説明

ヒュームドシリカを含有する難燃化ポリエステルポリウレタンフォーム

本発明は、ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤と気泡安定剤との存在下に有機ポリイソシアネートと25℃未満の融点を有する液状ポリオールとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンフォームであって、該安定剤が該組成物の0.1〜5重量%の量のヒュームドシリカであることを特徴とするポリエステルポリウレタンフォームに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤と気泡安定剤との存在下に有機ポリイソシアネートと25℃未満の融点を有する液状ポリオールとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンフォーム、および当該フォームに気泡安定剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性付与剤を含有するポリエステルポリウレタンフォームは、従来技術で周知である。好まれる難燃性付与組成物は、アンチモンに基づいた化合物、ポリイソシアネート成分と反応する活性水素を有するハロゲン化成分、およびハロゲン化難燃性付与剤を包含する。このような組成物のいくつかを記載する多数の特許出願が存在し、たとえば特許文献1には難燃性付与成分としてトリス−(ジクロロプロピル)ホスフェートおよびトリス−(ブトキシエチル)ホスフェートを含んでいる難燃性付与配合物が記載されている。ポリマー状ポリオールと芳香族イソシアネートとの反応からのこのような難燃性付与配合物を含有するポリウレタンフォームを造る方法も、この参照文献は提供する。この方法では、フォーム形成性反応混合物に、ある量の該難燃性付与配合物が添加される。このようなフォームの一般的記載は非特許文献1に見出されることができる。
【0003】
しかし、環境上および毒物学上の理由から、ハロゲン非含有難燃性付与剤の使用の必要、とりわけ自動車用途のための必要が増大している。特許文献2には、少なくとも1のポリエーテルポリオールを含有するポリオール成分、該ポリオールとイソシアネートとを反応するための触媒、発泡剤としての水および難燃性付与化合物としての黒鉛を用いて、ハロゲン非含有防火フォームを製造するためのハロゲン非含有2成分フォーム系が開示されている。
【0004】
黒鉛の存在の故に、このようなフォームは黒色であり、往々にして不十分な難燃特性を有する。すなわち、このようなフォームはハロゲン化されたまたはハロゲンを含んでいないアルキルホスフェートよりも低度に有効であることがあり、着色されていないフォームには使用されることができない。他方において、有機リン難燃性付与剤は、一般に好まれる難燃性付与剤である。したがって、ハロゲンを含んでいない有機リンの難燃性付与剤を含有するポリウレタンフォームの必要が存在する。残念なことに、このような組成物は低品質のフォームを提供する。というのは、発泡過程の際にフォームの崩壊が起き、それによってフォームがばらばらに分解し、または沸騰様のフォーム、すなわち広い範囲のサイズ分布の気泡からなる、極めて一様でない分布をした気泡を有するフォームが得られるからである。たとえば、広く使用されているハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤である(Akzo Nobel社からの)Fyrol(商標)PNXを使用することによっては、満足できるポリエステルポリウレタンフォームを得ることは可能でない。これらの場合には、ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤は、ハロゲン含有有機リンの難燃性付与剤、たとえばFyrol(商標)A300TBまたはFyrol(商標)FR−2によって置き換えられなければならず、これらは優れたフォームを保証する。別の代替物はハロゲン非含有難燃性付与剤、たとえばFyrol(商標)A710であり、これはアルキルホスフェートではなくてアリールホスフェートである。しかし、このような難燃性付与剤は、フォームが環境上および毒物学上望ましくないフェノールおよびTPP(トリフェニルホスフェート)を含んでいるという不都合を有し、その上これらのフォームは、より小さい難燃効率を有する。
【特許文献1】国際公開第2004/094519号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/083291号パンフレット
【非特許文献1】R.Vieweg博士およびA.Hochtlein博士編、「ポリウレタン(Polyurethane)」、第1版、第VIIバンド、(独国、ミュンヘン)、Carl−Hanser−Verlag社、1966年、G.Oertel博士編、第2版、1983年および第3版、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハロゲン非含有難燃性付与剤を含んでおり、かつ無色のフォームを与える能力があるポリエステルポリウレタンフォームを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤と気泡安定剤との存在下に有機ポリイソシアネートと25℃未満の融点を有する液状ポリオールとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンフォームであって、該安定剤が該組成物の0.1〜5重量%の量のヒュームドシリカであることを特徴とするポリエステルポリウレタンフォームに関する。
【発明の効果】
【0007】
発明を実施するための最良の形態
【0008】
本発明の1の観点では、本発明は、水と気泡安定添加剤との存在下に液状有機ポリイソシアネートと液状ポリオールとを反応させることによって、ポリウレタンフォームを調製する方法に関し、該添加剤がヒュームドシリカであることを特徴とし、該ヒュームドシリカは全組成物の0.1〜5重量%の量で存在する。
【0009】
典型的には、ポリオールは、約20〜約300、好ましくは約40〜約100の平均ヒドロキシ当量を有するものを包含する。さらに、このようなポリオールは、好ましくはポリエステルポリオールは、一般に分子当たり約2〜約8のヒドロキシ基を有する。好適なポリオールの例は、DESMOPHEN(商標)2200BおよびFOMREZ(商標)60NFの商標の下に商業的に入手できるものを含む。
【0010】
本発明への使用に適したポリイソシアネートは、脂肪族および脂環式およびとりわけ芳香族のポリイソシアネート並びにこれらの組み合わせを包含する。これらのタイプの代表的なものは、ジイソシアネート、たとえばメタまたはパラフェニレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート(および異性体)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチルフェニル−2,4−フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニレンジイソシアネートおよび3,3'−ジメチルジフェニルプロパン−4,4'−ジイソシアネート、トリイソシアネート、たとえばトルエン−2,4,6−トリイソシアネート、およびポリイソシアネート、たとえば4,4'−ジメチルジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート、並びに各種のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。粗製ポリイソシアネート、たとえばトルエンジアミンの混合物のホスゲン化によって得られた粗製トルエンジイソシアネートまたは粗製メチレンジフェニルアミンのホスゲン化によって得られた粗製ジフェニルメタンジイソシアネートが、本発明の実施に使用されることもできる。とりわけ好まれるのは、トルエンジイソシアネートおよびメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネート並びにこれらの混合物である。
【0011】
ポリウレタンフォームを調製するときに、水は好まれる発泡剤である。水はポリイソシアネートと反応して発生期の二酸化炭素の生成をもたらし、該発生期の二酸化炭素は発泡剤として機能して、反応するポリイソシアネート−液状ポリオールの密集体が低減された密度を得るようにさせる。好ましくは35キログラム毎立方メートル未満の密度を有するポリウレタンフォームを得るための発泡必要量の大部分、すなわち少なくとも50モルパーセント、好ましくは少なくとも70モルパーセント、より好ましくは少なくとも85モルパーセント、および100モルパーセントまでを与えるのに十分な量で、水は存在する。好ましくは、得られたフォームは32未満、より好ましくは約10〜25キログラム毎立方メートルの密度を有する。典型的には、この目的のために要求される水の量は、液状ポリオールの100重量部当たり約1〜約10重量部である。液状ポリオールの100重量部当たり好ましくは約1重量部から、より好ましくは約3.5重量部から、および好ましくは約8重量部まで、より好ましくは約6重量部までの量で、水は存在する。
【0012】
本発明に従って、ヒュームドシリカは好ましくは該組成物の5重量パーセント以下、好ましくは0.1〜3重量パーセント、より好ましくは0.3〜1重量パーセントを構成する。比較的高い密度のフォーム、すなわち25〜35kg/mの密度のフォームでは、ヒュームドシリカ0.3重量%がすでに、良品質のフォームを与えるのに十分である。25kg/m未満の密度では、5重量%まで、好ましくは約1重量%の量が最適なフォームを与えた。好ましくは約7〜約40ナノメートルの平均粒子サイズを、ヒュームドシリカは有する。
【0013】
ヒュームドシリカは典型的には、水素酸素炎中における四塩化ケイ素の気相加水分解によって製造される。燃焼過程は二酸化ケイ素分子を生成し、これは凝縮して粒子を形成し、これが次なる結果として互いに焼結して集合体へとなる。ヒュームドシリカは、処理等級および未処理等級で手に入る。未処理等級は、表面積、かさ密度、および非極性系中における増粘効率が様々である。たとえば、Cabot社、Degussa社およびWacker Silicones社がヒュームドシリカを製造している。Cabot社製品はCAB−O−SIL(商標)の商品名の下で販売されており、Degussa社製品はAEROSIL(商標)の商品名の下で販売されている。
【0014】
好まれるヒュームドシリカは、CAB−O−SIL L−90、MS−55、HS−5、LM−130、LM−150、HDK 30、およびM−5、並びにDegussa AEROSIL R200、US200、R202、R972、US202、US204およびUS206を包含する。好まれるヒュームドシリカは、約7〜約40ナノメートルの平均粒子サイズを有する。
【0015】
該シリカは、発泡前のポリウレタン−水−難燃性付与剤混合物に添加される。該シリカは、好ましくは十分な混合とともに添加され、該十分な混合はポンプまたは撹拌機等を使用して達成されることができる。
【0016】
本発明の組成物中の必須成分は、ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤である。該有機リン添加剤の量は該組成物の1〜20重量%、好ましくは該組成物の3〜8重量%の範囲にあろう。
【0017】
有機リン難燃性付与剤は、O=P−(OR)の式を有する慣用されているタイプのモノマー型ホスフェートエステルであることができ、式中Rは1〜6炭素原子を有するアルキル基から選択される。
【0018】
このような難燃性付与剤の代表的な例は、トリイソプロピルホスフェートおよびトリエチルホスフェートを含む。
【0019】
あるいは、有機リン難燃性付与剤成分は、オリゴマー型有機リン難燃性付与剤であることができ、好ましくは約5重量%以上のリン含有量を有し、かつ有機ホスフェートが所望されるときの好まれる実施態様では、その中に少なくとも3のホスフェートエステル単位(すなわち、少なくとも2のホスフェートエステル繰返し単位および1のホスフェート末端封止単位であり、アルキル基はハロゲンを含んでいない。)を有する。本明細書で使用される「オリゴマー型」の語は、モノマー型化学種を除くことを意味する。
【0020】
このタイプの代表的な有機リン添加剤は、米国特許第4,382,042号に一般的に記載されている。選択されたトリアルキルホスフェート(たとえば、トリエチルホスフェート)と五酸化リンとを反応させて、P−O−P結合を有するポリホスフェートエステルを生成し、これが次にエポキシド(たとえば、エチレンオキシド)と反応して所望の生成物を生成することによって、これらの好まれるハロゲン非含有有機ホスフェートオリゴマーは生成されることができる。この好まれるオリゴマー型有機ホスフェート難燃性付与剤は、式
RO−[P(OR)(O)−O−R'−O−]−P(O)(OR)
を有し、
式中n(これは「繰返し」ホスフェートエステル単位を表す。)は、数平均基準で1〜約20、好ましくは2〜約10の範囲にあることができ、Rはアルキルおよびヒドロキシアルキルから選択され、R'はアルキレンである。該アルキルおよびアルキレン基は、一般に約2〜約10の炭素原子を有する。
【0021】
本発明における使用にとりわけ好まれるオリゴマー型ホスフェートは、アルキルおよびアルキレン部分としてエチルおよびエチレン基を含んでいるだろう、約30mgKOH/g以下のヒドロキシ官能基を有するだろう、約2.5mgKOH/g以下の酸価を有するだろう、および約15重量%〜約25重量%の範囲にあるリン含有量を有するだろう。このタイプの添加剤の代表的なおよび商業的に入手可能な例は、Akzo Nobel Chemicals社からのFYROL(商標)PNXである。これは、上式のオリゴマー型ホスフェートエステル(CAS番号184538−58−7)であり、該式中nは数平均基準で約2〜約20であり、Rはエチルであり、R'はエチレンである。FYROL(商標)PNXは、約19重量%のリン含有量および約2000mPa.秒の25℃における粘度を有する。
【0022】
任意的に、本発明のポリウレタンフォームを調製するプロセスに存在してもよい他の成分は、触媒、界面活性剤、および含窒素物質、たとえばメラミン、着色剤、酸化防止剤、補強材、フィラー、並びに帯電防止剤等を包含する。
【0023】
本発明のポリウレタンを使用するときに、乳化剤として炭化水素油を使用することは不必要である。したがって、本発明の組成物は好ましくは炭化水素油を含んでいない。
【0024】
少なくともフォームが十分に硬化されてもはや崩壊し易くなくなる程度まで、フォームの気泡構造の成長および保持を制御することを促進するために、少量の界面活性剤を用いることは有用であることがある。このような界面活性剤は好都合には有機シリコーン界面活性剤を包含する。他の、より低度に好まれる界面活性剤は、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、酸性長鎖アルキルサルフェートエステルの三級アミンまたはアルカノールアミンの塩、アルキルスルホネートエステルおよびアルキルアリールスルホン酸を包含する。このような界面活性剤は、崩壊および大きく一様でない気泡の形成を防いで発泡反応混合物を安定化するのに十分な量で用いられる。典型的には、液状ポリオール100重量部当たり界面活性剤約0.2〜約5重量部が、この目的のためには十分である。
【0025】
ポリウレタンフォームを造るプロセスにおいては、(1または複数の)ポリオール、ポリイソシアネート、難燃性付与剤、およびヒュームドシリカ、並びに存在するならば他の成分が、接触させられ、完全に混合され、そして膨張し硬化して多孔質のポリマーへとなることが可能になる。粒子を混合する装置は決定的に重要ではなく、各種のタイプのミキシングヘッドおよびスプレーの装置が好都合に使用される。ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる前に、原料のあるものを予備混合することは好都合であることがあるが、必ずしも必要ではない。あるいは、ポリイソシアネートと(1または複数の)ポリオールとが接触させられる混合領域に、全ての成分が個別に導入されることができる。(1または複数の)ポリオールの全部または一部とポリイソシアネートとを予備反応させて、プレポリマーを生成することも可能である。
【実施例1】
【0026】
好適なフォーム組成物の非限定的な実施例は以下の通りである(重量部単位で)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤と気泡安定剤との存在下に有機ポリイソシアネートと25℃未満の融点を有する液状ポリオールとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンフォームであって、該安定剤が該組成物の0.1〜5重量%の量のヒュームドシリカであることを特徴とするポリエステルポリウレタンフォーム。
【請求項2】
難燃性付与剤がFyrol(商標)PNXである、請求項1記載のポリエステルポリウレタンフォーム。
【請求項3】
難燃性付与剤の量が、該組成物の1〜10重量%、好ましくは該組成物の4〜6重量%である、請求項1または2記載のポリエステルポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ヒュームドシリカの量が、該組成物の0.3〜1重量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステルポリウレタンフォーム。
【請求項5】
フォームが35kg/m未満の密度を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステルポリウレタンフォーム。
【請求項6】
ハロゲン非含有有機リンの難燃性付与剤を含んでいる、有機ポリイソシアネートと25℃未満の融点を有する液状ポリオールとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンフォームのための気泡安定剤として、ヒュームドシリカを使用する方法。

【公表番号】特表2008−530291(P2008−530291A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554553(P2007−554553)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050787
【国際公開番号】WO2006/084871
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507270229)サプレスタ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】