説明

ヒドロシリル化触媒

三座ピリジンジイミン配位子を含有するマンガン、鉄、コバルトもしくはニッケル錯体ならびに効率的かつ選択的なヒドロシリル化反応におけるそれらの使用がここに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2009年7月10日に出願され、参照によりそのすべての内容をここに組み入れる米国仮出願番号第61/224,598号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的には遷移金属含有化合物に、より詳細にはマンガン、鉄、コバルト、もしくはニッケル錯体含有ピリジンジイミン配位子に関し、そして効率的かつ選択的なヒドロシリル化触媒としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的にシリルヒドリドと不飽和の有機基との間の反応を含むヒドロシリル化化学は、シリコーン界面活性剤、シリコーン流体およびシラン、ならびに封止剤、接着剤およびシリコーン系コーティング剤のような多くの付加硬化性産物のような市販のシリコーン系産物を製造する合成ルートの基本である。しかしながら、ヒドロシリル化反応は典型的には、白金もしくはロジウム金属錯体のような貴金属触媒によって触媒されてきた。
【0004】
さまざまなき金属錯体触媒は当分野で既知である。例えば、米国特許3,775,452号は配位子として白金錯体を含有する不飽和シロキサンを開示する。この型の触媒はKarstedt触媒として知られる。文献に記載されている他の例示的な白金系ヒドロシリル化触媒は米国特許3,159,601号に開示されるAshby触媒、米国特許第3,220,972号に開示されるLamoreaux触媒、ならびにSpeier,J.L.、Webster J.A.およびBarnes G.H.、J.Am.Chem.Soc.79、974(1957)に開示されるSpeier触媒を含む。
【0005】
これらの貴金属錯体触媒はヒドロシリル化反応のための触媒として広く受け入れられているが、それらはいくつかの明確な欠点を持っている。一つの欠点は、貴金属錯体触媒が特定の反応の触媒において非効率的であるというものである。例えば、アリルポリエーテルとシリコーンヒドリドとの貴金属錯体触媒を用いるヒドロシリル化の場合、シリコーンヒドリドの有用な産物への完全な転換を確かにするために、シリコーンヒドリドの量と比較して過剰量のアリルポリエーテルの使用が触媒の効率の欠如を補うために必要とされる。ヒドリシリル化反応が完了したとき、この過剰量のアリルポリエーテルは、(A)追加のステップによって除去される(これはコスト効率が良くない)必要があるかまたは(B)産物に残されてしまう(最終使用の用途におけるこの産物の減少した性能という結果となる)かのいずれか一方となる。さらに、過剰量のアリルポリエーテルの使用は、典型的にはかなりの量のオレフィンイソマーのような望まれない副産物を生じ、これは結果として望ましくない臭気を放つ副産物の化合物の生成を導く。
【0006】
貴金属錯体触媒の他の欠点は、しばしばそれらは特定の型の反応物を含むヒドロシリル化反応の触媒において効率的ではないということである。貴金属錯体触媒が、リン化合物およびアミン化合物のような触媒毒の影響を受けやすいことは知られている。従って、不飽和のアミン化合物を含むヒドロシリル化において、当分野に知られる貴金属触媒は、それらの不飽和アミン化合物とSiヒドリド基質との間の直接的な反応を促進する点において通常、効率が劣り、そしてしばしば望ましくないイソマーの混合物の生成を導く。
【0007】
さらに、貴金属が高価であるので、貴金属含有触媒はシリコーン配合物のコストの大きな割合を構成し得る。昨今、貴金属を含む貴金属に対する世界的な需要が増加し、白金の値段が高値を記録するように駆り立て、効率的でかつ低コストの代替的な触媒への必要性を生み出す。
【0008】
ヒドロシリル化触媒としての使用のために、貴金属の代替として特定の鉄錯体が注目を集めてきた。例示的に、専門誌の記事は、Fe(CO)が高温においてヒドロシリル化反応を触媒することを開示した(Nesmeyanov,A.N.et al.,Tetrahedron 1962, 17, 61)、(Corey,J.Y.et al.,J. Chem. Rev. 1999, 99, 175)、(C.Randolph、M.S.Wrighton、J.Am.Chem.Soc.108(1986)3366)。しかしながら、脱水素シリル化によって生じる不飽和シリルオレフィンのような望まれない副産物が同様に生成される。
【0009】
ピリジンジ−イミン(PDI)配位子とアニリン環のオルト位のイソプロピル置換とを含有する5配位のFe(II)錯体が不飽和の炭化水素(1−ヘキサン)とPhSiHもしくはPhSiHのような第一級シランおよび第二級シランとのヒドロシリル化のために用いられてきた(Bart et al.、J.Am.Chem.Soc.,2004年126、13794)(Archer,A.M.、Organometallics 2006、25、4269)。しかしながら、これらの触媒の限界の一つは、上述の第一級フェニル置換シランおよび第二級フェニル置換シランと一緒でのみ効率的であり、そして例えばEtSiHのような第三級シランもしくはアルキル置換シラン、または(EtO)SiHのようなアルコキシ置換シランと一緒では効率的ではないことである。
【0010】
他の鉄PDI錯体もまた開示される。米国特許第5,955,555号は、特定の鉄もしくはコバルトのPDIジアニオン錯体の合成を開示する。好ましいアニオンはクロリド、ブロミドおよびテトラフルオロボラートである。米国特許第7,442,819号は、2つのイミノ基によって置換される「ピリジン」環を含有する特定の三環式配位子の鉄およびコバルト錯体を開示する。米国特許第6,461,994号、米国特許第6,657,026号および米国特許第7,148,304号は、等k低の遷移金属PDI錯体を含有するいくつかの触媒系を開示する。米国特許第7,053,020号は、とりわけ、一つもしくはそれ以上のビスアリールイミノピリジン鉄もしくはコバルト触媒を含有する触媒系を開示する。しかしながら、それらの引用文献に開示される触媒および触媒系は、オレフィン重合化および/もしくはオリゴマー化と関連しての使用が記載されており、ヒドロシリル化反応と関連してではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、ヒドロシリル化産業において、ヒドロシリル化反応を選択的かつ効率的に触媒するのに効果的な非貴金属系触媒への継続した必要性が存在する。本発明はこの必要性に対する一つの解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、本発明は式(I)もしくは式(II):
【化1】


の錯体に関し、
ここで、
GはMn、Fe、NiもしくはCoであり;
、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;R23の各々は独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
−L
【化2】


であり、
ここで、
10、R11、R13、R14、R15およびR16の各々は独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニルもしくはC2−C18アルキニルであり、ここで水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16は任意選択で置換され;
12の各々は独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18置換アルケニル、C2−C18アルキニル、C2−C18置換アルキニル、アリール、置換アリールであり、ここでR12は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
17およびR18の各々は独立して、アルキル、置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R17およびR18の各々は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、R17およびR18が一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
19およびR20の各々は独立して、SiとCとを結合する共有結合、アルキル、置換アルキル、またはヘテロ原子であり、R19およびR20は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、ここでL−LはS1およびS2の不飽和部位を介してGと結合する。
【0013】
他の態様において、本発明はシリルヒドリドと少なくとも一つの不飽和の基を含有する化合物とを含有する組成物をヒドロシリル化するプロセスに関する。プロセスは(i)任意選択で溶媒の存在下において、組成物を式(I)、式(II)、式(III)もしくは式(IV)の金属錯体と接触させ、シリルヒドリドを少なくとも一つの不飽和基を含有する化合物と反応させるようにして金属錯体を含有するヒドロシリル化産物を産生するステップ、(ii)任意選択でヒドロシリル化産物から金属錯体を除去するステップを含む。式(III)は、
【化3】


であり、そして式(IV)は、
【化4】


であり、
ここで、
GはMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立してH、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
22およびR23の各々は独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリール基であり、R22およびR23は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、好ましくはR22はベータ水素(G−アルファC−ベータC−ベータ水素)を含有しない;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
はR1011C=CR1213もしくは
【化5】


であり、
はR1415C=CR1617もしくは
【化6】


であり、
ここで、R10〜R21の各々は独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニルもしくはC2−C18アルキニルであり、
任意選択で、R18〜R19が、ならびに/または、R20〜R21が、ならびに/または、R10、R11、R12、R13の任意の二つが、ならびに/または、R14、R15、R16、R17の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
ここで、水素以外のR10〜R21は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして水素以外のR10〜R21は任意選択で置換され、そしてここでLおよびLは不飽和部位を介してGと結合する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施態様において、上述のような式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の錯体が提供される。これらの式に関係して、Gは、すべての原子価状態のMn、Fe、NiもしくはCoであってよい。好ましくはGは鉄もしくはコバルトである。より好ましくは、GはFe(II)およびFe(III)のようなFeである。
【0015】
ここで使用されるとき、「アルキル」は直鎖、分岐および環状のアルキル基を含む。アルキルの非限定的な具体例は、メチル、エチル、プロピル、およびイソブチルを含むが、これらに限定されない。
【0016】
ここでは「置換アルキル」は一つもしくはそれ以上の置換基を含有するアルキル基を意味し、置換基はそれらの基を含有する化合物が供されるプロセス条件において不活性である。置換基はまた、プロセスには実質的に干渉しない。
【0017】
ここでは「アリール」は、一つの水素原子が取り除かれた任意の芳香族炭化水素の基を非限定的に意味する。アリールは一つもしくはそれ以上の芳香族環を含んで良く、それらは縮合しているかまたは単一の結合もしくは他の基と結合している。アリールの非限定的な具体例は、トリル、キシリル、フェニルおよびナフタレニルを含むが、これらに限定されない。
【0018】
ここでは「置換アリール」は上の「置換アルキル」の定義に説明されるように置換される芳香族基を意味する。アリールと同様に、置換アリールは一つもしくはそれ以上の芳香族環を含んで良く、それらは縮合しているかまたは単一の結合もしくは他の基と結合する。しかしながら、置換アリールがヘテロ芳香族環を持つとき、置換アリール基中の自由原子価は、炭素を代替するヘテロ芳香族環のヘテロ原子(たとえば窒素のような)であり得る。他に言及されないときには、ここでの置換アリール基は1から約30の炭素原子を含有することが好ましい。
【0019】
ここでは「アルケニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖の、分岐のもしくは環状のアルケニル基を意味し、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合において、もしくは基内のどこかのいずれか一方であり得る。アルケニルの非限定的な具体例は、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナンを含むがこれらには限定されない
【0020】
ここでは「アルキニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含有する任意の直鎖の、分岐のもしくは環状のアルキニル基を意味し、ここで置換の位置が炭素−炭素三重結合において、もしくは基内のどこかのいずれか一方であり得る。
【0021】
「不飽和」によって、一つもしくはそれ以上の二重結合もしくは三重結合を意味する。好ましい実施態様において、それは炭素−炭素結合もしくは三重結合を指す。
【0022】
ここでは「不活性の官能基」は、ヒドロカルビルもしくは置換ヒドロカルビル以外の基を意味し、それらの基はその基を含有する化合物が供されるプロセス条件において不活性である。不活性の官能基はまた、それらを持つ化合物が参加する可能性のあるここで記載される任意のプロセスとは実質的に干渉しない。不活性の官能基の例は、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモおよびイオド)、−OR30〔R30はヒドロカルビルもしくは置換ヒドロカルビル〕のようなエーテルを含む。
【0023】
ここでは「ヘテロ原子」は、炭素を除く13〜17族元素の任意のものを意味し、例えば、酸素、窒素、ケイ素、リン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
ある実施態様において、ここに開示される錯体は、以下に示される置換基を持つ式(I)、(II)、(III)および(IV)のものを含む。
(1)R23
【化7】


であり;そして/または(2)Rは水素、メチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピルであり;そして/または(3)RおよびRは両方ともメチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピル基であり;そして/または(4)Rはメチルであり;そして/または(5)R−Rは水素であり;そして/または(6)R10、R11、R13、R14、R15およびR16は水素であり;そして/または(7)R22は−CHSiR20であってここでR20の各々がC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、好ましくはR20はメチル基である。
【0025】
ある実施態様において、式(II)による錯体は:
【化8】


であり、ここで
GはMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して水素、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
17およびR18の各々は独立して、アルキル、置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R17およびR18の各々は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、R17およびR18が一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を任意選択で形成し;
23の各々は独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R23は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良い。
【0026】
構造式(VI)によって表わされる錯体は好ましくは以下に記載の置換基を持つ:
(1)R23
【化9】


であり;そして/または(2)Rは水素、メチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピルであり;そして/または(3)RおよびRは両方ともメチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピル基であり;そして/または(4)Rはメチルであり;そして/または(5)R−Rは水素であり;そして/または(6)R17およびR18はメチル基である。
【0027】
式(VI)による好ましい錯体は、構造式(VII):
【化10】


によって表わされ、
ここで、G、R1−R9およびR23は式(VI)と関連して上述されるように定義される。
【0028】
式(II)に関連して、L−Lは典型的に分子当たり少なくとも2個の不飽和部位を含有する。L−Lの更なる例は、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンおよびノルボルナジエンを含むがこれらには限定されない。
【0029】
ある実施態様において、L−Lは分子当たり少なくとも4つの不飽和部位を含有する。この状況では、それぞれの金属がL−Lの2つの不飽和部位へと結合する、金属−PDIダイマー(PDI−金属−L−L−金属−PDI)を形成できる。金属−PDIダイマーの例示的なL−Lは、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンである。
【0030】
式(I)の錯体を調製するためにさまざまな方法を使用できる。本発明の一実施態様において、式(I)の錯体の合成のためのプロセスが提供される。プロセスは、式(V)の化合物を窒素の存在下で還元剤と反応させるステップを含み、ここで式(V)は、
【化11】


であり、
GはMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立してH、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
23の各々は独立してC1−C18アルキル基もしくはC1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R23は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成し、
Xは好ましくはF、Cl、Br、I、CF40SOもしくはR50COOのようなアニオンであり、ここでR40は共有結合もしくはC1−C6アルキル基であり、そしてR50はC1−C10ヒドロカルビル基である。
【0031】
好ましくは還元剤は−0.6vよりも負である還元電位を持つ。(Chem.Rev.1996、96、877−910に記載されるように対フェロセンである。より大きな負の数が、より大きな還元電位であることを表わす)もっとも好ましい還元剤は、−2.8〜−3.1vの範囲の還元電位を持つ。例示の還元剤は、ナトリウムナフタレニドを含むが、これには限定されない。
【0032】
構造式(V)によって表わされる化合物を調製する方法は、当業者に既知である。例えば、式(V)の化合物を、PDI配位子をFeBrのような金属ハライドと反応させることによって調製できる。典型的には、PDI配位子は適切なアミンもしくはアニリンと2,6−ジアセチルピリジンおよびその誘導体とを縮合する事によって産生される。所望ならPDI配位子は既知の芳香族置換化学によってさらに修飾され得る。
【0033】
式(II)の錯体は、式(I)の錯体の調製に関連して上に定義されるように、式(V)の錯体をL−Lと反応させるステップによって調製でき、ここでL−L
【化12】


であり、
10、R11、R13、R14、R15およびR16の各々は独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニルもしくはアリールであり、ここで水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16は任意選択で置換され;
12の各々は独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18置換アルケニル、C2−C18アルキニル、C2−C18置換アルキニル、アリール、置換アリールであり、ここでR12は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成し;
17およびR18の各々は独立して、アルキル、置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R17およびR18の各々は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、R17およびR18が一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
19およびR20の各々は独立して、SiとCとを結合する共有結合、アルキル、置換アルキル、またはヘテロ原子であり、R19およびR20は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有する。
【0034】
式(III)の錯体は、式(III)に関連して上述されるように、PDIFeClのような式(V)の化合物とLおよびLとを反応させることによって調製できる。式(IV)の錯体は、式(V)の化合物を、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、Gringnards、アルミニウムアルキル、水銀アルキルおよびチタニウムアルキルのような含有アルキル化剤と反応させることによって調製できる。
【0035】
ここで使用されるとき、アルカリ金属塩は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムのモノアルキル塩を含む。アルカリ土類金属塩は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのジアルキル塩を含む。本発明に好適なGrignardsは、ハロゲン化アルキルマグネシウムを含む。アルミニウムアルキルは、例えばトリアルキルアルミニウム塩を含む。水銀アルキルはジアルキル水銀塩を指す。タリウムアルキルはモノアルキル及びトリアルキルタリウム塩を含む。
【0036】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)および(VII)の金属錯体は、産業として実施されるヒドロシリル化反応のための触媒として有用である。例えば、(1)シリコーンヒドリド流体と末端不飽和ポリマーの架橋および(2)末端不飽和アミンと第3級シランとのヒドロシリル化である。従って本発明の金属錯体は、例えば剥離コーティング、室温加硫剤、封止剤、接着剤のようなコーティング剤、農業およびパーソナルケア用途のための製品、ならびにポリウレタンフォームを安定化するためのシリコーン界面活性剤を含むがこれらに限定されない、有用なシリコーン産物の調製における用途を持つ。
【0037】
ヒドロシリル化反応の触媒として使用されるとき、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)および(VII)の錯体は、支持されていなくてもよく、また、例えばカーボン、シリカ、アルミナ、MgCl、ジルコニアのようなサポート物質上、または例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンもしくはポリ(アミノスチレン)のようなポリマーもしくはプレポリマー上に固定されていてもよい。金属錯体はまた、デンドリマー上に支持されていてもよい。
【0038】
ある実施態様において、本発明の金属錯体を支持するために接着させることを目的として、金属錯体のR〜Rの少なくとも一つ、好ましくはRが、支持体へと共有結合するのに効果的である官能基を持つことが望ましい。例示的な官能基は、SH、COOH、NHもしくはOH基を含むがこれらに限定されない。
【0039】
一実施態様において、シリカで支持される触媒が、例えばMacromol.Chem.Phys.2001、202、No.5、645−653ページ;Journal of Chromatography A、1025(2003)65−71のような文献に記載されるようなRing−Opening Metathesis Polymerization(ROMP)技術によって調製され得る。
【0040】
デンドリマーの表面に触媒を固定するための一つの方法は、Journal of Organometallic Chemistry673(2003)77−83にKimによって示されるような、基部の存在下におけるSi−Cl結合の元のデンドリマーと官能化PDIとの反応によるものである。
【0041】
一実施態様において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)、(VII)の錯体は、シリルヒドリドと少なくとも一つの不飽和基を含有する化合物とを含有する組成物のヒドロシリル化のための触媒として使用される。プロセスは、組成物を、支持されているかもしくは支持されていない式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)もしくは(VII)のの金属錯体と接触させ、シリルヒドリドを少なくとも一つの不飽和基を持つ化合物と反応させるようにして、金属錯体触媒を含有するかもしれないヒドロシリル化産物を産生するステップを含む。ヒドロシリル化反応は、任意選択で溶媒の存在下で実施される。所望なら、ヒドロシリル化反応が完了したときに、磁気分離および/もしくはろ過によって金属触媒を除去できる。
【0042】
ヒドロシリル化反応において使用されるシリルヒドリドは特に限定されない。それは、RSiH4−a、(RO)SiH4−a、Qおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される任意の化合物であってよい。シリルヒドリドは、直鎖、分岐のもしくは環状構造、またはそれらの組み合わせを含有できる。ここで使用されるとき、Rの各々は独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキルであり、ここでRは任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、aの各々は独立して1〜3の値を持ち、p、u、v、yおよびzの各々は独立して0から20の値を持ち、wおよびxは独立して0から500の値を持ち、但しp+x+yは1〜500と等しいという条件であり、シリルヒドリド内のすべての元素の値は飽和している。好ましくは、p、u、v、yおよびzは0〜10であり、wおよびxは0〜100であり、そしてp+x+yは1〜100と等しい。
【0043】
ここで使用されるとき「M」基は、式R’SiO1/2の単官能基を表わし、「D」基は、式R’SiO2/2の二官能基を表わし、「T」基は、式R’SiO3/2の三官能基を表わし、そして「Q」基は、式SiO4/2の四官能基を表わし、「M」基はHR’3−gSiO1/2を表わし、「T」はHSiO3/2を表わし、「D」は、R’HSiO2/2を表わす。ここで用いられるとき、gは0から3である。R’の各々は独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキルであり、ここでR’は任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有する。
【0044】
ヒドロキシル化反応において使用される不飽和基を含有する化合物は、アルキルキャップアリルポリエーテル、ビニル官能化アルキルカップアリルもしくはメタクリルポリエーテルのような不飽和ポリエーテル;末端不飽和アミン;アルキン;C2−C18オレフィン、好ましくはアルファオレフィン;ビニルシクロヘキシルエポキシドのような不飽和シクロアルキルエポキシド;末端不飽和アクリラートもしくはメチルアクリラート;不飽和アリールエーテル;不飽和芳香族炭化水素;トリビニルシクロヘキサンのような不飽和シクロアルカン;ビニル官能化ポリマー;ビニル官能化シランおよびビニル官能化シリコーンを含むがこれらに限定されない。
【0045】
ヒドロシリル化反応に好適な不飽和ポリエーテルは好ましくは一般式:
(OCHCH(OCHCHR−OR (式VIII)もしくは
O(CHRCHO)(CHCHO)−CR−C≡C−CR−(OCHCH(OCHCHR (式X)もしくは
C=CRCHO(CHOCH(CHOCHRCHCR=CH (式XI)
を持つポリオキシアルキレンであり、
式中、Rは、アリル、メチルアリル、プロパギルもしくは3−ペンチニルのような2〜10個の炭素原子を含有する不飽和の有機基を示す。不飽和がオレフィンのとき、それは望ましくは円滑なヒドロシリル化を促進するために末端である。しかしながら、不飽和が三重結合である時、それは内部にあり得る。Rは水素、ビニル、もしくはアルキル基:CH、n−C、t−Cもしくはi−C17;CHCOO、t−CCOOのようなアシル基、CHC(O)CHC(O)Oのようなベータ−ケトエステル基、またはトリアルキルシリル基のような1〜8個の炭素原子のポリエーテルキャップ基である。RおよびRは、例えばメチル、エチル、イソプロピル、2−エチルヘキシル、ドデシルおよびステアリルのようなC1−C20アルキル基、例えばフェニルおよびナフチルのようなアリール基、例えばベンジル、フェニレチルおよびノニルフェニルのようなアルカリル基、または例えばシクロヘキシルおよびシクロオクチルのようなシクロアルキル基のような一価の炭化水素基である。Rはまた、水素であっても良い。メチルはもっとも好ましいRおよびR基である。zの各々は0から100以下であり、そしてwの各々は0から100以下である。zおよびwの好ましい値は1から50以下である。
【0046】
ヒドロシリル化反応を触媒するとき、本発明の金属錯体は効率的かつ選択的である。例えば、本発明の金属錯体がアルキルキャップアリルポリエーテルと不飽和基を含有する化合物とのヒドロシリル化において使用されるとき、反応産物は、反応しないアルキルキャップアリルポリエーテルおよびそのイソマー化産物を本質的に含まない。一実施態様において、反応産物は、反応しないアルキルキャップアリルポリエーテルおよびそのイソマー化産物を含まない。さらに、不飽和基を含有する化合物が不飽和アミンであるとき、ヒドロシリル化産物は、内部付加産物および不飽和アミン化合物のイソマー化産物を本質的に含まない。ここで用いるとき「本質的に含まない」は、ヒドロシリル化産物の総重量に基づいて10%未満を、好ましくは5%未満を意味する。「内部付加産物を本質的に含まない」はケイ素が末端炭素へと付加する事を意味する。
【0047】
本発明の金属錯体はシリル化ポリウレタンの調製するためのプロセスにおいて使用でき、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)もしくは(VII)の存在下において、末端不飽和ポリウレタンポリマーとシリルヒドリドとを接触させるステップを含む。
【0048】
以下の実施例は例示を意味し、本発明の範囲の何らかの限定を意味するものではない。他に明示的に述べられない限りすべての部およびパーセントは重量の基づくもので、すべての温度は摂氏によるものである。本出願において引用されるすべての出版物および米国特許は、参照によりそのすべての内容をここに組み入れる。
【実施例】
【0049】
一般的な考慮事項
すべての空気におよび湿気に感受性の高い操作は、標準的な真空ライン、Shlenkおよびカニューレ法、または精製窒素雰囲気を含有するMBraun不活性雰囲気ドライボックスを用いて実施された。空気におよび湿気に感受性の高い操作のための溶媒は、文献的な手順を用いて最初に乾燥され脱酸素化された。例として、PangbornらのOrganometallics1996、15、1518を参照できる。
【0050】
以下の略語と用語が使用された。
bs:ブロード・シングレット(broad singlet)
s:シングレット(singlet)
t:トリプレット(triplet)
bm:ブロードマルチプル(broad multiple)
GC:ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph)
MS:質量分析(Mass Spectroscopy)
THF:テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)
【0051】
実施例1〜9 本発明の金属錯体の調製
【0052】
実施例1 [2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジメチルフェニルイミン)]鉄ジブロミド(以下2,6−Me2PDIFeBrとする)の調製
【0053】
1.1 2,6−ジアセチルピリジンの調製
3リットルの3口丸底フラスコに、54.6グラム(0,802モル)のナトリウムエトキシドが充填された。機械的スターラーによって激しく攪拌されながら、300ミリリットルのエチルアセタート中に35.5グラム(0.159モル)の2,6−ジエチルピリジンジカルボキシルエステルの溶液がフラスコへと滴下された。生じるスラーリーは20時間還流され、0℃への冷却ならびに350ミリリットル(4.2モル)の濃縮HCLの添加が後に続いた。混合物はそのあと、20時間還流され、白い沈殿と透明で黄色い溶液を生成した。冷却の際、混合物は約1リットルの水を含有する分液漏斗へと添加された。有機相が分離され、水相はCHClによって抽出された。有機相は混合され、飽和NaCOによって洗浄され、NaSO上で乾燥され、そしてロータリーエバポレーションによって濃縮された。生じる茶色の固形物は最小量のCHCl(30〜50ミリリットル)によって溶解され、過剰量(約1リットル)のペンタンの添加が後に続いた。濃い赤茶色の副産物が沈殿した。溶液はデカントされた。この溶液は−78℃に冷やされ、かきとられて黄褐色の固体を生成した。これはブフナー漏斗で回収され、ろ過物は繰り返し濃縮され、そして結晶化され、16.7グラム(65%、0.102モル)の所望の産物を得た。
【0054】
1.2 2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジメチルフェニルイミン)(以下2,6−Me2PDIとする)の調製
250ミリリットルの丸底フラスコに、4.0グラムの2,6−ジアセチルピリジン、6.09グラム(2.05当量)の2,6−ジメチルアニリン、および100ミリリットルのメタノールが充填された。触媒量のp−トルエンスルホン酸が添加され、反応混合物は、硫酸カリウムを含有するDean−Starトラップ中へ一晩還流された。反応混合物はその後冷却され、そして、メタノールが開始容量のおおよそ半分量へと減少された。混合物は−35℃へと冷やされ、固形物がろ過され4.5グラム(50%)の所望の産物が得られた。ろ過物は濃縮され冷却されより多くの配位子が得られた。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=8.50(d、2H、m−Py)、7.28(t、1H、p−Py))、7.08(d、4H、m−Ar)、6.99(t、2H、p−Ar)、2.17(s、6H、CH)、2.05(s、12H、Ar−CH)。
【0055】
1.3 2,6−Me2PDIFeBrの調製
丸底フラスコに、2.0グラムの2,6−Me2PDIと1.16グラムのFeBrが添加され、30ミリリットルのTHFが後に続いた。この混合物はすぐにダークブルーとなり、そして一晩攪拌された。THFはそののち除かれ、そしてペンタンが添加された。スラリーはガラスフリットでろ過され、固形物が乾燥され、3.03グラム(96%)の常磁性体の2,6−Me2PDIFeBrが得られた。H NMR(ベンゼン−d6、20℃):δ=77.71、52.48、15.92、14.80、−12.50、−22.37。
【0056】
実施例2 [(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]
不活性雰囲気において、50ミリリットル丸底フラスコに500ミリグラム(0.85ミリモル)の(2,6−Me2PDI)FeBr、41ミリグラム(1.79ミリモル)のナトリウムおよび5ミリグラム(0.04ミリモル)のナフタレンが充填された。この攪拌している混合物におおよそ25ミリリットルのTHFが添加され、ナトリウムが完全に消費されるまで約2時間の間反応混合物が攪拌され、THFが真空において除去された。ジエチルエーテルが残余物に対して添加され、そして溶液はCelite(登録商標)を通してろ過された。揮発物は再び除去され、固形物はジエチルエーテルの最小量に溶解され、−35℃において再結晶され、278ミリグラム(70%)の所望の赤茶色の化合物が得られた。C505412Feに対する元素分析は、計算上、C、64.25重量%;H、5.82重量%;N、17.98重量%;観測値、C、63.87重量%;H、6.19重量%;N、17.80重量%であった。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=1.35(bs、24H、ArCH)、1.78(bs、12H、C(CH))、6.92(bs、12H、m−およびp−Ar)、7.52(bs、2H、p−py)、8.10(bs、4H、m−py)。13C NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=16.17(ArCH)、19.50(C(CH))、115.92(m−もしくはp−py)、125.35(m−もしくはp−Ar)、130.93(m−もしくはp−Ar)、148.76(m−もしくはp−py)、153.05。15N NMR(トルエン−d8、−80℃)δ=−355.5(bs)、−334.2(bs)、−322.4(bs)。IR(トルエン):v(N)=2102、2085cm−1
【0057】
実施例3 [(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)]の調製
[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]で用いられたのと同様の手順が、500ミリグラム(0.78ミリモル)の2,6−Et2PDIFeBr、38ミリグラム(1.64ミリモル)のナトリウム、および5mg(0.04ミリモル)のナフタレンを用いて踏襲された。おおよそ305ミリグラム(79%)の赤茶色の産物が得られた。C587012Feの元素分析は、計算上、C,66.54重量%;H、6.74重量%;N、16.05重量%、観測値、C、66.27重量%;H、7.10重量%;N、15.65重量%であった。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=0.72(bs、24H、CHCH)、1.65(bs、28H、C(CH))およびCHCH)、7.04(bm、12H、m−およびp−Ar)、7.64(bs、2H、p−py)、8.16(bs、4H、m−py)。13C NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=14.79(CHCH)、18.07(C(CH))、24.68(CHCH)、117.04(m−もしくはp−py)、125.77(m−もしくはp−Ar)、126.19(m−もしくはp−Ar)、135.94(m−もしくはp−py)。15N NMR(トルエン−d、−80℃)δ=−356.7(bs)、−331.5(bs)、−324.1(bs)。IR(トルエン):v(N)=2101、2086cm−1
【0058】
実施例4 [2,6−ジアセチルピリジンビス(2.6−ジメチルフェニルイミン)]鉄(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)(以下(2,6−Me2PDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)とする)の調製
不活性雰囲気において、50ミリリットル丸底フラスコに500ミリグラム(0.85ミリモル)の(2,6−Me2PDI)FeBr、41ミリグラム(1.79ミリモル)のナトリウム、および5ミリグラム(0.04ミリモル)のナフタレンが充填された。攪拌している混合物におおよそ25ミリリットルのTHFが添加された。ナトリウムが完全に消費されるまで反応混合物が約2時間攪拌され、475ミリグラム(2.55ミリモル)の1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサンが溶液へと添加された。THFおよび過剰量のビニルシランが高真空ラインで除去され、そして残余物に対してエーテルが添加された。溶液はCelite(登録商標)でろ過された。揮発物が除去され、固形物はエーテルより再結晶化され、460ミリグラム(88%)の、H NMRスペクトルにおいて幅広いピークをもたらす暗赤色の常磁性体の粉が得られた。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=171.22、36.99、6.00、2.11、0.69、0.16、−4.24、−18.34、−112.68。
【0059】
実施例5 (2,6−Me2PDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)の代替的な調製
不活性雰囲気において、100ミリグラム(0.11ミリモル)の[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]に対して60ミリグラム(0.32ミリモル)の1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサンが添加された。この添加には、ガスの発生と溶液の赤への色変化が伴った。揮発物は除去され、残余物は少量のペンタンの添加から結晶化された。収量は95ミリグラム(72%)であった。
【0060】
実施例6 [2,6−ジアセチルピリジンビス(2−イソプロピルフェニルイミン)]鉄(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)(以下(2−iPrPDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)とする)の調製
2,6−Me2PDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)のものと同様の手順が、418ミリグラム(0.68ミリモル)の(2−iPrPDI)FeBr、33ミリグラム(1.43ミリモル)のナトリウム、5ミリグラム(0.04ミリモル)のナフタレン、および381ミリグラム(2.04ミリモル)の1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサンを用いて踏襲された。おおよそ309ミリグラム(71%)の暗い紫色の粉が得られた。この化合物は広がったピークを持つH NMRスペクトルを示したが、むしろ狭い範囲であり、少なくとも2つの化合物のイソマーと最も一致しているように見え、最も可能性の高いのはC2およびCsの対称分子であった。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=−5.76、−2.30、0.10、0.58、0.87、0.99、1.25、2.52、2.70、3.25、3.94、4.45、4.52、5.62、5.84、6.09、6.53、6.30、10.51.
【0061】
実施例7 ビス[(トリメチルシリル)メチル]鉄[2,6−ジエチルピリジンビス(2−メチルフェニルイミン)(以下(2,6−Me2PDI)Fe(CHSiMeとする)の調製
不活性雰囲気において、20ミリリットルのシンチレーションバイアルに0.443グラム(1.00ミリモル)の(2,6−Me2PDI)FeClが充填された。ペンタン(約10ミリリットル)が添加され、スラリーを生成した。溶液は−35℃へとおおよそ30分間冷却され、その時間ののち、LiCHSiMe(0.188グラム、2.00ミリモル)のペンタン溶液が滴下された。加温されると黄色いスラリーが暗い紫色になった。反応物は1〜2時間室温で攪拌され、その後Celite(登録商標)を通してろ過され、溶液は新しい20ミリリットルシンチレーションバイアルへと移された。2,6−Me2PDIのペンタンスラリー(0.379グラム、1.00ミリモル)が、攪拌している溶液へと滴下された。紫色の溶液はすぐに赤紫色になった。混合物は1〜2時間室温で攪拌された。混合物はそののち−35℃に冷却され、ろ過され0.425グラム(71%)の(2,6−Me2PDI)Fe(CHSiMeが常磁性体の暗い紫色の結晶固形物として得られた。
【0062】
8.1 1−{6−[(2,6−ジイソプロピルフェニル)エタンイミドイル]−2−ピリジニル}−1−エタノンの調製
250ミリリットルの丸底フラスコに、5.00グラム(30.64ミリモル)の2,6−ジアセチルピリジン、6.00グラム(33.84ミリモル)の2,6−ジイソプロピルアニリン、および100ミリリットルのメタノールが充填された。触媒量のp−トルエンスルホン酸が添加され、反応混合物が一晩還流された。反応混合物はそののち、おおよそ35℃から40℃へと冷却され、2,6−ビス[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジンを除去するためにろ過された。反応溶液はそののち、0℃で24時間置かれ、固形物がろ過され、4.25グラム(43%)の所望の産物が黄色の粉として得られた。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=1.21−1.14(2d、12H、CHCH)、2.19(s、3H、CH)、2.52(s、3H、CH)、2.88(sep、2H、CHCH)、7.05−7.13(m、3H、Ar)およびCHCH)、7.21(t、1H、p−py)、7.94(d、1H、py)、8.45(d、1H、py)。
【0063】
8.2 2,6−ジイソプロピル−N−[(E)−1−(6−{[(1R)−1−tert−ブチルエチル]エタンイミドイル}−2ピリジニル)エチリデン]アニリンの調製
丸底フラスコに3.10グラム(9.61ミリモル)の1−{6−[(2,6―ジイソプロピルフェニル)エタンイミドイル]−2−ピリジニル}−1−エタノン、1.5グラムの(R)−(−)−2−アミノ−3−メチルブタン(1.5当量)、100ミリリットルのメタノール、および触媒量のp−トルエンスルホン酸が充填された。溶液は硫酸ナトリウムを含有するDean−Starkトラップへと一晩還流され、そして0℃へと冷却されろ過された。白い粉が冷メタノールで洗浄され、高真空ラインで一晩乾燥され、2.95グラム(76%)の所望の化合物を得た。H NMR(ベンゼン−d、20℃):δ=0.96(s、9H、Bu)、1.08−1.16(2dd、12H、CHCH)、2.20(s、3H、CH)、2.25(s、3H、CH)、2.88(2 sep、2H、CHCH)、2.94(s、3H、BuCHCH)、3.30(q、1H、Bu−CH−CH)、7.11−7.16(m、3H、Ar)、7.21(t、1H、p−py)、8.28(d、1H、py)、8.39(d、1H、py)。

【0064】
8.3 [2.6−ジイソプロピル−N−{(E)−1−[6−{[(1R)−1−1−tert−ブチルエチル]エタンイミドイル}−2−ピリジニル]エチリデン}アニリン]鉄ジブロミドの調製
不活性雰囲気において、丸底フラスコに2.5グラム(6.61ミリモル)の2,6−ジイソプロピル−N−{(E)−1−[6−{[(1R)−1−tert−ブチルエチル]エタンイミドイル}−2−ピリジニル]エチリデン}アニリン、1.33グラム(6.60ミリモル)のFeBrおよび50ミリリットルのTHFが充填された。反応物は12時間攪拌され、その時に等量のペンタンが添加され、所望の産物の沈殿を生じ、焼結ガラスフリット上で集められ、減圧下で乾燥され、3.6グラム(94%)の青い常磁性体の粉を得た。H NMR(CDCl、20℃):δ=−19.43、−15.21、−11.97、−7.08、−4.52、−2.59、−1.40、5.47、14.51、16.52、23.15、44.85、70.32、83.38、187.03。
【0065】
実施例9 (THF)Mg(ブタジエン)を還元剤として用いる2,6−iPr2PDIFe(ブタジエン)の調製
実施例に示される2,6−Me2FePDIBrに対して用いられたのと同様の手順が、2,6−iPr2FePDIBrを作製するのに踏襲された。不活性雰囲気において、0.200グラム(0.29ミリモル)の2,6−iPr2PDIFeBrおよび0.095グラム(0.43ミリモル、1.5当量)の(THF)Mg(ブタジエン)を含有するシンチレーションバイアルがスターラーバーと共に攪拌プレート上に配置された。攪拌中、10ミリリットルのジエチルエーテルが添加され、赤い溶液が得られた。反応物は10分間攪拌され、そのときに5ミリリットルのペンタンが添加され、反応混合物はCelite(登録商標)を通してろ過された。揮発物は除去され、残余物は最小量のジエチルエーテル中に取り入れられ、35℃のフリーザーに12時間置かれた。ろ過は、フィルターフリット上に、2,6−iPr2PDIFe(ブタジエン)と認識される0.120グラム(70%)の赤い粉を残した。
【0066】
実施例10〜14 本発明の金属錯体を用いるヒドロシリル化反応
【0067】
実施例10 Mvi120viおよびMD1530Mの架橋
不活性雰囲気において、シンチレーションバイアルに対して、1.0グラムのMvi120vi〔MviはビニルジメチルSiO2/2である〕および44ミリグラムのMD1530Mが添加された。200ミリグラムのエーテル中に溶解した2ミリグラムの[(2,6−Me2PDI)Fe(N2)]2[μ−(N2)]のストック溶液を含有する他のバイアルが用意された。触媒溶液が、1.0グラムのMvi120viおよび44ミリグラムのMD1530Mの攪拌している溶液へと一度に添加された。ほとんどすぐに溶液がゲル化し固形物となった。ゲル化は、同じシリルヒドリドおよび不飽和の化合物を用いるが、従来型の白金触媒を用いる反応において観察されるものとは見分けがつかなかった。
【0068】
実施例11 1−オクテンのメチルビス(トリメチルシリルオキシ)シラン(MDM)とのヒドロシリル化
窒素充満ドライボックスにおいて、シンチレーションバイアルに150ミリグラム(1.33ミリモル)の1−オクタンと229ミリグラム(1.03ミリモル)のMDMが添加された。別のバイアルに対し、5ミリグラムの[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]と200ミリグラムのトルエンが添加された。攪拌しているオレフィンとシランの溶液に対し、19ミリグラムの触媒溶液(0.48ミリグラム、シランに対し0.1モル%)が添加された。反応は室温で約1時間攪拌しながらドライボックス内で行われた。H NMRでSi−Hと関連する共鳴が反応の過程で消失することが観察され、ケイ素に結合したメチレンに割り当てられる0.41ppmでの新しい共鳴高磁場が現れ、従来報告された化合物に一致するスペクトルをもたらした。
【0069】
Shimadzu GC−2010ガスクロマトグラフにおいてガスクロマトグラフィーが実行された。GC分析はSupelco30m×0.25mm BETA DEX 120キャピラリーカラムを用いて実行された。MDMと1−オクテンの反応のための温度プログラムは以下の通りである:80℃2分;15℃/分で180℃まで、そして2分。ヒドロシリル化産物の反応時間は7.83分であった。
【0070】
実施例12 1−オクテンとトリエトキシシランのヒドロシリル化
窒素充満雰囲気において、シンチレーションバイアルに150ミリグラム(1.33ミリモル)の1−オクテン、170ミリグラム(1.03ミリモル)のトリエトキシシランが添加された。別のバイアルに5ミリグラムの[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]と200ミリグラムのトルエンが添加された。攪拌しているオレフィンおよびシランの溶液に対し、19ミリグラムの触媒溶液(0.48ミリグラム、シランに対し0.1モル%)が添加された。反応物は室温で約一時間ドライボックス中で攪拌された。H NMRでSi−Hと関連する共鳴が反応の過程で消失することが観察され、ケイ素に結合したメチレンに割り当てられる0.62ppmでの新しい共鳴高磁場が現れ、従来報告された化合物に一致するスペクトルをもたらした。
【0071】
実施例13 名目上の構造HC=CHCHO(CO)CHを持つメチルキャップアリルポリエーテルとメチルビス(トリメチルシリルオキシ)シラン(MDM)のヒドロシリル化の手順
窒素充満ドライボックスにおいて、シンチレーションバイアルに1.00グラムの名目上の構造HC=CHCHO(CO)CHを持つメチルキャップアリルポリエーテル(2.09ミリモル)および0.65グラム(2.09ミリモル)のMDMが充填され、ここでM=(CHSiO1/2であり、D=CHSiHOである。攪拌しているポリエーテルとシランの溶液に対して、10ミリグラム(0.01ミリモル)の[(2,6MePDI)Fe(N)][μ−(N)]が添加された。シンチレーションバイアルは封止され、ドライボックスから出され、60℃のオイルバスに配置された。反応物は1時間攪拌され、ここでバイアルはオイルバスから出され、反応は湿潤エーテルの添加によって止められた。溶液はH NMRスペクトロスコーピーによって分析された。スペクトルは、開始物質のメチルキャップアリルポリエーテル共鳴が存在せず、そしてヒドロシリル化三部の共鳴が存在する事を示した。H NMRスペクトロスコーピーの検出限界中には、反応で生じるプロペニル共鳴が見られなかった。H NMRでSi−Hと関連する共鳴が反応の過程で消失することが観察され、ケイ素に結合したメチレンに割り当てられる0.41ppmでの新しい共鳴高磁場が現れ、所望のヒドロシリル化産物の生成を示した。
【0072】
2,6−iPR2PDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)を用いる1−オクテンとメチルビス(トリメチルシリルオキシ)シラン(MDM)のヒドロシリル化
窒素充満ドライボックスにおいて、シンチレーションバイアルに150ミリグラム(1.33ミリモル)の1−オクテンと229ミリグラム(1.03ミリモル)のMDMが添加された。別のバイアルに対し、2ミリグラムの(2,6−iPR2PDI)Fe(1,1’−ジビニルテトラメチルジシロキサン)と200ミリグラムのトルエンが添加された。オレフィンとシランの攪拌している溶液に対し、触媒溶液(シランに対し0.5モル%)が添加された。反応物は室温で1時間ドライボックス中で攪拌された。H NMRでSi−Hと関連する共鳴が反応の過程で消失することが観察され、ケイ素に結合したメチレンに割り当てられる0.41ppmでの新しい共鳴高磁場が現れ、所従来報告された化合物に一致するスペクトルをもたらした。
【0073】
比較例1 従来の白金触媒を用いるメチルキャップアリルポリエーテル(H2C=CHCH2O(C2H4O)8CH3とMDMのヒドロシリル化
アリルポリエーテルは名目上の構造HC=CHCHO(CO)CHの市販のメチルキャップサンプルであった。ヒドリドシロキサンはビス(トリメチルシロキシ)メチルシランであり、略称はMDM〔M=(CHSiO1/2であり、D=CHSiHOである。〕55.1グラムのポリエーテル(0.13モル)および22.2グラムMDM(0.1モル)がヒドロシリル化に用いられた。
【0074】
反応は、機械的スターラー、水冷Friedrich condenser、加熱マントルおよび温度制御器、ならびに乾燥窒素源へと接続された散布チューブを備えた250ミリリットル4口丸底フラスコにおいて実施された。フラスコは試薬の添加前と添加後に窒素によってパージされた。反応混合物は攪拌され、80℃へと加熱され、この時に窒素散布が中止され、そして反応は0.4ミリリットル(0.4cc)のエタノール中の10ミリグラムPt/ミリリットル溶液である塩化白金酸溶液によって触媒された。約2分後に20℃の温度上昇が観測され、反抗混合物はクリーミーな不透明から透明な琥珀色に変化した。加熱は中止され、攪拌は反応混合物が23℃に冷めるまでさらなる1時間続けられた。SiHの試験は陰性であった。ヒドロシロキサンの使用の完全性は、A.L.SmithのAnalysis Of Silicones、John Wiley and Sons、NY 1974年、pp 145−149に記載されるように、反応混合物がアルコールKOHによって処理されるときに産生するHの容量を測定する事によって決定された。H NMR分析は、産物中のSiH官能性の非存在を確かにし、13C NMRはプロペニル(13C=8.1および11.4ppm)ならびに(13C=115.6および133.8ppm)の存在を示した。
【0075】
上述の記載が多くの具体例を含有するが、これらの具体例は本発明の範囲の限定としては考えられるべきでなく、単にそれらの好ましい実施態様の例示であるとして考えられるべきである。当業者は、ここに添付される請求項によって定義される本発明の範囲及び精神に入る多くの他の可能な改変を想到するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化13】


もしくは式(II)
【化14】


の錯体であって、
式中、
GがMn、Fe、NiもしくはCoであり;
、R、R、R、R、R、R、RおよびRが独立して水素、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rが、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
23の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R23が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
−L
【化15】


であり、
ここで、
10、R11、R13、R14、R15およびR16の各々が独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニルもしくはC2−C18アルキニルであり、ここで水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16が任意選択で置換され;
12の各々が独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18置換アルケニル、C2−C18アルキニル、C2−C18置換アルキニル、アリール、置換アリールであり、ここでR12が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成し;
17およびR18の各々が独立して、アルキル、置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R17およびR18の各々が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、R17およびR18が一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を任意選択で形成し;
19およびR20の各々が独立して、SiとCとを結合する共有結合、アルキル、置換アルキル、またはヘテロ原子であり、R19およびR20が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
ここでL−LがS1およびS2の不飽和部位を介してGと結合する、
錯体。
【請求項2】
23
【化16】


であり、
式中、R、R、R、RおよびRが請求項1に記載されるように定義される、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項3】
およびRが両方ともメチル、エチルプロピルもしくはイソプロピル基である、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項4】
がメチルである、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項5】
10、R11、R13、R14、R15およびR16が水素である、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項6】
【化17】


であり、式中G、R〜R、R17、R18およびR23が請求項1に定義される通りである、請求項1に記載の式(II)による錯体。
【請求項7】
【化18】


であり、式中G、R〜RおよびR23が請求項1に定義される通りである、請求項1に記載の式(II)による錯体。
【請求項8】
−Lが少なくとも4つの不飽和部位を持つオルガノシロキサンであり、ここで錯体がダイマーである、請求項1に記載の式(II)による錯体。
【請求項9】
−Lが、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンおよびノルボルナジエンからなる群より選択される、請求項1に記載の式(II)による錯体。
【請求項10】
GがFeである、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項11】
錯体が支持体上に固定されている、請求項1に記載の式(I)もしくは式(II)による錯体。
【請求項12】
前記支持体が、カーボン、シリカ、アルミナ、MgCl、ジルコニア、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アミノスチレン)、デンドリマーおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の錯体。
【請求項13】
〜Rの少なくとも一つが前記支持体と共有結合する官能基を含有する、請求項11に記載の錯体。
【請求項14】
シリルヒドリドと少なくとも一つの不飽和基を含有する化合物とを含有する組成物のヒドロシリル化のためのプロセスであって、(i)任意選択で溶媒の存在下において、前記組成物を請求項1に記載の錯体、式(III)の錯体もしくは式(IV)錯体と接触させ、シリルヒドリドを少なくとも一つの不飽和基を含有する化合物と反応させるようにして前記錯体を含有するヒドロシリル化産物を産生するステップ、ならびに(ii)任意選択でヒドロシリル化産物から金属錯体を除去するステップを含有し、ここで式(III)が、
【化19】


であり、そして式(IV)が、
【化20】


であり、
式中、
GがMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRが独立してH、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rが、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
22およびR23の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリール基であり、ここでR22およびR23が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
がR1011C=CR1213もしくは
【化21】


であり、
がR1415C=CR1617もしくは
【化22】


であり、
ここで、R10〜R21の各々が独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニルもしくはC2−C18アルキニルであり、
任意選択で、R18〜R19が、ならびに/または、R20〜R21が、ならびに/または、R10、R11、R12、R13の任意の二つが、ならびに/または、R14、R15、R16、R17の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
ここで、水素以外のR10〜R21が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして水素以外のR10〜R21が任意選択で置換され、そしてここでLおよびLが不飽和部位を介してGと結合する、
プロセス。
【請求項15】
磁気分離および/もしくはろ過によってヒドロシリル化産物から錯体を除去するステップをさらに含有する請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
23の各々が
【化23】


であり、
式中、R、R、R、RおよびRが請求項14に記載されるように定義される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
およびRが両方ともメチル、エチルプロピルもしくはイソプロピル基である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
がメチルである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
10、R11、R14、R15、R18およびR20が水素である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
前記錯体が
【化24】


であり、式中G、R〜R、R17、R18およびR23が請求項1に定義される通りである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項21】
17およびR18がメチル基である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
GがFeである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項23】
錯体が支持体上に固定されている、請求項14に記載のプロセス。
【請求項24】
前記支持体が、カーボン、シリカ、アルミナ、MgCl、ジルコニア、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アミノスチレン)、デンドリマーおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
〜Rの少なくとも一つが前記支持体と共有結合する官能基を含有する、請求項23に記載の錯体。
【請求項26】
前記シリルヒドリドがRSiH4−a、(RO)SiH4−a、Qおよびそれらの組み合わせからなる群より選択され、ここでQがSiO4/2であり、TがR’SiO3/2であり、TがHSiO3/2であり、DがR’SiO2/2であり、DがR’HSiO2/2であり、MがHR’3−gSiO1/2であり、MがR’SiO1/2であり、RおよびR’の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキルであり、ここでRおよびR’が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、aの各々が独立して1〜3の値を持ち、gが0〜3の値を持ち、p、u、v、yおよびzの各々が独立して0〜20であり、wおよびx独立してが0〜500であり、但しp+x+yは1〜500と等しいという条件であり、シリルヒドリド内のすべての元素の値が飽和している、請求項14に記載のプロセス。
【請求項27】
p、u、v、yおよびzの各々が独立して0〜10であり、wおよびxが独立して0〜100であり、ここでp+x+yが1〜100と等しい、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記不飽和基を含有する化合物が、アルキルキャップアリルポリエーテル、ビニル官能化アルキルカップアリルもしくはメタクリルポリエーテル、末端不飽和アミン、アルキン、C2−C18オレフィン、不飽和シクロアルキルエポキシド、末端不飽和アクリラートもしくはメチルアクリラート、不飽和アリールエーテル、不飽和芳香族炭化水素、不飽和シクロアルカン、ビニル官能化ポリマー、ビニル官能化シラン、ビニル官能化シリコーンならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項29】
前記不飽和基を含有する化合物が一般式:
(OCHCH(OCHCHR−OR (式VIII)、
O(CHRCHO)(CHCHO)−CR−C≡C−CR−(OCHCH(OCHCHR (式X)もしくは
C=CRCHO(CHOCH(CHOCHRCHCR=CH (式XI)
を持つポリオキシアルキレンであり、
式中、Rの各々が2〜10個の炭素原子を含有する不飽和の有機基であり、Rの各々が独立して水素、ビニルもしくは1〜8個の炭素原子のポリエーテルキャップ基であり、RおよびRの各々が独立して一価の炭化水素基であり、zの各々が0から100以下であり、wの各々が0から100以下である、
請求項14に記載のプロセス。
【請求項30】
請求項14において定義される錯体の存在下において、末端不飽和ポリウレタンポリマーとシリルヒドリドを接触させるステップを含有するシリル化ポリウレタンを調製するためのプロセス。
【請求項31】
請求項14に記載のプロセスにより作製された組成物であって、前記不飽和基を含有する化合物がアルキルキャップアリルポリエーテルであり、ここで前記組成物が反応していないアルキルキャップアリルポリエーテルおよびそのイソマー化産物を本質的に含まない、組成物。
【請求項32】
請求項14に記載のプロセスにより作製された組成物であって、前記不飽和基を含有する化合物が末端不飽和アミンであり、ここで前記組成物が反応していない末端不飽和アミンおよびそのイソマー化産物を本質的に含まず、前記産物が内部付加産物を本質的に含まない、組成物。
【請求項33】
請求項14に記載のプロセスにより作製された組成物であって、前記少なくとも一つの不飽和基を含有する化合物がビニル官能化シリコーンである、組成物。
【請求項34】
請求項1に定義される式(I)の錯体を合成するためのプロセスであって、式(V)の化合物を、フェロセンに対して−0.6vよりも負である還元電位を持つ還元剤と、窒素存在下で反応させるステップを含有し、
ここで式(V)が、
【化25】


であり、
GがMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRが独立してH、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
23が独立してC1−C18アルキル基もしくはC1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R23が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成し、
Xがアニオンである、
プロセス。
【請求項35】
前記還元剤がナトリウムナフタレニドである、請求項33に記載のプロセス。
【請求項36】
XがF、Cl、Br、I、CF40SOもしくはR50COOであり、R40が共有結合もしくはC1−C6アルキル基であり、そしてR50がC1−C10ヒドロカルビル基である、請求項33に記載のプロセス。
【請求項37】
請求項1に定義される式(II)の錯体を合成するためのプロセスであって、式(V)の化合物を、L−Lと反応させるステップを含有し、
ここで式(V)が、
【化26】


であり、
GがMn、Fe、NiもしくはCoであり、
、R、R、R、R、R、R、RおよびRが独立してH、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールもしくは不活性の官能基であり、水素以外のR〜Rは、任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
23が独立してC1−C18アルキル基もしくはC1−C18置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R23が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でお互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR23の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成しても良く、
XがF、Cl、Br、I、CF40SOもしくはR50COOであり、R40が共有結合もしくはC1−C6アルキル基であり、そしてR50がC1−C10ヒドロカルビル基であり;そして
−L
【化27】


であり、
10、R11、R13、R14、R15およびR16の各々が独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニルもしくはアリールであり、ここで水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16が任意選択で置換され;
12の各々が独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18置換アルケニル、C2−C18アルキニル、C2−C18置換アルキニル、アリール、もしくは置換アリールであり、ここでR12が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し;
任意選択でR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16の任意の二つが一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を形成し;
17およびR18の各々が独立して、アルキル、置換アルキル、アリールもしくは置換アリールであり、R17およびR18の各々が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有し、そして、R17およびR18が一緒になって、置換もしくは不置換の、飽和もしくは不飽和の、環構造である環を任意選択で形成しても良く;
19およびR20の各々が独立して、SiとCとを結合する共有結合、アルキル、置換アルキル、またはヘテロ原子であり、ここでR19およびR20が任意選択で少なくとも一つのヘテロ原子を含有する、
プロセス。



【公表番号】特表2012−532884(P2012−532884A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519752(P2012−519752)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/041487
【国際公開番号】WO2011/006044
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【出願人】(510243539)コーネル ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】