説明

ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法、および該脱水方法を用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

【課題】簡便な装置を用いることが可能なヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法、および該脱水方法を用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの連続製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも水を含む気体状態のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを熱交換器で冷却、凝縮液化し、前記水を氷結凝固させる工程を含む方法。例えば、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ素化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、未反応原料、フッ化水素、塩化水素および副生成物を含む混合物を得る第1の工程、または脱フッ化水素し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、未反応原料、副生物を含む混合物を得る第1の工程、酸性成分を除去する第2の工程、上記の脱水方法により脱水する第3の工程、蒸留精製する第4の工程からなる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法に関し、特に、該脱水方法の適用例として、発泡剤、冷媒、または医農薬の中間原料、もしくはスプレー等エアロゾルの噴射剤であるプロペラント、あるいはマグネシウム合金製造の保護ガス等として有用な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロオレフィンである1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法としては、以下の方法が知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−ヨウ化プロパンをアルコール性水酸化カリウムにより脱ヨウ化水素する方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、フッ素化触媒存在下、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CHCl)をフッ化水素と反応させ、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、該フッ素化触媒が、クロム、チタン、アルミニウム、マンガン、ニッケルまたはコバルトの中から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物またはオキシフッ化塩化物を担持した活性炭である方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、気相中、フッ素化触媒存在下、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、フッ素化触媒としてチタニウムまたはクロムの少なくとも一つを用いる方法が開示されている。
【0006】
非特許文献2には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを水酸化カリウムにより脱フッ化水素する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンから、連続的に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法であって、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを気相中で高められた温度の炭素または金属化合物が担持された炭素による反応領域に通じる製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンにフッ化水素を反応させることにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得る第1の工程と、第1工程で得られた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに、気相中、フッ素化触媒存在下、フッ化水素を反応させる第2の工程を含む製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献5には、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンをガス状態にて活性炭と接触せしめ、脱フッ化水素反応させ、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンを得、ガス状態の1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンを、金属塩を添加した活性炭と接触させ、脱フッ化水素させる製造方法が開示されている。
【0010】
通常、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成方法において、反応工程から取り出された反応物は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、原料化合物および副生等の不純物に加え、上述のように酸性成分を含むので、水洗浄、塩基性水溶液で洗浄し、酸性成分を除去するための水洗を行う酸除去工程が必要となる。また、フッ酸を含有する場合は、濃硫酸等と接触させることで、濃硫酸等に吸収させることが好ましい。
【0011】
さらに、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する工程において、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを精製するため、酸除去工程後の未反応の原料、副生物および同伴水等の不純物含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと言うことがある)から当該不純物を除去するために、連続して蒸留精製を行う蒸留工程を設ける。
【0012】
蒸留工程において、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが水を含むと、不純物を除去し難いばかりか、水と1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが共沸し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに水が混入したままとなる。蒸留工程において、蒸留操作を安定して連続で行うには、未反応の原料および副生物等の不純物を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを十分に脱水した状態で、連続的に蒸留設備、例えば、蒸留塔に供給する必要がある。そのためには、酸除去工程の後、且つ蒸留工程の前に、言い換えれば、酸除去工程と蒸留工程の間に脱水工程を設けることが好ましい。また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの商業生産を行うための工業設備であるプラントにおいては、大掛かりな装置を必要としない簡便且つ効率的な脱水方法を採用することが好ましい。例えば、脱水工程を設け、脱水後の少なくとも水を含まず、未反応の原料および副生物等の不純物を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンをタンクに一時貯蔵し、その後段の、蒸留設備に安定して供給することが可能となり、プラントの安定操業が可能となる。
【0013】
また、特許文献6には、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造において、酸性成分除去のために、水洗浄または塩基性水溶液で洗浄後の、水を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、特定のゼオライトと接触させて脱水する方法が開示されている。
【0014】
特許文献7には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造において、酸性成分除去のために、水洗浄または塩基性水溶液で洗浄後の、水を含む1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、特定のゼオライトと接触させて脱水する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−7604号公報
【特許文献2】特開2004−43410号公報
【特許文献3】特開平11−140002号公報
【特許文献4】特開2010−100613号公報
【特許文献5】特許第3158440号
【特許文献6】特開2010−83818号公報
【特許文献7】特開平9−241189号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】R.N.Haszeldine et al.,J.Chem.Soc.1953,1199-1206; CA 48 5787f
【非特許文献2】I.L.Knunyants et al.,Izvest.Akad.Nauk S.S.S.R.,Otdel.Khim.Nauk.1960,1412-18;CA 55,349f
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献6に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを特定のゼオライトと接触させる脱水方法は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが気体状態または液体状態の何れの状態であっても実施可能である優れた方法である。しかしながら、特許文献6に記載の脱水方法を採用して、酸除去工程後の水蒸気を含む、含水量が1000ppm以上となる気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスと言うことがある)を、ゼオライトを充填した脱水塔を用いて脱水する場合、液体の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと比較して体積が概ね230倍になることより、工業生産に見合う量に対応させるために、単位時間当たりに脱水塔を通過する水分を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量流量を多くする必要がある。しかしながら、質量流量を多くすると、それに伴い脱水塔の容量を大きくする必要があり、脱水剤であるゼオライトを多量使用しなければならないこと、さらにゼオライトの再生も必要であるという問題があった。
【0018】
本発明は、大掛かりな装置を必要とせず、簡便な装置を用いることが可能あり、プラントにおける工業的商業生産に用いるのに好適な、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、上記の脱水方法をヒドロフルオロカーボンの一種である1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水工程に採用し、連続的に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造が可能な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
一般的に、水分を含む気体を冷却乾燥させ脱水する場合には、冷却により水蒸気を凝縮させ、液状の水に変えて取り除く脱水方法が採用される。しかしながら、脱水を目的として、気体の凝縮による液化と水蒸気を氷結凝固させて氷結除去による脱水を同時に行う工業的な方法は、これまでよく知られていない。特に、低沸点のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを工業的に製造する分野において、水蒸気を過剰に含むこれら気体の凝縮と水蒸気の氷結除去を同時に行い、脱水して、目的物であるヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを精製する方法はこれまで知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、かかる問題点を解決するために鋭意検討したものであり、飽和水分量以上に多量の水を含むヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンであっても、熱交換器に供給冷却し、水蒸気を熱交換器の伝熱面に氷結凝固させ、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンのみを凝縮して取り出すことで、水分がほとんど含有しないように脱水できることを見いだし、本発明のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法を完成させた。また、該脱水方法を1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水工程に採用することで、連続的に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、以下の発明1〜13よりなる。
【0022】
[発明1]
少なくとも水を含む気体状態のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを熱交換器で冷却し、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを凝縮させ液化し、且つ前記水を氷結凝固させることを含む、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法。
【0023】
[発明2]
熱交換器が隔壁型熱交換器である、発明1の脱水方法。
【0024】
[発明3]
熱交換器が二重管式または円筒多重管式または円筒コイル式またはジャケット付円筒式熱交換器である、発明1の脱水方法。
【0025】
[発明4]
ヒドロフルオロカーボンが1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを特徴とする、発明1〜3の脱水方法。
【0026】
即ち、本脱水方法では、少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを熱交換器で冷却し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを凝縮させ液化し、水を氷結凝固し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと水を分離し、水を除去することになる。
【0027】
[発明5]
少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化し水洗されてなる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、不純物を含むことを特徴とする、発明4の脱水方法。
【0028】
[発明6]
不純物として、少なくとも1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのシス体、トランス体またはその混合物を含む、発明5の脱水方法。
【0029】
[発明7]
少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、1,1,1,3,3−ペンタフオロプロパンより脱フッ化水素して得られた後に水洗されてなる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、不純物を含むことを特徴とする、発明4の脱水方法。
【0030】
[発明8]
不純物として、少なくとも1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む、発明7の脱水方法。
【0031】
[発明9]
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、シス体、トランス体またはその混合物の何れかである、発明4〜8の脱水方法。
【0032】
[発明10]
発明1〜9の脱水方法により1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを脱水する脱水工程と、脱水された、不純物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留精製する蒸留精製工程を含む、1,3,3,3−テトラフロオロプロペンの製造方法。
【0033】
[発明11]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化し、未反応の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、フッ化水素、塩化水素および副生成物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物を得る合成工程と、混合物のフッ化水素および塩化水素を除去する酸除去工程と、をさらに含む、発明10の製造方法。
【0034】
[発明12]
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンより脱フッ化水素し、未反応の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび副生物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物を得る合成工程と、混合物のフッ化水素を除去する酸除去工程と、をさらに含む、発明10の製造方法。
【0035】
[発明13]
酸除去工程が、合成工程で得られた混合物を、硫酸、水または塩基性水溶液と接触させフッ化水素を除去する工程であることを特徴とする、発明11または発明12の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明の脱水方法によれば、熱交換器を用いて粗ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボン中の水を氷結除去するだけでなく、同時にヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの凝縮を行うので、従来のゼオライトを用いる脱水塔を用いての脱水に比べ、脱水設備を小型・簡略化でき、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水工程における脱水操作を容易にする。
【0037】
特に、プラントにおいては、フッ化水素等の酸性成分を除去するために水洗した後の飽和水分量以上に多量の水を含む粗ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンガスを、熱交換器内に供給冷却し、水を熱交換器内の伝熱面に氷結凝固させ、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボン、未反応の原料および副生物等の不純物を凝縮して取り出すことで、水分をほとんど含有しないように脱水でき、脱水工程後段の蒸留工程における蒸留精製操作の負担を小さくすることができる。
【0038】
本発明の脱水方法は、プラントにおける1,3,3,3−テトラフロオロプロペンの工業的商業生産に好適に採用でき、連続的な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水工程に用いた装置例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法であり、少なくとも水を含む気体状態のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを熱交換器で冷却し、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを凝縮させ液化すると同時に、水を氷結凝固させ、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンと水を分離し、水を除去することを特徴とする。
【0041】
ヒドロフルオロカーボンとしては、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、3,3,3−トリフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたは1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン等が挙げられる。また、ヒドロクロロフルオロカーボンとしては、クロロジフルオロメタン、1,1−ジクロロー2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1−クロロー3,3,3−トリフルオロプロペンまたは2−クロロー3,3,3−トリフルオロプロペン等が挙げられる。
【0042】
本発明の脱水方法は、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパン、テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロペン等のパーフルオロカボンの製造においても適用することができる。
【0043】
以下、ヒドロフルオロカーボンの一種であり、発泡剤、冷媒、または医農薬の中間原料、もしくはスプレー等エアロゾルの噴射剤であるプロペラント、あるいはマグネシウム合金製造の保護ガス等として有用な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを例に挙げて、本発明の脱水方法を詳細に説明する。また、本発明の脱水方法を採用した1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法を併せて説明する。
【0044】
1. 脱水方法(熱交換器およびその脱水操作)
本発明の脱水方法において、水分を氷結除去するために使用する熱交換器は、冷却伝熱面を介して、冷却媒体と1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの熱交換させる隔壁型熱交換器が好適に使用される。
【0045】
例えば、二重管式の隔壁型熱交換器を用いれば、内管または外管のいずれかに冷却媒体を流通させ、他方の管内に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび水を含むガスを流通させることで、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび不純物の凝縮、且つ蒸気およびミストの氷結を達成し、蒸気およびミストを氷結分離することができる。その際、熱交換効率を高めるために、熱交換器内の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが流通する部分に、熱伝導率の高い充填物を充填すること、または1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが接触する側の伝熱面にフィンを付けて有効伝熱面積を拡大したものを使用することができる。
【0046】
このような隔壁型熱交換器には、二重管式以外に、円筒多重管式、円筒コイル式、またはジャケット付円筒式が挙げられ、本発明の脱水方法において、円筒多重管式または円筒コイル式に外部ジャケットを付けて伝熱面積を拡大した熱交換器を採用することが可能である。
【0047】
本発明の脱水方法に使用する熱交換器の材料には、熱伝導率が大きい金属を用いることが好ましく、例えば、鉄、鉄鋼、銅、鉛、亜鉛、真鍮、ステンレス、チタン、アルミニウム、マグネシウム、モネル、インコネルまたはハステロイ等が挙げられ、腐食防止のためには、熱交換器の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの接触面にフッ素樹脂等の樹脂、セラミックスまたはグラス等のライニングを施すことが好ましい。
【0048】
本発明の脱水方法に使用する熱交換器の伝熱面積は、用いる冷却媒体の温度に依存するが、少なくとも水分を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを凝縮し、水を氷結するために必要な熱量を交換するに十分な面積があることが好ましい。また、水が熱交換器の伝熱面に付着すると伝熱係数が下がるため、少なくとも計算上必要な伝熱面積の1.5倍以上の面積とすることが好ましい。上述の通り、本発明の脱水方法において、熱交換器の伝熱面にはフィンを取り付けたものを使用することもでき、特に、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが接触する伝熱面側にフィンを取り付けてガスの流れを変化させるとともに伝熱面積を拡大することは伝熱効率が向上することから有効である。
【0049】
本発明の脱水方法における1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの熱交換器への導入方法は、十分な伝熱面積を有する熱交換器へ気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを通過させる流通式方法が挙げられる。導入方向は、熱交換器を縦型にした場合、上部から処理ガスを導入することが好ましく、その場合、氷結は熱交換器の伝熱面の上部から発生し、閉塞してくるので、導入口を下部に複数個設け、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの導入を下部に移動することが望ましい。また、熱交換器を横型としても利用することができ、この場合も上部から処理ガスを導入することが望ましく、導入口を並列して複数個設けることもできる。
【0050】
本発明の脱水方法において脱水時の温度は特に限定されないが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水では、操作圧力下において、気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(大気圧下、沸点−19℃)が凝縮する温度以下に下げる必要がある。かかる温度は、大気圧下においては−50℃以上、−20℃以下であり、特に−40℃以上、−25℃以下が好ましい。−20℃より高いと、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが凝縮し難く、−50℃より低い温度に下げる場合は大掛かりな冷却器を必要とし、実用的ではない。
【0051】
プラントにおいては、水分を氷結除去し凝縮した液化処理した液体状態の粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは熱交換器の下部に設けた受槽に回収する。受槽の温度は1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(常圧、沸点−19℃)が凝縮する温度以下であることが好ましい。また、受槽内部にU字型またはコイル型の冷却管を設置し、冷却することで、液化した粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペン中の水分を、さらに氷結除去することが可能である。
【0052】
本発明の脱水方法において熱交換器に使用する冷却媒体は特に限定されないが、冷却温度によって、水性媒体、塩化カルシウム等を主成分とする無機系ブライン、エチレングリコールまたはプロピレングリコール等を主成分とする有機ブラインから選択して使用することができる。
【0053】
また、本発明の脱水方法において、冷却方法として、例えば、液化した1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの気化熱を利用することも可能である。特に、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造において、前述の様に、蒸留工程の前段の脱水工程に本発明の脱水方法を採用する場合、液化した1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを再度蒸発させて、後段の蒸留工程の蒸留塔へ供することが考えられる。このため、液化した1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの蒸発を熱交換式脱水装置の冷却媒体流通側で行えば、外部熱源による加熱および除熱の負荷を低減することができ、省エネルギーとなる。
【0054】
本発明の脱水方法において、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを脱水する際の熱交換器内の圧力は、通常0.1MPa以上、1MPa以下で行うことが好ましい。加圧条件での冷却温度は、圧力に応じて適宜選択することができる。
【0055】
熱交換機における流通式方法では、脱水する水を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの、熱交換器内の線速は6m/hr以上、1200m/hr以下であり、好ましくは、30m/hr以上、600m/hr以下である。線速が6m/hrより小さいと熱交換式脱水装置が過大となり、1200m/hrより大きい場合には、水分の氷結および有機物の凝縮が不十分となり、後段の蒸留工程の負担が大きくなる。
【0056】
流通式方法では、水を含む熱交換式脱水装置の伝熱面への氷結水の付着量は、水を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの接触時間が長くなるにつれて多くなる。このため、一定時間経過後に氷結水の融解し除去する操作が必要となる。氷結水の融解除去方法は、5℃以上、200℃以下の乾燥した空気または窒素等(加熱媒体)を脱水装置上部より流通させる方法を用いることができる。乾燥した空気または窒素等の温度は高温であってもよいが、装置材料の熱応力負荷が少なく、省エネルギーとなることから、20℃以上、100℃以下が望ましい。
【0057】
氷結水を融解させるための加熱方法として、熱交換器内の冷却媒体が流通していた部分に、冷却媒体の温度を上昇させて、加熱媒体として流通させる方法を用いることができる。または、冷却媒体を熱交換器内の冷却媒体が流通していた部分から取り除き、その代わりに加熱媒体を流通させる方法を用いることもできる。この際、冷却媒体と加熱媒体は、同一の物質または別の物質であることは限定されない。さらに、熱交換器内の水を含んだ1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが流通していた部分に、加熱媒体として、乾燥した空気または窒素を使用する方法を用いることもできる。融解した氷結水は、水または水蒸気の状態で脱水装置上部または下部より排出される。
【0058】
本発明の脱水方法が適用される1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスは、少なくとも水を含むものであって、水蒸気以外に、水としてのミスト状態の同伴水を伴っていてもよい。1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造において、酸除去工程を出た直後の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応物の含有水と同伴水を合計した含水率は、質量比で表して、3000ppm〜10質量%である。しかしながら、ミストセパレーター等の気液分離装置を流通させれば、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応物の含水率は、1300ppm程度となる。本発明の脱水方法では、少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを凝縮、即ち、液化にすると同時に水を氷結凝固させ1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと水を分離し、水を除去することを水の含有率を100ppm未満に減少させることができる。
【0059】
本発明の脱水方法を1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造に適用する際には、反応工程から取り出された反応物が酸性成分を含む場合、水洗浄または塩基性水溶液での洗浄を行い、酸性成分を除去する酸除去工程、フッ酸が多量に含まれる場合は、フッ酸を濃硫酸と接触させ吸収させた後、水洗浄または塩基性水溶液での洗浄を行う酸除去工程が必要となり、酸除去後の前述の不純物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを本発明の脱水方法により脱水することが好ましい。酸性成分が除去された1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、熱交換器による脱水設備を用いた脱水工程に供され脱水されることによって、含水率が100ppm未満の、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンとなる。
【0060】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造プラントにおいて、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンをさらに脱水し含水率を低くしたい場合、熱交換器を用いた脱水方法による脱水工程の後段の蒸留工程で、蒸留操作を行い、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製を行った後、従来のゼオライトを用いた脱水方法を適用することが好ましい。最終的にゼオライトを用いた脱水塔に、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスを流通させることにより、得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含水率を1ppm〜20ppmに低減することが可能である。本発明の熱交換器を用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水方法による脱水工程により、脱水塔に入る前の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含水率は既に100ppm未満であるから、ゼオライトを充填した脱水塔は、大掛かりな設備でなくてもよく、小型の脱水塔で十二分に機能する。
【0061】
2. 1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成
通常、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化した後、フッ化水素を水洗除去することにより、水を含み、且つ、不純物として、未反応の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのシス体、トランス体またはその混合物を含む状態で得られる。このようにして得られた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスに本発明の脱水方法を適用してもよい。
【0062】
また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンより脱フッ化水素した後に、副生成物のフッ化水素を水洗除去することにより、水を含み、且つ、不純物として、未反応の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン等を含む状態で得られる。このようにして得られた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに本発明の脱水方法を適用してもよい。
【0063】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、二重結合を有する化合物であり、シス体、およびトランス体が存在する。前記合成反応で得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、シス体、トランス体またはその混合物の何れかであるが、いずれであっても本脱水方法では特段差し支えない。
【0064】
次いで、本発明の脱水方法により脱水された、不純物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留精製することで、純度の高い1,3,3,3−テトラフロオロプロペンを得る。
【0065】
3. 1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの連続製造方法
また、本発明は、上記脱水方法を採用することで、連続的に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造を可能とした1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法である。即ち、本製造方法は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを合成する第1の工程、合成された1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスからフッ化水素および塩化水素等の酸性成分を除去する第2の工程、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスを熱交換器で冷却し、少なくとも1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを凝縮させ、且つ水を氷結凝固させ脱水する第3の工程、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留精製する第4の工程からなることからなることを特徴とする。
【0066】
各工程について、順を追って説明する。
【0067】
3.1 第1工程(1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成)
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成方法は、反応工程から取り出された反応物が酸性成分を含み、水洗浄または塩基性水溶液等での洗浄を行う必要のある合成方法であれば良く、特に限定されるものではない。以下、合成方法を列挙する。
【0068】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、一般式CFCl3−YCH=CHFCl1−W(式中、Wは0または1、Yは0〜3の整数を表す。但し、W=1で且つY=3の場合を除く)で表されるハロゲノヒドロプロペンをフッ化水素でフッ素化することで合成される。フッ化水素でフッ素化することで1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが得られるハロゲノヒドロプロペンには、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CHCl)、CFClCH=CHFまたはCFClCH=CHF等が挙げられる。
【0069】
例えば、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成方法として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CHCl)をフッ化水素と反応させる方法が挙げられる。この反応は、液相でも気相でも進行可能であるが、工業的には連続化が容易な気相が好ましく、フッ素化触媒存在下、気相中において製造する場合、該フッ素化触媒が、クロム、チタン、アルミニウム、マンガン、ニッケル、コバルトの中から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物を担持した活性炭である合成方法(特許文献1)、またはフッ素化触媒としてチタニウムまたはクロムの少なくとも一つを用いることを特徴とする合成方法(特許文献2)が例示できる。
【0070】
また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素する方法で製造される。この反応は、アルカリ金属等の水酸化物の存在下で進行させることが好ましい。
【0071】
他に、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを触媒存在下で熱分解反応させることにより、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る方法がある。熱分解反応としては、熱分解またはアルミナ、ジルコニア、炭素またはそれらにアルミニウム、クロム等を担持された触媒を使用した接触分解が挙げられるがこれらに限られない。これらの熱分解反応は通常気相で、また、温度を高めた状態、加圧もしくは減圧下で行うことができる。フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロカーボン等のフッ化水素に対して不活性な溶媒、アルゴンまたは窒素等の不活性ガスを用いても行うこともできる。具体的には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを200℃以上、600℃以下の温度でクロムを担持した活性炭に通じると1,3,3,3−テトラフルオロプロペンとフッ化水素の混合ガスが反応生成物として得られる(特許文献3)。また、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを200℃以上、600℃以下の温度で活性炭に通じると1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンとフッ化水素の混合ガスが反応生成物として得られる(特許文献5)。
【0072】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、二重結合を有する化合物であり、シス体、およびトランス体が存在する。上述のどちらの合成方法においても、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンはシス体およびトランス体の混合物として合成されるが、そのような混合物であっても本製造方法では特段差し支えない。実際には、反応により、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンがシス体およびトランス体の混合物として合成され、未反応の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(シス体およびトランス体)または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン等の原料不純物、あるいはフッ化水素または塩化水素等の酸性成分等の不純物と混合した状態(粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)で得られる。
【0073】
3.2 第2工程(酸除去工程)
以上に例示したいずれの合成反応であっても、得られた粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは酸性成分を含むので、酸性成分を除去する操作が必要となる。
【0074】
具体的には、フッ化水素が多量に含まれる場合は、フッ化水素を濃硫酸と接触させ吸収させた後、水洗浄または塩基性水溶液での洗浄を行う酸除去工程が必要となる。即ち、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、例えば、塩化水素、フッ化水素とともに反応器から液体または気体状態で取り出された後、塩化水素、フッ化水素は、液相分離、硫酸吸収等の操作で除去後、ついで、水または塩基性水溶液で水洗し、これら酸性成分を除去する。酸性成分除去後の粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは脱水工程に供される。
【0075】
フッ化水素を取り除く際に用いる試剤としては、特に制限はなく、例えば、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等とフッ化水素の錯体を形成させて分離することができ、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩又はこれらの水溶液と反応させることにより、フッ化カルシウム(CaF)として固定化処理を行い、該プロペンからフッ化水素を取り除くことができる。また、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩等とフッ化水素を反応させることで、それぞれ対応するフッ化金属塩として固定化処理を行い、フッ化水素を取り除くこともできる。
【0076】
しかしながら、プラントにおいて、多量のフッ化水素を除去する場合、硫酸と接触させることで、フッ化水素を取り除くことが好ましい。硫酸と接触させる場合、硫酸の量は、上記反応混合物に含まれるフッ化水素の量に依存するため、当業者が適宜調整することができる。例えば、硫酸に対するフッ化水素の溶解度の温度に対するグラフを用いて、100%濃度の硫酸中のフッ化水素の溶解度から、必要とされる硫酸の最小量を決めることができる(例えば30℃では、約34gのフッ化水素が100gの100%硫酸に溶解する)。
【0077】
硫酸の純度は特に限定されないが、好ましくは50質量%以上の純度であり、98質量%以上、100質量%以下の純度を有するものがさらに好ましい。通常は市販されている工業用硫酸(98質量%)が使用できる。
【0078】
この処理は、反応生成物が液化しない温度であればよく、通常20℃以上、100℃以下、好ましくは25℃以上、50℃以下、より好ましくは25℃以上、40℃以下で行われる。
【0079】
硫酸に吸収したフッ化水素は、蒸留回収後再使用される。
【0080】
硫酸に吸収されない塩化水素は、フッ化水素を硫酸吸収後、水等の媒体により吸収して除くことができる。
【0081】
3.3 第3工程(脱水工程)
粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、第2工程(酸除去工程)において水または塩基性水溶液と接触するので、相応の水分を有することとなる。含水率は粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの成分およびその含有割合、温度、接触方法等により違ってくるが、ミスト状態の同伴水を伴うため、含有水と同伴水との合計した含水率は、質量で表して、3000ppm〜10質量%である。本発明の脱水方法は、含水率の高い場合においても使用可能であるが、過剰の同伴水はミストセパレーター等の予備脱水工程により、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを5℃程度に冷却し水分のみを凝集させることで予め脱水しても良く、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに同伴水が多く含水率が1%を超える場合等においては有効である。ミストセパレーターは、金属、樹脂、無機充填剤等を充填した二重管に水を含んだ反応生成物を低温下に通過させることにより生成物に同伴される飽和水分以上の過剰水分を除去するものである。また、遠心式または重力式によってミストを分離する形式のものを使用することができる。これらの操作により反応生成物の水分量を1000ppm以上、2000ppm以下にすることが可能である。過剰の水をミストセパレーターにより低減した粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに対して、本発明の脱水方法を適応することにより、熱交換器を用いて、5ppm以上、100ppm以下にまで水分量を低減できると同時に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスおよび原料のガスを凝縮し液体とする。
【0082】
3.4 第4工程(蒸留工程)
次いで、本発明の脱水方法により脱水した粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留塔にて蒸留することにより、原料不純物を除去し、さらに1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのシス体またはトランス体を選択的に得ること、即ち、精製することが可能となる。例えば、本発明の脱水方法により脱水した粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留塔にて蒸留する際の蒸留条件の調整により、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが99%以上の高純度で得られた。
【0083】
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(沸点9℃)は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(沸点15℃)と沸点が近接し、通常の蒸留では分離し難い。シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンとが混在する場合は、抽出蒸留等で分離する、または塩基を用いて、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンよりフッ化水素を脱離させて、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに転化するとよい。
【0084】
蒸留工程における蒸留塔は、壁面が蒸留物に対して不活性であればよく、壁面がガラス製またはステンレス製でもよく、鋼等の基材に四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA)樹脂またはガラスを内部にライニングしている蒸留塔でもよい。蒸留塔中には、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリングまたはサドルスルザーパッキン等の充填物を充填してもよい。蒸留は、常圧でも行うことができるが、加圧条件下で行うと、蒸留塔内の圧力損失を小さくすることができ、凝縮器の負荷を低減することができるため好ましい。この蒸留操作に要求される蒸留塔の段数に制限はないが、5段〜100段が好ましく、さらに好ましくは10段〜50段である。段数が5段未満であると、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの純度が十分に高まらず、段数が100段以上であると蒸留塔自体の経済的負担が大きくなること、加えて蒸留操作の所要時間が長くなることから好ましくない。
【0085】
本発明の脱水方法は、蒸留後の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを水洗した場合等にも適用できる。蒸留後の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに、さらに特許文献5に記載のゼオライトを用いた脱水方法により脱水すれば、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに水分量を1〜20ppm以下にまで低減できる。
【0086】
本発明の脱水方法は、回分式の熱交換器も用いても実施可能であるが、プラントにおける工業的商業生産おいて、連続的且つ効率的に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するには、流通式の熱交換器を使用することが好ましい。
【0087】
4. 1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水工程の例
本発明の脱水方法による、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの脱水工程の例を、図1を用いて説明する。尚、図1中の13、14は圧力計、15、16は温度計である。
【0088】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン合成反応後の未反応原料、副生物、酸性成分および水分を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが蓄えられたボンベ1より、当該粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは気化器2に供給され気化される。次いで、水洗装置3で水洗し酸成分を除去した、酸性分除去後の水蒸気およびミストを含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、ミストセパレーター4に供給され、5℃に冷却した冷媒としてのエチレングリコール水溶液を冷媒入口9より供給し、冷媒出口10より排出し、水分を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンより水分を凝縮させ、水分の含有率を低減した後、二重管式熱交換器5に供給される。冷媒を冷媒入口11から冷媒出口12に流すことで、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびその他不純物は冷却され凝縮して液体となり、二重管式熱交換器5の内部伝熱面に水分は氷結凝固する。
【0089】
凝縮した粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペン液は二重管式熱交換器5から液化ガス受器6へと流れ落ち、液化ガス受器6内に液体状態の粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが溜まる。
【0090】
粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが二重管式熱交換器5で液化しないときは気体状態を保ちながら深冷トラップ7へ供給される。深冷トラップ7で用いる冷却媒体は、例えば、ドライアイスおよびアセトンの混合物または液体窒素を使用する。深冷トラップ7の冷却温度は二重管式熱交換器の冷却温度より低い温度となり、二重管式熱交換器5で液化しなかった粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスを凝縮し、捕集することができる。
【0091】
深冷トラップ7の後段に接続した乾燥剤充填管8は大気開放部となっており、外気中の水分が、深冷トラップ7および二重管式熱交換器5へ浸入することを防止している。
【0092】
5. 熱交換器とゼオライトを充填した脱水塔の脱水能力の比較
脱水装置に本発明の脱水方法に使用する熱交換器も用いた場合、または従来のゼオライトを充填した脱水塔を用いた場合の脱水能力について、算出した結果を示す。各々の方法について、含有率が1300ppmの水および未反応原料を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの含水率を100ppmまで減衰させる際の粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量を算出した。
【0093】
具体的には、外管の内径21.4mm、内管の外径8mm、長さ56cmの内容積が201cmのSUS−316製二重管式熱交換器と、ゼオライトとして直径2mmの球状のモレキュラーシーブ3Aを充填した内径21.4mm、長さ35cmの内容積が126cmの脱水塔において、含有率が1300ppmの水および未反応原料を含む粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの含水率を100ppmまで減衰させる際の脱水能力を算出した。
【0094】
前記二重管式熱交換器を用いた場合、脱水能力が飽和するまでに脱水できる、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量は、30kgであった。
【0095】
比較して、前記脱水塔のモレキュラーシーブ3Aが失活するまで脱水できる、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量は、7.2kgであった。
【0096】
以下の算出式を用い、脱水装置の単位内容積あたりで脱水される粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量(以下、処理量と呼ぶ)[kg/m]および脱水量[kg/m]を算出した。
【0097】
脱水装置の単位内容積あたりで脱水される粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量[kg/m]=w×10/V
脱水装置の単位内容積あたりの脱水量[kg/m]=(1300−100)×w/V
ここで、wは、100ppm以下まで脱水処理可能な粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量[kg]、Vは装置の内容積[cm]とする。
【0098】
w(前記二重管式熱交換器が脱水できる粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量、30kg、前記脱水塔が脱水できる、粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの質量は7.2kg)を、前述の算出式に代入し、装置の単位内容積あたりで脱水される粗1,3,3,3−テトラフルオロプロペンガスの処理量および装置の単位内容積あたりの脱水量を算出した。算出の結果、二重管式熱交換器における1mあたりの処理量は、149×10kg/mであった。比較して、ゼオライトを充填した脱水塔1mあたりにおける処理量は、57×10kg/mであった。また、二重管式熱交換器における1mあたりの脱水量は、179kg/mあった。比較して、ゼオライトを充填した脱水塔1mあたりにおける脱水量は、69kg/mであった。
【0099】
以上の算出結果より、当該発明の二重管式熱交換器を用いた脱水法は、ゼオライトを充填した脱水塔による脱水方法に比較して、2.6倍の脱水能力を得ることがわかった。
【0100】
また、二重管式熱交換器はゼオライトに比べ脱水能力に優れるばかりか、ガス成分の凝縮器をも兼ねており、凝縮器が省略できるので、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する工程を簡略でき、工業的プラントに好適に使用される。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
(1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成)
リボンヒーターにより加熱ができる、内径23mm、長さ300mmのステンレス鋼(SUS−316)製管型反応器を用意した。前記管型反応器に、触媒として塩化クロム(CrCl3)を担持した活性炭を50ml充填し、200℃おいて、フッ化水素を0.2g/minの供給速度で供給した。この後、フッ化水素を供給しながら、50℃ずつ段階的に温度を上昇させて、最終的に400℃まで昇温した。200℃〜400℃の温度範囲において、合計8時間かけてフッ化水素による触媒の活性化を行った。
【0103】
管型反応器内の温度が320℃になるように加熱した後、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを0.80g/minの速度で管型反応器内に連続供給し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンから脱フッ化水素して1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを合成する反応を100時間継続した。
【0104】
反応後のガスを、酸吸収用の水の入ったトラップにバブリングさせ、未反応のフッ化水素を吸収除去した後に、ガスクロマトグラフィーにて組成分析を行ったところ表1の結果を得た。組成分析の結果、反応後のガス中の未反応の1,1,1,3,3ペンタフルオロプロパンの含有率は17.3質量%、合成されたトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含有率は68.2質量%、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは14.4質量%、その他0.1質量%であった。
【表1】

【0105】
<脱水操作>
得られた上記ガスを15g/minの速度で水にバブリングさせた後、図1に示すように、5℃の冷媒で冷却したSUS−316製ミストセパレーター4に供給し、ガスに同伴する水分を除去した。尚、ミストセパレーター4には、SUS−316製充填物を、予め充填しておいた。
【0106】
ミストセパレーター4の出口のガスを捕集し、カールフィッシャー法で含水率を測定したところ、1300ppmであった。ミストセパレーター4通過後のガスを、外管の内径18mm、内管の外径8mm、長さ560mmのSUS−316製二重管式熱交換器5の外管と内管の間に15g/minの速度(気体状態換算の線速度10m/min)で供給した。尚、ガスは、二重管式熱交換器5の上部から外管と内管の間の間隙に供給した。内管内には、−40℃の冷媒を二重管式熱交換器5下部の冷媒入口10から上部の冷媒出口11に流して、ガスを冷却し凝縮させ、液体とした。水分は二重管式熱交換器5の内管外側の伝熱面に氷結し除去された。
【0107】
このようにして液化したガスの液化物を、二重管式熱交換器5の下部から液化ガス受器6に捕集した。捕集した液化物の水分含有率をカールフィッシャー法で測定したところ、60ppmであった。また、ガスクロマトグラフィーで測定した液化物の組成比は表1の値と同等であった。
【0108】
<蒸留操作>
液化物を蒸留等にて蒸留し、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを留出させて単離した。カールフィッシャー法で測定したトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含有率は90ppm、ガスクロマトグラフィー法で測定したトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの純度99.9質量%であった。尚、本蒸留により、前記ガス中のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの98質量%を回収した。
【0109】
[実施例2]
(1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成)
リボンヒーターにより加熱ができる、内径23mm、長さ300mmのステンレス鋼(SUS−316)製管型反応器を用意した。前記管型反応器に、触媒としてのクロム担持アルミナを50ml充填し、200℃おいて、フッ化水素を0.2g/minの供給速度で供給した。この後、フッ化水素を供給しながら、50℃ずつ段階的に温度を上昇させて、最終的に400℃まで昇温した。200℃〜400℃の温度範囲において、合計8時間かけてフッ化水素による触媒の活性化を行った。
【0110】
管型反応器内の温度が340℃になるように加熱した後、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを0.16g/minの速度で管型反応器内に連続供給し、フッ化水素を0.24g/minの速度で管型反応器内に連続導入し、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化し1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る反応を10時間継続した。
【0111】
反応後のガスを、酸吸収用の水の入ったトラップにバブリングさせ、未反応のフッ化水素および塩化水素を吸収除去した後に、ガスクロマトグラフィーにて組成分析を行ったところ表2の結果を得た。組成分析の結果、反応後のガス中の未反応のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの含有率は40.4質量%、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの含有率は5.6質量%、合成されたトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含有率は33.0質量%、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは8.0質量%、その他0.3質量%であった。
【表2】

【0112】
<脱水操作>
得られた上記ガスを実施例1で用いたミストセパレータ4、次いで二重管式熱交換器5へ供給した。これらの装置を用いた脱水操作は、実施例1と同様に行い、得られた液化物を二重管式熱交換器5の下部より液化物として、液化ガス受器内に捕集した。捕集した液化の水分含有率をカールフィッシャー法で測定したところ、60ppmであった。また、ガスクロマトグラフィーで測定した液化物の組成比は表2の値と同等であった。
【0113】
また、ガスクロマトグラフィーで純度有機物の組成比は表2の値と同等であり、新たな有機物は見出されなかった。また、前記ガス中のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの98質量%を回収した。また、実施例1と同様に、蒸留操作を行い、前記ガス中のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの98質量%を回収した。
【0114】
上述の通り、本発明の脱水方法によれば、大掛かりな装置を必要とせず、簡便な装置を用いて容易な脱水操作で1,3,3,3−テトラフロオロプロペンを脱水することができる。該脱水方法はプラントにおける1,3,3,3−テトラフロオロプロペンの工業的商業生産に好適に採用でき、連続的な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造を可能とする。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0116】
1 ボンベ
2 気化器
3 水洗装置
4 ミストセパレーター
5 二重管式熱交換器
6 液化ガス受器
7 深冷トラップ
8 乾燥管(出口大気開放)
9 冷媒入口
10 冷媒出口
11 二重管式脱水装置の内管の冷媒入口
12 二重管式脱水装置の内管の冷媒出口
13、14 圧力計
15、16 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水を含む気体状態のヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを熱交換器で冷却し、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを凝縮させ液化し、且つ前記水を氷結凝固させることを含む、ヒドロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンの脱水方法。
【請求項2】
熱交換器が隔壁型熱交換器である、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項3】
熱交換器が二重管式または円筒多重管式または円筒コイル式またはジャケット付円筒式熱交換器である、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項4】
ヒドロフルオロカーボンが1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項1及至請求項3のいずれか1項に記載の脱水方法。
【請求項5】
少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化し水洗されてなる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、不純物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の脱水方法。
【請求項6】
不純物として、少なくとも1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのシス体、トランス体またはその混合物を含む、請求項5に記載の脱水方法。
【請求項7】
少なくとも水を含む気体状態の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、1,1,1,3,3−ペンタフオロプロパンより脱フッ化水素して得られた後に水洗されてなる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、不純物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の脱水方法。
【請求項8】
不純物として、少なくとも1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む、請求項7に記載の脱水方法。
【請求項9】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、シス体、トランス体またはその混合物の何れかである、請求項4及至請求項8のいずれか1項に記載の脱水方法。
【請求項10】
請求項1及至請求項9のいずれか1項に記載の脱水方法により1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを脱水する脱水工程と、脱水された、不純物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを蒸留精製する蒸留精製工程を含む、1,3,3,3−テトラフロオロプロペンの製造方法。
【請求項11】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素によりフッ素化し、未反応の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、フッ化水素、塩化水素および副生成物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物を得る合成工程と、混合物のフッ化水素および塩化水素を除去する酸除去工程と、をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンより脱フッ化水素し、未反応の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび副生物を含む1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物を得る合成工程と、混合物のフッ化水素を除去する酸除去工程と、をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
酸除去工程が、合成工程で得られた混合物を、硫酸、水または塩基性水溶液と接触させフッ化水素を除去する工程であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−82189(P2012−82189A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145451(P2011−145451)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】