説明

ヒドロキノンアンサマイシン製剤

水素結合(hydrogen bands)を形成することができる化合物によって安定化されたヒドロキノンゲルダナマイシン類似体の医薬組成物、およびそのような組成物の使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C. 119(e)の下で2007年4月12日に出願された米国特許出願第60/911,330号の出願日の利益を主張し、その全ての開示は参照することにより本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
熱ショックタンパク質90(Hsp90)は非常に豊富な哺乳類タンパク質で、細胞生存に必須であり、二重シャペロン機能を示す。それは、熱ショックなどのさまざまな環境ストレスによってタンパク質の未変性コンフォメーションが変化した後に、それらと相互作用することによって細胞のストレス応答において重要な役割を果たし、適切なタンパク質フォールディングを保証し、非特異的凝集を防ぐ。Hsp90は突然変異の効果に対してタンパク質を緩和する役割も果たしうるが、これはおそらく変異タンパク質の不適切なフォールディングを修正することによる。Hsp90は正常な生理的条件下でも重要な調節的役割を有し、コンフォメーションの安定性および多数の特異的クライアントタンパク質の成熟化に関与する。
【0003】
Hsp90活性の1つ以上の態様を抑制することによって病気または疾患についての治療効果が得られうる多数の生物学的文脈において、Hsp90アンタゴニストが現在研究されている。研究の第1焦点は癌などの増殖性疾患についてであるが、他の病気もHsp90アンタゴニストを用いて治療可能であることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲルダナマイシンのナノモル効力および腫瘍細胞を死滅させる明らかな選択性、さらに哺乳類細胞におけるその第1の標的がHsp90であるという発見は、その抗癌薬としての開発における興味を刺激した。しかしながら、ゲルダナマイシンの極度な低水溶性および肝毒性とその投与の関連は、治療応用のための承認可能な薬剤の開発において困難をもたらしてきた。したがって、潜在的な治療剤として開発されうるゲルダナマイシンの類似体、および患者へ送達されうるこれらの化合物の製剤が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な記載
定義
本明細書で用いられている用語の定義は、各用語について化学および医薬分野にて認識されており、現在の最新の定義を援用することを意味する。適切な場合には、例証が提供される。定義は、具体例にて限定しない限り、単独にまたはより大きな基の一部として、本明細書を通じて用いられている用語に適用する。
【0006】
立体化学を特に示さない場合、本発明の化合物の全ての立体異性体は、純粋な化合物(すなわち、立体異性体)さらにその混合物として本開示の範囲内に含まれる。特に示さない限り、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、ならびにその組み合わせおよび混合物は本開示によって全て含まれる。多型結晶形態および溶媒和化合物も本開示の範囲内に含まれる。
【0007】
「アシルアミノ」という用語は、当該技術分野において認識されており、下記の一般式によって表されうる部分に言及する:
【化1】

[式中、R50は上記で定義した通りであり、R54は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61を表し、mおよびR61は上記で定義した通りである]。
【0008】
「アルキル」という用語は、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルに言及する。特定の実施態様では、直鎖状または分枝鎖状アルキルは30個以下の炭素原子をその骨格内に有し(例えば、直鎖状についてはC1-C30、分枝鎖状についてはC3-C30)、20個以下の炭素原子を有する。同様に、特定のシクロアルキルは3〜10個の炭素原子を有する。いくつかの実施態様では、アルキル基はその骨格として1〜10個の炭素原子を含み、置換されうる。同様に、特定のシクロアルキルはそれらの環状構造内に3〜10個の炭素原子を有し、その他は環状構造内に5、6または7個の炭素を有する。
【0009】
炭素の数を特定しない限り、「低級アルキル」は上記で定義したアルキル基であり、その骨格構造内に1〜約10個の炭素、あるいは1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基に言及する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、類似の鎖長を有する。
【0010】
「アルキルチオ」という用語は、上記で定義したアルキル基であり、それに結合した硫黄ラジカルを有するアルキル基に言及する。特定の実施態様では、「アルキルチオ」部分は-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S-(CH2)m-R61の1つによって表されるが、mおよびR61は上記で定義した通りである。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオなどを含む。
【0011】
「アラルキル」という用語は、当該技術分野において認識されており、アリール基で置換されたアルキル基に言及する(例えば、芳香族またはヘテロ芳香族基)。
【0012】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、長さおよび可能な置換において上記のアルキルと類似するが、それぞれ少なくとも1つの二重または三重結合を含む不飽和脂肪族基に言及する。アルケニル基およびアルキニル基は、利用可能な原子価が許す範囲内で、アルキル基上の置換基として適切な同一の基で置換されうる。典型的なアルケニル基およびアルキニル基は、骨格構造内に2〜10個の炭素を含む。
【0013】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、上記で定義したアルキル基であり、それに結合した酸素ラジカルを有するアルキル基に言及する。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどを含む。アルコキシ基のアルキル部分は、アルキル基と同様の大きさであり、利用可能な原子価が許す範囲内で、アルキル基上の置換基として適切な同一の基によって置換されうる。
【0014】
本明細書で用いられている「アシル」という用語は、一般式R-C(=O)-の基であり、RがH、アルキル、アリール、またはアラルキルでありうる基に言及する。典型的なアシル基では、RはHもしくは任意に置換されるC1-C6アルキルであり、またはRはアラルキルであり得、アラルキルのアリール部分は5〜7員芳香族もしくはヘテロ芳香族環であり、アルキル部分はC1-C4アルキレン基である;アルキルおよびアリールの両部分は、本明細書でそのような基について記載したように任意に置換されている。ベンジル、p-メトキシベンジル、およびフェニルエチルは典型的なアラルキルの例である。
【0015】
「アミド(amido)」および「アミド(amide)」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当該技術分野において認識されており、下記の一般式によって表されうる部分を含む:
【化2】

[式中、R50およびR51は上記で定義した通りである]。
【0016】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当該技術分野において認識されており、非置換および置換アミンの両方に言及し、例えば、下記の一般式によって表されうる部分である:
【化3】

[式中、R50、R51およびR52は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61を表し、またはR50およびR51は、それらが結合したN原子とまとめて環状構造内に4〜8個の原子を有するヘテロ環を完成し;R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環または多環を表し;mは0または1〜8の範囲内の整数である]。他の実施態様では、R50およびR51(ならびに任意にR52)は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、または-(CH2)m-R61を表す。したがって、「アルキルアミン」という用語は、上記で定義したアミン基を含み、それに結合した置換または非置換アルキルを有する、すなわちR50およびR51の少なくとも1つはアルキル基である。
【0017】
本明細書で用いられている「アラルキル」という用語は、単独であろうと基の名称の一部として、例えばアラルキルオキシなどであろうと、本明細書に記載したアリール基(例えば、芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換された本明細書に記載したアルキル基に言及する。各アラルキル基のアルキルおよびアリールの両部分は、典型的には任意に置換されている。典型的なアラルキル基は、例えば一般式Ar-(CH2)t-の基であって、Arが芳香族またはヘテロ芳香族環を表し、tが1〜6の整数である基を含む。
【0018】
本明細書で用いられている「アリール」という用語は、単独であろうと別の名称の一部として、例えば「アリールオキシ」などであろうと、N、OおよびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含みうる5員、6員および7員単環芳香族基に言及し、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどである。環状構造内にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は「アリールヘテロ環」または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれうる。芳香族環は1つ以上の環上で、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどのような上記の置換基で置換されうる。「アリール」という用語は、2つ以上の環を有する多環系も含み、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通し(環は「縮合環」)、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えばもう1つの環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロサイクリルでありうる。
【0019】
本明細書で用いられている「ベンゾキノンアンサマイシン」という用語は、大環状ラクタムを含む化合物であり、ラクタム環内にただ1つのアミドおよびラクタム環内にベンゾキノン部分をさらに含み、前述のベンゾキノン部分が少なくとも1つの窒素置換基を有し、前述の少なくとも1つの窒素置換基の1つが前述のラクタム環内のただ1つのアミド部分の一部である化合物に言及する。天然に存在するベンゾキノンアンサマイシンの具体例は、ゲルダナマイシンおよびハービマイシンを含むが、これらに限定されない。対応する「ヒドロキノンアンサマイシン」においては、ベンゾキノン部分はヒドロキノンに還元されている。
【0020】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書に記載したシクロアルキル基であり、アルキルまたはシクロアルキル部分の少なくとも1つの炭素原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置換されているシクロアルキル基に言及する。
【0021】
「ヘテロサイクリル」、「ヘテロアリール」、「ヘテロ環」または「ヘテロ環基」という用語は、当該技術分野において認識されており、3員〜約10員環状構造、あるいは3員〜約7員環であり、その環状構造が1〜4個のヘテロ原子を含む環に言及する。ヘテロ環は多環でもありうる。ヘテロサイクリル基は、例えばチオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどを含む。ヘテロ環は、1つ以上の位置で、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどのような上記の置換基で置換されうる。
【0022】
「Hsp90介在疾患」または「Hsp90を発現する細胞によって介在される疾患」という用語は、Hsp90が役割を果たす病状および病態に言及する。そのような役割は直接的に病状と関連し得、または間接的に病気と関連しうる。このクラスの病気の共通の特徴は、それらがHsp90の活性、機能、または他のタンパク質との関連を抑制することによって改善されうるということである。
【0023】
「水素結合供与体」という用語は、賦形剤であり、少なくとも1つの-OH部分を含み、ヒドロキノンアンサマイシンと少なくとも1つの水素結合を形成することができ、それによって固体状態にてヒドロキノンアンサマイシンを安定化する賦形剤に言及する。いくつかの実施態様では、水素結合供与体は2つ以上の-OH部分を含む。化合物アスコルビン酸およびクエン酸は、「水素結合供与体」であると考えられる賦形剤の群から特に除外される。
【0024】
本明細書で用いられているように、本明細書で提供される化合物に関連した「単離された」という用語は、化合物が細胞内または生物内になく、化合物が自然界で典型的にそれに付随する成分のいくつかまたは全てから分離されることを意味する。
【0025】
「ニトロ」という用語は、当該技術分野において認識されており、-NO2に言及する;「ハロゲン」および「ハロゲン化物」という用語は、当該技術分野において認識されており、-F、-Cl、-Brまたは-Iに言及する;「スルフヒドリル」という用語は、-SHを意味する;ならびに「ヒドロキシル」という用語は、-OHを意味する。「ハロゲン化物」は対応するハロゲンのアニオンを指定し、「擬ハロゲン化物」は「先端無機化学(Advanced Inorganic Chemistry)」(コットンおよびウィルキンソン(Cotton and Wilkinson)著)に記載されている定義を有する。
【0026】
「医薬的に許容される塩」または「塩」という用語は、1つ以上の化合物の塩に言及する。化合物の適切な医薬的に許容される塩は、酸付加塩を含み、例えば化合物の溶液を医薬的に許容される酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸などの溶液と混合することによって形成されうる。化合物が1つ以上の酸性部分を有する場合、医薬的に許容される塩は化合物の溶液を医薬的に許容される塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、アルキルアミンなどの溶液で処理することによって形成されうる。
【0027】
「医薬的に許容される担体」という用語は、化合物の所望の剤形を調製するために用いられる媒体に言及する。医薬的に許容される担体は、1つ以上の溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル;分散または懸濁補助剤;界面活性剤;等張剤;増粘剤または乳化剤;防腐剤;固体結合剤;滑沢剤;などを含みうる。レミントンの薬学、第15版、E. W.マーチン著(Remington's Pharmaceutical Sciences, Fifteenth Edition, E. W. Martin)(マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)、イーストン、ペンシルベニア、1975)および医薬賦形剤のハンドブック、第3版、A. H.キービ編(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, A. H. Kibbe ed.)(米国薬剤師会(American Pharmaceutical Assoc.)2000)は、医薬組成物の製剤化に用いられるさまざまな担体およびその調製用の周知技術を開示する。
【0028】
「多環」または「多環基」という用語は、当該技術分野において認識されており、2つ以上の環(例えば複数のシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロサイクリル)であり、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通しており、例えば環が「縮合環」である環に言及する。非隣接原子を通じて結合した環は、「架橋」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどのような上記の置換基で置換されうる。
【0029】
本明細書で用いられている「保護基」という語句は、潜在的に反応性の官能基を望ましくない化学変換から保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例は、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにそれぞれアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールを含む。保護基化学の分野は概説されている(グリーン, T.W.(Greene, T.W.);ウッツ, P.G.M.(Wuts, P.G.M.)、有機合成における保護基、第2版(Protective Groups in Organic Synthesis、2nd ed.);ワイリー(Wiley):ニューヨーク、1991)。本発明の化合物の保護形態は、本開示の範囲内に含まれる。
【0030】
本明細書で用いられているように、本明細書で提供される化合物の単離された試料に関連した「純粋な」という用語は、単離された試料が化合物の重量で少なくとも約60%、化合物の重量で少なくとも約70%、化合物の重量で少なくとも約80%、化合物の重量で少なくとも約90%、または化合物の重量で少なくとも約95%を含むことを意味する。本明細書で提供される化合物の単離された試料の純度は、多数の方法のいずれかまたはそれらの組み合わせによって評価されうる;例えば薄層、プレパラティブまたはフラッシュクロマトグラフィー、質量分析、HPLC、NMR分析などである。
【0031】
本明細書で用いられている「患者(subject)」という用語は、動物、典型的には哺乳類またはヒトに言及し、治療、観察、および/または実験の対象となり得、またはそれらの対象となってきた。本用語が化合物または薬物の投与と関連して用いられる場合、患者は治療、観察、および/または化合物もしくは薬物の投与の対象となってきた。
【0032】
「置換された」という用語は、例えばアルキル、シクロアルキルアリールなどの化学基であり、少なくとも1つの水素が本明細書に記載した置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどで置換されている化学基に言及する。「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容できる置換基を含むことも意図する。広範な態様で、許容できる置換基は有機化合物の非環式および環式、分枝鎖状および非分枝鎖状、炭素環式およびヘテロ環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示となる置換基は、例えば本明細書で上述した置換基を含む。許容できる置換基は、1つ以上の、および同一のまたは異なった適切な有機化合物でありうる。本開示のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満足する水素置換基および/または本明細書に記載した有機化合物のいずれかの許容できる置換基を有しうる。本開示は、有機化合物の許容できる置換基によっていずれかの様式に限定されることを意図しない。
【0033】
「置換」または「で置換された」は、そのような置換は置換原子および置換基の許容される原子価に従っており、置換は、例えば転位、環化、脱離、または他の反応などによる変化を自発的に起こさない安定な化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことは理解されるであろう。
【0034】
各表現の定義、例えばアルキル、m、nなどは、いずれかの構造中で2回以上生じる場合、同一構造中の他の場所でのその定義から独立していることを意図している。
【0035】
本明細書で用いられている「糖」という用語は、天然または非天然の単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖に言及し、1つ以上のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、またはノノース糖類を含む。糖は、カルボニル基の還元による糖類(アルジトール)、1つ以上の末端基のカルボン酸への酸化による糖類(アルドン酸)、もしくは1つ以上のヒドロキシル基の水素による置換による糖類(デオキシ糖)、アミノ基による置換による糖類(アミノ糖)、チオール基による置換による糖類(チオ糖)、アシルアミノ基による置換による糖類、硫酸基による置換による糖類、リン酸基による置換による糖類、もしくは類似のヘテロ原子基による置換による糖類;または前述の修飾のいずれかの組み合わせによる糖類から派生した物質を含みうる。糖という用語は、これらの化合物の誘導体(すなわち、アシル化、アルキル化、および糖アルコールとアルデヒドまたはケトンの反応によるグリコシド結合の形成などによって化学的に修飾された糖)も含む。糖は、ヘミアセタール、ヘミケタール、もしくはラクトンとして環式(オキシロース、オキセトセスムフラノース(oxetosesm furanoses)、ピラノース、セプタノース、オクタノースなど)形態にて存在し得;または非環式形態にて存在しうる。糖類は、ケトース、アルドース、ポリオールならびに/またはケトース、アルドースおよびポリオールの混合物でありうる。糖はグリセロール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、マンニトール、グロース、デキストロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコース、フルクトース、デキストレート、ラクトース、スクロース、デンプン(すなわち、アミラーゼおよびアミロペクチン)、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースおよびセルロース誘導体(すなわち、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、クロスカルメロース、ヒポメロース(hypomellose)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カラゲナン、シクロデキストリン、デキストリン、ポリデキストロース、ならびにトレハロースを含むが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で用いられている「治療的に有効な量」という用語は、細胞培養、組織系、動物、またはヒトの中で生物学的または医薬的応答を誘発する活性化合物または医薬品の量を意味し、研究者、獣医師、臨床医、または医師によって探求され、治療されている疾病、病気、または疾患の症状の軽減を含む。
【0037】
2つの基が「まとめて結合を形成する」とは、それらの基が、それらがなければ互いに直接結合しない原子に結合している場合、それらはそれらが結合した原子間の結合を表す。基が互いに直接結合した原子上にある場合、それらはそれら2つの原子間の付加的な結合を表す。したがって、例えば、R2およびR3がまとめて結合を形成する場合、構造-C(A)R2-C(B)R3-は-C(A)=C(B)-を表す。
【0038】
本明細書で開示された組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何または立体異性体形態にて存在しうる。本開示は、全てのそのような化合物を意図し、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、そのラセミ混合物、ならびにその他の混合物を含み、本開示の範囲内にある。付加的な不斉炭素原子がアルキル基などの置換基に存在しうる。全てのそのような異性体、さらにその混合物は、本開示に含まれることを意図している。
【0039】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーを所望の場合、それは不斉合成によって、またはキラル補助基での誘導によって調製され得、結果生じるジアステレオマー混合物は分離され、補助基は切断され、純粋な所望のエナンチオマーを提供する。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性の酸または塩基でジアステレオマー塩が形成され、次いで形成されたジアステレオマーを当該技術分野で周知の分別結晶法またはクロマトグラフ法によって分割し、続いて純粋なエナンチオマーを回収する。
【0040】
組成物
本明細書で開示された組成物は、水素結合供与体およびヒドロキノンアンサマイシンを含む。組成物の特定の実施態様では、ヒドロキノンアンサマイシンは式1:
【化4】

[式中、各々独立に:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
Rは各々独立に水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14、もしくはハロゲン化物であり;R2は水素、アルキル、もしくはアラルキルであり;またはR1およびR2はまとめてそれらが結合する炭素と共に、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-、もしくは-(C=N-R)-を表し;
R3およびR4は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR3はR4とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R5はH、アルキル、アラルキル、および式1aを有する基からなる群から選択され:
【化5】

[式中、R17の各々は水素、ハロゲン化物、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)、および-CH2O-ヘテロサイクリルからなる群から独立に選択され];
R6およびR7は共に水素であり;またはR6およびR7はまとめて結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R10およびR11は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR10およびR11は、それらが結合する窒素とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R13およびR14は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR13およびR14は、それらが結合する窒素とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R16は各々独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)、および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5、または6であり;
R18は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;またはR18はR19とまとめて4〜8員の任意に置換された環を表し;
R20、R21、R22、R24、およびR25は、各々独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18、または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式6の不斉中心での絶対立体化学は、RもしくはS、またはその混合物、および二重結合の立体化学は、EもしくはZ、またはその混合物である]
の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0041】
特定の実施態様では、組成物は純粋な化合物1、単離された化合物1および/または純粋な単離された化合物1を含む。
【0042】
組成物は、水素結合供与体成分を有する。水素結合供与体成分は、いずれかの医薬的に許容される賦形剤を含み得、ヒドロキノンアンサマイシンと少なくとも1つの水素結合を形成することができ、それによって固体状態にてヒドロキノンアンサマイシンを安定化し、対応するベンゾキノンへの酸化を最小化する。糖は複数の-OH基を含み、それゆえ水素結合供与体の例となる。糖の具体例はグリセロール、グリセロールモノステアレート、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、マンニトール、グロース、デキストロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコース、フルクトース、デキストロース、デキストレート、ラクトース、スクロース、マルトース、デンプン(例えば、コーンスターチ、アミラーゼ、アミロペクチン)、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースおよびセルロース誘導体(すなわち、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、クロスカルメロース、ヒプロメロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カラゲナン、シクロデキストリン、デキストリン、ポリデキストロース、リンゴ酸、トレハロース、ならびに上記のいずれかの誘導体を含む。非糖の例は、ステアリン酸およびビタミンEを含む。水素結合供与体の存在は、ヒドロキノンアンサマイシンを長時間安定化する。水素結合供与体とヒドロキノンアンサマイシンの比は、約1:99〜約99:1、約1:19〜約19:1、約1:9〜約7:3、約1:4〜約1:1、または約3:7〜約1:1.2(重量/重量)でありうる。
【0043】
上記の化合物は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含み得、したがって、医薬的に許容される酸と医薬的に許容される塩を形成することができる。「医薬的に許容される塩」という用語は、この点において、本発明の化合物の相対的に無毒性の、無機および有機酸付加塩に言及する。これらの塩は、イン・サイチュで投与ビヒクルもしくは剤形製造工程にて、または遊離塩基形態にある本発明の精製化合物を、適切な有機酸または無機酸と別々に反応させ、形成された塩を続く精製の間に単離することによって調製されうる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などを含む。例えば、ベルゲ(Berge)ら(1977)「医薬塩(Pharmaceutical Salts)」、J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。
【0044】
医薬的に許容される塩は、化合物の通常の無毒性塩または四級アンモニウム塩、例えば無毒性の有機酸または無機酸からの塩を含む。例えば、そのような通常の無毒性塩は、例えば塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から派生した塩;および、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩を含む。
【0045】
組成物は、アスコルビン酸塩、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、メルカプト酢酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、またはαトコフェロールなどの抗酸化剤も含みうる。抗酸化剤とヒドロキノンアンサマイシンのモル比は、約0.001:1〜約4:1、約0.01:1〜約3:1、約0.1:1〜約2:1、約1:1〜2:1、約1:1〜約1.5:1、または約1:1.5〜約1:1の間でありうる。
【0046】
下記の実施例で、アンサマイシンヒドロキノンをアスコルビン酸およびトレハロースを含む溶液と接触させることを含む、アンサマイシンヒドロキノン医薬組成物の調製用の一般的製法を記載する;この製法は、本明細書に記載した水素結合供与体のいずれか、もしくは本明細書に記載した抗酸化剤のいずれか、またはその両方と共に用いられうる。結果生じる溶液を、次いで凍結乾燥し、凍結乾燥粉末を調製する。
【0047】
組成物はクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはその塩、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)もしくはその塩、EGTAもしくはその塩、NTA(ニトリロ酢酸)もしくはその塩、ソルビトールもしくはその塩、酒石酸もしくはその塩、N-ヒドロキシイミノ二酢酸もしくはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸もしくはその塩、1-もしくは3-プロパンジアミン四酢酸もしくはその塩、1-もしくは3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸もしくはその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸もしくはその塩、またはリン酸もしくはその塩などの金属キレート化剤も含みうる。
【0048】
組成物は、1つ以上の湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムもしくはステアリン酸マグネシウム)、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤、可溶化剤、および緩衝剤(例えば、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、酒石酸塩もしくはリンゴ酸塩)、可溶化剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ベンジルアルコール、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、シクロデキストリン、もしくはポロキサマー)、または錯化剤(例えば、シクロデキストリン、特に、2-ヒドロキシプロピル-β、ジメチルβ、2-ヒドロキシエチルβ、3-ヒドロキシプロピルβ、およびトリメチルβなどの置換βシクロデキストリン)も含みうる。
【0049】
本明細書で提供される医薬組成物に利用されうる適切な水溶性および非水溶性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散の場合には要求粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されうる。
【0050】
いくつかの実施態様では、組成物はアモルファス粉末である。アモルファス粉末を安定化する賦形剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルピロリドン(PVP)などがさらに加えられうる。
【0051】
化合物を製造する方法
さまざまな方法論が、本明細書で開示された化合物の作成に適応されうる。一般に、ステップは(1)アンサマイシンを17-デメトキシ-17-アミノ類似体(例えば、17-AGまたは17-AAG)へ変化させること、(2)アンサマイシン内のベンゾキノンを還元し、ヒドロキノンを得ること、(3)任意にヒドロキノンの塩を形成すること、ならびに(4)化合物/塩を上記で概要を述べたような水素結合供与体および任意に1つ以上の他の成分と組み合わせることを含む。
【0052】
ベンゾキノン含有アンサマイシンは、化合物を産生する菌株の発酵によって得られうる(例えば、国際公開第03/072794号および米国特許第3,595,955号を参照のこと)。あるいは、アンサマイシンを産生するために、合成または半合成方法論が用いられうる(米国特許第5,387,584号および国際公開第00/03737号を参照のこと)。さらに、ゲルダナマイシンなどの単離された発酵物質の供給業者があり、それゆえ、そのような物質は容易に利用可能である。
【0053】
例えば、ゲルダナマイシンは適切な微生物の発酵培養から単離され得、当該技術分野で周知であるさまざまな機能付与反応を用いて誘導体化されうる。代表例は、金属触媒カップリング反応、酸化、還元、求核剤との反応、求電子剤との反応、ペリ環状反応、保護基の設置、保護基の除去などを含む。さまざまなベンゾキノンアンサマイシンの類似体を作成する多くの方法が、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,261,989号;第5,387,584号;および第5,932,566号、ならびにJ. Med. Chem. 1995, 38, 3806-3812を参照のこと。これらは参照することにより本明細書に援用される)。
【0054】
アンサマイシンのベンゾキノン部分を還元するために、さまざまな方法および反応条件が用いられうる。還元剤としてハイドロサルファイトナトリウムが用いられうる。用いられうる他の還元剤は、無水酢酸または酢酸と混合した亜鉛末、アスコルビン酸および電気化学的還元を含むが、これらに限定されない。典型的には、ゲルダナマイシン類似体は、EtOAcなどの有機溶媒に溶解される。用いられうる他の溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、THF、MeTHF、ジエチルエーテル、ジグリム、1,2-ジメトキシエタン、MTBE、THP、ジオキサン、2-エトキシブタン、メチルブチルエーテル、酢酸メチル、2-ブタノン、水およびその混合物を含むが、これらに限定されない。次いで2当量以上のハイドロサルファイトナトリウムが、水溶液として(5〜30% (m/v)、または例えば10% (m/v))、室温で反応槽に加えられる。ハイドロサルファイトナトリウムの水溶液は不安定であり、それゆえ使用に先立って新たに調製される必要がある。二相性混合物を勢い良く混ぜることで、合理的な反応速度を保証する。
【0055】
還元が完了すると、粗反応生成物が本明細書で提供される医薬組成物の調製に直接的に(すなわち、精製することなく)用いられ得、それによってヒドロキノンの酸化を最小化する。
【0056】
本明細書で提供されるヒドロキノンは、酸との反応によって、またはアミノ酸の酸ハロゲン化物との反応によって塩形態に変化しうる。実施例では、C-17アリルアミノ基がプロトン化され、C-17アンモニウム塩ヒドロキノンゲルダナマイシン類似体を生じる。さらに、形成されたC-17アンモニウム塩ヒドロキノンは、水溶液での高溶解性(溶解度 >200 mg/mL)の利益を付加したが、これは17-AAG(溶解度 <100 μg/mL)と異なっている。
【0057】
ヒドロキノンのアンモニウム塩は、EtOAc、DCM、IPAまたはジオキサンなどの有機溶媒中のHClなどの酸の溶液の、有機溶液中のヒドロキノン含有アンサマイシンへの添加によって形成される;有機溶媒は独立にアセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、THF、MeTHF、ジエチルエーテル、ジグリム、1,2-ジメトキシエタン、MTBE、THP、ジオキサン、2-エトキシブタン、メチルブチルエーテル、酢酸メチル、または2-ブタノンであり得、反応は窒素もしくは他の不活性ガスまたは不活性ガスの混合物の雰囲気下で行われる。
【0058】
生成物が溶液から沈殿する場合には、ヒドロキノンのアンモニウム塩は濾過によって収集される。アンモニウム塩ヒドロキノンが沈殿しない場合には、反応溶液を減圧下で濃縮し、生成物を得る。
【0059】
有機酸または無機酸を用いることによって、さまざまなアンモニウム塩ヒドロキノンアンサマイシンが合成されうる。用いられうるいくつかの酸は、HCl、HBr、H2SO4、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフリン酸、カンファースルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、シクラミン酸、チオシアン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、シュウ酸などを含むが、これらに限定されない。例えば、ベルゲ(Berge)ら(1977)
「医薬塩(Pharmaceutical Salts)」, J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照のこと。約-10〜約7、約-10〜約4、約-10〜約1、および約-10〜約-3のpKaを有するいずれかの酸が用いられ得、アンモニウム塩ヒドロキノンを生じる。
【0060】
組成物を製造する方法
組成物は、下記の製法を用いて製造されうる:氷水浴内で蒸留水を冷却する;アルゴンを、溶液を通じて泡立てうる。次いで水素結合供与体を加え得、溶解させる。次いで抗酸化剤およびいずれかの他の付加的な成分を加えうる。全ての固体が溶解した時点でヒドロキノンアンサマイシンを加え、氷水浴を除去する。固体が完全に溶解すると、溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥する。次いで、結果生じる粉末をアルゴン下で保存する。
【0061】
本明細書で開示された医薬組成物は、固体または液体形態にて投与用に特別に製剤化され得、例えば錠剤、カプセル剤、水薬(水溶液もしくは非水溶液、または懸濁液)、散剤、顆粒剤、またはペースト剤である。
【0062】
組成物の投与
本明細書で開示された医薬組成物が、抗癌剤などの抗増殖剤として使用される場合、それらは単独でまたは医薬組成物内で付加的な医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて、標準的薬務に従って投与されうる。組成物は、経口的または非経口的に投与されうる。非経口投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下および局所的投与を含む。
【0063】
医薬的使用および治療の方法
癌を治療する方法、Hsp90を抑制する方法、および/または過剰増殖性疾患を治療する方法であり、治療的に有効な量の上記の化合物または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする患者に経口的に投与することを含む方法もまた本明細書で提供される。本明細書で開示されたヒドロキノン含有化合物は、インビトロおよびインビボで、生理的pHで17-アミノ置換ベンゾキノンゲルダナマイシン類似体(例えば、17-AAG)へ急速に酸化する。それ自体、ヒドロキノン類似体は17-アミノ置換ゲルダナマイシン類似体が示すのと類似の生物学的活性および治療特性を示し、17-アミノ置換ゲルダナマイシン類似体が有用である全ての既知の治療指標用に用いられうる。17-アミノ-置換ゲルダナマイシン類似体、特に17-AGおよび17-AAGは、Hsp90の非常に強力で選択的な阻害剤である。癌、腫瘍性疾患状態または過剰増殖性疾患は、消化管間質腫瘍(GIST)、大腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、軟部組織肉腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌(stadenocarcinoma)、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、子宮体癌、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原発性骨髄繊維症、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、神経内分泌癌、およびカルチノイド腫瘍からなる群から選択される。
【0064】
特定の実施態様では、癌は消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、前立腺癌、乳癌、メラノーマ、慢性骨髄性白血病、および非小細胞肺癌からなる群から選択される。
【0065】
患者に対して毒性をもたらすことなく、特定の患者についての所望の治療反応、組成物、および投与様式を達成するのに効果的な化合物の量を得るために、医薬組成物におけるヒドロキノンアンサマイシンの実際の投与量水準は変化しうる。
【0066】
選択される投与量水準は、利用される特定のゲルダナマイシン類似体またはその塩の活性、投与経路、投与期間、利用される特定の化合物の排出または代謝の速度、吸収の速度および範囲、治療期間、他の薬物、利用される特定の化合物と組み合わせて用いられる化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、病気、全体的な健康および前病歴など、医療の技術分野で周知である要因を含むさまざまな要因に依存するであろう。投与される用量は、10 mg〜2000 mg、50 mg〜1500 mg、または100 mg〜800 mgでありうる。例えば、用量は700 mgでありうる。用量は、例えば100および200 mg錠剤またはカプセル剤にて投与されうる。
【0067】
組成物は毎日、1日おきに、週3回、週2回、週1回、または隔週に投与されうる。投薬スケジュールは「休薬期間」を含み得、薬物は2週間続けて投与され得、1週間休み、または休薬期間なく連続的に投与されうる。
【0068】
併用療法
いくつかの実施態様では、癌の治療における選択的活性を達成するために、本明細書に記載した医薬組成物は他の治療剤と組み合わせて用いられうる。特定の実施態様では、本明細書に記載したゲルダナマイシン類似体は、適切に折り畳まれたHsp90クライアントタンパク質の細胞水準を減少させるために用いられるが、Hsp90クライアントタンパク質は次いで第2薬剤によって効果的に抑制される。例えば、ベンゾキノンアンサマイシン類似体のHsp90への結合は、クライアントタンパク質のプロテアソームへのターゲッティング、続く分解をもたらす。プロテアソームを標的とし、抑制する薬剤、例えばベルケード(Velcade(登録商標))を用いると、細胞のアポトーシスおよび細胞死の増加をもたらす。
【0069】
本明細書に記載した製剤と組み合わせて用いられうる治療剤のいくつかの例は、アルキル化剤;抗血管形成剤;代謝拮抗剤;エピドフィロトキシン;プロカルバジン;ミトキサントロン;白金配位錯体;有糸分裂阻害薬;生物学的応答調節物質および増殖阻害剤;ホルモン/抗ホルモン治療剤;造血増殖因子;アントラサイクリンファミリーの薬物;ビンカ薬;マイトマイシン;ブレオマイシン;細胞傷害性ヌクレオシド;エポシロン;ディスコデルモリド;プテリジンファミリーの薬物;ジイネン;およびポドフィロトキシンを含む。それらのクラスの特に有用なメンバーは、例えばカルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、ジクロロメトトレキセート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンもしくはポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシド、リン酸エトポシドもしくはテニポシドなど、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ドキソルビシン、ビンデシン、ロイロシン、パクリタキセル、タキソール、タキソテール、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブメシレート、またはゲムシテビン(gemcitebine)を含む。
【0070】
他の有用な薬剤は、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシチビン(gemcitibine)、イフォサミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキセート、トリメトレキセート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、CPT-11、トポテカン、シタラビン(ara-C)、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロンおよびインターロイキンを含む。特に有用な薬剤は、タキソテール、グリベック(Gleevec)(イマチニブ)、タルセバ(Tarceva)(エルロチニブ)、スーテント(Sutent)(スニチニブ)、タイケルブ(Tykerb)(ラパチニブ)、およびゼローダ(Xeloda)(カペシタビン)を含む。
【0071】
本明細書に記載した製剤は、放射線療法と関連しても用いられうる。化学療法剤/放射線療法は、当該技術分野で周知の治療プロトコールに従って投与されうる。化学療法剤および/または放射線療法の投与は、治療される疾病ならびにその疾病についての化学療法剤および/または放射線療法の既知の効果に依存して変化しうることは、当業者には明らかであろう。治療プロトコール(例えば、投与量および投与期間)は、患者に投与された治療剤(すなわち、抗悪性腫瘍薬または放射線)の観察される効果を考慮して、および投与された治療剤に対する観察される疾病の応答を考慮して変化しうる。
【0072】
また一般に、本明細書に記載したゲルダナマイシン類似体および第2化学療法剤は、同一の医薬組成物にて投与される必要はなく、異なった物理的および化学的特徴のために、異なった経路によって投与される必要がありうる。例えば、ゲルダナマイシン化合物は経口的に投与され得、一方で第2化学療法剤は静脈内に投与される。可能であれば同一の医薬組成物にてなされる投与様式および投与の妥当性の決定は、熟練した臨床医の知識の十分範囲内である。初回投与は当該技術分野で周知である確立されたプロトコールに従ってなされ得、次いで、観察される効果に基づいて、投与量、投与様式および投与期間が熟練した臨床医によって変更されうる。
【0073】
化学療法剤または放射線の特定の選択は、主治医の診断および彼らの患者の病気の判断、ならびに適切な治療プロトコールに依存するであろう。
【0074】
ゲルダナマイシン類似体ならびに第2化学療法剤および/または放射線は、同時に(例えば、同時に、本質的に同時にまたは同一の治療プロトコールの範囲内)または連続的に投与されうるが、これは増殖性疾患の性質、患者の病気、ならびにゲルダナマイシン類似体と組み合わせて(すなわち、単一治療プロトコールの範囲内)投与される化学療法剤および/または放射線の実際の選択に依存する。
【0075】
ゲルダナマイシン類似体、ならびに化学療法剤および/または放射線が同時にまたは本質的に同時に投与されない場合、最適投与順序は腫瘍によって異なりうる。したがって、特定の状況ではゲルダナマイシン類似体が第1に投与され得、次いで化学療法剤および/または放射線が投与されうる;ならびに他の状況では化学療法剤および/または放射線が第1に投与され得、次いでゲルダナマイシン類似体が投与されうる。この交互投与は、単一治療プロトコールの間繰り返されうる。治療プロトコールの間の投与順序の決定、および各治療剤の投与の繰り返し数は、治療される疾病および患者の病気の評価の後、熟練した医師の知識の十分範囲内である。例えば、特に細胞毒性剤の場合、化学療法剤および/または放射線は第1に投与され得、治療はゲルダナマイシン類似体の投与で継続され、利点があると決定された場合には、化学療法剤および/または放射線などの投与が続き、治療プロトコールが完了するまで継続する。
【0076】
したがって、開業医は経験および知識に従って、治療が進行するにつれて、個々の患者の要求に従って、治療の成分(治療剤、すなわち、ゲルダナマイシン類似体、化学療法剤または放射線)の投与用の各プロトコールを変更しうる。
【0077】
ゲルダナマイシン類似体が別の化学療法剤または放射線と組み合わせて投与される場合、各薬剤の用量はほとんどの場合、単剤療法用の対応する用量よりも少ないであろう。
【0078】
実施例
本発明はここで一般的に記載され、下記の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろうが、実施例は単に本発明の特定の態様および実施態様の説明のためにのみ含まれ、本発明を限定することは意図しない。
【実施例1】
【0079】
【化6】

化合物1(0.450 g、0.768 mmol、1.0当量)をDCM(50 mL)に溶解し、10%ハイドロサルファイトナトリウム水溶液(50 mL)と共に撹拌した。溶液を30分間撹拌した。有機層を収集し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、丸底フラスコへ移した。この溶液にジオキサン中のHClの溶液(4 N、0.211 mL、1.1当量)を加えた。生じた混合物を窒素下で30分間撹拌させた。黄色固体がゆっくりと溶液から析出した(crashed)。黄色固体をMeOH/EtOAcからの再結晶によって精製し、0.386 gの化合物2を得た。
【実施例2】
【0080】
【化7】

ゲルダナマイシン(1.12g、2 mmol、1当量)を無水DCM(5 mL)に加えた。MeOH中のNH3をこの溶液(9 mL、100 mmol、50当量)に加え、24時間撹拌させた。そのとき反応溶液をDCMで希釈し、水で抽出し、次いで希HClで抽出した。有機層を収集し、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮し、紫色固体を得た。この固体をアセトン/ヘプタンから2回再結晶化し、0.239の17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシンを得た。
【0081】
17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(0.55g、1 mmol、1当量)をEtOAc(100 mL)に溶解した。新たに調製した10%ハイドロサルファイトナトリウム水溶液(10 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。色は暗紫色から鮮黄色へ変化したが、これは反応完了を示す。層を分離し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をEtOAc(2 X 10 mL)ですすいだ。混合濾液をEtOAc(1 mL)中の1.5 M HClで20分以上酸性化し、pH 2とした。結果生じるスラリーを室温で1.5時間撹拌した。固体を濾過によって単離し、酢酸エチル(10 mL)ですすぎ、真空下で乾燥させ、生成物(0.524g、収率87%)を得た。
【実施例3】
【0082】
2 L丸底フラスコに磁気撹拌棒、蒸留水(426 mL)およびゴム隔膜付きキャップを入れた。氷水浴内で溶液を冷却し、溶液を通じてアルゴンを20分間泡立てた。次いで0℃でアルゴン雰囲気下、溶液を撹拌した。
【0083】
溶液にD(+)トレハロース二水和物(25.6 g、67.7 mmol、40% wt/wt、全固体の重量によって計算した)を加えた。トレハロース粉末は、完全に溶解するまで約30秒かかった。溶液にL-アスコルビン酸(8.4 g、47.9 mmol、1.0当量、ヒドロキノンアンサマイシンの量に基づく)を加えた。アスコルビン酸固体は、完全に溶解するまで約2.5分かかった。
【0084】
透明な溶液にヒドロキノンアンサマイシン2を固体(29.9 g、47.9 mmol、1.0当量)として加え、氷水浴を除去した。固体は完全に溶解するまでおよそ5〜10分かかった。
【0085】
溶液はより粘性を持ち、泡立ちやすくなり、薄いピンク色になった。固体が完全に溶解すると、ピンク色の溶液を1.8 L凍結乾燥機トレイへ移した。
【0086】
フラスコをすすぐために付加的な50 mLの蒸留水を用い、その内容物をトレイへ移した。凍結乾燥機は下記のサイクルに従って作動させた:セグメント1−予備凍結:-34℃、0.5時間;セグメント2−初乾:-20℃、15時間(真空下);セグメント3−再乾:0℃、30時間(真空下);セグメント4−保持:20℃、24時間(真空下)。
【0087】
凍結乾燥機トレイを凍結乾燥機から除去し、58.0 gの黄色粉末を単離した。
【0088】
化合物2ならびに賦形剤、それぞれ、コーンスターチ、グリセリルモノステアレート、デキストロース、フルクトース、セルロース、マルトース、マンニトール、ビタミンE コハク酸塩、ステアリン酸、およびラクトース一水和物を含む組成物は、上記の製法を用いて製造した。全ての組成物、さらにトレハロースを含む組成物を、室温で4週間保存した。この期間の終わりに、重量で5%を超える17-AAGを含む組成物はなく、したがって記載した賦形剤の全てがヒドロキノンアンサマイシンを安定化する能力を有することを示している。
【0089】
本明細書で開示された他の水素結合供与賦形剤、またはそれらの同等物のいずれかを用いて組成物を製造するために、類似の製法が用いられうる。
【0090】
同等物および参照することによる援用
本明細書に記載した実施例および実施態様は単に例示することが目的であり、そのさまざまな修正または変更が当業者に提示され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることは理解されるであろう。本明細書で引用された全ての米国特許および米国特許出願公報は、全ての目的のために、それらが全体として参照することにより本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水素結合供与体;および(2)式1:
【化1】

[式中、各々独立に:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
Rは各々独立に水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14、もしくはハロゲン化物であり;R2は水素、アルキル、もしくはアラルキルであり;またはR1およびR2はまとめてそれらが結合する炭素と共に、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-、もしくは-(C=N-R)-を表し;
R3およびR4は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR3はR4とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R5はH、アルキル、アラルキル、および式1aを有する基からなる群から選択され:
【化2】

[式中、R17は水素、ハロゲン化物、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)、および-CH2O-ヘテロサイクリルからなる群から独立に選択され];
R6およびR7は共に水素であり;またはR6およびR7はまとめて結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R10およびR11は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR10およびR11は、それらが結合する窒素とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または-[(C(R)2)p]-R16であり;
R13およびR14は各々独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、および-[(C(R)2)p]-R16からなる群から選択され;またはR13およびR14は、それらが結合する窒素とまとめて4〜8員の任意に置換されたヘテロ環を表し;
R16は各々独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)、および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5、または6であり;
R18は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;またはR18はR19とまとめて4〜8員の任意に置換された環を表し;
R20、R21、R22、R24、およびR25は、各々独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18、または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27は各々独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式6の不斉中心での絶対立体化学は、RもしくはS、またはその混合物であり得;二重結合の立体化学は、EもしくはZ、またはその混合物でありうる]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
水素結合供与体が糖である、請求項1の組成物。
【請求項3】
式1の化合物が:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
水素結合供与体がコーンスターチ、グリセロール、グリセリル(C1-C20)エステル、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、トレハロースまたはマンニトールである、請求項1の組成物。
【請求項5】
水素結合供与体とヒドロキノンアンサマイシンの比が約5:95〜約99:1 w/wである、請求項1の組成物。
【請求項6】
水素結合供与体とヒドロキノンアンサマイシンの比が約5:95〜約80:20 w/wである、請求項1〜請求項3のいずれか1項の組成物。
【請求項7】
水素結合供与体とヒドロキノンアンサマイシンの比が約5:95〜約40:60 w/wである、請求項1〜請求項3のいずれか1項の組成物。
【請求項8】
水素結合供与体がトレハロースまたはマンニトールであり;トレハロースまたはマンニトールとヒドロキノンアンサマイシンの比が約5:95〜約40:60 w/wである、請求項1の組成物。
【請求項9】
(1)トレハロースまたはマンニトール;および(2)
【化7】

からなる群から選択されるヒドロキノンアンサマイシン、またはその医薬的に許容される塩を含み、ヒドロキノンアンサマイシンとトレハロースまたはマンニトールの比が約5:95〜約80:20 w/wである、医薬組成物。
【請求項10】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項の医薬組成物。
【請求項11】
治療的に有効な量の請求項1の組成物を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む、過剰増殖性疾患の治療方法。
【請求項12】
前述の哺乳類がヒトである、請求項11の方法。
【請求項13】
前述の過剰増殖性疾患が乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、腎細胞癌、悪性メラノーマ、膵臓癌、肺癌、結腸直腸癌、大腸癌、脳癌、腎臓癌、頭頸部癌、膀胱癌、甲状腺癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、または骨髄異形成症候群である、請求項11の方法。
【請求項14】
Hsp90を抑制する方法であり、治療的に有効な量の請求項1の組成物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2010−523710(P2010−523710A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503239(P2010−503239)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/060063
【国際公開番号】WO2008/128063
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】