説明

ヒトTSH及び犬TSHに対する抗体

【課題】犬TSH抗原を大量に入手することなく、犬TSH抗体を認識して結合する抗体を提供すること。
【解決手段】犬TSHと人TSHに結合するモノクローナル抗体又はその断片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトTSH及び犬TSHに対する抗体、上記抗体を産生するハイブリドーマ、並びに上記抗体を用いた試薬および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルモンは、生体内において、血中に微量に存在し、種々の生理作用を司る物質である。甲状腺ホルモンの1種である甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺機能を判定・把握するために、しばしば臨床現場において測定が行われる。正常な状態においては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって甲状腺が刺激され、サイロキシン(T4)が分泌される。ところが、橋本病のような甲状腺機能が低下している場合、TSHが分泌されているにも関わらず、T4が分泌されないという事態が発生する。従って、TSHの血中濃度を測定することが、甲状腺機能の異常が疑われる場合に必要となってくる。
【0003】
ところが、TSH等のホルモンは、血中に微量にしか存在しないため、高感度に定量可能な試薬及び装置が必要である。抗原抗体反応を用いた免疫診断試薬において、標識反応を使用しない方法、即ち非標識法として、沈降反応を利用した免疫拡散法や免疫比濁法及び免疫比朧法(ネフェロメトリー)、凝集反応を利用した血球凝集法やラテックス法などがあり、標識反応を使用した方法としては、その標識する物質の種類や性質に応じて酵素免疫測定法(EIA法)や放射免疫測定法(RIA法)の他、蛍光免疫測定法(FIA法)、化学発光免疫測定法(CLIA法)、生物発光免疫測定法(BLIA法)などが、現在使用されている。TSHの測定方法としては、例えば、特許文献1には、ヒトTSHに対する市販の抗体を使用し、この抗TSH抗体を結合させた担体にTSHを接触させることによって生成する凝集を測定することを含むTSHの測定方法において、TSHの異なるエピトープを認識する複数種の抗TSH抗体を独立に個々の単体へ担持させ、各TSH抗体を担持させた担体をTSHを含む検体に対して時間差をつけて接触させることを特徴とするTSHの測定方法が記載されている。
【0004】
上記のようなTSHの免疫診断においては、TSH抗体が必要である。しかし、犬TSH(以下cTSHとも称する)抗原は、生体内に微量にしか存在しないため、犬TSH抗体を作製するための免疫原として十分な量を確保することが困難である。また、現在、犬TSH抗体は市販されていない。さらに、組み換え犬TSHタンパク質の発現系の構築も困難であるため、犬TSHタンパク質は大量に入手することが困難である。上記の通り、犬TSHタンパク質を大量に入手することができないため、通常の免疫感作はできず、抗犬TSH抗体の作製は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−85703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、犬TSH抗原を大量に入手することなく、犬TSH抗体を認識して結合する抗体を提供することである。さらに本発明は、上記抗体を産生するハイブリドーマ、上記抗体を用いた免疫分析試薬、上記抗体を用いた犬TSHの測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ヒトTSHを免疫原として利用して、免疫感作し、抗犬TSH抗体を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、犬TSHと人TSHに結合するモノクローナル抗体又はその断片が提供される。
好ましくは、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、犬TSHと人TSHに対する解離定数が10-7M以下である。
上記の条件を満たせば、本発明の抗体は、犬TSHと人TSHのどちらの分析にも使用できるからである。
好ましくは、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、サブクラスがIgG1、2a, 2b,又は3である。
好ましくは、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、人TSHを抗原として免疫動物に投与することによって生成される抗体の中から犬TSHに対する反応性を有する抗体を選別することにより得られる。
好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、FERM AP−22073、FERM AP−22074、FERM AP−22075、FERM AP−22076又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である。
【0009】
本発明によればさらに、上記した本発明の抗体を産生するハイブリドーマが提供される。
好ましくは、FERM AP−22073、FERM AP−22074、FERM AP−22075、FERM AP−22076又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマが提供される。
本発明によればさらに、上記した本発明の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬が提供される。
本発明によればさらに、色素または蛍光色素を含むラテックス粒子で標識した上記した本発明の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬が提供される。
本発明によればさらに、酵素で標識した上記した本発明の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬が提供される。
本発明によればさらに、FERM AP−22075又はFERM AP−22076を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を色素または蛍光色素を含むラテックス粒子で標識した標識抗体と、FERM AP−22073、FERM AP−22074又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体との組み合わせからなる、免疫分析試薬が提供される。
好ましくは、本発明の免疫分析試薬は、犬TSH測定用である。
本発明によればさらに、上記した本発明の犬TSH測定用免疫分析試薬に、試料を接触させることを含む、試料中のヒトTSH又は犬TSHの測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗体は、ヒトTSH及び犬TSHに結合することができる。本発明の抗体は、ヒトTSHを免疫原として利用して製造されるため、犬TSH抗原を大量に入手することなく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、得られた抗体のヒトTSH抗原に対する反応性を示す。
【図2】図2は、得られた抗体の犬TSH抗原に対する反応性を示す。
【図3】図3は、得られた抗体の限界希釈後のスクリーニング結果(cTSH抗原への反応性評価結果)を示す。
【図4】図4は、得られた抗体の限界希釈後のスクリーニング結果(hTSH抗原への反応性評価結果)を示す。
【図5】図5は、本発明の抗体の速度論解析のセンサーグラムを示す。
【図6】図6は、本発明の抗体TSH #13(4-9C2)及びTSH #16(4-10A1)をSPF検出において評価した結果を示す。
【図7】図7は、抗体TSH #13(4-9C2)とペアにして用いることができる基板側抗体のスクリーニングの結果を示す。
【図8】図8は、抗体TSH #16(4-10A1)とペアにして用いることができる基板側抗体のスクリーニングの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明の抗体は、犬TSHと人TSHに結合するモノクローナル抗体である。なお、本発明で言う抗体とは、抗体分子全体を意味するのみならず、その断片(例えば、Fab、F(ab')2又はFab'断片)をも意味する。
【0013】
本発明の抗体は、好ましくは、ヒトTSHを抗原として免疫動物に投与することによって生成される抗体の中から犬TSHと人TSHの両方と反応性を有する抗体を選別することにより得ることができる。
【0014】
モノクロナール抗体の取得は以下の方法で行うことができる。すなわち、抗原をアジュバンドとともに数回腹腔等に注射して、脾臓細胞を取り出しポリエチレングリコール等を用いてマウスミエローマ細胞と融合させる。そして、この融合細胞の中から抗体産生細胞をクローニングし、モノクローン細胞として増殖させる。増殖細胞をさらにマウス腹腔内注射することにより、モノクロナール抗体を含む腹水及び血清を得ることができる。より具体的には以下の通り行うことができる。
【0015】
先ず、ヒトTSHを抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは0.1〜100mgであり、アジュバントを用いるときは1〜2000μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜5週間間隔で、1〜10回、好ましくは2〜5回免疫を行う。そして、最終の免疫日から1〜60日後、好ましくは1〜14日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
【0016】
細胞融合ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えば P3X63-Ag.8.U1(P3U1)、NS-Iなどのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。
【0017】
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI-1640培地などの動物細胞培養用培地中で、1×106〜1×107個/mlの抗体産生細胞と2×105〜2×106個/mlのミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞比5:1が好ましい)、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1000〜6000ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
【0018】
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を例えばウシ胎児血清含有RPMI-1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に3×105個/well程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
【0019】
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法(ELISAなど)、放射性免疫測定法等によってスクリーニングすることができる。
【0020】
融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立することができる。
【0021】
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5% CO2濃度)で7〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。
【0022】
腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水を採集する。上記抗体の採取方法において抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー(プロテインA−アガロース等)などの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0023】
抗体のサブクラスはIgG1、IgG2a、IgG2bおよび3等が挙げられるが、本発明では、酵素−抗体複合体を調製する際に抗体の断片化効率の良いIgG1である。得られたIgG1は、活性化パパインやペプシン等のプロテアーゼでFc部位を除去したF(ab')2として、さらにこれを還元してFab' フラグメントに誘導することができる。
【0024】
好ましい態様では、モノクローナル抗体としてFab' フラグメントを使用する。インタクトな抗体(IgG)にはFab(抗原結合部位)とFc (補体結合部位)が存在する。インタクトな抗体を酵素と結合して酵素標識抗体を使用する場合、試料が血液試料であると、血液中の補体成分がFc 部分に結合して立体障害の原因となり酵素活性を阻害することになる。また血液試料でない場合でも、Fc 部分は反応容器の器壁や免疫反応層などを構成する多孔性部材の孔(ポア)や内部空隙の表面等に非特異的吸着をするため、酵素標識抗体の活性が見かけ上低くなり測定時のノイズの原因となる。これらのノイズを除去するためには、Fc 部位を含まないFab' 、F(ab')2或いはFabフラグメントを抗体として使用するのが望ましい。この中では、酵素との結合の便宜から遊離SH基を有するFab' フラグメントを抗体と使用するのがもっとも好ましい。
【0025】
上記した本発明のモノクローナル抗体、上記モノクローナル抗体又はその断片で標識したラテックス試薬、並びに酵素(例えば、枯草菌αアミラーゼなど)で標識した上記モノクローナル抗体又はその断片は、免疫分析試薬(好ましくは、犬TSH測定用免疫分析試薬)として用いることができる。
【0026】
標識として用いる酵素は、その後の酵素反応に使用する酵素基質との組合せを考慮して選ぶことができる。本発明では、酵素基質と反応する酵素に対する反応性を、酵素・抗体・抗原のマトリックス様構造形成による立体障害により抑制するものであるから、酵素と基質との組合せはこのような立体障害による影響が検出し易い系を選ぶ方が好ましい。すなわち、酵素基質としては比較的高分子量のものが感度の点で好ましい。例えば分子量約2万以上であり、好ましくは分子量約10万以上の基質を使用する。このような基質としては、酵素アミラーゼに対する基質として澱粉;酵素セルラーゼに対する基質セルロース;プロテアーゼに対するゼラチン、ヘモシアニン等の蛋白質;リパーゼに対する各種油脂類を挙げることができる。上記の酵素と基質の選択に関する報告は、特開昭60-108756 、60-171461 、60-171460 に詳しく開示されている。この中では、澱粉を基質とするアミラーゼが好ましい。またこれらの基質は水不溶性の基質である方が、酵素・抗体・抗原のマトリックス様構造による立体障害が顕著に現れることになり、これらを使用することが特に好ましい。
【0027】
アミラーゼとしてはα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ等があり、検体中に実質的に含まれていないものがノイズ防止の観点から好ましい。アミラーゼの起源は動物(唾液、膵液等)、植物及び微生物と広範囲にわたる。従って、ヒトや動物などの体液、血液などを分析する場合には、これら高等動物由来のアミラーゼは使用しない方が好ましい。
【0028】
微生物や植物由来のアミラーゼには、コウジカビ(Aspergillus) 、クモノスカビ(Rhizopus)、サッカロミセス酵母(Saccharomyces) 属等由来のグルコアミラーゼ;オオムギ麦芽、コムギ、ダイズ等由来のβ−アミラーゼ;枯草菌(BacillusSubtilis )、ストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、シュードモナス・シュトゥツェリ(Pseudomonas stutzeri)、テルモアクチオミセス・ブルガリス(Thermoactiomyces vulgaris) 等由来のα−アミラーゼ等が挙げられる。この中では液化力が強くまた熱安定性に優れている枯草菌(Bacillus Subtilis) 由来のα−アミラーゼが最も好ましい。
【0029】
これらの酵素はいずれの検体中に存在する妨害因子で影響されないものが好ましく、また検体中には競合する同種の酵素がないことが好ましい。ただし、標識酵素と同種の酵素が検体中に含まれている場合には、この酵素阻害剤を用いてもよい。この酵素阻害剤は、検体中の酵素を阻害する程度が標識酵素の活性を阻害する程度より大きいものであればよい。酵素阻害剤は検体中の酵素を完全に失活させるが、標識酵素を全く阻害しないものが最も好ましい。しかし実用上は単に測定時においてブランク値を上昇させなければよく、測定後には酵素阻害剤が失活するなどして検体中の酵素活性が回復しても構わない。なお酵素阻害剤は、酵素標識抗体の酵素を阻害しないものであればよく、遊離状態の酵素を阻害することは構わない。この酵素阻害剤は、公知の酵素阻害剤から上記のような特異性を持つものを選んで用いればよい。或いは検体中の問題となる酵素に対する抗体を作って、これを酵素阻害剤として用いてもよい。
【0030】
酸素としてα−アミラーゼを使用するときには、カルボキシメチル化澱粉、澱粉、アミロース、アミロペクチン等を基質として使用できる。特に水不溶性の澱粉等を使用すれば、酵素反応は基質粒子表面、すなわち固−液界面での反応となるため、抗体・抗原結合による立体障害の酵素活性に対する影響が大きく現れることになり、感度の点で好ましい。また水不溶性ダイ・スターチを使用して、酵素分解産物である可溶性アミロースについているダイ(色素)を検出するようにしてもよい。このような水不溶性青色澱粉ポリマーにはネオアミラーゼ(第一化学薬品製)等の市販のものを使用することができる。
【0031】
酵素と抗体との結合方法は、2つの物質の官能基(アミノ基、カルボキシル基、チオール基等)を利用して行うことができる。代表的な結合法としては、グルタルアルデヒド法、過ヨーソ酸法、ピリジル・ジスルフィド法、マレイイミド−サクシイミド法等が挙げられる。結合方法はこれらの例に限られるものではなく、この他例えば「Method in Immunology and Immunochemistry」 Vol.1,(C.A.Williams, M.W.Chase, Academic Press,1967年) あるいは石川、河井、宮井 編「酵素免疫測定法」(医学書院、1978年発行)等の成書に記載されている方法の中から適宜選択して利用することができる。これらの結合方法の中では、抗体ヒンジ部のチオール基と酵素のアミノ基を架橋させるマレイミド−サクシイミド法が反応効率が良く、又抗体活性を保持できる点で優れている。
【0032】
マレイミド−サクシイミド法では、例えば以下のようにして酵素とFab' とを結合させる。まずマレイミド−サクシイミド試薬で酵素のアミノ基をマレイミド化する。これをゲル濾過で精製した後、チオール基を有する抗体(Fab' )との複合化に付する。この時、エピトープの異なる2種類以上の抗体(Fab' )を併用しても良く、その場合にそれらの抗体フラグメントは、一緒に結合反応に供される。この複合化反応は酵素1モルの対し、抗体3〜7モルの範囲で行なうのが好ましい。抗体としてFab' (分子量約5万)を、酵素としてα−アミラーゼ(分子量約5万)を使用する場合には、全Fab' 量に対してα−アミラーゼ重量を1/3 〜1/7 の範囲で結合反応を行うのが好ましい。この結合反応は通常4℃〜室温で進行する。
【0033】
生成した酵素−抗体複合体(酵素標識抗体)はゲル濾過で精製し、必要により凍結乾燥法等により乾燥する。酵素と各抗体との結合比は1:1に限らず、目的に応じて任意の比率とすることができる。通常の酵素は多数のアミノ基を持っているので、導入されるマレイミド基も複数となり、酵素1分子に導入される抗体分子は複数となる。酵素1分子に抗体が少なくとも1分子結合している必要があるから、複合体中の酵素に対する抗体のモル比は1以上であることが必要であり、検出感度を確実に高めるためには、モル比2〜5の範囲とすることが好ましい。抗体としてFab' (分子量約5万)を、酵素としてα−アミラーゼ(分子量約5万)を使用する場合には、複合体の分子量は15万ダルトン以上で、好ましくは25〜30万ダルトンの物質が検出感度が高い点で好ましい。
【0034】
次に、犬TSH測定方法(湿式法)を説明する。まず、検体に含まれる抗原と酵素−抗体複合体との結合物を溶液中で接触させる。その際、溶液の温度は20〜45℃程度、pHは通常約4.0 〜約8.5 の範囲内が適当である。pHを一定に保つために必要により、燐酸緩衝液、酢酸緩衝液などの緩衝液を用いてもよい。抗原と酵素−抗体複合体との接触時間は十分に反応しうる程度であればよく、例えば溶液の温度が37℃の場合には20〜30分が適当である。その後、酵素基質を加え、酵素−抗体複合体の酵素活性を測定する。検体中に被検抗原が存在すれば酵素活性の抑制として検出することができる。予め既知量の被検抗原を含む溶液で検量線を描いておけば、検体中の被検抗原量を定量することができる。
【0035】
なお、抗原と酵素−抗体複合体との反応のみを溶液系で行い、反応後の反応液を乾式分析するようにしてもよい。すなわち、標識酵素の酵素基質を含有する基質層を備える乾式分析要素を用意し、これに免疫反応後の反応液を点着することにより酵素活性を測定するようにしてもよい。
【0036】
また、本発明のモノクローナル抗体は、乾式分析要素において用いることもできる。乾式分析要素の構成の具体例としては、特許第3151080号の図1及び図2と同様の構成を挙げることができる。即ち、一例としては、光透過性支持体の上に検出層(又は試薬層)、免疫反応層が積層されている。免疫反応層は、水浸透性層で構成され、本発明の酵素標識抗体と標識酵素の基質である非拡散性基質とを含有する。試薬層は、水浸透性層で構成され、免疫反応層から拡散・移行してきた酵素反応生成物(拡散性物質)を検出する試薬組成物を含有する。酵素反応生成物が着色物質等のような直接検出できるものである場合には、検出層(又は試薬層)には検出用試薬組成物を含有させる必要がなく、この場合には検出層(又は試薬層)は検出層として機能する。
【0037】
要素の点着供給された液体試料中の検体(抗原)は、免疫反応層において酵素標識抗体と抗原抗体結合反応しマトリックス構造を作る。このため同じ反応免疫層に含有されている基質に対する酵素活性は抑制される。この結果試薬層(又は検出層)で検出される酵素反応生成物の量から、検体中の抗原量を知ることができる。
【0038】
また、別の例では、酵素標識抗体と酵素基質とは別の層に含有させてもよい。この場合には、試薬層(又は検出層)の上に酵素基質を含有する水浸透性の基質層を配し、さらにその上に酵素標識抗体を含有する免疫反応層を配する。この場合には、要素に点着供給された液体試料中の検体(抗原)は、免疫反応層において酵素標識抗体と抗原抗体結合反応しマトリックス構造を作り、実質的に不動になる。抗原と結合しなかった酵素標識抗体(或るいは層構造に捕捉されない程度に小さい構造のマトリックス構造のもの)は、次の基質層に移行する。
【0039】
上記の何れの態様でも、要素に液体試料を点着するだけで、要素内で酵素免疫反応を進行させることができる。
【0040】
本発明におけるTSH測定方法は、特に限定されないが、例えば、蛍光強度を検出することができる機器、具体的には、マイクロプレートリーダー、又は表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)を行うためのバイオセンサーなどを用いて蛍光強度を検出することができる。蛍光強度の検出は、通常、抗原抗体反応後一定時間、例えば、数分〜数時間後に終了する。前記免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、蛍光強度と被検出物質の濃度の関係から、被検出物質の濃度を定量することができる。なお、蛍光の測定の形態は、プレートリーダー測定でもよいし、フロー測定でもよい。なお、表面プラズモン励起による蛍光検出法(SPF法)は、落射励起による蛍光検出法よりも高感度に測定することができる。
【0041】
上記の表面プラズモン蛍光(SPF)バイオセンサーとしては、例えば、特開2008−249361号公報に記載されているような、所定波長の励起光を透過させる材料から形成された光導波路と、この光導波路の一表面に形成された金属膜と、光ビームを発生させる光源と、前記光ビームを光導波路に通し、該光導波路と金属膜との界面に対して表面プラズモンを発生させる入射角で入射させる光学系と、該表面プラズモンによって増強されたエバネッセント波によって励起されたことによって発生する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたセンサーを用いることができる。
【0042】
本発明はさらに、上記した本発明の犬TSH測定用免疫分析試薬に、試料を接触させることを含む、試料中の犬TSHの測定方法に関する。試料の種類は特に限定されないが、例えば、血液(全血、血漿、血清)、リンパ液、尿などがあり、好ましくは血液(全血、血漿、血清)であり、更に好ましくは血清、血漿であり、特に好ましくは血清である。
【0043】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:免疫
(1)免疫原の調製
BIODESIDG International社製(cat#A81550H)Thyroid Stimulating Hormone, Human Pituitaryを2mg量購入し、免疫感作抗原とした。
【0045】
(2)マウスの免疫感作
感作用抗原(hTSH)2 mgを使用した。初回免疫50〜100μg/匹、2回目以降50μg/匹とした。感作抗原をマウス背部皮下に免疫した。初回は完全アジュバント(FCA)と混合したエマルジョンを投与した。2〜4回目は不完全アジュバント(FIA)と混合したエマルジョンを投与した。2週間隔で5回免疫を行い、3回目4回目免疫の翌週には採血し抗体価の測定を実施した。採血血清の一部(100〜200μL)をELISA測定に用いた。抗体価の上昇が認められた場合、5回目免疫を最終免疫とする。最終免疫は抗原AをPBS(-)で希釈し、腹腔内へ投与した。最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
(1) 動物: BALB/c マウス、♀、6-7 週齢
(2) 匹数: 3 匹
(3) 免疫量: 50-100 μg/匹/回
(4) 免疫箇所: 尾静脈または腹腔内接種
(5) 抗体価測: ELISA
抗体価測定の結果、選定されたマウス(1〜3匹)より脾臓を摘出し、細胞融合を行った。
【0046】
実施例2:ハイブリドーマの調製
免疫マウスより摘出した脾臓細胞をミエローマと混合して細胞融合を実施した。
融合方法:PEG法
使用細胞:最終免疫3日後の脾臓細胞
ミエローマ:P3-X63-Ag8-U1
細胞比、脾臓細胞:ミエローマ=5-10:1
細胞播種: 脾臓細胞として0.5〜1.0 × 10^5 cells/wellで96-well plateに播種
使用培地: RPMI-1640 + 10 % FBS + HAT(場合によっては更にHCF or IL-6を添加)
【0047】
実施例3:hTSH抗原への反応性評価
モノクローナル抗体の一次スクリーニング(細胞融合後のスクリーニング)
測定用抗原を500 ng/mLとなるようPBS(-)で希釈し固相化を行い、HAT培地による選択培養で増殖したハイブリドーマの培養上清をELISAによりスクリーニングした。2次抗体として抗マウスIgG HRP標識抗体を用いた。スクリーニング陽性ハイブリドーマを24ウェルプレートで培養し、培養上清を各1 mL評価に使用した。SPRによる選択試験結果をもとに、クローニングウェルを選択した。SPRでは、センサーチップにCM5を使用し、アミンカップリング法で、hTSHをRU=200程度固定化した。
【0048】
培養上清中の抗体濃度をCaptureAbで定量(RU=2000程度固定化)した。その値を用いて、hTSH抗原に対する結合能を比較した結果を図1に示す。
抗体濃度を規格化:ΔRU at hTSH/ΔRU at Capture×100)
【0049】
抗体濃度を規格化して、hTSH抗原に対する結合能を比較すると、高い結合能を有するウエルが同定された。
【0050】
実施例4:犬TSH(cTSH)抗原への反応性評価
ヒト由来とイヌ由来TSHのアミノ酸配列を比較すると、イヌ、ヒトでの共通配列があるため、ヒトTSH(hTSH)とcTSHの両方に反応する抗体が取得できる可能性がある。そこで、cTSH抗原を用いて、hTSHと同様にスクリーニングすることにした。
【0051】
SPR測定の測定条件は以下のように設定し、細胞融合後にELISA陽性サンプル(培養上清)35ウエルをフローした。
HBS-EP buffer, Flow: 30μl/min, contact time: 5 min, Flow: 5 min, Wash: 5 min(Gly pH 1.5)
cTSH抗原:Scrips社製(100μg)比活性5%程度
Chip:CM5
Fc1: ベースライン
Fc2: cTSH固定化(RU=2000〜4000程度)
【0052】
上記の評価系で、35ウエルのスクリーニングを行った。hTSHの時と同様に、抗体濃度で規格化した値(cTSH/captureAb*100の値)を棒グラフにまとめた結果を図2に示す。
【0053】
35ウエル中13ウエルもcTSH抗原に反応した。その際の上位10ウエルをクローニング、ハイブリドーマ樹立へ進めることにした。
【0054】
hTSH, cTSH抗原を用いたスクリーニング結果を以下の表にまとめる(上位10ウエル)
【0055】
【表1】

【0056】
上位10ウエルのうち6ウエルが、ヒトTSH及びイヌTSHの両方に反応した。
【0057】
実施例5:モノクローナル抗体の二次スクリーニング(限界希釈後のスクリーニング)
モノクローナル抗体の二次スクリーニング(限界希釈後のスクリーニング)を実施例3及び4と同様に行った。結果を図3及び図4に示す。サブクラスの決定は、Isotyping kit(ロッシュ製)を用いて行った。また、各親クローンの中で、SPRシグナルの高い上位数株を選択し、凍結バイアル作製へ進めた。その結果を以下の表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例6:マウス腹水法による抗体の産生
最終クローンの中から、SPRスクリーニングを行った結果、シグナルの高かった上位クローンについてマウス腹水法(マウス2匹を使用)により抗体を作製し、以下の量を得た。
【0060】
【表3】

注:簡略化のため、以降#番号で示す場合がある。
【0061】
上記のモノクローナル抗体TSH #1(1-3F2)、TSH #8(2-10C2)、TSH #13(4-9C2)、TSH #16(4-10A1)、及びTSH #18(4-11F2)を産生するハイブリドーマは、それぞれ以下の受領番号として、2011年(平成23年)3月1日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0062】
【表4】

【0063】
実施例7:TSH抗体の速度論解析(Biacore, T-100)
上記の表4に記載した5種の抗体(#1, #8, #18, #13, #16)の速度論解析を行った。
装置:Biacore T100
(測定条件)
接触時間(Contact time): 120 s
流速(Flow rate): 60μL/min
解離時間(Dissociation time): 1800 s
再生(Regeneration): 10 mM Gly pH 1.5, contact time: 300s, Flow rate: 30μL/min
チップ: CM5, hTSH(calbiochem), RU = 12固定化
【0064】
測定の結果を以下の表5に示す。
【表5】

【0065】
実施例8:抗体TSH #13(4-9C2)及びTSH #16(4-10A1)のSPF検出における評価
抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1)を蛍光粒子に結合したものと、既存の市販の抗TSH抗体を基盤に固定化し、以下の手順によりSPFアッセイを行った。
【0066】
抗体を結合させた蛍光ラテックス粒子の製造
2%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液250μLに、2mg/mLのTSHモノクローナル抗体(抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1))、50mMのMESバッファー(pH6.0)溶液250μLを加え室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのWSC(品番01−62−0011、和光純薬)水溶液を5μL加え、室温で2時間撹拌した。2mol/LのGlycine水溶液を25μL添加し、30分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)にて、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。上清を取り除き、PBS溶液(pH7.4)を500μL加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。さらに遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、上清を除いた後、1%BSAを含むPBS(pH7.4)溶液500μL加え、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、TSH抗体結合蛍光ラテックス粒子の1%(w/v)溶液を得た。
【0067】
SPF免疫アッセイの検討(TSH抗原を用いたアッセイ系)の説明
カートリッジ作製の説明
ポリメタクリル酸メチルを基体として基盤に金膜を蒸着したチップを用いて、金膜上に抗体液を点着して抗体固定化を行った。その後、抗体標識蛍光粒子を用いて、以下の手順に従って、免疫アッセイを行った。
上板をセンサチップの流路に付ける前に、センサチップの測定エリアに、10μg/mLに調製したTSHモノクローナル抗体(既存の市販の抗TSH抗体)の150mM塩化ナトリウム溶液を100μL添加し、室温で1時間静置した。抗体溶液を除去し、予め調製した洗浄用バッファー(0.05%(w/v) Tween-20を含むPBS(pH7.4))で洗浄した(300μL/回、3回)。洗浄終了後、抗体の未吸着部分のブロッキングを行うため、1%カゼインを含むPBS(pH7.4)を300μL添加し、1時間、室温で静置した。上記の洗浄用バッファーで洗浄後、安定化剤としてImmunoassay Stabilizer(ABI社製)を300μLずつ各ウェルに添加し、室温で30分間放置後、溶液を除去し乾燥機中で水分を完全に取り除いた。TSH抗体結合処理後に、蓋材を用いてセンサチップの流路を封入し、流路型センサチップを作製する。流路の封入には超音波溶着などの方法を用いることができる。
【0068】
抗原濃度説明
TSH抗原をそれぞれ、15pM、48pM, 187 pM添加したイヌ血漿を調製し、試料溶液とした。
【0069】
測定系説明
各試料溶液500μLに、上述の手順で調製した1%抗TSH抗体結合蛍光標識物質溶液を5μLずつ添加し混合させ反応液とした。試料セルを用いて、反応液を、測定エリア上を流下させつつ、測定エリアからの蛍光信号を、異なる複数の時刻で測定した。蛍光信号の測定は、金膜上の複合体(抗体−抗原―抗体)が形成された領域に対して、抗体が結合していない側から近赤外レーザを照射し、エバネッセント波を発生させることによって行った。エバネッセント波は金膜近傍にのみ到達するので、主に上記のサンドイッチ複合体に含まれる標識を励起して蛍光を発する。フォトダイオードを用いてその蛍光を検出した。この際、試料セルの空気孔にポンプを接続し、一定流速(線速度1.4mm/s)となるようにポンプ吸引を行い、反応液のうち300μLを測定エリア上に送液しつつ、測定を行った。反応条件:1次反応10分, 流速10μL/分、Flow time: 5分, 洗浄時間: 5分
【0070】
上記の測定の結果を図6に示す。図6の結果を以下の表6にまとめる。図6及び表6の結果から、本発明の抗体TSH #13(4-9C2)及びTSH #16(4-10A1)を蛍光粒子に結合してSPF検出に用いた場合、目標とする性能を達成できることが実証された。
【0071】
【表6】

【0072】
実施例9:抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1)とペアにして用いることができる基板側抗体のスクリーニング
抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1)の何れかを蛍光標識抗体として用いた場合における基板側抗体のスクリーニングを以下の手順で行った。なお、基板側抗体の候補としては以下の抗体を使用した。
【0073】
【表7】

【0074】
装置:Biacore T100
(測定条件)
接触時間(Contact time): 120 s
流速(Flow rate): 30μL/min
解離時間(Dissociation time): 120 s
再生(Regeneration): 10 mM Gly pH 1.5, 接触時間(contact time): 300s, 流速(Flow rate): 30μL/min
チップ: CM5, cTSH(scrips), RU = 4000固定化
【0075】
cTSH固定化チップに、抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1)(50μg/ml)をフローした。その後、表7に記載した基板側の抗体候補(5μg/ml)をフローした際のサンサーグラムを取得する。抗体TSH #13(4-9C2)又はTSH #16(4-10A1)をフローした時の結合量をΔRU1、表7に記載した基板側の抗体候補をフローした時の結合量をΔRU2として、各抗体をフローした時の値を棒グラフにまとめた結果を図7及び図8に示す。
【0076】
図7は、抗体TSH #13(4-9C2)を用いた場合の測定結果を示し、図8は、抗体TSH #16(4-10A1)を用いた場合の測定結果を示す。図7及び図8に示す結果から分かるように、抗体TSH #13(4-9C2)及び抗体TSH #16(4-10A1)の何れの場合においても、抗体TSH #1(1-3F2)、抗体TSH #8(2-10C2)又は抗体TSH #18(4-11F2)を使用した場合に、目標性能を充足する程度のシグナルが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬TSHと人TSHに結合するモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項2】
犬TSHと人TSHに対する解離定数が10-7M以下である、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項3】
サブクラスがIgG1、2a, 2b,又は3である、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項4】
人TSHを抗原として免疫動物に投与することによって生成される抗体の中から犬TSHに対する反応性を有する抗体を選別することにより得られる、請求項1から3の何れか1項に記載の抗体又はその断片。
【請求項5】
FERM AP−22073、FERM AP−22074、FERM AP−22075、FERM AP−22076又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項7】
FERM AP−22073、FERM AP−22074、FERM AP−22075、FERM AP−22076又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマ。
【請求項8】
請求項1から5の何れか1項に記載の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬。
【請求項9】
色素または蛍光色素を含むラテックス粒子で標識した請求項1から5の何れか1項に記載の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬。
【請求項10】
酵素で標識した請求項1から5の何れか1項に記載の抗体又はその断片を含む、免疫分析試薬。
【請求項11】
FERM AP−22075又はFERM AP−22076を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を色素または蛍光色素を含むラテックス粒子で標識した標識抗体と、FERM AP−22073、FERM AP−22074又はFERM AP−22077を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体との組み合わせからなる、免疫分析試薬。
【請求項12】
犬TSH測定用であることを特徴とする請求項8から11の何れか1項に記載の免疫分析試薬。
【請求項13】
請求項8から12の何れか1項に記載の免疫分析試薬に、試料を接触させることを含む、試料中のTSHの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−207868(P2011−207868A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50197(P2011−50197)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】