説明

ヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体とE立体異性体との組合せを含有する組成物

【課題】低いかまたは零のオゾン層破壊係数、より低い地球温暖化係数および低い毒性の要求を満たす無比の特徴を与える、冷媒液および熱媒液ならびに発泡剤、溶媒クリーナーなどとして機能できる新規組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せであって、利用の際の毒性影響を最小限に抑えるためにより毒性の異性体が、組合せの(Z+Eの合計に対して)約30重量%未満である組合せに関する。本組合せは、冷却液および加熱液、発泡体発泡剤または溶媒などのために用いられる。本発明は、これらの組合せを得るための手段にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体とE立体異性体との組合せを含有する組成物に関する。本発明は、こうした組成物を得るための手段にも関する。本発明の組成物は、熱媒液としての冷却液または加熱液、冷媒、発泡体発泡剤、エアゾール噴射剤、炎抑制剤、消火剤を製造するプロセスにおいてならびに金属脱脂剤および脱水剤のための溶媒用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の保護に関するモントリオール議定書は、クロロフルオロカーボン(CFC)の使用の段階的廃止を要求している。ヒドロフルオロカーボン(HFC)、例えば、HFC−134aなどのオゾン層により「優しい」材料は、クロロフルオロカーボンに取って代わった。この化合物は地球温暖化の原因となる温室効果ガスであることが判明し、気候変動に関する京都議定書によって規制された。新しく浮上しつつある代替材料であるヒドロフルオロプロペンは環境上、許容可能であることが示された。すなわち、ヒドロフルオロプロペンは、零のオゾン層破壊係数(ODP)および許容可能な低いGWPを有する。
【0003】
HFC−134aなどのヒドロフルオロカーボンの現在の代替冷媒案には、HFC−152a、ブタンまたはプロパンなどの純炭化水素またはCO2などの「天然」冷媒が挙げられる。これらの代替案の多くは可燃性であり、および/または低いエネルギー効率を有する。従って、新規代替冷媒が求められている。ヒドロフルオロプロペンなどのフルオロオレフィン材料はHFCの代替品として関心を集めてきた。より低い気圧におけるこれらの材料に固有の化学的な不安定性は、望まれる低い地球温暖化係数および零またはほぼ零のオゾン層破壊特性を与える。しかし、こうした固有の不安定性は、これらの材料の毒性にも影響を及ぼすことが考えられる。特に、Z異性体は、E異性体に比べて酸素に対して遙かに活性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−531925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低いかまたは零のオゾン層破壊係数、より低い地球温暖化係数および低い毒性の要求を満たす無比の特徴を与える、冷媒液および熱媒液ならびに発泡剤、溶媒クリーナーなどとして機能できる新規組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せであって、利用の際の毒性影響を最小限に抑えるためにより毒性の異性体が、組合せの(Z+Eの合計に対して)約30重量%未満である組合せに関する。本組合せは、冷却液および加熱液、発泡体発泡剤または溶媒などのために用いられる。本発明は、これらの組合せを得るための手段にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ヒドロフルオロオレフィンは、低い地球温暖化係数および零のオゾン層破壊値を示す熱媒液および発泡剤、溶媒クリーナーなどとして提案されてきた。その低い地球温暖化係数は、典型的には僅か数日におけるヒドロフルオロオレフィンの大気圏分解の結果である。ヒドロフルオロオレフィンの速い大気圏分解はOHラジカルとの反応性に関連付けられる。
【0008】
ヒドロフルオロオレフィンの毒性は幾何異性体間で異なる。Z異性体およびE異性体として存在できるヒドロフルオロオレフィンは特に興味深く、F1225ye(Z異性体およびE異性体)、F1234ze(Z異性体およびE異性体)およびF1233zd(Z異性体およびE異性体)を含む。
【0009】
反応性の観点から、より立体的に妨害された異性体は、より反応性、従って多分より毒性であると考えられる。Z異性体とE異性体の好ましい比は、組合せの(Z+Eの合計に対する)約30重量%未満のより毒性の異性体、なおより好ましくは約10%未満のより毒性の異性体である。最も好ましい比は、(Z+Eの合計に対する)約1%未満のより毒性の異性体である。
【0010】
F1225yeに関して、Z異性体とE異性体の好ましい比は、組合せの(Z+Eの合計に対する)約30重量%未満のE異性体、なおより好ましくは約10%未満のE異性体である。最も好ましい比は、(Z+Eの合計に対する)約1%未満のE異性体である。
【0011】
F1234zeに関して、Z異性体とE異性体の好ましい比は、組合せの(Z+Eの合計に対する)約30重量%未満のZ異性体、なおより好ましくは約10%未満のZ異性体である。最も好ましい比は、(Z+Eの合計に対する)約1%未満のZ異性体である。F1233zdに関して、Z異性体とE異性体の好ましい比は、組合せの(Z+Eの合計に対する)約30重量%未満のZ異性体、なおより好ましくは約10%未満のZ異性体である。最も好ましい比は、(Z+Eの合計に対する)約1%未満のZ異性体である。
【0012】
本発明の組合せは、ペンタンまたはシクロペンタンなどの炭化水素、CO2、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1,3−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)および1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのヒドロフルオロカーボン、ならびにt−1,2−ジクロロエチレン(1,2−DCE)などのヒドロクロロアルケンに限定されないが、それらを含む追加の低い地球温暖化係数および低いかまたは零のオゾン層破壊値の材料も更に含むことが可能である。
【0013】
立体異性体を分離して本発明の組合せを得るために様々な技術を用いることが可能である。
・異性体の沸点が十分に異なる時、蒸留。
・塩素化(それに限定されないが)の直後の水素添加に対する異性体の反応性の差に基づく反応蒸留と、その後の反応の生成物の蒸留。
・SbF5などの強ルイス酸および広い表面積のフッ素化アルミナ触媒または活性炭触媒を用いるE異性体へのZ異性体の触媒異性化。
・第3の溶媒に対する異性体の親和性の差に基づく第3の溶媒による抽出または抽出蒸留。第3の溶媒は、塩素化C1溶媒、塩素化C2溶媒および塩素化C3溶媒(CCl4、CCl3H、CH2Cl2、CHCl2−CHCl2、CCl3−CH3、CCl2=CCl2、CHCl=CHCl、CHCl=CCl2...)、フッ素化溶媒または過フッ素化溶媒(HFC、ヒドロフルオロエーテル、PFC)、アルコールまたはエーテルのような酸化溶媒、アミンなどのN含有溶媒、イソブタン、ブタン、プロパン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン...などのC1〜C10炭化水素であり得るが、それらに限定されない。
・各異性体の吸収の差に基づく固体床上での分離。固体は、モレキュラーシーブ、アルミナ、カーボンシーブおよびゼオライトなどであり得る(が、それらに限定されない)。
・ある異性体の選択的通過および他の異性体の保持を可能にする膜分離技術。
【0014】
1.移動空調(MAC)用途および他の冷媒用途
MAC用途に関して、低GWP冷媒の好ましい沸点(bp)は−10℃〜−40℃の間である。冷媒は、利用中に化学的に安定(例えば、アルミニウム、銅または鉄などのシステム中の活性金属と反応せず)で、可溶性で、そして冷媒油と適合性でなければならない。
【0015】
本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せは、冷凍システム、空調システムまたはヒートポンプシステム中の高GWP(地球温暖化係数)冷媒の代替品として有効であることが見出された。こうしたシステム中の従来の高GWP冷媒には、R134a、R22、R245fa、R114、R236fa、R124、R410A、R407C、R417A、R422A、R507AおよびR404Aなどの材料が挙げられる。本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せは、従来の高GWP冷媒を用いるか、用いたか、または用いるように設計されている冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置中の有効な作用液である。
【0016】
蒸気圧縮冷凍システム、空調システムまたはヒートポンプシステムは、蒸発器、圧縮機、凝縮器および膨張装置を含む。蒸気圧縮サイクルは、1工程で冷却効果および異なる工程で加熱効果をもたらす多工程において冷媒を再使用する。サイクルを次の通り単純に記載することが可能である。液体冷媒は膨張装置を通して蒸発器に入り、液体冷媒は低温で蒸発器内で沸騰してガスを生成させ、そして冷却を生じさせる。低圧ガスは圧縮機に入り、そこで、ガスは圧縮されて、その圧力および温度を上げる。その後、より高い圧力(圧縮された)の気体状冷媒は凝縮器に入り、そこで、冷媒は凝縮し、その熱を環境に放出する。冷媒は膨張装置に戻り、膨張装置を通して、液体は凝縮器内のより高い圧力レベルから蒸発器内の低圧レベルまで膨張し、かくしてサイクルを繰り返す。
【0017】
本明細書において用いられる移動冷凍装置または移動空調(MAC)装置は、道路、鉄道、海路または空路のための輸送装置に導入されたあらゆる冷凍装置または空調装置を意味する。本発明は、自動車空調装置または道路輸送冷凍装置などの道路輸送冷凍装置または空調装置のために特に有用である。
【0018】
本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せは、固定空調およびヒートポンプ、例えば、冷却機、高温ヒートポンプ、住宅空調システム、小型商用空調システムおよび商用空調システムの中でも有用であり得る。固定冷凍用途において、本組成物は、家庭用冷蔵庫、製氷機、ウォークインクーラーおよびリーチインクーラーならびにスーパーマーケットシステムなどの装置の中で有用であり得る。
【0019】
冷媒として用いられる時、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せは、典型的には、冷凍潤滑剤、すなわち、冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置と共に用いるために好適な潤滑剤を含む。これらの潤滑剤の中には、クロロフルオロカーボン冷媒を用いる圧縮冷凍装置の中で従来から用いられている潤滑剤がある。こうした潤滑剤および潤滑剤の特性は、1990 ASHRAE Handbook、Refrigeration Systems and Applications,第8章、表題「Lubricants in Refrigeration System」において論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷凍潤滑の分野で「鉱油」として一般に知られている潤滑剤を含んでもよい。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖および分岐炭素鎖の飽和炭化水素)と、ナフテン(すなわち環式パラフィン)と、芳香族類(すなわち、交互二重結合によって特徴付けられる1個以上の環を含有する不飽和環式炭化水素)とを含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷凍潤滑の分野で「合成油」として一般に知られている潤滑剤を更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖および分岐のアルキルアルキルベンゼン)と、合成パラフィンおよびナフテンと、ポリ(アルファオレフィン)とを含む。本発明の潤滑剤は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に用いるために設計され、そして圧縮冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置の作動条件下で本発明の冷媒に混和性である潤滑剤を更に含む。こうした潤滑剤には、Castrol(登録商標)100(Castrol(United Kingdom))などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical(Midland,Mich.))製のRL−488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)およびポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、それらに限定されない。これらの潤滑剤は種々の商業供給業者から容易に入手できる。
【0020】
2.発泡剤
ポリウレタン発泡用途に関して、本発明の好ましい組合せは、典型的には、約−40℃〜60℃の間の沸点を有し、A側、B側または両方に適合性であり、典型的には、約10℃から50℃まで、より好ましくは約30℃から40℃まで大気圧で液体であり、そして良好な寸法安定性を有する発泡体を提供する。本組合せは低い熱伝導率を有し、そして低い熱伝導率を有する発泡体を提供する。
【0021】
熱可塑性発泡体の製造に関して、本発明の好ましい組合せは、ポリマー樹脂の溶融温度および/またはガラス転移温度より低い沸点を有し、それは、典型的には約100℃未満、好ましくは約−40℃〜約10℃の間である。
【0022】
発泡熱可塑性生産物を調製する方法は次の通りである。発泡可能なポリマー組成物を構成する成分を任意の順序で一緒にブレンドすることにより、発泡可能なポリマー組成物を調製する。典型的には、ポリマー樹脂を可塑化し、その後、初期圧力で発泡剤組成物の成分中にブレンドすることにより、発泡可能なポリマー組成物を調製する。ポリマー樹脂を可塑化する一般プロセスは、発泡剤組成物中にブレンドするために十分にポリマー樹脂を軟化させるのに十分にポリマー樹脂を加熱することを含む熱可塑化である。一般に、熱可塑化は、結晶質ポリマーに関するガラス転移温度(Tg)または溶融温度(Tm)付近またはそれ以上に熱可塑性ポリマー樹脂を加熱することを含む。
【0023】
発泡可能なポリマー組成物は、核剤、気泡制御剤、染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、IR減衰剤および断熱添加剤などの追加の添加剤を含有することが可能である。核剤には、特に、タルク、炭酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどの材料、およびアゾジカルボンアミドまたは炭酸水素ナトリウムおよびクエン酸などの化学発泡剤が挙げられる。IR減衰剤および断熱添加剤には、特に、カーボンブラック、グラファイト、二酸化ケイ素、金属フレークまたは金属粉末が挙げられる。難燃剤には、特に、ヘキサブロモシクロデカンおよびポリ臭素化ビフェニルエーテルなどの臭素化材料を挙げることが可能である。
【0024】
本発明の発泡体調製プロセスには、バッチプロセス、半バッチプロセスおよび連続プロセスが挙げられる。バッチプロセスは、貯蔵可能な状態にある発泡可能なポリマー組成物の少なくとも一部の調製およびその後の発泡体を調製するいつか、ある将来の時点での発泡可能なポリマー組成物の当該部分の使用を含む。
【0025】
半バッチプロセスは、発泡可能なポリマー組成物の少なくとも一部の調製およびすべて単一プロセスにおける当該発泡可能なポリマー組成物の発泡体への断続的な膨張を含む。例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第4,323,528号明細書には、累積押出プロセスを介してポリオレフィン発泡体を製造するプロセスが開示されている。このプロセスは、1)熱可塑性材料と発泡剤組成物を混合して発泡可能なポリマー組成物を画定する工程と、2)発泡可能なポリマー組成物を発泡させない温度および圧力で維持された待機域に発泡可能なポリマー組成物を押し出す工程(待機域は、発泡可能なポリマー組成物が発泡するより低い圧力の域にオリフィス開口を形成するダイおよびダイオリフィスを閉じる開放可能なゲートを有する)、3)ダイオリフィスを通してより低い圧力の域に待機域から発泡可能なポリマー組成物を追い出すために発泡可能なポリマー組成物上の可動ラムによって機械的圧力を実質的に同時に加える間ゲートを周期的に開放する工程と、4)追い出された発泡可能なポリマー組成物が膨張して発泡体を形成することを可能にする工程とを含む。
【0026】
連続プロセスは、発泡可能なポリマー組成物の形成およびその後の非停止方式での当該発泡可能なポリマー組成物の膨張を含む。例えば、ポリマー樹脂を加熱して溶融樹脂を形成し、初期圧力で溶融樹脂に発泡剤組成物をブレンドして発泡可能なポリマー組成物を形成し、その後、当該発泡可能なポリマー組成物を、ダイを通して発泡圧力で域に押し出し、発泡可能なポリマー組成物が発泡体を膨張させることにより、押出機内で発泡可能なポリマー組成物を調製する。望ましくは、発泡剤の添加後且つダイを通して押し出す前に発泡可能なポリマー組成物を冷却して発泡体特性を最適化する。例えば、熱交換器により発泡可能なポリマー組成物を冷却する。
【0027】
本発明の発泡体は、シート、プランク、ロッド、チューブ、ビーズ、またはそれらのいずれかの組合せを含む想像できるあらゆる形態の発泡体であることが可能である。互いに結合されている識別可能な多重長軸発泡体部材を含む積層発泡体は本発明に含まれる。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、発泡体を調製する際に用いるために本明細書において記載されたヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する発泡剤組合せに関する。他の実施形態において、本発明は、発泡可能な組成物、好ましくはポリウレタン組成物、ポリイソシアネート組成物および熱可塑性発泡体組成物、ならびに発泡体を調製する方法を提供する。こうした発泡体の実施形態において、安定剤組合せと合わせた本ヒドロフルオロオレフィンの1種以上は、発泡可能な組成物中の発泡剤として含まれ、この組成物は、好ましくは、発泡体または気泡構造体を形成するために適切な条件下で反応でき発泡できる1種以上の追加の成分を含む。当該技術分野で公知の方法のどれも用いてよいか、または本発明の発泡体の実施形態に従い使用するために適応させてもよい。
【0029】
本発明は、発泡体を形成する方法であって、(a)本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを発泡可能な組成物に添加する工程と、(b)発泡体を形成するために有効な条件下で発泡可能な組成物を反応させる工程とを含む方法に更に関する。
【0030】
3.エアゾール噴射剤
本発明の別の実施形態は、噴霧可能な組成物中で噴射剤として用いるために本明細書において記載されたヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せの使用に関する。更に、本発明は、本明細書において記載されたヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを含む噴霧可能な組成物に関する。不活性な成分、溶媒および他の材料と一緒に噴霧されるべき活性成分も噴霧可能な組成物中に存在してもよい。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアゾールである。噴霧されるべき好適な活性材料には、脱臭剤、香料、ヘアスプレー、クリーナーおよび艶出剤などの化粧用材料ならびに抗喘息薬および口臭防止薬などの薬用材料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
本発明は、エアゾール製品を製造する方法であって、本明細書において記載されたヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せをエアゾール容器内の活性成分に添加する工程を含む方法に更に関する。ここで、前記組成物は噴射剤として機能する。
【0032】
更なる態様は、炎を抑制する方法であって、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを含む流体に炎を接触させることを含む方法を提供する。本組成物に炎を接触させるために好適ないかなる方法も用いてよい。例えば、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを炎上に噴霧するか、または注ぐなどしてもよく、もしくは炎の少なくとも一部を炎抑制組成物中に沈めてもよい。本明細書における教示を考慮して、当業者は、本発明において用いるために炎抑制の様々な従来の装置および方法を容易に適応させることができる。
【0033】
4.消火剤
更なる実施形態は、完全なフラッド塗布(total−flood application)において消火するか、または炎を抑制する方法であって、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを含む薬剤を提供する工程と、加圧放出システムにおいて薬剤を分配する工程と、エリアに薬剤を放出してエリアにおいて消火するか、または炎を抑制する工程とを含む方法を提供する。別の実施形態は、火災または爆発を防ぐためにエリアを不活性化する方法であって、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを含む薬剤を提供する工程と、加圧放出システムにおいて薬剤を分配する工程と、エリアに前記薬剤を放出して火災または爆発が起きるのを防ぐ工程とを含む方法を提供する。
【0034】
「消火」という用語は、通常は火災の完全な除去を表すために用いられるのに対して、「抑制」という用語は、しばしば、火災または爆発の縮小を表すために用いられるが、必ずしも火災または爆発の全面的な除去ではない。本明細書において用いられる「消火」および「抑制」という用語は同義的に用いられる。ハロゲン化炭素の火災および爆発の防御塗布には4つの一般的タイプがある。(1)完全なフラッド消火塗布および/または炎抑制塗布においては、薬剤を空間に放出して、存在している火災を消火または抑制するのに十分な濃度を達成する。完全なフラッディング使用は、コンピュータ室のような密閉された人がいる可能性のある空間ならびに航空機エンジンナセルおよび自動車内のエンジンルームのような特殊な多くの場合人がいない空間の防御を含む。(2)ストリーミング塗布においては、薬剤を火災上に直接または火災の領域に塗布する。これは、通常、手動操作の車輪付き装置または携帯装置を用いて実行される。ストリーミング塗布として含まれる第2の方法は、1個以上の固定ノズルから火災に向けて薬剤を放出する「局所」システムを用いる。局所システムを手動または自動のいずれかで作動させてもよい。(3)爆発抑制においては、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを放出して、既に開始されていた爆発を抑制する。「抑制」という用語は、爆発が普通は自己限定性であるので、通常この塗布で用いられる。しかし、この用語の使用は、爆発が薬剤によって消火されないことを必ずしも示唆しない。この塗布において、爆発から広がる火球を検出するために検出器を通常用い、爆発を抑制するために薬剤を急速に放出する。爆発抑制は防衛用途において本来用いられるが、それ単独ではない。(4)不活性化においては、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを空間に放出して、爆発または火災が始まるのを防ぐ。多くの場合、完全なフラッド消火および/または炎抑制のために用いられるシステムに似ているか、または同じシステムが用いられる。通常、危険状態の存在(例えば、可燃性ガスまたは爆発性ガスの危険濃度)を検出し、その後、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを放出して、上記状態を取り除くことができるまで爆発または火災が起きるのを防ぐ。
【0035】
消火方法は、火災を取り囲む密閉エリアに組成物を導入することにより行うことが可能である。適切な間隔で密閉エリアに組成物の適切な量を計量供給する限りにおいて、導入の既知の方法のいずれも用いることが可能である。例えば、従来の携帯式(または固定式)消火装置を用いるストリーミングによって、ミスティングによって、またはフラッディングによって、例えば、(適切な配管、バルブおよび制御装置を用いて)火災を取り囲む密閉エリアに組成物を放出することによって、例えば、組成物を導入することが可能である。用いられるストリーミング装置またはフラッディング装置からの組成物の放出の速度を高めるために、組成物を任意に不活性噴射剤、例えば、窒素、アルゴン、グリシジルアジドポリマーの分解生成物または二酸化炭素と組み合わせることが可能である。
【0036】
好ましくは、消火プロセスは、本発明のヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体およびE立体異性体を含有する組合せを火災または炎を消火するのに十分な量で火災または炎に導入することを含む。当業者は、特定の火災を消火するのに必要な炎抑制剤の量が危険の性質および程度に応じて異なることを認めるであろう。炎抑制剤をフラッディングによって導入するべき時、カップバーナー試験データ(cup burner,test data)は、火災の特定のタイプおよび大きさを消火するのに必要な炎抑制剤の量または濃度を決定する際に有用である。
【0037】
5.溶媒
溶媒用途のために好適な理想的なヒドロフルオロオレフィンは、21℃〜60℃の間の沸点を有するべきである。生成物は、金属に接触して化学的に安定であるべきであり、アクリロニトリルブタジエンスチレン、PVC、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンHD、ポリエチレンLD、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン結晶、ポリスチレン1160、ポリプロピレン、ポリアミド11、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルブロックアミドなどの種々のプラスチック;あるいはスチレンブタジエン6510、エチレンプロピレンEP710、水素添加ニトリル7DT1566、ポリクロロプレンN658、ポリアクリレートDA65、ハイプラロンDH70、フッ化炭化水素df、ニトリルPB701、シリコーンSL1002、ポリイソプレン、ポリブタジエンc6514、テフロン(登録商標)62945Rなどのゴム弾性材料にさらされると膨潤しない。
【0038】
本発明において記載されたすべての用途に関して、ラジカル捕捉剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、重合防止剤、腐食抑制剤およびそれらの組合せから選択された1つまたは複数の安定剤と組み合わせて、ヒドロフルオロオレフィンのZ立体異性体とE立体異性体との組合せを含有する組成物を用いることができよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって、前記組合せの30重量%未満が前記Z異性体であり、前記組合せの残りが前記E異性体である組合せ。
【請求項2】
a)30重量%未満の、F1233zdのZ異性体と、
b)残りの量の、F1233zdのE異性体と
を含む1233zdのZ異性体とE異性体との組合せ。
【請求項3】
c)30重量%未満の、F1234zeのZ異性体と、
d)残りの量の、F1234zeのE異性体と
を含むF1234zeのZ異性体とE異性体との組合せ。
【請求項4】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せの蒸留を含む方法。
【請求項5】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せの反応蒸留と、その後の蒸留を含む方法。
【請求項6】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せの触媒の存在下での異性化を含む方法。
【請求項7】
前記触媒がフッ素化アルミナまたは活性炭から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記異性化がルイス酸の存在下で行われる請求項6に記載の方法。
【請求項9】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せの抽出蒸留を含む方法。
【請求項10】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せの膜分離を含む方法。
【請求項11】
式CF3−CH=CHX(ここで、XはFまたはClを表す)で表されるヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体とを含む組合せであって30重量%を上回る前記Z異性体を有する前記組合せから請求項1〜3のいずれかに記載の組合せを調製する方法であって、30重量%を上回るZ異性体を有する前記ヒドロハロオレフィンのZ異性体とE異性体との組合せのモレキュラーシーブ、アルミナ、カーボンシーブまたはゼオライトから選択される固体床上での分離を含む方法。

【公開番号】特開2013−100544(P2013−100544A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−25627(P2013−25627)
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2010−515295(P2010−515295)の分割
【原出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】