説明

ヒドロキシイソキサゾール誘導体およびこれを含有する殺菌剤

【課題】コムギ葉枯病菌を含む茎葉病害を引き起こす病原菌に対して高い防除効果を示すヒドロキシイソキサゾール誘導体を提供する。
【解決手段】本発明に係るヒドロキシイソキサゾール誘導体は、下記一般式(I)で示される。


(式中、Rは、所定の置換基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシイソキサゾール誘導体に関する。より詳しくは、農園芸用薬剤の有効成分として優れた活性を示すヒドロキシイソキサゾール誘導体などに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシイソキサゾール(化学名:3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール、製品名:タチガレン)が、イネ苗立枯病などの土壌病害を防除するための農園芸用薬剤として用いられてきている。
【0003】
特許文献1〜4には、ある種のイソキサゾール誘導体が殺菌剤の有効成分として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−077090号公報
【特許文献2】特開2002−114784号公報
【特許文献3】特表2008−525353号公報
【特許文献4】米国特許第3629430号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農業用分野で用いられる殺菌剤では、特定の薬剤を使用し続けた結果、薬剤抵抗性を獲得した菌が出現している。特にコムギの重要病害であるコムギ葉枯病では、多くの薬剤に対して耐性を有した菌が蔓延し、その防除が大きな課題となっている。また、現在用いられている殺菌剤は、効果を発揮できる病原菌が限られており、より広範な病原菌に対して活性を有する薬剤の創製が求められている。
【0006】
従来、ヒドロキシイソキサゾールおよびその誘導体は、ピシウム菌やフザリウム菌などによって引き起こされる土壌病害やイネいもち病などの一部の茎葉病害にのみ防除効果を示すことが知られている(特許文献1参照)。しかし、コムギ葉枯病菌を含めた茎葉病害を引き起こす病原菌に広く効果を発揮するヒドロキシイソキサゾールおよびその誘導体は知られていない。
【0007】
そこで、本発明は、コムギ葉枯病菌を含めた茎葉病害を引き起こす病原菌に高い防除効果を示すヒドロキシイソキサゾール誘導体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本発明者らは、ヒドロキシイソキサゾールから多数の誘導体を合成し、それらの化学構造と活性を検討した。そして、その結果、下記一般式(I)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体が優れた活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体を提供する。
【0010】
【化1】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルカルボニルオキシ基、ニトロ基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、Rは、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基、あるいは該複素環基とベンゼンとの縮合環を表す。前記複素環基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。
さらに、Rは、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、C3−C6シクロアルキル基、フェニル基およびクロロフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい直鎖、分岐鎖または環状のC1−C17アルキル基を表す。前記C1−C17アルキル基は、鎖中あるいは環中にエーテル基を有してもよい。
また、Rは、C2−C4アルキルスルフィド基、水素原子がC1−C4アルキル基で1以上置換されていてもよいアミノ基、クロロフェニル基により置換されていてもよいエテニル基、アダマンチル基、ノルボルネン基あるいはアビエチニル基も表す。)
【0011】
前記式(I)中、Rは、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基とベンゼンとの縮合環、または、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい分岐鎖または環状のC3アルキル基、あるいは、アダマンチル基であることが抗菌活性の観点から特に好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記のヒドロキシイソキサゾール誘導体を有効成分として含有する殺菌剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、式(I)で示されるR部分が下記式(Ia)または式(Ib)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体を有効成分として含有する茎葉病害用殺菌剤をも提供する。
【0014】
【化2】

【0015】
加えて、本発明は、3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾールと、下記式(III)〜(V)で示される化合物から選択される化合物と、を塩基または脱水剤の存在下あるいは加熱下にて反応させる工程を含むヒドロキシイソキサゾール誘導体の製造方法も提供する。
【0016】
【化3】

(式(III)〜(V)中、Rの定義内容は、上述の通りである。)
【0017】
本明細書では、各一般式において同一の置換基、官能基または原子を規定している符号は同一の記号を付し、その記号で示される置換等の詳細は重複して説明しない。例えば、一般式(I)において示されるRと、一般式(III)において示されているRは同一の置換基、官能基または原子を示している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るヒドロキシイソキサゾール誘導体は、コムギ葉枯病菌を含む茎葉病害を引き起こす病原菌に対して高い防除効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
また、本実施形態において、同一の用語は、特に言及しない限り、同一の意味で用いる。これは、一般式において置換基、官能基または原子を示す記号、もしくはそれらの個数を示す記号についても同様である。

1.ヒドロキシイソキサゾール誘導体
(1)第一化合物群
(2)第二化合物群
(3)第三化合物群
(4)第四化合物群
(5)第五化合物群
2.ヒドロキシイソキサゾール誘導体の製造方法
(1)溶媒
(2)塩基・酸
(3)化合物(I)の第一製造方法
(4)化合物(I)の第二製造方法
(5)化合物(I)の第三製造方法
3.農園芸用薬剤
(1)植物病害防除効果
(2)製剤

【0020】
1.ヒドロキシイソキサゾール誘導体
本発明に係る下記一般式(I)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体(以下、化合物(I)と称する)について説明する。
【0021】
【化4】

【0022】
以下、化合物(I)のRの定義内容と、化合物(I)の具体例について説明する。
【0023】
(1)第一化合物群
化合物(I)のうち、第一の化合物群のRは、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルカルボニルオキシ基、ニトロ基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよいフェニル基である。
【0024】
ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
C1−C4アルキルとしては、例えばメチル基が挙げられる。
C1−C4アルコキシ基としては、例えばメトキシ基が挙げられる。
C1−C4アルキルカルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基が挙げられる。
【0025】
第一化合物群に属する化合物(I)として、以下の具体的な化合物が例示される。なお以下の構造式は、式(I)で示されるR部分である。
【0026】
【化5】

【0027】
(2)第二化合物群
化合物(I)のうち、第二の化合物群のRは、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基、あるいは該複素環基とベンゼンとの縮合環である。前記複素環基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。Rは、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基とベンゼンとの縮合環であることが好ましい。
【0028】
第二化合物群に属する化合物(I)として、以下の具体的な化合物が例示される。なお以下の構造式は、式(I)で示されるR部分である。これら化合物のうち、化合物(I−17)と化合物(I−18)は、実施例において後述するように、特に優れた抗菌活性を示す。
【0029】
【化6】

【0030】
(3)第三化合物群
化合物(I)のうち、第三の化合物群のRは、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、C3−C6シクロアルキル基、フェニル基およびクロロフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい直鎖、分岐鎖または環状のC1−C17アルキル基である。前記C1−C17アルキル基は、鎖中あるいは環中にエーテル基を有してもよい。Rは、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい分岐鎖または環状のC3アルキル基であることが好ましい。
【0031】
ハロゲン原子としては、例えば塩素原子が挙げられる。
C1−C6アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基が挙げられる。
C3−C6シクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基が挙げられる。
【0032】
第三化合物群に属する化合物(I)として、以下の具体的な化合物が例示される。なお以下の構造式は、式(I)で示されるR部分である。これら化合物のうち、化合物(I−26)および化合物(I−27)、化合物(I−30)は、実施例において後述するように、特に優れた抗菌活性を示す。
【0033】
【化7】

【0034】
(4)第四化合物群
化合物(I)のうち、第四の化合物群のRは、C2−C4アルキルスルフィド基、水素原子がC1−C4アルキル基で1以上置換されていてもよいアミノ基、クロロフェニル基により置換されていてもよいエテニル基、アダマンチル基、ノルボルネン基あるいはアビエチニル基である。Rは、アダマンチル基であることが好ましい。
【0035】
C2−C4アルキルスルフィド基としては、例えばメチルチオプロピル基が挙げられる。
【0036】
第四化合物群に属する化合物(I)として、以下の具体的な化合物が例示される。なお以下の構造式は、式(I)で示されるR部分である。これら化合物のうち、化合物(I−37)は、実施例において後述するように、特に優れた抗菌活性を示す。
【0037】
【化8】

【0038】
(5)第五化合物群
また、本発明は、化合物(I)の類縁化合物であり、後述する殺菌剤の有効成分とされる以下の化合物をも提供する。なお以下の構造式は、式(I)で示されるR部分である。これらの化合物は、特に茎葉病害防除用の殺菌剤の有効成分として好適に用いられる。
【0039】
【化9】

【0040】
なお、上述した各化合物は、いずれもコムギ葉枯病菌を含む茎葉病害を引き起こす病原菌に対して優れた防除効果を発揮する。また、I−28およびI−34を除く化合物については、土壌病害を引き起こす病原菌に対する防除効果も併せて発揮する。さらに、多くの化合物では、コムギ葉枯病菌だけでなく、広範な病原菌に対して優れた防除効果を示す。
【0041】
2.ヒドロキシイソキサゾール誘導体の製造方法
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。製造方法の各工程において使用される溶媒、塩基および酸などは、特に言及しない限り、次のようなものを用いることができる。
【0042】
(1)溶媒
使用される溶媒は、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;石油エーテル、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられる。この他、溶媒としては、水、二硫化炭素、アセトニトリル、酢酸エチル、ピリジン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、2種類以上を混合して用いることができる。
【0043】
また、溶媒として、互いに均一な層を形成することのない溶媒からなる溶媒組成物が挙げられる。例えば、反応混合物中に、四級アンモニウム塩、クラウンエーテル、クラウンエーテルの類似物等の相間移動触媒を添加して反応を行うこともできる。この場合において、溶媒は、特に限定されないが、油相としてはベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。なお、四級アンモニウム塩には、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩などが用いられる。
【0044】
(2)塩基
溶媒には、塩基を添加してもよい。
【0045】
塩基は、特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化合物;n-ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド等のアルカリ金属の有機金属化合物;ナトリウム;カリウム、リチウム等のアルカリ金属類;リチウムジイソプロピルアミド等のアルカリ金属アミド類;トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ−7−[5.4.0]ウンデセン等の有機アミン類などが挙げられる。
【0046】
(3)化合物(I)の第一製造方法
化合物(I)は、下記化学式(II)で示される3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾールと、下記化学式(III)で示される化合物あるいは下記化学式(IV)で示される化合物と、を塩基の存在下で反応させることによって製造できる(反応式(1)・(2)参照)。以下、化学式(II)で示される3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾールを「化合物(II)」と、化学式(III)で示される化合物を「化合物(III)」と、化学式(IV)で示される化合物を「化合物(IV)」と称する。
【0047】
反応式(1)
【化10】

【0048】
反応式(2)
【化11】

【0049】
化合物(III)および化合物(IV)のRの定義内容は、上述した化合物(I)のRの定義内容と同一である。
【0050】
化合物(II)1倍モルと、化合物(III)1倍モルとが反応することで、化合物(I)が1倍モル生成される。また、化合物(II)1倍モルと、化合物(IV)1倍モルとが反応することで、化合物(I)が1倍モル生成される。
【0051】
化合物(III)の添加量は、化合物(II)1倍モルに対して1〜2倍モルであることが好ましい。また、化合物(IV)の添加量は、化合物(II)1倍モルに対して1〜2倍モルであることが好ましい。
【0052】
塩基は、特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物;炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩;水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物;トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類などを用いることができる。なお、本反応は、塩基の非存在下において行うこともできる。
【0053】
本製造工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;水などの溶媒の中から1種類または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、反応混合物に、相間移動触媒を添加して反応を行うこともできる。なお、本反応は、無溶媒で行うこともできる。
【0054】
反応温度は、−10〜120℃が好ましい。反応温度が−10℃未満の場合には反応速度が遅くなり、120℃より高温の場合には副反応が進行しやすくなる。反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には1〜24時間の範囲とされる。
【0055】
(4)化合物(I)の第二製造方法
また、化合物(I)は、化合物(II)と、下記化学式(V)で示される化合物と、を脱水剤の存在下で反応させることによっても製造できる(反応式(3)参照)。以下、記化学式(V)で示される化合物を「化合物(V)」と称する。
【0056】
反応式(3)
【化12】

【0057】
化合物(V)のRの定義内容は、上述した化合物(I)のRの定義内容と同一である。
【0058】
化合物(II)1倍モルと、化合物(V)1倍モルとが反応することで、化合物(I)が1倍モル生成される。
【0059】
化合物(V)の添加量は、化合物(II)1倍モルに対して1〜3倍モルであることが好ましい。
【0060】
脱水剤は、特に限定されないが、好適にはジクロロヘキシルカルボジイミド、1−アルキルー2−ハロピリジニウム塩、ジイソプロピルカルボジイミド、1,1−カルボニルジイミダゾール、1−エチルー3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジー2-ピリジル炭酸塩、塩化ジメトキシー1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、塩化ジフェニルホスフィニルなどを用いることができる。
【0061】
溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類などの溶媒の中から1種類または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、反応混合物に、相間移動触媒を添加して反応を行うこともできる。
【0062】
反応温度は、0〜100℃が好ましい。反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には1〜24時間の範囲とされる。
【0063】
(5)化合物(I)の第三製造方法
化合物(III)を用いる場合、化合物(II)と化合物(III)とを加熱下で反応させることによって化合物(I)を製造することもできる(反応式(4)参照)。
【0064】
反応式(4)
【化13】

【0065】
化合物(II)1倍モルと、化合物(III)1倍モルとが反応することで、化合物(I)が1倍モル生成される。
【0066】
化合物(III)の添加量は、化合物(II)1倍モルに対して1〜3倍モルであることが好ましい。
【0067】
本製造工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類などの溶媒の中から1種類または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、反応混合物に、相間移動触媒を添加して反応を行うこともできる。なお、本反応は、無溶媒で行うこともできる。
【0068】
反応温度は、−10〜120℃が好ましい。反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には1〜24時間の範囲とされる。
【0069】
3.農園芸用薬剤
本発明に係るヒドロキシイソキサゾール誘導体(化合物(I))の農園芸用薬剤としての有用性について説明する。
【0070】
(1)植物病害防除効果
化合物(I)は、広汎な植物病害に対して防除効果を呈し、従来のヒドロキシイソキサゾール(化学名:3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール、製品名:タチガレン)と異なり、土壌病害のみならずコムギ葉枯病を含む広範な茎葉病害に対しても効果を示す。
【0071】
また、化合物(I)の類縁化合物である上記式(Ia)または式(Ib)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体についても、土壌病害のみならずコムギ葉枯病を含む広範な茎葉病害に対しても効果が確認されている。
【0072】
適用病害の例として以下の病害が挙げられる。
【0073】
コムギ葉枯病 (Septoria tritici)、ダイズさび病(Phakopsora pachyrhizi、Phakopsora meibomiae)、イネいもち病 (Pyricularia grisea)、イネごま葉枯病 (Cochliobolus miyabeanus)、イネ白葉枯病 (Xanthomonas oryzae)、イネ紋枯病 (Rhizoctonia solani)、イネ小黒菌核病 (Helminthosporium sigmoideun)、イネばか苗病 (Gibberella fujikuroi)、イネ苗立枯病 (Pythium aphanidermatum)、リンゴうどんこ病 (Podosphaera leucotricha)、リンゴ黒星病 (Venturia inaequalis)、リンゴモリニア病 (Monilinia mali)、リンゴ斑点落葉病 (Alternaria alternata)、リンゴ腐乱病 (Valsa mali)、ナシ黒斑病 (Alternaria kikuchiana)、ナシうどんこ病 (Phyllactinia pyri)、ナシ赤星病 (Gymnosporangium asiaticum)、ナシ黒星病 (Venturia nashicola)、ブドウうどんこ病 (Uncinula necator)、ブドウべと病 (Plasmopara viticola)、ブドウ晩腐病 (Glomerella cingulata)、オオムギうどんこ病 (Erysiphe graminis f. sp hordei)、オオムギ黒さび病 (Puccinia graminis)、オオムギ黄さび病 (Puccinia striiformis)、オオムギ斑葉病 (Pyrenophora graminea)、オオムギ雲形病 (Rhynchosporium secalis)、コムギうどんこ病 (Erysiphe graminis f. sp tritici)、コムギ赤さび病 (Puccinia recondita)、コムギ黄さび病 (Puccinia striiformis)、コムギ眼紋病 (Pseudocercosporella herpotrichoides)、コムギ赤かび病 (Fusarium graminearum、Microdochium nivale)、コムギふ枯病(Phaeosphaeria nodorum)、ウリ類うどんこ病 (Sphaerotheca fuliginea)、ウリ類炭疸病 (Colleto
trichum lagenarium)、キュウリべと病 (Pseudoperonospora cubensis)、キュウリ灰色疫病 (Phytophthora capsici)、トマトうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、トマト輪紋病 (Alternaria solani)、ナスうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、イチゴうどんこ病 (Sphaerotheca humuli)、タバコうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、テンサイ褐斑病 (Cercospora beticola)、トウモロコシ黒穂病 (Ustillaga maydis)、核果類果樹の灰星病 (Monilinia fructicola)、種々の作物をおかす灰色かび病 (Botrytis cinerea)、菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum)。
【0074】
ブドウさび病(Phakopsora ampelopsidis)、スイカつる割病(Fusarium oxysporum f.sp.niveum)、キュウリつる割病(Fusarim oxysporum f.sp.cucumerinum)、ダイコン萎黄病(Fusarium oxysporum f.sp.raphani)、タバコ赤星病(Alternaria longipes)、ジャカイモ夏疫病(Alternaria solani)、ダイズ褐紋病(Septoria glycines)、ダイズ紫斑病(Cercospora kikuchii)、コムギ紅色雪腐病菌(Microdochium nivale)、コムギ立枯れ病菌(Gaeumannomyces graminis)。
【0075】
また、適用植物の例としては、野生植物、植物栽培品種、異種交配もしくは原形質融合などの従来の生物育種によって得られる植物および植物栽培品種、遺伝子操作によって得られる遺伝子組み換え植物および植物栽培品種が挙げられる。遺伝子組み換え植物および植物栽培品種としては、例えば、除草剤耐性作物、殺虫性タンパク産生遺伝子を組み込んだ害虫耐性作物、病害に対する抵抗性誘導物質産生遺伝子を組み込んだ病害耐性作物、食味向上作物、収量向上作物、保存性向上作物、収量向上作物等が挙げられる。遺伝子組み換え植物栽培品種としては、具体的に、ROUNDUP READY、LIBERTY LINK、CLEARFIELD、YIE
LDGARD、HERCULEX、BOLLGARD等の登録商標を含むものが挙げられる。
【0076】
(2)製剤
化合物(I)は、単独で、あるいは固体担体、液体担体、界面活性剤等の製剤補助剤と混合して粉剤、水和剤、粒剤、乳剤などの種々の形態に製剤して使用される。
【0077】
これらの製剤は、有効成分として化合物(I)を、0.1〜95重量%、好ましくは0.5〜90重量%、より好ましくは2〜80重量%含まれるように製剤する。
【0078】
固体坦体には、タルク、カオリン、ベンナイト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレーなどを用いることができる。液体希釈剤には、水、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコールなどが用いられる。界面活性剤は、その効果により使い分けるのがよく、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどが、分散剤として、リグニンスルホン酸塩、ジブチルナフタリンスルホン酸塩などが、湿潤剤として、アルキルスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩などが使用できる。
【0079】
製剤には、そのまま使用するものと水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものとがある。希釈して使用する場合、化合物(I)の濃度は0.001〜1.0%の範囲が望ましい。また、化合物(I)の使用量は、畑、田、果樹園、温室などの農園芸地1haあたり、20〜5000g、より好ましくは50〜2000gである。使用濃度および使用量は剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物等によっても異なるため、上記の範囲にこだわることなく増減することが可能である。
【0080】
さらに、化合物(I)は他の有効成分、例えば以下に例示するような殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤と組み合わせ、農園芸用薬剤としての性能を高めて使用することもできる。
【0081】
<抗菌性物質>
アシベンゾラSメチル、2−フェニルフェノール(OPP)、アザコナゾール、アゾキシストロビン、アミスルブロム、ビキサフェン、ベナラキシル、ベノミル、ベンチアバリカルブ-イソプロピル、ビカルボネイト、ビフェニル、ビテルタノール、ブラスチシジン−S、ボラックス、ボルドー液、ボスカリド、ブロムコナゾール、ブロノポール、ブピリメート、セックブチラミン、カルシウムポリスルフィド、カプタフォル、キャプタン、カルベンダジム、カルボキシン、カルプロパミド、キノメチオネート、クロロネブ、クロロピクリン、クロロタロニル、クロゾリネート、シアゾファミド、シフルフェナミド、シモキサニル、シプロコナゾール、シプロジニル、ダゾメット、デバカルブ、ジクロフルアニド、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジフェノコナゾール、ジフルメトリン、ジメトモルフ、ジメトキシストロビン、ジニコナゾール、ジノカップ、ジフェニルアミン、ジチアノン、ドデモルフ、ドジン、エディフェンフォス、エポキシコナゾール、エタポキサム、エトキシキン、エトリジアゾール、エネストロブリン、ファモキサドン、フェナミドン、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェノキサニル、フェンピクロニル、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、フェンチン、フェルバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルモルフ、フルオロミド、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルトラニル、フルトリアフォル、フォルペット、フォセチル−アルミニウム、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、フルオピコリド、フルオピラム、グアザチン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサコナゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イミノクタジン、イプコナゾール、イプロベンフォス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロチオラン、イソピラザム、イソチアニル、カスガマイシン、銅調製物例えば水酸化銅、ナフテン酸銅、オキシ塩化銅、硫酸銅、酸化銅、オキシン−銅、クレゾキシムメチル、マンコカッパー、マンコゼブ、マネブ、マンジプロパミド、メパニピリム、メプロニル、メタラキシル、メトコナゾール、メチラム、メトミノスウトロビン、ミルジオマイシン、ミクロブタニル、ニトロタル−イソプロピル、ヌアリモル、オフレース、オキサジキシル、オキソリニック酸、オキスポコナゾール、オキシカルボキシン、オキシテトラサイクリン、ペフラゾエート、オリサストロビン、ペンコナゾール、ペンシクロン、ペンチオピラド、ピリベンカルブ、フサライド、ピコキシストロビン、ピペラリン、ポリオキシン、プロベナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、プロピコナゾール、プロピネブ、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラクロストロビン、ピラゾフォス、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピロキロン、キノキシフェン、キントゼン、シルチオファム、シメコナゾール、スピロキサミン、硫黄および硫黄調製物、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チフルザミド、チオファネート−メチル、チラム、チアジニル、トルクロフォス−メチル、トリルフルアニド、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、バリダマイシン、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、ゾキサミドアミスルブロム、セダキサン、フルチアニル、バリフェナール、アメトクトラジン、ジモキシストロビン、メトラフェノン、ヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブなど。
【0082】
<殺虫剤/殺ダニ剤/殺線虫剤>
アバメクチン、アセフェート、アクリナトリン、アラニカルブ、アルジカルブ、アレトリン、アミトラズ、アベルメクチン、アザジラクチン、アザメチフォス、アジンフォス−エチル、アジンフォス−メチル、アゾサイクロチン、バシルス・フィルムス、バシルス・ズブチルス、バシルス・ツリンジエンシス、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、ベンスルタップ、ベンゾキシメイト、ビフェナゼイト、ビフェントリン、ビオアレトリン、ビオレスメトリン、ビストリフルロン、ブプロフェジン、ブトカルボキシン、ブトキシカルボキシン、カズサフォス、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、カータップ、CGA 50439、クロルデイン、クロレトキシフォス、クロルフェナピル、クロルフェンビンフォス、クロルフルアズロン、クロルメフォス、クロルピリフォス、クロルピリフォスメチル、クロマフェノザイド、クロフェンテジン、クロチアニジン、クロラントラリニプロール、コウンパフォス、クリオライト、シアノフォス、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シヘキサチン、シペルメトリン、シフェノトリン、シロマジン、シアザピル、シエノピラフェン、DCIP、DDT、デルタメトリン、デメトン−S−メチル、ジアフェンチウロン、ジアジノン、ジクロロフェン、ジクロロプロペン、ジクロルボス、ジコフォル、ジクロトフォス、ジシクラニル、ジフルベンズロン、ジメトエート、ジメチルビンフォス、ジノブトン、ジノテフラン、エマメクチン、エンドスルファン、EPN、エスフェンバレレート、エチオフェンカルブ、エチオン、エチプロール、エトフェンプロックス、エトプロフォス、エトキサゾール、ファムフル、フェナミフォス、フェナザキン、フェンブタチンオキシド、フェニトロチオン、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フェノキシカルブ、フェンプロパトリン、フェンピロキシメート、フェンチオン、フェンバレレート、フイプロニル、フロニカミド、フルアクロピリム、フルシクロクスロン、フルシトリネート、フルフェノクスロン、フルメトリン、フルバリネート、フルベンジアミド、フォルメタネート、フォスチアゼート、ハルフェンプロクス、フラチオカルブ、ハロヘノジド、ガンマ−HCH、ヘプテノフォス、ヘキサフルムロン、ヘキシチアゾックス、ヒドラメチルノン、イミダクロプリド、イミプロトリン、インドキサカルブ、イソプロカルブ、イソキサチオン、ルフェヌロン、マラチオン、メカルバム、メタム、メタミドフォス、メチダチオン、メチオカルブ、メトミル、メトプレン、メトスリン、メトキシフェノジド、メトルカルブ、ミルベメクチン、モノクロトフォス、ナレド、ニコチン、ニテンピラム、ノバルロン、ノビフルムロン、オメトエート、オキサミル、オキシデメトンメチル、パラチオン、パーメトリン、フェントエート、フォレート、フォサロン、フォスメット、フォスファミドン、フォキシム、ピリミカルブ、ピリミフォスメチル、プロフェノフォス、プロポクスル、プロチオフォス、ピメトロジン、ピラクロフォス、ピレスリン、ピリダベン、ピリダリル、ピリミジフェン、ピリプロキシフェン、ピリフルキナゾン、ピリプロール、キナルフォス、シラフルオフェン、スピノサド、スピロジクロフェン、スピロメシフェン、スピロテトラマット、スルフラミド、スルフォテップ、SZI-121、テブフェノジド、テブフェンピラド、テブピリムフォス、テフルベンズロン、テフルトリン、テメフォス、テルブフォス、テトラクロルビンフォス、チアクロプリド、チアメトキサム、チオジカルブ、チオファノックス、チオメトン、トルフェンピラド、トラロメトリン、トラロピリル、トリアザメート、トリアゾフォス、トリクロルフオン、トリフルムロン、バミドチオン、バリフェナル、XMC、キシリルカルブ、イミシアホス、レピメクチンなど。
【0083】
<植物成長調節剤>
アンシミドール、6−ベンジルアミノプリン、パクロブトラゾール、ジクロブトラゾール、ウニコナゾール、メチルシクロプロペ
ン、メピコートクロリド、エセフォン、クロルメコートクロライド、イナベンフィド、プロヘキサジオンおよびその塩、トリネキサパックエチル等。また、植物ホルモンとしてのジャスモン酸や、ブラシノステロイド、ジベレリンなど。
【0084】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0085】
以下、製造例、製剤例、試験例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り以下の製造例、製剤例および試験例に限定されるものではない。以下の製造例等で使用される化合物は、適宜、市販品を用いることができる。
【0086】
1.第一製造方法
<製造例1>
5-Methyl-3-isoxazolyl 1-adamantylcarboxylate(化合物(I−37))
ヒドロキシイソキサゾール(1)(99 mg, 1.0 mmol)とトリエチルアミン(110 mg)をアセトニトリル(10 ml)に溶かし、氷水で冷やした。アセトニトリル溶液を撹拌しながら、溶液に1−アダマンタンカルボニルクロリド(199 mg, 1.0 mmol)を溶かしたアセトニトリル溶液(5 ml)を滴下した。10分後室温に戻し、さらに5時間撹拌を続けた。アセトニトリルを減圧留去した残渣は水洗後結晶化した。結晶を濾取し、濾紙上で水洗し、乾燥した。結晶を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチルに不溶の少量の固体を濾去した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:酢酸エチル/ヘキサン(1:10〜1:5))を用いて目的物を分離した。物性値を「表1」に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
なお、目的化合物の物性値(融点、IRスペクトルおよびNMRスペクトル)の測定は、以下の「表2」に示す条件で行った。
【0089】
【表2】

【0090】
同様の方法により「表1」に示す化合物を合成した。
【0091】
2.第二製造方法
<製造例2>
5-Methyl-3-isoxazolyl 2-pyridinecarboxylate(化合物(I−11))
ヒドロキシイソキサゾール(1)(99 mg, 1.0 mmol), pyridine-2-carboxylic acid (123 mg, 1.0 mmol), N-(3-dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbodiimide hydrochlorid (191 mg, 1.0 mmol)および4,4-dimethylaminopyridine (133 mg, 1.1 mmol)を20 mlのジクロロメタンに懸濁し、室温で12時間撹拌した。10 mlの1%HCl水溶液と20 mlのジクロロメタンを反応液に加え、ジクロロメタン相を分別した。ジクロロメタン溶液を水、1%NaOH水溶液、水の順序で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥した。ジクロロメタンを留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:酢酸エチル/ヘキサン(1:10〜1:5))を用いて残渣から目的物を分離した。再結晶はエーテル/ヘキサン(1:1)で行なった。物性値を「表3」に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
同様の方法により「表3」に示す化合物を合成した。
【0094】
3.第三製造方法
<製造例3>
5-Methyl-3-isoxazolyl benzoate(化合物(I−9))
ヒドロキシイソキサゾール(1)(198 mg, 2.0 mmol)と塩化ベンゾイル(281 mg, 2.0 mmol)をトルエン(20 ml)に溶かした溶液を3時間加熱還流した。トルエンを減圧留去した後、残渣に水を加え、固体を濾取した。結晶を濾紙上で水洗し、乾燥した後、ヘキサンで洗った。物性値を「表4」に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
同様の方法により「表4」に示す化合物を合成した。
【0097】
さらに、製造例1〜3のいずれかと同様の方法により「表5」に示す化合物を合成した。
【0098】
【表5】

【0099】
次に、製剤例と試験例を示す。なお、担体(希釈剤)および助剤、その混合比は広い範囲で変更し得るものとする。各製剤例の「部」は重量部を表す。
【0100】
<製剤例1(水和剤)>
化合物(I−37) 50 部
リグニンスルホン酸塩 5 部
アルキルスルホン酸塩 3 部
珪藻土 42 部
を粉砕混合して水和剤とし、水で希釈して使用した。
【0101】
<製剤例2(粉剤)>
化合物(I−11) 3 部
クレー 40 部
タルク 57 部
を粉砕混合し、散粉として使用した。
【0102】
<製剤例3(粒剤)>
化合物(I−9) 5 部
ベンナイト 43 部
クレー 45 部
リグニンスルホン酸塩 7 部
を均一に混合しさらに水を加えて練り合わせ、押し出し式造粒機で粒状に加工乾燥して粒剤とした。
【0103】
<製剤例4(乳剤)>
化合物(I−37) 20 部
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル 10 部
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 3 部
キシレン 67 部
を均一に混合溶解して乳剤とした。
【0104】
<試験例1:病原菌および有害微生物に対する抗菌性試験>
本試験例では、各種植物病原性糸状菌および工業用材料有害微生物に対する抗菌性を試験した。
【0105】
ジメチルスルホキシドに溶解した化合物溶液を60℃前後のPDA培地(ポテト−デキストロース−アガー培地)に加えよく混合し、シャーレ内に流し固化させ、所定濃度の化合物を含む平板培地を作製した。
予め平板培地上で培養した供試菌を直径4mmのコルクボーラーで打ち抜き,上記の化合物含有平板培地上に接種した。
接種後、各菌の生育適温にて1〜14日間培養(表6参照)し、菌そう直径を測定し菌の生育程度を調べた。
化合物含有平板培地上で得られた菌の生育程度を、化合物無添加区における菌の生育程度と比較して、下記式により菌糸伸長抑制率を求めた。
R=100(dc−dt)/dc
(式中、Rは菌糸伸長抑制率(%)、dcは無処理平板上菌そう直径、dtは化合物処理平板上菌そう直径、をそれぞれ示す)
【0106】
【表6】

【0107】
以下の基準により、抗菌性を評価した。結果を「表7」に示す。
5:菌糸伸長抑制率が50%以上のもの
4:菌糸伸長抑制率が50%未満40%以上のもの
3:菌糸伸長抑制率が40%未満30%以上のもの
2:菌糸伸長抑制率が30%未満20%以上のもの
1:菌糸伸長抑制率が20%未満10%以上のもの
0:菌糸伸長抑制率が10%未満のもの
【0108】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係るヒドロキシイソキサゾール誘導体は、茎葉病害を引き起こす病原菌を防除するための農園芸用薬剤の有効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体。

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルカルボニルオキシ基、ニトロ基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、Rは、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基、あるいは該複素環基とベンゼンとの縮合環を表す。前記複素環基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。
さらに、Rは、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、C3−C6シクロアルキル基、フェニル基およびクロロフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい直鎖、分岐鎖または環状のC1−C17アルキル基を表す。前記C1−C17アルキル基は、鎖中あるいは環中にエーテル基を有してもよい。
また、Rは、C2−C4アルキルスルフィド基、水素原子がC1−C4アルキル基で1以上置換されていてもよいアミノ基、クロロフェニル基により置換されていてもよいエテニル基、アダマンチル基、ノルボルネン基あるいはアビエチニル基も表す。)
【請求項2】
前記式(I)中、Rが、環中に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の5または6員複素環基とベンゼンとの縮合環、または、
ハロゲン原子、C1−C6アルキル基およびフェニル基から選択される同一または異なる1以上の置換基により置換されていてもよい分岐鎖または環状のC3アルキル基、あるいは、
アダマンチル基である請求項1に記載のヒドロキシイソキサゾール誘導体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒドロキシイソキサゾール誘導体を有効成分として含有する殺菌剤。
【請求項4】
下記式(Ia)または式(Ib)で示されるヒドロキシイソキサゾール誘導体を有効成分として含有する茎葉病害用殺菌剤。

【請求項5】
3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾールと、下記式(III)〜(V)で示される化合物から選択される化合物と、を塩基または脱水剤の存在下あるいは加熱下にて反応させる工程を含むヒドロキシイソキサゾール誘導体の製造方法。

(式(III)〜(V)中、Rの定義内容は、請求項1と同様である。)

【公開番号】特開2012−219019(P2012−219019A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82866(P2011−82866)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】