説明

ヒドロキシル化エステル化合物およびウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法

【課題】ウレタンやポリエステルの原料、塗料等の原料、顔料分散剤用ポリマーの原料として有用な、ヒドロキシル化エステル化合物を工業的に安価でかつ容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】環状エステルと一般式(2):
HO−R・・・(2)
(一般式(2)中、Rは、炭素数1〜20の置換もしくは非置換の、直鎖状、分岐状および環状のアルキル基を表す。)で表されるアルコールの混合物中の水分量を2質量%以下に制御し、溶媒を用いずに金属触媒下、反応温度70〜150℃で開環重合させる一般式(1):


(一般式(1)中、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、Rは一般式(2)と同じ置換基を表す。また、n1は1以上50以下の繰り返し数を表す。)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンやポリエステルの原料、塗料等の原料、顔料分散剤用ポリマーの原料として有用な、ヒドロキシル化エステル化合物およびそれから導かれるウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状エステルを用いた開環重合反応を行う際、系内の水分がポリエステルの分子量へ影響を与えることが一般的に知られている。
これを回避することを目的に特許文献1では環状エステルモノマーに着目し、反応前の環状エステルを脱水・脱酸処理した後、ジオールを開始剤としたポリエステル製造を行っている。
【0003】
特許文献2では、有機溶媒中での重合において、溶媒もしくは溶媒に環状エステルを溶解させた溶液中の水分を脱水剤により取り除き、系内より脱水剤を除いた溶液を用いて重合反応を行っている。
また、環状エステルを精製することにより水分等の不純物を除去する方法も知られている。(特許文献3、4)
【0004】
しかしこれらの方法では、開始剤であるアルコール中の水分の影響を除くことが出来なかった。特に低分子量化を目的にアルコール量を増量した場合にその影響は顕著であり、アルコール中の水分の影響を受けて分子量制御が困難になる、といった問題点があった。また、脱水後の脱水剤は除いてから反応に用いているため、除去の手間が掛かっていた。
【0005】
一方、金属触媒存在下、環状エステルは水と反応してカルボン酸を生成することが知られており(非特許文献1)、系内の水分量に応じてカルボキシル基が生成し、ポリエステルの酸価は高くなる。またこの水は、アルコールと同様に開始剤として働くため、水分量に応じたポリエステル分子数の増大が起こる。
酸価が高いポリエステルは、熱安定生、加水分解安定性が悪く、保存時の分子量低下や成形の際に加熱により低分子量化し樹脂の性質を損ねる場合があることが知られている。
【0006】
またポリエステル生成後、引き続きイソシアネート基を持つ化合物と反応を行う場合、系内の水によるポリエステル分子数増大により、場合によってはイソシアネート化合物の不足が生じる、といった問題があった。
イソシアネート基は水酸基、カルボキシル基いずれとも反応するため、カルボキシル基を持つポリエステルは、1分子で複数のイソシアネート基と反応することになる。よってカルボキシル基の生成によってもまた、場合によってはイソシアネート化合物の不足が生じる、といった工程安定性上の問題点があった。
【0007】
このイソシアネート基を持つ化合物がさらに重合性基を持つ場合、カルボキシル基と反応したイソシアネートにより、ポリエステル1分子中に複数の重合性基を持つことになる。そのためこの単量体を用いた重合反応を行うと、場合によっては不測の高分子量体の生成や、ゲル化が発生するといった問題点があった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−158371号公報
【特許文献2】特開2008−163073号公報
【特許文献3】特開平10−25288号公報
【特許文献4】特開平11−140075号公報
【非特許文献1】Macromol.Chem.Phys.2001,202,2963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ウレタンやポリエステルの原料、塗料等の原料、顔料分散剤用ポリマーの原料として有用な、ヒドロキシル化エステル化合物およびそれから導かれるウレタン結合を有するエステル化合物を工業的に安価でかつ容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決された。
<1>環状エステルと一般式(2):
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(2)中、Rは、炭素数1〜20の置換もしくは非置換の、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表す。)で表されるアルコールの混合物中の水分量を2質量%以下に制御し、溶媒を用いずに金属触媒存在下、反応温度70〜150℃で開環重合させることを特徴とする一般式(1):
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(1)中、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、Rは一般式(2)と同じ置換基を表す。また、n1は1以上50以下の繰り返し数を表す。)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<2>前記環状エステルと前記一般式(2)で表されるアルコールを、脱水剤で処理を行った後、反応させることを特徴とする、<1>に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<3>前記環状エステルと前記一般式(2)で表されるアルコールを、脱水剤の存在下で反応させることを特徴とする<2>に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<4>前記脱水剤が、シリカゲル、均一細孔径を有する合成ゼオライト、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、及び塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする<2>又は<3>に記載の前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【0015】
<5>前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の酸価が0以上30mgKOH/g以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<6>前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の重量平均分子量が1,000〜70,000であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<7>前記環状エステルが、L-ラクチド、D-ラクチド、メソーラクチド、DL-ラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びピバロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
<8><1>〜<7>のいずれか一項に記載の製造方法により製造した前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物を製造後、取り出すことなく一般式(3):
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(3)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、アルキレン基、炭素数6〜14のアリール基、アリーレン基、または不飽和エステル基を表す。n2はイソシアネート基の数であり、1もしくは2を表す。)で表されるイソシアネート化合物を反応させることを特徴とする一般式(4):
【0018】
【化4】

【0019】
(一般式(4)において、Rおよびn2は一般式(3)と同じ置換基および数を表す。R、Rおよびn1は一般式(1)と同じ置換基および数を表す。)で表されるウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法。
<9><8>に記載のウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法において、前記一般式(3)で表されるイソシアネート化合物が一般式(5):
【0020】
【化5】

【0021】
(一般式(5)において、Rは、水素またはメチル基を表し、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキレン基を表す。)で表される不飽和エステルである一般式(6):
【0022】
【化6】

【0023】
(一般式(6)において、R、Rおよびn1は一般式(1)と同じ置換基および数を表す。R、Rは一般式(5)と同じ置換基を表す。)で表されるウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法。
<10><9>に記載の方法で製造した前記一般式(6)で表されるエステル化合物を、ラジカル重合の単量体として用いたポリマー化合物。
<11><9>に記載の方法で製造した前記一般式(6)で表されるエステル化合物を単量体として用いた顔料分散剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ウレタンやポリエステルの原料、塗料等の原料、顔料分散剤用ポリマーの原料として有用な、ヒドロキシル化エステル化合物およびそれから導かれるウレタン結合を有するエステル化合物を工業的に安価でかつ容易に製造することができる。本発明方法によれば、ヒドロキシル化エステル化合物の使用によって、二重結合の重合による高分子量化やゲル化などが防止され、イソシアネート化合物との反応も高い工程安定性で行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
一般式(1)で表わされるヒドロキシル化エステル化合物の製造に用いることのできる環状エステルとしては、L-ラクチド、D-ラクチド、メソーラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトン、ピバロラクトン、より好ましくは、L-ラクチド、D-ラクチド、メソーラクチド、β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトンを挙げることができ、L-ラクチド、D-ラクチド、メソーラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトン、ピバロラクトンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
本発明で用いられるアルコールは、前記一般式(2)で表される化合物である。一般式(2)中、Rは、炭素数1〜20、好ましくは2〜16の置換もしくは非置換の、直鎖状、分岐状および環状のアルキル基を表す。
【0027】
好ましいアルキル基の例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。
【0028】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。
【0029】
炭素原子数1から20までの直鎖状、炭素原子数3から20までの分岐状、ならびに炭素原子数5から20までの環状のアルキル基が好ましく、炭素原子数4から15までの直鎖状、炭素原子数4から15までの分岐状、ならびに炭素原子数6から10までの環状のアルキル基がより好ましく、炭素原子数6から10までの直鎖状、炭素原子数6から12までの分岐状のアルキル基が更に好ましい。
【0030】
上記環状エステルと一般式(2)で表わされる化合物の反応の方法としては、一般式(2)で表わされるアルコールの混合物中の水分量を2質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0〜0.3質量%に制御し、溶媒を用いずに金属触媒存在下、反応温度70〜150℃、好ましくは90〜150℃で開環重合させるものがある。このとき、一般式(2)で表わされるアルコールを脱水剤で処理した後、反応させてもよいし、脱水剤の存在下で反応させてもよい。
脱水剤は、シリカゲル、均一細孔径を有する合成ゼオライト、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。均一細孔径を有する合成ゼオライトとしては、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、モレキュラーシーブス5A、モレキュラーシーブス13X(いずれも商品名)などを用いることができる。
【0031】
本発明方法によれば、上記環状エステルと一般式(2)で表わされるアルコールとの反応によって、上記一般式(1)で表わされるヒドロキシル化エステル化合物を得ることができる。一般式(1)中のRは、一般式(2)におけると同義であり、好ましい範囲も同様である。Rは炭素数1〜5、好ましくは2〜5の直鎖または分岐アルキレン基を表し、n1は1〜50、好ましくは5〜30の繰り返し数を表す。
一般式(1)で表わされるヒドロキシル化エステル化合物は、酸価が0〜30mgKOH/gであることが好ましく、0〜15mgKOH/gであることがより好ましい。また、0〜5mgKOH/gであることがさらに好ましい。一般式(1)で表わされる化合物は質量平均分子量が1,000〜70,000であることが好ましい。1,000〜30,000であることがより好ましく、1,000〜10,000であることがさらに好ましい。
【0032】
このようにして得られた一般式(1)で表わされる化合物と、一般式(3)で表わされるイソシアネート化合物とを反応させることにより、一般式(4)で表わされるウレタン結合を有するエステル化合物を得ることができる。本発明においては、このとき、製造された一般式(1)で表わされるヒドロキシル化エステル化合物を取り出すことなく、一般式(3)で表わされる化合物と反応させることができる。この方法は、工業的に簡便な工程で目的化合物を製造することができ、コストダウンにもつながるという優れた効果を奏する。
【0033】
一般式(3)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、アルキレン基、炭素数6〜14のアリール基、アリーレン基、または不飽和エステル基を表す。n2はイソシアネート基の数であり、1もしくは2を表す。
【0034】
アルキル基(より好ましくは炭素数1〜8)としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、s−ヘプチル基、t−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、s−オクチル基、t−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、s−ノニル基、t−ノニル基、n−デカニル基、イソデカニル基、s−デカニル基、t−デカニル基、n−ウンデカニル基、イソウンデカニル基、s−デカニル基、t−デカニル基、n−ドデカニル基、イソドデカニル基、s−ドデカニル基、t−ドデカニル基、トリデカニル基、1−テトラデカニル基、2−テトラデカニル基、ベンジル基、ナフチルメチル基等を挙げることが出来る。
【0035】
アルキレン基(好ましくは炭素数1〜14、より好ましくは1〜8)としては例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ウンデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基等を挙げることが出来る。
アリール基(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは7〜14)としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニル基、ビトリル基 等を挙げることが出来る。
アリーレン基(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは7〜14)としては例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、メシチリレン基、ナフチレン基、アントラリレン基、ビフェニレン基、ビトリレン基等を挙げることが出来る。
イソシアネート基を2つ持つアリーレン基としては例えば、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3‘−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)等を挙げることが出来る。
【0036】
一般式(4)において、R、R、n1は一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同様である。R及びn2は一般式(3)と同義である。
【0037】
が不飽和エステル基であるイソシアネート化合物としては、一般式(3)で表わされる化合物のうち、一般式(5)で表される化合物が好ましい。この一般式(5)中、Rは、水素またはメチル基を表し、Rは、炭素数1〜5、好ましくは2〜4の直鎖または分岐アルキレン基を表す。
【0038】
一般式(5)で表される不飽和エステルにおいて、Rとしては例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、イソプロピレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基等を挙げることが出来る。
一般式(5)で表わされる化合物を用いると、一般式(6)で表わされる、ウレタン結合を有するエステル化合物が得られる。一般式(6)においてR、R、n1は一般式(1)におけると同義であり、R及びRは一般式(5)におけると同義である。
【0039】
次に本発明の一般式(1)、(4)および(6)で表される化合物の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0040】
【化7】

【0041】
次に、一般式(4)、一般式(6)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
本発明方法により製造される上記ウレタン結合を有するエステル化合物は、常法によりラジカル重合してポリマー化合物とすることができる。このポリマー化合物は、種々の用途に有用であるが、特に顔料分散用ポリマーとして好適に用いることができる。
本発明方法により製造できる上記一般式(1)で表わされるヒドロキシル化エステル化合物は、このウレタン結合を有するエステル化合物を効率よく製造するうえで有用である。 本発明方法によれば、これらの化合物を効率よく製造できる。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1〜3、比較例1
下記式に基づき、本発明の例示化合物A−11を合成した。式中、nは10である。
【0047】
【化10】

【0048】
実施例1.
3ツ口フラスコにε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルM)80g、2−エチル−1−ヘキサノール(協和発酵ケミカル製、商品名:オクタノール)9.12gを入れ、室温下攪拌した。この時の混合液中の水分量は0.245wt%(カール・フィッシャーにより測定)であった。
そこへモノブチル錫オキシド0.04gを加え加熱し、窒素気流下、110℃で5、5時間攪拌を行った。1H−NMRにより原料の残存を確認したところ、ε−カプロラクトン、2−エチルヘキサノールはいずれも残存が見られなかった。
この反応液を冷却して得た固体の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果2,340であり、酸価は3.02mgKOH/gであった。
【0049】
実施例2.
3ツ口フラスコにε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルM)80g、2−エチル−1−ヘキサノール(協和発酵ケミカル製、商品名:オクタノール)9.12g、蒸留水1.78mLを入れ、室温下10分間攪拌した。その後、系内にモレキュラーシーブス4A(商品名)を加えて1時間攪拌後、一晩放置した。一晩放置後の混合液中の水分量を測定したところ、0.112wt%(カール・フィッシャーにより測定)であった。
この反応液をろ過してモレキュラーシーブスを除き、モノブチル錫オキシド0.04gを加え加熱し、窒素気流下、110℃で5、5時間攪拌を行った。この反応液を冷却して得た固体の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果2,350であり、酸価は1.78mgKOH/gであった。
【0050】
実施例3.
3ツ口フラスコにε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルM)80g、2−エチル−1−ヘキサノール(協和発酵ケミカル製、商品名:オクタノール)9.12g、蒸留水1.78mLを入れ、室温下10分間攪拌した。その後、系内にモレキュラーシーブス4A(商品名)を加え、1時間攪拌した。混合液中の水分量を測定したところ、0.258wt%(カール・フィッシャーにより測定)であった。
この反応液にモノブチル錫オキシド0.04gを加え加熱し、窒素気流下、110℃で80時間攪拌を行った。
この反応液を冷却して得た固体の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果3,240であり、酸価は4.15mgKOH/gであった。
【0051】
実施例4〜5、比較例2
下記式に基づき、本発明の例示化合物(C−11)を合成した。式中、nは10である。
【0052】
【化11】

【0053】
実施例4.
実施例1で合成したポリエステルに2,6−ジ−tert―ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.1gを加え、80℃に再加熱して溶解した。この溶解液に攪拌をしながら2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、商品名:カレンズMOI)11.3gを添加した後、さらに80℃で5時間攪拌を行った。
この反応液の酸価は1.18mgKOH/gであり、H−NMRを測定したところポリエステル中のアルコール残存は見られなかった。
【0054】
実施例5.
実施例3で合成したポリエステルに2,6−ジ−tert―ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.1gを加え、80℃に再加熱して溶解した。この溶解液に攪拌をしながら2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、商品名:カレンズMOI)11.3gを添加した後、さらに80℃で5時間攪拌を行った。
この反応液の酸価は1.20mgKOH/gであり、H−NMRを測定したところポリエステル中のアルコール残存は見られなかった。
この反応液に1−メトキシ−2−プロパノール300gを加え溶解し、濾過によってモレキュラーシーブスを除いた。
【0055】
比較例1.
3ツ口フラスコにε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルM)80g、2−エチル−1−ヘキサノール(協和発酵ケミカル製、商品名:オクタノール)9.12g、蒸留水1.78mLを入れ、室温下10分間攪拌した。この混合液中の水分量を測定したところ、2.117wt%(カール・フィッシャーにより測定)であった。
この反応液にモノブチル錫オキシド0.04gを加え加熱し、窒素気流下、110℃で11時間攪拌を行った。
この反応液を冷却して得た固体の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果1,395であり、酸価は32.51mgKOH/gであった。
【0056】
比較例2.
比較例1で合成したポリエステルに3,5−ジ−ter―ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1gを加え、80℃に再加熱して溶解させた。この溶解液に攪拌をしながら2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、商品名:カレンズMOI)11.3gを添加した後、さらに80℃で5時間攪拌を行った。
この反応液中の酸価は31.82mgKOH/gであり、H−NMRを測定したところポリエステル中のアルコールの残存は38.3%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エステルと一般式(2):
【化1】

(一般式(2)中、Rは、炭素数1〜20の置換もしくは非置換の、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を表す。)で表されるアルコールの混合物中の水分量を2質量%以下に制御し、溶媒を用いずに金属触媒存在下、反応温度70〜150℃で開環重合させることを特徴とする一般式(1):
【化2】

(一般式(1)中、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、Rは一般式(2)と同じ置換基を表す。また、n1は1以上50以下の繰り返し数を表す。)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記環状エステルと前記一般式(2)で表されるアルコールを、脱水剤で処理を行った後、反応させることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記環状エステルと前記一般式(2)で表されるアルコールを、脱水剤の存在下で反応させることを特徴とする請求項2に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記脱水剤が、シリカゲル、均一細孔径を有する合成ゼオライト、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、及び塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の酸価が0以上30mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物の重量平均分子量が1,000〜70,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記環状エステルが、L-ラクチド、D-ラクチド、メソーラクチド、DL-ラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトン、及びピバロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシル化エステル化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により製造した前記一般式(1)で表されるヒドロキシル化エステル化合物を製造後、取り出すことなく一般式(3):
【化3】

(一般式(3)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、アルキレン基、炭素数6〜14のアリール基、アリーレン基、または不飽和エステル基を表す。n2はイソシアネート基の数であり、1もしくは2を表す。)で表されるイソシアネート化合物を反応させることを特徴とする一般式(4):
【化4】

(一般式(4)において、Rおよびn2は一般式(3)と同じ置換基および数を表す。R、Rおよびn1は一般式(1)と同じ置換基および数を表す。)で表されるウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法において、前記一般式(3)で表されるイソシアネート化合物が一般式(5):
【化5】

(一般式(5)において、Rは、水素またはメチル基を表し、Rは、炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキレン基を表す。)で表される不飽和エステルである一般式(6):
【化6】

(一般式(6)において、R、Rおよびn1は一般式(1)と同じ置換基および数を表す。R、Rは一般式(5)と同じ置換基を表す。)で表されるウレタン結合を有するエステル化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法で製造した前記一般式(6)で表されるエステル化合物を、ラジカル重合の単量体として用いたポリマー化合物。
【請求項11】
請求項9に記載の方法で製造した前記一般式(6)で表されるエステル化合物を単量体として用いた顔料分散剤。

【公開番号】特開2010−155878(P2010−155878A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333481(P2008−333481)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】