説明

ヒトOX40受容体に対する結合分子

本開示は、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子、これら結合分子のアミノ酸配列をコードする核酸分子、これら核酸分子を含むベクター、これらベクターを含む宿主細胞、これら結合分子を製造する方法、これら結合分子を含む医薬組成物、及びこれら結合分子又は組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第61/013947号(2007年12月14日出願、参照によりその全体が本明細書に加入される)の利益を主張する。
【0002】
共同研究の合意
本明細書における開示及び特許請求の範囲は、特許請求された発明主題が実施された日付に又はその前に効力があるPfizer Inc.とMedarex, Incとの間の共同研究の合意の範疇で実行された活動の結果として実施されたものである。
【背景技術】
【0003】
本開示は、抗体、特にOX40受容体に結合する抗体に関する。
【0004】
抗腫瘍T細胞機能を増強することは、がん処置のための強力かつ新規なアプローチに相当する。効果的な抗腫瘍T細胞応答の生成に関与する重大な構成要素には、CD4+ヘルパーT細胞活性を増強して抗腫瘍細胞溶解性T細胞の生成を促進すること、及び記憶T細胞及びエフェクターT細胞に生存シグナルをもたらすことが含まれる。これらの応答を媒介することが示されている鍵となる受容体は、OX40受容体である(非特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
OX40受容体(OX40R)(CD134、TNFRSF4、ACT−4、ACT35、及びTXGP1Lとしても知られる)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。OX40Rは、活性化CD4+ T細胞で発現されることが見いだされている。OX40R+ T細胞の多さは腫瘍(腫瘍浸潤性リンパ球)内及びがん患者の流入領域リンパ節において実証されている(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。腫瘍プライミングの間のインビボでのOX40R結合は、コントロール処置マウスと比較して有意に遅くなり、腫瘍の出現を妨げることが、マウスにおける腫瘍モデルにおいて示された(Weinbergら、2000)。従って、OX40R結合剤を使用してOX40Rを結合させることにより抗原に対する哺乳動物の免疫応答を増強することが検討されている(特許文献1;Weinberg ら、2000)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 99/42585
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sugamura, K., Ishii, N., Weinberg, A. Therapeutic targeting of the effector T−cell co−stimulatory molecule OX40. Nature Rev. Imm. 4:420−431 (2004)
【非特許文献2】Hori, T. Roles of OX40 in the pathogenesis and control of diseases. Intn. J. Hematology. 83:17−22 (2006)
【非特許文献3】Vetto, J.T. et al. 1997. Presence of the T−cell activation marker OX−40 on tumor infiltrating lymphocytes and draining lymph nodes cells from patients with melanoma and head and neck cancers. Am. J. Surg. 174:258−265
【非特許文献4】Weinberg, A.D. et al. Engagement of the OX−40 receptor in vivo enhances antitumor immunity. J. Immunol. 164:2160−69 (2000)
【非特許文献5】Petty, J.K., et al. Survival in human colorectal cancer correlates with expression of the T−cell costimulatory molecule OX−40 (CD134). Am. J. Surg. 183:512−518 (2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示は、OX40R抗体、OX40R抗体の抗原結合フラグメント、及びOX40R抗体の誘導体を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子を提供する。いくつかの実施態様において、本結合分子は、1×10-7 M又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに結合し、そしてヒトOX40Rに対してアゴニスト活性を有する。いくつかのさらなる実施態様において、本結合分子は、100nM又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体である。
【0009】
本開示はまた、1つ又はそれ以上の結合分子及び薬学的に許容しうる担体を含む組成物を提供する。いくつかの実施態様において、本結合分子はヒトモノクローナルOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントである。本組成物は、さらなる薬剤、例えば化学療法薬、免疫治療薬、及びホルモン(homornal)治療薬をさらに含み得る。
【0010】
本開示はさらに、結合分子を使用する治療方法及び診断方法を提供する。いくつかの実施態様において、本開示は、治療有効量の結合分子又は結合分子を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてがんを処置又は予防する方法を提供する。いくつかの他の実施態様において本開示は、治療有効量の結合分子又は結合分子を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において免疫応答を増強する方法を提供する。いくつかの特定の実施態様において、この方法において使用される結合分子は、ヒトモノクローナルOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0011】
本開示はさらに、結合分子のアミノ酸配列をコードする核酸分子、このような核酸を含むベクター、これらベクターを含む宿主細胞、及び結合分子を製造する方法を提供する。
【0012】
本開示は他の局面も提供し、これらは特許請求の範囲を含む開示全体から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】a及びbは、抗体11D4がOX40Rに特異的に結合することを示すグラフである。
【図2】OX40R刺激ルシフェラーゼ活性に対する架橋した抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図3】アロ抗原プライムT細胞によるIL−2産生に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図4】初代T細胞による抗CD3誘導IL−2産生に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図5】カニクイザル初代T細胞による抗CD3誘導IL−2産生に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図6】抗CD3及び抗CD28を用いて刺激された14のドナー由来のカニクイザルPBMCを使用した抗体11D4との飽和結合曲線を示す。
【図7】抗CD3及び抗CD28を用いて刺激された17のドナー由来のヒトPBMCを使用した抗体11D4との飽和結合曲線を示す。
【図8】SCIDマウスにおけるB細胞リンパ腫Rajiの成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図9】B細胞リンパ腫Rajiの成長に対する、腫瘍注射21日後の抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図10】SCIDマウスにおける前立腺腫瘍PC−3の成長に対する抗体11D4の単回注射の効果を示すグラフである。
【図11】腫瘍注射の27日後のSCIDマウスにおける前立腺腫瘍PC−3の成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図12】SCIDマウスにおける結腸がんLOVOの成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図13】腫瘍注射の25日後のSCIDマウスにおける結腸がんLOVOの成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図14】SCIDマウスにおける乳腺腫瘍BT474の成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【図15】SCIDマウスにおける乳腺腫瘍BT474の成長に対する抗体11D4の効果を示すグラフである。
【0014】
詳細な説明
定義
用語「アゴニスト」は、本明細書で定義される場合、OX40Rに結合する際に、(1)OX40Rを刺激若しくは活性化し、(2)OX40Rの活性、機能若しくは存在を増強、増加、促進、誘導若しくは延長し、又は(3)OX40Rの発現を増強、増加、促進若しくは誘導する、結合分子を指す。
【0015】
用語「抗体」は、典型的にはポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は1つの「軽(L)」鎖及び1つの「重(H)」鎖を有する、免疫グロブリン分子を指す。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はエプシロンとして分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は約12個又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域で結合され、重鎖は約3個又はそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから成る。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一の成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。VH領域及びVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が組み込まれた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超多様性(hypervariability)の領域にさらに細分することができる。VH及びVLはそれぞれ、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される: FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各重鎖/軽鎖対(VH及びVL)の可変領域はそれぞれ、抗体結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の帰属は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987及び1991))又はChothia及びLesk(1987) J. Mol. Biol. 196:901−917;Chothia et al. (1989) Nature 342:878−883の定義に従う。用語「抗体」は、抗体多量体(抗体の多量体形態)、例えば二量体、三量体又は単量体抗体のより高次の多量体の一部である抗体を包含する。非抗体部分に連結若しくは結合されているか、又はそうでなければ物理的もしくは機能的に関連している抗体も包含する。さらに、用語「抗体」は、抗体を製造するいずれかの特定の方法に限定されない。例えば、とりわけ、組み換え抗体、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体が含まれる。
【0016】
用語「抗体誘導体」又は抗体の「誘導体」は、その抗体が結合する抗原と同じ抗原(例えばOX40R)に結合することがで、そしてさらなる分子実体に連結された抗体のアミノ酸配列を含む分子を指す。抗体誘導体に含まれる抗体のアミノ酸配列は、全長抗体であっても、全長抗体のいずれかの部分であってもよい。さらなる分子実体は化学的分子であっても生物学的分子であってもよい。さらなる分子実体の例としては、化学基、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば酵素、抗体)、及び化学的化合物が挙げられる。さらなる分子実体は、任意の有用性を有し得、例えば検出剤、標識、マーカー、薬剤又は治療剤としての使用のためのものであり得る。抗体のアミノ酸配列は、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又は別のものでさらなる実体に結合又は連結され得る。用語「抗体誘導体」はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、並びにOX40R抗体のアミノ酸配列の改変、例えば保存的アミノ酸置換、付加及び挿入から誘導される分子を包含する。
【0017】
抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、その抗体が結合する抗原と同じ抗原(例えばOX40R)に結合する能力を保持する全長抗体の1つ又はそれ以上の部分を指す。用語「抗原結合フラグメント」は、抗体部分と1つ又はそれ以上のさらなる分子実体との共有結合又は非共有結合により形成されるより大きな分子の一部である、抗体の部分を包含する。さらなる分子実体の例としては、アミノ酸、ペプチド、又はタンパク質、例えばストレプトアビジンコア領域(四量体scFv分子を作製するために使用され得る)(Kipriyanov et al., (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93−101)、システイン残基、マーカーペプチド、又はC末端ポリヒスチジンタグ(二価及びビオチン化scFv分子を作製するために使用され得る)(Kipriyanov et al., (1994) Mol. Immunol. 31:1047−1058)が挙げられる。
【0018】
用語「結合分子」は、それぞれ本明細書において定義される、(1)抗体、(2)抗体の抗原結合フラグメント、及び(3)抗体の誘導体を包含する。
【0019】
用語「OX40Rに結合する」又は「OX40Rに対する結合」は、本明細書で定義される結合分子の、インビトロアッセイ、例えばBIAcoreアッセイにおけるOX40Rに対する結合を指す。結合は、1×10-6M又はそれ以下の結合親和性(KD)を意味する。
【0020】
用語「キメラ抗体」は、2つ又はそれ以上の異なる抗体から誘導されるアミノ酸配列を含む抗体を指す。2つ又はそれ以上の異なる抗体は、同じ種由来でも、2つ又はそれ以上の異なる種由来でもよい。
【0021】
用語「保存アミノ酸置換」は、2つのアミノ酸残基の側鎖R基が類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する、アミノ酸残基の別のアミノ酸残基での置換を指す。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸;並びに7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸置換の群は、例えばバリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンであり得る。
【0022】
用語「エピトープ」は、抗体、又はT細胞受容体、又は分子と相互作用する他のものに特異的に結合することができる抗原の部分を指す。「エピトープ」は、当該分野で「抗原決定基」としても知られる。エピトープは、一般的にはアミノ酸又は炭水化物若しくは糖の側鎖のような分子の化学的に活性な表面の集団(groupings)からなり、そして一般的には特有の3次元構造特徴、さらには特有の電荷の特徴を有する。エピトープは「線状」でも「立体的(conformational)」であってもよい。抗原上の望ましいエピトープが決定されると、そのエピトープに対する抗体を、例えば本明細書中に記載される技術を使用して生成することができる。抗体の生成及び特徴付けはまた、望ましいエピトープについての情報を明らかにするかもしれない。次いでこの情報から、同じエピトープに対する結合について競合的に抗体をスクリーニングすることが可能である。これを達成するためのアプローチは、互いに競合的に結合する抗体、すなわち抗原に対する結合について競合する抗体を発見するための交差競合研究を行うことである。それらの交差競合に基づく「結合」抗体についてのハイスループット法は、PCT公開公報第WO03/48731号に記載される。
【0023】
用語「生殖系列」は、それらが生殖細胞を介して親から子に伝わる抗体遺伝子及び遺伝子断片のヌクレオチド配列を指す。生殖系列配列は、組み換え及びB細胞成熟の過程での超変異事象により変更された成熟B細胞における抗体をコードするヌクレオチド配列とは区別される。
【0024】
用語「宿主細胞」は、発現ベクターが導入されている細胞を指す。この用語は、特定の被験細胞だけでなく、このような細胞の子孫も含む。変異又は環境の影響のいずれかに起因して後の世代で特定の改変が起こり得るので、このような子孫は親細胞と同一ではないかもしれないが、やはり用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列のみのアミノ酸配列からなる抗体を指す。ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、又はマウス細胞から誘導されたハイブリドーマにおいて産生される場合、マウス炭水化物鎖を含み得る。 ヒト抗体は、当該分野で公知の種々の方法で製造され得る。
【0025】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体配列から誘導されたアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ヒト化抗体は非ヒト動物抗体由来のCDRの一部又は全てを含み得るが、抗体のフレームワーク領域及び定常領域は、ヒト抗体配列から誘導されたアミノ酸残基を含む。
【0026】
用語「哺乳動物」は、哺乳綱のいずれかの動物種を指す。哺乳動物の例としては:ヒト;実験用動物、例えばラット、マウス、類人猿、モルモット;家畜、例えばネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、及びブタ;並びに捕獲された野生動物、例えばライオン、トラ、ゾウなどが挙げられる。
【0027】
用語「単離された核酸」は、ゲノム、cDNA若しくは合成起源の核酸分子、又はその組み合わせを指し、これは核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されている。例えば、ゲノムDNAに関して、用語「単離された」は、ゲノムDNAが天然で結合している染色体から分離されている核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸は、その核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて核酸に天然で隣接する配列(すなわち目的の核酸の5’末端及び3’末端に位置する配列)を含まない。
【0028】
用語「単離された抗体」又は「単離された結合分子」は:(1)その天然の状態で付随している天然で結合する成分とは結合しておらず;(2)同じ種からの他のタンパク質を含まず;(3)異なる種からの細胞で発現され;又は(4)天然では存在しない、抗体又は結合分子を指す。単離された抗体の例としては、OX40Rを使用してアフィニティ精製されたOX40R抗体、インビトロでハイブリドーマ又は他の細胞株により生成されたOX40R抗体、及びトランスジェニック動物由来のヒトOX40R抗体が挙げられる。
【0029】
用語「KD」は、特定の抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指し、そしてリガンド(例えば抗体)とタンパク質(例えばOX40R)との間の結合親和性を記載するために使用される。平衡解離定数が小さいほど、リガンドはよりしっかりと結合しているか、又はリガンドとタンパク質との間の親和性がより高い。KDは、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORETMシステムを使用して測定することができる。BIACORETMシステムを使用するアッセイ手順(BIAcoreアッセイ)は、本開示の実施例の部分で記載される。
【0030】
用語「解離速度(off rate)」又は「kd」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度定数を指す。解離速度定数は、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORETMを使用して測定することができる。
【0031】
用語「OX40R抗体」は、ヒトOX40Rに結合することができる抗体(本明細書中に定義される)を指す。
【0032】
用語「OX40受容体」及び「OX40R」は、本出願において交換可能に使用され、そしてヒトOX40R、さらに変異体、アイソフォーム、及びその種相同体を含む。従って、本明細書中に開示されるヒト結合分子は、特定の場合に、ヒト以外の種由来のOX40Rにも結合し得る。他の場合には、本結合分子は、ヒトOX40Rに対して完全に特異的であり得、そして種又は他の種類の交差反応性を示さないかもしれない。
【0033】
用語「ヒトOX40Rに特異的に結合する」は、結合分子(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)との相互作用への言及において、CD40、CD137又はCD271に対する結合についての結合分子のKDが、インビトロアッセイにおいて決定した場合に、ヒトOX40Rに対するその結合のKDの100倍より高いことを意味する。
【0034】
用語「ベクター」は、宿主細胞において別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、裸のDNA若しくはRNA発現ベクター、コスミド又はファージベクターが挙げられる。いくつかのベクターは、それらが導入された宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソームほ乳類ベクター)。いくつかのベクターを、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによりそれらは宿主ゲノムとともに複製される(例えば、非エピソームほ乳類ベクター)。特定のベクターは、それらが機能可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することができ、従って「発現ベクター」と呼ばれ得る。
【0035】
本明細書で使用される20個の従来のアミノ酸及びそれらの略号は、従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis (第2版、E.S. Golub及びD.R. Gren編、Sinauer Associates, Sunderland, MA (1991))を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ヒトOX40Rに結合する結合分子
本開示は、ヒトOX40R(OX40R抗体、OX40R抗体の抗原結合フラグメント、及びOX40R抗体の誘導体を含む)に結合する単離された結合分子を提供する。結合分子は、以下の機能的特性の少なくとも1つにより特徴付けられる:(a)1×10-6M又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに結合し;(b)ヒトOX40Rに対してアゴニスト活性を有し;(c)500nMまでの濃度でCD40受容体に結合せず;(d)500nMまでの濃度でCD137受容体に結合せず;(e)500nMまでの濃度でCD271受容体に結合せず;(f)単離されたヒトT細胞によるIL−2産生を増強することができ;(g)免疫応答を増強することができ;(h)腫瘍細胞の増殖を阻害することができ;そして(i)がんに対して治療効果を有する。いくつかの実施態様において、本結合分子は、ヒトOX40Rに1×10-7M若しくはそれ以下のKD、又は1×10-8M若しくはそれ以下のKD、又は5×1×10-9M若しくはそれ以下のKDで結合する。
【0037】
ヒトOX40R抗体
いくつかの第一の局面において、本開示は、ヒトOX40Rに結合するヒト抗体を提供する。いくつかの実施態様において、ヒト抗体は、100nM又はそれ以下、好ましくは10nM又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに特異的に結合し、そしてヒトOX40Rに対してアゴニスト活性を有するモノクローナル抗体である。このようなヒト抗体の一例は、ヒトモノクローナル抗体11D4である。抗体(antiboduy)11D4の重鎖のアミノ酸配列及び重鎖の可変領域(VH)のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号9及び7で示される。抗体11D4の軽鎖のアミノ酸配列及び軽鎖の可変領域(VL )のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10及び8で示される。抗体11D4のアイソタイプは、重鎖についてIgG2であり、そして軽鎖についてκである。抗体11D4のアロタイプは重鎖についてG2(n−)であり、そして軽鎖についてKm3である。成熟重鎖及び成熟軽鎖アミノ酸配列は、発現構築物におけるDNA配列の概念翻訳(conceptual translation)から誘導される。抗体11D4は、重鎖又は軽鎖におけるフレームワーク変異を含まないが、重鎖CDR2中に1つの変異を含む。
【0038】
本開示の別の例となる抗体は、ヒトモノクローナル抗体18D8である。抗体18D8のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19及び20に示される。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号21及び22に示される。
【0039】
11D4及び18D8がOX40Rに結合するならば、それら各々のVH配列及びVL配列は、他のOX40R抗体と「混合及び適合され(mixed and matched)」て、さらなる抗体を生成し得る。このような「混合及び適合され」た抗体のOX40Rに対する結合は、当該分野で公知の結合アッセイ(実施例に記載されるアッセイを含む)を使用して試験することができる。ある場合には、VH領域及びVL領域が混合及び適合されて、特定のVH/VL対からのVH配列は、構造的に類似したVH配列と置き換えられる。同様に、別の場合には、特定のVH/VL対からのVL配列は、構造的に類似したVLと置き換えられる。
【0040】
従って、いくつかの実施態様において、本開示は:(1)抗体 11D4若しくは18D8の重鎖可変領域、(2)配列番号7若しくは19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は(3)配列番号11若しくは23の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、を含む単離されたOX40R抗体を提供する。いくつかの他の実施態様において、本開示は:(1)抗体11D4若しくは18D8の軽鎖可変領域、(2)配列番号8若しくは20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は(3)配列番号12若しくは24の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む単離されたOX40R抗体を提供する。
【0041】
別の局面において、本開示は、11D4又は11D8の重鎖可変領域(VH)のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びに軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む抗体を提供する。11D4のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2及び3に示される。抗体11D4のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、5、及び6に示される。抗体18D8のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13、14及び15に示される。抗体18D8のVL CDR1、VLCDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号16、17及び18に示される。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91−3242)を使用して描写される。
【0042】
11D4及び18D8がヒトOX40Rに結合し、そして抗原結合特異性が主にCDR1、CDR2、及びCDR3領域によりもたらされるならば、VH CDR1、CDR2、及びCDR3配列並びにVLCDR1、CDR2及びCDR3配列は、「混合及び適合され」てさらなるOX40R抗体を生じ得る。例えば、異なるOX40R抗体からのCDRは、混合及び適合され得るが、各抗体は典型的にはVH CDR1、CDR2及びCDR3、並びにVL CDR1、CDR2及びCDR3を含む。このような「混合及び適合され」た抗体のOX40Rに対する結合は、上記及び実施例に記載の結合アッセイを使用して試験することができる(例えば、 ELISA、Biacore分析)。ある場合には、VH CDR配列が混合及び適合される場合、特定のVH配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列と置き換えられる。同様に、VL CDR配列が混合及び適合される場合、特定のVL配列からのCDR1、CDR2及び/又は CDR3配列が、典型的には、構造的に類似したCDR配列と置き換えられる。新規なVH配列及びVL配列が、1つ又はそれ以上のVH及び/又はVL CDR領域配列を、本明細書中に開示されるCDR配列からの構造的に類似した配列で置き換えることにより作製され得ることは、当業者に容易に明らかとなるだろう。
【0043】
従って、いくつかの実施態様において、本開示は、(1)抗体11D4又は18D8のVH CDR1、VH
CDR2、又はVH CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。いくつかの他の実施態様において、本開示は、抗体11D4又は18D8のVL
CDR1、VL CDR2又はVL CDR3から選択される少なくとも1つのCDRを含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。いくつかのさらなる実施態様において、本開示は:配列番号1若しくは13のアミノ酸配列又は配列番号1若しくは3と1、2、3、若しくは4個の保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含むVH CDR1;配列番号2若しくは14のアミノ酸配列又は配列番号2若しくは14と1、2、3、若しくは4個の保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含む、VH CDR2;並びに、配列番号3若しくは15のアミノ酸配列又は配列番号3若しくは15と1、2、3、若しくは4個の保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含むVH CDR3、より選択される少なくとも1つのCDRを含む、単離されたモノクローナル抗体を提供する。
【0044】
なおいくつかのさらなる実施態様において、本開示は:配列番号4若しくは16のアミノ酸配列、又は配列番号4若しくは16と1、2、3、若しくは4つの保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含むVL CDR1;配列番号5若しくは17のアミノ酸配列、又は配列番号5若しくは17と1、2、3、若しくは4つの保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含むVL CDR2;並びに、配列番号6若しくは18のアミノ酸配列、又は配列番号6若しくは18と1、2、3、若しくは4つの保存的アミノ酸置換だけ異なる配列を含むVLCDR3、より選択される少なくとも1つのCDRを含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
【0045】
いくつかの場合は、OX40R抗体の重鎖のC末端リジンが切断される(Harris R. J., J. of Chromotography, 705: 129−134 (1995))。OX40R抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、シグナル配列を場合により含んでいてもよい。
【0046】
OX40R抗体のクラス(例えば、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD)及びサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)は、いずれかの適切な方法により決定され得る。一般的に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体の特定のクラス及びサブクラスに特異的な抗体を使用して決定され得る。このような抗体は市販されている。クラス及びサブクラスは、ELISA、又はウェスタンブロット、さらには他の技術を使用して決定することができる。あるいは、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメインの全て又は一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの種々のクラス及びサブクラスの既知のアミノ酸配列と比較し、そして抗体のクラス及びサブクラスを決定することにより決定され得る。OX40R抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD分子であり得る。例えば、OX40R抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブクラスであるIgGであり得る。従って、本開示の別の局面は、OX40R抗体のクラス又はサブクラスを別のクラス又はサブクラスに変換するための方法を提供する。いくつかの場合に、CL又はCHをコードする配列を含まないVL又はVHをコードする核酸分子は、当該分野で周知の方法を使用して単離される。次いで核酸分子は、所望の免疫グロブリンのクラス又はサブクラスからのCL又はCHをコードする核酸配列に機能可能に連結される。これは、上記のように、CL又はCH鎖を含むベクター又は核酸分子を使用して達成され得る。例えば、元はIgMであったOX40R抗体を、IgGにクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチは、1つのIgGサブクラスを別のものに、例えばIgG1からIgG2に、変換するために使用され得る。所望のアイソタイプを含む抗体を製造するための別の方法は、OX40R抗体の重鎖をコードする核酸及びOX40R抗体の軽鎖をコードする核酸を単離する工程、VH領域をコードする配列を単離する工程、VH配列を所望のアイソタイプの重鎖定常ドメインをコードする配列に連結する工程、軽鎖遺伝子及び重鎖構築物を細胞中で発現させる工程、並びに所望のアイソタイプのOX40R抗体を採取する工程を含む。
【0047】
抗原結合フラグメント
別の局面において、本開示は、本明細書で上記されたような、ヒトOX40R抗体のいずれかの抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施態様において、抗原結合フラグメントは: (1)OX40R抗体の軽鎖;(2)OX40R抗体の重鎖;(3)OX40R抗体の軽鎖からの可変領域;(4)OX40R抗体の重鎖からの可変領域;(5)OX40R抗体の1つ若しくはそれ以上のCDR(2、3、4、5又は6つのCDR);又は(6)OX40R抗体の軽鎖からの3つのCDR及び重鎖からの3つのCDRより選択される。いくつかの特定の実施態様において、本開示は、抗体11D4又は18D8の抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの他の特定の実施態様において、OX40R抗体の抗原結合フラグメントには:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii) VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体のシングルアーム(single arm)のVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.、(1989) Nature 341:544−546);(vi)単離されたCDR、並びに(vii)抗体のVH領域に連結された抗体のVL領域を含むポリペプチドである単鎖抗体(scFv)が含まれる。Bird et al.、(1988) Science 242:423−426 and Huston et al.、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883。抗原結合フラグメントはまた、同じ重鎖若しくは同じ軽鎖、又は異なる鎖のいずれかからの、2つ又はそれ以上のより短いフラグメントをを含み得る。抗原結合フラグメント、例えばFab及びF(ab’)2フラグメントは、従来の技術を使用して抗体全体から、例えば抗体全体からそれぞれパパイン又はペプシン消化を使用して製造することができる。これらは、本明細書に記載されるような組み換えDNA技術を使用して得ることもできる。
【0048】
抗体誘導体
いくつかのさらなる局面において、本開示は、本明細書において上で記載されるようなOX40R抗体のいずれかの誘導体を提供する。
【0049】
1つの特定の局面において、抗体誘導体は、11D4又は18D8のアミノ酸配列 の改変により誘導される。抗体鎖のあらゆる領域(例えば、フレームワーク領域、CDR領域、又は定常領域)のアミノ酸配列が改変され得る。改変は、当該分野で公知の標準的な技術、例えば部位特異的変異誘発及びランダムPCR媒介変異誘発、により導入することができ、天然、さらには非天然のアミノ酸を含み得る。
【0050】
改変の種類としては、OX40R抗体の1つ又はそれ以上のアミノ酸の、置換、挿入、欠失、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施態様において、抗体誘導体は、重鎖CDRにおいて1、2、3、若しくは4つのアミノ酸置換及び/又は軽鎖CDRにおいて1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、OX40R抗体の誘導体は、ヒト遺伝子の生殖系列アミノ酸配列に対して1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含む。特定の実施態様において、生殖系列からのこれらの置換の1つ又はそれ以上は、重鎖のCDR2領域にある。別の特定の実施態様において、生殖系列に対するアミノ酸置換は、抗体11D4又は18D8における生殖系列に対する置換と同じ位置の1つ又はそれ以上にある。別の実施態様において、アミノ酸置換は、抗体における1つ又はそれ以上のシステインを別の残基、例えば、制限することなく、アラニン又はセリンに変更することである。システインは、標準的(canonical)システインでも非標準的(non−canonical)システインでもよい。置換は、抗体の可変ドメインのCDR若しくはフレームワーク領域又は定常ドメインにおいてなされ得る。別の種類のアミノ酸置換は、アスパラギン−グリシン対を除去することであり、これは残基の1つ又は両方を変更することにより潜在的な脱アミド部位を形成する。さらに他の実施態様において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。一実施態様において、抗体誘導体は、11D4又は18D8のアミノ酸配列と比較して、重鎖CDR領域において1、2、3、又は4つの保存的アミノ酸置換を有する。
【0051】
OX40R抗体の別の種類の改変は、抗体の元のグリコシル化パターンの変更である。用語「変更(alteration)」は、抗体において見いだされる1つ若しくはそれ以上の炭水化物部分の欠失、及び/又は抗体中に存在しない1つ若しくはグリコシル化部位の付加を指す。抗体のグリコシル化は典型的にはN連結される。N連結は、炭水化物部分の、アスパラギン残基の側鎖への連結を指す。抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N連結グリコシル化部位について)上記のトリペプチド配列の1つ又はそれ以上を含むようにアミノ酸配列を変更することにより都合よく達成される。
【0052】
さらに別の種類の改変は、化学的又は酵素により達成され得る、抗体上に存在するいずれかの炭水化物部分の除去を含む。化学的脱グリコシルは、抗体をトリフルオロメタンスルホン酸の様な化合物、又は同等の化合物に暴露することを必要とする。この処理は、抗体はインタクトなままで、連結している糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く大部分又は全ての糖の切断をもたらす。化学的脱グリコシルは、Sojahr、H. T.、及びBahl、O. P.により、Arch. Biochem. Biophys. 259 (1987) 52−57に、そしてEdge、A. S.らによりAnal. Biochem. 118 (1981) 131−137に記載される。抗体上の炭水化物部分の酵素による切断は、Thotakura、N. R.、及びBahl、O. P.により(Meth. Enzymol. 138 (1987) 350−359)記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼを使用することにより達成することができる。
【0053】
他の改変の例としては、アセチル化、アシル化、アミド化、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋結合の形成、シスチンの形成、ホルミル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、及び硫酸化が挙げられる。
【0054】
さらなる局面において、本明細書に記載されるように、さらなる分子実体に連結された、OX40R抗体、又はその抗原結合フラグメントを含む抗体誘導体が提供される。さらなる分子実体の例としては、薬剤、ペプチド、又はタンパク質、及び検出剤又は標識が挙げられる。OX40R抗体に連結され得る薬剤の具体例としては、細胞傷害性薬剤又は他のがん治療薬、及び放射性同位体が挙げられる。OX40R抗体に連結され得るペプチド又はタンパク質の具体例としては抗体が挙げられ、これは同じOX40R抗体でも異なる抗体でもよい。OX40R抗体に連結され得る検出剤又は標識の具体例としては、(1)蛍光性化合物、例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル(naphtthalenesulfonyl)クロリド、フィコエリトリン、及びランタニド蛍光体;(2)酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、及びグルコースオキシダーゼ;(3)ビオチン;(4)二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ、例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、及びエピトープタグが挙げられる。特定の実施態様において、抗体誘導体はOX40R抗体多量体であり、これはOX40R抗体の多量体形態、例えば抗体二量体、三量体、又は単量体抗体のより高次の多量体である。抗体多量体内の個々の単量体は、同一でも異なっていてもよく、すなわちそれらはヘテロマー抗体多量体でもホモマー抗体多量体でもよい。多量体内の個々の抗体は、同じか又は異なる結合特異性を有し得る。抗体の多量体化は、抗体の自然な凝集により達成され得る。例えば、いくらかの割合の精製された抗体調製物(例えば、精製されたIgG1分子)は、抗体ホモ二量体、及び他の高次の抗体多量体を含有するタンパク質凝集体を自然発生的に形成する。あるいは、抗体ホモ二量体は、当該分野で公知の化学的連結技術により、例えばヘテロ二官能性架橋剤を使用することにより形成され得る。適切な架橋剤としては、ヘテロ二官能性であり、適切なスペーサーにより隔てられた2つの非常に反応性の基を有するもの(例えばm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、及びN−スクシンイミジル S−アセチルチオ−アセテート)、又はホモ二官能性のもの(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、ILから市販されている。抗体はまた、当該分野で公知の組み換えDNA技術により多量体化するように作製され得る。
【0055】
なお別の局面において、抗体誘導体は、本明細書の上で記載されるヒトOX40R抗体のアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。一例において、ヒトOX40R抗体からの1つ又はそれ以上のCDRを、非ヒト動物(例えばマウス又はラット)からの抗体からのCDRと組み合わせる。別の例では、キメラ抗体の全てのCDRはヒトOX40R抗体由来である。別の例では、1つより多くのヒトOX40R抗体からのCDRをキメラ抗体において組み合わせる。さらに、キメラ抗体は、1つのヒトOX40R抗体由来のフレームワーク領域、及び1つ又はそれ以上の異なるヒト抗体からの1つ又はそれ以上のCDRを含み得る。キメラ抗体は、当該分野で公知の従来の方法を使用して作製することができる。いくつかの特定の実施態様において、キメラ抗体は、抗体 11D4又は18D8から選択される抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域からの1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。
【0056】
本開示により提供される他の抗体誘導体の例としては、単鎖抗体、二重特異性抗体(diabodies)、ドメイン抗体、ナノボディ(nanobodies)、及びユニボディ(unibodies)が挙げられる。「単鎖抗体」(scFv)は、VHドメインに連結したVLドメインを含む単一のポリペプチド鎖からなり、ここでVLドメイン及びVHドメインは対になって一価の分子を形成する。単鎖抗体は、当該分野で公知の方法に従って製造することができる(例えば、Bird et al.、(1988) Science 242:423−426 and Huston et al.、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照のこと)。「二重特異性抗体(diabody)」は2つの鎖からなり、各鎖は短いペプチドリンカーにより接続された同じポリペプチド鎖上の軽鎖可変領域に接続された重鎖可変領域を含み、ここで同じ鎖上の2つの領域は、互いと対にならないが他の鎖上の相補ドメインと対になって二重特異性分子を形成する。二重特異性抗体を製造する方法は、当該分野で公知である(例えば、Holliger P. et al.、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448、及びPoljak R. J. et al.、(1994) Structure 2:1121−1123を参照のこと)。ドメイン抗体(dAb)は、抗体の小さな機能的結合単位であり、抗体の重鎖又は軽鎖のいずれかの可変領域に相当する。ドメイン抗体は、細菌系、酵母系及び哺乳動物細胞系においてよく発現される。ドメイン抗体のさらなる詳細及びその製造方法は、当該分野で公知である(例えば、米国特許第6,291,158号;同第6,582,915号;同第6,593,081号;同第6,172,197号;同第6,696,245号;欧州特許第0368684号及び同第0616640号;WO05/035572、WO04/101790、WO04/081026、WO04/058821、WO04/003019及びWO03/002609を参照のこと)。ナノボディは抗体の重鎖から誘導される。ナノボディは典型的には単一の可変ドメイン及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含み、そして元の抗体の抗原結合能力を保持する。ナノボディは当該分野で公知の方法により製造することができる(例えば、米国特許第6,765,087号、米国特許第6,838,254号、WO 06/079372を参照のこと)。ユニボディは、IgG4 抗体の1つの軽鎖及び1つの重鎖からなる。ユニボディは、IgG4抗体のヒンジ領域を除去することにより作製され得る。ユニボディの更なる詳細及びそれらを製造する方法は、WO2007/059782に見いだされ得る。
【0057】
結合分子を製造する方法
本明細書で開示される結合分子は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler及びMilsteinの標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術(Nature 256:495、(1975))、さらにはBリンパ球のウイルス形質転換又はがん化形質転換のような他の技術を含む、当該分野で公知の技術により製造することができる。
【0058】
非ヒト動物の免疫
本開示はまた、OX40R抗体又はその抗原結合フラグメントを作製するための方法を提供し、この方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物をOX40R抗原で免疫すること、及び免疫された動物から又は免疫された動物由来の細胞から抗体を単離することを含む。
【0059】
適切な非ヒト動物の例としては、トランスジェニック動物又はトランス染色体(transchromosomic)動物、例えばHuMAb Mouse(登録商標)、KM Mouse(登録商標)、「TCマウス」、及び「XenomouseTM」が挙げられる。HuMAb Mouse(登録商標)(Medarex、Inc.)は、内因性μ及びκ鎖遺伝子座を不活化する標的変異とともに、再配列されていないヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(例えば、Lonberg、et al. (1994) Nature 368: 856−859を参照のこと)。従って、これらのマウスはマウスIgM又はκの減少した発現を示し、そして免疫に応じて、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて高親和性のヒトIgGκモノクローナル抗体を生じる(例えば、Harding、F. and Lonberg、N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536−546を参照のこと)。HuMAb Mouse(登録商標)の製造及び使用、並びにこのようなマウスにより行われるゲノム改変は当該分野で周知である(例えば、Fishwild、D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845−851を参照のこと)。KM miceTMは、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖トランス染色体(transchromosome)を保持し、そしてWO 02/43478において詳細に記載される。XenomouseTM(Abgenix、Inc.)は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きなフラグメントを含み、そしてマウス抗体産生を欠いている。この動物モデルは当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号;及び同第6,162,963号を参照のこと)。「TCマウス」もまた、ヒト重鎖トランス染色体及びヒト軽鎖トランス染色体の両方を保持する人工的に操作されたマウスである。このようなマウスはTomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722−727に記載される。
【0060】
動物を免疫する使用のためのOX40R抗原は、単離及び/又は精製されたOX40Rであり得、そして好ましくはヒトOX40Rである。一実施態様において、OX40R抗原は、ヒトOX40Rのフラグメントであり、好ましくはOX40Rの細胞外ドメインである。別の実施態様において、OX40R抗原は、ヒトOX40Rの少なくとも1つのエピトープを含むフラグメントである。別の実施態様において、OX40R抗原は、その細胞表面においてOX40Rを発現する細胞、より詳細にはその細胞表面においてOX40Rを過剰発現する細胞である。動物の免疫は、当該分野で公知のあらゆる適切な方法により行われ得る。(例えば、Harlow and Lane, Antibodies:
A Laboratory Manual、New York: Cold Spring Harbor Press、1990を参照のこと)。非ヒト動物(例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ及びウマ)を免疫する特定の方法は当該分野で周知である(例えば、Harlow and Lane (1990);U.S. Pat. No. 5,994,619を参照のこと)。実施例1は、HuMabマウスを免疫するための方法を提供する。
【0061】
OX40R抗原を用いた動物の免疫後に、抗体及び/又は抗体産生細胞をその動物から得ることができる。一実施態様において、血清は動物から得られ、そして免疫グロブリンフラクションは血清から得られ得、又はOX40R抗体はその血清から精製され得る。
【0062】
OX40R抗体はまた、免疫した動物から単離された細胞から製造された抗体産生不死化細胞を使用して製造し得る。免疫後に、リンパ節及び/又は脾臓B細胞をその動物から採取し、そして適切な手段により不死化する。細胞を不死化する方法としては、限定されないが、がん遺伝子を用いてそれらをトランスフェクトすること、腫瘍ウイルスにそれらを感染させること、及び不死化細胞を選択する条件下でそれらを培養すること、それらを発がん性又は変異誘発性(mutating)化合物に暴露すること、それらを不死化細胞(例えば骨髄腫細胞)と融合すること、及び腫瘍抑制遺伝子を不活化することが挙げられる(例えば、Harlow and Lane(同上)を参照のこと)。特定の実施態様において、免疫された動物から採取された脾臓B細胞を不死化した骨髄腫細胞に融合して、抗体産生不活化ハイブリドーマを形成する。骨髄腫細胞は好ましくは免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。不死化されたハイブリドーマを、OX40抗原(例えばOX40R、その一部、又はOX40Rを発現している細胞)を使用してスクリーニングする。初期スクリーニングは、例えば酵素結合免疫アッセイ(ELISA)又は放射免疫アッセイを使用して行われ得る。ELISAスクリーニングの例はWO 00/37504に記載される。
【0063】
OX40R抗体産生細胞、例えばハイブリドーマは、選択され、クローニングされ、そしてさらに所望の特徴(健全な増殖、高い抗体産生、及び以下においてさらに考察されるような所望の抗体の特徴を含む)についてスクリーニングされる。ハイブリドーマは、同種の動物においてインビボで、免疫系を欠く動物において、例えばヌードマウスにおいて、又はインビトロで細胞培養において増殖させることができる。
【0064】
従って、ヒトモノクローナルOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する細胞を製造するための方法が提供され、この方法は: (a)非ヒトトランスジェニック動物をOX40R抗原で免疫すること;(b)動物がOX40R抗原に対する免疫応答を開始することを可能にすること;(c)抗体を産生している細胞を動物から単離すること;及び(d)抗体を産生している細胞を不死化することを含む。一実施態様において、この方法はさらに、(e)不死化された抗体を産生している細胞の個々のモノクローナル集団を作製すること;及び(f)所望のOX40R抗体を産生する不死化された抗体を産生している細胞をスクリーニングすることを含む。
【0065】
OX40R抗体を産生する核酸、ベクター、宿主細胞、及び組み換え方法
本開示の別の局面は、ヒトOX40Rに結合する結合分子のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子を提供する。この核酸分子にコードされるアミノ酸配列は、インタクトな抗体の任意の部分、例えばCDR、1つ、2つ若しくは3つのCDRを含む配列、又は重鎖若しくは軽鎖の可変領域であっても、全長の重鎖若しくは軽鎖であってもよい。いくつかの実施態様において、本核酸分子は、(1)抗体11D4若しくは18D8のCDR3領域、特に重鎖CDR3領域;(2)抗体11D4若しくは18D8の重鎖の可変領域若しくは軽鎖の可変領域;又は(3)抗体11D4若しくは18D8の重鎖若しくは軽鎖を含むアミノ酸配列をコードする。他の実施態様において、本核酸分子は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、及び22からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。さらに他の実施態様において、本核酸分子は、配列番号11、12、23、及び24からなる群より選択される。
【0066】
本開示により提供される核酸分子は、OX40R抗体を産生するあらゆる供給源から入手され得る。OX40R抗体産生細胞からのmRNAは、標準的な技術により単離され得、PCR及びライブラリー構築技術を使用してクローン及び/又は増幅され得、そしてOX40R抗体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を得るための標準的なプロトコルを使用してスクリーニングされ得る。このmRNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は抗体遺伝子のcDNAクローニングにおいて使用するためのcDNAを作製するために使用され得る。一実施態様において、核酸分子は、上記のような、OX40R抗体を発現するハイブリドーマ、好ましくはその融合パートナーの1つとしてヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する非ヒトトランスジェニック動物細胞を有するハイブリドーマから得られる。別の実施態様において、ハイブリドーマは非ヒト、非トランスジェニック動物由来である。
【0067】
OX40R抗体の重鎖をコードする核酸分子は、重(heavy)可変領域をコードする核酸分子を、重鎖の定常領域をコードする核酸分子と融合することにより構築され得る。同様に、OX40R抗体の軽鎖をコードする核酸分子は、軽鎖可変領域をコードする核酸分子を、軽鎖の定常領域をコードする核酸と融合することにより構築され得る。VH及びVL鎖をコードする核酸は、VHセグメントがベクター内の重鎖定常領域(CH)セグメントに機能可能に連結され、そしてVLセグメントがベクター内の軽鎖定常領域(CL)セグメントに機能可能に連結されるように、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター内にそれらを挿入することにより、全長抗体遺伝子へと変換され得る。あるいは、VH鎖又はVL鎖をコードする核酸分子は、連結することにより、例えば、VH鎖をコードする核酸分子を 、CH鎖をコードする核酸分子に、標準的な分子生物学の技術を使用してライゲーションすることにより、全長抗体遺伝子へと変換される。同じことが、VL及びCL鎖をコードする核酸分子を使用して達成され得る。ヒト重鎖及び軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該分野で公知である。例えば、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、NIH Publ. No. 91−3242、1991を参照のこと。次いで全長重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を、それらが導入された細胞から発現させてOX40R抗体を単離し得る。
【0068】
本核酸分子は、以下に記載されるように、OX40R抗体を大量に組み換え発現させるために使用され得る。本核酸分子はまた、本開示により提供される他の結合分子、例えば本明細書の他所で記載されたような、キメラ抗体、単鎖抗体、イムノアドヘシン、二重特異性抗体、変異した抗体、及び抗体誘導体を製造するために使用され得る。一実施態様において、核酸分子は、特定の抗体配列のためのプローブ又はPCRプライマーとして使用される。例えば、核酸分子プローブは診断方法において使用され得るか、又は核酸分子PCRプライマーは、とりわけOX40R抗体の可変領域を産生する際の使用のための核酸配列を単離するために使用され得るDNAの領域を増幅するために使用され得る。
【0069】
OX40R抗体のVH及びVLセグメントをコードするDNA分子が得られれば、これらのDNA分子をさらに組み換えDNA技術により操作して、例えば 可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子に、Fabフラグメント遺伝子に、又はscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VLをコードするDNA分子又はVHをコードするDNA分子は、抗体定常領域又は可動性リンカーのような別のポリペプチドをコードする別のDNA分子に機能可能に連結される。用語「機能可能に連結される」は、この文脈において使用される場合、2つのDNA分子が、その2つのDNA分子によりコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように結合されることを意味する。
【0070】
VH領域をコードする単離されたDNA分子は、VHをコードするDNA分子を、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に機能可能に連結することにより全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当該分野で公知であり(例えば、Kabat、E. A.、et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91−3242を参照のこと)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得られ得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領
域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG2定常領域である。IgG1定常領域配列は、異なる個体間で発生することが知られている種々の対立遺伝子又はアロタイプのいずれか(例えばGm(1)、Gm(2)、Gm(3)、及びGm(17))であり得る。これらのアロタイプは、IgG1定常領域において天然に存在するアミノ酸置換に相当する。Fabフラグメント重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能可能に連結され得る。CH1重鎖定常領域は、重鎖遺伝子のいずれかから誘導され得る。
【0071】
VL領域をコードする単離されたDNA分子は、VLをコードするDNA分子を、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能可能に連結することにより、(Fab軽鎖遺伝子に加えて)全長軽鎖遺伝子に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該分野で公知であり(例えば、Kabat、E. A.、et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91−3242を参照のこと)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得る。カッパ定常領域は、Inv(1)、Inv(2)、及びInv(3)のような異なる個体間で発生することが知られている種々の対立遺伝子のいずれかであり得る。ラムダ定常領域は3つのラムダ遺伝子のいずれかから誘導され得る。
【0072】
scFv遺伝子を作製するために、VHをコードするDNAフラグメント及びVLをコードするDNAフラグメントを、VH配列及びVL配列が連続した単鎖タンパク質として発現されて、VL領域及びVH領域が可動性リンカーにより連結されるように、可動性リンカーをコードする(例えばアミノ酸配列(Gly4 −Ser)3をコードする)別のフラグメントに機能可能に連結する(例えば、Bird et al.、(1988) Science 242:423−426;Huston et al.、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883;McCafferty et al.、(1990) Nature 348:552−554を参照のこと)。単一のVH及びVLのみが使用される場合、単鎖抗体は一価であり得、2つのVH及びVLが使用される場合、二価であり得、又は2つより多くのVH及びVLが使用される場合、多価であり得る。OX40R及び別の分子に特異的に結合する二重特異性又は多価の抗体が生成され得る。
【0073】
別の局面において、本開示は、本明細書にて上で記載された核酸分子を含むベクターを提供する。この核酸分子は、軽鎖若しくは重鎖の一部(例えばCDR又は可変領域)をコードしていても、全長軽鎖若しくは重鎖をコードしていても、一部若しくは全長の重鎖若しくは軽鎖を含むポリペプチドをコードしていても、又は抗体誘導体若しくは抗原結合フラグメントのアミノ酸配列をコードしていてもよい。結合分子を発現させるために、部分的又は全長の結合分子をコードするDNA分子は、このDNA分子が転写及び翻訳制御配列に機能可能に連結されるように、発現ベクター中に挿入される。この文脈において、用語「機能可能に連結される」は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列がDNA分子の転写及び翻訳を調節するというそれらの意図された機能を果たすように、DNA分子がベクターにライゲーションされることを意味するように意図される。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。発現ベクターとしては、例えば、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス(例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス)、コスミド、YAC、及びEBV由来エピソームが挙げられる。軽鎖のアミノ酸配列をコードするDNA分子及び重鎖のアミノ酸配列をコードするDNA分子を、別々のベクター又は同じベクターに挿入することができる。DNA分子は、あらゆる適切な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント上の相補的制限部位及びベクターのライゲーション、又は制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により発現ベクター中に挿入される。
【0074】
適切な発現ベクターの例は、任意のVH又はVL配列が挿入及び発現され得るように操作された適切な制限部位とともに、機能的に完全なヒトCH又はCL免疫グロブリン配列をコードするものである。発現ベクターはまた、抗体鎖のアミノ酸配列の宿主細胞からの分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることもできる。抗体鎖のアミノ酸配列をコードするDNAは、シグナルペプチドが抗体鎖のアミノ酸配列のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローンされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0075】
OX40R抗体のアミノ酸配列をコードする核酸配列(抗体鎖遺伝子)に加えて、発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得る。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントを含む(例えば、レトロウイルスLTR由来のプロモーター及び/又はエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス主要後期(major late)プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ及び強力哺乳動物プロモーター、例えばネイティブ免疫グロブリン及びアクチンプロモーター)。ウイルス調節エレメント、及びその配列のさらなる説明については、例えば米国特許第5,168,062号、同第4,510,245号、及び同第4,968,615号を参照のこと。
【0076】
抗体鎖核酸配列及び調節配列に加えて、組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列及び選択可能マーカー遺伝子のようなさらなる配列を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照のこと)。選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトオレキサート選択/増幅を用いたdhfr−宿主細胞における使用のため)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(G418選択のため)、及びグルタミン酸合成酵素遺伝子が挙げられる。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような多数の因子に依存し得る。 結合分子をコードする核酸分子、及びこれらの核酸分子を含むベクターを、結合分子の組み替え産生のための適切な宿主細胞の形質転換に使用することができる。適切な宿主細胞は、アミノ酸配列が宿主細胞で発現され、そして典型的には宿主細胞が培養されてその培地からアミノ酸配列を回収することができる培地中に分泌されるように、結合分子のアミノ酸配列をコードする核酸分子を有する1つ又はそれ以上の発現ベクターを用いて形質転換される。宿主細胞の形質転換は、当該分野で公知のあらゆる適切な方法、例えば米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、及び同第4,959,455号に開示されるものにより行われ得る。
【0077】
宿主細胞は、哺乳動物、昆虫、植物、細菌又は酵母の細胞であり得る。宿主細胞として適切な哺乳動物細胞株の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞、SP2細胞、HEK−293T細胞、NIH−3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、及び多数の他の細胞株が挙げられる。昆虫細胞株の例としては、Sf9細胞又はSf21細胞が挙げられる。植物宿主細胞の例としては、タバコ、シロイヌナズナ、ウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモなどが挙げられる。細菌宿主細胞としては、E.coli及びストレプトマイセス属(Streptomyces)の種が挙げられる。酵母宿主細胞の例としては、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。
【0078】
異なる細胞株により、又はトランスジェニック動物において発現される結合分子のアミノ酸配列は異なるグリコシル化を有し得る。しかし、本明細書において提供される核酸分子よりコードされるか又は本明細書において提供されるアミノ酸配列を含む全ての結合分子は、結合分子のグリコシル化にかかわらず、本発明の一部である。
【0079】
別の局面において、本開示は、OX40R抗体又はその抗原結合フラグメントを、ファージディスプレイを使用して製造するための方法を提供する。この方法は、(a)ファージ上でヒト抗体のライブラリを合成すること、(b)このライブラリをOX40R又はその一部を用いてスクリーニングすること、(c) OX40R又はその一部にに結合するファージを単離すること、及び(d)そのファージから抗体を得ることを含む。抗体のライブラリを製造するための1つの典型的な方法は:(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物をOX40R又はその抗原性部分を用いて免疫して免疫応答を生じさせる工程;(b)抗体を産生している細胞を免疫された動物から抽出する工程;(c)抽出された細胞から、OX40R抗体の重鎖及び軽鎖をコードするRNAを単離する工程;(d)RNAを逆転写してcDNAを生成する工程;(e)cDNAを増幅する工程;並びに(f)抗体がファージ上で発現されるようにこのcDNAをファージディスプレイベクター中に挿入する工程を含む。組み換えヒトOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントは、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリをスクリーニングすることにより単離することができる。このライブラリは、B細胞から単離されたmRNAから製造されたヒトVL及びVH cDNAを使用して生成された、scFvファージディスプレイライブラリであってもよい。このようなライブラリを製造及びスクリーニングするための方法は当該分野で公知である。ファージディスプレイライブラリを作製するためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene SurfZAPTMファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。
【0080】
ある場合には、所望の特徴を有するヒトOX40R抗体を単離及び製造するために、当該分野で公知の方法(例えば、WO 93/06213に記載されるエピトープ刷り込み(epitope imprinting)法)を使用して、本明細書で記載されるヒトOX40R抗体を最初に使用してOX40Rに対して類似した結合活性を有するヒト重鎖及び軽鎖配列を選択する。この方法において使用される抗体ライブラリは、WO 92/01047、McCafferty et al.、Nature 348:552−554 (1990);及びGriffiths et al.、EMBO J. 12:725−734 (1993)において記載されるように製造及びスクリーニングされるscFvライブラリであり得る。scFv抗体ライブラリは、ヒトCCR2を抗原として使用してスクリーニングされ得る。
【0081】
最初のヒトVL及びVH領域が選択されると、「混合及び適合(mix and match)」実験が行われ、ここでは最初に選択されたVL及びVHセグメントの異なる対をOX40R結合についてスクリーニングしてVL/VH対の組み合わせを選択する。さらに、抗体の質をさらに改善するために、VL/VH対のVL及びVHセグメントを、天然の免疫応答の間の抗体の親和性成熟の原因であるインビボでの体細胞変異プロセスと同様のプロセスで、VH及び/又はVLのCDR3領域内で無作為に変異させ得る。このインビトロ親和性成熟は、それぞれVH CDR3又はVL CDR3に対して相補的な(complimentary)PCRプライマーを使用して、VH及びVLドメインを増幅することにより達成され、これらのプライマーは、得られたPCR産物が、無作為の変異がVH及び/又はVL CDR3領域中に導入されているVHセグメント及びVLセグメントをコードするように、特定の位置において4つのヌクレオチド塩基の無作為混合物で「スパイクされている(spiked)」。これらの無作為に変異誘発されたVHセグメント及びVLセグメントを、OX40Rヘの結合について再スクリーニングし得る。
【0082】
組み換え免疫グロブリンディスプレイライブラリからのOX40R抗体又は抗原結合部分のスクリーニング及び単離に続いて、選択された結合分子をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えばファージゲノムから)回収して、組み換えDNA技術により他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要なら、以下に記載されるように、核酸をさらに操作して他の抗体形態を作製し得る。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングにより単離された組み換えヒト抗体を発現させるために、上記のように、その抗体をコードするDNAを組み換え発現ベクター中にクローン化し、そして哺乳動物宿主細胞中に導入する。
【0083】
医薬組成物
別の局面において、本開示は、組成物、例えば、本開示により提供される1つの結合分子又はそれらの組み合わせ、及び場合により薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。本組成物は、当該分野で公知の従来の方法により製造することができる。
【0084】
いくつかの実施態様において、本組成物は、OX40R抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施態様において、本組成物は、抗体11D4若しくは抗体18D8、又はいずれかの抗体の抗原結合フラグメントを含む。さらに他の実施態様において、本組成物は、抗体11D4又は抗体18D8の誘導体を含む。
【0085】
用語「薬学的に許容しうる担体」は、結合分子の送達のための製剤における使用に適したあらゆる不活性物質を指す。担体は、固結防止剤(antiadherent)、結合剤、コーティング、崩壊剤、フィラー又は希釈剤、保存料(例えば抗酸化剤、抗細菌薬、又は抗真菌薬)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などであり得る。適切な薬学的に許容しうる担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)デキストロース、植物油(例えばオリーブ油)、食塩水、緩衝剤、緩衝化食塩水、及び等張剤、例えば糖類、ポリアルコール類、ソルビトール、及び塩化ナトリウムが挙げられる。
【0086】
本組成物は、液体、半固体、及び固体投薬形態のようなあらゆる適切な形態であり得る。液体投薬形態の例としては、液剤(例えば、注射用液剤及び注入用液剤)、マイクロエマルジョン、リポソーム、分散製剤(dispersion)、又は懸濁剤が挙げられる。固体投薬形態の例としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、及び散剤が挙げられる。結合分子の送達に適した組成物の特定の形態は、滅菌液剤、例えば注射又は注入用の、液剤、懸濁剤、又は分散製剤である。滅菌液剤は、抗体を必要な量で適切な担体中に入れ、続いて滅菌精密ろ過することにより製造することができる。一般に、分散製剤は、基本となる分散媒体及び他の担体を含む滅菌ビヒクル中に抗体を入れることにより製造される。滅菌液剤の製造のための滅菌散剤の場合、製造方法は、真空乾燥及び凍結乾燥(freeze−drying)(凍結乾燥(lyophilization))して、活性成分と、前もって滅菌ろ過したその溶液からの任意の追加的な所望の成分との散剤を得ることを含む。組成物の種々の投薬形態は、当該分野で公知の従来の技術により製造することができる。
【0087】
組成物中に含まれる結合分子の相対的な量は、使用される特定の結合分子及び担体、投薬形態、並びに所望される放出特性及び薬力学的特性のような多数の因子に依存して変化する。単一の投薬形態中の結合分子の量は、一般的には治療効果をもたらす量であるが、より少ない量でもよい。一般的に、この量は投薬形態の総質量と比較して約0.01パーセントから約99パーセント、約0.1パーセントから約70パーセント、又は約1パーセントから約30パーセントの範囲に及ぶ。
【0088】
結合分子に加えて、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤を組成物に含めてもよい。さらなる治療剤の例は、本明細書以下で記載される。組成物に含まれるさらなる治療剤の適切な量は、当業者により容易に選択され得、そして多数の因子、例えば使用される特定の薬剤及び担体、投薬形態並びに所望の放出特性及び薬力学特性に依存して変化する。単一の投薬形態中に含まれるさらなる治療剤の量は、一般的に、その薬剤が治療効果をもたらす量であるが、より少ない量でもよい。
【0089】
結合分子及び医薬組成物の使用
本開示により提供される結合分子及び結合分子を含む医薬組成物は、治療、診断又は他の目的、例えば免疫応答を増強すること、がんの処置、他のがん治療の有効性を増強すること、又はワクチンの有効性を増強することに有用であり、そして薬剤又は診断剤としての使用のような多数の実用性を有する。したがって、別の局面において、本開示は結合分子又は医薬組成物の使用方法を提供する。
【0090】
1つの特定の局面において、治療有効量の本開示により提供される結合分子を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において免疫応答を増強するための方法が提供される。いくつかの実施態様において、結合分子はOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントであり、哺乳動物はヒトである。さらなる実施態様において、結合分子は抗体11D4若しくは抗体18D8、又はいずれかの抗体の抗原結合フラグメントである。用語「免疫応答を増強すること」又はその文法上の変形は、哺乳動物の免疫系のいずれかの応答を、刺激すること、惹起すること、増加すること、改善すること、又は増大させることを意味する。免疫応答は、細胞性応答(すなわち、細胞媒介、例えば細胞傷害性Tリンパ球媒介)又は体液性応答(すなわち、抗体媒介応答)であり得、そして一次免疫応答でも二次免疫応答でもよい。
【0091】
免疫応答の増強の例としては、増加したCD4+ヘルパーT細胞活性及び細胞溶解性T細胞の生成が挙げられる。免疫応答の増強は、当業者に公知の多数のインビトロ又はインビボでの測定を使用して評価することができ、これらとしては、限定されないが、細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、サイトカインの放出(例えばIL−2産生)、腫瘍の退縮、腫瘍を有する動物の生存、 抗体産生、免疫細胞増殖、細胞表面マーカーの発現、及び細胞傷害性が挙げられる。典型的には、本開示の方法は、未処置の哺乳動物又は特許請求された方法を使用して処置されていない動物と比較した場合に、哺乳動物による免疫応答を増強する。一実施態様において、本方法は、細胞性免疫応答、特に細胞傷害性T細胞応答を増強する。 別の実施態様において、細胞性免疫応答はTヘルパー細胞応答である。さらに別の実施態様において、免疫応答はサイトカイン産生、特にIL−2産生である。
【0092】
別の特定の局面において、本開示は、治療有効量の本開示により提供される結合分子を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてがんを処置する方法を提供する。用語「がんを処置する」又は「がんの処置」は、がんと診断された哺乳動物において所望の又は有益な効果を引き起こすことを指す。所望の又は有益な効果には、がん細胞のさらなる増殖又は広がりの阻害、がん細胞の死、がんの再発の阻止、がんに付随する疼痛の低減、又は動物の改善された生存期間が含まれ得る。がんの再発の阻止は、放射線、化学療法、手術、又は他の技術により以前に処置されているがん部位及び周辺組織も考慮する。この効果は主観的でも客観的でもよい。例えば、動物がヒトである場合、そのヒトは、治療に対する改善又は応答の主観的症状として、改善された活力若しくは体力又は減少した疼痛に気付くかもしれない。あるいは、臨床医が、身体診察、実験パラメーター、腫瘍マーカー又はレントゲン写真の所見に基づいて腫瘍サイズ又は腫瘍量の減少に気付くかもしれない。 処置に対する応答に関して臨床医が観察し得るいくつかの検査徴候には、試験の正規化、例えば白血球数、赤血球(red blood cell)数、血小板数、赤血球(erythrocyte)沈降速度、及び種々の酵素レベルが含まれる。さらに、臨床医は、検出可能な腫瘍マーカーの減少を観察し得る。あるいは、超音波画像、核磁気共鳴検査及び陽電子放出検査のような他の試験を使用して、客観的改善を評価することができる。いくつかの実施態様において、本結合分子は、本開示により提供されるOX40R抗体又はその抗原結合フラグメントである。さらなる実施態様において、本結合分子は抗体11D4若しくは18D8、又はいずれかの抗体の抗原結合フラグメントである。さらなる実施態様において、哺乳動物はヒトである。
【0093】
別の特定の局面において、本開示は、治療有効量の本開示により提供される結合分子を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてがんを予防する方法を提供する。用語「がんを予防する」又は「がんの予防」は、発がん又は腫瘍形成の発生が証明されていないががんの素因が、例えば遺伝子スクリーニング又は他の方法で決定されてもされていなくても同定されている哺乳動物においてがんの発生を遅延、阻止、又は予防することを指す。この用語はまた、前がん状態を有する哺乳動物を、前がん状態の悪性腫瘍への進行を止めるため、又は後退を引き起こすために処置することも含む。前がん状態の例としては、過形成、形成不全、及び異形成が挙げられる。いくつかの実施態様において、本結合分子は、本開示により提供されるOX40R抗体又はそのフラグメントである。さらなる実施態様において、本結合分子は抗体11D4若しくは18D8、又はいずれかの抗体の抗原結合フラグメントである。さらなる実施態様において、哺乳動物はヒトである。
【0094】
悪性であろうと良性であろうと、そして原発性であろうと続発性であろうと、種々のがんは本開示により提供される方法を用いて処置又は予防され得る。このようながんの例としては、肺がん、例えば気管支原性がん(例えば、扁平上皮細胞がん、小細胞がん、大細胞がん、及び腺がん)、肺胞上皮がん、気管支腺腫、軟骨性過誤腫(非がん性)、及び肉腫(がん性);心臓のがん、例えば粘液腫、線維腫、及び横紋筋腫;骨のがん、例えば骨軟骨腫、軟骨腫(condromas)、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、ユーイング腫瘍(ユーイング肉腫)、及び細網肉腫;脳のがん、例えば神経膠腫(例えば、多形性膠芽腫)、未分化星状細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、髄芽細胞腫、脊索腫、神経鞘腫、上衣細胞腫、髄膜腫、下垂体腺腫、松果体腫、骨腫、血管芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、胚細胞腫、奇形腫、皮様嚢腫、及び血管腫;消化器系におけるがん、例えば平滑筋腫、類表皮がん、腺がん、平滑筋肉腫、胃の腺がん、腸の脂肪腫、腸の神経線維腫、腸の線維腫、大腸におけるポリープ、及び結腸直腸のがん;肝臓のがん、例えば肝細胞腺腫、血管腫、肝細胞がん、線維層板がん、胆管がん、肝芽腫、及び血管肉腫;腎臓のがん、例えば腎臓の腺がん、腎細胞がん、副腎腫、及び腎盂の移行上皮がん;膀胱がん;血液のがん、例えば急性リンパ球性 (リンパ芽球性)白血病、急性骨髄性(myeloid)(骨髄球性、骨髄性(myelogenous)、骨髄芽球性、骨髄単球性)白血病、慢性リンパ性白血病(例えば、セザリー症候群及びヘアリー細胞白血病)、慢性骨髄球性(骨髄性(myeloid)、骨髄性(myelogenous)、顆粒球性)白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、菌状息肉腫、及び骨髄増殖性疾患(真性赤血球増加症、骨髄線維症、血小板血症、及び慢性骨髄球性白血病のような骨髄増殖性疾患を含む);皮膚のがん、例えば基底細胞がん、扁平上皮細胞がん、黒色腫、カポジ肉腫、及びパジェット病;頭部及び頸部のがん;眼関連がん、例えば網膜芽細胞腫及び眼球内(intraoccular)黒色がん;男性生殖器系のがん、例えば良性前立腺肥大、前立腺がん、及び精巣がん(例えば、精上皮腫、奇形腫、胎生期がん、及び絨毛がん);乳がん;女性生殖器系のがん、例えば子宮がん(子宮内膜がん)、子宮頸がん(cervical cancer)(子宮頸がん(cervical carcinoma))、卵巣のがん(卵巣がん)、外陰がん、膣がん、卵管がん、及び胞状奇胎;甲状腺がん(乳頭、濾胞腺、未分化、又は髄様がんを含む);褐色細胞腫(副腎);副甲状腺の非がん性増殖;膵臓がん;並びに血液のがん、例えば白血病、骨髄腫、非ホジキン(non−Hodgekin’s)リンパ腫、及びホジキン(Hodgekin’s)リンパ腫が挙げられる。
【0095】
治療方法の実施において、本結合分子は、単剤療法として単独で投与されても、又は1つ若しくはそれ以上のさらなる治療剤若しくは療法と組み合わせて投与されてもよい。従って、別の局面において、本開示は、1つ又はそれ以上のさらなる療法又は治療剤と組み合わせた、本開示により提供される結合分子を含む、併用療法(combination therapy)を提供する。用語「さらなる療法」は、治療剤として本開示により提供される結合分子を使用しない療法を指す。用語「さらなる治療剤」は、本開示により提供される結合分子以外のあらゆる治療剤を指す。いくつかの実施態様において、結合分子は、抗体11D4若しくは18D8、又はいずれかの抗体の抗原結合フラグメントである。1つの特定の局面において、本開示は、 哺乳動物に、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤と組み合わせて、治療有効量の本開示により提供される結合分子を投与することを含む、哺乳動物においてがんを処置するための併用療法を提供する。さらなる実施態様において、哺乳動物はヒトである。
【0096】
広範な種々のがん治療剤が、結合分子と組み合わせて使用され得る。当業者は、本開示の方法及び結合分子と組み合わせて使用することができる他のがん治療の存在及び開発を認識し、そしてそれらは本明細書中に記載される治療形態に限定されない。がんを処置するための併用療法において使用され得るさらなる治療剤のカテゴリーの例としては、(1)化学療法剤、(2)免疫療法剤、及び(3)ホルモン治療剤が挙げられる。
【0097】
用語「化学療法剤」は、がん細胞の死を引き起こすか、又はがん細胞の成長、分裂、修復、及び/若しくは機能を妨げることができる、化学的又は生物学的な物質を指す。化学療法剤の例としては、WO 2006/088639、WO 2006/129163、及びUS 20060153808(これらの開示は本明細書に参照により加入される)において開示されるものが挙げられる。特定の化学療法剤の例としては:(1)アルキル化剤、例えばクロラムブシル(LEUKERAN)、シクロホスファミド(mcyclophosphamide)(CYTOXAN)、イホスファミド(IFEX)、塩酸メクロレタミン(MUSTARGEN)、チオテパ(THIOPLEX)、ストレプトゾトシン(ZANOSAR)、カルムスチン(BICNU、GLIADEL WAFER)、ロムスチン(CEENU)、及びダカルバジン(DTIC−DOME);(2)細胞傷害性抗菌薬を含む、アルカロイド類又は植物ビンカアルカロイド類、例えばドキソルビシン(ADRIAMYCIN)、エピルビシン(ELLENCE、PHARMORUBICIN)、ダウノルビシン(CERUBIDINE、DAUNOXOME)、ネモルビシン(nemorubicin)、イダルビシン(IDAMYCIN PFS、ZAVEDOS)、ミトキサントロン(DHAD、NOVANTRONE). ダクチノマイシン(actinomycin D、COSMEGEN)、プリカマイシン(MITHRACIN)、マイトマイシン(MUTAMYCIN)、及びブレオマイシン(BLENOXANE)、酒石酸ビノレルビン(NAVELBINE))、ビンブラスチン(VELBAN)、ビンクリスチン(ONCOVIN)、及びビンデシン(ELDISINE);(3)代謝拮抗薬、例えばカペシタビン(XELODA)、シタラビン(CYTOSAR−U)、フルダラビン(FLUDARA)、ゲムシタビン(GEMZAR)、ヒドロキシ尿素(HYDRA)、メトトレキサート(FOLEX、MEXATE、TREXALL)、ネララビン(ARRANON)、トリメトレキサート(NEUTREXIN)、及びペメトレキセド(ALIMTA);(4)ピリミジン系アンタゴニスト、例えば5−フルオロウラシル(5−FU);カペシタビン(XELODA)、ラルチトレキセド(TOMUDEX)、テガフール−ウラシル(UFTORAL)、及びゲムシタビン(GEMZAR);(5)タキサン類、例えばドセタキセル(TAXOTERE)、パクリタキセル(TAXOL);(6)白金薬物、例えばシスプラチン(PLATINOL)及びカルボプラチン(PARAPLATIN)、及びオキサリプラチン(ELOXATIN);(7)トポイソメラーゼ阻害剤、例えばイリノテカン(CAMPTOSAR)、トポテカン(HYCAMTIN)、エトポシド(ETOPOPHOS、VEPESSID、TOPOSAR)、及びテニポシド(VUMON);(8)エピポドフィロトキシン(ポドフィロトキシン誘導体)、例えばエトポシド(ETOPOPHOS、VEPESSID、TOPOSAR);(9)葉酸誘導体、例えばロイコボリン(WELLCOVORIN);(10) ニトロソ尿素類、例えばカルムスチン(BiCNU)、ロムスチン(CeeNU);(11)上皮増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、及び血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を含む、受容体チロシンキナーゼの阻害剤、例えばゲフィチニブ(IRESSA)、エルロチニブ(TARCEVA)、ボルテゾミブ(VELCADE)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC)、ゲネフィチニブ(genefitinib)、ラパチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、スニチニブ(SUTENT)、アキシチニブ、リツキシマブ、 トラスツズマブ(HERCEPTIN)、セツキシマブ(ERBITUX)、ベバシズマブ(AVASTIN)、及びラニビズマブ(LUCENTIS)、lym−1(ONCOLYM)、WO2002/053596において開示されるインスリン様増殖因子−1受容体(IGF−1R)に対する抗体);(12)血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(AVASTIN)、スラミン(GERMANIN)、アンジオスタチン、SU5416、サリドマイド、及びマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えばバチマスタット及びマリマスタット)、及びWO2002055106において開示されるもの;並びに(13) プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(VELCADE)が挙げられる。
【0098】
用語「免疫療法剤」は、哺乳動物の免疫応答を増強することができる化学的又は生物学的な物質を指す。免疫療法剤の例としては:カルメット−ゲラン杆菌(BCG);インターフェロンのようなサイトカイン;MyVaxオーダーメイド免疫療法、Onyvax−P、オンコファージ、GRNVAC1、FavId、プロベンジ、GVAX、ロバキシンC、BiovaxID、GMXX、及びNeuVaxのようなワクチン;並びにアレムツズマブ (CAMPATH)、ベバシズマブ(AVASTIN)、セツキシマブ(ERBITUX)、ゲムツズマブ(gemtuzunab)オゾガマイシン(MYLOTARG)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN)、パニツムマブ(VECTIBIX)、リツキシマブ(RITUXAN、MABTHERA)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、トシツモマブ(BEXXAR)、トレメリムマブ(tremelimumab)、CAT−3888、及びWO2003/040170に開示されるCD40受容体に対するアゴニスト抗体のような抗体が挙げられる。
【0099】
用語「ホルモン療法剤」は、ホルモンの産生を阻害若しくは排除するか、又はがん性細胞の増殖及び/若しくは生存に対するホルモンの影響を阻害するか若しくは弱める、化学的又は生物学的な物質を指す。本明細書における方法に適したこのような薬剤の例としては、US20070117809に開示されるものが挙げられる。特定のホルモン療法剤の例としては、タモキシフェン(NOLVADEX)、トレミフェン(Fareston)、フルベストラント(FASLODEX)、アナストロゾール(ARIMIDEX)、エキセメスタン(AROMASIN)、レトロゾール(FEMARA)、酢酸メゲストロール(MEGACE)、ゴセレリン(ZOLADEX)、及びロイプロリド(LUPRON)が挙げられる。本開示の結合分子はまた、非薬物ホルモン療法、例えば(1)ホルモンの産生に関与する器官又は腺、例えば卵巣、精巣、副腎、及び下垂体の全て又は一部を取り除く外科的方法、並びに(2)患者の器官又は腺が、標的のホルモンの産生を阻害又は排除するために十分な量で放射線を受ける、放射線処置と組み合わせて使用され得る。
【0100】
がんを処置するための併用療法はまた、本開示により提供される結合分子と腫瘍を取り除くための手術との組み合わせを含む。本結合分子は、この手術の前、間、又は後に哺乳動物に投与され得る。
【0101】
がんを処置するための併用療法はまた、本開示により提供される結合分子と、放射線療法、例えば電離(電磁)放射線療法(例えば、X線又はガンマ線)及び粒子ビーム放射線療法(例えば、高線エネルギー放射線)との組み合わせも含む。放射線源は哺乳動物に対して外部でも内部でもよい。本結合分子は、放射線療法の前、間、又は後に哺乳動物に投与され得る。
【0102】
結合分子と組成物の投与
本開示により提供される結合分子及び組成物は、投与のあらゆる適切な経腸経路又は非経口経路を経由して投与され得る。用語投与の「経腸経路」は、胃腸管のいずれかの部分を経由する投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、口腔及び直腸経路又は胃内経路が挙げられる。投与の「非経口経路」は、経腸経路以外の投与経路を指す。投与の非経口経路の例としては、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内、皮下、又は局所投与が挙げられる。本開示の抗体及び組成物は、あらゆる適切な方法を使用して、例えば経口摂取、経鼻胃管、胃造瘻チューブ、注射、注入、埋め込み型注入ポンプ、及び浸透圧ポンプにより投与され得る。投与の適切な経路及び方法は、多数の因子、例えば使用される特定の抗体、所望の吸収速度、使用される特定の剤形又は投薬形態、処置される障害の種類又は重篤度、特定の作用部位、及び患者の状態に依存して変更され得、そして当業者により容易に選択され得る。
【0103】
用語「治療有効量」の結合分子は、意図される治療目的に有効な量を指す。例えば、免疫応答を増強する文脈において、「治療有効量」は、哺乳動物の免疫系のいずれかの応答を、刺激、惹起、増加、改善又は増大する際に有効である量である。がんを処置する文脈において、「治療有効量」は、がん細胞のさらなる増殖又は広がりの阻害、がん細胞の死、がんの再発の阻止、がんに付随する疼痛の低減、又は哺乳動物の改善された生存期間のような任意の所望の又は有益な効果を、処置される哺乳動物において引き起こするために十分である量である。がんを予防する方法において、「治療有効量」は、結合分子が投与される哺乳動物においてがんの発生を遅延、阻止、又は防止する際に有効である量である。結合分子の治療有効量は、哺乳動物の体重の通常約0.001〜約500mg/kg、そしてより通常では約0.05〜約100mg/kgの範囲に及ぶ。例えば、この量は、哺乳動物の体重の約0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、又は100mg/kgであり得る。いくつかの実施態様において、OX40R抗体の治療有効量は、哺乳動物の体重の約0.1〜30mg/kgの範囲である。投与されるべき正確な投薬レベルは、当業者により容易に決定することができ、そして多数の因子、例えば処置される障害の種類及び重篤度、使用される特定の結合分子、投与経路、投与の時間、処置の期間、使用される特定のさらなる療法、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び以前の病歴、並びに医療技術分野で周知の同様の因子に依存する。
【0104】
結合分子又は組成物は、通常、複数回投与される。単一の投与の間の間隔は、例えば毎週、毎月、3カ月毎、又は毎年であり得る。典型的な処置レジメンは、週に一度、二週毎に一度、三週毎に一度、四週毎に一度、一ヶ月に一度、三ヶ月に一度、又は3〜6ヶ月毎に一度の投与を必要とする。OX40R抗体用の典型的な投薬レジメンとしては、以下の投与スケジュールの1つを使用して静脈内投与を介する1mg/体重1kg又は3mg/体重1kgが挙げられる:(i)6回の投薬について四週毎、次いで三カ月毎;(ii)三週毎;(iii)3mg/体重1kgを1回、続いて三週毎に1mg/体重1kg。
【実施例】
【0105】
実施例1:OX40R抗体の調製
本開示に従う例となる抗体を、以下のように調製し、選択し、そしてアッセイを行った:
【0106】
OX40R抗原を用いた免疫及びOX40R モノクローナル抗体を産生するマウスの選択:
ヒトOX40Rに対する完全ヒトモノクローナル抗体を、ヒトIgトランスジェニックマウス系統HCo7、HCo12、Hco17、及びHco27、さらにヒトトランス染色体(transchromosomal)/トランスジェニック系統、KM(Medarex、Inc.)を使用して調製した。これらの系統は全て、ヒトから単離された抗体と区別できない完全ヒト抗体を発現する。
【0107】
トランスジェニック系統において、内因性マウスカッパ軽鎖遺伝子及び内因性マウス重鎖遺伝子の両方を、それぞれChen et al. (1993) EMBO J. 12:821−830及びWO 01/09187の実施例1に記載されるようにホモ接合的に分断した。さらにそれらは、Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845−851に記載されるようにヒトカッパ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有していた。対照的に、導入遺伝子系統はそれらのヒト重鎖遺伝子に関して異なっていた。HCo7系統は、米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号、及び同第5,545,807号に記載されるように、HCo7 ヒト重鎖導入遺伝子を保有しており;HCo12系統は、WO 01/09187の実施例2において記載されるように、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子を保有しており;Hco17系統は、Deshpande et al.、US 2005/0191293A1の実施例8に記載されるようにHco17 ヒト重鎖導入遺伝子を保有しており;Hco27系統は、PCT/US2008/072640(2008年8月08日出願)の実施例5に記載されるように、Hco27ヒト重鎖導入遺伝子を保有していた。KM系統は、Ishida et al.、(2002)、Cloning and Stem Cells、4: 91−102に記載されるようにヒトミニ−染色体を、保有している。
【0108】
HuMabマウスの一般的な免疫スキームはLonberg et al. (1994) Nature 368(6474): 856−859;Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845−851;及びPCT公開WO 98/24884に記載されている。
【0109】
HCo7、HCo12、Hco17、Hco27及びKM系統のHuMabマウスを、6−16週齢で開始して、精製されたヒト組み換えOX40R−Igタンパク質及びマウスプレB細胞株、300−19 (Reth、M. G. et al.、Nature 312 29: 418−42、1984;Alt、F. et al.、Cell 27: 381−390、1981)15−25μgを用いて免疫し、トランスフェクトしてRibiアジュバント中でヒトOX40Rを発現させた。精製されたヒト組み換えOX40R−Igタンパク質は、ヒトIgG1の定常領域に融合したヒトOX40Rの細胞外ドメイン(アミノ酸1−220)の構築物である。投与は、腹腔内、皮下又は足蹠中への注射により3−28日の間隔で、合計10回までの免疫を行った。免疫応答を、以下に記載されるようなELISA及びFACSスクリーニングを介してモニタリングした。
【0110】
OX40R抗体を産生するHuMabマウスの選択
OX40Rに結合する抗体を産生するHuMabマウスを選択するために、免役したマウスから血液を採取し、精製ヒトOX40R組み換えタンパク質に対する特異的結合についてELISAにより分析し、そしてFACSにより、全長ヒトOX40Rを発現している細胞株に対する結合、及びOX40Rを発現していないコントロール細胞株に結合しないことについて分析した。
【0111】
ELISA結合アッセイは、Fishwild et al. (1996)、Nature Biotechnology 14:845−851に記載されるとおりであった。手短には、マイクロタイタープレートを、PBS中1μg/mlを含有する精製組み換えOX40R−Ig溶液50μl/ウェルを使用してコーティングし、終夜4℃でインキュベートした。次いでウェルを PBS/Tween(0.05%)中5%ニワトリ血清200μl/ウェルを使用してブロックした。OX40R免疫マウス由来の血漿の希釈を各ウェルに加え、そして1時間周囲温度でインキュベートした。これらのプレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合されたヤギ−抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体とともに1時間室温でインキュベートした。洗浄後、プレートをABTS基質(Moss Inc.、製品番号: ABTS−1000mg/ml)を用いて顕色させ、分光光度計でOD405にて分析した。
【0112】
FACSアッセイを従来の手順に従って行った。手短には、OX40Rを発現している300−19細胞を、1:20で希釈した免疫マウス由来の血清とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、そして特異的抗体結合をFITC標識抗ヒトIgG Abを用いて検出した。フローサイトメトリー分析をFACSフローサイトメトリー機器(Becton Dickinson、San Jose、CA)で行った。
【0113】
最も高いOX40R抗体価を発生させたマウスを融合に使用した。以下に記載されるように融合を行い、そしてハイブリドーマ上清を抗OX40R活性についてELISA及びFACSにより試験した。
【0114】
OX40Rに対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作成:
前記の選択されたマウスを、OX40R−Igで3日静脈内に追加免疫し、次いで再び犠牲にする前2日追加免疫し、そして脾臓及び/又はリンパ節を取り出した。
【0115】
免疫HuMabマウス又はKMマウスから単離した脾細胞及び/又はリンパ節リンパ球を、電気融合(E−融合(E−fusion)、Cyto PulseTM技術、Cyto PulseTM Sciences、Inc.、Glen
Burnie、MD)を使用して、標準的な又は製造業者が推奨するプロトコルにしたがってSP2/0非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL−1581)に融合した。手短には、免疫マウス由来の脾細胞及び/又はリンパ節リンパ球の単細胞懸濁液を調製し、次いで同数のSP2/0非分泌マウス骨髄腫細胞と混合し;次いでE−融合を行った。
【0116】
次いで細胞を2×104細胞/ウェルで平底マイクロタイタープレートに入れて、10% ウシ胎仔血清、10% P388D1 (ATCC、CRL−TIB−63)馴化培地、DMEM中3−5%(IGEN)(Mediatech、Herndon、VA、Cat. No. CRL 10013、高グルコース、L−グルタミン及びピルビン酸ナトリウムを含む)、7mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、0.1 IU/mLペニシリン−0.1 mg/mLストレプトマイシン、及び1× HAT(Sigma、カタログ番号CRL −P−7185)を含有する選択培地中で10−14日間インキュベートした。
【0117】
1〜2週間後、HATをHTと置き換えた培地中で細胞を培養した。細胞をプレーティングした約10〜14日後に、個々のウェルからの上清を、ヒトガンマ、カッパ抗体の存在についてスクリーニングした。次いでヒトガンマ、カッパについて陽性と採点された上清を、ELISA及びFACSにより(上記のプロトコールを使用して)ヒトOX40RモノクローナルIgG抗体についてスクリーニングした。抗体を分泌しているハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再度スクリーニングし、そしてヒトOX40R IgGモノクローナル抗体について陽性と確認された場合、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングした。次いで安定なサブクローンをインビトロで培養して、さらなる特徴付けのために組織培養培地中で少量の抗体を作成した。
【0118】
実施例2:生物学的/薬理学的実施例
A.インビトロ試験手順:
OX40Rの細胞外ドメインに対する結合:ヒトOX40−Ig融合タンパク質を、BupHTM炭酸緩衝液、pH 9.4 (Pierce、Rockford、IL)で希釈し、96ウェルMaxisorbプレート(Nunc、Roskilde、Denmark)上に100μl/ウェル(0.25μg/ml)でコーティングし、そして終夜4℃でインキュベートした。プレートをPBS (Sigma、St Louis、MO)で希釈した0.05% Tween20(Sigma、St Louis、MO)を含有する洗浄緩衝液で3回洗浄し、そしてPBS中0.5% BSA (Sigma、St Louis、MO)300μl/ウェルで1時間室温にてブロックした。次に、プレートを洗浄し、そしてブロッキング緩衝液で種々の濃度で希釈された抗ヒトOX40反応性抗体(100μl/ウェル)とともにインキュベートし、そして1時間室温でインキュベートした。次いでプレートを洗浄し、そして1時間室温で西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトカッパ鎖抗体(Bethyl Laboratories、Montgomery、TX)とともにブロッキング緩衝液中25ng/mlでインキュベートした。最後に、アッセイプレートを洗浄し、そして100μl/ウェルの1−Step Turbo−TMB基質(Pierce、Rockford、IL)を30分間室温で加えた。等体積の2M H2SO4を加えることにより反応を停止させて、吸光度を450nmでMolecular Devices Spectra Max 340 (Molecular Devices、Sunnyvale、CA)にて読み取った。
【0119】
細胞表面OX40RへのFACSベースの結合: OX40Rを発現している細胞株(以下を参照のこと)又は活性化初代末梢血単核球(以下を参照のこと)を、ヒト及びカニクイザルOX40受容体の両方に対する結合を評価するために使用した。細胞を採取し、そして洗浄緩衝液を使用して室温で洗浄した(5×105/チューブ)。洗浄緩衝液は、PBS、2%熱不活化ウシ胎児血清(Hyclone、Logan、UT)及び0.02%アジ化ナトリウム(Sigma、St. Louis、MO)から構成されていた。次に、種々の濃度の抗体100μlを細胞に加え(30ug/mlで開始して3倍滴定(titration)を使用)、サイトコラシン(cytocholasin)B(Sigma、St. Louis、MO)0.005mg/mlを含有する洗浄緩衝液で希釈した。細胞を室温で3時間穏やかに振盪させた。次に、細胞を2回洗浄し、そして0.5ml/チューブで冷洗浄緩衝液を用いて再懸濁し、10,000イベントを集めてBecton Dickinson FACSCalibur及びCellQuestソフトウエア(San Jose、CA)を使用して解析した。
【0120】
Biacoreアッセイ:バイオセンサー生体特異的相互作用分析機器(BIAcore 2000)は、CM5センサーチップ上の分子相互作用を測定するために表面プラズモン共鳴を使用する。センサーチップのデキストラン側に対する分子の相互作用により生じる2つの媒体(ガラス及びカルボキシメチル化デキストラン)間の屈折率の変化を測定し、そして製造業者のアプリケーションノートに詳述されるように任意の反射率単位(reflectance units)(RU)の
変化として報告した。
【0121】
CM5センサーチップ上のカルボキシメチル化デキストラン表面を、0.2 M N−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドで媒介して0.05M N−ヒドロキシスクシンイミドで7分間誘導体化することにより活性化した。10mM 酢酸Na(pH4.5)中500μg/mlの濃度でストレプトアビジン(Sigma S−4762)を3つの表面(Flow Cell−2、3及び4)上に5μl/分の速度で注入して、フローセル表面に約2500RUで共有結合的に固定化した。10mM酢酸Na緩衝液35μlを、抗原の代わりに固定化の間Flow cell−1上に注入して、非特異的結合を測定するための活性化ブランク表面を作製した。四つのフローセル上の未反応のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの不活化を、1Mエタノールアミン塩酸塩(pH 8.5)を使用して行った。固定化の後、フローセルから、安定なベースラインが達成されるまで50mM NaOH 5μlを5回再生注入(regeneration injections)して、あらゆる未反応又は不十分に結合した細胞を清浄化した。
【0122】
10μg/mlの濃度のビオチン化CD134−muIg(Ancell 513−030)を、5μl/分の流量で手動でFlow cell−2、3及び4上に注入して3つの表面密度を達成した:Fc−2=150RU、Fc−3=375RU及びFc−4=580RU。種々の密度の表面を、会合相(association phase)中の物質移動(mass transport)制限結合及び解離中の再結合(両方とも、表面密度により影響を受け、避けられなければならないアーチファクトである)の可能性をモニタリングするために調製した。
【0123】
OX40R抗体の一連の希釈を、ランニングバッファー(0.01M HEPES、pH 7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%ポリソルベート20(v/v))で半対数で666nM〜66pMの濃度範囲にわたって調製した。流量を5μl/分に設定し、注入される抗体の各濃度間の50mM NaOH 5μlを再生注入と共に各濃度点サンプル25μlをセンサーチップ上に注入した。解離時間は5分であった。このデータをBIAevaluation 3.0グローバルフィット(global fit)ソフトウエアを使用して解析した(各濃度点の別々の解析)。
【0124】
エピトープキャラクタリゼーション: OX40の1−235アミノ酸配列(細胞外及び膜貫通ドメイン)及びCD40の216−278アミノ酸配列(細胞内ドメイン)に対応する組み換えヒトOX40−CD40融合構築物を発現している300−19細胞を抗体エピトープ解析に使用した。OX40−CD40発現細胞株を、10%ウシ胎児血清(Hyclone、Logan、UT)、10mM hepes、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、 0.1mM非必須アミノ酸及び0.05mM 2−メルカプトエタノール(Gibco、Grand Island、NY)を補充したRPMI培地(Gibco、Grand Island、NY)中で増殖させた。300−19.hCD134.2細胞(5×105/チューブ)を冷洗浄緩衝液(PBS、2% FBS及び0.02%アジ化ナトリウム)3mlで1回洗浄した。細胞上清を吸引し、そして一次非結合OX40反応性抗体300μg/mlを含有する洗浄緩衝液100μlを細胞ペレットに加え、混合し、そして30分間4℃でインキュベートした。次に、蛍光色素で標識した二次抗体をチューブに加え、混合し、そしてさらに30分間4℃でインキュベートした。OX40反応性蛍光色素標識抗体は、フィコエリトリン(PE)標識Ber Act 35(Caltag Laboratories、Burlingame、CA.)、PE標識L106(BD Pharmingen、San Jose、CA)又はAlexa Fluor 647結合OX40R抗体のいずれか10μlを含んでいた。OX40R抗体に、Alex Fluor 647タンパク質標識キットを使用して製造業者(Molecular Probes、Eugene、OR)によって記載されているように蛍光色素を標識した。次いで染色後に、細胞を洗浄緩衝液で3回洗浄し、冷洗浄緩衝液に再懸濁し、そして10,000イベントを集め、そしてBecton Dickinson FACSCalibur及びCellQuestソフトウエア(San Jose、CA)を使用して解析した。抗体は、一次抗体が二次蛍光色素標識抗体の染色を80%より多くブロックした場合に、同じエピトープに結合するものとして落された(demeaned)。
【0125】
抗体OX40リガンド−OX40R阻害アッセイ: 300−19ヒトOX40リガンド(L)を発現している細胞の、OX40−ヒトIgG1融合タンパク質コーティングプレートへの結合をブロックするそれらの能力について抗体を試験した。300−19−OX40L細胞株を、10%ウシ胎仔血清(Hyclone、Logan、UT)、10mM HEPES、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、0.05mM 2−メルカプトエタノール及び0.5 mg/mlジェネティシン(Gibco、Grand Island、NY)を補充したRPMI培地(Gibco、Grand Island、NY)中で増殖させた。OX40−ヒトIgG1融合タンパク質は、細胞外OX40タンパク質の最初の220個のアミノ酸を含む。この融合タンパク質を、Nunc Maxisorbプレート(Nunc、Roskilde、Denmark)上に100μ/ウェル(5μg/ml)でコーティング緩衝液(BupH、炭酸−重炭酸緩衝液、Pierce、Rockford、IL)にてコーティングし、そして終夜4℃でインキュベートした。次に、プレートをペーパータオル上でブロットして液体を除き、200μl/ウェルでブロッキング緩衝液(PBSで希釈された5% Carnation Milk)を用いてブロックし、そして室温で2時間インキュベートした。プレートをPBSで洗浄し、次いでPBSで希釈された種々の希釈の抗体をアッセイプレートに加えて(50μl/ウェル)、室温で30分インキュベートした。次に、PBS中の細胞50μl/ウェルを6×105/ウェルで、抗体を含有するウェルに加え、そしてさらに60分間37℃で5%CO2加湿チャンバー内でインキュベートした。プレートをPBSで2回穏やかに洗浄して、付着していない細胞を除去し、そしてウェルにおける細胞活性を、20ug/mlフルオレセインジアセタート(Sigma、St. Louis、MO)PBS溶液200μlを各ウェルに加えることにより測定した。プレートを37℃で5%CO2加湿チャンバー中で90分間インキュベートし、そして分光光度計を使用して490で読み取った(Spectra Max 340、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)。
【0126】
OX40R抗体選択性アッセイ(ELISA): Maxisorb96ウェルプレート(Nunc、Roskilde、Denmark)を、BupHTM炭酸緩衝液、pH 9.4 (Pierce、Rockford、IL)で希釈した0.25μg/mlのヒトTNFα受容体ファミリーメンバー融合タンパク質100μlでコーティングし、そして終夜4℃でインキュベートした。試験した選択性受容体融合タンパク質は、CD40−Ig(Alexis Biochemicals、San Diego、CA)、CD137−Ig(R&D Systems、Minneapolis、MN)及びCD271−Ig (Alexis Biochemicals、San Diego、CA)を含んでいた。また、各アッセイでのポジティブコントロールとして、OX40−Ig融合タンパク質(社内構築物、Bioexpress、97/2117)も含まれていた。次いでプレートを、PBSで希釈された0.05% Tween20(Sigma、St Louis、MO)を含有する洗浄緩衝液で3回洗浄し、そしてPBS(Sigma、St Louis、MO)中0.5%BSA(Sigma、St Louis、MO)300μlで1時間室温にてブロックした。次に、プレートを洗浄し、そして100μl/ウェルの抗ヒトOX40反応性抗体を種々の濃度でプレートに加え、そして1時間室温でインキュベートした。プレートを十分に3回洗浄し、そしてOX40R抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトカッパ鎖抗体(Bethyl Laboratories、Montgomery、TX)を用いて25ng/mlで1時間室温にて検出した。次いでプレートを3回洗浄し、続いて100μl/ウェルの1−Step Turbo−TMB基質(Pierce、Rockford、IL)を30分間室温で加えた。等体積の2M H2SO4を加えることにより反応を停止させた。吸光度をMolecular Devices Spectra Max 340 (Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で450nmにて読み取った。
【0127】
種交差反応性:OX40Rを発現している細胞:OX40Rの1−235(細胞外及び膜貫通ドメイン)及びCD40の216−278(細胞内ドメイン)に対応する組み換えヒトOX40−CD40融合構築物又は完全カニクイザルOX40Rタンパク質のいずれかを発現している300−19細胞株。
【0128】
ヒトTリンパ球の調製:ヒト全血をヘパリン化シリンジ(Baxter;Deerfield、IL)中に採取し、次いで末梢血単核球(PBMC)の単離のために製造業者により記載されているように直ぐにSigma Accuspinチューブ(Sigma、St. Louis、MO)に移した。PBMCをDPBSで2回洗浄し、そしてTリンパ球を、製造業者(R & D Systems、Minneapolis、MN)により記載されているように、T細胞精製カラムを使用して単離した。手短には、PBMCをカラム緩衝液2ml中に再懸濁し、そして予備洗浄したT細胞単離カラムにロードした。PBMCを10分間室温でインキュベートし、そしてT細胞をカラム緩衝液で溶出し、1回洗浄し、そして10%ウシ胎仔血清(Hyclone、Logan、UT)及びL−グルタミン(2mM)、Hepes(10mM)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(50 ug/ml)(Gibco、Grand Island、NY.)を補充したRPMI 1640 (Sigma、St Louis、MO)からなるTCMに2×106/mlで再懸濁した。抗ヒトCD28 抗体を1ug/ml(クローン37407、R & D Systems、Minneapolis、MN)で含有する体積2mlのT細胞を、抗ヒトCD3抗体クローンUCTH1(R & D Systems、Minneapolis、MN )でPBS中5μg/mlでプレコーティングした24ウェルプレートのウェルに加えた。T細胞培養を フローサイトメトリーによりヒトOX40交差反応性について試験する前3日間刺激した。
【0129】
カニクイザルPBMCの調製: カニクイザル全血を、ヘパリン化バキュテナーチューブ(BD;Franklin Lakes、NJ)を使用して採取し、そしてPBSで1:4に希釈した。希釈した全血を混合し、そして15mlを、等体積のHistopaque1077(Sigma、St Louis、MO)上に注意深く層にした。これらのチューブを1000xgで45分間室温にて回転させて単核PBMC界面を採取し、PBS中で1回洗浄し、そしてACK溶解緩衝液(Biosource、Rockville、MD)を用いて2分間室温で再懸濁させてあらゆるRBCを除去した。PBS洗浄後、PBMCを計数し、そして組織培養培地(TCM)中1×106/mlに再調整した。TCMは、10%ウシ胎仔血清(Hyclone、Logan、UT)及びL−グルタミン(2mM)、Hepes (10mM)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン (50ug/ml)(Gibco(Grand Island、NY)から購入)を補充したRPMI 1640 (Sigma、St Louis、MO)からなっていた。次に、抗ヒトCD28交差反応性抗体(クローンCD28.2、BD Biosciences、San Diego、CA)を含有するPBMC標本2mlを、抗サルCD3抗体(クローンFN18、Biosource、Camarillo、CA)でPBS中10μg/mlでプレコーティングした 24ウェルプレート(Costar、Corning、NY)のウェルに加えた。PBMC培養をフローサイトメトリーによりヒトOX40交差反応性について試験する前4日間刺激した。
【0130】
ウサギPBMCの調製: ウサギ全血をヘパリン化バキュテナーチューブ(BD;Franklin Lakes、NJ)中に採取し、そして直ぐに温HBSS(Gibco、Grand Island、NY)で1:3希釈した。混合した後、希釈した血液5mlを、等体積のLympholyte−Rabbit (Cedarlane Laboratories、Westbury、NY)上に注意深く層にして、30分間25℃で遠心分離した。PBMC界面を集め、PBSで2回洗浄し、そしてPHAを10ng/mlで含有するTCM(Remel、Lenexa、KS)中に再懸濁して2×106/mlとした。細胞を24〜48時間培養した。
【0131】
イヌPBMCの調製: イヌ全血を、ヘパリン化バキュテナーチューブ(BD;Franklin Lakes、NJ)を使用して採取した。次に、この血液を等体積の温HBSS (Gibco、Grand Island、NY)と混合した。希釈した血液4mlを、15ml円錐管中Lympholyte−M (Cedarlane Laboratories、Westbury、NY)3ml上でゆっくりと層にした。これらのチューブを20分間800xgで遠心分離し、そしてPBMC界面を集め、HBSSで2回洗浄し、そしてTCM中に2×106/mlで再懸濁した。PBMCを24ウェルプレートのウェルに加え(2ml/ウェル)、そして細胞を2μg/mlのConA(Sigma、St. Louis、MO)で48時間刺激した。
【0132】
マウス及びラットPBMCの調製:ヘパリン化シリンジに採取されたラット全血を温HBSS中1:3に希釈した。次に、5mlを、等体積のLympholyte−Rat (Cedarlane Laboratories、Westbury、NY)上で注意深く層にした。これらのチューブを20分間1500RPMで遠心分離した。PBMC界面を集め、2回洗浄し、そして細胞ペレットをTCM中2×106/mlに再調整した。細胞2mlを、24ウェルプレートの各ウェルに加え、そしてフローサイトメトリー染色の前に、PHA(Remel、Lenexa、KS)で24−48時間10ng/mlにて刺激した。
【0133】
種交差反応性についてのフローサイトメトリー染色: 刺激したマウス、ラット、ウサギ、イヌ、及びカニクイザルのPBMC及びカニクイザルOX40受容体を発現している300−19細胞株を、ヒトOX40抗体種交差反応性を試験するために使用した。活性化Tリンパ球を発現しているヒトOX40及びOX40形質導入300−19細胞をポジティブコントロールとして使用した。細胞(5.0×105/チューブ)を冷洗浄緩衝液(PBS、2%FBS及び0.02%アジ化ナトリ
ウム)で1回洗浄し、そして100μl/チューブのAlexa Fluor 647結合コントロール又はOX40反応性抗体5ug/mlを各チューブに加えた。Alex Fluor 647タンパク質標識キットを使用して製造業者(Molecular Probes、Eugene、OR)により記載されているように抗体を標識した。細胞を暗所で蛍光色素抗体とともに氷上で30分間インキュベートし、3回洗浄し、そして0.5ml洗浄緩衝液中に分析のために再懸濁した。抗体染色を測定し、Becton Dickinson FACSCalibur及びCellQuestソフトウエア(San Jose、CA)を使用して解析した。
【0134】
ルシフェラーゼ活性アッセイ: NfkBレポーター含有ルシフェラーゼに融合されたOX40の細胞外ドメイン及びCD40の細胞内ドメインを含む293T細胞を調製した。細胞を採取し、洗浄し、そしてフェノールレッドを含まない完全培地(10%ウシ胎仔血清、HEPES緩衝液、非必須アミノ酸及びL−グルタミンを含有するDMEM)中に0.5X106細胞/mlの濃度で再懸濁した。80ulの細胞を96ウェルプレート(PerkinElmer、部品番号6005680)の各アッセイウェルにプレートした。試験抗体を各ウェルに単独で、又は架橋抗体Fab’ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)の存在下で加えた。プレートを終夜37Cでインキュベートした。100ulのルシフェラーゼ(Promega、Bright−glo luciferassay システム、カタログ番号E2620)を翌日に加え、そしてルシフェラーゼ活性の量をシンチレーションカウンター(TopCount、Packard −NXT)を使用して測定した。
【0135】
ヒトαCD3 IL−2アッセイ: ヒト全血をヘパリン化(Baxter;Deerfield、IL)シリンジに採取し、Accuspinチューブ(Sigma;St. Louis、MO)上で層にして、15分間2000rpmで遠心分離した。バフィーコートを集め、PBS(Sigma、St. Louis、MO)で洗浄し、そして赤血球を水で溶解した。T細胞をヒトCD3+富化カラム(R&D;Minneapolis、MN)により分離し、計数し、そして10%ウシ胎仔血清 (Hyclone;Logan、UT)、10mM hepes、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン及び0.1mM非必須アミノ酸(全てGibco)を含有するRPMI培地(Gibco;Grand Island、NY)中1×106/mlに調整した。同時に、ヒト抗−CD3εクローン#UCHT1(R&D systems、Minneapolis、MN)を PBS中2.5μgs/mlで24ウェルプレート(Costar;Corning、NY)中に入れて、2時間37℃でインキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄し、そして以下をウェルに加えた:1×106/ウェルのT細胞、OX40抗体(又はIgG2 KLHコントロール)の連続希釈及び架橋するためのF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(2.5ug/mLで添加)。上清を48時間及び72時間目に抜き取り、IL−2レベルをELISA(R&D)により評価した。
【0136】
カニクイザルαCD3 IL−2アッセイ:カニクイザル全血をヘパリン化チューブ(BD;Franklin Lakes、NJ)に採取し、PBSで1:4に希釈し、 Histopaque1077 (Sigma、St Louis、MO)上で層にして、45分間2200rpmで遠心分離した。バフィーコートを集め、PBSで洗浄し、そして赤血球を水で溶解した。細胞を1×106/mlに調整し、そして種々の濃度のサル抗CD3クローンFN−18 (Biosource;Camarillo、CA)で37℃で2時間プレコーティングされた24ウェルプレートに加えた。OX40抗体(又はIgG2KLHコントロール)の連続希釈、さらにはF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgGFcγ(2.5 ug/mL)をウェルに加えた。上清を24時間及び48時間目に採取し、そしてIL−2レベルをELISA(Biosource、Camarillo、CA)により評価した。
【0137】
アロ抗原刺激T細胞アッセイ: 新たに単離したヒトT細胞(上記を参照のこと)をマイトマイシンcで処理した同種異系腫瘍細胞(Raji)とともに3−4日間インキュベートした。次いでT細胞を採取し、洗浄し、そして11D4で刺激する前に新鮮な培地中に1日間静置した。IL−2のレベルを24時間後にELISA(R&D systems、Minneapolis、MN)により評価した。
【0138】
B.インビボ試験手順
ヒトT細胞及び樹状細胞を移植したマウスを使用するSCID−ベージュヒト腫瘍モデル:
SCID−ベージュマウス(Taconic #CBSBG−MM)を、到着後、使用前に5〜7日間馴化させ
た。以下の腫瘍細胞株を使用した: RAJI、ATCC #CCL−86;BT−474、ATCC #HTB−20;PC−3、ATCC#−1435;及びLoVo、ATCC# CCL−229。
【0139】
精製したTリンパ球(T細胞)及び樹状細胞から誘導された単球をヒト血液から以下のように調製した:ヒト単核細胞をヘパリン化血液からSigma Accuspinチューブ#A7054を使用して集めた。細胞を集めてT75フラスコに入れて、3時間37℃にて加湿インキュベーターで5%CO2下にてインキュベートした。非付着細胞を集めて保存した(以下を参照のこと)。付着細胞を含むフラスコを、10ng/mlのIL−4(R&D)及び100ng/mlのGM−CSF(R&D)を補充したRPMI完全培地(10%ウシ胎仔血清含有)20mlと共にインキュベートした。次いで培養物を6〜7日間37℃で加湿インキュベーター中にて5%CO2下でインキュベートした。次いで樹状細胞由来の非付着単球を、デカントしてフラスコをRPMI完全培地で数回すすぐことにより集めた。
【0140】
最初の非付着単核細胞を、製造業者の指示のようにT細胞富化カラム(R&D)を使用して高親和性ネガティブ選択を介してT細胞を精製するために使用した。精製されたT細胞をRecovery−Cell Culture Medium中107/mlで冷凍保存し、使用まで液体窒素で保存した。腫瘍細胞(1×107)を、T細胞(1×106)及び同じドナーからの単球由来樹状細胞(5×105)とともに、0.2mL/マウスで皮下(SC)注射した。腫瘍増殖をカリパスで経時的にモニタリングした。
【0141】
C. 抗体11D4についての結果
(1)インビトロ試験:
インビトロ試験からの抗体11D4の特定の特性を表3にまとめる。
抗体11D4はOX40Rに対して高親和性で結合する。
このことは、OX40Rの細胞外ドメインを含むIgG1融合タンパク質を、そして全細胞(OX40R+トランスフェクトされた細胞及び活性化された初代(primary)T細胞)に対して使用することで実証された。IgG1融合タンパク質を使用する実施例において、11D4はOX40Rの細胞外ドメインに0.5 +/− 0.18μg/mL(3.5nM)のEC50で結合した。この結合は、OX40Rの全長細胞外ドメインを発現している300−19プレB細胞で確認された(親300−19細胞では結合は観察されなかった)。OX40Rトランスフェクト細胞に対する結合のEC50は0.2 +/− 0.16μg/mL(1.7nM)であった。 結合が初代T細胞で観察されることを確認するために、末梢血T細胞を、複数のヒトドナーから単離し、そして抗CD3及び抗CD28で2日間刺激してOX40Rの発現を上方調節した。これらのT細胞に関する飽和結合データは、11D4が0.6 +/−1.0μg/mLのEC50(4.0nM、N=17ドナー)で結合することを示していた。これらのデータは、11D4がOX40Rに非常に強く結合することを示す。
【0142】
この結合をさらにキャラクタライズするために、データを収集して、11D4が相互作用するOX40Rの細胞外ドメイン上の領域を評価し、そして受容体が結合後に内部に移行するか否かも決定した。OX40R IgG1融合タンパク質に対する競合結合データは、11D4がOX40リガンドを発現している細胞との結合を競合することを示し、11D4が受容体のリガンド結合領域において相互作用するという証拠を提供した。さらに、11D4は、FACS分析により評価して、2つの市販のOX40R抗体、BerAct35及びL106とは、T細胞に対する結合に関して交差競合しない。非競合検出抗体を使用するFACS分析は、OX40Rが、初代活性化T細胞を11D4とともに30分間プレインキュベーションした後に内部に移行しないことを指示した。固定化リガンドとしてOX40R細胞外ドメイン融合タンパク質を使用するBiacore分析により決定されたその結合親和性は、11D4の結合に関する平衡解離定数(KD)が0.48nMであることを示していた。またこれらの分析により、11D4の解離速度(off rate)定数(kd)が5.72 E−05 1/秒であると推定された。したがって、11D4は、OX40Rのリガンド結合領域に高親和性で結合し、遅い解離速度定数を有し、そして結合後に受容体の内部に移行しない。
【0143】
抗体11D4は選択的にOX40Rに結合する。
【0144】
OX40Rに関する11D4の選択性を、関連受容体のそれぞれの細胞外ドメインを含むIgG1融合タンパク質構築物に関連するデータを使用して、TNFRスーパーファミリーの他のメンバーに対して評価した。これらの受容体は、CD40受容体、4−1BB受容体(CD137)及び神経成長因子受容体(CD271)を含んでいた。全ての場合において、これらの受容体に対して100μg/mL(700nM)までの濃度では有意な結合は観察されなかった。OX40R融合タンパク質(EC50 = 0.5ug/ml)に対して観察された結合と比較した場合、これらのデータは、11D4が、試験した他の関連ファミリーメンバーに対して、OX40Rに関して>100倍選択的であることを実証した(図1a及び1bを参照のこと)。
【0145】
抗体11D4の機能的活性:
11D4の機能的活性を、OX40R+トランスフェクト細胞及び初代T細胞の両方に対して実証した。これらのアッセイにおいて、二次抗体、F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG Fcγを用いても用いなくても細胞に添加された場合に、11D4はアゴニスト活性 を示した。
【0146】
実験の最初の組において、NFkBルシフェラーゼレポーターとともにCD40の細胞内ドメインに融合されたOX40Rの細胞外及び膜貫通ドメインでトランスフェクトされた293細胞を使用して、11D4をアゴニスト活性について評価した。このアッセイにおいて、11D4は、0.33μg/mLの平均EC50(2.2nM、N=4)で、OX40Rを通してのシグナル伝達を増強した。11D4によるルシフェラーゼの誘導についての典型的な濃度−反応曲線を図2に示す。F(ab’)2二次抗体が存在しない場合、ルシフェラーゼ活性の大きさは、EC50とともに4倍減少した。
【0147】
11D4のアゴニスト活性のさらなる証拠として、抗原特異的T細胞を生成した。新たに単離したヒトT細胞を、マイトマイシンcで処理した同種異系腫瘍細胞(Raji)とともに3−4日間インキュベートした。次いでT細胞を採取し、洗浄し、そして11D4で刺激する前に新鮮な培地中で1日間静置した。FACS分析は、静置した後でもこれらの細胞での高レベルのOX40R発現を指示した。11D4は、これらの細胞により高レベルのIL−2を誘導し、いくつかの場合には100ng/mLを超えていた(図3)。2つの別々のサンプルからのこの反応についての平均EC50は0.008 +/− 0.006mg/mLであった。11D4が存在しない場合、最小レベルのIL−2しかこれらの細胞により分泌されなかった。
【0148】
11D4はまた、抗CD3により刺激された初代ヒトT細胞によるIL−2産生を増強する。このアッセイにおけるシグナル対ノイズ比は、抗CD3のみによるIL−2の誘導に起因していくつかのアッセイにおいて低いが、11D4は、F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG Fcγとともに加えられた場合にIL−2産生を増強した。抗CD3が存在しない場合に、新たに単離されたT細胞に対して11D4についての活性は観察されなかった。11D4によるIL−2増大の大きさは、ドナー及び抗CD3により生成されるIL−2の量に依存して、抗CD3単独に対して2.3〜57倍の範囲に及んだ。2.5μg/mLの抗CD3で刺激された初代ヒトT細胞によるIL−2産生に対する11D4の効果を図4に示す(1:3希釈を用いた8点濃度曲線を使用)。8点濃度反応曲線を使用したデータから算出した平均EC50は、0.042 +/− 0.01μg/mLであった(表4を参照のこと)。
【0149】
IL−2産生に対する11D4の機能的活性もまた、抗CD3及び11D4(F(ab’)2二次抗体とともに)を用いて刺激したサル細胞を使用してアッセイを行った。結果を図5及び表5において示す。これらのデータは、11D4についてのEC50はサル細胞とヒト細胞との間で類似している(0.022対ヒト細胞について0.042μg/mL)が、抗CD3単独を上回って誘導されるIL−2の規模が、カニクイザルT細胞を使用すると有意に低い(約35倍、ヒト細胞について5762 +/− 4748 pg/mL IL−2(N=21)であるのに対し、サル細胞について261 +/− 294 pg/mL IL−2(N=9))ことを示した。
【0150】
種交差反応性:
11D4を、複数の種由来のT細胞に結合するその能力について評価した。T細胞をマウス、ラット、ウサギ、イヌ及びサルから単離し、そして抗CD3+抗CD28又はマイトジェンのいずれかを用いて活性化した。マウス、ラット、ウサギ、又はイヌの細胞においてFACS分析で指示されているように、結合は観察されなかった。マウスOX40Rに対する結合がないことは、マウスOX40Rの細胞外ドメインを含む市販の融合タンパク質を使用してELISAでも確認された。対照的に、11D4は、FACSによる飽和結合アッセイにおいて決定して、カニクイザルT細胞に結合した。種々のサルを使用して得られるEC50値の範囲を図6に示す。比較のために、ヒト細胞を使用して得られるEC50値の範囲を図7に示す。変動しやすいが、EC50値の範囲はサル細胞とヒト細胞の間に類似している(平均値はサル細胞について0.354μg/mLに対してヒト細胞について0.566μg/mLである)。
【0151】
(2)インビトロ試験:
マウスOX40Rとの11D4の交差反応性がないことにより、重症複合免疫不全(SCID)ベージュマウスを使用する異種間腫瘍モデルの開発が必要とされた。SCID−ベージュマウスは、マウスT及びBリンパ球、及びNK細胞を欠失しており、それによりヒト免疫細胞の移植及びヒト腫瘍の増殖のための理想的なレシピエントとなっている。さまざまな腫瘍の型を代表する4つの腫瘍細胞株をこのインビボモデルにおいて試験した。腫瘍株はどれもOX40Rを発現していなかった。全ての場合において、腫瘍細胞(1×107)を、同じドナー由来のT細胞(1×106)及び単球誘導樹状細胞(5×105)とともに皮下(SC)注射した。腹腔内(IP)注射により投与された11D4 は、表6にまとめられているように、これらのモデルにおいて98%まで腫瘍増殖を阻害した。投与のIP経路は、その投与の容易さ及び末梢血中への速い伝搬という理由から11D4のために選択された。
【0152】
SCID−ベージュマウスにおけるB細胞リンパ腫に対する11D4の有効性:
SCID−ベージュマウスに、ヒトT細胞及び単球誘導樹状細胞とともにバーキットB細胞リンパ腫、RajiをSC注射した。マウスに、11D4又はアイソタイプコントロール抗体(IgG2抗KLH)のいずれかを腫瘍注射時に単回IP注射した。図8に示されるように、11D4は、処置された動物において腫瘍増殖の速度を減少させた。各個々の動物(N=10)におけるチャレンジ21日後での腫瘍サイズを図9に示し、これは、10mg/kgの用量レベルによって腫瘍増殖の64%阻害を示す。T細胞及び樹状細胞が存在しない場合は活性は観察されなかった。
【0153】
前立腺腫瘍モデルにおける11D4の有効性:
SCID−ベージュマウスに、ヒトT細胞及び単球誘導樹状細胞とともに、前立腺腺がんPC−3をSC注射した。マウスに、11D4又はアイソタイプコントロール抗体(IgG2抗KLH)のいずれかを、腫瘍注射時に単回IP注射した。その結果(図10に示される)は、11D4処置が腫瘍増殖の用量依存性阻害を生じたことを示す。この試験からのチャレンジ27日後における各個々の動物(N=10)における腫瘍サイズ は図11に示されており、これは、動物に1.0mg/kgの11D4の単回注射を投与した場合の腫瘍増殖の70%阻害、及び10mg/kgの用量での90%阻害を示している。これらの動物において27日目に測定された11D4の血漿レベルは、1.0mg/kg用量レベルで6.2μg/mLであった。
【0154】
結腸がん腫モデルにおける11D4の有効性:
SCID−ベージュマウスに、ヒトTリンパ球及び自己単球誘導樹状細胞とともに、結腸直腸腺がんLoVoをSC注射した。マウスに、11D4又はコントロール抗体(IgG2抗KLH)のいずれかを腫瘍注射時に単回IP注射した。その結果(図12に示される)は、11D4がこれらの動物において用量依存的に腫瘍増殖を減少させたことを示す。チャンレンジ27日後におけるこの研究からの各個々の動物(N=10)における腫瘍サイズを図13に示し、これは1.0mg/kgの単回用量を使用した腫瘍増殖の64%阻害、及び10.0mg/kgの用量レベルでの腫瘍増殖の87%阻害を示す。
【0155】
乳がん腫腫瘍モデルにおける11D4の有効性
SCID−ベージュマウスに、ヒトTリンパ球及び自己単球誘導樹状細胞とともに、乳がん腫BT474 をSC注射した。マウスに、11D4又はコントロール抗体(IgG2抗KLH)を、腫瘍注射時及び30日後に再び、2回注射(IP)した。その結果(図14に示される)は、11D4がこれらの動物において腫瘍増殖を減少させたことを示す。この研究からの各動物(N=10)におけるチャンレンジ85日後の腫瘍サイズを図15に示し、これは、10.0 mg/kgの用量レベルでの腫瘍増殖の98%阻害、及び1mg/kgの用量での85%阻害を示している。
【0156】
D.抗体18D8についての結果
(1)インビトロ試験:
抗体18D8についてのインビトロ試験からの結果を表7にまとめる。
種々のドナー由来の初代ヒトT細胞による抗CD3誘導IL−2産生に対する抗体18D8の効果もまた表8に示す。
【0157】
(2)インビボ試験:
SCID−ベージュマウスモデルにおけるB細胞リンパ腫に対する18D8の有効性
SCID−ベージュマウスに、ヒトTリンパ球及び自己単球誘導樹状細胞とともに、バーキットB細胞リンパ腫、RajiをSC注射した。マウスに、18D8又はアイソタイプコントロール 抗体(IgG2抗KLH)のいずれかを腫瘍注射時に単回IP注射した。1群10匹の動物を各試験において使用した。2つの試験からの結果を表9に示す。その結果は、18D8が1.0mg/kg及び10mg/kgの用量において有意な抗腫瘍有効性を生じたことを示す。T細胞及び樹状細胞が存在しない場合は活性は観察されず、この抗腫瘍効果が免疫仲介され得ることを示唆している。
【0158】
SCID−ベージュマウスモデルにおける前立腺腫瘍に対する18D8の有効性
SCID−ベージュマウスに、ヒトT細胞及び自己単球誘導樹状細胞とともに前立腺腺がんPC−3をSC注射した。マウスに、18D8又はアイソタイプコントロール抗体(IgG2抗KLH)のいずれかを腫瘍注射時に単回IP注射した。1群10匹の動物を試験において使用した。結果を表9に示す。その結果は、18D8処置が、それぞれ0.1mg/kg、1.0mg/kg、及び10mg/kgの用量において腫瘍増殖の42%、90%、及び88%阻害を生じたことを示す。
【0159】
寄託情報
出願人らは、抗体11D4の重鎖をコードするプラスミドを含むE.coli DHα5の培養株及び抗体11D4の軽鎖をコードするプラスミドを含むE.coli DHα5の培養株を、American Type Culture collections (ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209に2007年7月10日に寄託し、これらはそれぞれ寄託番号PTA−8524及びPTA−8525が付与されている。これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約及びそれに基づく規則(ブダペスト条約)の規定の下でなされた。これらの寄託物は、30年間、又は最新の分譲請求から5年間、又は特許の有効存続期間の間のいずれか最長の期間、ATCC寄託機関において制限無く維持され、その期間の間に寄託物が生存しなくなった場合、差し替えられる。寄託された試料の可能性は、いずれかの政府の権限下でその特許法に従って認められる権利に抵触して発明の実施許諾と解釈すべきではない。
【0160】
限定することなく、全ての論文、刊行物、特許、特許出願、書籍、雑誌記事を含む、本明細書中に引用される全ての参考文献は、参照により本明細書中にそれら全体が本明細書により加入される。本明細書における参考文献の考察は、それらの著者による主張を要約することのみを意図するものであり、いずれの参考文献も先行技術を構成するということを認めるものではない。
【0161】
前述の発明がいくらか詳細に、理解の明確さの目的のための説明及び例として記載されてきたが、一定の変更及び改変が、添付の特許請求の趣旨又は範囲から逸脱することなくなされ得ることは、本明細書における教示を考慮すれば当業者に容易に明らかであろう。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
【表5】

【0167】
最後の4つのドナー(18−21)についての値は、8点の1:3又は1:4希釈における用量反応曲線からのものであり;他の全ての値は対数希釈曲線を表す。1:3及び1:4濃度曲線からのEC50は0.042 +/− 0.01 ug/mL、N=4であった。
【0168】
【表6】

【0169】
表6における最後の3つのドナー(33081、33080、及び33062)についての値は、8点1:3希釈での用量−反応曲線からのものである。他の全ての値は対数希釈曲線を表す。1:3希釈を使用する曲線から誘導されたEC50は0.022 +/− 0.01;N=3であった。
【0170】
【表7】

【0171】
【表8】

【0172】
【表9】

【0173】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む抗体と、ヒトOX40Rへの結合を競合する、単離された結合分子。
【請求項2】
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項3】
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(c)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項4】
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(e)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(f)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項5】
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項6】
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項7】
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(b)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項8】
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(d)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(e)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び
(f)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項9】
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、ヒトOX40Rに結合する単離された結合分子。
【請求項10】
(a)1x10-6M又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに結合し;そして
(b)ヒトOX40Rに対してアゴニスト活性を有する、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された結合分子。
【請求項11】
ヒト抗体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項12】
キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項13】
100nM又はそれ以下のKDでヒトOX40Rに結合する、請求項11に記載の抗体。
【請求項14】
配列番号9又は配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、ヒトOX40Rに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項15】
配列番号10又は配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトOX40Rに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項16】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトOX40Rに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項17】
配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトOX40Rに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子、及び任意選択で薬学的に許容しうる担体を含む組成物。
【請求項19】
哺乳動物に治療有効量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子を投与することを含む、それを必要とする哺乳動物においてがんを処置する方法。
【請求項20】
がんが乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、肺がん、又は血液のがんからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物に治療有効量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子を投与することを含む、それを必要とする哺乳動物においてがんを予防する方法。
【請求項22】
哺乳動物に治療有効量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子を投与することを含む、哺乳動物において免疫応答を増強する方法。
【請求項23】
結合分子がヒト抗体である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
結合分子が、請求項16又は17に記載のヒト抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項26】
配列番号11、12、23又は24より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項28】
核酸分子に機能可能に連結された発現制御配列をさらに含む、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
請求項27又は28に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項30】
腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞を、請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子と、又は請求項1〜17のいずれか1項に記載の結合分子を含む組成物と接触させることを含み、ここで結合分子は腫瘍細胞の増殖を阻害するために有効な量である、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−505836(P2011−505836A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538157(P2010−538157)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086417
【国際公開番号】WO2009/079335
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510149389)ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・カンパニー (5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】