説明

ヒドロキシアダマンタンアミンの製造方法

【課題】医薬品の合成原料または中間体として有用な1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンの誘導体および製造方法の提供。
【解決手段】


(式中、R1およびR2は水素)で示される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の、結晶であり、粉末X線回折の主なピークの回折角2θが9.9、14.8、16.0、17.2、17.5、19.8度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンは医薬品合成原料または中間体として有用な化合物であり、例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の11β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害活性を有する化合物の合成中間体として利用可能である。
非特許文献1および非特許文献2には、2−アミノアダマンタンに硝酸と硫酸の混合物などを反応させ、水酸化を行うことにより1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンを製造する方法が記載されている。該反応では生成するジアステレオマーの比率はシン体に有利であり、シン体:アンチ体が3:1から1:1であることが記載されている。
非特許文献3のTable1、Entry6には、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンとベンジルアミンをH/5%Pt−C存在下で反応させ、アンチ体:シン体が1:1で得られることが記載されている。また、Table2、Entry8には、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンとベンジルアミンをH/5%Rh−CおよびAl(iOPr)存在下で反応させ、アンチ体:シン体が2.7:1で得られることが記載されている。これら2つの実験例におけるアンチ体・シン体の生成比率はH−NMRで測定されたものであり、いずれの化合物も単離されていない。
特許文献1には、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンとL(−)−1−フェニル−エチルアミンを、不均一触媒(例えば、炭素に担持されているロジウム)の存在下で反応させ、得られるジアステレオマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、アンチ体を単離後、脱ベンジル化を受けさせることで1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンのアンチ体を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンとアンモニア/メタノールを水素化ほう素ナトリウムの存在下で反応させ、得られるジアステレオマー混合物をアミド化に付し、得られるアミド体をカラムクロマトグラフィーにより精製し、アンチ体を製造する方法が記載されている。
特許文献3には、1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンのジアステレオマー混合物とカルボン酸をアミド化に付し、得られるアミド体をカラムクロマトグラフィーにより精製し、アンチ体を製造する方法が記載されている。
いずれの文献記載の方法においても、得られるジアステレオマー混合物をカラムクロマトグラフィーで精製する必要があり、工業的利用は困難であった。
【非特許文献1】Zhurnal Organicheskoi Khimii 1976、12(11)、2369
【非特許文献2】Khimiko Farmatsevticheskii Zhurnal 1986、20(7)、810
【非特許文献3】Tetrahedron Letters47(2006)8063
【特許文献1】国際公開第WO04/056745号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO05/108368号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO05/016877号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、医薬品の合成原料または中間体として有用な1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンの効率的な製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンの効率的な製造法として、特許文献1とは異なり、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンと式(I)で示されるベンジルアミンを、還元剤の存在下で反応させ、得られるジアステレオマーを結晶化により精製できることを見出した。また、得られたアンチ体に脱ベンジル化を受けさせることで1−ヒドロキシ−4−アミノアダマンタンのアンチ体を高純度で製造できることを見出した。
本発明は、
(1)
式(I):
【化1】


(式中、RおよびRは各々独立して水素、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいスルファモイルまたはRとRは結合する炭素原子が隣接する場合、隣接する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよい)で示される化合物と5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンを還元剤の存在下で反応させることを特徴とする、式(II):
【化2】


(式中、RおよびRは前記と同意義)で示される化合物の製造方法。
(2)
酸を添加した還元的アミノ化を包含する、前記(1)記載の製造方法。
(3)
酸が有機酸および無機酸(ただし、金属化合物からなる酸を除く)である、前記(2)記載の製造方法。
(4)
還元的アミノ化において使用する還元剤がヒドリド還元剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)
還元剤がトリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、テトラヒドロほう酸リチウム、ピリジンボラン錯体、テトラヒドロフランボラン錯体、硫化ジメチル−ボラン錯体、2−ピコリンボラン錯体およびナトリウムからなる群から選択される還元剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(6)
使用する溶媒がN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、トルエン、テトラヒドロフランおよび水からなる群から選択される溶媒である、前記(3)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)
使用する溶媒がジクロロメタン、メタノールまたはエタノールである、前記(6)記載の製造方法。
(8)
式(II):
【化3】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物から、式(III):
【化4】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物を分離することを特徴とする、式(III):で示される化合物の製造方法。
(9)
式(III):
【化5】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物を脱保護することを特徴とする、化合物(IV):
【化6】


で示される化合物の製造方法。
(10)
前記(8)記載の製造方法により式(III):
【化7】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物を製造する工程を包含する、前記(9)記載の化合物(IV):
【化8】


で示される化合物の製造方法。
(11)
前記(1)から(7)のいずれかに記載の製造方法により式(II):
【化9】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物を製造する工程を包含する、前記(10)記載の化合物(IV):
【化10】


の製造方法。
(12)
式(II):
【化11】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物。
(13)
式(II):
【化12】


(式中、RおよびRは各々独立して水素、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいスルファモイルまたはRとRは結合する炭素原子が隣接する場合、隣接する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよい)で示される化合物(ただし、RおよびRが同時に水素である場合を除く)もしくはその塩またはそれらの溶媒和物。
(14)
式(III):
【化13】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物。
(15)
式(III):
【化14】


(式中、RおよびRは各々独立して水素、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいスルファモイルまたはRとRは結合する炭素原子が隣接する場合、隣接する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよい)で示される化合物(ただし、RおよびRが同時に水素である場合を除く)もしくはその塩またはそれらの溶媒和物。
(16)
前記(9)〜(11)のいずれかに記載の方法により化合物(IV)を得、得られた(IV)を、
式(V):A−R−R−R−X
(式中、Aは置換されていてもよい環式炭化水素基または置換されていてもよい複素環式基であり、Rは単結合、−C(=O)−、−O−または−NR−であり、Rは単結合または置換されていてもよいアルキレンであり、Rは単結合または−C(=O)−であり、Xは水酸基、ハロゲンまたは水酸基から導かれる脱離基であり、Rは水素または置換されていてもよいアルキルである)で示される化合物と反応させることを特徴とする、式(VI):
【化15】


で示される化合物の製造方法、
(17)
式(III):
【化16】


(式中、RおよびRは前記(1)と同意義)で示される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の、結晶。
(18)
およびRが各々独立して水素、ハロゲン、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいアルコキシである、前記(17)記載の結晶。
(19)
およびRが水素であり、粉末X線回折の主なピークの回折角2θが9.9、14.8、16.0、17.2、17.5、19.8度である、前記(17)または(18)記載の結晶。
を提供する。
【発明の効果】
【0005】
後述の試験結果から明らかな通り、本発明の化合物(IV)は医薬品等の合成原料または中間体として有用な化合物である。また、化合物(IV)の新規製造方法は高収率かつ安全な方法として工業的製造に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書中において「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。特にフッ素、塩素および臭素が好ましい。
【0007】
「アルキル」とは、炭素数1〜10個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソぺンチル、ネオぺンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6または1〜4個のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソぺンチル、ネオぺンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。
「シクロアルキル」とは、炭素数3〜15の環状飽和炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基などが挙げられる。好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基が挙げられる。
【0008】
「橋かけ環式炭化水素基」とは、2つ以上の環が2個またはそれ以上の原子を共有している炭素数5〜8の脂肪族環から水素を1つ除いてできる基を包含する。具体的にはビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチルなどが挙げられる。
【0009】
「スピロ炭化水素基」とは、2つの炭化水素環が1個の炭素原子を共有して構成されている環から水素を1つ除いてできる基を包含する。具体的にはスピロ[3.4]オクチルなどが挙げられる。
【0010】
「ハロゲン化アルキル」とは、1以上のハロゲン原子で置換されたアルキルを包含する。アルキル部分およびハロゲン部分は上記と同様である。
【0011】
「アルケニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の二重結合を有する炭素数2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルケニルを意味し、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、3-メチル-2-ブテニル等が挙げられる。
【0012】
「シクロアルケニル」は、炭素数3〜7個の環状の不飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルが挙げられ、好ましくはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルである。シクロアルケニルには、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0013】
「アルキニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の三重結合を有する炭素数2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキニルを意味し、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等が挙げられる。
【0014】
「アリール」とは、単環芳香族炭化水素基(例:フェニル)及び多環芳香族炭化水素基(例:1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル等)を意味する。好ましくは、フェニル又はナフチル(1−ナフチル、2−ナフチル)が挙げられる。
【0015】
「ヘテロアリール」とは、単環芳香族複素環式基及び縮合芳香族複素環式基を意味する。単環芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環から誘導される、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。縮合芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環が、1〜4個の5〜8員の芳香族炭素環もしくは他の5〜8員の芳香族ヘテロ環と縮合している、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。
【0016】
「ヘテロアリール」としては、例えば、フリル(例:2−フリル、3−フリル)、チエニル(例:2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例:1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例:1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例:1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例:2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例:3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例:3−フラザニル)、ピラジニル(例:2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)、ベンゾフリル(例:2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、4−ベンゾ[b]フリル、5−ベンゾ[b]フリル、6−ベンゾ[b]フリル、7−ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、4−ベンゾ[b]チエニル、5−ベンゾ[b]チエニル、6−ベンゾ[b]チエニル、7−ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例:1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリル(例:2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル)、シンノリニル(例:3−シンノリニル、4−シンノリニル、5−シンノリニル、6−シンノリニル、7−シンノリニル、8−シンノリニル)、キナゾリル(例:2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、5−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、8−キナゾリニル)、キノリル(例:2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル)、フタラジニル(例:1−フタラジニル、5−フタラジニル、6−フタラジニル)、イソキノリル(例:1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1−アクリジニル、2−アクリジニル、3−アクリジニル、4−アクリジニル、9−アクリジニル)、インドリル(例:1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、イソインドリル、ファナジニル(例:1−フェナジニル、2−フェナジニル)又はフェノチアジニル(例:1−フェノチアジニル、2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル、4−フェノチアジニル)等が挙げられる。
【0017】
「ヘテロサイクル」とは、酸素原子、硫黄原子、及び/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよく、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい非芳香族複素環式基を意味する。また、そのような非芳香族複素環式基がさらに炭素数1〜4のアルキル鎖で架橋されていてもよく、シクロアルカン(5〜6員環が好ましい)やベンゼン環が縮合していてもよい。非芳香族であれば、飽和でも不飽和でもよい。好ましくは5〜8員環である。例えば、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル等があげられる。
【0018】
「環式炭化水素基」とは、上記「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「アリール」を包含する。
「複素環式基」とは、上記「ヘテロアリール、ヘテロサイクル」を包含する。
【0019】
「アルコキシ」、「アルコキシカルボニル」、「アルキルスルホニル」、「アルキルカルボニル」および「アルキルチオ」のアルキル部分は、上記「アルキル」を意味する。
【0020】
「シクロアルキルスルホニル」、「シクロアルキルオキシカルボニル」および「シクロアルキルカルボニル」の「シクロアルキル」部分は、上記「シクロアルキル」を意味する。
【0021】
「アリールオキシ」、「アリールオキシカルボニル」、「アリールスルホニル」、「アリールカルボニル」および「アリールチオ」のアリール部分は、上記「アリール」を意味する。
【0022】
「ヘテロアリールカルボニル」、「ヘテロアリールスルホニル」および「ヘテロアリールオキシカルボニル」のヘテロアリール部分は、上記「ヘテロアリール」を意味する。
【0023】
「ヘテロサイクルカルボニル」、「ヘテロサイクルスルホニル」および「ヘテロサイクルオキシカルボニル」のヘテロサイクル部分は、上記「ヘテロサイクル」を意味する。
【0024】
「ハロゲン化アルコキシ」のアルコキシ部分およびハロゲン部分は上記と同様である。
【0025】
「アシル」とは、ホルミル、置換されていてもよいアルキルカルボニル、置換されていてもよいアルケニルカルボニル、置換されていてもよいシクロアルキルカルボニル、置換されていてもよいシクロアルケニルカルボニル、置換されていてもよいアリールカルボニル、置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、置換されていてもよいヘテロサイクルカルボニルを意味する。
【0026】
「アラルキル」とは、上記「アリール」が1〜3個置換した上記「アルキル」を意味する。
【0027】
「アラルキルカルボニル」のアラルキル部分は上記と同様である。
【0028】
「アルキレン」とは、メチレンが1〜6個連続した2価の基を包含し、具体的にはメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンおよびヘキサメチレン等が挙げられる。
【0029】
とRは結合する炭素原子が隣接する場合、隣接する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。該環は、5〜7員(好ましくは、5員または6員)の、ヘテロ原子を1〜3個含んでいてもよい、飽和または不飽和の環を意味する。たとえば、RとRが結合するベンゼン環と共に形成する環式基としては、以下の基が例示される。
【化17】

【0030】
「水酸基から導かれる脱離基」とは、−OMs、−OTs、−OTf、−ONs等があげられる。ここで、「Ms」はメタンスルホニル基、「Ts」はパラトルエンスルホニル基、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニル基、「Ns」はオルトニトロベンゼンスルホニル基を表す。
【0031】
「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアルキルスルホニル」、「置換されていてもよいアリールスルホニル」、「置換されていてもよいスルファモイル」、「RとRが、隣接する炭素原子と一緒になって形成する置換されていてもよい環」、「置換されていてもよい環式炭化水素基」、「置換されていてもよい複素環式基」、「置換されていてもよいアルキレン」における置換基としては、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF、CHCF、CHCCl)、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ハロゲン化アルコキシ(例:OCF)、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェノキシ)、アルコキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル)、ニトロ、ニトロソ、置換されていてもよいアミノ(例:アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アラルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、カルバモリルアミノ、ヘテロサイクルカルボニルアミノ、アリールスルホニルアミノ)、アジド、アリール(例:フェニル)、アラルキル(例:ベンジル)、シアノ、イソシアノ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、メルカプト、アルキルチオ(例:メチルチオ)、アルキルスルホニル(例:メタンスルホニル、エタンスルホニル)、置換されていてもよいカルバモイル(例:アルキルカルバモイル(例:メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル)、アルキルスルホニルカルバモイル)、スルファモイル、アシル(例:ホルミル、アセチル)、ホルミルオキシ、ハロホルミル、オキザロ、チオホルミル、チオカルボキシ、ジチオカルボキシ、チオカルバモイル、スルフィノ、スルフォ、スルホニル、スルフィニル、スルホアミノ、ヒドラジノ、アジド、ウレイド、アミジノ、グアニジノ、フタルイミド、オキソ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクル、アルキレン、置換されていてもよいアルキレンジオキシ(−O−CH−O−、−O−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−O−等)、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロサイクルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、ヘテロサイクルカルボニルオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロサイクルカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロサイクルチオ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロサイクルスルホニル、チオカルバモイル」、「スルファモイル」等からなる群から選択される。1〜4個の当該置換基で置換されていてもよい。
【0032】
「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルケニル」、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロアリール」、「置換されていてもよいヘテロサイクル」、「置換されていてもよいアルキレン」、「置換されていてもよいアルキレンジオキシ」、「置換されていてもよいヘテロアリールオキシ」、「置換されていてもよいヘテロサイクルオキシ」、「置換されていてもよいアルコキシカルボニル」、「置換されていてもよいアリールオキシカルボニル」、「置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル」、「置換されていてもよいヘテロサイクルオキシカルボニル」、「置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ」、「置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ」、「置換されていてもよいヘテロアリールカルボニルオキシ」、「置換されていてもよいヘテロサイクルカルボニルオキシ」、「置換されていてもよいアルキルカルボニル」、「置換されていてもよいアリールカルボニル」、「置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル」、「置換されていてもよいヘテロサイクルカルボニル」、「置換されていてもよいアルキルチオ」、「置換されていてもよいアリールチオ」、「置換されていてもよいヘテロアリールチオ」、「置換されていてもよいヘテロサイクルチオ」、「置換されていてもよいアルキルスルホニル」、「置換されていてもよいアリールスルホニル」、「置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル」、「置換されていてもよいヘテロサイクルスルホニル」における置換基としては、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF、CHCF、CHCCl)、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ハロゲン化アルコキシ(例:OCF)、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェノキシ)、アルコキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル)、ニトロ、ニトロソ、置換されていてもよいアミノ(例:アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アラルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、カルバモリルアミノ、ヘテロサイクルカルボニルアミノ、アリールスルホニルアミノ)、アジド、アリール(例:フェニル)、アラルキル(例:ベンジル)、シアノ、イソシアノ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、メルカプト、アルキルチオ(例:メチルチオ)、アルキルスルホニル(例:メタンスルホニル、エタンスルホニル)、置換されていてもよいカルバモイル(例:アルキルカルバモイル(例:メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル)、アルキルスルホニルカルバモイル)、スルファモイル、アシル(例:ホルミル、アセチル)、ホルミルオキシ、ハロホルミル、オキザロ、チオホルミル、チオカルボキシ、ジチオカルボキシ、チオカルバモイル、スルフィノ、スルフォ、スルホニル、スルフィニル、スルホアミノ、ヒドラジノ、アジド、ウレイド、アミジノ、グアニジノ、フタルイミド、オキソ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクル、アルキレン、アルキレンジオキシ(−O−CH−O−、−O−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−O−等)、ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロサイクルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、ヘテロサイクルカルボニルオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロサイクルカルボニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロサイクルチオ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロサイクルスルホニル等からなる群から選択される。1〜4個の当該置換基で置換されていてもよい。
【0033】
「置換されていてもよいアミノ」、「置換されていてもよいカルバモイル」、「置換されていてもよいチオカルバモイル」、「置換されていてもよいスルファモイル」の置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロサイクルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロサイクルオキシカルボニル、スルファモイル、アルキルスルホニル、カルバモイル、シクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロサイクルスルホニル、アシル、ヒドロキシ、スルホニル、スルフィニル、アミノなどが挙げられる。
【0034】
本発明化合物のうち、式(I)で示される化合物としては、以下の態様が好ましい。
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
式(V)及び式(VI)中のAとしては、好ましくは、置換されていてもよい複素環式基である。さらに好ましくは、置換されていてもよいヘテロアリール又は置換されていてもよいヘテロサイクルが挙げられる。より好ましくは、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ベンゾオキサジン、ベンゾフラン、ピロロピリジンが挙げられる。限定されないが、特に、イソキサゾール及びピラゾールが好ましい。また、Aとして、置換されていてもよい環式炭化水素基が挙げられる。好ましくは、フェニルである。
置換基としては、−OR、−SR、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロサイクル、式:−CH=CH−C(R)−R−Rで示される基又は式:−(CR−C(R)−R−Rで示される基等が挙げられる。
及びRは各々独立して水素、置換されていてもよいアルキル又はハロゲンであり、
又はRとRは隣接する炭素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよく、
は−(CH)n−(ここでnは0〜3の整数である。)であり、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロサイクル、式:−C(=O)−NRで示される基又は式:−NRで示される基であり、
及びRは各々独立して水素、ハロゲン又は置換されていてもよいアルキルであり、
及びRは各々独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロサイクル、置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換されていてもよいシクロアルキルスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロサイクルスルホニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいカルバモイル若しくはRとRは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよく、
及びRは各々独立して水素、カルボキシ、ヒドロキシ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロサイクル、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいカルバモイル、置換されていてもよいチオカルバモイル、置換されていてもよいアルキルスルホニル、置換されていてもよいシクロアルキルスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロアリールスルホニル、置換されていてもよいヘテロサイクルスルホニル、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいシクロアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、置換されていてもよいヘテロサイクルオキシカルボニル、置換されていてもよいアルキルカルボニル、置換されていてもよいシクロアルキルカルボニル、置換されていてもよいアリールカルボニル、置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、置換されていてもよいヘテロサイクルカルボニル、置換されていてもよいスルファモイル、若しくはRとRは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよい環を形成していてもよく、
は置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール又は置換されていてもよいヘテロサイクルであり、
mは各々独立して1〜3の整数である。
は、好ましくは、単結合である。
は、好ましくは、単結合である。
は、好ましくは、−C(=O)−である。
Xは、好ましくは、水酸基である。
式(V)及び式(VI)で表される化合物及びそれらの調製方法の詳細は、国際公開第2006/132197号パンフレット、国際公開第2007/058346号パンフレット、PCT/JP2007/056538、特願2007−132259に集合的に記載されている。
【0037】
以下に示すように、本発明化合物のうち、式(II)で示される化合物は式(II’)および式(II’’)で示される化合物と同等であり、式(III)で示される化合物は式(III’)および式(III’’)で示される化合物と同等であり、式(IV)で示される化合物は式(IV’)および式(IV’’)で示される化合物と同等である。
【化20】


また、本発明化合物のうち、式(II’’)で示される化合物は式(III)で示される化合物および式(III’’’)で示される化合物の混合物を意味する。
【化21】

【0038】
「有機酸」とは、酸性を示す有機化合物の総称であり、例えば、ギ酸、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
「無機酸」とは、酸性を示す無機化合物の総称であり、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
「金属化合物からなる酸」とは、塩基と結合する時に電子対を受け取ることができる酸のうち、金属元素を含有する化合物を意味する、例えばAl(i−OPr)、AlCl、BF、TiCl、FeCl、ZnCl、SnClなどが挙げられる。
【0039】
「ヒドリド還元剤」とは、求核剤として水素供与することができる試薬を意味する。
例えば、トリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、テトラヒドロほう酸リチウム、ピリジンボラン錯体、テトラヒドロフランボラン錯体、2−ピコリンボラン錯体、硫化ジメチル−ボラン錯体、シアノ水素化ほう素ナトリウム、水素化トリエチルほう素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、Red−Al〔水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム〕、L−Selectride〔水素化トリ(sec−ブチル)ほう素リチウム〕、K−Selectride〔水素化トリ(sec−ブチル)ほう素カリウム〕、DIBAL−H(水素化ジイソブチルアルミニウム)等が挙げられる。
【0040】
還元的アミノ化では、上記ヒドリド還元剤を使った還元以外に、触媒存在下で水素添加反応により還元することもできる。触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケルからなる触媒を用いることができる。触媒存在下で水素添加反応を行う場合は反応系中でヒドリドが発生するので、該反応条件も上記「ヒドリド還元剤」に包含される。
また、ナトリウムを用いた還元的アミノ化を行うこともできる。
【0041】
本発明化合物の塩としては、製薬上許容される塩が好ましい。製薬上許容される塩としては、以下の塩が挙げられる。
塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロ環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
酸性塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
【0042】
溶媒和物とは、本発明化合物またはその製薬上許容される塩の溶媒和物を意味し、例えば、アルコール(例:エタノール)和物や水和物等が挙げられる。水和物としては、1水和物、2水和物等を挙げることができる。
【0043】
化合物(IV)は例えば以下の方法で合成することができる。
【化22】


(式中、RおよびRは前記と同意義であり、式(I)で示される化合物および5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンは公知の化合物を用いてもよく、公知の化合物から常法により誘導された化合物を用いてもよい。)
【0044】
(第1工程)
式(I)で示される化合物と5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンを還元剤存在下で反応させる工程である。
反応は、溶媒としては、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、飽和炭化水素類(例、シクロヘキサン、ヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(例、アセトニトリルなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなど)、水およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、ニトリル類(例、アセトニトリルなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなど)および水等である。
限定されないが、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、トルエン、テトラヒドロフランおよび水である。
さらに好ましくは、ジクロロメタン、メタノール、エタノールである。
溶媒の使用量は特に限定されず、反応が可能な溶液またはスラリーを形成し得る任意の量が使用可能である。例えば、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンの重量をv(g)としたとき、溶媒の最少量は約1v(ml)、好ましくは約2v(ml)、より好ましくは約3v(ml)である。最大量は特に限定されないが、生産効率の点を考慮すると約20v(ml)、好ましくは約15v(ml)、より好ましくは約10v(ml)である。このようにして調製した溶液に化合物(I)と酸を添加すればよい。
化合物(I)は使用量を直接反応液に添加してもよく、溶媒に溶解してから添加してもよい。使用量は、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンに対し、1〜1.5当量用いることができる。
酸は5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンに対し、1〜5当量、好ましくは1〜2当量用いることができる。酸としては、酢酸、ギ酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、塩酸、硫酸などの酸を用いることができる。また、該工程においては、酸を用いなくても反応は進行するが、好ましくは使用する。酸としては、酢酸が好ましい。
該反応液は特に制限されないが、イミン体を形成するために、通常約0〜50℃、好ましくは約20〜40℃で通常5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間攪拌すればよい。
このようにして調製した反応液を、特に制限されないが、約−20〜10℃、好ましくは約−10〜5℃に冷却し、還元剤をゆっくり添加する。還元剤としては、例えばトリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、テトラヒドロほう酸リチウム、ピリジンボラン錯体、テトラヒドロフランボラン錯体、2−ピコリンボラン錯体、硫化ジメチル−ボラン錯体、ナトリウム、シアノ水素化ほう素ナトリウム、水素化トリエチルほう素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、Red−Al〔水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム〕、L−Selectride〔水素化トリ(sec−ブチル)ほう素リチウム〕、K−Selectride〔水素化トリ(sec−ブチル)ほう素カリウム〕、DIBAL−H(水素化ジイソブチルアルミニウム)等を用いることができる。好ましくは、トリアセトキシヒドロほう酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、テトラヒドロほう酸リチウム、ピリジンボラン錯体、テトラヒドロフランボラン錯体、2−ピコリンボラン錯体、ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムおよびRed−Alである。好ましくは、水素化ほう素ナトリウムである。使用量は、特に制限されないが、0.5〜15当量、好ましくは1〜10当量用いることができる。
該反応液は、特に制限されないが、約20〜40℃、好ましくは約20〜30℃で通常10分〜36時間、好ましくは30分〜24時間攪拌すればよい。
【0045】
(第2工程)
ジアステレオマー混合物から結晶化により精製し、アンチ体を得る工程である。
結晶化に用いる溶媒は、特に制限されないが、可溶溶媒に該混合物を溶解させた後、貧溶媒を加えて結晶を析出させることができる。可溶溶媒としては、例えばエステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)およびハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)等である。
貧溶媒としては、例えば飽和炭化水素類(例、シクロヘキサン、ヘキサンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)および水等を用いることができる。可溶溶媒と貧溶媒の体積比率は、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンの重量をv(g)としたとき、特に制限されないが、可溶溶媒の量は約2v(ml)以下、好ましくは約1.5v(ml)、より好ましくは約1v(ml)であり、貧溶媒の量は、約20v(ml)以下、好ましくは約15v(ml)、より好ましくは約10v(ml)である。可溶溶媒のみで結晶化を行える場合は、貧溶媒は使用しなくてもよい。
該結晶化は、特に制限されないが、約−20〜40℃、好ましくは約0〜30℃で攪拌すればよい。
得られた結晶はろ過等により得ることができる。この時、シン体はろ液に溶解しているため、晶析による精製効果が得られる。
【0046】
第2工程で製造される式(III)で表わされる化合物の結晶は、粉末X線回折によってX線回折パターンを得ることができる。
該結晶は安定で、上記の製造工程を行う上で又は式(VI)で表わされるジアステレオマーを有効成分として含有する医薬組成物を製造する上で取り扱い易く、また高純度であることから医薬組成物を製造するために有用な結晶である。
式(III)で表わされる化合物の結晶については、後記実施例2にX線回折パターンを示す(X線回折測定条件:管球CuKα線、管電圧40kV、管電流40mA、dsinθ=nλ(nは整数、dは面間隔(単位:オングストローム)、θは回折角(単位:度)))。
これらの結晶は、各回折角又は面間隔の値によって特徴づけられる。
【0047】
(第3工程)
式(III)で示される化合物を脱ベンジル化に付し、式(IV)で示される化合物を製造する工程である。
溶媒としては、第1工程記載の溶媒を用いることができる。好ましくは、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなど)である。溶媒の使用量は特に限定されず、反応が可能な溶液またはスラリーを形成し得る任意の量が使用可能である。例えば、式(III)で示される化合物の重量をv(g)としたとき、溶媒の最少量は約1v(ml)、好ましくは約2v(ml)、より好ましくは約3v(ml)である。最大量は特に限定されないが、生産効率の点を考慮すると約30v(ml)、好ましくは約25v(ml)、より好ましくは約20v(ml)である。このようにして調製した溶液に不均一触媒を加え、水素ガスの存在下で接触還元を行えばよい。
不均一触媒は、例えばパラジウム/炭素触媒、プラチナ/炭素触媒などを用いることができる。使用量は、特に制限されないが、0.001〜1当量、好ましくは0.1〜1当量用いることができる。
該反応液は、特に制限されないが、約0〜80℃、好ましくは約20〜40℃で通常1時間〜36時間、好ましくは2時間〜24時間攪拌すればよい。
該工程は、常圧の水素ガス雰囲気下で行うことができるが、加圧雰囲気下で行うこともできる。
【0048】
【化23】


(第4工程)
式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物を反応させ、式(VI)で示される化合物を製造する工程である。
溶媒としては、第1工程記載の溶媒を用いることができる。
が−C(=O)−であり、Xが水酸基の場合は、該工程において縮合剤および塩基を用いることができる。縮合剤としては、例えば1,1−カルボニルジイミダゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)等が使用できる。塩基としては、例えば金属水素化物(例、水素化ナトリウムなど)、金属水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、金属炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムなど)、金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドなど)、炭酸水素ナトリウム、金属ナトリウム、有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、2,6−ルチジンなど)などが挙げられる。
が−C(=O)−であり、Xがハロゲンである場合は、該工程において上記記載の塩基を用いることができる。
が−C(=O)−であり、Rが置換されていてもよいアルキレンであり、R
単結合であり、Xがハロゲンまたは水酸基から導かれる脱離基である場合は、該工程において上記の塩基を用いることができる。
反応条件は、特に制限されないが、約−20〜100℃、好ましくは約−10〜80℃で通常1時間〜36時間、好ましくは1時間〜24時間攪拌すればよい。
こうして得られた化合物(VI)は11β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害剤およびDipeptidyl PeptidaseIV(DPP IV)阻害剤、Jak3阻害剤等として有用である。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0049】
式(I):
【化24】


が、式(VII):
【化25】


である場合、5−ヒドロキシ−2−アダマンタノンと式(VII)で示される化合物との還元的アミノ化を行った結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


(ここで、r.t.は室温を意味する。)
【実施例2】
【0051】
【化26】


(実験番号2)
5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(9.98g、60mmol)をジクロロメタン(150ml)に溶解し、化合物I−1(7.21ml、66mmol)と酢酸(4.46ml、78mmol)を加え室温で1時間攪拌した後、水素化ホウ素ナトリウム(2.50g、66mmol)をゆっくり加えた。室温で6時間攪拌し、室温で終夜放置した。反応液を氷冷し、水(30ml)を加え攪拌した後、2M 塩酸(70ml)を加えた。水層をクロロホルム(20ml)で洗浄し、有機層に2M 塩酸(10ml)と水(40ml)を加えて抽出した。水層を合併し、2M 水酸化ナトリウム水溶液(70ml)を加えてpH=8に調整し、クロロホルム(100ml)を加えて抽出した。水層をクロロホルム(50ml)で再度抽出し、有機層を飽和食塩水(50ml)で洗浄した。有機層を合併後、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去し、固体(11.4g、粗収率=73.8%)を得た。この固体はNMR分析(300MHz)により、アンチ体とシン体が3.7対1の比率で存在する混合物(II−1)であった。
この固体を酢酸エチル(10ml)に加温溶解し、ヘキサン(100ml)を加えて15分間攪拌後、氷冷下1時間攪拌した。生成した結晶を濾過し、結晶(6.24g、粗収率=40.4%)を得た。この結晶はNMR分析(300MHz)により、アンチ体〔化合物(III−1)〕とシン体が20対1の比率で存在する混合物であり、晶析による精製効果が認められた。
化合物(III−1)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ1.34 - 2.09 (m, 13H), 2.79 (s, 1H), 3.78 (s, 2H), 7.24 - 7.36 (m, 5H).
融点:106 ℃
粉末X線回折の結果を表2および図1に示す。
【表2】


主なピークの回折角:2θ=9.9、14.8、16.0、17.2、17.5、19.8度
【実施例3】
【0052】
【化27】


化合物III−1(150mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に溶解し、10%パラジウム−炭素(30mg)を加え水素ガスを2.5時間導入した。触媒を濾別した後、濾液を減圧留去し、化合物IVの残渣(100mg、粗収率=102.6%)を得た。
化合物(IV)1H NMR (300 MHz, d6-DMSO): δ1.17 - 1.95 (m 11H), 2.50 (m, 2H), 2.84 (brs, 1H).
13C NMR (75.4 MHz, CDCl3): δ29.3 (2C), 30.0 (1C), 36.8 (2C), 44.8 (2C), 45.6 (1C), 54.3 (1C), 67.5 (1C).
【実施例4】
【0053】
【化28】


(実験番号15)
5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(0.99g、6mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶解し、化合物(I−2)(含量98%)(0.88ml、6.6mmol)と酢酸(0.45ml、7.8mmol)を加え室温で20分間攪拌した後、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(0.25g、6.6mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を氷冷し、2M 塩酸(8ml)と水(15ml)を加え、しばらく攪拌した。水層をクロロホルム(15mlおよび10ml)で洗浄し、有機層に水(15ml)を加えて抽出した。水層を合併し、2M 水酸化ナトリウム水溶液(9ml)を加えてpH=8〜9に調整し、クロロホルム(15ml)を加えて抽出した。水層をクロロホルム(10ml)で再度抽出し、有機層を飽和食塩水(15ml)で洗浄した。有機層を合併後、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して無色オイル(1.54g、粗収率=89.3%)を得た。このオイルはNMR分析(300MHz)により、アンチ体とシン体が2.2対1の比率で存在する混合物(II−2)であった。
このオイルを酢酸エチル(2ml)に加温溶解し、ヘプタン(30ml)を加えて攪拌後生成した結晶を濾過し、結晶(0.36g、粗収率=20.8%)を得た。この結晶はNMR分析(300MHz)により、アンチ体〔化合物(III−2)〕とシン体が45対1の比率で存在する混合物であり、晶析による精製効果が認められた。
化合物(III−2)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ1.33 - 2.07 (m, 13H), 2.76 (s, 1H), 3.70 (s, 2H), 3.80 (s, 3H), 6.86 (dd, J = 2.1Hz, 6.6Hz, 2H), 7.26 (d, J = 8.4 Hz, 2H).
融点:75 ℃.
【実施例5】
【0054】
【化29】


(実験番号16)
5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(0.99g、6mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶解し、化合物(I−3)(含量97%)(0.78ml、6.6mmol)と酢酸(0.45ml、7.8mmol)を加え室温で15分間攪拌した後、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(0.25g、6.6mmol)を加え、室温で2日間攪拌した。反応液を氷冷し、2M 塩酸(8ml)と水(15ml)を加え、しばらく攪拌した。水層をクロロホルム(15mlおよび10ml)で洗浄し、有機層に水(15ml)を加えて抽出した。水層を合併し、2M 水酸化ナトリウム水溶液(9ml)を加えてpH=8〜9に調整し、クロロホルム(15ml)を加えて抽出した。水層をクロロホルム(10ml)で再度抽出し、有機層を飽和食塩水(15ml)で洗浄した。有機層を合併後、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して無色オイル(1.51g、粗収率=91.4%)を得た。このオイルはNMR分析(300MHz)により、アンチ体とシン体が約4対1の比率で存在する混合物(II−3)であった。
このオイルを酢酸エチル(2ml)に加温溶解し、ヘプタン(30ml)を加えて攪拌後生成した結晶を濾過し、結晶(0.32g、粗収率=19.2%)を得た。この結晶はNMR分析(300MHz)により、アンチ体〔化合物(III−3)〕とシン体が約13対1の比率で存在する混合物であり、晶析による精製効果が認められた。
化合物(III−3)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.34 - 2.06 (m, 13H), 2.76 (s, 1H), 3.73 (s, 2H), 6.97- 7.03 (m, 2H), 7.65 - 7.33 (m, 2H).
融点:79 ℃.
【実施例6】
【0055】
【化30】


(実験番号17)
5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(0.99g、6mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶解し、化合物(I−4)(含量98%)(0.82ml、6.6mmol)と酢酸(0.45ml、7.8mmol)を加え室温で20分間攪拌した後、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(0.25g、6.6mmol)を加え、室温で2日間攪拌した。反応液を氷冷し、2M 塩酸(8ml)と水(15ml)を加え、しばらく攪拌した。水層をクロロホルム(15mlおよび10ml)で洗浄し、有機層に水(15ml)を加えて抽出した。水層を合併し、2M 水酸化ナトリウム水溶液(9ml)を加えてpH=8〜9に調整し、クロロホルム(15ml)を加えて抽出した。水層をクロロホルム(10ml)で再度抽出し、有機層を飽和食塩水(15ml)で洗浄した。有機層を合併後、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して無色オイル(1.35g、粗収率=77.1%)を得た。このオイルはNMR分析(300MHz)により、目的のアンチ体とシン体が約3対1の比率で存在する混合物(II−4)であった。
このオイルを酢酸エチル(2ml)に加温溶解し、ヘプタン(30ml)を加えて攪拌後生成した結晶を濾過し、結晶(0.31g、粗収率=17.7%)を得た。この結晶はNMR分析(300MHz)により、アンチ体〔化合物(III−4)〕とシン体が約14対1の比率で存在する混合物であり、晶析による精製効果が認められた。
化合物(III−4)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.34 - 2.05 (m, 13H), 2.75 (s, 1H), 3.74 (s, 2H), 7.27-7.29 (m, 4H).
融点:91 ℃.
【実施例7】
【0056】
【化31】


(実験番号18)
5−ヒドロキシ−2−アダマンタノン(0.99g、6mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶解し、化合物(I−5)(含量97%)(0.87ml、6.6mmol)と酢酸(0.45ml、7.8mmol)を加え室温で30分間攪拌した後、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(0.25g、6.6mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を氷冷し、2M 塩酸(8ml)と水(15ml)を加え、しばらく攪拌した。水層をクロロホルム(15mlおよび10ml)で洗浄し、有機層に水(15ml)を加えて抽出した。水層を合併し、2M 水酸化ナトリウム水溶液(9ml)を加えてpH=8〜9に調整し、クロロホルム(15ml)を加えて抽出した。水層をクロロホルム(10ml)で再度抽出し、有機層を飽和食塩水(15ml)で洗浄した。有機層を合併後、硫酸ナトリウムで乾燥し、有機溶媒を減圧留去して無色オイル(1.15g、粗収率=70.6%)を得た。このオイルはNMR分析(300MHz)により、目的のアンチ体とシン体が約5対1の比率で存在する混合物(II−5)であった。
このオイルを酢酸エチル(2ml)に加温溶解し、ヘプタン(20ml)を加えて攪拌後生成した結晶を濾過し、結晶(0.53g、粗収率=32.7%)を得た。この結晶はNMR分析(300MHz)により、アンチ体〔化合物(III−5)〕とシン体が約50対1の比率で存在する混合物であり、晶析による精製効果が認められた。
化合物(III−5)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.32 - 2.07 (m, 13H), 2.33 (s, 3H), 2.77 (s, 1H), 3.72 (s, 2H), 7.13 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.1Hz, 2H).
m.p. = 103 ℃.
【実施例8】
【0057】
【化32】


化合物V−1(150mg)のジメチルホルムアミド溶液(DMF)(5ml)に、窒素雰囲気下、モノヒドロキシ−2−アダマンタナミン(140mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(31mg)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC)(174mg)、トリエチルアミン(TEA)(180μl)を加え、室温で14時間攪拌した。反応終了後、2N塩酸水溶液(30ml)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物VI−1(226mg)を得た。
NMR:(CDCl3);δ1.06(d,J=6.6Hz,6H),1.53-2.20(m,14H),3.72(s,3H),3.98(d,J=6.6Hz,2H),6.25-6.30(m,1H),7.71(s,1H)
(参考例1)
【0058】
実施例2で得られた濾過時の母洗液を減圧濃縮し溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0〜94:6)を行ない、式(III−1’):
【化33】


に相当するフラクション溶液を集めた。この溶液を減圧濃縮すると油状物が得られ、しばらく室温で放置すると化合物(III−1’)の固体(0.98g)が得られた。
化合物(III−1’)1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ1.46 - 1.71 (m, 9H), 2.06-2.15 (m, 4H), 2.67 (dd, J = 2.4Hz, 2.4Hz, 1H), 3.77 (s, 2H), 7.24-7.34 (m, 5H).
融点:72 ℃.
(比較例1)
【0059】
特許文献1記載の方法により、化合物(VIII):
【化34】


を11.0g(アンチ体:シン体=3:1)製造した。得られた化合物(VIII)にAcOEt(11mL)を加え溶解し、室温下、ヘキサン(110mL)をゆっくり加えた。溶液が薄く濁った後、しばらく攪拌すると少量の油状物が壁面に付着したが、結晶の析出は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明方法により、化合物(III)および(IV)を効率的に製造することが可能であり、工業的製法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例2で得られた化合物(III−1)の結晶の粉末X線回折パターンとそのピーク値である。縦軸は強度、横軸は回折角度(2θ、単位:度)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
【化1】


(式中、RおよびRは水素)で示される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の、結晶。
【請求項2】
粉末X線回折の主なピークの回折角2θが9.9、14.8、16.0、17.2、17.5、19.8度である、請求項1記載の結晶。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67649(P2013−67649A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275396(P2012−275396)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2008−542019(P2008−542019)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】