説明

ヒトGIL−19/AE289タンパク質、及び、同タンパク質をコードするポリヌクレオチド

【課題】インターロイキン−10(IL−10)に対して高い相同性を示す新規なヒトGIL−19/AE289タンパク質を提供する。
【解決手段】このようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドも包含され、これらのポリヌクレオチド及びタンパク質の治療上、診断上及び研究上の利用法。さらに、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及びほ乳類細胞を含め、このようなポリヌクレオチド組成物で形質転換したホスト細胞であり、さらにここに開示したポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子の発現を向上させた、減少させた、又は改変した生物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参考
本発明は、1999年4月28日に出願された(係属中の)先願の暫定出願である米国特許出願第60/131,473号、題名「ヒトTIF/AE289タンパク質、及び、同タンパク質をコードするポリヌクレオチド」の利益を請求するものである。上記の特許出願の内容全体を、この言及をもってここに編入することとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、インターロイキン−10(IL−10)に対して相同性を示す新規なタンパク質、及び、このようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドや、これらのポリヌクレオチド及びタンパク質の治療上、診断上及び研究上の利用法を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
タンパク質因子(例えばリンホカイン、インターフェロン、CSF及びインターロイキンなどのサイトカインなどを含む)の発見を目指した技術は、過去10年の間に急速に成熟してきた。現在、日常的な技術であるハイブリダイゼーション・クローニング技術及び発現クローニング技術は、発見したタンパク質に直接関連する情報(即ち、ハイブリダイゼーション・クローニングの場合には当該タンパク質の部分的DNA/アミノ酸配列であり、発現クローニングの場合には当該タンパク質の活性である)に依拠するという意味で、新規なポリヌクレオチドを「直接」クローンする。より最近の「間接的な」クローニング技術には、例えば、今ではよく認識された分泌リーダ配列モチーフの存在に基づいてDNA配列を単離するシグナル配列クローニングや、様々なPCRに基づいたクローニング技術又は低緊縮ハイブリダイゼーション・クローニング技術があり、これらのおかげで当業の水準が進歩し、リーダ配列クローニングの場合には分泌した性質を利用して、又は、PCRに基づく技術の場合には細胞又は組織源を利用して、生物活性を有すると判明しているタンパク質に関する多数のDNA/アミノ酸配列を得られるようになった。これらのタンパク質、及び、それらをコードするポリヌクレオチドに、本発明は関するものである。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
一実施例では、本発明は:
(a)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含んで成るポリヌクレオチド、
(b)ヌクレオチド65番からヌクレオチド601番までのSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含んで成るポリヌクレオチド、
(c)受託番号ATCC 207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289の完全長タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列を含んで成るポリヌクレオチド、
(d)受託番号ATCC 207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289のcDNAインサートにコードされた完全長タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(e)受託番号ATCC 207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289の成熟タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列を含んで成るポリヌクレオチド、
(f)受託番号ATCC 207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289のcDNAインサートにコードされた成熟タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(g)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含んで成るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(h)生物活性を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列の一フラグメントを含んで成るタンパク質をコードするポリペプチドであって、前記フラグメントが、SEQ ID NO:2のうちの連続した8つのアミノ酸を含んで成る、ポリヌクレオチド、
(i)上記(a)−(f)のポリヌクレオチドの対立遺伝子バリアントであるポリヌクレオチド、
(j)上記(g)又は(h)のタンパク質の種間相同体をコードするポリヌクレオチド、
(k)(a)−(h)に示したポリヌクレオチドのいずれか一つに緊縮条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、及び
(l)(a)−(h)に示したポリヌクレオチドのいずれか一つに緊縮条件下でハイブリダイズし、SEQ ID NO:1の長さの少なくとも25%の長さを有するポリヌクレオチド、
からなる群のうちのいずれかから選択される単離されたポリヌクレオチドを含んで成る組成物を提供する。
【0005】
好ましくは、このようなポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド65番からヌクレオチド601番までのヌクレオチド配列;受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289の完全長タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列;又は、受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289の成熟タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列(例えばSEQ ID NO:1のヌクレオチド1番から1177番など)を含んで成る。別の好適な実施例では、当該ポリヌクレオチドは、受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289のcDNAインサートがコードする完全長又は成熟タンパク質(例えばSEQ ID NO:2のアミノ酸1番から179番まで)をコードしている。さらに好適な実施例では、本発明は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の一フラグメントを含んで成る、生物活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記フラグメントが、好ましくはSEQ ID NO:2の8個の(より好ましくは20個の、最も好ましくは30個の)連続したアミノ酸を含んで成る、ポリヌクレオチドか、又は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の一フラグメントを含んで成る、生物活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記フラグメントが、SEQ ID NO:2のアミノ酸84番からアミノ酸93番までのアミノ酸配列を含んで成る、ポリヌクレオチド、を提供するものである。
【0006】
その他の実施例は、SEQ ID NO:1のcDNA配列に相当する遺伝子を提供する。
【0007】
本発明の更なる実施例は、
(a)(i)(aa)SEQ ID NO:1の3’端のポリ(A)の尾を除いたSEQ ID NO:1、及び
(ab)受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−1 9/AE289のcDNAインサートのヌクレオチド配列、
からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列に65℃の6倍のSSC中でハイブリダイズする一つ又はそれ以上のポリヌクレオチド・プローブを作製するステップと、
(ii)前記プローブをヒトゲノムDNAに、少なくとも、50℃の4倍のSSCといった緊縮な条件下で、ハイブリダイズさせるステップと、
(iii)前記プローブで検出されたDNAポリヌクレオチドを単離するステップと
を含むプロセス、及び
(b)(i)(ba)SEQ ID NO:1の3’端のポリ(A)の尾を除いたSEQ ID NO:1、及び
(bb)受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−1 9/AE289のcDNAインサートのヌクレオチド配列、
からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列に65℃の6倍のSSC中でハイブリダイズする一つ又はそれ以上のポリヌクレオチド・プライマを作製するステップと、
(ii)前記プライマをヒトゲノムDNAに、少なくとも、50℃の4倍のSSCといった緊縮な条件下で、ハイブリダイズさせるステップと、
(iii)ヒトDNA配列を増幅するステップと、
(iv)ステップ(b)(iii)のポリヌクレオチド生成物を単離するステップと
を含むプロセス
からなる群のうちのいずれかから選択されるプロセスに基づいて生成された、単離ポリヌクレオチドを提供するものである。好ましくは、上記のプロセスに基づいて単離されるポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1のcDNA配列に相当するヌクレオチド配列を含んで成り、但し当該ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1の5’端に相当するヌクレオチド配列から、SEQ ID NO:1の3’端に相当するヌクレオチド配列まで連続して延びた、しかしSEQ ID NO:1の3’端にあるポリ(A)の尾を除いた配列である。また、好ましくは、上記のプロセスに基づいて単離されるポリヌクレオチドが、ヌクレオチド65番からヌクレオチド601番までのSEQ ID NO:1のcDNA配列に相当するヌクレオチド配列を含んで成り、但し当該ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド65番からヌクレオチド601番までのSEQ ID NO:1の前記配列の5’端に相当するヌクレオチド配列から、ヌクレオチド65番からヌクレオチド601番までのSEQ ID NO:1の前記配列の3’端に相当するヌクレオチド配列まで連続して延びた配列である。
【0008】
別の実施例では、本発明は、ある一つのタンパク質を含んで成る組成物を提供するものであり、但し当該タンパク質は、
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、
(b)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の一フラグメントであって、SEQ ID NO:2の連続した8個のアミノ酸を含んで成る、フラグメント、及び
(c)受託番号ATCC207231で寄託されたクローンhGIL−19/AE289のcDNAインサートがコードするアミノ酸配列
からなる群のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含んで成り、その他のほ乳類タンパク質を略、含まない。好ましくは、このようなタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含んで成るとよい。さらに好適な実施例では、本発明は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列の、生物活性を有するフラグメントを含んで成るタンパク質を提供するものであり、但し当該フラグメントは、好ましくはSEQ ID NO:2のアミノ酸のうちの連続した8個(より好ましくは20個、最も好ましくは30個)のアミノ酸を含んで成るとよい。
【0009】
いくつかの好適な実施例では、前記ポリヌクレオチドは、機能可能なよう、発現制御配列に連結されている。さらに本発明は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及びほ乳類細胞を含め、このようなポリヌクレオチド組成物で形質転換したホスト細胞も提供する。さらに本発明は、ここに開示したポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子の発現を向上させた、減少させた、又は改変した生物も提供する。
【0010】
さらに、
(a)このようなポリヌクレオチド組成物で形質転換したホスト細胞の培養物を適した培地で成長させるステップと、
(b)前記培養物からタンパク質を精製するステップと
を含む、タンパク質を生成するプロセスも提供する。本発明では、このような方法で生成されるタンパク質も提供する。
【0011】
本発明のタンパク質組成物は、さらに薬学的に容認可能な担体を含んで成っていてもよい。このようなタンパク質と特異的に反応する抗体を含んで成る組成物も、本発明により提供する。
【0012】
さらに、本発明のタンパク質及び薬学的に容認可能な担体を含んで成る組成物を治療上有効量、ほ乳類の被験体に投与するステップを含む、医学的状態を防止する、治療する又は改善する方法も、提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はムス−ムスキュラスのDNA配列である。
【0014】
詳細な説明
単離タンパク質及びポリヌクレオチド
本出願に開示した各クローン及びタンパク質のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の、今の段階で決定されているものを、下に報告する。各クローンのヌクレオチド配列は、寄託されているクローンを公知の方法で配列決定すれば、容易に決定することができる。こうして、推定アミノ酸配列(完全長及び成熟型の両方)をこのようなヌクレオチド配列から決定することができる。特定のクローンがコードするタンパク質のアミノ酸配列も、適したホスト細胞内でそのクローンを発現させ、タンパク質を採集し、その配列を決定すれば、決定が可能である。
【0015】
ここで用いた「分泌」タンパク質とは、適したホスト細胞内で発現させたときに、そのアミノ酸配列中のシグナル配列の結果としての輸送も含め、膜を横切って又は膜を通って輸送されるものである。「分泌」タンパク質には、限定はしないが、それが発現された細胞内から完全に分泌されるタンパク質(例えば可溶性タンパク質)や、部分的に分泌されるタンパク質(例えば受容体)が含まれる。さらに「分泌」タンパク質には、限定はしないが、小胞体の膜を通過して輸送されるタンパク質も含まれる。
【0016】
クローン「hGIL−19/AE289」
本発明のポリヌクレオチドは、当初クローン「hTIF/AE289」と同定され、後に改称され、ここでは「hGIL−19/AE289」及び「hGIL−19」とも言及されている。クローンhGIL−19/AE289は、以下の方法に基づいて単離した。コンカナバリンA及び骨髄由来樹状細胞の両方で活性化させた脾細胞から作製したマウスcDNAライブラリからマウスESTを同定した。このESTは、分泌たんぱく質をコードするcDNAに対して選択的な方法を用いて同定された(米国特許第5,536,637号を参照されたい)。このマウスEST配列を用いて、完全長マウスクローンを同じcDNAライブラリから単離した(SEQ ID NO:4;図1はマウスGIL−19cDNAの配列を示す)。このマウスクローンの配列を分析した結果、インターロイキン−10(IL−10)に対して有意な相同性があることが分かった。
【0017】
このマウスクローンのヒト相同体を単離するために、IL−10に対して相同性を示すマウス配列領域に基づき、PCRプライマを作製した。ヒトPBMCライブラリの増幅にこのようなプライマを用いて、有意な大きさのPCR生成物を得た。このPCR生成物の配列を分析すると、それがマウスcDNAの相同体であることが確認できた。オリゴヌクレオチドをその部分的ヒトクローンの配列から作製し、このオリゴヌクレオチドを用いて完全長ヒトクローンをPBMCライブラリから単離した。
【0018】
hGIL−19/AE289は、完全長ヒトクローンであり、分泌たんぱく質(ここでは「hTIF/AE289たんぱく質」、「hGIL−19/AE289たんぱく質」及び「hGIL−19たんぱく質」とも言及されている」のコーディング配列全体を含んでいる。その配列を分析すると、IL−10に対するその相同性を確認できる。
【0019】
現在確定されているhGIL−19のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1で報告されており、ポリ(A)の尾も含まれている。前述のヌクレオチド配列に相当する完全長hGIL−19たんぱく質の開放読み取り枠及びアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2で報告されている。成熟hGIL−19のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2のアミノ酸34番から179番までに相当する。
【0020】
クローン「hGIL−19/AE289」は、ブダペスト条約に基づく最初の寄託としてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(アメリカ合衆国、20110−2209、バージニア州マナサス、10801、ブルバード大学)に1999年4月28日に寄託され、受託番号ATCC 207231を与えられた。公共によるこの寄託物質の取得に関する制限はすべて、37 C.F.R、1.808条(b)に明示された要件に関するものを除き、本特許付与をもって取り消し不能に撤廃されるが、該寄託の条件は、37 C.F.R. 1.806条に従うものとする。
【0021】
さらに、本発明のタンパク質のフラグメント(例えば生物活性を呈することのできるフラグメント)も本発明の包含するところである。タンパク質フラグメントは線形であってもよく、又は、例えば、両者とも言及をもってここに編入するH.U. Saragovi, et al., Bio/Technology 10,
773-778 (1992) 及びR.S. McDowell, et al., J. Amer. Chem.
Soc. 114, 9245-9253 (1992)に説かれたものなどの公知の方法を用いて環状にしてもよい。例えばタンパク質結合部位の結合価を高めるなど、多くの目的に向けて、このようなフラグメントを免疫グロブリンなどの担体分子に融合させてもよい。例えば、タンパク質フラグメントを、「リンカ」配列を介して免疫グロブリンのFc部分に融合してもよい。当該タンパク質が二価の場合、このような融合をIgG分子のFc部分に対して行ってもよいであろう。このような融合を生じさせるには、さらにその他の免疫グロブリンアイソタイプを用いてもよい。例えば、タンパク質とIGMとを融合させると、10価型の本発明のタンパク質が得られるであろう。
【0022】
さらに本発明は、完全長及び成熟型の両方の、開示したタンパク質を提供するものである。完全長型のこのようなタンパク質は、各開示されたクローンのヌクレオチド配列の翻訳により配列表から同定される。成熟型のこのようなタンパク質は、開示した完全長ポリヌクレオチド(好ましくはATCCに寄託されたもの)を適したほ乳類細胞又はその他のホスト細胞で発現させることにより、得てもよい。さらに成熟型の該タンパク質の配列は、完全長型のアミノ酸配列からも決定が可能であり、またここでは例えばSEQ ID NO:2のアミノ酸1番から179番までと述べておく。
【0023】
さらに本発明は、ここに開示したポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子も提供する。「相当する遺伝子」とは、cDNAポリヌクレオチド配列を得るもととなるmRNAに転写されるゲノム領域であり、このような遺伝子の調節された発現に必要な、連続したゲノム領域も含めてよい。従って、相当する遺伝子には、限定はしないが、コーディング配列、5’端及び3’端の非翻訳領域、選択的にスプライスされるエキソン、イントロン、プロモータ、エンハンサ、及びサイレンサ又はサプレッサ因子が含まれよう。ここに開示した配列情報を用い、公知の方法に基づいて、相当する遺伝子を単離することができる。このような方法には、開示した配列情報からプローブ又はプライマを作製し、適切なゲノムライブラリ、又は、その他のゲノム物質の供給源中で、遺伝子を同定及び/又は増幅することが含まれる。「単離遺伝子」とは、当該遺伝子を単離した元の生物ゲノム中に存在する、何らかの隣り合ったコーディング配列から分離された遺伝子である。
【0024】
ここに開示したポリヌクレオチド配列に対応する染色体上の位置は、例えば適宜標識した本発明のポリヌクレオチドを染色体にインシトゥーでハイブリダイズさせるなどにより、決定が可能である。また、既に特定の染色体上位置にマッピングされた発現遺伝子配列断片(EST)などの公共のデータベース中で有意に類似のヌクレオチド配列を特定することによっても、開示したポリヌクレオチドの対応する染色体上の位置を決定できよう。ここに開示したポリヌクレオチド配列のうちの少なくともいくつかについては、本発明のポリヌクレオチドに対して少なくとも何らかの類似性を持つ公共データベースの配列が、データベース受託番号によりリストされている。こうして、これら公共データベース配列のジェンバンク受託番号を用いて、アドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/を有するナショナル・センター・フォー・バイオテクノロジー・インフォメーションが提供するインターネット・サイトを検索すれば、重複遺伝子の「ユニジーン・クラスタ」を特定することができる。こうして特定された「ユニジーン・クラスタ」のうちの多くは、既に特定の染色体部位にマッピング済みであるだろう。
【0025】
ここに開示されたポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子の発現が向上、減少、又は改変されている生物も提供する。遺伝子発現の所望の変更は、遺伝子から転写されるmRNAに結合する、及び/又は、mRNAを開裂させる、アンチセンスポリヌクレオチド又はリボ酵素を用いれば達成が可能である(Albert and Morris, 1994, Trends Pharmacol.
Sci. 15(7): 250-254; Lavarosky et al., 1997, Biochem. Mol. Med. 62(1): 11-22; 及びHampel, 1998, Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 58: 1-39; これらすべてを、言及をもってここに編入することとする)。ここに開示したポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子のコピーを複数有するトランスジェニック動物も提供するが、このトランスジェニック動物は、好ましくは、形質転換された細胞又はそれらの後代において安定に維持される遺伝子作製物で、細胞を形質転換させることにより、作製されるとよい。遺伝子制御領域が改変されたことにより、遺伝子発現レベルが増加した又は減少したトランスジェニック動物や、遺伝子発現の時間的又は空間的パターンが変更されたトランスジェニック動物も提供する(言及をもってここに編入するヨーロッパ特許第0649 464B1を参照されたい)。さらに、ここに開示したポリヌクレオチド配列に相当する遺伝子に外来の配列を挿入したり、又は、該相当する遺伝子の全部又は一部を削除して、この相当する遺伝子を部分的に又は完全に失活させた生物も提供する。部分的又は完全な遺伝子の失活は、転位因子の挿入、好ましくは不正確な切り出しの後の転位因子の挿入(Plasterk, 1992, Bioessays 14(9): 629-633; Zwaal
et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(16): 7431-7435; Clark et al., 1994,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(2): 719-722; これらすべてを言及をもってここに編入する)を行ったり、又は、相同的組換えを行い、好ましくはそれを正/負の遺伝子選別法で検出する(Mansour et al., 1988, Nature 336:
348-352; 米国特許第5,464,764号; 第5,487,992号; 第5,627,059号; 第5,631,153号; 第5,614, 396号; 第5,616,491号; 及び第5,679,523号、これらすべてを言及をもってここに編入する)ことにより、達成することができる。遺伝子発現が変更されたこれらの生物は好ましくは真核生物であるとよいが、より好ましくはほ乳類であるとよい。このような生物は、前記相当する遺伝子が関与する異常の研究に向けたヒト以外のモデルの開発や、前記相当する遺伝子のタンパク質生成物と相互作用する分子の同定に向けたアッセイ系の開発に、有用である。
【0026】
本発明のタンパク質が(例えば受容体であるなど)膜結合型である場合、本発明はさらにこのようなタンパク質の可溶型も提供する。このような型では、タンパク質を発現させた細胞からそのタンパク質が完全に分泌されるよう、そのタンパク質の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインの一部又は全部は削除される。本発明のタンパク質の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインは、このようなドメインを配列情報から決定する公知の技術に基づいて特定することができる。例えば、TopPredIIコンピュータプログラムを用いれば、アミノ酸配列中の膜貫通ドメインの位置を予測することができ、このときこの膜貫通ドメインは、報告された中央の残基の両側に各々少なくとも10個の膜貫通アミノ酸を持つ膜貫通ドメインの中央の位置で記述される。
【0027】
本発明のタンパク質及びタンパク質フラグメントには、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも75%)の長さであり、かつ、開示したタンパク質に対して、少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%又は95%の同一性)を持つアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれ、但しこのときの配列同一性は、重複部分及び同一部分が最大になり、配列間のギャップを最小にするようアライメントしたときのタンパク質のアミノ酸配列を比較することにより、決定される。さらに本発明には、開示したタンパク質のうちの連続したアミノ酸を8個又はそれ以上(より好ましくは20個又はそれ以上の、最も好ましくは30個又はそれ以上の)含んで成る部分に対して、少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも95%の同一性)を持つこのような部分を含有するタンパク質及びタンパク質フラグメントが含まれる。
【0028】
別の実施例では、本発明のタンパク質、タンパク質フラグメント、及び、組換えタンパク質には、少なくとも一つの「hGIL−19/AE289受容体結合モチーフ」の存在に基づいて同定できるものが含まれる。ここで用いられた用語「hGIL−19/AE289受容体結合モチーフ」には、hGIL−19がその必須な受容体に結合するのに重要なアミノ酸配列又は残基が含まれる。好適な実施例の一つでは、hGIL−19タンパク質は、SEQ ID NO:2のおよそアミノ酸50番から60番を含むhGIL−19/AE289受容体結合モチーフを含有する。別の実施例では、GIL−19タンパク質は、SEQ ID NO:2のおよそアミノ酸63番から81番を含むhGIL−19/AE289受容体結合モチーフを含有する。さらに別の実施例では、GIL−19タンパク質は、SEQ ID NO:2のおよそアミノ酸168番から177番を含むhGIL−19/AE289受容体結合モチーフを含有する。ある一つの好適な実施例では、GIL−19タンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸50番から60番、アミノ酸63番から81番、及び/又は、およそアミノ酸168番から177番のうちの少なくとも一つを含むhGIL−19/AE289受容体結合モチーフを含有する。
【0029】
さらに別の実施例では、hGIL−19/AE289受容体結合モチーフは、SEQ ID NO:2のアミノ酸50番から60番、SEQ ID NO:2のアミノ酸63番から81番、及び、SEQ ID NO:2のアミノ酸168番から177番からなる群のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列に対し、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一なアミノ酸配列を有する。
【0030】
別の実施例では、本発明のタンパク質、タンパク質フラグメント、及び、組換えタンパク質には、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ又はそれ以上の、N結合型糖付加部位の存在に基づいて同定できるものが含まれる。
【0031】
具体的には、配列の同一性はWU-BLAST(ワシントン大学
BLAST)バージョン2.0のソフトウェアを用いて決定してもよく、このソフトウェアは、WU-BLASTバージョン1.4に基づいて作製されたものであり、こちらのWU-BLASTバージョン1.4は、公共のドメインNCBI-BLASTバージョン1.4に基づいている(Altschul and Gish, 1996, Local alignment
statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266:
460-480; Altschul et al., 1990, Basic local alignment
search tool, Journal of Molecular Biology 215: 403-410; Gish and States, 1993,
Identification of protein coding regions by database similarity search, Nature
Genetics 3: 266-272; Karlin and Altschul,
1993, Applications and statistics for multiple high-scoring segments in
molecular sequences, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877; これらのすべてを言及をもっってここに編入する)。いくつかのユニシス・プラットフォームで実行できるWU-BLAST バージョン2.0は、ftp://blast.wustl.edu/blast/executablesからダウンロードできる。検索プログラムの全一揃え (BLASTP、BLASTN、BLASTX、TBLASTN、及びTBLASTX)は、いくつかの支援プログラムと一緒にこのサイトで提供されている。WU-BLAST 2.0 には著作権があり、著者による書面での明確な同意がなければ、いかなる形態又は方法でも販売又は再販ができないが、公表された実行可能プログラムは、商業的、非営利、又は学術上の目的に向けて自由に利用できる。この一揃えの中の検索プログラム、即ちBLASTP、BLASTN、BLASTX、TBLASTN 及びTBLASTXのいずれにおいても、ギャップド・アラインメントのルーチンはデータベース検索自体に一体化されており、従って、より良好な感受性及び選択性が得られ、尚かつより容易に、翻訳結果を得ることができる。これらのプログラムのいずれにおいても、必要に応じ、ギャッピングを選択によって切っておくことができる。ギャップ長1のデフォルト・ペナルティ(Q)は、タンパク質及びBLASTPの場合はQ=9であり、BLASTINの場合はQ=10であるが、ゼロ、1から8、9、10、11、12から20、21から50、51から100、等々、を含め、いかなる整数値に変更してもよい。ギャップを伸長する際の残基当たりのデフォルト・ペナルティ(R)は、タンパク質及びBLASTPの場合にはR=2であり、BLASTNの場合はR=10であるが、ゼロ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10、11、12から20、21から50、51から100、等々、を含め、いかなる整数値に変更してもよい。重複及び同一性を最大にし、配列のギャップを少なくするよう配列をアライメントするには、Q及びRの値についていかなる組合せを用いてもよい。デフォルトアミノ酸比較行列はBLOSUM62であるが、例えばPAMなど、その他のアミノ酸比較行列を利用してもよい。
【0032】
開示したポリヌクレオチド及びタンパク質の種間相同体も、本発明により提供する。ここで用いられた「種間相同体」とは、ある一つのタンパク質又はポリヌクレオチドと由来種は異なるが、そのタンパク質又はポリペプチドに対して有意な配列類似性を持つタンパク質又はポリペプチドである。好ましくはポリヌクレオチド種間相同体は、任意のポリヌクレオチドに対して少なくとも60%(より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%)の配列同一性を有し、タンパク質種間相同体は、任意のタンパク質に対して少なくとも30%(より好ましくは少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)の配列同一性を有するとよく、このときの配列同一性は、重複及び同一性を最大にし、配列のギャップを少なくするようアライメントしたときの、ポリヌクレオチド間のヌクレオチド配列、又は、タンパク質間のアミノ酸配列、を比較することにより、決定される。ここに提供した配列から適したプローブ又はプライマを作製し、所望の種から適した核酸源をスクリーニングすることで、種間相同体を単離し、同定してもよい。好ましくは、種間相同体は、ほ乳類種から単離されたものである。最も好ましくは、種間相同体は、例えば、パン−トログロダイト(Pan troglodytes)、ゴリラ−ゴリラ(Gorilla gorilla)、ポンゴ−ピグマエウス(Pongo pygmaeus)、ハイロベート−コンコロー(Hylobates concolor)、マカカ−ムラタ(Macaca Mulatta)、パピオ−パピオ(Papio papio)、パピオ−ハマドリアス(Papio hamadryas)、セルコピテクス−エーシオップ(Cercopithecus aethiops)、セブス−カプシヌス(Cebus capucinus)、アオータス−トリバーガタス(Aotus trivirgatus)、サングイナス−オエディプス(Sanguinus oedipus)、ミクロセバスムリナス(Microcebus murinus)、ムス−ムスキュラス(Mus musculus)、ドブネズミ、チャイニーズハムスター、フェリス−カツス(Felis catus)、ミンク、カニス−ファミリアリス(Canis familiaris)、オリクトラグスクニキュラス(Oryctolagus cuniculus)、ボス−タウルス(Bos taurus)、オウビス−アリエス(Ovis aries)、スス−スクロファ(Sus scrofa)及びエクウス−カバラス(Ecuus caballus)など、遺伝子マップが作製されており、一つの種における遺伝子のゲノム上の編成と、別の種のその関係遺伝子のゲノム上の編成との間のシンテニックな関係を特定できる、いくつかのほ乳類種から単離されたものである。 (O'Brien and Seu nez,
1988, Ann. Rev. Genet. 22: 323-351; O'Brien et al., 1993, Nature Genetics
3:103-112; Johansson et al., 1995, Genomics 25: 682-690; Lyons et al., 1997,
Nature Genetics 15: 47-56; O'Brien et al., 1997, Trends in Genetics 13(10):
393-399; Carver and Stubbs, 1997, Genome Research 7:1123-1137; これらのすべてを、言及をもってここに編入する)。
【0033】
さらに本発明は、開示したポリヌクレオチド又はタンパク質の対立遺伝子バリアント、即ち、開示したポリヌクレオチドがコードするものと同一であるか又は有意な類似の配列を有するタンパク質をコードする、天然発生する別の型の単離ポリヌクレオチド、も包含する。好ましくは、対立遺伝子バリアントは、少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%)を任意のポリヌクレオチドに対して有するとよく、このときの配列同一性は、重複及び同一性を最大にし、配列のギャップを少なくするようアライメントしたときの、ポリヌクレオチド間のヌクレオチド配列を比較することにより、決定される。ここに提供した配列から適したプローブ又はプライマを作製し、適当な種の個体から適した核酸源をスクリーニングすることで、対立遺伝子バリアントを単離し、同定してもよい。
【0034】
さらに本発明には、ここに開示したポリヌクレオチドのものに相補な配列を持つポリヌクレオチドも含まれる。
【0035】
さらに本発明には、緊縮度の低い条件下、より好ましくは緊縮条件下、そして最も好ましくは緊縮度の高い条件下で、ここに開示したポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドが含まれる。緊縮条件の例を以下の表に示す。緊縮度の高い条件とは、少なくとも例えば条件A−Fと同じ緊縮度のものであり、緊縮条件とは、少なくとも例えば条件G−Lと同じ緊縮度のものであり、緊縮度の低い条件とは、例えば少なくとも条件M−Rと同じ緊縮度のものである。
【0036】
【表1】

【0037】
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションのための緊縮条件のその他の例は、言及をもってここに編入するSambrook, J., E.F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold
Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, chapters 9 and 11, and
Current Protocols in Molecular Biology, 1995, F.M. Ausubel
et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4に提供されている。
【0038】
好ましくは、このようなハイブリダイズしようとするポリヌクレオチドは、それぞれ、ハイブリダイズさせる相手である本発明のポリヌクレオチドの長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも75%)の長さを有すると共に、ハイブリダイズさせる相手である本発明のポリヌクレオチドに対して、少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性;最も好ましくは少なくとも90%又は95%の同一性)を有するとよい。このときの配列同一性は、重複及び同一性を最大にし、配列のギャップを少なくするようアライメントしたときの、ハイブリダイズさせようとするポリヌクレオチドの配列を比較することにより、決定される。
【0039】
タンパク質を組換えにより生成するには、Kaufman et al., Nucleic Acids Res.
19, 4485-4490 (1991)に開示されたpMT2又はpED発現ベクタなどの発現制御配列に、本発明の単離ポリヌクレオチドを機能可能なよう、連結してもよい。数多くの適した発現制御配列が当業で公知である。組換えタンパク質を発現させる一般的な方法も公知であり、R. Kaufman, Methods in Enzymology 185,
537-566 (1990)に例示されている。ここで定義された「機能可能なよう、連結された」とは、連結させたポリヌクレオチド/発現制御配列で形質転換した(トランスフェクトした)ホスト細胞によってタンパク質が発現されるような態様で、本発明の単離ポリヌクレオチド及び発現制御配列がベクタ又は細胞内に位置していることを意味する。
【0040】
数多くの種類の細胞が、本タンパク質を発現するのに適したホスト細胞として働くであろう。ほ乳類ホスト細胞には、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、その他の形質転換された霊長類細胞系、正常な二倍体細胞、霊長類組織のインビトロ培養物を由来とする細胞株、一次外植体、ヒーラ細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、Hak、又はジャーカット細胞などがある。
【0041】
あるいはその代わりに、酵母などの下等な真核生物や、細菌などの原核生物で当該タンパク質を生成するのも可能であろう。適している可能性のある酵母株には、サッカロミセス−セレビジエ、シゾサッカロミセス−ポンブ、クライベロミセス(Kluyveromyces)株、カンジダ属、又は、異種タンパク質を発現できるあらゆる酵母株がある。適している可能性のある細菌株には、エシェリヒア−コリ、バシラス−サチリス、サルモネラ−チフィムリウム、又は、異種タンパク質を発現できるあらゆる細菌株がある。タンパク質を酵母又は細菌で生成させる場合、機能的タンパク質を得るには、例えば適当な部位をリン酸化又は糖付加するなどして、生成タンパク質を修飾する必要があるであろう。このような共有結合は、公知の化学的又は酵素的方法で行ってよい。
【0042】
さらに、本発明の単離ポリペプチドを一つ又はそれ以上の昆虫発現ベクタ内の適した制御配列に機能可能なよう連結し、昆虫発現系を用いることで、該タンパク質を生成させてもよい。バキュロウィルス/昆虫細胞発現系のための材料及び方法は、例えばアメリカ合衆国カリフォルニア州、サンディエゴのインビトロジェン社からキットの形で市販されており(MaxBac(R) キット)、このような方法は、ここに言及をもって編入する Summers and Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin
No. 1555 (1987)に解説されているように、当業で公知である。ここで用いられる、本発明のポリヌクレオチドを発現させることのできる昆虫細胞は、「形質転換されて」いる。
【0043】
また、組換えタンパク質が発現するのに適した培養条件下で、形質転換したホスト細胞を培養することにより、本発明のタンパク質を作製してもよい。こうして発現したタンパク質を、このような培養物(即ち、培地又は細胞抽出物)から、例えばゲル濾過及びイオン交換クロマトグラフィなどの公知の精製法を用いて、精製してもよい。タンパク質精製にはさらに、タンパク質に結合する薬剤を含有するアフィニティカラムや、コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−トヨパール(R)又はチバクロム・ブルー3GAセファロース(A)などのアフィニティ樹脂を用いた一回又はそれ以上のカラムステップ;フェニルエーテル、ブチルエーテル、又はプロピルエーテルなどの樹脂を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィを含む一回又はそれ以上のステップ;又はイムノアフィニティクロマトグラフィを含めてもよい。
【0044】
選択によっては、精製を容易にする形で本発明のタンパク質を発現させてもよい。例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)又はチオレドキシン(TRX)などのものなど、融合タンパク質としてそれを発現させてもよい。このような融合タンパク質の発現及び精製のためのキットは、それぞれニュー・イングランド・バイオラブズ社(マサチューセッツ州ビバリー)、ファルマシア社(ニュージャージ州ピスカタウェイ)、及びインビトロジェン・コーポレーション社(カリフォルニア州カールスバッド)から市販されている。さらにタンパク質にエピトープで標識を付け、次にこのようなエピトープを狙った特異抗体を用いて精製してもよい。このようなエピトープ(「フラッグ」)は、イーストマン・コダック・カンパニー社(コネチカット州ニューヘイブン)から市販されている。
【0045】
加えて、本タンパク質をさらに精製するには、例えばペンダントメチル基又はその他の脂肪族の基を有するシリカゲルなど、疎水性のRP−HPLC媒質を用いた、一回又はそれ以上の逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)を利用することができる。略均質な単離組換えタンパク質を得るには、前述の精製ステップのいくつか又は全てを多様な組合せで用いるとよい。このような精製したタンパク質は、その他のほ乳類タンパク質を略含まず、本発明では「単離タンパク質」と定義されている。
【0046】
さらに本発明のタンパク質を、このタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する体細胞又は生殖細胞を特徴とするトランスジェニックウシ、ヤギ、ブタ、又はヒツジの乳の成分としてなど、トランスジェニック動物の製品として発現させてもよい。
【0047】
さらにこのタンパク質を、公知の通常の化学合成により作製してもよい。本発明のタンパク質を合成手段により作製する方法は当業者に公知である。合成により作製されたタンパク質の配列は、タンパク質の持つ一次、二次又は三次構造上の、及び/又は、コンホメーション上の特徴を共有することで、タンパク質活性を含め、そこに共通の生物学的性質を持つであろう。従って、治療化合物のスクリーニングや、抗体開発の免疫学的プロセスにおいて、生物学的に活性な天然の精製タンパク質として、又は、天然の精製タンパク質の免疫学的代替物としてそれらを用いてもよい。
【0048】
ここに提供されたタンパク質には、精製タンパク質のものと類似のアミノ酸配列を特徴とするが、天然で修飾が加えられた、又は、操作により意図的に修飾が加えられたタンパク質が含まれる。例えば、当業者であれば公知の技術を用いて、ペプチド配列又はDNA配列中に修飾を加えることができる。タンパク質配列中の修飾には、コーディング配列中の所定のアミノ酸残基の変更、交換、置換、挿入又は削除が含まれよう。例えば、一つ又はそれ以上のシステイン残基を削除したり、又は、その他のアミノ酸に置換して、その分子のコンホメーションを変えてもよい。このような変更、交換、置換、挿入又は削除の技術は当業者に公知である(例えば米国特許第4,518,584号を参照されたい)。好ましくは、このような変更、交換、置換、挿入又は削除が、当該タンパク質の所望の活性を残すものであるとよい。
【0049】
このように、タンパク質配列のその他のフラグメント及び誘導体のうち、タンパク質の活性を完全に又は部分的に維持すると予測され、従ってスクリーニング又は他の免疫学的方法に有用なものは、ここに提供した開示に基づき、当業者であれば容易に作製できよう。このような修飾は、本発明の包含するところと考える。
【0050】
用途及び生物活性
本発明のポリヌクレオチド及びタンパク質は、(ここに引用したアッセイに関連するものも含め)下に明示した用途又は生物活性のうちの一つ又はそれ以上を呈することができる。本発明のタンパク質について説明した用途又は活性を、このようなタンパク質の投与又は利用や、又は、このようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの(例えば遺伝子治療、又は、DNAの導入に適したベクタなどへの)投与又は利用により、提供してもよい。
【0051】
hGL−19の用途
ヒトGIL−19/AE289は、IL−10に対するその相同性を根拠に、一般的なサイトカインファミリーの一員と捉えられ、従ってIL−10に類似の活性を呈することができる。サイトカインは健康状態及び疾病状態の両方で重要な役割を果たし、複数の臨床上の指標を有する。従ってこの分子(及び本発明のその他の分子)は、いくつかの臨床上の指標のアゴニストとして、有用であり、この分子のアンタゴニストも、その他の臨床の場、特に、IL−10がアゴニストとして、又はIL−10アンタゴニストがアンタゴニストとして働くような場で有用であろう。アゴニスト又はアンタゴニストのいずれが好適な薬剤であるかは、関与する細胞種、刺激の性質及び細胞ミクロ環境など、疾患病理の特定の態様に左右されるであろう。
【0052】
好適な一実施例では、hGIL−19活性は以下の活性のうちの少なくとも一つ又はそれ以上である。即ち、(1)シグナル伝達経路(例えばGIL−19依存的経路)を変調、例えば拮抗、する、(2)サイトカイン産生及び/又は分泌(例えば炎症誘発性サイトカインの産生及び/又は分泌)を変調する、(3)リンホカイン産生及び/又は分泌を変調する、(4)接着分子の産生及び/又は細胞接着を変調する、(5)核内転写因子の発現又は活性を変調する、(7)IL−1の分泌を変調する、(8)その他のサイトカインの受容体と競合する、(9)hGIL−19受容体への結合をめぐって、別のhGIL−19ファミリーの一員タンパク質と競合する、(10)hGIL−19もしくは別のサイトカインの内部移行した受容体、又は、リガンドと複合体形成した受容体の、核内転位を変調する、(11)(例えば食道の扁平上皮細胞などの上皮細胞や、ケラチノサイトなどの皮膚細胞の)例えばサイトカイン刺激性又は、hGIL−19タンパク質刺激性の増殖、発生、又は分化など、細胞増殖、発生又は分化を変調する、(12)(例えば破骨細胞前駆細胞、破骨細胞及び/又は骨芽細胞などの)骨形成原細胞の細胞増殖、発生又は分化を変調する、(13)骨形成、骨代謝及び/又は骨ホメオスタシスを変調する(例えば骨の再吸収を阻害する)、(15)細胞免疫応答を変調する、(16)サイトカイン媒介炎症誘発性作用を変調する(例えば肝細胞による急性期タンパク質合成、熱及び/又はプロスタグランジン合成、例えばPGE2合成、を阻害するなど)、及び(17)創傷治癒を促進する及び/又は増強する、である。
【0053】
ヒトGIL−19/AE289タンパク質は、その明白な免疫変調上の役割を考慮すると、以下の細胞種、即ち、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ/単球、好中球、マスト細胞、好塩基球、好酸球、神経系の抗原提示細胞、及び、腎臓の抗原提示細胞、に作用するかも知れない。ヒトGIL−19/AE289(又はそのアゴニスト又はアンタゴニスト)は、そのIL−10に対する相同性に基づくと、以下の活性及び用途を有すると考えられる。
(a)体液性免疫応答を上方調節し、細胞媒介免疫反応を強める。
(b)炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの合成を阻害することで、抗炎症剤として働く。
(c)外傷、敗血症、胃腸管及び心臓血管疾患に関連する炎症性応答、及び、外科術後の炎症を変調する。
(d)急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫の治療、移植(engraftment)前のレシピエントを処置する骨髄移植、移植前のドナーの幹細胞を処置する骨髄移植、及び、骨髄移植後の移植片対宿主疾患の改善。
(e)多発性硬化症、糖尿病、リウマチ性関節炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、腎炎に関連する腎毒性、炎症性腸疾患、クローン病、膵臓炎、及び喘息などの細胞媒介自己免疫疾患の治療。
【0054】
ヒトGIL−19/AE289アゴニストには、限定はしないが、ヒトGIL−19/AE289タンパク質及びフラグメント、その削除変異体及び付加変異体、並びに、ヒトGIL−19/AE289が向かう受容体又はその他の標的と相互作用するペプチド及び小分子化合物が含まれる。ヒトGIL−19/AE289アンタゴニストには、限定はしないが、ヒトGIL−19/AE289タンパク質に向かう抗体;ヒトGIL−19/AE289が向かう、可溶型の受容体又はその他の標的;ヒトGIL−19/AE289が向かう受容体又はその他の標的に向かう抗体;及び、ヒトGIL−19/AE289のその受容体又はその他の標的との相互作用を阻害する又は干渉するペプチド及び小分子、が含まれる。
【0055】
研究上の用途及び実用性
本発明が提供するポリヌクレオチドは、多様な目的に向けて研究の場で利用できる。本ポリヌクレオチドを、分析、性格付け又は治療的用途のために組換えタンパク質を発現させるのに用いたり;対応するタンパク質が(構成的に、又は、組織分化又は発生の特定の段階で、又は、疾患状態で)優先的に発現する組織のマーカとして用いたり;サザン・ゲルの分子量マーカとして用いたり;染色体を特定する又は関連する遺伝子の位置をマッピングするのに染色体マーカ又は(標識した場合は)タグとして用いたり;患者の内生のDNA配列を比較して潜在的な遺伝子異常を特定するのに用いたり;新規な関連DNA配列にハイブリダイズさせ、ひいてはこれを発見するためのプローブとして用いたり;遺伝子フィンガープリンティングのPCRプライマを作製するための情報源として用いたり;その他の新規なポリヌクレオチドを発見する過程で既知の配列を「除外する」プローブとして用いたり;発現パターンの検査を含め、「遺伝子チップ」又はその他の支持体に付着するオリゴマを選別し、作製するのに用いたり;DNA免疫化技術を用いて抗タンパク質抗体を生じさせるのに用いたり;そして抗DNA抗体を生成する抗原として、又は、その他の免疫応答を惹起する抗原として、用いることができる。当該ポリヌクレオチドが、別のタンパク質に結合する又は結合する可能性のあるタンパク質をコードしている場合(例えば、受容体−リガンドの相互作用の場合など)、(例えば、すべて言及をもってここに編入するGyuris et al.,
1993, Cell 75: 791-803 及びin Rossi et al., 1997, Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 94: 8405-8410に説かれたものなどの)インターアクション・トラップ・アッセイにこのポリヌクレオチドを用いて、結合が起きる相手である他方のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを特定したり、又は、その結合相互作用の阻害剤を特定することができる。
【0056】
本発明の提供するタンパク質も、同様に、高スループットのスクリーニングをするための複数のタンパク質のパネルを含め、生物活性を調べるアッセイで用いたり;抗体を生成させる、又は、別の免疫応答を惹起するのに用いたり;生物体液中のタンパク質(又はその受容体)のレベルを定量的に調べるようデザインされたアッセイで、(標識済みの試薬も含む)試薬として用いたり;対応するタンパク質が(構成的に、又は、組織分化又は発生の特定の段階で、又は、疾患状態で)優先的に発現する組織のマーカとして用いたり;そしてもちろん、相関する受容体又はリガンドを単離するのに、用いることができる。このタンパク質が別のタンパク質に結合する又は結合する可能性がある場合(例えば受容体−リガンド相互作用の場合など)、このタンパク質を用いて、結合が起きる相手である他方のタンパク質を特定したり、又は、その結合相互作用の阻害剤を特定することができる。これらの結合相互作用に関与するタンパク質をさらに用いて、その結合相互作用のペプチド又は小分子阻害剤又はアゴニストをスクリーニングすることも可能である。
【0057】
これらの研究上の実用性を進展させれば、研究用製品として市販できる試薬用又はキット・フォーマットを生むのも可能である。
【0058】
上に挙げた用途を実施する方法は、当業者に公知である。このような方法を開示した文献には、限定はしないが、"Molecular
Cloning: A Laboratory Manual", 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory
Press, Sambrook, J., E.F. Fritsch and T. Maniatis eds., 1989, 及び
"Methods in Enzymology: Guide to Molecular
Cloning Techniques", Academic Press, Berger, S.L. and A.R. Kimmel eds.,
1987がある。
【0059】
栄養上の用途
さらに本発明のポリヌクレオチド及びタンパク質を栄養源又はサプリメントとして利用できる。このような用途には、限定はしないが、タンパク質又はアミノ酸サプリメントとしての利用、炭素源としての利用、窒素源としての利用、及び、炭水化物源としての利用がある。このような場合、本発明のタンパク質又はポリヌクレオチドを、特定の生物の飼料に加えても、又は、例えば粉末、丸剤、溶液、懸濁液又はカプセルなどの形で、別個の固体又は液体製剤として投与してもよい。微生物の場合、本発明のタンパク質又はポリヌクレオチドを、中で又はその上で微生物を培養する培地に加えてもよい。
【0060】
サイトカイン及び細胞増殖/分化活性
本発明のタンパク質は、サイトカイン活性、細胞増殖(誘導的又は阻害的のいずれかで)活性、又は、細胞分化(誘導的又は阻害的のいずれかで)活性を呈したり、又は、いくつかの細胞集団でその他のサイトカインの産生を誘導するであろう。全ての公知のサイトカインを含め、今日までに発見された数多くのタンパク質因子が、一つ又はそれ以上の因子依存的細胞増殖アッセイで活性を示しており、従って、これらアッセイはサイトカイン活性の便利な確認手段である。本発明のタンパク質の活性は、限定はしないが32D、DA2、DA1G、T10、B9、B9/11、Baf3、MC9/G、M+(preB M+)、2E8、RB5、DA1、123、T1165、HT2、CTLL2、TF−1、Mo7e及びCMKを含む細胞系を目的とした、数多くの日常的な因子依存的細胞増殖アッセイのいずれでも立証される。本発明のタンパク質のこの活性は、その他の手段の中でもとりわけ、以下の方法で測定してもよい。
【0061】
T細胞又は胸腺細胞の増殖を調べるアッセイには、限定はしないが、Current Protocols in
Immunology, Ed by J. E. Coligan, A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach,
W Strober, Pub. Greene Publishing Associates and
Wiley-Interscience (Chapter 3, In Vitro assays for
Mouse Lymphocyte Function 3.1-3.19; Chapter 7, Immunologic studies in Humans); Takai et al., J. Immunol.
137:3494-3500, 1986; Bertagnolli et al., J. Immunol. 145:1706-1712, 1990; Bertagnolli et al., Cellular Immunology 133:327-341, 1991; Bertagnolli, et al., J. Immunol.
149:3778-3783, 1992; Bowman et al., J. Immunol. 152:
1756-1761, 1994に解説されたものがある。
【0062】
脾細胞、リンパ節細胞又は胸腺細胞のサイトカイン産生及び/又は増殖を調べるアッセイには、限定はしないが、Polyclonal
T cell stimulation, Kruisbeek, A.M. and Shevach, E.M. In Current
Protocols in Immunology. J.E. Coligan eds. Vol 1 pp. 3.12.1-3.12.14, John Wiley and Sons, Toronto. 1994; 及び Measurement of mouse and human Interferonγ、
Schreiber, R.D. In Current Protocols in Immunology. J.E. Coligan
eds. Vol 1 pp. 6.8.1-6.8.8, John Wiley and Sons, Toronto. 1994に解説されたものがある。
【0063】
造血細胞及びリンパ球生成細胞の増殖及び分化を調べるアッセイには、限定はしないが、Measurement of
Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4, Bottomly, K., Davis, L.S. and Lipsky,
P.E. In Current Protocols in Immunology. J.E.e.a. Coligan eds. Vol 1 pp.
6.3.1-6.3.12, John Wiley and Sons, Toronto.
1991; deVries et al., J. Exp. Med. 173:1205-1211,
1991; Moreau et al., Nature 336:690-692, 1988; Greenberger et al., Proc. Natl.
Acad. Sci. U.S.A. 80:2931-2938, 1983; Measurement of mouse and human
interleukin 6 - Nordan, R. In Current Protocols in
Immunology. J.E.e.a. Coligan
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al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:1857-1861, 1986; Measurement of human
Interleukin 11 - Bennett, F., Giannotti, J., Clark,
S.C. and Turner, K. J. In Current Protocols in
Immunology. J.E.e.a. Coligan
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1991; Measurement of mouse and human Interleukin 9 - Ciarletta,
A., Giannotti, J., Clark, S.C.
and Turner, K.J. In Current Protocols in Immunology. J.E.e.a. Coligan eds. Vol 1 pp. 6.13.1, John Wiley and Sons, Toronto. 1991に解説されたものがある。
【0064】
抗原に対するT細胞クローン応答を調べる(とりわけ、APC−T細胞相互作用や直接的なT細胞効果に影響を与えるタンパク質を、増殖及びサイトカイン産生を測定することにより、特定する)アッセイには、限定はしないが、Current Protocols in Immunology, Ed by J. E. Coligan,
A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach, W Strober, Pub. Greene
Publishing Associates and Wiley-Interscience (Chapter
3, In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function; Chapter 6, Cytokines and
their cellular receptors; Chapter 7, Immunologic studies in Humans); Weinberger
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:6091-6095, 1980;
Weinberger et al., Eur. J. Immun. 11:405-411, 1981; Takai
et al., J. Immunol. 137:3494-3500, 1986; Takai et al., J. Immunol.
140:508-512, 1988に解説されたものがある。
【0065】
免疫刺激又は抑制活性
本発明のタンパク質はまた、免疫刺激又は免疫抑制活性も示すと考えられ、その活性の中には、限定はしないが、ここにそのアッセイ法を開示した活性が含まれる。例えばT細胞及び/又はBリンパ球の成長及び増殖を(上方又は下方)調節したり、NK細胞及びその他の細胞集団の細胞溶解活性を機能させるなどの上で、多様な免疫不全及び異常(重症複合型免疫不全(SCID)を含む)を治療するのに、タンパク質は有用かも知れない。これらの免疫不全は遺伝的なものだったり、又はウィルス(例えばHIV)や細菌又は真菌感染によって起きたり、又は自己免疫異常が原因で起きる場合がある。より具体的には、ウィルス、細菌、真菌又はその他の感染が原因で起きる感染性疾患は、HIV、肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、マイコバクテリア、リーシュマニア種、マラリア種、及び、例えばカンジダ症などの様々な真菌感染を含め、本発明のタンパク質を用いて治療が可能であろう。もちろん、この意味では、本発明のタンパク質は、癌治療など、免疫系を追加刺激するのが一般的には好ましい場合にも有用であろう。
【0066】
本発明のタンパク質を用いて治療できると考えられる自己免疫異常には、例えば、結合組織疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、自己免疫性肺炎症、ギラン−バレー症候群、自己免疫性甲状腺炎、インシュリン依存性糖尿病、重症筋無力症、移植片対宿主疾患、及び、自己免疫性炎症性眼病がある。さらに本発明のタンパク質は、例えば喘息(特にアレルギ性喘息)又はその他の呼吸器の異常などの、アレルギ性反応及び状態の治療にも有用かも知れない。(例えば臓器移植を含む)免疫抑制が好ましいその他の状態も、本発明のタンパク質を利用した治療が可能であろう。
【0067】
また、本発明のタンパク質を用いると、多様な方法で免疫応答を調節できるかも知れない。下方調節は、既に進行中の免疫応答を阻害する又は遮断する形であってもよく、又は、免疫応答の誘導の防止を含むものかも知れない。活性化T細胞の機能は、T細胞応答を抑制するか、又は、T細胞の特異的寛容性を誘導するか、又はこれら両者により、阻害されよう。T細胞応答の免疫抑制は、一般的には能動的な、非抗原特異的プロセスであり、抑制剤へのT細胞の持続的暴露を必要とする。T細胞における非応答性又はアネルギが関与する寛容性は、一般的に抗原特異的であり、かつ寛容剤への暴露を止めた後でも継続するという点で、免疫抑制とは区別できる。選択に応じて、寛容剤がない状態で特異抗原に再暴露したときにT細胞応答がないことにより、寛容性を実証することができる。
【0068】
例えば活性化T細胞による高レベルのリンホカイン合成を妨げるなど、(限定はしないが、Bリンパ球抗原機能(例えばB7など)を含む)一つ又はそれ以上の抗原機能の下方調節又は防止は、組織、皮膚及び臓器移植の場合や、移植片対宿主疾患(GVHD)の場合に、有用であろう。例えば、T細胞機能を遮断すると、組織移植の場合の組織破壊が減少するはずである。典型的には、組織移植の場合、移植片の拒絶は、T細胞がそれを異物と認識することで開始され、その後その移植片を破壊する免疫反応が起きる。B7リンパ球抗原と、免疫細胞上にあるその天然リガンド(例えば、B7−2活性を有する可溶型の単量体型のペプチドを単独で、又は、もう一つのBリンパ球抗原(例えばB7−1、B7−3)又は遮断抗体の活性を有する、単量体型のペプチドと組み合わせて)との相互作用を阻害又は遮断する分子を、移植前に投与すると、この分子と、その免疫細胞上の天然リガンドとの間の結合を、対応する共刺激シグナルを伝達させずに行わせることができる。このような方法によるBリンパ球抗原機能の遮断は、T細胞などの免疫細胞によるサイトカイン合成を妨げるため、免疫抑制因子として作用することができる。さらに、共刺激がないことだけでも、T細胞をアネルギ状態に置くのに充分であると考えられ、被験体において寛容性が誘導される。Bリンパ球抗原遮断試薬によって長期寛容性を誘導すると、これら遮断試薬の反復的な投与が不要になるであろう。被験体において充分な免疫抑制又は寛容性を得るには、さらにBリンパ球抗原同士が組み合わさったときの機能を遮断するのも必要であろう。
【0069】
臓器移植拒絶反応又はGVHDを防止する上での特定の遮断試薬の効果は、ヒトでの効果を予測する動物モデルを用いて評価できる。利用の可能な適した系の例には、ラットの同種心臓移植片、及び、マウスの異種ランゲルハンス島細胞移植片があり、これら両者は、Lenschow et al.,
Science 257:789-792 (1992)及びTurka et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA,
89:11102-11105 (1992)に説かれたCTLA4Ig融合タンパク質のインビボでの免疫抑制作用を調べるのに用いられたことがある。加えて、GVHDのマウスモデル(Paul ed., Fundamental Immunology, Raven Press, New York, 1989, pp.
846-847を参照されたい)を用いると、この疾患の発生に対する、Bリンパ球抗原機能をインビボで遮断した場合の効果を調べることができる。
【0070】
抗原機能の遮断は、自己免疫疾患の治療にも、治療上有用かも知れない。数多くの自己免疫異常が、自己組織に反応性であるT細胞が不適切に活性化して、これら疾患の病理に関与するサイトカイン及び自己抗体の産生を促進した結果である。自己反応性のT細胞の活性化を防止すれば、疾患の症状が軽減又は消失するであろう。Bリンパ球抗原の受容体対リガンド相互作用を破壊することによりT細胞の共刺激を遮断する試薬の投与を利用して、T細胞の活性化を阻害し、そしてこの疾患のプロセスに関与していると思われる自己抗体又はT細胞由来サイトカインの産生を妨げることができる。加えて、遮断試薬は、自己反応性T細胞の抗原特異的寛容性を誘導することで、この疾患の長期の軽減をもたらすかも知れない。自己免疫異常を防止する又は軽減する上での遮断試薬の効果は、ヒト自己免疫疾患の、数多くのよく性格付けられた動物モデルを用いて調べることができる。例には、マウス実験的自己免疫性脳炎、MRL/lpr/lprマウスの全身性エリテマトーデス又はNZBハイブリッドマウス、マウス自己免疫性膠原性関節炎、NODマウス及びBBラットの糖尿病、マウス実験的重症筋無力症(Paul ed., Fundamental Immunology, Raven Press, New York, 1989, pp.
840-856を参照されたい)がある。
【0071】
免疫応答を上方調節する手段として、抗原機能(好ましくはBリンパ球抗原機能)を上方調節することも、治療上で有用であろう。免疫応答の上方調節は、既存の免疫応答を高める形であっても、又は、初期免疫応答を惹起する形であってもよい。例えば、Bリンパ球抗原機能の刺激を通じて免疫応答を高めることは、ウィルス感染の場合に有用であろう。加えて、インフルエンザ、通常の風邪、及び脳炎などの全身性ウィルス疾患は、刺激性の形のBリンパ球抗原を全身投与すると軽減するかも知れない。
【0072】
あるいは、患者からT細胞を除去し、本発明のペプチドを発現している、ウィルス抗原刺激したAPCで、又は、刺激性型の本発明の可溶型ペプチドと一緒に、そのT細胞をインビトロで共刺激し、このインビトロで活性化したT細胞を患者に再導入することによって、感染患者の抗ウィルス免疫応答を高めてもよい。抗ウィルス免疫応答を高めるもう一つの方法は、感染細胞を患者から採取し、その細胞が本発明のタンパク質の全部又は一部をそれらの表面上に発現するよう、ここに説明した本発明のタンパク質をコードする核酸をそれらの細胞にトランスフェクトし、このトランスフェクトした細胞を患者に再導入する、といった方法であろう。こうしてこの感染細胞は今や、インビボでT細胞に共刺激シグナルを送達し、それによってT細胞を活性化させることができるであろう。
【0073】
別の用例では、抗原機能(好ましくはBリンパ球抗原機能)の上方調節又は向上は、腫瘍免疫の誘導に有用であろう。被験体の腫瘍特異的寛容性を克服するためには、本発明の少なくとも一つのペプチドをコードする核酸をトランスフェクトした腫瘍細胞(例えば肉腫細胞、黒色腫細胞、リンパ腫細胞、白血病細胞、神経芽腫細胞、癌細胞など)を被験体に投与することができる。必要に応じ、数種のペプチドの組合せを発現するよう、この腫瘍細胞をトランスフェクトしてもよい。例えば、患者から採取した腫瘍細胞に、B7−2様活性を有するペプチドの単独の発現、又は、B7−1様活性及び/又はB7−3様活性を有するペプチドと組み合わせた発現を命令する発現ベクタをエクスビボでトランスフェクトすることができる。このトランスフェクトした腫瘍細胞を患者に戻し、このトランスフェクトした細胞の表面上でこれらペプチドを発現させる。あるいは、インビボでトランスフェクションする腫瘍細胞を標的化するのに遺伝子治療技術を用いてもよい。
【0074】
Bリンパ球抗原の活性を有する本発明のペプチドが腫瘍細胞表面上に存在することで、トランスフェクトした腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫応答を誘導するのに必要な共刺激シグナルが、T細胞に提供される。加えて、MHCクラスI又はMHCクラスII分子を欠いた、又は、充分な量のMHCクラスI又はMHCクラスII分子を再発現できない腫瘍細胞には、MHCクラスIα鎖タンパク質及びβ2マイクログロブリンタンパク質又はMHCクラスIIα鎖タンパク質及びMHCクラスIIβ鎖タンパク質の全部又は一部(例えば細胞質ドメイン切断部分)をコードする核酸をトランスフェクトすれば、この細胞表面上でMHCクラスI又はMHCクラスIIタンパク質を発現させることができる。適したクラスI又はクラスIIMHCを、Bリンパ球抗原(例えばB7−1、B7−2、B7−3)の活性を有するペプチドと一緒に発現させると、トランスフェクトした腫瘍細胞に対するT細胞媒介免疫応答が誘導される。選択によっては、例えば不変鎖など、MHCクラスII関連タンパク質の発現を遮断するアンチセンス作製物をコードする遺伝子に、さらに、Bリンパ球抗原の活性を有するペプチドをコードするDNAをコトランスフェクトして、腫瘍関連抗原の提示を促進し、腫瘍特異的免疫を誘導してもよい。このように、ヒト被験体のT細胞媒介免疫応答を誘導すれば、その被験体の腫瘍特異的寛容性を克服するには充分であろう。
【0075】
本発明のタンパク質のこの活性は、その他の手段の中でもとりわけ、以下の方法によって測定されよう。
【0076】
胸腺細胞又は脾細胞の細胞毒性を調べる適したアッセイには、限定はしないが、Current Protocols
in Immunology, Ed by J. E. Coligan, A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach,
W Strober, Pub. Greene Publishing Associates and
Wiley-Interscience (Chapter 3, In Vitro assays for
Mouse Lymphocyte Function 3.1-3.19; Chapter 7, Immunologic studies in Humans);
Herrmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2488-2492, 1981; Herrmann et
al., J. Immunol. 128:1968-1974,
1982; Handa et al., J. Immunol.
135:1564-1572, 1985; Takai et al., J. Immunol. 137:3494-3500, 1986; Takai
et al., J. Immunol. 140:508-512, 1988; Herrmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2488-2492,
1981; Herrmann et al., J. Immunol.
128:1968-1974, 1982; Handa et al., J. Immunol. 135:1564-1572, 1985; Takai
et al., J. Immunol. 137:3494-3500, 1986; Bowmanet al., J. Virology 61:1992-1998; Takai
et al., J. Immunol. 140:508-512, 1988; Bertagnolli et al., Cellular
Immunology 133:327-341, 1991; Brown et al., J. Immunol.
153:3079-3092, 1994に解説されたものがある。
【0077】
T細胞依存性免疫グロブリン応答及びアイソタイプ・スイッチングに関する(とりわけ、T細胞依存性抗体応答を変調し、Th1/Th2プロフィールに影響を与えるタンパク質を特定することとなる)アッセイには、限定はしないが、Maliszewski, J. Immunol. 144:3028-3033, 1990; and Assays for B cell
function: In vitro antibody production, Mond, J.J. and Brunswick,
M. In Current Protocols in Immunology. J.E.e.a. Coligan eds. Vol 1 pp.
3.8.1-3.8.16, John Wiley and Sons, Toronto.
1994に解説されたものがある。
【0078】
(とりわけ、Th1及びCTL応答を優勢に生じるタンパク質を特定することとなる)混合リンパ球反応(MLR)アッセイには、限定はしないが、Current Protocols in Immunology, Ed by J. E. Coligan,
A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach, W Strober, Pub. Greene
Publishing Associates and Wiley-Interscience (Chapter
3, In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1-3.19; Chapter 7, Immunologic
studies in Humans); Takai et al., J. Immunol. 137:3494-3500, 1986; Takai
et al., J. Immunol. 140:508-512, 1988; Bertagnolli et al., J. Immunol. 149:3778-3783, 1992に解説されたものがある。
【0079】
(とりわけ、天然T細胞を活性化させる、樹状細胞が発現するタンパク質を特定することとなる)樹状細胞依存的アッセイには、限定はしないが、Guery et al., J. Immunol. 134:536-544, 1995; Inaba
et al., Journal of Experimental Medicine 173:549-559, 1991; Macatonia
et al., Journal of Immunology 154:5071-5079, 1995; Porgador
et al., Journal of Experimental Medicine 182:255-260, 1995; Nair et al.,
Journal of Virology 67:4062-4069, 1993; Huang et al.,
Science 264:961-965, 1994; Macatonia
et al., Journal of Experimental Medicine 169:1255-1264, 1989; Bhardwaj et al., Journal of Clinical Investigation 94:797-807, 1994; 及び Inaba
et al., Journal of Experimental Medicine 172:631-640,
1990に解説されたものがある。
【0080】
(とりわけ、超抗原誘導後のアポトーシスを防ぐタンパク質や、リンパ球恒常性を調節するタンパク質を特定することとなる)リンパ球生存/アポトーシスを調べるアッセイには、限定はしないが、Darzynkiewicz et
al., Cytometry 13:795-808, 1992; Gorczyca
et al., Leukemia 7:659-670, 1993; Gorczyca et al.,
Cancer Research 53:1945-1951, 1993; Itoh et al., Cell
66:233-243, 1991; Zacharchuk, Journal of Immunology
145:4037-4045, 1990; Zamai et al., Cytometry 14:891-897, 1993; Gorczyca
et al., International Journal of Oncology 1:639-648, 1992に解説されたものがある。
【0081】
T細胞委任及び発生の初期段階に影響を与えるタンパク質を調べるアッセイには、限定はしないが、Antica et al., Blood 84:111-117, 1994; Fine et al., Cellular Immunology 155:111-122, 1994; Galy et al., Blood 85:2770-2778, 1995; Toki et al., Proc.
Nat. Acad Sci. USA 88:7548-7551, 1991に解説されたものがある。
【0082】
造血作用調節活性
本発明のタンパク質は、造血作用の調節、ひいては骨髄細胞又はリンパ細胞の欠乏の治療に有用であろう。コロニー形成性細胞又は因子依存的細胞系を支援する周辺的な生物活性ですら、例えば、赤血球前駆細胞の成長及び増殖を、単独で、又は、その他のサイトカインと関連させて支援するなど、造血作用の調節における関与の指標となり、実用性を示すものであり、例えば、様々な貧血の治療、又は、赤血球前駆細胞及び/又は赤血球の生成を刺激する放射線/化学療法と組み合わせた利用や;例えば結果的な骨髄抑制を防止したり治療する化学療法と組み合わせるのに有用な、顆粒球及び単球/マクロファージなどの骨髄細胞の成長及び増殖を支援する(即ち、伝統的なCSF活性);巨核球ひいては血小板の成長及び増殖を支援して、血小板減少症などの多様な血小板異常を防止又は治療したり、そして一般的には血小板輸注の代わりに、又は、血小板輸注を補って利用する;といった点で実用性があり、及び/又は、成熟して上記造血細胞のいずれかに成ることの可能な造血幹細胞の成長及び増殖を支援し、従って(再生不良性貧血及び発作性夜間血色素尿症を含む、しかしこれらに限らない、通常移植で治療されるものなどの)多様な幹細胞異常における治療上の実用性があり、また、放射線照射後や化学療法後に、インビボ又はエクスビボで(即ち骨髄移植、又は、末梢前駆細胞移植(同種又は異種)と組み合わせて)、幹細胞区画を正常細胞として、又は、遺伝子治療の場合は遺伝子操作された細胞として再増殖させる点で、実用性がある。
【0083】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段のなかでもとりわけ、以下の方法によって測定してよい。
【0084】
多様な造血系の増殖及び分化を調べるのに適したアッセイは上に引用されている。
【0085】
(とりわけ、胚性分化造血作用に影響するタンパク質を特定することとなる)胚性幹細胞分化を調べるアッセイには、限定はしないが、Johansson et al. Cellular Biology 15:141-151, 1995; Keller et al.,
Molecular and Cellular Biology 13:473-486, 1993; McClanahan et al., Blood
81:2903-2915, 1993に解説されたものがある。
【0086】
(とりわけ、リンパ系造血作用を調節するタンパク質を特定することとなる)幹細胞生存及び分化を調べるアッセイには、限定はしないが、Methylcellulose colony forming assays, Freshney,
M.G. In Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshney,
et al. eds. Vol pp. 265-268,
Wiley-Liss, Inc., New York, NY. 1994; Hirayama et
al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5907-5911, 1992; Primitive hematopoietic
colony forming cells with high proliferative potential, McNiece,
I.K. and Briddell, R.A. In Culture of Hematopoietic
Cells. R.I. Freshney, et al. eds. Vol pp. 23-39, Wiley-Liss, Inc., New York, NY.
1994; Neben et al., Experimental Hematology
22:353-359, 1994; Cobblestone area forming cell assay, Ploemacher,
R.E. In Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshney,
et al. eds. Vol pp. 1-21,
Wiley-Liss, Inc.., New York, NY. 1994; Long term bone
marrow cultures in the presence of stromal cells, Spooncer, E., Dexter, M. and Allen, T. In Culture of
Hematopoietic Cells. R.I. Freshney, et al. eds. Vol pp. 163-179, Wiley-Liss, Inc., New York, NY. 1994; Long term culture
initiating cell assay, Sutherland, H.J. In Culture of Hematopoietic Cells. R.I.
Freshney, et al. eds. Vol pp. 139-162, Wiley-Liss, Inc., New York,
NY. 1994に解説されたものがある。
【0087】
組織成長活性
さらに本発明のタンパク質は、骨、軟骨、腱、靱帯及び/又は神経組織の成長又は再生に用いられる組成物や、創傷治癒及び組織修復及び置換、並びに火傷、切開創及び潰瘍の治療に用いられる組成物でも実用性があるであろう。
【0088】
本発明のタンパク質は、骨が正常に形成されない状況で軟骨及び/又は骨の成長を誘導するため、ヒト及びその他の動物の骨折及び軟骨損傷又は欠陥の治癒に用途がある。本発明のタンパク質を利用したこのような製剤は、閉鎖性や開放性の骨折の整復や、人工関節の改善した固定における予防的用途を有するであろう。骨形成性物質が誘導するデノボ骨形成は、先天性、外傷により生じた、又は腫瘍切除で生じた頭蓋顔面の修復に貢献し、また美容形成外科においても有用である。
【0089】
さらに本発明のタンパク質は、歯周病の治療や、その他の歯の修復法に用いられよう。このような物質は、骨形成細胞を誘引する環境、骨形成細胞の成長を刺激する環境、又は、骨形成細胞の前駆細胞の分化を誘導する環境を、提供するであろう。さらに本発明のタンパク質は、骨及び/又は軟骨の修復を刺激したり、又は、炎症や、炎症プロセスが媒介する組織破壊(膠原性活性、破骨活性、等々)プロセスを遮断するなどにより、骨粗鬆症又は変形性関節症の治療に利用できよう。
【0090】
本発明のタンパク質に行わせることのできる、もう一つの種類の組織再生活性は、腱/靱帯形成である。本発明のタンパク質は、腱/靱帯様の組織又はその他の組織の形成を、このような組織が正常に形成されない状況下で誘導するため、ヒト及びその他の動物の腱又は靱帯の断裂、変形及びその他の腱又は靱帯の欠陥の治療での用途を有する。腱/靱帯様組織誘導タンパク質を用いたこのような製剤は、腱又は靱帯組織への損傷を防止したりする予防的用途や、腱又は靱帯組織のその他の組織への固定を高める用途や、また、腱又は靱帯組織の欠陥を修復するといった用途を有するであろう。本発明の組成物が誘導するデノボ腱/靱帯様組織の形成は、先天性、外傷で生じた、又はその他の原因で生じた他の腱又は靱帯の欠陥の修復に貢献し、腱又は靱帯の付着又は修復するための美容形成外科術にも有用である。本発明の組成物は、腱又は靱帯形成細胞を誘引する環境、腱又は靱帯形成細胞の成長を刺激する環境、腱又は靱帯形成細胞の前駆細胞の分化を誘導する環境、又は、インビボに戻して組織修復を行わせるために、腱/靱帯細胞又は前駆細胞のエクスビボでの成長を誘導する環境を、提供するであろう。さらに本発明の組成物は、腱炎、手根管圧迫症候群、及びその他の腱又は靱帯の欠陥の治療にも有用であろう。さらにこの組成物に、当業で公知のように、適したマトリックス及び/又は金属イオン封鎖剤を担体として含めてもよい。
【0091】
また本発明のタンパク質は、神経細胞の増殖並びに神経及び脳組織の再生、即ち、中枢神経系及び末梢神経系の疾患及び神経障害や、神経細胞又は神経組織の変性、死又は外傷が関与する機械的及び外傷的異常、を治療するのにも有用であろう。より具体的には、例えば末梢神経の損傷、末梢神経障害及び限局性神経障害などの末梢神経系の疾患や、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮側索硬化症、及び、シャイ−ドレーガー症候群などの中枢神経系疾患の治療にもタンパク質を用いてよい。本発明に基づいて治療できると考えられるその他の状態には、機械的及び外傷性の異常、例えば脊髄異常、頭部外傷、及び、脳卒中などの脳血管疾患がある。化学療法又はその他の医療の結果生じた末梢神経障害もまた、本発明のタンパク質を用いて治療されよう。
【0092】
本発明のタンパク質はさらに、限定はしないが、圧迫潰瘍、血管不全に関連する潰瘍、外科的及び外傷的創傷、等々を含む、非治癒性の創傷のより良好な又はより早期の閉止を促進するためにも有用である。
【0093】
さらに本発明のタンパク質は、例えば臓器(例えば膵臓、肝臓、腸管、腎臓、皮膚、内皮を含む)、筋肉(平滑筋、骨格筋又は心筋)及び血管(血管内皮細胞を含む)組織、などのその他の組織を形成又は再生する活性、又は、このような組織を含んで成る細胞の成長を促進する活性を呈するかも知れない。所望の効果の一部は、線維の瘢痕化の阻害又は変調により、正常組織の再生を可能とするものであってよい。さらに本発明のタンパク質は、血管形成活性を呈するかも知れない。
【0094】
さらに本発明のタンパク質は、腸管の保護や、又は、肺もしくは肝臓線維、多様な組織の再潅流傷害、及び、全身性サイトカイン損傷で生じた状態、の再生及び治療にも有用であろう。
【0095】
さらに本発明のタンパク質は、上記の組織の前駆組織もしくは細胞からの分化を促進もしくは阻害したり、又は、上記の組織の成長を阻害するのにも、有用であろう。
【0096】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段の中でもとりわけ、以下の方法によって測定されよう。
【0097】
組織形成活性を調べるアッセイには、限定はしないが、国際特許公報WO95/16035号(骨、軟骨、腱);国際特許公報WO95/05846号(神経、ニューロン);国際特許公報WO91/07491号(皮膚、内皮)に解説されたものがある。
【0098】
創傷治癒活性を調べるアッセイには、限定はしないが、Eaglstein and Mertz, J. Invest. Dermatol 71:382-84
(1978)により改良されたWinter, Epidermal Wound Healing, pps. 71-112 (Maibach, HI and Rovee, DT, eds.), Year Book Medical Publishers, Inc.,
Chicagoに解説されたものがある。
【0099】
アクチビン/インヒビン活性
本発明のタンパク質はさらに、アクチビン又はインヒビンに関連した活性を呈するであろう。インヒビンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を阻害する能力を特徴とするが、他方、アクチビンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激する能力を特徴とする。このように、本発明のタンパク質は、単独で、又は、インヒビンαファミリーの一員と一緒にヘテロ二量体の形で、メスのほ乳類では受精能力を低下させ、オスのほ乳類では精子形成を低下させるといったインヒビンの能力に基づく避妊薬として有用であろう。他のインヒビンを充分な量、投与することで、これらのほ乳類の不妊を誘導することができる。あるいは、本発明のタンパク質は、ホモ二量体として、又は、インヒビンβグループの他のタンパク質サブユニットと一緒にヘテロ二量体として、下垂体前葉の細胞からのFSH放出を刺激するアクチビン分子の能力に基づいた生殖能力誘導治療薬として有用であろう。例えば、米国特許第4,798,885号を参照されたい。さらに本発明のタンパク質は、ウシ、ヒツジ及びブタなどの家畜の生涯生殖能を高めるよう、性的に未熟なほ乳類の生殖能開始を早めるのに、有用であろう。
【0100】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段の中でもとりわけ、以下の方法により測定してもよい。
【0101】
アクチビン/インヒビン活性を調べるアッセイには、限定はしないが、Vale et al.,
Endocrinology 91:562-572, 1972; Ling et al., Nature 321:779-782, 1986; Vale et
al., Nature 321:776-779, 1986; Mason et al., Nature 318:659-663, 1985; Forage
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:3091-3095, 1986に解説されたものがある。
【0102】
走化性/ケモキネシス活性
本発明のタンパク質は、例えば単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、マスト細胞、好酸球、上皮細胞及び/又は内皮細胞を含むほ乳類の細胞に対して走化活性又はケモキネシス活性(例えばケモカインとして働くなど)を有するであろう。走化性又はケモキネシスのあるタンパク質を用いると、所望の細胞集団を、所望の作用部位に移動又は誘引することができる。走化性及びケモキネシスのあるタンパク質は、組織の創傷及びその他の外傷の治療や、局部感染の治療に特に有利である。例えば、リンパ球、単球又は好中球を腫瘍又は感染部位に誘引すると、その腫瘍又は感染物質に対する免疫応答が向上するであろう。
【0103】
タンパク質又はペプチドは、特定の細胞集団に対し、特定の方向への配置又は運動を直接的又は間接的に刺激できれば、そのような細胞集団に対する走化性活性を有することになる。好ましくは、このタンパク質又はペプチドが、細胞の所定の運動を直接的に刺激できるとよい。ある特定のタンパク質が、一細胞集団に対して走化性活性を有するかどうかは、細胞走化性を調べる何らかの公知のアッセイにこのようなタンパク質又はペプチドを利用すると、簡単に調べることができる。
【0104】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段の中でもとりわけ、以下の方法により測定してもよい。
【0105】
(走化性を誘導する又は妨げるタンパク質を特定することとなる)走化性活性を調べるアッセイは、あるタンパク質が、膜を横切った細胞の遊走を誘導できるかや、あるタンパク質が、一細胞集団の別の細胞集団への接着を誘導できるかを測定するアッセイから成る。運動及び接着を調べる適したアッセイには、限定はしないが、Current Protocols in Immunology, Ed by J.E. Coligan,
A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach, W.Strober, Pub. Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience
(Chapter 6.12, Measurement of alpha and beta Chemokines
6.12.1-6.12.28; Taub et al. J. Clin.
Invest. 95:1370-1376, 1995; Lind et al. APMIS 103:140-146, 1995; Muller et al
Eur. J. Immunol. 25: 1744-1748; Gruber et al. J. of Immunol. 152:5860-5867, 1994; Johnston et al. J. of Immunol. 153: 1762-1768, 1994に解説されたものがある。
【0106】
止血及び血栓溶解活性
さらに本発明のタンパク質は、止血活性又は血栓溶解活性を呈するであろう。その結果、このようなタンパク質は、様々な凝固異常(血友病などの遺伝性異常を含め)の治療や、又は、外傷、外科術もしくはその他の原因で生じた創傷を治療する際に凝固もしくはその他の止血事象を高めるのに有用だと予測される。さらに本発明のタンパク質は、血栓を溶解させたり、又は、血栓形成を阻害したり、また、それにより生じる状態(例えば心臓及び中枢神経系の血管の梗塞(例えば卒中)など)を治療及び防止するにも、有用であろう。
【0107】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段の中でもとりわけ、以下の方法により測定してもよい。
【0108】
止血及び血栓溶解活性を調べるアッセイには、限定はしないが、Linet et al., J. Clin. Pharmacol.
26:131-140, 1986; Burdick et al., Thrombosis Res. 45:413-419, 1987; Humphrey et
al., Fibrinolysis 5:71-79 (1991); Schaub,
Prostaglandins 35:467-474, 1988に解説されたものがある。
【0109】
受容体/リガンド活性
本発明のタンパク質は、さらに、受容体/リガンド相互作用における受容体としての活性、受容体リガンドとしての活性、又は、阻害剤もしくはアゴニストとしての活性、を示すであろう。このような受容体及びリガンドの例には、限定はしないが、サイトカイン受容体及びそれらのリガンド、受容体キナーゼ及びそれらのリガンド、受容体ホスファターゼ及びそれらのリガンド、細胞対細胞の相互作用に関与する受容体及びそれらのリガンド(細胞接着分子(例えばセレクチン、インテグリン及びそれらのリガンドを含む)、並びに、抗原の提示、抗原の認識及び細胞免疫応答及び体液性免疫応答の発生に関与する受容体/リガンドの対を含む、しかしこれらに限らない)がある。受容体及びリガンドは、さらに、関連する受容体/リガンド相互作用の潜在的なペプチド又は小分子阻害剤をスクリーニングするにも、有用である。本発明のタンパク質は(受容体及びリガンドのフラグメントを含め、しかしこれらに限らず)、それ自体で、受容体/リガンド相互作用の阻害剤として有用であろう。
【0110】
本発明のタンパク質のこの活性は、他の手段の中でもとりわけ、以下の方法により測定してもよい。
【0111】
受容体/リガンド活性を調べるのに適したアッセイには、限定はしないが、Current Protocols in
Immunology, Ed by J.E. Coligan, A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach,
W.Strober, Pub. Greene
Publishing Associates and Wiley-Interscience (Chapter
7.28, Measurement of Cellular Adhesion under static conditions 7.28.1-7.28.22),
Takai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA
84:6864-6868, 1987; Bierer et al., J. Exp. Med. 168:1145-1156, 1988; Rosenstein et al., J. Exp. Med. 169:149-160 1989; Stoltenborg et al., J. Immunol. Methods 175:59-68, 1994; Stitt et al., Cell
80:661-670, 1995に解説されたものがある。
【0112】
抗炎症活性
本発明のタンパク質は、さらに、抗炎症活性を呈するであろう。抗炎症活性は、炎症応答に関与する細胞に刺激を送ったり、細胞対細胞の相互作用(例えば細胞接着など)を阻害又は促進したり、炎症プロセスに関与する細胞の走化性を阻害又は促進したり、細胞の遊出を阻害又は促進したり、又は、炎症応答をより直接的に阻害又は促進する他の因子の産生を刺激又は抑制したり、することで、達成されるであろう。このような活性を呈するタンパク質を用いると、限定はしないが、例えば感染に関する炎症(例えば敗血症性ショック、敗血症又は全身性炎症性応答症候群(SIRS)など)、虚血−再潅流傷害、エンドトキシンの致命率、関節炎、補体媒介超急性拒否反応、腎炎、サイトカイン又はケモカイン誘発性肺傷害、炎症性腸疾患、クローン病、又は、TNF又はIL−1などのサイトカインの過剰産生を原因とする疾患を含む、慢性又は急性の状態を含む炎症性の状態を治療することができる。さらに本発明のタンパク質は、抗原性物質又は材料に対するアナフィラキシ及び過敏症を治療するのにも、有用であろう。
【0113】
カドヘリン/腫瘍浸潤抑制活性
カドヘリンはカルシウム依存性の接着分子であり、発生中、特に特定の細胞種を規定する上で、主要な役割を果たしているようである。正常なカドヘリン発現が失われるか、又は変化すると、細胞接着特性に変化が生じ、腫瘍成長及び転移に結び付くことがある。カドヘリンの多機能は、例えば尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡(自己免疫性の水疱形成性皮膚病)、クローン病、及びいくつかの発生上の異常など、他のヒトの疾患にも関与が示唆されている。
【0114】
カドヘリン・スーパーファミリには、40をゆうに越える仲間があり、それぞれが異なる発現パターンを持つ。このスーパーファミリの仲間はすべて、共通の保存された細胞外反復配列(カドヘリンドメイン)を有するが、この分子のその他の部分には構造上の違いが見られる。このカドヘリンドメインはカルシウムに結合して、それらの三次構造を形成するため、それらの接着を媒介するにはカルシウムが必要である。最初のカドヘリンドメイン中のごく2、3個のアミノ酸が、同種親和性接着の基礎を提供しているため、この認識部位を修飾すると、カドヘリンの特異性を変更することができ、こうして、それ自体だけを認識する代わりに、その変異分子を今度は異なるカドヘリンにも結合できるようにすることができる。加えて、いくつかのカドヘリンは、他のカドヘリンとも異種親和性接着により結合する。
【0115】
E−カドヘリンはカドヘリンスーパーファミリの中の一員であり、上皮細胞種で発現する。病理学的には、E−カドヘリン発現が腫瘍内で行われないと、その悪性細胞は浸潤性となり、その癌は転移性になる。E−カドヘリンを発現するポリヌクレオチドで癌細胞系をトランスフェクトすると、癌に関連する変化が逆行し、変化した細胞形が正常に戻り、細胞相互及び細胞の基質に対する接着性が回復し、細胞成長速度が低下し、足場非依存的な細胞成長が劇的に減少する。このように、E−カドヘリンの発現を再導入すると、癌腫が進行する前の段階に戻る。他のカドヘリンも、他の組織種由来のカルシノーマに、同じ浸潤抑制的な役割を有すると考えられる。従って、カドヘリン活性を持つ本発明のタンパク質、及び、このようなタンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチドを用いて、癌を治療することができる。癌細胞にこのようなタンパク質又はポリヌクレオチドを導入すると、カドヘリンを正常に発現させることにより、これらの細胞で観察される癌性の変化を減少又は消失させることができる。
【0116】
さらに癌細胞では、由来となる組織種とは異なる組織種のカドヘリンが発現され、こうしてこれらの細胞が体内の異なる組織に浸潤及び転移できるようになるのだと、示されている。カドヘリン活性を持つ本発明のタンパク質、及び、このようなタンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチドを、カドヘリン発現が適切に行われていないこれらの細胞で置き換えると、正常な細胞接着性を回復し、細胞が転移する性向を減少又は消失させられる。
【0117】
加えて、カドヘリン活性を持つ本発明のタンパク質、及び、このようなタンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチドを、カドヘリンを認識し、カドヘリンに結合する抗体を生成させるのに、用いることができる。このような抗体を用いると、発現が適切でない腫瘍細胞のカドヘリンの接着を遮断し、その細胞が余所で腫瘍を形成するのを防ぐことができる。このような抗カドヘリン抗体は、癌の等級、病理学的種類、及び予後のマーカとしても利用でき、即ち、癌が進行するほど、カドヘリンの発現が少なくなることになり、このようなカドヘリン発現の減少を、カドヘリン結合抗体を用いて検出できる。
【0118】
カドヘリン活性を持つ本発明のタンパク質フラグメント、好ましくは、カドヘリン認識部位のデカペプチドを含んで成るポリペプチド、及び、このようなタンパク質フラグメントをコードする本発明のポリヌクレオチド、を用いると、カドヘリンに結合し、また、好ましくない影響を生む態様でそれらが結合するのを妨げることで、カドヘリン機能を遮断できる。加えて、カドヘリン活性を持つ本発明のタンパク質フラグメント、好ましくは、癌患者の血中内で安定であると判明している切断型の可溶型カドヘリンフラグメント、及び、このようなタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチド、は、適切な細胞対細胞の接着を混乱させるのに、用いることができる。
【0119】
カドヘリンの接着活性及び浸潤抑制活性を調べるアッセイには、限定はしないが、Hortsch et al. J Biol
Chem 270 (32): 18809-18817, 1995; Miyaki
et al. Oncogene 11: 2547-2552, 1995; Ozawa et al.
Cell 63: 1033-1038, 1990に解説されたものがある。
【0120】
腫瘍阻害活性
腫瘍の免疫学的治療又は防止に関して上述した活性に加え、本発明のタンパク質は、その他の抗腫瘍活性を呈するであろう。タンパク質は、腫瘍成長を直接的又は間接的(例えば抗体依存的細胞媒介的細胞毒性(ADCC)を介して)に阻害する場合がある。タンパク質は、腫瘍組織又は腫瘍前駆組織に対して作用したり、腫瘍成長を支援するのに必要な組織の形成を阻害したり(例えば血管形成を阻害するなど)、腫瘍成長を阻害するその他の因子、物質又は細胞種の生成を引き起こしたり、又は、腫瘍成長を促進する因子、物質又は細胞種を抑制、消去又は阻害したりすることで、その腫瘍阻害活性を呈する場合がある。
【0121】
他の活性
さらに本発明のタンパク質は、以下の更なる活性又は作用のうちの一つ又はそれ以上を呈するであろう。即ち、限定はしないが細菌、ウィルス、真菌及び他の寄生生物を含む感染性作用因子の成長、感染又は機能の阻害や、その殺生;限定はしないが、身長、体重、毛髪の色、眼の色、皮膚、肥満対痩せの比率又はその他の組織色素沈着、又は、臓器もしくは身体の一部の大きさ又は形状(例えば乳房増大又は縮小、骨格の形又は形状の変更など)を含む身体上の特徴への影響(抑制又は向上);オス又はメスの被験体の生殖能への影響;食餌中の脂肪、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、コファクタ又は他の栄養因子もしくは成分の代謝、異化、同化、処理、資化、保存又は消去への影響;限定はしないが、食欲、性欲、ストレス、認知(認知障害を含む)、うつ(うつ性障害を含む)、及び暴力行為を含む行動上の特徴への影響;鎮痛作用又は他の疼痛軽減作用の提供;造血系統以外の系統の胚性幹細胞の分化及び成長の促進;体液性又は内分泌活性;酵素の場合は、酵素の欠乏を補正し、欠乏に関連する疾患を治療すること;過剰増殖性の異常(例えば乾癬など)の治療;免疫グロブリン様活性(例えば、抗原又は補体へ結合する能力など)、及び、ワクチン組成物中で抗原として作用して、このようなタンパク質、又は、このようなタンパク質と交差反応性である他の物質又は物体に対する免疫応答を生じさせること、である。
【0122】
投与及び投薬法
本発明のタンパク質(限定はしないが、組換え又は非組換えによる由来を含め、いかなる由来のものも含む)は、薬学的に容認可能な担体と配合した場合には、製薬組成物中に用いてもよい。このような組成物中には、さらに、(タンパク質及び担体に加えて)希釈剤、充填材、塩類、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、及び、当業で公知の他の物質を含めてもよい。「薬学的に容認可能な」という用語は、有効成分の生物活性の効果に干渉しない非毒性の物質を意味する。担体の特徴は、投与経路に依存することであろう。本発明の製薬組成物中には、さらに、例えばM−CSF、GM−CSF、TNF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IFN、TNF0、TNF1、TNF2、G−CSF、Meg−CSF、トロンボポエチン、幹細胞因子及びエリスロポエチンなどのサイトカイン、リンホカイン、又は、その他の造血因子を含有させてもよい。さらに本発明の製薬組成物中に、当該タンパク質の活性を高めたり、又は治療中のその活性又は利用を補う他の作用薬を含有させてもよい。このような付加的な因子及び/又は作用薬を、本発明のタンパク質との相乗効果を生じたり、又は副作用を減らすために、製薬組成物中に含めてもよい。反対に、特定のサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓溶解性又は抗血栓因子、又は、抗炎症性作用薬の製剤中に、本発明のタンパク質を含めて、そのサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓溶解性又は抗血栓因子、又は、抗炎症性作用薬の副作用を減じてもよい。
【0123】
本発明のタンパク質は多量体(例えばヘテロ二量体又はホモ二量体)で、又は、それ自体ともしくは他のタンパク質と複合体を形成した状態で活性であってもよい。結果的に、本発明の製薬組成物は、このような多量体又は複合体型の本発明のタンパク質を含んで成っていてもよい。
【0124】
本発明の製薬組成物は、本発明のタンパク質が、タンパク質又はペプチド抗原と一緒になった複合体型であってもよい。このタンパク質及び/又はペプチド抗原は、刺激シグナルをBリンパ球及びTリンパ球の両方に送ることとなる。Bリンパ球は、その表面にある免疫グロブリン受容体を通じて抗原に応答することとなる。MHCタンパク質による抗原提示に続き、Tリンパ球はT細胞受容体(TCR)を介してこの抗原に応答する。MHCや、クラスI及びクラスIIMHC遺伝子がコードするものを含め、ホスト細胞上の構造上関連するタンパク質は、このペプチド抗原をTリンパ球に提示する役目をする。この抗原成分をさらに、精製されたMHCペプチド複合体の単独のものとして、又は、T細胞に直接シグナルを送ることのできる共刺激分子と一緒になったものとして、提供できるかも知れない。あるいは、B細胞上の表面免疫グロブリン等の分子に結合できる抗体や、T細胞上のTCR等の分子に結合できる抗体を、本発明の製薬組成物と組み合わせることができる。
【0125】
本発明の製薬組成物は、本発明のタンパク質が、その他の薬学的に容認可能な担体に加え、例えば水溶液中で、凝集した形でミセルとして存在するリピド、不溶型の単層、液晶又はラメラ層など、両親媒性の物質と組み合わされたようなリポソームの形であってもよい。リポソーム製剤に適したリピドには、限定はしないが、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、ホスホリピド、サポニン、胆汁酸、等々がある。このようなリポソーム製剤の調製は、例えば、すべて言及をもってここに編入する米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号; 及び米国特許第4,737,323号に開示されているように、当業の平均的な技術範囲内にある。
【0126】
ここで用いられている用語「治療上有効量」とは、患者にとって有意義な利点、即ち、関連する状態の治療、治癒、防止又は改善や、又は、このような治療、治癒、防止又は改善の速度の向上、を示すのに充分な、当該製薬組成物又は方法の各有効成分の合計量を意味する。単独で投与される一個の有効成分に用いられた場合、この用語は、その成分のみを言う。ある組合せに用いられた場合、組合せでの投与、順次的投与、又は同時の投与に関係なく、この用語は、治療効果を生む有効成分の合計量を言う。
【0127】
本発明の治療法又は利用法を実施するには、本発明のタンパク質の治療上有効量を、治療しようとする状態を有するほ乳類に投与する。本発明のタンパク質は、本発明の方法に基づいて単独で投与しても、又は、サイトカイン、リンホカイン又はその他の造血因子を用いた治療などの他の治療法と組み合わせて投与してもよい。一つ又はそれ以上のサイトカイン、リンホカイン又はその他の造血因子と一緒に同時投与する場合、本発明のタンパク質を、そのサイトカイン、リンホカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子又は抗血栓因子と同時に又は順番に投与してもよい。順番に投与する場合、担当医が、サイトカイン、リンホカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子又は抗血栓因子と組み合わせたときの、本発明のタンパク質の適切な投与順序を決定することになるであろう。
【0128】
製薬組成物中に用いたり、又は、本発明の方法を実施するための本発明のタンパク質の投与は、例えば経口摂取、吸入、局所塗布、又は、皮膚、皮下、腹腔、腸管外又は静脈内注射など、様々な従来の方法で行うことができる。静脈による患者への投与が好ましい。
【0129】
治療上有効量の本発明のタンパク質を経口投与する場合、本発明のタンパク質は錠剤、カプセル、粉末、溶液又はエリキシルの形となるであろう。錠剤形で投与する場合、本発明の製薬組成物はさらに、ゼラチン又はアジュバントなどの固体の担体を含有していてもよい。錠剤、カプセル又は粉末は約5から95%の本発明のタンパク質、好ましくは、約25から90%の本発明のタンパク質を含むとよい。液体形で投与する場合、例えば水、石油、動物性油脂や、又はピーナッツ油、鉱物油、大豆油、又はごま油などの植物性油脂、あるいは合成油脂などの液体の担体が添加されよう。液体形の製薬組成物には、さらに、生理食塩水、デキストロース又は他の糖類溶液、又は、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含んでいてもよい。液体形で投与する場合は、この製薬組成物は、重量で約0.5から90%の本発明のタンパク質、そして好ましくは約1から50%の本発明のタンパク質を含有する。
【0130】
治療上有効量の本発明のタンパク質を静脈、皮膚又は皮下注射により投与する場合は、本発明のタンパク質は、無発熱源の、腸管外で受容される水溶液の形であるであろう。このような腸管外で受容されるタンパク質溶液の製剤は、pH、等張性、安定性、等々の上で適切なものであり、当業の標準的技術範囲内にある。静脈、皮膚又は皮下注射に好適な製薬組成物には、本発明のタンパク質に加えて、塩化ナトリウム液、リンガー液、デキストロース液、デキストロース及び塩化ナトリウム液、乳酸加リンゲル液など、等張性の当業で公知の賦形剤が含まれているはずである。さらに本発明の製薬組成物には、安定化剤、保存剤、緩衝剤、抗酸化剤等、当業で公知の添加剤を含めてもよい。
【0131】
製薬組成物中の、本発明のタンパク質の量は、治療しようとする状態の性質及び重篤度や、患者が経験したそれまでの治療の性質に依存することであろう。最終的には、担当医が、個々の患者を治療する本発明のタンパク質量を決定することになる。まず担当医は、低用量の本発明のタンパク質を投与し、患者の応答を観察することであろう。投与する本発明のタンパク質の用量を次第に増やしていき、その患者で最適な治療効果が得られた時点で、その投薬量をそれ以上増加させない。本発明の方法を実施するのに用いる様々な製薬組成物は、体重1キログラム当たり、約0.01μgから約100mg(好ましくは約0.1ngから約10mg、より好ましくは約0.1μgから約1mg)の本発明のタンパク質を含むはずと考えられる。
【0132】
本発明の製薬組成物を用いた静脈治療の期間は、治療しようとする疾患の重篤度や、個々の患者の状態及び潜在的な特異体質性の応答に依存して様々であろう。本発明のタンパク質の各用途の期間は、12から24時間の範囲の継続的な静脈投与であろう。最終的には、担当医が、本発明の製薬組成物を用いた静脈治療の適切な期間を決定することとなる。
【0133】
さらに本発明のタンパク質を用いて動物を免疫処置し、このタンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を得てもよい。ここで用いられる用語「抗体」には、限定はしないが、指定したタンパク質に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメリック抗体、一本鎖抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、又はこれらのフラグメント、が含まれる。このような用語には、さらに、指定したタンパク質に結合することのできる抗体又は抗体配列を由来とするあらゆるその他の種が含まれる。
【0134】
ある特定のタンパク質に対する抗体は、当業で公知の方法により作製できる。例えば、モノクローナル抗体は、公知の方法(例えばGoding, 1983,
Monoclonal antibodies: principles and practice, Academic Press Inc., New York;
and Yokoyama, 1992, "Production of Monoclonal Antibodies" in Current
Protocols in Immunology, Unit 2.5, Greene Publishing Assoc. and John Wiley
& Sonsを参照されたい)に基づき、抗体産生ハイブリドーマを作製すれば、生成が可能である。ポリクローナル血清及び抗体は、ほ乳類の被験体を、公知の方法に基づき、関連タンパク質又はそのフラグメントで接種すれば、生成させることができる。抗体フラグメント、受容体、又はその他の反応性のペプチドは、対応する抗体から、所望のフラグメントを公知の方法に基づいて開裂させ、採集することにより、生成させることができる(例えば上記のGoding 及びAndrew et al., 1992, "Fragmentation of Immunoglobulins"
in Current Protocols in Immunology, Unit 2.8, Greene Publishing Assoc. and John
Wiley & Sonsを参照されたい)。キメリック抗体及び一本鎖抗体も、公知の組換え法に基づいて生成させることができる(例えば第5,169,939号、第5,194,594号及び第5,576,184号を参照されたい)。ヒト化抗体も、対応するマウス抗体から、公知の方法に基づき作製できる(例えば米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、及び第5,693,762号を参照されたい)。加えて、ヒト抗体を、遺伝子改変してヒト抗体分子を発現するようにしたマウスなどのヒト以外の動物でも生成できよう(例えばFishwild et al.,
1996, Nature Biotechnology 14: 845-851; Mendez et al., 1997, Nature Genetics
15: 146-156 (erratum Nature Genetics 16: 410); 及び米国特許第5,877,397号及び第5,625,126号を参照されたい)。このような抗体は、タンパク質全体又はそのフラグメントを免疫原として利用することで得てもよい。ペプチド免疫原は、さらに、カルボキシル末端にシステイン残基を含んでいてもよく、またキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)などのハプテンに共役している。このようなペプチドを合成する方法は、例えばe R.P. Merrifield, J. Amer.Chem.Soc. 85,
2149-2154 (1963); J.L. Krstenansky, et al., FEBS Lett. 211, 10 (1987)にあるように当業で公知である。
【0135】
本発明のタンパク質に結合するモノクローナル抗体は、このタンパク質の免疫検出用の診断役として有用であろう。またこのタンパク質に結合する中和化モノクローナル抗体は、このタンパク質の両方の状態の治療薬としてや、このタンパク質の異常な発現が関与する何らかの形の癌の治療にも、有用であろう。癌細胞又は白血病細胞の場合、このタンパク質に対する中和化モノクローナル抗体は、このタンパク質が媒介するであろう、癌細胞の転移性伝播を検出及び防止に、有用であろう。
【0136】
骨、軟骨、腱又は靱帯の再生に有用な、本発明の組成物の場合、治療法には、この組成物を局所、全身、又は、インプラントもしくはデバイスとして局部投与することが含まれる。投与時には、本発明で用いられる治療用組成物は、もちろん、無発熱源の生理学的に受容可能な形である。さらに、骨、軟骨又は組織の損傷部位への送達に向けて、この組成物を、所望に応じて粘着性の形態に被包又は注入してもよい。創傷の治癒及び組織の修復には局所投与が適しているであろう。本発明の方法においては、上述したように選択に応じて当該組成物中に含めてもよい本発明のタンパク質以外の治療上有用な物質を、代わりに、又はさらに付加的に、当該組成物と同時に又は順番に投与してもよい。骨及び/又は軟骨の形成のためには、好ましくは、この組成物に、このタンパク質含有組成物を骨及び/又は軟骨の損傷部位に送達でき、骨及び軟骨の発生の構造を提供でき、さらに選択に応じて体内に再吸収させることのできる基質が含まれるであろう。このような基質は、その他の移植医療用途で現在用いられている材料から形成してよい。
【0137】
基質材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容上の外観及び接触面の特性に基づく。本組成物の特定の用途が、適切な配合を定義するであろう。本組成物の基質として可能性のあるものは、生分解性の、化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ無水物であろう。可能性のある他の材料は、例えば骨又は皮膚コラーゲンなど、生分解性のかつ生物学的によく定義されたものである。更なる基質は、純粋なタンパク質か、又は細胞外基質成分から成るものである。可能性のある他の基質は、例えば焼結ハイドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミネート、又は他のセラミックスなど、非生分解性であり、かつ化学的によく定義されたものである。基質は、例えばポリ乳酸及びハイドロキシアパタイト、又は、コラーゲン及びリン酸三カルシウムなど、上記の種類の材料のうちのいずれかの組合せから成っていてもよい。例えばカルシウム−アルミネート−ホスフェートのように、組成中のバイオセラミックスを変更してもよく、またポアの大きさ、粒子の大きさ、粒子の形状、及び生分解性などを変えるよう、加工してもよい。
【0138】
現在好適なのは、150から800ミクロンの直径を有する多孔質粒子の形状の、乳酸及びグリコール酸が50:50(モル重量)で成るコポリマである。いくつかの用途では、例えばカルボキシメチルセルロース又は自己血血餅などの金属イオン封鎖剤を利用して、タンパク質組成物が基質から解離するのを防ぐと有利であろう。
【0139】
好適な金属イオン封鎖剤のファミリーは、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースを含む、(ヒドロキシアルキルセルロースを含む)アルキルセルロースなどのセルロース材料であり、最も好ましいのは、カルボキシメチルセルロース(CMC)の陽イオン塩である。その他の好適な金属イオン封鎖剤には、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、酸化ポリオキシエチレン、カルボキシビニルポリマ、及びポリ(ビニルアルコール)がある。ここで有用な金属イオン封鎖剤の量は、ポリママトリックスからの本タンパク質の脱離を防ぎ、かつ、この組成物が適切に取り扱われ、しかし尚、前駆細胞の基質への浸潤を防止しつつ、この前駆細胞の骨形成活性を支援する機会をタンパク質に提供するのに充分な量である、合計配合重量に基づいて0.5から20重量パーセント、好ましくは1から10重量パーセントである。
【0140】
別の組成物では、本発明のタンパク質を、対象となる骨及び/軟骨の欠陥、創傷又は組織の治療に有利な他の作用物質と組み合わせてもよい。これらの作用物質には、例えば上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF−α及びTGF−β)、及びインシュリン様成長因子(IGF)などの多様な成長因子が含まれる。
【0141】
治療用の組成物は現在、さらに獣医用にも貴重である。ヒトに加え、特に家庭用の動物及びサラブレッド馬は、本発明のタンパク質によるこのような治療にとって好ましい患者である。
【0142】
組織再生に用いるタンパク質含有製薬組成物の投薬計画は、例えば形成したい組織の重量、損傷部位、損傷組織の状態、創傷の大きさ、損傷組織の種類(例えば骨)、患者の年齢、性別、及び食餌、感染の重篤度、投与時間、及び、その他の臨床上の因子など、当該タンパク質の作用を変える様々な因子を考慮して、担当医が決定することになろう。投薬量は、再構成中に用いられた基質の種類や、製薬組成物中への他のタンパク質の含有によって、様々であろう。例えば、IGF I(インシュリン様成長因子I)など、他の公知の成長因子を最終的な組成物に加えると、投薬量も左右されるであろう。組織/骨の成長及び/又は修復の周期的な評価を、例えばX線、組織形態測定的判定及びテトラサイクリンによる標識付けなどを行えば、経過を観察できる。
【0143】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに遺伝子治療にも利用できる。このようなポリヌクレオチドをインビボ又はエクスビボで細胞内に導入してほ乳類の被験体で発現させることができる。本発明のポリヌクレオチドは、(限定はしないが、ウィルスベクタ又は裸のDNAの形を含め)、細胞又は生物に核酸を導入するその他の公知の方法で投与してもよい。
【0144】
細胞を本発明のタンパク質の存在下でエクスビボで培養して、そのような細胞に対する所望の作用又は活性を増殖又は生成させてもよい。こうして処置された細胞を治療のためにインビボに導入できる。
【0145】
さらに以下の実施例により、本発明の実例を挙げるが、この実施例を限定的なものと捉えては成らない。本出願を通じて引用した全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容や、配列表を、言及をもってここに編入することとする。
【実施例】
【0146】
実施例
クローン「hGIL−19/AE289」の同定及び性格付け
本発明のポリヌクレオチドは、クローン「hGIL−19/AE289」と同定された。クローンhGIL−19/AE289は、以下の方法に基づいて単離された。コンカナバリンA及び骨髄由来樹状細胞の両方で活性化させた脾細胞から作製したマウスcDNAライブラリからマウスESTを同定した。このESTは、分泌タンパク質をコードするcDNAに対して選択的な方法を用いて同定された(米国特許第5,536,637号を参照されたい)。このマウスEST配列を用いて、完全長マウスクローンを同じcDNAライブラリから単離した。このマウスクローンの配列を解析すると、インターロイキン−10(IL−10)に対して有意な相同性があることが分かった。
【0147】
このマウスクローンのヒト相同体を単離するために、IL−10に対して相同性を示すこのマウス配列の領域に基づいてPCRプライマを作製した。このようなプライマを、ヒトPBMCライブラリの増幅に用いたところ、有意なサイズのPCR産物が生じた。このPCR産物の配列を解析すると、それがマウスcDNAの相同体であることが確認できた。この部分的ヒトクローンの配列からオリゴヌクレオチドを作製し、このオリゴヌクレオチドを用いて、完全長ヒトクローンをこのPBMCライブラリから単離した。
【0148】
hGIL−19/AE289は完全長ヒトクローンであり、ある分泌タンパク質(ここでは「hGIL−19/AE289」タンパク質とも言及されている)の全コーディング配列を含有する。そのアミノ酸配列を解析すると、それはhIL−10に対して約23%の相同性を有することが示された。IL−10の推定受容体結合モチーフに基づき、コンピュータ・モデリングでは、同様の機能に関与する三つのモチーフが、hGIL−19/AE289内で提案された。これらはSEQ ID NO:2の残基50番から60番、、残基63番から81番、そして残基168番から177番の領域である。データベースで解析すると、hGIL−19は同様のレベルの相同性を他の種のIL−10に対しても呈することが判明した。
【0149】
現在決定されているhGIL−19/AE289のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:1に報告されており、ポリ(A)の尾を含む。前述のヌクレオチド配列に相当するhGIL−19/AE289タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に報告されている。
【0150】
hGIL−19/AE289タンパク質の性格付け
CHO細胞に、hGIL−19/AE289cDNAを、適した発現ベクタ内でトランスフェクトすることで、完全長hGIL−19/AE289タンパク質を安定に発現及び分泌する細胞系を作製した。適したhGIL−19/AE289発現ベクタを用いて一時的にトランスフェクトしたCOS細胞を用いて、分析用のhGIL−19/AE289タンパク質を作製してあった。トランスフェクションは市販のリポフェクタミン試薬(ギブコ社)を用いて行った。興味深いことに、hGIL−19を発現するCOS細胞は不均一に脱離し、細胞培養単層に孔を形成しているのが観察された。トランスフェクトしたCOS細胞で馴化させた培地を用いて、hGIL−19/AE289タンパク質のサイトカイン様活性を実証した。細胞溶解産物のウェスタンブロット分析では、この細胞をhGIL−19/AE289発現細胞で馴化した培地に暴露すると、Stat-3が腎糸球体間質組織由来細胞系でリン酸化(活性化)し、マクロファージ様の性質(MES-13;
Dumoutier et al (2000) J. of Immunology 164:1814-1819を参照されたい)を呈することが分かった。加えて、Stat-3のリン酸化は、hGIL−19タンパク質で処置した、トランスフェクトしていないCOS細胞で誘導される。
【0151】
(ここに解説したトランスフェクトしたCOS細胞系を由来とする)hGIL−19/AE289タンパク質の電気泳動分析を行うと、この発現したタンパク質はある範囲の大きさで存在することが示された。電気泳動前に、COS由来hGIL−19タンパク質をN−グリカナーゼで処理すると、未処理のhGIL−19/AE289で観察された移動度の最も高い(例えば分子量が最も小さいなど)種に相当する一本のバンドが出た。これは、hGIL−19/AE289のアミノ酸配列中に特定された推定N結合糖付加部位(SEQ ID NO:2のアミノ酸残基54−56番、68−70番、97−99番、及び176−178番)に起きると考えられている糖付加事象と合致する。
【0152】
エドマンN末端配列決定を行うと、成熟hGIL−19/AE289タンパク質のN末端は、SEQ ID NO:2の位置34にある残基(アラニン)で開始していると判定された。「6×ヒスチジン」親和性タグ及びFLAGエピトープタグを、この成熟hGIL−19/AE289タンパク質のN末端に融合させる発現ベクタを作製した(追加されるアミノ酸タグはSEQ ID NO:3に記載されており、以下のアミノ酸配列:MKFLVNVALVFMVVYISYIYAGSGHHHHHHGSGDYKDDDDKAPISSHCR)を有している。これらのタグ付き作製物を用いて、安定に発現するCHO細胞系と、一時的に発現するCOS細胞系を作製した。これらタグは、hGIL−19/AE289を検出する上で(例えば抗6×his抗体:抗FLAG抗体)、そして馴化培地から(Ni+2樹脂を用いて)このタンパク質を精製する上で、便利な手段となった。hGIL−19/AE289発現COS細胞系からこのタグによって精製されたヒトGIL−19タンパク質を用いると、MES−13細胞でStat-3活性化を誘導できるかも知れない。
【0153】
活性化Th1及びTh2細胞中のhGIL−19mRNA転写産物を比較すると(例えば、 Syrbe et al, (1999) Springer Seminars in Immunopathology, 21:263-85を参照されたい)、活性化Th2細胞よりも、活性化Th1細胞での方が、GIL−19の発現がかなり高レベルであることが分かった。GIL−19mRNAの分析は、RNAse保護アッセイにより行われた。
【0154】
GIL−19の免疫学的影響
GIL−19の免疫学的影響を、マウスGIL−19のcDNAをマウスにウィルス導入して、メタゾアの観点から調べた。アデノウィルスベクタを用い、5×1010ウィルス粒子を注射した生後8週のC57/B6メスマウスで、マウスGIL−19のcDNAを発現させた。注射後7日目及び14日目にテストマウスを殺し、バッファのみか、又は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノウィルスを注射した対照マウスと比較した。7日目及び14日目の時点で、絶対及び相対胸腺重量が、ウィルスによるマウスGIL−19を発現したマウスで有意に減少していたことが認められた。脾臓の絶対平均重量は14日目で減少し、肝臓重量は7日目で僅かに増加していた。肉眼で観察された胸腺萎縮や、(顕微鏡で観察された)リンパ球の枯渇は7日目及び14日目で明白であった。
【0155】
加えて、赤血球数、ヘモグロビン、及びヘマトクリットの減少を含め、7日目には数多くの血液学的影響が明らかであった。これらの影響をまとめれば、動物に貧血があることが示唆された。さらに、好中球の増加が原因で、血小板の増加や白血球数の増加があった。これらの観察を考慮すると、再生的な応答の証拠はなく、その影響は骨髄のレベルであろうことが示唆された。
【0156】
さらに、7日目及び14日目に僅かなアルブミンレベルの減少があった。その理由として考えられるのは、腎臓又は腸管を通じた小分子の喪失である。
【0157】
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を利用すれば、ここに記載した本発明の具体的な実施例に対する等価物を数多く認識され、又は確認できることであろう。このような等価物は、以下の請求の範囲の包含するところとして意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列の相同性を有するアミノ酸配列;
(b)アミノ酸約34番〜179番についてのSEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列の相同性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列の相同性を有するアミノ酸配列;及び
(d)アミノ酸約34番〜179番についてのSEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列の相同性を有するアミノ酸配列
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質及び薬学的に受容されるキャリヤーを組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のタンパク質に結合する抗体又はそのフラグメント。
【請求項4】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、CDR移植抗体及びヒト化抗体からなる群から選ばれる、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
ヒト抗体である、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体である、請求項4又は5に記載の抗体。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載の抗体を含む、関節炎を治療又は予防するために使用される薬学的組成物。
【請求項8】
前記関節炎が関節リウマチである、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ヒトGIL−19/AE289タンパク質の拮抗剤であって、前記拮抗剤がヒトGIL−19/AE289タンパク質の受容体の可溶型である、拮抗剤。
【請求項10】
請求項1に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。

【図1】
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【公開番号】特開2011−160804(P2011−160804A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34204(P2011−34204)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2000−614364(P2000−614364)の分割
【原出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(501111647)ジェネティックス インスティテュート エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】