説明

ヒドロホルミル化の方法

本発明は、式(I)の化合物またはそれらの塩のヒドロホルミル化のための方法に関する。式(I)において、Xは、C、P(Rx)、P(O−Rx)S、またはS(=O)であり、ここで、Rxは、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり;Aは、1〜4個の架橋原子を含む二価の架橋基であり;並びにR1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールである。前記方法により、式(I)の化合物は、触媒の存在下において一酸化炭素および水素と反応し、当該触媒は、第VIII族の金属と式(II)の化合物との錯体を含み、ここで、Pnは、ピニコゲン原子であり;Wは、1〜8個の架橋原子を含む二価の架橋基であり;R2は、基−X(=O)OHと分子間非共有結合を形成することができる官能基であり;R3、R4は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり;a、b、cは、0または1であり;並びにY1、Y2、およびY3は、O、S、NRa、またはSiRbcである。本発明による方法は、式(II.a)の化合物のヒドロホルミル化のための方法でもあり、ここで、W’は、隣接する結合との間に1〜5個の架橋原子を含む二価の架橋基であり、Zは、O、S、S(=O)、S(=O)2、N(RIX)、またはC(RIX)(RX)であり;RI〜RXは、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキルなどであるか;あるいは2つの基RI、RII、RIV、RVI、RVIII、およびRIXが、共有結合の結合部分を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子間非共有結合を形成することができる官能基を有する不飽和化合物のヒドロホルミル化のための方法であって、この化合物が、第VIII族の遷移金属と配位子としてのプニコゲン含有化合物との錯体を含む触媒の存在下において、一酸化炭素および水素と反応し、この場合、当該プニコゲン含有化合物は、ヒドロホルミル化される化合物、例えば配位子、の分子間非共有結合を形成することができる官能基に対して相補的な官能基を有する、配位子、触媒、またはそれらの使用に関する。
【0002】
ヒドロホルミル化またはオキソ法は、重要な工業方法であり、不飽和化合物、一酸化炭素、および水素からアルデヒドを製造するために用いられている。場合により、これらのアルデヒドを、同じ方法において水素によって水素化することにより、対応するオキソアルコールを得ることができる。当該反応自体は、強い発熱性であり、一般的に、触媒の存在下において超高圧および高温で進行する。使用される触媒は、活性および/または選択性に影響を及ぼすN−またはP−含有配位子により修飾されていてもよいCo、Rh、Ir、Ru、Pd、またはPt化合物もしくは錯体である。
【0003】
3つ以上の炭素原子を有する不飽和化合物のヒドロホルミル化反応では、二重結合の2つの炭素原子のそれぞれに対してCO付加が可能であるために、異性体アルデヒドの混合物の形成が生じ得る。加えて、少なくとも4個の炭素原子を有する不飽和化合物を使用する場合、二重結合の異性体化、すなわち、内部二重結合の端末の位置へのシフトおよびその逆も生じ得る。さらに、不飽和化合物の混合物が使用される場合、錯体および分離困難な生成混合物が、ヒドロホルミル化から得られる可能性がある。
【0004】
ロジウム触媒化低圧ヒドロホルミル化において触媒金属を安定化および/または活性化するためのプニコゲン含有配位子、特にリン含有配位子、の使用は公知である。好適なリン含有配位子は、例えば、ホスフィン、ホスフィニット、ホスホニット、ホスフィット、ホスホルアミダイト、ホスホール、およびホスファベンゼンである。現時点で最も広く用いられている配位子は、トリアリールホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィンおよびスルホン化トリフェニルホスフィンであり、というのも、これらが、反応条件下において十分な安定性を有しているためである。しかしながら、これらの配位子の欠点は、一般的に非常に大過剰量の配位子からでなければ、満足できる収量が得られないという点である。
【0005】
B.BreitおよびW.Seicheによって公開されたJ.Am.Chem.Soc.2003,125,6608−6609には、二座配位性供与性配位子を形成するための、水素結合を介した単座配位子の二量化並びに高い位置選択性を有するヒドロホルミル化触媒におけるそれらの使用について記載されている。
【0006】
欧州特許第1486481号には、第VIII族の遷移金属と配位子として非共有結合を介した二量化が可能な単リン化合物との少なくとも1つの錯体を含む触媒の存在下におけるオレフィンのヒドロホルミル化ための方法について記載されている。
【0007】
独国特許第102006041064号には、ペプチド基を含むリン化合物:
【化1】

[式中、Y1は、両側の結合の間に1個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、RαおよびRβは、それぞれ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、もしくはヘタリールであるか、あるいはリン原子、およびそれらが結合している、場合によって存在する基X1およびX2と一緒に、5〜8員のヘテロ環を形成し、Rγは、少なくとも2つのアミノ酸ユニットを含むペプチド基であり、X1およびX2は、O、S、SiRεζ、およびNRηの中から選択され、Zは、NRIXまたはCRIXXであり、RI〜RXは、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリールなどであり、この場合、2つの隣接基であるRI、RII、RIV、RVI、RVIII、およびRIXが一緒に、環原子の間の二重結合の第二の結合を表していてもよく、並びにa、b、およびcは、それぞれ0または1である]、
そのような化合物を配位子として含む触媒、並びにそのような触媒の存在下でヒドロホルミル化を実施する方法についても記載されている。
【0008】
国際出願PCT/EP2007/059722号(国際公開第2008/031889号)には、配位子としてイオン相互作用を介した二量化が可能な少なくとも2つのプニコゲン含有化合物を有する少なくとも1つの金属錯体を含む触媒(この場合、当該配位子は、互いに相補的である官能基を有するか、あるいは2つの非相補的な官能基を有する2つの配位子およびさらに当該2つの配位子の官能基に対して相補的な多価イオン化合物および/またはイオノゲン化合物が用いられる)、並びにそのような触媒が用いられる方法について記載されている。
【0009】
前述の文献には、反応する化合物(基質)と会合することができる配位子の作製については記載されていない。
【0010】
本発明の目的は、分子間非共有結合を形成することができる官能基を含有する不飽和化合物の化学選択的および位置選択的ヒドロホルミル化に好適なヒドロホルミル化方法を提供することである。この方法において、基質に関して高選択性を示すだけではなく、高い位置選択性および/または水素化よりもヒドロホルミル化に対して高い選択性を示し、および/または高い時空収量を可能にするヒドロホルミル化触媒が、当該方法において好ましく使用されるべきである。
【0011】
驚いたことに、この目的は、反応する化合物(基質)に対して分子間非共有結合を形成することができるモノプニコゲン配位子を使用することによって達成されることが見出された。この方法により、ヒドロホルミル化反応の高い位置選択性および反応する基質または反応する官能基に関する高い選択性が達成される。したがって、本発明による化合物は、不飽和化合物の混合物の選択的ヒドロホルミル化、または反応することができる2つ以上の官能基を有する不飽和化合物の選択的ヒドロホルミル化に対して特に有利である。
【0012】
したがって、本発明は、式(I):
【化2】

[式中、
Xは、C、P(Rx)、P(O−Rx)、S、またはS(=O)であり、ここで、Rxは、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、
Aは、両側の結合の間に1〜4個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキル、アルケニル、およびアルキニルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよい]
の化合物またはそれらの塩のヒドロホルミル化のための方法であって、
この場合、式(I)の化合物が、元素周期表の第VIII族の遷移金属と式(II):
【化3】

[式中、
Pnは、ピニコゲン原子であり、
Wは、両側の結合の間に1〜8個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
2は、式(I)の化合物の−X(=O)OH基に対して少なくとも1つの分子間非共有結合を形成することができる官能基であり、
3およびR4は、それぞれ、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、ここで、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキルおよびアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、あるいはプニコゲン原子および場合によって存在する基Y2およびY3と一緒に、さらに1、2、3、または4つのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリール基と縮合していてもよい5〜8員のヘテロ環を形成していてもよく、この場合、当該ヘテロ環および場合によって存在する縮合基は、それぞれ、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、
a、b、およびcは、それぞれ、互いに独立して、0または1であり、
1、Y2、およびY3は、それぞれ、互いに独立して、O、S、NRa、またはSiRbcであり、この場合、Ra、Rb、およびRcは、それぞれ、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、ここで、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、場合により、アルキル並びにアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよい]
の少なくとも1つの化合物との少なくとも1つの錯体を含む触媒の存在下において、一酸化炭素および水素と反応する方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、本発明により配位子として使用される式(II.a):
【化4】

[式中、
a、b、c、Pn、R2、R3、R4、Y1、Y2、およびY3は、それぞれ、上記において言及した意味の1つを有し、
W’は、両側の結合の間に1〜5個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
Zは、N(RIX)またはC(RIX)(RX)であり、
I、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、およびRXは、それぞれ、互いに独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであるか、
あるいは隣接する環原子に結合している2つの基RI、RII、RIV、RVI、RVIII、およびRIXが、隣接する環原子の間の二重結合の結合部を一緒に表し、この場合、6員環は、最大3つまでの非累積二重結合を有し得る]
の化合物、元素周期表の第VIII族の遷移金属と式(II.a)の少なくとも1つの化合物との少なくとも1つの錯体を含む触媒、並びにヒドロホルミル化のためのそのような触媒の使用をも提供する。
【0014】
本発明により、式(I)の基質に対して分子間非共有結合を形成することができる官能基R2を有する式(II)または式(II.a)の配位子が使用される。これらの結合は、好ましくは、水素結合またはイオン結合であり、特に水素結合である。分子間非共有結合を形成することができる当該官能基によって、当該配位子は基質と会合することができる、すなわち、ヘテロ二量体の形態の会合体を形成することができる。
【0015】
配位子の官能基と、分子間非共有結合を形成することができる基質の官能基との対は、本発明の目的のために「相補的な官能基」と称される。「相補的化合物」は、互いに相補的な官能基を有する配位子/基質の対である。そのような対は会合すること、すなわち、集合体を形成することができる。
【0016】
本発明の目的において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素、または臭素である。
【0017】
本発明の目的において、「プニコゲン」は、リン、ヒ素、アンチモン、またはビスマスであり、特にリンである。
【0018】
本発明の目的において、「アルキル」という用語は、直鎖状および分枝鎖状アルキル基を意味する。好ましいのは、直鎖状または分岐鎖状のC1〜C20−アルキル基であり、好ましくはC1〜C12−アルキル基、特に好ましくはC1〜C8−アルキル基、および非常に特に好ましくはC1〜C4−アルキル基である。アルキル基の例としては、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルが挙げられる。
【0019】
「アルキル」という表現は、一般的に、1、2、3、4、または5つの置換基、好ましくは1、2、または3つの置換基、特に好ましくは1つの置換基を有する置換されたアルキル基も含む。これらの置換基は、好ましくは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される。
【0020】
本発明の目的において、「シクロアルキル」という表現は、非置換および置換の両方のシクロアルキル基を意味し、好ましくはC3〜C7−シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルなど、を意味する。それらが置換されている場合、それらは、一般的に、1、2、3、4、または5つの置換基を有し、好ましくは1、2、または3つの置換基、特に好ましくは1つの置換基を有する。これらの置換基は、好ましくは、アルキル、アルコキシ、およびハロゲンの中から選択される。
【0021】
本発明の目的において、「アルケニル」という用語は、非置換および置換の両方の、直鎖状および分枝鎖状アルケニル基を意味する。好ましいのは、直鎖状または分岐鎖状のC2〜C20−アルケニル基であり、好ましくはC2〜C12−アルケニル基、特に好ましくはC1〜C4−アルケニル基、および非常に特に好ましくはC1〜C4−アルケニル基である。
【0022】
本発明の目的において、「アルキニル」は、非置換および置換の両方の、直鎖状および分枝鎖状アルキニル基を意味する。好ましいのは、直鎖状または分岐鎖状のC2〜C20−アルキニル基であり、好ましくはC2〜C12−アルキニル基、特に好ましくはC1〜C4−アルケニル基、および非常に特に好ましくはC1〜C4−アルキニル基である。
【0023】
本発明の目的において、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、一般的に、4〜7個、好ましくは5個または6個の環原子を有し、その場合、当該環炭素の1個または2個が、元素O、N、S、およびPの中から選択されるヘテロ原子で置き換わっており、並びに場合により置換されていてもよい、飽和脂環式基を意味する。これらのヘテロ脂環式基が置換されている場合、それらは、1、2、または3つの置換基を有し得、好ましくは1つまたは2つの置換基、特に好ましくは1つの置換基を有し得る。これらの置換基は、好ましくは、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択され、特に好ましいのはアルキル基である。そのようなヘテロ脂環式基の例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニルが挙げられる。
【0024】
本発明の目的において、「アリール」という表現は、非置換および置換の両方のアリール基を意味し、好ましくはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、またはナフトアセニルであり、特に好ましくは、フェニル、またはナフチルである。これらのアリール基が置換されている場合、それらは、一般的に、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される、1、2、3、4、または5つの置換基、好ましくは1、2、または3つの置換基、特に好ましくは1つの置換基を有し得る。
【0025】
本発明の目的において、「ヘタリール」という表現は、好ましくは、ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、およびカルバゾリルの中から選択される非置換または置換のヘテロ環状芳香族基を意味する。これらのヘテロ環状芳香族基が置換されている場合、それらは、一般的に、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される、1、2、または3つの置換基を有し得る。
【0026】
本発明の目的において、「C1〜C4−アルキレン」という表現は、非置換または置換のメチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレンを意味する。この基が置換されている場合、それは、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される、1、2、3、または4つの置換基を有し得る。
【0027】
「アルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、および「ヘタリール」という表現に関して上記において言及したことが、「アルコキシ」、「シクロアルコキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、「アリールオキシ」、および「ヘタリールオキシ」という表現にも類似して当てはまる。
【0028】
本発明の目的において、「式(I)の化合物の塩」という表現は、式M+ -O−X(=O)−A−CH=CH−R1の化合物を意味し、この場合、M+は、カチオン等価物であり、すなわち、一価のカチオンまたは多価カチオンにおける1つの正電荷に相当する部分である。当該カチオンのM+は、負電荷を有する置換基、例えば、-O−C(=O)、-O−P(Rx)(=O)、-O−P(O−Rx)(=O)、または-O−S(=O)2基など、を単に中和するための対イオンとして機能し、原則として、任意に選択することができる。したがって、好ましいのは、アルカリ金属イオン、特にNa+イオン、K+イオン、およびLi+イオン、アルカリ土類金属イオン、特にCa2+イオンまたはMg2+イオン、あるいはオニウムイオン、例えば、アンモニウムイオン、モノアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、またはテトラアリールホスホニウムイオンを使用することである。
【0029】
理論に束縛されることを望むわけではないが、元素周期表の第VIII族の遷移金属と式(II)の化合物とを含む触媒は、分子間非共有結合を形成することができる基R2が存在するので、錯体化した第VIII族の遷移金属と相互作用することができるC−C二重結合を有する式(I)の化合物と会合体を形成すると考えられる。したがって、超分子の環状遷移状態が、中間体として形成され得る。
【0030】
本発明の方法は、強い分子間非共有結合を形成することができる式(I)の不飽和化合物のヒドロホルミル化に対して特に好適である。この特性を有する化合物の種類は、特に、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、およびそれらの塩である。
【0031】
X、A、およびR1が、互いに独立して、または好ましくは組み合わせにおいて、下記において挙げる意味の1つを有する式(I)の化合物は、本発明の方法に対して特に好適である。
【0032】
式(I)の化合物のXは、好ましくは、C、S(=O)、またはP(O−Rx)であり、この場合、Rxは、Hであるか、あるいはそれぞれ、置換されていてよいアルキル、シクロアルキル、またはアリールである。Xは、特に好ましくはCである。特に好ましくは、式(I)の化合物におけるXが、C、P(OH)、またはS(=O)である。非常に特に好ましくは、XはCである。
【0033】
式(I)の化合物におけるAは、好ましくはC1〜C4−アルキレンである。Aは、特に好ましくはC1〜C2−アルキレンであり、非常に特に好ましくはメチレンである。
【0034】
式(I)の化合物におけるR1は、好ましくは、H、アルキル、またはアルケニルである。
【0035】
本発明の方法の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(I.a):
【化5】

[式中、
Xは、C、P(Rx)、P(O−Rx)、S、S(=O)であり、ここで、Rxは、Hであるか、あるいはそれぞれ、置換されていてよいアルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
a1およびRa2は、それぞれ、互いに独立して、HまたはC1〜C4−アルキルであり、
1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールである]
の化合物の中から選択される。
【0036】
本発明により使用される式(I.a)の化合物におけるXは、好ましくはCである。
【0037】
本発明により使用される式(I.a)の化合物におけるRa1およびRa2は、好ましくはHである。
【0038】
本発明により使用される式(I.a)の化合物におけるR1は、好ましくは、Hまたはアルキルであり、特に好ましくは、HまたはC1〜C8−アルキルである。
【0039】
Pn、R2、R3、R4、W、a、b、c、Y1、Y2、Y3が、互いに独立してまたは好ましくは組み合わせにおいてのどちらかにおいて、下記に挙げる意味の1つを有する式(II)の化合物は、本発明の方法に対して特に好適である。
【0040】
式(II)の化合物におけるPnは、好ましくはリンである。式(II)のそのような化合物の好適な例は、ホスフィン、ホスフィニット、ホスホニット、ホスホルアミダイト、またはホスフィット化合物である。
【0041】
式(II)の化合物におけるR2は、少なくとも1つのNH基を含む官能基である。好適な基R2は、−NHRw、=NH、−C(=O)NHRw、−C(=S)NHRw、−C(=NRy)NHRw、−O−C(=O)NHRw、−O−C(=S)NHRw、−O−C(=NRy)NHRw、−N(Rz)−C(=O)NHRw、−N(Rz)−C(=S)NHRw、または−N(Rz)−C(=NRy)NHRwであり、ここで、Rw、Ry、およびRzは、それぞれ、互いに独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールであるか、あるいは、それぞれ式(II)の化合物のさらなる置換基と一緒に、4〜8員環系の一部である。
【0042】
式(II)の化合物におけるR2は、特に好ましくは、−NH−C(=NH)NHRwであり、ここで、Rwは、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールである。R2は、非常に特に好ましくは−NH−C(=NH)NH2である。
【0043】
式(II)の化合物におけるR3およびR4は、好ましくは、それぞれ、置換されていてよいフェニル、ピリジル、またはシクロヘキシルである。R3およびR4は、特に好ましくは、置換されていてよいフェニルである。
【0044】
式(II)の化合物の添え字a、b、およびcは、好ましくは0である。
【0045】
特定の実施形態において、本発明により使用される式(II)の化合物は、式(II.a):
【化6】

[式中、
a、b、c、Pn、R2、R3、R4、Y1、Y2、およびY3は、上記において言及した意味の1つを有し、
W′は、両側の結合の間に1〜5個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
Zは、O、S、S(=O)、S(=O)2、N(RIX)、またはC(RIX)(RX)であり、並びに
I、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、並びに場合によって存在するRIXおよびRxは、それぞれ、互いに独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであるか、
あるいは隣接する環原子に結合している2つの基RI、RII、RIV、RVI、RVIII、およびRIXが、隣接する環原子の間の二重結合の結合部を一緒に表し、この場合、6員環は、最大3つまでの非累積二重結合を有し得る]
の化合物の中から選択される。
【0046】
a、b、c、Pn、R2、R3、R4、Y1、Y2、およびY3の好ましい意味に関しては、一般式(II)の化合物に関して上記において言及したことを参照することができる。
【0047】
a、b、c、Pn、R2、R3、R4、RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、RX、W’、Y1、Y2、Y3、およびZが、互いに独立してまたは好ましくは組み合わせにおいてのどちらかにおいて、好ましいものとしての上記において言及された意味の1つ、または以下の意味の1つを有する式(II.a)の化合物は、本発明の方法に対して特に好適である。
【0048】
式(II.a)の化合物におけるW’は、好ましくは、C1〜C5−アルキレン、(C1〜C4−アルキレン)カルボニル、またはC(=O)である。式(II.a)の化合物におけるW’は、特に好ましくはC(=O)である。
【0049】
式(II.a)の化合物におけるZは、好ましくはN(RIX)またはC(RIX)(RX)である。Zは、特に好ましくはN(RIX)である。
【0050】
式(II.a)の化合物における基RIおよびRIIが一緒に、基RIVおよびRVIが一緒に、並びにRVIIIおよびRIXが一緒に、好ましくは、それぞれ、隣接する環原子の間の二重結合の結合部を表し、すなわち、式(II.a)の化合物における6員環は、好ましくは、置換されたベンゼンまたはピリジンである。
【0051】
好ましいくは、式(II.a)の化合物における基RIII、RV、RVII、および場合によって存在するRXは、それぞれ、互いに独立して、H、ハロゲン、ニトロ.シアノ、アミノ、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルキルアミノ、またはジ(C1〜C4−アルキル)アミノである。RIII、RV、RVII、および場合によって存在するRXは、特に好ましくは、それぞれHである。
【0052】
本発明の方法の特定の好適な実施形態において、式(II)または(II.a)の化合物は、式(1)および(2):
【化7】

の化合物の中から選択される。
【0053】
非常に特に好ましいのは、本発明のヒドロホルミル化方法において式(1)の化合物を使用することである。
【0054】
本発明に従って使用される触媒は、配位子として上記において説明したような式(II)または(II.a)の化合物の少なくとも1つを有する。上記において説明した配位子に加えて、当該触媒は、さらに、好ましくは、ハロゲン化物、アミン、カルボキシレート、アセチルアセトネート、アリールスルホネートおよびアルキルスルホネート、ヒドリド、CO、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、N−含有複素環、芳香族およびヘテロ芳香族、エーテル、PF3、ホスホール、ホスファベンゼン、並びに単座配位、二座配位、および多座配位のホスフィン、ホスフィニット、ホスホニット、ホスホルアミダイト、およびホスフィット配位子の中から選択される少なくとも1つのさらなる配位子を有し得る。
【0055】
本発明に従って使用される触媒は、好ましくは、元素周期表の第VIII族の遷移金属の少なくとも1つを含む。当該第VIII族の遷移金属は、好ましくはCo、Ru、Rh、Ir、Pd、またはPtであり、特に好ましくは、Co、Ru、Rh、またはIrであり、非常に特に好ましくはRhである。
【0056】
Mが第VIII族の遷移金属であり、Lが式(II)のプニコゲン含有化合物であり、並びにq、x、y、zが、金属の原子価および種類に応じて決まる整数であり、配位座の数が配位子Lによって占められている、一般式Hxy(CO)zqで表される触媒的に活性な種は、一般的に、それぞれ使用される触媒または触媒前駆体から、ヒドロホルミル化条件下において形成される。好ましくは、zおよびqは、それぞれ、互いに独立して、少なくとも1、例えば、1、2、または3である。zおよびqの合計は、好ましくは1〜5である。所望であれば、当該錯体は、さらに、上記において説明したさらなる配位子の少なくとも1つを有し得る。
【0057】
好ましい実施形態において、ヒドロホルミル化触媒は、ヒドロホルミル化反応に使用される反応器においてin situで製造される。しかしながら、所望であれば、本発明の触媒は、別個に製造して、通例の方法により単離することもできる。本発明の触媒のin−situ製造のために、例えば、本発明に従って使用される式(II)の少なくとも1つの配位子と、第VIII族の遷移金属の化合物または錯体と、場合により、少なくとも1種のさらなる配位子と、並びに場合により、活性剤とを、ヒドロホルミル化条件下において不活性溶媒中で反応させることが可能である。
【0058】
好適なロジウム化合物または錯体は、例えば、ロジウム(II)塩およびロジウム(III)塩、例えば、塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、硫酸ロジウム(III)、硫酸ロジウムカリウム、カルボン酸ロジウム(II)もしくはカルボン酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(II)および酢酸ロジウム(III)、酸化ロジウム(III)、ロジウム(III)酸の塩、トリスアンモニウムヘキサクロロロデート(III)などである。ロジウム錯体、例えば、ビカルボニルロジウムアセチルアセトネート、アセチルアセトナトビスエチレンロジウム(I)など、も好適である。好ましいのは、ビカルボニルロジウムアセチルアセトネートまたは酢酸ロジウムを使用することである。
【0059】
ルテニウム塩またはルテニウム化合物も同様に好適である。好適なルテニウム塩は、例えば、塩化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(IV)、酸化ルテニウム(VI)、もしくは酸化ルテニウム(VIII)、ルテニウムオキソ酸のアルカリ金属塩、例えば、K2RuO4、またはKRuO4、または錯体、例えばRuHCl(CO)(PPh33である。ルテニウムの金属カルボニル、例えば、ドデカカルボニルトリスルテニウムもしくはオクタデカカルボニルヘキサルテニウム、またはCOが式PR3の配位子によって部分的に置き換えられている混合形態、例えばRu(CO)3(PPh32なども、本発明の方法において使用することができる。
【0060】
好適なコバルト化合物は、例えば、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、カルボン酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、それらのアミン錯体または水和物錯体、コバルトカルボキシレート、例えば、酢酸コバルト、コバルトエチルヘキサノエート、コバルトナフタノエート、さらにコバルトカプロエート錯体である。ここでも、コバルトのカルボニル錯体、例えば、オクタカルボニルジコバルト、ドデカカルボニルテトラコバルト、およびヘキサデカカルボニルヘキサコバルトなど、を使用することができる。
【0061】
コバルト、ロジウム、ルテニウム、およびイリジウムの前述およびさらなる好適な化合物は、原則として公知であり、文献において的確に説明されているか、または、当業者によって、公知の化合物のための方法に類似した方法を用いて製造することができる。
【0062】
好適な活性剤は、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸、例えば、BF3、AlCl3、ZnCl2など、およびルイス塩基である。
【0063】
好適な溶媒は、エーテル、例えば、tert−ブチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、およびテトラヒドロフランである。さらに可能な溶媒は、脂肪族カルボン酸とアルカノールとのエステル、例えば、酢酸エステルなど、あるいはオキソ油、例えば、Palatinol(登録商標)またはTexanol(登録商標)など、芳香族化合物、例えば、トルエンおよびキシレンなど、炭化水素もしくは炭化水素の混合物である。
【0064】
モノプニコゲン配位子(II)と第VIII族の遷移金属のモル比は、一般的に、約1:1〜1000:1の範囲であり、好ましくは2:1〜500:1、特に好ましくは5:1〜100:1の範囲である。
【0065】
好ましいのは、本発明に従って使用することができる配位子(II)の少なくとも1つと、第VIII族の遷移金属の化合物または錯体と、並びに、場合により活性剤とを、ヒドロホルミル化条件下において不活性溶媒中で反応させることによって、ヒドロホルミル化触媒とをin situで製造する方法である。
【0066】
当該ヒドロホルミル化反応は、連続的、半連続的、またはバッチ式において実施することができる。
【0067】
連続反応のための好適な反応装置は、当業者に公知であり、例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,第1巻,第3版,1951年,第743頁(以下参照)に記載されている。
【0068】
好適な圧力級の反応装置も、同様に当業者に公知であり、例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,第1巻,第3版,1951年,第769頁(以下参照)に記載されている。一般的に、本発明の方法は、所望の場合には攪拌機および内部ライナーを備え得るオートクレーブを使用して実施される。
【0069】
本発明の方法において使用される、一酸化炭素および水素を含む合成ガスの組成は、広い範囲で変わり得る。一酸化炭素と水素のモル比は、一般的に、約5:95〜70:30であり、好ましくは40:60〜60:40である。特に好ましいのは、約1:1付近の一酸化炭素と水素のモル比を用いることである。
【0070】
ヒドロホルミル化反応における温度は、一般的に、約20〜180℃の範囲であり、好ましくは約50〜150℃の範囲である。圧力は、一般的に、約1〜700barの範囲であり、好ましくは1〜600bar、特に1〜300barの範囲である。当該反応圧力は、使用される本発明のヒドロホルミル化触媒の活性に応じて変わり得る。概して、式(II)のプニコゲン含有化合物に基づく本発明の触媒は、一般的に、比較的低い圧力付近、例えば1〜100barの範囲での反応を可能にする。
【0071】
本発明のヒドロホルミル化触媒および本発明に従って使用される触媒は、当業者に公知の通例の方法によってヒドロホルミル化反応による生成物から分離することができ、並びに、一般的に、ヒドロホルミル化に再使用することができる。
【0072】
上記において説明した触媒は、好適な方法、例えば、アンカー基として好適な官能基を介する結合、吸着、グラフト化などにより、好適な支持体、例えば、ガラス、シリカゲル、合成樹脂、ポリマーなど、で構成される支持体に固定することも可能である。それらは、固相触媒としての使用に好適である。
【0073】
式(II)の上記において説明した配位子に基づく触媒のヒドロホルミル化活性は、一般的に、内部二重結合の形成に関して、異性体化活性よりも高い。分子間非共有結合を形成することができる官能基を有する不飽和化合物のヒドロホルミル化において、本発明に従って使用される触媒は、有利には、反応中心のヒドロホルミル化に関して、高い化学選択性および位置選択性を示す。その上、当該触媒は、一般的に、ヒドロホルミル化条件下において高い安定性を有しているので、従来技術において公知の触媒を使用する場合よりも、一般的に、長い触媒寿命を達成することが可能である。本発明に従って使用される触媒は、有利には、高い活性も示すため、対応するアルデヒドまたはアルコールは、一般的に、良好な収率において得られる。
【0074】
本発明はさらに、本発明に従って使用される式(II.a):
【化8】

の化合物を提供する。
【0075】
変数a、b、c、Pn、R2、R3、R4、Y1、Y2、Y3、W’、Z、RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、並びに場合によって存在するRIXおよびRXの好ましい意味については、本発明の方法に関して上記において言及したことを参照することができる。
【0076】
特に好ましいのは、Pnがリンである式(II.a)の化合物である。
【0077】
好ましいのは、同様に、R2が−NH−C(=NH)NHRwである式(II.a)の化合物であり、この場合、Rwは、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、特に−NH−C(=NH)NH2である。
【0078】
好ましいのは、同様に、R3およびR4が、それぞれ置換されていてよいフェニルである、式(II.a)の化合物である。
【0079】
好ましいのは、同様に、a、b、およびcがそれぞれ0である式(II.a)の化合物である。
【0080】
好ましいのは、同様に、W’がC(=O)基である式(II.a)の化合物である。
【0081】
好ましいのは、同様に、ZがN(RIX)である式(II.a)の化合物である。
【0082】
好ましいのは、同様に、RIおよびRIIが一緒に、RIVおよびRVIが一緒に、並びにRVIIIおよびPIXが一緒に、それぞれ、隣接する環原子の間の二重結合の結合部であり、かつRIII、RV、RVII、および場合によって存在するRXは、それぞれHである式(II.a)の化合物である。
【0083】
式(II.a)の化合物におけるa、b、c、Pn、R2、R3、R4、RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、RX、W’、Y1、Y2、Y3、およびZの好ましい意味に関して上記において言及したことは、互いに独立して、並びに特に、任意の組み合わせにおいて適用される。
【0084】
式(II.a)の化合物は、非常に特に好ましくは、式(1)および(2):
【化9】

の化合物の中から選択される。
【0085】
本発明はさらに、元素周期表の第VIII族の遷移金属と本発明に従って好ましくは使用される上記において定義されるような式(II.a)の少なくとも1つの化合物との、少なくとも1つの錯体を含む触媒を提供する。第VIII族の好ましい遷移金属および本発明による式(II.a)の好ましい化合物に関しては、上記において言及したことを参照することができる。
【0086】
本発明はさらに、第VIII族の遷移金属とヒドロホルミル化に対して上記において説明したような式(I)の少なくとも1つの配位子との、少なくとも1つの錯体を含む触媒の使用を提供する。好ましい実施形態に関しては、本発明の触媒について上記において言及したことを参照することができる。
【0087】
本発明を、以下の非限定的な実施例により説明する。
【0088】
実施例
I. 一般論
すべての反応は、乾燥させたガラス装置においてアルゴン雰囲気下で実施した。空気および湿気感応性液体は、シリンジにより移した。すべての溶液の乾燥および蒸留は、標準的な方法を用いて実施した。溶液の除去は、ロータリーエバポレターを用いて減圧下で実施した。反応生成物のクロマトグラフィー精製には、MerckシリカゲルSi60(登録商標)(200〜400メッシュ)を使用した。NMRスペクトルは、Varian Mercury分光器(1H、31P、および13Cに対して、300MHz、121MHz、および75MHz)、Bruker AMX400(1H、31P、および13Cに対して、400MHz、162MHz、および101MHz)、またはBruker DRX500(1H、31P、および13Cに対して、500MHz、202MHz、および125MHz)を用いて記録した。参照のために、内部標準(1H−NMRおよび13C−NMR)としてTMSを使用し、または標準物質(31P−NMR)として85%のH3PO4を使用した。1H−NMRデータは、以下のように記録した:化学シフト(δ(ppm))、多重度(s=一重線、bs=幅広一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線)、結合定数(Hz)、積分。13C−NMRデータは、以下のように記録した:化学シフト(δ(ppm))、多重度、結合定数(Hz)。高解像度質量分析スペクトルは、Finnigan MAT8200を使用して記録した。元素分析は、Elementar vario(Elementar Analysensysteme GmbH社)を用いて実施した。
【0089】
II. 式(II)の化合物の製造
1.N−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボニル)グアニジン(1)の製造
【化10】

【0090】
1.1 2−ブロモ−6−ジフェニルホスファニルピリジン
n−ブチルリチウム(48.2ml、0.093mol、ヘキサン中において1.6M、1.1当量)を、CH2Cl2(750ml)中における2,6−ジブロモピリジン(20g、0.084mol、1当量)の溶液に、アルゴン下において、−78℃でゆっくりと加えた(15分間)。当該反応混合物を、さらに30分間攪拌した。それに続いて、Ph2PCl(17.6ml(95%)、0.093mol、1.1当量)を、10分間かけて加え、得られた反応混合物を−78℃でさらに30分間撹拌した。得られた溶液を、1.5時間かけて室温まで温め、この温度でさらに2時間撹拌した。それに続いて、当該反応混合物を水(400ml)と混合した。得られた相を分離した後、水相をCH2Cl2で抽出した(100mlで2回)。当該有機相を収集し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。当該残留物をCH2Cl2(100ml)に溶解させ、シリカゲルに通して濾過した。溶媒をエバポレートし、続いて石油エーテル/Et2O(3:1)を用いて当該残留物をトリチュレートして、無色の固体として、26g(収率:90%)の量の2−ブロモ−6−ジフェニルホスファニルピリジンを得た。
【0091】

【0092】
1.2 6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボン酸
n−ブチルリチウム(40.2ml、0.064mol、ヘキサン中において1.6M、1.1当量)を、CH2Cl2(800ml)中における2−ブロモ−6−ジフェニルホスフィノピリジン(20g、0.059mol、1当量)の溶液に、アルゴン雰囲気下において、−78℃で滴下して加えた。当該反応混合物を、この温度で75分間撹拌した。それに続いて、結果として得られた溶液にガス状のCO2を−78℃で30分間通した。当該反応混合物を、CO2雰囲気下で1.5時間、−30℃の温度で加熱した。それに続いて、当該反応混合物を再び−78℃まで冷却し、CO2で飽和させ(15分間)、2時間かけて0℃まで温めた。当該反応混合物を、塩酸水溶液で抽出した(2M、200mlで3回)。続いて、当該水層をCH2Cl2で抽出した(100mlで2回)。当該有機相を収集し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して、減圧下で溶媒を除去した。黄色味を帯びた油状の残留物を、酢酸エチル(50ml)中に取り、短いシリカゲルカラムに通して濾過した(酢酸エチルを用いて洗い出す)。溶媒を除去し、当該残留物を石油エーテル/ジエチルエーテル(2:1)を用いてトリチュレートして、わずかに黄色味を帯びた固体として18g(収率:80%)の量の6−ジフェニルホスファニルピリジン−2イルカルボン酸を得た。
【0093】

【0094】
1.3 N’−tert−ブトキシカルボニル−N−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボニル)グアニジン
1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP、17.6g、39.79mmol、1当量)を、DMF(250ml)中における6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−カルボン酸(12.23g、39.79mmol、1当量)、N’−tert−ブチルオキシカルボニルグアニジン(9.5g、59.68mmol、1.5当量)、およびN−メチルモルホリン(10.9ml、10.06g、99.5mmol、2.5eq.)の溶液に、アルゴン雰囲気下において0℃で加えた。当該反応混合物を、0℃で2時間攪拌し、さらに室温で2時間撹拌した。当該反応は、TCL(石油エーテル/酢酸エチル/CH3OH=50:25:2)によってモニタリングした。0℃で水(200ml)を添加すると、当該反応生成物が沈殿した。結果として得られた懸濁液を、0℃で10分間撹拌した。続いて、濾過により白色固体を単離し、水で洗浄した(100mlで2回)。当該粗生成物を、CH2Cl2中に取り、濾過した。濾液を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。当該残留物を、CH2Cl2/酢酸エチル(3:1)中に取り、短いシリカゲルカラムに通して濾過した。CH2Cl2/石油エーテルによるトリチュレートおよび、それに続いて溶媒を除去することにより、無色の固体として、14.3g(収率:80%)の量のN’−tert−ブトキシカルボニル−N−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボニル)グアニジンを得た(クロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル/CH3OH=30:10:1)による精製も同様に可能である)。
【0095】

【0096】
1.4 N−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボニル)グアニジン(1)
N’−tert−ブトキシカルボニル−N−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−カルボニル)グアニジン(10g、22.30mmol、1当量)および1,3−ジメトキシベンゼン(3.14ml、3.39g、24.53mmol、1.1当量)を、アルゴン雰囲気下においてトリフルオロ酢酸(80ml)に溶解させ、室温で3時間攪拌した(TLCモニタリング:CH2Cl2/CH3OH/トリエチルアミン=30:2:1、Mo−Ce試薬)。過剰なトリフルオロ酢酸を減圧下で除去した。当該残留物を、CH2Cl2(60ml)に溶解させ、Na2CO3溶液(20%水溶液、200ml)に0℃で加えた。当該二相混合物を0℃で15分間激しく撹拌した。これにより、結果として白色沈殿物が形成された。当該沈殿物を濾別し、水で数回洗浄した(代替手段として、当該沈殿物を約200mlの水に懸濁させ、超音波処理し、濾別することもできる)。それに続いて、当該沈殿物を再び酢酸エチルで洗浄し(25mlで2回)、n−ペンタンで洗浄して(25mlで2回)、減圧下で五酸化リンによって乾燥させた。無色の粉末として、7.55g(収量)の量のN−(6−ジフェニルホスファニルピリジン−2−イルカルボニル)グアニジンをジクロロメタン付加体として得た。この化合物は、DMSOを除いて、一般的な溶媒に対して不溶性である。
【0097】

【0098】
2. N−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジン(2)の製造
【化11】

【0099】
2.1 N’−tert−ブトキシカルボニル−N−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジン
1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP、1.733g、3.92mmol、1当量)を0℃で、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethylformamide、25ml)中における3−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸(1.2g、3.92mmol、1当量)、tert−ブチルオキシカルボニルグアニジン(936mg、5.88mmol、1.5当量)、およびN−メチルモルホリン(862μl、793mg、7.84mmol、2当量)の溶液に加えた。当該反応混合物を、0℃で10分間撹拌し、並びにアルゴン雰囲気下において室温で4時間攪拌した。当該反応は、TLC(CH2Cl2/酢酸エチル=10:1)によりモニタリングした。水(40ml)を添加した後、沈殿物が形成された(0℃で10分間撹拌した)。当該沈殿物を濾別し、水で洗浄した(20ml)。当該沈殿物をCH2Cl2に溶解させ、再び濾過した。濾液を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/酢酸エチル=10:1)で精製した。−30℃でn−ペンタン(20ml)によりトリチュレートして、無色の固体として、1.195g(収率:68%)の量のN’−tert−ブトキシカルボニル−N−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジンを得た。
【0100】

【0101】
2.2 N−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジン(2)
N’−tert−ブトキシカルボニル−N−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジン(800mg、1.789mmol)を、アルゴン雰囲気下でトリフルオロ酢酸(8ml)に溶解させ、室温で1.5時間撹拌した(TLCモニタリング:CH2Cl2/CH3OH/トリエチルアミン=30:2:1;Mo−Ce試薬)。過剰のトリフルオロ酢酸を減圧下で除去した。当該残留物を、CH2Cl2(10ml)に溶解させ、Na2CO3溶液(20%水溶液、10ml)で抽出した。当該水層をCH2Cl2で抽出した(10mlで2回)。有機相を収集し、MgSO4で乾燥させ、濾過して、減圧下で溶媒を除去した。当該残留物を、n−ペンタンでトリチュレートし(10ml×2回)、減圧下で乾燥した。無色固体として、590mg(収率:95%)の量のN−(3−ジフェニルホスファニルベンゾイル)グアニジンを得た。
【0102】

【0103】
II. 基質の製造
1. (Z)−ペンタ−3−エン酸((Z)−3)の製造
1.1 (Z)−ペンタ−3−エン−1−オール
リンドラー触媒(45mg)を250mlのSchlenkフラスコに入れて脱ガスした。キノリン(780mg、アルゴン下で蒸留)、ジエチルエーテル(150ml、純物質)、およびペンタ−3−イン−1−オール(2.74ml、2.5g、29.7mmol)を加えた。アルゴン雰囲気をH2雰囲気で置換した。1barのH2気圧下において室温で20時間かけて水素化を実施した。得られた当該反応混合物を、Celiteに通して濾過し、ジエチルエーテルで洗い出した。濾液を、減圧下で溶媒を除去した。残留物を蒸留により精製した(140℃/大気圧)。無色の液体として、2.4g(収率:94%)の量の(Z)−ペンタ−3−エン−1−オールを得た。得られた生成物中における(Z)−異性体の含有量は、GC分析により、>96%であった(GC:6890N AGILENT TECHNOLOGIES;カラム:24079 SUPELCO、Supelcowax10、30.0m×0.25mm×0.25μm;75℃等温、He流量は0.7ml/分;(E):18.9分、(Z):19.3分)。
【0104】

【0105】
1.2 (Z)−ペンタ−3−エン酸((Z)−3)
CH3CN(50ml)および(Z)−ペンタ−3−エン−1−オール(2.36ml、2.0g、23.22mmol、1.0当量)を順番に、0℃で、H2O(25ml)中におけるNa2Cr27(69.2mg、0.23mmol、0.01当量)、65%濃度の硝酸(450mg、4.64mmol、0.2当量)、およびNalO4(10.93g、51.1mmol、2.2当量)の溶液に加えた。当該反応混合物を0℃で8時間撹拌し、10℃で終夜撹拌した。NMRにより転換率は98%であった。無機塩を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄した。当該相を分離した後、水相をエーテルで抽出した(100mlで3回)。有機相を収集し、Na2SO4で乾燥させて、減圧下で溶媒を除去した。残留物(2.04g)を分別蒸留した(100℃/20mbar)。無色の液体として、1.83g(収率:79%)の量の(Z)−ペンタ−3−エン酸を得た。1H−NMR分析により、(Z)−異性体の含有量は95%であった。
【0106】

【0107】
2. 2−ビニルヘプタ−6−エン酸(4)の製造
2.1. ペンタ−4−エニルp−トルエンスルホネート
塩化p−トルエンスルホニル(22.15g、116mmol、1.5当量)を少量ずつ、0℃で、CH2Cl2(80ml)中におけるペンタ−4−エン−1−オール(6.67g、77.5mmol、1当量)およびピリジン(純物質、12.53ml、12.25g、154.9mmol、2当量)の溶液に加えた。当該反応混合物を、0℃で3時間撹拌した。水(60ml)を添加した後、当該混合物をジエチルエーテル(125ml)で抽出した。当該有機相を、順番に、塩酸水溶液(2M)、Na2CO3水溶液(5%)、および水で洗浄し、MgSO4で乾燥して、減圧下で溶媒を除去した。当該残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/ジエチルエーテル=8:1)によって分取した。無色のオイルとして、17.7g(収率:95%)の量のペンタ−4−エニルp−トルエンスルホネートを得た。
【0108】

【0109】
2.2 2−ビニルヘプタ−6−エン酸(4)
n−ブチルリチウム(ヘキサン中において2.5M、39.9ml、99.84mmol、2.4当量)を、アルゴン下において、−78℃で、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran、50ml、純物質)中におけるジエチルアミン(7.3g、10.28ml、99.84mmol、2.4当量)の溶液にゆっくりと加えた。当該反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、続いて、再び−78℃まで冷却した。この温度で、THF(純物質、50ml)中における(E)−ブタ−2−エン酸(4.3g、49.92mmol、1.2当量)の溶液を、15分かけてこの反応混合物に加えた。続いて、当該反応混合物を0℃で1時間撹拌し、再び−78℃まで冷却した。THF(50ml、純物質)中におけるペンタ−4−エンイルパラ−トルエンスルホネート(10g、41.6mmol、1当量)の溶液を、シリンジ・ポンプにより−78℃で1時間かけて、この反応混合物に加えた。当該反応混合物を1時間かけて−20℃まで温め、この温度でさらに16時間撹拌した。続いて、H2O(300ml)を加え、当該混合物をジエチルエーテルで洗浄した(200mlで3回)。氷冷しながら当該水相をリン酸(85%)で酸性化し、続いて、酢酸エチルで抽出した(250mlで3回)。当該有機相を収集し、MgSO4で乾燥させて、減圧下で溶媒を除去した。当該残留物を分別蒸留した(80℃/0.4mbar)。無色のオイルとして、5.2g(収率:81%)の量の2−ビニルヘプタ−6−エン酸を得た。
【0110】

【0111】
IV. ヒドロホルミル化の基本的な方法
反応させる化合物(基質)を、Schlenkフラスコにおいて、[Rh(CO)2acac]、適切な配位子、1,3,5−トリメトキシベンゼン(内部標準として)を懸濁させた溶液に加える。当該反応混合物をアルゴン下で5分間撹拌する。当該反応混合物をアルゴン雰囲気下においてシリンジによってオートクレーブに移す。当該オートクレーブを合成ガス(CO/H2=1:1)で3回フラッシュする。
【0112】
ヒドロホルミル化反応は、
(A)独立した温度および圧力制御を備えた8つの並列の、機械的に撹拌される圧力反応装置を有するArgonaut Endeavour(登録商標)反応装置システム。反応の進行は、合成用ガスの消費量を評価することによって特定する
(B)マグネットスターラーを備えたPremex Medimexステンレスオートクレーブ(100ml)。当該オートクレーブは、ガラスライナーおよびサンプリング設備を備えている。速度論的研究のために、当該オートクレーブは温度制御されており、試料を採取してNMR分析によって調べる
において実施する。
【0113】
(場合により)系を冷却することによって当該反応を中断し、当該反応装置を脱ガスし、アルゴンによってフラッシングする。CDCl3中における当該粗反応混合物のNMR分析および/または溶媒を除去した後の試料のNMR分析によって試料を試験する。
【0114】
V. 位置選択性を試験するためのヒドロホルミル化の実施例
1. ビニル酢酸(5)のヒドロホルミル化:
実験条件:反応装置:オートクレーブ(A);[Rh(CO)2acac]:配位子:(5):標準物質のモル比=1:10:200:100;溶媒:THF(2ml);基質(3)の出発濃度:C0(3)=0.2M;合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:10bar;反応温度:40℃;反応時間:4時間。
【0115】
ヒドロホルミル化の主生成物:
【化12】

【0116】
ターンオーバー頻度(TOF;モル(アルデヒド)/モル(触媒)h-1)は、合成用ガスの消費量から特定した。減圧下(150mbar)で溶媒を除去した後、トリエチルアミン(100μl)を加え、当該反応の転換率(%)および位置選択性((6)/(7)のモル比)を、形成された反応混合物の1H−NMRスペクトルにおいて、形成された反応生成物の特性シグナルの積分によって特定した。各実験を、少なくとも二度繰り返した。この反応の副産物は、すべての実験において、<5%の量であることを確認した。
使用した、本発明によらない配位子:
【化13】

【0117】
第1表
【表1】

(VB)=比較例(本発明によらない)
[a]転換率が低いため、位置選択性を十分正確に特定することができなかった
[b]基本的方法から逸脱した反応温度
[c]基本的方法から逸脱した反応時間
【0118】
1.8 ビニル酢酸(5)のヒドロホルミル化による5−オキソペンタン酸(6)の製造
実験条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:(1):(5)のモル比=1:20:200;溶媒:THF(5ml);基質(5)の出発濃度:C0(5)=0.39M;合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:室温;反応時間:20時間。
【0119】
減圧下において溶媒を除去した後、当該残留物をCH2Cl2中に取り、短いシリカゲルカラムに供し、ジエチルエーテルと溶離した。無色の液体として、215.5mg(収量: 96%)の量の5−オキソペンタン酸(6)を得た。NMR解析により、単離された生成物は、さらなる成分として、1.7mol%の3−メチル−4−オキソ酪酸(7)を含んでいる。
【0120】

【0121】
2. ペンタ−4−エン酸(9)のヒドロホルミル化
反応条件:反応装置:オートクレーブ(A);[Rh(CO)2acac]:(1):(9):標準物質のモル比=1:10:200:100;溶媒:THF(2ml);基質(9)の出発濃度:C0(9)=0.2M;合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:10bar;反応温度:40℃;反応時間:4時間。
【0122】
ヒドロホルミル化による可能な生成物:
【化14】

【0123】
ターンオーバー頻度(TOF;モル(アルデヒド)/モル(触媒)h-1)は、合成用ガスの消費量から特定した。減圧下(150mbar)で溶媒を除去した後、当該反応の転換率(%)および位置選択性((10)/(11)のモル比)を、形成された反応混合物の1H−NMRスペクトルにおいて、形成された反応生成物の特性シグナルの積分によって特定した。各実験を、少なくとも二度繰り返した。この反応の副産物は、すべての実験において、<5%の量であることを確認した。
【0124】
結果:TOF=49h-1;転換率:73%;反応の位置選択性:(10)/(11)=3.6である。
【0125】
4. ブタ−3−エン酸メチル(12)のヒドロホルミル化(本発明によらない)
反応条件:反応装置:オートクレーブ(A);[Rh(CO)2acac]:(1):(12):CH3COOH:標準物質のモル比=1:10:200:(第2表に示す通り):100;溶媒:THF(2ml);基質(12)の出発濃度:C0(12)=0.2M;合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:10bar;反応温度:40℃;反応時間:4時間。
【0126】
ヒドロホルミル化による可能な生成物:
【化15】

【0127】
ターンオーバー頻度(TOF;モル(アルデヒド)/モル(触媒)h-1)は、合成用ガスの消費量から特定した。当該反応の転換率(%)および位置選択性((13)/(14)のモル比)は、結果として得られた反応混合物のCDCl3希釈による1H−NMRスペクトルにおいて、形成された反応生成物の特性シグナルの積分によって特定した。各実験を、少なくとも二度繰り返した。この反応の副産物は、すべての実験において<5%の量であることを確認した。
【0128】
第2表
【表2】

[a](12)の1molあたりのCH3COOHのmol量
[b]懸濁液(配位子1は、カルボン酸なしでは反応媒体において不溶性である)
【0129】
5. (Z)−ペンタ−3−エン酸((Z)−3)のヒドロホルミル化
反応条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:配位子:((Z)−3):標準物質のモル比=1:10:50:25;基質((Z)−3)の出発濃度:C0((Z)−3)=0.2M; 溶媒:THF(4ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:6bar;反応温度:室温;反応時間:68時間。
【0130】
減圧下(150mbar)で溶媒を除去した後、トリエチルアミン(100μl)を加え、当該反応の転換率(%)および位置選択性((15)/(16)のモル比)を、形成された反応混合物の1H−NMRスペクトルにおいて、形成された反応生成物の特性シグナルの積分によって特定した。結果を表3に示す。
【0131】
ヒドロホルミル化による生成物:
【化16】

【0132】
第3表
【表3】

【0133】
5.3 (Z)−ペンタ−3−エン酸((Z)−3)のヒドロホルミル化による4−メチル−5−オキソペンタン酸(15)の製造
実験条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:(1):((Z)−3)のモル比=1:10:50;基質((Z)−3)の出発濃度:C0((Z)−3)=0.2M;溶媒:THF(4ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:室温;反応時間:68時間。
【0134】
得られた反応混合物を、シリカゲル(1g)と混合し、減圧下で溶媒を除去した。結果として得られた固体をシリカゲルカラムに供し、クロマトグラフィー(溶離液:石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸=100:50:1)により分取した。無色の固体として、70mg(収率:67.2%)の量の(15)および(16)の生成混合物を得た。当該生成混合物は、92%の4−メチル−5オキソペンタン酸(15)および8%の3−ホルミルペンタン酸(16)から構成されていた。7.4mg(9.2%)の出発化合物およびその(E)−異性体が回収された。
【0135】

【0136】
6. 阻害剤の存在下におけるビニル酢酸(5)のヒドロホルミル化
実験条件:反応装置:オートクレーブ(A);[Rh(CO)2acac]:(1):阻害剤:標準物質のモル比=1:10:(第4表に示す通り):200:100;基質(5)の出発濃度:C0(5)=0.2M;溶媒:THF(2ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:10bar;反応温度:40℃;反応時間:4時間。
【0137】
さらなる実験条件に関しては、ビニル酢酸(5)の反応の評価に関する以下の段落V.1において言及したことを参照することができる。結果を第4表に一覧する。
【0138】
第4表
【表4】

[a]ビニル酢酸(5)1molに基づくCH3CO2Hのmol量
【0139】
VI. 化学選択性を試験するためのヒドロホルミル化の実施例
1. メチル酢酸ビニル(17)の存在下におけるビニル酢酸(5)のヒドロホルミル化
反応条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:配位子:(5):(17):標準物質のモル比=1:20:200:200:25;基質(5)および(17)の出発濃度:C0(5)=C0(17)=0.13M;溶媒:THF(6ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:室温。
【0140】
(17)のヒドロホルミル化による生成物
【化17】

【0141】
(5)および(17)の転換率(%)および(17)の反応の位置選択性((18)/(19))は、CDCl3によって希釈した粗生成混合物のNMR分析によって特定した。(5)の反応の位置選択性((6)/(7))は、当該反応混合物から溶媒を除去した後で特定した。結果を第5表に示す。
【0142】
第5表
【表5】

【0143】
2. 1−オクテン(20)の存在下におけるビニル酢酸(5)のヒドロホルミル化
反応条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:(1):(5):(20):標準物質のモル比=1:20:200:200:100;基質(5)および(20)の出発濃度:C0(5)=C0(20)=0.13M;溶媒:THF(6ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:室温。
【0144】
(20)のヒドロホルミル化による生成物:
【化18】

【0145】
(5)および(20)の転換率(%)および(20)の反応の位置選択性((21)/(22))は、CDCl3によって希釈した粗生成混合物のNMR分析によって特定した。(5)の反応の位置選択性((6)/(7))は、当該反応混合物から溶媒を除去した後で特定した。結果を第6表に示す。
【0146】
第6表
【表6】

【0147】
3. 2−ビニルヘプタ−6−エン酸(23)のヒドロホルミル化(内部選択性)
実験条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:配位子:(23):標準物質のモル比=1:10:150:50;基質(23)の出発濃度:C0(23)=0.2M;溶媒:THF(8ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:25℃。
【0148】
(23)のヒドロホルミル化のための反応位置:
【化19】

【0149】
第7表および第8表に示した時点においてヒドロホルミル化反応から試料(0.5ml)を採取した。試料から溶媒を除去した後、それらを使用して、NMR分析により二重結合((A)/(B))に関するヒドロホルミル化反応の選択性、並びにそれぞれの二重結合におけるヒドロホルミル化反応の位置選択性((a.1)/(a.2)または(b.1)/(b.2))を特定した。配位子(1)の存在下における(23)のヒドロホルミル化の結果を第7表に示す。比較のため、配位子としてトリフェニルホスフィンの存在下における(23)のヒドロホルミル化の結果を第8表に示す。
【0150】
第7表 配位子(1)の存在下における(23)の反応
【表7】

【0151】
これらの結果から、配位子(1)を使用する場合の、(23)の2つの二重結合に関するターンオーバー頻度は、TOF(A)=46.5h-1およびTOF(B)=5.3h-1として計算することができる。
【0152】
第8表 配位子としてのPPh3の存在下における(23)の反応(本発明によらない)
【表8】

【0153】
これらの結果から、配位子としてトリフェニルホスフィンを使用する場合、(23)の2つの二重結合に関するターンオーバー頻度は、TOF(B)=4.6h-1およびTOF(A)=3.7h-1として計算することができる。
【0154】
3.12 2−ビニルヘプタ−6−エン酸(23)のヒドロホルミル化による2−(3−オキソプロピル)ヘプタ−6−エン酸(24)の製造
実験条件:反応装置:オートクレーブ(B);[Rh(CO)2acac]:(1):(23)のモル比=1:10:150;基質(23)の出発濃度:C0(23)=0.2M;溶媒:THF(8ml);合成ガス:CO/H2(1:1);反応圧力:4bar;反応温度:25℃;反応時間:6.25時間。
【0155】
反応が完了した後に得られた反応混合物を、シリカゲル(1g)と混合し、減圧下で溶媒を除去した。結果として得られた固体をシリカゲルカラムに供し、クロマトグラフィー(溶離液:石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸=100:50:1)により分取した。無色の液体として2−(3−オキソプロピル)ヘプタ−6−エン酸(24)を得た(220mg、収率:74.6%)。さらに、17.6mg(7.1%)の出発化合物(23)を回収した。
【0156】

【0157】
VII. 分子モデル化
実施例のV.1.1の触媒/基質の対(Rh(CO)2acac/(1)/ビニル酢酸)に対して、分子モデル化(MMFF、Spartan Pro)によって触媒および基質の相互認識能力を確認した。得られたデータは、触媒と基質の相互認識に関する実験的発見を指示するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Xは、C、P(Rx)、P(O−Rx)S、またはS(=O)であり、ここで、Rxは、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、並びにシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、
Aは、両側の結合の間に1〜4個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、並びにシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキル、アルケニル、およびアルキニルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよい]の化合物、またはそれらの塩を、触媒の存在下での該式(I)の化合物と一酸化炭素および水素との反応によりヒドロホルミル化するための方法において、前記触媒が、元素周期表の第VIII族の遷移金属と、式(II):
【化2】

[式中、
Pnは、ピニコゲン原子であり;
Wは、両側の結合の間に1〜8個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
2は、式(I)の化合物の−X(=O)OH基に対して少なくとも1つの分子間非共有結合を形成することができる官能基であり、
3およびR4は、それぞれ、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、ここで、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、並びにシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、あるいは、
プニコゲン原子と一緒になって、かつ存在する場合には基Y2およびY3と一緒になって、1、2、3、または4つのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリール基とさらに縮合していてもよい5〜8員のヘテロ環を形成していてもよく、ここで、当該ヘテロ環および場合によって存在する縮合基は、それぞれ、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、
a、b、およびcは、それぞれ、互いに独立して、0または1であり、並びに
1,Y2,およびY3は、それぞれ、互いに独立して、O、S、NRa、またはSiRbcであり、ここで、Ra、Rb、およびRcは、それぞれ、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであり、アルキルは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘタリール、およびヘタリールオキシの中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよく、並びにシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘタリールは、アルキル並びにアルキルに対して上記において言及された置換基の中から選択される1、2、3、4、または5つの置換基を有していてもよい]の少なくとも1つの化合物との少なくとも1つの錯体を含む前記方法。
【請求項2】
前記触媒が、前記基R2に基づき、式(I)の化合物と会合体を形成することができ、ここで、前記式(I)の化合物のC−C二重結合は、前記錯体化した第VIII族の遷移金属と相互作用することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)の化合物のXが、C、S(=O)、またはP(O−Rx)であり、ここで、Rxは、Hであるか、あるいはそれぞれ、置換されていてよいアルキル、シクロアルキル、またはアリールである、請求項1または2までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
XがCである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、式(I.a):
【化3】

[式中、
Xは、C、P(Rx)、P(O−Rx)、S、S(=O)であり、ここで、Rxは、Hであるか、あるいはそれぞれ、置換されていてよいアルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
a1およびRa2は、それぞれ、互いに独立して、HまたはC1〜C4−アルキルであり、
1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールである]の化合物の中から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記元素周期表の第VIII族の遷移金属が、Co、Ru、Rh、Ir、Pd、およびPtの中から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記元素周期表の第VIII族の遷移金属がRhである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記式(II)の化合物におけるPnがリンである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(II)の化合物における前記基R2が、少なくとも1つのNH基を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
2が、−NHRw、=NH、−C(=O)NHRw、−C(=S)NHRw、−C(=NRy)NHRw、−O−C(=O)NHRw、−O−C(=S)NHRw、−O−C(=NRy)NHRw、−N(Rz)−C(=O)NHRw、−N(Rz)−C(=S)NHRw、および−N(Rz)−C(=NRy)NHRwの中から選択され、ここで、Rw、Ry、およびRzは、それぞれ、互いに独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールであるか、あるいは、それぞれ式(II)の化合物のさらなる置換基と一緒に、4〜8員環系の一部である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2が、−NH−C(=NH)NHRwであり、ここで、Rwは、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3およびR4が、それぞれ、置換されていてよいフェニル、ピリジル、またはシクロヘキシルから選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
a、b、およびcが、それぞれ0である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記式(II)の化合物が、式(II.a):
【化4】

[式中、
a、b、c、Pn、R2、R3、R4、Y1、Y2、およびY3は、請求項1から13のいずれか1項において与えられた意味の1つを有し、
W′は、両側の結合の間に1〜5個の架橋原子を有する二価の架橋基であり、
Zは、O、S、S(=O)、S(=O)2、N(RIX)、またはC(RIX)(RX)であり、並びに
I、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、およびRXは、それぞれ、互いに独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘタリールであるか、
あるいは隣接する環原子に結合している2つの基RI、RII、RIV、RVI、RVIII、およびRIXが一緒に、隣接する環原子の間の二重結合の結合部を表し、この場合、該6員環は、最大3つまでの非累積二重結合を有してよい]の化合物の中から選択される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(II.a)の化合物におけるW′が、C(=O)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
2が、−NH−C(=NH)NHRwであり、この場合、Rwは、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘタリールである、請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記式(II.a)の化合物における基RIおよびRIIが一緒に、基RIVおよびRVIが一緒に、並びにRVIIIおよびRIXが一緒に、それぞれ、隣接する環原子の間の二重結合の結合部を表す、請求項14から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項14から17までのいずれか1項で定義される式(II.a)の化合物。
【請求項19】
式(1)および(2):
【化5】

の化合物の中から選択される、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
元素周期表の第VIII族の遷移金属と、請求項18または19のいずれかで定義される式(II.a)の少なくとも1つの化合物との、少なくとも1つの錯体を含む触媒。
【請求項21】
前記元素周期表の第VIII族の遷移金属が、Co、Ru、Rh、Ir、Pd、およびPtの中から選択される、請求項20に記載の触媒。
【請求項22】
請求項20または21のいずれかで定義される触媒を、ヒドロホルミル化のために用いる使用。

【公表番号】特表2011−503028(P2011−503028A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532566(P2010−532566)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064922
【国際公開番号】WO2009/059963
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】