説明

ヒトIL−1βアンタゴニスト

本発明は、成熟ヒトIL−1βを特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合部分を含む。これらの抗体またはその抗原結合部分、一般的に、本来の抗体と比べて高結合親和性(低koff値)、脱アミド化の低下を示し、多様な疾患、例えばリウマチ性関節炎、変形性関節症または神経炎症を処置するのに使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の背景
インターロイキン-1β(IL−1β)は、前炎症性サイトカインである。IL−1βの過剰産生は、様々な疾患、例えば、リウマチ性関節炎および変形性関節症の病因に関連づけられてきた。IL−1βは、付着分子のアップレギュレーション、プロスタグランジおよびメタロプロテイナーゼの産生刺激、コラーゲンおよびプロテオグリカン合成の阻害、そして破骨細胞の骨再吸収の刺激によって、関節の炎症滑膜中へ細胞の移動が増加することが示されてきた。これらの特性のため、IL−1βは、関節炎において骨および軟骨破壊の第一次メディエーターの1つである。すなわち、IL−1βの活性を低下させる薬剤は、疾患、例えば関節炎について処置の可能性を示す。
【0002】
IL−1遺伝子ファミリーには3つのメンバーが存在する:IL−1α、IL−1βおよびIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)。IL−1αおよびIL−1βは、IL−1受容体のアゴニストであるが、IL−1raは特異的受容体アンタゴニスト、すなわち内生的なIL−1拮抗阻害剤である。臨床試験中の患者に組換え体IL−1raを投与すると、プラセボと比べて重篤なリウマチ性関節炎に罹患した患者において顕著な臨床的改善がもたらされた。さらに、IL−1raの投与により、進行性関節損傷の速度が低下した。しかし、不十分な薬物動力学的特性および投与しなければならない高用量により、組換え体IL−1raはあまり理想的でない治療剤となる。
【0003】
IL−1βについての高親和性中和抗体は、優れた治療剤となるであろう。高親和性結合により結合した一般的な長期排除半減期の抗体は、組換え体IL−1raと比べて、用量および頻度の低下を伴う治療法を生み出す。多くのIL−1β抗体は記載されてきたが、高親和性、高特異性および強力な中和活性を持つモノクローナル抗体を同定することは非常に困難であった。
【0004】
本発明は、ヒトIL−1βに特異的なネズミ抗体Mu007(参照PCT/US02/21281)から誘導されるヒト化IL−1β抗体を包含する。これらの抗体は、強力なIL−1β中和活性を持つ改善された安定性を有する高親和性抗体であり、またIL−1βに対する特異性が高い。
【0005】
本発明の要約
本発明は、抗体が軽鎖および重鎖を含んでおり、
該軽鎖が、配列番号:1、12、22、29、31、33、37または39からなる群から選択される軽鎖CDR1;軽鎖CDR2;および配列番号:3、7、13、15、17、20、25、34または41からなる群から選択される軽鎖CDR3;をさらに含み、
該重鎖が、配列番号:4または10からなる群から選択される重鎖CDR1;配列番号:5、8、16、18、21、23または28からなる群から選択される重鎖CDR2配列;および配列番号:6、9、11、14、19、24、26、27、30、32、35、36、38、40または42からなる群から選択される重鎖CDR3;をさらに含み、
該抗体は、配列番号:1の軽鎖CDR1、配列番号:2の軽鎖CDR2、配列番号:3の軽鎖CDR3、配列番号:4の重鎖CDR1、配列番号:5の重鎖CDR2および配列番号:6の重鎖CDR3から構成されるものではない、
ヒトIL−1βに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合部分を包含する。
【0006】
本発明は、1x10-11Mあるいはそれ以下のKdにて成熟ヒトIL−1βを結合し、1x10-3s-1またはそれ以下の表面プラズモン共鳴(HBS-EP緩衝液、25℃でpH7.4)によって決定されるkoff速度定数にて成熟ヒトIL−1βから解離する、そして標準的なT1165.17増殖アッセイにおいてヒトIL−1β活性を中和する、抗体を包含する。
【0007】
本発明は、さらに、抗体、好ましくはヒト化抗体、またはその抗原結合部分を提供し、ここで脱アミド化が重鎖相補性決定領域2(HCDR2;配列番号:44)の位置55で除かれて、改良された安定性を生じる。
【0008】
本発明は、ヒト起源および3つのCDRの軽鎖可変性フレームワークならびにヒト起源および配列番号:55-64に対応するポリヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を有する3つのCDRの重鎖可変性フレームワークを含んでいるヒト化抗体を包含する。
【0009】
さらに、本発明は、ヒト起源および3つのCDRの軽鎖可変性フレームワークならびにヒト起源で配列番号:48-54および68に対応するアミノ酸配列を有する3つのCDRを有する重鎖可変性フレームワークを含んでいるヒト化抗体を包含する。
【0010】
本発明は、本明細書中および請求項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸を包含する。本発明は、本明細書および請求項に記載の抗体を発現するこれらのポリヌクレオチドによって形質移入される宿主細胞を包含する。
【0011】
本発明は、本明細書中で説明され、請求項に記載の有効量の抗体を対象に投与することを含むリウマチ性関節炎および変形性関節症を処置する方法、さらに関節炎をおこしやすいか、または関節炎に罹患している対象において生じる軟骨の破壊を阻害する方法も含む。
【0012】
本発明は、本明細書中の記載および請求項に記載の有効量の抗体を対象に投与することを含み、卒中および虚血、毒性刺激性ならびに外傷性頭部損傷に関連のある神経炎症性を処置するための方法をさらに含む。
【0013】
本発明は、さらに、リウマチ性関節炎または変形性関節症の罹患患者を処置するため、またはその処置が必要な対象の軟骨破壊を阻害するための医薬物の製造のための抗体の使用を含む。
【0014】
最終的には、本発明は、さらに、卒中および虚血、毒性刺激性、または外傷性頭部損傷に関連のある神経炎症に罹患した対象を処置するための医薬物の製造のための抗体の使用を含む。
【0015】
本発明の詳細な説明
本発明は、Mu007抗体(配列番号1-6)の相補性決定領域(CDR)を実質的に含むが、該ポリペプチド構造が1以上のそのCDRにおいて1以上のアミノ酸の違いを含んでいる、単離されたヒト抗体、またはその抗原結合部分を含む。フレームワークおよびこれらの抗体の他の部分は、ヒト生殖細胞系から生じ得る。Mu007のヒト化バージョンは、高親和性、ゆっくりとしたオフ・レート(off rate)にてヒトIL−1βに結合し、高い中和能を有する。本発明の多様な態様は、抗体および抗体フラグメント、ならびにそれらの医薬組成物、さらに核酸、かかる抗体およびフラグメントを作製するための組換え体発現ベクターおよび宿主細胞に関する。ヒトIL−1β活性を阻害する本発明の抗体を使用する方法が、本発明に含まれる。
【0016】
本発明がより理解され易いように、必要な用語をまず定義する。
本明細書中で使用される「抗体」なる用語は、ジスルフィド結合によって内部結合された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)の4つのポリペプチド鎖を含むイムノグロブリン分子を示すと意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。該重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。該軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLを含む。該VHおよびVL領域は、さらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるさらに保存性が高い領域に点在される。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRを含んでなり、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0017】
軽鎖はκおよびλに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεに分類され、抗体アイソタイプはIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと各々定義される。軽鎖および重鎖内で、該可変性および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって約3以上のアミノ酸の「D」領域も包含する重鎖と結合される。
【0018】
IgG抗体は、血清中に最も豊富なイムノグロブリンである。また、IgGは、全てのイムノグロブリンの中での血清の最長半減期(the longest half-life)を有する。他のイムノグロブリンとは異なって、IgGはFcRnと結合した後に有効に循環される。4つのIgGサブクラス、G1、G2、G3およびG4があり、各サブクラスは、違ったエフェクター機能を有する。G1、G2およびG3は、C1qに結合して補体を固定し得るが、G4はできない。G3は、G1以上に高効力でC1qを結合できるが、G1は補体に関する細胞分解を媒介することで効力が高い。G2は、非常に非効率的に補体を固定する。IgG中のC1q結合部位は、CH2ドメインのカルボキシ末端領域に位置する。
【0019】
全てのIgGサブクラスは、G2およびG4以上に有効であるG1およびG3を有するFc受容体(CD16、CD32、CD64)に結合し得る。IgGのFc受容体結合領域は、CH2ドメインのヒンジ(hinge)およびカルボキシ末端領域の両方に位置する残基によって形成される。
【0020】
本明細書中で使用される抗体の「抗原結合部分」(または、単に「抗体部分」)なる用語は、抗原に特異的に結合する能力(例えば、ヒトIL−1β)を保持する1以上の抗体のフラグメントを意味する。抗体の抗原-結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって行われる得ることが示されてきた。抗体の「抗原結合部分」なる用語に含まれる結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCHIドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を包含する。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別の遺伝子によってコードされるが、組換え体方法を用いてそれらは1本のタンパク質鎖として作製され得る合成リンカーにより結合され得るし、このVLおよびVH領域は対をなして一価分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426: and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883)。このような一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」なる用語のなかに含まれると意図される。一本鎖抗体の他の形態には、例えばダイアボディー(diabodies)も含まれる。ダイアボディーは、2価の多重特異性抗体であり、このなかでVHおよびVLドメインは、1本のポリペプチド鎖上で発現されるが、短すぎるために同じ鎖上で2つのドメイン間の対を作ることができないリンカーを用いて、このドメインを別の鎖の相補的ドメインと対をなすように、2つの抗原結合部位を構築する(参照、例えばHolliger, P.,et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak,R. J., et al. (1994) Structure 2:1121-1123)。
【0021】
またさらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と、1以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有電子対または非共有電子対の会合によって形成されるより大きな免疫付着分子の一部であり得る。かかる免疫付着分子の例には、四量体のscFv分子を形成するためにストレプトアビジンのコア領域の使用 (Kipriyanov, S. M., et al. (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、マーカーペプチドおよび二価を作成するためのC末端ポリヒスチジン・タグおよびビオチン化scFv分子の使用が包含される(Kipriyanov, S. M., et al. (1994) Mol. Immunol. 31:1047-1058)。抗体部分、例えば、FabおよびF(ab’)フラグメントは、従来技術、例えば全ての抗体のそれぞれに、パパインまたはペプシン消化を用いて、全ての抗体から製造される。さらに、抗体、抗体部分および免疫付着分子は、本明細書に記載の標準的な組換え体DNA技術を用いて得られうる。
【0022】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体生殖細胞系から誘導された部分的または完全なアミノ酸配列または再配置された配列を含み、非ヒト相補性決定領域(CDR)を有する抗体の配列を変化させることによって作製される抗体を意味する。可変領域のフレームワーク領域は、対応するヒトフレームワーク領域に置換される。本明細書中に記載したように、ヒト化抗体範囲にある抗体は、完全長抗体に限定するものではなく、フラグメントおよび一本鎖形態も包含し得る。
【0023】
本明細書中で使用される用語「組換え体ヒト抗体」は、組換え手段によって、調製され、発現され、構築されるかまたは単離される全てのヒト抗体を包含すると意図され、これには、例えば、宿主細胞中で形質移入された組換え体発現ベクターを用いて発現された抗体、組換え体、コンビナトリアル・ヒト・抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト・イムノグロブリン遺伝子について遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor、L. D., et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20:6287-6295を参照されたい)、または他のDNA配列にヒト・イムノグロブリン遺伝子配列をスプライシングすることを包含するあらゆる他の手段によって調製され、発現され、構築されるかまたは単離される抗体、を包含すると意図される。かかる組換え体ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系イムノグロブリン配列から誘導された可変および定常領域を有する。しかし、ある実施態様において、このような組換え体ヒト抗体は、イン・ビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列に対する遺伝子導入動物を用いる場合には、イン・ビボ体細胞突然変異誘発)に供される、すなわち組換え体抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列から誘導され、関係づけられるが、イン・ビボでのヒト抗体生殖細胞系のレパートリーの範囲内では自然に存在し得ない配列である。
【0024】
本明細書中で使用されるような「単離抗体」は、様々な抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を示すと意図される(例えば、ヒトIL−1βを特異的に結合する単離抗体は、ヒトIL−1β以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトIL−1βと特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば他種からのIL−1β分子に対して交差反応性を持つ。さらに、単離抗体は、他細胞物質および/または化学物質を実質的に含み得ない。
【0025】
本明細書中で使用されるような「中和抗体」(または「ヒトIL−1β活性を中和する抗体」)は、ヒトIL−1βの生物学的活性の阻害を生じるヒトIL−1βに結合する抗体を示すと意図される。T1165.17細胞バイオアッセイまたはヒトIL−1β中和プロトコールのいずれかを用いて決定されたように、IL−1βに関する1以上のインジケーターの生物学的活性を測定することにより、ヒトIL−1βの生物学的活性の阻害を評価することができる。
【0026】
成熟ヒトIL−1βを「特異的に結合する」抗体は、当業者には既知のヒトIL−1βの成熟形態を結合するが、成熟ヒトIL−1αとは結合しない上記に定義したような抗体を包含する。成熟ヒトIL−1βを特異的に結合する抗体は、他種由来の成熟IL−1βといくつかの交差反応性を示し得る。
【0027】
本明細書中で使用される用語「表面プラズモン共鳴」は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出すること、例えばBIAcore system (Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、N.J.)を用いることによって、リアルタイムでの生物特異的相互作用の分析を可能にする光学的現象を示す。さらなる記載については、実施例1およびJonsson,U.,et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26; Jonsson,U.,et al. (1991) Biotechniques 11:620-627; Johnsson,B.,et al.(1995) J. Mol. Recognit. 8:125-131; and Johnnson,B.,et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277を参照されたい。
【0028】
本明細書中で使用される用語「kon」は、単位:M−1sec-1で測定された、結合または結合反応速度定数、またはフォワード特異的反応速度、または複合体形成反応を示すと意図される。
【0029】
本明細書中で使用される用語「koff」は、単位:sec-1で測定された、解離または解離反応速度定数、または抗体/抗原複合体から抗体の解離に対する特異的反応速度を示すと意図される。
【0030】
本明細書中で使用される用語「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を示すと意図される。次の式によって計算される:
off/kon=Kd
【0031】
本発明の抗体は、低いkoff値を一般的に示す強効力抗体である。本明細書の目的のために、用語「強効力」は、低いIC50(または下記にバイオアッセイにおいてHチミジン取込み量が50%の低下を示す有効濃度)によって表される効力を示す。本発明の抗体は、中和化(標的種、例えばIL−1βの破壊を引き起こす)し得る。1つの用途については中和化しない抗体が、異なる用途については中和化することもある。
【0032】
本明細書中で使用される用語「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を包含すると意図される。核酸分子は、1本鎖または2本鎖であり得るが、好ましくは2本鎖DNAである。
【0033】
ヒトIL−1βに結合する抗体または抗体部分(例えば、VH、VL、CDR3)をコードしている核酸に関して、本明細書中で使用される用語「単離された核酸分子」は、抗体または抗体部分をコードしているヌクレオチド配列がヒトIL−1β以外の抗原を結合する抗体または抗体部分をコードしている他のヌクレオチド配列を含まず、他の配列がヒトゲノムDNA中の核酸を本来フランキングし得る、核酸分子を示すと意図される。すなわち、例えば、抗ヒトIL−1β抗体のVH領域をコードしている本発明の単離された核酸は、ヒトIL−1β以外の抗原と結合する別のVH領域をコードしているその他の配列を全く含有しない。
【0034】
用語「脱アミドされた、または脱アミド化」は、タンパク質/ペプチド中のAsnまたはGln残基の分解を示す(Robinson,et al.(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 12409-12413)。例えば、アスパラギン脱アミド化に対する分子内経路は、アスパルチルおよびイソアスパルチル残基の混合物中で生じる中間体スクシンイミドの形成を介するものである(Harris,et al.(2001) J. of Chromatography 752:233-245)。脱アミド化は、タンパク質の安定性の低下および/あるいは活性の低下または損失に導き得る。脱アミド化は、処方された治療薬調製中に、エクス・ビボで生じ得るし、それが医薬剤の製造および貯蔵中に悪影響を起こし得る。さらに、脱アミド化は、イン・ビボでも生じ、抗体効力および効果の耐容に影響し得る。
【0035】
本明細書中で使用される用語「ベクター」は、結合している他の核酸を送達し得る核酸分子を示すと意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であって、別のDNAセグメントをライゲートし得る環状の二重鎖DNAループを指すものである。ベクターの他のタイプは、別のDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲートし得るウイルスベクターである。
【0036】
本明細書中で使用される用語「組換え体宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え体発現ベクターが導入される細胞を示すと意図される。
【0037】
Mu007重鎖のCDR2領域中の脱アミド化部位が、このCDR2領域を含有するヒト化抗体の生物学的特性に影響を与えることがわかった(米国仮特許出願60/361423を参照されたい)。脱アミド化を遅くさせるか排除するヒト化抗体のアナログは、改善された安定性を有する抗体を生じる。すなわち、本発明は、脱アミド化が部位特異性変化によって重鎖相補性決定領域2(HCDR2)のAsn55位置で除かれる抗体を包含する。
【0038】
本発明の好ましい抗体またはその抗原結合部分は、通常、改善された親和性(低いKd値)を示し、結合特異性を有し、そして脱アミド化がHCDR2のAsn55位置で除かれているMu007について観察された効力と同様の効力を有する。本発明の抗体を明確にする特性は、抗体の可変領域、より具体的には抗体のCDR領域に主に存在する。
【0039】
他の種由来のヒト化抗体の主な刺激は、治療用としてヒト患者に注射した場合、抗体が免疫応答を引き起こす可能性を低下させることである。ヒト化抗体で用いられるヒト配列が多ければ多いほど、免疫原性のリスクが低くなる。さらに、注射されたヒト化抗体は、一般的に、注射された非ヒト抗体よりも、循環中により長い半減期を有する。さらに、エフェクター機能が望まれるなら、該エフェクター部分がヒトであるため、ヒト免疫系の他の部分と良好に相互作用し得る。抗体の生物学的特性に大きく影響しない好ましい重鎖および軽鎖領域として、本明細書中に記載の配列に変化させ得る。これは、IL−1βに結合するCDRの能力に影響しない抗体の定常領域および可変領域の一部に対して、特に真実である。
【0040】
さらに、本明細書に記載したように、ヒトフレームワーク可変領域およびそれらの変異体が本発明に使用される。しかし、選択されたフレームワークに関わらず、免疫原性のリスク低下を焦点とすると、選択されたヒトフレームワークと比較した変化の数は、最小であるべきである。
【0041】
重鎖および軽鎖可変領域のフレームワークの残基は、同じかまたは異なるヒト化抗体配列から誘導され得る。該ヒト化抗体配列は、天然のヒト抗体の配列であり得るか、またはいくつかのヒト化抗体のコンセンサス配列であり得る。本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域に対する好ましいヒトフレームワーク配列は、VHセグメントDP-5(Tomlinson,et al. (1992) J. Mol. Biol. 227:776-798)、およびJセグメントJH4、JH1またはJH5(Ravetch,et al.(1981) Cell 27:583-591)を包含する。VkセグメントL1(Cox,et al. (1994)Eur. J. Immunol. 24:827-836)およびJセグメントJk4(Hieter,et al. (1982) J. Biol. Chem.10:1516-1522)は、ヒト化軽鎖可変領域についてフレームワークを提供する配列が好まれる。
【0042】
本発明のヒト化抗体の好ましいヒト重鎖定常領域ポリヌクレオチド配列は、IgG1定常領域またはIgG4定常領域を包含する:
tccaccaagggcccatcggtcttcccgctagcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttgagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggacgagctgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgccccccgtgctggactccgacggctccttcttcctctatagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaatga
IgG1 [配列番号:65]

ctagcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaagacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccctgcccagcacctgagttcctggggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaat
IgG4 [配列番号:66]。
【0043】
本発明のヒト抗体の好ましいヒト軽鎖定常領域ポリヌクレオチド配列は、κ鎖定常領域である:
cgaactgtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgctaa
[配列番号:67]。
【0044】
本発明の好ましい抗体は、IgG1重鎖定常領域[配列番号:65]またはIgG4重鎖定常領域[配列番号:66]およびκ軽鎖定常領域[配列番号:67]を含有し、表2に明記されたクローン(すなわち、W13、W17など)によって設計される。本発明の抗体W13、W17、W18、W20に対する可変領域ポリヌクレオチド配列は、次の配列を包含する:
W13-重鎖
ggatccactggtcaggtgcagctggtgcagtctggcgctgaggtgaagaagcctggctcctccgtgaaggtctcctgcaaggcttctggctacacattcgaccgctattggatcgagtgggtgcgccaggcccctggccaaggcctggagtggatgggcgagattctgcctggcagcggcgacattaactacaatgagaagttcaagggccgcgtcacgattaccgcggacaaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgcgctctgaggacacggccgtgtattactgtgcgcgcatgtactatgattacgaccagggctttgactactggggccagggcaccctggtcaccgtctcctccgcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagc
[配列番号:55]

W13-軽鎖
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtgggcgaccgcgtcaccatcacttgtaagttcagtcaggacattgatcgcttcctgacctggtttcagcagaaaccaggcaaagcccctaagtccctgatctatcgcgtgaagcgcctggtggatggcgtcccatcccgcttcagcggcagtggctctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgcatccagtatgatgagtttccgtacaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcaaa
[配列番号:60]

W17-重鎖
ggatccactggtcaggtgcagctggtgcagtctggcgctgaggtgaagaagcctggctcctccgtgaaggtctcctgcaaggcttctggctacacattcgaccgctattggatcgagtgggtgcgccaggcccctggccaaggcctggagtggatgggcgagattctgcctggcagcggcgacattaactacaatgagaagttcaagggccgcgtcacgattaccgcggacaaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgcgctctgaggacacggccgtgtattactgtgcgcgcatgtactatgattacgaccagggctttgacctgtggggccagggcaccctggtcaccgtctcctccgcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagc
[配列番号:56]
【0045】
W17-軽鎖
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtgggcgaccgcgtcaccatcacttgtaagttcagtcaggacattgatcgcttcctgagctggtttcagcagaaaccaggcaaagcccctaagtccctgatctatcgcgtgaagcgcctggtggatggcgtcccatcccgcttcagcggcagtggctctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgcgttcagtatgatgagtttccgtacggtttcggcggcggcaccaaggtggagatcaaa
[配列番号:61]

W18-重鎖
ggatccactggtcaggtgcagctggtgcagtctggcgctgaggtgaagaagcctggctcctccgtgaaggtctcctgcaaggcttctggctacacattcgaccgctattggatcgagtgggtgcgccaggcccctggccaaggcctggagtggatgggcgagattctgcctggcagcggcaccattaactacaatgagaagttcaagggccgcgtcacgattaccgcggacaaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgcgctctgaggacacggccgtgtattactgtgcgcgcatgtactatgattacgaccagggctttgacaactggggccagggcaccctggtcaccgtctcctccgcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagc
[配列番号:57]

W18-軽鎖
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtgggcgaccgcgtcaccatcacttgtaagttcagtcaggacattgatcgcttcctgagctggtttcagcagaaaccaggcaaagcccctaagtccctgatctatcgcgtgaagcgcctggtggatggcgtcccatcccgcttcagcggcagtggctctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgcgttcagtatgatgagtttccgtacaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcaaa
[配列番号:62]
【0046】
W20-重鎖
ggatccactggtcaggtgcagctggtgcagtctggcgctgaggtgaagaagcctggctcctccgtgaaggtctcctgcaaggcttctggctacacattcgaccgctattggatcgagtgggtgcgccaggcccctggccaaggcctggagtggatgggcgagattctgcctggcagcggcgacattaactacaatgagaagttcaagggccgcgtcacgattaccgcggacaaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgcgctctgaggacacggccgtgtattactgtgcgcgcatgtactatgattacgaccagggctttgactactggggccagggcaccctggtcaccgtctcctccgcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagc
[配列番号:59]

W20-軽鎖
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtgggcgaccgcgtcaccatcacttgtaagttcagtcaggacattgatcgcttcctgagctggtttcagcagaaaccaggcaaagcccctaagtccctgatctatcgcgtgaagcgcctggtggatggcgtcccatcccgcttcagcggcagtggctctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgcgttcagtatgatgagtttccgtacaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcaaa
[配列番号:63]

U43-重鎖
ggatccactggtcaggtgcagctggtgcagtctggcgctgaggtgaagaagcctggctcctccgtgaaggtctcctgcaaggcttctggctacacattcgaccgctattggatcgagtgggtgcgccaggcccctggccaaggcctggagtggatgggcgagattctgcctggcagcggcgacattaactacaatgagaagttcaagggccgcgtcacgattaccgcggacaaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgcgctctgaggacacggccgtgtattactgtgcgcgcatgtactatgattacgaccagggctttagcctgtggggccagggcaccctggtcaccgtctcctccgcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagc
[配列番号:58]

U43-軽鎖
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtgggcgaccgcgtcaccatcacttgtaaggcgagtcaggacattgatcgcttcctgagctggtttcagcagaaaccaggcaaagcccctaagtccctgatctatcgcgtgaagcgcctggtggatggcgtcccatcccgcttcagcggcagtggctctggcacagatttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgaagattttgcaacttattactgcgttcagtatgatgagtttccgtacaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcaaa
[配列番号:64]
【0047】
別の実施態様において、本発明の抗体の成熟アミノ酸配列、W13、W17、W18、W20およびU43は、次の配列を包含する:

W13-重鎖
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFD RYWIEWVRQA PGQGLEWMGE ILPGSGDINY NEKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARMY YDYDQGFDYW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
[配列番号:45]

W13-軽鎖
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKFSQDID RFLTWFQQKP GKAPKSLIYR VKRLVDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCIQ YDEFPYTFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
[配列番号:46]

W17-IgG1 重鎖
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFD RYWIEWVRQA PGQGLEWMGE ILPGSGDINY NEKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARMY YDYDQGFDLW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
[配列番号:47]
【0048】
W17-IgG4 重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFDRYWIEWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGDINYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARMYYDYDQGFDLWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
[配列番号:68]

W17-軽鎖
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKFSQDID RFLSWFQQKP GKAPKSLIYR VKRLVDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVQ YDEFPYGFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
[配列番号:48]

W18-重鎖
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFD RYWIEWVRQA PGQGLEWMGE ILPGSGTINY NEKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARMY YDYDQGFDNW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
[配列番号:49]

W18-軽鎖
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKFSQDID RFLSWFQQKP GKAPKSLIYR VKRLVDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVQ YDEFPYTFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGE
[配列番号:50]
【0049】
W20-重鎖
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFD RYWIEWVRQA PGQGLEWMGE ILPGSGDINY NEKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARMY YDYDQGFDYW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
[配列番号:51]

W20-軽鎖
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKFSQDID RFLSWFQQKP GKAPKSLIYR VKRLVDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVQ YDEFPYTFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
[配列番号:52]

U43-重鎖
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFD RYWIEWVRQA PGQGLEWMGE ILPGSGDINY NEKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARMY YDYDQGFSLW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGK
[配列番号:53]

U43-軽鎖
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKASQDID RFLSWFQQKP GKAPKSLIYR VKRLVDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVQ YDEFPYTFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
[配列番号:54]
【0050】
本発明は、1以上の軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3、または重鎖CDR1、抗体 Mu007の[配列番号1-4]を利用する抗体またはその抗原結合部分を包含する。本発明に含められるCDRは、特異的IL−1βエピトープに抗体を結合するために多数の接触残基を提供するMu007抗体の超可変領域である。すなわち、本明細書に記載のCDRは、完全長抗体だけでなく、CDRに結合した場合に、CDRを使用してタンパク質の結合親和性が成熟IL−1βに特異的であるように、CDRを活性な構造に維持する、機能的フラグメントおよびアナログまたは他のタンパク質を作成するために使用し得る。
【0051】
Mu007抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))[実施例1を参照されたい]を用いて決定された。これらの実験では、抗体は、BIAcore(登録商標)チップ上でタンパク質Aまたは抗Fc抗体のいずれかによって低密度で捕捉され、リガンドは流された。チップの表面上の蓄積物を測定した。この分析方法は、結合に対する親和性(Kd)を得るために結合反応速度と解離反応速度の両方を、リアルタイムで分析を可能にする。Mu007抗体は、6.2pM(ピコモル)のKdを有する。本発明の好ましいヒト化抗体、すなわち、W13、W17、W18、W20およびU43は、各々2.8pM、2.8pM、4.2pM、2.7pMおよび4.7pMのKd'sを示した(実施例1、表3を参照されたい)。
【0052】
また、本発明の抗体または抗原結合部分は、IL−1βに特異的に結合するが、IL−1ファミリーの別のメンバーまたは同じ種内で構造的に関連のあるタンパク質に結合しないことが好ましい。
【0053】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−1βの生物学的活性を中和させることが好ましい。2つの異なるアッセイは、Mu007の能力を試験するために利用され、IL−1β活性を中和するために本発明の抗体が好まれる[実施例2および3を参照されたい]。
【0054】
増殖のためにIL−1βの低いレベルを必要とするネズミ細胞系、T1165.17を、最初のアッセイで使用した。ヒトIL−1βは、培地中に一定レベルで存在しており、各抗体の連続希釈物を添加した。増殖阻害は、IL−1受容体のIL−1β活性化を遮断する抗体の能力の測定値を提供した。抗体の様々な濃度についての増殖測定は、各々Mu007に対して20.6pMおよびW13に対して1.2pM、W17に対して1.8pM、W18に対して2.0pMおよびU43に対して4.0pMの平均IC50値を示した(実施例2、表4を参照されたい)。
【0055】
本発明の抗体またはその抗原結合部分はMu007の値よりも低いIC50値を有することが好ましい。本明細書で示したような「IC50」は、ヒトIL−1βの活性を阻害する抗体の効力に関する測定値である。IC50は、単回用量試験において50%IL−1β阻害を生じる抗体の濃度である。IC50は、ヒトIL−1β活性の阻害を検出するあらゆるアッセイによって測定され得る。しかし、得られたIC50値は、使用されるアッセイによって変化し得る。同じアッセイを用いる試験の間でいくらかの変動もあり得る。例えば、本明細書中に記載の細胞に依存するIL−1βの条件は、得られるIC50値に対して影響がある。すなわち、本発明の目的についての臨界的な値は、1回の試験において、Mu007または本発明の好ましい抗体を用いて得られたものと比べた値である。
【0056】
利用された二番目のアッセイは、IL−6中和アッセイである。Mu007または本発明の好ましい抗体のいずれも、イン・ビボ中和活性を試験するためのマウスモデルを使用することが困難となるマウスIL−1βと交差反応をしない。しかし、IL−1βの前炎症性活性の1つの結果は、IL−6、IL−1βのいくつかの局所的でない影響を媒介する他の前炎症性のサイトカインの誘導である。ヒトIL−1βは、マウスIL−1β受容体と結合し、刺激し、マウスIL−6を増強させ得る。こうして、中和活性を有する抗体は、ヒトIL−1βの用量を与えるマウスにおけるIL−6の誘導を遮断する。Mu007および本発明の抗体の両方は、炎症性刺激のネズミモデルにおいてヒトIL−1βの強力な中和を示した(実施例3を参照されたい)。
【0057】
本発明は、発現された時に、ヒトIL−1βに特異的に結合する抗体をコードする組換え体DNAに関するものである。好ましくは、DNAは、発現した時に、1以上のMu007の重鎖および軽鎖CDR[配列番号1-6]および1以上の本発明の重鎖および軽鎖CDR[配列番号7-42]を含む抗体をコードする。本発明の好ましい抗体の重鎖可変領域を含むポリペプチド鎖をコードする例示的なDNA配列は、発現した時に、配列番号55-59として示される。発現した時に、本発明の好ましい抗体の軽鎖可変領域を含むポリペプチド鎖をコードする例示的なDNA配列は、配列番号60-64として示される。
【0058】
本発明の中和抗体は、適切なヌクレオチド配列を再配置すること、そして適切な細胞系でこれらを発現することによって、適切な抗体遺伝子配列、すなわちアミノ酸配列を生成することで達成される。あらゆる所望のヌクレオチド配列は、コドンベースの突然変異誘発法を用いて、例えば米国特許番号5264563および5523388に記載したとおりに生成され得る。かかる方法により、オリゴヌクレオチド内の所望の全てのコドン位置でアミノ酸残基の任意のおよび全ての頻度の製造できる。これは、所望の位置での20個のあらゆるアミノ酸の完全なランダム置換を包含し得る。一方、この方法は、アミノ酸鎖内の所望の位置で、例えば、本発明の新規CDR配列で特定のアミノ酸を達成するように行われ得る。要するに、所望のあらゆるアミノ酸配列を発現する適切なヌクレオチド配列は、容易に達成され、このような方法を用いて、本発明の新規なCDR配列を複製し得る。これは、ポリペプチド、例えば抗体を、あらゆる所望のアミノ酸配列によって合成する能力を生み出す。例えば、現在、選択の抗体のあらゆる所望のドメインのアミノ酸配列を決定でき、所望により、置換されたアナログの範囲を与えるように他の所望のアミノ酸に置換された1以上のアミノ酸を有する相同鎖を製造することも可能である。
【0059】
このような方法は全ての起こり得るアミノ酸配列のマスターセットを提供し、抗体構造としての最適機能について、または他の目的のためにこれらをスクリーンするために使用され得るが、かかる方法を適用する際に、遺伝子コードの縮重により、ランダムオリゴヌクレオチド合成および部分的変性オリゴヌクレオチド合成のような方法が、特定の位置での特定のアミノ酸残基を指定するコドンについての重複を組み込むと認識されるべきである。かかる方法は、Cwirla et al, Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382 (1990) and Devlin et al., Science 249:404-406 (1990) に記載されている。一方、このような抗体配列は、化学的に合成され得るか、または当業者には既知の他の方法で生成され得る。
【0060】
本明細書中に開示された本発明に従って、増強された強効力の抗体は、1つのポリペプチド構造中に、本明細書中で開示された1以上の新規CDR配列を組み合わせることによって、増強された高効力または生物学的活性、脱アミド化の低下を独立して生じることが示される。この様式において、いくつかの新規アミノ酸配列は、1つの抗体中、同じまたは異なるCDRに組合され、所望の生物学的活性レベルを有する抗体を産生する。このような所望のレベルは、koff値が、好ましくは10-3s-1以下、より好ましくは5x10-4 s-1以下、そしてより好ましくは1x10-4 s-1以下であるような抗体を産生することから得られることが多い。非限定的な例として、36個の、例えば新規CDR配列[配列番号7-42]を用いることができ、得られる抗体は、特定の抗原構造、例えばヒトIL−1βに対する高親和性を示す場合、本明細書中に記載のT1165.17細胞バイオアッセイまたはヒトIL−1β中和プロトコールのいずれかを用いて、得られる抗体の効力または生物学的活性をスクリーニングした。すなわち、総合的な結果は、種々の1つのアミノ酸置換と、段階的方法において抗原親和性および効力について得られる抗体のスクリーニングを組合せ、それによって、親和性に対して、望ましくは高いか、少なくとも最小値の犠牲なく効力が増加する反復方法であることを保証する。この反復方法は、高い親和性(WO01/64751およびUS2002/0098189を参照されたい)を有する抗体についての探索に制限されるように、段階的方法において2つのおよび3つのアミノ酸置換を生成するために使用され得る。結果的に、Mu007 抗体の各CDR領域のアミノ酸は、系統的に置換され、得られる抗体は抗原親和性についてスクリーンされた。軽鎖CDR2中のいずれかの位置でアミノ酸置換をしても、一般に、抗体親和性における増加が生じないことが認められた。すなわち、本発明の軽鎖CDR2は、このCDRにおけるアミノ酸置換により高い親和性の抗体を生じなかったため、Mu007軽鎖CDR2配列[配列番号:2]が好まれる。
【0061】
逆に言えば、様々な抗体ドメインの配列内の全ての位置が、特定の位置においてあらゆる種類の置換が、有用か有害であり得ることにおいて一様ではないということを評価しなければならない。さらに、特定位置でのアミノ酸の特定の種類の置換は、親和性に関してプラスまたはマイナスであり得る。例えば、特定の位置で全ての起こりうる疎水性アミノ酸をためす必要はないであろう。どのような疎水性アミノ酸でも同様の働きをすると思われる。一方、特定の位置でのアミノ酸が酸性であるかまたは塩基性であるかは、測定された親和性において大きなゆれを提供し得る。
【0062】
すでに記載したように、Kdは、konおよびkoff定数の比によって測定される。例えば、3.1x10(M-1s-1)のkonと0.9x10-4(s-1)のkoffとを組み合わせると、2.9x10-12MのKdとなる。すなわち、親和性は、konを増加させること、またはkoffを低下させることによって改善され得る。従って、本発明の抗体のkoffを低下させることによって、より効果的な治療剤を生じる得る。
【0063】
本発明に従って、その抗原親和性にかかわらず、存在する抗体の増加される効力は、該抗体の1以上のCDR領域に存在する1以上のアミノ酸への選択的変化によって達成され、これによって該アミノ酸変化によって、該抗体についてkoffを低下させる効果、好ましくは抗体親和性の増加効果を示す。親和性が同じままであるか、多少低下している場合であっても、低いkoff値で高い効果が達成され得る。このような抗体は、その中に導入されている変えられたCDRセグメントを含有する必要とされるポリペプチド鎖をコードしている適切なヌクレオチド配列を有する適切に設計された細胞において、合成を介する所望のポリペプチド鎖の合成によって、最も有利に産生される。また、本発明に従って、所望の効力、または生物学的活性のレベルを有する新規抗体は、明細書中に記載の遺伝子的に設計された細胞を使って、該抗体ポリペプチド鎖のCDR領域内の選択された位置で選択されたアミノ酸の導入によって、デ・ノボでまたは必要なジスルフィド結合の二次的形成と所望のポリペプチド鎖の完全な化学合成を用いて、製造され得る。
【0064】
前記に従って、本発明の抗体は、強効力のモノクローナル抗体である。しかし、かかる抗体は、それらは1つの細胞型のクローンから誘導され得る意味においてのみモノクローナルである。しかし、これは、それらを特定の起源に限定することを意味するものではない。かかる抗体は、一般に、抗体を産生しない細胞、例えばCHO、NSOまたはCOS細胞において容易に産生され得る。さらに、かかる抗体は、細胞の他の型、特に哺乳類および植物細胞であっても、抗体産物を形成するポリペプチド軽鎖および重鎖を発現して、会合するような細胞を遺伝子的に構築することによって、産生され得る。さらに、かかる鎖は、化学的に合成され得るが、それらはある特定の抗原決定基に対して特異的であるので、この用語が使用される意図の範囲内で、なお「モノクローナル」抗体の性質を構成している。すなわち、本明細書中で使用されるような、「モノクローナル抗体」なる用語は、該抗体の産生について用いられる単なるメカニズムよりもむしろ、抗体分子の、特異性および純度をさらに意味することを意図する。
【0065】
また、本明細書中で使用されるような、「効力」なる用語は、その意図される治療目的に利用される場合、かかる抗体の濃度について、抗体の効果に関する依存性を説明すると意図される。すなわち、効力は、ある特定の抗原に対する生物学的活性を意味する。非限定的には、この効力、または生物学的活性、または生物学的効果は、本明細書中に記載のT1165.17細胞バイオアッセイまたはヒトIL−1β中和プロトコールのいずれかによって、抗IL−1β抗体について測定される。逆に、抗原に対する抗体親和性は、kon対koffの比の単なる数学的計測値である。さらに、本発明の方法に従って産生される抗体のKdは、通常10-12Mまたはそれ以下の範囲内である。
【0066】
1つの実施態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、哺乳動物、好ましくはヒトを通常含み、該定常領域および可変領域、該重鎖および軽鎖フレームワーク領域および重鎖および軽鎖のCDRを含む該可変領域を通常含み、ここで、重鎖および軽鎖フレームワーク領域は、哺乳類抗体、好ましくはヒト抗体の特徴的な配列を有し、また該CDR配列は、ヒト以外のいくつかの種、好ましくはマウス、の抗体の配列と類似する。Mu007のCDR配列は表1に示される。
抗体における高効力を誘導する蛍光を示すCDRの配列
【表1】

【0067】
前記に従って、ヒトIL−1βに対するヒト化抗体に関して本発明に従って開示された配列をよりよく説明するために、Mu007の軽鎖および重鎖可変領域の基本または開始配列は、軽鎖可変領域配列番号:43および重鎖可変領域配列番号:44に示される。また、本発明に従って、組換え体細胞において発現する場合、これらの開始配列とは異なる特定のアミノ酸を、該アミノ酸配列を生成するために設計されたヌクレオチド配列を用いて開始する組換え方法によって生成した。該細胞の生成物は、該抗体がCDRL1については配列番号:1、CDRL2については配列番号:2、CDRL3については配列番号:3、CDR H1については配列番号:4、CDR H2については配列番号:5、そしてCDR H3については配列番号:6の組合せ物を持たないものである、本発明のモノクローナル抗体である。
【0068】
本発明の1つの実施態様において、少なくとも10-3s-1、好ましくは少なくとも5x10-4s-1、より好ましくは少なくとも10-4s-1までkoff値を低下させることにより、少なくとも10-11 M、好ましくは少なくとも10-12MのKdを有するヒトIL−1βに対する中和抗体Fabフラグメントを用いて、効力を増加させる。かかるFabフラグメントのCDR内に存在する該アミノ酸は、表2に示される。
【0069】
表2は、発明の抗体を用いたCDRのアミノ酸配列を示す(全配列は標準アミノ酸の1文字表記)。表2において、表1の対応するCDR(すなわち、CDRの位置はアミノ酸において異なる)においてなされた重要なアミノ酸の置換位置は、太字と下線で示される。Fabフラグメントを、標準的ELISAによって最初にスクリーニングした。T1165.17細胞増殖アッセイによって測定されたIC50値は、野生型のコントロール(wt/Fab)と、作製された組換え体の比較として示された。Fab変異体、Fab変異体および本発明の次の(二次)抗体は、表2からのクローン設計によって作られた。
【0070】
表2
抗体において強効力を誘導する傾向があるCDRの配列
【表2】

【表3】



【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】

【0071】
特定の実施態様において、本発明は、Kdが少なくとも10-11M、もっとも好ましくは少なくとも10-12Mであり、そしてkoffが少なくとも約10-3s-1、好ましくは少なくとも約5x10-4s-1、もっとも好ましくは少なくとも1x10-4s-1である単離抗体に関する(それら全ての組合せ物を包含する)。
【0072】
1x10-11かそれ以下のKdにて成熟ヒトIL−1βと結合する本発明の好ましい抗体は、1x10-3s-1かそれ以下のkoff速度定数を有し、またヒトIL−1β活性を中和し、脱アミド化はHCDR2の位置55で除かれており、配列番号45-54からなる群から選択される。
【0073】
1つの変異体のCDRライブラリィーを特徴分析し、合成するための標準的アプローチを用いた(Wu et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 95:6037-6042 (1998)を参照されたい)。標的CDRをまずヌクレオチドをアニーリングする前に各ライブラリィーについて検出した。ライブラリィーの合成に対して、参照抗体のCDRを、表1に定義した(図1および2を参照されたい)。本発明のCDR配列を産生するためのオリゴヌクレオチド合成についてコドンベースの突然変異誘発を用いた。
【0074】
ライブラリィーを、捕獲リフトによって最初にスクリーニングし、最も高い親和性変異体を同定した。捕獲リフト法(Watkins, Methods Mol. Biol. 178:187-193, (2002))は、当業者には既知であり、WO/0164751およびUS2002/0098189で説明されている。続いて、これらのクローンを、捕捉ELISA、そして固定化抗原上でのタイトレーションによって、さらに特徴分析した。このようなスクリーニングの後に、該抗体を、各々のkoff値についてスクリーニングして、この陽性効果を効力の決定によって測定した。
【0075】
本明細書中に記載の抗体は、相補性決定領域L1(またはLCDR1)、L3(またはLCDR3)、H1(またはHCDR1)、H2(HCDR2)およびH3(またはHCDR3)においてMu007のものと異なるCDRを含む。
【0076】
参照クローンが図1および2(各々軽鎖および重鎖配列、配列番号43および44)に示した重鎖および軽鎖可変領域配列を有するクローンである場合、選択されたFabフラグメントのCDRは表2に示される(図3および4のフレームワーク配列を有する全てのもの)。
【0077】
本発明に従って、かかるアミノ酸置換を組み合わせることによって、同じ抗体分子中で生じるものよりも高いので、本明細書中で開示された抗体の効力を大きく増加することが可能である。
【0078】
一般的には、5つまで置換されたCDRを含めて1以上の有益なCDRを持つ比較的低いkoff変異体の全てに関して、抗体効力と低いkoffには相関関係がある。
【0079】
表2に開示されたCDR配列の組合せ物は、全四量体の抗体分子において、または活性フラグメント、例えば、Fabフラグメントに存在し得る。表2に示されたクローンに対する効力データは、Fabフラグメントに対するものであるが、一方、表4に示されたクローンに対する効力データは、参照抗体、Mu007と比べた全抗体分子に対するものである。
【0080】
本発明の抗体は、比較的純粋か単離された形態で存在するだけでなく、ウェルまたはプレートで増殖した細胞から取り出した上清中に存在し得る。すなわち、本発明の抗体も、本発明の抗体を含む組成物の形態で存在し、該抗体は、薬理学的に許容し得る希釈剤や補形剤に懸濁され得る。本発明の抗体は、疾患(例えば、リウマチ性関節炎および変形性関節症を予防すること)を処置または予防する際に、治療上または薬理学的価値が存在するために充分な濃度または量で、組成物中に存在し得る。
【0081】
本発明の抗体をコードしているDNAは、通常、さらに、本来のまたは異種のプロモーター領域を包含する抗体コード化配列に操作可能に結合される発現制御ポリヌクレオチド配列を包含する。好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換もしくは形質移入し得るベクター中の真核生物プロモーター系であるが、原核生物宿主についての制御配列も用いうる。一旦該ベクターが適切な宿主細胞系に組込まれると、該宿主細胞は、ヌクレオチド配列を発現するため、および所望により、軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖ダイマーまたは無傷の抗体、結合フラグメントまたは他のイムノグロブリン形態を収集および精製するために、適切な条件下で増殖される。
【0082】
所望の抗体を最終的に発現し得る本発明の該核酸配列は、あらゆる多様な既知の技術を用いて、多様な異なるポリヌクレオチド(ゲノムまたはcDNA、RNA、合成オリゴヌクレオチドなど)および成分(例えば、V、J、DおよびC領域)から形成され得る。適切なゲノムと合成配列を結合することは、製造に関する共通方法であるが、cDNA配列もまた利用され得る。
【0083】
ヒト定常領域DNA配列は、多様なヒト細胞から、しかし好ましくは不死化B細胞から既知の方法に従って単離され得る。ポリヌクレオチド配列のための適当な供給源細胞およびイムノグロブリン発現および分泌のための宿主細胞は、当業者には既知の多くの供給源から得られうる。
【0084】
本明細書に記載のように、本明細書に記載の特異的な抗体に加えて、他の「実質的に相同な」修飾抗体は、当業者には既知の様々な組換え体DNA技術を用いて、容易に、設計および製造され易い。例えば、該フレームワーク領域は、いくつかのアミノ酸置換、末端および中間の付加および削除などにより、一次構造レベルで本来の配列から変更し得る。さらに、多様な異なるヒトフレームワーク領域は、本発明のヒト化イムノグロブリンに対する基準として1つ、または組合せて使用され得る。通常、遺伝子の修飾は、多様な既知の技術、例えば、部位特異的突然変異誘発によって容易に達成され得る。
【0085】
一方、一次抗体構造の一部分のみを含むポリペプチドフラグメントが産生され得、このフラグメントは1以上のイムノグロブリン活性(例えば、補体結合活性)を保持する。これらのポリペプチドフラグメントは、当業者には既知の方法によって無傷抗体のタンパク質の解裂により、もしくは部位特異的突然変異誘発生成を用いて、ベクター中の所望の位置に、例えばFabフラグメントを産生するCH1の後かF(ab’)フラグメントを産生するヒンジ領域の後にストップコドンを挿入することにより産生され得る。一本鎖抗体は、VLおよびVHを、DNAリンカーと結合することによって産生され得る。
【0086】
先に開示したように、該ポリヌクレオチドは、該配列が発現制御配列に操作可能なように結合された後に宿主中で発現される(すなわち、機能化を確実にするために位置付けられる)。これらの発現ベクターは、通常、宿主染色体DNAのエピソームまたは完全な部分のいずれかの宿主生物中で複製され得る。一般的に、発現ベクターは、選択マーカー、例えば、テトラサイクリン、ネオマイシンおよびジヒドロ葉酸還元酵素を含有し、所望のDNA配列により形質転換されたそれらの細胞の検出を可能にする。
【0087】
E. coliは、本発明のポリヌクレオチドをクローニングするための特に有用な原核生物宿主である。使用に適切な他の微生物宿主は、バチリス属の細菌類、例えばBacillus subtilus、他の腸内細菌類、例えばSalmonella、Serratiaおよび種々のシュードモナス種を包含する。これらの原核生物宿主において、通常、発現ベクターを作製することも可能であり、これは宿主細胞と和合し得る発現制御配列(例えば、複製起源)を含有する。さらに、あらゆる数の既知のプロモーター、例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン (trp) プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダ由来のプロモーターが存在し得る。該プロモーターは、所望によりオペレーター配列により、通常発現を制御し、また転写および翻訳を開始または完了するためにリボソーム結合部位配列などを有する。
【0088】
他の微生物、例えば酵母は発現のために使用され得る。Saccharomycesは好ましい宿主であり、発現制御配列(例えばプロモーター)を有し、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素、複製起源、終止配列および所望のものなどを包含する適当なベクターを有する。
【0089】
微生物に加えて、植物細胞は発現のために使用され得る。植物形質転換の最適方法は、植物のタイプによって変化する。例えば、WO00/53794を参照されたい。
【0090】
哺乳類組織細胞培養は、本発明のポリペプチドを発現および産生するために使用され得る。真核生物細胞は実際好まれる、これは無傷イムノグロブリンを分泌し得る多くの適切な宿主細胞系が当分野で開発されてきたからであり、該宿主細胞にはCHO細胞系、多様なCOS細胞系、Syrian Hamster卵巣細胞系、HeLa細胞、ミエローマ細胞系、形質転換B細胞、ヒト胚腎細胞系またはハイブリドーマが包含される。好ましい細胞系は、CHOおよびミエローマ細胞系、例えばSP2/0およびNS0である。
【0091】
これらの細胞について発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製起源、プロモーター、エンハンサー、および必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列を包含する。好ましい発現制御配列は、イムノグロブリン遺伝子、SV40、アデノウィルス、牛パピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどから誘導されるプロモーターである。好ましいポリアデニル化部位は、SV40およびウシ成長ホルモンから誘導される配列を包含する。
【0092】
目的とするポリヌクレオチド配列を含有するベクター(例えば、重鎖および軽鎖をコードしている配列および発現制御配列)は、細胞性の宿主タイプに依存して変化する既知の方法によって宿主細胞に伝搬され得る。例えば、塩化カルシウム・形質移入は一般的に原核生物細胞に対して利用されるが、リン酸カルシウム処置やエレクトロポーレーションは他の細胞宿主に対して使用され得る。
【0093】
一旦発現すると、該抗体は、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換、親和性(例えば、タンパク質A)、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを包含する標準的方法に従って精製され得る。医薬的使用のためには、少なくとも約90〜95%の純度を有する実質的に純粋なイムノグロブリンが好まれ、98〜99%またはそれ以上の純度が最も好まれる。一旦所望により部分的または均質に精製されると、該ポリペプチドは、本明細書に関して治療的または予防的に使用されうる。
【0094】
この発明は、有効用量のIL−1β抗体を、それを必要とする患者に投与することを含むIL−1β介在炎症性障害を経験するヒトを処置する方法にも関する。本発明の抗体は結合して、IL−1βがIL−1β受容体に結合してシグナルを開始することを防ぐ。様々なIL−1β媒介障害は、リウマチ性関節炎(RA)、変形性関節症(OA)、アレルギー、腐敗性または内毒素ショック、敗血症、喘息、移植片対宿主疾患、クローン疾患および他の炎症性内臓疾患を包含する。さらに、IL−1βは、局所および全身性の疾患および損傷に、また神経変性疾患、例えば、卒中および虚血、毒性刺激ならびに外傷性頭部損傷における神経炎症および細胞死への宿主防御応答を媒介する。また、IL−1βは、慢性変性疾患、特に多発性硬化症、パーキンソンおよびアルツハイマー病に影響を与える。好ましくは、本発明に含まれるIL−1β抗体は、RAおよび/またはOAを処置するために使用される。
【0095】
RAに罹患した患者は、慢性的な関節の腫れおよび炎症ならびに軟骨および骨の進行性破壊を受ける。IL−1βおよびTNF−αは、RAの病因において最も重要なサイトカインである。しかし、L−1βおよびTNF−α両方が炎症を媒介する場合、IL−1βは、骨および軟骨破壊に関する第一メディエーターである。滑液組織中で活性化された単球および繊維芽細胞は、順に、別の前炎症性サイトカイン、プロスタグランジンおよびマトリックス・メタロプロテイナーゼの産生を刺激するIL−1βを生成する。滑膜表層は、骨および軟骨を侵略し、むしばみ、肥大する。
【0096】
疾患修飾抗リウマチ薬(DMARDS)、例えばヒドロキシクロロキン、経口または注射し得る、金、メトトレキサート、アザチオプリン、ペニシラミンおよびスルファサラジンは、RAの処置において穏やかな成功と共に使用されてきた。RAの推移を修飾する際のそれらの活性は、炎症性メディエーター、例えばIL−1βの抑制または修飾によるものであると考えられる。メトトレキサートは、例えば7.5〜10mg/週間の用量で、RA患者のIL−1β血漿濃度を低下させる。同様の結果が、コルチコステロイドを用いても見られる。すなわち、本発明のIL−1β抗体は、単独で、または血漿中のIL−1βタンパク質レベルを低下させるように作用し得るDMARDSと組み合わせて、使用され得る。
【0097】
本発明のIL−1β抗体の有効量とは、耐容できない副作用または毒性がなく臨床的効力を提供し得る量である。RA患者についての臨床的効力は、米国リューマチ学会の診断基準 (ACR20) を用いて評価され得る。疼痛・圧痛関節数、腫脹関節数において20%の改善、また患者の疼痛の評価、患者の疾患活動性の全般評価、医師の疾患活動性の全般評価、身体機能評価(HAQ)、血清C反応性タンパク質(血清CRP値)包含するその他5つの項目のうち3つの項目においても20%の改善を示した場合に、その患者はレスポンダーと考えられる。構造的損傷の予防は、van der Heidjiによるmodified Sharp法のX線評価(骨びらん、関節裂隙狭小化)によって評価され得る。
【0098】
本発明のIL−1β抗体は、変形性関節症(OA)罹患患者を処置するためにも使用され得る。OAは、ヒトの関節に関するもっとも一般的な疾患であり、関節の軟骨損失および骨棘形成によって特徴付けられている。臨床的特徴は、関節痛、硬直、肥厚、不安定性、運動能力の限界および機能障害を包含する。OAは、一次性および二次性タイプとして分類されてきた。膝および股関節部のOAの分類基準は、臨床的、X線撮影および実験パラメーターを基にした米国リュウマチ学会によって開発された。
【0099】
本発明のIL−1β抗体の有効量は、疼痛および機能における改善だけでなく構造上の損傷の予防によって測定されるOA患者における臨床的効力を示す量である。疼痛および機能における改善は、WOMAC OAインデックスの疼痛および身体機能のサブスケールを用いて評価され得る。該インデックスにより、疼痛面積、硬直および身体機能における臨床的に重要な患者に関連のある症候を厳密に調べる。構造上の損傷の予防は、膝または股関節部の放射線写真上の関節空間の広さを測定することによって評価され得る。
【0100】
IL−1βの高いレベルは、ヒト神経変性症状、例えば卒中および脳損傷と関与しているので(Rothwell, N. J.,et al.,TINS 23(12): 618-625,2000)、本発明によって包含される抗IL−1β抗体は、卒中および虚血、毒性刺激性、ならびに外傷性頭部損傷と関連した神経炎症性を処置するために使用され得る。
【0101】
発明の抗体は、標準的投与技術を用いて、静脈的、腹膜内、皮下、肺の、経皮的、筋内、鼻孔内、口内、舌下または坐薬投与によって、好ましくは末梢的(すなわち、中枢神経系への投与によってではない)に投与される。
【0102】
投与のための医薬組成物は、選択された投与様式に適切であるように設計され、医薬的に許容し得る賦形薬、例えば、緩衝液、界面活性剤、保存剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などは適宜使用され得る。Remington's pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,Easton PA,latest editionを出典明示により本明細書の一部とし、従業者に広くよく知られるような製剤技術の概要を提供する。
【0103】
製剤中のIL−1β抗体の濃度は、約0.1%程度に低い%重量から15または20%重量程度の量の%重量であってよく、選択された特定の投与様式に従って、液体容量、粘度、安定性などを基にして主に選択される。IL−1β抗体の好ましい濃度は、一般的に、1〜約100 mg/mL、好ましくは10〜約50mg/mLの範囲である。
【0104】
製剤は緩衝液を包含してもよい。好ましくは、緩衝液は、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液またはそれらの組合せである。一般的には、製剤のpHは約4〜約8である。好ましくは、pHは約5〜約7.5である。製剤のpHは、抗体安定性(化学的および物理的)を考慮して、投与された時に患者に快適となるように選択され得る。製剤は、塩、例えばNaClを包含し得る。さらに、該製剤は、凝集を予防するため、そして安定性の維持すを促進するために界面活性剤を包含する。
【0105】
該製剤は、製剤を作製した後に滅菌濾過され得るか、あるいは微生物学的に許容し得るように為される。保存剤、例えば、m-クレゾールまたはフェノール、またはその混合物が、微生物の増殖および汚染を予防するために添加され得る。
【0106】
通常の静脈的注射用組成物は、液体、例えば滅菌リンガー溶液の250 mLと同程度の容量を有し、1-100 mg/mLまたはそれ以上の抗体濃度を有する。本発明の治療剤は、貯蔵のために凍結されるか、凍結乾燥され、使用する前に適切な滅菌担体により溶液とし得る。凍結乾燥および溶液化は、抗体活性の損失の程度(例えば、従来のイムノグロブリンと共に、IgM抗体はIgG抗体以上に活性損失が大きい傾向がある)を変化させ得る。用量は補うために調整され得るべきである。
【0107】
前記方法は、タンパク質、例えばヒト化抗体の投与に、もっとも便利かつ適切であるように思えるが、適切な適用によって、投与のための他の技術、例えば経皮投与および経口投与を、適当な製剤が設計される条件で用い得る。さらに、生物分解性フィルムやマトリックス、浸透性ミニポンプ、あるいはデキストランビーズ、アルギネートまたはコラーゲンを基にした送達システムを用いる徐放製剤を使用することも望まれ得る。要約すると、製剤は、本発明の抗体を投与するために有効であり、そして様々な選択肢から選択され得る。
【0108】
通常の用量レベルは、標準的臨床的技術を用いて最適化され得るし、投与様式および患者の症状に依存される。一般的に、用量は10μg/kg/月〜10mg/kg/月の範囲である。
【0109】
本発明は、下記実施例によって説明されるが、あらゆる方法において制限を意図するものではない。
【0110】
実施例1
結合親和性および特異性
Mu007および本発明の抗体の親和性および特異性を、BIAcore測定(表3)を用いて決定した。BIAcore(登録商標)は、分子相互作用を測定する自動化バイオセンサーシステムである(Karlsson, et al. (1991) J. Immunol. Metods 145: 229-240)。これらの実験において、抗体を、BIAcore(登録商標)チップ上に低密度で表面に捕捉した。エチル-ジメチルアミノプロピル-カルボジイミド(EDC)を用いて、タンパク質Aに対して反応性のアミノ基をカルボキシ-メチル(CM5) BIAcore(登録商標)センサーチップのフロー・セルに結合した。タンパク質Aを、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に希釈し、1000レスポンスユニットを得るようにEDCを用いて、CM5チップのフロー・セル上で固定化した。非反応部位をエタノールアミンで遮断した。流速60μl/分を用いた。複数の結合/溶出サイクルを、2μg/mLの本発明の抗体溶液(10μl)、続いて各サイクル(例えば 1500、750、375、188、94、47、23.5、12および0ピコモル)について濃度減少時にヒトIL−1βを注入した。溶出を、グリシン-HCL(pH1.5)で行った。BIAevaluation(登録商標)を用いて、速度データを分析した。Mu007の親和性を測定するために利用したプロトコールは、PCT/US02/21281に記載されているとおりである。
【0111】
表3. BIAcore(HBS−EP緩衝液、pH7.4、25℃)により決定したヒトIL−1βへの抗IL−1β抗体の結合特性
【表10】

【0112】
実施例2
抗体効力
増殖のために低いレベルのIL−1βを必要とするネズミ細胞を用いて、ヒトIL−1βを中和するための本発明の抗体およびMu007の能力を決定した。対数増殖期ではないT1165.17細胞を、10%子ウシ血清(GibcoBRL Cat. # 10082-147)、1mM ピルビン酸ナトリウム、50μβメルカプトエタノールおよび抗細菌/抗真菌(GibcoBRL Cat. # 15240-062)を加えたRPMI1640 (GibcoBRL Cat. # 22400-089)を用いて3回洗浄した。細胞を、96ウェルプレートに5000細胞/ウェルで播種した。ヒトIL−1βは0.3pMの一定レベルで存在し、抗体の連続希釈物を添加した。細胞を、20時間、37℃/5% COインキュベーターでインキュベートし、この時点でウェルあたりに1μCiの3H−チミジンを添加し、プレートをインキュベーター内でさらに4時間インキュベートした。細胞を回収し、取り込んだ放射活性をシンチレーションカウンターによって決定した。表4は、Mu007および本発明の抗体(IgGアイソタイプと示す)によるIL−1β刺激性増殖の阻害を示す。
【0113】
【表11】

【0114】
実施例3
イン・ビボでのヒトIL−1βの中和
ヒトIL−1βを、結合させて、マウスIL−1β受容体を刺激し、マウスIL−6の増加を導き得る。時間および用量範囲の実験を、ヒトIL−1βの至適用量およびマウスIL−6の誘導についての至適時間を同定するために行った。これらの実験は、3μg/kg用量のヒトIL−1βおよびIL−1β投与2時間後に、マウス血清中のIL−6が最高レベルを与えることを示した。本発明の抗体を、ヒトIL−1βのs.c.注射1時間前に、13、27、81および270μg/kgでマウスにi.v.投与した。IL−1β投与2時間後に、マウスを屠殺し、IL−6レベルをELISAによって決定した。アイソタイプ適合抗体をネガティブコントロールとして用いた。本発明の抗体は、用量依存法(表5)において、IL−1βの効果を遮断し、マウスIL−1β受容体を刺激して、マウスIL−6を増加に導いた。
表5
【表12】

【0115】
実施例4
抗体発現
下記プロトコールを、本発明の全ての抗体の発現に適用した。
リーダー配列をコードする発現ベクターおよび、κ軽鎖またはγ1重鎖に対する定常領域のいずれかを用いて、Fab配列をクローンして完全な抗体遺伝子を得る。該ベクターを一過性および安定な発現の両方について複数の哺乳類細胞系で用い得る。
【0116】
該ベクター、形質移入を維持するために必要なDNAの量を生成するためにスケールアップした。最終DNAは、一過性形質移入に使用した場合には閉鎖環状ベクターとして残存しており、安定な形質移入に使用した場合には直線化され得る。小スケールの一過性形質移入は、LC:HCの最良の比を同定するために維持されるべきである。どちらの形質移入においても、軽鎖(LC)および重鎖(HC)をコードしているベクターを一緒に混合して、該細胞中に形質移入した。
【0117】
一過性形質移入を、HEK293EBNA細胞中に維持する。該形質移入をスケールアップして、形質移入後に5〜7日間培養した。上清を回収し、抗体を抗体に対する従来のアプローチを用いて精製した。
【0118】
CHO(チャイニーズハムスターの卵巣)-DG44細胞中の安定な形質移入を、概説したベクターを用いて維持し得る。用いたDNAの量は、20μg〜200μgに変え得る。該細胞(10)を、360V/950uFに設定したBioRad Gene Pulsar IIを用いて形質移入した。該細胞を37℃/5%COで24-72時間回復させ、次いで選択培地(培地w/oヒポキサンチンおよびチミジン、および加圧下にメトトレキサート,MTXのレベルを変化させながら)下で培養した。
【0119】
NS0(マウス骨髄腫)細胞中での安定な形質移入を、LCおよびHCに対する該遺伝子を、グルタミン合成遺伝子をコードする発現ベクター中に移動させることによって維持し得る。用いたDNAの量は、全量40ugである。該細胞(10)を、300V/1000uFで設定したBioRad Gene Pulsar IIを用いて形質移入した。該細胞は、37℃/10%COで24-72時間回復させ、次いで選択培地(培地w/oグルタミン、加圧下にメチオニンスルホキシド,MSXと共に)下で培養した。
【0120】
細胞系両方のタイプについての播種を、該細胞系(500c/w CHO−DG44、2000c/w NS0)に固有の播種密度で96-ウェルプレート中で持続した。可視コロニー形成をウェル中にみとめた時に、該プレートを、ELISAビーズ法を用いて抗体生成に対してスクリーンし得る。抗体に対して陽性シグナルを持つ細胞を含有するウェルを24ウェルプレートに広げた。耐容力価とタンパク質品質を有する候補細胞系を同定するために、発現実験下に該系を培養して、評価した。該細胞系生成努力のゴールは、耐容力価、増殖特徴および製品品質プロファイルを有する血清不含培養条件で評価され得るクローンを同定することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体は、軽鎖および重鎖を含み、
(a)該軽鎖が、
配列番号:1、12、22、29、31、33、37または39からなる群から選択される軽鎖CDR1、配列番号:2の軽鎖CDR2および配列番号:3、7、13、15、17、20、25、34または41からなる群から選択される軽鎖CDR3を含み、
(b)該重鎖が、
配列番号:4または10からなる群から選択される重鎖CDR1、配列番号:5、8、16、18、21、23または28からなる群から選択される重鎖CDR2配列および配列番号6、9、11、14、19、24、26、27、30、32、35、36、38、40または42からなる群から選択される重鎖CDR3を含み、
そして、
(c)該抗体は、配列番号:1の軽鎖CDR1、配列番号:2の軽鎖CDR2、配列番号:3の軽鎖CDR3、配列番号:4の重鎖CDR1、配列番号:5の重鎖CDR2および配列番号:6の重鎖CDR3から構成されないものである、
ヒトIL−1βを特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
ヒト化抗体である請求項1記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
抗体が、
a)配列番号:39のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
b)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
c)配列番号:41のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
d)配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
e)配列番号:21のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
f)配列番号:38のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
配列番号:56に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている重鎖可変領域および配列番号:61に示されたポリヌクレオチド配列によってコードされている軽鎖可変領域を含む、請求項3記載の抗体。
【請求項5】
配列番号:47に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:48に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項3記載の抗体。
【請求項6】
配列番号:68に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:48に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項3記載の抗体。
【請求項7】
抗体が、
a)配列番号:37のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
b)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
c)配列番号:15のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
d)配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
e)配列番号:21のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
f)配列番号:35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
配列番号:55に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている重鎖可変領域および配列番号:60に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている軽鎖可変領域を含む、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
配列番号:45に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:46に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項7記載の抗体。
【請求項10】
抗体が、
a)配列番号:39のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
b)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
c)配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
d)配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
e)配列番号:16のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
f)配列番号:36のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
配列番号:57に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている重鎖可変領域および配列番号:62に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている軽鎖可変領域を含む、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
配列番号:49に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:50に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項10記載の抗体。
【請求項13】
抗体が、
a)配列番号:39のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
b)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
c)配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
d)配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
e)配列番号:21のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
f)配列番号:35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
配列番号:59に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている重鎖可変領域および配列番号:63に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている軽鎖可変領域を含む、請求項13記載の抗体。
【請求項15】
配列番号:51に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:52に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項13記載の抗体。
【請求項16】
抗体が、
a)配列番号:29のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
b)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
c)配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
d)配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
e)配列番号:21のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
f)配列番号:30のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
配列番号:58に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている重鎖可変領域および配列番号:64に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされている軽鎖可変領域を含む、請求項16記載の抗体。
【請求項18】
配列番号:53に示されるアミノ酸配列によってコードされている重鎖および配列番号:54に示されるアミノ酸配列によってコードされている軽鎖を含む、請求項16記載の抗体。
【請求項19】
抗体がIgGアイソタイプを有する、請求項1〜18のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項20】
アイソタイプが、重鎖定常領域IgG1およびIgG4からなる群から選択される、請求項19記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
アイソタイプが、配列番号:65に示されるポリヌクレオチドによってコードされているIgG1である、請求項20記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
アイソタイプが、配列番号:66に示されるポリヌクレオチドによってコードされているIgG4である、請求項20記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
抗体が、配列番号:67に示されるポリヌクレオチドによってコードされている軽鎖κ鎖の定常領域を有する、請求項1〜18のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の抗体の軽鎖または重鎖をコードしているポリヌクレオチドを含む、単離核酸。
【請求項25】
請求項24記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項26】
宿主細胞が、請求項1〜23のいずれかに記載のタンパク質を発現する、請求項25の発現ベクターで安定に形質移入された宿主細胞。
【請求項27】
宿主細胞が、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞、SP2/0骨髄腫細胞、NS0骨髄腫細胞、シリアン・ハムスター卵巣細胞および胚腎細胞からなる群から選択される、請求項26記載の宿主細胞。
【請求項28】
NS0骨髄腫細胞である、請求項27記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項1〜23のいずれかに記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
請求項1〜23のいずれかに記載の有効量の抗体を対象に投与することを含む、リウマチ性関節炎または変形性関節症を処置する方法。
【請求項31】
請求項1〜23のいずれかに記載の有効量の抗体をそれらが必要な対象に投与することを含む、軟骨破壊を阻害する方法。
【請求項32】
リウマチ性関節炎または変形性関節症罹患患者を処置するための医薬物製造のための、請求項1〜23のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項33】
医薬物を必要とする対象において軟骨破壊を阻害するための該医薬物を製造するための、請求項1〜23のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項34】
請求項1〜23のいずれかに記載の有効量の抗体を対象に投与することを含む、卒中または虚血、毒性刺激性または外傷性頭部損傷に関連のある神経炎症を処置する方法。
【請求項35】
卒中または虚血、毒性刺激性、または外傷性頭部損傷に関連のある神経炎症に罹患した対象を処置するための医薬物の製造のための、請求項1〜23のいずれかに記載の抗体の使用。

【公表番号】特表2007−531509(P2007−531509A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536490(P2006−536490)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/000019
【国際公開番号】WO2004/067568
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501061858)アプライド モレキュラー エボリューション,インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Applied Molecular Evolution,Inc.
【Fターム(参考)】