説明

ヒンジカバー式メモリカードコネクタ

【課題】帯電した使用者の手がカバーに触れても、静電気でメモリカードが電気的に破壊されるのを防止する。
【解決手段】メモリカードを開口部から収容する樹脂製のコネクタハウジングに、開口部を閉じる金属製のカバーをヒンジで開閉可能に且つスライド可能に設ける。カバー3には、コネクタハウジング内に挿入する金属製の操作子を設ける。コネクタハウジング1には、操作子14の挿入位置に隣接して可動接触片16とこれに接触している固定接触片17とからなるスイッチ18を設ける。カバー3のスライド時に、操作子14の操作により可動接触片16を固定接触片17から離してスイッチ18を開く。コネクタハウジング1には、回路基板のアース部に接続するアース端子22を備え、カバー3のコネクタハウジング1に対する閉鎖前に該カバーに対してアース端子を接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカードを接続対象物として収容するコネクタハウジングの開口部が、このコネクタハウジングにヒンジを介して開閉可能に支持されたカバーで閉じられた状態で、このカバーがコネクタハウジングの表面に沿ってスライドされて使用可能になる構造のヒンジカバー式メモリカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のヒンジカバー式メモリカードコネクタでは、メモリカードの各端子に接触させる複数の信号コンタクトを組み込んだコネクタハウジングが樹脂製、カバーも樹脂製であった。コネクタハウジングには常開の1対の固定接触片が設けられ、カバーにはこのカバーが閉じられてスライドされたとき1対の固定接触片を短絡接続する可動接触片が設けられていた。これら1対の固定接触片と可動接触片とでスイッチを構成し、このスイッチがオンとなった時にカバーの検出回路が働き、各信号コンタクトで接続されているメモリカードに通電がなされるようになっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−086302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造のヒンジカバー式メモリカードコネクタでは、帯電した使用者の手がカバーに触れたとき、静電気が可動接触片を介して1対の固定接触片に伝わりメモリカードを電気的に破壊してしまう問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、帯電した使用者の手がカバーに触れても、静電気でメモリカードが電気的に破壊されるのを防止できるヒンジカバー式メモリカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の構成を説明すると、下記のとおりである。
【0007】
請求項1に記載の発明は、メモリカードを開口部から着脱可能に収容する樹脂製のコネクタハウジングが回路基板に取り付けられるようになっており、前記コネクタハウジングの前記開口部が、前記コネクタハウジングにヒンジを介して開閉可能に支持されたカバーで閉じられ、この状態で前記カバーが前記コネクタハウジングの表面に沿ってスライドされて使用可能になる構造のヒンジカバー式メモリカードコネクタであって、
前記カバーが金属で構成され、前記カバーにはこのカバーが閉じられた時に前記コネクタハウジング内に挿入される操作子が該カバーから切り起こされて突設され、
前記コネクタハウジングには前記操作子が挿入される位置に隣接して可動接触片とこの可動接触片に待機時に接触している固定接触片とからなるスイッチが設けられ、前記可動接触片は前記回路基板のアース部に接続され、前記固定接触片は前記回路基板のプラス側に接続され、前記スイッチが閉から開になった時に前記カバーの検出回路が働くようになっているとともに、前記カバーのスライド時に前記可動接触片が前記操作子で操作されて前記固定接触片から離れて前記スイッチが開になる構造になっており、
前記ハウジングには、前記スイッチよりヒンジ側に近い位置に、前記回路基板のアース部に接続するアース端子が設けられ、
該アース端子が、前記カバーがヒンジを中心にした前記コネクタハウジングに閉じられる方向の回動途中であって、該カバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に該カバーに接触するようにしたことを特徴とするヒンジカバー式メモリカードコネクタにある。
【0008】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、カバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に該カバーに接触する前記アース端子は、前記コネクタハウジングは、その隅部が回路基板側に押さえ金具によって押さえられており、
該押さえ金具に設けた弾性接触片によって前記アース端子が構成されており、
該アース端子を構成する弾性接触片が前記カバーの側縁を直角に折り曲げたて立ち上げた形状の側板部に接触することによって、カバーとアース端子がカバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に接触するようにしたことにある。
【発明の効果】
【0009】
また本発明に係るヒンジカバー式メモリカードコネクタでは、金属製のカバーにこのカバーが閉じられた時にコネクタハウジング内に挿入される金属製の操作子を設け、コネクタハウジングには操作子が挿入される位置に隣接して可動接触片とこの可動接触片に待機時に接触している固定接触片とからなるスイッチを設け、可動接触片は回路基板のアース部に接続し、固定接触片は回路のプラス側に接続し、スイッチが閉から開になった時にカバーの検出回路が働くようにし、カバーのスライド時に可動接触片を操作子で操作して固定接触片から離れてスイッチが開になる構造になっているので、ヒンジでカバーをコネクタハウジングに倒してスライドさせることによりカバーの検出回路を働かせることができる。特に、カバーがヒンジを中心に回動してコネクタハウジングに閉じられる過程でカバーに接触してカバーをアースに接続するアース端子をコネクタハウジングに設けたので、カバーを閉じる過程でカバーをアースに接続することができ、帯電した使用者の手がカバーに触れても、静電気が操作子で可動接触片から固定接触片を経てメモリカードに流れてメモリカードが電気的に破壊されるのを防止することができる。
操作子をカバーから切り起こして形成すると、簡単に低コストで操作子を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るヒンジカバー式メモリカードコネクタの実施例の斜視図である。
【図2】同ヒンジカバー式メモリカードコネクタでカバーを開いた状態の斜視図である。
【図3】同ヒンジカバー式メモリカードコネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るヒンジカバー式メモリカードコネクタを実施するための最良の形態を、図面に示した実施例を参照して詳細に説明する。
【0012】
本例のヒンジカバー式メモリカードコネクタは、樹脂製でモールドにより形成されているコネクタハウジング1と、このコネクタハウジング1の開口部2を閉じるステンレススチールの如き金属製のカバー3とを備えている。コネクタハウジング1は、図示しない回路基板上に搭載され、電気的・機械的に接続されている。
【0013】
メモリカード4は、開口部2からコネクタハウジング1の凹部5に着脱可能に収容されるようになっている。
【0014】
コネクタハウジング1には、複数の信号コンタクト6が並列に組み込まれている。各信号コンタクト6は、弾性金属で形成されていて、その自由端側に接点部6aがそれぞれ凹部5内に突出するように湾曲して形成されている。各信号コンタクト6の接続端子部6bは、コネクタハウジング1の底部に存在していて、図示しない回路基板の各端子部に半田付け接続されるようになっている。
カバー3には、各接点部6a及び各接続端子部6bに対応してそれぞれ窓7及び8が開けられている。
【0015】
カバー3のコネクタハウジング1に対する回動の支点側の両側には、アーム9a及び9bが突設されている。これらアーム9a及び9bの内面には、回転中心軸10a及び10bが突設されている。コネクタハウジング1には、カバー3のアーム9a及び9bに対応してアーム11a及び11bが設けられている。これらアーム11a及び11bの回転中心軸10a及び10bが嵌る位置にそれぞれ長孔12a及び12b(12bは図示せず)が設けられている。これらアーム9a及び9b、回転中心軸10a及び10b、アーム11a及び11b、長孔12a及び12bにて、カバー3の回転中心軸10a及び10bがコネクタハウジング1の長孔12a及び12bで回転することによりそれぞれヒンジ13a及び13bが構成されている。また、長孔12a及び12bにより、カバー3が閉じられた状態でこのカバー3がコネクタハウジング1の表面に沿ってスライドできるようになっている。
【0016】
また、カバー3の両側縁には、その両側縁を直角に折り曲げたて立ち上げた形状の側板部3aが形成されており、その下縁にカバー3と平行な向きに折り曲げた係止片3bが形成されている。一方コネクタハウジング1の両側面には、前記係止片3bが、カバー3閉鎖方向回動時に嵌まり合う凹部1aが形成されており、この凹部1aと前記係止片3bとによって、コネクタハウジング1に対するカバー3の閉鎖動作時の位置関係を規制しているものであり、回転中心軸10aが長孔12aのアーム先端方向側(ハウジング後端側)に位置しているときにカバー3がコネクタハウジング1の表面に施蓋できるようになっている。
【0017】
そして、凹部1a内に係止片3bが嵌まり合い、カバー3が施蓋状態になったとき係止片3bがコネクタハウジング1の底面下に突出し、カバー3がヒンジ13a,13bとは反対側の端部側(ハウジング前端側)に移動できるようになっている。
【0018】
カバー3には、凹部1aに係止片3bが整合した状態でこのカバー3が閉じられた時にコネクタハウジング1内に挿入される金属製の操作子14が突設されている。この操作子14は、カバー3から切り起こして形成されている。
【0019】
コネクタハウジング1には、操作子14が挿入される位置に溝15が設けられている。コネクタハウジング1の溝15には、操作子14が挿入される位置に隣接して可動接触片16とこの可動接触片16に待機時に接触している固定接触片17とからなるスイッチ18が設けられている。可動接触片16はコンタクト19の自由端側に形成され、コンタクト19の基部には回路基板のアース端子に接続されるアース端子部19aが設けられている。
【0020】
アース端子部19aは、コネクタハウジング1の底部側に存在し、回路基板のアース端子に接続されるようになっている。固定接触片17の端子部17aは、回路基板のプラス側に電気的に接続されている。固定接触片17は、押さえ部17bを備えていて、この押さえ部17bでコネクタハウジング1を回路基板側に押さえている。
【0021】
カバー3がヒンジ13a及び13bを中心に回転してコネクタハウジング1の開口部2を閉じた状態、即ちカバー3がコネクタハウジング1に対して後端側に位置している状態では、操作子14は可動接触片16に接触しない状態になっている。カバー3をハウジング前端側にスライドすると、操作子14が可動接触片16に接触するとともに、該可動接触子15を固定接触片17から離反させる方向に動作させるようになっている。
【0022】
そして、カバー3のハウジング前端側へのスライド時に、可動接触片16が操作子14で操作されて固定接触片17から離れてスイッチ18が開になる構造になっている。スイッチ18が閉から開になった時にカバー3の検出回路が働くようになっている。
【0023】
さらにコネクタハウジング1は、固定接触片17の押さえ部17bによるコネクタハウジング1の1つの隅部の押さえの他に、残りの3つの隅部も押さえ金具22,23及び24で回路基板側に押さえられている。押さえ金具22,23及び24は、端子部22a,23a及び24aを備えて回路基板のアース部に固定接続されている。押さえ金具22,23及び24には、カバー3が嵌るとこれを弾性的に押さえる弾性接触片22b,23b及び24bが設けられている。本例では、これら押さえ金具22,23及び24はアース端子として作用するようになっている。
【0024】
そして、弾性接触片22b,23bに対し、カバー3の側板部3aが、カバー3が閉じられる方向の回動途中、即ちカバー閉鎖前に接触し、カバー3をアース側に接続させるようになっている。
【0025】
このようなヒンジカバー式メモリカードコネクタでは、ヒンジ13a及び13bでカバー3をコネクタハウジング1に倒してスライドさせることにより、カバー3の検出回路を働かせることができる。特に、カバー3がヒンジ13a及び13bを中心に回動してコネクタハウジング1に閉じられる過程でカバー3に接触してカバー3をアースに接続するアース端子として作用する押さえ金具22,23及び24を設けたので、カバー3を閉じる過程でカバー3が先ずヒンジ13a及び13bに近い側のアース端子として作用する押さえ金具22及び23に接触し、カバー3がアースされることになる。このため帯電した使用者の手がカバー3に触れても、静電気が操作子14で可動接触片16から固定接触片17を経てメモリカード4に流れてメモリカード4が電気的に破壊されるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 コネクタハウジング
2 開口部
3 カバー
4 メモリカード
5 凹部
6 信号コンタクト
6a 接点部
6b 接続端子部
7及び8 窓
9a及び9b アーム
10a及び10b 回転中心軸
11a及び11b アーム
12a及び12b 長孔
13a及び13b ヒンジ
14 操作子
15 溝
16 可動接触片
17 固定接触片
17a 端子部
17b 押さえ部
18 スイッチ
19 コンタクト
19a アース端子部
22,23及び24 押さえ金具(アース端子)
22a,23a及び24a 端子部
22b,23b及び24b 弾性接触片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリカードを開口部から着脱可能に収容する樹脂製のコネクタハウジングが回路基板に取り付けられるようになっており、前記コネクタハウジングの前記開口部が、前記コネクタハウジングにヒンジを介して開閉可能に支持されたカバーで閉じられ、この状態で前記カバーが前記コネクタハウジングの表面に沿ってスライドされて使用可能になる構造のヒンジカバー式メモリカードコネクタであって、
前記カバーが金属で構成され、前記カバーにはこのカバーが閉じられた時に前記コネクタハウジング内に挿入される操作子が該カバーから切り起こされて突設され、
前記コネクタハウジングには前記操作子が挿入される位置に隣接して可動接触片とこの可動接触片に待機時に接触している固定接触片とからなるスイッチが設けられ、前記可動接触片は前記回路基板のアース部に接続され、前記固定接触片は前記回路基板のプラス側に接続され、前記スイッチが閉から開になった時に前記カバーの検出回路が働くようになっているとともに、前記カバーのスライド時に前記可動接触片が前記操作子で操作されて前記固定接触片から離れて前記スイッチが開になる構造になっており、
前記ハウジングには、前記スイッチよりヒンジ側に近い位置に、前記回路基板のアース部に接続するアース端子が設けられ、
該アース端子が、前記カバーがヒンジを中心にした前記コネクタハウジングに閉じられる方向の回動途中であって、該カバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に該カバーに接触するようにしたことを特徴とするヒンジカバー式メモリカードコネクタ。
【請求項2】
カバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に該カバーに接触する前記アース端子は、前記コネクタハウジングは、その隅部が回路基板側に押さえ金具によって押さえられており、
該押さえ金具に設けた弾性接触片によって前記アース端子が構成されており、
該アース端子を構成する弾性接触片が前記カバーの側縁を直角に折り曲げたて立ち上げた形状の側板部に接触することによって、カバーとアース端子がカバーのコネクタハウジングに対する閉鎖前に接触するようにした請求項1に記載のヒンジカバー式メモリカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−18930(P2012−18930A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193648(P2011−193648)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2007−69772(P2007−69772)の分割
【原出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】