説明

ヒトENaCを発現する卵母細胞を用いた改良された電気生理学的アッセイ及び膜電位リポーター色素を用いたアッセイにおけるENaC相乗剤の効果を向上させるためのフェナミルの使用

一態様では、本発明は、ヒト腎臓c−DNAライブラリからクローニングし、ヒト味覚組織を含めた他の組織内でも発現されるヒト上皮ナトリウムチャネル(hENaC)のプロファイリング及びスクリーニングを行うための、哺乳動物細胞に基づいた高スループットアッセイに関する。本発明はさらに、ヒトENaC変調剤、好ましくはENaC相乗剤を同定するための、両生類卵母細胞に基づいた中スループット電気生理学的アッセイに関する。細胞に基づいたENaCアッセイにおいてENaCの機能を調節する化合物は、ヒトにおいて鹹味に影響を与えると予測される。本明細書中に記載したアッセイは、既存の細胞発現系よりも優れた利点を有する。哺乳動物細胞の場合、このようなアッセイは標準の96又は384ウェル培養プレート中で高スループット様式で行うことができ、ENaCの機能を阻害する化合物、好ましくはフェナミルなどのアミロライド誘導体を用いることにより増強されたアッセイ結果が得られる。本発明の卵母細胞電気生理学的アッセイ(二電極の電位固定技法)の場合、これらのアッセイによりヒトENaCを特異的に調節する化合物の同定が容易になる。本発明のアッセイは、hENaCの機能を促進(亢進)又は阻害する化合物の検出に有用な強固なスクリーニングを提供する。したがって、ヒトENaCチャネルの活性を亢進又はブロックする化合物はヒトにおいて鹹味を調節するはずである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべてがその全体で本明細書中に参考として組み込まれている2003年7月10日に出願した米国仮出願第60/485,745号、2001年5月1日に出願した米国仮特許出願第60/287,413号、2002年4月29日に出願した米国特許出願第10/133,573号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ENaCの機能を調節する化合物、好ましくはENaC相乗剤をスクリーニングする細胞に基づいたアッセイの有効性が、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する化合物、好ましくはフェナミルなどのアミロライド誘導体をさらに用いることによって向上するという発見を含む。本発明はさらに、機能的ヒトENaCナトリウムチャネルを発現する卵母細胞、好ましくはカエル卵母細胞を用いてヒトENaC変調剤を同定する、改良された電気生理学的アッセイに関する。
【0003】
本発明は部分的に、味覚調節性化合物のプロファイリング、スクリーニング、及び同定を行うための、アミロライド感受性のナトリウムチャネルを発現する組換え宿主細胞を用いた新規の細胞に基づいたアッセイに関する。より詳細には、本発明は、機能的ヒト上皮ナトリウムチャネル(hENaC)、好ましくは両生類卵母細胞又は哺乳動物細胞を発現する試験細胞を利用するアッセイ、及びこれらの試験細胞を、hENaCの機能を亢進若しくはブロックする化合物を同定するための高スルーアウト又は中程度スループットの細胞に基づいたアッセイ、好ましくは電気生理学的アッセイの細胞で用いることに関する。
【背景技術】
【0004】
アミロライド感受性の上皮ナトリウムチャネル(ENaC)は、舌の味蕾細胞の頂端膜を通るナトリウムの流入を媒介する(Heck他、Science(1984)223:403〜405)。ナトリウムの輸送に関与するイオンチャネルのENaC/デジェネリン(degenerin)スーパーファミリーのメンバーであるENaCは、味覚組織内の茸状乳頭、葉状乳頭、及び有郭乳頭並びに舌上皮中でRNAレベル及びタンパク質レベルのどちらにおいても発現される3つの部分的に相同的なα、β、及びγサブユニットからなる(Li他、Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1814〜1818;Kretz他、J.Histochem.Cytochem.(1999)47(1):51〜64;Lin他、J.Comp.Neurol.(1999)405:406〜420;Xiao−Jiang他、Mol.Pharmacol.(1995)47:1133〜1140)。
【0005】
アミロライド感受性の上皮ナトリウムチャネル(ENaC)のチャネルサブユニットをコードしている相補的DNA(cDNA)が腎臓細胞から単離され、哺乳動物細胞系中で発現されている。この系で発現されるチャネルは、遠位尿細管ナトリウムチャネルに類似した特性、すなわち高いナトリウム選択性、低い伝導率、及びアミロライド感受性を有することが示されている。天然に存在するENaCチャネルの一形態は、類似した構造の3つのサブユニット、すなわちα(OMIM登録番号600228)、β(OMIM登録番号600760)、及びγ(OMIM登録番号600761)からなる。サブユニットのそれぞれが2つの膜貫通ドメイン、細胞内アミノ末端及びカルボキシ末端、並びにシステインに富んだ細胞外ドメインを含むと予測されている。3つのサブユニットは32〜37%のアミノ酸配列の同一性を共有する。α−ENaCの選択的スプライシングされた形態も同定されていることによってアミロライド感受性のナトリウムチャネルのαサブユニットの不均一性が示され、これは、チャネルの精製中に複数種のタンパク質が観察された原因であるかもしれない(本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,693,756号参照)。
【0006】
ENaCナトリウムチャネルの機能の阻害剤であるアミロライドは、数々の非哺乳動物種及びヒトを含めた哺乳動物種において塩化ナトリウムに対する味覚応答を減衰させることが知られている(Halpern、Neuroscience and Behavior Reviews(1998)23:5〜47及びその中に引用されたすべての参考文献;Liu他、Neuron(2003)39:133〜146;Zhao他、Cell(2003)115:255〜266)。ヒトにおいては、アミロライドは、ENaCの機能を特異的に阻害する濃度で用いた場合に塩化ナトリウムの強度を15〜20%低下させることが報告されている(Halpern、Neurosciences and Behavior Reviews(1998)23:5〜47及びその中に引用されたすべての参考文献;Feldman他、J.Neurophysiol.(2003)90(3):2060〜2064)。したがって、ENaCチャネルを通るナトリウムイオンの輸送を増加させる化合物は、一般的な鹹味相乗剤として機能し、本発明者の以前の特許出願(国際公開公報WO02/087306A2号)で提案したようにヒトの鹹味知覚を増強させ得る。さらに、発表されている電気生理学的データ及びヒトENaCが味蕾細胞中で発現されるという発見に基づき、ENaCに媒介される鹹味伝達のモデルが構築された。したがって、鹹味知覚を刺激又はブロックする物質の同定におけるENaCの使用が提案されている(上記米国特許第5,693,756号及び国際公開公報WO02/087306A2号参照)。
【0007】
ENaCの生理的な特徴づけに一般に用いられている細胞に基づいた機能的な発現系は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞及び培養哺乳動物細胞系である。卵母細胞系は、複数のmRNAの直接注入を可能にし、高レベルのタンパク質発現をもたらし、ENaCの過剰発現に特有の有害効果に順応することができるという点で、哺乳動物細胞よりも優れた利点を有する。しかし、この系の欠点は、アフリカツメガエル卵母細胞中の電気生理学的記録は多数の化合物のスクリーニングでは扱いにくいこと、及びアフリカツメガエル卵母細胞は両生類であり哺乳動物系ではないことである。チャネルを安定して発現している哺乳動物細胞系(HEK293及びMDCK)におけるげっ歯類ENaCの電気生理学的特性の研究が文献に報告されている。これらの研究では哺乳動物細胞系が用いられているが、チャネルの機能は時間のかかる電気生理学的技法を用いてアッセイが行われている。このような手法は、化合物の高スループットスクリーニングに好適でない。したがって、当分野では高スループットスクリーニングに順応性のある鹹味相乗剤の同定方法の必要性が依然として残っている。
【0008】
鹹味相乗剤の開発は、数々の以前の科学出版物及び特許の焦点であった。しかし、鹹味知覚に関与するENaCナトリウムチャネルの直接の調節は、ヒトの鹹味を増大させる新規且つ独特の手法である。以前に報告されている塩相乗化合物の一部の例及びそれらの特性を以下に記載する。
【0009】
一部のタンパク質分解したタンパク質、ペプチド、アミノ酸、及びアミノ酸エステルが塩相乗剤として機能することが報告されている(Tamura他、Argic.Biol.Chem.(1989)53(6):1625〜1633、1989;米国特許第5,711,985号)。しかし、これらの薬剤は高濃度、すなわち30〜60mMを必要とし、また、鹹味を正に調節するためには塩酸を加えなければならない。さらに、これらの化合物を合成することはコストがかかり且つ困難であるので、それらを一般大衆の塩相乗剤として大規模で商用に用いるには手が届かない。
【0010】
連邦政府によってGRAS(一般に安全と認められる)化合物として分類されたアンモニウム塩である塩化コリンは、ヒト及びげっ歯類において塩相乗剤として機能すると報告されている。ヒトでは、塩化コリンは薄い塩溶液(50mM未満のNaCl)の塩味を2倍増大させ、調理したエンドウ豆及びCambellの減塩トマトスープの選好率又は嗜好率を増加させると報告されている(Locke他、Physiology&Behavior(1994)55(6):1039〜1046;米国特許第5,260,091号;米国特許第5,260,049号)。しかし、上述のペプチド及びアミノ酸と同様に、塩化コリンが鹹味を増大させるためには顕著な濃度が必要である(mM範囲)。
【0011】
ENaCの機能をブロックしないが、代わりにナトリウム−陽イオンの交換をブロックするアミロライドの誘導体、並びにIAA−94及びアントラニル酸などの塩素イオンチャネルの遮断剤は、げっ歯類のモデル系において、塩消費量の間接的な測定値である流体の摂取量を増加させることが報告されている(米国特許第5,260,091号)。しかし、ヒトの塩相乗剤としてのこれらの薬剤の有用性は報告されていない。
【0012】
塩化セチルピリジウニウム(CPC)は、低濃度(高いμM範囲)で用いた場合に、ラットにおいて塩に対するアミロライド非感受性の神経応答を増大させ、ヒトにおいてCambellの減塩トマトスープの塩味を50%増大させることが報告されている(DeSimone他、J.Neurphysiol.(2001)86:2638〜2641;米国特許第4,997,672号)。しかし、CPCは洗剤であり、その構造に基づくと細胞の脂質二重層の間に介入する可能性があり、したがって脂質の恒常性を乱すことによって鹹味細胞を非特異的に活性化する。実際、高濃度のCPC(低いmM範囲)、すなわち臨界ミセル濃度より高い濃度では、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化アンモニウムを含めた数々の塩気のある化合物に対するラットの神経応答が実際に阻害され、報告されている観察されたCPC効果が非特異的である可能性が高いことがさらに実証されている。
【0013】
2つのグルコース分子からなる二糖であるトレハロースは、塩化ナトリウム溶液の塩味を1.2〜2倍増大させることが報告されている(米国特許第6,159,529号)。ペプチド及び塩化コリンと同様に、塩味を増大させるためにはこの糖が高レベル(1.5〜12%)で必要であり、これにより、観察された効果は非特異的であり、高浸透圧による味覚細胞の体積変化(細胞萎縮)が原因であるかもしれないことが示唆される。さらに、鹹味を増大させ、甘味、苦味、酸味、及び旨味を含めた他の味覚を調節しないというトレハロース及び他の前述の塩相乗剤の特異性は扱われていなかった。
【0014】
加熱した糖/アミノ酸混合物の副産物として形成される、アミノ酸アラニンの誘導体であるアラピリデインは、塩化ナトリウムが検出される閾値を5倍低下させることが報告されている(Soldo他、Chemical Senses(2003)28:371〜379、2003;Ottinger他、J.Agric Food Chem(2003)51:1035〜1041、2003)。しかし、アラピリデインは一般的な味覚相乗剤として機能し、塩の検出閾値と共に甘味及び旨味の検出閾値も低下させることが報告されている。さらに、より高い、より生理的に関連性のある塩濃度における鹹味に対するアラピリデインの効果は開示されていなかった。したがって、アラピリデインの効果は、閾値検出レベル付近の低い塩濃度の味覚でのみ表面化するかもしれない。
【0015】
抗生物質ノボビオシンも、ラットにおいて塩化ナトリウムに対する神経応答を亢進させることが報告されている(Felgin他、Am.J.Physiol.(1994)266:C1165〜C1172)。しかし、不利なことに、ノボビオシンは脂質二重層内でアミロライド非感受性の陽イオン選択的イオンチャネルを形成することが報告されており、これにより、この薬剤は細胞膜に穴を開け、おそらくCPCと同様に、味覚細胞の活性を非特異的に増大させることが示唆される。ヒトの鹹味知覚に対するノボビオシンの効果は報告されていない。
【0016】
アドレナリン受容体及びムスカリン受容体を調節する抗線維化薬であるトシル酸ブレチリウムは、甘味、酸味、又は苦味に影響を与えることなしに、げっ歯類及びヒトにおいて鹹味を特異的に増強させることが報告されている(Schiffman他、Physiology&Behavior(1986)36:1129〜1137)。しかし、鹹味を正に調節するために必要な比較的高い濃度(mM範囲)とは別に、トシル酸ブレチリウムの顕著な不利点は、この化合物が心臓病患者を治療するために用いる治療剤であることである。したがって、この化合物は一般大衆での使用に不適切である。
【0017】
ATP結合カセット(ABC)タンパク質スーパーファミリーのメンバーの阻害剤である、嚢胞性線維症の膜コンダクタンス制御因子及びスルホニル尿素受容体を含めたグリベンクラミドは、個々のENaCチャネルの開確率を倍増させることによってアミロライド感受性のENaCナトリウムの電流を増加させることが報告されている(Chraibi他、The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics(1999)290:341〜347、1999;Schnizler他、Biochemica et Biophysica Acta(2003)1609;170〜176)。しかし、グリベンクラミドはABCタンパク質の機能を調節するので、グリベンクラミドの効果はABCタンパク質によるENaC活性の間接的な調節によるものであり、ENaCチャネルの機能の直接的な調節に起因しないという可能性がある。さらに、グリベンクラミドはヒトの鹹味知覚を亢進することが実証されておらず、またグリベンクラミドは鹹味相乗剤として提案されてもいない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、前述事項に基づいて、ENaC及び鹹味を特異的に調節する化合物を同定するための改良された方法が必要であり、また改良された鹹味変調剤も必要であることが明らかである。好ましくは、このような方法は、高スループット又は中スループットの方法を含み、ヒトENaCの機能に直接的な効果を有する化合物のクリーニングを行う。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ENaCを調節する化合物を同定するためのアッセイに関する従来技術の問題を取り除く。具体的には、本発明は、ENaCを調節し、したがって鹹味を調節する化合物を同定するために、機能的ヒトENaCを発現する組換え宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞又は卵母細胞を利用する、細胞に基づいたアッセイを提供する。より具体的には、本発明は、ナトリウムチャネル、より詳細にはアミロライド感受性上皮ナトリウムチャネル(ENaC)のプロファイリング及びスクリーニングを行うための卵母細胞及び哺乳動物細胞に基づいたアッセイ、好ましくは高スループット又は中スループットのアッセイであって、ENaCの機能を部分的に又は完全に阻害する化合物、好ましくはアミロライド又はフェナミルなどのアミロライド誘導体を任意選択で添加することを含み得るアッセイを提供する。特にフェナミルを用いることにより、アッセイ、好ましくはENaCの機能を調節する(亢進又は阻害する)化合物を同定するための高スループット又は中スループットアッセイ中のシグナル強度が増大されることが見出されている。このような方法は、ENaCの活性を機能的に特徴づけるために、又は鹹味知覚の亢進若しくはブロッキングのどちらかを行う化合物(本明細書中で鹹味変調剤と呼ぶ)を同定するために用い得る。
【0020】
したがって、第1の態様では、本発明は、組換え宿主細胞、好ましくは機能的hENaCを発現する哺乳動物細胞又は両生類卵母細胞を提供する。好ましい実施形態では、これらの細胞はhENaCの3つのサブユニットすべて(α若しくはΔ、β及びγ)を一過的に又は安定して発現するか、或いは1つ若しくは複数のサブユニット又はその機能的なキメラ、変異体若しくはその断片を一過的に又は安定して発現する。本発明での使用に適した哺乳動物細胞は、例としてCOS、CHO、MDCK、HEK293、HEK293T、NIH3T3、Swiss3T3及びBHK細胞を含めた機能的hENaCを発現する能力を有する、任意の哺乳動物細胞を包含する。しかし、好ましい実施形態では、本発明は、機能的hENaCを発現するHEK293T細胞を提供する。本発明において有用な卵母細胞は、好ましくは両生類卵母細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞を含む。
【0021】
第2の態様では、本発明は、例えば、ENaCの機能を亢進又はブロックする有機小分子、抗体、ペプチド、環状ペプチド、脂質及び核酸を含めた化合物を同定するための、機能的ENaC、好ましくはhENaCを発現する哺乳動物細胞又は両生類卵母細胞を利用した、細胞に基づいたアッセイを提供する。好ましくは、これらのアッセイは、1つ又は複数の推定されるENaC調節性化合物の使用を加える前に、既知のENaC阻害剤をENaCの機能を部分的に阻害する濃度で加えることを含む。
【0022】
好ましくは、このアッセイは、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の推定される変調剤のプロファイリング及びスクリーニングを行うための、哺乳動物又は卵母細胞に基づいたアッセイ、好ましくは高スループット又は中スループットのアッセイであって、(i)膜電位蛍光色素又はナトリウム感受性の蛍光色素を装着(load)させたENaCを発現する試験細胞と少なくとも1つの推定される変調剤化合物とを、ナトリウムを含む緩衝液の存在下で接触させること、(ii)前記少なくとも1つの推定される変調剤化合物を加える前に、前記宿主細胞とENaCの機能を阻害することが知られている化合物、好ましくはフェナミルなどのアミロライド誘導体とを、ENaCの機能が少なくとも部分的に阻害される濃度で接触させること、及び(iii)ナトリウム単独と接触させた細胞における膜電位色素又はナトリウム感受性色素の蛍光の変化と比較した、既知のENaC阻害剤化合物を加えたあとに推定される変調剤+ナトリウムと接触させた細胞中における膜電位色素又はナトリウム感受性色素の蛍光の変化を監視して、ENaCの調節の程度を決定することを含むアッセイを含む。
【0023】
本発明の別の好ましい態様では、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の活性を監視する方法であって、(i)試験細胞、例えば機能的ENaCを形質移入した又は形質転換させた哺乳動物細胞を提供すること、(ii)その試験細胞をマルチウェルプレートのウェルに播種し、少なくとも約70%コンフルエントに達するのに十分な時間インキュベーションを行うこと、(iii)マルチウェルプレートのウェル内で、膜電位蛍光色素又はナトリウム感受性の蛍光色素を用いて播種した試験細胞に色素を装着させること、(iv)色素を装着させた試験細胞と少なくとも1つの推定される調節性化合物とをマルチウェルプレートのウェル内で接触させること、(v)前記少なくとも1つの推定される調節性化合物を加える前に、前記宿主細胞とENaCの機能を部分的に阻害する化合物、例えばフェナミルなどのアミロライド誘導体とをさらに接触させること、及び(vi)蛍光プレートリーダーを用いて蛍光の変化をすべて監視することを含む方法が提供される。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態では、(i)適切な細胞、例えばHEK293T細胞又は別の哺乳動物細胞系を、機能的ヒトENaCを産生させるために必要なサブユニットをコードしているDNA配列を用いて形質転換、形質移入すること、(ii)細胞をマルチウェルプレート、例えば384ウェルプレートに播種し、好ましくは約80%コンフルエントまでにすること、(iii)播種した試験細胞にCC2−DMPVE又はDiSBAC2(3)などの膜電位感受性色素を装着させること、(iv)その後、色素を装着させた細胞を少なくとも1つの推定されるENaC調節性化合物と接触させること、(v)色素を装着させた細胞を、好ましくは、前記少なくとも1つのENaC調節性化合物と接触させる前に、少なくとも1つの既知のENaC阻害剤の量と、少なくとも部分的なENaC阻害をもたらす濃度でさらに接触させること、及び(iv)電位強度プレートリーダー、例えばVIPRII(Aurora Biosciences)を用いて細胞の蛍光の変化を監視することを行う。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、鹹味調節性化合物を同定する方法であって、(i)機能的ヒトENaCを用いて形質移入、形質転換させた試験細胞を提供すること、(ii)試験細胞をマルチウェルプレートのウェル内に播種し、少なくとも約70%コンフルエント、より好ましくは約80%コンフルエントに達するのに十分な時間インキュベーションを行うこと、(iii)マルチウェルプレートのウェル内で膜電位色素を用いて播種した試験細胞に色素を装着させること、(iv)マルチウェルプレートのウェル内で色素を装着させた試験細胞と少なくとも1つの推定される調節性化合物とを接触させること、(v)好ましくは前記少なくとも1つの推定される調節性化合物を加える前に、色素を装着させた試験細胞と既知のENaC阻害剤化合物、例えばフェナミルなどのアミロライド誘導体とを、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する濃度でさらに接触させること、(vi)蛍光プレートリーダーを用いて変調剤/ENaCの相互作用による膜電位色素の蛍光の変化をすべて監視すること、及び(vii)監視された蛍光の変化に基づいて少なくとも1つの推定される変調剤を鹹味調節性化合物として同定することを含む方法が提供される。
【0026】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、(i)適切な細胞、例えばHEK293T細胞を、機能的ヒトENaCを産生させるために必要なサブユニットをコードしているDNA配列を用いて形質転換させる又は形質移入させること、(ii)細胞をマルチウェルプレート、例えば384ウェルプレートに播種し、好ましくは約80%コンフルエントまでにすること、(iii)播種した試験細胞にCC2−DMPVE又はDiSBAC2(3)などの膜電位感受性色素を装着させること、(iv)その後、色素を装着させた細胞を少なくとも1つの推定されるENaC調節性化合物と接触させること、(v)好ましくはその前に、色素を装着させた細胞とENaCの機能を阻害することが知られている化合物、例えばフェナミルなどのアミロライド誘導体とを、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する濃度で接触させること、(vi)電位強度プレートリーダー、例えばVIPRII(Aurora Biosciences)を用いて細胞の蛍光の変化を監視すること、及び(vii)蛍光強度の変化に基づいて鹹味を調節する化合物を選択することを行う。
【0027】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、電気生理学的アッセイ、好ましくは二電極の電位固定アッセイであって、機能的ヒトENaCナトリウムチャネルを発現する卵母細胞、好ましくは両生類卵母細胞(カエル))における巨視的な電流に対するその効果(阻害性又は亢進性)に基づいてヒトENaC調節性化合物を同定するアッセイを提供する。これらのアッセイは、一部の他の細胞に基づいたENaC変調剤を同定するためのアッセイを超える改良されたアッセイである。これは部分的に、卵母細胞が発現する内在性イオンチャネルが少なく、その結果、卵母細胞発現系により、バックグラウンドが僅かしかない又は存在せずにENaCナトリウムチャネルの電流を直接測定することが有利に可能となることに起因する。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態では、これらの電気生理学的アッセイでは、対照として、又はナトリウムチャネル細胞電流の測定可能な変化を増大させるために、前記卵母細胞とENaCの少なくとも部分的な阻害剤、例えばアミロライド又はアミロライド誘導体とを接触させる。
【0029】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、ヒトENaCナトリウムチャネルを機能的に発現するカエル卵母細胞を提供し、これはヒトENaCα、β及びγ又はΔ、β及びγサブユニットを発現する。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明による細胞に基づいたアッセイで用いるENaCは、天然に存在するヒトENaCサブユニット、1つ若しくは複数の選択的スプライシングされたヒトENaCサブユニット、又はその機能的な変異体からなることができる。或いは、ENaCは、天然に存在するヒトENaCの少なくともαサブユニット、又はその選択的スプライシングされた変異体からなることができる。別の実施形態では、Δサブユニット(Genebank寄託番号U38254号など;J Biol Chem、270(46):27411〜4(1995)参照)又はその変異体がαサブユニットを置き換えることができる。
【0031】
好ましくは、これらのサブユニットは下記に開示した配列番号1、2、3及び7によってコードされている。これらの態様及び本発明の他の態様は、以下の詳細な説明、図面、及び請求項により当業者に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)のプロファイリング及びスクリーニングを行うための、機能的hENaCを発現する試験細胞、好ましくは組換え哺乳動物細胞又は両生類卵母細胞を含むアッセイ系、並びに哺乳動物細胞に基づいたアッセイ及び両生類卵母細胞に基づいたアッセイ、好ましくは高スループット又は中スループットのアッセイを提供する。より具体的には、本発明は、ENaC変調剤についてスクリーニングするための細胞に基づいたアッセイで用いることができる、hENaCのα、β、及びγサブユニットを発現するヒト細胞系、例えば、HEK293T細胞、及び両生類卵母細胞を提供する。本発明はまた、ENaC活性を機能的に特徴づけるため、及び鹹味知覚(本明細書中で鹹味変調剤と呼ぶ)の亢進又はブロッキングのどちらかを行う化合物を同定するために用いる、Δ、β及びγサブユニットからなる機能的ENaCを発現する哺乳動物細胞及び両生類卵母細胞を提供する。これらの化合物は、鹹味を亢進、調節、阻害又はブロックするために食品、医薬品及び飲料中の成分として用いることができる。
【0033】
しかし、本発明をより詳細に記述する前に、以下の定義を提供する。それ以外は、技術用語及び語句は、当分野の標準技術を用いることによって解釈されるそれらの通常の意味をもつことを理解されよう。
【0034】
定義
本明細書中で使用する用語「鹹味」又は「鹹味知覚」とは、鹹味刺激に対する対象の知覚又は応答をいう。上述のように、hENaCは鹹味知覚、特にヒト対象において「鹹味」を誘発させる塩に関与していると考えられている。このような刺激には、機能的ENaC、好ましくはhENaCにおいて応答を誘発させるNaClなどの化合物が含まれる。
【0035】
用語「ENaC」サブユニットタンパク質若しくはその断片、又は「ENaC」タンパク質の3つのサブユニットの1つをコードしている核酸若しくはその断片とは、以下の核酸及びポリペプチド、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、並びに種間相同体をいう:(1)配列番号1、2又は3に含まれる核酸配列によってコードされているアミノ酸配列に対して、約80%を超えるアミノ酸配列同一性、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%又はそれ以上のアミノ酸配列同一性を、好ましくは少なくとも約25個、50個、100個、200個、若しくは500個、又はそれ以上のアミノ酸の領域にわたって有するアミノ酸配列を有する、或いは(2)配列番号1、2、若しくは7によってコードされている免疫原又はその免疫原性断片、及びその保存的に改変された変異体によってコードされているアミノ酸配列に対して産生させた抗体、例えばポリクローナル抗体に特異的に結合する、或いは(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ENaCタンパク質、例えば配列番号1、2、3若しくは7又はその相補体、及びその保存的に改変された変異体をコードしている核酸配列に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイゼーションする、或いは(4)配列番号1、2、3若しくは7又はその相補体に対して、約80%を超える配列同一性、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%、又はそれよりも高いヌクレオチド配列同一性を、好ましくは少なくとも約25個、50個、100個、200個、500個、1000個、又はそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって有する核酸配列を有する、或いは(5)HEK細胞中で発現させ、二電極の全細胞電気生理学を用いることによるか、又はナトリウム若しくはリチウムに応答した膜電位色素の蛍光変化によって試験した場合に、ナトリウムコンダクタンスアッセイにおいて本明細書中に記載のhENaCと機能的に等価である。
【0036】
機能的に等価なENaCタンパク質には、下記で同定したものとは異なる一次配列を有するが、機能的アッセイ、例えば下述のナトリウムコンダクタンスアッセイによって等価な機能を有すると決定されたENaCサブユニットが含まれる。
【0037】
「機能的効果の決定」とは、ENaCポリペプチドの間接的又は直接的な影響下にあるパラメータを上昇又は下降させる化合物の効果、例えば機能的、物理的及び化学的効果のアッセイを行うことをいう。このような機能的効果には、それだけには限定されないが、イオン流束、膜電位、電流振幅、及び電位開口性の変化、並びに任意のマーカー遺伝子の遺伝子発現の変化などの他の生物学的効果等が含まれる。イオン流束は、チャネルを通る任意のイオン、例えばナトリウム若しくはリチウム又は放射性同位元素などのその類似体を含むことができる。このような機能的効果は、当業者に知られている任意の手段、例えば二電極電気生理学若しくは電位感受性色素を用いることによって、又は分光学的特徴(例えば蛍光、吸光、屈折率)、水力学的特性(例えば形状)、クロマトグラフ特性、若しくは溶解特性などのパラメータの変化を測定することによって測定することができる。好ましくは、ENaCの機能は、二電極の全細胞電気生理学を用いることによって、又はナトリウム若しくはリチウムに応答した膜電位色素の蛍光変化を監視することによって評価する。
【0038】
ENaCポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の「阻害剤」、「活性化剤」、及び「変調剤」とは、ENaCポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の、細胞に基づいたアッセイを用いて同定した活性化、阻害性、又は調節性分子をいうために用いる。阻害剤とは、例えば、ENaCタンパク質、例えば拮抗剤に結合する、その活性を部分的若しくは完全にブロックする、その活性若しくは発現を低減させる、防止する、活性を遅延させる、失活させる、脱感作させる、又はダウンレギュレーションする化合物である。
【0039】
「活性化剤」とは、ENaCタンパク質の活性を増大させる、開放する、活性化させる、促進する、活性化を亢進する、感作させる、拮抗する、又はアップレギュレーションする化合物である。阻害剤、活性化剤、又は変調剤には、ENaCタンパク質を遺伝子改変した変種、例えば活性が変化した変種、並びに天然に存在するリガンド及び合成リガンド、拮抗剤、作用剤、ペプチド、環状ペプチド、核酸、抗体、アンチセンス分子、リボザイム、有機小分子なども含まれる。阻害剤及び活性化剤用のこのようなアッセイには、例えば、上述のように、細胞、細胞抽出物、又は細胞膜中でENaCタンパク質を発現させること、推定される変調剤化合物を施用すること、及び任意選択でその前に、前記ENaCタンパク質を、既知のENaC阻害剤と、部分的なENaC阻害剤をもたらす濃度で接触させること、その後、活性に対する回転性化合物の機能的効果を決定することが含まれる。
【0040】
活性化、阻害、又は調節の程度を検査するために、潜在的な活性化剤、阻害剤、又は変調剤で処理したENaCタンパク質を含む試料又はアッセイを、阻害剤、活性化剤、又は変調剤を含まない対照試料と比較した。このアッセイの一実施形態では、化合物を、最適以下のナトリウム濃度を与えた細胞の応答に対するその効果について試験した。最適以下の濃度のナトリウムで処理したが化合物を欠く対照細胞は、典型的には最大応答の10〜20%を示す。最適以下のナトリウム濃度の応答を10〜20%レベルより高く上昇させる化合物が、推定されるENaC相乗剤である。対照的に、応答を10%未満まで低下させる化合物が、推定されるENaC相乗剤である。
【0041】
本明細書中で使用する用語「試験化合物」若しくは「試験候補」又は「変調剤」或いはその文法上の均等物とは、天然に存在する又は合成のどちらかの任意の分子、例えば、ENaC活性を調節する能力について試験するタンパク質、オリゴペプチド(例えば、約5〜約25個の長さのアミノ酸、好ましくは約10〜20又は12〜18個の長さのアミノ酸、好ましくは12、15、又は18個の長さのアミノ酸)、有機小分子、多糖、脂質(例えばスフィンゴ脂質)、脂肪酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなどをいう。試験化合物は、十分な多様性の範囲をもたらす、コンビナトリアルライブラリ又はランダム化ライブラリなどの試験化合物ライブラリの形態であることができる。試験化合物は、融合パートナー、例えば、標的化化合物、救援(rescue)化合物、二量化化合物、安定化化合物、アドレス可能(addressable)化合物、及び他の機能的な部分に任意選択で連結している。習慣的に、有用な特性を有する新しい化学物質は、何らかの望ましい特性又は活性、例えば亢進性活性を有する試験化合物(「リード化合物」と呼ばれる)を同定すること、リード化合物の変異体を作製すること、並びにこれらの変異体化合物の特性及び活性を評価することによって作製する。好ましくは、このような解析には高スループットスクリーニング(HTS)方法を用いる。
【0042】
「有機小分子」とは、天然に存在する又は合成のどちらかの有機分子であって、約50ダルトンより高く約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、より好ましくは約200〜約500ダルトンの分子量を有する有機分子いう。
【0043】
「生体試料」には、生検及び検屍試料などの組織切片、並びに組織学的目的のために採取した冷凍切片が含まれる。このような試料には、血液、痰、組織、培養細胞、例えば初代培養、外植片、及び形質転換細胞、糞便、尿などが含まれる。生体試料は、典型的には真核生物、最も好ましくは、霊長類、例えばチンパンジー若しくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;げっ歯類、例えばモルモット、ラット、マウス;ウサギなどの哺乳動物;又は鳥類;爬虫類;若しくは魚類から得られる。
【0044】
「ENaC活性を阻害する化合物」とは、この化合物を機能的ENaCと接触させた場合にナトリウムチャネルの活性を好ましくは可逆的に阻害する化合物をいう。このような化合物の好ましい例は、フェナミル、ベンザミル、3,4−ジクロロベンザミル、エチルイソプロピルアミロライド;5−(N−4−クロロベンジル)−2,4ジメチル−ベンザミル、5−(N−メチル−N−グアニジンカルボニルメチル)アミロライド;5−(N,N−ヘキサ−マイエチレン)アミロライド;5−(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA);5−(N−4−クロロ−ベンジル)2、4ジメチルベンザミル、2,4−ジメチルベンザミル;2、3−ベンゾ−ベンザミルなどのアミロライド及びアミロライド誘導体である。
【0045】
「アミロライド誘導体」とは、アミロライドに類似した構造を有する、ENaCの機能を阻害する化合物をいう。典型的には、このような誘導体はグアニジン置換基で置換されているか(例えばフェナミル)、又は5−N位で置換されている(例えばエチルイソプロピルアミロライド)。
【0046】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈中における用語「同一」又はパーセント「同一性」とは、同じであるか、又は同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを指定したパーセンテージで有する2つ以上の配列或いは部分配列をいい(すなわち、比較ウィンドウ若しくは指定した領域にわたる最大一致について比較アラインメントを行った場合に、指定した領域にわたって約80%の同一性、好ましくは85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれより高い同一性である(例えばヌクレオチド配列配列番号1、2、3若しくは7))、これは、以下の初期設定パラメータを用いたBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いるか、又は手動アラインメント及び目視検査(例えば、NCBIのウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov)などを参照)によって測定する。この場合、このような配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補体をいうか、又はそれに適用し得る。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。以下に記載のように、好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明することができる。好ましくは、同一性は少なくとも約25個の長さのアミノ酸若しくはヌクレオチドの領域にわたるか、又はより好ましくは50〜100個の長さのアミノ酸若しくはヌクレオチドの領域にわたって存在する。
【0047】
配列の比較のために、典型的には1つの配列が参照配列として役割を果たし、これに試験配列を比較した。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合は部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定した。好ましくは、プログラムの初期設定パラメータを用いることができるか、又は代替パラメータを指定することができる。その後、プログラムパラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムにより参照配列と比較した試験配列のパーセント配列同一性が計算される。
【0048】
本明細書中で使用する「比較ウィンドウ」には、20〜600、通常は約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群から選択される連続位置数のうち任意の数のセグメントへの参照が含まれ、この場合、配列を、2つの配列を最適にアラインメントしたあとに同数の連続位置の参照配列と比較し得る。比較のための配列のアラインメント方法は当分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson&Lipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1958)の類似度検索方法、コンピュータによるこれらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group、ウィスコンシン州Madison、575 Science Dr.中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は手動アラインメント及び目視検査(例えば、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(Ausubel他編、1995補遺)参照)によって実施することができる。
【0049】
パーセント配列同一性及び配列類似度の決定に適したアルゴリズムの好ましい例は、それぞれAltschul他、Nuc.Acids Res.25:3389〜3402(1977)及びAltschul他、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990)に記載されているBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST及びBLAST2.0は、本発明の核酸及びタンパク質のパーセント配列同一性を決定するために本明細書中に記載のパラメータを用いて使用する。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公開されており利用可能である。このアルゴリズムは、第1に高スコアの配列対(HSP)を同定することを含み、これは、データベース配列中の同じ長さの単語とアラインメントを行った場合に一部の正値の閾値スコアTに一致するか、又はそれを満たすかのどちらかのクエリ配列中の長さWの短い単語を同定することによって行う。Tは、近隣単語スコア閾値と呼ばれる(Altschul他、上記)。これらの最初の近隣単語ヒットは、それらを含むより長いHSPを探すための検索を開始するシード(seed)として役割を果たす。累積アラインメントスコアを増加させることができる間は、それぞれの配列に沿って単語ヒットを両方向に延ばす。ヌクレオチド配列にはパラメータM(一致する残基対のリワード(reward)スコアは常に>0)及びN(ミスマッチ残基のペナルティスコアは常に<0)を用いて、累積スコアを計算した。アミノ酸配列には、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算した。単語ヒットのそれぞれの方向への伸張は、累積アラインメントスコアがその最大獲得値からXの量減ったとき;1つ若しくは複数の負のスコアの残基アラインメントの累積により累積スコアが0以下になったとき;又はどちらかの配列の末端に達したときに停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXによりアラインメントの感受性及び速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、初期設定として単語長(W)を11、期待値(E)を10とし、M=5、N=−4及び両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、初期設定として単語長を3、及び期待値(E)を10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff&Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915(1989)参照)アラインメント(B)を50、期待値(E)を10とし、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を用いる。
【0050】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書中で互換性があるように使用され、アミノ酸残基のポリマーをいう。これらの用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0051】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体をいう。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされているもの、並びに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンをいう。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。このような類似体は修飾されたR基を有するか(例えばノルロイシン)、又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸に類似した様式で機能する化合物をいう。
【0052】
アミノ酸は、その一般的に知られている3文字の記号又はIUPAC−IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字の記号のどちらかによって本明細書中で言及し得る。同様に、ヌクレオチドは、その一般的に認識されている1文字のコードによって言及し得る。
【0053】
「保存的に改変された変異体」とは、アミノ酸及び核酸配列のいずれにも適用される。特定の核酸配列に関しては、保存的に改変された変異体とは、同一若しくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードしている核酸をいい、又は核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は、本質的に同一である配列をいう。遺伝暗号の縮重により、多数の機能的に同一である核酸が、任意の与えられたタンパク質をコードしている。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。したがって、コドンによってアラニンが指定されているすべての位置において、コードされているポリペプチドを変更することなしにこのコドンを対応するコドンのうち任意のものに変更することができる。このような核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。1つのポリペプチドをコードしている本明細書中の核酸配列のそれぞれは、その核酸のすべての可能なサイレント変異も記述している。当業者は、核酸中のそれぞれのコドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGG以外)を改変して機能的に同一である分子を得ることができることを理解されよう。したがって、1つのポリペプチドをコードしている核酸のそれぞれのサイレント変異には、発現産物に関しては記載したそれぞれの配列が暗示されるが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
【0054】
アミノ酸配列においては、当業者は、コードされている配列中の単一のアミノ酸若しくはアミノ酸の小さな割合の変更、付加、又は欠失を行わせる核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列への個々の置換、欠失又は付加は、変更によりアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換がもたらされる「保存的に改変された変異体」であることを理解されよう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は当分野で周知である。このような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体、及び対立遺伝子に追加するものであり、これらを排除するものではない。
【0055】
以下の8つの群は、互いに保存的置換であるアミノ酸をそれぞれ含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)参照)。既に言及したように、本発明は、適切なアッセイ、例えば以下に詳述する全細胞ナトリウムコンダクタンスアッセイを用いると機能的に等価である、本出願中に開示した一次配列とは異なる一次配列を有するENaCサブユニットポリペプチドを発現する細胞を包含する。
【0056】
ポリペプチド構造などの巨大分子構造は、様々な編成レベルの観点から記載することができる。この編成の一般的な議論には、例えば、Alberts他、細胞の分子生物学(Molecular Biology of the Cell)(第3版、1994)並びにCantor及びSchimmel、生物物理化学パートI:生物学的巨大分子のコンホメーション(Biophysical Chemistry Part I: The Conformation of Biological Macromolecules)(1980)を参照されたい。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に秩序のある三次元構造をいう。このような構造は、ドメイン、例えば膜貫通ドメイン、孔ドメイン、及び細胞質テイルドメインとして一般的に知られている。ドメインとは、ポリペプチドの緻密な単位を形成するポリペプチドの一部分であり、典型的には15〜350個のアミノ酸の長さである。例示的なドメインには、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインが含まれる。典型的なドメインは、αシート及びβへリックスの広がりなどのより小さな編成のセクションから構成されている。「三次構造」とは、ポリペプチド単量体の完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、個別の三次単位の非共有会合によって形成された三次元構造をいう。異方性用語はエネルギー用語としても知られている。
【0057】
1つの特定の核酸配列は、「スプライシング変異体」も暗黙的に包含する。同様に、1つの核酸によってコードされている特定のタンパク質はその核酸のスプライシング変異体によってコードされている任意のタンパク質を暗黙的に包含する。「スプライシング変異体」とは、その名称から示唆されるように、遺伝子の選択的スプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(選択的)核酸スプライシング産物が異なるポリペプチドをコードしているようにスプライシングされ得る。スプライシング変異体の産生の機構は異なり得るが、エクソンの選択的スプライシングが含まれる。或いは、読み過ごし転写による同じ核酸に由来するポリペプチドも、この定義に包含される。スプライシング産物の組換え型を含めたスプライシング反応の任意の産物がこの定義に含まれる。
【0058】
ENaC核酸配列にはまた、本明細書中に記載のナトリウムコンダクタンスアッセイにおいて適切なアッセイを用いてアッセイを行った場合に、本明細書中に開示したENaCポリペプチドに機能的に等価であるENaCサブユニットをコードしている単一のヌクレオチド多型体も含まれる。
【0059】
膜電位色素又は電位感受性色素とは、膜の脱分極の際に蛍光特性を変化させる分子又は分子の組合せをいう。このような色素は、細胞中で発現されるENaCなどのイオンチャネルの活性の変化を検出するために用いることができる。
【0060】
「標識」又は「検出可能な部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物をいう。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般的に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン及び例えば放射標識をペプチド内に取り込ませることによって検出可能にすることができる、若しくはペプチドに特異的に反応性がある抗体を検出するために用いることができるタンパク質が含まれる。
【0061】
例えば細胞、又は核酸、タンパク質、若しくはベクターに関して使用した場合、用語「組換え」とは、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入又はネイティブ核酸若しくはタンパク質の変更によって改変されている、或いは細胞がそのように改変された細胞由来であることを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞のネイティブ(非組換え)型内では見つからない遺伝子を発現するか、又は他の場合には異常に発現される、過少に発現される、若しくはまったく発現されないネイティブ遺伝子を発現する。本発明では、これは典型的に、1つ又は複数のENaCサブユニットをコードしている核酸配列を用いて形質移入した細胞をいう。
【0062】
核酸の部分に関して使用した場合、用語「異種」とは、核酸が、自然では互い同じ関係性では見つからない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸が典型的に組換えによって産生され、これは、関連していない遺伝子由来の2つ以上の配列が、新しい機能的な核酸、例えば、一方の源由来のプロモーター及び別の源由来のコード領域が作製されるように配置されている。同様に、異種タンパク質とは、タンパク質が、自然では互いに同じ関係性では見つからない2つ以上の部分配列を含むことを示す(例えば融合タンパク質)。遺伝子、cDNA、mRNA又はタンパク質細胞発現に関して使用した場合、用語「異種」とは、その遺伝子、cDNA、mRNA、又はタンパク質は通常その細胞内で発現されない、又は本来の細胞の源とは別の種由来であることを示す。
【0063】
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが、典型的には核酸の複雑な混合物中のその標的部分配列とのハイブリダイゼーションを行うが、他の配列とは行わない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況下では異なる条件となる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイゼーションする。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen、生化学及び分子生物学の技術−核プローブを用いたハイブリダイゼーション(Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes)、「ハイブリダイゼーションの原理及び核酸アッセイの戦略の概要(Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic assays)」(1993)に見つかる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定したイオン強度pHにおける特定の配列について、熱融点(T)よりも約5〜10℃低くなるように選択する。Tとは、標的に相補的なプローブの50%が標的配列にハイブリダイゼーションしており平衡状態にある(標的配列は過剰に存在するので、Tでは、平衡状態でプローブの50%が占有されている)温度(規定したイオン強度、pH、及び核濃度下)である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤を加えることによって成し得る。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションには、正のシグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のものであることができる:50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベーションを行う、又は5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベーションを行い、0.2×SSC及び0.1%SDS、65℃で洗浄する。洗浄及びハイブリダイゼーションのステップは、一般に1/2、1、2、5、13、15、30、60分又はそれ以上行い、より典型的には約30秒間〜2分間行う。
【0064】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイゼーションしない核酸でも、それらがコードしているポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。これは、例えば、遺伝暗号に許容されている最大コドン縮重を用いて核酸のコピーを作製する場合に起こる。このような場合、核酸は、典型的には中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイゼーションする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、40%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC中、45℃での洗浄が含まれる。正のハイブリダイゼーションはバックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、同様のストリンジェンシーの条件を提供するために代わりのハイブリダイゼーション及び洗浄条件を利用することができることを、容易に理解されよう。ハイブリダイゼーションパラメータを決定するためのさらなる指針は、数々の参照文献、例えば、及び分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubel他編に提供されている。
【0065】
PCRには、約36℃の温度が低ストリンジェンシーの増幅に典型的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに応じて約32℃〜48℃で変動し得る。高ストリンジェンシーのPCR増幅では、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度はプライマーの長さ及び特異性に応じて約50℃〜約65℃の範囲であることができる。高ストリンジェンシー及び低ストリンジェンシーの増幅どちらにおいても、典型的なサイクル条件には、90℃〜95℃で30秒〜2分間の変性期、30秒〜2分間続くアニーリング期、及び約72℃で1〜2分間の伸張期が含まれる。低ストリンジェンシー及び高ストリンジェンシーの増幅反応のプロトコル及び指針は、例えば、Innis他(1990)PCRプロトコル:方法及び応用の指針(PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications)、Academic Press,Inc.、ニューヨーク)に提供されている。
【0066】
「抗体」とは、抗原に特異的に結合し、それを認識する、免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域又はその断片を含むポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、Δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκ又はλのどちらかとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεとして分類され、立ち代ってこれが、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域が結合の特異性及び親和性において最も重要となる。
【0067】
詳細には、このような抗体には、本明細書中で開示したENaCに特異的に結合するもの、又はこのようなENaCポリペプチドに特異的に結合する抗体の混合物が含まれる。
【0068】
タンパク質又はペプチドに関する場合の語句、抗体に「特異的に(若しくは選択的に)結合する」又は「特異的に(若しくは選択的に)免疫反応性がある」とは、多くの場合タンパク質及び他の生体物質の異種集団中における、タンパク質が存在することを決定するような結合反応をいう。したがって、指定した免疫アッセイ条件下では、指定した抗体は特定のタンパク質にバックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍超で結合する。このような条件下における抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に対するその特異性について選択した抗体が必要である。例えば、ENaCサブユニットタンパク質、例えば配列番号1、2、3、若しくは7によってコードされているENaCα、β、γ若しくはΔサブユニット、多型変異体、対立遺伝子、相同分子種、及び保存的に改変された変異体、又はスプライシング変異体、或いはその一部分に対して産生させたポリクローナル抗体は、ENaCサブユニットタンパク質、すなわちENaCα、β、γ又はΔサブユニット、例えば配列番号4、5、6又は8に含まれるアミノ酸配列を含むものに対して特異的に免疫反応性があるポリクローナル抗体だけが得られ、他のタンパク質は得られないように選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り去ることによって成し得る。様々な免疫アッセイ様式を用いて特定のタンパク質に特異的に免疫反応性がある抗体を選択し得る。例えば、タンパク質に特異的に免疫反応性がある抗体を選択するために固相ELISA免疫アッセイが日常的に用いられている(免疫アッセイ様式及び特異的な免疫反応性を決定するために用いることができる条件に関する記述としては、例えば、Harlow&Lane、抗体:実験室の手引き(Antibodies,A Laboratory Manual)(1988)を参照されたい)。
【0069】
ENaC活性を調節するタンパク質のアッセイ
高スループット又は中スループットの機能的なゲノミックスアッセイを用いて、鹹味をブロック、阻害、調節又は亢進するENaCの変調剤を同定することができる。このようなアッセイでは、例えば、細胞表面のマーカー発現の変化、細胞内イオンの変化、又は細胞系若しくは初代細胞若しくは卵母細胞のどちらかを用いて膜電流の変化を監視することができる。典型的には、細胞をcDNA又はランダムペプチドライブラリ(核酸によってコードされている)と接触させる。cDNAライブラリは、センス、アンチセンス、完全長、及び切断cDNAを含むことができる。ペプチドライブラリは核酸によってコードされている。その後、上述のアッセイの1つを用いて細胞の表現型に対するcDNA又はペプチドライブラリの効果を監視した。cDNA又はペプチドの効果を確認し、例えばテトラサイクリンプロモーターからの発現などの制御可能な核酸発現を用いて、体細胞変異から区別することができる。ペプチドをコードしているcDNA及び核酸は、当業者に知られている技術を用いて、例えば配列タグを用いて救援することができる。
【0070】
ペプチド又はcDNA(例えば配列番号1、2、若しくは7)によってコードされているタンパク質と相互作用するタンパク質は、酵母二重ハイブリッドシステム、哺乳動物二重ハイブリッドシステム、又はファージディスプレイスクリーニングなどを用いて単離することができる。このようにして同定した標的は、ENaCチャネルと相互作用し得るさらなる構成成分(そのメンバーもまた薬物開発の標的である)を同定するために、これらのアッセイにおいてエサとしてさらに用いることができる(例えば、Fields他、Nature340:245(1989);Vasavada他、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA88:10686(1991);Fearon他、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA89:7958(1992);Dang他、Mol.Cell.Biol.11:954(1991);Chien他、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA9578(1991);並びに米国特許第5,283,173号、第5,667,973号、第5,468,614号、第5,525,490号、及び第5,637,463号参照)。
【0071】
ENaCタンパク質を発現する適切な細胞及び細胞系には、例として、腎臓上皮細胞、肺上皮細胞、味覚上皮細胞及び他の哺乳動物上皮細胞、好ましくはヒト、並びに卵母細胞、好ましくは両生類卵母細胞、最も好ましくはアフリカツメガエル卵母細胞が含まれる。
【0072】
ENaCタンパク質をコードしている核酸の単離
本発明は、部分的に、組換え遺伝学の分野の日常的な技術に依存している。本発明における使用の一般的な方法を開示している基本的なテキストには、Sambrook及びRussell、分子クローニング:実験室の手引き(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)(第3版、2001);Kreigler、遺伝子導入及び発現:実験室の手引き(Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual)(1990);並びに分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(Ausubel他編、1994))が含まれる。
【0073】
配列番号1、2、3又は7によってコードされているアミノ酸配列と実質的に同一であるENaCサブユニット、多型変異体、相同分子種、及び対立遺伝子、並びに他のENaCファミリーメンバーをコードしている核酸は、ENaC核酸プローブ及びオリゴヌクレオチドを用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ライブラリをスクリーニングすることによって単離することができる。或いは、抗血清又はヒトENaC若しくはその一部分に対して産生させた精製抗体を用いて発現された相同性を免疫学的に検出することによって、発現ライブラリを用いてENaCサブユニットタンパク質、多型変異体、相同分子種、及び対立遺伝子をクローニングすることができる。
【0074】
cDNAライブラリを作製するためには、ENaCのRNAに富んだ源を選択すべきである。その後、逆転写酵素を用いてmRNAをcDNAにし、組換えベクター内にライゲーションし、増殖、スクリーニング及びクローニングのために組換え宿主内に形質移入する。cDNAライブラリを作製及びスクリーニングする方法は周知である(例えば、Gubler&Hoffman、Gene25:263〜269(1983);Sambrook他、上記;Ausubel他、上記参照)。
【0075】
ゲノムライブラリでは、DNAを組織から抽出し、機械的に剪断するか、又は酵素的に消化するかのどちらかによって約12〜20kbの断片を得る。その後、断片を勾配遠心分離によって望ましくないサイズのものから分離し、バクテリオファージλベクター内で構築させる。これらのベクター及びファージをin vitroでパッケージングする。組換えファージは、Benton&Davis、Science196:180〜182(1977)に記載の溶菌斑ハイブリダイゼーションによって分析する。コロニーハイブリダイゼーションは、Grunstein他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、72:3961〜3965(1975)に一般的に記載されているように実施する。
【0076】
或いは、ヒトENaCサブユニットをコードしているENaCのcRNAを、α、β、γ又はΔヒトENaC DNAプラスミドから作製し得る。これには、適切な制限酵素で直鎖状にしたDNAからcRNAをin vitroで転写させるためにT7 RNAポリマーを用い、生じたcRNAを適切な細胞、例えば卵母細胞、好ましくはカエル卵母細胞内に微量注入した。
【0077】
ENaCサブユニットの核酸並びにその相同分子種、対立遺伝子、突然変異体、多型変異体、及び保存的に改変された変異体を単離する代替方法では、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用及びRNA又はDNA鋳型の増幅を組み合わせる(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号;PCRプロトコル:方法及び応用の指針(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)(Innis他編、1990)参照)。このようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びリガーゼ連鎖反応(LCR)の方法は、mRNAから、cDNAから、ゲノムライブラリから又はcDNAライブラリから直接ヒトENaCの核酸配列を増幅するために用いることができる。その内部に提供した配列を用いてENaC相同体を増幅するために縮重オリゴヌクレオチドを設計することができる。制限エンドヌクレアーゼ部位をプライマー内に組み込むことができる。ポリメラーゼ連鎖反応又は他のin vitro増幅方法も、例えば、発現させるタンパク質をコードしている核酸配列をクローニングするため、生理的試料中のmRNAをコードしているENaCの存在を検出するためのプローブとして用いる核酸を作製するため、核酸の配列決定を行うため、又は他の目的のために有用であり得る。PCR反応によって増幅した遺伝子は、アガロースゲルから精製し、適切なベクター内にクローニングすることができる。
【0078】
ENaCサブユニットの遺伝子発現も、当分野で知られている技術、例えばmRNAの逆転写及び増幅、全RNA又はポリARNAの単離、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング、in situハイブリダイゼーション、RNase保護、高密度ポリヌクレオチドアレイ技法などによって分析することができる。
【0079】
ENaCサブユニットタンパク質をコードしている核酸は、本発明中のENaCタンパク質、相同分子種、対立遺伝子、保存的に改変された変異体、及び多型変異体を同定するために、高密度オリゴヌクレオチドアレイ技法(例えばGeneChip(商標))と共に用いることができる。同定する相同体がT細胞の活性化及び遊走に関連している場合は、生体試料中で疾患を検出することにおいて、これらを診断ツールとしてGeneChip(商標)と共に用いることができる。例えば、Gunthand他、AIDS Res.Hum.Retroviruses14:869〜876(1998);Kozal他、Nat.Med.2:753〜759(1996);Matson他、Anal.Biochem.224:110〜106(1995);Lockhart他、Nat.Biotechnol.14:1675〜1680(1996);Gingeras他、Genome Res.、8:435〜448(1998);及びHacia他、Nucleic Acids Res.26:3865〜3866(1998)を参照されたい。
【0080】
ENaCサブユニット、好ましくはヒトENaCサブユニットをコードしている遺伝子は、典型的には、複製及び/又は発現のために原核細胞又は真核細胞中に形質転換させる前に、中間ベクター内にクローニングする。これらの中間ベクターは、典型的には原核細胞のベクター、例えばプラスミド、又はシャトルベクターである。
【0081】
1.原核細胞及び真核細胞中での発現
hENaCサブユニットをコードしているcDNAなどのクローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るために、典型的には、hENaCサブユニット核酸配列を、転写を指示するための強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及びタンパク質をコードしている核酸の場合は翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む発現ベクター内にサブクローニングする。適切な細菌性プロモーターは当分野で周知であり、例えば、上記のSambrook他及びAusubel他に記載されている。ENaCサブユニットタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)属の種、及びサルモネラ(Salmonella)で利用可能である(Palva他、Gene22:229〜235(1983);Mosbach他、Nature302:543〜545(1983)。このような発現系用のキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母、アフリカツメガエル卵母細胞及び昆虫細胞用の真核発現系は当分野で周知であり、且つ市販されている。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、機能的ヒトENaCを発現するため、及びENaCチャネルを通るナトリウムの輸送に対する特定の化合物の効果を検査するために卵母細胞発現系を用いる。アフリカツメガエル卵母細胞発現系は以前に、ENaCを含めたイオンチャネルの発現、及び機能的な研究において用いられている(Dascal、CRC Crit.Rev.Biotech.(1987)22(4):317〜387;Wagner他、Cellular Physiology and Biochemistry(2000)10:1〜12;及びCanessa他、Nature(1994)367:463〜467)。さらに別の実施形態では、レトロウイルス発現系を本発明で使用し得る。別の実施形態では、一過性発現系をpcDNA3及びその誘導体などの市販されているプラスミド系ベクターと共に利用し得る。
【0083】
異種核酸の発現を指示するプロモーターの選択は、具体的な用途に依存する。プロモーターは、その天然の設定における転写開始部位と同じように、異種転写開始部位からほぼ同じ距離に配置されることが好ましい。しかし、当分野で知られているように、この距離のある程度の変化は、プロモーターの機能を失うことなく受け入れることができる。
【0084】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的には、核酸をコードしているENaCサブユニットの宿主細胞内での発現に必要な追加要素をすべて含む転写ユニット又は発現カセットを含む。したがって、典型的な発現カセットは、ENaCサブユニット(又は複数のサブユニット)をコードしている核酸配列及び転写物の効率的なポリアデニル化に必要なシグナルに作動可能に連結した少なくとも1つのプロモーター、リボソーム結合部位、並びに翻訳停止を含む。カセットの追加の要素には、相乗剤、並びに、ゲノムDNAを構造遺伝子として用いる場合は機能的なスプライシングドナー及びアクセプター部位を有するイントロンを含み得る。
【0085】
プロモーター配列に加えて、発現カセットは、効率的な停止を提供するために構造遺伝子の下流に転写停止領域も含んでいるべきである。停止領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得るか、又は異なる遺伝子から得てもよい。
【0086】
遺伝情報を細胞に運ぶために用いる具体的な発現ベクターが何であるかは特に重要ではない。真核又は原核細胞内での発現に用いられる従来のベクターのうち任意のものを用い得る。標準の細菌発現ベクターには、pBR322系プラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、並びにMBP、GST、及びLacZなどの融合発現系が含まれる。好都合な単離方法を提供するためにエピトープタグ、例えばc−mycも組換えタンパク質に付加することができる。核酸の救援のために配列タグを発現カセットに含め得る。蛍光タンパク質、緑色又は赤色蛍光タンパク質、β−gal、CATなどのマーカーをベクター導入のマーカーとしてベクターに含めることができる。
【0087】
真核ウイルス由来の制御要素を含む発現ベクターを、真核発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びエプスタイン−バーウイルス由来のベクター中で典型的に用いる。他の例示的な真核ベクターには、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、及び、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、ネズミ乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞中での発現に有効であると示された他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0088】
真核ベクターからのタンパク質の発現は、誘導性プロモーターを用いても制御することができる。誘導性プロモーターでは、発現レベルは、これらの薬剤用の応答要素がプロモーター内に組み込まれていることによって、テトラサイクリン又はエクジソンなどの誘導剤の濃度に関係している。一般に、誘導性プロモーターからの高レベル発現は誘導剤の存在下においてのみ得られる。基底発現レベルは僅かである。
【0089】
一実施形態では、本発明のベクターは制御可能なプロモーター、例えばtetに制御される系及びRU−486系を有し得る(例えば、Gossen&Bujard、PNAS89:5547(1992);Oligino他、Gene Ther.5:491〜496(1998);Wang他、Gene Ther.4:432〜441(1997);Neering他、Blood88:1147〜1155(1996);及びRendahl他、Nat.Biotechnol.16:767〜761(1998)参照)。これらは小分子に、候補の標的核酸の発現に対する調節を与える。この有益な特徴は、望ましい表現型が体細胞変異ではなく形質移入したcDNAによって引き起こされたことを決定するために用いることができる。
【0090】
一部の発現系は、チミジンキナーゼ及びジヒドロ葉酸還元酵素などの遺伝子の増幅を提供するマーカーを有する。或いは、バキュロウイルスベクターを昆虫細胞で用い、ENaCコード配列がポリヘドリンプロモーター又は他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指示下にあるものなど、遺伝子の増幅に関与しない高収量の発現系も適している。
【0091】
典型的に発現ベクター内に含まれる要素にはまた、大腸菌内で機能するレプリコン、組換えプラスミドを宿している細菌の選択を可能にするための抗生物質耐性をコードしている遺伝子、及び真核配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域内の固有の制限部位が含まれる。選択される具体的な抗生物質耐性遺伝子が何であるかは重要ではなく、当分野で知られている多くの耐性遺伝子のうち任意のものが適切である。原核配列は、必要な場合に真核細胞中でのDNAの複製を妨害しないように選択されることが好ましい。
【0092】
標準の形質移入方法を用いて大量のENaCタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母又は昆虫の細胞系を作製し得、その後、標準の技術を用いて精製する(例えば、Colley他、J.Biol.Chem.264:17619〜17622(1989);タンパク質精製の指針(Guide to Protein Purification)、酵素学の方法(Methods in Enzymology)、第182巻(Deutscher編、1990)参照)。真核及び原核細胞の形質転換は標準の技術に従って行う(例えば、Morrison、J.Bact.132:349〜351(1977);Clark−Curtiss&Curtiss、酵素学の方法(Methods in Enzymology)101:347〜362(Wu他編、1983)参照。或いは、本発明の好ましい実施形態では、ヒトENaCサブユニットを発現する卵母細胞は、前記サブユニットをコードしているcRNAをその内部に微量注入することによって作製する。
【0093】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞内に導入する周知の手順のうち任意のものを用い得る。これらには、リン酸カルシウム形質移入、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、微粒子銃、リポソーム、DNAの形質移入に最適化した脂質、微量注入、血漿ベクター、ウイルスベクター、及びクローニングしたゲノムDNA、cDNA、合成DNA又は他の外来遺伝物質を宿主細胞内に導入するための他の周知の方法のうち任意のものの使用が含まれる(例えば、上記Sambrook他参照)。用いる具体的な遺伝子操作手順が、少なくとも1つのENaCサブユニットの遺伝子を宿主細胞、好ましくは機能的ENaCを発現する能力を有する哺乳動物内に導入することを成功させられることだけが必要である。
【0094】
発現ベクターを細胞内に導入したあと、形質移入した細胞を、ENaCサブユニット(又は複数のサブユニット)の発現に好ましい条件下で培養する。一実施形態では、脂質系の形質移入を用いて細胞に3つのhENaC遺伝子すべてを一過的に形質移入し、24〜48時間培養したあと、ENaC変調剤のスクリーニングを行う。
【0095】
既に言及したように、本発明の好ましい実施形態は卵母細胞発現系を含む。このような方法には、一般にカエルの手術、卵母細胞の単離、cRNAの調製及び卵母細胞の微量注入が含まれる。カエルの手術及び卵母細胞の単離の一般的な手順は従来より当分野で知られている。(Marcus−Sekur他、Methods in Enzymol.152:284〜288(1987);Goldin、Methods in Enzymol.207:266〜279参照。)同様に、cRNAを調製する方法も周知であり、例えばSwansen他、Meth.Enzymol.207:310〜319(1912)、Goldin他、Meth.Enzymol.217:279〜297(1992)に報告されている。その後、標準の方法によって生じたcRNAをカエル卵母細胞内に微量注入した。(Molten他、Meth.Enzymol.254:458〜466(1975);Hitchcock他、Meth.Enzymol.152:276〜284(1987)参照。
【0096】
ENACタンパク質の変調剤のアッセイ
A.アッセイ
ENaCタンパク質の調節は、様々なアッセイ、好ましくは上述の細胞に基づいたモデルを用いて評価することができる。このようなアッセイを用いて、鹹味知覚を調節、ブロック、亢進又は阻害するENaCの阻害剤及び活性化剤について試験することができる。
【0097】
好ましくは、ENaCは3つのサブユニット、すなわちα(又はΔ)、β及びγからなり、好ましくは、配列番号1、2、3若しくは7によってコードされているヒトENaCサブユニット又はヒト相同分子種保存的に改変されたその変異体からなる。或いは、本アッセイのENaCは、非ヒト上皮細胞由来である。一般に、それぞれの各サブユニットのアミノ酸配列同一性は、配列番号1、2、3又は7によってコードされているポリペプチドに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、又は90%、最も好ましくは少なくとも95%、例えば、96%、97%、98%若しくは99%である。
【0098】
組換え若しくは天然に存在するもののどちらかのENaCタンパク質又はENaCタンパク質を発現している細胞からなる候補の効果の測定は、本明細書中に記載のように様々なアッセイを用いて行うことができる。好ましくは、ENaCを調節する能力を有する分子を同定するためには、機能的ENaCを発現する両生類卵母細胞又は哺乳動物細胞中のENaC活性に対する様々な候補変調剤の効果を検出するためにアッセイを行う。好ましくは、このようなアッセイでは、最初にENaCと既知のENaC阻害剤とを接触させたあと、少なくとも1つの推定されるENaC変調剤、例えばENaC相乗剤を加える。好ましくは、阻害剤はアミロライド又はフェナミルなどのアミロライド誘導体である。
【0099】
ENaCタンパク質のチャネル活性は、パッチクランプ技法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、並びに電位感受性色素(例えば、Vestergarrd−Bogind他、J.Membrane Biol.88:67〜75(1988);Daniel他、J.Pharmacol.Meth.25:185〜193(1991);Hoevinsky他、J.Membrane Biol.137:59〜70(1994)参照)及びイオン感受性色素を用いた蛍光アッセイを含めた、イオン流束の変化を測定する様々なアッセイを用いてアッセイすることができる。例えば、ENaCタンパク質又はその相同体の1つ若しくは複数のサブユニットをコードしている核酸をアフリカツメガエル卵母細胞内に注入することができる。その後、膜電流の変化を測定することによってチャネルの活性を評価することができる。電気生理学的測定値を得るための一手段は、パッチクランプ技法、例えば「セルアタッチ」様式、「インサイドアウト」様式、及び「全細胞」様式を用いて電流を測定することによる(例えば、Ackerman他、New Engl.J.Med.336:1575〜1595、1997参照)。全細胞電流は、Hamil他、Pflugers.Archiv.391:185(1981)に記載のものなどの標準の方法を用いて決定することができる。
【0100】
チャネルの活性は、例えばイオン感受性色素を用いて細胞内イオンレベルの変化を測定することによっても好都合に評価することができる。
【0101】
ENaCポリペプチドの活性も、機能的、化学的、及び物理的効果を決定する様々な他のアッセイを用いて評価することができる。その例は、ENaCポリペプチドとペプチド、有機小分子、及び脂質を含めた他の分子との結合を測定すること、ENaCタンパク質及び/若しくはRNAレベルを測定すること、又はENaCポリペプチドの他の側面、例えば転写レベル若しくはENaC活性に影響を与える生理的変化を測定することである。機能的な結果を無処置の細胞又は動物を用いて決定する場合、細胞成長の変化或いはpHの変化或いはIP3、cGMP、若しくはcAMPなどの細胞内二次メッセンジャー、又はホスホリパーゼCシグナル伝達経路の構成成分若しくは制御因子の変化などの様々な効果も測定することができる。このようなアッセイは、活性化剤及び阻害剤のどちらを試験するためにも用いることができる。このように同定された変調剤は、例えば食品、飲料及び医薬品における香料として有用である。
【0102】
細胞に基づいたアッセイ
別の実施形態では、少なくとも1つのENaCサブユニットタンパク質を細胞内で発現させ、機能的変化、例えば物理的及び化学的変化又は表現型の変化のアッセイを行ってENaC変調剤を同定する。ENaCタンパク質を発現している細胞は、結合アッセイにも用いることができる。本明細書中に記載のように、任意の適切な機能的効果を測定することができる。例えば、膜電位の変化、細胞内イオンレベルの変化、及びリガンド結合はすべて、細胞に基づいたシステムを用いて潜在的な変調剤を同定するための適切なアッセイである。このような細胞に基づいたアッセイに適した細胞には、初代細胞、例えばENaCタンパク質を発現する味覚上皮細胞、及びENaCを発現するHEK293T細胞などの培養細胞系がどちらも含まれる。別の好ましい発現系は両生類卵母細胞を含む。言及したように、これらのアッセイでは、好ましくは、最初にENaC発現細胞系、例えば両生類卵母細胞又はHEK293と既知のENaC阻害剤、例えばアミロライド又はフェナミルなどのアミロライド誘導体とを、ENaCの機能を部分的に阻害する濃度で接触させたあと、細胞系と少なくとも1つの推定されるENaC変調剤とを接触させる。ENaCタンパク質は、天然に存在するか、又は組換えであることができる。また、上述のように、イオンチャネル活性を有するENaCタンパク質の断片又はキメラを細胞に基づいたアッセイで用いることができる。
【0103】
さらに別の実施形態では、細胞性ENaCポリペプチドのレベルは、タンパク質又はmRNAのレベルを測定することによって決定する。ENaCイオンチャネルの活性化に関与しているENaCタンパク質又は複数のタンパク質のレベルは、ENaCポリペプチド又はその断片に選択的に結合する抗体を用いたウエスタンブロッティング、ELISAなどの免疫アッセイを使用して測定した。mRNAの測定には、例えばPCR、LCR、又はハイブリダイゼーションアッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、RNase保護、ドットブロッティングを用いた増幅が好ましい。タンパク質又はmRNAのレベルは、本明細書中に記載のように、直接又は間接的に標識した検出薬、例えば、蛍光若しくは放射標識した核酸、放射若しくは酵素標識した抗体などを用いて検出する。
【0104】
或いは、ENaCの発現は、レポーター遺伝子システムを用いて測定することができる。このようなシステムは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌性ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどのレポーター遺伝子に作動可能に連結したENaCタンパク質プロモーターを用いて考案することができる。さらに、目的のタンパク質は、赤色又は緑色蛍光タンパク質などの第2のレポーターに付着させることにより間接的なレポーターとして用いることができる(例えば、Mistili&Spector、Nature Biotechnology15:961〜964(1997)参照)。レポーター構築体は、典型的には細胞内に形質移入する。潜在的な変調剤で処理したあと、且つ好ましくはその前に既知のENaC阻害剤、例えばフェナミルで処理して、レポーター遺伝子の転写、翻訳、又は活性の量を、当業者に知られている標準の技術に従って測定した。
【0105】
別の実施形態では、シグナル伝達に関連する機能的効果を測定することができる。活性化又は阻害されたENaCは、標的酵素、二次メッセンジャー、チャネル、及び他の効果タンパク質の特性を変化させる。ENaC活性のアッセイには、例えば膜の脱分極若しくはナトリウムの流入を観察することによってチャネルの活性を報告するためにイオン又は電位感受性色素を装着させた細胞が含まれる。このような受容体の活性を決定するためのアッセイでは、試験した化合物の活性を評価するための対照として、アミロライド又はフェナミルなどのENaCの既知の拮抗剤も用いることができる。調節性化合物(例えば作用剤、拮抗剤)を同定するためのアッセイでは、細胞質中のイオンのレベル又は膜電位の変化を、それぞれイオン感受性又は膜電位蛍光指示薬を用いて監視する。用い得るイオン感受性指示薬及び電位プローブには、とりわけMolecular Probes2002カタログ(www.probes.com)に開示されているもの、及び下記に開示した特定の化合物が含まれる。
【0106】
好ましいアッセイ系ではENaCのcRNAを注入したカエル卵母細胞を用い、これを試験化合物と接触させ、その後、二電極の電位固定の電気生理学的記録技術によって解析した。(Stuhmer、Meth.Enzymol.207:319〜339(1992);Wagner他、Cellular Physiology and Biochemistry、10:1〜12(2000)参照)。
【0107】
電気生理学的アッセイ
言及したように、ENaCを調節する、すなわち、亢進、阻害又はブロックする化合物を同定するための好ましいアッセイは、少なくとも1つの推定されるENaC変調剤(相乗剤又は阻害剤)と接触させた、ヒトENaCサブユニットを発現する細胞における電流の変化を監視する電気生理学的アッセイを含む。これらのアッセイでは、機能的ENaCを発現する任意の細胞を用い得る。好ましい実施形態では、細胞は卵母細胞、好ましくはカエル卵母細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞若しくは昆虫細胞、又は機能的ENaCイオンチャネルを発現させるのに適した別の発現系を含む。好ましくは、発現系は強固且つ迅速なヒトENaCナトリウムチャネルの発現を示し、望ましくは内在性イオンチャネルをまったく発現しないか僅かしか発現せず、これにより、ENaCナトリウムチャネルの機能を特異的に調節する化合物の同定が容易になる。したがって、望ましくないバックグラウンド応答が最小限となる又は排除される。さらに、細胞を本発明によるアッセイにおいて再度使用することが可能となるので、卵母細胞などの強固な細胞が望ましい。卵母細胞は、ENaCを含めた他の機能的なイオンチャネルを迅速且つ強固に発現すると以前に報告されている(Pascal、CRC Crit.Rev.Biotech.22(4);317〜87(1987);Wagner他、Cell Physiol.Biochem.10:1〜12(2000);Canessa他、Nature367:463〜407(1994))。
【0108】
特に好ましい電気生理学的アッセイは、二電極の電位固定技法によってカエルに卵母細胞おけるENaCナトリウムチャネルの機能を測定する、中程度スループットのアッセイである。この強固な、高速の発現系は、僅か約18〜24時間後に、卵母細胞膜中に〜百万個のENaCチャネルの発現をもたらす。さらに、卵母細胞は比較的大きいので(直径1mm、ほとんどの哺乳動物細胞と比べて比較的大きい)、これらは取扱い及び操作し易い。
【0109】
これらの利点に基づいて、単一の卵母細胞を用いて複数且つ繰り返しの電気生理学的記録を得ることができる。また、卵母細胞は典型的には内在性チャネルを僅かしか発現せず、その発現は、一部の他の発現系、例えばHEK293T細胞で見られるバックグラウンドと比較すると、高いバックグラウンドを引き起こすレベルよりも低いレベルである。したがって、卵母細胞により、ENaCナトリウムチャネルの機能に対する標的化合物の効果の、繰り返しの直接的な測定が可能になる。
【0110】
本発明による好ましい二電極の電位固定アッセイでは(下記の実施例4で詳細に例示)、ENaCα、β、及びγヒトENaCのcRNA(又はΔ、β及びγ)ヒトENaCのcRNA)を微量注入したカエル卵母細胞をガラス製シンチレーションバイアルに移し、ENaCタンパク質の発現を促進するのに適切な条件下でインキュベーションを行った。
【0111】
ENaCナトリウムイオンチャネルの発現が得られたあと、典型的にはcRNAの微量注入後約24時間後、適切な二電極電位測定装置、例えばOpusXpress6000A平行卵母細胞電位固定システム(Axon Instruments)を用いて、二電極の電位固定技法に従ってENaCの機能を測定した。二電極の電位固定技法では、ENaCナトリウムイオンチャネルを通って卵母細胞膜全体にわたって流れる巨視的な電流を測定する。卵母細胞を電位感知電極及び電流感知電極で穿刺し、電位感知電極を用いて電位、すなわち卵母細胞膜を横断する電位差を特定の値に固定し、電流感知電極を用いて電位を維持するために必要な電流、すなわち卵母細胞膜を横断するイオンの流れを測定する。OpusXpresssシステムは、半自動化されており、8個の卵母細胞から電気生理学的な記録を同時に行うことを可能にする作業ステーションを備えた市販されている二電極電位測定装置の一例である。このシステムは、自動的な卵母細胞の穿刺(impalement)、及び化合物を96ウェル化合物プレートに送達する、コンピュータ制御された流体取扱い器(fluid handler)による標的化合物の送達も提供する。このシステムは週あたり約60種の化合物の評価を可能にするので、最もよい説明は中スループット、すなわち中程度スループットのシステムである。もちろん、記載のように他の電位測定装置を加えることによってより多くの化合物のスクリーニングを行うことができる。
【0112】
このアッセイ系では、ENaC相乗剤は卵母細胞膜中のENaCチャネルを通る電流の増加をもたらす。この値は、下記の(実施例4)で提供する標準の式によって計算される。このようなアッセイはまた、適切な陰性対照、例えばENaCチャネルを通るナトリウムの輸送をブロックする既知のENaC阻害剤であるアミロライドも含み得る。したがって、この化合物は、卵母細胞が機能的ENaCを発現することを立証する内部対照として機能し、また、アミロライド阻害を示す卵母細胞では、アミロライド化合物を施用したあとに推定されるENaC相乗剤のスクリーニングを可能にする(標的化合物がENaC相乗剤である場合、卵母細胞膜中のENaCチャネルを通る電流の増加がもたらされる)。
【0113】
望ましくは、それぞれの相乗剤について%亢進因子を計算した。例えば、100%相乗剤は、基底対照値(化合物なし)と比較したENaC活性を100%増加させる。
【0114】
陰性対照も、ENaCのcRNAを注入しない卵母細胞が同じ効果を示さないことを確認するために行うことが望ましい。
【0115】
下記の実施例4でより詳細に記述するように、最大%亢進の弁を示す化合物においてより複雑な分析例えば、電流/電位(I/V)曲線、アミロライド競合的実験及び用量応答曲線も行い、化合物が最大半減活性(EC60値)を示す濃度を決定することが望ましい。これらの実験により、化合物の効果がENaCに特異的であることがさらに確認される。
【0116】
これらのアッセイは、食品、飲料、医薬品に関連する鹹味を調節するためにその添加剤として用い得るENaC変調剤、好ましくはENaC相乗剤の同定を提供する。望ましくは、ENaC相乗剤は少なくとも20%亢進因子、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも100%亢進因子を示す。これらの卵母細胞に基づいたアッセイは、それに関連する本質的な利点と共に本出願の実施例4に詳述されている。
【0117】
動物モデル
hENaCを発現する動物モデルにも、鹹味の変調剤のスクリーニングにおける使用方法が見つかる。同様に、例えば適切な遺伝子標的化ベクターを用いた相同組換え又は遺伝子の過剰発現の結果による、遺伝子ノックアウト技術を含めたトランスジェニック動物技術により、ENaCタンパク質の発現が存在しないこと又は発現の増加が生じる。同じ技術をノックアウト細胞の作製に適用することもできる。所望する場合は、ENaCタンパク質の組織に特異的な発現又はノックアウトが必要であるかもしれない。このような方法によって作製したトランスジェニック動物には、鹹味刺激に対する応答の動物モデルとしての使用方法が見つかる。
【0118】
ノックアウト細胞及びトランスジェニックマウスは、マーカー遺伝子又は他の異種遺伝子を相同組換えによってマウスゲノム中の内在するENaC遺伝子部位内に挿入することによって作製することができる。このようなマウスは、内在性ENaCをENaC遺伝子の変異種で置換することによって、又は内在性遺伝子を変異させることによっても作製することができる。
【0119】
DNA構築体を胚性幹細胞の核内に導入する。新しく遺伝子操作した遺伝子病変を含む細胞を宿主マウス胚内に注入し、これをレシピエントの雌に再移植する。これらの胚の一部は、部分的に突然変異細胞系に由来する生殖細胞を保有するキメラマウスへと発達する。したがって、このキメラマウスを繁殖させることによって、導入した遺伝子病変を含むマウスの新しい系を得ることが可能である(例えば、Capecchi他、Science244:1288(1989)参照)。キメラ標的化マウスは、Hogan他、マウス胚の操作:実験室の手引き(Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)並びに奇形癌及び胚性幹細胞:実用的手法(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach)、Robertson編、IRL Press、ワシントンD.C.、(1987)に従って派生させることができる。
【0120】
B.変調剤
ENaCタンパク質の変調剤として試験した化合物は任意の有機小分子、或いはタンパク質、例えば抗体若しくはペプチド、糖、核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド若しくはリボザイム、又は脂質などの生物学的物質であることができる。或いは、変調剤は、ENaCタンパク質の遺伝的に変化した変種であることができる。典型的には、試験化合物は有機小分子、ペプチド、脂質、及び脂質類似体である。好ましくは、試験した化合物はヒトによる消費が安全である。
【0121】
基本的に任意の化合物を本発明のアッセイにおける潜在的な変調剤又はリガンドとして用いることができるが、ほとんどの場合、水性又は有機性(特にDMSO系)の溶液に溶かすことができる化合物を用いる。このアッセイは、アッセイのステップを自動化し、任意の好都合の源由来の化合物をアッセイに供給することによって大きな化学ライブラリをスクリーニングするために設計されており、典型的には平行して実行する(例えば、ロボットアッセイにおいてマイクロタイタープレート中でマイクロタイター様式で行う)。ChemDiv(カリフォルニア州San Diego)、Sigma−Aldrich(モンタナ州St.Louis)、Fluka Chemika−Biochemica−Analytika(スイスBuchs)などを含め、化合物の供給者が多く存在することは理解されよう。
【0122】
好ましい実施形態では、中程度又は高スループットのスクリーニング方法は、顕著な数の潜在的なENaC変調剤(潜在的な活性化剤若しくは阻害剤化合物)を含む有機小分子又はペプチドライブラリを提供することを含む。その後、このような「化学ライブラリ」を本明細書中に記載のように1つ又は複数のアッセイでスクリーニングを行って、所望する特徴的な活性を示すライブラリメンバー(具体的な化学種若しくはサブクラス)を同定する。このようにして同定した化合物は、通常の「リード化合物」として役割を果たすか、又はそれ自体を潜在的な若しくは実際の産物として用いることができる。言及したように、好ましい卵母細胞二電位固定電極システム(単一の装置)では、週あたり約60種の化合物を試験することが可能である。
【0123】
コンビナトリアル化学ライブラリとは、試薬などのいくつかの化学的な「構成単位」を組み合わせることによって、化学合成又は生物学的合成のどちらかによって作製される多様な化合物のコレクションである。例えば、ポリペプチドライブラリなどの直鎖状コンビナトリアル化学ライブラリは、1組の化学的な構成単位(アミノ酸)を、所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について可能なすべての組合せで組み合わせることによって形成される。化学的な構成単位のこのようなコンビナトリアル混合によって数百万種もの化合物を合成することができる。
【0124】
コンビナトリアル化学ライブラリの調製及びスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリには、それだけには限定されないが、ペプチドライブラリが含まれる(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka、Int.J.Pept.Prot.Res.37:487〜493(1991)及びHoughton他、Nature354:84〜88(1991)参照)。化学的な多様性ライブラリを作製するための他の化学も用いることができる。このような化学には、それだけには限定されないが、ペプトイド(例えば国際公開公報WO91/19735号)、コード化されたペプチド(例えば国際公開公報WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば国際公開公報WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer)(Hobbs他、Proc.Nat.Acad.Sci.USA90:6909〜6913(1993))、ビニル性(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara他、J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann他、J.Amer.Chem.Soc.114:9217〜9218(1992))、小化合物ライブラリの類似有機合成(Chen他、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Cho他、Science261:1303(1993))、及び/又はペプチジルホスホネート(Campbell他、J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリ(Ausubel、Berger及びSambrook、すべて上記参照)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughn他、Nature Biotechnology、14(3):309〜314(1996)及びPCT/US96/10287号参照)、炭水化物ライブラリ(例えば、Liang他、Science、274:1520〜1522(1996)及び米国特許第5,593,853号参照)、有機小分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN、1月18日、33ページ(1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノン及びメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号及び第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、第5,288,514号などを参照)が含まれる。
【0125】
コンビナトリアルライブラリを調製するための装置は市販されている(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech、ケンタッキー州Louisville、Symphony、Rainin、マサチューセッツ州Woburn、433A Applied Biosystems、カリフォルニア州Foster City、9050Plus、Millipore、マサチューセッツ州Bedfordを参照)。さらに、数々のコンビナトリアルライブラリ自体が市販されている(例えば、ComGenex、ニュージャージー州Princeton、Asinex、ロシアMoscow、Tripos,Inc.、モンタナ州St.Louis、ChemStar,Ltd、ロシアMoscow、3D Pharmaceuticals、ペンシルベニア州Exton、Martelk Biosciences、メリーランド州Columbiaなどを参照)。
【0126】
開示したアッセイを用いて同定したENaC調節性化合物を含む食品及び飲料組成物
開示したアッセイ、例えば実施例中に開示した電気生理学的(二電極の電位固定技法)アッセイ及び蛍光細胞に基づいたアッセイを用いて同定した化合物は、摂食可能な組成物、すなわち食品及び飲料並びに経口投与する医薬品中の成分又は香料として潜在的に有用である。鹹味知覚を調節又は亢進する化合物は、食品又は飲料中で、単独で又は組み合わせて、香料として用いることができる。好ましい用途では、変調剤をナトリウムのレベルを低下させた食品又は飲料中に組み込み、生じた生成物の鹹味は高ナトリウムの生成物と同様になる。このような食品及び飲料の例には、とりわけプレッツェル、ポテトチップ、クラッカー、スープ、ディップなどのスナック食品、ソフトドリンク、パック肉製品が含まれる。
【0127】
或いは、鹹味知覚をブロック又は阻害する化合物は、自然に高い塩濃度を含む食品中で、その鹹味をブロック又は偽装するために、その成分又は香料として用いることができる。
【0128】
このような化合物(又は複数の化合物)の量は、所望する程度の鹹味知覚が得られる量である。もちろん、このような用途で用いる化合物は、ヒトによる消費が安全であり、且つヒトの味覚試験で許容されると決定される。
【0129】
フェナミル又は均等物を用いた好ましいアッセイ実施形態
上に開示したように、本発明の好ましい実施形態の1つは、機能的ENaCを発現している試験細胞と少なくとも1つの推定される変調剤化合物とを膜電位色素の存在下で接触させること、好ましくはその前に前記試験細胞とENaCの機能を調節する(阻害する)ことが知られている少なくとも1つの化合物、好ましくはフェナミルなどのアミロライド誘導体とを接触させること、及び試験細胞によって発現されたENaCの活性を監視してENaCの調節の程度を決定することを含む。言及したように、試験化合物の前にENaC阻害剤を加えることにより、アッセイの結果が向上する。この阻害剤、例えばフェナミルは、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する濃度で用いる。この方法は、推定される変調剤化合物を、鹹味知覚に対するin vivo効果について評価すること(例えば、鹹味知覚に対するin vivo効果を決定するために食味実験を行うこと)をさらに含むことができる。例えば、ENaCサブユニットをコードしているcDNAを、ヒト腎臓細胞cDNA、ヒト肺細胞cDNA、又はヒト味覚細胞cDNAからクローニングする。上述のように、ネイティブENaCは3つのサブユニット(α又はΔ、β、及びγ)からなる多量体タンパク質である。ENaCは、構成的に活性のあるNa選択的陽イオンチャネルとして機能し、味蕾及び他の組織中で見つかり、鹹味の生理的知覚の根底にある候補ヒト塩受容体である。
【0130】
本発明の別の好ましい実施形態では、このような方法は、マルチウェルプレート及び蛍光強度プレートリーダー(例えば、Aurora BiosciencesのVIPR装置又はMolecular DeviceのFLIPR装置)を用いた高スループットアッセイの様式で実施する。試験細胞を播種し、任意選択で色素を装着させ、好ましくは最初に試験細胞と既知のENaC阻害剤とをENaCの機能が少なくとも部分的且つ好ましくは可逆的に阻害される濃度で接触させ、その後、前記試験細胞と少なくとも1つの試験化合物とを接触させ、同じマルチウェルプレート中で蛍光強度を監視し得る。このようなアッセイ様式は、ENaCの機能の活性化又は阻害をどちらも確実に検出することができ、チャネルの活性の亢進又はブロッキングのどちらかを行うことができる化合物の強固なスクリーニングを提供する。上述のアッセイは、ENaC相乗剤を同定するために最適化されている。したがって、本明細書中に記載のアッセイは、ヒトENaCを利用し、哺乳動物細胞を用い、アッセイを標準のマルチウェル(例えば96、384、又は1536ウェル)プレート中、高スループット様式で行うことができるという点で、上述のものなどの既存のアッセイよりも優れた利点を有する。(しかし、上述のように、哺乳動物細胞はある程度の不利な特性を有する;例えば、これらは望ましくないバックグラウンドレベルをもたらすレベルで内在性イオンチャネルを発現し得る。)
【0131】
本発明のこの好ましい実施形態では、ENaCの少なくともα(又はΔ)サブユニットを機能的に発現する細胞、好ましくは哺乳動物細胞を産生させる。好ましい実施形態では、hENaCの3つのサブユニットすべて(α又はΔ、β、及びγ)が一過的に又は安定して発現される。用いたENaCサブユニット(若しくは複数のサブユニット)は、天然に存在する形態、SNPを含む変異体、選択的スプライシングされた形態、形態の組合せ又は当分野で知られている任意の機能的な変異体(例えば寄託番号P37088、P51168、P51170、及びP51172参照)であることができる。好ましくは、ENaCは、配列番号1、2、3で核酸配列によってコードされているヒトα、β及びγENaCサブユニット、又は配列番号2、3及び7によってコードされているヒトβ、γ及びΔENaCサブユニットからなる。哺乳動物細胞は、COS、CHO、BHK、MDCK、HEK293、又はHEK293T(大T細胞抗原を発現しているヒト胎児腎臓細胞)などの、当分野で知られている任意の種類であることができる。好ましくは、細胞はHEK293Tである。細胞は、それだけには限定されないがCa2+リン酸塩若しくは脂質に基づいた系、又は既に記載した方法などの当分野で知られている標準の方法を用いて形質移入することができる。
【0132】
その後、これらの形質移入細胞を、好ましくはマルチウェル培養プレートに播種する。その後、機能的な発現を、少なくとも約70%コンフルエントに達するまで、より好ましくは少なくとも約80%コンフルエントに達するまで、又は化合物の添加によって引き起こされる可能性がある流体の攪乱に耐えられる程高密度な細胞層を形成するのに十分な時間進行させる。一般に、少なくとも24時間のインキュベーション時間が十分であるが、より長くすることもできる。その後、細胞を洗浄して増殖培地を取り除き、膜電位色素と共に、播種した細胞の形質膜を横断して色素を平衡化させるのに十分な時間インキュベーションを行った。当業者は、色素を装着させる条件が細胞の種類、色素の種類、インキュベーションパラメータなどの要素に依存することを理解されよう。一実施形態では、色素は最終濃度の約2μM〜約5μMで用い得る。さらに、最適な色素装着時間は、ほとんどの細胞において37℃で約30〜約60分間の範囲であり得る。好ましい実施形態では、膜電位色素はMolecular Devices(カタログ番号R8034)からのものである。他の実施形態では、適切な色素には、例えば、DiBAC、DiSBAC(Molecular Devices)、及びDi−4−ANEPPS(Biotium)などの単一波長系色素、又はDiSBAC2、DiSBAC3、及びCC−2−DMPE(Aurora Biosciences)などの二重波長FRET系色素が含まれる。[化学名:Di−4−ANEPPS(ピリジニウム、4−(2−(6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル)エテニル)−1−(3−スルホプロピル)−、水酸化物、内部塩)、DiSBAC4(2)(ビス−(1,2−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、DiSBAC4(3)(ビス−(1,3−ジバルビツール酸)トリメチンオキサノール)、CC−2−DMPE(Pacific Blue(商標)1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩)及びSBFI−AM(1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタデカン−7,13−ジイルビス(5−メトキシ−6、12−ベンゾフランジイル)]ビス−,テトラ−キス[(アセチルオキシ)メチル]エステル]。
【0133】
一実施形態では、色素を装着させた細胞を、好ましくは既知のENaC阻害剤、例えばフェナミルと接触させ、その後、試験化合物(又は対照)と接触させ、細胞培養物を又はVIPR又はFLIPR(登録商標)などの標準の蛍光分析装置を用いて監視する。NaCl又はENaCに薬理学的に作用する他の試験化合物を添加することにより膜電位の変化が誘発され、その後、これを標準の蛍光強度プレートリーダー(例えばFLIPR)又は電位強度プレートリーダー(例えばVIPR)で静止時の蛍光の変化として検出する。したがって、本発明の方法は、試験細胞中のENaCの活性を監視することによって鹹味調節性化合物を同定するために用いることができる。例えば、蛍光の減少は味覚(鹹味)ブロッカーを示し得、一方、蛍光の増加は味覚(鹹味)相乗剤を示し得る。
【0134】
本発明を一般的に記載したが、本発明は、例示として提供し、限定するものとして意図しない以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。本発明の精神及び範囲から逸脱せずに本明細書中に開示した例示的な実施形態に様々な改変及び変更を行うことができることが理解されよう。
【実施例】
【0135】
(実施例1)
ヒト味覚細胞中で発現されるヒトENaCのα、β及びγサブユニットをコードしているDNA配列を、ヒト腎臓細胞からRT−PCRによってクローニングした。
【0136】
ヒト上皮ナトリウムチャネルサブユニットのDNA配列(ENaC)のクローニング方法
α、β及びγENaCのヒトENaCのcDNAを、それぞれ以下のプライマー対を用いたPCRによって、ヒト腎臓cDNA(Origene Technologies Inc.)から増幅した:


プライマーは、内在性翻訳開始シグナルを保持するために5’及び3’非翻訳領域の配列に相補的であるように設計し、これらにより、機能的な発現実験用に増幅したENaCのcDNAを哺乳動物発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)内にクローニングするために用いた、停止制限エンドヌクレアーゼ部位が導入された。クローニングしたENaCのcDNAの配列決定を行い、公開されているDNAデータバンクのENaC配列と比較した。クローニングしたサブユニットのそれぞれは、様々なデータバンク対立遺伝子中に存在する多型の複合体である。すなわち、クローニングしたサブユニットをデータバンクの対立遺伝子と対で比較することによって同定した、クローニングしたサブユニットのそれぞれの中のすべての多型を、別のデータバンクの対立遺伝子で見つけることができた。さらに、クローニングしたENaCサブユニットの多型性は、個別のPCR実験で増幅したクローニングしたcDNAの配列決定を行うことによって確認された。
【0137】
クローニングした配列α、β及びγhENaCサブユニットをコードしている核酸配列は、それぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3並びに配列番号4、5及び6の対応するアミノ酸配列に含まれる。これらのDNA配列のそれぞれを発現ベクターpcDNA3内に挿入して、ヒトENaCサブユニットポリペプチドを発現するα、β及びγサブユニットプラスミドを作製した。また、ヒトアミロライド感受性ナトリウムチャネルΔサブユニット(ΔNaCh)の核酸配列が配列番号7に含まれており、これは、ENaCαサブユニットと等価に機能する。Δサブユニットのアミノ酸配列は配列番号8に含まれる。HEK293T細胞を、1:1:1の重量比のヒトENaCを発現しているα、β、及びγサブユニットプラスミドを用いて、Ca2+リン酸塩によって一過的に形質移入した。このような形質移入により、擬似形質移入した細胞と比較した場合にNa依存性のアミロライド感受性の蛍光変化が生じた。図1を参照すると、試料A、B、C、及びDは、1:1:1:の比のα、β、及びγサブユニットプラスミドを用いて、それぞれ4、4、1、及び0.25μgの絶対レベルで形質移入した。試料E及びFは、β−gal及びpUC DNAを用いて擬似形質移入した。形質移入の効率は約40%であり、細胞密度は70%であると概算された。細胞は、膜電位蛍光色素を用い、FLIPR I(Molecular Devices)装置を使用して分析した。示したすべての線は、A(n=4)、B、C、D、E、(n=12)、及びF(n=8)を含む単一のプレートからのものである。
【0138】
図1、2、及び3に示したように、静止電位のナトリウム依存性アミロライド感受性の変化(hENaC応答)は、形質移入していないHEK293T細胞では有意に影響が与えられなかった。さらに、このような静止電位変化は、hENaCのαサブユニットのみを形質移入した細胞(データ示さず)と比較して、hENaC3つのサブユニットすべてを形質移入した細胞で大きく増強されていた。さらに、膜電位の変化を誘導するNaClの能力、及びhENaCチャネルの活性をブロックするアミロライドの効果は、低スループットの電気生理学的記録を用いた文献中に報告されているものに類似の用量応答関係に従っている。
【0139】
(実施例2)
ヒトENaCのα、β及びγサブユニットをコードしているDNA配列、すなわちそれぞれ配列番号1、2、及び3を、それぞれ発現ベクターpcDNA3中にクローニングして、ヒトENaCサブユニットポリペプチドを発現するα、β及びγサブユニットプラスミドを作製した。HEK293T細胞を、1:1:1の重量比のヒトENaCを発現しているα、β、及びγサブユニットプラスミド(2μgの各サブユニット/2000万個の細胞)を用いて、リポフェクションによって一過的に形質移入した。形質移入した細胞を384ウェルプレートで平板培養し、電位感受性の蛍光色素を用いてVIPRII装置(Aurora Biosciences)で分析した。ENaCを発現している細胞は、擬似形質移入した細胞と比較して、Na依存性の蛍光変化を示した(図1)。図2では、Na依存性の蛍光変化が、既知のENaC拮抗剤であるフェナミルによって完全に消滅されている。逆に、別の化合物がNa依存性の蛍光変化を増加させることが見出されたが、この効果はフェナミルによって消滅される。この化合物は、ENaCの機能についてのこのアッセイにおいてフェナミルに反して作用するので、ENaC相乗剤であると考えられる。
【0140】
実施例2の方法及び材料:
1.用いたすべての材料が何であるかは以下の「材料セクション」で示す。
2.HEK293T細胞を80%コンフルエントまで増殖させ、酵素溶液(トリプシン/EDTA)を用いて3分間、37Cで培養皿から解離した。脱離させた細胞を、ベンチトップ流動細胞計測器(Guava;Guava Technologies)を用いて密度及び生存度について分析した。85%未満の生存度の細胞は実験から切り捨てた。
[本明細書中の手順は、10個のスクリーニング用384ウェルプレートに相当するHEK293T細胞(200,000,000個の細胞)の形質移入の条件である。これらの条件は、例えば異なる大きさのマルチウェルプレートを用いることによって細胞のコンフルエント状態を増加又は減少させることなどによって変更することができる]
3.解離させた細胞を洗浄し、〜1,000,000個の細胞/mlの密度でその培地(完全)中に回収した。ヒトENaCサブユニットをコードしている哺乳動物発現プラスミドDNAを、等比(10ugのα;10ugのβ及び10ugのγ/20,000,000個の細胞)で、エッペンドルフ中で混合した。その後、170μgの担体プラスミドDNA(pUC−18)をDNA混合物に加えた(合計200μgのDNA/200,000,000個の細胞)。557μlの形質移入試薬TransIT(Panvera Corporation)を、血清及び抗生物質を含まない20mlの培地に加えた。その後、DNA溶液をTransit溶液に加え、DNA−脂質溶液を室温でインキュベーションした。60分後、DNA−脂質の複合体を細胞溶液中に移し、完全細胞培地を用いて体積を320mlに調整し、635,000個の生細胞/mlの最終密度を得た。(既に述べたように、αサブユニットDNAをΔサブユニットDNAで交換して、β、γ及びΔENaCサブユニットからなる機能的ENaCを発現する組換え細胞を産生させてもよい。)
4.黒色の384ウェルポリ−D−リジン透明底面のスクリーニングプレート(Becton Dickinson)を、40μl/ウェルのマトリゲル溶液(20μg/ml;Collaborative Biomedical Products)を用いて、1時間、室温でコーティングした。コーティング溶液を取り除き、細胞を平板培養するまでプレートを室温で維持した。
5.Multidropを用いて、細胞/DNA溶液を50,000個の細胞/ウェル(80μl/ウェル)の密度で384ウェルプレートで平板培養した。
6.平板培養の27時間後、細胞を洗浄し、以下に記載のように膜電位感受性色素(CC2−DMPE及びDiSBAC2(3))を装着させた。
7.細胞を200μMの化合物([2×])で刺激し、電位強度プレートリーダー(VIPRII;Aurora Biosciences Corporation)を用いて線上で読み取る。このアッセイでは化合物の他の濃度も用いることができる。緩衝液の調製及びプレート上の配置は以下のVIPR中に記載されている。アッセイは「室温」、典型的には約22℃で行うが、化合物を加える前に細胞及び試薬を事前に暖める又は冷却することによって、他の温度で行うこともできる。
【0141】
材料
1.150cmのフラスコ(Becton Dickinson、0.2umの通気性Blueplugシールキャップ)で増殖しているHEK293T細胞(37℃、6%CO
2.ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(カタログ番号11965−092 Gibco BRL)(4℃で維持)
3.HEPESを含むDMEM(DMEMH)(カタログ番号12430−054、Gibco BRL)(4℃で維持)
4.胎児性ウシ血清(FBS)(カタログ番号10082−147、Gibco BRL)(20℃で維持)
5.トリプシンEDTA(1×)(カタログ番号25200−072 Gibco−BRL)(−20℃で維持)
6.TransIT−293(カタログ番号MIR2705、Panvera)(4℃で維持)
7.α、β、及びγENaCのDNA調製物(それぞれ1μg/mL)(4℃で維持)
8.pUC18担体DNA((1μg/mL)(4℃で維持)
9.マトリゲル(カタログ番号40230、Collaborative Biomedical Products)
【0142】
2.細胞への装着
HBSS−ハンクス緩衝生理食塩水
DiSBAC(3)、100%DMSO中に5mM、2.5μM
ESS−CY4又はVABSC−1、dHO中に200mM、350μM
VIPR NMDG緩衝液−配合は以下の「VIPRプレート上の配置」セクションを参照:
【表1】

【0143】
CC2−DMPEローディングバッファーの調製
1.同体積のCC2−DMPEストック溶液及びプルロニックF127を混合する。
2.ボルテックス攪拌を行いながら、CC2−DMPE/プルロニック混合物をHBSSに加える。
【0144】
細胞へのCC2−DMPEの装着
1.細胞をCOインキュベーターから取り出す。
2.密度/ウェルのばらつきを探す
3.HBSSを用いてEMBLAの初回刺激を行う
4.細胞を3×80ulのHBSSで洗浄して、残留した増殖培地及び血清を除去する
5.40μLの10μM CC2−DMPEローディングバッファーをそれぞれのウェルに加える
6.密度/ウェルのばらつきを探す
7.30分間、室温、暗所でインキュベーションを行う。
【0145】
DiSBAC(3)ローディングバッファーの調製(CCインキュベーションの間に行うことができる)
1.DiSBAC(3)及びESS−CY4又はVABSC−1、並びにプルロニックF127の2倍体積のDiSBAC2(3)を混合する
2.上記混合物をVIPR NMDG緩衝液に加え、ボルテックス攪拌を行う
【0146】
DiSBAC2(3)ローディングバッファーを用いた細胞への装着
1.NMDG緩衝液を用いてEMBLAの初回刺激を行う
2.CC2−DMPEを装着させた細胞を、VIPR NMDG緩衝液、3×80μ/ウェルを洗浄緩衝液として洗浄する
3.40μの2.5μM DiSBAC2(3)、350μMのESS−CY4又はVABSC−1ローディングバッファーを各ウェルに加える
4.密度/ウェルのばらつきを探す
5.20分間、室温、暗所でインキュベーションを行ったあと、VIPR IIに流す
【表2−1】


【表2−2】

【0147】
(実施例3)
ENaC阻害剤(フェナミル)を用いた改良されたENaCアッセイ
ENaCの機能の調節を、3つの異なるENaCサブユニットを発現しているヒト胚性腎臓(HEK)293細胞中で監視した。HEK293細胞を、ENaCサブユニットプラスミドを用いて、脂質系システムを使用して一過的に形質移入した。形質移入したHEK293細胞を384ウェルスクリーニングプレートに播種し、ENaCの機能的な発現を合計24時間進行させた。その後、細胞を特異的な色素(DisBac2(3)及びCC2−DMPE、Panveraなど)で標識し、これにより、膜電位の僅かな変化の検出が可能となった。ENaCの機能が調節された際の色素の蛍光特性の変化を、電位強度プレートリーダー(VIPR、Panvera)を用いて監視した。この技術を用いて、既知のENaC阻害剤であるフェナミルを増加していく濃度で使用して、ENaCの機能の阻害(膜電位色素の蛍光のNa+誘導性の変化)を検出することができる(図6、青色線)。他方で、ENaC相乗剤(ID番号478354)はENaC活性を大体18%増加させる(図6、赤色及び青色データポイントの差は黒色の四角内)。特に、化合物478354の効果は増加していく濃度のフェナミルにより大きく改良されている(図6、赤色及び青色データポイントの差は黄色の四角内)。このような条件下では、478354は、0.2〜0.5μMのフェナミルの存在下でENaC活性を50〜60%も増大させる。本発明者らは、0.5μMのフェナミルをそれぞれ存在させずに及び存在させて、241回及び835回を超える個別の実験を実施した(図7A及び7B)。これらの実験の間、本発明者らはZ’因子を用いてアッセイウィンドウに対する478354の効果を決定した。Z’とは、その分散に関してハイコントロール及びローコントロールの組の分離を定量することによってシグナルウィンドウの質を評価するために用いる、統計的パラメータである。Z’≧0且つ≦1は、試験した化学的性質をスクリーニング中に比較することができる、意味のあるシグナルウィンドウを示す。フェナミルが存在しない場合は、478354ハイコントロール標準物質によって決定されたシグナルウィンドウは、90%を超える実験で合格しなかった(図2A)。しかし、フェナミルが存在する場合は、478354は85%の実験でシグナルウィンドウを有意に増加させ、Z’のほとんどが0.26の周りにあった(図2B)。
【0148】
これらの結果は、1つ又は複数の潜在的なENaC変調剤、例えばENaC相乗剤でスクリーニングする前にフェナミルなどのENaC阻害剤を使用することにより、シグナル強度が亢進され、したがって、ENaC活性を亢進させる分子をスループットの細胞に基づいたアッセイにおいて同定する可能性が有意に向上されることを示している。
【0149】
(実施例4)
機能的ヒトENaCを発現する両生類卵母細胞を用いた、ENaC変調剤を同定するための電気生理学的アッセイ
卵母細胞発現系は、本質的な利点(発現レベル、強固であること、内在性イオンチャネルの発現が低いことなど)を有し、これにより、ENaCチャネルを通るナトリウムの輸送に対する化合物の効果を検査するのに有用となる。これらの化合物は、鹹味知覚を亢進させるための候補である。卵母細胞発現系は、機能的な研究において、ENaCを含めたイオンチャネルの迅速且つ強固な発現のために以前に用いられている(Dascal、CRC Crit.Rev.Biochem.(1987)22(4):317〜387;Wagner他、Cellular Physiology and Biochemistry(2000)10:1〜12;Canessa他、Nature(1994)367:463〜467)。したがって、この系は、以下に記載の方法及び材料を用いた二電極の電位固定アッセイで使用するために選択した。
【0150】
卵母細胞発現系は、以下のステップ及び方法からなり、これらは集合的にENaC相乗剤についてスクリーニングすることを含む:カエルの手術及び卵母細胞の単離、cRNAの調製、卵母細胞の微量注入、並びに二電極の電位固定の電気生理学的記録を用いた卵母細胞中のENaCの電流の測定。以下の参照文献が、カエルの手術及び卵母細胞の単離(Marcus−Sekura他、Methods in Enzymology(1987)152:284〜288;Goldin、Methods in Enzymology(1992)207:266〜279)、cRNAの調製(Swanson他、Methods in Enzymology(1992)207:310〜319;Goldin他、Methods in Enzymology(1992)207:279〜297)、卵母細胞の微量注入(Matten他、Methods in Enzymology(1995)254;458〜466;Hitchcock他、Methods in Enzymology(1987)152;276〜284)、並びに二電極の電位固定の電気生理学的記録(Stuhmer、Methods in Enzymology(1992)207:319〜339;Wagner他、Cellular Physiology and Biochemistry(2000)10:1〜12)についての一般的な実行について記載している。これらの方法のそれぞれを、ENaC相乗剤のスクリーニングに関連するので、以下に詳述する。
【0151】
カエルの手術及び卵母細胞の単離
長さが9cm以上の、雌の南アフリカ産アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(爪を持ったカエル)をNASCO(ウィスコンシン州Fort Atkinson)から得た。カエルを蒸留水中の0.15%のMS−222(トリカイン又はエチル−3−アミノベンゾエートメタンスルホネート;Sigma)でカエルを麻酔状態にし、氷上に置いた。無菌的な手術道具を用いて、外部の皮膚層及び内部の腹膜層をどちらも貫く1〜2cmの切開を逐次的に腹部に行った。切除した卵巣(1000〜2000個の卵母細胞を含む)をOR−2カルシウム非含有培地(82.5mMのNaCl、2mMのKCl、1mMのMgCl、5mMのHEPES、NaOHでpH7.5)に入れ、使用直前に調製した2mg/mlのIA型コラゲナーゼ(Sigma)で45分間、次いで1mg/mlのIA型コラゲナーゼで15分間、揺動プラットフォーム上、室温で逐次的に消化した。酵素消化後、この時点では卵母細胞の大多数が卵巣葉から放出されているが、卵母細胞をコラゲナーゼ非含有OR−2中ですすぎ、2.5mMのピルビン酸ナトリウムを添加したバルト(Barth)生理食塩水(88mMのNaCl、2mMのKCl、0.82mMのMgSO、0.33mMのCa(NO)2、0.41mMのCaCl、2.4mMのNaHCO、及び5mMのHEPES、pH7.5;Specialty Media)を含むペトリ皿に移した。明白な、メラニン色素の顆粒を含む卵子の暗部に対応する動物極及び卵黄タンパク質を含む卵子の明部に対応する植物極を含む成熟段階がV又はVIの卵母細胞(直径〜1mm)を、微量注入用に選択した。C6針及び3−0黒色編縫合糸(braid suture)(Harvard Apparatus)を用いてカエルを縫合し、2〜3カ月の回復期間後に卵母細胞を単離するために蘇生させた。
【0152】
cRNAの調製
ENaCのcRNAは、本発明者らの以前の特許(国際公開公報WO02/087306A2号)に記載のα、β、及びγヒトENaC DNAプラスミドから、mMESSAGEmMACHINEキットを用いて、製造者の指示に従って産生させた(Ambion)。α及びγENaCではEcoRIで直鎖状にしたDNA、βENaCではXhoIで直鎖状にしたDNAからcRNAをin vitroで転写させるためにT7 RNAポリメラーゼを用いた。完全長の、分解されていないcRNAが産生されたことを確実にするために、cRNAの質は変性アガロースゲル電気泳動並びに260及び280nmでの分光光度吸光の読取りによって確認した。
【0153】
微量注入
ホウケイ酸ガラス製毛細管(World Precision Instruments Inc.)を用いて微量注入針をモデルP−97Flaming/Brownマイクロピペットプーラー(Sutter Instrument Co.)で引き、Micro4微量シリンジポンプコントローラ(World Precision Instruments)を備えたNanoliter2000注入器を用いて後方に鉱物油(Sigma)を充填し、その後、前方にENaCのcRNAを充填した。卵母細胞に、α、β、及びγヒトENaCのcRNAをそれぞれ1〜3ngずつ含む10〜15nlを、動物極n微量注入した。微量注入に次いで、卵母細胞を2,5mMのピルビン酸ナトリウムを添加したバルト溶液を含むガラス製シンチレーションバイアルに移し、18〜19℃で終夜、通常の周囲条件下でインキュベーションを行った。この間に、卵母細胞中で注入されたENaCのcRNAがタンパク質へと翻訳される。
【0154】
二電極の電位固定電気生理学的記録を用いた卵母細胞中のENaCの電流の測定
微量注入の24時間後、ENaCの機能は、二電極の電位固定技法を用いて、OpusXpress6000A平行卵母細胞電位固定システム(Axon Instruments)で、卵母細胞中で測定した。二電極の電位固定技法とは、ENaCなどのタンパク質チャネルを通って卵母細胞膜全体にわたって流れる巨視的な電流を測定する、電気生理学的な方法である(Stuhmer、Methods in Enzymology(1992)207:319〜339)。卵母細胞を電位感知電極及び電流感知電極で穿刺し、電位感知電極を用いて電位、すなわち卵母細胞膜を横断する電位差を特定の値に固定し、電流感知電極を用いて電位を維持するために必要な電流、すなわち卵母細胞膜を横断するイオンの流れを測定した。OpusXpressシステムは、8個の卵母細胞から同時に記録を行うことが可能な、半自動的な二電極の電位固定の作業ステーションである。卵母細胞の穿刺は自動化されており、化合物の送達は96ウェル化合物プレートからのコンピュータ制御された流体取扱い器によって行う。この中スループットのシステムにより、検査することができる化合物の数が従来の単一卵母細胞電位固定システムを用いた週あたり〜1種の化合物から、OpusXpressシステムを用いた週あたり〜60種の化合物まで、劇的に増加する。
【0155】
卵母細胞をOpusXpressシステムに入れ、ND−96溶液(96mMのNaCl、2.5mMのKCl、1mMのCaCl、1mMのMgCl、及び5mMのHEPES、NaOHでpH7.5)に浸した。卵母細胞を電位感知及び電流感知電極で穿刺し、ホウケイ酸ガラス製毛細管(World Precision Instruments Inc.)を用いてモデルP−97Flaming/Brownマイクロピペットプーラー(Sutter Instrument Co.)で引き、後方に塩化銀ワイヤーを含む3MのKClを充填した。電極は、電位感知電極で2〜10メガオーム、電流感知電極で0.5〜2メガオームの抵抗を示した。穿刺のあと、卵母細胞の電位を−60mVに固定し、実験的記録を開始した。データを50Hzで得、4極ベッセルフィルターを用いて5Hzで低域フィルタリングを行った。
【0156】
本発明による卵母細胞アッセイにおいてENaCの亢進について化合物をスクリーニングする好ましい手順は以下のとおりである(図8)。最初に、アミロライドを施用する(1uM;Sigma)。アミロライドは、ENaCチャネルを通るナトリウムの輸送をブロックする阻害剤であり、卵母細胞が機能的ENaCタンパク質を発現することを確認するための内部対照として用いる(Canessa他、Nature(1994)367:463〜467)。次に、アミロライドで処理したあとに卵母細胞膜を横断して流れている電流が減少することから明らかなようにアミロライドの阻害を示している卵母細胞では、化合物を施用する(〜0.1uMから〜100uMまでの濃度)。化合物がENaC相乗剤として機能する場合は、卵母細胞膜内のENaCチャネルを通る電流が増加する。ENaCの機能に対する化合物の効果を定量するためには、以下の式を用いる:[(A−Ao)/(B−Bo)]×−100(式中、Aは化合物で処理したあとの電流であり、Aoは化合物で処理する前の電流であり、Bはアミロライドで処理したあとの電流であり、Boはアミロライドで処理する前の電流である)(図8)。この値から、本発明者らのアッセイにおいて化合物の活性を測定するために用いる%亢進因子が導かれる。例えば、%亢進因子が100%に等しい場合は、その化合物はENaC活性を基底対照値よりも100%増加させる(化合物存在させず)。%亢進因子は、OpusXpressシステム中のそれぞれの卵母細胞について個々に計算し、その後、それぞれの化合物について平均及び標準偏差を決定する(図9)。
【0157】
陰性対照実験をENaCのcRNAを注入していない卵母細胞で行い、これは、ENaCを発現している卵母細胞中の化合物で観察された効果がENaCチャネルを流れる電流によるものであり、卵母細胞膜中で内在的に発現されるチャネルを流れる電流によるものではないことを実証するために行った。(Dascal、CRC Crit.Rev.Biochem.(1987)22(4):317〜387)。ENaCを特異的に亢進している化合物は、注入していない卵母細胞中の電流に影響を与えないはずであり、これは%亢進因子0を示すはずである(図10)。
【0158】
より複雑な分析を、高い%亢進因子を示し、ENaCのcRNAを注入していない卵母細胞に影響を与えない化合物で行った。アッセイには、電流/電位(I/V)曲線、アミロライド競合実験、及び用量応答曲線が含まれる。I/V曲線では、電流を、−100〜+60mVの電位ステップで、20mVずつ増加させて、上述のようにENaCの発現を確認するためにアミロライドを存在させて及び存在させずに測定し、化合物の亢進の規模を調査するために化合物を存在させて及び存在させずに測定した(図11)。すべての非ENaCの電流(アミロライドによってブロックされなかった電流と定義される)を引き算し、I/V曲線をプロットした。I/V曲線の勾配は、目的化合物による電流の亢進の規模の指標である。強力な相乗剤は大きな正勾配のI/V曲線を示す。さらに、I/V曲線のx切片は、二電極の電位固定実験においてどの種のイオンが輸送されているかの指標である。ナトリウムイオンの輸送では、x切片は、卵母細胞中のナトリウムの負荷の程度に応じて、10〜40mVの範囲に入る。ENaCのcRNAを注入していない卵母細胞では、化合物の存在下で行ったI/V曲線は、化合物を存在させずに行ったI/V曲線と同一且つ重ね合わせることができるべきである(図11)。
【0159】
アミロライド競合実験は、望ましくは、化合物の効果がENaC依存性であることを実証するために行う(図12)。最初に、卵母細胞中のENaCの発現を実証するために、アミロライドを上述のように施用する。その後、化合物を施用して%亢進因子を決定する。最後に、アミロライド及び化合物を同時に施用する。相乗剤がENaCチャネルに直接作用するためには、アミロライド及び化合物の同時施用によりアミロライド表現型が示されるべきであり、これは、電流が阻害され、亢進されるのではないことを意味する。このアッセイは、アミロライドによってENaCチャネルが閉じている場合は、化合物は亢進効果を有することができないことを示している。したがって、化合物はENaCチャネルの機能を直接調節しなければならない。
【0160】
用量応答曲線は、化合物が最大半減活性(EC50)を示す濃度を決定するために行う(図13)。EC50が低ければ低いほど、化合物はENaC相乗剤としてより活性である。用量応答曲線は、低い用量(〜1nM)から開始して高い用量(〜1mM)まで進行する、増加していく濃度の相乗剤を逐次的に施用することによって行う。上述のように%亢進因子を計算し、化合物のEC50値を決定するために対数尺上で化合物の濃度の関数としてプロットする。
【0161】
ENaCの機能に対する化合物の効果を検査するために行った実験の順序を概略的に例示する流れ図を図14に示す。これには、−60mVの保持電位でのスクリーニング、I/V曲線、アミロライド競合試験、用量応答曲線、及び注入していない卵母細胞の試験が含まれる。
【0162】
結果の分析
本発明者らの以前の特許出願では(国際公開公報WO02/087306A2号)、HEK293Tヒト胎児腎臓細胞における高スループットの哺乳動物細胞に基づいたアッセイを利用し、そこでは、電位感受性の蛍光プローブを装着させた、ENaCを形質移入した細胞において膜電位をアッセイすることによってENaC活性を間接的に測定した。この手法は高スループットであり、これによりENaCを調節する一部の化合物が同定されたが、残念なことにこれは特異的でなく、同定された化合物の〜90%がENaCの機能を直接調節するのではなく、代わりにHEK293T細胞中で内在的に発現される他のイオンチャネルの活性を調節する可能性が高い。このような高スループットアッセイの有効性は、フェナミル及び上述の類似のENaC阻害剤を用いることによって本発明で改良されている。さらに、本出願は、二電極の電位固定技法を用いて卵母細胞中のENaCナトリウムチャネルの機能を測定するための、より直接的(特異的)であるが、より低いスループットのアッセイ方法も提供する。この系により、迅速且つ強固なイオンチャネル発現が可能となる(僅か約18〜24時間後に、卵母細胞膜中に〜百万個のENaCチャネルを発現させることができる)。卵母細胞発現系の他の利点には、卵母細胞が大きく(直径〜1mM)且つ強固であるので、取扱い及び作業し易くなること;同じ又は異なる目的化合物に対する複数且つ繰り返しの記録を同じ卵母細胞から得ることができること;卵母細胞は、外因的に発現されたイオンチャネルから生じる電流と比較すると、高いバックグラウンドの電流を引き起こすのに十分なレベルの内在性チャネルを僅かしか発現しないこと;及び卵母細胞はイオンチャネルの機能の直接測定を可能にすることが含まれる。したがって、電位感受性のプローブを用いてHEK293T細胞中のENaCの機能を間接的に測定するアッセイとは対照的に、卵母細胞発現系は、事実上バックグラウンドなしでENaCナトリウムチャネルの電流を直接測定することを可能にする。
【0163】
実施例中のENaCサブユニットの核酸及びアミノ酸配列
配列番号1
長さ2010個のヌクレオチド
DNA
ヒトhENaCαクローン#3−1−1コード配列


配列番号2
長さ1923個のヌクレオチド
DNA
ヒトhENaCβクローン#5コード配列


配列番号3
長さ1950個のヌクレオチド
DNA
ヒトhENaCγクローン#3コード配列


配列番号4
長さ669個のアミノ酸
PRT
ヒトhENaCαクローン#3−1−1アミノ酸配列


配列番号5
長さ640個のアミノ酸
PRT
ヒトhENaCβクローン#5アミノ酸配列


配列番号6
長さ650個のアミノ酸
PRT
ヒトhENaCγクローン#3アミノ酸配列


配列番号7
長さ1917個のヌクレオチド
DNA
gi|1066456|gb|U38254.1|HSU38254ヒトアミロライド感受性ナトリウムチャネルδサブユニット(ΔNaCh)mRNA、完全コード配列


配列番号8
長さ638個のヌクレオチド
PRT
gi|1710872|sp|P51172|SCAD_ヒトアミロライド感受性ナトリウムチャネルδサブユニットアミノ酸配列(上皮Na+チャネルδサブユニット)(δENaC)(非電圧下開口性ナトリウムチャネル1δサブユニット)(SCNED)(δNaCh)

【0164】
本発明を実施例及び好ましい実施形態によって記載したが、本明細書中で用いた言葉は、限定するための言葉ではなく説明するための言葉であることが理解されよう。そのより幅広い態様で、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに、添付の特許請求項の範囲内で変更を行ってもよい。本発明は、特定の手段、材料、及び実施形態を参照して本明細書中で記載したが、本発明は開示した特定のものに限定されないことは理解されよう。本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるすべての等価な構造、手段、及び使用にまで広がる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】ナトリウム依存性のアミロライド感受性蛍光変化をもたらすhENaCの機能的な発現を例示している。擬似形質移入した細胞と比較して、1:1:1の比の様々なα、β、及びγヒト腎臓ENaCのサブユニットプラスミドを用いたHEK293T細胞の形質移入により、Na依存性のアミロライド感受性電位変化が生じた。A、B、C、及びDは、111:1の割当のα、β、及びγプラスミドを用いて、それぞれ4、4、1、及び0.25の絶対レベルで形質移入した。E及びFは、β−gal及びpUCを用いて擬似形質移入した。形質移入効率は約40%であり、細胞密度は約70%であった。すべての線は単一のプレート由来であり、A(n=4)、B、C、D、E(n=12)、及びF(n=8)であった。
【図2】hENaCのα、β、及びγを発現しているHEK293T細胞のNaCl用量応答関係を例示している。
【図3】60mMのNaClで処理した、hENaCのα、β、及びγを発現しているHEK293T細胞のアミロライド用量応答関係を例示している。
【図4】電位イメージングプレートリーダー(VIPR)を用いた、ENaCを発現しているHEK293T細胞のNaCl用量応答関係を例示している。HEK293T細胞に、ENaCサブユニット発現プラスミド(ENaC)又は担体プラスミド(擬似)を形質移入した。24時間後、細胞に膜電位色素を装着させ、Na+刺激に応答した細胞の蛍光の変化をVIPRII(Aurora Biosciences)で監視した。ENaCを発現している細胞のみがNa濃度の増加に応答して変化を示した。
【図5】ヒトENaCを発現しているHEK2933T細胞のNaCl用量応答関係を例示している。HEK293T細胞に、ENaCサブユニット発現プラスミド(ENaC)を形質移入した。24時間後、細胞に膜電位色素を装着させ、Na刺激に応答した細胞の蛍光の変化をVIPRII(Aurora Biosciences)で監視した。ENaC拮抗剤であるフェナミルは、Na誘導性の蛍光変化を阻害した。逆に、ENaC相乗剤である化合物「X」はNa誘導性の蛍光変化を増大させ、この効果はフェナミルによって阻害される。
【図6】ENaC活性に対する、増加していく濃度のフェナミルの効果を示す図である。青色線:フェナミルによるENaC活性の阻害。赤色線:100μMのENaC相乗剤である化合物478354の存在下における、フェナミルによるENaC活性の阻害。黒色ボックスは、フェナミルが存在しない場合の化合物478354の効果を示すデータを含む。黄色ボックスは、増加していく濃度のフェナミルが存在することによる、増強された478354の効果を示すデータを含む。
【図7A】フェナミルが存在しない場合のZ’の分布を示す図である。「Z」は、1−((ENaCの3×標準偏差は化合物478354の存在下におけるENaC応答の3×標準偏差に応答する)/(478354の存在下における平均ENaC活性−平均ENaC活性))として定義される。ほとんどのZ’値は0未満であり、これは、ハイコントロールで用いた場合に、479354は意味のあるアッセイウィンドウを提供できないことを示している。
【図7B】0.5μMのフェナミルの存在下におけるZ’の分布を示す図である。Zは、1−((ENaC応答の3×標準偏差+478354の存在下におけるENaC応答の3×標準偏差)/(478354の存在下における平均ENaC活性−平均ENaC活性))として定義される。ほとんどのZ値は>0且つ≦1であり、これは、ハイコントロールとして用いた場合に、478354はフェナミルの存在下において意味のあるアッセイウィンドウを提供できることを示している。
【図8】ENaC活性を増大させる化合物についてヒトENaCのcRNAを注入した卵母細胞をスクリーニングする例を例示している。スクリーニングしたそれぞれの化合物について、%亢進因子を計算した。この値は、化合物による電流変化の規模/アミロライドによる電流変化の規模×−100%に対応する。この例では、−60mVに電位固定した可能な最大8個の卵母細胞のうち7個において、OpusXpressシステムで2つの化合物を逐次に再度スクリーニングした。測定した卵母細胞電流に対するアミロライドの阻害効果から明らかなように、7個の卵母細胞すべてがENaCが発現する。
【図9】ヒトENaCのcRNAを注入したそれぞれの卵母細胞について%亢進因子をどのように計算したかの例を例示している。スクリーニングしたそれぞれの化合物について%亢進因子を決定し、平均し、標準偏差を決定した。この場合、化合物1及び化合物2は、図8で2〜8と番号付けした細胞においてスクリーニングを行った化合物に対応する。
【図10】ヒトENaCのcRNAを注入していない卵母細胞のスクリーニングの例を例示している。化合物は卵母細胞膜内で内在的に発現されるイオンチャネルの活性に影響を与えず、これは、化合物の活性がENaC依存性であり、ENaCチャネルを流れる巨視的なナトリウム電流が増加することに起因することを例示している。また、この図は、ENaCナトリウムチャネルが発現されないことにより、アミロライドが注入していない卵母細胞に影響を与えないことを示している。
【図11】ヒトENaCのcRNAを注入した卵母細胞又は注入していない卵母細胞における、化合物が存在する場合及び存在しない場合のI/V曲線の例を例示している。注入した卵では、化合物はI/V曲線の勾配を増加させ、注入していない卵母細胞では、化合物はI/V曲線の勾配に影響を与えない(すなわち、化合物が存在する場合と存在しない場合の曲線が同じである)。
【図12】アミロライド競合実験の例を例示している。ヒトENaCのcRNAを注入した卵母細胞では、アミロライド+化合物を同時に施用することによってはENaCチャネルを流れるナトリウム電流が増大しない。これは、化合物がENaCチャネルに直接働きかけていることを示す。アミロライドによりENaCチャネルが閉じている場合は、化合物はENaCの機能を亢進することができない。
【図13】ヒトENaCのcRNAを注入した卵母細胞における2つの化合物の用量応答曲線の例を例示している。化合物Aは、そのEC50がより大きいこと(化合物Aでは5.4uM;対照的に化合物Bでは0.47uM)及び右にシフトした用量応答曲線から、化合物Bよりも弱いことが明らかである。
【図14】卵母細胞発現系においてヒトENaC活性に対する化合物の効果を検査するために用いた、二電極の電位固定(TEVC)技法を用いた1組の実験を模式的に例示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮ナトリウムチャネル(ENaC)に対する推定される変調剤のプロファイリング及びスクリーニングを行うための、哺乳動物細胞に基づいた高スループットアッセイであって、
α、β及びγサブユニット若しくはΔ、β及びγサブユニット、又はこれら3つのサブユニットのそれぞれの変異体、断片若しくは機能的な等価物を発現しており、膜電位蛍光色素又はナトリウム蛍光色素を事前に装着させた試験細胞と、少なくとも1つの既知のENaC阻害剤とを、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する条件下で接触させ、その後、前記試験細胞と少なくとも1つの推定される変調剤化合物とを、ナトリウム又はリチウムの存在下で接触させること;並びに
前記推定される変調剤/ENaCの相互作用の存在下における、陰イオンに媒介される前記試験細胞の蛍光の変化を、前記変調剤が存在しない場合の変化と比較して監視し、ENaCの調節の程度を決定すること
を含むアッセイ。
【請求項2】
前記既知のENaC阻害剤がアミロライド誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、フェナミル、ベンザミル、エチルイソプロピルアミロライド;2’,4’−ジメチルベンザミル(DMB)、5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’−ジメチルベンザミル(CBDMB);3’,4’−ジクロロベンザミル;5−(N−メチル−N−グアニジノカルボニル)メチルアミロライド、5−(N,N−ヘキサメチレン)アミロライド;5(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA);5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミル;2’,4’;−ジメチル2’,3’−ベンザミル2’,3’−ベンゾベンザミル;及び5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミルからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がフェナミルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記陰イオンがナトリウムである、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項6】
前記陰イオンがリチウムである、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項7】
前記試験細胞が、MDCK、HEK293、HEK293T、BHK、COS、NIH3T3、Swiss3T3及びCHOからなる群から選択される、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項8】
前記細胞がHEK293細胞である、請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項9】
前記HEK293細胞がHEK293T細胞である、請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項10】
前記方法は、検出可能な蛍光の変化に基づいて特に味覚を調節するものとして化合物を同定するために用いる、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項11】
前記味覚が鹹味である、請求項10に記載のアッセイ方法。
【請求項12】
前記試験細胞をマルチウェル試験プレートのウェルに播種する、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項13】
前記試験細胞と推定される変調剤との接触は、前記推定される調節を前記マルチウェル試験プレートのウェルに加えることによって行う、請求項12に記載のアッセイ方法。
【請求項14】
蛍光の変化の検出を可能にする膜電位色素を前記試験細胞に装着させる、請求項13に記載のアッセイ方法。
【請求項15】
前記試験細胞がα、β及びγENaCサブユニットのそれぞれを発現する、請求項14に記載のアッセイ方法。
【請求項16】
前記サブユニットがそれぞれ配列番号1、2及び3、若しくはその断片、又はそれにハイブリダイズし、且つ機能的hENaCサブユニットをコードしているDNA配列によってコードされている、請求項15に記載のアッセイ方法。
【請求項17】
前記サブユニットが配列番号1、2及び3によってコードされている、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項18】
前記試験細胞がhENaCのβ、γ及びΔサブユニット又はその断片若しくは変異体を発現する、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項19】
前記β、γ及びΔサブユニットがそれぞれ配列番号2、3及び7によってコードされている、請求項18に記載のアッセイ方法。
【請求項20】
前記ENaCサブユニットがすべて、ヒト腎臓cDNAからクローニングしたヒトENaCサブユニットを含む、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項21】
前記ENaCサブユニットがヒト肺cDNAからクローニングしたヒトENaCサブユニットを含む、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項22】
前記ENaCがヒト味覚細胞cDNAからクローニングしたヒトENaCのDNA配列によってコードされているヒトENaCである、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項23】
前記ENaCがα(又はΔ)、β及びγサブユニットからなり、天然に存在するヒトENaC、選択的スプライシングされたヒトENaC、その機能的な変異体、又はその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項24】
蛍光プレートリーダーを用いて蛍光の変化を監視する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項25】
電位イメージングプレートリーダーを用いて蛍光の変化を監視する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項26】
前記膜電位色素が、Molecular Devices膜電位キット(カタログ番号R8034)、Di−4−ANEPPS(ピリジニウム、4−(2−(6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル)エテニル)−1−(3−スルホプロピル))−、水酸化物、内部塩)、DiSBACC4(2)(ビス−(1,2−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、DiSBAC4(3)(ビス−(1,3−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、CC−2−DMPE(Pacific Blue(商標)1,2−ジエトラデカノイル−sn−グリセロール−3−ホスホエタノールミン、トリエチルアンモニウム塩)及びSBFI−AM(1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタデカン−7,13−ジイルビス(5−メトキシ−6,12−ベンゾフランジイル)]ビス−、テトラキス[(アセチルオキシ)メチル]エステル;(Molecular Probes)からなる群から選択される、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項27】
上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の活性を監視する方法であって、
α(又はΔ)、β、及びγENaCサブユニット、スプライシング変異体、断片並びにそのサブユニットの組合せからなる機能的ENaCを形質移入した試験細胞を提供すること;
前記試験細胞を前記マルチウェルプレートのウェルに播種し、少なくとも約70%コンフルエントに達するのに十分な時間インキュベーションを行うこと;
前記マルチウェルプレートのウェル中で、膜電位色素を用いて前記播種した試験細胞に色素を装着させること;
前記色素を装着させた宿主細胞と少なくとも1つの既知のENaC阻害剤とを、ENaCの機能を少なくとも部分的に阻害する濃度で接触させること;
前記色素を装着させた試験細胞と少なくとも1つの推定される調節性化合物及びナトリウムとを、前記マルチウェルプレートのウェル中でさらに接触させること;並びに
蛍光プレートリーダー又は電位強度プレートリーダーを用いて、相乗剤/ENaCの相互作用による前記膜電位色素の蛍光の変化をすべて監視すること
を含む方法。
【請求項28】
前記試験細胞がHEK293細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記試験細胞がHEK293T細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記α、β及びγサブユニットがそれぞれ配列番号1、2及び3によってコードされている、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記既知のENaC阻害剤がアミロライド誘導体である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、フェナミル、ベンザミル、エチルイソプロピルアミロライド;2’,4’−ジメチルベンザミル(DMB)、5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’−ジメチルベンザミル(CBDMB);3’,4’−ジクロロベンザミル;5−(N−メチル−N−グアニジノカルボニル)メチルアミロライド、5−(N,N−ヘキサメチレン)アミロライド;5(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA);5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミル;2’,4’;−ジメチル2’,3’−ベンザミル2’,3’−ベンゾベンザミル;及び5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミルからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物がフェナミルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記Δ、β及びγサブユニットがそれぞれ配列番号7、2及び3によってコードされている、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記試験細胞がHEK293である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記膜電位色素を、内部に前記試験細胞を播種した前記マルチウェルプレートのウェルに加えることによって、前記試験細胞に色素を装着させ、前記試験細胞の膜にわたって前記色素が平衡化されるのに十分な時間の間インキュベーションを行う、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記膜電位色素を最終濃度の約2μM〜約5μMの濃度で前記マルチウェルプレートのウェルに加える、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記膜電位色素が、Molecular Devices膜電位キット(カタログ番号R8034)、Di−4−ANEPPS(ピリジニウム、4−(2−(6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル)エテニル)−1−(3−スルホプロピル)−、水酸化物、内部塩)、DiSBAC4(2)(ビス−(1,2−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、DiSBAC4(3)(ビス−(1,3−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、CC−2−DMPE(Pacific Blue(商標)1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロール−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩)、SBFI−AM(1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタデカン−7,13−ジイルビス(5−メトキシ−6,12−ベンゾフランジイル)]ビス−、テトラキス[(アセチルオキシ)メチル]エステル;(Molecular Probes上)からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記ENaCがヒト腎臓cDNAからクローニングしたENaCサブユニットのDNAによってコードされているヒトENaCである、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記ENaCがヒト肺cDNAからクローニングしたENaCサブユニットのDNAによってコードされているヒトENaCである、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記ENaCがヒト味覚細胞cDNAからクローニングしたENaCサブユニットのDNAによってコードされているヒトENaCである、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
前記ENaCが、天然に存在するヒトENaCサブユニット、選択的スプライシングされたヒトENaCサブユニット、その機能的な変異体、並びに前記細胞がα、β及びγサブユニットを発現する組合せからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記ENaCが天然に存在するヒトENaCのα(又はΔ)、β及びγサブユニット、若しくはその選択的スプライシングされた変種又はその組合せを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記試験細胞が、MDCK、HEK293、HEK293T、COS、BHK、NIH3T3、Swiss3T3及びCHO細胞、からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項45】
前記試験細胞を80%コンフルエントまで増殖させる、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
鹹味調節性化合物の同定方法であって、機能的ヒトENaC;スプライシング変異体、キメラ又はその断片を用いて形質移入若しくは形質転換させた試験細胞を提供すること;
前記試験細胞を前記マルチウェルプレートのウェルに播種し、少なくとも約70%コンフルエントに達するのに十分な時間インキュベーションを行うこと;
前記マルチウェルプレートのウェル中で、膜電位色素を用いて前記播種した試験細胞に色素を装着させること;
前記試験細胞と少なくとも1つの既知のENaC阻害剤化合物とを、ENaCの機能が少なくとも部分的に阻害される濃度で接触させること;
前記色素を装着させた試験細胞と少なくとも1つの推定される調節性化合物及びナトリウムとを、前記マルチウェルプレートのウェル中でさらに接触させること;
蛍光プレートリーダー又は電位強度プレートリーダーを用いて、相乗剤/ENaCの相互作用による前記膜電位色素の蛍光の変化をすべて監視すること;及び
監視された蛍光の変化に基づいて、前記少なくとも1つの推定される変調剤を鹹味調節性化合物として同定すること
を含む方法。
【請求項47】
前記既知のENaC阻害剤がアミロライド誘導体である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が、フェナミル、ベンザミル、エチルイソプロピルアミロライド;2’,4’−ジメチルベンザミル(DMB)、5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’−ジメチルベンザミル(CBDMB);3’,4’−ジクロロベンザミル;5−(N−メチル−N−グアニジノカルボニル)メチルアミロライド、5−(N,N−ヘキサメチレン)アミロライド;5(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA);5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミル;2’,4’;−ジメチル2’,3’−ベンザミル2’,3’−ベンゾベンザミル;及び5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミルからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記阻害剤がフェナミルである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
鹹味知覚に対する効果について同定したENaC調節性化合物を評価することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記試験細胞がMDCK、HEK293、HEK2933T、COS、BHK、NIH3T3、Swiss3T3及びCHOからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記試験細胞がHEK293細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記試験細胞がHEK2933T細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞がHEK293細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記HEK293細胞がHEK293T細胞である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記方法は、検出可能な蛍光の変化に基づいて特に味覚を調節するものとして化合物を同定するために用いる、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記味覚が鹹味である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記試験細胞をマルチウェル試験プレートのウェルに播種し、約80%コンフルエントまで増殖させる、請求項46に記載のアッセイ方法。
【請求項59】
前記試験細胞と推定される変調剤との接触は、前記推定される変調剤を前記マルチウェル試験プレートのウェルに加えることによって行う、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
蛍光の変化の検出を可能にする膜電位色素を前記試験細胞に装着させる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記試験細胞がα、β及びγENaCサブユニットのそれぞれを発現する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記サブユニットがそれぞれ配列番号1、2及び3、若しくはその断片、又はそれにハイブリダイズし、且つ機能的hENaCサブユニットをコードしているDNA配列によってコードされている、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記サブユニットが配列番号1、2及び3によってコードされている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記試験細胞がhENaCのβ、γ及びΔサブユニット又はその断片若しくは変異体を発現する、請求項46に記載の方法。
【請求項65】
前記β、γ及びΔサブユニットがそれぞれ配列番号2、3及び7によってコードされている、請求項18に記載の方法。
【請求項66】
前記ENaCサブユニットがすべて、ヒト腎臓cDNAからクローニングしたヒトENaCサブユニットを含む、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項67】
前記ENaCサブユニットがすべて、ヒト肺cDNAからクローニングしたヒトENaCサブユニットを含む、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項68】
前記ENaCがヒト味覚細胞cDNAからクローニングしたヒトENaCのDNA配列によってコードされているヒトENaCである、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項69】
前記ENaCが、天然に存在するヒトENaC、選択的スプライシングされたヒトENaC、その機能的な変異体、若しくはそのサブユニットの組合せからなる群から選択されるα(又はΔ)、β及びγサブユニットからなる、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項70】
蛍光プレートリーダーを用いて蛍光の変化を監視する、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項71】
電位イメージングプレートリーダーを用いて蛍光の変化を監視する、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項72】
前記膜電位色素が、Molecular Devices膜電位キット(カタログ番号R8034)、Di−4−ANEPPS(ピリジニウム、4−(2−(6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル)エテニル)−1−(3−スルホプロピル))−、水酸化物、内部塩)、DiSBACC4(2)(ビス−(1,2−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、DiSBAC4(3)(ビス−(1,3−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、CC−2−DMPE(Pacific Blue(商標)1,2−ジエトラデカノイル−sn−グリセロール−3−ホスホエタノールミン、トリエチルアンモニウム塩)及びSBFI−AM(1,3−ベンゼン−ジカルボン酸、4,4’−[1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタデカン−7,13−ジイルビス(5−メトキシ−6,12−ベンゾフランジイル)]ビス−、テトラキス[(アセチルオキシ)メチル]エステル;(Molecular Probes)、からなる群から選択される、請求項46に記載のアッセイ。
【請求項73】
hENaCを調節する化合物の同定方法であって、
(i)機能的ENaCを発現する組換え哺乳動物細胞とENaCの機能を阻害することが知られている化合物とを接触させ、この細胞と上皮ナトリウムチャネルを調節すると推定される候補化合物とをさらに接触させること;及び
(ii)前記候補化合物が前記hENaCを調節する若しくはそれに結合するかどうか、及び/又は前記hENaCの活性に影響を与えるかどうかを決定すること
を含む方法。
【請求項74】
前記哺乳動物細胞がMDCK、BHK、HEK293、HEK293T、COS、NIH3T3、Swiss3T3及びCHOからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記哺乳動物細胞がHEK293細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記細胞が前記α(又はΔ)、β及びγENaCサブユニットを一過的に又は安定して発現する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記哺乳動物細胞がマルチウェル試験プレート装置中に含まれる、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記哺乳動物細胞に膜電位色素を装着させ、推定されるENaC変調剤及びナトリウムと接触させ、電位強度プレートリーダー又は蛍光プレートリーダーを用いて蛍光の変化を監視する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記哺乳動物細胞を約80%コンフルエントまで増殖させる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記膜電位色素がCC2−DMPVE又はDiSBAC2(3)及びESS−CY4である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記色素がローディングバッファー中に含まれる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
細胞に前記色素を装着させたあと、細胞密度のばらつきを評価する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
既知のENaC阻害剤がアミロライド誘導体である、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記化合物が、フェナミル、ベナズミル、エチルイソプロピルアミロライド;2’,4’−ジメチルベンザミル(DMB)、5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’−ジメチルベンザミル(CBDMB);3’,4’−ジクロロベンザミル;5−(N−メチル−N−グアニジノカルボニル)メチルアミロライド、5−(N,N−ヘキサメチレン)アミロライド;5(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA);5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミル;2’,4’;−ジメチル2’,3’−ベンザミル2’,3’−ベンゾベンザミル;及び5−(N−4−クロロベンジル)−2’,4’ジメチルベンザミル、からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記化合物がフェナミルである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
配列番号1、2及び3に含まれる核酸配列若しくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそれにハイブリダイズする核酸配列によってコードされているα、β、及びγサブユニットを含む機能的ヒトENaCナトリウムチャネルを発現するか、又は配列番号7、2及び3に含まれる核酸配列によってコードされているα、β、及びγサブユニットを含む卵母細胞。
【請求項87】
哺乳動物、両生類、トリ又は爬虫類の卵母細胞である請求項1に記載の卵母細胞。
【請求項88】
カエル卵母細胞である請求項1に記載の卵母細胞。
【請求項89】
配列番号1、2、及び3に含まれる核酸配列を発現する、請求項88に記載の卵母細胞。
【請求項90】
配列番号7、2及び3に含まれる核酸配列を発現する、請求項88に記載の卵母細胞。
【請求項91】
機能的ヒトENaCナトリウムチャネルを発現する卵母細胞を、推定されるヒトENaC調節性化合物と共に利用する、ヒトENaCの変調剤の同定方法であってい、前記ENaCチャネルを通るナトリウム輸送に対する前記化合物の効果のアッセイを行い、ナトリウム輸送に対するその亢進又は阻害効果に基づいて前記化合物がENaC変調剤であるかどうかを同定する方法。
【請求項92】
電気生理学的アッセイである請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記アッセイが二電極の電位固定技法である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記卵母細胞が哺乳動物、両生類、トリ又は爬虫類の卵母細胞である、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記卵母細胞が両生類卵母細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記卵母細胞がカエル卵母細胞である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記アッセイが電気生理学的アッセイである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記アッセイが二電極の電位固定技法である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
ヒトENaC相乗剤を同定するために用いる、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
ヒトENaC阻害剤を同定するために用いる、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記カエル卵母細胞が配列番号1、2及び3又は配列番号7、2及び3に含まれる核酸配列を発現する、請求項96に記載の方法。
【請求項102】
前記卵母細胞を推定されるヒトENaC相乗剤と接触させる前に、ヒトENaCの阻害剤と接触させる、請求項97に記載の方法。
【請求項103】
前記既知の阻害剤がアミロライド又はフェナミルである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記推定されるヒトENaC相乗剤がヒトENaCを特異的に亢進する能力を、電流/電位(I/V)曲線分析、アミロライド競合分析、及び用量応答分析からなる群から選択される少なくとも1つの追加のアッセイで評価する、請求項99に記載の方法。
【請求項105】
ヒトENaCのcRNAを微量注入していない卵母細胞を用いた陰性対照をさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
前記推定されるヒトENaC相乗剤及びアミロライドを、ヒトENaCを発現しているカエル卵母細胞に同時に施用する、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記推定される変調剤を約1nM〜約1mMの範囲の濃度で施用する、請求項99に記載の方法。
【請求項108】
前記ヒトENaC相乗剤が少なくとも20%の亢進因子を示す、請求項99に記載の方法。
【請求項109】
前記ヒトENaC相乗剤が少なくとも50%の亢進因子を示す、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記ヒトENaC相乗剤が少なくとも100%の亢進因子を示す、請求項108に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−528712(P2007−528712A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518896(P2006−518896)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/021853
【国際公開番号】WO2005/014848
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(502362806)セノミックス、インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】