コラーゲン、例えばウシ胎盤コラーゲン、ヒツジ胎盤コラーゲン又はヒト胎盤コラーゲンである。一例は、ヒト胎盤コラーゲンである。
【0030】
コラーゲンは、当業者に公知のいずれの方法で処理することもできる。ある実施態様において、コラーゲンは、テロペプチドを含む。更なる実施態様において、コラーゲンは、アテロペプチドコラーゲンである。本発明の目的上、アテロペプチドコラーゲンには、一方又は両方のテロペプチドを欠いているコラーゲンの相当量を含む。例えば、アテロペプチドコラーゲン組成物は、コラーゲン重量に基づいて、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%又は99%のアテロペプチドコラーゲン組成物を含むことができる。更なる実施態様において、当業者に公知のように、コラーゲンは、原繊維コラーゲンであることができる。なおさらなる実施態様において、当業者によって認識されるように、コラーゲンは、酸可溶性コラーゲンであることができる。アテロペプチドコラーゲン、原繊維コラーゲン及び酸可溶性コラーゲンを調製するための技術は、下記の節に論議してある。
【0031】
コラーゲンは、当業者に公知のコラーゲンのいずれかの型又はこのようなコラーゲンの混合物であることもできる。ある実施態様において、コラーゲンは、コラーゲンの1つ以上の型を含むコラーゲン組成物の形態である。特定のコラーゲンには、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン及びIV型コラーゲンを含む。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、これらのコラーゲンの特定量を含む。特定の組成物には、I型コラーゲンの相当量を含むが、IV型コラーゲンも富んでいる。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、1〜15%の間のIV型コラーゲン、2〜13%の間のIV型コラーゲン、3〜12%の間のIV型コラーゲン又は4〜11%の間のIV型コラーゲンを含む。同時に、コラーゲン組成物は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のI型コラーゲンを含むことができる。例えば、組成物は、75〜95%の間のI型コラーゲン、77.5〜92.5%の間のI型コラーゲン又は80〜90%の間のI型コラーゲンを含むことができる。本発明の同じコラーゲン組成物には、III型コラーゲン、例えば1%まで、2%まで、3%まで、4%まで又は5%までのIII型コラーゲンの量を含むことができる。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、2〜13%の間のIV型コラーゲン、80〜90%の間のI型コラーゲン及び5%までのIII型コラーゲンを含む。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、0〜13%の間のIV型コラーゲン、80〜95%の間のI型コラーゲン及び5%までのIII型コラーゲンを含む。
【0032】
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、炭水化物の相当量を、例えばコラーゲンの重量に基づいて少なくとも10、15、20又は25μg/mg炭水化物を含む。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、高い炭水化物濃度は、IV型コラーゲンの炭水化物含量によるものと考えられる。
本発明のこれらのコラーゲン組成物は、当業者に明らかないずれの工程によって得ることもできる。特定の処理を下記の節に詳述してある。
【0033】
上で議論したように、本発明のこの態様のコラーゲン組成物は、架橋されている。架橋剤は、当業者に公知のいずれの架橋剤であることもできる。本発明の本態様のための特定の架橋剤は、以下の構造に従ったアルキルジオール又はアルキルポリオールである:
【化1】

式中、Xは、C1-C8アルキル(直鎖状又は分枝)であり、R1及びR2は、独立してそれぞれ水素又は反応基であり、nは、1〜100の整数である。特定の実施態様において、架橋剤は、多官能性架橋剤である。ある実施態様において、nは、1であり、架橋剤は、二官能性の架橋剤である。ある実施態様において、それぞれのR1及びR2は、独立してエポキシド又はアルデヒドである。ある実施態様において、少なくとも1つのR1又はR2は、エポキシドである。ある実施態様において、架橋剤は、グリセロールポリグリシジルエーテル(EX-313 EC)又はポリグリセロールポリグリシジルエーテル(EX-512 EC)である。
【0034】
ある実施態様において、Xは、直鎖状C4アルキルであり、R1又はR2は、それぞれのエポキシドであり、すなわち架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【化2】

【0035】
更に例示的な架橋剤及び架橋コラーゲンのためのこれらの使用方法は、米国特許第5,880,242号及び第6,117,979号に、及びZeemanらの論文., 2000, J Biomed Mater Res.51(4):541-8, van Wachemらの論文., 2000, J Biomed Mater Res. 53(1):18-27, van Wachemらの論文., 1999, J Biomed Mater Res. 47(2):270-7, Zeemanらの論文., 1999, J Biomed Mater Res. 46(3):424-33, Zeemanらの論文., 1999, Biomaterials 20(10):921-31に記述されており、これらの内容は、その全体において引用により本明細書に取り込まれている。特定の実施態様において、架橋剤は、任意の供与源からの酸可溶性アテロペプチドコラーゲンを架橋させるために使用される。特定の実施態様において、酸可溶性アテロペプチドコラーゲンは、ヒト胎盤由来である。
【0036】
架橋は、当業者に明らかないずれの方法によって、例えば上記の引用文献に記述された方法により、又は本明細書に記述された方法に従って行うことができる。ある実施態様において、重量基準でコラーゲンの量を基準として、約0.1:10〜10:0.1の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが使用される。ある実施態様において、比は、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1又は10:1である。ある実施態様において、比は、重量基準で4:1のBDDE:コラーゲンである。特定の実施態様において、本明細書に記述したように、架橋反応は、ピリジンなどの触媒によって触媒される。
【0037】
更なる実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ゲニピンで架橋されている。ゲニピンは、無毒の天然に存在する架橋剤である。これは、クチナシ(Gardenia jasininoides)の果実から単離され得る、その親化合物のゲニポシドから得ることができる。ゲニピンは、Challenge Bioproducts Co., Ltd., 7 Alley 25, Lane 63, TzuChiang St. 404 Taichung Taiwan R.0.C., Tel 886-4-3600852から商業的に得てもよい。架橋試薬としてのゲニピンの使用は、米国特許出願公開第20030049301号に広範に記述されており、その内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0038】
さらなる実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知のその他の架橋剤で架橋することができる。例えば、本発明のコラーゲン組成物は、当業者に公知の方法に従ってグルタルアルデヒドで架橋することができる。このような方法は、例えば米国特許第4,852,640号、第5,428,022号、第5,660,692号及び第5,008,116号に、及びMcPhersonらの論文, 1986, J. Biomedical Materials Res. 20:79-92に広範囲に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0039】
更なる実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知のいずれの酵素を媒介した架橋技術で架橋することもできる。例えば、本発明のコラーゲン組成物は、当業者に公知の方法に従ってトランスグルタミナーゼによって架橋することができる。トランスグルタミナーゼは、コラーゲンのグルタミンとリジン残基との間のアミド架橋の形成を触媒する。このような方法は、例えばOrbanらの論文, 2004, J Biomedical Materials Res. 68(4):756-62に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0040】
本発明のコラーゲン組成物は、単一の架橋剤で、又は架橋剤の混合物で架橋することができる。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋された酸可溶性ヒト胎盤のコラーゲンを含む。特定の実施態様において、コラーゲンは、アテロペプチドコラーゲンである。
【0041】
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ヒアルロン酸を更に含むことができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、ヒアルロン酸の包含により、本発明のコラーゲン組成物への、又はコラーゲン組成物を介した線維芽細胞の遊走を促進することができると考えられる。ヒアルロン酸を含むコラーゲン組成物は、本発明のコラーゲン組成物を当業者に明らかな任意の適切な条件下でヒアルロン酸と接触させることによって調製することができる。ある実施態様において、組成物のコラーゲンは、架橋されている。更なる実施態様において、組成物のヒアルロン酸は、架橋されている。更なる実施態様において、コラーゲン及びヒアルロン酸の両方が架橋されている。特定の実施態様において、両方が共に架橋されている。架橋剤は、本明細書において論議したグルタルアルデヒド、ゲニピン及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルを含む当業者に公知のいずれの適切な架橋剤であることもできる。
【0042】
ある実施態様において、ヒアルロン酸を含む組成物は、重量/重量基準で0.1:99.9 〜99.9:0.1 ヒアルロン酸:コラーゲンを含むことができる。ある実施態様において、比は、0.1:99.9、1:99、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、99:1又は99.9:0.1である。架橋されていないヒアルロン酸を含むコラーゲン組成物及びこれらの調製方法は、米国特許第4,803,075号及び第5,137,875号に広範囲に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。架橋は、当業者に明らかな技術又は本明細書に記述されたものによって行うことができる。
【0043】
(4.3 本発明のコラーゲン組成物の調製方法)
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を調製する方法を提供する。本方法は、例えば上記の本発明のコラーゲン組成物を調製するために有用である。
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、本明細書に記述した方法に従って、ヒト胎盤から調製される。ヒト胎盤由来のコラーゲン組成物の調製の最初の工程は、米国特許第5,428,022号、第5,660,692号及び第5,008,116号に、及び米国特許出願公開第20040048796号及び第20030187515号に詳述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性又は両方であるかにかかわらず、羊膜、絨毛膜及び臍帯を含む胎盤のいずれの部分由来であることも、又は胎盤全体由来であることもできる。ある実施態様において、酸可溶性胎盤コラーゲンは、臍帯のないのヒト胎盤全体から調製される。
【0044】
胎盤嚢は、疎性結合組織によって密接に結合された2層で構成される。これらは、羊水層及び絨毛層として公知である。羊水層は、2層のうちの最も内側にあり、胎児を囲む羊水と接触すると共に、これらは、羊膜腔を形成する。羊水層は、無血管であり、基底膜の上を覆っている単純な円柱上皮により裏打ちされており、それは30〜60ミクロンの厚さである。柔毛膜は、嚢の外層にあり、これは、多数に細分化されている。血管樹は、胎盤で始まり、絨毛層を通って胎盤膜に延びている。絨毛層は、疎性結合組織によって羊水層から分離されて、合わさっており、2層は、120〜180ミクロンである。胎盤膜は、ムコ多糖類を積んだコラーゲンマトリックスを有し、これらが主に発生中の胎児のための保護嚢として役に立つと考えられる。また、膜は、母体循環に存在する感染性及び免疫学的因子のための障壁を維持する。胎盤膜は、能動的及び受動的な輸送の両方を有する。大部分の小分子及びタンパク質は、これらを通って自由に移動することができるが、IgMなどの巨大タンパク質は、基底層を通って横切ることができない。
【0045】
特定の実施態様において、本発明の方法に使用するための胎盤は、新生児の分娩後、できるだけ早く採取される。更にもう一つの特定の実施態様において、胎盤は、正常な健康な乳児の帝王切開分娩に続いて、直ちに採取される。好都合には、胎盤は、滅菌条件下で収集することができる。一部の実施態様において、胎盤は、さらなる処理の前に、分娩時刻から48時間貯蔵される。その他の実施態様において、胎盤は、さらなる処理の前に、分娩時刻から5日間まで貯蔵される。
【0046】
好都合には、胎盤、臍帯及び臍帯血は、更なる処理のために、分娩又は出産室から別の位置、例えば研究室に輸送することができる。胎盤は、任意に熱的に絶縁された滅菌バッグ又は容器などの滅菌の輸送装置に輸送することができる。一部の実施態様において、胎盤は、さらなる処理まで室温で貯蔵される。その他の実施態様において、胎盤は、さらなる処理まで冷蔵され、すなわち約2℃〜8℃の温度にて貯蔵される。更にその他の実施態様において、胎盤は、さらなる処理の前に5日間まで滅菌条件下で貯蔵される。特定の実施態様において、胎盤は、当業者に公知であるように、滅菌条件下で扱われ、処理される。研究室には、HEPA濾過システム(クラス1000を有するか、又はより優れたクリーンルーム分類によって定義されるもの)を備えることができる。特定の実施態様において、HEPA濾過システムは、本発明の方法を実施するための研究室を使用する少なくとも1時間前にオンにされる。
【0047】
ある実施態様において、胎盤を、失血させ、すなわち出生後に残っている臍帯血を完全に排液させる。一部の実施態様において、胎盤は、70%が失血され、80%が失血され、90%が失血され、95%が失血され、99%が失血される。
本発明は、制限されないが、HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMV及び胎盤の組織に混入することが知られるその他のウイルス病原体を含む伝染病について、当業者に公知の標準的技術を使用して、出産前の時点で妊婦をスクリーニングすることを包含する。好都合には、本方法は、連邦医薬品局によって記載された規制に従う伝染病をスクリーニングするために使用することができる。妊婦は、出生の1月以内に、特に出生の2週以内に、出生の1週以内に、又は出産時にスクリーニングしてもよい(例えば、血液試料が、診断目的で採取される)。母が上述の病原体に陰性又は非陰性反応を示したドナーから収集した組織のみを使用して、本発明のコラーゲン組成物を得る。好都合には、例えば特定の家族病歴を含む、完全に父系、並びに医学的及び社会的歴史のドナーの胎盤膜を得ることができる。
【0048】
ある実施態様において、ドナーは、当業者に公知の標準的な血清学的及び細菌学的試験を使用してスクリーニングされる。病原体を同定するいずれのアッセイ法又は診断試験も、本発明の方法の範囲内であるが、特定のアッセイ法には、高スループットのための能力と共に高い精度を合わせもつものである。具体的実施態様において、本発明は、抗原及び/又は抗体のための当業者に公知の標準的技術を使用してドナーをスクリーニングすることを包含する。抗原及び抗体の非限定的な例には:抗体スクリーン(ATY);アラニンアミノトランスフェラーゼスクリーニング(ALT);肝炎コア抗体(核酸及びELISA);B型肝炎表面抗原;C型肝炎ウイルス抗体;HIV-1及びHIV-2;HTLV-1及びHTLV-2;梅毒試験(RPR);CMV抗体試験;並びにC型肝炎及びHIV試験を含む。使用されるアッセイ法は、当業者に公知のような、核酸に基づいたアッセイ法又はELISAに基づいたアッセイ法であってもよい。
【0049】
本発明は、当業者に公知の標準的技術を使用して、新生児臍帯由来の血液を試験することを更に包含する(例えば、Cotorruelo らの論文, 2002, Gun Lab. 48(5 6):271 81; Maineらの論文, 2001, Expert Rev. Mol. Diagn., 1(1):19 29; Nielsenらの論文, 1987, J Clin. Microbiol. 25(8):1406 10を参照され、これらの全ては、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている)。一つの実施態様において、新生児臍帯由来の血液は、当業者に公知の標準的技術を使用して、細菌病原体(グラム陽性及びグラム陰性菌を含むが、限定されない)及び真菌について試験される。具体的実施態様において、新生児臍帯の血液の血液型及びRh因子は、当業者に公知の標準的技術を使用して決定される。もう一つの実施態様において、差動的CBCは、当業者に公知の標準的方法を使用して、新生児臍帯由来の血液から得られる。更にもう一つの実施態様において、好気的細菌培養は、当業者に公知の標準的方法を使用して、新生児臍帯由来の血液から採取される。正常限界の範囲内(例えば、正常レベルから全体で異常又は逸脱なし)のCBCを有する、血清学及び細菌学的に試験陰性、感染症及び混入について試験陰性又は非陰性のドナーから収集した組織のみを本発明のコラーゲン組成物を得るために使用する。
【0050】
一旦ヒト胎盤組織が得られたら、これを本発明のコラーゲン組成物を調製するために以下の工程に従って処理することができる。以下の工程は、経時的順序で示してあるが、当業者であれば、いくつかの工程の順序を本発明の範囲を越えることなく交換することができることを認識するであろう。更にまた、いくつかの工程は、本発明の所望のコラーゲン組成物の性質に応じて、任意として示してある。緩衝液交換、沈澱、遠心分離、再懸濁、希釈及びタンパク質組成の濃縮などの当業者に直ちに明らかな技術は、詳細に説明する必要はないものと思われる。例示的な調製を下記の実施例に記述してある。
【0051】
胎盤の任意の部分又は胎盤全体を本発明の方法に使用することができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、胎盤全体から調製される。しかし、ある実施態様において、コラーゲン組成物は、胎盤の絨毛又は羊膜部分から得ることができる。
これらの実施態様において、本発明は、臍帯が胎盤ディスクから分離され、羊膜が柔毛膜から分離されるように、胎盤膜を処理することを包含する。特定の実施態様において、羊膜は、胎盤膜を切断する前に柔毛膜から分離される。柔毛膜からの羊膜の分離は、胎盤膜の端から開始することができる。もう一つの実施態様において、羊膜は、鈍い切開を使用して、例えば手袋をした指で柔毛膜から分離される。柔毛膜及び胎盤ディスクからの羊膜の分離に続いて、臍帯断端を、例えばはさみで切断し、胎盤ディスクから剥離させる。ある実施態様において、羊膜及び絨毛膜の分離を、組織を裂くことのなく行うことができないときに、本発明は、1つの小片として胎盤ディスクから羊膜及び絨毛膜を切断し、次いでこれらを剥がして離すことを包含する。
【0052】
羊膜、柔毛膜又は胎盤全体は、本発明の方法に使用する前に貯蔵することができる。貯蔵技術は、当業者に明らかである。例示的な貯蔵技術は、米国特許出願公開第20040048796号及び第20030187515号に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
本発明の方法において、胎盤組織は、脱細分化(decellularized)される。胎盤の組織は、米国特許出願公開第20040048796号及び20030187515号に詳述したものなどの当業者に公知のいずれの技術に従って脱細分化(decellularized)させることもでき、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0053】
ある実施態様において、胎盤の組織は、浸透圧ショックにさらされる。浸透圧ショック工程により、有利な純度で本発明のコラーゲン組成物を得ることができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、浸透圧ショックは、組織の細胞を破裂させ、これにより細胞、細胞成分及び血液成分の除去を容易にすることができると考えられる。浸透圧ショックは、任意の清澄工程に付加することもでき、又はこれは、当業者の判断に従って単独の清澄工程であることができる。
【0054】
浸透圧ショックは、当業者に公知のいずれの浸透圧ショック条件においても行うことができる。このような条件は、高浸透ポテンシャルの、若しくは低浸透ポテンシャルの、又は交互に高低の浸透ポテンシャルの溶液中で組織をインキュベートすることを含む。高浸透ポテンシャル溶液は、NaCl(例えば、0.2〜1.0M)、KCl(例えば、0.2〜1.0又は2.0M)、硫酸アンモニウム、単糖、二糖(例えば、20% ショ糖)、親水性重合体(例えば、ポリエチレングリコール)グリセロールなどの1つ以上を含む溶液などの当業者に公知の任意の高浸透ポテンシャル溶液であることができる。ある実施態様において、高浸透ポテンシャル溶液は、塩化ナトリウム溶液である。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M、1.5M、1.75M、2M又は2.5MのNaClである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、約0.25〜5M、約0.5〜4M、約0.75〜3M又は約1.0〜2.0M NaClである。
【0055】
低浸透ポテンシャル溶液は、水、例えば当業者に公知の任意の方法に従って脱イオンされた水などの闘病者に公知の任意の低浸透ポテンシャル溶液であることができる。
ある実施態様において、浸透圧ショックは、塩化ナトリウム溶液中で、続いて水溶液中でのものである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも0.5M NaClである。ある実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも0.75M NaClである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも1.0M NaClである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも1.5M NaClである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも2.0M NaClである。ある実施態様において、1回の0.5M NaCl洗浄の後に1回の水洗浄が続く。ある実施態様において、2回の0.5M NaCl洗浄の後に1回の水洗浄が続く。ある実施態様において、1回の2M NaCl洗浄の後に1回の水洗浄が続く。これらの順序は、当業者の判断に従って繰り返することができる。
【0056】
ある実施態様において、浸透圧ショックによって生じるコラーゲン組成物は、塩基条件においてインキュベートすることができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、塩基洗浄により、コラーゲン組成物を汚染するかもしれないウイルス粒子を除去することができると考えられる。塩基条件は、当業者に公知の任意の塩基性の条件であることができる。特に、任意の塩基を、ウイルス粒子を除去することが公知の任意のpHにて使用することができる。塩基洗浄のための特定の塩基は、生体適合性塩基、揮発性塩基、及びコラーゲン組成物から容易かつ安全に除去されることが当業者に公知である塩基を含む。塩基は、例えば0.2〜1.0Mの濃度の当業者に公知の任意の有機又は無機塩基であることができる。ある実施態様において、塩基洗浄は、水酸化ナトリウム溶液中で行われる。水酸化ナトリウム溶液は、0.1M NaOH、0.25M NaOH、0.5M NaOH又は1M NaOHであることができる。特定の実施態様において、塩基洗浄は、0.1M又は0.5M NaOH中で行われる。
【0057】
ある実施態様において、浸透圧ショックにより生じるコラーゲン組成物は、酸性条件においてインキュベートすることができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、酸洗浄は、コラーゲン組成物を汚染するかもしれない低分子量ポリペプチドを沈殿させ、かつ/又は除去を容易にすることができると考えられる。酸性条件は、当業者に公知の任意の酸性条件であることができる。特に、任意の酸を、混入低分子タンパク質を沈殿させることが公知の任意のpHにて使用することができる。酸洗浄のための特定の酸は、生体適合性の酸、揮発性の酸及びコラーゲン組成物から容易かつ安全に除去されることが当業者に公知の酸である。酸は、例えば、0.2〜1.0Mの濃度のギ酸、クエン酸、塩酸又は酢酸などの当業者に公知の任意の有機又は無機酸であることができる。ある実施態様において、酸洗浄は、0.5Mの酢酸中で行われる。
【0058】
酸洗浄は、当業者の判断に従って任意の温度にて行うことができる。ある実施態様において、酸洗浄は、約0〜30℃、約5〜25℃、約5〜20℃又は約5℃〜15℃にて行われる。ある実施態様において、酸洗浄は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃又は約30℃にて行われる。特定の実施態様において、酸洗浄は、約5〜15℃にて行われる。
酸洗浄は、当業者の判断に従って適切な時間行うことができる。ある実施態様において、酸洗浄は、約1〜24時間、約2〜20時間、約5〜15時間、約8〜12時間又は約2〜5時間行うことができる。
【0059】
必要に応じて、ペプシン又はパパインなどの酵素を酸洗浄液に添加することができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、酸洗浄においてペプシンがコラーゲン組成物中の不純物を減少させることができることが観察される。ペプシンは、当業者の判断に従って、ある量の酸洗浄液であることができる。いくつかの実施態様において、約0.1g、約0.5g、約1.0g、約2.0g又は約5.0gのペプシン/kg(凍結胎盤)が酸洗浄液中にある。その他の実施態様において、約0.1g、約0.5g、約1.0g.約2.0g又は約5.0gのペプシン/胎盤が酸洗浄液中にある。ある実施態様において、約0.1〜2.0g/l、約0.2-1.5g/l又は約0.5〜1.0g/lのペプシンが酸洗浄液中にある。一部の実施態様において、約0.1g/l、約0.2g/1、約0.5g/l、約1.0g/l又は約2.0g/lのペプシンが酸洗浄液中にある。特定の実施態様において、約0.5g/lのペプシンが、約5℃〜15℃にて約2時間酸洗浄液中にある。特定の実施態様において、約0.5g/lのペプシンが、約5℃〜6℃にて約18〜24時間酸洗浄液中にある。
【0060】
ある実施態様において、アテロペプチドコラーゲンが望まれる場合、コラーゲン組成物を、部分的又は完全にコラーゲンからテロペプチドを除去することができる酵素と接触させる。当業者には明らかであるように、この工程は、アテロペプチドコラーゲンが望まれないときには使用されない。該酵素は、コラーゲンからテロペプチドを除去することができる当業者に公知のいずれの酵素であることもできる。ある実施態様において、該酵素は、ペプシン又はパパインである。テロペプチドを除去するためにコラーゲン組成物を酵素で処理する方法は、米国特許番号4,511,653号、第4,582,640号、第5,436,135号及び第6,548,077号に詳述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。一般に、該酵素は、当業者に公知のテロペプチドの除去のために適した条件下でコラーゲン組成物と接触される。このような条件は、例えば適切なpHで、適切な酵素濃度にて、適切な溶液の体積で、適切な温度にて、及び適切な時間にコラーゲン組成物と酵素を接触させることを含む。
【0061】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従って低pH条件下で酵素と接触させることができる。ある実施態様において、コラーゲン位置は、pH約1〜3又は約2〜3にてペプシンと接触される。
ある実施態様において、酵素は、高温にてコラーゲン組成物と接触される。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、高温では、最終コラーゲン組成物中のI型コラーゲンの収率を改善することができると考えられる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、約15〜40℃、約20〜35℃、約25〜30℃、約20〜30℃又は約23〜27℃にてペプシンと接触させる。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、約23〜27℃にてテロペプチドを除去するために十分な時間でペプシンと接触される。
【0062】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために十分な時間で酵素と接触される。ある実施態様において、コラーゲンは、少なくとも5、10、15、20、25又は30時間ペプシンと接触される。ある実施態様において、これは、約5〜30時間、約10〜25時間又は約20〜25時間ペプシンと接触される。ある実施態様において、ある約8、16、24又は32時間のペプシンと接触される。
【0063】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために適切な量で酵素と接触される。いくつかの実施態様において、約0.1g、0.5g.1.0 g、2.0g又は5.0gペプシン/kg(凍結胎盤)がコラーゲン組成物と接触される。その他の実施態様において、約0.1g、0.5g、1.0 g、2.0g又は5.0gのペプシン/胎盤がコラーゲン組成物と接触される。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、約0.1〜10.0g/L、約0.5〜5/L、約1〜2.5g/L又は約0.5〜1.5g/Lのペプシンと接触される。一部の実施態様において、コラーゲン組成物は、約0.1g/L、約0.2g/L、約0.5g/L、約1.0g/L、約2.0g/L、5g/L又はl0 g/Lペプシンと接触される。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、酢酸溶液中でpH約2〜3で、約23℃-27℃にて、約16〜24時間約0.5〜1.0g/Lのペプシンと接触される。
【0064】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために適した溶液体積:胎盤で酵素と接触される。胎盤に対して高い体積比だとペプシンによる効果を最大にすることができることが観察される。ある実施態様において、胎盤あたり約1、2、4、又は8体積の酢酸溶液が使用される。特定の実施態様において、胎盤あたり約2体積の酢酸溶液が使用される。
【0065】
更なる工程において、コラーゲン組成物は、塩析によって精製される。塩析は、当業者に公知の任意の塩析であることができる。塩は、例えば、タンパク質の沈澱のために有用な当業者に公知の硫酸アンモニウム、KCl、NaCl又はその他のいかなる塩でもあることができる。塩は、当業者に公知のいずれの技術によってコラーゲン組成物に添加することもできる。例えば、塩は、所望の濃度が得られるまで、濃縮された液体の塩溶液の形態でコラーゲン組成物に添加することができる。ある実施態様において、初期の低塩の塩析に続いて高塩析が行われる。これらの方法において、本発明のコラーゲン組成物のための所望のコラーゲンは、低塩の塩析における沈殿の際に残ったままで、高塩の塩析において沈殿する。特定の実施態様において、低塩の塩析は、約0.2MのNaClにおけるものであり、一方、高塩の塩析は、約0.7M NaClにおけるものである。ある実施態様において、高塩の塩析は、コラーゲン組成物を精製するために使用される。ある実施態様において、高塩の塩析は、約0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M又は1.0M NaClにおけるものある。特定の実施態様において、高塩の塩析は、約0.7MのNaClにおけるものである。それぞれの沈澱にて、本発明のコラーゲン組成物は、当業者に明らかであろう遠心分離、濾過、再懸濁及び濃度などの標準的技術によって上清又は沈殿物から回収することができる。それぞれの塩析は、当業者の判断に従って繰り返することができ、沈殿物は、当業者の判断に従って必要に応じて洗浄することができる。いずれの生じる沈殿物も、例えば酸性条件下で再溶解することができ、又は再懸濁することができる。
【0066】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、クロマトグラフィーによって精製することができる。クロマトグラフィーは、当業者に公知の任意のクロマトグラフィーであることができる。クロマトグラフィーは、例えばサイズ若しくはイオン交換クロマトグラフィー又はタンパク質の精製のために有用な当業者に公知のその他のいかなるクロマトグラフィーでもあることができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、イオン交換クロマトグラフィーによって精製される。ある実施態様において、陰イオン交換媒体及び/又は吸着媒体は、不純物タンパク質を結合することができ、陽イオン交換媒体は、コラーゲンを結合することができる。次いで、コラーゲンは、例えば塩化ナトリウム溶液などの塩溶液による選択的溶出によって回収することができる。
【0067】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、低分子量のフィルターで濾過して試料を濃縮し、及び内毒素を取り除くことができる。例えば、コラーゲン組成物は、100kDaのフィルター若しくは30kDフィルター又は両方で濾過して、濃縮して及び/又は内毒素を除去することができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、高分子量のフィルターで濾過してウイルスを除去することができる。例えば、コラーゲン組成物は、1000kDa、750kDa又は500kDaで濾過してHIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス、パルボウイルス及び当業者によって望まれないその他のウイルス混入物などのウイルスを除去することができる。このような方法は、以下に詳細に記述してある。
【0068】
必要に応じて、本発明のコラーゲン組成物は、原繊維化によって更に処理することができる。原繊維化は、当業者に公知のコラーゲンを原繊維化するためのいずれの技術によって行うこともできる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、3〜3.5mg/mlのコラーゲン、30mMリン酸ナトリウム、pH 7.2にて、約32℃で約20〜24時間原繊維化される。コラーゲン組成物の原繊維化は、米国特許第4,511,653号、第4,582,640号及び第5,436,135号に広範に記述されており、これら内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。必要に応じて、コラーゲン組成物は、原繊維化の前に標準的技術に従って濃縮することができる。任意に、コラーゲン組成物は、例えば20mM Na2PO4、pH 7.4、130mM NaCl中で1回以上洗浄することができる。
【0069】
所望の場合、本発明のコラーゲン組成物は、架橋することができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、架橋前に原繊維化される。架橋は、当業者に公知の任意の架橋剤、例えば上記の節において論議した架橋剤であることができる。ある実施態様において、架橋剤は、グルタルアルデヒドであることができ、架橋は、当業者に公知のコラーゲンのグルタルアルデヒド架橋法に従って行うことができる。その他の実施態様において、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル又はゲニピンであることができる。特定の実施態様において、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0070】
架橋は、当業者に明らかな技術又は本明細書に記述されたものによって行うことができる。ある実施態様において、重量基準でのコラーゲンの量を基準として、約0.1:10〜10:0.1の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが使用される。ある実施態様において、比は、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1又は10:1である。ある実施態様において、比は、重量基準で4:1 BDDE:コラーゲンである。標準的技術、例えば25℃にて約24時間の、又は溶液のpHが10.0〜10.5に到達するまでのBDDEとのインキュベーションを架橋のために使用することができる。
【0071】
架橋は、触媒を添加せずに進行させることができるが、ある実施態様において、触媒の使用により、都合よく反応の速度を上げることができる。エポキシ基又はアルデヒド基などの架橋剤上の反応基とアミン、カルボキシル基又はヒドロキシル基などのコラーゲン上の官能基との間の反応を促進するために、当業者に公知のいずれの触媒を使用することもできる。このような触媒には、ルイス酸及びルイス塩基を含む。例には、三級アミン:トリエチルアミン、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含む。また、触媒は、ナトリウム又は水酸化カリウムなどの無機塩基であることができる。4置換された有機ホウ酸塩などのその他の化合物、エチルトリフェニルホスホニウムブロミドなども適用できる。特定の実施態様において、架橋反応は、ピリジンなどの触媒によって触媒される。
【0072】
一部の実施態様において、架橋剤とコラーゲンとの間の共有結合は、例えば安定性を改善するために、還元することができる。還元は、本発明のコラーゲン組成物を当業者に公知の任意の還元剤と接触させることによって達成することができる。ある実施態様において、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、β-メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトエチルアミン、ベンジルメルカプタン、チオクレゾール、ジチオスレイトール又はトリブチルホスフィンなどのホスフィンである。水素化ホウ素ナトリウムは、有用な例である。ある実施態様において、コラーゲンは、還元剤での還元前に架橋される。コラーゲン組成物及び架橋されたコラーゲン組成物の還元は、米国特許第4,185,011号、第4,597,762号、第5,412,076号及び第5,763,579号に広範に記述されており、これらの内容は、これらの全体において引用により本明細書に取り込まれている。
【0073】
ある実施態様において、コラーゲン及びヒアルロン酸を含む組成物が望まれる場合、コラーゲン組成物は、当業者に公知の任意の技術に従ってコラーゲンをヒアルロン酸と接触されることによって調製することができる。架橋のないヒアルロン酸を更に含むコラーゲン組成物を調製するための技術は、米国特許番号4,803,075号及び第5,137,875号に広範に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。架橋が望まれる場合、架橋は、本明細書に記述した方法に従って行うことができる。ある実施態様において、コラーゲンは、ヒアルロン酸との接触前に架橋される。更なる実施態様において、ヒアルロン酸は、コラーゲンとの接触前に架橋される。ある実施態様において、コラーゲン及びヒアルロン酸は、互いの接触前に架橋される。ある実施態様において、コラーゲン及びヒアルロン酸を接触させ、次いで同じ組成物において架橋させる。これらの組成物のいずれも、当業者に明らかであろうとおり、本明細書に記述した方法に従って更に還元することができる。
【0074】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知の方法に従って機械的剪断によって更に処理することができる。例示的剪断技術は、米国特許第4,642,117号に記述され手織り、その内容は、その全体において引用により本明細書に取り込まれている。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知の組織ホモジナイザーで剪断される。
【0075】
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物中のプロテアーゼ活性を限定するための工程を行うことができる。金属イオンキレート剤、例えば1,10-フェナントロリン及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの添加物は、多くのタンパク質分解酵素にとって好ましくない環境を生じる。コラゲナーゼなどのプロテアーゼに対して最適以下条件を提供することにより、コラーゲン組成物を分解から保護するのを助けてもよい。プロテアーゼに対する最適以下条件は、溶液中で利用可能なカルシウム及び亜鉛イオンの量を除去するか、又は制限するように組成物を製剤化することによって達成してもよい。多くのプロテアーゼは、カルシウム及び亜鉛イオンの存在下において活性であり、カルシウム及び亜鉛イオンのない環境では、これらの活性の多くを失う。好都合には、コラーゲン組成物は、pH条件、カルシウム及び亜鉛イオンの利用能の減少、金属イオンキレート剤の存在及びコラゲナーゼに特異的なタンパク分解阻害剤の使用を選択して調製される。例えば、コラーゲン組成物には、水の緩衝された溶液、pH 5.5〜8又はpH 7〜8を含んでいてもよく、カルシウム及び亜鉛イオンを含まず、EDTAなどの金属イオンキレート剤を含む。加えて、プロテアーゼの活性を制限するために、コラーゲン組成物の治療の間に温度及び時間パラメーターの制御を使用してもよい。
【0076】
(4.4 コラーゲン組成物の特性付け)
(4.4.1 生物化学的性質)
当該技術分野において公知で、かつ本明細書において例証された生化学に基づいたアッセイ法を本発明のコラーゲン組成物の生化学的組成物を決定するために使用してもよい。本発明は、例えば吸光度に基づいたアッセイ法及び比色に基づいたアッセイ法などの、試料中の総タンパク質含有量を決定するための生化学に基づいたアッセイ法を包含する。吸光度に基づいたアッセイ法は、280nm(例えば、Layne, E, 分光光度的及び濁度のタンパク質測定方法(Spectrophotometric and Turbidimetric Methods for Measuring Proteins), Methods in Enzymology 3: 447-455, (1957); Stoscheck, CM, タンパク質の定量化(Quantitation of Protein), Methods in Enzymology 182: 50-69, (1990)を参照されたい;これらは、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)、205nmにて吸光度を測定するアッセイ法及び試料の吸光係数に基づいたアッセイ法(例えば、Scopes, RK, Analytical Biochemistry 59: 277, (1974); Stoscheck, CM. タンパク質の定量化(Quantitation of Protein), Methods in Enzymology 182: 50-69, (1990)を参照されたい;これらは、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)を含むが、限定されない。本発明は、限定されないが、コラーゲン(例えば、コラーゲンI型、III型、IV型)、ラミニン、エラスチン、フィブロネクチン及びグリコサミノグリカンを含む本発明のコラーゲン組成物中の特定タンパク質の総含量を決定するための方法を包含する。
【0077】
比色に基づいたアッセイ法は、修飾されたLowryアッセイ法、ビウレットアッセイ法、ブラッドフォードアッセイ法、ビシンコニン酸(Smith)アッセイ法を含むが、限定されない(例えば、Stoscheck, CM, タンパク質の定量(Quantitation of Protein), Methods in Enzymology 182: 50-69 (1990)を参照されたい)。
【0078】
具体的実施態様において、ブラッドフォード色素結合アッセイ法(Bradford, M., Analytical Biochemistry, 72, 248 (1976)、これは、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)を使用して本発明のコラーゲン組成物中の総タンパク質含有量を測定する。本発明の方法に使用するための例示的なBradfordアッセイ法は、以下を含んでいてもよい:アッセイ法は、BIO-RAD RAD, Basedmond, CA, USAを介して入手可能な、ブラッドフォード色素結合アッセイ法を使用して行うことができる。タンパク質アッセイ法は、種々の濃度のタンパク質に応答する色素クマシーブリリアントブルーR-250の色相の変化に基づく。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のヒトコラーゲン標準吸光度(595ナノメートルにて)を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。試験試料、例えば羊膜の試料におけるコラーゲンの濃度は、標準曲線に参照することによって決定される。本アッセイ法は、0.2〜1.4mg/mLの範囲のコラーゲン濃度の測定が可能であり、微量アッセイ法として25μgまでのタンパク質濃度を測定する標準的形式で展開される。標準的アッセイ法のためには、100mMクエン酸(pH 2.4)に溶解したコラーゲンを0.1mLの総容積にて0.1〜1mg/mLの濃度にて1.5mLマイクロ遠心に分注する。それぞれのチューブに1mLのクマシーブルー色素を添加する。試料をボルテックスし、室温で10分間静置させる。吸光度を595ナノメートル(nm)にて測定する。微量アッセイ法のためには、100mMクエン酸(pH 2.4)に溶解したコラーゲンを0.1mL(2.5〜30μg/mL)の総容積にて96ウェルプレートのウェルに分注する。それぞれのウェルに10μLの色素試薬を添加する。試料をボルテックスして、10分間室温でインキュベートした後、プレートリーダーにおいて595nmの吸光度を測定する。本発明のコラーゲン組成物のためには、試験試料を3回アッセイすることができる。タンパク質濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。タンパク質濃度は、膜の総乾燥重量の割合として算出される。約10%のエラーの発生する余地内で、膜におけるそれぞれのタンパク質含有量は、本質的に膜の総乾燥重量の95%以上である。含水量は、低く、実験誤差内(およそ、10%)であろう。
【0079】
本発明のコラーゲン組成物の総コラーゲン量の推定は、当業者に公知で、及び本明細書において例証した方法を使用して特徴づけてもよい。特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物のコラーゲン量は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に基づいたアッセイキット(SIRCOL)を使用して測定される。本アッセイ法では、特異的コラーゲン結合色素として、Sirius Red(又は、Direct Red 80)を利用する。コラーゲンに結合した色素は、UV-Vis分光光度計において540mmの吸光度の濃度依存的な増大を示す。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のウシコラーゲン標準吸光度を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。試験試料中、例えば羊膜試料中のコラーゲンの濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。例示的アッセイ法において、コラーゲン(1mg/mL)を、1.5mLのマイクロ遠心チューブに5〜100μg/100μLの濃度にて分注する。試料体積を水で100μLに合わせる。それぞれの試料に、1mLのSIRCOL色素試薬を室温で添加する。試料チューブの蓋をして、室温で30mm間、機械的振盪しながらインキュベートさせる。次いで、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、ピペッターを使用して液体を排液させる。それぞれのチューブの底の赤みがかった沈殿物を1mLの0.5M (水酸化ナトリウム)に溶解する。試料についてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して540nmにて測定する。標準的検量線をそれぞれの試料におけるコラーゲンの濃度対540nmにおける吸光度(OD)を使用してプロットする。実験誤差を決定するために、本アッセイ法を単一の低濃度(10μg/100μL)のコラーゲン標準にて繰り返す(n = 10)。膜試料を、同じプロトコルを使用してアッセイし、試料を100μLの総容積で添加する。
【0080】
更にその他の実施態様において、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した標準的方法を使用して本発明のコラーゲン組成物のコラーゲン型を決定するために、例えばELISAアッセイ法を使用してもよい。本発明のコラーゲン組成物中の、コラーゲンの型、例えばコラーゲンI型、III型及びIV型を決定するための例示的アッセイ法は、例えばAnthrogen-CIA Collagen-I from Chondrex, Inc., Redmond, WA, USAによってキットとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ法の使用を含む。III型及びIV型の研究のためには、一次抗体(捕獲抗体)及び二次抗体(検出抗体)、並びにコラーゲン標準をRockland Immunochemicals, gilbertsville, PAから得てもよい。検出抗体は、ストレプトアビジンペルオキシダーゼに結合するビオチン化されたヒトコラーゲンI型、III型又はIV型である。色素生産性基質及び尿素及びH2O2との酵素反応により、黄色を示し、これが490nmにてUV-Vis分光法を介して検出される。コラーゲン型の量を定量化するために、標準較正曲線を公知の濃度の一連のヒトコラーゲン標準試料で作成する。羊膜試験試料におけるコラーゲン濃度を、標準曲線を参照することによって決定する。アッセイプロトコルは、ELISAキットの推奨に従って展開される。標準較正曲線を作成するために、96ウェルトレーの10〜12ウェルを100×希釈したキットと共に提供される捕獲抗体の100μLを添加することによって捕獲抗体(抗ヒトI型コラーゲン抗体、抱合されていない)で被覆する。一晩インキュベーション後、ウェルを洗浄液緩衝液で3回洗浄し、結合していない抗体を除去する。次いで、ヒトコラーゲンI型を0〜5μg/mLで濃度を増大して100μL体積でウェルに添加する。室温で2時間インキュベーション後、ウェルを洗浄液緩衝液で3回洗浄して、結合していないコラーゲンを除去する。次いで、ビオチン化されたコラーゲンI抗体をウェル内の抗体-コラーゲン複合体に100μLの体積で添加し、2時間室温で結合させる。結合していない抗体を洗浄液緩衝液で3回洗浄する。次いで、検出酵素ストレプトアビジンペルオキシダーゼをキットと共に提供される酵素の200×希釈された試料を添加し、これを室温で1時間インキュベートさせることによって抗体-コラーゲン-抗体複合体に結合させる。96ウェルプレートを繰り返し洗浄し(6回)、全ての結合していない酵素を除去する。色素生産性基質+尿素/H2O2を各々のウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行させる。反応を50μLの2.5N硫酸の添加によって終結させる。吸光度を490nmにて測定する。
【0081】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法を使用して、本発明のコラーゲン組成物の総エラスチン含量を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物のエラスチン含量を測定するための例示的アッセイ法は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に基づいたアッセイキット(FASTIN)を含み得る。本アッセイ法は、特異的エラスチン結合色素として5,10,15,20-テトラフェニル-21,23-ポルフリン(5,10,15, 20-tetraphenyl-21,23-porphrine)(TPPS)を利用する。(例えば、Winkleman, J. (1962), Cancer Research, 22,589-596を参照されたい、これは、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)。エラスチンに結合した色素は、UV-Vis分光光度計において513nmの吸光度の濃度依存的増大を示す。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のウシエラスチン標準吸光度を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。試験試料中、例えば羊膜試料中のエラスチンの濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。エラスチン(1mg/mL)を5〜100μg/l00μLの濃度にて1.5mLのマイクロ遠心チューブに分注する。試料体積を水で100μLに合わせる。それぞれの試料に、1mLのエラスチン沈澱試薬(トリクロロ酢酸+アルギニン)を4℃にて添加し、同じ温度にて一晩貯蔵する。一晩の沈澱工程に続いて、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、液体を、ピペッターを使用して排液する。それぞれの試料に1mLのFASTIN色素試薬(TPPS)を100μLの90%の飽和硫酸アンモニウムと共に添加する。次いで、試料チューブの蓋をして、機械振盪しながら室温で1時間インキュベートさせる。硫酸アンモニウムを作用させて、エラスチン-色素複合体を沈殿させる。混合工程の1時間後、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、液体を、ピペッターを使用して排液する。それぞれのチューブの底の茶色の沈殿物を、グアニジンHClのI-プロパノール溶液である1mLのFASTIN解離試薬に溶解する。試料についてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して513nmにて測定する。それぞれの試料のエラスチンの濃度対513nmにおける吸光度(OD)を使用して、標準検量線をプロットする。本アッセイ法における実験誤差を決定するために、アッセイ法を単一の低濃度(10μg/100μL)の標準エラスチンにて繰り返す(n=10)。膜試料を、同じプロトコルを使用してアッセイし、試料を100μLの総容積で添加する。それぞれの試料を3回アッセイする。
【0082】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法を使用して本発明のコラーゲン組成物の総グリコサミノグリカン(GAG)含量を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物におけるGAGの存在は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に基づいたアッセイキット(BLYSCAN)を使用して測定してもよい。本アッセイ法は、特異的GAG結合色素として1,9-ジメチル-メチレンブルーを利用する。GAGに結合した色素は、UV-Vis分光光度計において656nmの吸光度の濃度依存的な増大を示す。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のウシGAG標準吸光度を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。羊膜試験試料中のGAGの濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。ウシGAG(0.1mg/mL)を0.5〜5μg/100μLの濃度にて1.5mLのマイクロ遠心チューブに分注する。試料体積を水で100μLに合わせる。それぞれの試料に1mLの1,9-ジメチル-メチレン色素試薬を室温で添加する。試料チューブの蓋をして、機械的振盪しながら室温で30分間インキュベートさせる。次いで、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、ピペッターを使用して液体を排液させる。それぞれのチューブの底の赤みがかった沈殿物を1mLの色素解離試薬に溶解する。試料についてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して656nmにて測定する。標準的検量線をそれぞれの試料におけるGAGの濃度対540nmにおける吸光度(OD)を使用してプロットする。実験誤差を決定するために、本アッセイ法を単一の低濃度(10μg/100μL)のGAG標準にて繰り返す(n = 8)。膜試料を、同じプロトコルを使用してアッセイし、試料を100μLの総容積で添加する。それぞれの試料を3回アッセイする。
【0083】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法を使用して、本発明のコラーゲン組成物の総ラミニン含量を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物における総ラミニン含量を決定するための例示的なアッセイ法には、以下を含んでいてもよい:Takara Bio Inc., Shiga、Japan(Cat # MKIO7)からキットとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ法を使用してもよい。キットには、ヒトラミニンに対するマウスモノクローナル抗体である一次(捕獲抗体)でプレコートされた96ウェルプレートを含む。二次抗体(検出抗体)及びヒトラミニン標準は、キットと共に提供される。検出抗体は、ペルオキシダーゼと抱合されたヒトラミニン抗体である。色素生産性基質テトラメチルベンジジン及びH2O2との酵素反応により、青色を示し、これが450nmにてUV-Vis分光法を介して検出される。ラミニンの量を定量化するために、標準構成曲線を、公知の濃度の一連のヒトラミニン標準試料(キットと共に提供される)で作成する。羊膜の試験試料中のラミニンの濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。アッセイプロトコルは、Elisaキットの推奨に従って展開される。標準較正曲線を作成するために、ヒトラミニン標準を、キットと共に提供される抗体がプレコートとされた96ウェルトレーの個々のウェルに5ng/mL〜160ng/mLの濃度を増大しつつ100μLの最終体積で添加する。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを3回洗浄緩衝液で洗浄して(0.05% Tweenを含むPBS)、結合していないラミニンを除去する。次いで、ペルオキシダーゼ抱合ラミニン抗体をウェル内の抗体-ラミニン複合体に100μL体積で添加し、室温で1時間結合させる。96ウェルプレートを繰り返し洗浄し(4×)、あらゆる結合していない酵素/抗体複合体を除去する。色素生産性基質+ H2O2を各々のウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行させる。反応を100μLの2.5N硫酸の添加によって終結させる。吸光度を450nmにて測定する。可溶化された膜の試料を1000ng/mLの濃度にて試験する。それぞれの膜試料を3回試験する。ラミニン濃度は、以下に示すように総膜重量の濃度として示される。
【0084】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法を使用して本発明のコラーゲン組成物の総フィブロネクチン含量を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物の総フィブロネクチン含量を決定するための例示的アッセイ法は、以下を含んでいてもよい:Takara Bio Inc., Shiga, Japan(Cat # MK1 15)からキットとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ法を使用してもよい。キットには、一次(捕獲抗体)ヒトフィブロネクチンに対するマウスモノクローナル抗体がプレコートされた96ウェルプレートを含む。二次抗体(検出抗体)及びヒトフィブロネクチン標準は、キットと共に提供される。検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ヒトフィブロネクチン抗体である。色素生産性基質テトラメチルベンジジン及びH2O2との酵素反応により、青色を示し、これが450nmにおけるUV-Vis分光法を介して検出される。フィブロネクチンの量を定量化するために、標準較正曲線を公知の濃度の一連のヒトフィブロネクチン標準試料(キットと共に提供される)で作成する。試験試料中のフィブロネクチンの濃度を、標準曲線を参照することによって決定する。アッセイプロトコルは、ELISAキットの推奨に従って展開される。標準較正曲線を作成するために、ヒトフィブロネクチン標準を、キットと共に提供される抗体がプレコートとされた96ウェルトレーの個々ウェルに12.5ng/mL〜400ng/mLの濃度を増大しつつ100μLの最終体積で添加する。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを3回洗浄緩衝液で洗浄して(0.05% Tweenを含むPBS)、結合していないフィブロネクチンを除去する。次いで、ペルオキシダーゼ抱合フィブロネクチン抗体をウェル内の抗体-フィブロネクチン複合体に100μL体積で添加し、室温で1時間結合させる。96ウェルプレートを繰り返し洗浄し(4×)、あらゆる結合していない酵素/抗体抱合体を除去する。色素生産性基質+ H2O2を各々のウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行させる。反応を100μLの2.5N硫酸の添加によって終結させる。吸光度を450nmにて測定する。可溶化された膜の試料を1000μg/mLの濃度にて試験する。それぞれの膜試料を3回試験する。
【0085】
(4.4.2 生体適合性研究)
本発明のコラーゲン組成物は、生物学的起源であり、有意な量のコラーゲンを含む。しかし、動物供与源(ウシ及びブタ)に由来するコラーゲンとは異なり、ヒトコラーゲンは、非免疫原性である。非免疫原性の人体組織は、他人の人体組織と本質的に生体適合性であるので、いくつかの標準的生体適合性試験(例えば、経皮刺激及び感作、急性全身毒性)を行う必要がない。本発明は、本発明のコラーゲン組成物の生体適合性を決定するためのアッセイ法を包含する。本明細書に使用される生体適合性とは、生活組織において毒性の、有害な、若しくは免疫学的な反応又は拒絶を生じないことによって、生物学的に適合性の特性をいう。体に人工物質を使用していると、未知の材料に対する身体の反応が主要な懸念となり、それ故、材料の生体適合性は、このような材料における重要な設計事項である。本発明の範囲内に包含される生体適合性アッセイ法は、細胞障害性アッセイ法、ウサギ眼刺激性試験、溶血アッセイ法及び発熱性アッセイ法を含むが、限定されない。本発明の生体適合性アッセイ法は、細胞に基づいた、又は無細胞に基づいたアッセイ法である。
【0086】
更にもう一つの特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の細胞障害性は、ISO MEM溶出試験(実施例6.4.2.2)を使用して決定される。この研究の目的は、コラーゲン組成物が、培養されたマウス線維芽細胞において細胞障害反応を誘発する能力を評価することである。例示的アッセイ法において、5%のウシ胎児血清(FBS)を補ったイーグル最小必須培地(EMEM)が抽出試験試料に使用される。また、培地には、以下の1つ以上が補充される:L-グルタミン、HEPES、ゲンタマイシン、ペニシリン、バンコマイシン及びアンフォテリシンB(ファンギゾン)。L-929細胞(マウス線維芽細胞)の培養液を培養し、空気中の5±1%の二酸化炭素の加湿された雰囲気において37±1℃にて使い捨て組織培養実験器具の単層として使用する。試験試料を、120cm2試料及び20ml-E-MEMプラス5%のFBSに等しい比率を使用して無傷のまま抽出する。試験試料を37±1℃にてE-MEMプラス5%のFBS中で5±1%の二酸化炭素にて24〜25時間抽出する。抽出期間の後、維持培地を試験培養ウェルから除去し、1mlの試験培地/抽出物と置き換えて、対照培地/抽出物及びポジティブ対照培地を塩化カドミウムでスパイクする。ポジティブ、中間及びネガティブ対照を試験試料と並行して実行する。塩化カドミウムでスパイクした試験培地/抽出物及び対照培地/抽出物及びポジティブ対照培地をプレートに3回まき、空気中の5±1%二酸化炭素の加湿された雰囲気において37±1℃にて72±4時間インキュベートする。培養を24、48及び72±4時間インキュベーション期間にて顕鏡観察によって細胞毒性について評価する。細胞障害性を評価するための基準は、肉芽形成、鋸歯状突起又は丸まりなどの細胞の形態学的変化及び溶解又は分離による単層からの生細胞の喪失を含む。試験の妥当性は、ネガティブ対照培養が試験の期間の全体にわたって健康な正常外見を維持することを必要とする。毒性の程度は、以下の通りに記録される:
【0087】
0 なし 分散した細胞質内顆粒;細胞溶解なし。
1 軽微 細胞の20%が、及び細胞質内の顆粒なしで、ラウンド(ゆるく付着される)であるよりでなく;随時の溶解した細胞は、存在する。
2 軽度 細胞の50%以下が丸く、細胞質内顆粒を欠いている;広範な細胞溶解及び細胞間空領域なし。
3 中程度 細胞層の70%以下が丸い細胞を含み、及び/又は溶解される。
4 重篤 ほとんど完全な細胞層の破壊。
【0088】
USPによれば、「0」、「1」又は「2」を記録する試験項目は、非中毒性であるとみなされる。「3」又は「4」を記録する試験項目は、有毒であるとみなされる。ポジティブ対照試料は、「3」又は「4」のスコアを有さなければならず、ネガティブ対照試料は、実証試験について「0」のスコアを有さなければならない。
【0089】
ウサギの接眼面は、ヒト皮膚よりも感受性が高いことが公知であり、従って、ウサギ眼刺激研究が本発明のコラーゲン組成物の生体適合性を評価するために使用される。例示的アッセイ法において、試料を一次眼刺激についてスクリーニングする。羊膜を0.05%のデオキシコール酸一水和物ナトリウム塩(D-Cell)の水溶液を使用して清浄する。試験は、連邦危険物法(FHSA)規則、16CFR 1500の指針に従って行うことができる。例示的アッセイ法において、対照眼は、補助的光源で肉眼検査によって、ウサギについて臨床的に正常であると判断される。いずれの既存の角膜傷害を検出するためにも、眼をフルオレッセイン染料で処理し、0.9%のUSP生理的食塩水(PSS)で洗浄して、暗い部屋にて紫外線で観察する。試料は、標準的技術に従ってそれぞれのウサギの片眼の下結膜嚢に滴下注入する。それぞれのウサギの反対の眼は、未処置のままにし、比較対照として役立てる。動物を処理後にそれらのケージに戻す。投薬の24、48及び72時間後にて、それぞれのウサギの試験眼を未処置の対照眼と比較して補助的光源及び適切な拡大率で調べて、眼刺激について類別する。角膜傷害を検出し、又は確認するためには、試験眼をフルオレッセイン染料で処理し、PSSで洗浄して、24時間にて紫外線灯での暗条件下で調べる。FHSA修飾ドレーズスコアリング基準に従って反応を記録する。有意な陽性反応を示す3匹の動物の1匹を境界知見とする。有意な陽性反応を示す3匹の動物のうちの2匹を有意な陽性反応とし、試験品を刺激物とみなす。
【0090】
本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法(実施例6.4.2.4を参照されたい)を使用して本発明のコラーゲン組成物の溶血特性を決定することを包含する。溶血は、血液に接触するであろう試験試料の溶血特性を記述する。これは、材料及び装置と接触する際の赤血球膜脆弱性を測定するので、これは特に有意なスクリーニング試験と考えられる。例示的アッセイ法において、手順には、血球懸濁液に試験材料を曝露すること、次いで放出されるヘモグロビンの量を決定することを含む。試験は、静状態下でヒト血液と試験試料の直接接触して実行する。赤血球によって放出されるヘモグロビンの量を分光光度的に540nmにて(シアノメトヘモグロビンへの変換後)ネガティブ及びポジティブ対照と共に測定する。試料及び対照のための溶血インデックスは、以下の通りに算出する:
【0091】
溶血インデックス=ヘモグロビン放出(mg/ml)×100
存在するヘモグロビン(mg/ml)
以下の場合:ヘモグロビン放出(mg/ml)=(定数 + X 係数)×
光学濃度×16。存在するヘモグロビン(mg/mL)=希釈した血液10±1mg/mL。
【0092】
本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法(実施例6.4.2.5を参照されたい)を使用して本発明のコラーゲン組成物の発熱原性を決定するための方法を包含する。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の発熱原性は、例えばカブトガニ(Limulus・Amebocyte)可溶化液(LAL)試験を使用して、本発明のコラーゲン組成物中の細菌内毒素の存在を測定することによって決定する。この試験は、細菌内毒素の検出及び定量化のためのインビトロでのアッセイ法である。例示的試験において、コラーゲン組成物の98試料(ロットあたりn=1)をそれぞれ1×2cmで測定し、抽出について個々に試験する。抽出は、それぞれの試料を30mLの抽出液体中で37〜40℃にて40〜60分間、オービタルシェーカーでの断続的に回旋しつつ洗浄することによって行う。それぞれの試料抽出物のpHは、pH紙で検証すると6〜8の間である。発熱物質レベルは、1mLあたり0.05の内毒素単位(EU)の試験感受性で、動力学的濁度比色試験(Kinetic Turbidimetric Colorimetric Test)によって測定する。試料あたりの総内毒素レベルは、検出された内毒素値(EU/mL)を30mL(装置あたりの抽出体積)に、及び再び24(6×8cmの大きさの装置をシミュレートするために)に乗じることによって算出する。
【0093】
(4.4.3 微生物学的研究)
本発明は、本発明のコラーゲン組成物における大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、糞便腸球菌(Enterococcus faecalis)、鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)、ビリダンス連鎖球菌(Staphylococcus viridans)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むが、限定されない微生物学的生物体の存在を決定するための、当該技術分野において公知であり、及び本明細書に例証した方法を包含する。このような方法は、コラーゲン組成物の調製のいずれの工程にて使用してもよい。処理の間の微生物学研究のための例示的過程には、以下を含む:未処理の羊膜の微生物学的に「スパイクした」試料及び処理の間に使用する設備の試験すること。試料を以下の通りの8種の微生物でスパイクした塩類溶液に5分間浸漬し、試料を故意に汚染させる:
【0094】
1. 大腸菌(Escherichia coli) 5鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)。
2. 肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae) 6.尋常変形菌(Proteus vulgaris)。
3.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 7.ビリダンス連鎖球菌(Staphylococcus viridans)。
4.糞便腸球菌(Enterococcus faecalis) 8.緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)。
好都合には、本発明の脱セルロース化法及びリンス法により、本発明のコラーゲン組成物での微生物の数を減少させることができる。
【0095】
本発明は、本発明のコラーゲン組成物の生物負荷を決定するための、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法を包含する。本明細書に使用される「生物負荷」とは産業上滅菌法を受ける前の、所与の量の材料で見いだされる混入生物体の程度である。例示的方法において、10-6の滅菌保証レベルで滅菌を達成するであろう最小E-ビーム放射線量が決定される。膜は、Peptone-Tween(登録商標)溶液を使用して、液浸及び手動振盪によって抽出する。平板分離法は、ダイズ-カゼイン消化寒天を使用する膜分離である。好気条件については、プレートを30〜35℃にて4日間インキュベートし、次いで数え上げる。真菌については、プレートを20〜25℃にて4日間インキュベートし、次いで数え上げる。芽胞菌については、抽出部分を熱ショックして、濾過し、好気性菌についてと同様にプレートにまく。嫌気性菌については、プレートを30〜35℃にて4日間インキュベートし、数え上げ、プレートを嫌気的条件下で30〜35℃にて4日間インキュベートし、次いで数え上げる。利用した微生物は、クロストリジウム・スポロジェネス(Clostridium sporogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、バシラス・アトロフェウス(Bacillus atrophaeus)である。
【0096】
特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、好気性菌及び真菌について2未満のコロニー形成単位(cfu)を、好気性菌及び真菌について1未満又は0 cfuを有する。更にその他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、嫌気性菌及び胞子について5.1未満のコロニー形成単位(cfu)を、2未満又は1未満のcfuを有する。
【0097】
特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、本明細書において例証され、及び当業者に公知の方法(実施例6.4.3.2を参照されたい)を使用して決定すると静菌剤又は静真菌剤ではない。本明細書に使用される静菌剤とは、細菌生育又は生殖を阻害するが、細菌を殺さない薬剤をいう。本明細書に使用される、静真菌剤とは、非殺真菌性の化学的又は物理的媒体の存在下で、真菌の増殖を防げる薬剤をいう。
【0098】
(4.4.4 コラーゲン組成物の貯蔵及び取扱い)
本発明は、室温で、(例えば、25℃)本発明のコラーゲン組成物を貯蔵することを包含する。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、少なくとも0℃、少なくとも4℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃又は少なくとも40℃の温度にて貯蔵することができる。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、冷蔵されない。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、約2〜8℃の温度にて冷蔵してもよい。その他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、上で確認したいずれの温度においても長期間貯蔵することができる。特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、滅菌及び非酸化条件下で貯蔵される。ある実施態様において、本発明の方法に従って産生されるコラーゲン組成物は、規定温度のいずれにおいても、12月以上の間に生化学的又は構造的な統合性に変化を伴わずに(例えば、分解なく)、コラーゲン組成物の生化学的又は生物物理学的特性になんらの変化を伴わずに貯蔵することができる。ある実施態様において、本発明の方法に従って産生されるコラーゲン組成物は、規定温度のいずれにおいても、数年間に生化学的又は構造的な統合性に変化を伴わずに(例えば、分解なく)、コラーゲン組成物の生化学的又は生物物理学的特性になんらの変化を伴わずに貯蔵することができる。ある実施態様において、本発明の方法に従って調製される本発明のコラーゲン組成物は、無期限に維持することが予想される。コラーゲン組成物は、長期貯蔵のために適切ないずれの容器に貯蔵してもよい。好都合には、本発明のコラーゲン組成物は、滅菌の二重ピール嚢(peal-pauch)パッケージに貯蔵することができる。
【0099】
(4.4.5 滅菌)
本発明のコラーゲン組成物は、このような組成物を滅菌するための当業者に公知の技術に従って滅菌することができる。ある実施態様において、本発明の組成物は、適切なフィルターを通して濾過して滅菌された組成物を得て、続いて滅菌条件下で処理される。有用なフィルターは、0.22μm及び0.1μmフィルター及び滅菌についての当業者に認識されるその他のフィルターを含む。
【0100】
更に、本発明のある実施態様において、コラーゲン組成物は、濾過して、ウイルス及び/又は内毒素が除去される。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、標準的技術に従って濾過される。更なる実施態様において、コラーゲン組成物は、本明細書に提供した技術に従って濾過して、ウイルス及び/又は内毒素を除去することができる。
【0101】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、内毒素を通過させ、コラーゲン組成物を保持するフィルターを通して濾過される。内毒素の濾過のために当業者に公知の任意のサイズ、例えば30kDaのフィルターを使用することができる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、コラーゲン組成物を保持すると共に、内毒素がフィルターを通過することができる条件下でフィルターと接触させる。条件は、当業者に公知の濾過のための任意の条件、例えば遠心分離又はポンピングであることができる。フィルターは、内毒素がフィルターを通過することができる共に、コラーゲンを保持するサイズであるべきである。ある実施態様において、フィルターは、5kDa〜100kDaの間である。特定の実施態様において、フィルターは、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約30kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa又は約100kDaである。フィルターは、セルロース、ポリエーテルスルホン及び当業者に明らかなその他のものなどのコラーゲン組成物に適合性である当業者に公知のいずれの材料のものであることもできる。濾過は、当業者の要望通りの回数繰り返することができる。内毒素は、排除をモニターするための標準的技術に従って検出することができる。
【0102】
ある実施態様において、コラーゲン組成物を濾過して、ウイルス粒子がないか、又は減少したコラーゲン組成物を産生することができる。好都合には、本発明のこれらの実施態様において、フィルターは、ウイルス粒子が通過することができる共に、コラーゲン組成物を保持する。ウイルスを除くために有用な当業者に公知のいずれのフィルターを使用することもできる。例えば、1000kDaのフィルターは、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス及びHIVの排除又は減少のために使用することができる。750kDaのフィルターは、パルボウイルス及びA型肝炎ウイルスの排除又は減少のために使用することができる。500kDaのフィルターは、パルボウイルスの排除又は減少のために使用することができる。
【0103】
従って、本発明は、ウイルス粒子がないか、又は減少したコラーゲン組成物を産生する方法であって、コラーゲン組成物を保持すると共に、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができるサイズのフィルターとコラーゲン組成物を接触させる工程を含む方法を提供する。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、コラーゲン組成物を保持すると共に、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができる条件下でフィルターと接触される。条件は、当業者に公知の濾過のための任意の条件、例えば遠心分離又はポンピングであることができる。フィルターは、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができる共に、コラーゲンを保持するサイズであるべきである。ある実施態様において、フィルターは、500kDa〜1000kDaの間である。特定の実施態様において、フィルターは、約500kDa、約750kDa又は約1000kDaである。フィルターは、セルロース、ポリエーテルスルホン及び当業者に明らかなその他のものなどのコラーゲン組成物に適合性である当業者に公知のいずれの材料のものであることもできる。濾過は、当業者の要望通りの回数繰り返することができる。ウイルス粒子は、濾過をモニターするための標準的技術に従って検出することができる。
【0104】
また、本発明のコラーゲン組成物の滅菌は、当業者に公知の方法、例えばGorham, D. Byrom (ed.), 1991, Biomaterials, Stockton Press, New York, 55-122を使用して、電子線照射によって行うことができる。少なくとも99.9%の細菌又はその他の潜在的に混入する生物体を殺すために十分な放射のいずれの用量も、本発明の範囲内である。特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の末端滅菌を達成するために少なくとも18〜25kGyの用量が使用される。
【0105】
また、本発明のコラーゲン組成物の滅菌は、当業者に公知の方法を使用してコラーゲン組成物を塩基性溶液と接触させることによって行うことができる。塩基性溶液は、当業者に公知のいずれの塩基性溶液であることもできる。特に任意の塩基を、ウイルス粒子を除去することが公知のいずれのpHにおいても使用することができる。塩基性洗浄液のための特定の塩基には、生体適合性の塩基、揮発性塩基及びコラーゲン組成物から容易かつ問題なく除去されることが当業者に公知の塩基を含む。ある実施態様において、塩基は、例えば0.2〜1.0Mの濃度の当業者に公知のいずれの有機又は無機塩基であることができる。ある実施態様において、塩基処理は、水酸化ナトリウム溶液で行われる。水酸化ナトリウム溶液は、0.1M NaOH、0.25M NaOH、0.5M NaOH又は1M NaOHであることができる。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、0.1M又は0.5M NaOHと接触される。
【0106】
塩基処理は、当業者の判断に従って、ウイルス粒子を除去し、かつコラーゲン品質を維持するために適したいずれの条件において実施することもできる。例えば、コラーゲン組成物は、塩基性の溶液と、適切な時間、適切な温度にて接触させることができる。
ある実施態様において、塩基処理は、約0〜30℃、約5〜25℃、5〜20℃又は5〜15℃で行われる。ある実施態様において、塩基処理は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約23℃、約25℃又は約30℃で行われる。
塩基処理は、当業者の判断に従って、適切な時間行うことができる。ある実施態様において、塩基処理は、約0.25〜24時間、2〜20時間、5〜15時間、8〜12時間、2〜5時間、1〜4時間又は0.25〜1時間行うことができる。
【0107】
(4.5 コラーゲン組成物の製剤)
ある実施態様において、本発明は、注射用コラーゲン組成物を提供する。コラーゲンは、本発明のいずれかのコラーゲン、例えば本明細書の方法の1つによって調製された架橋された原繊維化されたコラーゲンであることができる。好都合には、コラーゲンは、水中に製剤化することができる。
【0108】
コラーゲンは、当業者に有用ないずれの濃度であることもできる。ある実施態様において、本発明の製剤は、0.1〜100mg/ml、1〜100mg/ml、1〜75mg/ml、1〜50mg/ml、1〜40mg/ml、10〜40mg/ml又は20〜40mg/mlのコラーゲンを含む。ある実施態様において、本発明の製剤は、約5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml又は50mg/mlのコラーゲンを含む。特定の実施態様において、本発明は、約35mg/mlのコラーゲンを含む製剤を提供する。
【0109】
ある実施態様において、本発明の組成物は、医薬として又は美容的に許容し得る担体と組み合わせて、インビトロ又はインビボにおいて組成物として投与されてもよい。投与の形態には、注射、溶液、クリーム、ゲル、インプラント、ポンプ、軟膏、エマルション、懸濁液、微粒子、粒子、微小粒子、ナノ粒子、リポソーム、ペースト、パッチ、錠剤、経皮デリバリー装置、スプレー、エアロゾル又は当該技術分野の当業者によく知られているその他の手段を含むが、限定されない。このような医薬として又は美容的に許容し得る担体は、当該技術分野の当業者に一般に公知である。本発明の医薬品製剤は、周知かつ容易に利用できる成分を使用して、当該技術分野において公知の手順によって調製することができる。例えば、化合物は、一般的賦形剤、希釈剤又は担体と共に製剤化することができ、錠剤、カプセル、懸濁液、粉末、その他の中に形成することができる。このような製剤のために適切した賦形剤、希釈剤及び担体の例には、以下を含む:充填剤及び増量剤(例えば、デンプン、糖、マンニトール及びケイ素誘導体);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース及びその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン及びポリビニル-ピロリドン);保湿剤(例えば、グリセロール);崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸水素ナトリウム);溶解を遅延させるための薬剤(例えば、パラフィン);再吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);界面活性剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート);吸着性担体(例えば、カオリン及びベントナイト);乳化剤;防腐剤;甘味料;安定剤;着色剤;芳香剤;香料;潤滑剤(例えば、タルク、カルシウム及びステアリン酸マグネシウム);固体ポリエチルグリコール;及びこれらの混合物である。
【0110】
「医薬として又は美容的に許容し得る担体」又は「医薬として又は美容的に許容し得る媒体」という用語は、本明細書において、限定されることなく、有害な生理学的又は美容的反応を生じさせることのない、生きている動物又は人体組織との接触に使用するために適しており、かつ有害な様式で組成物のその他の成分と相互作用しない、水又は塩類溶液、ゲル、クリーム、膏薬、溶媒、希釈剤、液体軟膏基剤、軟膏、ペースト、インプラント、リポソーム、ミセル、巨大ミセル、その他を含むが、限定されない任意の液体、固体又は半固体を意味するために使用される。当業者に公知のその他の医薬として若しくは美容的に許容し得る担体又は媒体は、本発明の分子を送達するための組成物を作製するために使用してもよい。
製剤は、これらが活性成分のみを、又は好ましくは特定の位置に、おそらくある期間にわたって放出するように構成することができる。このような組み合わせは、更に、放出動態を制御するための更なる機序を提供する。コーティング、エンベロープ及び保護マトリックスを、例えば高分子物質又は蝋から作製してもよい。
【0111】
本発明の組成物の、又はこのような組成物と本発明の種々の形態のために特に適した担体などのその他の材料とを含む製剤のインビボ投与の方法は、経口投与(例えば、頬又は舌下投与)、肛門投与、直腸投与、坐薬としての投与、局所適用、エアロゾル適用、吸入法、腹腔内注射、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与、子宮内投与、膣投与、体腔内投与、腫瘍又は内部損傷位置への外科的投与、器官の内腔又は実質への投与及び非経口投与を含むが、限定されない。上記の種々の形態の投与に有用な技術には、局所適用、摂取、外科的投与、注射、スプレー、経皮デリバリー装置、浸透ポンプ、所望の部位に対する直接電着又は当該技術分野の当業者によく知られているその他の手段を含むが、限定されない。適用の部位は、表皮上などの外部又は内部、例えば胃潰瘍、外科的領域若しくはその他であることができる。
【0112】
本発明のコラーゲン組成物は、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、リポソーム、粒子又は治療的及び美容的化合物の製剤化及び送達の当業者に公知のその他の方法の形態で適用することができる。治療薬の吸入送達のために超微細粒径のコラーゲン材料を使用することができる。皮下投与のための適切な製剤のいくつかの例には、インプラント、デポー、針、カプセル及び浸透ポンプを含むが、限定されない。膣投与のための適切な製剤のいくつかの例には、クリーム及びリングを含むが、限定されない。経口投与のための適切な製剤のいくつかの例には、丸剤、液体、シロップ及び懸濁液を含むが、限定されない。経皮投与のための適切な製剤のいくつかの例には、ゲル、クリーム、ペースト、パッチ、スプレー及びゲルを含むが、限定されない。皮下投与のための適切な送達機序のいくつかの例には、インプラント、デポー、針、カプセル及び浸透ポンプを含むが、限定されない。非経口投与のために適切な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び製剤を意図されたレシピエントの血液と等張性にする溶質を含んでいてもよい水性及び非水性滅菌注射溶液、並びに懸濁剤及び糊料を含んでいてもよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含むが、限定されない。即席注射溶液及び懸濁液は、当該技術分野の当業者によって一般に使用される滅菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
【0113】
本発明の組成物が、例えば1つ以上の「医薬として又は美容的に許容し得る担体」又は賦形剤と組み合わせられる実施態様は、単位剤形に都合よく提示してもよく、従来の医薬的技術によって調製してもよい。このような技術には、活性成分と医薬品担体(類)又は賦形剤(類)とを含む組成物を結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体と一様かつ親密に結合させることによって調製される。特定の単位投薬量製剤は、投与される成分の、用量若しくは単位又はその適切な画分を含むものである。上で詳述した成分に加えて、本発明の組成物を含む製剤は、当該技術分野の当業者によって一般に使用されるその他の薬剤を含んでいてもよいことが理解されるはずである。投与体積は、投与経路に応じて変化するであろう。例えば、筋肉内注射は、約0.1ml〜1.0mlの体積の範囲であってもよい。
【0114】
本発明の組成物は、所望の生理学的又は薬理学的結果を生じるであろう任意の用量範囲にて物質を提供するようにヒト又は動物に投与してもよい。投薬量は、投与される物質又は物質群、望まれる治療指標、作用部位における、又は体液中での所望有効濃度及び投与のタイプに依存する。物質の適切な用量に関する情報は、当業者に公知であり、L. S. Goodman及びA. Gilman, eds, 治療学の医薬基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics), Macmillan Publishing, New York, and Katzung, Basic & Clinical Pharmacology, Appleton & Lang, Norwalk, Connecticut, (6th Ed. 1995)などの参照において見いだされるであろう。所望の療法の技術分野に熟練した臨床家が、投与される環境及び物質によって必要とされる具体的投薬量及び用量の範囲、並びに投与の頻度を選んでもよい。
【0115】
コラーゲン組成物は、コラーゲンではない1つ以上の化合物又は物質を含んでいてもよい。例えば、コラーゲン組成物は、製造の間又は外科手術のための準備の間のいずれにおいても、生体分子と共に浸漬させてもよい。このような生体分子には、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシンなど)、ホルモン、成長因子、抗腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、疼痛薬物適用、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、銀(硝酸銀及びスルファジアジン銀を含むが、限定されない銀塩など)、元素の銀を含むが、限定されない消毒剤、抗生物質、殺菌性酵素(リゾゾーム(lysozome))など)、創傷治癒薬(PDGF、TGF;チモシンを含むが、限定されないサイトカインなど)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーラント(トロンビンの有無におけるフィブリンなど)、細胞誘引剤及び足場試薬(フィブロネクチンなど)及びその他を含むが、限定されない。具体例において、コラーゲン組成物は、少なくとも1つの成長因子、例えば線維芽細胞成長因子、上皮成長因子などと共に浸漬させてもよい。また、コラーゲン組成物は、特定の生化学的過程の特異的阻害剤、例えば膜受容器阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長抑制物質、抗癌薬、抗生物質、その他などの小有機分子と共に浸漬してもよい。
【0116】
更にその他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ヒドロゲルと組み合わせてもよい。当業者に公知の任意のヒドロゲル組成物が、本発明の範囲内に包含され、例えば、任意のヒドロゲル組成物が以下の総説に開示されており:Graham, 1998, Med. Device Technol. 9(1): 18-22; Peppas らの論文, 2000, Eur. J. Pharm. Biopharm. 50(1): 27-46; Nguyenらの論文, 2002, Biomaterials, 23(22): 4307-14; Heninclらの論文, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev 54(1): 13-36; Skelhorneらの論文, 2002, Med. Device. Technol. 13(9): 19-23; Schmedlenらの論文, 2002, Biomaterials 23: 4325-32;これらは、これらの全体において引用により本明細書に取り込まれている。具体的実施態様において、ヒドロゲル組成物は、コラーゲン組成物に適用され、すなわちコラーゲン組成物の表面に放出される。ヒドロゲル組成物は、例えばコラーゲン組成物に吹き付けても、コラーゲン組成物の表面で飽和させても、コラーゲン組成物と共に浸漬しても、コラーゲン組成物と共に浸しても、又はコラージュコラーゲン組成物の表面に被覆してもよい。
【0117】
本発明の方法及び組成物に有用なヒドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)、メタクリル酸ポリヒドロキシエチル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、デキストラン又はそれらの誘導体及び類似体を含むが、限定されない、当該技術分野において公知の任意の水相互作用的又は水溶性重合体から作製することもできる。
【0118】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ヒドロゲルと組み合わせる前に、更に1つ以上の生体分子と共に浸漬される。その他の実施態様において、ヒドロゲル組成物は、本発明のコラーゲン組成物と組み合わせられる前に、更に1つ以上の生体分子と共に浸漬される。このような生体分子には、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシンなど)、ホルモン、成長因子、抗腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、疼痛薬物適用、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、銀(硝酸銀及びスルファジアジン銀を含むが、限定されない銀塩など)、元素の銀を含むが、限定されない消毒剤、抗生物質、殺菌性酵素(リゾゾーム(lysozome)など)、創傷治癒薬(PDGF、TGF;チモシンを含むが、限定されないサイトカインなど)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーラント(トロンビンの有無におけるフィブリンなど)、細胞誘引剤及び足場試薬(フィブロネクチンなど)及びその他を含むが、限定されない、具体例において、コラーゲン組成物又はヒドロゲル組成物は、少なくとも1つの成長因子、例えば線維芽細胞成長因子、上皮成長因子などと共に浸漬させてもよい。好都合には、生体分子は、治療薬であることができる。
【0119】
一部の実施態様において、ヒドロゲル組成物は、本発明のコラーゲン組成物を含む積層物と組み合わせられる。
ヒドロゲル/コラーゲン組成物は、限定されないが、創傷、火傷及び皮膚状態の治療(例えば、瘢痕を治療するため)、美容的使用(例えば、整容手術)並びにインプラントとしての任意の使用を含む医療分野における有用性を有する。一部の実施態様において、ヒドロゲル/コラーゲン組成物は、被験体に対して局所的に、すなわち例えば創傷の治療のために皮膚の表面に適用される。その他の実施態様において、ヒドロゲル/コラーゲン組成物は、被験体の内部に、例えば体内において永久的又は準永久的な構造になるようにインプラントとして使用してもよい。いくつかの実施態様において、ヒドロゲル組成物は、生物分解性でないように製剤化される。更にその他の実施態様において、ヒドロゲル組成物は、生体分解性であるように製剤化される。具体的実施態様において、ヒドロゲル組成物は、数日以内に分解するように製剤化される。もう一つの特定の実施態様において、ヒドロゲル組成物は、数月以内に分解するように製剤化される。
【0120】
いくつかの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、細胞が一様かつコンフルエントであるように、細胞と共に形成される。本発明のコラーゲン組成物を形成するために使用することができる細胞は、幹細胞、ヒト幹細胞、ヒト分化した成人細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、組織特異的幹細胞、胚様幹細胞、コミットされた前駆細胞、線維芽細胞様細胞を含むが、限定されない。その他の実施態様において、本発明は、軟骨細胞、肝細胞、造血幹細胞、膵臓実質細胞、神経芽細胞及び筋肉前駆細胞を含むが、限定されない前駆細胞の特異的クラスと共に本発明のコラーゲン組成物を形成することを包含する。
【0121】
(4.6 コラーゲン組成物を使用する方法)
更なる態様において、本発明は、治療的に、予防的に、又は美容的に本発明のコラーゲン組成物を使用する方法を提供する。
本発明のコラーゲン組成物は、数多くの広範な使用可能性を有する。使用には、組織若しくはマトリックス物質のパッチ又はプラグなどの操作された組織及び器官の製造、縫合、補綴及びその他のインプラント、組織足場、創傷の修復剤又は包帯剤、止血装置、構造、外科用及び整形用スクリュー並びに外科用及び整形用プレートなどの組織修復剤及び支持体に使用するための装置、合成インプラントのための天然のコーティング又は成分、美容用インプラント及び支持体、器官若しくは組織のための修復又は構造用支持材、物質送達、生物工学プラットフォーム、細胞に対する物質の効果を試験するためのプラットフォーム、細胞培養、並びに多くのその他の使用を含むが、限定されない。この使用可能性の考察は、網羅的であることは意図されず、多くのその他の実施態様が存在する。更に、その他の材料及び/又は具体的物質とコラーゲンの組み合わせに関して多くの具体例を下記に提供してあるが、多くのその他の材料及び物質の組み合わせを使用してもよい。
【0122】
細胞をコラーゲン材料に組み合わせる能力により、本発明の組成物を組織、器官又は器官様組織に使用する能力を提供する。このような組織又は器官に含まれる細胞は、物質を送達する機能を果たす細胞、組織交替の開始をもたらすであろう播種された細胞又は両方を含むことができる。組織又は器官を作製するために多くのタイプの細胞を使用することができる。幹細胞、前駆細胞及び/又は分化細胞は、種々の実施態様で使用される。これらの実施態様に使用される幹細胞の例には、肝臓又は腎臓などの器官又は器官様組織を作製するために使用される胚幹細胞、骨髄幹細胞及び臍帯幹細胞を含むが、限定されない。いくつかの実施態様において、組成物の形状は、細胞に対して所望の方法の特定タイプに成長して、複製するためのシグナルを送るのを補助する。その他の物質、例えば分化誘導因子を特定タイプの細胞増殖を促進するためにマトリックスに添加することができる。更に、一部の実施態様において、細胞タイプの異なる混合物が組成物に組み込まれる。コラーゲン材料及びマトリックスを生物工学によって作られた組織又は器官に使用する能力により、多種多様な生物工学によって作られた組織置換適用が生み出される。生物工学によって作られた成分の例には、骨、歯構造、関節、軟骨、骨格筋、平滑筋、心筋、腱、メニスカス、靱帯、血管、ステント、心臓弁、角膜、鼓膜、神経ガイド、組織若しくは器官パッチ又はシーラント、失われた組織のための充填剤、美容用修復剤のためのシート、皮膚(皮膚相当物を作製するために細胞が付加されたシート)、気管、喉頭蓋及び声帯などの咽喉の軟部組織構造、鼻軟骨、瞼板、気管の環、甲状軟骨及び披裂軟骨などのその他の軟骨構造、結合組織、血管移植及びこれらの成分、並びに局所適用のためのシート、並びに肝臓、腎臓及び膵臓などの器官に対する修復剤又は置換を含むが、限定されない。一部の実施態様において、このようなマトリックスは、インプラントの機能を改善するであろう方法で、本発明の薬物及び物質送達マトリックスと組み合わせられる。例えば、抗生物質、抗抗炎症薬、局所麻酔薬又はその組み合わせを生体工学によって作られた器官のマトリックスに添加して、治癒過程の速度を上げ、及び不快感を減少させることができる。
【0123】
(4.6.1 美容用適用)
ヒト皮膚は、表皮及び真皮の複合材料である。皮膚の表皮層の最外層は、角質層である。角質層の下が表皮である。表皮の下は、乳頭真皮と呼ばれる真皮の最外層、続いて網状真皮及び皮下層である。
皮膚は、保護、吸収、色素発生、感覚認知、分泌、排出、温度調節及び免疫過程の制御を含む多くの機能を果たす。これらの皮膚機能は、例えば老化、過剰の日光暴露、喫煙、外傷及び/又は環境要因によってネガティブな影響を受け、これが皮膚の構造変化を引き起こして、皮膚の障壁機能の機能障害及び表皮細胞の代謝回転の減少を生じ得る。ダメージを受けたコラーゲン及びエラスチンは、適切に縮む能力を失い、これにより、皮膚のしわ及び表面の荒れを生じる。しわは、典型的には皮膚の老化と関連した皮膚の改変であり、太陽に曝露された皮膚で優先して発生する。老化が進行すると、顔並びに体のその他の領域は、例えば微笑む、噛む、及び目を細めるなどの顔面筋動作において、重力、日光暴露及び年の効果を示し始める。皮膚が年をとり、又は病的になると、しわ、下落及び伸展線をもたらし、荒れて、及びビタミンDを合成する能力が減少する。また、老化した皮膚は、薄くなり、コラーゲン、エラスチン及びグリコサミノグリカンの変化のため、平らな真皮表皮境界面を有する。典型的には、老化皮膚は、厚み、弾性及び基礎をなす組織に対する付着の減少によって特徴づけることができる。
【0124】
老化、環境要因、太陽に対する曝露及び体重減少、小児支持点、疾患(例えば、座瘡及び癌)及び外科手術などのその他の要素による皮膚に対するダメージは、皮膚輪郭欠損及びその他の皮膚異常を生じることが多い。皮膚の輪郭欠損及びその他の異常を修正するために、人々は、フェイスリフト及び皮膚タックなどの美容手術に頼ることが多い。しかし、美容手術は、一般に高価で、侵襲性であり、手術領域に瘢痕を残す可能性を有し、正常な生物学的及び生理機能に影響を及ぼし得る。従って、代替療法の必要性が残る。
【0125】
本発明は、患者における皮膚増強のための方法を提供する。一つの実施態様において、患者における皮膚増強のための方法には、本発明のコラーゲン組成物を、増強する必要がある患者の顔又は体の領域に注射し、又はさもなければ投与することを含み、患者の顔又は体の領域は、コラーゲンの投与の前の領域と比較して増強される。本発明の状況における「皮膚増強」は、外部からの作用又は効果による患者の(例えば、ヒトの)皮膚及び関連した領域の天然の状態の何らかの変化をいう。皮膚増強によって変化するであろう非限定的な皮膚の領域には、表皮、真皮、皮下層、脂肪、立毛筋、毛幹、汗口、皮脂腺又はそれらの組み合わせを含む。
【0126】
一部の実施態様において、本発明の方法には、星状腐食、鼻唇溝(「笑線」)、マリオネット線(marionette lines)、眉間の折り重なり(「まゆをひそめた線(frown lines)」)又はそれらの組み合わせの治療のために、本発明のコラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ与えることを含む。本発明のコラーゲン組成物は、線、折り目及びその他のしわを埋めるのを補助すること、及びより平滑な、より若い様子の外見を回復するのを補助することができる。本発明のコラーゲン組成物は、単独で、又は1つ以上の更なる注射用組成物、レーザー治療などの再表面手法若しくはフェイスリフトなどの痩身美容と組み合わせて使用することができる。
【0127】
一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、また、顔の折り目がついたか、くぼんだ領域を増大するために、及び/又は患者の顔及び体の領域に肉付きを付加するか、若しくは増やすために使用してもよい。増大が必要とされる顔及び/又は体の領域は、例えば老化、外傷、疾患、病気、環境要因、体重減少、出生又はその組み合わせの結果である。本発明のコラーゲン組成物を注射してもよい、又はさもなければ投与してもよい患者の顔又は体の領域の非限定的な例は、眼の下、こめかみ、上頬、下頬、頤、口唇、下あごの輪郭、額、眉間、眉外側、頬、上唇と鼻の間の領域、鼻(鼻橋など)、頚部、殿部、臀部、胸甲又は顔若しくは体のその他のいずれかの部分又はそれらの組み合わせを含む。
【0128】
本発明のコラーゲン組成物は、しわ、うつ病又はその他の折り目(例えば、まゆをひそめた線、心配線(worry line)、星状腐食、マリオネット線)、伸展線、内外の瘢痕(傷害、創傷、事故、咬合又は外科手術により生じる瘢痕など)又はそれらの組み合わせを含むが、限定されない皮膚欠損を治療するために使用してもよい。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、例えば「くぼんだ」眼、暗い円を生じる目に見える血管、並びに目に見える視涙のくぼみの矯正のために使用してもよい。また、本発明のコラーゲン組成物は、例えば下部眼瞼形成術から眼の下の脂肪褥の積極的除去の後の眼の下の矯正又は積極的な頬脂肪の抽出又は自然の喪失の後の下部頬の矯正のために使用してもよい。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、造鼻術の結果、皮膚移植又は脂肪吸引により生じるへこみなどのその他の外科的に誘導された、でこぼこを矯正するために使用してもよい。その他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、顔又は体の瘢痕(例えば、創傷、水痘又は座瘡瘢痕)の矯正のために使用してもよい。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、顔の再造形のために患者に注射されるか、又はさもなければ投与される。本発明の方法を使用する顔の再造形は、頚のゆるみをもつか、又はやつれた顔、長い顔、下部が重い顔、非対称の顔、丸々した顔を有するか、又は局在化した脂肪萎縮、顔中央の下顎後退、くぼんだ眼及び/又はそれらのいずれかの組み合わせをもつ顔を有しする患者において完了してもよい。
【0129】
一つの実施態様において、本発明の方法は、癌若しくは座瘡などの疾患又は疾病によって生じる皮膚欠損などの皮膚欠損を治療するために、患者に本発明のコラーゲン組成物を注射する、又はさもなければ投与することを含む。欠損は、疾患又は疾病の直接的又は間接的な結果であることができる。例えば、皮膚欠損は、疾患若しくは疾病によってを引き起こされ得る、又は疾患若しくは疾病の治療によって引き起こされ得る。
【0130】
(4.6.2 非美容適用)
(4.6.2.1 空隙充填物)
本発明は、患者の体内の空隙を封着し、充填し、及び/又はさもなければ治療するための方法を提供する。一部の実施態様において、本発明の方法は、患者の体内の空隙を充填するために患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含む。例えば、コラーゲン組成物は、患者に対して空隙が位置する領域に投与することができる。「空隙」という用語は、老化、疾患、外科手術、先天性異常又はその組み合わせによって生じた任意の望ましくない中空空間を包含することが意図される。例えば、空隙は、患者の体からの腫瘍又はその他の塊の外科的除去後に生じ得る。本発明のコラーゲン組成物を充填してもよい空隙の非限定的例には、患者の体の任意の器官若しくは組織における亀裂、瘻孔、憩室、動脈瘤、嚢胞、病変又はその他の任意の望ましくない中空空間を含む。
【0131】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、組織、器官、又は体のその他の構造(例えば、血管)内、或いは、血液、尿又はその他の体液などの体液の漏出を防止するための隣接組織、器官又は構造間の接合部内の間隙、亀裂、又は瘻孔を、全体的に若しくは部分的に充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用してもよい。例えば、本発明のコラーゲン組成物は、内臓間の瘻孔に、又は患者の体の内臓から外側への開口又は開口部に注射し、移植し、又はさもなければ投与することができる。本発明のコラーゲン組成物は、これらの病理学的状態によって形成される空隙又はその他の欠損を充填し、かつ組織の線維芽細胞浸潤、治癒及び内殖を刺激するために使用することができる。
【0132】
一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者における瘻孔を充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。本発明のコラーゲン組成物は、瘻孔開口部の1つに針を介した注射によって患者に投与して、開口部の枝分れのほとんど又は全てを充填することができる。或いは、コラーゲンの紐又はロッドを、開口部を介して瘻孔病変に通すことができ、又はコラーゲンは、カテーテルで患者に導入することができる。本発明のコラーゲン組成物又は方法により、肛門、動静脈、膀胱、頸動脈空洞の、外部の、胃の、腸管の、頭頂部の、唾液の、膣の、及び肛門直腸の瘻孔又はそれらの組み合わせなどの様々なタイプの瘻孔を充填すること、封着すること、及び/又はさもなければ治療することができる。
【0133】
一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者における憩室を充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。憩室は、小腸、膀胱、その他などの管状又は球状の器官からの窩又は嚢の開口部である異常な生理学的構造であり、本発明のコラーゲン組成物を使用して充填し、又は増大することができる。
【0134】
もう一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者の嚢胞を充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。嚢胞は、線に沿ってガス、液体又は半固体材料を含む膜裏打ちを有する異常な嚢である。一部の実施態様において、嚢胞は、偽嚢胞であり、これは、例えば液体の蓄積を有するが、上皮又はその他の膜状の裏打ちを含まない。本発明によって充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療することができる嚢胞の更なる非限定的例には、皮脂、類皮、骨若しくは漿液性嚢胞又はそれらの組み合わせを含む。
【0135】
もう一つの実施態様において、本発明の方法は、不必要な、若しくは望ましくない増殖、液体、細胞又は組織の患者からの外科的、化学的又は生物学的除去の結果として生じた任意の空隙を全体に、又は部分的に充填するために本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含む。コラーゲン組成物は、残りの組織及び周囲組織を増大するために、治癒過程を助けるために、及び感染のリスクを最小にするために、空隙の部位に局所的に注射するか、又はさもなければ投与することができる。この増強は、乳癌外科手術、腫瘍状結合組織、外科手術、骨組織又は軟骨組織、その他の除去のための後などの腫瘍切除術後に生じる空隙部位のために特に有用である。
本発明は、本発明のコラーゲン組成物を体に直接ではないが、体外で器官、器官の成分又は組織に、前記組織、器官又は器官の成分を体内に含める前に注射するか、又はさもなければ投与することによって増強を生じさせる方法を更に提供する。
【0136】
(4.6.2.2 組織増量)
一つの実施態様において、本発明の方法は、組織増量のために、患者に本発明のコラーゲン組成物を投与することを含む。本発明の状況における「組織増量」とは、外部の作用又は効果による、患者の(例えば、ヒトの)非経皮軟組織の天然の状態の何らかの変化をいう。本発明に包含される組織には、筋組織、結合組織、脂肪及び神経組織を含むが、限定されない。本発明に包含される組織は、限定されないが、括約筋、膀胱括約筋及び尿道を含む多くの器官の一部又は体の一部であってもよい。
【0137】
(4.6.2.3 尿失禁)
尿失禁(ストレス性尿失禁を含む)は、咳嗽、くしゃみ、笑い又は運動などの腹腔内圧の増大を生じる活動に伴って生じる尿の突発性の漏出である。これらの活動の間に、腹腔内圧が一過性に尿道の耐性以上に上昇し、従って突発性に通常小量の尿の漏出を生じる。ストレス性失禁は、一般に、尿道括約筋の強度が減弱し、腹部からの圧力が増加するときに、括約筋が尿の流れを防ぐことができない膀胱貯蔵の問題である。尿失禁は、膀胱及び尿道を支持する骨盤筋が弱くなった結果として、又は尿道括約筋の機能不全のために生じ得る。例えば、尿道領域に対する以前の外傷、神経性傷害及びいくつかの薬物適用は、尿道を弱め得る。尿失禁は、最も一般的には、閉経、骨盤外科手術若しくは妊娠後、例えば多胎妊娠及び膣出生後の女性又はである骨盤の逸脱(膣空間への膀胱、尿道又は直腸の壁の突出)を有し、膀胱瘤、膀胱尿道脱又は直腸瘤を伴う者において見られ、通常前膣補助の喪失に関連がある。男性では、尿失禁は、前立腺外科手術、最も一般的には、根治的前立腺切除後に観察され得るし、外部尿道括約筋に対する傷害があるかもしれない。
【0138】
本発明は、尿失禁又はそれによって生じる症候若しくは状態を管理又は治療するための方法であって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、患者の括約筋組織は、増大され、かつ患者における排泄抑制能力が改善されるか、又は回復される方法を包含する。コラーゲン組成物は、尿失禁の処置及び/又は治療のために尿道周辺の組織容積を増大するために尿道周囲に注射するか、又はさもなければ投与することができる。ストレス性失調症の改善は、組織容積を増大することにより、尿の流出に対する耐性を増大することによって達成することができる。
【0139】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、例えば尿が漏れる尿道の穴を閉じるために、又は尿道の壁の厚みを、尿が保持されている時にそれがしっかりと密閉するように確立するために、患者に対して尿道周辺領域に注射されるか、又はさもなければ投与される。
もう一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、患者に対して、膀胱出口の尿道の筋肉のすぐ外側の尿道周辺に注射されるか、又はさもなければ投与される。増量材料の注射は、皮膚を介して、尿道を介して、又は女性では膣を介して行うことができる。
【0140】
本発明のコラーゲン組成物の注射のために針が使用されるときは、針の配置は、尿道に挿入した膀胱鏡を用いて誘導することができる。尿道の増量手順は、局所麻酔下で行うことができるが、一部の患者には、一般的な局所麻酔又は脊髄麻酔が必要であるかもしれない。患者が注射後に立ち上がることができるように、局所麻酔薬を使用することができ、これにより、排泄抑制能力が達成されたかどうかを決定することができる。排泄抑制能力が回復されなかった場合、1回以上のその後の注射を患者に投与することができる。手順は、膀胱対照を達成するために数月後に繰り返す必要があるかしれない。コラーゲン注射は、尿道周辺の領域を増量し、従って括約筋を圧縮することにより、尿漏出の制御を補助する。
【0141】
(4.6.2.4 膀胱尿管逆流)
膀胱尿管逆流(VUR)(又は尿逆流)は、膀胱から腎臓への尿の逆流によって特徴づけられる。未治療のVURは、腎機能及び全体的な患者の健康に対して破壊的な長期間の影響を生じることがある。VUR患者は、尿路感染症、腎臓瘢痕、腎盂腎炎、高血圧症及び進行性腎不全を発病するリスクが増加する。
【0142】
本発明は、VUR又はそれにより生じる症候若しくは状態の管理又は治療のための方法であって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、患者の尿管壁が増強されて、VURの症候が減少されるか、又は解消される方法を提供する。コラーゲン組成物は、当業者に公知のいずれかの方法を使用して尿管口の下の排尿筋裏打ち内に、内視鏡誘導下などで、注射し(例えば、半三角注射)又はさもなければ投与することができる。
【0143】
(4.6.2.5 胃食道逆流疾患)
胃食道逆流疾患(GERD)は、通常、食道を適切に胃に連結する下部食道括約筋(LES)-筋肉弁が適切に閉じないか、弛緩するか、又は弱り、胃内容物が食道へ漏れて戻るか、又は逆流するために生じる障害である。胃酸又は時に胆汁酸塩が食道と接触すると、これが大部分の私たちのほとんどが時折感じる胸焼けの灼熱感を生じさせる。逆流した胃酸が食道の裏打ちに触れると、これが胸部又は咽喉における灼熱感(胸焼け)を生じさせ、口の奥で液体の味がするかもしれない(酸不消化)。時間とともに、胃酸の逆流は、食道を裏打ちする組織に損傷を与え、炎症及び疼痛を引き起こす。成人において、持続性の未治療のGERDは、食道永久的な損傷及び時に更に癌に至ることがある。乳児、子供及び妊婦を含む誰もが、GERDを有し得る。
【0144】
本発明は、GERD又はそれにより生じる症候若しくは状態の管理又は治療のための方法であって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、患者のLESは、増大され、GERDの症候が減少されるか、又は解消される方法を提供する。一部の実施態様において、コラーゲン組成物は、内視鏡誘導下で食道胃接合部のレベルで食道壁に投与される。逆流を妨げることを意図して、増量効果は、残分及び結果的な組織反応の組み合わせによって生じる。本発明のコラーゲン組成物は、標準的な、又は大きな孔(例えば、大きなゲージ)の注射針を介して注射することができる。
【0145】
(4.6.2.6 声帯及び喉頭)
本発明は、疾患、障害(神経疾患など)又は一方若しくは両方の声帯(皺襞)及び/又は喉頭(Larynx)(喉頭(voice box))に影響を及ぼすその他の異常の管理又は治療のための方法を提供する。このような喉頭及び声帯の疾患、障害又はその他の異常の非限定的例は、声門不全、一側声帯麻痺、両側声帯麻痺、麻痺患者発声障害、非麻痺患者発声障害、痙攣性発声障害又はそれらの組み合わせである。その他の実施態様において、本発明の方法は、また、声帯の不全麻痺(「運動麻痺」)、一般に例えば老年での弱った声帯(「老人性喉頭炎」)及び/又は声帯の瘢痕(例えば、以前の外科手術又は放射線療法による)などの、不適当に閉じた声帯を生じる疾患、障害又はその他の異常を処置又は治療するために使用してもよい。
【0146】
本発明は、声帯がかつて有していたか(声帯皺襞内反又は萎縮症においてなど)若しくは運動性(麻痺においてなど)のない患者の声帯皺襞に対して補助又はかさを提供する方法を包含する。一部の実施態様において、声帯及び/又はその他の喉頭の軟部組織は、本発明のコラーゲン組成物で、単独で、又はその他の治療又は薬物適用と組み合わせて増強することができる。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一方(又は両方)の声帯皺襞を増強し、かさを付加して、その結果、それをその他の声帯皺襞と接触させることができる。
【0147】
患者の声帯又は喉頭に本発明のコラーゲン組成物を投与するために、当業者に周知の多数の手順いずれか1つを使用してもよい。一部の実施態様において、湾曲した針を使用して、患者の口を介して本発明のコラーゲン組成物を注射する。その他の実施態様において、針(より高ゲージ、短い針など)を使用して、患者の皮膚及び喉仏を介して本発明のコラーゲン組成物を直接注射してもよい。本発明のコラーゲン組成物は、ビデオモニターにて喉頭鏡での患者の声帯皺襞をモニターしつつ、患者に投与することができる。
【0148】
(4.6.2.7 声門不全)
一つの実施態様において、本発明は、声門不全の管理又は治療のための方法を提供する。経皮的喉頭コラーゲン増強は、当該技術分野において公知の方法を使用して、本発明のコラーゲンを、針を使用して患者の生体内に注射することによって生じさせることができる。場合によっては、患者は、喉頭の声機能に影響を及ぼす発生不全及び/又は声門不全、筋硬直の増加及び甲状披裂筋の動作のための能力の減少を有する。もう一つの実施態様において、発生不全は、パーキンソン病の結果である。一つの実施態様において、声門不全の管理又は治療の必要がある患者における、そのための本発明の方法は、患者の声帯に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、注射により、声帯が増大し、及び声門の閉鎖を改善し、その結果、患者の声門不全が減少されるか、又は解消される。患者は、本発明のコラーゲン組成物の投与の前に、可動の声帯を有していても、又は有していなくてもよい。
【0149】
(4.6.2.8 発声障害)
発声障害は、何らかの声の機能障害また話すことが困難なことである。発声障害は、喉頭部又は声帯麻痺と関連していても、又は関連していなくてもよい。本発明は、麻痺患者発声障害、非麻痺患者発声障害又は痙攣性発声障害などの発声障害の管理又は治療のための方法を提供する。一つの実施態様において、患者における筋緊張異常を管理又は治療するための方法は、これらの必要がある患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又は投与することを含み、患者における筋緊張異常は、コラーゲン組成物の投与の前にと比較して改善される。場合によっては、喉頭コラーゲン注射により、わずかな増加によって、一方又は両方の声帯皺襞の内方転位(medialization)が更に可能になり、内方転位甲状軟骨形成術と組み合わせて、又はその後で発声が改善する。
【0150】
(4.6.2.9 声帯麻痺)
声帯は、本質的に、粘膜で覆われた筋肉である。筋肉は、もはや筋肉が神経に接続していないときには、萎縮する。従って、典型的な麻痺した声帯は、大きさが小さく、曲がっている。加えて、麻痺のタイプに応じて、声帯は、他方の声帯がそれに触れるようになるほど十分に中央近くに移動していても、又は移動していなくてもよい。声帯が交わることができないときは、患者が音(又は、少なくとも大きい音)を生じることは困難である。従って、本発明は、声帯麻痺患者における萎縮した声帯を増強し、又はかさを増大するための方法であって、声帯が一緒になる能力が改善される方法を提供する。
【0151】
一側声帯皺襞麻痺では、典型的には神経機能障害のために、一方の声帯皺襞が不動であり、たいてい喉頭を完全に閉じることができない。反回神経は、それぞれの声帯皺襞の大部分の動作を担う主要な神経であり、例えば種々の疾患、特定の外科手術又はウイルス感染による損傷を受け得る。一部の実施態様において、患者の声帯麻痺は、甲状腺癌、肺癌、結核又はサルコイド(又は胸部においてリンパ節を拡大させる任意のもの)、脳卒中、神経疾患(例えば、シャルコー・マリー・トゥース、シャイ・ドレーガー及び多系統萎縮症)の症候又は結果である。
【0152】
両側声帯麻痺は、両方の声帯皺襞麻痺(通常正中線に近い)である。一部の実施態様において、患者における両側声帯皺襞麻痺は、例えば脳卒中又はその他の神経性状態(アルノルト-キアーリ奇形など)、甲状腺癌、外科手術(主要な脳外科手術など)又は甲状腺摘除の症候又は結果である。
本発明は、声帯麻痺の管理又は治療に使用するための方法を提供する。一つの実施態様において、方法は、患者において一側若しくは両側声帯麻痺又はそれに関連した症候を管理するか、又は治療するための方法であって、患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、患者において声帯皺襞閉鎖が改善される方法が提供される。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一方(又は両方)の麻痺した声帯皺襞を、それが他方の声帯皺襞と接触することができるように増強するか、又はかさを付加する。本発明のコラーゲン組成物の、これらの必要がある患者に対する注射は、患者の口を介し、又は直接皮膚及び喉仏を介しすることができる。
【0153】
(4.6.2.10 薬物送達)
本発明のコラーゲン組成物は、薬物、例えば治療薬の制御された送達のための薬物送達媒体として使用することができる。いくつかの実施態様において、コラーゲン組成物は、被験体、例えばヒトに対して1つ以上の治療薬を送達する。本発明の範囲内に包含される治療薬は、タンパク質、ペプチド、多糖体、多糖体抱合物、遺伝子に基づいたワクチン、生きた弱毒ワクチン、細胞全体である。本発明の方法に使用するための薬物の非限定的な例は、抗生物質、抗癌剤、抗バクテリア薬剤、抗ウイルス薬;ワクチン;麻酔薬;鎮痛剤;抗ぜん息薬;抗炎症薬;抗うつ薬;抗関節炎薬剤;抗糖尿病性薬剤;抗精神病薬;中枢神経興奮薬;ホルモン;免疫抑制薬;筋弛緩剤;プロスタグランジンである。
【0154】
コラーゲン組成物は、被験体、例えばヒトに対する1つ以上の小分子の制御された送達のための送達媒体として使用してもよい。いくつかの実施態様において、コラーゲン組成物は、被験体、例えばヒトに対して1つ以上の小分子を送達する。本明細書に使用される「小分子」という用語及び類似の用語は、ペプチド、ペプチド擬態、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物及び有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モルあたり約100グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、並びにこのような化合物の塩、エステル及びその他の医薬として許容し得る形態を含むが、限定されない。このような化合物の塩、エステル及びその他の医薬として許容し得る形態も包含される。
【0155】
ある実施態様において、薬物送達のための媒体としての本発明のコラーゲン組成物により、薬物の吸収の増強;当該技術分野において公知のその他の薬物送達システムに相対的な薬物動態学的なプロフィール及び薬物の全身分布の改善が生じる。薬物動態が改善されることは、最大の血漿濃度を達成するための時間(Tmax);最大の血漿濃度の程度(Cmax);検出可能な血液又は血漿濃度を誘発する時間(Tlag)などの標準的な薬物動態学的パラメーターによって測定される薬物動態学的プロフィールの増強が達成されることを意味する。吸収が増強されることは、このようなパラメーターによって測定される薬物の吸収が改善されたことを意味する。薬物動態学的パラメーターの測定は、当該技術分野のルーチンで行われる。
【0156】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、抗生物質、ホルモン、成長因子、抗腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、疼痛薬物適用、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、消毒剤、損傷治癒薬、創傷シーラント、細胞誘引剤及び足場試薬、酵素、受容体アンタゴニスト又はアゴニスト、ホルモン、成長因子、自己骨髄又はその他の細胞タイプ、抗生物質、抗菌薬及び抗体、その他、又はこれらの組み合わせを含む1つ以上の生体分子、例えば治療薬を更に含む。具体例において、本発明のコラーゲン組成物は、1つ以上の成長因子、例えば線維芽細胞成長因子、上皮性の成長因子などと共に含浸させてもよい。また、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、特定の生化学的過程の特異的阻害剤などの小有機分子、例えば膜受容器阻害剤、ホルモン、キナーゼ阻害剤、成長抑制物質、抗癌剤、抗生物質、その他を含む1つ以上の小分子と共に含浸させてもよい。
【0157】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、その意図された使用に応じて生産の間に、又は注射の前に生体分子と共に含浸される。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、1つ以上のインターフェロン(α-IFN、β-IFN、γ-IFN)、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、リンホトキシン、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長因子、エリスロポエチン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、オンコスタチンM、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、その他)、それらのファミリーのメンバー又はそれらの組み合わせを含む。一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、このような成長因子若しくはその他の生体分子の生物学的に活性な類似体、断片又は誘導体を含む。
【0158】
本発明の方法に使用するための特定の活性薬剤には、トランスフォーミング成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨原性因子、並びにこのような成長因子の生物学的に活性な類似体、断片、及び誘導体などの成長因子を含む。多機能性調節タンパク質であるトランスフォーミング成長因子(TGF)スーパーファミリーのメンバーは、有用である。TGFスーパー遺伝子ファミリーのメンバーには、βトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3);骨形成医薬品(例えば、BMP-1、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9);ヘパリン結合成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF));インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB);増殖分化因子(例えば、GDF-1);及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含む。
【0159】
(4.6.2.11 創傷及び火傷)
本発明のコラーゲン組成物は、一部にはその物理的特性のために、硬及び/又は軟組織修復を増強し、又は置き換えるための創傷被覆材として、当該技術分野において公知のその他の生体材料、例えば米国特許第3,157,524号、第4,320,201号;第3,800,792号;第4,837,285号;第5,116,620号に記述されたものと比較して増強された臨床的有用性を有することが予想される。本発明のコラーゲン組成物は、これがコラーゲンの天然の四次構造を保持するので、コラーゲンマトリックスの間隔への細胞遊走を介した組織内増殖の改善をもたらす。本発明のコラーゲン組成物は、細胞をコラーゲンマトリックス内に付着させて、増殖させること、及びそれら自体の巨大分子を合成することができる。これにより、細胞は、新たな組織を増殖させることができる新たなマトリックスを産生する。このような細胞発生は、線維、羊毛及び可溶性コラーゲンなどのコラーゲンのその他の公知の形態では観察されない。
【0160】
一部の実施態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、創傷が、例えば絆創膏を使用して覆われるように、創傷部位に対して、被験体の皮膚の上に、すなわち緻密層に直接配置することによって創傷を治療することを包含する。その他の実施態様において、本発明は、インプラントとして、例えば皮下埋込として本発明のコラーゲン組成物を使用して創傷を治療することを包含する。
【0161】
本発明は、組織内増殖を促進することができる巨大分子を本発明のコラーゲン組成物に添加することにより、創傷治癒の速度を増大させることを包含する。このような巨大分子には、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含むが、限定されない(例えば、Doillonらの論文 (1987) Biomaterials 8:195 200; and Doillon and Silver (1986) Biomaterials 7:3 8を参照されたい)。
【0162】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、一部の層及び全層の創傷、圧力性潰瘍、圧力性潰瘍、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍、慢性血管潰瘍、トンネル型/侵食型創傷、外科的創傷(例えば、ドナー部位/移植片、モース手術後、レーザー手術後、足治療、創傷裂開)、傷部外傷(例えば、剥離、裂傷、二度熱傷及び皮膚涙)及び疲労創傷を含む創傷の管理のために使用される。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一回使用が意図される。
【0163】
本発明は、本明細書において皮膚への送達のための5.4.2.7節に記述した本発明のコラーゲン組成物及び上に記述したいずれかの生体分子中に、限定されないが、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、上皮細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子β、血管形成誘導因子、抗生物質、抗真菌薬、殺精子薬剤、ホルモン、酵素、酵素阻害剤を含む薬理活性薬を組み込むことを更に包含する。ある実施態様において、薬理活性薬剤は、生理的に有効な量で提供される。
一部の実施態様において、コラーゲン組成物は、限定されないが、創傷の部位に適用される前に、同種間の幹細胞、幹細胞及び自己の成人の細胞を含む生細胞によって更に埋められる。
【0164】
本発明のコラーゲン組成物は、創傷感染、例えば創傷感染に続く外科的又は傷部外傷の破壊の治療のために特に有用である。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、限定されないが、抗生物質、抗菌薬及び抗バクテリア薬剤を含む創傷感染の治療に有用な薬剤の治療上有効量と共に含浸される。本発明のコラーゲン組成物は、当該技術分野において公知の任意の微生物、例えば病原体のための公知の貯蔵所である人体内から生じるか、又は環境起源に由来する創傷に感染する微生物による創傷感染の治療において臨床的及び治療的な有用性を有する。創傷におけるその増殖が本発明の方法及び組成物によって減少され、又は予防されるであろう微生物の非限定的な例は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、St.エピダーミス(St. epidermis)、β溶血性連鎖球菌、大腸菌(E. coli)、クレブシエラ属(Klebsiella)種及びシュードモナス属(Pseudomonas)種及び嫌気性菌のもの、ウェルチ菌(Clostridium welchii)又は主に深部の傷部外傷ガス壊疸を生じさせるタルチウム(tartium)である。
【0165】
その他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、上皮創傷、皮膚創傷、慢性創傷、急性創傷、外部創傷、内部創傷(例えば、コラーゲン組成物は、縫合線から血液の漏出を防げるために、及び体が縫合材料に対して接着するのを形成するのを防ぐために、限定されないが、外科手術の間に吻合部位をくるんでもよい)、先天性創傷(例えば、ジストロフィー性表皮水泡症)を含む創傷治療のために使用される。特に、コラーゲン組成物は、圧力性潰瘍(例えば、褥瘡性潰瘍)の治療における有用性を増強した。圧力潰瘍は、長期床上安静を受けた患者被験体、例えば局所的圧力の効果による皮膚喪失に苦しむ四肢麻痺患者及び対麻痺患者)で頻繁に生じる。生じる床ずれにより、真皮糜爛、並びに表皮及び皮膚付属器の喪失を示す。更にその他のより具体的実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一部の層及び全層の創傷、圧力性潰瘍、圧力性潰瘍、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍、慢性血管潰瘍、トンネル型/侵食型創傷、外科的創傷(例えば、ドナー部位/移植片、モース手術後、レーザー手術後、足治療、創傷裂開)、傷部外傷(例えば、剥離、裂傷、二度熱傷及び皮膚涙)及び疲労創傷を含むが、限定されない創傷の処置のために使用される。
【0166】
また、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、第一度火傷、第二度火傷(一部の層火傷)、第三度火傷(全層熱傷)、火傷創傷の感染、切除された火傷創傷及び切除されていない火傷創傷の感染、移植された創傷の感染、ドナー部位の感染、以前に移植されたか、若しくは治癒された火傷創傷又は皮膚移植ドナー部位からの上皮の喪失及び火傷創傷膿痂疹を含む火傷の治療に使用してもよい。
【0167】
(4.6.2.12 歯科用)
本発明のコラーゲン組成物は、歯学、例えば歯周部外科手術、歯周組織の再生のための組織再生の誘導、骨再生の誘導及び根被覆において特定の有用性を有する。本発明は、限定されないが、対応する両側歯周欠損、歯間骨内欠損、深部3壁性骨内欠損、2壁性骨内欠損及び骨内欠損2及び3を含む歯周部の骨内欠損の再生を促進するための本発明のコラーゲン組成物の使用を包含する。本発明のコラーゲン組成物は、当該技術分野において公知のその他の技術、例えばQuteishらの論文, 1992, J. Clin. Periodontol. 19(7): 476-84; Chungらの論文., 1990, J. Periodontol. 61(12): 732-6; Mattson らの論文, 1995, J. Periodontol. 66(7): 635-45; Benqueらの論文, 1997, J. Clin. Periodontol. 24(8): 544-9; Mattsonらの論文, 1999, J. Periodontol. 70(5): 510-7に開示されたものなどの架橋されたコラーゲン膜の使用と比べて、増強された治療的有用性及び増強された歯周部の骨内欠損の治療のための臨床パラメーターを有することが予想される。本発明のコラーゲン組成物を使用して改善される臨床パラメーターの例には、当業者に公知であるプラーク及び歯肉のインデックス・スコアリング、プロービングポケット深度、プロービング付着深度及び分岐部関与の分類及び骨欠損を含むが、限定されない。
【0168】
また、本発明は、限定されないが、両側欠損、対の頬側クラスII下顎軟骨大臼歯分岐部欠損及び両側の下顎分岐部欠損を含むクラスII分岐部欠損を治療する際の本発明のコラーゲン組成物の使用を包含する。クラスII分岐部欠損の処理における本発明のコラーゲン組成物の有用性は、部分的には、それが分岐部欠損の失われた歯根膜を再生する能力によって説明することができる。本発明のコラーゲン組成物は、Paulらの論文, 1992, Int. J. Periodontics Restorative Dent. 12: 123-31; Wangらの論文, 1994, J. Periodontol. 65: 1029-36; Blumenthal, 1993, J. Periodontol. 64: 925-33; Black らの論文, 1994, J. Periodontol. 54: 598-604; Yuknaらの論文, 1995, J. Periodontol. 67: 650-7に開示したものなどのクラスII分岐部欠損の治療のために当該技術分野において使用されるコラーゲン膜と比べて、増強された治療的及び臨床的有用性を有することが予想される。
【0169】
本発明は、根被覆法における本発明のコラーゲン組成物の使用を更に包含する。根被覆における本発明のコラーゲン組成物の有用性は、一部には、組織再生が誘導される原理に基づいて、失われたか、ダメージを受けたか、又は病気の歯肉組織を置き換えるその能力によるものと説明することができる。本発明のコラーゲン組成物は、上で挙げた理由のために、Shiehらの論文, 1997 J. Periodontol., 68: 770-8; Zahediらの論文, 1998 J. Periodontol. 69: 975-81; Ozcanらの論文, 1997 J. Marmara Univ. Dent. Fa. 2: 588-98; Wangらの論文, 1997 J. Dent. Res. 78 (Spec Issue): 119 (Abstr. 106)に開示されたものなどの、根被覆のために当該技術分野において伝統的に使用されるコラーゲン膜と比較して、根被覆における増強された臨床的有用性を有することが予想される。
【0170】
本発明は、限定されないが、歯根膜炎及び歯肉炎を含む歯周病をもつ被験体におけるコラーゲン組成物の使用を更に包含する。また、本発明のコラーゲン組成物は、スケーリング及び根被覆のための補助としての臨床的有用性を有する。本発明は、本発明のコラーゲン組成物を使用して歯周病である被験体を治療することを包含する。本発明のコラーゲン組成物を使用することにより被験体における歯周病を治療するための例示的方法は、クロルヘキシジングルコネートなどの抗菌剤と共に含浸させることができるコラーゲン組成物を、被験体の1つ以上の、例えば5mm以上の歯周ポケットに挿入することを含む。好都合には、コラーゲン組成物は、生体分解性であり得る。
【0171】
歯科に使用するための本発明のコラーゲン組成物は、治療される歯の障害のタイプに応じて、1つ以上の生体分子と共に含浸させてもよい。歯の障害の治療のための当該技術分野において公知のいずれの生体分子も、本発明の方法及び組成物に包含される。具体的実施態様において、感染と関連する歯の障害の治療に用されるコラーゲン組成物は、限定されないが、ドキソサイクリン、テトラサイクリン、クロルヘキシジングルコネート及びミノサイクリンを含む1つ以上の抗生物質と共に含浸させてもよい。
【0172】
(4.6.2.13 その他の使用)
また、本発明のコラーゲン組成物は、卵巣又は子宮角における術後癒着障壁として使用してもよい。また、コラーゲン組成物は、(例えば、髄膜-大脳接着の予防において)脳における接着障壁として使用してもよい。ここで、コラーゲン組成物は、硬膜及び軟髄膜を分離する硬膜下腔を修復するために使用してもよい。一般に、コラーゲン組成物は、術後の漏出を制御するための、傷ついた内部臓器、例えば脾臓に対する包装として、又は肺に付着させるシートとして使用してもよい。また、コラーゲン組成物は、(鼓室の穿孔の際の)鼓膜移植片の外科的療法を補助するために、又は乳様突起の空洞の裏打ちとして使用してもよい。また、コラーゲン組成物は、膣新生術における裏打ち組織として使用してもよい。心臓血管手術において、コラーゲン組成物を心臓周囲の閉鎖材料として使用してもよい。また、コラーゲン組成物は、精管吻合術における吻合完了の際に使用してもよい。
【0173】
(4.7 コラーゲン組成物を含むキット)
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を含むキットを提供する。例えば、本発明は、哺乳動物の組織を増強するか、又は置き換えるためのキットを提供する。キットは、当該技術分野に熟練した開業医に配布するためのパッケージ内に本発明の1つ以上のコラーゲン組成物を含む。キットには、本発明の方法に従って哺乳動物の組織を増大するか、又は置き換えるためのコラーゲン組成物の使用法に関する説明を伴うラベル又はラベリングを含むことができる。ある実施態様において、キットは、1つ以上の注射器、カニューレ、カテーテル、その他などのコラーゲン組成物を投与するための手段などの、本方法を実施するために有用な構成要素を含むことができる。ある実施態様において、キットは、コラーゲン組成物を投与するための手段を安全に処理するために有用な構成要素(例えば、使用した注射器のための「シャープス(sharps)」容器)を含むことができる。ある実施態様において、キットは、事前に満たされた注射器、単位投与量又は使用単位パッケージ内に組成物を含むことができる。
【実施例】
【0174】
(5. 実施例)
下記の節では、当業者であれば、「およそ23℃にて」という句が室温を指し得ることを認識するであろう。
(5.1 実施例1:胎盤からのコラーゲンの単離)
本実施例は、胎盤からのコラーゲンの単離を例証する。
凍結された胎盤は、本明細書に記述した方法に従って得られる。胎盤をNalgeneトレーにおいて水と共に4時間包装することによって解凍する。次いで、これらを包装から取りだして、0.5MのNaCl(2リットル/胎盤)中に解凍されるまで4時間置く。臍帯断片は、それぞれの胎盤から切断し、それぞれの胎盤をおよそ23℃にて約4つの条片にスライスする。
【0175】
それぞれのバッチに約3〜4個の胎盤条片のバッチを、肉粉砕機を使用しておよそ23℃にて粉砕する。
粉砕胎盤を0.5MのNaCl(5L/胎盤)を含む50LのNalgeneタンクに添加し、動力付ミキサーを使用して75〜100rpm(4℃にて24時間)にて混合する。
24時間後、組織を混合物から単離する。ミキサーを止め、組織をおよそ23℃にてミキサーの底面に沈降させる。液体(〜50L)をおよそ23℃にてペリスタル型ポンプを使用して除去する。或いは、組織及び液体を、ペリスタル型ポンプ使用することによりポンピングして出して、およそ23℃にて#10のふるいを通して濾過し、単離された組織を混合タンクに入れる。
【0176】
新鮮な0.5MのNaCl(5L/胎盤)を混合物に添加し、4℃にて24時間混合する(動力付ミキサー、75〜100rpm)。24時間後、組織を、上記方法を使用して単離する。
組織を水(5L/胎盤)で洗浄し、4℃にて24時間混合する(動力付ミキサー、75〜100rpm)。24時間後、組織を、上記方法を使用して単離する。
組織を上の4つのパラグラフに従って0.5MのNaCl、新鮮な0.5MのNaCl及び次いで水で再び洗浄する。
血液成分を含まない組織が単離される。組織は、白色に見える。
【0177】
0.5Mの酢酸(1L/胎盤)を混合タンク内のきれいになった組織に添加し、動力付ミキサーで75〜100rpmにて4℃において18〜24時間混合する。組織を、上記方法を使用して単離する。
新鮮な0.5Mの酢酸を1g/Lのペプシンと共に組織(1L/胎盤)に添加する。試料を75〜100rpmにて23℃において動力付ミキサーで24時間タンク内にて混合する。24時間後、試料をおよそ23℃にて#10ふるい及び#50-100ふるいを通して濾過する。
【0178】
濾過した溶液にNaClを添加して、塩濃度を0.2Mにさせる。試料をおよそ23℃にて沈殿物を形成して、沈殿し始めるまで1時間インキュベートさせる。試料を10,000gにて30分間遠心分離して、上清を遠心ボトルから慎重にデカントすることによってペレットから分離する。或いは、溶液を(およそ23℃にて)、20μM、5μM、2.7μM、0.45μM及び必要に応じて0.22μMを含む一連のフィルターを通過することによって濾過する。
【0179】
上清又は濾液を背が高くて細い透明なガラス又はプラスチック容器に添加する。溶液のNaCl濃度を0.7MのNaClにし、この時点で典型的には白い沈殿を形態する。沈殿物を混合物の上部へ移動させる。試料を4〜23℃にて混合又は振盪することなく一晩インキュベートさせる。上清を沈殿塩から吸引するか、又は汲み出して、できる限り液相を除去する(およそ23℃にて)。
【0180】
生じる沈殿物を5倍体積の10mM HClに溶解して、上記パラグラフの塩析を繰り返す。生じる沈殿物を5倍体積の10mM HClに再び溶解して、上記のパラグラフの塩析を再び繰り返す。生じる試料は、約0.5mg/mLのコラーゲン濃度で約5mM酢酸の〜10mM HCl溶液を含むはずである。
接線流濾過(TFF)装置(ダイアフィルトレーション)を使用して、試料(4℃にて)を3mg/mlまで濃縮する。酢酸濃度を、HPLCを使用して測定する。試料が濃縮されたら、より多くの10mM HClを添加して、酢酸濃度が<1mMに到達するまで濃縮を続ける。
【0181】
酢酸濃度が<1mMに到達した後、試料が粘稠性になり始めるまで濃縮を続ける。コラーゲン濃度がSIRCOL(商標)アッセイ法(Biocolor Ltd., Newtownabbey、Northern Ireland、UK)によって3〜4mg/mLの範囲であると測定されたときに、濃縮工程を止める。
最終的なコラーゲン試料を0.22μm及び0.1μmフィルターを使用して密封された無菌容器(滅菌)にて濾過する。この工程は、およそ23℃で行う。
最終溶液を4℃にて貯蔵する。
【0182】
(5.2 実施例2:胎盤からのコラーゲンの単離)
本実施例は、本発明による胎盤からコラーゲンの単離のためのさらなる工程を例証する。
凍結された胎盤を得て、組織を処理して、0.5Mの酢酸(1L/胎盤)で4℃にて18〜24時間洗浄し、実施例1に記載されているように混合物から単離する。0.5gのペプシン/胎盤を含む0.5Mの酢酸(1L/胎盤)を、混合タンク内で約5〜6℃にて動力付ミキサーで75〜100rpmにて22〜24時間、組織に添加する。
新鮮な0.5Mの酢酸を2gのペプシン/胎盤を含む組織(2体積の酢酸溶液/胎盤)に添加する。
試料をタンク内で23℃にて動力付ミキサーで75〜100rpmにて24時間混合する。24時間後、試料をおよそ23℃にて#10ふるい及び#50〜100ふるいを通して濾過する。
【0183】
NaClを濾過された溶液に添加して塩濃度を0.7 Mにさせ、この時点でこの時点で典型的には白い沈殿を形態する。沈殿物を混合物の上部へ移動させる。試料を4〜23℃にて混合又は振盪することなく一晩インキュベートさせる。上清を沈殿塩から吸引するか、又は汲み出して、できる限り液相を除去する(およそ23℃にて)。
生じる沈殿物を10mM HClに溶解し、実施例1に記載されているように更に処理する。この処理下で、>1.5gのヒト胎盤コラーゲンをそれぞれの胎盤から>98%コラーゲン及び>90%I型コラーゲンを含む最終コラーゲン試料で単離される。
【0184】
(5.3 実施例3:胎盤からのコラーゲンの単離)
本実施例は、本発明に従うことにより、胎盤からのコラーゲンの単離のための更なる工程を例証する。
凍結された胎盤を得て、組織を処理して、塩沈殿させ、10mM HCl実施例1及び実施例2において記述されているように生じる沈殿物を10mMのHClに溶解する。
1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液(約160ml/胎盤)を50ml/分の速度にて試料に添加し、5〜6℃にて動力付ミキサーで60〜100rpmにて混合する。
【0185】
4MのNaCl及び10mMのHClを添加して塩濃度を0.7 Mにさせ、この時点でこの時点で典型的には白い沈殿を形態する。沈殿物を混合物の上部へ移動させる。試料を4〜23℃にて混合又は振盪することなく一晩インキュベートさせる。上清を沈殿塩から吸引するか、又は汲み出して、できる限り液相を除去する(およそ23℃にて)。
生じる沈殿物を10mM HClに溶解し、実施例1に記載されているように更に処理する。
【0186】
(5.4 実施例4:微小繊維化されたコラーゲンの調製)
ヒト胎盤コラーゲン(HPC)の10mM HCl(〜3mg/ml、pH〜2)溶液を、撹拌能をもつ水で覆った反応容器中において4℃にて維持する。
撹拌しながら、中和緩衝液(0.2M Na2HPO4、pH 9.2)を、30mMの最終リン酸イオン濃度のために8.5部のコラーゲン溶液に対して1.5部の中和緩衝液の比率にてコラーゲンに添加する。pHを必要に応じて7.2に調製し、撹拌を止める。
【0187】
温度は、1℃/分にて32℃へと徐々に上げ、次いで32℃にて20〜24時間保持する。コラーゲンを遠心チューブへ移して、総容積を少なくとも10分の1に減少させる。
微小繊維化されていないコラーゲンを除去するために、微小繊維化されたコラーゲン懸濁液をリン酸緩衝食塩水(20mM Na2HPO4及び130mM NaCl、pH 7.4)にて3×洗浄する。
【0188】
微小繊維化されたコラーゲン懸濁液を〜3mg/mlにて、2900ml/分にて60メッシュスクリーンを通すことによって剪断する。コラーゲンは、スクリーン〜75×を通過する。
コラーゲン濃度を熱的重量分析によって確認する。コラーゲン変性温度を示差走査熱量測定によって確認する。
微小繊維化されたコラーゲン懸濁液を4℃にて維持する。
【0189】
(5.5 実施例5:架橋された微小繊維化されたコラーゲンの調製)
微小繊維化されたコラーゲンのPBS中の懸濁液(〜2.5Mg/ml、pH 7.4)を、撹拌能をもつ水で覆った反応容器中においておよそ25℃にて維持する。微小繊維化されたコラーゲン懸濁液を勢いよく撹拌すると共に、50mMのブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)を添加する。9.5のpHが達成されるまで、pHを1M NaOHで調整する。反応をおよそ25℃にて24時間撹拌市、その後に生じる架橋されたコラーゲン懸濁液を一度洗浄して、0.5Mのグリシン(pH 10)に再懸濁する。架橋反応は、およそ25℃にて24時間攪拌してクエンチさせる。生じる架橋されたコラーゲン懸濁液をPBSで3×洗浄する。
コラーゲン濃度を熱的重量分析によって確認する。コラーゲン変性温度を示差走査熱量測定によって確認する。
微小繊維化されたコラーゲン懸濁液を4℃にて維持する。
【0190】
(5.6 実施例6:注射用の架橋された微小繊維化されたコラーゲンの調製)
本実施例は、注射能及び耐久性を改善するために、架橋された微小繊維化されたコラーゲンの剪断を例証する。
架橋された微小繊維化されたコラーゲンを組織ホモジナイザーで剪断して、任意の過剰に大きな粒子を懸濁液からスクリーニングして取り出す。コラーゲンを〜35mg/mlに濃縮する(例えば、熱重量分析によって確認する)。
【0191】
(5.7 実施例7:ウイルス排除)
本実施例は、本発明のコラーゲン組成物からのウイルス粒子の排除を例証する。
実施例4、5又は6に従って調製した3mg/mLコラーゲン組成物を5倍体積の10mM HCl、pH 2〜2.3に溶解する。
【0192】
次いで、希釈されたコラーゲン組成物を濾過装置に適用する。濾過のためには、#16管をMinimate(商標)接線流濾過装置(Pall Corporation、Santa Clara、CA)の供給ポート及び貯留ポートに取り付ける。もう一つのチューブをベントポート(廃棄物収集)に取り付ける。ぜん動型ポンプを試料と供給ポートとの間の供給ラインに接続する。ポンプ速度は、20〜30ml/分にセットしてある。希釈されたコラーゲン組成物を容器内に置いて、装置の供給チューブ及び貯留チューブを同じ容器に適用する。廃棄物収集コンテナを配置して、ベントポートから除去された液体を収集する。ポンプをオンにして、約4〜27℃にて起動させる。残りのコラーゲン体積が希釈前の元の体積に到達するまで、試料を濃縮させる。
【0193】
収集されたコラーゲン試料を5倍に再び希釈して、濃縮工程を繰り返す。希釈及び濃縮工程を6回以上まで繰り返して、除去されたコラーゲン組成物を得る。
除去されたコラーゲン組成物は、適切ならば、実施例3、4及び/又は6に従って更に処理することができる。
【0194】
(5.8 実施例8:注射用コラーゲン組成物の調製)
実施例6又は7のコラーゲン組成物を1mlに注射器を充填し、30ゲージ針を取り付け、4℃にて貯蔵する。
【0195】
(5.9 実施例9:胎盤からの注射用コラーゲン組成物の調製)
本実施例は、ヒト胎盤からのヒト注射剤コラーゲン組成物の調製を例証する。
工程1:ヒト胎盤コラーゲン(HPC)を実施例1〜3に記載されているように胎盤から単離して、コラーゲン試料の10mM HCl溶液を4℃にて貯蔵する。
工程2:単離されたHPCを実施例4に記載されているように原繊維化する。
工程3:原繊維化されたHPCを実施例5に記載されているように架橋する。
工程4:架橋されたHPCを、実施例6に記載されているように剪断し、及び濃縮する。
工程5:剪断されたFTPCから、実施例7に記載されているようにウイルス粒子を取り除く。
工程6:ウイルス除去されたHPCを実施例8に記載されているように注射器に充填して、4℃にて貯蔵する。
約26個の注射用ヒト胎盤コラーゲン注射器/胎盤をこの方法のもとで調製することができる。
【0196】
本明細書において引用される全ての刊行物及び特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物又は特許出願が引用により取り込まれていることが具体的かつ個々に示されたかのように、引用により本明細書に取り込まれている。前述の発明は、理解の明快さのを目的として例証及び実施例によっていくらか詳細に記述してあるが、本発明の教示を考慮して、添付の請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、それに対して一定の変更及び修飾を行ってもよいことは当業者に直ちに明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル架橋された酸可溶性アテロペプチドコラーゲン。
【請求項2】
前記コラーゲンが哺乳動物コラーゲンである、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項3】
ウシ、ヒツジ又はラットコラーゲンである、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項4】
ヒトコラーゲンである、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項5】
胎盤コラーゲンである、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項6】
架橋の前に原繊維化された、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項7】
ヒト胎盤コラーゲンである、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項8】
多機能性エポキシ化合物で架橋されている、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項9】
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋されている、請求項8記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項10】
還元されている、請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項11】
水素化ホウ素ナトリウムで還元されている、請求項10記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲン。
【請求項12】
請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲンを含む組成物であって、前記組成物のコラーゲンの少なくとも80%がI型コラーゲンである、前記組成物。
【請求項13】
前記組成物の前記コラーゲンの80〜90%がI型コラーゲンである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の前記コラーゲンの10%未満が、III型コラーゲンである、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の前記コラーゲンの2〜13%が、IV型コラーゲンである、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも10μg/mgの炭水化物を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項17】
ヒアルロン酸を更に含む、請求項12記載の組成物。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸が、架橋されている、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲンを哺乳動物の組織に投与することを含む、哺乳動物の組織を増大し、増量し、又は置換する方法。
【請求項20】
前記架橋されたアテロペプチドコラーゲンを注射によって投与する、請求項13記載の方法。
【請求項21】
請求項1記載の架橋されたアテロペプチドコラーゲンと、架橋されたアテロペプチドコラーゲンを投与するための説明書を伴うラベルとを含む、哺乳動物の組織を増大し、増量し、又は置換するためのキット。
【請求項22】
前記架橋されたアテロペプチドコラーゲンを投与する手段を更に含む、請求項21記載のキット。
【請求項23】
前記手段が注射器である、請求項22記載のキット。
【請求項24】
コラーゲンを含む哺乳動物の組織からアテロペプチドコラーゲンを調製する方法であって:
a)コラーゲン溶液を得るために組織を浸透圧ショック溶液と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項25】
前記浸透圧ショック溶液が、50mM NaCl未満の浸透ポテンシャルをもつ水である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
工程(a)が、前記組織を少なくとも0.5M NaClの溶液の浸透ポテンシャルを有する溶液と接触させることに続いてなされるか、又は続いて起こる、請求項24記載の方法。
【請求項27】
b)前記組織を酸洗浄液と接触させる工程、
を更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記酸洗浄液が、0.5Mの酢酸を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
c)前記コラーゲンからテロペプチドを除去する工程、
を更に含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記テロペプチドが、前記コラーゲン溶液をテロペプチド除去のために適切な条件下でテロペプチドを除去することができる酵素と接触させることによって除去される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記酵素がペプシン又はパパインである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記条件が23〜25℃の温度を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
d)前記コラーゲンを低イオン強度溶液と接触させる工程、
を更に含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記低イオン強度溶液が0.2MのNaClを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
e)高イオン強度溶液でコラーゲンを沈殿させる工程、
を更に含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記高イオン強度溶液が0.7M NaClを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
工程35.e)が繰り返される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記コラーゲンを濾過する工程を更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
h)前記コラーゲンを原繊維化する工程、
を更に含む、請求項35記載の方法。
【請求項40】
g)前記コラーゲンを架橋して架橋されたコラーゲンを得る工程、
を更に含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記コラーゲンがグルタルアルデヒド、ゲニピン又は1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで架橋されている、請求項40記載の方法。
【請求項42】
h)前記架橋されたコラーゲンを還元する工程、
を更に含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記架橋されたコラーゲンが、前記架橋されたコラーゲンを水素化ホウ素ナトリウムと接触させることによって還元される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
i)前記架橋されたコラーゲンを剪断する工程、
を更に含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
酸可溶性アテロペプチドコラーゲンを架橋する方法であって、前記酸可溶性アテロペプチドコラーゲンを、前記酸可溶性アテロペプチドコラーゲンの架橋のために適切な条件下で1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルと接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項46】
前記酸可溶性アテロペプチドコラーゲンがヒト胎盤由来である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記酸可溶性アテロペプチドコラーゲンが重量基準で400%の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルと接触される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記酸可溶性アテロペプチドコラーゲンが触媒の存在下において1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルと接触される、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記触媒がピリジンである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
コラーゲン組成物中のウイルス粒子の量を減少させる方法であって、コラーゲン組成物を、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができるが前記コラーゲン組成物を保持するサイズのフィルターと接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項51】
前記フィルターが約500kDa、約750kDa又は約1000kDaである、請求項50記載の方法。

【公表番号】特表2008−543783(P2008−543783A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516009(P2008−516009)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/022729
【国際公開番号】WO2006/135843
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】