説明

ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの製造方法

【課題】ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを高収率で得るための製造方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で示されるアミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応において、アミノアルコール溶液中に、未反応のアミノアルコールに対するモル当量が0.4〜0.6になるように(メタ)アクリル酸ハライドを少なくとも2回以上に分割して逐次添加し、さらに逐次添加の各段階において、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライド反応終了後に、添加した(メタ)アクリル酸ハライドに対して1.0〜2.0モル当量の無機塩基を添加することを特徴とする(メタ)アクリルアミドの製造方法。NHR−CR(ROH)・・・(1)[式(1)中、R〜R3は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を示し、R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性界面活性剤の原料等に用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを高収率で得るための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、共重合により疎水性重合体へ親水部を簡便に導入できることから、非イオン性界面活性剤やコンタクトレンズの合成原料、改質剤、粘着剤等に幅広く用いられている。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドを反応させる方法(先行文献1、2)や、アミンと(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法(先行文献3)、ノルボルネン誘導体を気相熱分解する方法(先行文献4)などが知られている。これらの合成法の中でも、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドの反応は、(メタ)アクリル酸ハライドが反応性に富むことから、最も簡便に目的物を合成することができる反面、(メタ)アクリル酸ハライドとアミノアルコールとのエステル化や、プロトン性溶媒使用時には溶媒分子とのエステル化などの副反応を制御することが難しい。例えば先行文献1では、種々のアミノアルコールと酸ハライドを、水、テトラヒドロフラン混合溶媒下で反応させ、収率よくアミド体を得る方法が開示されている。しかし、本法は塩基として高価な酸化マグネシウムを使用しており、より安価な水酸化ナトリウム存在下ではほとんど目的のアミド体が得られないだけでなく、酸ハライドをアミノアルコールに対して過剰量添加する必要があり、製造プロセスとして多くの課題を抱えている。また、先行文献2では、メタノール溶媒中、塩基として安価な水酸化カリウムを使用した合成例が開示されている。しかし、先行文献1と同様に、収率よくアミド体を得るために基質のアミノアルコールに対して過剰量のアクリル酸クロリドを用いている。一般に(メタ)アクリル酸ハライドは高価格であり、生産コストの面で課題があるだけでなく、本法ではエステル体等の不純物が生成し、その除去に課題を抱えていた。
【0003】
一方、先行文献3のように、アミンと(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法の場合、原料となる(メタ)アクリル酸エステルは比較的安価であるものの、反応性に乏しいために、高価な反応触媒を必要とする場合や、(メタ)アクリル酸エステルの二重結合に起因した副反応を抑制するために予め官能基を保護しておく必要があるなど、非常に煩雑な工程を経る必要があった。また、先行文献4のように、ノルボルネン誘導体を気相熱分解する場合は、熱分解時に様々な副反応が併発し、目的物の単離精製が非常に難しい。このように、目的のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを、簡便に、収率良く合成することは困難であり、これらの課題を改善できる製造方法の確立が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−199752号公報
【特許文献2】特開2005−314279号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tetrahedron.Lett.,43,277−279(2002)
【非特許文献2】Tetrahedron.,57,9979−9987(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを高収率で得るための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応を種々検討する中で、消費されるアミノアルコールに対して一定の割合で(メタ)アクリル酸ハライドを少なくとも一回以上に分割して逐次添加し、基質の反応が終了した時点で、アミノアルコールの再生に必要な量だけ塩基を逐次添加することにより、副生成物の発生を抑制し、且つアミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドをモル等量に近い組成比で反応させながら高収率でヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]下記式(1)で示されるアミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応において、アミノアルコール溶液中に、未反応のアミノアルコールに対するモル当量が0.4〜0.6になるように(メタ)アクリル酸ハライドを少なくとも2回以上に分割して逐次添加し、さらに逐次添加の各段階において、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応終了後に、添加した(メタ)アクリル酸ハライドに対して1.0〜2.0モル当量の無機塩基を添加することを特徴とする(メタ)アクリルアミド製造方法。 NHR−CR(ROH) ・・・(1)
[式(1)中、R、R及びR3はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を示す。];
[2]前記アミノアルコールに対する(メタ)アクリル酸ハライドの添加量の総計が1.0〜1.5モル当量である上記[1]に記載の(メタ)アクリルアミド製造方法;
[3]反応溶媒がアルコール類である上記[1]または[2]に記載の(メタ)アクリルアミド製造方法;
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを安価且つ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[アミノアルコール]
本発明で使用されるアミノアルコールは、下記式(1)で示される構造を有するものであればよい。
NHR−CR(ROH) ・・・(1)
[式(1)中、R、R及びR3はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を示す。]
【0011】
式(1)中、R、R及びR3が示す炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシプロリル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシsec−ブチル基、ヒドロキシtert−ブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシイソペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ジヒドロキシメチル基、ジヒドロキシエチル基等が挙げられる。
【0012】
式(1)中、R及びR3は、それぞれ水素原子または炭素数1〜4の直鎖状アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基が好ましい。より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、または2−ヒドロキシエチル基である。
【0013】
式(1)中、Rが表す炭素数1〜8のアルキレン基の例としては、R、R及びR3で例示したアルキル基から水素原子1つを除いてなる2価の基などが挙げられる。Rは置換基を有していてもよく、置換基の例としてはヒドロキシ基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。置換基は複数個であってもよい。
【0014】
式(1)で示されるアミノアルコールの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアミン、2,2,2−トリヒドロキシエチルアミン、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミン、2,2−ジヒドロキシエチルアミン、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2,3−ジヒドロキシプロピルアミン、3−ヒドロキシ−1−メチルプロピルアミン、2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミン、1−(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピルアミン、1−エチル−1−(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアミン、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピルアミン、2,3−ジヒドロキシ−1,1−ジメチルプロピルアミン、3−ヒドロキシ−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、3−ヒドロキシ−1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン、3−ヒドロキシブチルアミン、4−ヒドロキシブチルアミン、4,4−ジヒドロキシブチルアミン、3−ヒドロキシ−3−メチルブチルアミン、1−ヒドロキシメチル−3−メチルブチルアミン、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルアミン、5−ヒドロキシペンチルアミン、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルアミン、4−ヒドロキシ−2−メチルペンチルアミン、2,3,4,5−テトラヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルペンチルアミン、6−ヒドロキシヘキシルアミン、6−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルヘキシルアミン、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルアミン、1−ヒドロキシメチル−1−メチルヘプチルアミン、2−ヒドロキシ−1−メチルオクチルアミン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−1−メチルエチルアミン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチルアミン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、3−(イソプロピルアミノ)プロパノール、4−(イソプロピルアミノ)ブタノール、などが挙げられる。
【0015】
[(メタ)アクリル酸ハライド]
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸ハライドは特に限定されないが、例えばアクリル酸クロリド、メタアクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタアクリル酸ブロミドなどが挙げられる。
【0016】
[塩基]
本発明では、系中で発生するハロゲン酸を中和し、アミノアルコールの反応活性を維持するために塩基を逐次添加する。塩基としては、反応後の精製が容易であることから、無機塩基を用いることが好ましい。第三級アミンのような有機塩基は、無機塩基と比較してコストが高く、また生成するアミン塩の除去が困難であることから好ましくない。上記無機塩基としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を好適に用いることができる。
【0017】
[溶媒]
本発明で用いる溶媒は、基質あるいは前述の塩基が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類が好適に用いられる。
【0018】
[添加剤]
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲において、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。重合禁止剤を添加することで、反応後のオリゴマー化を抑制し、安定に単離精製することができる。重合禁止剤としては特に限定されず、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン等の重合禁止剤が使用できる。
【0019】
[(メタ)アクリル酸ハライドの添加方法]
本発明では、アミノアルコールが溶解した溶液に(メタ)アクリル酸ハライド単独またはそれが溶解した溶液を逐次添加する。本明細書中における逐次添加とは、具体的には、反応系中に未反応で残存するアミノアルコールに対し、(メタ)アクリル酸ハライドがモル当量で0.4〜0.6になるように(メタ)アクリル酸ハライドの溶液を2回以上に分けて添加することを意味する。本発明の製造方法を用いることで、反応系中では常に添加される(メタ)アクリル酸ハライドに対してアミノアルコールが過剰量存在することになり、(メタ)アクリル酸ハライドがアミノアルコール以外の物質、溶媒等と反応することによる副生成物の生成を抑制することができる。
【0020】
反応系中に未反応で残存するアミノアルコールの量は、反応溶液を一部採取し、分析することによっても求めることができるが、簡便には添加した(メタ)アクリル酸ハライドのアミノアルコールに対するモル当量から求めることができる。例えば、1当量のアミノアルコールに対して(メタ)アクリル酸ハライドを0.5当量添加した場合、その全量が反応したと仮定して、次の逐次添加時における未反応のアミノアルコールは0.5当量であるとして、求めることができる。
【0021】
添加される(メタ)アクリル酸ハライドとアミノアルコールが反応することにより、系中でハロゲン酸が発生する。本発明の製造方法においては、余剰のアミノアルコールがハロゲン酸の捕捉剤として働き、アミン塩となるため、ハロゲン酸による副反応を抑制することができる。アミン塩となったアミノアルコールは反応活性を失うが、塩基の添加によってハロゲン酸を解離し、反応活性を再生することができる。(メタ)アクリル酸ハライドを添加した後は、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドの反応が完了するまでの時間攪拌する。1回の反応が完了するまでの時間は、薄層クロマトグラフィーで(メタ)アクリル酸ハライドに由来するスポットの消失をもって確認することができるが、30分〜1時間程度である。
【0022】
全てのアミノアルコールが(メタ)アクリル酸ハライドと反応して反応が完了したことは、薄層クロマトグラフィーでアミノアルコールに由来するスポットの消失を確認する、あるいは反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定してアミノアルコールに由来するシグナルが消失していることを確認する等の方法で確認することができる。
【0023】
逐次添加する(メタ)アクリル酸ハライドの総量は、アミノアルコールに対して1.0〜1.5モル当量であることが好ましい。1.0モル当量以下の場合は、反応後に未反応のアミノアルコール残渣が発生し、その後の精製が困難になる場合が多いことから好ましくない。より好ましくは1.1モル当量以上である。また、1.5モル当量を超える場合は、未反応の(メタ)アクリル酸ハライドが多く発生することから、生産性の観点で好ましくない。より好ましくは1.3モル当量以下である。
【0024】
本発明の(メタ)アクリル酸ハライドを逐次添加する回数は2回以上であればよく、特に制限はない。しかし、反応系中に未反応で残存するアミノアルコールに対し、(メタ)アクリル酸ハライドがモル当量で0.4〜0.6になるように(メタ)アクリル酸ハライドの溶液を添加していくことから、逐次添加の回数が増加するにつれ、添加する(メタ)アクリル酸ハライドの量が減少し、反応するアミノアルコール量も減少していく。したがって、反応が十分進行した後は、(メタ)アクリル酸ハライドを、逐次添加した総量がアミノアルコールに対して1.0〜1.5モル当量となるまで一度に加えても差し支えない。これにより、反応の終了を長引かせることなく、製造プロセスの煩雑化を防止することができる。好ましい逐次添加の回数は2〜10回であるが、反応槽の容量に応じて適宜決めることができる。
【0025】
[塩基の添加方法]
前述の無機塩基は、本発明において酸ハライドを添加した後に、アミノアルコール再生に必要な分量のみを後添加することが好ましい。反応初期から必要量の無機塩基を添加した場合、アミノアルコールのアルコール、またプロトン性溶媒を用いる場合は溶媒分子の反応性が高くなり、エステル化の副反応が一部進行してしまう。一方、本法のようにアミノアルコールの再生に必要な分量のみ無機塩基を追添加していくことで、反応系中では常にアミノ基の反応活性が高く維持され、エステル化の併発を抑制することができる。
【0026】
本発明の製造方法では、逐次添加した酸ハライドが各段階で過剰量存在するアミノアルコールと完全に反応し、酸を発生することから、本発明におけるアミノアルコール再生に必要な分量とは、逐次添加した酸ハライドと等モル以上の分量である。しかし、過剰量の無機塩基を添加した場合、余剰の無機塩基によってアミノ基以外の反応活性が高くなってしまう。従って、無機塩基の添加量は、逐次添加した酸ハライドに対して1.0〜2.0モル当量であることが好ましく、1.0〜1.5モル当量であることがより好ましい。
【0027】
[反応温度]
反応溶液は、10℃以下であることが好ましい。10℃を超える場合は、エステル化等の副反応が誘発されるため好ましくない。より好ましくは0℃以下である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
〇単離収率の算出方法
添加した酸ハライドの総量を基準として、以下のように算出した。
(単離目的物モル量/添加した酸ハライドの総モル量)×100(%)
〇未反応のアミノアルコールの算出方法
添加した(メタ)アクリル酸ハライドの全量がアミノアルコールと反応したとして、以下のように算出した。
反応系中のアミノアルコールモル量−追添加した酸ハライドのモル量
【0030】
[実施例1]
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(A−1)の合成
【0031】
【化1】

【0032】
反応器にトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン10質量部、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド3.7質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.49モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは3.0質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル等量)。次に、アクリル酸クロリド1.9質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.25モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.5質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.28モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド0.9質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.12モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは0.7質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.26モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド1.0質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.13モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、原料であるトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンのシグナルは見られず反応は終了していた。また、副生成物であるアクリル酸メチルは全く生成していなかった。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−1を得た。単離収率は73.1%であった。
【0033】
[実施例2]
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(A−1)の合成
反応器にトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン10質量部、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド4.2質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.56モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは3.4質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。次に、アクリル酸クロリド1.6質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.21モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.3質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド1.6質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.21モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.3質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド1.1質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.15モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは0.9質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.32モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド0.5質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.07モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、原料であるトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンのシグナルは見られず反応は終了していた。また、副生成物であるアクリル酸メチルは全く生成していなかった。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−1を得た。単離収率は66.5%であった。
【0034】
[実施例3]
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタアクリルアミド(A−2)の合成
【0035】
【化2】

【0036】
反応器にトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン10質量部、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにメタアクリル酸クロリド4.3質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.50モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは3.0質量部、メタアクリル酸クロリド添加量の1.30モル当量)。次に、メタアクリル酸クロリド2.2質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.25モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.5質量部、メタアクリル酸クロリド添加量の1.27モル当量)。さらに、メタアクリル酸クロリド1.0質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.12モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは0.7質量部、メタアクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。さらに、メタアクリル酸クロリド1.2質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.14モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、原料であるトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンのシグナルは見られず反応は終了していた。また、副生成物であるメタアクリル酸メチルは全く生成していなかった。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−2を得た。単離収率は76.2%であった。
【0037】
[実施例4]
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(A−3)の合成
【0038】
【化3】

【0039】
反応器に2−ヒドロキシエチルアミン5質量部、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド3.7質量部(2−ヒドロキシエチルアミン初期添加量の0.50モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは3.0質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。次に、アクリル酸クロリド1.9質量部(2−ヒドロキシエチルアミン初期添加量の0.26モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.5質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.28モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド0.9質量部(2−ヒドロキシエチルアミン初期添加量の0.12モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは0.7質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.26モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド1.0質量部(2−ヒドロキシエチルアミン初期添加量の0.13モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、原料である2−ヒドロキシエチルアミンのシグナルは見られず反応は終了していた。また、副生成物であるアクリル酸メチルは全く生成していなかった。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−3を得た。単離収率は74.5%であった。
【0040】
[実施例5]
N−[ジヒドロキシメチル(メチル)]アクリルアミド(A−4)の合成
【0041】
【化4】

【0042】
反応器にビス(ヒドロキシエチル)アミン8.7質量部、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド3.7質量部(ビス(ヒドロキシエチル)アミン初期添加量の0.49モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは3.0質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)。次に、アクリル酸クロリド1.9質量部(ビス(ヒドロキシエチル)アミン初期添加量の0.25モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは1.5質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.28モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド0.9質量部(ビス(ヒドロキシエチル)アミン初期添加量の0.12モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、3Nの水酸化カリウムメタノール溶液を滴下した(水酸化カリウムは0.7質量部、アクリル酸クロリド添加量の1.26モル当量)。さらに、アクリル酸クロリド1.0質量部(ビス(ヒドロキシエチル)アミン初期添加量の0.13モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、原料であるビス(ヒドロキシエチル)アミンのシグナルは見られず反応は終了していた。また、副生成物であるアクリル酸メチルは全く生成していなかった。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−4を得た。単離収率は70.1%であった。
【0043】
[比較例1]
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(A−1)の合成
反応器にトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン10質量部、水酸化カリウム6.1質量部(アクリル酸クロリド添加量の1.31モル当量)、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド7.5質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の1.00モル等量)を滴下し、4時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、副生成物であるアクリル酸メチルの生成が確認された。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−1を得た。単離収率は28.4%であった。
【0044】
[比較例2]
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(A−1)の合成
反応器にトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン10質量部、水酸化カリウム6.1質量部(アクリル酸クロリド添加合計量の1.31モル当量)、メタノール100質量部を入れて攪拌し、0℃に冷却した。そこにアクリル酸クロリド3.7質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.49モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。次に、アクリル酸クロリド1.9質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.25モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。次に、アクリル酸クロリド0.9質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.12モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。さらに、アクリル酸クロリド1.0質量部(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン初期添加量の0.13モル等量)を滴下し、1時間攪拌した。得られた反応溶液の一部を採取し、濃縮してH−NMRを測定したところ、副生成物であるアクリル酸メチルの生成が確認された。得られた反応溶液をろ過し、ろ液に重合禁止剤としてメチルヒドロキノンを0.0004質量部加え、溶媒を減圧留去することで白色固体の濃縮物を得た。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出媒:メタノール20質量%/酢酸エチル80質量%の混合溶媒)によって単離精製し、目的の化合物A−1を得た。単離収率は35.2%であった。
【0045】
【表1】

※1:添加した酸ハライド(モル数)/未反応アミノアルコール(モル数)
※2:添加した塩基(モル数)/直前に添加した酸ハライド(モル数)
※3:添加した酸ハライド総計(モル数)/初期アミノアルコール(モル数)
※4:(単離した目的物モル量/添加した酸ハライドの総モル量)×100(%)
【0046】
実施例1〜5から明らかなように、本発明の製造方法を用いれば、エステル体を副生成物として得ることなく、且つ高収率でヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを製造できることがわかる。一方、比較例1のように塩基を予め所定量加え、(メタ)アクリル酸ハライドを一度に加えた場合、及び比較例2のように、塩基を予め所定量加え、(メタ)アクリル酸ハライドを逐次添加した場合には、エステル体の副生成反応が進行し、収率が著しく低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応において、アミノアルコール溶液中に、未反応のアミノアルコールに対するモル当量が0.4〜0.6になるように(メタ)アクリル酸ハライドを少なくとも2回以上に分割して逐次添加し、さらに逐次添加の各段階において、アミノアルコールと(メタ)アクリル酸ハライドとの反応終了後に、添加した(メタ)アクリル酸ハライドに対して1.0〜2.0モル当量の無機塩基を添加することを特徴とする(メタ)アクリルアミド製造方法。
NHR−CR(ROH) ・・・(1)
[式(1)中、R、R及びR3はそれぞれ同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を示す。]
【請求項2】
前記アミノアルコールに対する(メタ)アクリル酸ハライドの添加量の総計が1.0〜1.5モル当量である請求項1に記載の(メタ)アクリルアミド製造方法。
【請求項3】
反応溶媒がアルコール類である請求項1または2に記載の(メタ)アクリルアミド製造方法。

【公開番号】特開2013−95666(P2013−95666A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236630(P2011−236630)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】