説明

ヒドロキシプロリン誘導体の製造法

【課題】医薬や農薬の原料として有用であるヒドロキシプロリン誘導体を安価な原料を用いて簡便かつ収率よく工業的に適した製造方法の提供。
【解決手段】ヒドロキシプロリンをエステル化した後に、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩から選ばれる、少なくとも1種類以上の塩基共存下においてN−アシル化して一般式(2)


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、Rは炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基のいずれかを示す)で表されるヒドロキシプロリン誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬や農薬の原料として有用なヒドロキシプロリン誘導体の工業的に有利な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシプロリン誘導体の製造法としてはトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを出発原料とし、N−アシル化した後、エステル化することでトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン誘導体を得る方法が示されている(特開2005−112761号公報実施例)。
【0003】
【化1】

【0004】
特許文献1記載の方法は、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンを誘導化する際、アミノ基、カルボキシル基の順で誘導化している。この方法はアミノ基の誘導化は水溶液系で行い、次のカルボキシル基の誘導化は非水溶液系で行うため、抽出を行い、さらに共沸脱水を行い系内から水を除くため、工程数、及び溶媒使用量が多い。また、N位を誘導化した化合物はトルエン等の芳香族炭化水素に対しては溶解度が低いため、抽剤には高価なテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)やシクロペンチルメチルエーテル(以下、CPMEと略す)等のエーテル系溶媒を使用する必要があり、製造コストが高かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、工業的に簡便かつ安価なヒドロキシプロリン誘導体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、上記目標を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわちヒドロキシプロリンをエステル化して一般式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)に示される化合物にした後、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩から選ばれる、少なくとも1種類以上の塩基共存下において、N−アシル化して一般式(2)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、Rは炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基のいずれかを示す)で表されるヒドロキシプロリン誘導体を製造するヒドロキシプロリン誘導体の製造法である。
【発明の効果】
【0013】
ヒドロキシプロリンを出発原料とし、安価な原料を用いて簡便かつ収率よく工業的に適した方法でヒドロキシプロリン誘導体を得られる。本発明により得られたヒドロキシプロリン誘導体は、医薬や農薬の原料として有用である。
【0014】
本発明の方法により、溶媒費用の大幅削減と工程数の削減が可能であり、さらに従来の方法より高い収率でヒドロキシプロリン誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の原料であるヒドロキシプロリンはトランス体、シス体、またD体、L体のいずれであっても同様に使用することができ、得られる化合物についても原料と同じ立体関係は保持される。例えば、トランス−(2S,4R)−ヒドロキシプロリンから得られる、ヒドロキシプロリン誘導体の立体配置は必ず(2S,4R)である。
【0016】
本発明は、カルボキシル基をエステル化するエステル化工程、アミノ基を誘導化するN−アシル化の工程から構成される。収率よくヒドロキシプロリン誘導体を得るには、ヒドロキシプロリンをエステル化し、次いでN−アシル化する。
【0017】
以下、エステル化、N−アシル化の各工程の詳細について説明する。
【0018】
<エステル化>
本発明では、ヒドロキシプロリンをエステル化する。
【0019】
エステル化は、好ましくは、ヒドロキシプロリンをアルコール中で塩化チオニルを用いて反応させる。この際、エステル化に用いるアルコールとしては、炭素数が1〜6のアルキルアルコール、アリールアルコール、アラルキルアルコールのいずれかを用いる。エステル化に用いるアルコールは、好ましくは、炭素数が1〜6のアルキルアルコールを用いる。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールなどが好ましい。またこの時、反応に関与しない脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などの他の有機溶媒が混在していても問題ない。
【0020】
エステル化反応において、使用するアルコールの量は、好ましくは、1〜30モル倍量であり、より好ましくは5〜25モル倍量、さらにより好ましくは10〜20モル倍量である。
【0021】
好ましく使用する塩化チオニルの量は、0.2〜2.0モル倍量が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モル倍量である。また塩化チオニルの滴下温度は0〜50℃、好ましくは20〜30℃である。添加後は温度を30〜80℃、好ましくは50〜60℃に昇温して熟成する。熟成時間は反応温度によって異なるため一概に言えないが、通常1〜10時間、好ましくは3〜5時間である。
【0022】
本発明では、ヒドロキシプロリンをエステル化して一般式(1)
【0023】
【化4】

【0024】
に示される化合物を得る。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。具体的には、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0025】
エステル反応の終了は高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略す)等の分析により、原料であるヒドロキシプロリンの消失を確認することが好ましい。
【0026】
エステル反応の終了後は減圧下で未反応のアルコールを留去させて系内の液量を、使用したヒドロキシプロリンに対して2〜3重量倍に濃縮することが好ましい。このときアルコールが過剰に残らないようにすると、後の抽出工程での効率が良い。
【0027】
<N−アシル化>
本発明では、エステル反応に次いでN−アシル化反応を行う
N−アシル化は、好ましくは、塩基共存下でアシルハライド、もしくは二炭酸ジアルキルエステル等のアシル化試薬と反応させるが、原料を仕込む順番としては、エステル化した粗体に塩基、水の順で加え、次いでアシル化試薬を加えることが好ましい。
【0028】
本発明では、好ましくは、まずエステル化で得られた粗体中に塩基と水を加えて中和する。このとき反応に影響しない有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、THF、CPME等のエーテル、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などを加えてもよい。またこの時、温度が高いとエステル部分が加水分解を受けるため、好ましくは、−10〜30℃、より好ましくは0〜10℃の範囲で中和を行うことが好ましい。
【0029】
本発明では、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩から選ばれる、少なくとも1種類以上の塩基共存下においてN−アシル化を行う。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物はエステル部分の加水分解を引き起こすため適さない。
【0030】
塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が好ましい。より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムであり、特に好ましくは炭酸ナトリウムである。塩基は水溶液や固体のままでも反応に使用することができる。また塩基の使用量としてはヒドロキシプロリンに対して1〜3モル倍量用いることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.0モル倍量である。
【0031】
N−アシル化する時のアシル化試薬の使用量は、好ましくは、0.9〜1.5モル倍量、より好ましくは1.0〜1.2モル倍量、さらにより好ましくは1.05〜1.10モル倍量であり、アシル化試薬の添加時の温度は、好ましくは、−10〜30℃、より好ましくは0〜10℃である。
【0032】
また系内の温度を保つため、アシル化試薬の添加方法は滴下による方法が好ましい。滴下終了後は、好ましくは、温度10〜40℃、より好ましくは20〜30℃に昇温して熟成する。熟成時間は、通常1〜10時間、好ましくは3〜5時間である。
【0033】
使用するアシル化試薬としては、アルキルカルボニルクロリド、アルコキシカルボニルクロリド、アリールカルボニルクロリド、アラルキルオキシカルボニルクロリド、アリールオキシカルボニルクロリド、二炭酸ジアルキルエステル等を用いることができる。アシル化試薬は、好ましくは、アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、ベンジルオキシカルボニルクロリド、二炭酸ジtert−ブチルエステルであり、特に好ましくは、ベンジルオキシカルボニルクロリドを用いることができる。
【0034】
本発明では、N−アシル化反応の終了はHPLC等の分析により、原料であるヒドロキシプロリンエステルの消失を確認することが好ましい。
【0035】
本発明では、ヒドロキシプロリンをエステル化した後、N−アシル化して一般式(2)
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、Rは炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基のいずれかを示す)で表されるヒドロキシプロリン誘導体を製造する。Rは、好ましくはアセチル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、特に好ましくはベンジルオキシカルボニル基である。
【0038】
ヒドロキシプロリン誘導体は、既知の方法を組み合わせることで分離することができるが、好ましくは、以下に有機溶媒を用いた抽出により分離する。
【0039】
有機溶媒としてはジエチルエーテル、THF、CPME等のエーテル、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の使用が好ましいが、抽出効率や経済性を考慮するとTHF、トルエンがより好ましく、特に好ましくはトルエンである。これらの溶媒は通常単独で用いるが、2種類以上の混合物であってもよい。得られたヒドロキシプロリン誘導体の溶液は必要に応じて、濃縮や蒸留、もしくは晶析を行うことによって、より純度の高い製品を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下実施例により本発明を説明する。なお実施例において、反応液の組成分析はHPLCで分析した。分析条件は対象物によって異なるため一律には記載できないが、代表例としてトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンの分析条件を記載する。
【0041】
<HPLC分析条件>
カラム:CAPCELL PAK C18(SG120),5μm 150mm*4.6mmφ(資生堂)
移動層A:5mMドデシル硫酸ナトリウム+20mMリン酸緩衝液(pH2.8調整)
移動層B:アセトニトリル
A/B=80/20(10分)−10分→45/55(25分)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出器:UV 210nm
保持時間 1.8分:トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン
4.1分:トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル
8.7分:トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル
また、実施例で使用した試薬は、特に注記のない限り市販の試薬1級グレード品を使用した。
【0042】
実施例1
温度計、ジムロート、攪拌機を備えた3000mlの4つ口フラスコにメタノール1771g、トランス−L−ヒドロキシプロリン354g(2.70モル)を加えた。15℃に冷却し、攪拌しながら滴下ロートを用いて塩化チオニル193gを1時間かけて滴下した。滴下終了後60℃に昇温して5時間熟成した。次いで温度を保ちながら13kPaで減圧濃縮でメタノールを留出させ、スラリーを得た。スラリー中のトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの含量は2.58モル(収率95.7%)であった。
【0043】
スラリー全量に水354gと炭酸ナトリウム358gを添加した。温度を10℃に保ちながら滴下ロートを用いてベンジルオキシカルボニルクロリド484gを3時間かけて滴下添加した。滴下終了後は20℃で2時間反応熟成した後、トルエン531gを加え分液してトランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルを抽出した。分液した水層側からはさらにトルエン177gを加えることで水層中のトランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルを抽出・回収した。分液した2種類のトルエン層は混合した後、60℃で8kPaの減圧下で濃縮し、トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの粗体799gを得た。
【0044】
粗体中のトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの含量は2.41モル(収率91.6%)であった。また副生したベンジルアルコールと目的物の比率は0.003(area/area)であった。トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は88%であった。
【0045】
実施例2
実施例1と同様の操作で得た、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル0.18g(1.0mmol)に水2.0gを加え、炭酸水素ナトリウム0.17g(2.1mmol)を加えた。さらに氷冷下でベンジルオキシカルボニルクロリド0.15gを加え、25℃で2時間熟成した。
【0046】
反応後のサンプルを分析したところ、トランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの収率は87%、副生したベンジルアルコールと目的物の比率は、0.005(area/area)であった。トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は83%であった。
【0047】
比較例1
実施例1と同様の操作で得た、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル0.36g(2.0mmol)に水2.0gを加え、25%水酸化ナトリウム水溶液0.3g(4.1mmol)を加えた。さらに氷冷下でベンジルオキシカルボニルクロリド0.3gを加え、25℃で2時間熟成した。
【0048】
反応後のサンプルを分析したところ、トランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの収率は57%、副生したベンジルアルコールと目的物の比率は、0.211(area/area)であった。トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は54%であった。
【0049】
比較例2
実施例1と同様の操作で得た、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル0.36g(2.0mmol)にトルエン2.0gを加え、トリエチルアミン0.2g(4.1mmol)を加えた。さらに氷冷下でベンジルオキシカルボニルクロリド0.3gを加え、25℃で2時間熟成した。
【0050】
反応後のサンプルを分析したところトランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの収率は26%、副生したベンジルアルコールと目的物の比率は0.175(area/area)であった。トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は25%であった。
【0051】
比較例3
実施例1と同様の操作で得た、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステル0.36g(2.0mmol)にメタノール2.0gを加え、トリエチルアミン0.2g(4.1mmol)を加えた。さらに氷冷下でベンジルオキシカルボニルクロリド0.3gを加え、25℃で2時間熟成した。
【0052】
反応後のサンプルを分析したところトランス−ベンジルオキシカルボニル−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルの収率は68%、副生したベンジルアルコールと目的物の比率は0.088(area/area)であった。トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は65%であった。
【0053】
比較例4
特許文献1記載の方法を追試し、収率を確認した。
【0054】
攪拌機、滴下ロート、ジムロート、温度計、pHメーターを装着した2000 mlの4口フラスコに、L−ヒドロキシプロリン132.0 g(1.0モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液86g(1.03モル)、水655gを仕込み、室温にて撹拌した。pHを11.5〜12.0に保ちながら、ベンジルオキシカルボニルクロリド179g(1.05モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液84gを交互に滴下した。滴下終了後1.5時間撹拌したのちトルエン300gを加え、分液してトルエン層を除去した。水層にCPME600gを加え、撹拌しながら95%硫酸63.8gを加えた。撹拌を停止し、分液して水層を除去したのち、40kPaで減圧濃縮を行った。留出液の水層を分液除去し、上層をフラスコに戻して再度減圧濃縮を行い、トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンを含むCPME溶液888gを得た(トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンとして26重量%、229.6g(0.87モル,収率86.6%)含有)。本工程の収率は86.6%であった。
【0055】
トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンのCPME溶液888g(トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンとして26重量%、229.6g含有)にメタノール320g(10モル)、95%硫酸10.3g(0.1モル)を加えた。45〜50℃に昇温して5時間撹拌したのち、炭酸ナトリウム15.9g(0.15モル)を加え0.5時間撹拌したのち、40kPaで減圧濃縮して過剰のメタノールを除去した。この濃縮液にCPME400g、水200gを加え撹拌し、水層を分液除去したのち、CPME層を24kPaで減圧濃縮した。留出液の水層を分液除去し、上層をフラスコに戻して再度減圧濃縮を行い、トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンメチルエステルを含むCPME溶液622gを得た(トランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシプロリンメチルエステルとして35重量%、218.7g(0.78モル,収率90.4%)含有)。
【0056】
トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンからトランス−ベンジルオキシカルボニル−4−ヒドロキシ−L−プロリンメチルエステルまでの収率は78%であった。
【0057】
以上の実施例と比較例の結果を表1に示す。本発明の方法により、溶媒費用の大幅削減と工程数の削減が可能であり、さらに従来の方法より高い収率でヒドロキシプロリン誘導体を得ることができる。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロリンをエステル化して一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)に示される化合物にした後、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩から選ばれる、少なくとも1種類以上の塩基共存下においてN−アシル化して一般式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、Rは炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基のいずれかを示す)で表されるヒドロキシプロリン誘導体を製造するヒドロキシプロリン誘導体の製造法。
【請求項2】
一般式(1)、および、一般式(2)のRが炭素数1〜6のアルキル基である請求項1記載のヒドロキシプロリン誘導体の製造法。
【請求項3】
一般式(1)、および、一般式(2)のRがメチル基である請求項2記載のヒドロキシプロリン誘導体の製造法。
【請求項4】
一般式(2)のRが、アラルキルオキシカルボニル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシプロリン誘導体の製造法。
【請求項5】
一般式(2)のRが、ベンジルオキシカルボニル基である請求項1〜4のいずれかに1項記載のヒドロキシプロリン誘導体の製造法。
【請求項6】
炭酸ナトリウム、または、炭酸水素ナトリウムの共存下において、N−アシル化する請求項1〜5のいずれかに1項記載のヒドロキシプロリン誘導体の製造法。

【公開番号】特開2012−51836(P2012−51836A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195623(P2010−195623)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】