ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法
【課題】重合時間の短いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造を目的とする。
【解決手段】触媒存在下で、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドを反応させて製造するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【解決手段】触媒存在下で、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドを反応させて製造するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得る方法はいくつか提案されており、その殆どが、アルキレンオキサイドと(メタ)アクリル酸との付加反応で合成される。この製法は、例えば(メタ)アクリル酸と触媒の存在下、アルキレンオキサイドを滴下しつつ加熱して反応を進行させる方法が一般的であり、反応条件や触媒等に種々の提案がされている(特許文献1、2)。
【0003】
原料となる(メタ)アクリル酸は、例えば(メタ)アクロレインを酸化触媒の存在下で酸化して製造されるが、そのような(メタ)アクリル酸にはプロトアネモニン又はその類似物質が含まれる。このプロトアネモニンは重合阻害物質として知られ、各種の精製方法で低減化することができる(特許文献3)が、依然としてプロトアネモニンを十分なレベルまで低減化することは困難であった。しかしこれまでは、そのようなプロトアネモニンを含む重合時間の長い(メタ)アクリル酸を使用して得た重合時間の長いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでも特に問題視されることは無かった。
【0004】
【特許文献1】特公昭43−26606号公報
【特許文献2】特公昭46−37805号公報
【特許文献3】特開平05−339199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、これまでは、重合時間の長い(メタ)アクリル酸を使用して製造した重合時間の長いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでも特に問題視されていなかった。しかし最近の傾向として、レンズ等の用途によっては重合までの時間がより短いものが望まれるようになってきており、重合時間の短いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造法の出現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原料の(メタ)アクリル酸のゲル化点を13分以下とすることで、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合時間を短縮できることがわかった。また、精製によりプロトアネモニンの含有量を3ppm以下とした(メタ)アクリル酸を用いることで、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合時間をより短縮することが可能であることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、重合時間の短い安定した品質のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸を用いることで、アルキレンオキサイドと反応させ、重合時間の短いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸を原料に用いることで、ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造できる。ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを原料にポリマーを製造すると、(1)重合工程における重合遅延を防ぐことができ、また(2)重合工程での重合開始剤濃度を一定にできるので、高品質なポリマーが得られる利点がある。
【0009】
本発明のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは特に限定されないが、アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。したがって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0011】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドの付加反応で製造される。
【0012】
上記付加反応に使用される触媒は公知のものを用いることができ、例えばクロムや鉄の金属塩、塩基性イオン交換樹脂、4級アンモニウム塩等が挙げられる。前記クロムや鉄の金属塩の金属塩としては、塩化クロムや塩化鉄、酢酸クロム、酢酸鉄等が挙げられる。前記塩基性イオン交換樹脂としては、三菱化学社製のHPA25等が挙げられる。前記4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライドやテトラブチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0013】
また、原料の(メタ)アクリル酸中の重合阻害物質であるプロトアネモニン含有量が多いと、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合までの時間が長くなる。このためプロトアネモニンの含有量は3ppm以下が好ましい。原料の(メタ)アクリル酸中のプロトアネモニンの含有量を3ppm以下とすることで、ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造できる。ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを原料にポリマーを製造すると、(1)重合工程における重合遅延を防ぐことができ、また(2)重合工程での重合開始剤濃度を一定にできるので、高品質なポリマーが得られる利点がある。
【0014】
本発明における原料の(メタ)アクリル酸の精製方法として、晶析法が挙げられる。例えば、原料の粗(メタ)アクリル酸溶液に、アルコールを添加し10℃以下に冷却することで、(メタ)アクリル酸結晶を析出させ、ろ過する。冷却の際の冷却速度は、遅いほどプロトアネモニン含有量のより少ない(メタ)アクリル酸が得られるので好ましい。より好ましい冷却速度は1℃/分以下である。また、晶析を繰り返し行うことで、プロトアネモニン含有量をさらに下げることもできる。
【0015】
また、本発明の(メタ)アクリル酸の精製方法として、蒸留法にて行うこともできる。蒸留法の場合はプロトアネモニンも留出するため分留によりプロトアネモニン量を下げることが必要である。例えば、理論段数で1段以上の蒸留塔を用い、低沸成分を効率的に分離除去するようにする。その際に段数を増やすことでプロトアネモニン量をさらに下げることができる。
【0016】
さらに、吸着剤を用いてプロトアネモニン含有量を下げることも可能である。この場合、酸性や塩基性のイオン交換樹脂や、シリカ、シリカアルミナ、活性白土等の無機固体などが使用できる。なかでも、強酸性のイオン交換樹脂、強塩基性のイオン交換樹脂が好適である。これらの精製法は、1種類だけでなく数種類の吸着剤を組み合わせても良く、また同じ操作を繰り返し実施しても良い。また、晶析法や蒸留法等のその他の精製方法を組み合わせることで、プロトアネモニン含有量をさらに下げることができる。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸の精製方法の中では、プロトアネモニン除去の観点から、晶析法が好ましい。また、各精製法の組み合わせ又は繰り返しの精製も非常に有効である。
【0018】
原料や触媒の仕込みモル比率は特に限定されないが、生産性の観点から(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドのモル比率は、1:10〜10:1が好ましく、より好ましくは1:2〜2:1である。触媒量は特に限定されず、反応速度と経済性の兼ね合いから、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドのうち、モル比の少ない方に対して、0.01mol%〜10mol%が好ましい。より好ましくは0.1mol%〜5mol%である。
【0019】
反応温度は特に限定されないが、反応速度と副反応抑制の観点から、0℃〜150℃が好ましく、より好ましくは、30℃〜100℃である。
【0020】
ゲル化点はゲル化までに要する時間であり、測定方法は以下となる。試験管に重合開始剤である過酸化ベンゾイル0.1gを量り取り、重合禁止剤であるMQ(メトキノン)50ppmを添加した試料10mlを加えて混合、さらに水10mlを加えて混合溶解する。65℃の恒温槽に浸漬し、熱電対を挿入する。発熱を経時的に測定すると、2回の重合発熱が観測される。第一段の発熱は重合禁止剤の添加量に依存する。第二段の発熱は試料の性質で決まり、これをゲル化点と称することとする。試料の加熱開始から第二段の温度上昇までの時間を記録する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
【0022】
実施例における製品純度、プロトアネモニン含有量の分析にはガスクロマトグラフィーを用いた。ガスクロマトグラフィーには、島津製GC−1700を、カラムはDB−FFAP(30m×0.32mm、0.25μm)を用いた。分析条件は、カラム温度が100℃/1分保持→5℃/分昇温、230℃/11分保持、INJ温度が200℃、DET温度が250℃である。
【0023】
[実施例1]
メタクロレインの酸化反応により製造されメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、理論段数5段の充填塔により精密蒸留精製した。まず低沸成分を除去し、この後106〜108℃/130〜141hPaでメタクリル酸を留出させた。これにより、ゲル化点が11分10秒、含有するプロトアネモニン量が5ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.31g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレン58.08g(1.32mol)を吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.2%、重量が157.2gであり、このもののゲル化点は14分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0024】
[実施例2]
メタクロレインの酸化反応により製造された粗メタクリル酸溶液(プロトアネモニン含有量38ppm)190gにメタノール10gを添加し、0.5℃/分の速度で7℃まで冷却して析出したメタクリル酸結晶をろ過により分離した。これにより、晶析メタクリル酸(ゲル化点:8分30秒、含有するプロトアネモニン量:1ppm以下)が得られた。この晶析(メタ)アクリル酸103.30g(1.2mol)を用い、酢酸クロム0.296g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.10g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.7%、重量が156.4gであり、このもののゲル化点は12分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0025】
[実施例3]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、強酸性イオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15、オルガノ社販売」で40℃にて吸着処理をした後、単蒸留精製した。これにより、ゲル化点が10分30秒、含有するプロトアネモニン量が2ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)を用い、酢酸クロム0.296g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.10g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.2%、重量が157.4gであり、このもののゲル化点は13分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例4]
メタクロレインの酸化反応により製造されメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、ビグリュー管を備えた蒸留装置で蒸留精製した。まず低沸成分を除去し、この後103〜118℃/115〜162hPaでメタクリル酸を留出させた。これにより、ゲル化点が12分40秒、含有するプロトアネモニン量が6ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.31g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレン58.08g(1.32mol)を吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.8%、重量が156.9gであり、このもののゲル化点は14分50秒であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0027】
[比較例1]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、単蒸留精製した。単蒸留は、粗メタクリル酸を減圧加熱し、106〜108℃/135hPaで留出した成分を分取した。これにより、ゲル化点が18分20秒、含有するプロトアネモニン量が11ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.9%、重量が157.5gであり、このもののゲル化点は21分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。結果を表1に示す。
【0028】
[比較例2]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)にシリカを添加して室温にて1時間処理し、ろ過した。これにより、ゲル化点が32分、含有するプロトアネモニン量が25ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.8%、重量が159.1gであり、このもののゲル化点は38分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。
【0029】
[比較例3]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、単蒸留精製した。単蒸留は、粗メタクリル酸を減圧加熱し、まず低沸成分を除去し、102〜116℃/121〜178hPaで留出した成分を分取した。これにより、ゲル化点が14分、含有するプロトアネモニン量が10ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.7%、重量が157.6gであり、このもののゲル化点は20分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明の方法を用いることにより、予め原料の(メタ)アクリル酸の重合性を所定の範囲となるように精製することで、重合性良好なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得ることが可能となった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得る方法はいくつか提案されており、その殆どが、アルキレンオキサイドと(メタ)アクリル酸との付加反応で合成される。この製法は、例えば(メタ)アクリル酸と触媒の存在下、アルキレンオキサイドを滴下しつつ加熱して反応を進行させる方法が一般的であり、反応条件や触媒等に種々の提案がされている(特許文献1、2)。
【0003】
原料となる(メタ)アクリル酸は、例えば(メタ)アクロレインを酸化触媒の存在下で酸化して製造されるが、そのような(メタ)アクリル酸にはプロトアネモニン又はその類似物質が含まれる。このプロトアネモニンは重合阻害物質として知られ、各種の精製方法で低減化することができる(特許文献3)が、依然としてプロトアネモニンを十分なレベルまで低減化することは困難であった。しかしこれまでは、そのようなプロトアネモニンを含む重合時間の長い(メタ)アクリル酸を使用して得た重合時間の長いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでも特に問題視されることは無かった。
【0004】
【特許文献1】特公昭43−26606号公報
【特許文献2】特公昭46−37805号公報
【特許文献3】特開平05−339199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、これまでは、重合時間の長い(メタ)アクリル酸を使用して製造した重合時間の長いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでも特に問題視されていなかった。しかし最近の傾向として、レンズ等の用途によっては重合までの時間がより短いものが望まれるようになってきており、重合時間の短いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造法の出現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原料の(メタ)アクリル酸のゲル化点を13分以下とすることで、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合時間を短縮できることがわかった。また、精製によりプロトアネモニンの含有量を3ppm以下とした(メタ)アクリル酸を用いることで、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合時間をより短縮することが可能であることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、重合時間の短い安定した品質のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸を用いることで、アルキレンオキサイドと反応させ、重合時間の短いヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸を原料に用いることで、ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造できる。ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを原料にポリマーを製造すると、(1)重合工程における重合遅延を防ぐことができ、また(2)重合工程での重合開始剤濃度を一定にできるので、高品質なポリマーが得られる利点がある。
【0009】
本発明のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは特に限定されないが、アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。したがって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0011】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドの付加反応で製造される。
【0012】
上記付加反応に使用される触媒は公知のものを用いることができ、例えばクロムや鉄の金属塩、塩基性イオン交換樹脂、4級アンモニウム塩等が挙げられる。前記クロムや鉄の金属塩の金属塩としては、塩化クロムや塩化鉄、酢酸クロム、酢酸鉄等が挙げられる。前記塩基性イオン交換樹脂としては、三菱化学社製のHPA25等が挙げられる。前記4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライドやテトラブチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0013】
また、原料の(メタ)アクリル酸中の重合阻害物質であるプロトアネモニン含有量が多いと、製品のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合までの時間が長くなる。このためプロトアネモニンの含有量は3ppm以下が好ましい。原料の(メタ)アクリル酸中のプロトアネモニンの含有量を3ppm以下とすることで、ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造できる。ゲル化点が15分以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを原料にポリマーを製造すると、(1)重合工程における重合遅延を防ぐことができ、また(2)重合工程での重合開始剤濃度を一定にできるので、高品質なポリマーが得られる利点がある。
【0014】
本発明における原料の(メタ)アクリル酸の精製方法として、晶析法が挙げられる。例えば、原料の粗(メタ)アクリル酸溶液に、アルコールを添加し10℃以下に冷却することで、(メタ)アクリル酸結晶を析出させ、ろ過する。冷却の際の冷却速度は、遅いほどプロトアネモニン含有量のより少ない(メタ)アクリル酸が得られるので好ましい。より好ましい冷却速度は1℃/分以下である。また、晶析を繰り返し行うことで、プロトアネモニン含有量をさらに下げることもできる。
【0015】
また、本発明の(メタ)アクリル酸の精製方法として、蒸留法にて行うこともできる。蒸留法の場合はプロトアネモニンも留出するため分留によりプロトアネモニン量を下げることが必要である。例えば、理論段数で1段以上の蒸留塔を用い、低沸成分を効率的に分離除去するようにする。その際に段数を増やすことでプロトアネモニン量をさらに下げることができる。
【0016】
さらに、吸着剤を用いてプロトアネモニン含有量を下げることも可能である。この場合、酸性や塩基性のイオン交換樹脂や、シリカ、シリカアルミナ、活性白土等の無機固体などが使用できる。なかでも、強酸性のイオン交換樹脂、強塩基性のイオン交換樹脂が好適である。これらの精製法は、1種類だけでなく数種類の吸着剤を組み合わせても良く、また同じ操作を繰り返し実施しても良い。また、晶析法や蒸留法等のその他の精製方法を組み合わせることで、プロトアネモニン含有量をさらに下げることができる。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸の精製方法の中では、プロトアネモニン除去の観点から、晶析法が好ましい。また、各精製法の組み合わせ又は繰り返しの精製も非常に有効である。
【0018】
原料や触媒の仕込みモル比率は特に限定されないが、生産性の観点から(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドのモル比率は、1:10〜10:1が好ましく、より好ましくは1:2〜2:1である。触媒量は特に限定されず、反応速度と経済性の兼ね合いから、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドのうち、モル比の少ない方に対して、0.01mol%〜10mol%が好ましい。より好ましくは0.1mol%〜5mol%である。
【0019】
反応温度は特に限定されないが、反応速度と副反応抑制の観点から、0℃〜150℃が好ましく、より好ましくは、30℃〜100℃である。
【0020】
ゲル化点はゲル化までに要する時間であり、測定方法は以下となる。試験管に重合開始剤である過酸化ベンゾイル0.1gを量り取り、重合禁止剤であるMQ(メトキノン)50ppmを添加した試料10mlを加えて混合、さらに水10mlを加えて混合溶解する。65℃の恒温槽に浸漬し、熱電対を挿入する。発熱を経時的に測定すると、2回の重合発熱が観測される。第一段の発熱は重合禁止剤の添加量に依存する。第二段の発熱は試料の性質で決まり、これをゲル化点と称することとする。試料の加熱開始から第二段の温度上昇までの時間を記録する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
【0022】
実施例における製品純度、プロトアネモニン含有量の分析にはガスクロマトグラフィーを用いた。ガスクロマトグラフィーには、島津製GC−1700を、カラムはDB−FFAP(30m×0.32mm、0.25μm)を用いた。分析条件は、カラム温度が100℃/1分保持→5℃/分昇温、230℃/11分保持、INJ温度が200℃、DET温度が250℃である。
【0023】
[実施例1]
メタクロレインの酸化反応により製造されメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、理論段数5段の充填塔により精密蒸留精製した。まず低沸成分を除去し、この後106〜108℃/130〜141hPaでメタクリル酸を留出させた。これにより、ゲル化点が11分10秒、含有するプロトアネモニン量が5ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.31g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレン58.08g(1.32mol)を吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.2%、重量が157.2gであり、このもののゲル化点は14分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0024】
[実施例2]
メタクロレインの酸化反応により製造された粗メタクリル酸溶液(プロトアネモニン含有量38ppm)190gにメタノール10gを添加し、0.5℃/分の速度で7℃まで冷却して析出したメタクリル酸結晶をろ過により分離した。これにより、晶析メタクリル酸(ゲル化点:8分30秒、含有するプロトアネモニン量:1ppm以下)が得られた。この晶析(メタ)アクリル酸103.30g(1.2mol)を用い、酢酸クロム0.296g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.10g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.7%、重量が156.4gであり、このもののゲル化点は12分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0025】
[実施例3]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、強酸性イオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15、オルガノ社販売」で40℃にて吸着処理をした後、単蒸留精製した。これにより、ゲル化点が10分30秒、含有するプロトアネモニン量が2ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)を用い、酢酸クロム0.296g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.10g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は98.2%、重量が157.4gであり、このもののゲル化点は13分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例4]
メタクロレインの酸化反応により製造されメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、ビグリュー管を備えた蒸留装置で蒸留精製した。まず低沸成分を除去し、この後103〜118℃/115〜162hPaでメタクリル酸を留出させた。これにより、ゲル化点が12分40秒、含有するプロトアネモニン量が6ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.31g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレン58.08g(1.32mol)を吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.8%、重量が156.9gであり、このもののゲル化点は14分50秒であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以上であり、良好であった。結果を表1に示す。
【0027】
[比較例1]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、単蒸留精製した。単蒸留は、粗メタクリル酸を減圧加熱し、106〜108℃/135hPaで留出した成分を分取した。これにより、ゲル化点が18分20秒、含有するプロトアネモニン量が11ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.9%、重量が157.5gであり、このもののゲル化点は21分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。結果を表1に示す。
【0028】
[比較例2]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)にシリカを添加して室温にて1時間処理し、ろ過した。これにより、ゲル化点が32分、含有するプロトアネモニン量が25ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.8%、重量が159.1gであり、このもののゲル化点は38分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。
【0029】
[比較例3]
メタクロレインの酸化反応により製造されたメタクリル酸(プロトアネモニン含有量38ppm)を、単蒸留精製した。単蒸留は、粗メタクリル酸を減圧加熱し、まず低沸成分を除去し、102〜116℃/121〜178hPaで留出した成分を分取した。これにより、ゲル化点が14分、含有するプロトアネモニン量が10ppmのメタクリル酸を得た。このメタクリル酸103.30g(1.2mol)に対し、酢酸クロム0.295g、重合防止剤としてHO−TEMPOのベンジルエステル体0.01gを添加した。これを1LのSUS製オートクレーブ中で酸化エチレンを58.01g(1.32mol)吹き込みながら65℃にて反応を行った。滴下終了から3時間後に反応液から残存酸化エチレンを脱気し、反応液を薄膜蒸留により精製した。留出したヒドロキシエチルメタクリレートの純度は97.7%、重量が157.6gであり、このもののゲル化点は20分であった。また発熱に伴う温度の経時変化(℃/分)をプロットした時の傾き(立ち上がり)の程度は45度以下であり、悪かった。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明の方法を用いることにより、予め原料の(メタ)アクリル酸の重合性を所定の範囲となるように精製することで、重合性良好なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得ることが可能となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒存在下で、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドを反応させることを特徴とするヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸中に含まれるプロトアネモニン含有量が3ppm以下である請求項1記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸が晶析法により精製されたものである請求項1又は2に記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項1】
触媒存在下で、ゲル化点が13分以下の(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドを反応させることを特徴とするヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸中に含まれるプロトアネモニン含有量が3ppm以下である請求項1記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸が晶析法により精製されたものである請求項1又は2に記載のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【公開番号】特開2009−143875(P2009−143875A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324651(P2007−324651)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
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