説明

ヒト胚性幹細胞の分化

本発明は、多能性幹細胞の分化を促進するための方法、及び、こうした方法に関連する、又はこうした方法で得られる生成物を提供する。より詳細には、本発明は、膵臓ホルモン発現細胞、及び膵臓ホルモン分泌細胞を形成するための改良された方法を提供する。本発明は更に、フィーダー細胞層を使用することなく多能性幹細胞の分化を促進する方法、及びこうした方法に関連する、又はこうした方法で得られる生成物を提供する。本発明は更に、多能性幹細胞から誘導されたインスリン産生細胞においてグルコース刺激インスリン分泌を促進する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、多能性幹細胞の分化を促進するための方法、及びこうした方法に関連する、又はこうした方法で得られる生成物を提供する。より詳細には、本発明は、膵臓ホルモン発現細胞、及び膵臓ホルモン分泌細胞を形成するための改良された方法を提供する。本発明は更に、フィーダー細胞層を使用することなく多能性幹細胞の分化を促進する方法、及びこうした方法に関連する、又はこうした方法で得られる生成物を提供する。本発明は更に、多能性幹細胞から誘導されたインスリン産生細胞においてグルコース刺激インスリン分泌を促進する方法を提供する。
【0002】
〔背景技術〕
1型糖尿病の細胞置換療法における進歩及び移植可能なランゲルハンス島の不足のため、生着に適したインスリン産生細胞すなわちβ細胞の供給源の開発に注目が集まっている。1つの手法として、例えば、胚性幹細胞のような多能性幹細胞から機能性のβ細胞を生成することがある。
【0003】
脊椎動物の胚発生では、多能性細胞は、原腸形成として知られる過程において3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)を含む細胞群を生じる。例えば、甲状腺、胸腺、膵臓、腸、及び肝臓などの組織は、内胚葉から中間段階(ステージ)を経て発生する。この過程における中間ステージは胚体内胚葉(definitive endoderm)の形成である。胚体内胚葉細胞は、HNF−3β、GATA4、Mixl1、CXCR4及びSox−17などの多くのマーカーを発現する。
【0004】
多能性幹細胞は、ステージ特異的胚抗原(SSEA)3及び4の1以上、並びにTra−1−60及びTra−1−81と呼ばれる抗体によって検出可能なマーカーを発現し得る(Thomson et al.,Science 282:1145,1998)。インビトロで多能性幹細胞を分化させると、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1−81の発現が消失し(存在する場合)、SSEA−1の発現が増大する。未分化の多能性幹細胞は、通常、アルカリホスファターゼ活性を有し、この活性は、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、製造業者(ベクターラボラトリーズ社(Vector Laboratories)、バーリンゲーム、カリフォルニア州)によって述べられるようにVectorRedを基質として現像することによって検出することができる。未分化の多能性幹細胞はまた、RT−PCRで検出されるように一般にOct−4及びTERTも発現する。
【0005】
多能性幹細胞は、様々な方法で多能性幹細胞を支持するフィーダー細胞の層上で一般的に培養される。あるいは、多能性幹細胞を、フィーダー細胞を基本的に含まないにも関わらず、細胞を実質的に分化させることなく多能性幹細胞の増殖を支持するような培養システム中で培養する。分化をともなわない無フィーダー培養中での多能性幹細胞の増殖は、別の細胞型と予め培養することによって調整した培地を用いることで支持される。また、分化をともなわない無フィーダー培養中での多能性幹細胞の増殖は、合成培地を用いることによっても支持される。
【0006】
例えば、ルービノフら(Reubinoff et al.Nature Biotechnology 18:399〜404(2000))及びトンプソンら(Thompson et al.Science 6 November 1998:Vol.282.no.5391,pp.1145〜1147)は、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞層(mouse embryonic fibroblast feeder cell layer)を用いてヒト胚盤胞からの多能性幹細胞系を培養することについて開示している。
【0007】
リチャードら(Richards et al.Stem Cells 21:546〜556,2003)は、11種類の異なるヒトの成人、胎児、及び新生児フィーダー細胞層についてヒト多能性幹細胞の培養を支持する能力の評価を行っている。リチャードらは、「成人の皮膚線維芽細胞フィーダー上で培養したヒト胚性幹細胞系は、ヒト胚性幹細胞の形態を有し、多能性を維持する」と述べている。
【0008】
米国特許出願公開第20020072117号は、無フィーダー培養中で霊長類の多能性幹細胞の増殖を支持する培地を生成する細胞系を開示している。使用される細胞系は、胚性組織から得られるかあるいは胚性幹細胞から分化した間葉系かつ線維芽細胞様の細胞系である。米国特許出願公開第20020072117号は、この細胞系の1次フィーダー細胞層としての使用を更に開示している。
【0009】
別の例として、ワンら(Wang et al.Stem Cells 23:1221〜1227,2005)は、ヒト胚性幹細胞由来のフィーダー細胞層上でヒト多能性幹細胞を長期にわたって増殖させるための方法を開示している。
【0010】
別の例として、ストイコビッチら(Stojkovic et al.Stem Cells 2005 23:306〜314,2005)は、ヒト胚性幹細胞の自然分化により誘導されたフィーダー細胞システムを開示している。
【0011】
更なる別の例として、ミヤモトら(Miyamoto et al.Stem Cells 22:433〜440,2004)は、ヒトの胎盤から得られたフィーダー細胞の供給源を開示している。
【0012】
アミットら(Amit et al.Biol.Reprod 68:2150〜2156,2003)は、ヒトの包皮由来のフィーダー細胞層を開示している。
【0013】
別の例として、インズンザら(Inzunza et al.Stem Cells 23:544〜549,2005)は、ヒトの出生直後産児の包皮線維芽細胞から得られたフィーダー細胞層を開示している。
【0014】
米国特許第6642048号は、無フィーダー培養中での霊長類の多能性幹(pPS)細胞の増殖を支持する培地、及びこうした培地の製造に有用な細胞系を開示している。米国特許第6642048号は、「本発明は、胚性組織から得られるかあるいは胚性幹細胞から分化した間葉系かつ線維芽細胞様の細胞系を含む。本開示では、こうした細胞系を誘導し、培地を調整し、この馴化培地を用いて幹細胞を増殖させるための方法を説明及び図示する」と述べている。
【0015】
別の例として、国際特許出願公開第2005014799号は、哺乳動物細胞の維持、増殖及び分化のための馴化培地を開示している。国際特許出願公開第2005014799号は、「本発明に基づいて製造される培地は、マウス細胞、特にMMH(Metマウス肝細胞)と称される分化及び不死化したトランスジェニック肝細胞の細胞分泌活性によって調整される」と述べている。
【0016】
別の例として、スーら(Xu et al.Stem Cells 22:972〜980,2004)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素を過剰発現するように遺伝子改変されたヒト胚性幹細胞由来細胞から得られた馴化培地を開示している。
【0017】
別の例において、米国特許出願公開第20070010011号は、多能性幹細胞を維持するための合成培地を開示している。
【0018】
代替的な一培養システムでは、胚性幹細胞の増殖を促進することが可能な増殖因子を添加した無血清培地を使用している。例えば、チェオンら(Cheon et al.BioReprod DOI:10.1095/biolreprod.105.046870,October 19,2005)は、胚性幹細胞の自己再生を誘発することが可能な異なる増殖因子を添加した非馴化血清補充(SR)培地中に胚性幹細胞が維持された、無フィーダーかつ無血清の培養システムを開示している。
【0019】
別の例として、リーベンシュタインら(Levenstein et al.Stem Cells 24:568〜574,2006)は、bFGFを添加した培地を用い、線維芽細胞又は馴化培地の非存在下でヒト胚性幹細胞を長期にわたって培養するための方法を開示している。
【0020】
別の例として、米国特許出願公開20050148070号は、血清の非存在下及び線維芽フィーダー細胞の非存在下において合成培地中でヒト胚性幹細胞を培養する方法を開示している。この方法は、アルブミン、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、少なくとも1種類のトランスフェリン又はトランスフェリン代替物、少なくとも1種類のインスリン又はインスリン代替物を含む培地中で幹細胞を培養することを含み、前記培地は、哺乳動物胎児血清を基本的に含まず、少なくとも約100ng/mlの、線維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化することが可能な線維芽細胞増殖因子を含み、該増殖因子は、線維芽細胞フィーダー層以外の供給源から供給され、前記培地は、フィーダー細胞又は馴化培地の非存在下で未分化状態の幹細胞の増殖を支持するものである。
【0021】
別の例において、米国特許出願公開第20050233446号は、未分化の霊長類始原幹細胞を含む幹細胞の培養に有用な合成培地を開示している。溶液中では、培地は培養される幹細胞と比較してほぼ等張である。与えられた培養中、この特定の培地は基礎培地、並びに始原幹細胞の実質的に未分化状態での増殖を支持するうえで必要とされるbFGF、インスリン、及びアスコルビン酸のそれぞれの所与の量を含む。
【0022】
別の例として、米国特許第6800480号は、「一実施形態において、実質的に未分化状態の霊長類由来の始原幹細胞を増殖させるための細胞培地であって、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を支持するうえで効果的な低浸透圧、低エンドトキシンの基礎培地を含む、細胞培地を提供する。この基礎培地は、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を支持するうえで効果的な栄養素血清、並びに、フィーダー細胞、及びフィーダー細胞から誘導される細胞外マトリクス成分からなる群から選択される基質と組み合わされる。培地は更に、非必須アミノ酸、抗酸化剤、並びに、ヌクレオシド及びピルビン酸塩からなる群から選択される第1の増殖因子を含む。」と述べている。
【0023】
別の例では、米国特許出願公開第20050244962号は、「一態様において本発明は、霊長類の胚性幹細胞を培養する方法を提供する。哺乳動物の胎児血清を基本的に含まない(好ましくはあらゆる動物の血清をも基本的に含まない)培養中で、単に線維芽細胞フィーダー層以外の供給源から供給される線維芽細胞増殖因子の存在下で幹細胞を培養する。好ましい一形態では、充分な量の線維芽細胞増殖因子を添加することによって、幹細胞の培養を維持するために従来必要とされていた線維芽細胞フィーダー層の必要性がなくなる」と述べている。
【0024】
更なる例として、国際特許出願公開第2005065354号は、基本的に無フィーダーかつ無血清の合成等張培地であって、a.基礎培地、b.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のbFGF、c.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のインスリン、及び、d.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のアスコルビン酸を含む、培地を開示している。
【0025】
別の例として、国際特許出願公開第2005086845号は、未分化の幹細胞を維持するための方法であって、幹細胞を未分化状態に維持するのに充分な量の形質転換増殖因子β(transforming growth factor:TGFβ)のタンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞増殖因子(FGF)のタンパク質ファミリーのメンバー、又はニコチンアミド(NIC)に、所望の結果を得るのに充分な時間だけ、幹細胞を曝露することを含む、方法を開示している。
【0026】
多能性幹細胞は、細胞外マトリクスでコーティングされた組織培養基質上で培養及び分化させることができる。細胞外マトリクスは、組織培養基質にコーティングする前に希釈してもよい。細胞外マトリクスを希釈し、組織培養基質をコーティングするうえで適した方法の例を、クラインマンら(Kleinman,H.K.,et al.,Biochemistry 25:312(1986))、及びハドレーら(Hadley,M.A.,et al.,J.Cell.Biol.101:1511(1985))に見ることができる。
【0027】
膵臓は、胚体内胚葉が膵臓内胚葉へと分化することによって形成される。膵臓内胚葉の細胞は膵臓−十二指腸ホメオボックス遺伝子であるPdx1を発現する。Pdx1の非存在下では、膵臓は腹側芽及び背側芽の形成以降は発生を停止してしまう。したがって、Pdx1の発現は、膵臓の器官形成における重要な過程である。成熟した膵臓は、細胞型の中でも特に外分泌組織及び内分泌組織を含んでいる。外分泌組織及び内分泌組織は、膵臓内胚葉が分化することによって生じる。
【0028】
膵島細胞の特徴を保持する細胞がマウスの胚細胞から誘導されたことが報告されている。例えば、ルメルスキー(Lumelsky)ら(Science 292:1389,2001)は、マウスの胚性幹細胞が膵島に類似したインスリン分泌構造に分化することを報告している。ソリア(Soria)ら(Diabetes 49:157,2000)は、ストレプトゾトシン糖尿病のマウスにおいて、マウスの胚性幹細胞から誘導されたインスリン分泌細胞が糖血症を正常化することを報告している。
【0029】
一例において、ホリ(Hori)ら(PNAS 99:16105,2002)は、ホスホイノシチド3−キナーゼ(LY294002)の阻害剤でマウス胚性幹細胞を処理することにより、β細胞に類似した細胞が生じたことを開示している。
【0030】
別の例として、ブリスズザック(Blyszczuk)ら(PNAS 100:998,2003)は、Pax4を構成的に発現するマウス胚性幹細胞からインスリン産生細胞が生成することを報告している。
【0031】
ミカレフ(Micallef)らは、レチノイン酸によって、Pdx1陽性膵臓内胚葉を形成する胚性幹細胞の分化決定(commitment)を制御することが可能であることを報告している。レチノイン酸は、胚における原腸形成の終期に相当する期間において胚性幹細胞の分化の4日目に培養に加えると、Pdx1の発現を最も効果的に誘導する(Diabetes 54:301,2005)。
【0032】
ミヤザキ(Miyazaki)らは、Pdx1を過剰発現するマウス胚幹細胞株を報告している。ミヤザキらの結果は、外因性のPdx1発現が、得られた分化細胞においてインスリン、ソマトスタチン、グルコキナーゼ、ニューロゲニン3、P48、Pax6、及びHNF6遺伝子の発現を明らかに増大させることを示している(Diabetes 53:1030,2004)。
【0033】
スカウディ(Skoudy)らは、マウス胚幹細胞内で、アクチビンA(TGF−βスーパーファミリーのメンバー)が、膵臓外分泌遺伝子(p48及びアミラーゼ)、並びに内分泌遺伝子(Pdx1、インスリン、及びグルカゴン)の発現を上方制御することを報告している。最大の効果は、1nMアクチビンAを使用した場合に認められた。スカウディ(Skoudy)らはまた、インスリン及びPdx1 mRNAの発現レベルはレチノイン酸により影響されなかったが、3nMのFGF7による処理によりPdx1の転写産物のレベルが増大したことも観察している(Biochem.J.379:749,2004)。
【0034】
シラキ(Shiraki)らは、胚性幹細胞のPdx1陽性細胞への分化を特異的に促進する増殖因子の効果を研究している。シラキらは、TGFβ2によってPdx1陽性細胞が高い比率で再現可能に得られたことを観察している(Genes Cells.2005 Jun;10(6):503〜16.)。
【0035】
ゴードン(Gordon)らは、血清の非存在下、かつアクチビンとWntシグナル伝達阻害剤の存在下で、マウス胚性幹細胞からブラキュリ(brachyury)/HNF−3β内胚葉細胞が誘導されることを示している(米国特許出願公開2006/00034468(A1)号)。
【0036】
ゴードン(Gordon et al.PNAS,Vol 103,p 16806,2006)らは、「Wnt及びTGF−β/ノーダル(nodal)/アクチビンの同時シグナル伝達が前原始線条の形成には必要であった」と述べている。
【0037】
しかしながら胚性幹細胞の発生のマウスモデルは、例えばヒトなどのより高等な哺乳動物における発生プログラムを正確に模倣していない可能性がある。
【0038】
トムソン(Thomson)らはヒトの胚盤胞から胚性幹細胞を単離した(Science 282:114,1998)。これと同時に、ギアハルト(Gearhart)及び共同研究者は、胎児生殖腺組織から、ヒト胚生殖(hEG)細胞株を誘導した(Shamblott et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998)。単純に白血病阻害因子(LIF)と培養することによって分化を妨げることが可能なマウス胚性幹細胞と異なり、ヒト胚性幹細胞は極めて特殊な条件下で維持しなければならない(米国特許第6,200,806号、国際特許出願公開第99/20741号、同第01/51616号)。
【0039】
ダムールら(D’Amour)は、高濃度のアクチビン及び低濃度の血清の存在下で、ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉の濃縮化された培養物が調製されたことを述べている(Nature Biotechnology 2005)。これらの細胞をマウスの腎臓カプセル下に移植すると、ある内胚葉性臓器の特徴を有するより成熟した細胞に分化した。ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉細胞はFGF10の添加後、更にPdx1陽性細胞に分化させることができる(米国特許出願第2005/026655(A1)号)。
【0040】
ダムールら(D’Amour et al.Nature Biotechnology−24,1392〜1401(2006))は、「我々は、ヒト胚性幹細胞(hES)を、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド及びグレリンといった膵臓ホルモンを合成可能な内分泌細胞に転換させる分化プロセスを開発した。このプロセスは、胚体内胚葉、腸管内胚葉、膵臓内胚葉及び内分泌前駆細胞に似た段階を経て、内分泌ホルモンを発現する細胞に細胞を誘導することによりインビボで膵臓の器官形成を模倣するものである。」と述べている。
【0041】
別の例として、フィスク(Fisk)らは、ヒト胚性幹細胞から膵島細胞を作製するためのシステムを報告している(米国特許出願第2006/0040387(A1)号)。この場合、分化経路は3つの段階に分けられている。先ず、ヒト胚性幹細胞を、酪酸ナトリウムとアクチビンAの組み合わせを用いて内胚葉に分化した。次に細胞をノギンなどのTGFβアンタゴニストとEGF又はベータセルリンの組み合わせと培養してPdx1陽性細胞を作製した。最終分化はニコチンアミドによって誘導した。
【0042】
1つの例において、ベンベニストリー(Benvenistry)らは、「我々は、Pdx1の過剰発現が膵臓に多く見られる遺伝子の発現を高めたことを結論付けるものである。インスリン発現の誘導には、インビボでのみ存在する更なるシグナルを必要とする可能性がある。」と述べている(Benvenistry et al,Stem Cells 2006;24:1923〜1930)。
【0043】
別の例において、オドリコ(Odorico)らは、哺乳動物の多能性幹細胞を膵臓系統の細胞にインビトロで直接分化させる方法を報告している。この方法では、中内胚葉の方向へと分化を誘導するような有効量の骨形成タンパク質の存在下で幹細胞を培養することを伴う。これらの中内胚葉細胞を更に培養して、胚体内胚葉へと分化決定した細胞に富んだ胚様体(EB)を形成させる。胚体内胚葉へと分化決定した細胞は、所定の条件下で膵臓系統の細胞へと最終分化する(米国特許出願公開第20070259423号)。
【0044】
別の例では、ツラチャン(Tulachan)ら(Developmental Biology,305,2007,p 508〜521)は、「したがって、胚期におけるTGF−βシグナル伝達の阻害により、膵臓上皮細胞が内分泌系統へと進むことが可能となる」と述べている。
【0045】
したがって、膵臓内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞、又は膵臓ホルモン分泌細胞への分化能を維持しながら、グルコース濃度の変化に応じてインスリンを分泌する能力を有する、現在の臨床的要請に応えるように増殖させることが可能な多能性幹細胞株を樹立するための条件を開発することが現在でも強く求められている。本発明者らは、グルコース濃度の変化に応じてインスリンを分泌することが可能な膵臓内分泌細胞へのヒト胚性幹細胞の分化の効率を向上させるために、代替的アプローチをとったものである。
【0046】
〔概要〕
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法を提供し、この方法は、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む。
【0047】
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞から誘導される膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞において、グルコース刺激インスリン分泌を促進するための方法を提供し、この方法は、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む。
【0048】
一実施形態では、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、以下の方法のいずれか1つによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞から分化させられる。その方法とは、
a.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤で処理し、次いで線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤を含む培地を取り除いた後、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤を含む培地中で細胞を培養するか、
b.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸及び少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子で処理するか、
c.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、及び少なくとも1種類のBMPを阻害可能な因子で処理するか、
d.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、及びネトリンで処理するか、
e.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、少なくとも1種類のBMPを阻害可能な因子、及びネトリンで処理するか、
f.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子及びソニックヘッジホッグ阻害剤で処理し、次いで前記1種類の線維芽細胞増殖因子及び前記ソニックヘッジホッグ阻害剤を除去した後、細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、及びレチノイン酸で処理するか、
g.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子及びソニックヘッジホッグ阻害剤で処理し、次いで前記1種類の線維芽細胞増殖因子及び前記ソニックヘッジホッグ阻害剤を除去した後、細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、レチノイン酸、及び少なくとも1種類のBMPを阻害可能な因子で処理するか、
h.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子及びソニックヘッジホッグ阻害剤で処理し、次いで前記1種類の線維芽細胞増殖因子及び前記ソニックヘッジホッグ阻害剤を除去した後、細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、レチノイン酸、及びネトリンで処理するか、
i.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子及びソニックヘッジホッグ阻害剤で処理し、次いで前記少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子及び前記ソニックヘッジホッグ阻害剤を除去した後、細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子、レチノイン酸、少なくとも1種類のBMPを阻害可能な因子、及びネトリンで処理する、ことである。
【0049】
一実施形態では、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、以下の方法のいずれか1つによって膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を処理することによって膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞から分化させられる。その方法とは、
a.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、γ−セクレターゼ阻害剤及びGLP−1アゴニストを含む培地中で培養し、次いでγ−セクレターゼ阻害剤及びGLP−1アゴニストを含む培地を取り除いた後、細胞をGLP−1アゴニスト、IGF−1及びHGFを含む培地中で培養するか、
b.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、GLP−1アゴニストを含む培地中で培養し、次いでGLP−1アゴニストを含む培地を取り除いた後、細胞をGLP−1アゴニスト、IGF−1及びHGFを含む培地中で培養するか、
c.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、γ−セクレターゼ阻害剤及びGLP−1アゴニストを含む培地中で培養するか、
d.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、GLP−1アゴニストを含む培地中で培養するか、
e.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞を、Notchシグナル伝達経路を阻害する因子で処理するか、
f.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理するか、
g.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で処理するか、
h.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約10mM〜約20mMのグルコース及びGLP−1アゴニストを含む培地中で培養する、ことである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明で用いられる分化プロトコールの概要を示す。パネルa)は、米国特許出願第11/736,908号に報告される方法を示し、パネルb)及びc)は、本発明の方法である。
【図2】実施例2に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。膵臓内胚葉マーカー(PDX−1、ISL−1)及び内分泌マーカー(ニューロD、インスリン、及びグルカゴン)の発現がステージ3〜5(S3〜S5)に示されている。ステージ4〜5においてインスリン及びグルカゴンの発現が顕著に増大した。
【図3】実施例3に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。ステージ3〜5における膵臓内分泌マーカーとして、a)インスリン、b)NKX2、c)グルカゴン、d)ニューロD、及び膵臓内胚葉マーカーとして、e)PDX−1が示されている。異なるキナーゼ阻害剤の効果をステージ3、ステージ4、又はステージ3及び4のいずれかにおいて評価した(+/+は、特定の化合物がステージ3及び4の両方で存在することを示し、+/−は、特定の化合物がステージ3で存在し、ステージ4で存在しないことを示し、−/+は、特定の化合物がステージ4で存在し、ステージ3で存在しないことを示す)。
【図4】実施例4に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。膵臓マーカーとして、ステージ3〜5における、a)グルカゴン及びインスリン、b)HAND1及びニューロD、c)HNF4a及びPDX−1、d)NKX2.2及びSox17を示す。ALK5阻害剤IIの影響を、ステージ4、ステージ5、又はステージ4及び5のいずれかにおいて評価した(+/+は、阻害剤がステージ4及び5の両方で存在することを示し、+/−は、阻害剤がステージ4で存在し、ステージ5で存在しないことを示し、−/+は、阻害剤がステージ5で存在し、ステージ4で存在しないことを示す)。
【図5】実施例5に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。ステージ4〜5における、a)グルカゴン、b)インスリン、c)PDX−1、d)ニューロDの発現に対する1〜10μmのALK5阻害剤IおよびIIの影響を示す。コントロール処理は、分化プロセスの間にALK5阻害剤を含まなかった。
【図6】実施例6に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。ステージ3〜5における、a)アルブミン、b)CDX2、c)インスリン、d)グルカゴン、e)PDX−1、f)ニューロD、及びg)NKX2.2の発現に対する1μmのALK5阻害剤及び0〜500ng/mlの組み換えヒトノギンの複合的影響を示す。ALK5阻害剤をステージ4及び5で加え、ノギンをステージ3で加えた。
【図7】実施例7に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。ステージ4及び5における、a)インスリン、b)グルカゴン、c)ngn3、d)ニューロD、e)CDX−2、及びf)PDX−1の発現に対する1μmのALK5阻害剤及び100ng/mlの組み換えヒトノギンの複合的影響を示す。ALK5阻害剤をステージ4及び5で加え、ノギンをステージ3、4、又は3及び4で加えた。
【図8】実施例7に開示される方法に従って分化させた細胞の形態。a)ステージ5の6日目の細胞の位相差顕微鏡画像(4倍)、b)ステージ5の6日目の細胞の位相差顕微鏡画像(10倍)、c)ステージ5の12日目の細胞の位相差顕微鏡画像(4倍)、d)ステージ5の12日目の細胞の位相差顕微鏡画像(10倍)。
【図9】実施例7に開示される方法に従って分化させた細胞の免疫蛍光画像。細胞はステージ5の12日目のものである。a)1個の細胞塊のインスリン染色、及び、b)DAPI核染色。
【図10】実施例7に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。
【図11】実施例8に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。データは、a)ngn3、b)PDX−1、c)ニューロD、d)Pax4、e)インスリン、及びf)グルカゴンの発現に対する、ステージ3及び4で加えたノギン、並びにステージ4で加えたネトリン−4及び/又はALK5阻害剤の複合的影響を示す。
【図12】実施例8に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。パネルa)インスリン、b)グルカゴン、c)ngn3、d)NKX2.2、e)ニューロD、及びf)PDX−1。
【図13】拡張したステージ5の培養のインビトロでのグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)。実施例9に開示される方法に従って調製したステージ5の細胞を、ステージ5の培養のa)6日目、b)12日目、及びc)8〜20日目にグルコースでチャレンジした。
【図14】内分泌マーカーの発現に対するネトリン−1又はネトリン−2の影響。実施例10に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。
【図15】胚体内胚葉を誘導するための別法を用いた内分泌マーカーの誘導。実施例11に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞系H1の細胞のリアルタイムPCR分析。パネルa)インスリン、b)グルカゴン、c)NKX2.2、d)Pax4、e)PDX−1、及びf)ニューロD。
【図16】図1cに概要を示す分化プロトコールの異なるステージにおける異なるマーカーの発現。パネルa)は、ステージ1の3日目におけるH1細胞においてFACSにより測定したCXCR4の発現。パネルb)は、リアルタイムPCRにより測定した、ステージ1の3日目における細胞における、胚体内胚葉系統及び胚体外系統に特徴的なマーカーの発現。パネルc)〜n)は、リアルタイムPCRによって判定した、ステージ2〜6の終わりに採取した細胞における異なる遺伝子の発現。
【図17】図1cに概要を示す分化プロトコールの異なるステージにおける細胞の数。
【図18】異なる刺激に応答した、図1cに概要を示す分化プロトコールのステージ6の終わりの細胞からのC−ペプチドの放出。
【図19】成人ヒト膵島と比較した、図1cに概要を示す分化プロトコールのステージ6の終わりの細胞のC−ペプチド及びプロインスリン含量。
【図20】図1cに概要を示す分化プロトコールのステージ6の終わりの細胞における、インスリン(パネルa)、シナプトフィジン(パネルb)の発現、及びシナプトフィジン(X軸)とインスリン(Y軸)(パネルc)の同時発現。
【図21】ステージ3〜4において、ノギンの代わりに100ng/mlのコーディンで処理した、図1cに概要を示す分化プロトコールのステージ6の終わりの細胞におけるシナプトフィジン(パネルa及びc)、及びインスリン(パネルb及びd)の発現。
【図22】図1cに概要を示す分化プロトコールに従って処理したヒト胚性幹細胞系H9の細胞における異なるマーカーの発現。示したデータは、ステージ3〜6の終わりに採取した細胞においてリアルタイムPCRによって判定した、a)HNF4a、b)HNF6、c)CDX2、d)PDX−1、e)NKX6.1、f)Pax4、g)NKX2.2、h)ニューロD、i)NGN3、j)PECAM、k)グルカゴン、及びl)インスリンの発現。
【図23】図1cに概要を示す分化プロトコールに従って処理したヒト胚性幹細胞系H1の細胞における異なるマーカーの発現。ただし細胞はB27又はN2のいずれかで処理した。示したデータは、ステージ3〜6の終わりに採取した細胞においてリアルタイムPCRによって判定した、a)CDX2、b)グルカゴン、c)インスリン、及びd)PDX−1の発現。
【0051】
開示を分かりやすくするため、限定を目的とすることなく、本発明の詳細な説明を、本発明の特定の特徴、実施形態、又は応用を説明又は図示した以下の小項目に分ける。
【0052】
<用語の定義>
幹細胞とは、1個の細胞レベルで自己再生し、かつ、自己再生性の前駆細胞、非自己再生性の前駆細胞、及び最終分化細胞のような後代細胞を生ずるように分化する能力によって定義される未分化細胞のことである。幹細胞はまた、複数の胚細胞層(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)から異なる細胞系の機能性細胞へとインビトロで分化する能力、並びに、移植後に複数の胚細胞層の組織を生ずる能力、及び胚盤胞への注入後にすべての組織とまではいかないにしても、ほぼ大部分の組織に分化する能力によっても特徴付けられる。
【0053】
幹細胞は、発生上の能力によって、(1)すべての胚性又は胚体外細胞のタイプを生ずる能力を有することを意味する、分化全能性、(2)すべての胚性細胞のタイプを生ずる能力を有することを意味する、分化万能性、(3)細胞系統のサブセットを生ずる能力を有するが、それらがすべて特定の組織、臓器、又は生理学的システムのものであるような、分化多能性(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己再生性)、血球限定的寡能性前駆細胞、及び、血液の通常の成分であるすべての細胞型及び要素(例えば、血小板)を生じうる)、(4)多能性幹細胞よりも限定された細胞系統のサブセットを生ずる能力を有することを意味する、分化寡能性、及び(5)単一の細胞系統(例えば、精原幹細胞)を生ずる能力を有することを意味する、分化単一性に分類される。
【0054】
分化とは、特化していない(「分化決定していない」)か又は完全には特化していない細胞が、例えば神経細胞や筋細胞のような特化した細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化した細胞、又は分化誘導された細胞とは、細胞のその系統内においてより特化した(「分化決定した」)位置を占めるものである。分化のプロセスについて用いられる場合、「分化決定した」なる用語は、通常の条件下で特定の細胞型又は細胞型のサブセットにまで分化し続けるが、通常の条件下では異なる細胞型には分化できず、より分化の未熟な細胞型にも戻ることができない点にまで分化経路を進んだ細胞のことを指して言う。脱分化とは、細胞が細胞の系統においてより特化(又は分化決定)していない位置にまで戻るプロセスのことを指して言う。本明細書で言うところの細胞の系統とは、その細胞の遺伝、すなわちその細胞がどの細胞から生じたものであり、どのような細胞を生じうるか、ということを定義するものである。ある細胞の系統とは、発生及び分化の所定の遺伝スキーム内にその細胞を位置付けるものである。系統特異的マーカーとは、対象とする系統の細胞の表現型と特異的に関連した特徴を指し、分化決定していない細胞の、対象とする系統への分化を評価するために使用することができる。
【0055】
「β−細胞系統」は、転写因子PDX−1、及び以下の転写因子、すなわちNGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3β、MAFA、Pax4、及びPax6のうち少なくとも1つについて遺伝子の発現が陽性である細胞を指す。β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、β細胞が挙げられる。
【0056】
本明細書で言うところの「胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のマーカー、すなわちSOX−17、GATA−4、HNF−3β、GSC、Cer1、ノーダル(Nodal)、FGF8、ブラキュリ(Brachyury)、Mix様ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、エオメソダーミン(eomesodermin)(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA−6、CXCR4、C−Kit、CD99又はOTX2の内の少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、原始線条前駆体細胞、原始線条細胞、中内胚葉細胞及び胚体内胚葉細胞が挙げられる。
【0057】
本明細書で言うところの「膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のマーカー、すなわちPDX−1、HNF−1β、PTF−1α、HNF−6、又はHB9の内の少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、膵臓内胚葉細胞、原腸管細胞、及び後部前腸細胞が挙げられる。
【0058】
本明細書で言うところの「膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のマーカー、すなわちNGN−3、NeuroD、Islet−1、PDX−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、又はPTF−1αのうち少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、膵臓内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞及び膵臓ホルモン分泌細胞、並びにβ細胞系統の細胞が挙げられる。
【0059】
本明細書で言うところの「胚体内胚葉」とは、原腸胚形成時に胚盤葉上層から生ずる細胞の特徴を有し、消化管及びその派生器官を形成する細胞を指して言う。胚体内胚葉細胞は、以下のマーカー、すなわちHNF−3β、GATA−4、SOX−17、ケルベロス(Cerberus)、OTX2、グースコイド(goosecoid)、C−Kit、CD99、及びMixl1を発現する。
【0060】
本明細書で言うところの「胚体外内胚葉」とは、以下のマーカー、すなわちSOX−7、AFP、及びSPARCの内の少なくとも1つを発現する細胞の集団を指して言う。
【0061】
本明細書で言うところの「マーカー」とは、対象とする細胞で差異的に発現される核酸又はポリペプチド分子である。ここで言う差異的な発現とは、陽性のマーカーでは発現レベルの上昇を、陰性のマーカーでは発現レベルの低下を意味する。マーカー核酸又はポリペプチドの検出可能なレベルは、他の細胞と比較して対象とする細胞において充分に高いか又は低いことから、当該技術分野において知られる各種の方法のいずれを用いても対象とする細胞を他の細胞から識別及び区別することが可能である。
【0062】
本明細書で言うところの「中内胚葉細胞」とは、以下のマーカー、すなわちCD48、エオメソダーミン(EOMES)、SOX−17、DKK4、HNF−3β、GSC、FGF17、GATA−6の内の少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。
【0063】
本明細書で言うところの「膵臓内分泌細胞」又は「膵臓ホルモン発現細胞」とは、以下のホルモン、すなわちインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドの内の少なくとも1つを発現することが可能な細胞を指して言う。
【0064】
本明細書で言うところの「膵臓内胚葉細胞」とは、以下のマーカー、すなわちNGN−3、ニューロD、Islet−1、PDX−1、PAX−4、NKX2.2の内の少なくとも1つを発現することが可能な細胞を指して言う。
【0065】
本明細書で言うところの「膵臓ホルモン産生細胞」とは、以下のホルモン、すなわちインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドの内の少なくとも1つを産生することが可能な細胞を指して言う。
【0066】
本明細書で言うところの「膵臓ホルモン分泌細胞」とは、以下のホルモン、すなわちインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドの内の少なくとも1つを分泌することが可能な細胞を指して言う。
【0067】
本明細書で言うところの「後部前腸細胞」とは、以下のマーカー、すなわちPDX−1、HNF−1、PTF−1A、HNF−6、HB−9、PROX−1の内の少なくとも1つを分泌することが可能な細胞を指して言う。
【0068】
本明細書で言うところの「前原始線条細胞」とは、以下のマーカー、すなわちノーダル(Nodal)、又はFGF8の内の少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。
【0069】
本明細書で言うところの「原腸管細胞」とは、以下のマーカー、すなわちHNF−1、HNF−4Aの内の少なくとも1つを分泌することが可能な細胞を指して言う。
【0070】
本明細書で言うところの「原始線条細胞」とは、以下のマーカー、すなわちブラキュリ(Brachiury)、Mix様ホメオボックスタンパク質、又はFGF4の内の少なくとも1つを発現する細胞を指して言う。
【0071】
<多能性幹細胞の単離、増殖及び培養>
多能性幹細胞の特徴付け
多能性幹細胞は、発生段階特異的胚性抗原(SSEA)3及び4の1つ以上、並びにTra−1−60及びTra−1−81と呼ばれる抗体を用いて検出可能なマーカーを発現しうる(Thomson et al.,Science 282:1145,1998)。インビトロで多能性幹細胞を分化させると、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1−81の発現が消失し(存在する場合)、SSEA−1の発現が増大する。未分化の多能性幹細胞は通常アルカリホスファターゼ活性を有し、これは、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、製造業者(ベクターラボラトリーズ社(Vector Laboratories)、カリフォルニア州バーリンゲーム(Burlingame)所在)によって述べられるようにVectorRedを基質として現像することによって検出することができる。未分化多能性幹細胞はまた、RT−PCRで検出されるように、一般にOct−4及びTERTも発現している。
【0072】
増殖させた多能性幹細胞の別の望ましい表現型は、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉組織の3つの胚細胞層のすべての細胞に分化する能力である。多能性幹細胞の多能性は、例えば、細胞を重症複合免疫不全症(SCID)マウスに注入し、形成される奇形腫を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いでこれを3つの胚細胞層からの細胞型の証拠について組織学的に調べることによって確認することができる。また、多能性は、胚様体を形成し、3つの胚細胞層に関連したマーカーの存在について胚様体を評価することによって調べることもできる。
【0073】
増殖させた多能性幹細胞系は、標準的なGバンド法を用いて核型を決定し、対応する霊長類種の公表されている核型と比較することができる。「正常な核型」を有する細胞を得ることが望ましい。これは、細胞が、ヒトの染色体がすべて揃っていてかつ目立った変化のない正倍数体であることを意味する。
【0074】
多能性幹細胞の供給源
使用が可能な多能性幹細胞の種類としては、妊娠期間中の任意の時期(必ずしもではないが、通常は妊娠約10〜12週よりも前)に採取した前胚性組織(例えば胚盤胞など)、胚性組織、又は胎児組織などの、妊娠後に形成される組織に由来する多能性細胞の株化細胞系が含まれる。非限定的な例としては、例えばヒト胚性幹細胞系H1、H7及びH9(WiCell)などのヒト胚性幹細胞又はヒト胚性生殖細胞の株化細胞系がある。更に、こうした細胞の初期の株化又は安定化の際に本開示の組成物を使用することも考えられるが、その場合は、供給源となる細胞は供給源組織から直接採取される1次多能性細胞である。フィーダー細胞の非存在下で既に培養された多能性幹細胞集団から得られる細胞も好適である。例えば、BG01v(ブレサジェン社(BresaGen)、ジョージア州アセンズ所在)などの変異型ヒト胚性幹細胞系も好適である。
【0075】
一実施形態では、ヒト胚性幹細胞をトムソン(Thomson)らによって述べられるように調製する(米国特許第5,843,780号、Science 282:1145,1998;Curr.Top.Dev.Biol.38:133 ff.,1998;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7844,1995)。
【0076】
多能性幹細胞の培養
一実施形態では、通常、多能性幹細胞を、様々な方法で多能性幹細胞を支持するフィーダー細胞の層上で培養する。あるいは、多能性幹細胞を、フィーダー細胞を基本的に含まないにも関わらず、細胞を大きく分化させることなく多能性幹細胞の増殖を支持する培養システム中で培養する。分化をともなわない無フィーダー培養中での多能性幹細胞の増殖は、別の細胞型と予め培養することによって調整した培地を用いることで支持される。また、分化をともなわない無フィーダー培養中での多能性幹細胞の増殖は、合成培地を用いることによっても支持される。
【0077】
多能性幹細胞は、適当な培養基質上に播種してよい。一実施形態では、適当な培養基質は例えば、基底膜から誘導されるもの、又は接着分子の受容体/リガンド結合の一部を形成し得るもののような細胞外マトリクス成分である。一実施形態において、好適な培養基質は、MATRIGEL(登録商標)(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickenson))である。MATRIGEL(登録商標)は、Engelbreth−Holm−Swarm腫瘍細胞からの可溶性製剤であり、室温でゲル化して再構成基底膜を形成する。
【0078】
他の細胞外マトリクス成分及び成分混合物も代替物として適している。増殖させられる細胞型に応じ、他の細胞外マトリクス成分及び成分混合物は、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、硫酸ヘパリンなどを、単独又は異なる組み合わせで含んでもよい。
【0079】
多能性幹細胞は、適当な分布で、かつ細胞の生存率、増殖、及び所望の特性の維持を促進する培地の存在下で基質上に播種することができる。これらの特性はいずれも、播種分布に充分な注意を払うことによって利するところがあるものであり、当業者が容易に決定することができるものである。
【0080】
好適な培地は、以下の成分、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ギブコ(Gibco)No.11965−092、ノックアウトダルベッコ改変イーグル培地(KO DMEM)、ギブコNo.10829−018、ハムF12/50%DMEM基礎培地、200mMのL−グルタミン、ギブコNo.15039−027、非必須アミノ酸溶液、ギブコNo.11140−050、β−メルカプトエタノール、シグマ(Sigma)No.7522、ヒト組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ギブコNo.13256−029などから調製することができる。
【0081】
<多能性幹細胞からの、グルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞の形成>
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法を提供し、この方法は、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む。
【0082】
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞から誘導された膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞において、グルコース刺激インスリン分泌を促進するための方法を提供し、この方法は、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む。
【0083】
本発明における使用に適した多能性幹細胞としては例えば、ヒト胚性幹細胞系H9(NIHコード:WA09)、ヒト胚性幹細胞系H1(NIHコード:WA01)、ヒト胚性幹細胞系H7(NIHコード:WA07)、及びヒト胚性幹細胞系SA002(セラーティス社(Cellartis)、スウェーデン)が挙げられる。多能性細胞に特徴的な以下のマ−カー、すなわちABCG2、クリプト(cripto)、CD9、FoxD3、コネキシン43、コネキシン45、Oct4、Sox2、ナノグ(Nanog)、hTERT、UTF−1、ZFP42、SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81の内の少なくとも1つを発現する細胞も本発明における使用に適している。
【0084】
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーは、SOX−17、GATA4、Hnf−3β、GSC、Cer1、Nodal、FGF8、ブラキュリ、Mix−様ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、eomesodermin(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA6、CXCR4、C−Kit、CD99、及びOTX2からなる群から選択される。胚体内胚葉系統に特徴的なこれらのマーカーの内の少なくとも1つを発現する細胞が本発明における使用に適している。本発明の一態様では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞は、原始線条前駆体細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞は、中内胚葉細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞は、胚体内胚葉細胞である。
【0085】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーは、Pdx1、HNF−1β、PTF1a、HNF−6、HB9及びPROX1からなる群から選択される。膵臓内胚葉系統に特徴的なこれらのマーカーの内の少なくとも1つを発現する細胞が本発明における使用に適している。本発明の一態様では、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉細胞である。
【0086】
膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーは、NGN−3、NeuroD、Islet−1、Pdx−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、及びPTF−1αからなる群から選択される。一実施形態では、膵臓内分泌細胞は、以下のホルモン、すなわちインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドの内の少なくとも1つを発現することが可能である。膵臓内分泌系統に特徴的なこれらのマーカーの内の少なくとも1つを発現する細胞が本発明における使用に適している。本発明の一態様では、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内分泌細胞である。膵臓内分泌細胞は、膵臓ホルモン発現細胞であってもよい。また、膵臓内分泌細胞は、膵臓ホルモン分泌細胞であってもよい。
【0087】
本発明の一態様では、膵臓内分泌細胞は、β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細胞である。β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、Pdx1、並びに以下の転写因子、すなわちNGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、ニューロD(NeuroD)、Isl−1、HNF−3β、MAFA、Pax4及びPax6の内の少なくとも1つを発現する。本発明の一態様では、β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0088】
<胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成>
多能性幹細胞は、当該技術分野のいかなる方法、又は本発明で提案されるいかなる方法によって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させてもよい。
【0089】
例えば、多能性幹細胞は、ダムール(D’Amour)らにより開示される方法に従って胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(D’Amour et al,Nature Biotechnology 23,1534〜1541(2005))。
【0090】
例えば、多能性幹細胞は、シノザキ(Shinozaki)らにより開示される方法に従って胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(Shinozaki et al,Development 131,1651〜1662(2004))。
【0091】
例えば、多能性幹細胞は、マクレーン(McLean)らにより開示される方法に従って胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(McLean et al,Stem Cells 25,29〜38(2007))。
【0092】
例えば、多能性幹細胞は、ダムール(D’Amour)らにより開示される方法に従って胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(D’Amour et al,Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006))。
【0093】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンAを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いで細胞をアクチビンA及び血清と培養し、次いで細胞をアクチビンA及び異なる濃度の血清と培養することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の一例は、Nature Biotechnology 23,1534〜1541(2005)に開示されている。
【0094】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンAを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いで細胞をアクチビンAと、別の濃度の血清の存在下で培養することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の例は、ダムール(D’Amour)らによるネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、2005年に開示されている。
【0095】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンA及びWntリガンドを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いでWntリガンドを除去し、細胞をアクチビンAと、血清の存在下で培養することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の例は、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0096】
例えば、多能性幹細胞は、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0097】
例えば、多能性幹細胞は、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0098】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,889号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0099】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第11/076,900号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0100】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,908号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0101】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,915号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0102】
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の検出
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成は、特定のプロトコールの前後に、マーカーの存在について試験することにより判定することができる。多能性幹細胞は、一般にこうしたマーカーを発現しない。したがって、多能性細胞の分化は、細胞がこうしたマーカーを発現し始める際に検出される。
【0103】
分化の効率は、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に認識する物質(例えば、抗体など)に、処理した細胞集団を暴露することにより測定することができる。
【0104】
培養細胞又は単離細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価するための方法は、当該技術分野では標準的なものである。こうした方法には、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション(例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(オウスベル(Ausubel)ら編、2001年度版補遺)、を参照)、並びに、切片化材料の免疫組織化学的分析、ウエスタンブロッティング、及び無傷細胞中のアクセシブルなマーカーに対する免疫アッセイ、フローサイトメトリー分析(FACS)(例えば、ハーロー及びレーン(Harlow and Lane)著、「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」ニューヨーク州コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(1998年)を参照)などの免疫アッセイが含まれる。
【0105】
多能性幹細胞の特徴は当業者には周知であり、更なる多能性幹細胞の特徴が引き続き同定されている。多能性幹細胞のマーカーとしては、例えば以下のものの内の1つ以上の発現が挙げられる。すなわち、ABCG2、cripto、FoxD3、コネキシン43、コネキシン45、Oct4、Sox2、Nanog、hTERT、UTF−1、ZFP42、SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81。
【0106】
多能性幹細胞を本発明の方法で処理した後、処理した細胞集団を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞により発現される、例えばCXCR4などのタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(例えば、抗体など)に暴露することにより、分化した細胞を精製することができる。
【0107】
<膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成>
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、当該技術分野におけるいずれかの方法又は本発明において開示されるいずれかの方法によって膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0108】
例えば、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、ダムール(D’Amour)らにより開示される方法に従って膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(D’Amour et al,Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006))。
【0109】
例えば、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤KAAD−シクロパミンで処理し、次いで線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含む培地を取り除いた後、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含む培地中で細胞を培養することによって、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。この方法の一例は、Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006)に開示されている。
【0110】
本発明の一態様では、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に開示された方法に従って、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞をレチノイン酸及び少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子で所定の時間処理することによって、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。
【0111】
本発明の一態様では、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に開示された方法に従って、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞をレチノイン酸及び少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子で所定の時間処理することによって、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。
【0112】
一実施形態において、本発明は、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるための方法を提供し、この方法は、
a.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を培養する工程と、
b.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害物質、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理する工程と、を含む。
【0113】
一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する。一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する。
【0114】
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現するいずれの細胞も、この方法を用いて膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるうえで適している。
【0115】
代替的な一実施形態において、本発明は、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるための方法を提供し、この方法は、
a.胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を培養する工程と、
b.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸及び線維芽細胞増殖因子からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理する工程と、
c.レチノイン酸及び線維芽細胞増殖因子からなる群から選択される前記少なくとも1種類の因子を除去し、次いでソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で細胞を処理する工程と、を含む。
【0116】
一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸及び線維芽細胞増殖因子からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理する。一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸及び線維芽細胞増殖因子からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する。一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する。一実施形態では、胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する。
【0117】
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現するいずれの細胞も、この方法を用いて膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるうえで適している。
【0118】
一実施形態では、本発明の方法によって生成される膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、肝臓及び腸組織に関連するマーカーの発現レベルが低いことを示す。一実施形態では、本発明の方法によって生成される膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、アルブミン及びCDX−2の発現レベルが低いことを示す。
【0119】
前記少なくとも1種類の線維芽細胞増殖因子は、FGF−2、FGF−4、FGF−7及びFGF−10からなる群から選択される。
【0120】
一実施形態では、BMPはBMP4である。一実施形態では、BMP4を阻害可能な前記少なくとも1種類の因子はノギンである。
【0121】
ネトリンは、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される。
【0122】
レチノイン酸は、濃度約1nM〜約1mMで使用することができる。一実施形態では、レチノイン酸は、濃度1μMで使用される。
【0123】
FGF−2は、濃度約50pg/ml〜約50μg/mlで使用することができる。一実施形態では、FGF−2は、濃度50ng/mlで使用される。
【0124】
FGF−4は、濃度約50pg/ml〜約50μg/mlで使用することができる。一実施形態では、FGF−4は、濃度50ng/mlで使用される。
【0125】
FGF−7は、濃度約50pg/ml〜約50μg/mlで使用することができる。一実施形態では、FGF−7は、濃度50ng/mlで使用される。
【0126】
FGF−10は、濃度約50pg/ml〜約50μg/mlで使用することができる。一実施形態では、FGF−10は、濃度50ng/mlで使用される。
【0127】
ノギンは、約500ng/ml〜約500μg/mlの濃度で使用することができる。一実施形態では、ノギンは100ng/mlの濃度で使用される。
【0128】
ネトリン1は、約500ng/ml〜約500μg/mlの濃度で使用することができる。一実施形態では、ネトリン1は100ng/mlの濃度で使用される。
【0129】
ネトリン2は、約500ng/ml〜約500μg/mlの濃度で使用することができる。一実施形態では、ネトリン2は100ng/mlの濃度で使用される。
【0130】
ネトリン4は、約500ng/ml〜約500μg/mlの濃度で使用することができる。一実施形態では、ネトリン4は100ng/mlの濃度で使用される。
【0131】
一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、以下の因子、すなわち、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、シクロパミン、ノギン、ネトリン1、ネトリン2、又はネトリン4の内の少なくとも1種類で処理する。
【0132】
一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、シクロパミン、及びノギンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−4、シクロパミン、及びノギンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−7、シクロパミン、及びノギンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−10、シクロパミン、及びノギンで処理する。
【0133】
一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、シクロパミン、及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−4、シクロパミン、及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−7、シクロパミン、及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−10、シクロパミン、及びネトリンで処理する。
【0134】
ネトリンは、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される。
【0135】
一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、シクロパミン、ノギン及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−4、シクロパミン、ノギン及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−7、シクロパミン、ノギン及びネトリンで処理する。代替的な一実施形態では、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−10、シクロパミン、ノギン及びネトリンで処理する。
【0136】
ネトリンは、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される。
【0137】
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成を促進し得る少なくとも1種類の更なる他の因子で処理してもよい。また、前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、本発明の方法により形成された膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の増殖を高めるものであってもよい。更に、前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、本発明の方法により形成された膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の、他の細胞型を形成する能力、又は任意の他の更なる分化段階の効率を高める能力を高めるものであってもよい。
【0138】
この少なくとも1種類の更なる因子は、例えば、ニコチンアミド、TGF−β1、2及び3などのTGF−βファミリーのメンバー、血清アルブミン、線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板濃縮血漿、インスリン様増殖因子(insulin growth factor)(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、−11)、グルカゴン様ペプチド−I及び−II(GLP−I及びII)、GLP−1及びGLP−2模倣体(mimetobody)、エキセンジン−4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、インスリン、プロゲステロン、アプロチニン、ヒドロコルチゾン、エタノールアミン、βメルカプトエタノール、上皮増殖因子(EGF)、ガストリンI及びII、例えばトリエチレンペンタミンなどの銅キレート化剤、フォルスコリン、酪酸ナトリウム、アクチビン、ベータセルリン、ITS、ノギン、神経突起増殖因子、ノーダル、バルプロ酸、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、肝細胞増殖因子(HGF)、スフィンゴシン1、VEGF、MG132(EMD社、カリフォルニア州)、N2及びB27添加物(ギブコ社(Gibco)、カリフォルニア州)、例えば、シクロパミン(EMD社、カリフォルニア州)などのステロイドアルカロイド、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、Dickkopfタンパク質ファミリー、ウシ脳下垂体抽出物、膵島新生関連タンパク質(INGAP)、インディアンヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、プロテアソーム阻害剤、ノッチ経路阻害剤、ソニックヘッジホッグ阻害剤、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0139】
前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、例えばPANC−1(ATCC No:CRL−1469)、CAPAN−1(ATCC No:HTB−79)、BxPC−3(ATCC No:CRL−1687)、HPAF−II(ATCC No:CRL−1997)などの膵臓細胞系、例えば、HepG2(ATCC No:HTB−8065)などの肝細胞系、及び例えば、FHs74(ATCC No:CCL−241)などの腸細胞系から得られる馴化培地によって供給することが可能である。
【0140】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の検出
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーは当業者にはよく知られたものであり、膵臓内胚葉系統に特徴的な更なるマーカーも引き続き特定されている。これらのマーカーを用いて、本発明に基づいて処理を行った細胞が、膵臓内胚葉系統に特徴的な性質を獲得するように分化したことを確認することが可能である。膵臓内胚葉系統に特異的なマーカーとしては、例えば、Hlxb9、PTF−1a、PDX−1、HNF−6、HNF−1βなどの1以上の転写因子の発現が挙げられる。
【0141】
分化の効率は、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、処理した細胞集団を曝露することによって決定することができる。
【0142】
培養細胞又は単離細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価するための方法は、当該技術分野では標準的なものである。こうした方法には、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション(例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(オウスベル(Ausubel)ら編、2001年度版補遺)、を参照)、並びに、切片化材料の免疫組織化学的分析、ウエスタンブロッティング、及び無傷細胞中のアクセシブルなマーカーに対する免疫アッセイ、フローサイトメトリー分析(FACS)(例えば、ハーロー及びレーン(Harlow and Lane)著、「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」ニューヨーク州コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(1998年)を参照)などの免疫アッセイが含まれる。
【0143】
<膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成>
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、当該技術分野におけるいずれかの方法又は本発明において開示されるいずれかの方法によって膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0144】
例えば、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、ダムール(D’Amour)らにより開示される方法に従って膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる(D’Amour et al,Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006))。
【0145】
例えば、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞をDAPT及びエキセンジン4を含む培地中で培養し、次いでDAPT及びエキセンジン4を含む培地を取り除いた後、エキセンジン1、IGF−1及びHGFを含む培地中で細胞を培養することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。この方法の一例は、Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006)に開示されている。
【0146】
例えば、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、エキセンジン4を含む培地中で培養し、次いでエキセンジン4を含む培地を取り除いた後、エキセンジン1、IGF−1及びHGFを含む培地中で細胞を培養することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。この方法の一例は、ダムール(D’Amour)らにより開示されている(D’Amour et al,Nature Biotechnology,2006)。
【0147】
例えば、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞をDAPT及びエキセンジン4を含む培地中で培養することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。この方法の一例は、ダムール(D’Amour)らにより開示されている(D’Amour et al,Nature Biotechnology,2006)。
【0148】
例えば、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、エキセンジン4を含む培地中で培養することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。この方法の一例は、ダムール(D’Amour)らにより開示されている(D’Amour et al,Nature Biotechnology,2006)。
【0149】
本発明の一態様では、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に開示された方法に従って、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。
【0150】
本発明の一態様では、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に記載された方法に従って、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。
【0151】
本発明の一態様では、ライフスキャン社(LifeScan, Inc.)に譲渡された米国特許出願第60/953,178号に開示された方法に従って、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することによって、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。
【0152】
本発明の一態様では、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することにより、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に更に分化させる。TGF−βR−1経路を阻害する因子は、TGF−β細胞外受容体−1のアンタゴニストであってもよい。また、この因子は、TGF−βR−1受容体の生物学的活性を阻害するものであってもよい。また、この因子は、細胞内におけるTGF−βR−1信号伝達経路の特定の要素を阻害するか、又はそのアンタゴニストであってもよい。
【0153】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する。あるいは、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する。あるいは、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する。
【0154】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現するいずれの細胞も、この方法を用いて膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるうえで適している。
【0155】
一実施形態において、本発明は、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させるための方法を提供し、この方法は、
a.膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現している細胞を培養する工程と、
b.ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子で前記細胞を処理する工程と、を含む。
【0156】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する。あるいは、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する。あるいは、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する。
【0157】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現するいずれの細胞も、この方法を用いて膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させるうえで適している。
【0158】
一実施形態では、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子は、γ−セクレターゼ阻害剤である。一実施形態では、γ−セクレターゼ阻害剤は、L−685,458としても知られる、1S−ベンジル−4R−[1−(1S−カルバモイル−2−フェネチルカルバモイル)−1S−3−メチルブチルカルバモイル]−2R−ヒドロキシ−5−フェネチルペンチル]カルバミン酸tert−ブチルエステル(1S-Benzyl-4R-[1-(1S-carbamoyl-2-phenethylcarbamoyl)-1S-3-methylbutylcarbamoyl]-2R-hydrozy-5-phenylpentyl] carbamic Acid tert-butyl Ester)である。
【0159】
L−685,458は、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用することができる。一実施形態において、L−685,458は、約90μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約80μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約70μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約60μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約50μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約40μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約30μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約20μMの濃度で使用される。一実施形態において、L−685,458は、約10μMの濃度で使用される。
【0160】
一実施形態では、TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子は、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジン)((2-(3-(6-Methylpyridin-2-yl)-1H-pyrazol-4-yl)-1,5-naphthyridine))である。別の実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾール([3-(Pyridin-2-yl)-4-(4-quinonyl)]-1H-pyrazole)である。
【0161】
TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用することができる。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約90μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約80μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約70μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約60μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約50μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約40μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約30μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約20μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約10μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約1μMの濃度で使用される。一実施形態では、TGF−βR−1キナーゼ阻害剤は、約0.1μMの濃度で使用される。
【0162】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞は、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成を促進することが可能な少なくとも1種類の更なる他の因子で処理してもよい。また、前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、本発明の方法によって形成される膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の増殖を促進するものであってもよい。更に、前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、本発明の方法によって形成される膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞が他の細胞型を形成する能力を促進するものであってもよく、あるいは他のいずれかの更なる分化の段階の効率を高めるものであってもよい。
【0163】
前記少なくとも1種類の更なる因子は、例えば、ニコチンアミド、TGF−β1、2及び3などのTGFβファミリーのメンバー、血清アルブミン、線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板濃縮血漿、インスリン様増殖因子(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、11)、グルカゴン様ペプチド−I及び−II(GLP−I及びII)、GLP−1及びGLP−2模倣体(mimetobody)、エキセンジン−4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、インスリン、プロゲステロン、アプロチニン、ヒドロコルチゾン、エタノールアミン、βメルカプトエタノール、上皮増殖因子(EGF)、ガストリンI及びII、例えば、トリエチレンペンタミンなどの銅キレート化剤、フォルスコリン、酪酸ナトリウム、アクチビン、ベータセルリン、ITS、ノギン、神経突起増殖因子、ノーダル、バルプロ酸、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、肝細胞増殖因子(HGF)、スフィンゴシン1、VEGF、MG132(EMD社、カリフォルニア州)、N2及びB27添加物(ギブコ社(Gibco)、カリフォルニア州)、例えばシクロパミン(EMD社、カリフォルニア州)などのステロイドアルカロイド、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、Dickkopfタンパク質ファミリー、ウシ脳下垂体抽出物、膵島新生関連タンパク質(INGAP)、インディアンヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、プロテアソーム阻害剤、ノッチ経路阻害剤、ソニックヘッジホッグ阻害剤、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0164】
前記少なくとも1種類の更なる他の因子は、例えばPANC−1(ATCC No:CRL−1469)、CAPAN−1(ATCC No:HTB−79)、BxPC−3(ATCC No:CRL−1687)、HPAF−II(ATCC No:CRL−1997)などの膵臓細胞系、例えばHepG2(ATCC No:HTB−8065)などの肝細胞系、及び例えばFHs74(ATCC No:CCL−241)などの腸細胞系から得られる馴化培地によって供給することが可能である。
【0165】
膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の検出
膵臓内分泌系統の細胞に特徴的なマーカーは当業者にはよく知られたものであり、膵臓内分泌系統に特徴的な更なるマーカーも引き続き特定されている。これらのマーカーを用いて、本発明に基づいて処理を行った細胞が膵臓内分泌系統に特徴的な性質を獲得するように分化したことを確認することが可能である。膵臓内分泌系統に特異的なマーカーとしては、例えば、NGN−3、ニューロD(NeuroD)、Islet−1などの1以上の転写因子の発現が挙げられる。
【0166】
β細胞系統の細胞に特徴的なマーカーは当業者にはよく知られたものであり、β細胞系統に特徴的な更なるマーカーも引き続き特定されている。これらのマーカーを用いて、本発明に基づいて処理を行った細胞がβ細胞系統に特徴的な性質を獲得するように分化したことを確認することが可能である。β細胞系統に特異的な特徴(β cell lineage specific characteristic)としては、例えば、特にPdx1(膵臓及び十二指腸ホメオボックス遺伝子−1)、Nkx2.2、Nkx6.1、Isl1、Pax6、Pax4、ニューロD(NeuroD)、Hnf1b、Hnf−6、Hnf−3β、及びMafAなどの1以上の転写因子の発現が挙げられる。これらの転写因子は、当該技術分野では内分泌細胞を同定する目的でよく確立されている。例としてエドランド(Edlund)によるNature Reviews Genetics 3:524〜632(2002)などを参照されたい。
【0167】
分化の効率は、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、処理した細胞集団を曝露することによって決定することができる。また、分化の効率は、β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細胞によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、処理した細胞集団を曝露することによって決定することもできる。
【0168】
培養細胞又は単離細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価するための方法は、当該技術分野では標準的なものである。こうした方法には、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション(例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(オウスベル(Ausubel)ら編、2001年度版補遺)、を参照)、並びに、切片化材料の免疫組織化学的分析、ウエスタンブロッティング、及び無傷細胞中のアクセシブルなマーカーに対する免疫アッセイ、フローサイトメトリー分析(FACS)(例えば、ハーロー及びレーン(Harlow and Lane)著、「抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)」ニューヨーク州コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(1998年)を参照)などの免疫アッセイが含まれる。
【0169】
本発明の一態様では、分化の効率は、処理後の所定の細胞培養中のインスリン陽性細胞の比率を測定することによって求められる。一実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約100%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約90%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約80%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約70%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約60%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約50%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約40%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約30%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約20%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約10%のインスリン陽性細胞を生成する。代替的な実施形態では、本発明の方法は、所定の培養中で約5%のインスリン陽性細胞を生成する。
【0170】
本発明の一態様では、分化の効率は、細胞が放出するC−ペプチドの量を測定することにより検出されるグルコース刺激インスリン分泌を測定することによって求められる。一実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA
1pg当たり約1000ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約900ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約800ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約700ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約600ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約500ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約400ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約500ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約400ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約300ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約200ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約100ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約90ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約80ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約70ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約60ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約50ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約40ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約30ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約20ngのC−ペプチドを産生する。代替的な実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約10ngのC−ペプチドを産生する。
【0171】
<治療法>
一態様において、本発明は、1型糖尿病を罹患しているかあるいは発症するリスクを有する患者を治療するための方法を提供する。この方法では、多能性幹細胞を培養し、その多能性幹細胞をインビトロでβ細胞系統に分化させ、そのβ細胞系統の細胞を患者に移植することを含む。
【0172】
更に別の一態様において、本発明は、2型糖尿病を罹患しているかあるいは発症するリスクを有する患者を治療するための方法を提供する。この方法では、多能性幹細胞を培養し、培養した細胞をインビトロでβ細胞系統に分化させ、そのβ細胞系統の細胞を患者に移植することを含む。
【0173】
必要に応じて、移植細胞の生存率及び機能を高める医薬薬剤又は生理活性物質で患者を更に治療することができる。こうした薬剤としては、例えば、特にインスリン、TGF−β1、2及び3などのTGF−βファミリーのメンバー、骨形態形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12、及び−13)、線維芽細胞増殖因子−1及び−2、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板濃縮血漿、インスリン様増殖因子(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−7、−8、−10、−15)、血管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンなどが挙げられる。他の医薬化合物としては例えば、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド−I(GLP−1)及びII、GLP−1及び2模倣体(mimetibody)、エキセンジン−4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、例えば米国特許出願公開第2004/0209901号及び米国特許出願公開第2004/0132729号に開示される化合物のようなMAPK阻害剤などが挙げられる。
【0174】
多能性幹細胞は、レシピエントへの移植に先立ってインスリン産生細胞へと分化させることができる。特定の実施形態では、多能性幹細胞をレシピエントへの移植に先立ってβ細胞に完全に分化させる。また、多能性幹細胞は未分化又は部分的に分化した状態でレシピエントに移植してもよい。更なる分化はレシピエントの体内で起こりうる。
【0175】
胚体内胚葉細胞、又は膵臓内胚葉細胞、又はβ細胞は、分散した細胞として移植するか、あるいは肝門脈に注入することが可能な細胞塊に形成することができる。また、細胞を、生体適合性分解性ポリマー支持体、多孔質の非分解性装置中で与えるか、あるいはカプセル化することによってホストの免疫反応から保護することもできる。細胞はレシピエントの適当な部位に移植することができる。移植部位としては、例えば、肝臓、天然膵臓、腎嚢下腔、網、腹膜、漿膜下腔、腸、胃、及び皮下ポケットなどが挙げられる。
【0176】
移植細胞の更なる分化、生存又は活性を促進する目的で、増殖因子等の更なる因子、抗酸化剤、又は抗炎症剤を、細胞の投与の前、同時、又は後に投与することができる。特定の実施形態では、増殖因子を用いて投与細胞をインビボで分化させる。これらの因子は、内因性の細胞によって分泌され、投与細胞にインサイチューで曝露されるものでよい。移植細胞は、当該技術分野で知られる内因性及び外因性の投与された増殖因子の任意の組み合わせによって分化を誘導することができる。
【0177】
移植に用いられる細胞の量は、患者の状態、及び治療に対する患者の応答などの多くの異なる因子に依存し、当業者が決定できるものである。
【0178】
一態様において本発明は、糖尿病を罹患しているかあるいは発症するリスクを有する患者を治療するための方法を提供する。この方法では、多能性幹細胞を培養し、培養した細胞をインビトロでβ細胞系統に分化させ、その細胞を3次元的な支持体に組み込むことを含む。細胞は、患者への移植に先立ってインビトロでこの支持体上に維持することができる。また、細胞を含んだ支持体を、更なるインビトロ培養を行うことなく患者に直接移植することも可能である。場合により、支持体に、移植細胞の生存率及び機能を高める少なくとも1種類の医薬薬剤を取り込ませてもよい。
【0179】
本発明の目的における使用に適した支持材料としては、組織修復に有用な組織テンプレート、導管、障壁、及びリザーバが挙げられる。特に、生物学的組織を再構築又は再生する目的で、及び組織の増殖を誘導するための走化性物質を送達する目的でインビトロ及びインビボで使用されてきた、発泡材、スポンジ、ゲル、ヒドロゲル、織物及び不織布構造の形態の合成及び天然の材料が、本発明の方法を実施するうえでの使用に適している。例えば、米国特許第5,770,417号、同第6,022,743号、同第5,567,612号、同第5,759,830号、同第6,626,950号、同第6,534,084号、同第6,306,424号、同許第6,365,149号、同第6,599,323号、同第6,656,488号、米国特許出願公開第2004/0062753(A1)号、米国特許第4,557,264号及び同第6,333,029号に開示されている材料を参照されたい。
【0180】
医薬薬剤を取り込んだ支持体を形成するには、支持体を形成するのに先立って医薬薬剤をポリマー溶液と混合することができる。また、医薬薬剤を、好ましくは医薬用担体の存在下で、製造された支持体上にコーティングしてもよい。医薬薬剤は、液体、微粉化した固体、又は他の任意の適当な物理的形態として存在してよい。また、支持体に賦形剤を添加することによって医薬薬剤の放出速度を変化させることもできる。代替的な一実施形態では、例えば米国特許第6,509,369号に開示される化合物のような抗炎症性化合物である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に取り込ませる。
【0181】
例えば米国特許第6,793,945号に開示される化合物のような抗アポトーシス性化合物である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に取り込ませてもよい。
【0182】
例えば米国特許第6,331,298号に開示される化合物のような線維症の阻害剤である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に更に取り込ませてもよい。
【0183】
例えば米国特許出願公開第2004/0220393号及び米国特許出願公開第2004/0209901号に開示される化合物のような血管新生を促進することが可能な化合物である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に更に取り込ませてもよい。
【0184】
例えば米国特許出願公開第2004/017623号に開示される化合物のような免疫抑制化合物である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に更に取り込ませてもよい。
【0185】
例えば、特にTGF−β1、2及び3などのTGF−βファミリー、骨形態形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12及び−13)、線維芽細胞増殖因子−1及び−2、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板濃縮血漿、インスリン様増殖因子(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、−15)、血管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンなどの増殖因子である少なくとも1種類の医薬化合物を支持体に更に取り込ませてもよい。他の医薬化合物としては、例えば、ニコチンアミド、低酸素症誘導因子1−α、グルカゴン様ペプチド−I(GLP−1)、GLP−1及びGLP−2模倣体、及びII、エキセンジン−4、ノーダル、ノギン、NGF、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、テナシン−C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、カテリシジン、ディフェンシン、ラミニン、フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの接着細胞外マトリクスタンパク質の細胞及びヘパリン結合ドメインを含む生物学的ペプチド、米国特許出願公開第2004/0209901号及び同第2004/0132729号に開示される化合物などのMAPK阻害剤が挙げられる。
【0186】
本発明の細胞は、足場上に細胞を単純に置くだけで足場中に取り込ませることができる。細胞は単純に拡散によって足場に入り込むことができる(J.Pediatr.Surg.23(1 Pt 2):3〜9(1988))。細胞の播種効率を高めるための他の幾つかの方法が開発されている。例えば、軟骨細胞をポリグリコール酸の足場上に播種するにはスピナーフラスコが使用される(Biotechnol.Prog.14(2):193〜202(1998))。細胞を播種するための別の方法は遠心を使用することであり、これにより播種細胞へのストレスが最小に抑えられ、播種効率が高められる。例えば、ヤン(Yang)らは遠心細胞固定法(CCI)と呼ばれる細胞播種法を開発している(J.Biomed.Mater.Res.55(3):379〜86(2001))。
【0187】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0188】
〔実施例〕
(実施例1)
ヒト胚性幹細胞の培養
ヒト胚性幹細胞系H1、H7及びH9をウィセル・リサーチ・インスティテュート社(WiCell Research Institute, Inc.)(ウイスコンシン州マディソン所在)より入手し、当該供給元機関によって与えられる指示に従って培養した。簡単に述べると、20%のノックアウト血清リプレースメント、100nMのMEM非必須アミノ酸、0.5mMのβメルカプトエタノール、2mMのL−グルタミンと4ng/mLのヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(すべてインビトロジェン/ギブコ社(Invitrogen/GIBCO)より入手)を添加したDMEM/F12(インビトロジェン/ギブコ社(Invitrogen/GIBCO))からなるES細胞培地中、マウス胚線維芽細胞(MEF)フィーダー細胞上で細胞を培養した。MEF細胞はE13〜13.5のマウス胚から得られたものをチャールズリバー社(Charles River)より購入した。MEF細胞は、10%のFBS(ハイクローン社(Hyclone))、2mMのグルタミン、及び100mMのMEM非必須アミノ酸を添加したDMEM培地で増殖させた。サブコンフルエンスに達したMEF細胞培養を、10μg/mlのマイトマイシンC(シグマ社(Sigma)ミズーリ州セントルイス所在)で3時間処理して細胞分裂を停止させた後、トリプシン処理し、0.1%ウシゼラチンコートディッシュに2×10/cmで播いた。継代数2〜4からのMEF細胞をフィーダー層として使用した。MEF細胞のフィーダー層に播いたヒト胚性幹細胞を、加湿した組織培養インキュベーター内で、5%CO雰囲気中37℃で培養した。コンフルエンスに達した時点(播種後約5〜7日後)で、ヒト胚性幹細胞を1mg/mlのIV型コラゲナーゼ(インビトロジェン/ギブコ社(Invitrogen/GIBCO))で5〜10分間処理した後、5mlピペットを用いて表面から静かに掻き取った。細胞を900rpmで5分間遠心し、得られたペレットを再懸濁して新鮮な培地に1:3〜1:4の細胞比で再び播いた。
【0189】
(実施例2)
MATRIGEL(商標)でコーティングした組織培養基質上で培養されたヒト胚性幹細胞の膵臓内分泌細胞への分化
継代数45のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加し、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を加えたDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に3日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。
【0190】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)中で更に3日間インキュベートした。この手順の概要を図1aに示す。分化の異なるステージで培養からRNA試料を採取した。図2は、ステージ3〜5で採取した細胞から得られたリアルタイムPCRのデータを示す。ステージ4及び5の細胞では、インスリン及びグルカゴンなどの内分泌マーカーの発現の顕著な増大とともにニューロDの発現の増大が認められた。
【0191】
(実施例3)
図1aに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対する異なる化合物の影響。
継代数51のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。
【0192】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)中で更に3日間インキュベートした。培養の一部のものを、1μmの下記の化合物によって、ステージ3、ステージ4、又はステージ3+4のいずれかにおいて処理した。すなわち、MEK/MAPK阻害剤(2’−アミノ−3’−メトキシフラボン(2′-Amino-3′-methoxyflavone))(PD98059、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、RAFキナーゼ阻害剤(5−ヨード−3−[(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン]−2−インドリノン(5-Iodo-3-[(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)methylene]-2-indolinone))(#553008、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、SMAD3阻害剤(6,7−ジメチル−2−((2E)−3−(1−メチル−2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル−プロプ−2−エノイル))−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(6,7-Dimethyl-2-((2E)-3-(1-methyl-2-phenyl-1Hpyrrolo[2,3-b]pyridin-3-yl-prop-2-enoyl))-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline))(#566405、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、AKT阻害剤(1L6−ヒドロキシメチル−キロイノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカーボネート(1L6-Hydroxymethyl-chiroinositol-2-(R)-2-O-methyl-3-O-octadecyl-sn-glycerocarbonate))(#124005、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、MEK阻害剤(#444937、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、及びTGF−B受容体I阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)(アクチビン受容体様キナーゼ5を阻害、#616452、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)。
【0193】
図3a〜eは、図に示した条件で処理し、ステージ3〜5の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。TGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)をステージ4で細胞に、又はステージ3及び4で細胞に加えることにより、インスリン、グルカゴン、ニューロD、及びNKX2.2の発現が顕著に増大したのに対して、ステージ5の終わりにおけるPDX−1の発現にはわずかな影響しか認められなかった点に留意されたい。TGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)をステージ3の細胞にのみ加えると、ステージ5の終わりにおいて細胞の内分泌マーカーの発現にわずかな上昇が認められた。
【0194】
(実施例4)
図1aに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対するTGF−β受容体Iキナーゼ阻害剤の添加の影響。
継代数44のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。
【0195】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)中で更に3日間インキュベートした。培養の一部のものを、1μmのTGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)(アクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤、#616452、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)により、ステージ4、ステージ5、又はステージ4及び5において処理した。
【0196】
図4a〜eは、ステージ4〜5でキナーゼ阻害剤を加えるかあるいは加えずに、ステージ3〜5の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。TGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)をステージ4で、又はステージ4及び5で細胞に加えることにより、インスリン、グルカゴン、ニューロD、及びNKX2.2の発現が顕著に増大したのに対して、ステージ5の終わりにおけるPDX−1の発現にはわずかな影響しか認められなかった点に留意されたい。TGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)をステージ5においてのみ加えると、ステージ5の終わりにおいて細胞の内分泌マーカーの発現にわずかな上昇が認められた。
【0197】
(実施例5)
図1aに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対する異なるTGF−β受容体Iキナーゼ阻害剤の影響。
継代数41のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。
【0198】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)中で更に3日間インキュベートした。培養の一部のものを、1〜10μmのTGF−B受容体Iキナーゼ阻害剤(ALK5阻害剤II)(2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフジチリジン)(アクチビン受容体様キナーゼ5の阻害剤、#616452、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)、又はTGF−B受容体I阻害剤I(ALK5阻害剤I)([3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾール)(#616451、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)により、ステージ4及び5において処理した。
【0199】
図5a〜eは、ALK阻害剤I又はIIを加えるか、あるいは加えずに、ステージ4〜5の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。ステージ4及び5に1〜10μmのALK阻害剤I又はIIを加えることによって、ステージ4〜5の終わりにおけるインスリン、グルカゴン、PDX−1及びニューロDの発現がコントロール(標準処理)と比較して顕著に増大したことに留意されたい。すべての試料は3重とした。
【0200】
(実施例6)
図1aに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対するノギン及びALK5阻害剤の影響。
継代数41のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+0〜500ng/mlのノギン(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、ミネソタ州)中で4日間インキュベートした。
【0201】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)+1μmのALK5阻害剤II中で更に3日間インキュベートした。
【0202】
図6a〜gは、0〜100ng/mlのノギンを加えるか、あるいは加えずに、ステージ3〜5の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。100ng/mlのノギンをステージ3で加えることによりステージ4の終わりにおけるインスリン及びグルカゴンの発現がわずかに増大したのに対し、アルブミン及びCDX2の発現は非処理の試料と比較して大幅に抑制された。500ng/mlのノギンを加えることによってPDX−1の発現は影響されなかったが、内分泌マーマー、並びにアルブミン及びCDX2の発現は顕著に減少した。アルブミンは肝臓の前駆細胞のマーカーであり、CDX2は腸細胞のマーカーである。
【0203】
(実施例7)
図1に概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対するステージ3におけるノギンの添加及びステージ4及び5におけるALK5阻害剤の添加の影響。
継代数44のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+100ng/mlのノギン(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、ミネソタ州)中で4日間インキュベートした。
【0204】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+/−100ng/mlのノギン中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)+1μmのALK5阻害剤II中で更に3日間インキュベートした。
【0205】
図7a〜fは、100ng/mlのノギンを加えるかあるいは加えずに、ステージ4〜5の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。ステージ3及び4で100ng/mlのノギンを加え、更にALK5阻害剤IIを加えることにより、ステージ4〜5におけるインスリン及びグルカゴンの発現が劇的に増大した。詳細には、ステージ3及び4の両方でノギンを添加することによって、内分泌前駆細胞マーカーであるNGN3の発現が顕著に増大したのに対して、非処理の試料と比較してアルブミン及びCDX2の発現は顕著に抑制された。
【0206】
図8a〜dは、上記のプロトコールに基づいた培養の位相差顕微鏡画像を示す。これらの培養の一部のものでは、ステージ5が3日間から21日間に延びた。ステージ5の培養中での培養10〜12日目までに、培養皿全体に存在するヒト小島に似た個別の細胞塊が形成された。パネルa及びbは、ステージ5の6日目の培養の画像を示し、パネルc〜dは、ステージ5の12日目の培養の画像を示す。一部の細胞塊を手で除去し、1:30のMATRIGELコーティングされた培養皿上でステージ5の培地中に播いた。2日間のインキュベーション後、細胞塊をインスリン及びグルカゴンについて染色した。図9a〜bに示されるように、細胞塊中の細胞の大部分はヒトインスリンについて陽性であった。BMP阻害剤であるノギンの用量を更に最適化するため、ステージ2〜4の培養を0、10、50、又は100ng/mlのノギンで処理した。図10は、ステージ2〜4において異なる用量のノギンで処理した培養の、ステージ4におけるNGN3の発現を示す。50〜100ng/mlのノギンにより、ステージ4におけるNGN3の発現が最大となるものと考えられる。
【0207】
(実施例8)
図1に概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対するステージ3〜4におけるノギン、ステージ4におけるネトリン、及びステージ4におけるALK5阻害剤の添加の影響。
継代数48のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、2%の脂肪酸BSA及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のBSA及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+100ng/mlのノギン(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、ミネソタ州)中で4日間インキュベートした。
【0208】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+/−100ng/mlのノギン+100ng/mlのネトリン−4中で3日間培養、インキュベートした。
【0209】
図11a〜fは、ステージ4において100ng/mlのネトリン−4を加えるかあるいは加えずに、ステージ4の終わりに採取した細胞から得たリアルタイムPCRのデータを示す。ステージ3及び4において100ng/mlのノギンを、更にステージ4においてALK阻害剤II及び100ng/mlのネトリン−4を加えることにより、ステージ5の終わりに採取した細胞におけるNGN3、ニューロD、及びPax4の発現が劇的に増大した。
【0210】
ステージ4の培養の一部のもので、ノギンを省略し、ネトリン−4及びALK5阻害剤を加えた。図12a〜dは、ステージ4においてノギンを省略することにより、ステージ5の終わりに採取した細胞におけるNGN3、NKX2.2及びニューロDの発現が顕著に低減したのに対して、インスリン及びグルカゴンの発現に対する影響は穏やかであったことを示している。
【0211】
(実施例9)
図1bに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞による、インビトロでのグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)。
継代数48のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、2%の脂肪酸BSA及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のBSA及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+100ng/mlのノギン(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、ミネソタ州)中で4日間インキュベートした。
【0212】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+/−100ng/mlのノギン+100ng/mlのネトリン−4中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)+1μmのALK5阻害剤II中で更に3〜21日間インキュベートした。
【0213】
6、8、12及び20日目のステージ5の培養を、KREBS緩衝液(クレブス−リンゲル液:0.1%のBSA、10mMのHEPES、5mMのNaHCO、129mMのNaCl、4.8mMのKCl、2.5mMのCaCl、1.2mMのKHPO、1.2mMのMgSO、5mMのNaHCO)中、37℃で1時間洗浄した後、2mMのD−グルコースを加えたKREBS緩衝液中で1時間インキュベートし、20mMのD−グルコースを加えたKREBS緩衝液中で更に1時間インキュベートすることによってGSISについて試験した。各インキュベーション後に、上清を除去して更なる分析を行うために−20℃で凍結した。分泌されたC−ペプチドの濃度を超高感度C−ペプチドELISA(アルプコ・ダイアグノスティックス社(Alpco Diagnostics)、スウェーデン)を使用してアッセイした。図13a〜cは、インビトロでのグルコースチャレンジに応答して分泌されたヒトC−ペプチドの濃度を示す。ステージ5における初期及び中間のインキュベーション期間は、顕著な刺激指数(低グルコースで分泌されたC−ペプチドに対する高グルコースで分泌されたC−ペプチドの比)を示さなかったのに対して、ステージ5の培地で20日間インキュベートした試料は、グルコースに応答して強い刺激を示した。このことは、ステージ5の培地に対する長期の曝露によって細胞塊は成熟しないことを示すものであり、GSISの証拠を示すものである。
【0214】
(実施例10)
図1bに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞における、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現に対するネトリン−1又はネトリン−2の添加の影響。
継代数44のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地に2日間曝露した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。
【0215】
次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で6日間培養した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+50ng/mlのIGF(ペプロテック社(Peprotech)、ニュージャージー州)+50ng/mlのHGF(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)中で更に3日間インキュベートした。これらの培養の一部のものに、50ng/mlのネトリン−1又はネトリン−2(R&Dシステムズ社(R&D systems)をステージ2〜5において加えた。図14は、ステージ2〜5において50ng/mlのネトリン−1又はネトリン−2を加えるか、あるいは加えずに、ステージ5において採取された細胞から得られたリアルタイムPCRのデータを示す。ネトリン−1又はネトリン−2のいずれかを加えることにより、ステージ5の終わりにおいて採取された細胞におけるグルカゴン及びインスリンの発現が顕著に上昇した。
【0216】
(実施例11)
胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーの発現を誘導するための別法。
継代数48のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、下記のいずれかによって胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させた。
a.1%のB27サプリメント(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)及び50ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に1mMの酪酸ナトリウム(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)を添加したRPMI培地で1日間培養した後、1%のB27サプリメント(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)及び50ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に0.5mMの酪酸ナトリウム(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)を添加したRPMI培地で更に3日間処理するか、
b.0.5%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を添加したDMEM/F12培地で2日間培養した後、2%のFBS及び100ng/mlのアクチビンA(AA)を添加したDMEM/F12培地で更に2日間処理する。
【0217】
次に培養を、DMEM/F12+2%のFBS+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で3日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+20ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μmのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)中で4日間インキュベートした。次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのエキセンジン−4(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+1μmのDAPT(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で3日間インキュベートした。
【0218】
上記の別法a)を用いた胚体内胚葉の誘導による、FACSによって測定されるCXCR4の発現が78%であったのに対して、上記別法b)によるCXCR4の発現は56%であった。CXCR4は、胚体内胚葉細胞のマーカーと考えられている。
【0219】
図15a〜fは、別法a)又はb)のいずれかを用い、ステージ5の終わりに採取した細胞から得られたリアルタイムPCRのデータを示す。別法a)を用いることで膵臓内胚葉及び内分泌マーカーの発現を誘導することもできるものと考えられる。
【0220】
(実施例12)
血清の非存在下、MATRIGEL(商標)でコーティングした組織培養基質上で培養したヒト胚性幹細胞の膵臓内分泌細胞への分化。
継代数52のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、2%のBSA(カタログ番号152401、MPバイオメディカル社(MP Biomedical)オハイオ州)及び100ng/mlのアクチビンA(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に20ng/mlのWnt−3a(カタログ番号:1324−WN−002、R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)、更に8ng/mlのbFGF(カタログ番号100−18B、ペプロテック社(PeproTech)、ニュージャージー州)を添加したRPMI培地に1日間曝露した後、2%のBSA及び100ng/mlのアクチビンA、更に8ng/mlのbFGFを添加したRPMI培地で更に2日間処理した。次に培養を、DMEM/F12+2%のBSA+50ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD(#239804、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)で2日間処理した後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+50ng/mlのFGF7+0.25μmのシクロパミン−KAAD+2μMのレチノイン酸(RA)(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州)+100ng/mlのノギン(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、ミネソタ州)中で4日間インキュベートした。次に細胞を、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+100ng/mlのノギン+1μmのDAPT(カタログ番号565784、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤(カタログ番号616452、カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)+100ng/mlのネトリン−4(R&Dシステムズ社(R&Dsystems)、ミネソタ州)中で3日間インキュベートした後、DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+1μmのALK5阻害剤II(カルバイオケム社(Calbiochem)、カリフォルニア州)中で更に7日間インキュベートした。DMEM/F12+1%のB27(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)中での7日間の処理からなる、最後のステージを追加することによって内分泌細胞の培養を更に成熟させた。最後のステージを除き、他のすべてのステージでは毎日培地を交換した。この手順の概要を図1cに示す。各ステージにおいて血球計数器を用いて細胞数を計算し、PCR分析用にRNAを採取した。試料はすべて3重に採取した。
【0221】
図16a〜bは、ステージ1の3日目のFACSにより測定したCXCR4の発現及びリアルタイムPCRデータを示す。未分化のH1 ES細胞に対する発現の倍数変化が示されている。図16c〜nは、ステージ2〜6の終わりに採取した細胞の主要な膵臓及び内分泌マーカーについてリアルタイムPCRのデータを示す。図17は、ステージ1〜6の終わりの細胞数を示す。
【0222】
(実施例13)
図1cに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞中のC−ペプチド及びプロインスリンの含量。
継代数42のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、上記実施例12で述べたような、図1cに概要を示すプロトコールに従って分化させた。
【0223】
細胞をクレブス/リンゲル緩衝液(129mMのNaCl、4.8mMのKCl、1.2mMのNaHPO、1.2mMのMgSO、2.5MMのCaCl、5mMのNaHCO、10mMのHEPES、0.3%(重量/体積)のBSA)中で洗浄し、クレブス緩衝液と15分間インキュベートした後、2mMのD−グルコースを加えたクレブス緩衝液中、37℃、5%CO、95%空気中で45分インキュベートした。0.5mlの上清を回収し、残りの培地を吸引し、以下の刺激物質のうち1つを加えたクレブス緩衝液で37℃、5% CO、95%空気中で45分間置換した。その刺激物質は、20mMのD−グルコース(HG)、30mMのKCl、100μMのトルブタミド(tol)、100mlのIBMX、2μMのBAY K8644、又は10mMのケトイソカプロン酸(KIC)である。0.5mlの上清を回収し、残りの培地を捨てた。C−ペプチドELISAキット(カタログ番号80−CPTHU−E01、アルプコ・ダイアグノスティクス社(Alpco Diagnostics)、ニューハンプシャー州)を使用して上清をヒトC−ペプチド含量について分析した。試料は、キットにより提供されるスタンダードの線形範囲に含まれるように規定通りに5〜10倍に希釈する必要があった。
【0224】
図18は、異なる刺激物質による刺激後のC−ペプチドの放出を示す。各物質の刺激指数(刺激上清中のC−ペプチド濃度/2mMのグルコースを含む基底上清中のC−ペプチド濃度)もグラフ上に示してある。
【0225】
ステージ6の培養のC−ペプチド、プロインスリン、及びDNA含量を測定するため、ステージ6の培養が入れられた6穴プレートを、ウェル毎に500μlの細胞溶解バッファ(10mMのTris−HCL+1mMのEDTA、pH7.5)で処理し、30秒間超音波処理した。C−ペプチド含量及びプロインスリン含量は、それぞれ、C−ペプチドELISAキット(カタログ番号80−CPTHU−E01、アルプコ・ダイアグノスティクス社(Alpco Diagnostics)、ニューハンプシャー州)及びプロインスリンELISAキット(カタログ番号11−1118−01、アルプコ・ダイアグノスティクス社(Alpco Diagnostics)、ニューハンプシャー州)を使用して測定された。溶解物のDNA含量は、Quant−IT(商標)DNAキット(カタログ番号P7589、インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)を使用して定量化された。試料は、キットにより提供されるスタンダードの線形範囲に含まれるように規定通りに500〜1000倍に希釈する必要があった。図19は、ステージ6の培養が入れられた6穴プレートの3つの異なるウェルについて、DNAに対して正規化したC−ペプチド含量及びプロインスリン含量を示す。比較として、3体の成人献体の小島試料のC−ペプチド及びプロインスリン含量も測定した。データは、培養全体のインスリン含量を反映したものであり、培養中に存在する細胞塊のみのインスリン含量を反映したものではない点は注意を要する。
【0226】
(実施例14)
図1cに概要を示す分化プロトコールに従って処理した多能性幹細胞中のFACS分析。
ヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、上記実施例12で述べたような、図1cに概要を示すプロトコールに従って分化させた。TrypLE EXPRESS(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)を使用して細胞を単層培養から単一の細胞に分離し、冷たいPBS中で洗浄した。固定のため、細胞を200〜300μlのCytofix/Cytoperm緩衝液(BD554722、BD社、カリフォルニア州)中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を1mlのPerm/Wash緩衝液(BD554723)で2回洗浄し、Perm/Wash緩衝液中、2%正常ヤギ血清を含む100μlの染色/ブロッキング溶液に再懸濁した。フローサイトメトリー分析のため、細胞を以下の一次抗体で染色した:抗インスリン(ウサギmAb、セルシグナリング社(Cell Signaling)No.C27C9;希釈率1:100)、抗グルカゴン(マウスMab、シグマ社(Sigma)No.G2654、1:100);抗シナプトフィジン(ウサギポリクローナル抗体、ダコ・サイトメーション社(DakoCytomation)No A0010、1:50)。細胞を4℃で30分間インキュベートした後、Perm/Wash緩衝液中で2回洗浄し、以下の適当な二次抗体中で更に30分間インキュベートした:ヤギ抗ウサギAlexa 647(インビトロジェン社(Invitrogen)No.A21246)又はヤギ抗マウス647(インビトロジェン社(Invitrogen)No.A21235);ヤギ抗ウサギR−PE(バイオソース社(BioSource)、No.ALI4407)。二次抗体はすべて1:200の希釈率で使用した。細胞は、少なくとも1回Perm/Wash緩衝液中で洗浄し、BD FACSアレイを使用して分析した。少なくとも10000事象を分析のために取得した。コントロールとして、未分化のH1細胞及びb−TC(ATCC、バージニア州)細胞株を使用した。図20a〜cは、ステージ6の培養におけるインスリン陽性及びシナプトフィジン陽性細胞の比率を示す。
【0227】
(実施例15)
図1cに概要を示す分化プロトコールのステージ3及び4においてコーディンを添加することにより、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーの発現が上昇する。
継代数52のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、ステージ3〜4にノギンの代わりに50〜100ng/mlのコーディン(R&Dシステムズ社(R&D systems)、ミネソタ州)を加えた以外は図1cに概要を示すプロトコールに従って分化させた。ノギンと同様、コーディンもBMPシグナル伝達の阻害剤として知られている。FACS(図21a〜b)によるステージ6の培養の分析により、ステージ3〜4でノギンを加えた場合に見られたものと極めてよく似たインスリン及びシナプトフィジンの発現が示された。
【0228】
(実施例16)
血清の非存在下、MATRIGEL(商標)でコーティングした組織培養基質上で培養したヒト胚性幹細胞の膵臓内分泌細胞への分化。
継代数39のヒト胚性幹細胞系H9の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、上記実施例12で述べたような、図1cに概要を示すプロトコールに従って分化させた。RNAをステージ1〜6の終わりに採取した。図22a〜lは、ステージ3〜6の終わりに採取した細胞の主要な膵臓及び内分泌マーカーについてリアルタイムPCRのデータを示す。H1系で観察された結果と同様、H9細胞は、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する能力を有していた。
【0229】
(実施例17)
多能性幹細胞の膵臓内分泌細胞への分化能に対する培地サプリメントの影響。
継代数39のヒト胚性幹細胞系H1の細胞を、MATRIGEL(商標)でコーティングした培養皿(希釈率1:30)上で培養し、一部の培養において、DMEF/F12基礎培地に0.25〜1%のB27又は1%のN2(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州)+2%のBSAを添加した以外は図1cに概要を示すプロトコールに従って分化させた。分化プロトコールの他のすべての要素は、実施例12に概要を示したとおりとした。ステージ3、5及び6の終わりに試料を3重に採取し、リアルタイムPCRにより分析した。図23a〜dは、ステージ3、5及び6の終わりに採取した細胞の主要な膵臓及び内分泌マーカーについてリアルタイムPCRのデータを示す。B27の代わりにN2/BSAを使用することによって、主要な膵臓内分泌マーカーの極めてよく似た発現が認められた。更に、主要な膵臓内分泌マーカーの発現に大きな影響を及ぼすことなく、B27の濃度を0.25%にまで低下させることができた。
【0230】
本明細書の全体を通じて引用した刊行物は、参照によりその全容を本明細書に組み込むものである。以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適切に解釈される以下の特許請求の範囲によって定義されるものである点は認識されるであろう。
【0231】
〔実施の態様〕
(1) 多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法において、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
(2) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様2に記載の方法。
(6) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様2に記載の方法。
(9) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様8に記載の方法。
【0232】
(11) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様2に記載の方法。
(12) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様11に記載の方法。
(14) FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、実施態様2に記載の方法。
(15) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様14に記載の方法。
(17) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様2に記載の方法。
(18) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様2に記載の方法。
(19) 前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、実施態様2に記載の方法。
(20) シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、実施態様19に記載の方法。
【0233】
(21) シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、実施態様2に記載の方法。
(23) 前記BMP4阻害剤がノギンである、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様22に記載の方法。
(25) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様22に記載の方法。
(26) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様2に記載の方法。
(27) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様2に記載の方法。
(28) 前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、実施態様2に記載の方法。
(29) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、実施態様1に記載の方法。
(30) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、実施態様29に記載の方法。
【0234】
(31) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、実施態様29に記載の方法。
(32) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、実施態様29に記載の方法。
(33) 前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様29に記載の方法。
(34) 前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様33に記載の方法。
(35) 前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様34に記載の方法。
(36) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、実施態様34に記載の方法。
(37) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、実施態様34に記載の方法。
(38) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、実施態様29に記載の方法。
(39) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子、及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、実施態様1に記載の方法。
(40) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、実施態様39に記載の方法。
【0235】
(41) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、実施態様39に記載の方法。
(42) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、実施態様39に記載の方法。
(43) 前記ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子が、γ−セクレターゼ阻害剤である、実施態様39に記載の方法。
(44) 前記γ−セクレターゼ阻害剤がL−685,458である、実施態様43に記載の方法。
(45) L−685,458を約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様43に記載の方法。
(46) 前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様39に記載の方法。
(47) 前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様46に記載の方法。
(48) 前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、実施態様47に記載の方法。
(50) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、実施態様47に記載の方法。
【0236】
(51) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、実施態様29に記載の方法。
(52) 多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法において、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
(53) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、実施態様52に記載の方法。
(54) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、実施態様53に記載の方法。
(55) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、実施態様53に記載の方法。
(56) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様53に記載の方法。
(57) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様56に記載の方法。
(58) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様56に記載の方法。
(59) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様53に記載の方法。
(60) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様59に記載の方法。
【0237】
(61) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様59に記載の方法。
(62) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様53に記載の方法。
(63) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様62に記載の方法。
(64) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様62に記載の方法。
(65) FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、実施態様53に記載の方法。
(66) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様65に記載の方法。
(67) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様65に記載の方法。
(68) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様53に記載の方法。
(69) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様53に記載の方法。
(70) 前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、実施態様53に記載の方法。
【0238】
(71) シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、実施態様70に記載の方法。
(72) シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、実施態様70に記載の方法。
(73) 前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、実施態様53に記載の方法。
(74) 前記BMP4阻害剤がノギンである、実施態様73に記載の方法。
(75) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様73に記載の方法。
(76) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様73に記載の方法。
(77) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様53に記載の方法。
(78) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様53に記載の方法。
(79) 前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、実施態様53に記載の方法。
(80) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、実施態様52に記載の方法。
【0239】
(81) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、実施態様80に記載の方法。
(82) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、実施態様80に記載の方法。
(83) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、実施態様80に記載の方法。
(84) 前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様80に記載の方法。
(85) 前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様84に記載の方法。
(86) 前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様85に記載の方法。
(87) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、実施態様85に記載の方法。
(88) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、実施態様85に記載の方法。
(89) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、実施態様80に記載の方法。
(90) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子、及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、実施態様52に記載の方法。
【0240】
(91) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、実施態様90に記載の方法。
(92) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、実施態様90に記載の方法。
(93) 前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、実施態様90に記載の方法。
(94) 前記ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子が、γ−セクレターゼ阻害剤である、実施態様90に記載の方法。
(95) 前記γ−セクレターゼ阻害剤がL−685,458である、実施態様94に記載の方法。
(96) L−685,458を約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様94に記載の方法。
(97) 前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様90に記載の方法。
(98) 前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、実施態様97に記載の方法。
(99) 前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、実施態様98に記載の方法。
(100) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、実施態様98に記載の方法。
【0241】
(101) 前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、実施態様98に記載の方法。
(102) 前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、実施態様90に記載の方法。
(103) 膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を生成する方法において、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
(104) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、実施態様103に記載の方法。
(105) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、実施態様104に記載の方法。
(106) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、実施態様104に記載の方法。
(107) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様104に記載の方法。
(108) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様107に記載の方法。
(109) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様107に記載の方法。
(110) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様104に記載の方法。
【0242】
(111) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様110に記載の方法。
(112) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様110に記載の方法。
(113) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、実施態様104に記載の方法。
(114) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、実施態様113に記載の方法。
(115) 前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、実施態様113に記載の方法。
(116) FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、実施態様104に記載の方法。
(117) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様116に記載の方法。
(118) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、実施態様116に記載の方法。
(119) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様104に記載の方法。
(120) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、実施態様104に記載の方法。
【0243】
(121) 前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、実施態様104に記載の方法。
(122) シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、実施態様121に記載の方法。
(123) シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、実施態様121に記載の方法。
(124) 前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、実施態様104に記載の方法。
(125) 前記BMP4阻害剤がノギンである、実施態様124に記載の方法。
(126) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様124に記載の方法。
(127) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、実施態様124に記載の方法。
(128) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様104に記載の方法。
(129) 前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、実施態様104に記載の方法。
(130) 前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、実施態様104に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法において、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記BMP4阻害剤がノギンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子、及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子が、γ−セクレターゼ阻害剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記γ−セクレターゼ阻害剤がL−685,458である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
L−685,458を約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
多能性幹細胞からグルコース刺激インスリン分泌能を有する細胞を生成するための方法において、
a.前記多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
【請求項53】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項70】
前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項74】
前記BMP4阻害剤がノギンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項78】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項79】
前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項80】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項81】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、TGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、請求項80に記載の方法。
【請求項90】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子、及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で処理することによって行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項91】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約1〜約12日間処理する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約5〜約12日間処理する、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記膵臓内分泌系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子及びTGF−βR−1経路を阻害する因子で約12日間処理する、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子が、γ−セクレターゼ阻害剤である、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
前記γ−セクレターゼ阻害剤がL−685,458である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
L−685,458を約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記TGF−βR−1経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
前記TGF−βR−1シグナル伝達経路を阻害する因子が、TGF−βR−1キナーゼの阻害剤である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記TGF−βR−1キナーゼを、約0.1μM〜約100μMの濃度で使用する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジンである、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記TGF−βR−1キナーゼの阻害剤が、[3−(ピリジン−2−イル)−4−(4−キノニル)]−1H−ピラゾールである、請求項98に記載の方法。
【請求項102】
前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、BMPを阻害可能な因子及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で更に処理する、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を生成する方法において、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞を、胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、前記膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
【請求項104】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させる前記工程が、前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で処理することによって行われる、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約6日間処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、レチノイン酸、FGF−2、FGF−4、FGF−7、FGF−10、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、及びネトリンからなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約6日間処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びにFGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項111】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約3日間処理した後、前記細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約1〜約4日間処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項114】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約3日間処理する、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記胚体内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞を、ソニックヘッジホッグ阻害剤、BMPを阻害可能な因子、ネトリン、レチノイン酸、並びに、FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される少なくとも1種類の因子で約4日間処理する、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
FGF−2、FGF−4、FGF−7、及びFGF−10からなる群から選択される前記因子が、FGF−7である、請求項104に記載の方法。
【請求項117】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約50pg/ml〜約50μg/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、20ng/mlの濃度のFGF−7で処理する、請求項116に記載の方法。
【請求項119】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約1nM〜約1mMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項120】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、1μMの濃度のレチノイン酸で処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項121】
前記ソニックヘッジホッグ阻害剤がシクロパミンである、請求項104に記載の方法。
【請求項122】
シクロパミンを約0.1μM〜約10μMの濃度で使用する、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
シクロパミンを0.25μMの濃度で使用する、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記BMPを阻害可能な因子がBMP4阻害剤である、請求項104に記載の方法。
【請求項125】
前記BMP4阻害剤がノギンである、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のノギンで処理する、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、100ng/mlの濃度のノギンで処理する、請求項124に記載の方法。
【請求項128】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を、約500ng/ml〜約100μg/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項129】
前記胚体内胚葉に特徴的なマーカーを発現する細胞を100ng/mlの濃度のネトリンで処理する、請求項104に記載の方法。
【請求項130】
前記ネトリンが、ネトリン1、ネトリン2、及びネトリン4からなる群から選択される、請求項104に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−504753(P2011−504753A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536133(P2010−536133)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084705
【国際公開番号】WO2009/070592
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】