説明

ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いる高分子量凝集体の取り出し

【課題】抗体モノマーを、高分子量凝集体を含む調製物から精製するための方法の提供。
【解決手段】抗体調製物を、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに付す工程、およびさらにプロテインA親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーに付す工程を含む、抗体モノマーを高分子量凝集体を含む調製物から精製するための方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/523,335号(2003年11月20日出願)およびに米国仮特許出願第60/514,018号(2003年10月27日出願)に対する優先権の利益を主張するものである。この開示は、その全てが参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
この発明は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて、高分子量凝集体を抗体調製物から除去する方法に関する。この発明のある実施形態においては、最終調製物中に存在する高分子量凝集体の量は、実質的に、例えば40%から1%未満に低減されるであろう。
【0003】
(従来技術)
タンパク質の生物学的活性を破壊しないか、またはそれを実質的に低減しない有用なタンパク質精製方法を明らかにすることが望ましい。汚染物は、診断用途、治療用途、応用細胞生物学、および機能研究で用いられるであろう前に、抗体調製物から除去されなければならない。ハイブリドーマ細胞系から採取された抗体調製物は、例えば、しばしば、細胞系によって産生された抗体の高分子量凝集体(HMWA)などの好ましくない成分を含む。凝集体のこの形成は、投与時に、補体の活性またはアナフィラキシーをもたらすことによって、産物の安全性に有害な影響を及ぼすであろう。さらに、凝集体の形成は、産物収率の低減、ピークの広がり、および活性の損失をもたらすことによって、製造プロセスを阻害するであろう。
【0004】
最も一般的なタンパク質精製方法は、サイズ、充填量、および精製されるべきタンパク質および汚染物の間の溶解性の相違に関して述べられる。これらのパラメーターに基づくプロトコルには、親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーが含まれる。これらのクロマトグラフ方法は、しかし、しばしば、抗体の凝集または多重結合種の分離という技術的問題点をもたらす。イオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの技術は、例えば、溶出中のタンパク質濃度の増大、または緩衝液濃度および/またはpHの必要な変動により、凝集体の形成を誘導するであろう。さらに、いくつかの場合には、抗体は、等電点の相違を示す。この相違は、非常に小さいので、イオン交換クロマトグラフィーによってそれらの分離が不可能である。非特許文献1。サイズ排除クロマトグラフィーは煩雑であり、産物の実質的な希釈をもたらす。これは、大規模な、効率ベースの製造プロセスにおいては障害である。親和クロマトグラフィーカラムからのリガンドの漏出がまた、生じるであろう。これは、溶出された産物の望ましくない汚染をもたらす。非特許文献2。出願人は、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、HMWAを、抗GDF−8抗体調製物から除去することを試みた。しかし、これらの方法は全て、HMWAを、抗GDF−8抗体調製物から実質的に除去することができなかった。
【0005】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、不溶性ヒドロキシル化リン酸カルシウム[Ca10(PO(OH)]を用いるタンパク質精製方法である。これは、母材およびリガンドの両者を形成する。官能基は、陽荷電カルシウムイオン(C−部位)および陰荷電ホスフェート基(P−部位)クラスターの対からなる。ヒドロキシアパタイトおよびタンパク質の間の相互作用は、複雑であり、多様である。相互作用の一方法においては、しかし、タンパク質の陽荷電アミノ基は、C−部位へ配位錯化することによって、陰荷電P−部位およびタンパク質カルボキシル基と結合する。非特許文献3。
【0006】
結晶質ヒドロキシアパタイトは、クロマトグラフィーで用いられる第一のタイプのヒドロキシアパタイトであった。しかし、それは、構造的な問題によって制限された。セラミックヒドロキシアパタイト(cHA)クロマトグラフィーは、結晶質ヒドロキシアパタイトに付随するいくつかの問題点(流速の制限など)を克服するのに開発された。セラミックヒドロキシアパタイトは、高い耐久性、良好なタンパク質結合能力を有し、結晶質ヒドロキシアパタイトより高い流速および圧力で用いられるであろう。非特許文献4。
【0007】
ヒドロキシアパタイトは、タンパク質、核酸、および抗体のクロマトグラフ分離で用いられてきた。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいては、カラムは、通常、低濃度のホスフェート緩衝液中で平衡にされ、試料が適用され、吸着されたタンパク質は、次いで濃度勾配のホスフェート緩衝液に溶出される。非特許文献5。しばしば、低勾配のリン酸ナトリウムは、成功裡に、タンパク質を溶出するのに用いられ、一方他の場合には、リン酸ナトリウム400mMまでの濃度勾配が、成功裡に用いられた。例えば、非特許文献6(リン酸ナトリウム溶出勾配10mM〜30mM)、非特許文献3(リン酸ナトリウム溶出勾配10mM〜74mM)、非特許文献7(リン酸ナトリウム溶出勾配10mM〜350mM)を参照されたい。NaClなどの塩が、結合緩衝液中に組込まれて、抗体が、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて精製された(非特許文献5)一方、NaClおよび(NHSOなどの塩は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいてタンパク質の溶出に影響を及ぼすことが知られなかった。非特許文献8。
【0008】
いくつかの場合には、研究者は、抗体をヒドロキシアパタイトから選択的に溶出することができなかったか、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが十分に純粋な産物をもたらさなかったことを見出した。非特許文献9および非特許文献5。出願人は、残念ながら、先行技術の教示に基づくセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびリン酸ナトリウム溶出を用いて、高分子量凝集体を抗体調製物から分離することを試みた(図1)。さらに、過酷な溶出条件は、タンパク質と母材の強固な結合を分解する試みで用いられる場合には、タンパク質の生物学的活性を破壊することが知られる。したがって、高分子量凝集体などの不純物を、抗体調製物から除去する効率的な方法(抗体の生物学的活性を破壊しない)に対する必要性が存在する。
【非特許文献1】Tarditi, J. Immunol. Methods 599:13-20(1992)
【非特許文献2】Steindl, J. Immunol. Methods 235:61-69(2000)
【非特許文献3】Shepard, J. of Chromatography 891:93-98(2000)
【非特許文献4】Vola et al., BioTechniques 14:650-655 (1993)
【非特許文献5】Giovannini, Biotechnology and Bioengineering73:522-529 (2000)
【非特許文献6】Stanker, J. Immunological Methods 76:157-169(1985)
【非特許文献7】Tarditi, J. Chromatography 599:13-20 (1992)
【非特許文献8】Karlsson et al., Ion ExchangeChromatography, in Protein Purification, VCH Publishers, Inc. (Janson and Rydeneds., 1989)
【非特許文献9】Junbauer, J. Chromatography 476:257-268(1989)
【0009】
(発明の開示)
出願人は、驚くべきことに、異なる原料から免疫グロブリンを精製し、かつHMWAを除去するための新規ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー方法にNaClを用いることができることを見出した(図2)。したがって、本発明は、抗体調製物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させ、抗体を樹脂から選択的に溶出することよって、高分子量凝集体を該調製物から除去する方法に関する。あるいは、抗体調製物は、平衡緩衝液中に緩衝液交換され、次いでヒドロキシアパタイト樹脂に通されるであろう。これらの結合/フロースルーヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー方法の組合せはまた、抗体調製物を精製するのに用いられるであろう。
【0010】
本発明は、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む溶出緩衝液または負荷緩衝液を特徴とする。ここで、溶出緩衝液または負荷緩衝液は、pH 6.4〜7.6を有する。
【0011】
結合/フロースルー組合せ方式においては、本発明は、リン酸ナトリウム1〜20mM、NaCl 0.01〜2.0M、アルギニン0〜200mM、およびHEPES 0〜200mMを含む平衡緩衝液および洗浄緩衝液を特徴とする。ここで、平衡緩衝液および洗浄緩衝液は、pH 6.2〜8.0を有する。
【0012】
一実施形態においては、精製抗体は、高分子量凝集体5%未満を含む。
【0013】
さらなる実施形態においては、精製抗体は、高分子量凝集体1%未満を含む。
【0014】
さらなる実施形態においては、抗体調製物は、少なくとも一種のIgG抗体を含む。より詳しくは、抗体調製物は、抗IL−21レセプター、抗GDF−8、抗Abeta、抗CD22、抗ルイスY、抗IL−13、または抗IL−22から選択される少なくとも一種の抗体を含む。
【0015】
少なくとも一種の精製方法が、本発明のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーとの組合せで用いられるであろう。用いられるであろう多種の精製方法には、限定されることなく、プロテインAクロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属親和クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ろ過透析、限外ろ過、ウィルス除去ろ過、アニオン交換クロマトグラフィー、および/またはカチオン交換クロマトグラフィーが含まれるであろう。
【0016】
一実施形態においては、アニオン交換およびプロテインAクロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーとの組合せで用いられる。アニオン交換およびプロテインAクロマトグラフィーは、例えば、抗体調製物をプロテインA基体と接触させる工程、抗体を基体に吸着させる工程、基体および吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA洗浄緩衝液で洗浄する工程、吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA溶出緩衝液で溶出する工程、調製物をイオン交換基体と接触させる工程、抗体を基体に通す工程、基体を少なくとも一種のイオン交換洗浄緩衝液で洗浄する工程、イオン交換フロースルーをヒドロキシアパタイト樹脂と接触させる工程、フロースルーを樹脂に吸着させる工程、樹脂を少なくとも一種のヒドロキシアパタイト洗浄緩衝液で洗浄する工程、および精製抗体を少なくとも一種のヒドロキシアパタイト溶出緩衝液で樹脂から溶出する工程によって、組合せで用いられるであろう。
【0017】
さらなる実施形態においては、アニオン交換およびプロテインAクロマトグラフィーは、例えば、調製物をプロテインA基体と接触させる工程、抗体をプロテインA基体に吸着させる工程、プロテインA基体および吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA洗浄緩衝液で洗浄する工程、吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA溶出緩衝液で溶出する工程、プロテインA溶出物をイオン交換基体と接触させる工程、抗体をイオン交換基体に通す工程、イオン交換基体を少なくとも一種のイオン交換洗浄緩衝液で洗浄する工程、イオン交換フロースルーをリン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む負荷緩衝液中に交換する工程、イオン交換フロースルーをヒドロキシアパタイト樹脂と接触させる工程、抗体をヒドロキシアパタイト樹脂に通す工程、およびヒドロキシアパタイト樹脂を少なくとも一種のヒドロキシアパタイト洗浄緩衝液で洗浄する工程によって、組合せで用いられるであろう。
【0018】
さらに他の実施形態においては、アニオン交換およびプロテインAクロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーとの組合せで用いられるであろう。アニオン交換およびプロテインAクロマトグラフィーは、例えば、抗体調製物をプロテインA基体と接触させる工程、抗体を基体に吸着させる工程、基体および吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA洗浄緩衝液で洗浄する工程、吸着された抗体を少なくとも一種のプロテインA溶出緩衝液で溶出する工程、調製物をイオン交換基体と接触させる工程、抗体を基体に通す工程、基体を少なくとも一種のイオン交換洗浄緩衝液で洗浄する工程、イオン交換フロースルーをヒドロキシアパタイト樹脂と接触させる工程、フロースルーを樹脂に吸着させる工程、HMWAを抗体モノマーより強固に結合させ、負荷が継続するにつれて、結合モノマーをHMWAによって置換させる工程、ヒドロキシアパタイト樹脂を少なくとも一種のヒドロキシアパタイト洗浄緩衝液で洗浄する工程、および置換された抗体モノマーを収集する工程によって、組合せで用いられるであろう。
【0019】
本発明のさらなる目的および利点は、一部分が、次の説明で示されるであろう。一部分は、説明から自明であるか、または本発明を実施することによって学習されるであろう。本発明の目的および利点は、添付される特許請求の範囲に特に指摘される要件および組合せによって、実現され、達成されるであろう。
【0020】
前述の全般説明および次の詳細な説明はいずれも例示であり、単に説明のためのものであり、請求されるように本発明を限定するものでない。
【0021】
添付の図面は、この明細書に組込まれ、その部分を構成するが、これは、説明と一体に、本発明の原理を説明するのに資する。
【0022】
(発明の詳細な記載)
A.定義
本発明がより容易に理解されるであろうために、いくつかの用語を、先ず定義する。さらなる定義は、詳細な説明の中で随時示される。
【0023】
用語「抗体」は、いかなる免疫グロブリンまたはその断片をも云い、これには、抗原結合部位を含むいかなるポリペプチドも包含される。用語には、限定されることなく、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異、多特異、非特異、ヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組換え型、混成、突然変異、グラフト化、およびインビトロ産生抗体が含まれる。用語「抗体」にはまた、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合機能を保持する他の抗体断片などの抗体断片が含まれる。典型的には、これらの断片は、抗原結合ドメインを含むであろう。
【0024】
本発明によってまた精製されるであろう抗体には、PEG処理などによって化学修飾された形態、および免疫グロブリン部分を含む融合タンパク質が含まれる。抗体またはその断片は、既知の抗体イソタイプおよびそれらの立体配座のいかなるものからも選択されるであろう。例えば、IgA、IgG、IgD、IgE、IgMモノマー、IgAダイマー、IgAトリマー、またはIgMペンタマーである。
【0025】
用語「抗体調製物」は、抗体および/または好ましくない成分(これらの抗体の高分子量凝集体など)を含むいかなる組成物をも云う。
【0026】
「セラミックヒドロキシアパタイト」または「cHA」は、式[Ca10(PO(OH)]の不溶性ヒドロキシル化リン酸カルシウムを云う。これは、高温で、球状のマクロ細孔質セラミック形態に焼結されている。用語「cHA」には、限定されることなく、タイプIおよびタイプIIセラミックヒドロキシアパタイトが包含される。明記されない限り、「cHA」は、限定されることなく、20、40、および80μmを含むいかなる粒度をも云う。
【0027】
用語「高分子量凝集体」または「HMWA」は、少なくとも二種の抗体の結合物を云う。該結合物は、限定されることなく、共有、非共有、二硫化物、または非還元性架橋を含むいかなる方法によっても生じるであろう。少なくとも二種の抗体が、同じか、または異なる抗原に結合するであろう。少なくとも二種の抗体は、抗体、または抗体断片の形態、もしくは上記の「抗体」の定義で記載される他の形態であろう。
【0028】
用語「フロースルー方式」は、抗体調製物の分離技術を云う。ここで、調製物に含まれる少なくとも一種の抗体は、クロマトグラフ樹脂または基体に通すものであり、一方少なくとも一種の潜在的汚染物または不純物は、クロマトグラフ樹脂または基体に結合する。フロースルー方式は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーで用いられるであろう。
【0029】
「結合方式」は、抗体調製物の分離技術を云う。ここで、調製物に含まれる少なくとも一種の抗体は、クロマトグラフ樹脂または基体に結合し、一方少なくとも一種の汚染物または不純物は、通過する。結合方式は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーで用いられるであろう。
【0030】
B.方法の説明
本発明は、高分子量凝集体(HMWA)を、結合方式、フロースルー方式、またはその組合せのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて、抗体調製物から除去するための方法を提供する。本発明は、抗体調製物の大規模精製に適用される。
【0031】
結合方式においては、該方法は、中性のpHおよび低いイオン強度で、ホスフェートで充填されたヒドロキシアパタイト基体を用いて、抗体およびHMWAの両者を結合する。カラムは、次いで、ホスフェート緩衝液で洗浄されて、緩く結合された不純物が除去される。次に、抗体は、高いイオン強度のホスフェート緩衝液(弱酸性〜弱塩基性のpHで、NaCl 0.2〜2.5Mを含む)を用いて、選択的に溶出される。HMWAは、任意に、続いて、さらにより高いイオン強度およびより高いホスフェート濃度の緩衝液を中性のpHで用いて、樹脂を完全に洗浄される。最後に、樹脂は、任意に、水酸化ナトリウムおよびリン酸カリウム溶液を用いて再生される。
【0032】
フロースルー方式においては、抗体調製物は、NaCl 0.2〜2.5Mを含む負荷緩衝液中に、弱酸性〜弱塩基性のpHで緩衝液交換される。抗体調製物は、次いで、ヒドロキシアパタイトカラムに通され、一方HMWAなどの不純物は、カラムに結合する。カラムは、任意に、続いて洗浄されて、さらなる精製抗体が、カラムに通される。最後に、カラムは、任意にストリッピングされ、次いで水酸化ナトリウムおよびリン酸カリウム溶液を用いて再生されるであろう。
【0033】
結合/フロースルー組合せ方式においては、抗体調製物は、ヒドロキシアパタイトカラムに通され、抗体モノマーおよびHMWAの両者が最初に結合する。しかし、負荷が継続するにつれて、流入するHMWAは、抗体モノマーより強固に結合可能であり、したがって結合モノマーを置換する。したがって、置換されたモノマーを、カラムに通す。カラムは、任意に、続いて、洗浄されて、さらなる置換抗体をカラムに通す。最後に、カラムは、任意に、高い塩(高いホスフェート)溶液でストリッピングされ、次いで水酸化ナトリウムおよびリン酸カリウム溶液を用いて再生されるであろう。
【0034】
本発明の一実施形態においては、精製抗体は、HMWA 5%未満、一実施形態においてはHMWA 3%未満、他の実施形態においてはHMWA 1%未満を含む。
【0035】
1.抗体
本発明の抗体調製物は、限定されることなく、免疫動物の血清、腹水液、ハイブリドーマまたは骨髄腫の上澄み、ならびに組換え細胞系(抗体分子を発現する)の培養、および抗体産生細胞の全細胞抽出液から誘導される調節培地を含む多数の素材から単離されるであろう。本発明の一実施形態においては、種々の抗体産生組換え細胞系の調節細胞培養培地からの抗体が精製される。本明細書の開示に基づいて、細胞系から細胞系への、および種々の抗体産物において、いくらかの変化が予測されるであろうものの、本明細書の本発明を、抗体タンパク質および産生細胞系の特定の組合せに適合させることは、十分に当業者の技術の範囲内にある。
【0036】
あくまで例示を目的として、本発明は、IgGイソタイプおよび塩基性plのいくつかの抗体の精製に適用された。より詳しくは、本発明は、米国仮特許出願第60/419,964号明細書によって記載されるGDF−8に対するモノクローナル抗体(以下「Myo−29」)、米国特許出願第10/428,894号明細書によって記載されるCD22抗原と特に反応性のあるモノクローナル抗体(以下「抗CD22」)、および国際特許出願第PCT/US01/46587号パンフレットによって記載されるAbeta抗原に対するモノクローナル抗体(以下「抗Abeta」)に適用された。Myo−29ならびにCD22およびAbeta抗体を産生するための組換え系の構造は、上記される出願に詳述される。
【0037】
2.ヒドロキシアパタイト樹脂
種々のヒドロキシアパタイトクロマトグラフ樹脂が、商業的に入手可能であり、物質のいかなる利用可能な形態も、この発明を実施するに際して用いられるであろう。本発明の一実施形態においては、ヒドロキシアパタイトは、結晶質形態である。この発明で用いるためのヒドロキシアパタイトは、凝集されて粒子を形成し、高温で、安定な多孔質セラミック塊に焼結されるものであろう。
【0038】
ヒドロキシアパタイトの粒度は、幅広く変動してもよい。しかし、典型的な粒度は、直径1μm〜1,000μmの範囲であり、10μm〜100μmであろう。本発明の一実施形態においては、粒度は20μmである。本発明の他の実施形態においては、粒度は40μmである。本発明のさらに他の実施形態においては、粒度は80μmである。
【0039】
多数のクロマトグラフ基体が、cHAカラムを調製する際に用いられるであろう。最も広範には、タイプIおよびタイプIIのヒドロキシアパタイトが用いられる。タイプIは、高いタンパク質結合能力、および酸性タンパク質に対するより良好な能力を有する。タイプIIは、しかし、より低いタンパク質結合能力を有するが、核酸およびあるタンパク質のより良好な分解能を有する。タイプII物質はまた、アルブミンに対して非常に低い親和性を有し、特に、多くの種および類の免疫グロブリンを精製するのに適切である。特定のヒドロキシアパタイトタイプの選択は、当業者によって決定されるであろう。
【0040】
この発明は、カラム中に、または連続環状クロマトグラフ中に緩く充填されたヒドロキシアパタイト樹脂と共に用いられるであろう。本発明の一実施形態においては、セラミックヒドロキシアパタイト樹脂が、カラム中に充填される。カラム寸法の選択は、当業者によって決定されるであろう。本発明の一実施形態においては、床高さ約20cmのカラム直径少なくとも0.5cmが、小規模精製に用いられるであろう。本発明のさらなる実施形態においては、カラム直径約35cm〜約60cmが用いられるであろう。本発明のさらに他の実施形態においては、カラム直径60cm〜85cmが用いられるであろう。本発明のある実施形態においては、NaHPO溶液200mM中のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂のスラリー(pH9.0)が用いられて、カラムが、一定流速約4cm/分で、または重力で充填されるであろう。
【0041】
2.緩衝液組成および負荷条件
ヒドロキシアパタイト樹脂を抗体調製物と接触させる前に、パラメーター(pH、イオン強度、および温度、ならびにいくつかの場合においては、異なる種類の物質の添加など)を調整することが必要であろう。したがって、ヒドロキシアパタイト母材を、それを溶液(例えば、pH、イオン強度等を調整するための緩衝液、または洗浄剤を導入するためのもの)(抗体調製物を精製するのに必要な特性をもたらす)で洗浄することによって平衡させることは、任意工程である。
【0042】
結合/フロースルー組合せ方式のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいては、ヒドロキシアパタイト母材は、溶液と平衡され、それで洗浄され、それにより抗体調製物を精製するのに必要な特性がもたらされる。本発明の一実施形態においては、母材は、NaCl 0.01〜2.0Mを、弱塩基性〜弱酸性のpHで含む溶液を用いて平衡されるであろう。例えば、平衡緩衝液は、リン酸ナトリウム1〜20mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム1〜10mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム2〜5mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム2mMを含むであろうし、他の実施形態においてはリン酸ナトリウム5mMを含むであろう。平衡緩衝液は、NaCl 0.01〜2.0Mを含むであろうし、一実施形態においてはNaCl 0.025〜0.5M、他の実施形態においてはNaCl 0.05M、他の実施形態においてはNaCl 0.1Mであろう。負荷緩衝液のpHは、6.2〜8.0の範囲であろう。一実施形態においては、pHは6.6〜7.7であろうし、他の実施形態においてはpHは7.3であろう。平衡緩衝液は、アルギニン0〜200mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、アルギニン120mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、アルギニン100mMを含むであろう。平衡緩衝液は、HEPES 0〜200mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、HEPES 20mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、HEPES 100mMを含むであろう。
【0043】
抗体調製物はまた、フロースルー方式のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを調製するに際して、適切な緩衝液または負荷緩衝液中に緩衝液交換されるであろう。本発明の一実施形態においては、抗体調製物は、NaCl 0.2〜2.5Mを、弱酸性〜弱塩基性のpHで負荷緩衝液中に緩衝液交換されるであろう。例えば、負荷緩衝液は、リン酸ナトリウム1〜20mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム2〜8mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム3〜7mMを含むであろうし、他の実施形態においてはリン酸ナトリウム5mMを含むであろう。負荷緩衝液は、NaCl 0.2〜2.5Mを含むであろうし、一実施形態においてはNaCl 0.2〜1.5M、他の実施形態においてはNaCl 0.3〜1.0M、他の実施形態においてはNaCl 350mMであろう。負荷緩衝液のpHは、6.4〜7.6の範囲であろう。一実施形態においては、pHは6.5〜7.0であろうし、他の実施形態においてはpHは6.8であろう。
【0044】
結合方式、フロースルー方式、またはそれらの組合せのいずれにおいても、抗体調製物とヒドロキシアパタイト樹脂との接触は、充填床カラム、流動/膨張床カラム(固相母材を含む)、および/または単一バッチ運転(固相母材は、溶液とある時間混合される)において、行われるであろう。
【0045】
ヒドロキシアパタイト樹脂を抗体調製物と接触させた後、任意に、洗浄処理が行われる。しかし、非常に高純度の免疫グロブリンが不可欠ではないか、またはさらなるフロースルー抗体が必要とされないいくつかの場合においては、洗浄処理は、省略され、処理工程、および洗浄溶液が省略されるであろう。用いられる洗浄緩衝液は、ヒドロキシアパタイト樹脂の性質、用いられるヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの方式によるであろうし、したがって当業者によって決定されるであろう。フロースルー方式および結合/フロースルー組合せ方式においては、任意のカラム洗浄後に得られる精製抗体フロースルーは、他の精製抗体画分と共にプールされるであろう。
【0046】
結合方式においては、抗体は、任意の洗浄処理後、カラムから溶出されるであろう。抗体をカラムから溶出するためには、この発明は、NaCl約0.2〜2.5Mを弱酸性〜弱塩基性のpHで含む高イオン強度のホスフェート緩衝液を用いる。例えば、溶出緩衝液は、リン酸ナトリウム1〜20mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム2〜8mMを含むであろうし、他の実施形態においてはそれは、リン酸ナトリウム2〜6mMを含むであろうし、他の実施形態においてはリン酸ナトリウム3mMを含むであろうし、他の実施形態においてはリン酸ナトリウム5mMを含むであろう。溶出緩衝液は、NaCl 0.2〜2.5Mを含むであろうし、一実施形態においてはNaCl 0.2〜1.5M、他の実施形態においてはNaCl 0.3〜1.1M、他の実施形態においてはNaCl 0.1M、他の実施形態においてはNaCl 0.35Mであろう。溶出緩衝液のpHは、6.4〜7.6の範囲であろう。一実施形態においては、pHは6.5〜7.3であろうし、他の実施形態においてはpHは7.2であろうし、他の実施形態においてはpHは6.8であろう。溶出緩衝液は、抗体を、連続または段階勾配でカラムからの溶出するために変えられるであろう。
【0047】
結合、およびフロースルーの両方式、ならびにそれらの組合せにおいては、固相母材は、任意に、抗体の溶出またはフロースルー後に清浄化される、すなわちストリッピングされ、再生されるであろう。この処理は、典型的には、定期的に行われて、固相の表面上への不純物の蓄積が最少にされるか、および/または母材が滅菌されて、産物の微生物による汚染が防止される。
【0048】
緩衝液成分は、当業者の知識にしたがって調整されるであろう。結合方式、フロースルー方式、および結合/フロースルー組合せ方式について、試料緩衝液組成の範囲および実施例が、それぞれ、表1、表2、および表3に示される。全ての緩衝液または工程は、必ずしも必要ではないが、あくまで例示のために示される。例えば、二つの別個の平衡工程を有する必要はないであろうし、ヒドロキシアパタイト樹脂をストリッピング、再生、または保管する必要はないであろう。実施例11に記載される高処理量スクリーンは、cHAカラムクロマトグラフィーの緩衝液条件を効率的に最適化するのに用いられるであろう。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
本発明の一実施形態においては、cHA樹脂上への負荷は、例えば、負荷投与≦20mg/mlであり、負荷時の開始凝集体レベル≦HMWA 40%であろう。本発明のある実施形態においては、負荷投与1.8〜10.4mg/mlが、負荷時の開始凝集体レベル約15%と共に用いられるであろう。
【0053】
本発明のさらなる実施形態においては、cHA樹脂は、負荷投与少なくとも20mg/ml、および負荷時の開始凝集体レベル≦HMWA 40%で負荷される。本発明のある実施形態においては、負荷投与30〜40mg/mlが、負荷時の開始凝集体レベル約27%と共に用いられるであろう。
【0054】
3.さらなる任意工程
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが、単独で用いられて、上記されるように、モノマーIgGが凝集体から分離されるであろうことが発見されたものの、本発明の精製方法は、他のタンパク質精製技術との組合せで用いられるであろう。本発明の一実施形態においては、ヒドロキシアパタイト工程に先行する一つ以上の工程が、汚染物または不純物の負荷投与を低減するのに望ましいであろう。本発明の他の実施形態においては、ヒドロキシアパタイト工程に続く一つ以上の精製工程が、さらなる汚染物または不純物を除去するのに望ましいであろう。
【0055】
記載されるcHA精製処理は、限定されることなく、プロテインAクロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属親和クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ろ過透析、限外ろ過、ウィルス除去ろ過、および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含む他の精製工程と任意に組合わされるであろう。
【0056】
一実施形態においては、cHA精製工程に先立って、採取培地は、任意に、プロテインAクロマトグラフィー工程によって最初に精製されるであろう。例えば、PROSEP−A(商標)(Millpore、U.K.)(制御された細孔ガラスに共有結合されたプロテインAからなる)が、有用に用いられるであろう。他の有用なプロテインA処方物には、プロテインAセファロースFAST FLOW(商標)(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)、TOYOPEARL(商標)650MプロテインA(TosoHaas Co.、Philadelphia、PA)、およびMABSELECT(商標)カラム(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)が含まれる。
【0057】
cHA精製に先行する任意工程として、イオン交換クロマトグラフィーが用いられるであろう。この点に関して、種々のアニオンまたはカチオン置換基が、クロマトグラフィーのアニオンまたはカチオン基体を形成するために、母材に付与されるであろう。アニオン交換置換基には、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチルアクリルアミド(TMAE)、第四アミノエチル(QAE)、および第四アミン(Q)基が含まれる。カチオン交換置換基には、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)、およびスルホネート(S)が含まれる。セルロースイオン交換樹脂(DE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32、およびCM−52など)は、Whatman Ltd.(Maidstone、Kent、U.K)から入手可能である。セファデックスベースの架橋イオン交換体がまた、知られる。例えば、DEAE−、QAE−、CM−、およびSP−セファデックス、DEAE−、Q−、CM−、およびS−セファロース、ならびにセファロースは全て、Amersham Biosciences(Piscataway、NJ)から入手可能である。さらに、TOYOPEARL(商標)DEAE−650SまたはM、およびTOYOPEARL(商標)CM−650SまたはMなどのDEAEおよびCM誘導の両エチレングリコール−メタクリレートコポリマーは、Toso Haas Co.(Philadelphia、PA)から入手可能である。
【0058】
本発明の一実施形態においては、イオン交換クロマトグラフィーは、結合方式またはフロースルー方式で用いられるであろう。
【0059】
ある実施形態においては、プロテインAクロマトグラフィー工程が最初に行われ、アニオン交換工程が次に行われ、cHA工程が三番目に行われる。
【0060】
4.さらなる不純物の除去
HMWAの除去に加えて、cHAクロマトグラフィーが、他の不純物を抗体調製物から除去するのに有用であると示された。本発明のcHAクロマトグラフィー方法によって除去されるであろう他の不純物には、限定されることなく、DNA、宿主細胞タンパク質、偶性ウィルス、および先行精製工程からのプロテインA汚染物が含まれる。
【0061】
本発明の一実施形態においては、本発明は、プロテインAを抗体調製物から除去可能である。本発明のある実施形態においては、最終調製物中に存在するプロテインAの量は、実質的に(例えば300ppmから1ppm未満に)低減されるであろう。
【実施例】
【0062】
次の実施例は、あくまで例示を目的として示される。
【0063】
実施例1:抗GDF−8抗体の精製
次に概略的に述べられる精製処理を、抗GDF−8モノクローナル抗体(本明細書には「Myo−29」として引用される)に対して開発した。Myo−29抗体は、IgG1亜型抗体であり、pl約8.1を有する。精製プロセスは、三種のクロマトグラフ工程(プロテインA親和、アニオン交換、およびヒドロキシアパタイト)、ウィルス不活性化工程、および限外ろ過/ろ過透析工程からなって、産物が、最終緩衝液中に濃縮および交換された。全ての工程を、18〜25℃で行った。但し、プロテインAクロマトグラフィー工程は、2〜8℃で実施された。
【0064】
精製処理は、いかなる規模に対しても標準化されるであろう。記載される線形流速は、カラム直径には無関係であり、負荷比は、質量/単位容積である。プロテインAクロマトグラフィー工程は、バッチ毎に多数回循環されて、採取バイオリアクターにおける細胞培養力価の変動が配慮されるであろう。各サイクルは、別個の単位操作と見なされ、溶出物プールは、次の工程に備えられる。プロテインA工程は、Myo−29約35g/MabSelectリットルの能力を有する。プロセスの下流工程(例えば、アニオンクロマトグラフィーおよびセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)は、Myo−29約15g/アニオン交換樹脂リットル、およびMyo−29約10g/セラミックヒドロキシアパタイト樹脂リットルを配慮する規模である。
【0065】
1.培養物からの細胞の除去
Myo−29抗体は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞中に発現される。これを、攪拌2500Lタンクバイオリアクターで培養した。培養流体を採取するために、細胞を、Prostakマイクロフィルトレーション装置(Millipore、Billerica、MA)を用いて除去した。浄化された調節培地(CCM)を、最初のクロマトグラフ工程(プロテインAクロマトグラフィー)のために収集した。
【0066】
2.プロテインA親和クロマトグラフィー精製工程
組替え型プロテインA樹脂(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)の17.7L(直径30cm×高さ25cm)MabSelectカラムを、平衡緩衝液(Tris 10mM、NaCl 100mM、pH7.5)5カラム容と平衡させた。CCMを、流速2.5cm/分および負荷投与Myo−29 35g/樹脂リットルでカラムに付した。カラムに負荷した後、それを、高塩洗浄緩衝液(Tris 20mM、NaCl 1.0M、pH7.5)5カラム容で、次いで低塩洗浄緩衝液(Tris 10mM、NaCl 100mM、pH7.5)10カラム容で洗浄した。Myo−29を、溶出緩衝液(アルギニン100mM、NaCl 50mM、pH3.0)6カラム容を加えることによって溶出した。溶出物プールを、次いで、病気予防手段としてpH3.6±0.5で1.5±0.5時間保持して、潜在的な偶性ウィルス汚染物の不活性化を促進した。溶出物プールを、次いで、2M HEPES緩衝液(pH8.0)でpH7.3に中和して、Myo−29の酸不安定種の劣化が防止された。
【0067】
カラム流出物を、溶出物プール濃度のために、数種のパラメーター(UV吸光度および導電率クロマトグラフプロフィルの目視検査を含む)、および産物回収(負荷力価および280nmにおける吸光度に対するプロテインA HPLCを用いる)によって監視した。
【0068】
カラムを、6MグアニジンHClでストリッピングし、次いでストリッピング洗浄緩衝液(Tris 10mM、NaCl 100mM、pH7.5)で洗浄した。カラムを、16%エタノール中に保管した。
【0069】
3.アニオン交換クロマトグラフィー精製工程
プロテインAカラム溶出物を、さらに、Q SEPHAROSE FF樹脂(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)の75Lカラム(直径80cm×長さ15cm)のアニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。カラムを、第一の平衡緩衝液(HEPES 20mM、NaCl 1000mM、pH7.3)5カラム容で、次いで第二の平衡緩衝液(アルギニン100mM、NaCl 50mM、HEPES 100mM、pH7.3)5カラム容で平衡させた。プロテインAカラム溶出物を、流速2.5cm/分および負荷比Myo−29 15g/樹脂リットルで平衡カラムに加えた。負荷した後、カラムを、第二の平衡緩衝液5カラム容で洗浄した。アニオン交換カラムフロースルーを収集した。
【0070】
収集されたカラムフロースルーを、数種のパラメーター(UV吸光度および導電率クロマトグラフプロフィルの目視検査を含む)、および産物回収(280nmにおける吸光度を用いる)によって監視した。
【0071】
アニオン交換カラムを、ストリッピング緩衝液(HEPES 20mM、NaCl 1M、pH7.3)でストリッピングし、再生緩衝液(NaOH 500mM、NaCl 1M、pH13.3)で再生した。カラムを、0.01M NaOH中に保管した。
【0072】
4.ウィルス保持ろ過
この任意工程の目的は、CHO細胞培養物中に存在するであろうレトロウィルス様粒子の除去であり、潜在的な偶性ウィルス汚染物を除去することによるさらなる安全性を提供することであった。アニオン交換カラムフロースルーは、収集され、35nm Planova単使用フィルター(Asahi−Kasei Corp.、New York、NY)を通して送られた。モジュール中の残り産物を、アニオン交換カラム洗浄緩衝液(アルギニン100mM、NaCl 50mM、HEPES 100mM、pH7.3)を装置に通すことによって回収した。
【0073】
ウィルス保持ろ過後の産物回収を、履歴性能データとの比較で、吸光度(280nm)、およびPlanovaプールのSDS−PAGE分析によって評価した。
【0074】
5.cHAクロマトグラフィー精製工程
ウィルスろ過溶液を、さらに、cHAタイプII樹脂(粒度40μM)(BioRad、Hercules、CA)を充填されたヒドロキシアパタイトカラム(60cm×20cm)で精製した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム0.3M、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容で平衡させた。第二の平衡工程を、平衡緩衝液2(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 50mM、pH7.2)4カラム容で行った。部分精製培地を、負荷緩衝液1:1(v/v)(リン酸ナトリウム10mM、pH7.2)中、流速2.5cm/分で樹脂上に負荷した。cHAカラムを、洗浄緩衝液(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 50mM、pH7.2)3カラム容で洗浄した。Myo−29抗体を、溶出緩衝液(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 350mM、pH6.8)6カラム容を用いて、cHA樹脂から溶出した。
【0075】
cHA精製工程を、UV吸光度および導電率クロマトグラフプロフィルの目視検査、吸光度(280nm)による産物回収、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析によって決定されるHMWA除去、および拮抗酵素結合免疫吸着剤検定(ELISA)によって決定されるプロテインA除去によって監視した。
【0076】
cHAカラムを、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム0.3M、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、再生緩衝液(リン酸カリウム0.5M、NaOH 1.0M、pH13.3)で再生した。カラムを、0.02M NaOH中に保管した。表4には、cHAクロマトグラフィーが、効果的に、HMWA不純物を抗体調製物から除去することが示される。さらに、cHAクロマトグラフィーは、他の不純物(プロテインAなど)を除去可能である。
【0077】
【表4】

【0078】
6.限外ろ過/ろ過透析および最終ろ過
cHA溶出物プールを、30,000名目分子量限界を有する複合再生セルロース膜からなるPLCTK Pellicon 2 カセット(Millipore、Billerica、MA)を用いる接線流限外ろ過システムを通して送った。この工程の目的は、cHA産物プールを濃縮し、それを処方緩衝液中に緩衝液交換することであった。cHA産物プールを、50%スクロース溶液で割って(w/v)、スクロースの濃度を2%にした。Myo−29抗体を、約20gL−1に濃縮し、次いで処方緩衝液(L−ヒスチジン0.01M、スクロース2%、pH6.0)≧約9洗浄容でろ過透析した。ろ過透析が完了した際に、産物を、さらに、約60gL−1に濃縮し、重力滴下および空気吹き出しによって、および引続く処方緩衝液による保持物通路のフラッシングによって装置から回収した。薬剤物質Myo−29の濃度目標は、≧35g/Lである。
【0079】
Myo−29薬剤物質を、最終的に、0.22ミクロンフィルターを通してろ過し、処方緩衝液(L−ヒスチジン0.01M、スクロース2%、pH6.0)と平衡させ、ボトルに等分し、次いで−80℃で保管した。
【0080】
実施例2:タイプI樹脂を用いる抗GDF−8抗体調製物のcHA精製
Myo−29抗体はまた、成功裡に、3.1Lカラム中に充填されたタイプIcHA樹脂(40μM粒度)を用いて精製された。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム0.3M、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容で平衡させた。第二の平衡工程を、平衡緩衝液2(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 50mM、pH7.2)4カラム容で行った。アニオン交換精製工程からの部分精製培地を、負荷投与35mg/mlおよび流速1.5cm/分で樹脂上に負荷した。cHAカラムを、洗浄緩衝液(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 50mM、pH7.2)3カラム容で洗浄した。Myo−29抗体を、溶出緩衝液(リン酸ナトリウム3mM、NaCl 1.0M、pH7.2)6カラム容を用いて、cHA樹脂から溶出した。
【0081】
cHAカラムを、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム0.3M、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、再生緩衝液(リン酸カリウム0.5M、NaOH 1.0M、pH13.3)で再生した。カラムを、0.02M NaOH中に保管した。
【0082】
cHA精製工程を、UV吸光度および導電率クロマトグラフプロフィルの目視検査、吸光度(280nm)による産物回収、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析によって決定されるHMWA除去、および拮抗酵素結合免疫吸着剤検定(ELISA)によって決定されるプロテインA除去によって監視した。表5に示されるように、タイプI樹脂を用いるcHA精製は、HMWAの百分率を、第一のサイクルで27%から0.9%へ低減可能であり、さらにHMWA百分率を第二のサイクルで0.6%へ低減可能であった。加えて、タイプI樹脂は、タイプII樹脂のそれより高い負荷投与に適合し、一方依然として、十分なモノマー収率をもたらした。最終的に、タイプI樹脂を用いるcHA精製は、プロテインA不純物の量を減少可能である。
【0083】
【表5】

【0084】
実施例3:タイプI樹脂を用いる抗CD22抗体調製物および抗Abeta抗体調製物のcHA精製
実施例2に記載されるcHA精製処理はまた、HMWAを抗CD22および抗Abetaの両抗体調製物から十分に除去可能であった。用いられた処理は、精製抗体モノマーが、溶出緩衝液(リン酸ナトリウム3mM、NaCl 1.5M、pH7.2)15カラム容で勾配溶出されたことを除いて、実施例2に記載されたものと類似であった。
【0085】
表6に示されるように、タイプI樹脂を用いるcHA精製は、抗CD22抗体調製物中のHMWAを、0.5%へ、抗Abeta抗体調製物中については検知限界未満へ低減可能であった。さらに、cHA精製工程は、プロテインA汚染物を、抗体調製物から除去可能であった。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例4:抗GDF−8抗体のフロースルー方式cHA精製
Myo−29抗体はまた、成功裡に、フロースルー方式のcHA精製プロトコルを用いて精製された。1.6×20cmのVantageカラム(Millipore、Billerica、MA)を、Macro−Prep Ceramic Hydroxyapatite Type II(粒度40μmの樹脂)(BioRad、Hercules、CA)を用いて、200mMリン酸ナトリウム(二塩基、pH9.0)中で充填した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容、および平衡緩衝液2(NaCl 350mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)3カラム容で平衡させた。Myo−29抗体調製物を、負荷緩衝液(NaCl 350mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)中に緩衝液交換し、次いでcHAカラムに負荷した。カラムを、洗浄緩衝液(NaCl 350mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)で洗浄し、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、次いで再生緩衝液(リン酸カリウム500mM、NaOH 1.0M、pH13.3)で再生した。全流速を、2.5〜3cm/分で保持した。カラム流出物を、HPLCシステムを用いるSEC−HPLCによって分析した。
【0088】
抗体調製物からのMyo−29回収およびHMWA除去の概要を表7に示す。調製物は、初期には、HMWA(負荷)14.4%を含んだ。これは、本発明のcHA精製方法を用いて、HMWA(フロースルー)0.2%へ低減された。
【0089】
【表7】

【0090】
実施例5:タイプI樹脂を用いる抗GDF−8抗体のフロースルー方式cHA精製
1.1×21cmのVantageカラム(Millipore、Billerica、MA)を、Macro−Prep Ceramic Hydroxyapatite Type I(粒度40μmの樹脂)(BioRad、Hercules、CA)を用いて、200mMリン酸ナトリウム(二塩基、pH9.0)中で充填した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容、および平衡緩衝液2(NaCl 1.0M、リン酸ナトリウム3mM、pH7.2)3カラム容で平衡させた。Myo−29抗体調製物を、負荷緩衝液(NaCl 1.0M、リン酸ナトリウム3mM、pH7.2)中に緩衝液交換し、次いで負荷投与26mg/mlでcHAカラムに負荷した。カラムを、洗浄緩衝液(NaCl 1.0M、リン酸ナトリウム3mM、pH7.2)で洗浄し、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、次いで再生緩衝液(リン酸カリウム500mM、NaOH 1.0M、pH13.3)5カラム容で再生した。流速を、負荷および洗浄に対しては90cm/時間未満で、精製処理の残りに対しては240cm/時間未満で保持した。カラム流出物を、HPLCシステムを用いるSEC−HPLCによって分析した。
【0091】
抗体調製物は、初期には、HMWA(負荷)27.2%を含んだ。これは、HMWA(フロースルー)6.1%へ低減された。さらに、抗体モノマーの回収は、72%であった。
【0092】
実施例6:抗CD22抗体調製物のcHA精製
セラミックHAクロマトグラフィー精製はまた、抗CD22抗体調製物を精製する際に有用であると示された。1.6×20cmのVantageカラム(Millipore、Billerica、MA)を、Macro−Prep Ceramic Hydroxyapatite Type II(粒度40μmの樹脂)(BioRad、Hercules、CA)を用いて、pH9.0で200mMリン酸ナトリウム(二塩基)中で充填した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容、および平衡緩衝液2(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)3カラム容で平衡させた。抗CD22抗体調製物を、(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)中に緩衝液交換し、次いでcHAカラムに負荷した。カラムを、洗浄緩衝液(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)3カラム容で洗浄し、次いで(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 1.0M、pH6.8)15カラム容で勾配溶出した。カラムを、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、次いで再生緩衝液(リン酸カリウム500mM、NaOH 1.0M)で再生した。全流速を、2.5〜3cm/分で保持した。カラム流出物を、HPLCシステムを用いるSEC−HPLCによって分析した。
【0093】
図3に示されるように、cHA精製は、成功裡に、HMWAを抗CD22抗体調製物から除去した。負荷物中の%HMWAは、1.7%であり、一方cHA溶出物中の%HMWAは、0.0%であった。
【0094】
実施例7:抗Abeta抗体のcHA精製
セラミックHAクロマトグラフィー精製はまた、抗Abeta抗体調製物を精製する際に有用であると示された。1.6×20cmのVantageカラム(Millipore)を、Macro−Prep Ceramic Hydroxyapatite Type II(粒度40μmの樹脂)(BioRad、Hercules、CA)を用いて、pH9.0で200mMリン酸ナトリウム(二塩基)中で充填した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容、および平衡緩衝液2(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)5カラム容で平衡させた。抗Abeta抗体調製物を、(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)中に緩衝液交換し、次いでカラムに負荷した。カラムを、洗浄緩衝液(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム5mM、pH6.8)5カラム容で洗浄し、次いで5mM(リン酸ナトリウム5mM、NaCl 1.0M、pH6.8)15カラム容で勾配溶出した。カラムを、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、次いで再生緩衝液(リン酸カリウム500mM、NaOH 1.0M)で再生した。全流速を、2.5〜3cm/分で保持した。カラム流出物を、HPLCシステムを用いるSEC−HPLCによって分析した。
【0095】
図4に示されるように、cHA精製は、成功裡に、HMWAを抗Abeta抗体調製物から除去した。負荷物中の%HMWAは、2.6%であり、一方cHA溶出物中の%HMWAは、0.0%であった。
【0096】
実施例8:精製Myo−29抗体の活性評価
実施例1に記載された方法にしたがって精製された抗GDF−8抗体(Myo−29)を、拮抗酵素結合免疫吸着剤検定(ELISA)を用いて、結合活性について検定した。拮抗ELISAは、他の精製抗体の結合活性を試験するのに用いられるであろう。Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Land (eds.), 1988, Cold
Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい。GDF−8レセプター(ActRllβ.Fc)(2μg/ml)を、容積100μl/ウェルの96ウェル微小力価プレート上に吸着した。プレートを、次いで、2〜8℃で終夜培養した。プレートを、洗浄緩衝液(Tris−HCl 50mM、pH8.0、Tween 20 0.05%)で二回洗浄し、ウシ血清アルブミン(BSA)の4%溶液でブロックして、非特定結合が最少にされた。プレートを、室温で1.5〜3.0時間培養し、洗浄緩衝液(Tris−HCl 50mM、pH8.0、Tween 20 0.05%)で二回洗浄した。
【0097】
Myo−29抗体参照標準を、連続的に、4倍に検定希釈剤(BSA 0.5%、NaCl 137mM、KCl 2.7mM)中に希釈し、全8標準点を得た。試験試料は、プロテインAクロマトグラフィー工程によって精製されたMyo−29抗体画分、およびさらなるcHA精製工程後に精製された画分を含んだ。これらの試験試料をまた、連続的に、2倍に検定希釈剤に希釈して、標準曲線の範囲内に入る8点を得た。標準および試験試料を、適切な検定ウェルに50μl/ウェルで加えた。ビオチン化拮抗物(ビオチン標識GDF8)(50ng/mL)を、次いで、各ウェルに50μl/ウェルで加えた。プレートを、プレート振盪機上で、室温で終夜培養した。
【0098】
プレートを、洗浄緩衝液(Tris−HCl 50mM、pH8.0、Tween20 0.05%)で4回洗浄し、結合ビオチン標識GDF−8を、ストレプタビジン結合ワサビダイコンペルオキシダーゼ(1:5000、Southern Biotech、Birmingham、Alabama)100μl/ウェルを添加することにより検知した。プレートを、プレート振盪機上で、50〜70分間室温で培養し、次いで3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(BioFX、Owings Mills、MD)100μl/ウェルを加えることによって展開した。各ウェルの吸光度を、ELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて450nmで決定する。試験試料中の活性Myo−29の量は、間接的に、検定で生じた信号に比例する。反応を、0.18M HSO 100μl/ウェルを添加することによって停止した。
【0099】
試験試料中のビオチン化GDF−8を結合可能なMyo−29の濃度を、4変数のロジスティック等式を用いて適合された標準曲線から内挿した。試験試料の生物学的活性値(%活性タンパク質)を、次いで、活性タンパク質濃度(ELISAによって決定される)を全タンパク質濃度(A280によって決定される)で除算し、さらにこの比率を100倍することによって計算した。同じ試料が別個のバッチで精製される場合には、生物学的活性値の平均が計算された。生物学的活性値を表8に報告する。
【0100】
【表8】

【0101】
表8に示されるように、Myo−29は、実施例1に記載される処理によって精製された後にも、GDF−8を結合する能力が残る。精製Myo−29の結合活性は、プロテインA精製からのピーク溶出画分において、いくらかより低い。しかし、結合活性は、実施例1に記載されるさらなるcHA精製工程後には、参照Myo−29抗体を超える。
【0102】
実施例9:抗GDF−8抗体の結合/フロースルー組合せ方式cHA精製
結合/フロースルー組合せ方式のセラミックHAクロマトグラフィー精製はまた、抗GDF−8抗体調製物を精製するのに有用であると示された。次に詳述される実験を、AKTA FPLCシステム(General Electric)で実施した。1.1×21cmのVantageカラム(Millipore)を、Macro−Prep Ceramic Hydroxyapatite Type II(粒度40μmの樹脂)(BioRad、Hercules、CA)を用いて、pH9.0で200mMリン酸ナトリウム(二塩基)中で充填した。カラムを、平衡緩衝液1(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)3カラム容、および平衡緩衝液2(NaCl 50mM、リン酸ナトリウム2.0mM、アルギニン100mM、HEPES 100mM、pH7.3)5カラム容で平衡させた。抗GDF−8抗体調製物を、負荷投与20mg/mlでカラム上に負荷した。カラムを、洗浄緩衝液2で洗浄し、ストリッピング緩衝液(リン酸ナトリウム300mM、NaCl 1.0M、pH6.8)でストリッピングし、次いで再生緩衝液(リン酸カリウム500mM、NaOH 1.0M、pH13.3)で再生した。負荷および洗浄に対する流速は、1.5cm/分であった。精製処理の残りに対する流速を、2.5〜3.0cm/分で保持した。カラム流出物を、HPLCシステムを用いるSEC−HPLCによって分析した。
【0103】
結果は、結合/フロースルー組合せ方式のcHAタイプII樹脂の操作が、HMWAを抗体調製物から除去するのに効果的であることを示した。調製物は、当初、HMWA(負荷)27%を含んだ。これは、本発明のcHA精製方法を用いて、HMWA(フロースルー)1.1%へ低減された。
【0104】
実施例10:タイプI樹脂を用いる抗GDF−8抗体の結合/フロースルー組合せ方式cHA精製
実施例9に記載される手順を、タイプIIcHA樹脂の代わりにタイプIcHA樹脂を用いて繰返した。緩衝液条件は、平衡緩衝液2が、pH7.3で、リン酸ナトリウム5.0mM、NaCl 100mM、アルギニン120mM、HEPES20mMからなっていることを除いて、実施例9で用いられたものと同じであった。
【0105】
表9に示されるように、結合/フロースルー組合せ方式におけるcHAタイプI樹脂の操作は、HMWAを抗体調製物から除去し、一方抗体モノマーの収率を維持するのに効果的である。さらに、結合/フロースルー組合せ方式は、プロテインA不純物を除去するのに効果的である。最終的に、タイプIcHA樹脂は、負荷投与を55mg/ml増大させた。
【0106】
【表9】

【0107】
実施例11:cHA緩衝液条件の高処理量スクリーン
高処理量スクリーンを、緩衝液条件(cHA−タイプI樹脂を用いて、Myo−029抗体調製物を精製するのに用いられる)を最適化するために行った。スクリーンは、cHA−タイプI樹脂上のリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、アルギニン、およびMyo−029のレベルを変動させ、Myo−029および高分子量凝集体(HMWA)の樹脂への結合程度を決定した。
【0108】
cHAタイプI樹脂(50μl)を、96ウェルフィルタープレートの各ウェルに加えた。各ウェル(表10〜12にA1、A2・・・H11、H12と標識付けされる)を、HEPES 20mM、pH7.2、ならびにホスフェート(表10)、塩化ナトリウム(表11)、およびアルギニン(表12)の独特の組合せからなる平衡緩衝液中で平衡させた。
【0109】
【表10】

【0110】
【表11】

【0111】
【表12】

【0112】
独特の平衡緩衝液を各ウェルに添加した後、Myo−029および凝集体の混合物を、各ウェルに加えた。負荷投与中の凝集体レベルは、25%であった。緩衝液の成分は、平衡中、同じレベルで保持された。物質を、20分間振盪し、平衡に達するようにした。上澄みを、フィルタープレートの各ウェルから除去した。抗体調製物添加の他の段階を行い、プレートを振盪し、上澄みを除去した。7段階まで行った。各段階で結合しなかったタンパク質を、分析して、全タンパク質濃度を決定した(A280nmにおける吸光度による)。モノマーおよび凝集体の量を、サイズ排除HPLCによって測定した。凝集体のいかなる減少も、精製につながる条件を示した。表13および14は、最初の4段階のプールにおいて、ウェル毎の凝集体およびモノマーの百分率を示す。
【0113】
【表13】

【0114】
【表14】

【0115】
高処理量スクリーンは、カラム精製スキームにおけるモノマー回収およびHMWA除去を定量的に予測可能であった。例えば、ウェルC8(HEPES 20mM、ホスフェート1mM、NaCl 1750mM、アルギニン12mM、pH7.2)からの条件は、cHAタイプI樹脂を充填されたカラムで試験された。凝集体レベルは、2.5%へ減少され、モノマー収率は、カラム精製後に72%であった。ウェルD5(HEPES 20mM、ホスフェート5mM、NaCl 100mM、アルギニン120mM、pH7.2)からの条件はまた、cHA−1樹脂を充填されたカラムで試験された。凝集体レベルは、0.7%へ減少され、モノマー収率は、カラム精製後に73%であった。最後に、ウェルC3(HEPES 100mM、ホスフェート1mM、NaCl 120mM、アルギニン200mM、pH7.2、この場合高レベルのHEPESは、NaClに類似のイオン強度を与える)に同等の条件は、cHA−1樹脂を充填されたカラムで試験された。凝集体レベルは、4%へ減少され、モノマー回収は、カラム精製後に69%であった。これらの結果は、高処理量スクリーニングは、モノマー回収およびHMWA除去の両者によって測定された際に、カラム性能を過少に評価することを示す。しかし、高処理量スクリーニングは、収率および純度の両者を定量的に予測可能である。
【0116】
本明細書に挙げられた全ての参照文献は、各個々の出版物、もしくは特許または特許出願が、本質的かつ個別に、全ての目的に対してその全体が参照により援用されることを示すと同程度に、全ての目的に対してかつそれらの全てが参照により本明細書に援用される。参照により援用される出版物、および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示に矛盾する場合、本明細書は、これらの矛盾する項目に優先するものである。
【0117】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量、反応条件などを表す数字は、全ての場合に、用語「約」によって変更されるものと理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に挙げられる数字パラメーターは、近似である。これは、本発明によって得られることを求められる所望の特性により変動するであろう。少なくとも、かつ特許請求の範囲に均等論を適用することを限定するものでなく、各数字パラメーターは、実質的な桁数および通常の四捨五入法に照らして解釈されるであろう。
【0118】
この発明の多くの修正および変更形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく為されるであろうことは、当業者には自明であろう。本明細書に記載される特定の実施形態は、例としてのみ提供され、いかなる意味においても限定することを意味しない。本明細書および実施例は、具体例としてのみ見なされ、本発明の真の範囲および精神は、特許請求の範囲によって示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】HMWAを抗GDF−8抗体調製物から分離するための先行技術ホスフェート傾斜溶出の不適格性を示す。
【図2】NaCl傾斜溶出の使用により、大部分のHMWAが、抗GDF−8抗体調製物から分離されることを示す。
【図3】cHAクロマトグラフィーを用いる抗CD22抗体調製物からのHMWAの分離を示す。
【図4】cHAクロマトグラフィーを用いる抗Abeta抗体調製物からのHMWAの分離を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の抗体モノマーを、高分子量凝集体を含む抗体調製物から精製するための方法であって、前記抗体調製物をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに付す工程を含み、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、抗体調製物をカラム中のヒドロキシアパタイト樹脂と接触させ、そして精製抗体を、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む少なくとも一種の溶出緩衝液で前記樹脂から溶出させる工程を含む、精製方法。
【請求項2】
前記抗体調製物を、(a)プロテインA親和クロマトグラフィー、および(b)イオン交換クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロテインA親和クロマトグラフィーが、先ず行われ、そして前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが最後に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一種の抗体モノマーを、不純物を含む抗体調製物から精製するための方法であって、前記抗体調製物をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに付す工程を含み、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、抗体調製物をカラム中のヒドロキシアパタイト樹脂と接触させ、そして精製抗体を、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む少なくとも一種の溶出緩衝液で前記樹脂から溶出させる工程を含む、精製方法。
【請求項5】
前記抗体調製物を、プロテインA親和クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記不純物が、DNAまたは宿主細胞タンパク質である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記精製抗体は、高分子量凝集体5%未満を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記精製抗体は、高分子量凝集体1%未満を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶出緩衝液は、pH6.4〜7.6を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶出緩衝液は、リン酸ナトリウム3mMまたは5mMを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶出緩衝液は、NaCl 1Mまたは0.35Mを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM抗体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、またはそれらの断片である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は、抗IL−21レセプター、抗GDF−8、抗Abeta、抗CD22、抗ルイスY、抗IL−13、または抗IL−22抗体である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、塩基性pIを有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂は、セラミックヒドロキシアパタイトのタイプIまたはタイプIIである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン交換クロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーである、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一種の抗体モノマーを、高分子量凝集体を含む抗体調製物から精製するための方法であって、前記抗体調製物をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに付す工程を含み、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む負荷緩衝液中で抗体調製物をカラム中のヒドロキシアパタイト樹脂と接触させ、そして精製抗体に前記カラムを通過させる工程を含む、精製方法。
【請求項19】
前記抗体調製物を、(a)プロテインA親和クロマトグラフィー、および(b)イオン交換クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロテインA親和クロマトグラフィーが、先ず行われ、そして前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが最後に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記負荷緩衝液は、pH6.4〜7.6を有する、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記負荷緩衝液は、リン酸ナトリウム3mMまたは5mMを含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記負荷緩衝液は、NaCl 1Mまたは0.35Mを含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記負荷緩衝液は、pH6.8または7.2を有する、請求項18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM抗体である、請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、またはそれらの断片である、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体は、抗IL−21レセプター、抗GDF−8、抗Abeta、抗CD22、抗ルイスY、抗IL−13、または抗IL−22抗体である、請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体は、塩基性pIを有する、請求項18〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記樹脂は、セラミックヒドロキシアパタイトのタイプIまたはタイプIIである、請求項18〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記イオン交換クロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーである、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記カラムが洗浄され、さらなる精製抗体が前記カラムを通過させられる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一種の抗体モノマーを、不純物を含む抗体調製物から精製するための方法であって、前記抗体調製物をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに付す工程を含み、前記ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.2〜2.5Mを含む負荷緩衝液中で抗体調製物をカラム中のヒドロキシアパタイト樹脂と接触させ、そして精製抗体に前記カラムを通過させる工程を含む、精製方法。
【請求項33】
前記抗体調製物を、プロテインA親和クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記不純物がDNAである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記不純物が宿主細胞タンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも一種の抗体を、高分子量凝集体を含む抗体調製物から精製するための方法であって、(a)ヒドロキシアパタイト樹脂を、リン酸ナトリウム1〜20mMおよびNaCl 0.01〜2.0Mを含む少なくとも一種の平衡緩衝液と平衡させる工程、(b)前記抗体調製物を、前記ヒドロキシアパタイト樹脂と接触させる工程、(c)前記高分子量凝集体を、抗体モノマーより強固に樹脂に結合させ、負荷が継続するにつれて、前記高分子量凝集体を結合抗体モノマーと置換させる工程、および(d)前記置換された抗体モノマーを収集する工程、を含む、少なくとも一種の抗体の精製方法。
【請求項37】
前記精製抗体は、高分子量凝集体5%未満を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記精製抗体は、高分子量凝集体1%未満を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記平衡緩衝液は、pH6.2〜8.0を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記平衡緩衝液は、リン酸ナトリウム2mMまたは5mMを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記平衡緩衝液は、NaCl 50mM または100mMを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記平衡緩衝液は、pH7.3を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記平衡緩衝液は、さらに、アルギニンまたはHEPES 200mM以下を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記平衡緩衝液は、さらに、アルギニン100mMまたは120mM、およびHEPES 100mMまたは20mMを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgM抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、またはそれらの断片である、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体は、抗IL−21レセプター、抗GDF−8、抗Abeta、抗CD22、抗ルイスY、抗IL−13、または抗IL−22抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体は、塩基性pIを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記樹脂は、セラミックヒドロキシアパタイトのタイプIまたはタイプIIである、請求項36に記載の方法
【請求項50】
前記抗体調製物を、プロテインA親和クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーに付す工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−111769(P2012−111769A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13648(P2012−13648)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2006−538022(P2006−538022)の分割
【原出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】