説明

ヒドラジン誘導体組成物

【課題】本発明は、常温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた皮膜を形成することができる、モノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であるヒドラジン誘導体組成物、及びそれらを用いたコーティング組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】酸及び/又は吸着剤で処理することによりモノヒドラジン化合物を除去して得られたヒドラジン誘導体組成物、及びそれらを用いたコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ剤等として有用な水系コーティング組成物の硬化剤に関し、具体的にはヒドラジン誘導体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーティング分野において水系エマルジョンは、有機溶剤系から水系への転換素材として注目されているが、有機溶剤系コーティング組成物と比べ耐水性、耐汚染性、硬度等の点でいまだ充分な物性を示していなかった。
これらの物性を向上させる目的で、水系エマルジョン中に官能基を導入して、架橋重合体よりなる塗膜(以下、“架橋塗膜”と称する)を形成させることが一般に行われている。該架橋塗膜を形成する水系コーティング組成物としては、施工性、作業性等から、水系エマルジョンなどの重合体と硬化剤を混合した形であり、且つ、塗布されると、加熱しなくても、水性媒体の蒸発に併って硬化皮膜を形成することのできる一液常温硬化型(cold-curing,one-packtype)に対する要求が大きく、その要求に対し近年カルボニル基とヒドラジド基の脱水縮合反応を利用したヒドラゾン架橋系水系コーティング組成物が注目されている。
【0003】
例えば、[特許文献1]特公昭46−20053号公報、[特許文献2]特開昭57−3850号公報、[特許文献3]特開昭57−3857号公報、[特許文献4]特開昭58−96643号公報、[特許文献5]特開平4−249587号公報等では、カルボニル基含有共重合体水分散液に、硬化剤としてジカルボン酸ジヒドラジドを添加することにより、常温硬化性(cold-curing ability)と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた水系コーティング組成物を提供することが提案されている。
【0004】
[特許文献6]国際公開96/01252号パンフレットでは、種々の溶剤に対する溶解性に優れ、かつポリカルボニル化合物と高い相溶性を示す新規なセミカルバジド誘導体を硬化剤として用い、ポリカルボニル化合物とを組み合わせた水系コーティング組成物が提案されている。さらに[特許文献7]特願2005−158464号では、アロファネート基を有するポリイソシアネートに、ヒドラジンを反応させて得たセミカルバジド系組成物を用いた水系コーティング組成物が提案されている。これらの水系コーティング組成物は、常温硬化性と貯蔵安定性に優れ、耐水性、硬度、耐汚染性等に優れた架橋皮膜が得られるとされている。
【0005】
ところで、これらヒドラジン誘導体組成物では、モノヒドラジン化合物を含有するのが普通である。例えばアジピン酸ジヒドラジドでは加水分解によってヒドラジンが発生するし、またポリセミカルバジドの製造においては、通常はポリイソシアネートに等モル以上のヒドラジンを反応させて対応するポリセミカルバジドを得るため余剰のヒドラジンが残存するからである。
コーティング組成物として使用した際にこのような組成物中のヒドラジンが大気に放出されると、その毒性から環境および人体への影響が懸念される。特にこのようなコーティング組成物を塗工する作業においては、人体への組成物の接触の機会が多いことや、組成物から揮発した物質を吸入する機会が多いことから、コーティング組成物中のヒドラジンをできるだけ減少させることが望ましい。可能ならばヒドラジンを実質的に含まないコーティング組成物であることが望ましい。
【0006】
したがってヒドラジン誘導体組成物から余剰のヒドラジンを除去する必要があるが、蒸留または抽出といった方法では除去効率が十分でないという問題があった。
すなわち、蒸留による方法では、水の共存下またはヒドラジンよりも高沸点の溶媒の存在下にヒドラジンを除去するのであるが、水を用いた場合にはヒドラジンと水が共沸組成物となるために除去効率が低く、ヒドラジンよりも高沸点の溶媒を用いた場合には水系コーティング組成物とするために高沸点の溶媒も除去する必要があり操作が煩雑である。一方、抽出による除去法ではヒドラジン誘導体組成物を有機溶媒層に抽出し、ヒドラジンは例えば塩酸、硫酸などの酸により水層に抽出することができるが、ヒドラジン誘導体組成物は水への分散、溶解が容易な化合物であることが多く、ヒドラジンの除去効率は低かった。
【特許文献1】特公昭46−20053号公報
【特許文献2】特開昭57−3850号公報
【特許文献3】特開昭57−3857号公報
【特許文献4】特開昭58−96643号公報
【特許文献5】特開平4−249587号公報
【特許文献6】国際公開96/01252号パンフレット
【特許文献7】特願2005−158464号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、常温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた皮膜を形成することができる、モノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であるヒドラジン誘導体組成物、及びそれらを用いたコーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドラジン誘導体を酸及び/又は吸着剤で処理することによりモノヒドラジン化合物を除去する方法を見い出し、本発明をなすにいたった。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)モノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であることを特徴とするヒドラジン誘導体組成物。
(2)モノヒドラジン化合物がヒドラジンである前記(1)に記載のヒドラジン誘導体組成物。
(3)ヒドラジン誘導体が、ヒドラジド基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジド化合物及び/又は式(1)で表されるセミカルバジド誘導体である前記(1)または(2)に記載のヒドラジン誘導体組成物。
【0009】
【化1】

(式中、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数5〜25のシクロアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの2量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはRは炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。
【0010】
は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜10のアリーレン基を表す。
nは、0又は1を表す。l及びmは、各々0又は正の整数を表す。ただし、20≧(l+m)≧2である。)
【0011】
(4)モノヒドラジン化合物を酸及び/又は吸着剤で除去処理する前記(1)〜(3)に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
(5)ポリイソシアネートにヒドラジンを反応させ、酸及び/又は吸着剤で処理する前記(1)〜(3)に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
(6)酸が陽イオン交換樹脂である前記(4)または(5)に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
(7)吸着剤が活性炭である前記(4)または(5)に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
(8)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を有するコーティング組成物。
【発明の効果】
【0012】
常温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、硬度、耐汚染性等に優れた皮膜を形成することができる、モノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であるヒドラジン誘導体組成物、及びそれらを用いたコーティング組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のヒドラジン誘導体組成物は、1分子中に2個以上のヒドラジン残基を有するヒドラジン誘導体、好ましくはヒドラジド基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジド化合物及び/又は式(1)で表されるセミカルバジド誘導体を含有していることを特徴とする。
【0014】
本発明において、上記ヒドラジド基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジド化合物の具体例としては、カルボジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、オキシジプロピオン酸ジヒドラジド、オキシジグリコール酸ジヒドラジド、N,N’−ジヒドラジノカルボエチルピペラジン等のジカルボン酸ジヒドラジド類、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリト酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、1,8−ジヒドラジド−4−ヒドラジドメチルオクタン等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類及び式(2)で表されるがごとき数平均分子量が500〜500000の酸ヒドラジド系ポリマー等やそれらの併用が挙げられる。
【0015】
【化2】

(式中、Xは水素原子またはカルボキシル基であり、Yは水素原子またはメチル基であり、Aはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸から 選ばれる単量体の重合した単位であり、Bはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸と共重合可能な単量体の重合した単位である。
【0016】
また、l、m及びnは下記の各式を満足する各構成成分のモル分率を示す。
2モル%≦l≦100モル%
0モル%≦m+n≦98モル%
l+m+n=100モル%
また、上記酸ヒドラジド系ポリマーは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。)
【0017】
本発明に好適に用いることができる下記の式(1)で表されるセミカルバジド誘導体は、例えば1分子中に−NCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物とモノヒドラジン化合物とを反応させる事によって得られる。
【0018】
【化3】

(式中、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数5〜25のシクロアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの2量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはRは炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。
【0019】
は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜10のアリーレン基を表す。
nは、0又は1を表す。
l及びmは、各々0又は正の整数を表す。ただし、20≧(l+m)≧2である。)
【0020】
該1分子中に−NCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物をビュレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合、アロファネート結合、ウレトジオン結合等を形成することによりオリゴマー化したポリイソシアネート化合物、及びこれらの併用が挙げられる。
【0021】
上記ジイソシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のアルキレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等のシクロアルキレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート等のアリーレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のアラルキレンジイソシアネート等、及びこれらの併用が挙げられる。
【0022】
これらジイソシアネート化合物のうち、生成するセミカルバジド誘導体を含有する組成物を用いた皮膜の耐熱黄変性、耐候性等の向上の点からアルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネートが望ましい。
更に、上記したポリイソシアネート化合物以外にも、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン等の、炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート等を挙げることができるが、後述するポリカルボニル化合物等との相溶性の観点から、前述した、ジイソシアネート化合物をオリゴマー化して得られるポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0023】
本発明において上記1分子中に−NCO基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を用いて合成したセミカルバジド誘導体は、多官能となるため架橋密度が高く強靭な皮膜を与えることができるが、1分子中のセミカルバジド基の数が多くなりすぎると生成するセミカルバジド誘導体の粘度が高くなり取り扱いが困難となる。従って、セミカルバジド誘導体の合成に用いるポリイソシアネート化合物の1分子中の−NCO基の数は2〜20個が好ましい。
ポリイソシアネート化合物と反応させるモノヒドラジン化合物としては、例えばヒドラジン及びその水和物、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン等のモノアルキルヒドラジン、及びそれらの併用が挙げられる。
【0024】
上記セミカルバジド誘導体の製造において、前述したポリイソシアネート化合物のNCO基と、モノヒドラジン化合物中の−NHNH基または−NHNH基に転化し得る基との当量比は、1:1〜100、好ましくは1:1.2〜80、さらに好ましくは1:3〜50である。当量比が1:1未満である場合は、未反応のNCO基が存在し好ましくない。また1:100より大きくなると未反応のモノヒドラジン化合物が多く存在し好ましくない。
セミカルバジド誘導体は、無溶媒または溶媒中で製造できる。溶媒としては、NCO基に不活性であるか、または反応成分よりも活性の低いものが使用できる。溶媒はセミカルバジド組成物中に残存しても良いが、常圧あるいは減圧下で加熱し蒸留除去することもできる。
【0025】
このような方法でセミカルバジド誘導体を製造した際には、余剰のモノヒドラジン化合物が残存している。また前記のポリヒドラジド化合物においても加水分解によってモノヒドラジン化合物が発生している。さらには加熱条件下では、加水分解反応が加速されたり、多量体化を併発したりしてモノヒドラジン化合物が徐々に増加することが知られている。
一般にモノヒドラジン化合物は、その毒性から環境および人体への影響が懸念されている物質である。したがってコーティング組成物として使用した際に余剰のモノヒドラジン化合物が放出されないように、該モノヒドラジン化合物を除去しておくのが望ましい。本発明においてヒドラジン誘導体に対するモノモノヒドラジン化合物の量は、100ppm以下であり、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。
【0026】
しかし、従来行われていた蒸留または抽出といった方法では除去効率が十分ではなかった。すなわち、蒸留による方法では、一旦蒸留を行った後に微量残存したモノヒドラジン化合物を除去するために溶媒の存在下に蒸留を行うのである。例えばヒドラジンを除去するためには、水が用いられることがあるが、この場合にはヒドラジンと水が共沸組成物となるために、ヒドラジンを100ppm以下にまで除去することは非常に困難である。また、ヒドラジンよりも高沸点の溶媒を使用した場合には、水系コーティング組成物とするために高沸点の溶媒自体も除去する必要があり操作が非常に煩雑である。この際加熱蒸留を行うと前記の通りヒドラジンが増加し、ヒドラジンを100ppm以下にまで除去することは非常に困難である。
【0027】
一方、抽出による除去法では、セミカルバジド誘導体またはポリヒドラジド化合物を有機溶媒層に抽出し、モノヒドラジン化合物は例えば塩酸、硫酸などの酸により水層に抽出することができれば除去が可能である。しかしながら、セミカルバジド誘導体またはポリヒドラジド化合物は水への分散、溶解が容易な化合物であることが多いためにモノヒドラジン化合物の除去効率は低く、100ppm以下にまで除去することは非常に困難である。
【0028】
本発明者らが鋭意検討した結果、本発明のモノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であるヒドラジン誘導体の製造においては、セミカルバジド誘導体またはポリヒドラジド化合物を合成した後に、酸及び/又は吸着剤で処理することが好ましい。酸としては陽イオン交換樹脂、ゼオライト等、吸着剤としては活性炭、モレキュラーシーブ等を用いることができる。これらの中でも除去効率の点から陽イオン交換樹脂及び/又は活性炭で処理することが好ましい。ヒドラジン誘導体組成物を処理するにあたっては、該組成物に溶媒を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。酸及び/又は吸着剤で処理する温度については、前記のように加熱によってモノヒドラジン化合物が増加することを考慮するとできるだけ低い温度が好ましい。また低すぎる温度ではヒドラジン誘導体組成物が固化して流動性を失ったり、溶媒に溶けなかったりするので好ましくない。具体的には−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは0〜80℃である。
【0029】
酸及び/又は吸着剤で処理する方式についてはバッチ方式でも良いし、カラム方式でも良い。バッチ方式で処理を行う場合には、ヒドラジン誘導体組成物と酸又は吸着剤との質量比は100:1〜100が好ましい。質量比が100:1未満である場合はモノヒドラジン化合物の除去効率が低く好ましくない。また質量比が100:100より大きい場合は攪拌が困難であったり、酸又は吸着剤の分離が困難であったり、生産性が低下したりして好ましくない。カラム方式で処理を行う場合には、SV(空間速度)0.1〜100で実施するのが好ましい。SV0.1未満である場合は生産性が極端に低下し好ましくない。またSV100より大きい場合はモノヒドラジン化合物の除去効率が低く好ましくない。
【0030】
またヒドラジン誘導体組成物を処理するにあたっては、処理の負荷を軽減するために該組成物中のモノヒドラジン化合物を蒸留により予備的に除去した後に、酸及び/又は吸着剤で処理を行うのが好ましい。
本発明で得られるヒドラジン誘導体は、これを構成するヒドラジン残基が遊離の状態となったモノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であり、ポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物用硬化剤としてこのヒドラジン誘導体からなる組成物を用いてコーティング組成物としたときモノヒドラジン化合物の濃度は非常に低くなり、該コーティング組成物の使用に際してモノヒドラジン化合物への暴露が実質的になくなり、安全性の高いものである。
【0031】
本発明のヒドラジン誘導体組成物は、水性媒体中への分散安定性や溶解性を補助する目的で、特開平8−245878記載の式(5)で表される親水基含有化合物、ケトン酸及び/又はその塩や界面活性剤を併用しても良い。
【0032】
【化4】

(式中、R5はポリイソシアネート化合物からNCO基を除いた残基を表す。p及びqは各々0または正の整数を表し、rは正の整数を表す。また、(r+p+q)≧2である。Aは、非イオン系親水性基及び/またはイオン系(後にイオン系に転化しうるものを含む)親水性基を有する有機基を表す。Rは、2価の直鎖状もしくは分岐状の2〜20個の炭素原子を有する脂肪族残基または5〜20個の炭素原子を有する脂環族残基または置換基を有しても有さなくても良い芳香族残基を表す。 nは0または1を表す。)
【0033】
上記ケトン酸としては、例えばピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ケトカプリン酸、ケトウンデカン酸、ケトステアリン酸、ケトヘンエイコセン酸、ベンゾイル酢酸、ベンゾイルプロピオン酸、ケトグリコン酸等のモノケトンカルボン酸類やケトマロン酸、アセトンジカルボン酸、2−ケトグルタル酸、アセトンジ酢酸、アセトンジプロピオン酸等のモノケトンジカルボン酸等や、これらの併用が挙げられる。
ケトン酸の塩は、上記ケトン酸を塩基で中和することにより得ることができる。中和に用いる塩基としては、例えばKOH、NaOH、LiOH等のアルカリ金属の水酸化物、アミン類等や、これらの併用が挙げられる。
【0034】
上記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、高級アルキルスルフォン酸、スルフォン酸アルキルアリル、スルフォン化ひまし油、スルフォこはく酸エステル、アルケニルコハク酸等の塩に代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤等やそれらの併用が挙げられる。
【0035】
本発明のコーティング組成物は、上記ヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を含んでなる。該コーティング組成物のうち、水系ヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物との組み合わせは、貯蔵安定性が非常に優れる上、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を比較的低温で与えることができるため特に好ましい。
【0036】
該ポリカルボニル化合物としては、例えばカルボニル基を含有する共重合体、特開平2−238015号公報に記載されているがごときヒドロキシアセトン等のカルボニル基のあるモノまたはポリアルコールを原料とするカルボニル基含有ポリウレタン類、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース等、及びこれらの併用が挙げられる。
これらの中で好ましいポリカルボニル化合物は、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)と、該単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)とを共重合することによって得られるカルボニル基を含有する共重合体であり、さらに好ましくはポリカルボニル化合物が、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)0.1〜30質量%と、該単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)70〜99.9質量%とを共重合することによって得られるカルボニル基を含有する共重合体である。
【0037】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体(イ)としては、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、ホルミルスチロール等や、その併用が挙げられる。
【0038】
単量体(イ)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(ロ)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体類、エポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体類、アクリルアミド系単量体、メタクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられ、(メタ) アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ) アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ) アクリル酸メチル、(メタ) アクリル酸エチル、(メタ) アクリル酸n−ブチル、(メタ) アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ) アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ) アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸エチレングリコール、(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸プロピレングリコール、(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ) アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ) アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体類として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、マレイン酸の半エステル、クロトン酸などがあり、(メタ)アクリルアミド系単量体類としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。
エポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体類として具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0040】
また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ) アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0041】
ポリカルボニル化合物は、懸濁重合、乳化重合又は溶液重合により得られることが好ましく、乳化重合によって得られるラテックスであることはさらに好ましい。
ポリカルボニル化合物は、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれるアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)の存在下、共重合することによって得られることが好ましい。
【0042】
スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。
【0043】
硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物である。
【0044】
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、たとえば、式(6)、(7)、(8)、(9)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

{式(6)〜(9)中、R1’は水素またはメチル基であり、R2’は炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数6〜19のアラルキル基等の炭化水素基、又はその1部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、アルキレン部分の炭素数が2〜4)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、アルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド化合物を含む有機基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換されたアルキレン基である。nは0〜200の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム、またはカリウムである。}
【0049】
上記式(6)及び(7)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)があり、上記式(8)及び(9)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180AまたはS−180(商品名)(花王(株)製)等がある。
またスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例として、式(10)または(11)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化9】

(式中R3’、R4’の各々は、それぞれ独立に、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基であり、R5’は水素またはプロペニル基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基である。nは1〜200の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム又はカリウムである。)
【0051】
【化10】

(式中、R6’は水素またはメチル基であり、R7’は炭素数8〜24のアルキル基またはアシル基である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基である。mは0〜20の整数であり、nは0〜50の整数である。Mはアンモニウム、ナトリウム又はカリウムである。)
上記式(10)で表されるアルキルフェノールエーテル系化合物として、例えばアクアロンHS−10(商品名)(第一工業製薬(株)製)があり、上記式(11)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025N(商品名)(旭電化工業(株)製)がある。
【0052】
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、が挙げられる。
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。
【0053】
硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物としては、例えば上記の式(10)と(11)で表される、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物がある。
【0054】
これらのアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)は、エマルジョン中に
(I) エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在しているか、
(II) 未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在しているか、又は
(III) 水溶性単量体との共重合物あるいは単量体同士の共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在している。
とくに(I)の状態の比率を高めることによって、エマルジョンより得られるフィルムの耐水性を良好なものとすることができる。
【0055】
またアニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)、又は熱分解質量分析(Py−MS)により同定することができる。他の方法として、エマルジョンの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
【0056】
本発明では、アニオン型エチレン性不飽和単量体(ハ)以外に通常の界面活性剤を併用することができる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等の非反応性ノニオン型界面活性剤、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等の反応性ノニオン型界面剤といわれるエチレン性不飽和単量体と共重合なノニオン型界面活性剤等が用いられる。
【0057】
本発明において、ポリカルボニル化合物を得るに当たって、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、その量としてはエチレン性不飽和単量体に対して通常0.1〜1質量%配合される。通常は常圧下、65〜90℃の重合温度で実施されるのが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧等の特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。さらに分子量を調節するために、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を任意に添加することも可能である。
【0058】
本発明において、ポリカルボニル化合物を長期に安定に保つため、pH5〜10の範囲に調整することが好ましく、必要に応じてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸等の酸類を添加することも可能である。
また、本発明のコーティング組成物に用いることができるポリエポキシ化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として他の不飽和単量体と塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などによって共重合させることにより得られるエポキシ基を含有する共重合体や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、環式脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物を水に分散させたもの、及びこれらの併用が挙げられる。
【0059】
本発明のヒドラジン誘導体組成物(C)とポリカルボニル化合物(D)及び/又はポリエポキシ化合物(E)を含んでなるコーティング組成物は、その固形分質量比が(C)/((D)+(E))=0.1/99.9〜90/10の範囲内であることが好ましい。これにより低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備え、耐水性、耐汚染性、硬度等に優れた皮膜を与えることができる。この比率が0.1/99.9未満である場合は、架橋密度が低くなり架橋の効果が出現しないので好ましくない。90/10を超えると、得られる皮膜が非常に脆いものとなり好ましくない。
本発明のヒドラジン誘導体組成物は、ポリカルボニル化合物やポリエポキシ化合物との反応性を制御する目的で、式(12)で表されるモノケトン類を混合する事ができる。
【0060】
【化11】

(式中R6、R7は、各々水素原子、直鎖状もしくは分岐状の2〜20個の炭素原子を有する脂肪族残基、5〜20個の炭素原子を有する脂環族残基、置換基を有しても有さなくても良い芳香族残基を表す。またR6、R7は環状構造を形成しても良い。)
前記式(12)で表されるモノケトン類としては、30〜200℃の比較的低沸点のもの(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が上記反応性の制御がし易く好ましい。
【0061】
本発明のコーティング組成物には、必要により通常塗料等に添加配合される成分、例えば顔料、充填剤、分散剤、光安定剤、湿潤剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、可塑剤、成膜助剤、防錆剤、染料、防腐剤等がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、粘着剤、紙加工剤または織布、不織布の仕上げ材として有用となる。塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材としては、例えばコンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート等の無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材等の各種下地に対する塗料又は建築仕上げ材、さらには複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイント等の合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料等が挙げられる。
【0063】
接着剤としては、例えば自動車内装用接着剤、建築部材用接着剤、各種フィルムのラミネート接着剤等として用いられる、金属、プラスチック、木材、スレート、紙、布等に対するウエット接着剤及びコンタクト接着剤等が挙げられる。粘着剤としては、例えば片面テープ、両面テープ、ラベル、アルバム等に使用される、永久粘着剤、再剥離型粘着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。尚、実施例中の部及びppmはそれぞれ質量部、及び質量ppmを意味する。
実施例中に用いられる各種物性の測定方法は、下記の通りである。
1)分子量分布:
ゲル浸透クロマトグラフ分析を用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
装置:東ソー(株)製 HLC−8020
カラム:東ソー(株)製
TSKgel G−5000 HXL
TSKgel G−4000 HXL
TSKgel G−2000 HXL
データ処理:東ソー(株)製 SC8010
キャリヤー:テトラヒドロフラン
【0065】
2)ヒドラジン濃度:
サンプルをジエチルケトンで誘導体化した後、ガスクロマトグラフ分析により求めた。
サンプル調製:サンプル1gにジエチルケトン0.5g、メタノール1gを加え、室温で12時間静置した後分析した。
装置:島津製作所製 GC−14A
カラム:化学物質評価研究機構製
G−100、長さ40m、内径1.2mm、膜厚1.0μm
温度条件:カラムオーブン100℃×1分→昇温10℃/分→180℃×5分、注入口100℃、検出器180℃(FID)
データ処理:島津製作所製 GCsolution
【0066】
3)フィルム強度:
テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTA−100)で測定長:300mm、引張速度:50mm/分の条件で測定した。
4)フィルムの耐溶剤性:
フィルムを200メッシュの金網製の袋に入れた後、テトラヒドロフラン中に室温にて24時間浸漬後、フィルム質量の保持率を、(テトラヒドロフラン浸漬後のフィルム質量)÷(テトラヒドロフラン浸漬前のフィルム質量)×100として求めた。
【0067】
5)フィルムの耐水性:
フィルムを水中に室温にて6日間浸漬後、フィルム吸水率(%)を、((水浸漬後のフィルム質量)−(水浸漬前のフィルム質量))÷(水浸漬前のフィルム質量)×100として求めた。
【0068】
[実施例1]
ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(質量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/160℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネートおよび溶媒を留去回収した。
得られたポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネートであり、残存ヘキサメチレンジイソシアネート0.1質量%、−NCO含有量は23.3質量%、粘度は1900(±200)mPa.s/25°、数平均分子量は約600(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.3であった。
【0069】
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたイソプロピルアルコール230部にヒドラジン1水和物20部を室温で添加した。これに上記ビュレット型ポリイソシアネート42部をテトラヒドロフラン168部に溶解した溶液を40℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続けた。得られた反応液中のテトラヒドロフラン、ヒドラジン、水等を加熱減圧下に留去することにより固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は555ppmであった。
この水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は10ppmであった。
【0070】
[比較例1]
実施例1と同様にしてセミカルバジド誘導体の合成反応を実施した。得られた反応液中のテトラヒドロフラン、ヒドラジン、水等を加熱減圧下に留去した後、固形分と等量のプロピレングリコールモノプロピルエーテル(異性体混合物、沸点140−160℃)を加えて加熱減圧下に留去する操作を3回繰り返した。さらに、固形分と等量の水を加えて加熱減圧下に留去する操作を3回繰り返し、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は211ppmであった。
【0071】
[実施例2]
実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離した後、ろ液に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は0.7ppmであった。
【0072】
[実施例3]
実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、50℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は1.0ppmであった。
【0073】
[実施例4]
実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕5部を加え、50℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は32ppmであった。
【0074】
[実施例5]
実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液100部に対して活性炭白鷺A〔日本エンバイロケミカルズ(株)製〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって活性炭を分離し、ろ液を得た。このろ液に対して前記と同様の活性炭による処理をさらに2回行い、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は8.0ppmであった。
【0075】
[実施例6]
内径15mmのガラスカラムに陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕20mlを充填し、このカラムに実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液200mlをSV10、25℃にて流した。カラムを通過した水溶液中のヒドラジン濃度は6.0ppmであった。
【0076】
[実施例7]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたイソプロピルアルコール103部にヒドラジン1水和物8.9部を室温で添加した。これに「VESTANAT(商標)T−1890」〔ヒュルス・ジャパン(株)製、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、数平均分子量は約800、平均NCO基数は約3.2、NCO基含有量16.4質量%、100%ペレット品〕23部をテトラヒドロフラン92部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続けた。その後、反応系を40℃にて撹拌しながらブチルセロソルブ50部を添加た。得られた反応液中のテトラヒドロフラン、ヒドラジン、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ等を加熱減圧下に留去することにより固形分50質量%のセミカルバジド誘導体のブチルセロソルブ溶液を得た。得られたセミカルバジド誘導体の50%ブチルセロソルブ溶液95部にレブリン酸2.7部及び10質量%アンモニア水溶液3.5部、さらに水57部を添加し、30℃にて1時間攪拌を行い均一透明な水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は174ppmであった。
【0077】
この水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離した後、ろ液に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したセミカルバジド誘導体水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は0.5ppmであった。
【0078】
[実施例8]
ヒドラジンを544ppm含む、固形分10質量%のアジピン酸ジヒドラジド水溶液100部に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離した後、ろ液に対して陽イオン交換樹脂IR124H AG〔オルガノ(株)製、強酸性型、予め酸処理したもの〕10部を加え、25℃で4時間攪拌した。ろ過によって陽イオン交換樹脂を分離し、ヒドラジンを除去したアジピン酸ジヒドラジド水溶液を得た。この水溶液中のヒドラジン濃度は0.6ppmであった。
【0079】
[参考例1]
ポリカルボニル化合物(1)の調整。
還流冷却器、滴下槽、温度計および撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水218部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25質量%水溶液3.7部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、次にメタクリル酸9部、スチレン4.5部、アクリル酸ブチル234部、ダイアセトンアクリルアミド13.5部、メタクリル酸メチル189部、イオン交換水225部、アデカリアソープSE−1025Nを14.4部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25質量%水溶液10部、過硫酸アンモニウム1部の混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして2時間保った。その後室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分46.8質量%、平均粒径106nmのカルボニル基含有共重合体水性エマルジョンを得た。
【0080】
[参考例2]
ポリカルボニル化合物(2)の調整。
還流冷却器、滴下槽、温度計および撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水218部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25質量%水溶液3.7部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、次にメタクリル酸9部、グリシジルメタクリレート4.5部、アクリル酸ブチル234部、ダイアセトンアクリルアミド13.5部、メタクリル酸メチル189部、イオン交換水225部、アデカリアソープSE−1025Nを14.4部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25質量%水溶液10部、過硫酸アンモニウム1部の混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして2時間保った。その後室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分47.2質量%、平均粒径118nmのカルボニル基含有共重合体水性エマルジョンを得た。
【0081】
[実施例9]
参考例1で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例2で得られたヒドラジンを0.7ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液2.5部を添加し、コーティング組成物を得た。このコーティング組成物中にヒドラジンは検出されなかった(ヒドラジンの検出限界は0.4ppmであった)。
このコーティング組成物をガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。この塗膜の膜厚は88μm、フィルムの破断伸度は187%、フィルムの破断強度は13mPa、フィルム伸び率50%時のフィルムの強度は4mPaであった。
またフィルムの耐水性は吸水率が4%、耐溶剤性は質量保持率が96%であった。
【0082】
[実施例10]
参考例2で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例2で得られたヒドラジンを0.7ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液2.5部を添加し、コーティング組成物を得た。このコーティング組成物中にヒドラジンは検出されなかった。
【0083】
[比較例2]
参考例1で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン100部に実施例1で合成したヒドラジンを555ppm含む、固形分50質量%のセミカルバジド誘導体水溶液2.5部を添加し、コーティング組成物を得た。このコーティング組成物中のヒドラジン濃度は29ppmであった。
【0084】
[比較例3]
参考例1で合成したカルボニル基含有共重合体水性エマルジョン単独で、ガラス板上にて室温で成膜した後、さらに室温で1ヵ月間乾燥し、透明で平滑な塗膜を得た。この塗膜の膜厚は88μm、フィルムの破断伸度は320%、フィルムの破断強度は84kgf/cm、フィルム伸び率50%時のフィルムの強度は0.7mPaであった。
またフィルムの耐水性は吸水率が20%、耐溶剤性は質量保持率が0%であった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のコーティング組成物は、塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材、接着剤、粘着剤、紙加工剤または織布、不織布の仕上げ材として有用となる。塗料、建材の下地処理材又は仕上げ材としては、例えばコンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート等の無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材等の各種下地に対する塗料又は建築仕上げ材、さらには複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイント等の合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料等が挙げられる。
【0086】
接着剤としては、例えば自動車内装用接着剤、建築部材用接着剤、各種フィルムのラミネート接着剤等として用いられる、金属、プラスチック、木材、スレート、紙、布等に対するウエット接着剤及びコンタクト接着剤等が挙げられる。粘着剤としては、例えば片面テープ、両面テープ、ラベル、アルバム等に使用される、永久粘着剤、再剥離型粘着剤等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下であることを特徴とするヒドラジン誘導体組成物。
【請求項2】
モノヒドラジン化合物がヒドラジンであることを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン誘導体組成物。
【請求項3】
ヒドラジン誘導体が、ヒドラジド基を1分子中に2個以上有するポリヒドラジド化合物及び/又は式(1)で表されるセミカルバジド誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒドラジン誘導体組成物。
【化1】

(式中、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数5〜25のシクロアルキレンジイソシアネート、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの2量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはRは炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、もしくは置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜10のアリーレン基を表す。
nは、0又は1を表す。l及びmは、各々0又は正の整数を表す。ただし、20≧(l+m)≧2である。)
【請求項4】
モノヒドラジン化合物を酸及び/又は吸着剤で除去処理することを特徴とする請求項1〜3に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
【請求項5】
ポリイソシアネートにモノヒドラジン化合物を反応させ、酸及び/又は吸着剤で処理することを特徴とする請求項1〜3に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
【請求項6】
酸が陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項4または5に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
【請求項7】
吸着剤が活性炭であることを特徴とする請求項4または5に記載のヒドラジン誘導体組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のヒドラジン誘導体組成物とポリカルボニル化合物及び/又はポリエポキシ化合物を有するコーティング組成物。

【公開番号】特開2007−106682(P2007−106682A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296523(P2005−296523)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】