説明

ヒトIL−18を含むコンジュゲートおよびその置換変異体

【課題】水溶性ポリマーと結合したヒトインターロイキン−18ポリペプチドの提供。
【解決手段】ヒトインターロイキン−18(IL−18)ポリペプチドおよびその置換変異体を水溶性ポリマーとヒトIL−18タンパク質上の特定の部位で結合させた、ヒトIL−18置換変異体。これらの結合したヒトI18およびその置換突然変異体は生物学的活性を保持する。これらの結合したサイトカインは、対応する未結合サイトカインと比較した場合に、向上した予想外の生物学的特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、先の仮米国特許出願番号60/462947(2003年4月15日提出)(その内容は全体として本発明の一部として参照される)の利点を請求する。
【0002】
本発明は、部位特異性タンパク質結合の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、水溶性ポリマーのヒトインターロイキン−18(本明細書においては「IL−18」)ポリペプチドの結合、その置換突然変異体、およびそのフラグメントに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
生物学的に活性な化合物の水溶性ポリマーに対する共有結合は、これらの化合物の生体内分布、薬物動力学、そしてしばしば毒性を変更し、制御するための一方法である(非特許文献1)。例えばポリ(シアル酸)、デキストラン、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール−コープロピレングリコール)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン(PAcM)、およびポリ(エチレングリコール)(PEG)などの多くの水溶性ポリマーがこれらの効果を達成するために用いられてきた(非特許文献2)。PEGは:非常に低い毒性(非特許文献3)、水性溶液中の優れた溶解性(非特許文献2、前出)、低い免疫原性および抗原性(非特許文献4)の理想的な組み合わせを有する。1つまたは複数のポリエチレングリコール鎖をタンパク質上に含有するPEG結合または「PEG化」タンパク質治療薬が科学文献に記載されている(非特許文献5;非特許文献6)。非特許文献7;非特許文献8に記載されており、非特許文献9にも記載されている。
【0004】
結合タンパク質は、その未修飾カウンターパートよりも多くの利点を有する。例えば、PEG−修飾は、多くのタンパク質の血漿半減期を延長する(非特許文献10)。この増大の基本は、いくつかの要因を含む。PEG修飾結合体のサイズが増大すると、70kD閾値を越える場合、糸球体濾過が減少する(非特許文献11)。炭水化物レセプターおよびタンパク質レセプター相互作用により網膜内皮系によるクリアランスが減少する(非特許文献12)。減少したタンパク質分解(非特許文献13)も半減期の向上に寄与する。抗原性および免疫原性も減少し(非特許文献14)、これは繰り返し投薬した後の生命を脅かす反応を軽減する。これらのファクター全ての組み合わせは、インビボでの増大した生体利用性につながり(非特許文献15;非特許文献16)、これはPEG−サイトカイン付加物の薬剤としての使用において潜在的に非常に重要である。用量を減少させることができ(毒性を軽減するために)、さらに好都合な投与計画を開発することができる。
【0005】
IL−18は、IL−1β−三葉型サブファミリーのIL−1αに最も密接に関連する一次構造を有する18Kdの非グリコシル化モノマーである。ネズミおよびヒトIL−18 cDNAはそれぞれ192および193アミノ酸からなる前駆体タンパク質をエンコードする。ヒトおよびネズミIL−18間の相同性は65%である。生物学的活性を仲介するために、Pro−IL−18はカスパーゼ、例えばICE(カスパーゼ−1)またはカスパーゼ−4により処理して生物活性な成熟タンパク質(157アミノ酸)にすることを必要とする。IL−18の活性は、IL−18レセプター(IL−18R)複合体(結合鎖(IL−18Rα)およびシグナリング鎖(IL−18Rβ)から構成される)により仲介される。その腫瘍免疫療法についての治療可能性を支持するIL−18の生物学的活性は、IFNγおよびGM−CSFの誘発および産生、NK細胞の細胞溶解活性の向上および促進、およびナイーブT細胞のTh1細胞への分化を包含する。IL−18に反応して、潜在的な抗腫瘍活性を示す細胞毒性Tリンパ球(CTLs)およびメモリー細胞が産生される。他の調節機能は、NKおよびT細胞上の機能的Fasリガンド(FasL)発現の増加調節(IL−18抗腫瘍活性が腫瘍アポトーシスを包含するFas−FasL相互作用により一部媒介されることを示唆する);単球/マクロファージ、B細胞、および抗血管形成の活性化を包含する。
【0006】
IL−18結合タンパク質(IL−18BP)は、最近IL−18の拮抗物質として記載されている天然に存在する可溶性循環タンパク質である。IL−18BPは、II型IL−1レセプターの第三のIgドメインに対して非常に限定された相同性しか有さない1つの推定Igドメインを含有する点で、いずれかのIL−18レセプターに対して顕著な相同性を有さない。IL−18BPに対するさらに高い相同性がいくつかのポックスウイルス(豚痘、牛痘、天然痘、伝染性軟属腫、および欠肢症)によりエンコードされるタンパク質のファミリーにおいて見いだすことができる。ポックスウイルスは、多くのサイトカインのデコイレセプターをエンコードし、これらのレセプターは免疫応答のウイルスによる回避において役に立つ。IL−18はTh1細胞によるIFNγ産生につながる初期シグナルの1つであるので、IL−18BPによるIL−18活性のブロックは、免疫応答の初期の1つの減少調節に関与する。IL−18BPの高いレベルは、組み換えIL−18療法の有効性に関して有害であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Duncan、R.およびKopecek、J.(1984)Adv.Polym.Sci.57:53−101
【非特許文献2】Powell、G.M.(1980)Polyethylene Glycol.In R.L.Davidson(編)HANDBOOK OF WATER SOLUBLE GUMS AND RESINS.McGraw−Hill、New York、第18章
【非特許文献3】Pang、S.N.J.(1993)J.Am.Coll.Toxicol.12:429−456
【非特許文献4】Dreborg、S.およびAkerblom、E.B.(1990)Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.6:315−365
【非特許文献5】Clark、R.ら、(1996)J.Biol.Chem.271:21969−21977
【非特許文献6】Hershfield、M.S.(1997)Biochemistry and immunology of poly(ethylene glycol)−modified adenosine deaminase(PEG−ADA)
【非特許文献7】J.M.HarrisおよびS. Zalipsky(編)Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications.American Chemical Society、Washington、DC、p145−154
【非特許文献8】Olson、K.ら(1997)Preparation and characterization of poly(ethylene glycol)ylated human growth hormone antagonist
【非特許文献9】J.M.HarrisおよびS.Zalipsky(編)Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications.American Chemical Society、Washington、DC、p170−181
【非特許文献10】Francis、G.E.、etら(1992)PEG−modified proteins.In:STABILITY OF PROTEIN PHARMACEUTICALS:in vivo PATHWAYS OF DEGRADATION AND STRATEGIES FOR PROTEIN STABILIZATION(T.J.Ahernおよびd M.Manning編).Plenum Press、New York
【非特許文献11】Futertges、F.およびAbuchowski、A.(1990)J.Controlled Release 11:139−148
【非特許文献12】Beauchamp、C.O.ら(1983)Anal. Biochem.131:25−33
【非特許文献13】Chiu、H.C.ら(1994)J.Bioact.Comp. Polym.9:388−410
【非特許文献14】Nucci、M.L.ら(1991)Adv.Drug Del.Rev.6:133−151
【非特許文献15】Katre、N.V.ら(1987)PNAS USA84:1487−1491
【非特許文献16】Hershfield、M.S.ら(1987)New England Journal of Medicine 316:589−596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1つの薬剤として、ネズミIL−18の組み換え形態はネズミ免疫系を刺激し、その結果、腫瘍の部分的および完全な退縮および/または様々な確立された腫瘍モデルにおける免疫学的記憶の導入が起こる。臨床で通常用いられる化学療法剤、例えば、トポテカンとの組み合わせにおいて、ネズミIL−18は相乗効果を示し、その結果、様々な確立された腫瘍モデルにおいて局所および/または全身的レベルで効力が改善される。IL−18のネズミIL−18およびヒトIL−18組み換え形の両方の広範囲の毒性および薬物動力学研究に加えて、IL−18により媒介される免疫活性化の早期事象と相互に関連させるために、IL−18活性の有効なバイオマーカーが発明された。これらの前臨床データは、免疫療法の新規形態、または癌ワクチンの添加物、またはそれぞれトポテカンおよびIL−2などの細胞毒性剤および他の生物学的製剤に対するアジュバントとしての、異なる種類の癌にかかっている患者を治療するためのヒトIL−18の臨床的開発を支持する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、水溶性ポリマーと結合したIL−18ポリペプチドを含む生物学的に活性な組成物に関し、ここにおいて、前記ポリペプチドはヒトIL−18、その置換突然変異体、またはそのフラグメントである。
第二の態様において、本発明は、治療的に有効な量の、水溶性ポリマーに共有結合したIL−18ポリペプチド生物学的に活性な組成物を投与することにより、患者における癌を治療する方法に関し、ここにおいて、前記ポリペプチドはヒトIL−18またはその置換突然変異体である。もう一つ別の態様において、本発明は:腎臓細胞癌、黒色腫、他のIL−18反応性腫瘍タイプ(例えば、骨髄腫およびリンパ腫)、および黒色腫からなる群から選択される免疫反応性腫瘍を治療するための方法に関する。
【0010】
第三の態様において、本発明は、生物学的に活性な組成物を調製する方法であって:
(a)ヒトIL−18ポリペプチドまたはその置換変異体を得る工程;および
(b)前記ポリペプチドを官能化水溶性ポリマーと接触させる工程を含む方法に関する。
第四の態様において、本発明は、ヒトIL−18またはその置換突然変異体の薬物動力学および薬力学を改善する方法であって、ヒトIL−18またはその置換突然変異体を水溶性ポリマーと結合させる工程を含む方法に関する。
第五の態様において、本発明はヒトIL−18またはその置換突然変異体の皮下生体利用性を改善する方法であって、ヒトIL−18またはその置換突然変異体を水溶性ポリマーと結合させる工程を含む方法に関する。
第六の態様において、本発明はヒトIL−18またはその置換突然変異体の結合(相互作用)を軽減する方法であって、ヒトIL−18またはその置換突然変異体を水溶性ポリマーと結合させてヒトIL−18結合タンパク質(IL−18BP)にする工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】天然のヒトIL−18のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】ネズミIL−18のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3】ヒトHis Pro IL−18のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38Sのアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図5】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68D、N78Cのアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図6】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68D、E121Cのアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図7】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68D、L144Cのアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図8】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68D、D157Cのアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図9】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68S、L144Cのアミノ酸配列(配列番号9)を示す。
【図10】置換突然変異体、ヒトIL−18 C38S、C68S、D157Cのアミノ酸配列(配列番号10)を示す。
【図11】ヒトIL−18置換突然変異体(C38S、C68S、D157C)(配列番号10)のPEG化後の反応混合物の典型的なRP−HPLCクロマトグラムを示す。
【図12】表2に示されるペプチドの標識されたピークを示す野生型ヒトIL−18のRP−HPLCトリプシンマップを示す。ペプチドは、エレクトロスプレー−イオン化LC/MSにより同定した。215および280nmでの検出。
【図13】ヒト置換突然変異体C38S、C68S、L144C(配列番号9)のトリプシンマッピングを示す。
【図14】ヒトIL−18(配列番号1)および精製されたモノPEG化(20K)生成物のトリプシンマッピングを示す。
【図15】モノPEG20kヒトIL−18置換突然変異体C38S、C68S、D157C(配列番号10)のトリプシンマッピングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ヒトIL−18ポリペプチドを含む組成物を提供し、ここにおいて、該ポリペプチドは水溶性ポリマーに結合している。本発明の結合したポリペプチドは、対応する未結合ポリペプチドと比較して予想外の生物学的性質を示す。
免疫療法は腫瘍学治療手段に、副作用が減少した抗腫瘍効果を示し、患者の生活の質を改善する可能性という有益な相加である。インターロイキン−18(IL−18)は現在、腎臓細胞癌および黒色腫の腫瘍免疫療法の新規形態として研究されている。これらの腫瘍タイプはどちらも免疫感受性であると考えられ、単一の薬剤としてIL−18に反応する。IL−18と細胞毒性剤および他の生物学的製剤の組み合わせは、IL−18の臨床用途を異なるタイプの血液学的および充実性腫瘍に拡大する。
【0013】
PEG化されたIL−18分子は、1〜5のアミノ酸置換を含有し得るIL−18の変異体である。これらの分子は、改善された薬物動力学(PK)を有するが、最も重要なことには、異なるサイトカインおよび可溶性タンパク質の誘発および発現で測定すると増大した薬物動力学的(PD)マーカーを有する。「薬物動力学」なる用語は、本明細書において用いられる場合、薬剤吸収、分散および排出(すなわち、代謝および排出)の速度を意味する。「薬力学」なる用語は本明細書において用いられる場合、作用部位(IL−18の場合、レセプター)および薬理学的応答の部位での薬剤濃度間の関係を意味する。重要なPDマーカーは、変化、例えば細胞(例えばリンパ球)および細胞表面マーカーの表現型特性における向上および/または増大を包含する。PEG化されたIL−18分子は、IL−18結合タンパク質(IL−18BP)と複合体を形成する能力が低下していた。IL−18BPはIL−18活性の潜在的阻害剤であり得るので、IL−18BPとの複合体形成の防止は、臨床において有用である。Buflerら、PNAS、99(21):13723−13728(2002)。PEG化されたIL−18分子は投与頻度を減らして投与することができ、このことは、他の生物学的製剤、ワクチンまたは細胞毒性剤との組み合わせ療法において非常に有用である。最も重要なことには、PEG化は治療される患者における免疫原性を低下または排除することができる。
【0014】
前記利点の数例を以下の実施例7、8、9および10において示す。3つの突然変異(C38S、C68S、D157C)(配列番号10)およびC末端システム残基(C157位)に共有結合した1つの部位特異性20K PEGを含有するIL−18置換突然変異体は向上したPKを示すが、最も重要なことには、カニクイザルにおけるCED64およびネオプテリンの誘発および発現、およびマウスにおけるIFNγの誘発により測定されるように増大したPDマーカーを示す。投薬の頻度を減らして等しい抗腫瘍効果および保留された免疫学的メモリーを得る例を、ネズミPEG化IL−18を用いることによりネズミ腫瘍モデルMOPC−315において行った(データは省略)。
【0015】
本発明において有用な他の修飾されたポリペプチドは、成熟(すなわち未修飾)ヒトIL−18タンパク質の生物学的活性を共有するこれらのタンパク質の変異体またはフラグメントである。本明細書において定義されるように、このような変異体は、タンパク質の既知アミノ酸配列における変更によっても特徴づけられる修飾されたタンパク質含む。このような変異体は、8以下のアミノ酸残基、好ましくは5以下の残基により成熟タンパク質と異なるアミノ酸配列を有することにより特徴づけられる。本発明の一実施形態において、タンパク質のアミノ酸配列における差異は、保存アミノ酸置換のみを含む。保存アミノ酸置換は、アミノ酸が置換されるアミノ酸と実質的に同じ電荷を有し、この置換がタンパク質の局所的構造またはその生物学的活性に顕著な影響を及ぼさない場合に起こる。あるいは、タンパク質の安定性を変更し得るか、または所望の宿主細胞における発現を許容する配列におけるあるアミノ酸の導入などの変化が好ましい。さらに、タンパク質構造および機能において実質的な変化がない第一アミノ酸配列におけるバリエーションは当該分野において公知である。このようなバリエーションは、当業者により用いられるアルゴリズムにより容易に検出され、予測される。例えば、周知のBLASTアルゴリズム(Altschul、S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/参照)は、問題となる配列の残基での許容されるアミノ酸置換を予想し、評価するために、アミノ酸置換マトリックスを使用する。従って、当業者らは、所定のポリペプチド配列の同じ実施形態を記載するために用いられる場合の「変異体」なる用語の範囲および意味を理解する。「置換突然変異体」なる用語は、本明細書において用いられる場合、アミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されているタンパク質を意味する。ヒトIL−18「置換突然変異体」は本明細書において用いられる場合、配列番号1の配列において1〜5のアミノ酸置換を含む突然変異体を意味し、前記置換は、残基38でのシステイン、残基68でのシステイン、残基76でのシステイン、残基78でのアスパラギン、残基121でのグルタミン酸、残基127でのシステイン、残基144でのロイシン、残基157でのアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0016】
システインは、20の一般的なアミノ酸のうち明らかに最も化学的に反応性である。システイン残基は、ジスルフィド架橋、活性部位化学反応、金属イオン配位、酸化窒素(NO)結合等を包含するタンパク質構造および機能において重要な役割を果たす。したがって、システインはゲノムにおいて最も強力な配列保存アミノ酸である。ヒトIL−18は、明らかな構造的または他の生物学的機能を有さない4つのシステインスルフヒドリルを含有する。システイン38および68は多くの実験観察により示されるようにIL−18分子の表面上で溶媒に曝されている。これらの観察は:精製中の2−メルカプトエタノールとの混合ジスルフィド付加物(もちろん、ジチオトレイトールではない)、これらの2つのシステインの高度に選択性であるビオチニル化およびPEG化、およびその空気酸化を受け、より高いIL−18濃度で分子間ジスルフィド架橋した「ダイマー」に加えて38−68分子内ジスルフィド架橋を形成する傾向を包含する。これらのジスルフィド架橋反応は、ピリジルジスルフィド、グルタチオン、および他のチオール−ジスルフィド交換触媒により促進することができる。一方、システイン38および68と比較して、システイン76および127は比較的化学的に不活性である。従って、システイン76および127は溶媒に暴露されないが、IL−1ベータにおける2つの埋め込まれたシステインと同様に折りたたまれたIL−18分子内に埋め込まれ、IL−1ファミリーの他のメンバーと類似した配列の位置にある(Kumarら、J.Biol.Chem.、275:10308(2000);Smithら、J.Biol.Chem.、275:1169−1175(2000))。
【0017】
IL−18における4つのシステインの性質および反応性は、β−三葉型サイトカイン、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF−2)における4つのシステインに対して顕著な類似性を有する。FGFは、広く研究され、傷の治癒および他の治療適応症のために開発されたホモローガスなヘパリン結合タンパク質マイトジェンのファミリーである(Ortegaら、J.Biol.Chem.、266:5842−5846(1991);Tsaiら、Pharm.Res.、10:649−659(1993))。hIL−18およびhFGF−2はどちらもβ三葉型タンパク質であり;両タンパク質は2つの溶媒に暴露されたシステインと2つの埋め込まれたシステインを含有し;どちらも多くのβ三葉型に特徴的な生理学的温度よりちょっと高い低融点を有し(Tm=40〜50℃)、どちらのタンパク質も活性の急速なPD/PKクリアランスを示す。一人の発明者らにより指摘されるように(EstapeらBiochem.J.、335:343−349(1998)、「hFGF−2は周知のように不安定なタンパク質であることが知られている。」FGF−1のインビボ半減期は、ポリアニオン性硫酸化多糖類であるヘパリンに対する特異的結合により10倍も増大する。FGFの安定化に加えて、ヘパリンはFGFのFGFレセプターに対する結合において重要な役割を果たす(Pellegriniら、Nature、407:1029−1034 (2000))。他のβ三葉型サイトカインが類似した「安定化リガンド」を有するかどうかはわからないが、Kobataおよび共同研究者らは最近、IL−1ベータの硫酸化多糖類との特異的結合相互作用に関して報告している(Tandai−Hirumaら、J.Biol.Chem.、274:459−4466(1999))。
【0018】
FGFにおけるシステインは、天然のFGFおよびシステイン−セリンムテインの両方に関する結晶学および生物物理学的技術によりよく研究されている。hFGF−2における2つの溶媒に暴露されたシステインの化学的修飾、または部位指向性突然変異誘発によるこれらのシステインの置換は、分子内および分子間ジスルフィド架橋を排除し、FGFマイトジェン活性の安定性を大きく増大させる(Senoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、151:701−708(1988))。最近、研究者らは、ジスルフィド架橋を形成し、これにより不可逆的にタンパク質を不活化し、これらの有効なサイトカインのインビボ寿命を制限するために、FGFにおけるシステインは配列において正確に保存されることを提案している(Culajayら、Biochemistry、39:7153−7158(2000))。Culajayら(前出)は、システインスルフヒドリル化学反応を含むIL−18の同様のビルトイン調節メカニズムを示唆する予備インビトロデータを記載している。
【0019】
緩衝化hIL−18溶液(0.10Mリン酸ナトリウム、pH7.0)は、IL−18の38−68分子内ジスルフィド架橋形態がまず蓄積し、その後、室温および5℃で一夜静置した後に38−68、76−127二重架橋形態が出現する。データは、IL−18の38−68分子内ジスルフィド架橋がまず蓄積し、続いて38−68、76−127二重架橋形態が出現することを示す。これらの空気酸化反応の初期時間経過はその後のA→B→C型の連続反応、すなわち、38−68架橋したIL−18の蓄積とその後の38−68、76−127二重架橋したIL−18への変換と一致する。反応生成物におけるジスルフィド対合は、トリプシンマッピングおよび単離されたピークの質量分析により決定した。初期38−68形態が室温よりも5℃でより安定であることは興味深い。この中間生成物の蓄積は5℃でずっと大きいが、IL−18出発物質の還元速度は、2種の温度でほぼ等しい。これらの2種の温度で溶解した酸素の周囲濃度の起こり得る影響を排除すると、データは、38−68架橋形態は二重架橋生成物の点に関して熱的に不安定であることを示す。生成物はジチオトレイトール(DTT)還元により出発物質に戻すことができる。
【0020】
本発明のポリペプチドは、本発明において有用な成熟および/または修飾タンパク質のマルチマー形態、例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーまたは他の凝集形態として存在することもできる。このようなマルチマー形態は、物理的会合、化学的合成または組み換え発現により調製することができ、以下に詳細に記載する合成技術および組み換え技術の組み合わせにより産生されるサイトカインを含有することができる。マルチマーは発現により自然に形成されるか、または以下に詳細に記載するような組み換え技術により形成される。マルチマーサイトカインは、同じ修飾されたサイトカインのマルチマーを含み得る。別のマルチマーは、異なる修飾タンパク質の凝集により形成することができる。さらに別のマルチマーは、本発明の修飾サイトカインおよび公知成熟サイトカインの凝集により形成することができる。好ましくは、本発明において有用なダイマーまたはマルチマーは少なくとも1つのデスアミノサイトカインタンパク質および少なくとも1つの他のサイトカインまたは同じ種類の生物学的活性を有することにより特徴づけられる他のタンパク質を含有する。この他のタンパク質はさらなるデスアミノサイトカインまたは別の公知タンパク質であってもよい。
【0021】
本発明において有用な修飾サイトカインは、ヒトIL−18タンパク質(配列番号1)、その置換突然変異体、またはそのフラグメントである。本発明は従って、ヒトIL−18の生物学的活性を向上させる方法を提供する。本発明は自然にまたは組み換えにより産生されるヒトIL−18または本明細書に記載されるようなIL−18置換突然変異体を修飾し、水溶性ポリマーと共有結合するようにすることを含む。あるいは、サイトカイン分子のマルチマーを水溶性ポリマーと結合させることができる。これらの結合体は、結果として得られる組成物の生物学的活性をさらに向上させる。
【0022】
本発明において有用なヒトIL−18、ヒトIL−18置換突然変異体、およびヒトIL−18フラグメントは、以下に記載されるいくつかの方法の任意のものにより調製することができる。これらのポリペプチド部分は、Merrifield((1964)J.Am.Chem.Soc.85:2149)の固相ペプチド合成技術により調製することができる。あるいは、当該分野において公知のペプチド合成の溶液法を成功裏に用いることができる。本発明のペプチドを産生するために、一般に、J.M.Stewart and J.D.Young、“Solid Phase Peptide Synthesis”、Pierce Chemical Company、Rockford、IL(1984)またはM.Bodansky、Y.A.Klauser and M.A.Ondetti、“Peptide Synthesis”、John Wiley & Sons、Inc.、New York、NY(1976)において記載されるペプチド合成の方法を用いることができる。
【0023】
修飾されたヒトIL−18ポリペプチドは、成熟IL−18の適当な酵素での酵素消化により成熟IL−18から誘導することができる(例えば、Oravecz、T.ら、(1997)J.Exp.Med.186:1865;Proost、P.ら、(1998)FEBS Letters 432:73;Shioda、T.ら、(1998)PNAS USA95:6331;およびWalter、R.ら、(1980)Mol.Cell.Biochem.30:111参照)。さらに、ペプチド合成の間に修飾されたアミノ酸を成長するポリペプチド鎖中に組み入れることができる(M.Hershfield、M.ら、(1991)PNAS 88:7185−7189;Felix、A.M.(1997)In J.M.Harris and S.Zalipsky(編)Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications.American Chemical Society、Washington、DC、p218−238)。これらの修飾されたアミノ酸残基は、水溶性ポリマーの共有結合を促進するように選択することができる。また、変異体ポリペプチドを合成することができ、ここにおいて、アミノ酸付加、置換、または欠失がその後のポリマー結合を促進するために選択される。このような変異体ポリペプチドは、化学合成または組み換え発現により調製することができる。例えば、追加のシステイン残基を組み入れること(存在するシステインでない残基の置換あるいは一端または両端への付加のいずれかによる)は、スルフヒドリル基によるポリマーカップリングを促進するために望ましい(例えば、Kuan、C.T.ら、(1994)J.Biol.Chem.269:7610−7616;Chilkoti、A.ら(1994)Bioconjugate Chem.5:504−507)。
【0024】
好ましくは、本発明において有用なヒトIL−18ポリペプチドは、当業者に公知の他の技術、例えば遺伝子組み換え技術により産生することができる。例えば、Sambrookら、in MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York(1989)参照。イー・コリ(E.coli)、バチルス(Bacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、哺乳動物、昆虫、および酵母細胞をはじめとする所望の微生物または細胞における選択されたタンパク質のクローニングおよび発現系は公知であり、私立および公立ライブラリーおよび預託機関および商業的供給元から入手可能である。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明のヒトIL−18ポリペプチドは、IL−18の直接組み換え発現から産生される。例えば、ヒトIL−18タンパク質は、そのDNAコーディング配列を通常のプラスミド発現ベクター中に、選択された宿主においてタンパク質の複製および発現を行うことができ調節配列の制御下で挿入することにより組み換え発現することができる。Rosenberg、A.H.、Gene 56、125−135(1987)。
【0026】
組み換え産生に関して、宿主細胞を遺伝子操作して、本発明において有用なIL−18ポリペプチドの発現系またはその一部を組み入れることができる。ヒトIL−18をエンコードするポリンクレオチドの宿主細胞中への導入は、多くの標準的実験室用マニュアル、例えば、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986)およびSambrookら、in MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York(1989)に記載されている方法により行うことができる。このような方法としては、これらに限定されないが:リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質で仲介されたトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレイプローディング、バリスティックイントロダクションまたは感染が挙げられる。
【0027】
適当な宿主の代表例としては、細菌細胞、例えば連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、イー・コリ(E.coli)、ストレプトミセス属(Streptomyces)およびバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞およびアスペルギルス(Aspergillus)属細胞;昆虫細胞、例えば、ドロソフィラ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞;動物細胞、例えば、CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK 293およびBowes黒色腫細胞;および植物細胞が挙げられる。
【0028】
様々な発現系、例えば染色体、エピソームおよびウイルスに誘導系、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、ウイルス、例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスから誘導されるベクター、ならびにその組み合わせ由来のベクター、例えばコスミドおよびファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子エレメントから由来のものを使用することができる。発現系は、発現の制御ならびに発生を調節する制御領域を含有することができる。一般に、宿主においてポリペプチドを産生するためにポリヌクレオチドを維持、増殖または発現することができる任意の系またはベクターを使用することができる。適切なヌクレオチド配列は、例えばSambrookら(前出)に記載されているものなどの様々な周知で慣習的な技術により発現系中に挿入することができる。適切な分泌シグナルを所望のポリペプチド中に組み入れて、翻訳されたタンパク質を小胞体内腔、細胞周辺腔または細胞外環境の管腔中に分泌させることができる。これらのシグナルは、ポリペプチドに対して内因性であってもよいし、あるいは異種シグナルであってもよい。
【0029】
ポリペプチドが媒体中に分泌されるならば、前記媒体はポリペプチドを回収し、精製するために回収することができる。細胞内で産生される場合、細胞はまずポリペプチドが回収される前に溶解されなければならない。
本発明において有用なポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレシチンクロマトグラフィーをはじめとする周知の方法により組み換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、精製するために高性能液体クロマトグラフィーを用いることができる。単離および精製中にポリペプチドが変性する場合、活性構造を再生するためにタンパク質のリホールディングのための周知の技術を用いることができる。
【0030】
本発明において有用な水溶性ポリマーは、本発明の組成物に対する望ましくない免疫反応性を回避するために実質的に非抗原性である。このような水溶性ポリマーとしては、これらに限定されないが:ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリエチレングリコールコポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール−コープロピレングリコール)、ポリ(N−2−(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(シアル酸)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、およびデキストランが挙げられる。好適なポリマーは、任意の分子量を有するものである。本発明の一実施形態において、ポリマーは約1000ダルトン〜約100000ダルトンの平均分子量を有する。本発明の別の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリマーは約4000ダルトン〜約40000ダルトンの平均分子量を有する。本発明のさらに別の実施形態において、前記官能化ポリマーの分子量は:約20000ダルトン〜約30000ダルトンからなる群から選択される。本発明のさらに別の実施形態において、前記官能化ポリマーは約20000ダルトンの分子量を有する。
【0031】
これらのポリマーは、置換されていないかまたは一端でアルキル基で置換されている。例えば、
本発明の組成物は、水溶性ポリマーがポリエチレングリコールホモポリマーであるものである。本発明における使用に好適なポリマーは、分岐鎖、非分岐鎖、星状または直鎖である。本発明の一実施形態において、このような組成物は直鎖ポリエチレングリコールホモポリマーを含む。本発明の別の実施形態において、このような組成物は、分岐鎖ポリエチレングリコールホモポリマーを含む。本発明における使用に好適なポリマーは、次の特許、特許出願および刊行物に開示されている:米国特許第4,097,470号、第4,847,325号、第5,037,883号、第5,252,714号、第5,580,853号、第5,643,575号、第5,672,662号、第5,739,208号、第5,747,446号、第5,824,784号、第5,846,951号、第5,880,255号、第5,919,455号、第5,919,758号、第5,932,462号、第5,985,263号、第5,951,974号、第5,990,237号、第6,042,822号、第6,046,30号、第6,107,272号および第6,113,906号;国際特許公開番号WO92/16555;欧州特許公開番号EP727,437、EP727,438、EP439,508およびEP714,402;Zalipsky、S.(1995)Bioconjugate Chem 6:150−165;Gregoriadis、G.ら、(1999) Pharma Sciences 9:61−66(それぞれは本発明の一部として参照される)。さらに、ポリペプチドおよび他の生物学的物質との結合を促進するために修飾された誘導化または官能化されたポリマーが本発明における使用に好適である。例えば、遊離アミノ基(例えばリシン残基でのイプシロンアミノ基またはN末端での遊離アミノ基)、システイン残基上の遊離スルフヒドリル基、または炭水化物部分による結合を促進するためのポリマーの修飾が望ましい。有用なポリマーは、ポリエチレングリコールのモノメトキシ誘導体(mPEG)も含む。本発明において用いることができる官能化ポリマーとしては、これらに限定されないが:メトキシポリエチレングリコールスクシニミジルプロピオネート;メトキシポリエチレングリコールスクシニミジルブタノエート;カルボキシメチル化メトキシポリエチレングリコールのスクシニミジルエステル;メトキシポリエチレングリコールアルデヒド;メトキシポリエチレングリコールヒドラジド、メトキシポリエチレングリコールヨードアセトアミド;メトキシポリエチレングリコールマレイミド;およびメトキシポリエチレングリコールトレシレートが挙げられる。
【0032】
前記のヒトIL−18タンパク質は:天然に存在するか、または遺伝子操作によりサイトカイン分子中に導入されリホールディング後も遊離のままである(1)遊離アミン基、例えば生物学的活性の喪失を最小限に抑えるための1または2個、(2)遊離カルボキシル基、例えば生物学的活性の喪失を最小限に抑えるための1または2個;(3)遊離ヒスチジン基、(4)遊離スルフヒドリル基または(5)遊離チオエーテル基のいずれかによりポリマーに結合させることができる。タンパク質に結合されたポリマー分子の数は、例えば、適当な分子マーカーを用いたSDS−PAGEゲルまたはサイズ排除クロマトグラフィー、マトリックスにより補助されたレーザー脱離およびイオン化質量分析(MALDI−MS)(Bullock、J.ら、(1996)Anal.Chem.68:3258−3264)、キャピラリー電気泳動(Kemp、G.(1998)Biotechnol.Appl.Biochem.27:9−17;Robert、M.J.およびHarris、J.M.(1998)J.Pharm.Sci.87:1440−1445)をはじめとする様々な方法により決定することができる。ポリマー結合の部位は、タンパク質を酵素(例えば、トリプシン、Glu−C)により消化して小さなフラグメントにし、逆相液体クロマトグラフィーにより分離することにより決定できる。ポリマー修飾の前後のペプチドマップを比較し、溶出時間が変わったフラグメントを配列化して、ポリマー結合の位置が決定される。別法として、ポリマーは、タンパク質1モルあたり何モルの標識されたポリマーが結合するかを決定するためにカップリング前に蛍光または放射性標識の何れかをすることができる。
【0033】
結合される残基は:通常存在するか、または遺伝子操作によりタンパク質中に導入される(1)システイン残基上の遊離スルフヒドリル基;(2)任意の遊離アミン基(例えば、リシン残基のイプシロンアミン基またはN末端での遊離アミン基);(3)遊離カルボキシル基(例えば、アルパルテートおよびグルタメート残基上の遊離カルボキシル基);(4)ヒスチジン上の遊離イミダゾール基、および(5)メチオニン上の遊離チオエーテル基である。
結合を行うための反応条件は、タンパク質の反応基がシステイン上の遊離チオール基またはメチオニン上のチオエーテル基であるならば、pH約6〜9、さらに好ましくはpH6〜7で前記結合反応を行うことをさらに含む。前記方法を用いて、タンパク質をポリマーに添加された少なくとも1つの末端チオール反応性基により結合させる。これらのチオール反応性基としては、これらに限定されないが:ハロアセチル、マレイミド、ピリジルジスルフィド誘導体、アジリジン、アクリロイル誘導体、アリール化剤が挙げられる。用いられる未反応活性化ポリマーの量は、通常、モノマーまたはマルチマー(好ましくはダイマー)形態であるタンパク質よりも1〜10倍過剰の活性化ポリマーである。一般に、反応プロセスは、活性化ポリマーをタンパク質と2:1(ポリマー:ポリマー)の比で反応させることを含む。典型的には、反応はリン酸塩緩衝液pH6.2、100mM NaCl中、4℃で約1時間〜約10時間行われる。結合後、所望の結合タンパク質を液体クロマトグラフィーなどにより回収し、精製する。
【0034】
結合を行うための反応条件は、タンパク質の反応性基が遊離アミン基であるならば、そしてアスパラギンおよびグルタミン残基でアルカリ性pH(7より大)で起こることが知られている脱アミド化反応を減少させるために、H約6〜9、さらに好ましくはpH6.5〜7.5で前記結合反応を行うことをさらに含む。前記方法を用いて、タンパク質をポリマーに添加された少なくとも1つの末端アミン反応性基により結合させる。これらのアミン反応性基としては、これらに限定されないが:イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、ヨードアセトアミド、トレシレートおよび無水物が挙げられる。用いられる未反応活性化ポリマーの量は、一般にモノマーまたはマルチマー(好ましくはダイマー)のいずれかの形態であるタンパク質より1〜10倍過剰である。一般に、反応プロセスは、活性化ポリマーをタンパク質と2:1(ポリマー:タンパク質)の比で反応させることを含む。典型的には、反応は、リン酸塩緩衝液pH7.0、100mM NaCl中、4℃で約1時間から約4時間行われる。結合後、所望の結合タンパク質を液体クロマトグラフィー等により回収し、精製する。
【0035】
結合を行うための反応条件は、タンパク質の反応性基が遊離カルボキシレート基であるならば、前記結合反応をpH約3〜9、さらに好ましくはpH4〜5で行うことをさらに含む。タンパク質上のカルボキシル基は、アシル化剤、例えばカルボジイミド(例えば、DCCまたはEDC)あるいはカルボニルジイミダゾール(例えば、CDI)により活性化される。前記方法を用いて、タンパク質をポリマーに添加された少なくとも1つの求核性官能基により結合させる。これらの求核性官能基としては、これらに限定されないが:アミンまたはヒドラジドが挙げられる。前記タンパク質に関して、好ましい反応条件は、アスパラギンおよびグルタミン残基で、アルカリ性pH(7より大)で起こることが知られている脱アミド化副反応を軽減するために4℃で弱酸性pHである。用いられる未反応活性化ポリマーの量は、一般にカルボキシル化活性化タンパク質より1〜10倍過剰の活性化ポリマーである。一般に、反応プロセスは、活性化ポリマーをタンパク質と2;1(ポリマー:タンパク質)の比で反応させることを含む。典型的には、反応はMEA緩衝液pH4.5中、4℃で約1時間から約8時間行われる。結合後、所望の結合タンパク質を液体クロマトグラフィーなどにより回収し、精製する。
【0036】
結合を行うための反応条件は、タンパク質の反応性基が遊離ヒスチジンであるならば、前記結合反応をpH約3〜6、さらに好ましくはpH4〜5で行うことをさらに含む。前記方法を用いて、タンパク質をポリマーに添加された少なくとも1つの末端イミダゾール反応性基により結合させる。これらのイミダゾール反応性基としては、これらに限定されないが:N−ヒドロスクシンイミド(NHS)エステルおよび無水物が挙げられる。用いられる未反応活性化ポリマーの量は、一般にモノマーまたはマルチマーの何れかであるタンパク質よりも1〜10倍過剰の活性化ポリマーである。一般に、反応プロセスは、活性化ポリマーをタンパク質と2;1(ポリマー:タンパク質)の比で反応させることを含む。典型的には、反応は酢酸塩緩衝液pH4〜5、100mM NaCl中、4℃で約2時間から約6時間行われる。結合後、所望の結合タンパク質を液体クロマトグラフィーなどにより回収し、精製する。
【0037】
水溶性ポリマーの治療的ポリペプチドとの有効な結合は、既に米国特許第4,487,325号、米国特許第5,824,784号および米国特許第5,951,974号(全体として本発明の一部として参照される)に記載されている。
さらに別の態様において、本発明は、治療的に有効な量の本発明の組成物を、治療的に許容される担体または賦形剤との組み合わせにおいて含む医薬組成物を提供する。このような担体としては、これらに限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが挙げられる。本発明はさらに、本発明の前記組成の1以上の成分を充填された1以上の容器を含む医薬パックおよびキットに関する。本発明の組成物は、単独または他の化合物、例えば治療化合物との組み合わせにおいて用いることができる。
【0038】
医薬組成物は、例えば全身性または経口経路による投与経路に適用される。全身性投与の形態は、注射、典型的には静脈内注射を包含する。皮下、筋肉内、または腹腔内等の他の注射経路も使用できる。全身性投与の代替手段としては、浸透剤、例えば胆汁塩またはフシジン酸または他の界面活性剤を用いた経粘膜および経皮投与が挙げられる。加えて、本発明の組成物が腸溶性またはカプセル化処方に処方できるならば、経口投与も可能である。これらの組成物の投与は、軟膏、ペースト、ゲルなどの形態において、局所および/または局所化することができる。他の投与経路は、溶液または乾燥粉末処方の何れかを用いた肺または鼻送達を包含し得る。
【0039】
必要とされる投与量範囲は、本発明の組成物、投与経路、処方の性質、対象の状態の性質、および診察する医師の判断に依存する。しかしながら、好適な用量は、対象の体重1kgあたり0.1〜1000μgの範囲である。しかしながら、入手可能な様々な組成物および様々な投与経路の異なる有効性の観点から、必要な用量は広範囲に変化することが予想される。例えば、経口投与は静脈内注射による投与よりも高い投与量を必要すると予想される。これらの投与量レベルにおける変動は、当該分野において良く理解されるように、最適化のための標準的経験的手順を用いて調節することができる。
【0040】
本発明は、その精神または本質的特性から逸脱することなく他の特定の形態において具体化することができ、従って本発明の範囲を表示する前記明細書または以下の実施例よりも添付の請求の範囲を参照すべきである。
これらに限定されないが、本明細書において言及し、または本出願が優先権を主張する特許および特許出願を包含する全ての刊行物は、個々の出版物が具体的かつ個別にあたかも完全に表示されているように出典明示により本発明の一部として参照される。
【0041】
実施例
実施例1:ヒトおよびネズミIL−18結晶構造に基づくPEG化部位の予想:
Cys38およびCys68(2つの天然の表面が露出したシステイン)でのヒトIL−18(配列番号1)のPEG化により、低活性を有する分子が産生された。従って、本発明者らは所望の生物学的活性と緩衝することなくCysと突然変異形成し、その後PEG化するためのヒトIL−18における部位を同定することを試みた。
マウスIL−18の結晶構造は解明されている(米国特許出願番号10/640,524、2003年8月13日提出)。IL−18およびIL−1βはそのコア構造が非常に類似しているが、その表面ループは異なることなることが明らかである。ヒトIL−18の構造は、高い配列相同性(65%同一)のためにネズミIL−18構造と非常に類似している。ネズミIL−18の結晶構造を用いて、表面およびループ残基をヒトIL−18上にマップすることができる。
【0042】
本発明者らはIL−18レセプターとの相互作用に関与しないIL−18の柔軟な表面ループの先端での残基のPEG化を目的とする。本発明者らは、IL−18はそのレセプターと、IL−1β:IL−1βレセプター相互作用と類似した方法で相互作用すると仮定する。マウスIL−18配位を、三次元オーバーレイで、ヒトIL−1βのIL−1βレセプターとの複合体からのヒトIL−1βの配位上に重ね合わせた(Vigersら、in Nature 386:190、1997;PDB code 1ITB)。ヒトIL−1βレセプターのIL−1βレセプター拮抗物質との複合体の配位(Schreuderら、in Nature 386:194、1997;PDB code 1IRA)を、IL−18のそのレセプターとの結合様式をモデル化するためにも使用した。これらのオーバーレイから、本発明者らは、Asn78、Glu121、Leu144、およびC末端を少なくとも起こりそうなレセプターとの相互作用として、従ってシステインと突然変異形成し、その後ポリエチレングリコールを結合してPEG化IL−18を形成するための良好な部位として選択した。ヒトIL−18のC末端アミノ酸(D157)およびLeu144は、別々にCysと突然変異形成し、次いでPEG化された。結果として得られる2つの修飾IL−18分子は活性を示した。
【0043】
実施例2:置換突然変異設計:
ネズミIL−18結晶構造に基づいて(米国特許出願番号10/640,524、2003年8月13日提出)、また後に天然のヒトIL−18結晶構造により確認されるように(PCT出願番号WO03/089653、2003年10月30日提出)、生物学的活性に対する負の効果を最小限に抑えるためにモノPEGを予想されるレセプター結合領域から離れた遊離システインと結合させるPEG化法を考案した。天然のヒトIL−18は、図1(配列番号1)に示される成熟ヒトIL−18のアミノ酸配列において下線で示される4つのシステイン、C38、C68、C76、およびC127を含有する。これらの内の2つ、C38およびC68は、結晶構造により予想されるようにPEG化に利用可能である。PEG化された天然のヒトIL−18は、C38およびC68の両方で二重PEG化されており、減少したインビトロ生物学的活性を示す(表1)。モノPEG化は、天然のシステインの1つを非反応性アミノ酸で置換し、残りの反応性システインをPEG化するか、または両方の天然のシステインを置換し、分子中の他の場所の遊離システインを置換することにより達成される。
【0044】
一連のヒトIL−18置換突然変異体は、部位指向性突然変異誘発により生成された(T.A.Kunkel(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492)。これらの全てはイー・コリにおいて、N末端の6のヒスチジン精製タグを有するpro形態において発現された(図3)(配列番号3)。別に精製されたカスパーゼ5を用いてProIL−18を次に活性化してインビトロで成熟形態にした。全てのIL−18突然変異は、この方法を用いて有効に発現され、等しい収率で精製された。カスパーゼ1、4、および5、およびユビキチン特異性プロテアーゼを用いてインビトロまたは細胞内で活性IL−18を産生する代替法は、PCT WO01/098455(2001年12月27日公開)において詳細に記載されている。これらの方法はすべて本出願において開示されているIL−18突然変異体デザインの任意のものを産生するために好適である。
【0045】
置換突然変異体デザインを、これらの内部の対応するモノPEG化部位、およびPEG化および非PEG化形態のインビトロ活性とともに以下の表1に記載する。天然のIL−18のモノPEG化は、システイン38またはシステイン68(図1、最初の2つの下線部分)(配列番号1)で達成される。天然のIL−18分子内のモノPEG化により、PEG化されていない天然のIL−18と比較して、KG−1 IFN分泌分析において生物学的有効性が約5倍低下する。一方、遊離天然のシステイン68でのモノPEG化は、C38をセリン(図4、下線)(配列番号4)で置換することにより達成される。この分子内のシステイン68でのモノPEG化により、PEG化されていない天然のIL−18と比較してKG−1 IFN分泌分析において生物学的能力が約2倍減少する。対照的に、この置換の非PEG化形態の活性は、天然のIL−18から有意に減少しなかった(表1A)。
【0046】
予想されるレセプター結合相互作用部位から離れた三葉型構造の露出したループに関するPEG化についてヒトIL−18の結晶モデルに基づいてさらなる置換デザインを調製した。4つの部位、N78、E121、L144、およびD157をシステイン置換のために選択した。hIL−18タンパク質に沿って置換当然変異に好適な他の残基があるが、これらの4つの残基がまず選択される。これらの部位でのモノPEG化を達成するために、システイン38をセリンで置換し、システイン68をセリンまたはアスパラギン酸のいずれかで置換した。セリンはシステインと比較して中性の性質および小さな寸法のために使用した。アスパラギン酸は、ヒトにおけるシステインに関する位置に他の種のIL−18においてアスパラギン酸が存在するために選択した。図5〜10はこれらの理論的デザインのそれぞれのアミノ酸配列(それぞれ配列番号5〜10)を示す。置換突然変異に下線を施した。PEG化後の全てのムテインについての生物学的効力において活性の減少が観察された。PEG化およびモノPEG化形態の相対的活性に基づいて、2つのPEG化部位、L144およびD157を選択し、その後のインビトロおよびインビボ検定において試験した。さらに、この残基置換の中性的性質のためにC68DよりもC68S置換を選択した。従って、突然変異デザインC38S、C68S、L144C、およびC38S、C68S、D157CをそれぞれC144およびC157(図9および図10)(表1Aおよび1B)(それぞれ配列番号9および10)でのモノPEG化に使用した。
【表1】


【表2】

【0047】
実施例3:精製法:
a.IL−18のシステイン置換突然変異体の精製
実施例2において前述した突然変異体の全ては、イー・コリにおいて、発現レベルの検出と精製の便宜のためのN末端ヘキサヒス標識を有する可溶性代用形として発現された。ヘキサヒス/proIL−18(配列番号3)を発現するイー・コリ細胞を、10ml/g細胞で溶解緩衝液中に懸濁させた。溶液緩衝液は、50mM Trisl HCl(pH8.0)、500mM NaCl、5%グリセロール、10mM2−メルカプトエタノール(緩衝液A)、1μg/mlペプスタチンAおよび0.4mMフェニルメチルスルホニルフルオリドを含有していた。細胞を溶解緩衝液中に均質化させ、ミクロフルイダイザー(M110−Y、Microfluidics)に12000psiで2回通すことにより溶解させた。細胞溶解物を30000gで30分間遠心分離して、細胞片を分離し、上清をNiNTAアガロースカラムにかけ、これを3カラム体積の緩衝液Aで洗浄した。カラムをさらに3カラム体積の、30mMイミダゾールを含有する緩衝液Aで洗浄して非特異性結合不純物を除去し、ヘキサヒス/proIL−18を緩衝液A中300mMイミダゾールで溶出した。プールを100mM NaClおよび10mM 2−メルカプトエタノールを含有する25mM HEPES pH7.5(緩衝液B)に対して透析した。緩衝液Bはカスパーゼ反応について最適の緩衝液であった。緩衝液B中のプールにカスパーゼ5を1:100w/w(カスパーゼ5対proIL−18)を添加し、一夜室温でインキュベートして、開裂反応を完了させた。反応混合物を0.5M NaClに調節し、これをNiNTAアガロースカラムにかけた。成熟IL−18をカラムに通し、その間、ヘキサヒス/プロドメイン結合をカラムに戻した。第一NiNTAアガロースカラムに結合し、溶出される、あるイー・コリタンパク質(不純物)をカラムに再結合させ、さらに純度の高い成熟IL−18を得た。未結合タンパク質を25mM DTTに調節し、1時間インキュベートして、還元状態で全てのシステインを回復し、精製中に形成されたBME付加物およびジスルフィド結合を還元した。システイン酸化を回避するために2Mリン酸を添加することにより還元された成熟IL−18溶液をpH6.0に調節し、YM10膜で濃縮した。緩衝液を交換するために、濃縮されたサンプルを、0.15M NaClおよび1mM EDTAを含有する10mMリン酸ナトリウムpH6.0で平衡化されたSuperdex75カラムにかけて、凝集物を除去し、インビボ研究に適したエンドトキシンを除去した。成熟IL−18をモノマーとしてSuperdex75カラムから溶出させ、LC/MS分析による分子量は、cDNAから計算されたモノマー形態から予想されるとおりであった。DTNB滴定により、4つのシステインすべてが還元形態であることが示された。
【0048】
b.PEG化IL−18の精製
PEG化IL−18、遊離PEG、および未修飾IL−18を含有するPEG化反応混合物を、反応直後に、等体積の25mM MES中2M(NHSO(pH6.2)(緩衝液C)で希釈した。希釈された反応混合物をSource15フェニル(Pharmnacia)カラムにかけ、これを1.5カラム体積の緩衝液C中1M (NHSOで洗浄した。カラムを5カラム体積の緩衝液C中0.5M (NHSOへの直線的勾配で溶出させた。遊離IL−18がまず溶出され、続いて遊離PEGおよびPEG化IL−18が最後に溶出される。PEG化IL−18を含有するフラクションをプールし、YM10膜で濃縮し、あらかじめ平衡化させた寸法排除カラムSuperdex200調製等級(Pharmacia)にかけ、緩衝液Bで溶出させた。Superdex200は任意の残存する遊離IL−18、遊離PEG、任意の凝集物、およびエンドトキシンを除去する。PEG化IL−18を含有するフラクションをプールし、〜5−6mg/mlに濃縮した。
【0049】
実施例4:PEG化IL−18の調製
PEG化IL−18の調製の一般的手順を以下に記載する。適当な量の平均分子量20000、30000または40000ダルトンを有するメトキシポリエチレングリコールマレイミド(MAL MPEG)を、リン酸塩緩液pH6.0〜6.5中IL−18の2.5mg/mL溶液に添加した(固体またはあらかじめ水性または有機溶媒中に溶解させるかのいずれかとして)。MAL MPEGを、過剰モル量のMAL MPEGでタンパク質溶液に添加した。反応を5℃で1〜12時間進行させた。反応の最後に、過剰量(例えば20倍)のシステイン(0.5M)を添加して反応を停止した。この段階で、野生型ヒトIL−18をPEG化に使用する場合、反応混合物は主にモノ、ジおよび非PEG化IL−18からなることが判明した。ヒトIL−18置換突然変異体を使用する場合(前章において議論するように)、反応混合物は主にモノ−PEG化および非PEG化IL−18タンパク質からなることが判明した(図11参照)。
【0050】
a.物理化学的キャラクタライゼーション
各サンプルを特徴づけるために4種の分析:(1)SDS−PAGE、(2)逆相液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、(3)分子量測定(LC/MS)および(4)ペプチドマッピングを行った。
b.PEG化度
PEG化の程度(すなわち、1つのタンパク質に結合するPEG分子の数)を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動またはRP−HPLCにより分析した。ヒトIL−18またはネズミIL−18PEG化反応混合物のサンプルを還元条件下、レーンあたり10.0μgのロードで、4〜12%ビス−トリスポリアクリルアミド勾配プレキャストゲル上にかけた。タンパク質を検出し、クーマシーR−250で染色した後に定量化した。定量化はレーザーデンシトメトリーにより行った。
PEG化の程度をさらに、RP−HPLC法を用いて分析した。反応混合物のサンプルを1mL/分の流速で、8.6%/分の移動相B(移動相A:0.1%水中トリフルオロ酢酸、移動相B:80%アセトニトリル/水中0.1%TFA)の勾配で、POROS R2/Hカラム(カラム温度40℃)で流した。
【0051】
c.PEG化の部位−トリプシンペプチドマップ法の開発
タンパク質上の正確な位置に対するPEGの結合の位置を証明するために、精製PEG化IL−18サンプルをペプチドマッピングにより分析した。IL−18のトリプシンマッピングは従来法を変更し(J.Bongersら、J.Pharm.Biomed Anal.、21:1099−1128(2000))、IL−18におけるシステイン(遊離スルフヒトリル)の直接S−カルボキシメチル化を用いる:サンプル(2.5mg)を真空下で蒸発乾固させ、6Mのグアニジン・HCl中0.5mLの新たに調製された20mMヨード酢酸ナトリウム中に溶解させ、室温で暗所に40分間置き、その後直ちにBio−Gel P−6DGゲルカラム(BioRad Econ−Pac10DG)上で50mM Tris/HCl、1mM CaCl2(pH8.1)消化緩衝液中に緩衝液交換した。トリプシン(TPCK−処理Worthington)、Lys−C(Wako)、およびGlu−C(Worthington)でのタンパク質分解的消化は全て2mg/mL CM−CysIL−18基質について100/1wt:wtS/E、37℃で2時間であった。RP−HPLCマッピング:Vydac 218MS52 C18カラム(2.1x250mm);55℃;0〜32% CH3CN(0.05%TFA)60分;0.2mL/分、215/280nmw/ダイオード−アレイおよびAgilent G1946A MS検出器(MSD)w/sourceで検出。より小さなサンプル(50−300μg)を、Bio−Rad Micro Bio−Spin Bio−Gel P−6DGゲルカラムを用いて前記手順のセミミクロバージョンにより行った。
【0052】
現行のペプチドマッピング法は、典型的にはシステインジスルフィド架橋のDTT還元、続いて結果として得られるシステインのS−カルボキシメチル化(還元/アルキル化)を利用する。このアンホールディング(変性)工程は、タンパク分解(消化)を成功させるためにしばしば必要とされる。しかしながら、ほとんどのタンパク質における酸化「半システイン」(架橋)と対照的に、hIL−18における4つのシステイン残基はすでに還元されている。従って、本発明者らは、より一般的な還元/アルキル化手順と置換するために、我々のペプチドマッピング法において直接S−カルボキシメチル化を行った。S−カルボキシメチル化IL−18(4×CM−Cys)の定量的収率は、エレクトロスプレーイオン化LC/MSにより判明した(MW1449Da(理論値)、18453Da(測定値))。これは、直接アルキル化の有効性の良好な証拠であり、4モル当量の未反応システインチオールの存在を裏付ける。直接アルキル化の利点は、通常の還元/アルキル化法により失われるIL−18におけるシステインの「化学的一体性」についての情報を保存することである。例えば、システインの直接カルボキシメチル化を含むこのペプチドマッピング法により、システイン残基でのPEG化だけでなく、システインジスルフィドを形成する少量のシステインの空気酸化も検出することができる。
【0053】
トリプシン消化の結果、20の予想されるペプチドフラグメントが生成され(以下の表2参照)、各ペプチドフラグメントは、RP−HPLCおよびLC/MSにより分離し、同定することができる(図12)。ペプチドマップ法は、PEG化の部位、すなわち、ポリエチレングリコール分子が結合しているアミノ酸を同定するために使用される。図12は、モノPEG(20K)ヒト野生型IL−8対未修飾ヒト野生型IL−18対照のトリプシンマッピングの「ミラープロット」比較を示す。それぞれシステイン38、68、76、および127に対応する4つのシステイン含有トリプシンペプチド、(14−39)、(68−70)、(71−79)、および(113−129)を対照について標識する。モノPEGヒトIL−18のトリプシンマップにおける(14−39)ピークの対照に対してピーク面積における大幅な減少は、システイン38での大きなPEG化を示す(約90%)。「PEG−Cys38(14−39)」と表示される後に溶出するピークを単離し、N末端配列決定により90%PEG−Cys38(14−39)および10%PEG−Cys68(68−70)を含有することが判明した(図12)。215nmで検出を行った。この結果、モノPEG化ヒトIL−18はシステイン38位により主にPEG化されたことがわかる。このタンパク質においてはほかに利用可能な3つの遊離システインが存在する事実から、この結果は驚くべきことであり、予想外である。
【表3】

【0054】
d.精製されたモノPEG化野生型ヒトIL−18のトリプシンマッピング
モノPEG化野生型hIL−18産物の図14におけるトリプシンマップデータは、56分に溶出する14−39ペプチドピークについて相対的ピーク面積対対照における減少に基づいて、それぞれほぼ65および35±5モル%の程度までの排他的に溶媒の影響を受けやすいシステイン38および68でのPEG化を示す。マップにおける71−79および113−129トリプシンペプチドの定量的回収により証明されるように、埋め込まれたシステイン76および127で検出可能なPEG化は起こらなかった。これらの結果は、後に溶出する疎水性ピーク含有PEG化ペプチドプールが同時に出現する、モノPEG化hIL−18マップ対非PEG化hIL−18対照マップにおけるシステイン含有トリプシンペプチドの相対的ピーク面積において観察される減少、またはその喪失に基づく。システイン38および68上のPEGの約65〜35モル%分布は、さらにLC/MC/MS−MSデータからの抽出されたイオン電流トレースにより確認した。
【0055】
e.精製されたモノPEG化ヒトIL−18C38S、C68D、L144C(配列番号7)およびC38S、C68D、D157C(配列番号8)ムテインから得られるPEG化トリプシンペプチドのN−末端配列
RP−HPLCトリプシンマップにおける非PEG化ペプチドのピーク面積における対照に対する差によりPEG化の部位および程度を決定することに加えて、本発明者らはタンパク質から放出されるPEG化ペプチドフラグメントの直接分析も行った。PEG化ペプチドに関するこのような直接的データは、非PEG化ペプチドについてのピーク面積における差から得られる相補的間接的証拠に対する「質量バランス」により関連づけられる。先に記載したように、これらの異なるPEG化ペプチドはすべてRP−HPLCトリプシンマップにおいて、PEG化ペプチド種の未分割のプールを含有する単一の後で溶出するピークとして同時に溶出する。PEG化ペプチドはイオントラップまたは四極子質量分析器でのオンラインエレクトロスプレー質量分析の影響を受けにくいので、本発明者らはRP−HPLCトリプシンマップから集められたPEG化ペプチドのプールを分析するためにミクロ化学EdmanN末端シーケンシングを利用した。
【0056】
モノPEG20khIL−18C38S、C68D、L144C(配列番号7)についての単離されたRP−HPLCの後で溶出するピーク(PEG化ペプチドプール)のEdmanN末端シーケンシングデータは、表面ループシステイン144で98.3モル%PEG、部分的に埋め込まれたシステイン127で1.3モル%PEGを示した。モノPEG20khIL−18C38S、C68D、D157C(配列番号8)PEG化トリプシンプールのEdmanシーケンシングはC末端溶媒暴露システイン157で>99.5モル%PEGを示し、部分的に埋め込まれたシステイン127または他のさらなる部位で検出可能なPEGはなかった。
【0057】
従って、PEG20khIL−18C38S、C68D、L144C(配列番号7)について、シーケンシングデータにより、システイン144での所望のPEG化に加えて、部分的に埋め込まれたシステイン127での約1〜2%の競合するPEG化が明らかになる。一方、システイン127、または他のどのような部位でも、このような競合PEG化はモノPEG20khIL−18C38S、C68D、D157C(配列番号8)で検出可能でない。これらのシーケンシングデータは、残基144に対して残基157での若干求核性(反応性)の高いシステインと一致する。内部ループシステイン144に対する折りたたまれたタンパク質におけるC末端システイン157のPEG化に対する若干有利な反応性は、おそらくはこの残基の若干高い溶媒の影響を受けやすさ、および/または熱易動性、異なる局所静電環境、およびチオールの高い酸性の組み合わせを反映するであろう。
【0058】
f.ヒトIL−18置換突然変異体(C38S、C68S、L144C(配列番号9)およびC38S、C68S、D157C(配列番号10)置換突然変異体)および精製されたモノPEG化置換突然変異体のトリプシンマッピング
トリプシンマッピングデータ(図13および15)は、ヒトIL−18置換突然変異体C38S、C68S、L144C(配列番号9)およびC38S、C68S、D157C(配列番号10)およびそれぞれの精製されたモノPEG化結合体の予想される化学構造を裏付ける。RP−HPLCデータは、それぞれ残基144および157での操作された表面システインでの>95%部位特異性定量的PEG化と一致する。そして、残基76および127での埋め込まれたシステインを含有するカルボキシメチル化トリプシンペプチドは、野生型ヒトIL−18標準の対照トリプシンマップに対してほぼ定量的収率で回収され、事実上他の顕著な化学的修飾(副反応)は最終生成物において観察されなかった。
【0059】
実施例5:アフィニティー測定(IL−18Rα鎖およびIL−18BPに対するIL−18結合の速度分析)
ヒトIL−18の生物学的効果は、その細胞表面レセプターとの結合に関連し、おそらくは天然の拮抗物質、IL−18BPに対するその結合による。IL−18の結合検定およびレセプターのアルファ鎖、またはIL−18BPの何れかは、BIAcore装置、表面プラスモン共鳴ベースのバイオセンサーを用いて開発された。この技術は、センサーチップ上の1つの生体分子を固定化し、リアルタイムで溶液中の第二の成分とのその相互作用をモニターすることを含む。
【0060】
IL−18置換突然変異体は、レセプターについて親和性が減少した(6〜16倍)。しかしながら、IL−18BPに対する結合親和力は影響を受けなかった。対照的に、レセプター(13−114倍)およびIL−18BP(10−176倍)の両方に関して親和力が著しく減少した(表3)。
【表4】

【0061】
実施例6:NF−κBシグナリング
IL−18の効果は、αおよびβ鎖からなるヘテロダイマー表面レセプターとの結合により媒介される。α鎖は単独でIL−18と結合するが、両サブユニットは、細胞内シグナリング経路を活性化し、標的細胞上のIL−18の生物学的効果を媒介することができる機能的高親和性IL−18レセプターを形成するために必要である。転写因子NF−κBはIL−18の免疫調節効果の重要なメディエーターである。IL−18レセプターシグナリングは、IKKタンパク質キナーゼの活性化を誘発し、これは次にNF−κB阻害剤IκBαをリン酸化する。リン酸化IκBαは分解し、核へ転位し、遺伝子転写を活性化する遊離NF−κBを放出させる。多IL−18ムテインをこの検定において評価した。これらの研究から、C38S、C68D、L144C(配列番号7)、C38S、C68S L144C(配列番号9)、C38S、C68D、D157C(配列番号8)、およびC38S、C68S、D157C(配列番号10)を含有するIL−18ムテインが最も有効であると確認された。
【0062】
表4におけるデータは、いくつかの異なる分子に関するNF−κB生物検定からの結果をまとめたものである。天然のIL−18(配列番号1)に対して、IL−18置換突然変異体、C38S、C68D、L144C(配列番号7)およびC38S、C68D、D157C(配列番号8)は効力がおよそ10倍減少していた。効力におけるさらなる減少がPEG化分子において見られた。一般に、20Kおよび30K PEGムテインは40PEGバージョンよりもさらに有効であった。
【表5】

【0063】
実施例7:ヒトPEG IL−18のネズミ薬力学(PD)データ(IFNγ誘発)
BALB/cをネズミIL−18を1回注射することにより治療すると、サイトカイン産生が増大した。最大の増加は、IFNγおよびGM−CSFに関して見いだされた。IFNγ応答は非常に迅速で大規模であるので、このバイオマーカーはPEG化IL−18の効力を天然のIL−18分子と比較するために使用した。ヒトIL−18(配列番号1)およびPEG化ヒトIL−18(配列番号1)をSC注射により10または100μgの投与量で投与した。治療後2、4、6、8、12および16時間に血清を集め、IFNγ産生に関して分析した。等モル量のPEG化IL−18は非PEG化IL−18よりも高いIFNγの循環レベルを誘発した。PEG化IL−18のIFNγのピークレベルは、4〜16時間の間に見いだされるが、非PEG化IL−18は2〜4時間の間にピークを生じさせた。IL−18α鎖レセプターについての親和性の減少(表3に示すとおり)、
またはNF−κB細胞ベースの検定における活性の低下(表4に示すとおり)にもかかわらず、PEG化ヒトIL−18(配列番号1)は、IL−18分子の重要なPDマーカーであるIFNγにおいて増大を示した(表5)。
【表6】

【0064】
実施例8:PEG化および非PEG化IL−18(配列番号1)のNK細胞毒性(エクスビボネズミ系)
IL−18は、NK細胞を活性化するTh1−優性サイトカインである。この研究において、本発明者らはヒトPEG化および非PEG化IL−18(配列番号1)に反応するNK細胞毒性を測定することを目的とした。この検定は、抗腫瘍活性の直接滴尺度である。
ネズミYAC−1細胞(NK感受性T細胞リンパ腫)を標的として、また処置された動物からのBALB/c脾臓細胞をエフェクターとして用いるヨーロピウム放出検定によりNK細胞活性を測定した。マウスにヒトPEG化および非PEG化IL−18(等モル)濃度を1回注射した。マウスを処置後18〜24時間に屠殺した。処置された動物(および対照)からの脾臓細胞をヨーロピウム標識されたYAC−1標的細胞と組み合わせ、ヨーロピウム放出について測定した。
【0065】
PEG化IL−18はマウスにおいてNK細胞毒性を誘発した(表6)。全てのヒトPEG化IL−18形はNK細胞毒性を誘発する能力を示した(データは省略)。20K PEG化IL−18は、試験した全てのエフェクター:標的比で非PEG化IL−18よりも良好な活性を示した(表6)。ここでも、IL−18−α鎖レセプターについての親和性の減少(表3に示すとおり)またはNF−κB細胞ベースの検定における活性の減少(表4に示すとおり)にもかかわらず、PEG化はIL−18依存性インビボNK活性化を軽減も、排除もしなかった。
【表7】

【0066】
実施例9:IL−18結合タンパク質との複合体形成
IGEN系を用いてIL−18(配列番号1)とIL−18結合タンパク質(IL−18BP)間の複合体を検出するためのイムノアッセイを開発した。この検定は、ヒトIL−18に対して非中和mAb(16D10mAb、ルテニウム結合)およびヒトIL−18BPに対して非ブロッキングmAb(mAb36、ビオチニル化)を使用する。125ng/mlのヒトIL−18BPを125ng/mlの非PEG化IL−18またはPEG化IL−18と組み合わせた。
PEG化IL−18分子はIL−18BPと複合体形成する能力が低下し(表7)、これは複合体を形成する非PEG化IL−18と対照的である。
【表8】

【0067】
実施例10:PEG IL−18およびその置換突然変異体についてのサルの薬力学(PD)および薬物動力学(PK)データ
PEG化IL−18および非PEG化IL−18に応答して、PDマーカーをカニクイザルにおいて評価した。カニクイザル(1群あたり3匹のオス)に、1mg/kgの非PEG化IL−18またはPEG化IL−18のいずれかを静脈内注射を1回した。投薬前、および投薬後10日期間にわたって複数の時点で血液サンプルを集めた。血漿を薬剤およびネオプテリン濃度について分析し;白血球を次いでCD64マーカーの発現についてフローサイトメトリーにより分析した。
【0068】
a.サル薬力学(PD)
カニクイザル白血球をCD64平均蛍光強度(MFI)における変化について評価した。PEG化IL−18および非PEG化IL−18は投薬後1から3日の間にCD64発現を増大させた。全白血球上の高いCD64発現は3日に極大になり、10日まで存続した。白血球CD64MFIは、投薬後のどの時点でも非PEG化IL−18と比較してPEG化IL−18に対する応答が高かった(2倍まで)。全白血球において、CD64MFIは非PEG化IL−18よりもPEG化IL−18について統計的に有意に高かった。
PEG化IL−18および非PEG化IL−18は、投薬後1から4日の間にネオプテリン産生を誘発し、ピーク反応は24または48時間であった。折りたたみの誘発およびネオプテリンの群平均濃度は、一般に、非PEG化IL−18に対してよりも(2日に13μ/ml)PEG化IL−18に対して(2日に15〜21μg/ml)の方が高かった(表9)。しかしながら、差は統計的有意に達しなかった。
【0069】
白血球上のCD64マーカーは非PEG化IL−18と比較して、PEG化IL−18に対する発現において著しく増大した。このマーカーは、骨髄系、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、および好中球の細胞上で発現される。これらの細胞は、IL−18誘発免疫応答において重要な役割を果たし、従ってPEG化IL−18活性の関連する尺度である。ネオプテリンの誘発は統計的に有意でないが、発現における増大は、PEG化IL−18が非PEG化IL−18よりもインビボで有利であることを支持する。
【表9】

【表10】

【0070】
g:サル薬物動力学(PK)
カニクイザルにおけるPEG化および非PEG化ヒトIL−18についてのPKデータを表10に示す。0〜8時間の間のPEG化IL−18についてのグラフ下の面積(AUC)は、全336時間の非PEG化IL−18のAUCよりも約7倍大きかった。PEG化IL−18について、0〜8時間の見かけのt1/2は約0.5時間であるが、非PEG化IL−18初期相(全AUSの約43%)のt1/2は約7分であった。PEG化IL−18のCmax値は、非PEG化IL−18のCmax値よりも約4倍高く、血漿区画中へまず分布する薬剤と一致した。
【表11】

【0071】
本明細書において言及される、これらに限定されないが特許および特許出願をはじめとする全ての開示は、個々の開示が具体的かつ個別に記載されているかのように本発明の一部として参照される。
先の記載事項は、その別の実施形態を含む本発明を完全に開示する。本明細書において具体的に開示されている実施形態の変更および改善は以下の請求の範囲内に含まれる。さらに努力することなく、当業者は前記載事項を用いて本発明を最大限利用することができる。従って、本明細書において記載されている実施例は単に例示的であって、本発明の範囲を何ら制限するものではないと解釈されるべきである。本発明の排他的特性または優先権が主張されている実施形態は次のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の配列において1〜5のアミノ酸置換を含み、該置換が、残基38でのシステイン、残基68でのシステイン、残基76でのシステイン、残基78でのアスパラギン、残基121でのグルタミン酸、残基127でのシステイン、残基144でのロイシン、および残基157でのアスパラギン酸からなる群から選択される1〜5のアミノ酸残基での置換である、ヒトIL−18置換変異体。
【請求項2】
変異体が残基38のシステインの代わりにセリンを含むヒトIL−18置換変異体(配列番号4)。
【請求項3】
変異体が、残基38のシステインの代わりにセリン、残基68のシステインの代わりにアスパラギン酸、そして残基78のアスパラギンの代わりにシステインを含有する請求項1記載のヒトIL−18置換変異体(配列番号5)。
【請求項4】
変異体が、残基38のシステインの代わりにセリン、残基68のシステインの代わりにアスパラギン酸、そして残基121のグルタミン酸の代わりにシステインを含有する請求項1記載のヒトIL−18置換変異体(配列番号6)。
【請求項5】
変異体が、残基38のシステインの代わりにセリン、残基68のシステインの代わりにアスパラギン酸、そして残基144のロイシンの代わりにシステインを含有する請求項3記載のヒトIL−18置換変異体(配列番号7)。
【請求項6】
変異体が、残基38のシステインの代わりにセリン、残基68のシステインの代わりにアスパラギン酸、そして残基157のアスパラギン酸の代わりにシステインを含有する請求項1記載のヒトIL−18置換変異体(配列番号8)。
【請求項7】
水溶性ポリマーとコンジュゲートしたポリペプチドを含み、そのポリペプチドがヒトIL−18(配列番号1)である生物学的に活性な組成物。
【請求項8】
ポリペプチドとポリマー間の結合が共有結合である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
水溶性ポリマーとコンジュゲートしたポリペプチドを含み、そのポリペプチドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10からなる群から選択されるヒトIL−18置換変異体である生物学的に活性な組成物。
【請求項10】
ポリペプチドとポリマー間の結合が共有結合である請求項9記載の組成物。
【請求項11】
水溶性ポリマーが:ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリエチレングリコールコポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール)、ポリ(N−2−(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(シアル酸)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、およびデキストランからなる群から選択されるものである請求項9記載の組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマーが置換されていない請求項11記載の組成物。
【請求項13】
水溶性ポリマーが一端でアルキル基で置換されている請求項11記載の組成物。
【請求項14】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールホモポリマーである請求項11記載の組成物。
【請求項15】
ポリエチレングリコールホモポリマーがモノメトキシ−ポリエチレングリコールである請求項14記載の組成物。
【請求項16】
モノメトキシ−ポリエチレングリコールが、直鎖モノメトキシ−ポリエチレングリコールおよび分岐モノメトキシ−ポリエチレングリコールからなる群から選択される請求項15記載の組成物。
【請求項17】
ポリエチレングリコールホモポリマーが約20000〜約40000ダルトンの分子量を有する請求項16記載の組成物。
【請求項18】
ポリエチレングリコールホモポリマーが約20000ダルトンの分子量を有する請求項17記載の組成物。
【請求項19】
ポリエチレングリコールホモポリマーが約30000ダルトンの分子量を有する請求項17記載の組成物。
【請求項20】
ポリエチレングリコールホモポリマーが約40000ダルトンの分子量を有する請求項17記載の組成物。
【請求項21】
組成物がPEG化された天然のヒトIL−18(配列番号1)である請求項17記載の組成物。
【請求項22】
天然のヒトIL−18(配列番号1)が残基38のシステインおよび残基68のシステインでPEG化されている請求項21記載の組成物。
【請求項23】
治療的に有効量の請求項18記載の組成物を投与することにより患者における癌を治療する方法。
【請求項24】
癌が、腎臓細胞癌、骨髄腫、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される免疫感受性腫瘍を含む請求項23記載の方法。
【請求項25】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、変異体が残基38のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項26】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、変異体が残基78のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項27】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号6に示されるアミノ酸配列を有し、残基121のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項28】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号7に示されるアミノ酸配列を有し、残基144のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項29】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、残基157のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項30】
ヒトIL−18置換変異体が配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、残基144のシステインで水溶性ポリマーにコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項31】
水溶性ポリマーが:約20000〜約40000ダルトンの分子量を有する直鎖ポリエチレングリコールホモポリマーおよび約20000〜約40000ダルトンの分子量を有する分岐鎖ポリエチレングリコールホモポリマーからなる群から選択される請求項30記載の組成物。
【請求項32】
直鎖ポリエチレングリコールホモポリマーが約20000ダルトンの分子量を有する請求項31記載の組成物。
【請求項33】
ヒトIL−18置換変異体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有し、変異体が残基157でのシステインで水溶性ポリマーとコンジュゲートしている請求項19記載の組成物。
【請求項34】
水溶性ポリマーが:約20000〜約40000ダルトンの分子量を有する直鎖ポリエチレングリコールホモポリマーである請求項33記載の組成物。
【請求項35】
直鎖ポリエチレングリコールホモポリマーが:約20000ダルトンの分子量を有する請求項34記載の組成物。
【請求項36】
生物学的に活性な組成物を調製する方法であって:
(a)ヒトIL−18ポリペプチド(配列番号1)を得る工程;および
(b)ポリペプチドを官能化水溶性ポリマーと接触させる工程を含む方法。
【請求項37】
生物学的に活性な組成物を調製する方法であって:
(a)配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるヒトIL−18置換変異ポリペプチドを得る工程;および
(b)ポリペプチドを官能化水溶性ポリマーと接触させる工程を含む方法。
【請求項38】
官能化水溶性ポリマーが:メトキシポリエチレングリコールスクシニミジルプロピオネート、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールスクシニミジルプロピオネート、MW30,000;メトキシポリエチレングリコールスクシニミジルブタノエート、MW20,000;カルボキシメチル化メトキシポリエチレングリコールのスクシニミジルエステル、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールアルデヒド、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールアルデヒド、MW30,000;メトキシポリエチレングリコールヒドラジド、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールマレイミド、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールマレイミド、MW30,000;メトキシポリエチレングリコールオルトピリジルジスルフィド、MW20,000;メトキシポリエチレングリコールオルトピリジルジスルフィド、MW30,000;メトキシポリエチレングリコールヨードアセトアミド、MW20,000;およびメトキシポリエチレングリコールヨードアセトアミド、MW30,000からなる群から選択されるメンバーである請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項36記載の方法により製造される生成物。
【請求項40】
請求項37記載の方法により製造される生成物。
【請求項41】
ヒトIL−18(配列番号1)を水溶性ポリマーにコンジュゲートさせる工程を含むヒトIL−18(配列番号1)の薬物動態特性および薬力学的作用を改善する方法。
【請求項42】
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるヒトIL−18置換変異体の薬物動態特性および薬力学的作用を改善する方法であって、ヒトIL−18置換変異体を水溶性ポリマーにコンジュゲートさせる工程を含む方法。
【請求項43】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールホモポリマーである請求項33記載の方法。
【請求項44】
皮下生体利用性が改善されている請求項41記載の方法。
【請求項45】
皮下生体利用性が改善されている請求項42記載の方法。
【請求項46】
皮下生体利用性が改善され、IL−18結合タンパク質(IL−18BP)との結合を減少させる請求項41記載の方法。
【請求項47】
皮下生体利用性が改善され、IL−18BPとの結合を減少させる請求項42記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−105737(P2011−105737A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−10984(P2011−10984)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2006−509956(P2006−509956)の分割
【原出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】