説明

ヒトMDR−1遺伝子における多型および、診断的および治療的適用におけるその使用

【課題】表現型スペクトルおよび、多剤耐性-1(MDR-1)遺伝子の遺伝する異常発現および/または機能の様々な形態と重複する臨床特性の診断および治療の一般的な手段および方法の提供。
【解決手段】標的細胞による薬物の取りこみに関連する分子変異体MDR-1遺伝子のポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドを含むベクター。さらに、そのようなポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞、および変異体MDR-1タンパク質の産生のための使用、加えて、変異体MDR-1タンパク質および、そのようなタンパク質を特異的に認識する抗体、ならびに上述のポリヌクレオチドまたはベクターを含むトランスジェニック非ヒト動物。また、MDR-1遺伝子の多機能性に関連する疾病の治療のための阻害剤を同定および獲得する方法、ならびにそのような疾病の状態を診断する方法が及び薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、表現型スペクトルおよび、多剤耐性-1(MDR-1)遺伝子の遺伝する異常発現および/または機能の幾つかの形態を伴う重複する臨床特性を、診断および治療する手段および方法に広く関連する。特に、本発明は、例えば標的細胞による不十分なおよび/または変化した薬物の取りこみに関係する、分子変異体MDR-1遺伝子のポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドを含有するベクターに関連する。さらに、本発明はそのようなポリヌクレオチドまたはベクターを含有する宿主細胞および、変異体MDR-1タンパク質を産生するためのその使用に関連する。さらに、本発明は変異体MDR-1タンパク質および特異的にそのようなタンパク質を認識する抗体に関連する。本発明はまた、上述のポリヌクレオチドまたはベクターを含有するトランスジェニック非ヒト動物に関連する。加えて、本発明は、MDR-1遺伝子の多機能に関する疾病の治療のための薬物候補および阻害剤を同定および獲得するための方法、およびそのような疾病の状態の診断方法に関連する。本発明はさらに、上述の方法によって得られる、上述のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、抗体および薬物および阻害剤を含む薬学的組成物および診断的組成物を提供する。組成物は特に、MDR-1遺伝子またはその産物の基質、阻害剤または調節剤である薬物を用いた、様々な疾患の診断および治療に有用である。
【0002】
本明細書の本文を通して幾つかの文書が引用されている。本明細書で引用される各文書(任意の製造者の仕様書、指示書等を含む)は本明細書において参照として組み入れられるが、引用される任意の文書が実際に本発明に関する先行技術であるということを認めたわけではない。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒトMDR-1遺伝子は膜内在性タンパク質をコードしており、その機能は、細胞内および細胞膜から細胞外への異なる物質のエネルギー依存性の輸送である。MDR-1の正常な生理学的機能は、毒性物質からの細胞の防護である可能性が非常に高いが、MDR-1輸送体の多くの基質がヒトの疾患の治療のために開発された薬物であることもまた知られている。このことによって、MDR-1遺伝子産物の発現および機能性の程度は、MDR-1の基質として働く任意の薬物の効果に直接影響を与える可能性がある。例えば、MDR-1の発現レベル、およびそれゆえに、MDR-1の機能の程度が癌治療において抗腫瘍薬の効果に直接影響することがよく知られている。事実、「MDR」という遺伝子の名称は多剤耐性を意味し、この遺伝子にコードされるタンパク質が、その全てがMDR-1輸送体の基質である多くの薬物を用いた治療に対し癌細胞を治療抵抗性にさせるという観察を反映している。
【0004】
MDR-1遺伝子は、薬物の侵入に対して防護バリアを提供することにより薬物の治療効果に直接影響することが可能なある種の癌細胞上のみならず、様々な器官、例えば結腸および血液脳関門における、異なる非悪性細胞上においても発現する。これらの細胞においてもMDR-1は薬物の活性および有効性に影響する可能性がある。例えば、結腸におけるMDR-1は経口薬物の摂取に引き続く結腸からの薬物の取りこみの程度を制御または調節できる。血液脳関門におけるMDR-1もまた、MDR-1基質が脳に取りこまれ得る程度に影響する、またはそれを制御する可能性がある。ここで、MDR-1活性の上昇は望ましい脳用薬の十分量の脳への取りこみを妨げる可能性があり、または逆に、ある種の薬物に対して活性が低下したMDR-1変異体は、脳における蓄積の異常な増加を導き、望ましくないまたは危険でさえある薬物の副作用を導く可能性がある。
【0005】
悪性の、また正常の細胞および組織においてMDR-1依存性輸送を制御する共通の因子は、MDR-1の活性である。MDR-1活性は引き続き、(i)細胞内で合成されるMDR-1タンパク質量を決定するMDR-1遺伝子の発現レベル、および(ii) 合成されるMDR-1タンパク質の機能性、即ち、どのような効果でどの基質が認識され細胞外に輸送されるかということに依存性である。
【0006】
第一のこれらのパラメータであるMDR-1の発現レベルは、特に腫瘍細胞の癌化学療法に対する感受性は、MDR発現のアップレギュレーションと逆の相関があるためまた、高レベルのMDR-1の発現は癌化学療法の不十分な効果と相関があるため、しばしば集中的に分析されてきた。観察されたMDR-1の過剰発現は部分的にMDR-1遺伝子増幅に起因する可能性があるにも関わらず、これまで決定されていない原因も必ず存在しており、それらの間には多分対立遺伝子の相違があるということが知られている。個人のMDR-1遺伝子配列における小さな相違が異なるレベルのMDR-1遺伝子発現の原因である可能性がある。MDR-1遺伝子発現に直接影響する配列の相違が存在する可能性のあるヒトゲノムにおける標的領域は、以下のような遺伝子発現の制御領域であると考えられる:MDR-1のプロモーター領域およびエンハンサー領域および、MDR-1 mRNA前駆体のスプライシングの様式または有効性に影響する領域。加えて、発現レベルはメチル化のような、ゲノムにおける構造変化、全体的なクロマチンの変化および、MDR-1遺伝子にて直接、またはMDR-1遺伝子周辺領域にて、MDR-1に連鎖する他の因子に影響される可能性がある。そのような連鎖因子または配列を直接見出し、遺伝子活性化または抑制のそのメカニズムを証明することは非常に難しい。しかし、定義された染色体上のヒトゲノムの線状構造により、発現レベルに影響するMDR-1遺伝子またはその周辺における、他のこれまで同定されていない変化のためのマーカーとして、それ自体は遺伝子の発現レベルに直接影響しない、同定された多型を利用する可能性が開かれる。この効果は連鎖として知られており、定義された対立遺伝子および塩基の変異は、これらの変化自体がその表現型を引き起こすものではないとしても、重要な表現型のためのマーカーとしての役割を担うことが可能である。
【0007】
第二のパラメータ、合成されたMDR-1タンパク質の機能性、即ち、どのような効果でどの基質が認識され細胞外に輸送されるかということは、MDR-1対立遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列により主に決定される。アミノ酸の変化がタンパク質の機能性を変える可能性があることはよく知られている。天然に生じる変異の例、即ち、様々な薬物の作用に直接影響を与える異なる対立遺伝子は、例えば、チトクロームP450多型、またはTPMT、APOE、および様々な他の遺伝子における多型である。また、例えばp53遺伝子における、腫瘍関連の変異は、そのような表現型への媒介をすることが知られている。現在までにMDR-1遺伝子において幾つかの多型のみが説明されており、臨床効果と相関づけられている(Mickley、Blood 91(1998)、1749〜1756(非特許文献1))。本分野においては、そのような多型がさらに存在するのかどうか、またその場合、それらは薬物活性および/または薬物の副作用と関連付けることが可能かどうかという主要な問題が残されている。MDR-1遺伝子において人工的に導入した突然変異を用いた試験では、MDR-1はアミノ酸の置換に対し非常に高い感受性で反応することが明瞭に示された。タンパク質の変化へと翻訳できる、MDR-1遺伝子における人工的突然変異は、基質スペクトル、基質輸送の効果、輸送の制御、および特異的な阻害物質を用いた阻害に対するMDR-1の感受性をも変化させる可能性があることが示された。天然に生じる突然変異が存在するのであれば、同様の効果をもち得ることは明らかである。しかし、そのような変異がいくつ存在するのか、およびヒトMDR-1遺伝子においてどの位の頻度およびどの位置で存在するのかは知られていない。
【0008】
したがって、MDR-1遺伝子多型に起因する、多様な形態の多剤耐性および、例えば疾患、特に癌の化学療法についての感受性の阻害の診断および治療のための手段および方法は、従来利用可能ではなかったが、やはり非常に望ましい。
【0009】
ゆえに、本発明の技術的な課題は上述の要求に応じることである。
【0010】
この技術的課題の解決は添付の特許請求の範囲において特徴付けられる態様の提供により達成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mickley、Blood 91(1998)、1749〜1756
【発明の概要】
【0012】
本発明はヒトMDR-1(多剤耐性)遺伝子のヌクレオチド配列における、新規かつこれまで未知の変異および、これらの対立遺伝子の集団分布の知見に基づいている。これらの新規の配列およびMDR-1遺伝子塩基偏向の知識に基づき、診断試験およびそのような試験のための試薬は、MDR-1遺伝子のホモ接合体およびヘテロ接合体、高頻度対立遺伝子および低頻度対立遺伝子を含む、ヒトにおけるMDR-1対立遺伝子の特異的な検出および遺伝形質決定のためにデザインされた。そのような試験を用いたヒトのMDR-1遺伝子の対立遺伝子の状態の決定は、MDR-1遺伝子産物の基質、阻害剤または調節剤である薬物を用いる多様な疾患の治療に有用である。
【0013】
第一の態様において、本発明は分子変異体MDR-1遺伝子のポリヌクレオチド、およびそれに関連する態様、例えばベクター、宿主細胞、変異MDR-1タンパク質およびそれらの産生方法等を提供する。
【0014】
しかしその他の態様において、本発明は、後天性の多剤耐性または感受性に関連する疾病の治療のため、薬物候補およびMDR-1の阻害剤を同定および獲得する方法、またそのような疾病の状態を診断する方法を提供する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、上述のポリヌクレオチド、それらを含むベクター、タンパク質、それに対する抗体、および上述の方法により得られる、薬物および阻害剤を含む、薬学的組成物および診断的組成物を提供する。
【0016】
本発明の薬学的組成物および診断的組成物、方法および利用は、腫瘍、およびその治療が薬物治療に依存する他の疾患における、遺伝した薬物耐性の診断および治療に有用である。本発明によるMDR-1遺伝子の新規の変異形態は、一定の患者に対する薬物およびプロドラッグの薬力学的プロフィールの開発の可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】精製前および精製後の、選択されたPCR断片のゲルを示す。精製段階前(A)および後(B)の、MDR-1 PCR断片のアガロース(Appli Chem, Darmstadt)ゲル電気泳動(1.5% アガロースゲル)。M:分子量マーカー、1〜28:これらのエキソンに近接する関連配列を含む、ヒトMDR-1 遺伝子のエキソン1〜28の配列を含むPCR断片。
【図2】ホモ接合体およびヘテロ接合体のMDR-1対立遺伝子の例を示す。これらのエキソンに近接する関連配列を含む、ヒトMDR-1 遺伝子のエキソン1〜28の配列を含むPCR断片の配列は、ABI ダイターミネーター技術を用いた自動配列決定法により決定された。公表されたMDR-1配列からのホモ接合体およびヘテロ接合体の偏向は、DNA配列プロフィールにおいて直接検出できる。
【図2−1】図2の続きを示す図である。
【図2−2】図2-1の続きを示す図である。
【図2−3】図2-2の続きを示す図である。
【図2−4】図2-3の続きを示す図である。
【図3】ホモ接合体およびヘテロ接合体のMDR-1対立遺伝子の診断例を示す。対立遺伝子に特異的なエキソン2(261 bp)およびエキソン5(180 bp)のPCR断片のアガロース(Appli Chem, Darmstadt)ゲル電気泳動(1.5% アガロースゲル)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の説明
MDR-1遺伝子における変異の知見および特徴付け、および、ヒト個体における異なるMDR-1対立遺伝子の区別についての診断試験は、MDR-1遺伝子産物の標的であり、ゆえにその細胞の取りこみがMDR-1に依存するような薬物を用いた疾患の治療法を改善するために、非常に有力な手段を提供する。個々の対立遺伝子MDR-1 の状態の診断により、例えば、薬物の個別の用法の適用の可能性を開くことにより、焦点を絞った治療が可能となる。それはまた、治療の結果についての予後を知る手段としても、即ち、全体的なMDR発現を予後マーカーとして利用することによる、確かに改善されたアプローチとしても有用である。さらに、MDR-1、および新規MDR-1変異体を遺伝形質決定するための診断試験は、治療法の確立した薬物を改善し、遺伝子型を薬物活性または副作用と関連付けるのに役立つのみではない。これらの試験および配列はまた、個々の型のMDR-1の活性を特異的に調節する新規阻害剤の開発のための試薬を提供する。個々のMDR-1変異体の特異的な阻害剤(人工的に作製される)を使用することの実行可能性、およびその治療的適用の潜在性は、例えば、近年あるモデル系(Moscow J.A.ら, Blood 94(1999), 52〜61:Dey S.ら, Biochemistry 38(1999), 6630〜6639)において示された。
【0019】
ゆえに、本発明は分子生物学および薬物療法についての薬学的研究を開発する新規の方法を提供する一方、変異体MDR-1遺伝子の発現に起因する、それらの潜在的な有害効果については回避している。
【0020】
したがって、本発明は以下からなる群より選択されるポリヌクレオチドに関連する:
(a)配列番号:

のうち任意の1つの核酸配列をもつポリヌクレオチド;
(b)配列番号:372、373、374または375のうち任意の1つのアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c) ポリヌクレオチドが、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の140837位、141530位、141590位、171466位、171512位もしくは175068位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の101位もしくは308位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の83946位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の78170位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の176位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の171456位、171404位もしくは175074位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の77811位に対応する位置に、またはMDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の137位に対応する位置に、ヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド付加または、ヌクレオチド付加およびヌクレオチド置換をもつ、分子変異体(molecula variant)である多剤耐性(MDR)-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)ポリヌクレオチドが、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の140837位、171512位、171456位、171404位、139119位、139619位、140490位もしくは171511位に対応する位置に1つのCをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の141530位、139177位、139479位、140118位、140568位、140727位もしくは174901位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の141590位、139015位、140216位、140595位、175142位もしくは175180位に対応する位置に1つのGをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の171466位、175068位、175074位、139064位、139276位、140576位もしくは145984位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の101位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の308位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の83946位、78170位、70237位もしくは70200位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の77811位、84032位もしくは73252位に対応する位置に1つのGをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の84701位、84074位、84119位、83973位、70371位、70253位、70204位もしくは43162位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の43263位に対応する位置に1つのCをもつ、またはMDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の176位もしくは137位に対応する位置に1つのTをもつ、分子変異体MDR-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)ポリペプチドが、MDR-1ポリペプチド(アクセッション番号:P08183)の21位、103位または400位におけるアミノ酸置換を含む、分子変異体MDR-1ペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(f)ポリペプチドが、MDR-1ポリペプチド(アクセッション番号:P08183)の21位におけるNからDへの、103位におけるFからSへの、103位におけるFからLへの、または、400位におけるSからNへのアミノ酸置換を含む、分子変異体MDR-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0021】
本発明の文脈における、本明細書にて使用される「分子変異」MDR-1遺伝子またはタンパク質という用語は、該MDR-1遺伝子またはタンパク質が野生型のMDR-1遺伝子またはタンパク質(MDR-1遺伝子のゲノム配列は、例えば以下に関して記載される:エキソン1〜7:アクセッション番号AC002457;エキソン8:アクセッション番号M29429、J05168、AC005068;エキソン9:アクセッション番号M29430、J05168、AC005068;エキソン10:アクセッション番号M29431、J05168、AC005068;エキソン11〜13:アクセッション番号M29432、J05168、AC005068;エキソン14:アクセッション番号M29433、J05168、AC005068;エキソン15:アクセッション番号M29434、J05168、AC005068; エキソン16:アクセッション番号M29435、J05168、AC005068;エキソン17:アクセッション番号M29436、J05168、AC005068;エキソン18:アクセッション番号M29437、J05168、AC005068; エキソン19:アクセッション番号M29438、J05168、AC005068;エキソン20:アクセッション番号M29439、J05168、AC005068;エキソン21:アクセッション番号M29440、J05168、AC005068; エキソン22:アクセッション番号M29441、J05168、AC005068; エキソン23:アクセッション番号M29442、J05168、AC005068; エキソン24:アクセッション番号M29443、J05168、AC005068;エキソン25:アクセッション番号M29444、J05168、AC005068;エキソン26:アクセッション番号M29445、J05168、AF016535、AC005068;エキソン27:アクセッション番号M29446、J05168、AC005068;エキソン28:アクセッション番号M29447、J05168、AC005068)とは、ヌクレオチドの置換、付加および/または欠失により、異なることを意味する。好ましくは、該ヌクレオチド置換はMDR-1タンパク質のアミノ酸配列における、対応する変化をもたらす。
【0022】
本明細書にて使用される「対応する」という用語は、ある位置は先行するヌクレオチドおよびアミノ酸の数のみによってそれぞれ決定されるのではないことを意味する。欠失、置換の可能性のある、または1つもしくはそれ以上の付加的なヌクレオチドを含む可能性のある、本発明による一定のヌクレオチドまたはアミノ酸の位置は、遺伝子またはポリペプチドにおけるどこか他の欠失または付加的なヌクレオチドもしくはアミノ酸によって変化する可能性がある。ゆえに、本発明による「対応する位置」のもとでは、ヌクレオチドまたはアミノ酸は示された数において異なる可能性があるが、なおも同様の近傍ヌクレオチドまたはアミノ酸を有する可能性があることが理解されるべきである。置換、欠失される、または付加的なヌクレオチドまたはアミノ酸を含む可能性のある該ヌクレオチドまたはアミノ酸は、「対応する位置」という用語にも含有される。ヌクレオチドまたはアミノ酸は、例えばそれらの近傍のヌクレオチドまたはアミノ酸と共に、遺伝子発現の制御、対応するRNAの安定性またはRNA エディティングに関係する可能性のある、また本発明のタンパク質の機能的ドメインまたはモチーフをコードする可能性のある、配列を形成し得る。
【0023】
本発明に従い、MDR-1遺伝子における新規のこれまで未同定の遺伝的変異の様式および集団分布は、多くの異なる個体から得たヒトMDR-1遺伝子の関連領域の配列解析により解析された。MDR-1を含む全ての遺伝子の各々の遺伝的性質をもつ、個体のゲノムDNAが、個々の血液試料から容易に精製できることは既知の事実である。これらの個々のDNA試料はその後、血液試料を提供した個体に存在するMDR-1遺伝子の対立遺伝子の配列組成の解析に使用される。配列解析はMDR-1遺伝子の関連領域のPCR増幅、それに続くPCR産物の精製、その後の、確立された方法(ABI ダイターミネーターサイクルシークエンシング)を用いた自動DNA配列決定により実施した。
【0024】
ヒト血液ゲノムDNAのPCR産物の直接DNA配列決定によって個々のMDR-1遺伝子型を決定し、新規のMDR-1変異体を同定する試みにおいて、考慮しなければならなかったある重要なパラメータは、各ヒトは各々の常染色体上の遺伝子(二倍性)の2つの遺伝子コピーを有する(通常、異常な例外は非常に少ない)という事実である。それにより、ホモ接合配列変異のみならず、ヘテロ接合変異をも明瞭に同定できるようにするため、配列の評価には非常に慎重を要した。新規MDR-1遺伝子多型(ホモ接合およびヘテロ接合)の同定および特徴付けにおける異なる段階の詳細は、下記の実施例1および2にて説明される。
【0025】
本発明に従って検出されるMDR-1遺伝子における突然変異は図2にて示される(矢印により示される)。突然変異解析の方法は標準プロトコールに従い、実施例にて詳細に説明される。一般に、表現型スペクトルおよび、MDR-1遺伝子において突然変異をもつ患者における多剤耐性および変化した薬物耐性という、他の形態と重複する臨床的特徴の評価のため、本発明に従って使用されるそのような方法は、例えばハプロタイプ解析、単鎖コンフォメーション多型解析(SSCA)、PCRおよび直接配列決定を含む;ミックリー(Mickley)(1998)、および本明細書に引用される文献を参照のこと。多くの患者の徹底的な臨床的特徴付けに基づいて、表現型は後にこれらの突然変異、また以前に説明された突然変異と関連付けることができる。
【0026】
当業者には明白であるように、この新しい分子遺伝学的知識は現在、投与された薬物が異常な効果をもたらすような、指標となる患者およびその家族の遺伝子型を正確に特徴付けるために使用することができる。
【0027】
過去20年間にわたって、遺伝的異質性は薬物への反応にみられる変異の重要な原因としてますます認識されるようになった。多くの科学発表論文(Meyer, Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol. 37(1997), 269〜296およびWest, J.Clin.Pharmacol. 37(1997), 635〜648)は、ある種の薬物は、ある患者においては他の患者においてよりも、より良く作用する、または非常に毒性が高いことすらあること、また薬物に対する患者の反応におけるこれらの変異は分子的基盤に関連する可能性があることを明らかに示している。この「ゲノム薬理学」の概念は、患者の薬物への反応と遺伝的プロフィールとの間の相関に焦点を向けている(Marshall, Nature Biotechnology, 15(1997), 954〜957;Marshall, Nature Biotechnology, 15(1997), 1249〜1252)。
【0028】
薬物療法に関連する集団変異性のこのような状況において、ゲノム薬理学は、特定の薬物に対して副作用なく反応できる患者の同定および選択に有用な手段として提案されてきた。この同定/選択は、例えば患者の血中の白血球からのDNAを遺伝形質決定することによる、遺伝的多型の分子診断および疾患の特徴付けに基づくことができる(Bertz, Clin.Pharmacokinet. 32(1997), 210〜256;Engel, J.Chromatogra.B.Biomed.Appl.678(1996), 93〜103)。米国の民間健康保険医療団体、および多くの欧州諸国の政府公衆衛生局のような健康管理創設者のためには、このゲノム薬理学的アプローチにより、健康管理を改善すること、および、不必要な薬物、有効性のない薬物、および副作用のある薬物に対し巨額の費用がかかるため、経費削減することの、双方の前進を示すことが可能である。
【0029】
変異体MDR-1遺伝子における突然変異は時には、単独または複合の、アミノ酸の欠失、挿入、および特に置換に帰結する。野生型遺伝子または他の突然変異形態におけるそのような突然変異を遺伝学的に操作することは当然ながら可能である。MDR-1遺伝子のDNA配列におけるそのような改変の導入法は、当業者にはよく知られている;例えばサムブルック、分子クローニング実験マニュアル(Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory(1989) N.Y.)を参照のこと。
【0030】
本発明の好ましい態様において、上述のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号:85、97、106または274によりコードされるアミノ酸配列の一つ又は複数のエピトープを含む、変異体MDR-1タンパク質またはその断片をコードする。
【0031】
MDR-1タンパク質のアミノ酸配列における変化の性質の研究のために、インターネットから得られるBRASMOLのようなコンピュータープログラムが使用できる。さらに、他の適切なコンピュータープログラムを用いて、構造モチーフの折りたたまれ方のシミュレーションおよびコンピューターによる再設計を行うことができる(Olszewski, Proteins 25(1996), 286〜299;Hoffman, Comput.Appl.Biosci. 11(1995), 675〜679)。コンピューターは詳細なタンパク質モデルの構造解析およびエネルギー解析に使用できる(Monge, J.Mol.Biol. 247(1995), 995〜1012;Renouf, Adv.Exp.Med.Biol. 376(1995), 37〜45)。これらの解析は、薬物の結合および/または輸送に対する、特定の突然変異の影響の決定に使用できる。
【0032】
一般に、本発明のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質のアミノ酸配列における上記アミノ酸の欠失、付加または置換は、一つ又は複数のヌクレオチドの置換、挿入または欠失、またはそれらの任意の組み合わせによるものである。好ましくは、該ヌクレオチド置換、挿入または欠失は、MDR-1遺伝子のエキソン2におけるAsn21からAsp、エキソン5におけるPhe103からSerまたはLeu、および/またはエキソン11におけるSer400からAsnというアミノ酸の置換に帰結する。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドはさらに、例えば先行技術において説明されるもの;例えば、ミックリー(Mickley)(1998)のような、本明細書の上記にて特定されるものの他に、少なくとも1つのヌクレオチドおよび任意にアミノ酸の欠失、付加および/または置換を含み得る。本発明のこの態様は、遺伝子のそのような突然変異形態、または上述のタンパク質により模倣され得る同様の突然変異形態をもつ患者における、薬物の薬理学的プロフィールに対する、MDR-1遺伝子における突然変異の相乗効果の研究を可能にする。相乗効果の解析により、癌のある形態の多剤耐性表現型の発現についてより深い洞察が提供されることが期待される。より深い洞察から、癌に関連する診断的組成物および薬学的組成物の開発は大いに恩恵を受けると考えられる。
【0034】
ゆえに、好ましい態様において、本発明は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換が、対応する野生型遺伝子と比較して、変異体MDR-1遺伝子の変化した発現をもたらすような、分子変異体MDR-1遺伝子のポリヌクレオチドに関連する。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばDNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、または合成によって産生されたDNAもしくはRNA、またはこれらのうち任意のヌクレオチドを単独でもしくは組合せで含む、組換えにより産生したキメラ核酸分子が可能である。好ましくは該ポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドを含む、遺伝学的な操作に従来使用されるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージの一部である。そのようなベクターはさらに、適した宿主細胞および適切な条件下において該ベクターを選択させるマーカー遺伝子のような遺伝子を含む可能性がある。
【0036】
本発明のベクターのさらに好ましい態様において、本発明のポリヌクレオチドは、原核細胞または真核細胞における発現をさせる発現制御配列に、有効に連結される。ポリヌクレオチドの発現はポリヌクレオチドの転写、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を保証する制御因子は、当業者によく知られている。それらは通常、転写開始を保証する制御配列、および任意に、転写終結および転写の安定化を保証するポリAシグナルを含む。付加的な制御因子は転写エンハンサーおよび翻訳エンハンサーを含み得る。原核宿主細胞における発現を許容する可能な制御因子は、例えば、大腸菌におけるlac、trpまたはtacプロモーターを含み、真核宿主細胞における発現を許容する制御因子の例は、酵母におけるAOX1またはGAL1プロモーター、またはCMV、SV40、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、または哺乳動物細胞および他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。転写開始を担う因子に加えて、そのような制御因子は、ポリヌクレオチドの下流に、SV40ポリA部位またはtkポリA部位のような転写終結シグナルをも含み得る。この状況において、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)のような、適切な発現ベクターが、当技術分野において既知である。好ましくは、該ベクターは発現ベクターおよび/または遺伝子転移ベクターもしくはターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスのようなウイルスに由来する発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターの標的細胞集団への導入に使用できる。組換えウイルスベクターを構築するため、当業者に既知の方法が使用できる;例えば、サムブルック(Sambrook)、「分子クローニング実験マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)」Cold Spring Harbor Laboratory(1989) N.Y.および、オースベル(Ausubel)、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1994)に説明される技術を参照のこと。または、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への運搬のためリポソームへ再構成することができる。
【0037】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを用いて形質転換した宿主細胞に関連する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞が可能である;上記を参照のこと。宿主細胞において存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを、宿主細胞のゲノムへ組み込むか、または染色体外に維持することができる。この点において、本発明の組換えDNA分子を「遺伝子ターゲティング」および/または「遺伝子置換」のために、突然変異遺伝子の回復または、相同組換えを介した突然変異遺伝子の作製のために使用できることもまた理解される;例えばモウリック(Mouellic, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 87(1990), 4712〜4716);ジョイナー(Joyner)、「遺伝子ターゲティング、実践アプローチ(Gene Targeting, A Practical Approach)」Oxford University Pressを参照のこと。
【0038】
宿主細胞としては、バクテリア、昆虫、真菌類、植物、動物またはヒトの細胞のような、任意の原核細胞または真核細胞が可能である。好ましい真菌類細胞は、例えば、サッカロミセス属の細胞、特にS.cerevisiae種の細胞である。「原核」という用語は、変異体MDR-1タンパク質またはその断片の発現のために、ポリヌクレオチドを用いて形質転換またはトランスフェクションできる全てのバクテリアを含むことを意味する。原核宿主はグラム陰性バクテリアおよびグラム陽性バクテリア、例えば大腸菌、チフス菌(S.typhimurium)、セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)および枯草菌(Bacillus subtilis)等を含み得る。MDR-1変異タンパク質の突然変異形態をコードするポリヌクレオチドを、当業者に一般に知られた任意の技術を用いた宿主の形質転換またはトランスフェクションに使用できる。融合した、使用可能なように連結した遺伝子を調製する方法、およびそれらをバクテリア細胞または動物細胞において発現する方法は当技術分野にて既知である(Sambrook、上記)。そこで説明される遺伝的構築物および方法は、例えば原核細胞宿主における変異体MDR-1タンパク質の発現に利用できる。一般に、挿入されたポリヌクレオチドの十分な転写を容易にする、プロモーター配列を含む発現ベクターが、宿主に関連して使用される。発現ベクターは概して、複製起点、プロモーターおよびターミネーター、および形質転換した細胞の表現型による選抜を提供できる特定の遺伝子を含む。最適な細胞成長を達成するため、形質転換した原核宿主は培養槽において増殖でき、当技術分野にて既知の技術に従って培養できる。本発明のタンパク質はその後、成長培地、細胞抽出物、または細胞膜分画から単離できる。微生物を用いてまたは別の方法で発現した本発明のポリペプチドの単離および精製は、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用に関わるもののような、分離用クロマトグラフィーおよび免疫学的分離等の、任意の従来法によって行うことが可能である。
【0039】
ゆえに、さらなる態様において本発明は、上記に定義されるような、タンパク質を発現させるような条件下での宿主細胞の培養、および産生されたタンパク質または断片の培養からの回収を含む、変異体MDR-1タンパク質およびその断片を産生する方法に関連する。
【0040】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはベクターを用いて遺伝学的に操作した細胞を含む、変異体MDR-1遺伝子を発現できる細胞を産生する方法に関連する。本発明の方法によって得られる細胞は、例えばD.L.スペクター(Spector)、R.D.ゴールドマン(Goldman)、L.A.リーンワンド(Leinwand)の「細胞、実験マニュアル(Cells, a Lab manual)」CSH Press 1998に説明される方法に従って薬物を試験するために使用できる。さらに、既知の薬物およびその未知の誘導体を、MDR-1遺伝子の突然変異によって生じる薬物輸送欠損を相補する能力について研究するために、この細胞を使用できる。これらの態様については、宿主細胞は好ましくは野生型対立遺伝子を、好ましくはMDR-1遺伝子の両方の対立遺伝子を欠いており、および/または、少なくとも1つのその突然変異したものを有している。または、正常な対立遺伝子を超えた突然変異対立遺伝子の強度の過剰発現、および正常な対立遺伝子を同様のレベルで過剰発現する組換え細胞系列との比較は、スクリーニング系および解析系として使用できる。上記に説明する方法によって得られる細胞は、本明細書の以下に言及するスクリーニング法のために使用することもできる。
【0041】
さらに、本発明は本発明によるポリヌクレオチドにコードされる、または上述の方法により得られる、または上述の方法によって産生される細胞からの、変異体MDR-1タンパク質またはその断片に関連する。この状況において、本発明による変異体MDR-1タンパク質は、当技術分野において既知の従来法によってさらに改変され得ることもまた理解される。本発明による変異体MDR-1タンパク質の提供により、それらの生物学的活性またはその阻害、即ちそれらの薬物輸送活性に関連する部分を決定することもまた可能である。
【0042】
本発明はさらに、本発明による変異体MDR-1タンパク質を特異的に認識する抗体に関連する。好都合にも、この抗体は上記に定義される一つ又は複数のアミノ酸置換を含むエピトープを特異的に認識する。
【0043】
本発明の変異体MDR-1タンパク質に対する抗体は、精製した本発明によるタンパク質またはそれに由来する(合成による)断片を抗原として用いた既知の方法により調製できる。例えば、コフラー(Kohler)およびミルシュタイン(Milstein)、Nature 256(1975), 495にて、またガルフル(Galfre)、Meth.Enzymol. 73(1981), 3にて最初に説明された、免疫化した哺乳動物に由来する脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞との融合を含む技術により、モノクローナル抗体が調製できる。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または合成抗体、またFab、Fv、またはscFv断片等のような抗体断片が可能である。さらに、前記のポリペプチドに対する抗体またはその断片は、例えば、ハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)の「抗体、実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」,CHS Press, Cold Spring Harbor, 1988にて説明される方法の使用により得られる。これらの抗体は例えば、本発明の変異体MDR-1タンパク質の免疫沈降法および免疫学的局在決定に、また例えば組換え生物における、そのような変異体MDR-1タンパク質の存在のモニタリングに、および本発明によるタンパク質と相互作用する化合物の同定に使用できる。例えば、BIAコアシステムにて利用されるような表面プラズモン共鳴は、本発明のタンパク質のエピトープに結合するファージ抗体の効率を増加するために用いることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7(1996), 97〜105;Malmborg, J.Immunol.Methods 183(1995), 7〜13)。
【0044】
さらに、本発明は、上述の任意のポリヌクレオチドまたはその一部の相補鎖を表すまたは含む、ゆえに、上述のヌクレオチド置換、欠失および付加により特定される、対応する野生型MDR-1遺伝子のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1つのヌクレオチドの相違を含む核酸分子に関連する。デオキシリボ核酸またはリボ核酸のいずれかがそのような分子でありうる。そのような分子は例えば、アンチセンスRNAを含む。これらの分子はさらに、転写されたときに、本発明によるポリヌクレオチドの転写産物を特異的に切断するリボザイムを産生するような、リボザイムをコードする配列に連結することが可能である。
【0045】
さらに、本発明は、本発明による核酸分子を含むベクターに関連する。そのようなベクターの例は上記にて説明される。好ましくは、ベクター中に存在する核酸分子は、原核宿主細胞または真核宿主細胞において発現させる制御因子に操作的に連結される;上記を参照のこと。
【0046】
本発明はまた、生殖細胞、胚細胞、幹細胞または卵、またはそこから由来する細胞への本発明のポリヌクレオチドまたはベクターの導入を含む、トランスジェニック非ヒト動物、好ましくはトランスジェニックマウスの産生方法に関連する。非ヒト動物は以下に説明される本発明の方法に従って使用でき、非トランスジェニック健常動物であること、または疾病、好ましくはMDR-1遺伝子における少なくとも1つの突然変異によって生じる疾病を有することが可能である。そのようなトランスジェニック動物は、それらのタンパク質または少なくともそれらの機能的ドメインは高等真核生物種間、特に哺乳動物間においては保存されているため、例えば上述の変異体MDR-1タンパク質の変異形態に関連する、薬物の薬理学的研究に非常に適している。トランスジェニック胚の産生およびそれらのスクリーニングは、例えばA.L.ジョイナー(Joyner)編、「遺伝子ターゲティング、実践アプローチ(Gene Targeting, A Practical Approach)」(1993), Oxford University Pressにて説明されるように実施できる。胚のDNAは例えば適切なプローブを用いたサザンブロット法を使用して解析できる。
【0047】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む、または上述の方法により得られる、好ましくは該ポリヌクレオチドまたはベクターが安定して上記非ヒト動物のゲノムに組み込まれる、好ましくは該ポリヌクレオチドまたはベクターの存在が本発明の変異体MDR-1タンパク質の発現を導くような、トランスジェニックマウス、ラット、ハムスター、イヌ、サル、ウサギ、ブタ、線虫およびシビレエイ等の魚類のようなトランスジェニック非ヒト動物にも関連する。この動物は、変異体MDR-1遺伝子の同じまたは異なるポリヌクレオチドの1つまたはそれ以上のコピーをもち得る。この動物は、多剤耐性のための研究モデルとしての有益性を含む、多大な有益性をもち、ゆえに、細胞内の薬物貯留の欠損または不全によって生じる疾患の療法、治療等の開発において新規のかつ価値のある動物を与える。したがって、この場合は、哺乳動物は好ましくはマウスまたはラットのような実験動物である。
【0048】
好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト動物はさらに、少なくとも1つのMDR-1遺伝子の不活性化野生型対立遺伝子を含む。この態様は、例えばMDR-1タンパク質の様々な変異形態の相互作用の研究を可能にする。トランスジェニック動物の成長および/または一生のある段階において、MDR-1遺伝子の発現または機能を不活性化することが望ましい可能性もある。例えば、MDR-1遺伝子のRNA転写産物に対する例えばアンチセンスまたはリボザイムの発現を促進させる、組織特異的な、発生上の、および/または細胞制御された、および/または誘導可能なプロモーターの使用により、これが達成されうる。同様に上記も参照のこと。適切な誘導可能な系は、例えば、ゴッセン(Gossen)およびビュヤード(Bujard)Proc.Natl.Acad.Sci. 89 USA(1992), 5547〜5551、およびゴッセン(Gossen)ら, Trends Biotech. 12(1994), 58〜62によって説明されたような、テトラサイクリン制御の遺伝子発現である。同様に、変異体MDR-1遺伝子の発現は、そのような制御因子により制御できる。
【0049】
本発明の変異体MDR-1ポリヌクレオチドおよびタンパク質およびベクターを用い、インビボまたはインビトロにおいて、患者のMDR-1遺伝子における特定の突然変異および影響を受けた表現型に関して、薬物の効能についての研究を行うことが現在可能である。さらに、本発明の変異体MDR-1タンパク質は、薬物の薬理学的プロフィールの決定に、および、例えば癌の治療についてより有効性の高い可能性のあるさらなる薬物の同定および調製に、特に上述のもののような、各々の突然変異によって生じるある種の表現型の改善に使用できる。
【0050】
ゆえに、本発明の特別な目的は、治療を受けるべき患者の、影響を受けた表現型と共分離するMDR-1遺伝子の変異形態の多型を考慮した、化学療法が効果的な疾患の治療のための、薬物/プロドラッグの選択および薬学的組成物の製剤に関わる。これにより、例えば、患者の一部におけるそれらの副作用および/または、疾患の同じまたは異なる表現型に関するそれらの不確実な薬理学的プロフィールによって、例えば癌には適当ではないと従来考えられていた安全かつ安価な薬物の適用がなされる。本明細書にて説明される方法および手段は、例えば推奨用量の改善に使用でき、また考慮される患者群に依存する必要投与量の調整を処方者に予想させる。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、以下の段階を含む、MDR-1遺伝子またはその遺伝子産物の分子変異の活性を調節できるMDR-1阻害剤を同定および獲得する方法に関連する:
(a)変異体MDR-1タンパク質または本発明のポリヌクレオチドを含む分子変異体MDR-1遺伝子を発現する細胞を、薬物輸送に応答して検出可能なシグナルを提供できる成分の存在下において、MDR-1媒介性薬物輸送をさせる条件下でスクリーニングされる化合物と接触させる段階;および
(b)シグナルの存在または増加が推定上の阻害剤について示唆するような、シグナルの有無、または薬物輸送により生み出されたシグナルの増加を検出する段階。
【0052】
本発明の方法における「化合物」という用語は、単独の物質、または同一となり得るまたはなり得ない、複数の物質を含む。
【0053】
上記化合物は、化学的に合成されうる、または微生物発酵を介して産生されうるが、また、例えば植物、動物または微生物由来の、例えば細胞抽出物のような試料にも含まれ得る。さらに、該化合物は当技術分野において既知の可能性があるが、各々阻害剤として有用であることは従来知られていない可能性がある。複数の化合物を、例えば培養培地に加えることができ、または本発明の細胞もしくは非ヒト動物に注射することができる。
【0054】
化合物を含む試料が本発明の方法において同定される場合、その後、化合物を含むと同定された元の当該試料から化合物を単離すること、または、例えば複数の異なる化合物を含む場合、試料当たりの異なる物質数を減少するために、元の試料をさらに小分別し、元の試料の小分別を用いた方法を繰り返すことのいずれかが可能である。その後、例えば本明細書または文献(Spectorら, 「細胞マニュアル(Cells manual)」;上記を参照のこと)にて説明される方法により、該試料または化合物が望ましい特性を示すかどうかを決定することができる。試料の複雑性によって、上述の段階を数回、好ましくは本発明の方法に従って同定された試料が限られた数のまたは唯一の物質のみを含むまで、実施することができる。好ましくは上記試料は、同様の化学的および/または物理的特性の物質を含み、最も好ましくは該物質は同一である。本発明の方法は、例えば先行技術において説明される他の細胞に基づいたアッセイ法に従って、または本明細書にて説明される方法の使用および改変により、当業者により容易に実施およびデザインできる。さらに、本発明の方法を実施するために、例えば必要に応じてある種の化合物をMDR-1タンパク質の基質となる前駆体に引き続き転換する酵素のように、さらなるどの化合物および/またはどの酵素が使用できるかということを、当業者は容易に認識すると考えられる。本発明の方法のそのような適用は十分当業者の技術内にあり、不適当な実験を用いずに実施できるものである。
【0055】
本発明に従って使用されうる化合物はペプチド、タンパク質、核酸、抗体、小有機化合物、リガンド、ペプチド模倣物、PNAなどを含む。化合物は、ベラパミルまたはシクロスポリンのような既知の薬物の機能的誘導体または類似体であることも可能である。化学的誘導体および類似体の調製方法は当業者には既知であり、例えばベイルステイン(Beilstein)、「有機化学ハンドブック(Handbook of Organic Chemistry)」Springer edition New York Inc., 175 Fifth Avenue, New York, N.Y. 10010 U.S.A.、および「有機合成(Organic Synthesis)」ウィリー(Wiley)New York, USAにて説明されている。さらに、誘導体および類似体を、当技術分野において既知の、または説明されたような方法に従い、その効果について試験することができる。さらに、例えば、以下に説明される方法に従い、ペプチド模倣物および/または適切な薬物誘導体および類似体のコンピューター支援のデザインが使用できる。そのような類似体は、基礎として既知のMDR基質および/または阻害剤および/または調節剤の構造を有する分子を含む;以下を参照のこと。
【0056】
相補的な構造モチーフのコンピューター支援探索による、推定上の阻害剤と本発明のMDR-1タンパク質の相互作用部位の同定のために、適切なコンピュータープログラムを使用できる(Fassina, Immunomethods 5 (1994), 114〜120)。タンパク質およびペプチドのコンピューター支援の設計のための、さらなる適切なコンピューターシステムは、例えばベリー(Berry)、Biochem.Soc.Trans. 22(1994), 1033〜1036;ウォダック(Wodak)、Ann.N.Y.Acad.Sci. 501(1987), 1〜13);パド(Pado)、Biochemistry 25(1986), 5987〜5991のような、先行技術に説明されている。上述のコンピューター解析から得られる結果は、例えば既知の阻害剤の最適化のために、本発明の方法と組合わせて使用できる。適切なペプチド模倣物および他の阻害剤もまた、例えば本明細書にて説明される方法に従う、連続した化学的改変およびその結果生じた化合物の試験によって、ペプチド模倣物コンビナトリアルライブラリを合成することにより同定できる。ペプチド模倣物コンビナトリアルライブラリの作製および使用の方法は、例えばオストレシュ(Ostresh)、Methods in Enzymology 267(1996), 220〜234、およびドーナー(Dorner)、Bioorg.Med.Chem.4(1996), 709〜715のような先行技術にて説明される。さらに、本発明の阻害剤およびMDR-1タンパク質の三次元および/または結晶構造は、ペプチド模倣物薬物の設計に使用できる(Rose, Biochemistry 35(1996), 12933〜12944;Rutenber, Bioorg.Med.Chem. 4(1996), 1545〜1558)。
【0057】
要約すると、本発明は、例えば、しばしば薬物耐性または感受性のある表現型に帰結する、MDR-1遺伝子の多機能により化学療法が複雑化する癌のような、疾患の特殊な形態の治療のために、特定の投与量において使用できる化合物を同定および獲得する方法を提供する。
【0058】
本発明の方法の好ましい態様において、上記の細胞は本発明の細胞、または本発明の方法によって得られる細胞である、または上述のトランスジェニック非ヒト動物に含まれるものである。
【0059】
さらなる態様において本発明は、以下の段階を含む、MDR-1遺伝子またはその遺伝子産物の分子変異の活性を調節できるMDR-1阻害剤の同定および獲得の方法に関する:
(a)本発明の変異体MDR-1タンパク質を、MDR-1タンパク質により結合されることが知られる第一の分子に接触させ、該タンパク質および該第一の分子の第一の複合体を形成する段階;
(b)該第一の複合体をスクリーニングされる化合物と接触させる段階;および
(c)該化合物が該第一の分子を該第一化合物から置換するかどうかを測定する段階。
【0060】
好都合なことに、上記方法における上記測定段階は、上記タンパク質および上記阻害剤候補との第二の複合体の形成の測定を含む。好ましくは、該測定段階は該タンパク質に結合しない上記第一の分子の量の測定を含む。
【0061】
上述の方法の特に好ましい態様において、上記第一の分子は、ベラパミル、バルスポダル、シクロスポリンAまたはデクスニグルジピンである。さらに、本発明の方法において該第一の分子は、例えば放射線標識または蛍光標識を用いて標識されることが好ましい。
【0062】
よりさらなる態様において本発明は、以下の段階を含む、分子変異体MDR-1遺伝子の存在に関連する疾病、またはそのような疾病への感受性の診断方法に関連する:
(a)被験者からの試料における本発明のポリヌクレオチドの存在を決定する段階;および/または
(b)例えば本発明の抗体を用いて、MDR-1タンパク質の変異形態の存在を決定する段階。
【0063】
本発明のこの態様に従い、疾病またはそのような疾病への感受性の状態を試験する方法は、例えばサザンブロット法またはノーザンブロット法またはインサイチュー解析の形態において、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸分子の使用により達成され得る。上記核酸配列はいずれかの遺伝子のコード領域または非コード領域、例えばイントロンにハイブリダイズできる。本発明の方法において相補的配列が使用される場合、該核酸分子はノーザンブロット法において再度使用できる。さらに該試験は、例えば遺伝子の転写の実際の遮断と共に行うことができ、ゆえに治療上の関連性をもつことが期待される。さらに、プライマーまたはオリゴヌクレオチドも上述のMDR-1遺伝子または対応するmRNAの1つへのハイブリダイゼーションに使用できる。ハイブリダイゼーションに使用される核酸は、当然、例えば放射性マーカーまたは他のマーカーを取りこむまたは付着することにより好都合に標識され得る。そのようなマーカーは当技術分野において既知である。核酸分子の標識は従来法により達成できる。さらに、変異体MDR-1遺伝子の存在または発現は、対応する核酸配列のいずれかに特異的にハイブリダイズするプライマー対の使用により、および標準的な手順に従ったPCR反応の実行により試験できる。上述のプローブまたはプライマーの特異的なハイブリダイゼーションは、好ましくはストリンジェントハイブリダイゼーション条件にて生じる。「ストリンジェントハイブリダイゼーション条件」という用語は当技術分野にてよく知られている;例えばサムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」第2版, CHS Press, Cold Spring Harbor , 1989;「核酸ハイブリダイゼーション、実践アプローチ(Nucleic Acid Hybridisation, A Practical Approach)」ハムス(Hames)およびヒギンズ(Higgins)編, IRL Press, Oxford, 1985を参照のこと。さらに、被験者から得られたmRNA、cRNA、cDNAまたはゲノムDNAは、MDR-1遺伝子の突然変異特有のフィンガープリントとなり得る突然変異を同定するために配列決定できる。本発明はさらに、被験者から得られたDNAまたはRNAのRFLPによってそのようなフィンガープリントを検出できる可能性があり、当技術分野において既知の方法を用いる分析に先立って、DNAまたはRNAを任意に増幅できるような方法を含む。RNAフィンガープリントは、例えば、適切なRNA酵素、例えばリボヌクレアーゼT1、またはリボヌクレアーゼT2などまたはリボザイムを用いて被験者から得られたRNA試料を切断すること、および、例えば上述のように、RNA断片の電気泳動による分離および検出を行うことにより実行できる。
【0064】
本発明の上述の態様のさらなる改変は、この開示から、いかなる不適当な実験もなく、当業者により容易に案出できる;例えば実施例を参照のこと。本発明の付加的な態様は、本発明の抗体またはその断片の使用により上記決定が達成されるような方法に関連する。本発明の方法にて使用される抗体は、ヒスチジンフラッグまたはビオチン分子のような、検出可能なタグを用いて標識することができる。
【0065】
本発明の好ましい態様において、上記に説明した方法はPCR、リガーゼ連鎖反応、制限酵素切断、直接配列決定、核酸増幅技術、ハイブリダイゼーション技術または免疫測定法(Sambrookら、上記引用文中「CSHクローニング(CSH cloning)」、HarlowおよびLane 上記引用文中「CSH抗体(CSH antibodies)」を含む。
【0066】
本発明の方法の好ましい態様において、上記疾病は癌である。
【0067】
上述の方法のさらなる態様において、本発明の方法のあらゆる適用に従うMDR-1遺伝子における上記変異をなくすまたは軽減するため、被験者への薬物の投与を含むさらなる段階は、MDR-1遺伝子により生じる表現型反応による臨床徴候の発症以前に、所定の疾患の治療を成立させる。
【0068】
本発明の方法の好ましい態様において、上記薬物はアドリアマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)および他のMDR基質のような化学療法薬である。アンブドカー(Ambudkar SV)ら、Annu.Rev.Pharmacol. Toxicol. 39(1999), 361〜398。
【0069】
上述の方法のもう一つの好ましい態様において、該方法はさらに
(i)機能的および発現可能な野生型MDR-1遺伝子;または
(ii)本発明の核酸分子またはベクターを
細胞へ導入する段階を含む。
【0070】
本状況において、および本明細書を通して使用されるように、「機能的」MDR-1遺伝子とは、コードされるタンパク質が野生型MDR-1タンパク質の一次構造コンフォメーションの一部または全部をもつ、即ち膜を通した薬物輸送を仲介する生物学的特性を有するような遺伝子を意味する。本発明のこの態様は、特にヒトにおける、癌、炎症疾患、ニューロン疾患、CNS(中枢神経系)疾患または循環器病の治療に適している。変異体MDR-1遺伝子の発現の検出は、該発現が疾患の対応する表現型の発生または維持と相関するという結論を成立させると考えられる。したがって、発現レベルを低レベルにまで下げるため、またはそれをなくすため、ある段階が適用される。これは、例えば、リボザイム、アンチセンス核酸分子、細胞内抗体または上述の、これらのMDR-1タンパク質の変異形態に対する阻害剤の使用によるような、生物学的方法による、突然変異遺伝子の発現の少なくとも部分的な除去により行うことができる。さらに、対応する突然変異タンパク質および遺伝子の発現レベルを下げる製剤が開発できる。
【0071】
さらなる態様において本発明は、上述の方法の任意の1つの段階を含み、段階(b)において同定される化合物またはその誘導体または類似体を、薬学的に許容される形態に合成および/または製剤化するような、薬学的組成物を産生する方法に関連する。本発明の方法に従って同定される治療に有用な化合物は、上記にて議論されるように製剤、および患者への投与をすることができる。当業者により適切であると決定される使用および治療用量については以下を参照のこと。
【0072】
さらに、本発明は上述の方法の段階を含む、薬学的組成物の調製;および薬物またはプロドラッグの治療的適用に適した形態での製剤および、本発明の方法において診断された被験者における疾病の予防または改善の方法に関連する。
【0073】
薬物またはプロドラッグはそれらのインビボにおける投与後、排出または代謝のいずれかにより排除されるために、一つ又は複数の活性または不活性代謝産物へ代謝される(Meyer, J. Pharmacokinet.Biopharm. 24(1996), 449〜459)。ゆえに、本発明の方法に従って同定および獲得された実際の化合物または阻害剤を使用する以外に、患者において活性型に転換される、対応するプロドラッグとしての製剤を用いることができる。プロドラッグおよび薬物の投与についてとられる可能性のある予防手段は、文献にて説明される;概観については、オザマ(Ozama)、J.Toxicol.Sci. 21(1996), 323〜329)を参照のこと。
【0074】
本発明の方法の好ましい態様において、上記薬物またはプロドラッグは、本明細書上文にて定義されるような薬物の誘導体である。
【0075】
なおさらなる態様において、本発明は、本明細書上文にて説明される方法により同定または獲得される阻害剤に関連する。好ましくは、阻害剤は本発明の変異体MDR-1タンパク質に特異的に結合する。本発明の抗体、核酸分子および阻害剤は好ましくは、天然のリガンドまたは本発明のMDR-1タンパク質の結合パートナーの結合特異性と少なくとも実質的に同一の特異性を有する。抗体または阻害剤は、本発明のMDR-1タンパク質に対し、少なくとも105 M-1の、好ましくは107 M-1より高い、および好都合には、MDR-1活性が抑制されるべき場合は1010 M-1までの結合親和性をもち得る。したがって、好ましい態様においては、本発明の抑制抗体または阻害剤は、少なくとも約10-7 Mの、好ましくは少なくとも約10-9 Mの、および最も好ましくは少なくとも約10-11 Mまでの親和性をもつ。
【0076】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドの検出のための、および/または対応する個々のMDR-1対立遺伝子の遺伝形質決定のための、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用に関連する。好ましくは、該オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、以前に説明された本発明のポリヌクレオチドまたは核酸分子である。
【0077】
特定の好ましい態様において、上記オリゴヌクレオチドは、約10ヌクレオチド長〜100ヌクレオチド長、より好ましくは15ヌクレオチド長〜50ヌクレオチド長であり、配列番号:1〜179、またはプロモーターの野生型(「wt」)または突然変異(「mut」)配列、または表8に表されるMDR-1遺伝子のエキソン、またはこれらの任意の1つの相補的配列の、任意の1つのヌクレオチド配列を含む。
【0078】
したがって、なおさらなる態様において、本発明は上記に定義されるようなオリゴヌクレオチドを含むプライマーまたはプローブに関連する。この状況において、「〜を含む」という用語は、上述の、および本発明のプライマーまたはプローブのために使用されるヌクレオチド配列が、その5'末端および/または3'末端にすぐ隣接したMDR-1遺伝子のさらなるヌクレオチド配列を全くもたないことを意味する。しかし、標識のような他の部分、例えばビオチン分子、ヒスチジンフラッグ、抗体断片、金コロイド等、またMDR-1遺伝子に対応しないヌクレオチド配列は、本発明のプライマーおよびプローブ中に存在できる。さらに、上述の特定のヌクレオチド配列を使用すること、およびそれらを、これらの付加的なヌクレオチド配列が核酸以外の部分と共に散在させられるような、または核酸がMDR-1遺伝子のヌクレオチド配列に対応しないような、MDR-1遺伝子に由来する他のヌクレオチド配列と組合せることも、また可能である。
【0079】
さらに、本発明は、本発明の変異体MDR-1タンパク質の検出、本発明のポリヌクレオチドを含む分子変異体MDR-1遺伝子の発現、および/または本発明のポリヌクレオチドを含むMDR-1対立遺伝子の識別のため、MDR-1遺伝子の遺伝子産物に特異的に結合できる抗体または物質の使用に関連する。
【0080】
さらに、本発明は、組成物、好ましくは本発明の抗体、核酸分子、ベクターまたは阻害剤、および薬学的に許容される担体を任意に含む薬学的組成物に関連する。例えば、阻害剤または薬学的に許容されるその塩類を含む、これらの薬学的組成物は、薬物投与に従来使用される任意の経路、例えば経口、局所的、腸管外、または吸入により、好都合に投与できる。許容できる塩類はアセテート、メチルエステル、HCl、スルフェート、および塩化物などを含む。化合物は、従来の手順に従い、薬物を標準の薬学的担体と組合せることにより調製される従来的な剤形にて投与できる。これらの手順は、望ましい調製物に適切な、成分の混合、顆粒化および圧縮または溶解に関わり得る。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および特性は、組合せられる活性成分の量、投与経路、および他の既知の変数により決定されることは理解されると考えられる。担体は製剤の他の成分と適合性があるという意味で、「許容される」ものでなければならず、そのレシピエントに対し有害であってはならない。使用される薬学的担体は、例えば、固体または液体のいずれかが可能である。固体担体の例は、ラクトース、カオリン、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸などが可能である。液体担体の例は、生理的リン酸緩衝液、シロップ、ピーナッツオイルおよびオリーブオイルのようなオイル、水、エマルジョン、様々な種類の湿潤剤、および滅菌溶液などである。同様に、担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような、当技術分野において既知の遅効性物質を、単独で、またはワックスと共に含み得る。
【0081】
用法は、主治医および他の臨床因子により決定され、好ましくは上述のいずれか一つの方法に従う。医学分野においてよく知られるように、ある患者のための用量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子に依存する。進行を定期的な評価によりモニタリングできる。
【0082】
さらに、RNAをコードする、本発明によるMDR-1遺伝子の突然変異型に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むような、または突然変異体MDR-1タンパク質を特異的に認識するが、機能的な野生型は認識しないもしくは実質的に認識しない抗体を含むような、薬学的組成物の使用は、細胞における突然変異型の濃度を減少させるべきである場合に考えられる。
【0083】
本発明により、本発明に従い、特定の薬物の選択、用法および対応する治療されるべき患者を決定することができる。誤った薬物が誤った患者に対して誤った投与量で処方されることを回避するような情報と共に、考慮される患者群に依存する投与量の調整を処方者に予想させるように、推奨用量は製品のラベルにて示される。
【0084】
さらに本発明は、先に説明された本発明のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、変異体MDR-1タンパク質、抗体、阻害剤、核酸分子または対応するベクターのうちいずれか一つ、および適した検出方法を任意に含む、診断的組成物または診断キットに関連する。本発明のキットは、選択マーカーならびに、トランスジェニック細胞およびトランスジェニック動物の作製に適した選択培地の成分のような材料を更に含み得る。本発明のキットを本発明の方法の実施のために好都合に使用でき、特に、例えば診断分野のような様々な適用において、または研究手段として、使用できる。本発明のキットの一部はバイアルに個包装でき、または容器もしくは複数容器単位中にて組合せることができる。キットの製造は好ましくは、当業者に既知の標準の手順に従う。キットまたは診断的組成物は、例えば放射性免疫測定法もしくは酵素免疫測定法のような免疫測定法、または好ましくは、本明細書上記および実施例にて説明されるような核酸ハイブリダイゼーションおよび/または核酸増幅技術を使用する、上述の本発明の方法のいずれか一つに従い、MDR-1遺伝子の突然変異形態の発現の検出法に使用できる。
【0085】
いくつかの遺伝的変化は、変化したタンパク質のコンフォメーション状態を変化させる。例えば、ある変異体MDR-1タンパク質は、薬物輸送の促進能力を大きく低下させる三次構造を有する。突然変異タンパク質の正常な、または制御されたコンフォメーションを回復することは、困難ではあるが、これらの分子欠損を修正するのに非常に的確かつ特異的な方法である。ゆえに薬理学的操作においては、タンパク質の野生型のコンフォメーションの回復を目指すことができる。そのため、本発明のポリヌクレオチドおよびコードされるタンパク質は、MDR-1遺伝子またはタンパク質の野生型の機能を活性化できる分子を設計および/または同定するために使用することもできる。
【0086】
その他の態様において、本発明は本明細書で前述した方法により診断される疾病の治療または予防のための、薬学的組成物の調製のための薬物またはプロドラッグの使用に関連する。
【0087】
さらに、本発明は、本発明の方法により診断される疾病を治療、予防および/または遅延する薬学的組成物を調製するための、機能的および発現可能な野生型MDR-1タンパク質をコードする核酸配列の有効用量の使用に関連する。機能的および発現可能なMDR-1タンパク質をコードする遺伝子は細胞に導入され、関心対象のタンパク質が産生されうる。エクスビボ法またはインビボ法における治療遺伝子の細胞への導入に基づく遺伝子治療は、遺伝子転移の最も重要な適用の1つである。インビトロまたはインビボの遺伝子治療に適したベクターおよび方法は、文献にて説明されており、当業者には既知である;例えば、ジョルダーノ(Giordano), Nature Medicine 2(1996), 534〜539;シェイパー(Schaper), Circ.Res.79(1996), 911〜919;アンダーソン(Anderson), Science 256(1992), 808〜813;イスナー(Isner), Lancet 348(1996), 370〜374;ムルホーサー(Muhlhauser), Circ.Res.77(1995), 1077〜1086;ワン(Wang), Nature Medicine 2(1996), 714〜716;国際公開公報第94/29469号; 国際公開公報第97/00957号またはシェイパー(Schaper), Current Opinion in Biotechnology 7(1996), 635〜640、およびそこに引用される文献を参照のこと。遺伝子は細胞への直接導入、またはリポソームもしくはウイルスベクター(例えばアデノウイルス、レトロウイルス)を介した細胞への導入のために設計できる。好ましくは、該細胞は生殖系列細胞、胚細胞、または卵細胞もしくはそれらに由来するものであり、最も好ましくは、該細胞は幹細胞である。
【0088】
上記から明らかなように、本発明の使用において、特定の細胞に対しMDR-1タンパク質を発現および/またはターゲティングさせる制御因子に核酸配列が操作的に連結されることが好ましい。本発明に従って使用できる、適した遺伝子導入系は、リポソーム、受容体介在の導入系、裸のDNA、ならびにヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス、その他のウイルスベクターを含み得る。遺伝子治療のための、身体の特定部位への核酸の導入は、ウイリアムス(Williams)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991), 2726〜2729)により説明されたようなバイオリスティック導入系を使用して達成することもできる。組換えDNAにより細胞をトランスフェクションする標準法は、分子生物学の当業者には既知である。例えば、国際公開公報第94/29469号;上記も参照のこと。遺伝子治療は、本発明の組換えDNA分子もしくはベクターの患者への直接投与により、または本発明のポリヌクレオチドもしくはベクターによりエクスビボで細胞をトランスフェクションすることにより、およびトランスフェクションされた細胞を患者に注入することにより実施できる。
【0089】
本発明の使用および方法の好ましい態様において、上記疾病は癌またはニューロン疾患、CNS疾患または循環器病である。
【0090】
実施例6および8にて示されるように、本発明に従って同定される多型、特にMDR-1遺伝子のエキソン26における単一ヌクレオチド多型(SNP) C3435Tは、薬物の安全性および効能の改善のため、即ち、副作用および薬物相互作用を予測および予防するため、ならびに患者の服薬遵守を増加させるため、多様なMDR-1基質および誘導物質の血中濃度の予測を可能にする薬理遺伝学的因子として有用である。そのような基質および誘導物質は、例えば、フェニトインのような抗けいれん薬/抗てんかん薬;ジゴキシンのような強心配糖体;シクロスポリンAおよびFK506のような免疫抑制薬;クラリスロマイシンおよびエリスロマイシンのようなマクロライド系抗生物質;およびリファンピン(Rifampin)のような大環状抗生物質である。ゆえに、本発明は上述のSNPの上記に従った薬理遺伝学的因子としての使用にも関連する。好ましくは多型は、単独または上述のような任意の他のSNPと組み合わせた、MDR-1エキソン26(C3435T)SNPである。
【0091】
本発明に従って同定される多型ならびに、上述の態様に従って使用できる方法および手段のさらなる適用は、例えば、そこで説明される法医学、親子鑑定、表現型形質と多型との相関、表現型形質の遺伝子地図作製等の方法および手段が本発明に従って等しく適用できる、米国特許第A-5,856,104号にて説明されるような先行技術に見出すことができる。
【0092】
これらのおよび他の態様は、本発明の説明および実施例により開示され、または明らかであり、含まれる。本発明に従って使用される方法、用途および化合物のいずれか一つに関わるさらなる文献は、例えば電子デバイスを用いて公共のライブラリから検索できる。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.html.のような、インターネット上で利用可能な公共データベース「Medline」が使用できる。さらなるデータベースおよびアドレス、例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/、http://www.infobiogen.fr/、http://www.fmi.ch/biology/research_tools.html、http://www.tigr.org./が当業者に知られており、また例えばhttp://www.lycos.com.を使用して得ることもできる。バイオテクノロジーにおける特許情報の概観ならびに、遡及的探索および最新の知見の認識に有用な特許の関連情報源の通覧は、バークス(Berks),TIBTECH 12(1994), 352〜364により与えられている。
【0093】
本発明の薬学的組成物および診断的組成物、使用、方法は、これまで変異体MDR-1遺伝子に関連するまたは依存することが知られていない、あらゆる種類の疾患の診断および治療に使用できる。本発明の組成物、方法および使用は、ヒトにおいて望ましく使用することができるが一方、本明細書にて説明される方法および使用には動物の治療もまた含まれる。
【0094】
単なる説明のために役立ちかつ本発明の範囲を制限すると解釈されない、以下の生物学的実施例に関して、本発明を説明する。
【実施例】
【0095】
実施例1:ヒト血液からのゲノムDNAの単離、MDR-1遺伝子断片の作製および精製
ゲノムDNAは標準イオン交換クロマトグラフィー技術(血液からゲノムDNAを単離するためのQiagen社のキット)により得られた。試験された全ての個体(ベルリンChariteeの薬理学部からのボランティア)からの血液を、あらゆる法的、倫理的および医学的および、ドイツ、ベルリンのチャリティークリニカム(Charitee Clinicum)の手続き上の要件を考慮して得た。
【0096】
ヒトMDR-1遺伝子の特異的な部分を含む限定されたDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得るため、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを各断片について2つ適用した。これらの特異的なオリゴヌクレオチドプライマーは、MDR-1遺伝子の様々なエキソンの上流および下流の配列に結合するように設計された。その結果生じるDNA断片は、エキソン-イントロンの境界において、エキソン配列のみならず、あるイントロン配列をもコードするものであった。エキソン近傍のそのようなイントロン配列は、「スプライシング」として知られる過程である、正しいプロセシングおよび、それに続くタンパク質をコードするmRNAの発現に重要であることが知られている。オリゴヌクレオチドプライマー対は、ヒトMDR-1遺伝子の28エキソン各々について最適化され、合成され、およびアフィニティークロマトグラフィー(OPC cartridges)により精製された。各プライマーの配列は表1に列挙される。
【0097】
ポリメラーゼ連鎖反応はヒトMDR-1遺伝子の28エキソン、またコアプロモーターおよびエンハンサー領域を含む断片の各々について最適化された条件下にて実施した。PCRは25μlの反応容量で全てのエキソンについて実施した。50 ngのDNA鋳型を1.5 mMのMgCl2(Qiagen, Hilden)、50 μMのdNTP(Qiagen, Hilden)、25 pMolの各プライマー(Metabion, Munich)および0.625 UのTaqポリメラーゼ(Qiagen, Hilden)を含む、標準PCR緩衝液に加えた。全てのPCRは、パーキンエルマー サーモサイクラー(モデル9700)にて実施し、94℃で2分間の最初の変性段階、そして、94℃で45秒間の変性、プライマーの融解温度(PCR条件:A〜H)に依存する45秒間のプライマーアニーリング、および72℃で45秒間からなる増幅サイクルを36回行い、続いて72℃で5分間の最終伸長を行った。個々のPCR条件A〜Hについては、以下のアニーリング温度を適用した:A:53℃;B:56℃;C:55℃;D:57.5℃;E:58℃;F:59℃;G:54℃;H:60℃。
【0098】
PCRは50μlの反応容量で全ての断片(プロモーターおよびエンハンサー)について実施した。1.5 mM のMgCl2(Qiagen, Hilden)、200μMのdNTP(Qiagen, Hilden)、30 pMolの各プライマー(Metabion, Munich;例外:エンハンサー断片1については20 pMol)および1 UのTaqポリメラーゼ(Qiagen, Hilden)を含む標準PCR緩衝液に、50 ngのDNA鋳型(例外:プロモーター断片1〜3については100 ng)を加えた。全てのPCRはパーキンエルマー サーモサイクラー(モデル9700)にて実施し、94℃で3分間の最初の変性段階、その後94℃で30秒間の変性、プライマーの融解温度(PCR条件:AおよびB)に依存する30秒間のプライマーアニーリングおよび72℃で30秒間からなる増幅サイクルを異なる回数(プロモーター断片2+4およびエンハンサー断片1については30サイクル;プロモーター断片3については31サイクル;プロモーター断片1およびエンハンサー断片2については32サイクル)行い、続いて72℃で2分間の最後の伸長反応を行った。個々のPCR条件AおよびBについて、以下のアニーリング温度を適用した:A:58℃;B:56℃。
【0099】
最適化したPCR条件ならびに、望ましい断片および得られた断片の大きさを表1に列挙する。個々の遺伝子型のさらなる解析に使用された、結果として得られたMDR-1遺伝子断片の例を表1に示す。
【0100】
続いて行う直接DNA配列決定による個々のMDR-1遺伝子型の決定を阻害する可能性のある、取りこまれなかったヌクレオチドおよび緩衝液成分を除去するため、ヒトMDR-1遺伝子の特異的な部分、エキソン配列、およびエキソン-イントロンの境界にある幾つかのイントロン配列を含む、限定されたDNA断片を処理した。この精製のため、標準イオン交換クロマトグラフィー技術を使用した(PCR断片精製のためのQiagen社のキット)。全ての断片について、直接DNA配列決定による解析に適した、十分な収量の精製した断片が得られた。個々のMDR-1遺伝子型の直接DNA配列決定による解析に使用された、精製されたMDR-1遺伝子断片の例を、表1に示す。
【0101】
実施例2:様々な個体での配列決定による、異なるMDR-1対立遺伝子の同定
多くの異なる個体からのヒトMDR-1遺伝子の関連領域の配列解析のために、MDR-1遺伝子の関連領域のPCR増幅を実施し(表1を参照のこと)、続いて精製したPCR産物を確立された手法(ABI ダイターミネーターサイクルシークエンシング)を用いて配列決定した。このアプローチを用いるにあたり、考慮する必要のあった非常に重要なパラメータは、健常な各ヒト個体は2つのMDR-1遺伝子コピーをもつということであった。この二倍性(常染色体遺伝子の、およびMDR-1が常染色体にコードされる)により、ホモ接合体配列変異のみならず、ヘテロ接合体変異をも明瞭に同定するためには、配列の評価には大いに注意を払わなければならなかった。そのため、唯一の決定された配列には頼らず、相対する両方のDNA鎖を配列決定することにより、各個体に由来する限定された各MDR-1遺伝子断片から、常に少なくとも2つの配列を得た。
【0102】
ヒト集団におけるMDR-1変異の最初の評価のため、異なる24個体由来のゲノムDNAから、ヒトMDR-1遺伝子の全てのエキソンを含む関連領域の配列解析を実施した。この数の個体試料はその後、その幾つかが127個体から解析された、選択されたMDR-1遺伝子断片のために拡大して解析された。配列は、この全ての操作において「野生型」配列とみなされる、公表されたMDR-1配列から逸脱したDNA配列の発生について、手作業で調査した。集団遺伝学により、定義された遺伝子(ハーディ・ワインベルグの式、 pe2 + 2pq + qe2 =1)のホモ接合体対立遺伝子対ヘテロ接合体対立遺伝子の、推定頻度の計算が可能であるため、実験から得られる知見を用いて、ホモ接合体対立遺伝子対ヘテロ接合体対立遺伝子の(その式を用いて)予測される分布および偏差を確認することもまた可能である。これは、内部対照および、検出される配列偏差が実際に新規の対立遺伝子を示すことの確証として役立つ。
【0103】
幾つかの新規のMDR-1配列変異が発見され、図2に示される本アプローチを用いて実験的に確証された。エキソン5、6、12ならびに17(エキソン5については配列番号:91、154および160)、(エキソン6については配列番号:101および166)、(エキソン12については配列番号:116)ならびに(エキソン17については配列番号:119および172)に近接するイントロン配列において8つの多型が現れる。コード領域においては7つの多型が認められ、エキソン2および26においては2つ、エキソン5、11および12においては1つずつ、ならびに非コード領域エキソン1においては1つ(各々、配列番号:79および85(エキソン2について)、122および178(エキソン26について)、97(エキソン5について)、106(エキソン11について)、112(エキソン12について)、ならびに73(エキソン1について))であった。3つの変異により、MDR-1タンパク質のアミノ酸配列(各々、配列番号:85(N21Dについて)、97(F103Sについて)および106(S400Nについて))に変化が生じた。それらの変化はMDRタンパク質を変化させる。ATG翻訳開始コドン(配列番号:79)直前には、タンパク質を変化させない変化が存在する。この位置が、翻訳の効果を制御することによるタンパク質の発現レベルについて、非常に重要であることはよく知られている。さらなる多型はMDR-1のアミノ酸組成を変化させないが、それにもかかわらずこれらの各変異は新規MDR-1対立遺伝子を定義するため、MDR-1遺伝形質決定において有用な手段である。異なる個体間においてMDR-1の発現が大きく異なることは既知であり、発現レベルにおけるこの可変性について説明する可能性が非常に高いものは、MDR-1遺伝子の正に内部および周辺の領域における対立遺伝子の相違である。従って、全ての新規のおよび限定されたMDR-1対立遺伝子は、患者におけるMDR-1遺伝子状態を決定するマーカーとして役立つ。疾患の診断および治療のための、このMDR-1遺伝形質決定の重要性は、当分野における専門家によく知られており、上記の導入章においてもまた詳細を説明されている。
【0104】
正確な新規の配列および配列偏差を含む、新規MDR-1対立遺伝子の正確な位置および更に詳細な記述ならびに集団内の対立遺伝子における、ホモ接合体対ヘテロ接合体の分布は、表2に記載する。変異対立遺伝子のホモ接合体の予測される頻度を、ハーディ・ワインベルグの分布に基づいて計測した。配列における逸脱した塩基は太字および下線により示す。図2は、ホモ接合体またはヘテロ接合体の個体から得た DNA試料における新規変異体の発見および出現の例を示す。
【0105】
実施例3:MDR-1対立遺伝子の特異的検出および診断の方法
同定された様々なMDR-1対立遺伝子の検出法は、特異的な配列の相違は対立遺伝子の区別のための試薬に反映されうるという原則を利用する。これらの試薬は診断試験の開発に必要な重要要素を提供する。そのような試薬の例は、新たに同定された塩基置換によって野生型MDR-1配列から逸脱するオリゴヌクレオチドを含むが、それに制限するものではない。しばしば、個々のMDR-1遺伝子状態の決定のための診断試験の原則は、様々なMDR-1対立遺伝子に対する、そのような試薬のハイブリダイゼーション効率における相違を含むが、制限するものではない。加えて、例えばリガーゼまたはポリメラーゼまたは制限酵素のような酵素反応における、そのような試薬の有効性の相違が、または酵素反応における異なる基質としての有効性の相違が適用されうきる。これらの試験の原則は当分野における専門家にはよく知られている。その例はPCR法およびLCR法、チップハイブリダイゼーションまたはMALDITOF解析である。そのような技術は先行技術、例えばPCR法:ニュートン(Newton)(1994)、「PCR(PCR)」, BIOS Scientific Publishers, Oxford;LCR法:シャイマー(Shimer), 「リガーゼ連鎖反応(Ligase chain reaction.)」Methods Mol.Biol. 46(1995), 269〜278;チップハイブリダイゼーション:ラムセー(Ramsay)「DNAチップ:先端技術(DNA chip:State-of-the art)」Nature Biotechnology 16(1998), 40〜44;およびMALDI-TOF解析:ロス(Ross)「MALDI-TOF質量分析による高度多発性遺伝形質決定(High level multiplex genotyping by MALDI-TOF mass spectrometry)」Nature Biotechnology 16(1998), 1347〜1351に記載されている。他の試験原則は、翻訳され発現したタンパク質としてMDR-1変異体を特異的に認識する試薬の適用に基づく。例としては、対立遺伝子特異的な抗体、ペプチド、基質類似体、阻害剤、または新しいMDR-1対立遺伝子によりコードされる様々なMDR-1タンパク質形態に結合する(およびある例においてはその作用を改変もする)他の物質がある。本適用において定義される、新規のヌクレオチド置換に由来する試薬を用いた診断試験の原則を表すために本明細書に示す実施例は、PCR法に基づく。記載した特異的試薬の適用、他の任意の方法もまた、MDR-1対立遺伝子の識別に役立つことが明らかである。
【0106】
実施例4:
対立遺伝子特異的なPCRは、単一対立遺伝子配列の検出のために特異的に設計された試薬(プライマーの組合せ)を用いたポリメラーゼ連鎖反応の適用により、対立遺伝子を識別する、当分野における専門家によく知られた技術である。そのような試験の主要な構成要素、およびそのような試験の特異性を提供する唯一の試薬は、異なる対立遺伝子を特異的に識別する配列を含むように設計されたオリゴヌクレオチドである。
【0107】
本実施例において、異なる対立遺伝子に対するそれらの異なるハイブリダイゼーション効率によって、および酵素反応(本実施例における酵素は熱安定性ポリメラーゼである)のための基質としてはたらくそれらの様々な能力によって、異なるMDR-1対立遺伝子を識別できる、特異的なオリゴヌクレオチドが設計された。特異的に設計され、かつ個々のヒトにおいて新しく定義されたmdr-1対立遺伝子の有無を検出できる試薬は、新しい各対立遺伝子についての特異的なプライマーの組合せとして表3に列挙されている。これらの試薬の設計は、実施例2において示され、表2および図2に列挙される、ヒトMDR-1遺伝子において新しく発見されたヌクレオチド配列および塩基置換に基づく。特異的な試薬の設計に加え、ポリメラーゼ連鎖反応の原則に基づく診断試験は、条件の最適化、即ち、最適化したPCR条件を必要とする。この場合においては、試験の結果は、試験可能な成分(鋳型)として個々のヒトから得たゲノムDNAを使用して得られる、特異的DNA断片の有無として与えられる。個体の血液からのゲノムDNAの調製は実施例1に記載される。
【0108】
PCRは、20μlの反応量で全ての断片について実施した。1.5 mM MgCl2、250μM dNTP(Qiagen, Hilden)、1×Q溶液(Qiagen, Hilden)、20 pMolの各プライマー(Metabion, Munich; 特異的wtプライマー+共通プライマーおよび特異的mutプライマー+共通プライマー)ならびに1 UのTaqポリメラーゼ(Qiagen, Hilden)を含む標準PCR緩衝液(Qiagen, Hilden)に50 ngのDNA鋳型を加えた。全てのPCRはパーキンエルマー サーモサイクラー(モデル9700)にて実施し、95℃で3分間の最初の変性段階、その後94℃で30秒間の変性、プライマーの融解温度(PCR条件:A〜E)に依存する30秒間のプライマーアニーリング、および72℃で30秒間からなる増幅サイクルを30回行い、続いて72℃で8分間の最後の伸長を行った。個々のPCR条件A〜Eで、以下のアニーリング温度を適用した:A:54℃;B:58℃;C:50℃;D:61℃;E:53℃。
【0109】
個々の特異的なプライマー配列における逸脱した塩基は、下線および太字にて示す。本アッセイにおける特異的なDNA断片の有無は、試験された対立遺伝子の有無を意味する。
【0110】
MDR-1対立遺伝子の検出診断の結果としての、そのような解読情報の例は、図3に示す。これらの例(表3、図3)から、これらの試験がヒトにおいて解析されたMDR-1対立遺伝子の存在の識別に適していることは明らかである。MDR-1対立遺伝子のヘテロ接合体だけでなく、ホモ接合体、低頻度だけでなく高頻度のMDR-1対立遺伝子を検出できる。これらの試験の特異性は、適用される特異的なオリゴヌクレオチド試薬にのみ起因し、完全に依存する。これらの試薬の設計は引き続いて、実施例2および表2にて示す、発見したMDR-1変異体および新規対立遺伝子の配列情報に依存した。
【0111】
実施例5:患者におけるMDR-1の発現レベルおよびインビボ活性を用いた、異なるMDR-1多型の診断および相関
ヒトにおける臨床関連表現型とMDR-1多型の潜在的な直接相関を同定するため、シュトゥットゥガルトのマルガリート・フィッシャー-ボッシュ博士臨床薬理学研究所(Dr. Margarete Fischer-Bosch-Institut for Clinical Pharmacology)における研究からの発端者について、実施例2〜4に記載したようなMDR-1多型の決定を行った。これらの患者の結腸および肝臓におけるMDR-1の発現レベルもまた、MDR-1タンパク質の確立された免疫組織化学検出法により推定された。発端者集団において、結腸におけるMDR-1の発現レベルの測定に加え、リファンピシンによる遺伝子の誘導を行った際のMDR-1の測定を実施した。また、非誘導およびリファンピシン誘導の条件下におけるMDR-1のインビボ活性を、既知のMDR-1の基質であり、さらにその血中濃度は結腸におけるMDR-1活性に依存する、経口投与したジゴキシン(1 mg)の血中濃度の測定により決定した。
【0112】
MDR-1測定、リファンピシン誘導実験およびジゴキシン実験の結果は、発端者集団におけるMDR-1多型検出解析からの結果は、ある種の多型をもつMDR-1遺伝子の発現とMDR-1のインビボ活性との間の相関を示す。
【0113】
MDR-1タンパク質レベル:
表4に示されるように、エキソン26におけるアクセッション番号M29445/J05168の位置176におけるT/C多型は、MDR-1の発現レベルと相関する。この位置におけるT対立遺伝子の存在は、対応するホモ接合体C対立遺伝子のみをもつ試料と比較して、より低いMDR-1発現レベルを示す。C対立遺伝子集団のリファンピシン誘導のMDR-1レベルの平均は、T集団のものに比べはるかに高かった(924対587の相対単位)。それと全く一致して、T対立遺伝子についてのホモ接合体の発端者では、非誘導MDR-1レベルおよび誘導MDR-1レベルは検出可能な最低量であった一方、C対立遺伝子についてのホモ接合体の発端者では、試験された全ての発端者の中で最高レベルを示した。これらの個体間の、誘導されたMDR-1発現レベルの差異は9倍であった。
【0114】
MDR-1のインビボ活性:
表5は、非誘導およびリファンピシン誘導条件下におけるMDR-1のインビボ活性の測定結果を示す。これは既知のMDR-1基質であり、その血中濃度は結腸におけるMDR-1活性に依存する、経口投与されたジゴキシンの血中濃度の測定により行われた。エキソン26 T/Cにおけるアクセッション番号M29445/J05168の位置176における多型はMDR-1の発現レベルと相関するという観察と一致して、更にインビボにおけるMDR-1タンパク質の活性を反映する、ジゴキシン血中濃度とこの多型との相関が認められた。T対立遺伝子(より弱いMDR-1発現と相関する、表4を参照のこと)をもつ発端者は、対応するホモ接合体C対立遺伝子のみをもつ試料と比較して、血中のより高いレベルジゴキシンを含む。その理由は、結腸から血液へのジゴキシンのようなMDR-1基質の取りこみは、MDR-1発現量が低いヒトにおいてより有効であると考えられることである。これは結腸におけるMDR-1の機能、即ち取りこむ細胞から結腸の管腔への基質の再輸送および排出と完全に一致する。C対立遺伝子集団の、非誘導ジゴキシンおよびリファンピシン誘導ジゴキシンの血中濃度の平均(MDR-1活性に逆相関する)は、一貫してT集団のものよりも低い(63.9対44.9および45対28.6 Dig AUC誘導)。それと全く一致して、ホモ接合体T対立遺伝子をもつ発端者は、リファンピシン誘導後、検出可能なジゴキシンの最高血中濃度を示し(57.3 Dig AUC)、C対立遺伝子についてホモ接合体をもつ発端者は全ての発端者のうち最低レベルを示した(12.3 Dig AUC)。これらの個体間のジゴキシン血中濃度の差異は4倍以上であった。
【0115】
患者集団におけるMDR-1:
MDR-1の発現レベル、MDR-1タンパク質活性およびMDR-1多型検出解析の相関に関する本発明者らの解析結果は、さらにシュトゥットゥガルトのマルガリート・フィッシャー-ボッシュ博士臨床薬理学研究所(Dr. Margarete Fischer-Bosch-Institut for Clinical Pharmacology)からの様々な患者のMDR-1発現およびMDR-1遺伝形質決定の解析によって確証される。様々な患者の組織試料、特に結腸および肝臓について、免疫組織学的手法を実施し、それらを互いに比較し、これらの試料間のMDR-タンパク質の相対比較をした。各一連の実験中に、患者の試料をそれらのMDR-1染色強度に従って、即ち、第一等級が最高のMDR-1強度、および最終等級が最低のMDR-1強度と等しくなるように等級付けした。
【0116】
この等級付け解析とMDR-1遺伝子型との相関は、エキソン26におけるアクセッション番号M29445/J05168の176位の多型のT対立遺伝子がこの位置にホモ接合体C対立遺伝子をもつ患者と比較した場合、MDR-1遺伝子のより低い発現量と相関することを示す。この解析において、2つの他の多型がMDR-1発現とある相関を示した:AC002457(イントロン4)の位置171466におけるホモ接合体T遺伝子型は、高い発現量と相関する可能性があり、エキソン11(M29432/J05168)の101位における多型(GA)は低い発現量と相関する可能性がある。
【0117】
実施例6:より大規模な試料数を用いた、エキソン26(C3435T)多型の遺伝子型/表現型の相関の確証
前述の実施例にて記載され、ここではMDR-1エキソン26 SNP C3435Tと呼ばれる、(その配列においては、ATG開始コドンの最初の塩基を1として、MDR-1 cDNAGenBankアクセッション番号AF016535、コドンTTCエキソン10、F335に対応する部位が欠失している)、アクセッション番号M29445/J05168の位置176における一塩基多型(SNP)T/Cの、腸管MDR-1発現レベル(実施例5において示される最初の結果)との相関をさらに確証するため、シュトゥットゥガルトのマルガリート・フィッシャー-ボッシュ博士臨床薬理学研究所(Dr. Margarete Fischer-Bosch-Institut for Clinical Pharmacology)における、さらなる実験研究の付加的なボランティアについて解析した。これらのボランティアおよび患者の腸管におけるMDR-1の発現レベルを、生検および十二指腸の腸細胞調製物の定量免疫組織化学法およびウェスタンブロット法により測定した。この解析が腸細胞における特異的PGPの発現を反映することを保証するため、腸細胞にて発現される付加的なマーカータンパク質、ビリンを同時に解析した。この解析の結果は図4に示す。C/C遺伝子型と比較して、T/T遺伝子型は著しく低いMDR-1発現レベルと関連する。C/T遺伝子型をもつ個体は中間の表現型を示す。
【0118】
MDR-1遺伝子型と腸管におけるジゴキシンの取りこみとの相関をさらに確証付けるため、経口投与後のジゴキシンの血中濃度を報告する(リファンピシン誘導およびPGPタンパク質測定はしない、Johneら(1999), Clin.Pharmacol. Thr. 66, 338〜345)、ベルリンのCharite大学医学センターにおける他の臨床研究の更なるボランティアを、そのエキソン26におけるMDR-1遺伝子型について調べた。この研究において、ジゴキシンの定常状態における最大血漿濃度(Cmax)を調べた。この薬物動態パラメータは特に、異なる群間におけるジゴキシン吸収の相違を示す。図5は、エキソン26にT/T対立遺伝子をホモ接合性にもつ7例のボランティア、およびホモ接合性のC/C遺伝子型をもつ7例のボランティアのジゴキシンCmaxの比較を示す。T対立遺伝子についてホモ接合性であるボランティアは、C/C遺伝子型をもつボランティアと比較して著しく高レベルのジゴキシンを示す。群間のジゴキシンCmaxにおける38%の平均差は統計的に有意であり(p=0.006、マン・ホイットニーのU 2試料検定)、この多型のジゴキシン薬物動態に対する影響を反映する。
【0119】
図4:非誘導条件下におけるエキソン26 SNPのMDR-1発現との相関
21例のボランティアおよび患者のMDR表現型(発現および活性)を、ウェスタンブロット法により決定した。箱型図は、関連エキソン26 SNPにおけるMDR-1遺伝子型に従って集められたMDR-1発現の分布を示す。遺伝子型-表現型の相関にはp=0.056(N=21)の有意差がある。

【0120】
図5:インビボにおけるMDR-1遺伝子型のジゴキシンの取りこみとの相関
エキソン26におけるMDR-1遺伝子型を、定常状態条件におけるジゴキシンの血中濃度を報告する(Johneら(1999), Clin.Pharmacol. Thr. 66, 338〜345))臨床研究に参加した、14例の健常ボランティアについて解析した。T/T遺伝子型またはC/C遺伝子型のいずれかをもつ、7例の健常ボランティアからなる2群間のジゴキシンの最大濃度(Cmax)の比較において、統計的に有意な差(p=0.006;マン・ホイットニーのU 2試料検定)が認められた。Cmaxにおける38%の平均差は、経口投与後のジゴキシンの吸収における遺伝子型の重要性を反映する可能性がある。ジゴキシンは定常状態で0.25 mgが投与された。

【0121】
実施例7:様々な個体を多数収集した集団の配列解析による、新しいMDR-1多型の同定
ヒトMDR-1遺伝子におけるSNPについての大規模な探索により、異なる新規MDR-1多型に加えて、表8に列挙するMDR-1遺伝子における多くの新しい多型が明らかになった。新しい試験においては、個体試料数はMDR-1プロモーター断片だけでなく全てのMDR-1エキソンについて拡大し、そのうち幾つかは236個体から解析された。
【0122】
PGP発現の予測に使用できるMDR-1エキソン26(C3435T)SNPに加え、MDR-1遺伝子の領域における他のより低頻度の多型もまた、発現に対してある種の影響を及ぼす可能性がある。例えば、プロモーターの多型およびタンパク質を変化させるSNPは、MDR-1の発現および活性に対し付加的な影響を及ぼす可能性が非常に高い。さらに全てのこれらの新規多型は、正確な個々のMDR-1遺伝子型、即ち、個体に特有の可能性がある対立遺伝子組成物を作製するために利用でき、ゆえに個体のMDR-1依存性の薬物反応を予測するのに非常に有用である。
【0123】
ヒトMDR-1遺伝子におけるより多くの多型が知られるにつれ、個々のMDR-1遺伝子型の説明はより完全になり、従ってより有用なものとなる。これら32の新しいMDR-1多型の同定は、薬物療法の結果および副作用を予測する、多くの異なるMDR-1遺伝子型を確立するという目的の達成に向けた、さらなる重要な段階である。
【0124】
実施例8:他の薬理遺伝学的因子と組合せた薬物レベルに影響する薬理遺伝学的因子としての、MDR-1エキソン26(C3435T)多型の決定
抗けいれん薬のフェニトインは、てんかん、心室性不整脈の急性および慢性の抑制ならびにジギタリス中毒の治療において一般に使用される。非直線性薬物動態(即ち、用量の上昇に反応する血漿中濃度の過度な上昇)と共に、多くの重篤な副作用を伴う狭い治療域により、フェニトイン療法は、治療結果を改善し副作用を予防するために非常に望ましい、所与の投与量から血漿中濃度を予測するための、興味深くかつ適したパラメータとなる。
【0125】
多型酵素2C9および2C19はフェニトインの代謝に影響を与えることが知られており(Mamiyaら, 1998, Epilepsia Dec; 39(12):1317〜23)、2C9の欠失は副作用または薬物の無効化をもたらす可能性のある血中濃度濃度の以上を引き起こしうることが示されている(Aynaciogluら, 1999, Br J Clin Pharmacol. Sep;48(3):409〜15)。しかし、2C9遺伝形質決定により、所与の投与量から正確な血中濃度は予測されないこともまた明らかである。2C9遺伝形質の個体においてでさえ、個々の酵素遺伝子型を補われることにより、血中濃度は著しく変動する。
【0126】
表6は、MDR-1エキソン26(C3435T)SNPは、2C9に加え、フェニトイン血中濃度に対して明確な役割を担い、またこのSNPについてのMDR-1遺伝形質決定により、フェニトイン投与量、遺伝子型および血中濃度の間により正確な相関が成立することを示す。
【0127】
2C9/19酵素の遺伝形質が決定された群内において、特に血中濃度の増加を既に示す2C9/C19低代謝群において、血中濃度の変異はMDR-1遺伝子型によって説明できる。ここでMDR-1遺伝形質決定により、異常に高いフェニトイン血中濃度を示す危険率の高い患者の亜群:MDR-1 T/T遺伝子型をもつ低代謝群を同定できる。これらの患者では薬物の有害作用に関連する過剰投与に遭遇するリスクが高い。例えば、フェニトインを投与された100例の患者群内においては、低いPGPをもつ(T/T)遺伝子型の2C9欠損患者は、「健常な」集団と比較して約2倍増加した、最高血中濃度を示した。Cyp 2C9遺伝子型およびフェニトイン血漿中濃度の間の相関は統計的に有意であるが、有意差は共分散分析(p< 0.001、ANCOVA)としてMDR-1 T/T遺伝子型を考慮することにより増加する。
【0128】
〔表6〕 フェニトインレベルの薬理遺伝学的成分への依存性

【0129】
〔表1〕



【0130】
〔表2〕




【0131】
〔表3〕


【0132】
〔表4〕

【0133】
〔表5〕

【0134】
〔表8〕








【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号:

のうち任意の1つの核酸配列をもつポリヌクレオチド;
(b)配列番号:372、373、374または375のうち任意の1つのアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c) ポリヌクレオチドが、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の140837位、141530位、141590位、171466位、171512位もしくは175068位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の101位もしくは308位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の83946位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の78170位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の176位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の171456位、171404位もしくは175074位に対応する位置に、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の77811位に対応する位置に、またはMDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の137位に対応する位置に、ヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド付加または、ヌクレオチド付加およびヌクレオチド置換をもつ、分子変異体(molecula variant)である多剤耐性(MDR)-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)ポリヌクレオチドが、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の140837位、171512位、171456位、171404位、139119位、139619位、140490位もしくは171511位に対応する位置に1つのCをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の141530位、139177位、139479位、140118位、140568位、140727位もしくは174901位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の141590位、139015位、140216位、140595位、175142位もしくは175180位に対応する位置に1つのGをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC002457)の171466位、175068位、175074位、139064位、139276位、140576位もしくは145984位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の101位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29432またはJ05168)の308位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の83946位、78170位、70237位もしくは70200位に対応する位置に1つのTをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の77811位、84032位もしくは73252位に対応する位置に1つのGをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の84701位、84074位、84119位、83973位、70371位、70253位、70204位もしくは43162位に対応する位置に1つのAをもつ、MDR-1遺伝子(アクセッション番号:AC005068)の43263位に対応する位置に1つのCをもつ、またはMDR-1遺伝子(アクセッション番号:M29445またはJ05168)の176位もしくは137位に対応する位置に1つのTをもつ、分子変異体MDR-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)ポリペプチドが、MDR-1ポリペプチド(アクセッション番号:P08183)の21位、103位または400位におけるアミノ酸置換を含む、分子変異体MDR-1ペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(f)ポリペプチドが、MDR-1ポリペプチド(アクセッション番号:P08183)の21位におけるNからDへの、103位におけるFからSへの、103位におけるFからLへの、または、400位におけるSからNへのアミノ酸置換を含む、分子変異体MDR-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換が、対応する野生型遺伝子と比較して、変異体MDR-1遺伝子の発現の変化をもたらす、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
ポリヌクレオチドが、原核細胞または真核細胞における発現を可能にする発現制御配列に有効に(operatively)連結される、請求項3記載のベクター。
【請求項5】
請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドまたは請求項3もしくは4記載のベクターを用いて遺伝学的に操作された宿主細胞。
【請求項6】
分子変異体MDR-1タンパク質またはその断片を産生する方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)請求項5記載の宿主細胞を培養する段階;および
(b)該タンパク質または断片を培養物から回収する段階。
【請求項7】
請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドまたは請求項3もしくは4記載のベクターを用いて細胞を遺伝学的に操作する段階を含む、分子変異体MDR-1遺伝子を発現できる細胞を産生する方法。
【請求項8】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドにコードされる、または請求項6記載の方法により、もしくは請求項7記載の方法により産生される細胞から得られる、MDR-1タンパク質またはその断片。
【請求項9】
請求項8記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項10】
請求項1または2において定義されるような、一つ又は複数のアミノ酸置換を含むエピトープを特異的に認識する、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドに相補的な核酸分子。
【請求項12】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドを特異的に認識および切断できる核酸分子。
【請求項13】
請求項11または12記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項14】
少なくとも1つの、請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドまたは請求項3もしくは4記載のベクターを含む、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項15】
少なくとも1つの、MDR-1遺伝子の不活性化された野生型対立遺伝子をさらに含む、請求項14記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項16】
マウスまたはラットである、請求項14または15記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項17】
MDR-1遺伝子の分子変異体またはその遺伝子産物の活性を改変できる、MDR-1阻害剤を同定および獲得する方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)請求項8記載のタンパク質、または請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドを含む分子変異体MDR-1遺伝子を発現する細胞を、薬剤輸送に応答して検出可能なシグナルを提供できる成分の存在下において、MDR-1媒介性薬物輸送を可能にする条件下でスクリーニングされる化合物と接触させる段階;および
(b)シグナルの存在または増加が推定上の阻害剤を示唆するような、シグナルの有無、または薬物輸送によって生じるシグナルの増加を検出する段階。
【請求項18】
細胞が、請求項7記載の方法によって得られる、または請求項14から16のいずれか一項記載のトランスジェニック非ヒト動物に含まれる、請求項5記載の細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
MDR-1遺伝子の分子変異体またはその遺伝子産物の活性を改変できるMDR-1阻害剤を同定および獲得する方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)タンパク質と第一の分子との第一の複合体を形成するためにMDR-1タンパク質に結合することが知られている第一の分子と、請求項8記載のタンパク質を接触させる段階;
(b)該第一の複合体を、スクリーニングされる化合物と接触させる段階;および
(c)該化合物が、該第一の分子を該第一の複合体から置換するかどうかを測定する段階。
【請求項20】
測定段階がタンパク質および化合物の第二の複合体の形成を測定する段階を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
測定段階がタンパク質に結合しない第一の分子の量を測定する段階を含む、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
第一の分子がベラパミル、バルスポダル(Valspodar)、シクロスポリンAまたはデクスニグルジピン(dexniguldipine)である、請求項19から21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
第一の分子が標識される、請求項19から22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
MDR-1遺伝子の分子変異体の存在に関連する疾病、またはそのような疾病への感受性を診断する方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)被験者からの試料における請求項1または2記載のポリヌクレオチドの存在を判定する段階;および/または
(b)請求項8記載のタンパク質の存在を判定する段階。
【請求項25】
疾病が癌である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
PCR、リガーゼ連鎖反応、制限酵素消化、直接配列決定、核酸増幅技術、ハイブリダイゼーション技術または免疫学的検定法を含む、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
疾病を止めるまたは緩和するために被験者に医薬品を投与する段階をさらに含む、請求項24から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
(i)機能的および発現可能な野生型MDR-1遺伝子;または
(ii)請求項11もしくは12記載の核酸分子、または請求項13記載のベクター
を細胞に導入する段階をさらに含む、請求項24から27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
請求項17から23のいずれか一項記載の方法の段階;ならびに
(c)段階(b)において同定および獲得される化合物またはその誘導体を、薬学的に許容される形態に合成するおよび/または製剤化する段階
を含む、薬学的組成物を産生する方法。
【請求項30】
薬物またはプロドラッグを治療的適用に適した形態に製剤化する段階、および請求項24または25記載の方法において診断された被験者の疾病を予防または改善する段階を含む、薬学的組成物を調製する方法。
【請求項31】
化合物薬物またはプロドラッグが、請求項27に定義されたような医薬品の誘導体である、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
請求項17から23のいずれか一項記載の方法により同定される、または得られる阻害剤。
【請求項33】
請求項8記載のタンパク質に特異的に結合する請求項32記載の阻害剤。
【請求項34】
請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドの検出のための、および/または個々のMDR-1対立遺伝子の遺伝形質決定(genotyping)のための、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用。
【請求項35】
ポリヌクレオチドが請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドである、または請求項11もしくは12記載の核酸分子である、請求項34記載の使用。
【請求項36】
オリゴヌクレオチドが約15ヌクレオチド長〜50ヌクレオチド長であり、かつ配列番号:1〜179、または、表8に示されるMDR-1遺伝子のプロモーターもしくはエキソンの野生型(「wt」)配列、もしくは変異型(「mut」)配列、またはこれらの任意の1つの相補的配列のうち、任意の1つのヌクレオチド配列を含む、請求項34記載の使用。
【請求項37】
請求項36において定義されたオリゴヌクレオチドからなるプライマーまたはプローブ。
【請求項38】
請求項8記載のタンパク質の検出、請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドを含む分子変異体MDR-1遺伝子の発現の検出、および/または請求項1もしくは2記載のポリヌクレオチドを含むMDR-1対立遺伝子を識別するための、MDR-1遺伝子の遺伝子産物に特異的に結合できる抗体または物質の使用。
【請求項39】
請求項1または2記載のポリヌクレオチド、請求項3または4記載のベクター、請求項5記載の宿主細胞もしくは請求項7記載の方法により得られる宿主細胞、請求項8記載のタンパク質、請求項9もしくは10記載の抗体、請求項11もしくは12記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項32記載の阻害剤または、請求項37記載のプライマーもしくはプローブを含む組成物。
【請求項40】
診断的組成物または薬学的組成物である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
請求項1または2記載のポリヌクレオチドをゲノム内に含む、被験者の疾病の治療または予防のための薬学的組成物を調製するための、有効な投与量の薬物またはプロドラッグの使用。
【請求項42】
疾病が癌または、ニューロン、CNS(中枢神経系)もしくは心臓血管の疾患である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
副作用および薬物相互作用を予測および予防するために、ならびに/または、患者の服薬遵守(compliance)を向上させるために、MDR-1基質の血中濃度の予測のための薬理的因子としての、ならびに/または、薬物の安全性および有効性の改善のための誘導物質としての、MDR-1遺伝子の単一ヌクレオチド多型(SNP)の使用。
【請求項44】
基質および/または誘導物質が、抗けいれん薬/抗てんかん薬、強心配糖体、免疫抑制薬、マクロライド系抗生物質、または大環状(macrocyclic)抗生物質から選択される、請求項43記載の使用。
【請求項45】
SNPがMDR-1エキソン26(C3435T)SNPである、請求項43または44記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−142909(P2011−142909A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11834(P2011−11834)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2001−513989(P2001−513989)の分割
【原出願日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(509082662)トロヴィス ファーマシューティカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】