説明

ヒドラジド基含有共重合体、製造方法及び該共重合体を含む樹脂組成物

【課題】 水中における安定性が良好で、耐水性、可とう性等に優れた塗膜を形成するのに適するヒドラジド基含有共重合体、該ヒドラジド基含有共重合体の製造方法、該ヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物及び該塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法を提供する。
【解決手段】 共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体、該ヒドラジド基含有共重合体の製造方法、該ヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物、該塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドラジド基含有共重合体、該ヒドラジド基含有共重合体の製造方法及び該ヒドラジド基含有共重合体を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドラジド基を有する化合物は、ヒドラジド基と金属イオンとのキレート形成性、還元性、エポキシ基、イソシアナート基及びカルボニル基等の官能基との反応性、自己縮合性等の性質を利用して、金属捕集材料、還元材料、塗料、耐熱材料などの材料として広範囲に使用されている。例えば塗料分野ではヒドラジド基を有する化合物の利用例としてカルボニル基含有共重合体エマルション及びアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物を用いた水性塗料組成物が一液型で常温架橋が可能な架橋系の例としてよく知られている。(特許文献1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる水性塗料組成物は、一液型で貯蔵安定性が良好であり、常温架橋が可能で、しかも該架橋塗膜は、耐汚染性、耐水性、初期乾燥性等に優れることから、例えば建築物の内外装用途に広く用いられている。しかしながら、かかる水性塗料組成物において架橋剤として用いられるヒドラジド化合物は、エマルション粒子間を架橋させる目的から比較的分子量が小さいものが選ばれており、該水性塗料組成物から形成される架橋塗膜の可とう性などの性能が十分とはいえない場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、特定の溶媒の存在下において、カルボン酸エステル基を有する重合体にヒドラジンもしくはヒドラジン一水和物を反応させて、カルボン酸ヒドラジド基を有する低重合体の製造法が記載されている。該文献に記載の製造法により得られる低重合体は、エポキシ樹脂との硬化剤として、また銅やコバルト等の金属に対するキレート化剤として有効に利用できるものであるが、該低重合体を例えば水性塗料組成物に適用した場合、ヒドラジド化率が高い場合は、水性塗料組成物の貯蔵安定性や形成塗膜の耐水性が不十分であり、ヒドラジド化率が低い場合は、該低重合体の水中における安定性が不十分であり、またこのものを含む水性塗料組成物の形成塗膜の仕上がり性が満足できるものではなく、これらのバランスをとることが困難であった。
【0005】
また、水系で常温架橋可能な架橋系として、例えば特許文献3〜5には、ポリイソシアネートとヒドラジン誘導体を反応させてなるセミカルバジド組成物及びカルボニル基含有共重合体エマルションを含む組成物が開示されている。該組成物によれば、耐水性、耐汚染性、耐候性等に優れた塗膜を形成できるものであるが、該セミカルバジド組成物の分子量が小さい場合は、該セミカルバジド組成物の水中における安定性が良好なものの、該組成物及びカルボニル基含有共重合体エマルションを含む組成物から形成された塗膜の可とう性が不十分であり、該セミカルバジド組成物の分子量が大きい場合は、該組成物及びカルボニル基含有共重合体エマルションを含む組成物から形成された塗膜の可とう性は良好なものの、該セミカルバジド組成物の水中における安定性が不十分となるという問題点を有していた。
【特許文献1】特開平4−249587号公報
【特許文献2】特公昭52−22878号公報
【特許文献3】特開平8−151358号公報
【特許文献4】特開平10−298158号公報
【特許文献5】特開2003−252847号公報
【0006】
本発明の課題は、水中における安定性が良好で、耐水性、可とう性等に優れた塗膜を形成するのに適するヒドラジド基含有共重合体、該ヒドラジド基含有共重合体の製造方法及び該ヒドラジド基含有共重合体を含む樹脂組成物、塗料組成物及び該塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の共重合体、ヒドラジン化合物及び塩基性化合物を反応させることにより得られるカルボン酸塩基及びヒドラジド基を特定量有するヒドラジド基含有共重合体が、水中における安定性が良好であることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は以下の発明に係る。
1.共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体。
2.下記の繰返し単位を有し、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gであるヒドラジド基含有共重合体。
【0009】
【化1】

[式中、A、B、D、Gは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eは有機アミン、アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。Rは炭素数が1〜8のアルキル基を示す。l、m、n及びoは次の通りである。
7モル%≦l≦55モル%、1.3モル%≦m≦14モル%、0モル%≦n≦13.9モル%、31モル%≦o≦92.7モル% l+m+n+o=100モル%]
【0010】
3.共重合体(A)が、水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分としてさらに含む上記1又は2に記載のヒドラジド基含有共重合体。
4.共重合体(A)の重量平均分子量が、2,000〜100,000の範囲内である上記1又は3に記載のヒドラジド基含有共重合体。
5.ヒドラジン化合物がヒドラジン一水和物である上記1〜4のいずれかに記載のヒドラジド基含有共重合体。
6.塩基性化合物が、有機アミン又はアンモニア水である上記1〜4のいずれかに記載のヒドラジド基含有共重合体。
7.共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体の製造方法であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体の製造方法。
8.共重合体(A)が、水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分としてさらに含む上記7に記載の製造方法。
9.共重合体(A)の重量平均分子量が、2,000〜100,000の範囲内である上記7又は8に記載のヒドラジド基含有共重合体の製造方法。
【0011】
10.上記1〜6のいずれかに記載のヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋又は硬化剤。
11.上記1〜6のいずれかに記載のヒドラジド基含有共重合体を含む樹脂組成物。
12.上記1〜6のいずれかに記載のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物。
13.カルボニル基含有共重合体水分散液をさらに含む上記12に記載の塗料組成物。
14.カルボニル基含有共重合体中に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基含有共重合体中に含まれるヒドラジド基が0.1〜2.0モルとなるように配合されることを特徴とする上記13に記載の塗料組成物。
15.上記12〜14のいずれかに記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒドラジド基含有共重合体によれば、共重合体中にヒドラジド基とカルボン酸塩基を適当量有するので、水中における安定性が良好であり、このものを用いて形成される塗膜の耐水性、可とう性等の性能にも優れるものである。また、該ヒドラジド基含有共重合体及びカルボニル基含有共重合体水分散液を含む請求項13に記載の塗料組成物によれば、水系、一液型でも貯蔵安定性に優れ、仕上がり性、耐水性、可とう性に優れた架橋塗膜を常温乾燥の条件でも形成できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のヒドラジド基含有共重合体を製造するための各成分について以下説明する。
共重合体(A)
本発明において、共重合体(A)は、カルボキシル基及びカルボン酸アルキルエステル基を含有する共重合体であり、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)及び炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有するものである。
共重合体(A)にカルボキシル基を導入するためのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、特に、アクリル酸、メタクリル酸が好適である。
【0014】
本発明において、該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)の共重合割合としては、共重合体(A)中に1〜10質量%の範囲内であり、好ましくは2〜9質量%の範囲内であることが望ましい。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)の共重合割合が1質量%未満では、ヒドラジド基含有共重合体の水中における安定性が不十分であり、一方10質量%を超えると、ヒドラジド基含有共重合体を用いて形成される塗膜の耐水性が不十分であるから好ましくない。
炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル(b)は、後述のヒドラジン化合物(B)と反応させるためのカルボン酸アルキルエステル基を共重合体(A)中に導入させる目的で用いられるものであり、下式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化2】

【0016】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチルであり、Rは、炭素数が1〜8のアルキル基である。
本発明において上記Rは直鎖状又は分岐状であることが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。
【0017】
そのような炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル(b)の具体例としては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、ヒドラジン化合物(B)との反応性の点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートを特に好適に使用することができる。
【0018】
本発明において、上記共重合体(A)は、上記成分(a)及び(b)に加えてさらにその他の重合性不飽和モノマー(c)を共重合成分として含有することもできる。かかるその他の重合性不飽和モノマー(c)は、上記成分(a)及び(b)と共重合することが可能な、上記成分(a)及び(b)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数が9以上の直鎖又は分岐状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明において、上記成分(b)の共重合割合としては、目的に応じて適宜調整可能であり、例えば本発明のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物から形成される塗膜の耐水性等の点から、共重合体(A)中に10〜99質量%、好ましくは15〜98質量%の範囲内であることができる。
【0020】
また、上記成分(c)を共重合する場合はその共重合割合としては、共重合体(A)中に、0〜89質量%、好ましくは0〜83質量%の範囲内であることができる。
また、本発明においては、ヒドラジド基含有共重合体の水中における安定性及び該共重合体を含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の付着性の点から、共重合体(A)が、水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分としてさらに含むことが望ましい。かかる水酸基含有重合性不飽和モノマーの共重合割合としては、共重合体(A)中に1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%の範囲内であることができる。
【0021】
上記共重合体(A)は、上記モノマー(a)及び(b)必要に応じて(c)を有機溶媒中で、それ自体既知の重合法に従って共重合することにより得られる。共重合に際して用いうる有機溶媒としては、制限されるものではなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ミネラルスピリツト、芳香族石油ナフサなどの石油系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系溶媒;等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明においては、後述のヒドラジン化合物(B)の溶解性の点から、上記有機溶媒が、アルコール系有機溶媒、エチレングリコールエーテル系溶媒及びプロピレングリコールエーテル系有機溶媒よりなる群から選ばれる1種であることが望ましい。
【0023】
また、重合開始剤としては、油溶性、水溶性のいずれのタイプのものであってもよく、油溶性の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられ、また、水溶性の開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記重合開始剤の使用量としては、本発明のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の可とう性の点から、共重合体(A)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲内であることができる。
【0025】
また、共重合の際には必要に応じて連鎖移動剤を使用することも可能である。かかる連鎖移動剤としては、メルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、メルカプトエタノ−ル、チオグリセロ−ル、メルカプト酢酸(チオグリコ−ル酸)、メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。かかる連鎖移動剤を使用する場合の使用量としては、本発明のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の可とう性の点から、共重合体(A)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲内であることができる。
【0026】
上記の共重合反応は通常、約50〜約200℃、好ましくは約60〜約120℃の温度において行うことができ、かかる条件下に2〜20時間、好ましくは5〜10時間程度で終らせることができる。
上記の通り製造される共重合体(A)は、本発明のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性、耐汚染性、可とう性等の点から一般に、2,000〜100,000、好ましくは5,000〜80,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
【0027】
尚、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0028】
ヒドラジン化合物(B)
本発明において、ヒドラジン化合物(B)は、上記共重合体(A)に含まれるカルボン酸アルキルエステル基と反応して、共重合体(A)にヒドラジド基を導入させるために用いられるものである。
【0029】
本明細書において、ヒドラジン化合物(B)としては、制限はないが、無水ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、これらの塩;ヒドラジン一水和物;多官能のヒドラジド化合物を例示することができる。具体的には例えば、無水ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、二塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、塩酸モノメチルヒドラジン、二塩酸モノメチルヒドラジン、硫酸モノメチルヒドラジン、硝酸モノメチルヒドラジン、炭酸モノメチルヒドラジン、ヒドラジン一水和物、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4'−ビスベンゼンジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、ヒドラジン化合物(B)の使用量としては共重合体(A)中のエステル基1モルに対して0.01〜20モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲内であることができる。
【0030】
塩基性化合物(C)
本発明において、塩基性化合物(C)としては、上記共重合体(A)中のカルボキシル基を中和可能な化合物であって、ヒドラジン化合物以外の化合物であればよく、その具体例としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノールなどの有機アミン類;アンモニア水;カリウム、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩などを例示することができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも形成塗膜の耐水性から有機アミン及びアンモニア水が好適であり、更には有機アミンがより好適である。
本発明において、上記塩基性化合物(C)の使用量としては、本発明のヒドラジド基含有共重合体の水中における安定性及びこれを用いて形成される塗膜の耐水性等の点から、上記共重合体(A)中のカルボキシル基1モルに対し0.2〜1.3モル、好ましくは0.3〜1.2モルの範囲内であることが望ましい。
【0031】
ヒドラジド基含有共重合体
本発明は、共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)及び炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が、共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体である。
モノマー(a)の共重合割合が、共重合体(A)中1〜10質量%の範囲にあり、また、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲である場合は、塗料組成物の貯蔵安定性や硬化性、耐水性、可とう性などの塗膜物性が良好となり好ましく、その中でも、特に2.0〜4.8ミリモル/gの場合は耐水性についての評価が良好となり好ましい。
例えば、上記共重合体(A)から誘導されるヒドラジド基含有共重合体は、特にこの構造に特定されるものではないが、下記の繰返し単位を有するものが挙げられる。尚、本発明のヒドラジド基含有共重合体はアクリルアミドの単位を含有しない共重合体である。
【0032】
【化3】

[式中、A、B、D、Gは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eは有機アミン、アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。Rは炭素数が1〜8のアルキル基を示す。l、m、n及びoは次の通りである。
7モル%≦l≦55モル%、1.3モル%≦m≦14モル%、0モル%≦n≦13.9モル%、31モル%≦o≦92.7モル% l+m+n+o=100モル%]
【0033】
なお、上記式で表される本発明のヒドラジド基含有共重合体は、便宜上ブロック共重合体のように表現されているが、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体等のいずれの形態を有していても良い。
l、m、n、oが上記の範囲になる場合は、塗料組成物の貯蔵安定性や硬化性、耐水性、可とう性などの塗膜物性の全てが満足のいくレベルに達する。しかし、l、m、n、oが上記の範囲からずれる場合は、貯蔵安定性や硬化性、耐水性、可とう性などの塗膜物性のいずれかが満足いくレベルに達せず、特に耐水性が不良となり好ましくない。
【0034】
上記のヒドラジド基含有共重合体は、これを含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性、耐汚染性、可とう性等の点から一般に、2,000〜500,000、好ましくは3,000〜250,000、より好ましくは5,000〜200,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
また本発明は、共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体の製造方法であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)及び炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が、共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体の製造方法に係る。
【0035】
本発明の製造方法において、上記成分(A)、(B)及び(C)の反応は、成分(A)、(B)及び(C)を同時に反応させてもよいし、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を逐次的に反応させてもよい。
本発明において、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の反応経路の具体例としては、下記反応経路を挙げることができる。
【0036】
(1)共重合体(A)とヒドラジン化合物(B)とを反応させた後、該生成物に塩基性化合物(C)を反応させる反応経路。
成分(A)をアルコール系有機溶媒、エチレングリコールエーテル系溶媒及びプロピレングリコールエーテル系有機溶媒で10〜60%好ましくは、15〜55%溶液とする。この溶液に目的とするヒドラジド化率に応じて成分(B)を添加する。この反応液を50から100℃で1から10時間、ヒドラジド化を行う。
反応液を室温まで冷却し、この反応液にモノマー(a)と1モルに対し0.2〜1.3モルの範囲で成分(C)添加する。添加後、約1時間熟成する。
熟成後、1−ブタノールに加え、得られた沈殿をロ別して目的物を得る。
【0037】
(2)共重合体(A)と塩基性物質(C)とを反応させた後、ヒドラジン化合物(B)を反応させる反応経路。
成分(A)をアルコール系有機溶媒、エチレングリコールエーテル系溶媒及びプロピレングリコールエーテル系有機溶媒で10〜60%好ましくは、15〜55%溶液とする。この溶液に室温で、この反応液にモノマー(a)1モルに対し0.2〜1.3モルの範囲で成分(C)を添加する。添加後、約1時間熟成する。この液に、目的とするヒドラジド化率に応じて成分(B)を添加する。この反応液を50〜100℃で1〜10時間、ヒドラジド化を行う。
反応液を室温まで冷却し、1−ブタノールに加え、得られた沈殿をロ別して、目的物を得る。
ヒドラジド化率が低い場合、この反応液にモノマー(a)1モルに対し0.2〜1.3モルの範囲で再度、成分(C)を室温で添加して1−ブタノールに加え、得られた沈殿をロ別して、目的物を得る。
【0038】
上記のようにして得られたヒドラジド基含有共重合体は、水及び/又は親水性有機溶媒に溶解又は分散することができ、必要に応じて脱溶媒することにより固形状とすることもできる。
上記本発明のヒドラジド基含有共重合体は、貯蔵安定性と該ヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物を用いて形成される塗膜の耐水性の点から、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gであり、好ましくは0.8〜4.9ミリモル/g、更に好ましくは2.0〜4.8ミリモル/gの範囲内であることが望ましい。
本発明において、ヒドラジド基含有量(ミリモル/g)は下記式により算出することができる。
【0039】
【数1】

【0040】
上記式中、Hはヒドラジド化率(%)、xは共重合体(A)中における炭素数が1〜8のアルキル基を含有するアクリル酸のアルキルエステルの共重合割合(質量%)であり、yは共重合体(A)中における炭素数が1〜8のアルキル基を含有するメタクリル酸のアルキルエステルの共重合割合(質量%)であり、Mは炭素数が1〜8のアルキル基を含有するアクリル酸のアルキルエステルの分子量であり、Mは炭素数が1〜8のアルキル基を含有するメタクリル酸のアルキルエステルの分子量であり、MHは、炭素数が1〜8のアルキル基を含有するアクリル酸のアルキルエステルとヒドラジン化合物(B)とが反応したとする時、生成するヒドラジド基含有モノマーとしての分子量であり、MHは、炭素数が1〜8のアルキル基を含有するメタアクリル酸のアルキルエステルとヒドラジン化合物(B)とが反応したとする時、生成するヒドラジド基含有モノマーとしての分子量である。ここでMH及びMHにおいては、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)とヒドラジン化合物(B)は、全て等価に反応すると仮定する。
【0041】
また、Hにおいて、ヒドラジド化率(%)とは、共重合体(A)中のカルボン酸アルキルエステル基全量に対する形成されたヒドラジド基の割合であり、その測定方法としては、例えばヒドラジド基含有共重合物、約0.1gを正確に秤量し、ヨウ素フラスコにとる。そこに、脱イオン水を40ml加え溶解させる。溶解後、3N−NaOHを約10ml加え、1時間攪拌する。1時間後、1/10Nヨウ素液をホールピペットを用いて50ml加え、4時間攪拌する。4時間後、3N塩酸を約15ml加える。その後、メタノール40ml加え、析出したポリマーを溶解させ、10分攪拌する。10分後、澱粉を指示薬として加え、1/10Nチオ硫酸ナトリウム液で滴定を行う。液が褐色から無色透明になった時を終点とする。下記計算式に従って算出する。
ヒドラジド基含有共重合物と別に空(ヒドラジド基含有共重合物なし)で同様の操作を行い、1/10Nチオ硫酸ナトリウム液滴定量を確認する。
【0042】
サンプル量をDg、1/10Nチオ硫酸ナトリウム液滴定量をEml、空滴定での滴定量をFml、成分(A)のポリマーユニット平均分子量をAM、ヒドラジド化された成分(A)のポリマーユニット平均分子量をHM、ヒドラジド化された成分(A)のポリマーユニットのモルをh、ヒドラジド化されていない成分(A)のモルをiとすると
h=0.000025×(F−E)、 i=(D−HM×h)/AM
ヒドラジド化率;H=100×h/(h+i)
のようにして行う。
【0043】
上記ヒドラジド基含有共重合体は、分子中にヒドラジド基とカルボキシル基を適当量有しているので、適度な親水性を有しており、また、カルボキシル基を塩基性物質で中和しているので、水中における安定性が良好であり、しかもこのものを用いて形成される塗膜は耐水性、可とう性等の性能に優れるものである。
かくして、上記ヒドラジド基含有共重合体は、建築用、自動車外板用、自動車部品用等の塗料用途や印刷インキ等の被覆材、塗料用添加剤、不織布用等の接合剤、接着剤、充填剤、成形材料、レジスト等の種々の用途に使用することができる。
【0044】
本発明は上記ヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋剤又は硬化剤である。
本発明は、上記ヒドラジド基含有共重合体を含む樹脂組成物である。以下に代表例として樹脂組成物が塗料組成物である場合について説明する。
【0045】
塗料組成物におけるバインダー成分としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の従来塗料分野で使用されている水系、有機溶剤系、粉体の樹脂を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明においては、上記ヒドラジド基含有共重合体が水中で安定であることから、該バインダー成分が、水系の樹脂であることが望ましい。
【0046】
また、上記バインダー成分としては、エポキシ基、カルボニル基、イソシアナート基及び無水酸基等のヒドラジド基と反応可能な官能基を有するものであることが望ましい。
本発明においては一液型で常温架橋が可能であることから、上記塗料組成物が、バインダー成分としてカルボニル基含有共重合体水分散液を含むことが望ましい。
【0047】
上記カルボニル基含有共重合体水分散液は、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とし、かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
また、カルボニル基含有共重合体水分散液における上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状の炭化水素基を有する直鎖又は分岐状(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β一メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記カルボニル基含有共重合体水分散液の製造方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤としての界面活性剤の存在下に、上記カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合することにより容易に製造することができる。
上記の乳化重合に際して、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーは、該カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、一般に、カルボニル基含有重合性不飽和モノマーが1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%、及びその他の重合性不飽和モノマーが70〜99質量%、好ましくは75〜98質量%の範囲内となるような割合で使用することができる。
【0050】
カルボニル基含有共重合体水分散液の製造において、使用される乳化剤としては、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを挙げることができ、また、上記乳化剤としては、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基を分子中に含有する反応性乳化剤なども使用可能である。
上記カルボニル基含有共重合体水分散液の製造に用いられる重合開始剤としては、上記共
重合体(A)の説明で列記したものと同様のものを使用することができる。
【0051】
また、上記カルボニル基含有共重合体水分散液は、共重合体粒子が単層型のものであってもよいし、複層型例えばコア−シェル型のものであってもよい。この場合においてコアを形成するコア用モノマーと、シェルを形成するシェル用モノマーとの使用割合は、コア用モノマー/シェル用モノマー質量比で99/1〜10/90、好ましくは90/10〜10/90の範囲内であることが、塗膜形成性や耐水性の点から好適である。
【0052】
また、上記カルボニル基含有共重合体水分散液の共重合体粒子を形成するモノマー成分は、本発明の塗料組成物のを用いて形成される塗膜の耐水性等の点から、その一部として1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物を含むことができる。該1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物は、上記カルボニル基含有共重合体水分散液の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中に、0.01〜10.0質量%、好ましくは0.05〜5.0質量%の範囲内で使用することができる。
本発明の塗料組成物において、上記ヒドラジド基含有共重合体とカルボニル基含有共重合体水分散液の配合割合としては、カルボニル基含有共重合体水分散液中に含まれるのカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基含有共重合体中に含まれるヒドラジド基が0.1〜2.0モル、好ましくは0.2〜1.8モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0053】
本発明においては、上記共重合体(A)又は本発明の塗料組成物におけるバインダー成分が水酸基を有する場合などにおいて、イソシアネート硬化剤、ブロックポリイソシアネート硬化剤及びメラミン樹脂硬化剤等の水酸基と反応可能な官能基を分子中に2個以上有する化合物を包含してもよい。該硬化剤の配合量としては、一般に本発明の水性塗料組成物の樹脂固形分中に3〜35質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲内であることができる。
また、本発明のヒドラジド基含有共重合体以外のヒドラジド基含有化合物を併用して用いることもできる。
【0054】
上記本発明の塗料組成物は、顔料分として、従来公知の着色顔料、体質顔料、防錆顔料を配合することができ、顔料分散剤、界面活性剤、表面調整剤、可塑剤、沈降防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、硬化触媒、分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、pH調整剤、フラッシュラスト抑止剤、アルデヒド捕捉剤、層状粘度鉱物、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、アルキレングリコール変性アルキルシリケート等の低汚染化剤、等の添加剤を必要に応じて適宣選択し組み合わせて含有することができる。
【0055】
塗装方法
本発明は、被塗面に、上記塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法である。
被塗面としては、特に制限されるものではなく、鉄、アルミニウム等の金属;プラスチック等の有機基材;コンクリートブロック、木材、石材等の無機基材等の基材、該基材上の塗膜を挙げることができる。塗膜としては、アクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂などの塗膜等が挙げられる。また、これらの被塗面は、化成処理、下塗り塗装、中塗り塗装等を行ったものであってもよい。また、本発明の塗料組成物を塗布した後、既知の塗料を塗布することも可能である。
上記塗料組成物の塗装は、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ローラー、ハケ、静電塗装などの従来公知の方法を用いて行うことができる。また、乾燥方法としては、常温乾燥、強制乾燥、加熱乾燥のいずれであってもよく、組成に応じて適宜調整することができる。本明細書では、40℃未満の乾燥条件を常温乾燥とし、40℃以上で且つ80℃未満の乾燥条件を強制乾燥とし、80℃以上の乾燥条件を加熱乾燥とする。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0057】
共重合体の製造
製造例1〜7及び比較製造例1〜4
温度計、サーモスタット、攪拌機、還流冷却器、滴下ポンプ等を備えた反応装置にイソプロパノール90部を仕込み、窒素気流下、加熱撹拌して80℃に達してから、表1に示す量の各モノマーと2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)からなるモノマー混合物を4時間かけて滴下した。該モノマー混合物を滴下終了後、さらに80℃で1時間保持してから、アゾビスイソブチロニトリル0.5部とプロピレングリコールモノメチルエーテル10部との混合物を1時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間保持してから冷却し、共重合体(A−1)〜(A−11)溶液を得た。該共重合体の重量平均分子量を表中に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
ヒドラジド基含有共重合体(I−1)〜(I−12)の製造
実施例1〜8及び比較例1〜4
上記製造例及び比較製造例で得られた共重合体溶液(A−1)〜(A−11)を用いてヒドラジド基含有共重合体を製造した。
【0060】
実施例1
共重合体A−1溶液207部にイソプロパノール147部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物19.9部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−1を得た。
【0061】
実施例2
共重合体A−2溶液207部にイソプロパノール134部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物33部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−2を得た。
【0062】
実施例3
共重合体A−3溶液207部にイソプロパノール141部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物25.2部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−3を得た。
【0063】
実施例4
共重合体A−4溶液207部にイソプロパノール130部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物36部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−4を得た。
【0064】
実施例5
共重合体A−5溶液207部にイソプロパノール133部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物33.8部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを2.4部添加し、約1時間撹拌した。10倍溶量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−5を得た。
【0065】
実施例6
共重合体A−6溶液207部にイソプロパノール152部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物14.5部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを12.8部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−6を得た。
【0066】
実施例7
共重合体A−7溶液202.5部にイソプロパノール146部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物20部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−7を得た。
【0067】
実施例8
共重合体A−3溶液207部にイソプロパノール150部を仕込み均一にした。この液にトリエチルアミンを6部添加し、約1時間撹拌した。この溶液に100%ヒドラジン一水和物25.2部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、10倍溶量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−8を得た。
【0068】
比較例1
共重合体A−8溶液207部にイソプロパノール55部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物112部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−9を得た。
【0069】
比較例2
共重合体A−9溶液207部にイソプロパノール125部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物42部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−10を得た。
【0070】
比較例3
共重合体A−10溶液207部にイソプロパノール130部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物36.5部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを0.8部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−11を得た。
【0071】
比較例4
共重合体A−11溶液207部にイソプロパノール150部を仕込み均一にした。この溶液に100%ヒドラジン一水和物17.4部を加え、80℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミンを16.4部添加し、約1時間撹拌した。10倍量の1−ブタノールに添加し、析出した固体をろ別し、乾燥させてヒドラジド基含有共重合体I−12を得た。
上記実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた粉末状の各ヒドラジド基含有共重合体(I−1)〜(I−12)を、明細書記載の方法でヒドラジド化率、ヒドラジド基含有量を測定、算出し、その値を表2〜3に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
カルボニル基含有共重合体水分散液の製造
製造例8
容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水28.5部、「Newcol707SF」(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン単位を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルションの3%分及び0.5部の過硫酸アンモニウムを10部の脱イオン水に溶解させた溶液10.5部の25%分を添加し、添加20分後から残りのプレエマルション及び残りの過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけて滴下した。
脱イオン水 36.8部
スチレン 15部
メチルメタクリレ−ト 38.8部
n−ブチルアクリレ−ト 24部
2−エチルヘキシルアクリレ−ト 15部
ダイアセトンアクリルアミド 5部
ヒドロキシエチルアクリレ−ト 2部
アクリル酸 0.2部
「Newcol 707SF」 6.6部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いでアンモニア水でpH8〜9に調整し、固形分55%の共重合体水分散液(II−1)を得た。該共重合体水分散液(II−1)のpHは8.3であった。
【0075】
製造例9
容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水28.5部、「Newcol707SF」(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン単位を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルション(コア用)の3%分及び0.5部の過硫酸アンモニウムを10部の脱イオン水に溶解させた溶液10.5部の25%分を添加し、添加20分後からプレエマルションの67%分及び過硫酸アンモニウム水溶液の50%分を2時間かけて滴下した。
脱イオン水 36.8部
スチレン 15部
メチルメタクリレ−ト 43.3部
n−ブチルアクリレ−ト 24部
2−エチルヘキシルアクリレ−ト 15部
1,6−ヘキサンジオ−ルジアクリレ−ト 0.5部
ヒドロキシエチルアクリレ−ト 2部
アクリル酸 0.2部
「Newcol 707SF」 6.6部
【0076】
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルション(シェル用)の30%分及び上記過硫酸アンモニウム水溶液の25%分を2時間かけて滴下した。
脱イオン水 36.8部
スチレン 15部
メチルメタクリレ−ト 38.8部
n−ブチルアクリレ−ト 24部
2−エチルヘキシルアクリレ−ト 15部
ダイアセトンアクリルアミド 5部
ヒドロキシエチルアクリレ−ト 2部
アクリル酸 0.2部
「Newcol 707SF」 6.6部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いでアンモニア水でpH8〜9に調整し、固形分55%の共重合体水分散液(II−2)を得た。該共重合体水分散液のpHは8.4であった。
【0077】
水性樹脂組成物の製造
実施例9〜16及び比較例5〜9
上記粉末状のヒドラジド基含有共重合体(I−1)〜(I−12)を、水/プロピレングリコールモノメチルエーテル=1/1(質量比)の混合溶液で濃度が20%となるように希釈し、各ヒドラジド基含有共重合体分散液を得た。次いで該各20%のヒドラジド基含有共重合体分散液及びアジピン酸ジヒドラジドを硬化剤として、表4の配合組成で、各水性樹脂組成物を得、貯蔵状態及び硬化性を下記基準にて評価した。
(*1)貯蔵状態
各水性樹脂組成物を製造した後、1Lの内面コート缶に1kg入れ、窒素封入した後40℃で1日間)貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中での状態を目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○:異常なし、○△:一部に凝集が認められる、△:凝集したのち、分離、
×:ゲル化
(*2)硬化性
ガラス板に各水性樹脂組成物をドクタ−ブレ−ドにて乾燥膜厚で40μmになるように塗装し、25℃、2週間の条件で乾燥させた後、ガラス板から乾燥膜を剥離して4×4cmの大きさにカットし、これをアセトン中に浸漬し、還流温度で24時間抽出させた後、次式に従って塗膜の溶剤抽出残分を算出した。
硬化性(%)=(抽出した後の膜の質量/抽出前の膜の質量)×100
【0078】
試験塗板の作成
各水性樹脂組成物を、乾燥膜厚が40μmとなるように鋼板にスプレー塗装し、25℃で2週間乾燥させ、耐水性、可とう性を評価した。尚、表中−との記載は、水性樹脂組成物にブツ等があり、成膜できず試験塗板が作成できない意味である。
(*3)耐水性
20℃の上水中に試験塗板を半没し、3日後に試験塗板を引上げて塗面を目視で評価した。
○:異常なし
△:少し白化(ブルーイング)
×:著しく白化
(*4)可とう性
得られた試験塗板を温度20±1℃、湿度75±2%の恒温、恒湿室に24時間置いたのち、1〜2秒で180°折り曲げて耐屈曲性試験を行うことにより評価した。
〇;折り曲げ部分の表裏両面共に異常無し
△;折り曲げ部分の表裏、少なくともどちらか一方に、極微細な異常があるが問題なし
×;折り曲げ部分の表裏、少なくともどちらか一方に、ワレ、ハガレ等がある
【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体。
【請求項2】
下記の繰返し単位を有し、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gであるヒドラジド基含有共重合体。
【化1】

[式中、A、B、D、Gは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eは有機アミン、アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。Rは炭素数が1〜8のアルキル基を示す。l、m、n及びoは次の通りである。
7モル%≦l≦55モル%、1.3モル%≦m≦14モル%、0モル%≦n≦13.9モル%、31モル%≦o≦92.7モル% l+m+n+o=100モル%]
【請求項3】
共重合体(A)が、水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分としてさらに含む請求項1又は2に記載のヒドラジド基含有共重合体。
【請求項4】
共重合体(A)の重量平均分子量が、2,000〜100,000の範囲内である請求項1又は3に記載のヒドラジド基含有共重合体。
【請求項5】
ヒドラジン化合物がヒドラジン一水和物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドラジド基含有共重合体。
【請求項6】
塩基性化合物が、有機アミン又はアンモニア水である請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドラジド基含有共重合体。
【請求項7】
共重合体(A)、ヒドラジン化合物(B)及び塩基性化合物(C)を反応させてなるヒドラジド基含有共重合体の製造方法であって、共重合体(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(a)、炭素数が1〜8のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(b)を共重合成分として含有し、モノマー(a)の共重合割合が共重合体(A)中1〜10質量%の範囲内であって、ヒドラジド基含有量が0.7〜5.0ミリモル/gの範囲内であることを特徴とするヒドラジド基含有共重合体の製造方法。
【請求項8】
共重合体(A)が、水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分としてさらに含む請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
共重合体(A)の重量平均分子量が、2,000〜100,000の範囲内である請求項7又は8に記載のヒドラジド基含有共重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋又は硬化剤。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドラジド基含有共重合体を含む樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドラジド基含有共重合体を含む塗料組成物。
【請求項13】
カルボニル基含有共重合体水分散液をさらに含む請求項12に記載の塗料組成物。
【請求項14】
カルボニル基含有共重合体中に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基含有共重合体中に含まれるヒドラジド基が0.1〜2.0モルとなるように配合されることを特徴とする請求項13に記載の塗料組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。


【公開番号】特開2006−316151(P2006−316151A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139070(P2005−139070)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】