説明

ヒト胚性幹細胞の膵内分泌系への分化

本発明は、多能性幹細胞の分化を促進する方法を提供する。具体的には本発明は、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、GDF_8、GDF_11、又はGDF_15などのTEF_β受容体拮抗剤を用いて増加させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国特許出願シリアル番号第61/110,278号(2008年10月31日出願)に対する優先権を請求する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、多能性幹細胞の分化を促進する方法を提供する。具体的には本発明は、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させる方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
I型糖尿病の細胞置換療法における進歩及び移植可能なランゲルハンス島の不足のため、生着に適したインスリン産生細胞すなわちβ細胞の供給源の開発に注目が集まっている。1つの手法は、例えば、胚性幹細胞のような多能性幹細胞から機能性のβ細胞を生成することである。
【0004】
脊椎動物の胚発生において、多能性細胞は、原腸形成として公知のプロセスにて、3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)を含む細胞のグループを生じる。例えば、甲状腺、胸腺、膵臓、腸、及び肝臓等の組織は、内胚葉から中間ステージを経て発達する。このプロセスにおける中間ステージは、胚体内胚葉の形成である。胚体内胚葉細胞は、HNF−3β、GATA4、Mixl1、CXCR4及びSox−17などの多くのマーカーを発現する。
【0005】
膵臓の形成は、胚体内胚葉の膵臓内胚葉への分化により起こる。膵臓内胚葉の細胞は膵臓−十二指腸ホメオボックス遺伝子、PDx1を発現する。PDx1が存在しない場合、膵臓は、腹側芽及び背側芽の形成を越えて発達しない。したがって、PDx1の発現は、膵臓器官形成において重要な工程となっている。成熟した膵臓は、他の細胞型間で外分泌組織及び内分泌組織を含有する。外分泌組織及び内分泌組織は、膵臓内胚葉の分化によって生じる。
【0006】
島細胞の特徴を保持する細胞がマウスの胚細胞から誘導されたことが報告されている。例えば、Lumelskyら(Science 292:1389、2001年)は、マウスの胚性幹細胞の、膵島と同様のインスリン分泌構造への分化を報告している。Soriaら(Diabetes 49:157、2000年)は、ストレプトゾトシン糖尿病のマウスにおいて、マウスの胚性幹細胞から誘導されたインスリン分泌細胞が糖血症を正常化することを報告している。
【0007】
一例において、Horiら(PNAS 99:16105,2002)は、ホスホイノシチド3−キナーゼ(LY294002)の阻害剤でマウス胚性幹細胞を処理することにより、β細胞に類似した細胞が生じたことを開示している。
【0008】
他の例では、Blyszczukら(PNAS 100:998、2003年)が、Pax4を構成的に発現しているマウス胚性幹細胞からのインスリン産生細胞の生成を報告している。
【0009】
Micallefらは、レチノイン酸が、胚性幹細胞のPdx1陽性膵臓内胚葉の形成に対する関与を制御できることを報告している。レチノイン酸は、胚における原腸形成の終了時に対応する期間中の、胚性幹細胞分化の4日目に培養液に添加すると、Pdx1発現の誘発に最も効果的である(Diabetes 54:301、2005年)。
【0010】
Miyazakiらは、Pdx1を過剰発現しているマウス胚性幹細胞株を報告している。Miyazakiらの結果は、外因性のPdx1発現が、得られた分化細胞内でインスリン、ソマトスタチン、グルコキナーゼ、ニューロゲニン3、P48、Pax6、及びHNF6遺伝子の発現を明らかに増加させたことを示している(Diabetes 53:1030、2004年)。
【0011】
Skoudyらは、マウス胚性幹細胞内で、アクチビンA(TGF−βスーパーファミリーのメンバー)が、膵臓外分泌遺伝子(p48及びアミラーゼ)、並びに内分泌遺伝子(Pdx1、インスリン及びグルカゴン)の発現を上方制御することを報告している。最大の効果は、1nMアクチビンAを使用した場合に認められた。Skoudy et al.はまた、インスリン及びPdx1 mRNAの発現レベルはレチノイン酸により影響されなかったが、3nMのFGF7による処理によりPdx1の転写産物のレベルが増大したことも観察している(Biochem.J.379:749,2004)。
【0012】
Shirakiらは、胚性幹細胞のPdx1陽性細胞への分化を特異的に増大させる増殖因子の効果を研究した。彼らは、TGF−β2によってPdx1陽性細胞が高い比率で再現可能に得られたことを観察している(Genes Cells.2005 Jun;10(6):503〜16.)。
【0013】
Gordonらは、血清の非存在下、かつアクチビンとWntシグナル伝達阻害剤の存在下で、マウス胚性幹細胞からbrachyury+/HNF−3β+内胚葉細胞が誘導されることを示している(米国特許出願公開2006/0003446(A1)号)。
【0014】
Gordonら(PNAS,Vol 103,p 16806,2006)は、「Wnt及びTGF−β/nodal/アクチビンの同時シグナル伝達が前原始線条の形成には必要であった」と述べている。
【0015】
しかしながら、胚性幹細胞発達のマウスモデルは、例えば、ヒトなどのより高等な哺乳動物における発達プログラムを正確には模倣しない恐れがある。
【0016】
Thomsonらは、ヒト胚盤胞から胚性幹細胞を単離した(Science 282:114,1998年)。同時に、Gearhart及び共同研究者は、胎児性腺組織から、ヒト胚性生殖(hEG)細胞株を誘導した(Shamblottら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998)。白血病抑制因子(LIF)と共に培養するのみでも分化を阻止し得るマウス胚性幹細胞とは異なり、ヒト胚性幹細胞は、非常に特殊な条件下で維持する必要がある(米国特許第6,200,806号、国際公開第99/20741号;同第01/51616号)。
【0017】
D’Amourらは、高濃度のアクチビン及び低濃度の血清の存在下で、ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉の濃縮化された培養物が調製されたことを述べている(Nature Biotechnology 2005)。これらの細胞を、マウスの腎臓被膜下に移植することにより、一部の内胚葉性器官の特徴を有する、より成熟した細胞への分化が得られた。ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉細胞は、FGF−10の添加後、Pdx1陽性細胞に更に分化することができる(米国特許出願公開第2005/0266554(A1)号)。
【0018】
D’Amourら(Nature Biotechnology−24,1392〜1401(2006))は、「我々は、ヒト胚性幹細胞(hES)を、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド及びグレリンといった膵臓ホルモンを合成可能な内分泌細胞に転換させる分化プロセスを開発した。このプロセスは、胚体内胚葉、腸管内胚葉、膵臓内胚葉及び内分泌前駆体が、内分泌ホルモンを発現する細胞へと向かう段階に類似した段階を通して細胞を指向させることにより、インビボでの膵臓器官形成を模倣する。」と述べている。
【0019】
別の例において、Fiskらは、ヒト胚性幹細胞から膵島細胞を産生するシステムを報告している(米国特許出願公開第2006/0040387(A1)号)。この場合、分化経路は3つのステージに分割された。先ず、ヒト胚性幹細胞を、酪酸ナトリウムとアクチビンAの組み合わせを用いて内胚葉に分化した。次に細胞をノギンなどのTGF−βアンタゴニストとEGF又はベータセルリンの組み合わせと培養してPdx1陽性細胞を生成する。最終分化は、ニコチンアミドにより誘発された。
【0020】
1つの例において、Benvenistryらは、「我々は、Pdx1の過剰発現が膵臓に多く見られる遺伝子の発現を高めたことを結論付ける。インスリン発現の誘導には、インビボでのみ存在する更なるシグナルを必要とする可能性がある。」と述べている(Benvenistryら、Stem Cells 2006;24:1923〜1930)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、膵臓内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞、又は膵臓ホルモン分泌細胞に分化する可能性を維持する一方で、現在の臨床上の必要性に対処するよう拡張できる、多能性幹細胞株を確立するための条件を開発する有意な必要性が今尚存在する。本発明者らは、膵臓内分泌細胞に向かうヒト胚幹細胞の分化の効率を改善する代替的な手法を採用した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞を分化させるための方法を提供し、この方法は、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.多能性幹細胞を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
c.胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
d.膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、を含む。
【0023】
一実施形態では、本発明は、膵内分泌系と関連付けられるマーカーの発現量を増加させる方法を提供し、本方法は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、十分な量のTGF−β受容体作動剤を含む培地で処理することで、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明で採用される分化プロトコルの概要を示す。
【図2】本発明で採用される分化プロトコルの様々なステージに関連付けられるマーカーの、発現量を示す。パネルa)は、ステージ1へと分化させたヒト胚性幹細胞株H1細胞のFACSにより測定されたものとして、CXCR4の発現量を示す。パネルb)は、ステージ1へと分化させたヒト胚性幹細胞株H1細胞のリアルタイムPCRにより測定されたものとして、ステージ1に関連付けられるマーカーの発現量を示す。
【図3】本発明で採用した分化プロトコルのステージ6へと分化させ、次いでアクチビンAで処理(ステージ7)したヒト胚性幹細胞株H1細胞の、ジチゾン染色を示す。パネルa)は、40μmセルストレイナーで濾過する前にジチゾンで染色した細胞の位相差顕微鏡写真を示す。パネルb)は、40μmセルストレイナーにより濾過された、ジチゾン染色した細胞の位相差顕微鏡写真を示す。パネルc)は、40μmセルストレイナーにより濾過されなかった、ジチゾン染色した細胞の位相差顕微鏡写真を示す。
【図4】リアルタイムPCRにより測定されるものとして、本発明で採用された分化プロトコルのステージ6へと分化させ、実施例2に記載の方法に従ってステージ6へと分化させた後にアクチビンAで処理したヒト胚性幹細胞株H1細胞での、pdx−1(パネルa)、nkx6−1(パネルb)、Pax4(パネルc)、nkx2.2(パネルd)、インスリン(パネルe)及びグルカゴン(パネルf)の発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
開示を明確にするために、本発明の「発明を実施するための形態」を、限定を目的とすることなく、本発明の特定の特徴、実施形態、又は応用を説明若しくは図示した以下の小項目に分ける。
【0026】
定義
幹細胞は、単一の細胞レベルにて自己複製し、分化して後代細胞を生成する、それら両方の能力で定義される未分化細胞であり、後代細胞には、自己複製前駆細胞、非再生前駆細胞、及び最終分化細胞が含まれる。幹細胞はまた、インビトロで複数の胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)から様々な細胞系の機能的細胞に分化する能力によって、また移植後に複数の胚葉の組織を生じ、胚盤胞への注入後、全部ではないとしても殆どの組織を提供する能力によっても、特徴付けられる。
【0027】
幹細胞は、発生上の能力によって、(1)全ての胚性又は胚体外細胞のタイプを生ずる能力を有することを意味する、分化全能性、(2)全ての胚性細胞のタイプを生ずる能力を有することを意味する、分化万能性、(3)細胞系のサブセットを生ずる能力を有するが、それらが全て特定の組織、臓器、又は生理学的システムのものであるような、分化多能性(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己再生性)、血球限定的寡能性前駆細胞、及び、血液の通常の成分である全ての細胞種及び要素(例えば、血小板)を生じうる)、(4)多能性幹細胞よりも限定された細胞系のサブセットを生ずる能力を有することを意味する、分化寡能性、及び(5)単一の細胞系(例えば、精原幹細胞)を生ずる能力を有することを意味する、分化単一性に分類される。
【0028】
分化は、非特殊化の(「中立の」)又は比較的特殊化されていない細胞が、例えば、神経細胞又は筋細胞などの特殊化した細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化した、又は分化を誘発された細胞は、細胞系内でより特殊化した(「傾倒した」)状況を呈している細胞である。分化プロセスに適用した際の用語「傾倒した」は、通常の環境下で特定の細胞型又は細胞型の小集合に分化し続ける分化経路の地点に進行しており、通常の環境下で異なる細胞型に分化し、又はより分化していない細胞型に戻ることができない細胞を指す。脱分化は、細胞が細胞系内で比較的特殊化されて(又は傾倒して)いない状況に戻るプロセスを指す。本明細書で使用するとき、細胞系は、細胞の遺伝、すなわち、その細胞がどの細胞から来たか、またどの細胞を生じ得るかを規定する。細胞系は、細胞を発達及び分化の遺伝的スキーム内に配置する。系特異的なマーカーは、対象とする系の細胞の表現型に特異的に関連した特徴を指し、中立細胞の対象とする系への分化を評価する際に使用することができる。
【0029】
「β−細胞系」は、転写因子PDX−1、及び以下の転写因子、すなわち、NGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3 β、MAFA、Pax4、及びPax6の少なくとも1つについて遺伝子の発現が陽性である細胞を指す。β細胞系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、β細胞を含む。
【0030】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞」、又は「ステージ1細胞」、又は「ステージ1」とは、以下のマーカー、すなわち、SOX−17、GATA−4、HNF−3 β、GSC、Cer1、Nodal、FGF8、Brachyury、Mix様ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、eomesodermin(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA−6、CXCR4、C−Kit、CD99又はOTX2のうちの少なくとも1つを発現している細胞を指す。胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞としては、原始線条前駆体細胞、原始線条細胞、中内胚葉細胞及び胚体内胚葉細胞が挙げられる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のマーカー、すなわち、PDX−1、HNF−1β、PTF−1 α、HNF−6、又はHB9のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞としては、膵臓内胚葉細胞、原腸管細胞、後部前腸細胞が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用するとき、「膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞」、又は「ステージ5細胞」、又は「ステージ5」とは、以下のマーカー、すなわち、NGN−3、NeuroD、Islet−1、PDX−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、又はPTF−1 αのうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞としては、膵内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞及び膵臓ホルモン分泌細胞、並びにβ細胞系の細胞が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉」は、原腸形成中、胚盤葉上層から生じ、胃腸管及びその誘導体を形成する細胞の特徴を保持する細胞を指す。胚体内胚葉細胞は、以下のマーカーを発現する:HNF−3 β、GATA−4、SOX−17、Cerberus、OTX2、グースコイド、C−Kit、CD99、及びMixl1。
【0034】
本明細書で使用するとき、「胚体外内胚葉」は、以下のマーカー、すなわち、SOX−7、AFP、及びSPARCのうちの少なくとも1つを発現する細胞の集団を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「マーカー」とは、対象とする細胞で差異的に発現される核酸又はポリペプチド分子である。本文脈において、差異的な発現は、陽性マーカーのレベルの増大及び陰性マーカーのレベルの減少を意味する。検出可能なレベルのマーカー核酸又はポリペプチドは、他の細胞と比較して対象とする細胞内で十分高く又は低く、そのため当該技術分野において既知の多様な方法のいずれかを使用して、対象とする細胞を他の細胞から識別及び区別することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「中内胚葉細胞」は、以下のマーカー、すなわち、CD48、eomesodermin(EOMES)、SOX−17、DKK4、HNF−3 β、GSC、FGF17、GATA−6のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「膵内分泌細胞」又は「膵臓ホルモン発現細胞」とは、以下のホルモン、すなわち、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発現することができる細胞を指す。
【0038】
本明細書で使用するとき、「膵臓内胚葉細胞」、又は「ステージ4細胞」、又は「ステージ4」とは、以下のマーカー、すなわち、NGN−3、NeuroD、Islet−1、PDX−1、PAX−4又はNKX2.2のうちの少なくとも1つを発現することができる細胞を指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、「膵臓ホルモン産生細胞」とは、以下のホルモン、すなわち、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを産生することができる細胞を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「膵臓ホルモン分泌細胞」、又は「ステージ6細胞」、又は「ステージ6」とは、以下のホルモン、すなわち、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを分泌することができる細胞を指す。
【0041】
本明細書で使用するとき、「前腸後部細胞」、又は「ステージ3細胞」、又は「ステージ3」とは、以下のマーカー、すなわち、PDX−1、HNF−1、PTF−1A、HNF−6、HB−9、PROX−1のうちの少なくとも1つを分泌することができる細胞を指す。
【0042】
本明細書で使用するとき、「前原始線条細胞」とは、以下のマーカー、すなわち、Nodal、又はFGF8のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。
【0043】
本明細書で使用するとき、「原始腸管細胞」、又は「ステージ2細胞」、又は「ステージ2」とは、以下のマーカー、すなわち、HNF−1、又はHNF−4Aのうちの少なくとも1つを分泌することができる細胞を指す。
【0044】
本明細書で使用するとき、「原始線条細胞」とは、以下のマーカー、すなわち、Brachyury、Mix様ホメオボックスタンパク質、又はFGF4のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。
【0045】
多能性幹細胞の単離、増殖及び培養
多能性幹細胞の特徴付け
多能性幹細胞は、ステージ特異的胚抗原(SSEA)3及び4の1以上、並びにTra−1−60及びTra−1−81と呼ばれる抗体によって検出可能なマーカーを発現し得る(Thomsonら、Science 282:1145,1998)。インビトロで多能性幹細胞を分化させると、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1−81の発現が消失し(存在する場合)、SSEA−1の発現が増大する。未分化の多能性幹細胞は通常アルカリホスファターゼ活性を有し、これは、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、製造業者(Vector Laboratories(Burlingame Calif.))によって述べられるようにVector Redを基質として現像することによって検出することができる。未分化多能性幹細胞はまた、RT−PCRで検出されるように、一般にOct−4及びTERTも発現する。
【0046】
増殖させた多能性幹細胞の別の望ましい表現型は、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉組織の3胚葉のすべての細胞に分化する能力である。多能性幹細胞の多能性は、例えば、細胞を重症複合免疫不全症(SCID)マウスに注入し、形成される奇形腫を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いでこれを3つの胚細胞層からの細胞種の証拠について組織学的に調べることによって確認することができる。代替的に、多能性は、胚様体を形成させ、この胚様体を3つの胚葉に関連したマーカーの存在に関して評価することにより決定することができる。
【0047】
増殖した多能性幹細胞株は、標準的なGバンド法を使用して核型を決定することができ、確立された対応する霊長類種の核型と比較される。「正常な核型」を有する細胞を獲得することが望ましく、これは細胞が正倍数体であることを意味し、全ヒト染色体が存在し、かつ、著しく変更されてはいない。
【0048】
多能性幹細胞の源
使用が可能な多能性幹細胞の種類としては、妊娠期間中の任意の時期(必ずしもではないが、通常は妊娠約10〜12週よりも前)に採取した前胚性組織(例えば胚盤胞等)、胚性組織、胎児組織などの、妊娠後に形成される組織に由来する多能性細胞の株化細胞系が含まれる。非限定的な例は、例えばヒト胚幹細胞株H1、H7、及びH9(WiCell)などのヒト胚幹細胞又はヒト胚生殖細胞の確立株である。それらの細胞の最初の樹立又は安定化中に本開示の組成物を使用することも想定され、その場合、源となる細胞は、源となる組織から直接採取した一次多能性細胞である。フィーダー細胞の不在下で既に培養された多能性幹細胞集団から採取した細胞も好適である。例えば、BG01v(BresaGen,Athens,GA)などの変異ヒト胚性幹細胞株も好適である。
【0049】
一実施形態では、ヒト胚性幹細胞は、Thomsonら(米国特許第5,843,780号;Science 282:1145,1998;Curr.Top.Dev.Biol.38:133 ff.,1998;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7844,1995)に記載されているように生成される。
【0050】
多能性幹細胞の培養
一実施形態では、多能性幹細胞は、一般にフィーダー細胞の層上で培養され、このフィーダー細胞は、多能性幹細胞を様々な方法で支持する。あるいは、多能性幹細胞を、フィーダー細胞を基本的に含まないにも関わらず、細胞を実質的に分化させることなく多能性幹細胞の増殖を支持するような培養システム中で培養する。フィーダー細胞不含培養における多能性幹細胞の分化を伴わない増殖は、あらかじめ他の細胞種を培養することにより条件づけした培地を使用して支持される。あるいはフィーダー細胞不含培養における多能性幹細胞の分化を伴わない増殖は、合成培地を使用して支持される。
【0051】
例えば、Reubinoffら(Nature Biotechnology 18:399〜404(2000))及びThompsonら(Science 6 November 1998:Vol.282.no.5391,pp.1145〜1147)は、マウス胚性繊維芽フィーダー細胞層を用いてヒト胚盤胞からの多能性幹細胞系を培養することについて開示している。
【0052】
Richardsら(Stem Cells 21:546〜556,2003)は、11種類の異なるヒトの成人、胎児、及び新生児フィーダー細胞層についてヒト多能性幹細胞の培養を支持する能力の評価を行っている。Richardsらは、「成人の皮膚線維芽フィーダー細胞上で培養したヒト胚性幹細胞系は、ヒト胚性幹細胞の形態を有し、多能性を維持する」と述べている。
【0053】
米国特許出願公開第20020072117号は、無フィーダー細胞培養中で霊長類の多能性幹細胞の増殖を支持する培地を生成する細胞系を開示している。使用される細胞系は、胚性組織から得られるかあるいは胚性幹細胞から分化した間葉系かつ繊維芽細胞様の細胞系である。米国特許出願公開第20020072117号は、この細胞系の1次フィーダー細胞層としての使用を更に開示している。
【0054】
別の例として、Wangら(Stem Cells 23:1221〜1227,2005)は、ヒト胚性幹細胞由来のフィーダー細胞層上でヒト多能性幹細胞を長期にわたって増殖させるための方法を開示している。
【0055】
別の例として、Stojkovicら(Stem Cells 2005 23:306〜314,2005)は、ヒト胚性幹細胞の自然分化により誘導されたフィーダー細胞システムを開示している。
【0056】
更なる別の例として、Miyamotoら(Stem Cells 22:433〜440,2004)は、ヒトの胎盤から得られたフィーダー細胞の供給源を開示している。
【0057】
Amitら(Biol.Reprod 68:2150〜2156、2003年)は、ヒト包皮に由来するフィーダー細胞層を開示している。
【0058】
別の例として、Inzunzaら(Stem Cells 23:544〜549,2005)は、ヒトの出生直後産児の包皮線維芽細胞から得られたフィーダー細胞層を開示している。
【0059】
米国特許第6642048号は、無フィーダー細胞培養中での霊長類の多能性幹(pPS)細胞の増殖を支持する培地、及びこうした培地の製造に有用な細胞系を開示している。米国特許第6642048号は、「本発明は、胚性組織から得られるかあるいは胚性幹細胞から分化した間葉系かつ繊維芽細胞様の細胞系を含む。本開示では、こうした細胞系を誘導し、培地を調整し、この馴化培地を用いて幹細胞を増殖させるための方法を説明及び図示する」と述べている。
【0060】
別の例として、国際公開第2005014799号は、哺乳動物細胞の維持、増殖及び分化のための条件培地を開示している。国際公開第2005014799号は、「本発明に基づいて製造される培地は、マウス細胞、特にMMH(Metマウス肝細胞)と称される分化及び不死化したトランスジェニック肝細胞の細胞分泌活性によって馴化される」と述べている。
【0061】
別の例として、Xuら(Stem Cells 22:972〜980,2004)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素を過剰発現するように遺伝子改変されたヒト胚性幹細胞由来細胞から得られた馴化培地を開示している。
【0062】
別の例において、米国特許出願公開第20070010011号は、多能性幹細胞を維持するための合成培地を開示している。
【0063】
代替的な一培養システムでは、胚性幹細胞の増殖を促進することが可能な増殖因子を添加した無血清培地を使用している。例えば、Cheonら(BioReprod DOI:10.1095/biolreprod.105.046870,October 19,2005)は、胚性幹細胞の自己再生を誘発することが可能な異なる増殖因子を添加した非馴化血清補充(SR)培地中に胚性幹細胞が維持された、無フィーダー細胞かつ無血清の培養システムを開示している。
【0064】
別の例において、Levensteinら(Stem Cells 24:568〜574,2006)は、線維芽細胞又は馴化培地の非存在下で、bFGFを添加した培地を使用して、胚幹細胞を長期間培養する方法を開示している。
【0065】
別の例において、米国特許出願公開第20050148070号は、血清及び繊維芽細胞フィーダー細胞方法を含まない合成培地中でのヒト胚幹細胞の培養方法を開示し、同方法は、アルブミン、アミノ酸、ビタミン、無機物、少なくとも1つのトランスフェリン又はトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン又はインスリン代替物を含有する培地中で細胞を培養し、この培地は、本質的に哺乳動物胎児血清を含有せず、線維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化できる少なくとも約100ng/mLの線維芽細胞増殖因子を含有し、ここで増殖因子は、線維芽細胞フィーダー層のみでなく他の源からも供給され、培地はフィーダー細胞又は馴化培地なしで、未分化状態の幹細胞の増殖を支持した。
【0066】
別の例において、米国特許出願公開第20050233446号は、未分化の霊長類始原幹細胞を含む幹細胞の培養に有用な合成培地を開示している。溶液において、培地は、培養されている幹細胞と比較して実質的に等張である。所定の培養おいて、特定の培地は、基本培地と、実質的に未分化の始原幹細胞の増殖の支持に必要な、ある量のbFGF、インスリン、及びアスコルビン酸の各々とを含有する。
【0067】
別の例として、米国特許第6800480号は、「1つの実施形態において、実質的に未分化状態の霊長類由来の始原幹細胞を増殖させるための細胞培地であって、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を支持するうえで効果的な低浸透圧、低エンドトキシンの基礎培地を含む細胞培地を提供する。この基本培地は、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を支持するうえで効果的な栄養素血清、並びに、フィーダー細胞、及びフィーダー細胞から誘導される細胞外基質成分からなる群から選択される基質と組み合わされる。培地は更に、非必須アミノ酸、抗酸化剤、並びに、ヌクレオシド及びピルビン酸塩からなる群から選択される第1の増殖因子を含む。」と述べている。
【0068】
別の例では、米国特許出願公開第20050244962号は、「1つの態様において本発明は、霊長類の胚性幹細胞を培養する方法を提供する。哺乳動物の胎児血清を基本的に含まない(好ましくはあらゆる動物の血清をも基本的に含まない)培養中で、単に繊維芽フィーダー細胞層以外の供給源から供給される線維芽細胞増殖因子の存在下で幹細胞を培養する。好ましい1つの形態では、充分な量の繊維芽増殖因子を添加することによって、幹細胞の培養を維持するために従来必要とされていた繊維芽フィーダー細胞層の必要性がなくなる。」と述べている。
【0069】
更なる例として、国際特許出願公開第2005065354号は、基本的に無フィーダー細胞かつ無血清の合成等張培地であって、a.基礎培地、b.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のbFGF、c.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のインスリン、及びd.実質的に未分化の哺乳動物幹細胞の増殖を支持するうえで充分な量のアスコルビン酸、を含む培地を開示している。
【0070】
別の例として、国際公開第2005086845号は、幹細胞を、細胞を未分化な状態に維持するのに十分な量の、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)ファミリータンパク質のメンバー、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリータンパク質のメンバー、又はニコチンアミド(NIC)に、所望の結果を得るのに充分な時間曝露することを含む、未分化の幹細胞を維持するための方法を開示している。
【0071】
多能性幹細胞は、好適な培養基質上に播くことができる。一実施形態では、好適な培養基質は、例えば基底膜から誘導されたもの、又は接着分子受容体−リガンド結合の一部を形成し得るものなどの細胞外マトリックス成分である。一実施形態において、好適な培養基質は、MATRIGEL(登録商標)(Becton Dickenson)である。MATRIGEL(登録商標)は、Engelbreth−Holm Swarm腫瘍細胞からの可溶性製剤であり、室温でゲル化して再構成基底膜を形成する。
【0072】
他の細胞外マトリックス成分及び成分混合物は代替物として好適である。増殖させる細胞型に応じて、これは、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、ヘパラン硫塩、及び同様物を、単独で又は様々な組み合わせで含み得る。
【0073】
多能性幹細胞は、細胞の生存、増殖、及び所望の特徴の維持を促進する培地の存在下、基質上に好適な分布にて播かれてもよい。これら全特徴は、播種分布に細心の注意を払うことから利益を得、当業者は容易に決定することができる。
【0074】
好適な培地は、以下の成分、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Gibco No.11965−092;ノックアウトダルベッコ変法イーグル培地(KO DMEM)、Gibco No.10829−018;ハムF12/50% DMEM基礎培地、200mM L−グルタミン、Gibco No.15039−027;非不可欠アミノ酸溶液、Gibco No.11140−050;β−メルカプトエタノール、Sigma No.M7522;ヒト組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、Gibco No.13256−029などから調製することができる。
【0075】
多能性幹細胞からの膵臓ホルモン産生細胞の形成
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞を作製するための方法を提供し、かかる方法は、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.多能性幹細胞を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
c.胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
d.膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、を含む。
【0076】
本発明の一態様では、膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン産生細胞である。別の態様では、膵内分泌細胞は、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞である。β細胞系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、Pdx1、並びに以下の転写因子、すなわちNGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3 β、MAFA、Pax4及びPax6のうちの少なくとも1つを発現する。本発明の一態様では、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0077】
本発明での使用に好適な多能性幹細胞としては、例えばヒト胚性幹細胞株H9(NIH code:WA09)、ヒト胚性幹細胞株H1(NIH code:WA01)、ヒト胚性幹細胞株H7(NIH code:WA07)、及びヒト胚性幹細胞株SA002(Cellartis,Sweden)が挙げられる。多能性細胞に特徴的な以下のマ−カー、すなわちABCG2、cripto、CD9、FoxD3、コネキシン43、コネキシン45、Oct4、Sox2、Nanog、hTERT、UTF−1、ZFP42、SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81のうちの少なくとも1つを発現する細胞も本発明での使用に適している。
【0078】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーは、SOX−17、GATA4、Hnf−3β、GSC、Cer1、Nodal、FGF8、Brachyury、Mix−様ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、eomesodermin(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA6、CXCR4、C−Kit、CD99、及びOTX2からなる群から選択される。本発明での使用に好適なものは、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーのうちの少なくとも1つを発現している細胞である。本発明の一態様において、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、原始線条前駆体細胞である。別の態様において、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、中内胚葉細胞である。別の態様において、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、胚体内胚葉細胞である。
【0079】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーは、Pdx1、HNF−1β、PTF1a、HNF−6、HB9及びPROX1からなる群から選択される。本発明での使用に好適なものは、膵臓内胚葉系の特徴を示す少なくとも1つのマーカーを発現している細胞である。本発明の一態様において、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉細胞である。
【0080】
膵内分泌系に特徴的なマーカーは、NGN−3、NeuroD、Islet−1、Pdx−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、及びPTF−1 αからなる群から選択される。一実施形態では、膵内分泌細胞は、以下のホルモン:インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発現することができる。本発明で使用するのに好適なものは、膵内分泌系の特徴を示すマーカーを少なくとも1つ発現する細胞である。本発明の一態様において、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵内分泌細胞である。膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン発現細胞であってもよい。代替的に、膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン分泌細胞であってもよい。
【0081】
本発明の一態様では、膵臓内分泌細胞は、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞である。β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、Pdx1、並びに以下の転写因子、すなわちNGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3 β、MAFA、Pax4及びPax6のうちの少なくとも1つを発現する。本発明の一態様では、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0082】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞の形成
多能性幹細胞は、当該技術分野のいかなる方法、又は本発明で提案されるいかなる方法によって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させてもよい。
【0083】
例えば、多能性幹細胞は、D’Amourら、Nature Biotechnology 23,1534〜1541(2005)に開示される方法に従って胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0084】
例えば、多能性幹細胞は、Shinozakiら、Development 131,1651〜1662(2004)に開示される方法に従って胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0085】
例えば、多能性幹細胞は、McLeanら、Stem Cells 25,29〜38(2007)に開示される方法に従って胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0086】
例えば、多能性幹細胞は、D’Amourら、Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006)に開示される方法に従って胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0087】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンAを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いで細胞をアクチビンA及び血清と培養し、次いで細胞をアクチビンA及び異なる濃度の血清と培養することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の一例は、Nature Biotechnology 23,1534〜1541(2005)に開示されている。
【0088】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンAを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いで細胞をアクチビンAと、別の濃度の血清の存在下で培養することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の例は、D’Amourら、Nature Biotechnology,2005に開示されている。
【0089】
例えば、多能性幹細胞は、アクチビンA及びWntリガンドを含む培地中、血清の非存在下で多能性幹細胞を培養し、次いでWntリガンドを除去し、細胞をアクチビンAと、血清の存在下で培養することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。この方法の例は、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0090】
例えば、多能性幹細胞は、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0091】
例えば、多能性幹細胞は、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0092】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第60/990,529号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0093】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,889号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0094】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,900号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0095】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,908号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0096】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願第61/076,915号に開示される方法に従って多能性幹細胞を処理することによって胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化させることができる。
【0097】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞の分化
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞の形成は、以下の特定のプロトコルの前後に、マーカーの存在に関して試験することにより決定することができる。多能性幹細胞は、一般にかかるマーカーを発現しない。したがって、多能性細胞の分化は、細胞がそれらの発現を開始した際に検出される。
【0098】
分化効率は、処理した細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞により発現されたタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に曝露することにより測定することができる。
【0099】
培養又は単離された細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当該技術分野において標準技術である。これらには、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット法、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、eds.2001 supplement)参照)、及び切片材料の免疫組織学的解析などの免疫測定法、ウェスタンブロット、及び無傷細胞内に到達出来るマーカーに関して、フローサイトメトリー解析(FACS)(例えば、Harlow及びLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1998)参照)が挙げられる。
【0100】
多能性幹細胞の特徴は当業者に周知であり、多能性幹細胞の更なる特徴は、継続して同定されている。例えば、多能性幹細胞マーカーとしては以下の:ABCG2、cripto、FoxD3、コネキシン43、コネキシン45、Oct4、Sox2、Nanog、hTERT、UTF−1、ZFP42、SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81の1種以上の発現が挙げられる。
【0101】
多能性幹細胞を本発明の方法で処理した後、処理した細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞により発現される、例えばCXCR4などのタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に曝露することにより、分化した細胞を精製することができる。
【0102】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞の形成
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、当該技術分野の任意の方法、又は本発明で提案する任意の方法により、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化され得る。
【0103】
例えば、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、D’Amourら、Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006)に開示されている方法に従って、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化され得る。
【0104】
例えば、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤KAAD−シクロパミンで処理した後、線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含有する培地を除去し、続いて細胞をレチノイン酸、線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含有する培地中で培養することにより、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に更に分化させられる。この方法の例は、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0105】
本発明の一態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は更に、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に記載の方法に従って、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をレチノイン酸及び少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子で一定時間処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと分化する。
【0106】
本発明の一態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は更に、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に記載の方法に従って、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をレチノイン酸及び少なくとも1つの線維芽細胞増殖因子で一定時間処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと分化する。
【0107】
本発明の1つの態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を米国特許出願第60/990,529号に記載の方法に従って処理することにより、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を更に分化させる。
【0108】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の検出
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーは、当業者に周知であり、膵臓内胚葉系の特徴を示す追加のマーカーが、継続して同定されている。これらのマーカーは、本発明に従って処理された細胞が分化して膵臓内胚葉系の特徴を示す性質を獲得したことを確認するために使用され得る。膵臓内胚葉系に特異的なマーカーとしては、例えば、Hlxb9、PTF−1a、PDX−1、HNF−6、HNF−1βなどの転写因子の1つ以上のものの発現が挙げられる。
【0109】
分化効率は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞により発現されたタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、処理した細胞集団を曝露することにより測定することができる。
【0110】
培養又は単離された細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当該技術分野において標準技術である。これらには、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット法、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、eds.2001 supplement)参照)、及び切片材料の免疫組織学的解析などの免疫測定法、ウェスタンブロット、及び無傷細胞内に到達出来るマーカーに関して、フローサイトメトリー解析(FACS)(例えば、Harlow及びLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1998)参照)が挙げられる。
【0111】
膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞の形成
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、当該技術分野の任意の方法、又は本発明で提案する任意の方法により、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと分化させることができる。
【0112】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、D’Amourら、Nature Biotechnology 24,1392〜1401(2006)に開示されている方法に従って、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化され得る。
【0113】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をDAPT及びエキセンディン4を含有する培地中で培養し、次にDAPT及びエキセンディン4を含有する培地を除去し、続いて細胞をエキセンディン1、IGF−1及びHGFを含有する培地中で培養することにより、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化する。この方法の例は、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0114】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をエキセンディン4を含有する培地中で培養し、次にエキセンディン4を含有する培地を除去し、続いて細胞をエキセンディン1、IGF−1及びHGFを含有する培地中で培養することにより、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化する。この方法の例は、D’Amourら、Nature Biotechnology,2006に開示されている。
【0115】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をDAPT及びエキセンディン4を含有する培地中で培養することにより、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化する。この方法の例は、D’Amourら、Nature Biotechnology,2006に開示されている。
【0116】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞をエキセンディン4を含有する培地中で培養することにより、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化する。この方法の例は、D’Amourら、Nature Biotechnology,2006に開示されている。
【0117】
本発明の一態様では、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/736,908号に開示された方法に従って、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化させる。
【0118】
本発明の一態様では、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/779,311号に開示された方法に従って、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化させる。
【0119】
本発明の一態様では、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、LifeScan,Inc.に譲渡された米国特許出願第60/953,178号に開示された方法に従って、ノッチシグナル伝達経路を阻害する因子で処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化させる。
【0120】
本発明の一態様では、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、米国特許出願第60/990,529号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞へと更に分化させる。
【0121】
本発明の一態様では、本発明は、膵内分泌系と関連付けられるマーカーの発現量を増加させる方法を提供し、この方法は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、十分な量のTGF−β受容体作動剤を含む培地で処理することで、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させることを含む。
【0122】
TGF−β受容体作動剤は、TGF−β受容体に結合し、かつこの受容体を活性化することのできる、任意の剤であり得る。一実施形態では、TGF−β受容体作動剤は、アクチビンA、アクチビンB、及びアクチビンCからなる群から選択される。
【0123】
別の実施形態では、TGF−β受容体作動剤は、アクチビンAのペプチド変異体であり得る。このようなペプチド変異体の例は、Centocor R&D,Inc.に譲渡された米国特許出願第61/076,889号に開示される。
【0124】
一実施形態では、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させるのに十分な量のアクチビンAで、約1〜約5日間にわたって処理する。あるいは、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させるのに十分な量のアクチビンAで、約3〜約5日間にわたって処理する。あるいは、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させるのに十分な量のアクチビンAで、約5日間にわたって処理する。
【0125】
別の実施形態では、TGF−β受容体作動剤は、GDF−8、GDF 11、及びGDF−15からなる群から選択される。一実施形態では、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞は、GDF−8、GDF 11、及びGDF−15、並びに少なくとも1種の他の因子からなる群から選択されるTGF−β受容体作動剤で処理される。一実施形態では、少なくとも1種の他の因子は環式アニリン−ピリジノトリアジン化合物である。このような環式アニリン−ピリジノトリアジン化合物の例は、米国特許出願番号第61/076,900号(Centocor R&D,Incに譲渡)に記載される。別の実施形態では、少なくとも1種の他の因子はアニリン−ピリジノトリアジン化合物である。このようなアニリン−ピリジノトリアジン化合物は、米国特許出願番号第61/076,908号(Centocor R&D,Inc.に譲渡)に記載される。別の実施形態では、少なくとも1種の他の因子は、米国特許出願番号第61/076,915号(Centocor R&D,Inc.に譲渡)に記載される化合物である。
【0126】
本発明の一態様では、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞は続いて濃縮される。濃縮工程は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、TGF−β受容体作動剤で処理する前に実施され得る。あるいは濃縮工程は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、TGF−β受容体作動剤で処理した後に実施され得る。
【0127】
一実施形態では、濃縮は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞の懸濁液を得て、40μmセルストレイナーで濾過することにより実施される。
【0128】
膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞の検出
膵内分泌系に特徴的なマーカーは当業者に周知であり、膵内分泌系の特徴を示す追加のマーカーが継続して同定されている。これらのマーカーは、本発明に従って処理された細胞が分化して膵内分泌系の特徴を示す性質を獲得したことを確認するために使用され得る。膵臓内分泌系に特異的なマーカーとしては、例えば、NGN−3、ニューロD(NeuroD)、Islet−1などの転写因子の1つ以上のものの発現が挙げられる。
【0129】
β細胞系の細胞に特徴的なマーカーは当業者に周知であり、β細胞系の細胞の特徴を示す追加のマーカーが継続して同定されている。これらのマーカーは、本発明に従って処理された細胞が分化して、β−細胞系の特徴を示す性質を獲得したことを確認するために使用することができる。β細胞系に特異的な特徴としては、1つ以上の、中でも例えば、Pdx1(膵臓及び十二指腸ホメオボックス遺伝子−1)、Nkx2.2、Nkx6.1、Isl1、Pax6、Pax4、NeuroD、Hnf1b、Hnf−6、Hnf−3β、及びMafAなどの転写因子の発現が挙げられる。これらの転写因子は、内分泌細胞の同定について当該技術分野で十分に確立されている。例えば、Edlund(Nature Reviews Genetics 3:524〜632(2002年))を参照されたい。
【0130】
分化効率は、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞により発現されたタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、被処理細胞集団を曝露することにより測定することができる。あるいは分化効率は、β細胞系に特徴的なマーカーを発現している細胞により発現されたタンパク質マーカーを特異的に認識する薬剤(抗体など)に、被処理細胞集団を曝露することにより測定することができる。
【0131】
培養又は単離された細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当該技術分野において標準技術である。これらには、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット法、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、eds.2001 supplement)参照)、及び切片材料の免疫組織学的解析などの免疫測定法、ウェスタンブロット、及び無傷細胞内に到達出来るマーカーに関して、フローサイトメトリー解析(FACS)(例えば、Harlow及びLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1998)参照)が挙げられる。
【0132】
本発明の一態様では、分化効率は、処理後の所定の細胞培養物中のインスリン陽性細胞の百分率を測定することによって求められる。一実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約100%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約90%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約80%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約70%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約60%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約50%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約40%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約30%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約20%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約10%のインスリン陽性細胞を生成する。別の実施形態では、本発明の方法は、所定の培養物中で約5%のインスリン陽性細胞を生成する。
【0133】
本発明の一態様では、分化効率は、グルコース刺激によるインスリン分泌を、細胞が放出するC−ペプチドの量を測定することで検出し、測定することにより求められる。一実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約1000ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約900ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約800ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約700ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約600ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約500ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約400ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約500ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約400ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約300ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約200ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約100ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約90ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約80ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約70ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約60ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約50ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約40ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約30ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約20ngのC−ペプチドを産生する。別の実施形態では、本発明の方法により生成される細胞は、DNA 1pg当たり約10ngのC−ペプチドを産生する。
【0134】
治療
一態様では、本発明は、I型糖尿病に罹患しているかあるいはI型糖尿病を発症するリスクを有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、多能性幹細胞を培養し、この多能性幹細胞をインビトロでβ細胞系へと分化させ、β細胞系の細胞を患者に埋め込むことを含む。
【0135】
更に別の態様では、本発明は、II型糖尿病に罹患しているかあるいはII型糖尿病を発症するリスクを有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、多能性幹細胞を培養し、培養した多能性幹細胞をインビトロでβ細胞系に分化させ、β細胞系の細胞を患者に埋め込むことを含む。
【0136】
適切であるならば、移植した細胞の生存及び機能を亢進する医薬品又は生理活性物質で患者を更に処置してもよい。こうした薬剤としては、例えば、特にインスリン、TGF−β1、2及び3などのTGF−βファミリーのメンバー、骨形態形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12、及び−13)、繊維芽細胞増殖因子−1及び−2、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板濃縮血漿、インスリン様増殖因子(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−7、−8、−10、−15)、血管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンなどが挙げられる。他の医薬化合物としては例えば、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド−I(GLP−1)及びII、GLP−1及び2模倣体(mimetibody)、エキセンディン−4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、例えば米国特許出願公開第2004/0209901号及び同第2004/0132729号に開示される化合物のようなMAPK阻害剤などが挙げられる。
【0137】
多能性幹細胞は、レシピエントに移植する前にインスリン産生細胞に分化させてもよい。具体的な実施形態では、多能性幹細胞は、レシピエントに移植する前にβ細胞へと完全に分化させる。あるいは多能性幹細胞は、未分化又は一部が分化した状態でレシピエントに移植してもよい。更なる分化はレシピエント内で行われ得る。
【0138】
胚体内胚葉細胞、又は代替的には膵臓内胚葉細胞、又は代替的にはβ細胞を、分散した細胞として埋め込んでもよく、又は肝門静脈内に注入され得るクラスターとして編成してもよい。あるいは細胞は、生体適合性の分解性ポリマー支持体、多孔性の非分解性デバイス内に提供されてもよく、又は宿主免疫応答から保護されるよう封入されてもよい。細胞は、レシピエント内の適切な部位内に埋め込まれてもよい。埋め込み部位としては、例えば肝臓、天然の膵臓、腎被膜下空間、網、腹膜、漿膜下空間、腸、胃、又は皮下ポケットが挙げられる。
【0139】
埋め込まれた細胞の更なる分化、生存又は活性を向上するために、増殖因子、抗酸化剤又は抗炎症剤などの追加の因子を、細胞の投与前に、投与と同時に、又は投与後に投与してもよい。所定の実施形態において、増殖因子は、インビボで、投与された細胞を分化させるよう使用される。これらの因子は、内在性細胞により分泌され、投与された細胞にその場で(in situ)で曝露されてもよい。埋め込まれた細胞には、当該技術分野で既知の内因性の及び外因性の増殖因子の任意の組み合わせにより、分化を誘発させることもできる。
【0140】
埋め込みに使用する細胞の量は、患者の状態及び治療に対する応答を含む、多数の様々な要因に基づいて当業者により決定され得る。
【0141】
一態様では、本発明は糖尿病に罹患しているかあるいは糖尿病を発症するリスクを有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、多能性幹細胞を培養し、培養した細胞をインビトロでβ細胞系に分化させ、この細胞を3次元支持体に埋め込むことを含む。細胞は、患者に埋め込む前に、インビトロでこの支持体上に維持してもよい。あるいは細胞を含む支持体を、インビトロで更に培養することなく直接患者に埋め込んでもよい。支持体は、場合により、埋め込まれた細胞の生存及び機能を亢進する少なくとも1つの医薬品を組み込んでもよい。
【0142】
本発明の目的のために使用するのに好適な支持体材料には、組織修復に有用な組織鋳型、導管、バリア及びリザーバが挙げられる。より詳細には、発泡体、スポンジ、ゲル、ヒドロゲル、織物、及び不織構造の形態を有する合成及び天然材料であって、インビトロ及びインビボで使用されて、生物組織を再構築又は再生し、また走化性薬剤を送達して組織増殖を誘発する材料が、本発明の方法の実施における使用に適切である。例えば、米国特許第5,770,417号、同第6,022,743号、同第5,567,612号、同第5,759,830号、同第6,626,950号、同第6,534,084号、同第6,306,424号、同第6,365,149号、同第6,599,323号、同第6,656,488号、米国特許出願公開第2004/0062753 A1号、米国特許第4,557,264号及び同第6,333,029号に開示されている材料を参照されたい。
【0143】
医薬品が組み込まれた支持体を形成するために、支持体を形成するのに先立ち、薬剤をポリマー溶液と混合することもできる。あるいは加工された支持体上に、医薬品を好ましくは医薬担体の存在下で被覆してもよい。医薬品は、液体、超微粒子状固体、又は任意の他の適切な物理的形態として存在し得る。あるいは医薬品の放出速度を変更するために、支持体に賦形剤を加えてもよい。別の実施形態では、抗炎症性化合物である少なくとも1種の医薬化合物(例えば米国特許第6,509,369号に開示される化合物)を支持体に組み込む。
【0144】
支持体には、抗アポトーシス化合物である少なくとも1種の医薬化合物、例えば米国特許第6,793,945号に開示されている化合物を組み込んでもよい。
【0145】
支持体には、線維症阻害剤である少なくとも1種の医薬化合物、例えば米国特許第6,331,298号に開示されている化合物も組み込まれ得る。
【0146】
支持体には、血管新生を促進させることができる少なくとも1種の医薬化合物、例えば米国特許出願公開第2004/0220393号及び同第2004/0209901号に開示されている化合物も組み込まれ得る。
【0147】
支持体には、免疫抑制化合物である少なくとも1種の医薬化合物、例えば、米国特許出願公開第2004/0171623号に開示されている化合物も組み込まれ得る。
【0148】
例えば支持体には、特に、TGF−β1、2、及び3を含むTGF−βファミリーのメンバー、骨形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12、及び−13)、繊維芽細胞増殖因子−1及び−2、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、多血小板血漿、インスリン増殖因子(IGF−I、II)、増殖分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、−15)、血管内皮増殖因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンなどの増殖因子である、少なくとも1種の医薬化合物も組み込まれ得る。他の医薬化合物としては、例えばニコチンアミド、低酸素誘導因子1−α、グルカゴン様ペプチド−I(GLP−I)、GLP−1及びGLP−2疑似体、並びにII、エキセンディン4、nodal、ノギン、NGF、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、テネイシン−C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、カテリシジン、デフェンシン、ラミニン、フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの接着性細胞外マトリックスタンパク質の細胞−及びヘパリン−結合ドメインを含む生物ペプチド、例えば米国特許出願公開第2004/0209901号及び同第2004/0132729号に開示されている化合物などのMAPK阻害剤を挙げることができる。
【0149】
スキャフォールド内への本発明の細胞の組み込みは、細胞をスキャフォールド上に単に沈着させることにより達成できる。細胞は、単純拡散によりスキャフォールド内に入れることができる(J.Pediatr.Surg.23(1 Pt2):3〜9(1988))。細胞播種の効率を向上させるために、いくつかの他の手法が開発されている。例えば、軟骨細胞をポリグリコール酸スキャフォールド上に播種する際に、スピナーフラスコが使用されている(Biotechnol.Prog.14(2):193〜202(1998))。細胞播種のための他の手法は遠心法の使用であり、これは播種する細胞に与えるストレスを最小にし、かつ播種効率を高める。例えば、Yangらは、Centrifugational Cell Immobilization(CCI)と呼ばれる、細胞播種法を開発した(J.Biomed.Mater.Res.55(3):379〜86(2001))。
【0150】
以下の実施例により本発明を更に例示するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0151】
(実施例1)
ウシ胎児血清の非存在下での、ヒト胚性幹細胞の細胞株H1の膵内分泌細胞への分化
継代数52のヒト胚性幹細胞株H1の細胞をMATRIGEL(商標)(1:30希釈)をコートしたディッシュ上で培養し、2% BSA(カタログ# 152401,MP Biomedical,Ohio)、100ng/mLのアクチビンA(R&D Systems,MN)、20ng/mLのWNT−3a(カタログ# 1324−WN−002,R&D Systems,MN)、及び8ng/mLのbFGF(カタログ# 100−18B,PeproTech,NJ)を加えたRPMI培地に1日にわたって曝露した後、2% BSA、100ng/mLのアクチビンA、及び8ng/mLのbFGFを加えたRPMI培地で更に2日間にわたって処理した。次いで培養物をDMEM/F12+2% BSA+50ng/mLのFGF7+0.25μMシクロパミン−KAAD(#239804,Calbiochem,CA)で2日間にわたって処理し、次いでDMEM/F12+1% B27(Invitrogen,CA)+50ng/mLのFGF7+0.25μMシクロパミン−KAAD+2μMレチノイン酸(RA)(Sigma,MO)+100ng/mLノギン(R&D Systems,MN)中で4日間にわたってインキュベートした。
【0152】
DMEM/F12+1% B27(Invitrogen,CA)+100ng/mLノギン+1μMのDAPT(γセクレターゼ阻害剤)(カタログ# 565784,Calbiochem,CA)+1μMのALK5阻害剤II(カタログ# 616452,Calbiochem,Ca)+100ng/mLのネトリン−4(R&D Systems,MN)中で3日間にわたってインキュベートし、更にDMEM/F12+1% B27(Invitrogen,CA)+1μMのALK5阻害剤II(Calbiochem,Ca)中で7日間にわたってインキュベートすることにより、細胞を膵内分泌細胞へと分化させた。内分泌腺培養物を更に成熟させるために、DMEM/F12+1% B27(Invitrogen,CA)での7日間の処理からなる最後のステージを加えた。最後のステージを除き、他のすべてのステージでは毎日培地を交換した。この手順の概要を図1に示す。各ステージにおいて血球計数器を用いて細胞数を計算し、PCR分析用にRNAを採取した。試料はすべて3つ組複製で採取した。
【0153】
図2のパネルa及びbは、FACS及びリアルタイムPCRデータにより測定されたものとして、ステージ1に対応する3日目の時点での細胞中の、CXCR4発現について示す。未分化のH1 ES細胞に対する発現の倍数変化が示されている。
【0154】
(実施例2)
ステージ6の培養物へのアクチビンAの添加は、膵内分泌マーカーの発現量を有意に増加させた
継代数43のヒト胚性幹細胞株H1細胞をMATRIGEL(商標)(1:30希釈)コートディッシュ上で培養し、実施例1に記載の方法に従って膵内分泌細胞へと分化させた。ステージ6で、一部の培養物を10ng/mLのアクチビンA(R&D Systems,MN)で7日間にわたって処理した。7日目に、細胞を室温で5分間にわたって1Xアキュターゼ(Sigma,MO)で処理した後、続いてアキュターゼは除去してDMEM/12+1% B27を加えた。接着した細胞をセルスクレーパーを用いて取り外し、穏やかに再懸濁し、40μmのセルストレイナーで濾過した。ストレイナーに保持されたフロースルーと細胞を取り外し、サンプルをPCRとジチゾン染色のために回収した。ジチゾン(DTZ)は、島に存在することが示されてきた亜鉛へと、選択的に結合する色素である。図3のパネルa〜cは、40μmセルストレイナーを用いて分離する前、及び分離した後にDTZ染色した培養物を示す。40μmを超えるクラスターの有意な(およそ80%)部分がDTZに対して陽性に染色された。これは内分泌腺に富むクラスターを濃縮する、迅速で簡単な方法として提供される。図4のパネルa〜fは、ステージ6で+/−10ng/mLのアクチビンAで処理し、続いて40μmのフィルタを用いて濃縮した細胞の、遺伝子発現プロファイルを示す。ステージ6へのアクチビンAの添加は、全ての重要な膵内分泌マーカーの発現を、有意に増幅させた。
【0155】
本明細書を通して引用された刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適切に解釈される以下の特許請求の範囲によって定義されるものである点は認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵内分泌系と関連付けられるマーカーの発現量を増加させる方法であって、該方法は、膵内分泌系に関連付けられるマーカーを発現している細胞を、十分な量のTGF−β受容体作動剤を含む培地で処理することで、膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させることを含む、方法。
【請求項2】
前記TGF−β受容体作動剤が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンAのペプチド変異体、GDF−8、GDF−11及びGDF−15からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膵内分泌系に関連付けられるマーカーを発現している細胞が濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多能性幹細胞を分化させるための方法であって、
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.多能性幹細胞を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、
d.前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞に分化させる工程と、を含む、方法。
【請求項5】
前記膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現している細胞を、十分な量のTGF−β受容体作動剤を含む培地で処理することで、前記膵内分泌系に関連付けられるマーカーの発現量を増加させることにより、前記膵内分泌系に特徴的なマーカーの発現量が増加する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記TGF−β受容体作動剤が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンAのペプチド変異体、GDF−8、GDF−11及びGDF−15からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記膵内分泌系に関連付けられるマーカーを発現している細胞が濃縮される、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公表番号】特表2012−507289(P2012−507289A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534631(P2011−534631)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061635
【国際公開番号】WO2010/051213
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】