説明

ヒドロキシ−官能性エステルをベースとする反応性希釈剤によるポリエステル−ポリアクリレート分散体

【課題】乳化剤または大量の溶媒なしに製造可能で、良好な機械的及び光学的特性を有する被覆物を生成するポリマー分散体の提供。
【解決手段】第一工程において、フリーラジカル共重合可能なビニルモノマー混合物を、バーサチック酸グリシジルエステルとジカルボン酸との反応物の存在下で重合させることによりポリマーP)を調製し、次いで第二工程において、ポリマーP)を10〜500mgKOH/g固形分のヒドロキシル価および>0.5〜≦30mgKOH/g固形分の酸価を有する1以上のポリエステルポリオールと混合し、中和剤の添加前または添加後に、更なる工程において、得られたポリマー混合物を水中に分散させることを含んでなる製造方法、得られたヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレートポリマー水性分散体、該分散体を含有する水性被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い溶媒含量を有し、親水性ポリアクリレート-ポリエステル樹脂ブレンドとヒドロキシ-官能性エステル基を有する反応性希釈剤の混合物を含有する水性ポリマー分散体、その製造方法、並びにそれをベースとする水性被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、水希釈性のコポリマー系結合剤を塗料系において使用することは、知られている。しかし、これらの結合剤は一般に、安定化のための低分子量の乳化剤および/または比較的大きな比率の有機補助溶剤を含有する。通常、乳化剤は、被覆組成物および/または被覆物の特性、例えばその耐水性、被膜の光学的品質(光沢)または顔料着色性(pigmentability)に、悪影響を及ぼす。
【0003】
相当量の有機溶媒を使用することは、環境上の理由から望ましくないが、通常は避けることは不可能である。なぜなら、ポリマー製造の間に、十分な撹拌能力と反応混合物からの熱の除去を確保することが必要だからである。また、水性被覆組成物中の有機溶媒は、有利な効果、例えば一層の貯蔵安定性と顔料湿潤、向上した被膜の光学的品質および一層の流動性につながる。
【0004】
他方で、コポリマーまたはコポリマー分散体中の溶媒量を減少させることは、装置とエネルギーの観点での高水準のコストと不便に関連する。従って、ほとんど有機溶媒の使用なくおよび性能特性の損失なく製造し得る水性ポリマー分散体が必要である。
【0005】
化学反応によって、例えば、アミノ樹脂、ブロックトポリイソシアネートまたはポリイソシアネートで硬化されることになるポリマー分散体には、ヒドロキシル基などの反応基量を含有することが求められる。これらの基は一般に、共重合の間にヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルを付随使用することを通じてコポリマー中へ導入される。しかしながら、非官能性(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと比較して、先行する原材料は非常に高価である。また、より大きな架橋密度によって塗膜の親水性性質を補うために、有機溶液中のコポリマーと比較して、水性コポリマーの製造には、より大量のこれらの原材料を使用することが必要であることも多い。
【0006】
DE-A 39 10829は、5%と20重量%の間の溶媒含有量を有するポリエステル-ポリアクリレートをベースとし、すぐ塗布できる形態(ready-to-apply form)の被覆組成物をベースとする熱硬化性の塗料材料を記載する。特定された好適な溶媒は、水混和性のアルコール、ケトン或いはグリコールエーテル、または水非混和性の溶媒を含む。開示された溶媒は被膜中へ組み込まれないため、それらは再び、塗料系の加工中に揮発性有機化合物(VOC)として放出される。低揮発度を有する上記グリコール誘導体は、被覆物中に部分的に残り、その特性を損ない得る。
【0007】
重合のための溶媒の使用をほとんど回避する、ヒドロキシ官能性二次コポリマー分散体製造の別の手段は、EP-A 0 758 007に記載されている。そこでは、通常用いられる溶媒は、全部または一部がヒドロキシ官能性ポリエーテルに置き換えられている。ヒドロキシル官能性ポリエーテルは反応性希釈剤として二次分散体中に残り、その後の架橋中にイソシアネートまたはブロックトイソシアネートと反応し、ウレタンを形成する。しかしながら、これらの生成物に見られる不都合は、その乏しい安定性、特に耐候安定性である。
【0008】
GB-A 2 078 766は、その製造の間に被覆組成物の溶媒含有量を減らす方法を記載する。溶媒系結合剤を、異なる反応性希釈剤を用いて、塗料産業において既知の顔料および添加剤で調製する。反応性希釈剤は、グリシジルエステルとヒドロキシル基またはカルボキシル基を含有する化合物の反応生成物である。GB-A 2 078 766に記載された被覆組成物の不都合は、反応性希釈剤を使用するにもかかわらず溶媒含有量が高いことであり、それは、かなりの量の補助溶剤が結合剤を通じて組み込まれるからである。例えば、GB-A 2 078 766の実施例Iは、35重量%の溶媒含有量を有する結合剤を使用している。
【0009】
【特許文献1】DE-A 39 10829
【特許文献2】EP-A 0 758 007
【特許文献3】GB-A 2 078 766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、親水性ポリアクリレート樹脂およびポリエステル樹脂を含有し、乳化剤または大量の有機溶媒の使用なしに製造でき、非常に良好な機械的および光学的特性を有する被覆物を生成する、ポリマー分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、カルボキシレート-およびヒドロキシ-官能性ポリアクリレート樹脂、および分散体重量に基づき5重量%以下の溶媒含有量を有するポリエステルの混合物を含有する水性ポリマー分散体によって達成し得る。脂肪族カルボン酸のグリシジルエステルと脂肪族、芳香脂肪族または芳香族カルボン酸の反応生成物を反応性希釈剤として用いると、高水準の耐性を有する塗膜を製造し得る。
【0012】
本発明は、分散体重量に基づき0〜5重量%の分散体含量を有する水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体の製造方法であって、
第一工程で、
A)フリーラジカル共重合可能なビニルモノマーの混合物を、
B)式I):
【化1】

〔式中、
R1は、1〜18個の炭素原子を有する脂肪族、芳香脂肪族または芳香族基であり、
R2は、HまたはCH3であり、
R3およびR4は、同一または異なる、1〜7個の炭素原子を有する脂肪族基、および
nは、1〜4である。〕に示される一以上の化合物
の存在下で重合することによりポリマーP)を調製し、
次いで、第二工程で、ポリマーP)と、
C)10〜500mgKOH/g固形分のヒドロキシル価および>0.5〜≦30mgKOH/g固形分の酸価を有する一以上のポリエステルポリオールを混合し、
中和剤の添加前または添加後に、更なる工程で、得られたポリマー混合物を水中に分散させる各工程、による方法に関する。
【0013】
本発明はまた、本発明の方法に従って得られた水性ポリエステル-ポリアクリレートポリマー分散体および本発明の水性ポリエステル-ポリアクリレートポリマー分散体を含有する水性被覆組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
適当なビニルモノマー混合物A)は、以下の化合物:
A1)場合によりビニル芳香族化合物との混合物における、OHを含まない(メタ)アクリル酸エステル、
A2)ヒドロキシ官能性ビニルモノマーおよび/またはヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
A3)フリーラジカル重合可能なイオンモノマーおよび/または潜在的イオンモノマー、および
A4)成分A1)〜A3)の化合物以外の、フリーラジカル重合可能なモノマー
から選択される構成単位を包含する。
【0015】
成分A1)としての使用に適当なモノマーは、エステル基のアルコール部分に1〜18個の炭素原子を有するアクリレートおよびメタクリレート(以下、(メタ)アクリレートと称する)を包含する。アルコール部分は、直鎖脂肪族、分枝脂肪族または脂環式であってよい。具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、異性体のペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルまたはシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシルおよびイソボルニル(メタ)アクリレートを包含する。アセトアセトキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、ビニルエーテル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、場合により置換されたスチレンおよびビニルトルエンも適当である。
【0016】
メチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシルおよびイソボルニル(メタ)アクリレート、並びにスチレンが好適である。記化合物A1)の任意の所望の混合物を使用することも可能である。
【0017】
適当な化合物A2)には、エチレン性不飽和ヒドロキシル含有モノマー、例えば不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、好ましくは2〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子をヒドロキシアルキル基中に有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。好適な化合物は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、異性体ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-,3-および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、異性体ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートを含む。
【0018】
鎖延長されまたはアルキレンオキシド変性され、数平均分子量≦3000g/mol、好ましくは≦700g/molを有する重合可能なヒドロキシ官能性モノマーも適当である。好適なアルキレンオキシドは、単独または混合物での、エチレン、プロピレンまたはブチレンオキシドを含む。例としては、Degussa AG(ダルムシュタット、ドイツ)による、Bisomer(登録商標)PEA 3(ポリエチレングリコールモノアクリレート;3個のエチレンオキシド単位)、Bisomer(登録商標)PEM 6 LD(ポリエチレングリコールモノメタクリレート;6個のエチレンオキシド単位)、Bisomer(登録商標)PPM 63 E(ポリエチレングリコールモノメタクリレート、6個のプロピレンオキシド単位および3個の末端エチレンオキシド単位)またはBisomer(登録商標)PEM 63 P(ポリエチレングリコールモノメタクリレート;6個のエチレンオキシド単位および3個の末端プロピレンオキシド単位)が含まれる。
【0019】
430〜2500g/molの数平均分子量(Mn)を有する、重合可能な非イオン性の親水性アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートも適当である。例としては、Degussa AG(ダルムシュタット、ドイツ)による、Bisomer(登録商標)MPEG 350 MA(Mn=430g/mol)、550 MA(Mn=628g/mol)、S 7 W(Mn=818g/mol)、S 10 W(Mn=1080g/mol)およびS 20 W(Mn=2080g/mol)が含まれる。
【0020】
イオン性または潜在イオン性の親水性化合物A3)は、フリーラジカル重合可能な少なくとも一つの基、並びに-COOY、-SO3Y、-PO(OY)2(ここで、Yは、例えば、H、NH4または金属カチオン)、-NR2または-NR3(ここで、RはH、アルキルまたはアリールであり、また基Rは、一分子中で互いに同一または異なってよい)などの少なくとも一つの官能価を含有し、水性媒体と相互作用してpH-依存性解離平衡に入り、負、正または中性の電荷を有し得る、全ての化合物である。
【0021】
フリーラジカル重合可能な、適当な成分A3)のイオン性および/または潜在イオン性モノマーは、好ましくはオレフィン性不飽和の、カルボン酸またはカルボン酸無水物基を含有するモノマーである。例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸または二塩基酸のモノアルキルエステルおよび/またはマレイン酸モノアルキルエステルなどの無水物が含まれる。アクリル酸および/またはメタクリル酸が好適である。
【0022】
WO-A 00/39181(8頁13行〜9頁19行)に実施例として記載されたような、ホスフェートおよび/またはホスホネートまたはスルホン酸および/またはスルホネート基を含有する、不飽和のフリーラジカル重合可能な化合物も、成分A3)の化合物として適当である。この成分群のなかでも、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
【0023】
必要に応じて、成分A1)〜A3)以外の、フリーラジカル重合可能なモノマーを、成分A4)の化合物として用いることが可能である。これらの化合物は、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または2以上の官能価を有するビニルモノマー、例えばエタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-または1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ジ-、トリ-およびオリゴエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレートまたはジビニルベンゼンなどを含む。
【0024】
ポリマーP)の親水性は、好ましくは、イオン性および/または潜在イオン性の基、より好ましくはアニオン性および/または潜在アニオン性の基によってのみ得られる。
【0025】
ポリマーP)が、12〜350mgKOH/g、好ましくは20〜200mgKOH/g、より好ましくは50〜150mgKOH/g固形分のOH価、および5〜80mgKOH/g、好ましくは10〜35、より好ましくは15〜30mgKOH/g固形分の酸価を有するように、成分A1)〜A4)の量を選択する。
【0026】
適当な化合物B)は、式I):
【化2】

〔式中、
R1は、1〜18個、好ましくは2〜10個、より好ましくは4〜6個の炭素原子を有する脂肪族、芳香脂肪族または芳香族基であり、
R2は、HまたはCH3、好ましくはCH3であり、
R3およびR4は、同一または異なる、1〜7個、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する脂肪族基、および
nは、1〜4、好ましくは2である。〕に相当する。
【0027】
脂肪族カルボン酸(α)のグリシジルエステルと脂肪族、芳香脂肪族または芳香族カルボン酸(β)の反応生成物が好ましい。
【0028】
好適な成分(α)の化合物は、例えば、Cardura(登録商標)E10P(Resolution BV、オランダ)として得られるバーサチック酸のグリシジルエステルである。
【0029】
適当な成分(β)の化合物は、飽和脂肪族モノカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸;不飽和モノカルボン酸、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸またはリシノール酸;芳香族モノカルボン酸、例えば安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸またはtert-ブチル安息香酸;脂肪族ジカルボン酸またはポリカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸およびダイマー脂肪酸であって不飽和モノカルボン酸を二量化して得られるもの;および芳香族ジカルボン酸またはポリカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸を含む。上記化合物の混合物もまた、成分(β)として適当である。
【0030】
(α)としてのバーサチック酸のグリシジルエステルと、化合物(β)としてのジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸またはイソフタル酸の組み合わせが好適である。アジピン酸は、成分(β)としてより好適である。バーサチック酸(α)のグリシジルエステルとアジピン酸(β)の組み合わせは、とりわけ好適である。
【0031】
成分(α)と(β)からの化合物B)の調製は、一般には別々に行われ、不飽和モノマーA1)〜A4)のフリーラジカル重合前またはフリーラジカル中に添加される。化合物B)の調製において、温度は50〜200℃、好ましくは90〜140℃である。化合物B)の添加は、モノマーA1)〜A4)のフリーラジカル重合前に行うのが好ましい。さらに、化合物B)の全量または一部の添加は、重合またはポリマーA)の間であることも可能である。
【0032】
適当なポリエステルポリオールC)は、以下の化合物:
C1)脂肪族および/または脂環式および/または芳香族性のモノ-、ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸またはそれらの無水物、
C2)2および/またはそれ以上の官能価を有するアルコール、
C3)一価アルコール、および
C4)ヒドロキシカルボン酸、ラクトン、アミノアルコールおよび/またはアミノカルボン酸
から選択される初期材料の通常の重縮合によって調製する。
【0033】
ポリエステルポリオールは、10〜500、好ましくは80〜350mgKOH/g固形分のヒドロキシル価と、>0.5〜≦30、好ましくは≧1〜≦8mgKOH/g固形分の酸価を有する。
【0034】
適当なカルボン酸C1)は、モノカルボン酸、例えば安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2-エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、天然および合成の脂肪酸;ジカルボン酸および/または無水物、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、ドデカンジオン酸、水素化ダイマー脂肪酸;カルボン酸および/または高官能価の無水物、例えばトリメリット酸および無水トリメリット酸;並びにこれらの化合物の混合物を含む。ジカルボン酸およびジカルボン酸無水物が好適である。
【0035】
適当な不飽和カルボン酸は、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、不飽和脂肪酸(例えば大豆油脂肪酸またはトール油脂肪酸)およびこれらのおよび他の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の混合物を含む。
【0036】
ジカルボン酸およびジカルボン酸無水物は好適である。環状ジカルボン酸、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸無水物は、とりわけ好適である。
【0037】
適当な成分C2)は、62g/mol〜286g/molの分子量を有する(シクロ)アルカンジオール(即ち、(シクロ)脂肪族的に結合したヒドロキシル基による二価アルコール)、例えばエタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール;エーテル基含有ジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールを含む。2000g/mol、好ましくは1000g/mol、より好ましくは500g/molの最大数平均分子量を有するポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレングリコールも、適当である。前記ジオールとε-カプロラクトンの反応生成物をジオールとして用いてもよい。適当な官能価が3またはそれ以上のアルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトール、並びにこれらの化合物の混合物を含む。ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびトリメチロールプロパン、並びにこれらのジオールとε-カプロラクトンの反応生成物が好適である。
【0038】
必要に応じて、成分C3)として、モノアルコール、例えばエタノール、1-および2-プロパノール、1-および2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールおよびこれらの化合物の混合物を、使用することも可能である。2-エチルヘキサノールが好適である。
【0039】
必要に応じて、成分C4)として、2〜10個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸、これらの酸のラクトン、61〜300の分子量を有するアミノアルコールおよび/または75〜400の分子量を有するアミノカルボン酸を、使用することも可能である。例としては、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ε-カプロラクトン、アミノエタノール、アミノプロパノール、ジエタノールアミン、アミノ酢酸、アミノヘキサン酸およびこれらの化合物の混合物が含まれる。ε-カプロラクトンが好適である。
【0040】
ポリエステルC)は、必要に応じて、既知のエステル化触媒の存在下、好ましくは溶融縮合または共沸縮合によって、140〜240℃の温度で、水の除去により調製し得る。
【0041】
化合物B)の量は、ポリマーP)の量に基づき、5%〜60%、好ましくは7%〜35%、より好ましくは10%〜30重量%である。成分A1)〜A4)とC)量の重量分率が25:75〜90:10、好ましくは35:65〜85:15、より好ましくは50:50〜80:20となるように、ポリエステルC)の量を選択する。
【0042】
一般に、本発明のポリエステル-ポリアクリレート分散体を製造する方法は、既知の方法に従って行われる。好適には、化合物B)を反応槽へ投入し、不飽和モノマーA1)〜A4)を計量添加し、フリーラジカル開始剤を用いて重合する。反応成分A1)〜A4)の完全な混合をちょうど重合開始時に確保するため、化合物B)の一部だけを重合前の初期仕込みに含めることも可能である。次いで、モノマーA1)〜A4)の完全な重合の間または重合の後に、化合物B)の更なる添加を行う。重合は、40〜200℃で、好ましくは60〜180℃で、より好ましくは80〜160℃で行う。
【0043】
追加的な有機溶媒を少量、とりわけ開始剤を希釈するために用いる際に、用いることが、必要なこともある。適当な補助的溶媒は、コーティング技術で既知の溶媒、例えばアルコール、エーテル、エーテル基含有アルコール、エステル、ケトン、N-メチルピロリドン、非極性炭化炭素およびこれらの溶媒の混合物である。溶媒は、それらが最終分散体中に0〜5%、好ましくは1%〜3%(重量)存在するような量で用いられる。要すれば、用いる溶媒を、蒸留によって、再び全部または一部、除去してよい。
【0044】
重合反応のための適当な開始剤は、有機ペルオキシド、例えばジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルイソブチレートまたはtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、およびアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を含む。用いる開始剤の量は、所望する分子量に依存する。操作信頼性とより良い取り扱い性の理由で、上記に特定したタイプの適当な有機溶媒の溶液として、ペルオキシド開始剤を用いることも可能である。
【0045】
ポリマーP)の調製は、好ましくは二つの工程(i)および(ii)で行われる。第一工程(i)では、12〜350mgKOH/g固形分、好ましくは20〜200mgKOH/g固形分のOH価と0〜50mgKOH/g固形分、好ましくは0〜30mgKOH/g固形分の酸価を有するヒドロキシ官能性モノマー混合物(A')を、既に導入されている化合物B)へ添加する。この場合、成分A1)50%〜90%、好ましくは60%〜80重量%、成分A2)2%〜50%、好ましくは5%〜35重量%、成分A3)0〜7%、好ましくは0〜5重量%、および成分A4)0〜50%、好ましくは3重量%〜30重量%を、相互に混合する。
【0046】
その後の工程(ii)では、成分A1)〜A4)のモノマーで構成される更なるモノマー混合物(A'')を、工程(i)から得られた反応混合物へ添加する。モノマー混合物(A'')は、10〜350mgKOH/g固形分、好ましくは18〜200mgKOH/g固形分のOH価と、50〜300mgKOH/g固形分、好ましくは70〜200mgKOH/g固形分の酸価を有する。工程(ii)からのモノマー混合物(A'')は、成分A1)45%〜85%、好ましくは55%〜75重量%、成分A2)1%〜50%、好ましくは5%〜35重量%、成分A3)3%〜30%、好ましくは8%〜22重量%、および成分A4)0〜50%、好ましくは3%〜30重量%を含有する。
【0047】
モノマー組成物(A')および(A'')の百分率は、合計で100重量%となる。二つのポリマー調製物のモノマー量は、モノマー混合物(A')とモノマー混合物(A'')の重量比率は10:1〜1:2、好ましくは6:1〜2:1となるように、選択される。
【0048】
多段階重合プロセスの代わりに、操作を連続的に行うこと(傾斜重合)も可能である;即ち、モノマー混合物を時間と共に変化する組成で添加し、好ましくは、成分A3)と必要に応じてA4)に従う親水性モノマーフラクションを、最初よりも仕込み終了に向かってより高くする。
【0049】
ポリマーP)は、500〜30,000g/mol、好ましくは1000〜15,000g/mol、より好ましくは1500〜10,000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0050】
ポリエステルC)は、モノマー組成物A')の重合後ではあるが、好ましくはポリマーP)へ、特に好ましくは中和剤の添加前に、添加される。ポリエステルC)は、40〜200℃、好ましくは60〜180℃、特に好ましくは80〜160℃の温度で、ポリマーA')に、好ましくはP)に添加され、既に導入された樹脂と混合される。粘度を減少させるため、従って取り扱い性を容易とするため、ポリエステルは、所定量の溶媒を、ポリアクリレートP)とポリエステルC)から構成されるポリマー混合物中の全溶媒量を基準に0.5〜95%、好ましくは1〜60%、特に好ましくは1〜40%の量で含有し得る。また、成分B)の一部をポリエステルC)に添加することも可能である。
【0051】
ヒドロキシ官能性ポリマーP)の水中への分散前、分散中または分散後に、適当な中和剤の添加によって、存在する酸性基を少なくとも部分的にそれらの塩形態に変換する。ポリマーP)の潜在イオン性基を、好適には、分散前に中和する。適当な中和剤は、有機アミンまたは水に可溶な無機塩基、例えば可溶性の金属水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩などを含む。
【0052】
適当なアミンの例は、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブタノールアミン、モルホリン、2-アミノメチル-2-メチルプロパノールまたはイソホロンジアミンを含む。混合物において、アンモニアを用いることも可能である。トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンおよびエチルジイソプロピルアミンが好適である。
【0053】
40%〜150%、好ましくは60%〜120%の[酸性基の]理論中和度があるような量で、中和剤を添加する。中和度は、中和成分の添加塩基性基とポリマーP)の酸性基のモル比である。
【0054】
本発明のポリエステル-ポリアクリレート分散体のpHは、6〜10、好ましくは6.5〜9である。
【0055】
本発明の水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体は、25%〜70%、好ましくは35%〜60%、より好ましくは40%〜55重量%の固形分を有する。
【0056】
本発明のポリエステル-ポリアクリレート分散体を、水性被覆組成物に加工することができる。架橋剤の組合せを通じて、架橋剤の反応性または、適切な場合には、ブロッキングに応じて、一成分被覆組成物および二成分被覆組成物の両方を調製することが可能である。
【0057】
一成分被覆組成物は、架橋反応がいかなる重要な程度でも或いはそれに続く塗布に有害ないかなる程度でも起こることなく、結合剤成分と架橋剤成分を一緒に保存し得る被覆組成物である。架橋反応は、架橋剤の活性化の後に、塗布でのみ起こる。この活性化は、例えば、温度上昇によってもたらし得る。
【0058】
二成分被覆組成物は、結合剤成分と架橋剤成分を、それらの高い反応性のため分離された容器中に保存しなくてはならない被覆組成物である。二つの成分は、塗布の少し前まで混合されず、それらは一般には更に活性化することなく反応する。しかし、架橋反応を加速させるために、触媒を用い、または比較的高い温度を採用することも可能である。二成分被覆組成物における本発明のポリエステル-ポリアクリレート分散体の使用が好適である。
【0059】
適当なOH-反応性架橋剤の例は、ポリイソシアネート架橋剤、アミド-およびアミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂、例えばフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、尿素樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂、およびアニリン樹脂など、"Lackkunstharze", H. Wagner, H.F. Sarx, Carl Hanser Verlag Munich, 1971に記載されているようなものである。
【0060】
好適な架橋剤は、ポリイソシアネートであって、典型的には1分子あたり2個またはそれ以上のNCO基を有し、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトノナンまたは異性体2,4-および2,6-TDIから調製され、ウレタン、イソシアヌレートおよび/またはビウレット基を含有してよい。必要に応じて、ポリイソシアネートはブロックされていてもよい。脂肪族または脂環式イソシアネートをベースとする、前記タイプの低粘度で必要に応じて親水性のポリイソシアネートが特に好適である。
【0061】
架橋剤として用いるポリイソシアネートは、一般に、10〜5000mPasの23℃での粘度を有し、少量の不活性溶媒とのブレンドにおいて粘度調節のために使用してもよい。
【0062】
ポリマーP)は、一般的に十分に親水性であり、疎水性架橋剤樹脂でさえも更なる乳化剤なしに分散させ得る。しかしながら、外部乳化剤の使用は排除されない。
【0063】
水に可溶または分散可能なポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート、スルホネートおよび/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基による修飾を通じて得られる。ポリイソシアネートの親水性修飾は、例えば、当量に満たない一価の親水性ポリエーテルアルコールとの反応により可能である。この種の親水性ポリイソシアネートの調製については、例えば、EP-A 0 540 985(第3頁55行〜第4頁5行)に記載されている。
【0064】
アロファネート基を含有するポリイソシアネートも非常に適しており、これはEP-A 959 087(第3頁39〜51行)に記載されている。それらは、低モノマー含有量のポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールをアロファネート化の条件下で反応させることによって調製される。例えばDE 100 24 624(第3頁13行〜33行)に記載されたイオン基(スルホン酸基、ホスホン酸基)で親水性的に修飾されたポリイソシアネートと同様に、トリイソシアナトノナンをベースとする、DE-A 100 078 21(第2頁66行〜第3頁5行)に記載された水分散可能なポリイソシアネート混合物も適当である。異なる架橋剤樹脂の混合物を用いることも可能である。
【0065】
本発明の水性ポリエステル-ポリアクリレート分散体の調製前、調整中または調整後に、コーティング技術で既知の添加剤、例えば消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤または乳化剤を添加することが可能である。これらの添加剤を、本発明の水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体を含有する被覆組成物へ添加することもできる。
【0066】
本発明の水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体を含有する水性被覆組成物は、全使用分野に適当であり、被膜の耐性に関する厳格な要求を伴う水性の塗装系および塗料系は、例えば、鉱物性建築材料表面の被覆用、木材や木材系材料の被覆およびシール用、金属表面の被覆(金属被覆)用、アスファルト被膜またはビチューメン被膜の被覆および塗装用、様々なプラスチック表面の塗装およびシール(プラスチック被覆)用、および高光沢ワニス用に用いられる。
【0067】
本発明の水性ポリエステル-ポリアクリレート分散体を含有する水性被覆組成物は、下塗り、中塗り、色素性または透明なトップコート材料、クリアコート材料および高光沢ワニス、並びに例えば工業用塗装、自動車用OEM仕上げおよび自動車用塗り換えの分野における個別付与および大量付与で用い得るワンコート材料を製造するために用いられる。好ましくは、それらは多重被覆系として使用され、その際、最も上のコートは、本発明の水性ポリエステル-ポリアクリレート分散体を硬化することにより製造されるトップコートまたはクリアコートである。
【0068】
該被覆物は、圧空、エアレスまたは静電吹き付け法など、任意の様々な吹き付け方法により、一成分または必要に応じて二成分の噴霧ユニットを用いて製造し得る。本発明の水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体を含有する被覆組成物および被覆組成物を、他の方法、例えば、はけ塗り、ロール塗りまたはナイフ塗布などによって、塗布することもできる。
【実施例】
【0069】
特に指摘しない限り、全ての百分率は重量による。
粘度測定は、Physica(シュトゥットガルト、ドイツ)製のPhysica Viscolab(登録商標)LC3 ISOコーンプレート粘度計を用い、DIN 53019に従い剪断速度40s-1で行った。
平均粒度は、レーザー相関分光法(HPPS、Malvern Instruments、ヘレンベルク、ドイツ)によって決定した。
報告するOH価は、用いたモノマーに基づいて計算した。
酸価:決定方法、DIN ISO 3682
Cardura(登録商標)E10P:バーサチック酸グリシジルエステル、Resolution BV、NL
Peroxan(登録商標)DB:ジ-tert-ブチルペルオキシド、Pergan GmbH、Bucholt、ドイツ
【0070】
〔実施例1〕-反応性希釈剤
Cardura(登録商標)E10Pを3172gおよびアジピン酸927gを、撹拌、冷却および加熱手段を備えた5リットル反応槽へ、20℃で計量添加した。混合物を撹拌しながら140℃へ加熱した。約140℃から発熱反応が進行した。撹拌を140℃で更に4時間継続した。2900mPas(23℃)の粘度を有する淡黄色樹脂が得られた。
〔実施例2〕-ポリエステル前駆体
撹拌、冷却および加熱手段および水分離器を備えた20リットル反応槽へ、20℃でトリメチロールプロパン1659gとネオペンチルグリコール5146gを投入し、この初期充填物を100℃で溶融させた。次に、撹拌しながら、無水マレイン酸122g、イソフタル酸2059gおよび無水フタル酸5666gを添加し、混合物を1時間にわたって150℃へ加熱し、その間、窒素流をそれに通過させた。次いで、6時間にわたって温度を200℃へ調節し、酸価が8mgKOH/g固形分より低下するまで窒素流中で縮合を行った。
酸価:5.9mgKOH/g
OH価:122mgKOH/g
【0071】
〔実施例3〕
撹拌、冷却および加熱手段を備えた4リットル反応槽へ、実施例1による反応性希釈剤123.4gとブチルジグリコール48.7gを投入し、140℃へ加熱した。この温度でブチルジグリコール22.5g中の11.3gのPeroxan(登録商標)DB溶液を125分にわたって滴加した。開始剤溶液の計量添加が始まった5分後に、メチルメタクリレート185g、ヒドロキシエチルメタクリレート150g、ブチルアクリレート50g、イソブチルメタクリレート50gおよびスチレン35gのモノマー混合物を、2時間にわたって計量添加した。その直後に、メチルメタクリレート92.5g、ヒドロキシエチルメタクリレート75g、ブチルアクリレート25g、イソブチルメタクリレート25g、スチレン17.5gおよびアクリル酸45gの混合物を、60分にわたって計量添加した;これと並行して、ブチルジグリコール23.5g中のジ-tert-ブチルペルオキシド11.3gの溶液を均一速度で2時間かけて計量添加した。次いで、混合物を140℃で1時間撹拌した後、実施例2によるポリエステル750g(130℃へ加熱)を添加し、混合物を更に1時間撹拌した。この後、100℃へ冷却し、ジメチルエタノールアミン47gを添加した。20分間の均一化後、バッチを水1650gで、90℃で10分にわたって分散させた。到達混合温度76℃で、バッチを更に1.5時間、均一化した後、分散体を濾過し、室温へ冷却した。
【0072】
OH含有量(固形物) 4.22%(理論的に計算)
酸価(固形分) 23.5mgKOH/g
固形分 48%
粘度 1780mPas/23℃
pH(水中10%) 7.7
中和度 75%
平均粒度 140nm
補助溶剤含量 2.7重量%、分散体に基づく
【0073】
〔実施例4〕
撹拌、冷却および加熱手段を備えた4リットル反応槽へ、実施例1による反応性希釈剤1210.2gを投入し、140℃へ加熱した。この温度でブチルジグリコール22.5g中の11.3gのPeroxan(登録商標)DB溶液を125分にわたって滴加した。開始剤溶液の計量添加が始まった5分後に、メチルメタクリレート185g、ヒドロキシエチルメタクリレート150g、ブチルアクリレート50g、イソブチルメタクリレート50gおよびスチレン35gのモノマー混合物を、2時間にわたって計量添加した。その直後に、メチルメタクリレート92.5g、ヒドロキシエチルメタクリレート75g、ブチルアクリレート25g、イソブチルメタクリレート25g、スチレン17.5gおよびアクリル酸45gの混合物を、60分にわたって計量添加した;これと並行して、ブチルジグリコール23.5g中のジ-tert-ブチルペルオキシド11.3gの溶液を均一速度で2時間かけて計量添加した。次いで、混合物を140℃で1時間撹拌した後、実施例2によるポリエステル750g(120℃へ加熱)を添加し、混合物を更に1時間撹拌した。この後、100℃へ冷却し、ジメチルエタノールアミン45gを添加した。20分間の均一化後、バッチを水1725gで、90℃で10分にわたって分散させた。到達混合温度78℃で、更に1.5時間、均一化を行った後、分散体を濾過し、室温へ冷却した。
【0074】
OH含有量(固形物) 4.54%(理論的に計算)
酸価(固形分) 22.8mgKOH/g
固形分 45%
粘度 1110mPas/23℃
pH(水中10%) 7.5
中和度 75%
平均粒度 150nm
補助溶剤含量 1.5重量%、分散体に基づく
【0075】
本発明は、例示目的のために上記のように詳細に記載したが、その詳細は単にその目的のためだけであって、クレームによって限定され得ること以外は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当該分野における熟練者によって変更が成され得るものと解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散体重量に基づき0〜5重量%の分散体含量を有する水性ヒドロキシ官能性ポリエステル-ポリアクリレート分散体の製造方法であって、
第一工程で、
A)フリーラジカル共重合可能なビニルモノマーの混合物を、
B)式I):
【化1】

〔式中、
R1は、1〜18個の炭素原子を有する脂肪族、芳香脂肪族または芳香族基であり、
R2は、HまたはCH3であり、
R3/R4は、同一または異なる、1〜7個の炭素原子を有する脂肪族基、および
nは、1〜4である。〕に示される一以上の化合物
の存在下で重合することによりポリマーP)を調製し、
次いで、第二工程で、ポリマーP)と、
C)10〜500mgKOH/g固形分のヒドロキシル価および>0.5〜≦30mgKOH/g固形分の酸価を有する一以上のポリエステルポリオールを混合し、
中和剤の添加前または添加後に、更なる工程で、得られたポリマー混合物を水中に分散させる各工程、を含んでなる方法。
【請求項2】
化合物B)を反応槽に投入する工程と、不飽和モノマーを計量添加し、フリーラジカル開始剤を用いて重合する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
a)化合物B)を添加する工程、
b)第一段階で、工程a)中または工程a)後に、(i)12〜350mgKOH/g固形分のOH価と0〜50mgKOH/g固形分の酸価を有するヒドロキシ官能性モノマー混合物A')を添加して重合する工程と、その後に、
c)第二段階で、工程b)で得られた反応混合物に、(ii)10〜350mgKOH/g固形分のOH価と50〜300mgKOH/g固形分の酸価を有するモノマー混合物A'')を添加して重合する工程
を含む方法。
【請求項4】
化合物B)は、脂肪族カルボン酸(α)のグリシジルエステルと脂肪族、芳香脂肪族または芳香族カルボン酸(β)の反応生成物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物B)は、バーサチック酸のグリシジルエステルとアジピン酸の反応生成物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって得られるポリエステル-ポリアクリレート分散体。
【請求項7】
ポリエステル-ポリアクリレート分散体は、分散体重量に基づき1〜3重量%の補助溶剤含量を有する、請求項6に記載のポリエステル-ポリアクリレート分散体。
【請求項8】
請求項6に記載のポリエステル-ポリアクリレート分散体を含んでなる水性被覆組成物。
【請求項9】
請求項6に記載のポリエステル-ポリアクリレート分散体を含んでなる水性二成分被覆組成物。
【請求項10】
トップコートは、請求項6に記載のポリエステル-ポリアクリレート分散体を硬化させることにより得られた、多層被覆物。

【公開番号】特開2006−193720(P2006−193720A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−327024(P2005−327024)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】