説明

ヒドロキシ安息香酸類の製造方法

フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製し、次いでこれを二酸化炭素と反応させる工程を含むヒドロキシ安息香酸類を製造する方法において、フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程が、以下の工程を含むヒドロキシ安息香酸類の製造方法を提供する:a)アルカリ金属アルコキシドとアルカリ金属アルコキシドに対して過剰量のフェノール類とを反応させてフェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程、および、b)工程a)と同時に、生成したアルコールを留去する工程。本発明の方法によれば、非プロトン性極性有機溶剤を用いることなく高収率でヒドロキシ安息香酸類を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒドロキシ安息香酸類の製造方法に関する。
【背景技術】
アルキル基などの置換基を有するヒドロキシ安息香酸類は、例えば、ポリプロピレン等の高分子材料用の紫外線吸収剤や酸化防止剤、感圧記録紙用の顕色剤、農薬などの化学品の合成原料として広く用いられている有用な化合物である。
ヒドロキシ安息香酸類の製造方法として、フェノール類のアルカリ金属塩と二酸化炭素を反応させるコルベ・シュミット反応が古くから知られている。その原料であるフェノール類のアルカリ金属塩の調製方法として、従来、アルカリ金属化合物として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などを用いた方法が一般的に用いられている。しかし、フェノール類と前記のアルカリ金属化合物の反応により水が生成し、この水によりコルベ・シュミット反応が阻害され、ヒドロキシ安息香酸類の反応収率が低下する。また、フェノール類のアルカリ金属塩から水を効率的に、且つ完全に除去することは困難であった。このため、フェノール類のアルカリ金属塩の調製において生成する水の除去の為に種々の検討が行われてきた。
例えば、特開昭62−61949号には、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを水酸化ナトリウムと混合し、減圧下での加熱により脱水を行い、得られた個体の2,4−ジ−tert−ブチルフェノールのナトリウム塩を二酸化炭素と反応させる方法が開示されている。また、特開平3−178947号には、2,4−ジアルキルフェノールを低級アルコール中でアルカリ金属水酸化物と反応させた後に、アルコールと生成した水を留去させ、得られた無水の2,4−ジアルキルフェノールのアルカリ金属塩を二酸化炭素と反応させる方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法では、フェノール類のアルカリ金属塩の脱水を固相で行うために、脱水に長時間を要した。また、脱水も不十分なものであった。さらに、フェノールのアルカリ金属塩と二酸化炭素の反応が固気相反応であるため、反応時間が長いこと、熱的不均一性のために副反応での原料損失が多いこと、反応制御が困難で安定した収率が得られない等の問題があった。
未置換のフェノールとアルカリ金属水酸化物を使用し、水性媒体中で容易にアルカリ金属塩を形成させることができる。しかし、アルキル基などの置換基を有するフェノール類は水への溶解度が低いことや、酸性度が低いことから、水性媒体中でアルカリ金属塩を形成させることが難しいという問題があった。
これらの問題を解決するために、コルベ・シュミット反応の工業的に有利な改良法として、フェノール類のアルカリ金属塩の調製および二酸化炭素との反応を、固相ではなく、非プロトン性極性有機溶剤を用いた、溶液ないしはスラリー状態で行う方法が提案されている。
例えば、特開平3−90047号には2,4−ジアルキルフェノールとアルカリ金属水酸化物を、炭化水素系溶媒と1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの混合溶媒中で加熱し、共沸脱水により無水の2,4−ジアルキルフェノールアルカリ金属塩を形成し、該混合溶媒中で二酸化炭素と反応させて3,5−ジアルキルサリチル酸を得る方法が開示されている。
コルベシュミット法において1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン性極性有機溶剤を反応溶媒として用いると、高い反応収率でサリチル酸のアルカリ金属塩が生成する。しかし、反応液からの製品取り出しおよび溶媒の回収において大きな問題があった。すなわち、非プロトン性極性有機溶剤に対する3,5−ジアルキルサリチル酸アルカリ金属塩の溶解度が大きいため、反応液から生成物を取り出す際の損失が大きい。また、得られる3,5−ジアルキルサリチル酸アルカリ金属塩の水溶液は多量の非プロトン性極性有機溶剤を含有しているが、酸析工程によって非プロトン性極性有機溶剤は酸析濾液に移行する。そのため、高価な非プロトン性極性溶剤の回収が困難であった。
上記の問題点を解決するために、特開平10−231271号では、フェノール類とアルカリ金属化合物との反応において、反応溶媒として非プロトン性極性有機溶剤を用い、フェノール類の量がアルカリ金属化合物および非プロトン性極性有機溶剤の合計に対してモル比が1より大となる条件で反応を行う方法が提案されている。
しかしながら、フェノール類の量をアルカリ金属化合物および非プロトン性極性有機溶剤に対して過剰量としても、得られるヒドロキシ安息香酸類の収率は充分でない。また、非プロトン性極性有機溶剤の存在下でコルベ・シュミット反応を行った場合、フェノール類の二量体など副生物が生成し、高純度のヒドロキシ安息香酸類を得ることは困難であった。
また、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性有機溶剤は、窒素などを含むため廃液にわずかに含まれても海洋、湖沼などの富栄養化の原因となる。したがって、非プロトン性極性有機溶剤を用いる場合、廃水処理に多大な労力がかかる。
さらに、高価な非プロトン性極性有機溶剤を用いること自体、コスト高となるものであった。
【発明の開示】
本発明は、上記問題点を解決し、高純度のヒドロキシ安息香酸を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は非プロトン性極性有機溶剤を用いることなく簡易な工程で安価にヒドロキシ安息香酸類を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製し、次いでこれを二酸化炭素と反応させる工程を含むヒドロキシ安息香酸類を製造する方法において、フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程が、以下の工程を含むヒドロキシ安息香酸類の製造方法に関する:
a)アルカリ金属アルコキシドとアルカリ金属アルコキシドに対して過剰量のフェノール類とを反応させてフェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程、および、
b)工程a)と同時に、生成したアルコールを留去する工程。
本発明において、アルカリ金属アルコキシドに対してフェノール類を過剰とすることにより、フェノール類のアルカリ金属塩の生成が促進され、高収率でフェノール類のアルカリ金属塩が得られる。さらに、本発明によると余剰のフェノール類を反応媒体として再利用することが可能となる。
また、本発明の方法では、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属アルコキシドを用いることにより、コルベ・シュミット反応を阻害する水を生成することなく、高品質のフェノール類のアルカリ金属塩を得ることが可能となる。それゆえ、高収率でヒドロキシ安息香酸類を得ることが可能となる。
本発明の方法においては、フェノール類とアルカリ金属アルコキシドの反応時に、アルカリ金属アルコキシドに対応するアルコールが生成する。しかし、アルコール類は、フェノール類とのアルカリ金属水酸化物との反応により生じる水と比べて除去は容易なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書においてフェノール類の量が「過剰」であるとは、フェノール類の量がアルカリ金属アルコキシドに対して2倍モル以上であることを意味する。本発明において、フェノール類の量はアルカリ金属アルコキシドに対して2〜30倍モルであるのが好ましく、3〜20倍モルであるのがより好ましく、4〜15倍モルであるのが更に好ましい。フェノール類の量が2倍モルを下回ると、フェノール類のアルカリ金属塩の析出により反応液の粘度が高くなり均一な混合が困難となる。なお、30倍モルを上回る量のフェノール類を用いても実施できる。しかし、30倍モル量までの量を用いた場合より高い効果が得られるわけではなく、効果の割にコスト高となる。
フェノール類とアルカリ金属アルコキシドの反応は、80〜300℃の温度下で行うのが好ましく、120〜200℃の温度下で行うのがさらに好ましい。反応温度が80℃を下回ると、生成するアルコールの留出速度が遅くなる。反応温度が300℃を上回ると、フェノール類の沸点を越えることによって、フェノール類が系外に激しく留出するおそれがある。また反応温度が高すぎると、生成したフェノール類のアルカリ金属塩が高温のため分解されるおそれがある。さらに、反応温度が高すぎると、副反応が起こる可能性もある。
本発明において、アルカリ金属アルコキシドとの反応に用いるフェノール類としては、一般式〔I〕で示される化合物であるのが好ましい。

[Rは、炭素原子数1〜20までの直鎖または分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基から選択される基である。nは1〜4の整数を示す。]
これらのなかでも、Rがアルキル基であるアルキル置換フェノール類、好ましくはジアルキル置換フェノール類が好適に用いられる。置換基としてのアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、tert−オクチル等が挙げられる。
アルキル置換フェノールの具体例としては、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、4−n−オクチルフェノールまたは4−tert−オクチルフェノール等が挙げられる。
なお、フェノール類が複数の置換基を有する場合、必ずしも同一の置換基である必要は無く、異種の置換基であってもよい。
本発明において、使用されるアルカリ金属アルコキシドとしては、炭素原子数1〜4のナトリウムアルコキシドまたはカリウムアルコキシドが好ましい。入手が容易で安価である点や、フェノール類との反応により生成するアルコールを留去しやすい点などからナトリウムメトキシドが特に好ましく用いられる。アルカリ金属アルコキシドは固体で用いても、アルコール溶液として用いても良い。
フェノール類とアルカリ金属アルコキシドの反応により生成するアルコールおよび、アルカリ金属アルコキシドの媒体として用いた場合のアルコールは、実質的に不在の状態となるまで系外に除去するのがよい。アルコールを除去することにより、フェノール類のアルカリ金属塩の生成が促進され、アルカリ金属塩を良好に形成することができる。
生成したアルコールの除去方法は特に限定されない。大気圧下で行う場合は、フェノール類とアルカリ金属アルコキシドを反応させる際に、反応容器に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気させることにより行うのが好ましい。また、フェノール類が激しく留出しない程度に、反応系を減圧することによりアルコールを除去しても良い。反応系を減圧する場合は10Torrまでとするのが好適である。
上記の方法により、気体として除去されたアルコールは、冷却し液体として回収できる。これに必要に応じ、蒸留等の精製を行うことにより溶剤、反応試薬として再利用することができる。
本発明の方法においては、液体である置換フェノール自体が媒体の役目を果たす。したがって、別途反応媒体を添加しなくともフェノール類のアルカリ金属塩を得ることができる。なお、置換フェノール以外の反応媒体を任意に使用してもよい。本発明の方法においてフェノール類とアルカリ金属アルコキシドの反応時に用いる反応媒体としては非プロトン性極性有機溶剤以外のものであれば通常かかる反応に用いられる媒体が好適に用いられる。媒体としては、例えば軽油、灯油、ガソリン、白油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジフェニル、ジフェニルアルカン、アルキルジフェニル、トリフェニル、水素化トリフェニル、ジフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、iso−オクチルアルコールなどの高沸点の高級アルコールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
フェノール類とアルカリ金属アルコキシドの反応によって得られたフェノール類のアルカリ金属塩は、次いで二酸化炭素との反応に供される。
フェノール類のアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応方法は特に限定されず、従来から知られているいずれの方法によってもよく、回分式であっても、連続式であってもよい。
フェノール類のアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応は、例えば、オートクレーブ中で、二酸化炭素圧力として大気圧〜50.0kgf/cm(G)、好ましくは2.0〜10.0kgf/cm(G)、反応温度160〜300℃、好ましくは170〜290℃の条件下で行われる。反応時間は、二酸化炭素圧力、反応温度によっても異なるが、通常0.5〜6hr、好ましくは1〜4hrであるのがよい。
フェノール類のアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応によって、対応するヒドロキシ安息香酸類のアルカリ金属塩を含む反応液が得られる。かかる反応液に、水を加えて水層と媒体層に分液する。次いで、ヒドロキシ安息香酸類のアルカリ金属塩を含む水層に酸を加えて、ヒドロキシ安息香酸類の結晶を析出させる。この酸析工程で用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸が好適に用いられる。酸析後、濾過、遠心分離等の操作を施すことによりヒドロキシ安息香酸類の結晶を得ることができる。
ヒドロキシ安息香酸類のアルカリ金属塩を含む水層を分離した後の媒体層中は殆どが原料のフェノール類である。したがって、そのまま、あるいは必要により濾過、蒸留またはカーボン処理等を行うことにより、原料フェノールとして再利用することが可能である。
本発明により得られるヒドロキシ安息香酸類の具体例としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2−ヒドロキシ安息香酸、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジエチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらの中でも2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを出発物質として3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸を得る、および2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを出発物質として3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸を得る場合に本発明の方法は特に好適に用いられる。
本発明の方法によれば、副生物の生成が少なく、したがって、高収率かつ高純度でヒドロキシ安息香酸類を得ることができる。また、非プロトン性極性溶媒を用いることなく簡易な工程で安価にヒドロキシ安息香酸類を製造することができる。さらに、分液後の媒体層は副生物を殆ど含まないため、原料フェノールとして再利用することが可能である。
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
電磁攪拌装置、温度計、圧力計及びアルコール分離器を備えた容量2リットルのステンレス製反応容器に、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール1155g(5.6モル)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液154g(0.8モル)を仕込み、窒素気流下で180℃に昇温し、同温度で5時間反応させると同時に生成するメタノールを留去した。得られた2,6−ジ−tert−ブチルフェノールのナトリウム塩のスラリーを210℃に昇温した後、反応容器内を二酸化炭素で置換し、二酸化炭素圧力6Kgf/cm(G)にて2時間攪拌してカルボキシル化反応を行った。反応後、90℃まで冷却し、反応物に水1200gを加え溶解し、85℃にて水層と有機層に分液した。
得られた水層に73%硫酸を加え、pH3.8に調整し結晶を析出させ、濾過、水洗、乾燥後、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸176gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は90%であった。
【実施例2】
実施例1で分液により得られた有機層に、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール138g(0.67モル)およびナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液154g(0.8モル)を加え、実施例1と同様にして、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸173gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は87%であった。
この実施例により、過剰量のフェノール類を再利用することができることが確認された。
【実施例3】
2,6−ジ−tert−ブチルフェノールとナトリウムメトキシドの反応温度を120℃とした他は、実施例1と同様にして、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸164gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は82%であった。
この実施例により、比較的低温でも高い収率でヒドロキシ安息香酸類が得られることが確認された。
【実施例4】
実施例1で用いた反応容器と同じ容器に、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール966g(4.7モル)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液69.5g(0.36モル)を仕込み、窒素気流下で180℃に昇温し、同温度で2時間反応させると同時に生成するメタノールを留去した。得られた2,4−ジ−tert−ブチルフェノールのナトリウム塩のスラリーを200℃に昇温した後、反応容器内を二酸化炭素で置換し、二酸化炭素圧力6Kgf/cm(G)にて2時間攪拌してカルボキシル化反応を行った。反応後90℃まで冷却し、反応物に水1000gを加えた。その後は、実施例1と同様に処理し、3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸85gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は94%であった。
【実施例5】
実施例1で用いた反応容器と同じ容器に、o−クレゾール984g(9.1モル)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液135g(0.7モル)を仕込み、窒素気流下で180℃に昇温し、同温度で2時間反応させると同時に生成するメタノールを留去した。得られたo−クレゾールのナトリウム塩のスラリーを200℃に昇温した後、反応容器内を二酸化炭素で置換し、二酸化炭素圧力6Kgf/cm(G)にて2時間攪拌してカルボキシル化反応を行なった。反応後90℃まで冷却し、反応物に水1000gを加えた。その後は、実施例1と同様に処理し、3−メチル−2−ヒドロキシ安息香酸91.5gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は86%であった。
【実施例6】
実施例1で用いた反応容器と同じ容器に、o−イソプロピルフェノール953g(7モル)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液106g(0.55モル)を仕込み、窒素気流下で180℃に昇温し、同温度で4時間反応させると同時に生成するメタノールを留去した。得られたo−イソプロピルフェノールのナトリウム塩のスラリーを200℃に昇温した後、反応容器内を二酸化炭素で置換し、二酸化炭素圧力6Kgf/cm(G)にて2時間攪拌してカルボキシル化反応を行った。反応後90℃まで冷却し、反応物に水1000gを加えた。その後は、実施例1と同様に処理し、3−イソプロピル−2−ヒドロキシ安息香酸65.4gを得た。ナトリウムメトキシドの仕込み量に対する生成物の収率は66%であった。
【産業上の利用の可能性】
本発明の方法によって得られるヒドロキシ安息香酸類は、ポリプロピレン等の高分子材料用の紫外線吸収剤や酸化防止剤、感圧記録紙用の顕色剤、農薬などの化学品の合成原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製し、次いでこれを二酸化炭素と反応させる工程を含むヒドロキシ安息香酸類を製造する方法において、フェノール類より、フェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程が、以下の工程を含むヒドロキシ安息香酸類の製造方法:
a)アルカリ金属アルコキシドとアルカリ金属アルコキシドに対して過剰量のフェノール類とを反応させてフェノール類のアルカリ金属塩を調製する工程、および、
b)工程a)と同時に、生成したアルコールを留去する工程。
【請求項2】
フェノール類とアルカリ金属アルコキシドを、80〜300℃の温度下で反応させて、フェノール類のアルカリ金属塩を調製する、請求項1に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属アルコキシドに対し、2〜30倍モルのフェノール類を反応させて、フェノール類のアルカリ金属塩を調製する、請求項1または2に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項4】
フェノール類が一般式[I]で示される化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。

[Rは、炭素原子数1〜20までの直鎖または分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基から選択される基である。nは1〜4の整数を示す。]
【請求項5】
フェノール類がアルキル置換フェノールである、請求項4に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項6】
フェノール類がアルキルジ置換フェノールである、請求項4に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項7】
アルキル置換フェノールのアルキル基が、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、およびtert−オクチルからなる群から選択される、請求項5または6に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項8】
フェノール類が、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、4−n−オクチルフェノール、および4−tert−オクチルフェノールからなる群から選択される、請求項4に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項9】
フェノール類が2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールであり、ヒドロキシ安息香酸類が3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸または3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸である、請求項4に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項10】
アルカリ金属アルコキシドが、ナトリウムアルコキシドまたはカリウムアルコキシドであり、炭素数1〜4のものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項11】
アルカリ金属アルコキシドがナトリウムメトキシドである、請求項10に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項12】
反応媒体として非プロトン性極性有機溶剤を使用しない、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒドロキシ安息香酸類の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/078693
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503040(P2005−503040)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002554
【国際出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000146423)株式会社上野製薬応用研究所 (30)
【Fターム(参考)】