説明

ヒンジシートの製造方法、ヒンジシート、無線通信情報保持シート体及び無線通信情報保持冊子

【課題】引っ張り強度及び引裂き強度に優れたヒンジシートの製造方法を提供する。
【解決手段】ヒンジシート1の製造方法は、一方の面に離型性を有する基材3を用い、この基材の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層し、基材3及び熱可塑性樹脂層5を有する一次積層シート1Aを得る積層工程と、一対の上記一次積層シート1A及び繊維製シート7を用い、一対の一次積層シート1Aの互いの熱可塑性樹脂層5を対向させかつ一対の一次積層シート1A間に繊維製シート7を配設した状態で熱圧着し、二次積層シート1Bを得る圧着工程とを有する。予め熱可塑性樹脂層5(一次積層シート1A)を形成することで、繊維製シート7と熱可塑性樹脂層5との間の接着を従来のものに比して低温で行うことができ、繊維製シート7の繊維の熱劣化が軽減され、十分な引っ張り強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジシートの製造方法、ヒンジシート、無線通信情報保持シート体及び無線通信情報保持冊子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような無線通信情報冊子としては、例えばICチップを内蔵したIC旅券(電子パスポート)が存在する。このIC旅券は、偽造や改ざんを防止すべく氏名や国籍等の個人情報を印字した積層シート(プラスチックシート)にICチップを内蔵させ、このICチップにも個人情報を記憶させている。
【0003】
このIC旅券に用いられる積層シートとしては、引っ張り強度及び引裂き強度の向上を図るため、織物状シートの両面に熱可塑性樹脂層を積層したものが提案されている(特開2011−079285号公報参照)。
【0004】
上記公報所載の積層シート(ヒンジシート)は、上記熱可塑性樹脂層を構成する樹脂を押出機でシート状に溶融押出した直後に、織物状シートに加熱及び加圧接着することによって製造されるものである。そして、当該公報には、織物状シートの開口部(空隙)に熱可塑性樹脂が侵入して一体化されることで、織物と樹脂との両者の特性を併せ持つという効果を奏する旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−079285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記公報所載の積層シートの製造方法について本発明者が鋭意検討した結果、織物状シートと熱可塑性樹脂層とを積層する際に、織物状シートに作用する熱によって織物状シートの繊維が熱劣化してしまい、織物状シートが本来有する強度が発揮されず、結果として所望の引っ張り強度が得られないおそれがあることが判明した。さらに、上記積層構造の形成時に、織物状シートの空隙部に溶融した樹脂(熱可塑性樹脂層の樹脂)が完全に入り込んで、織物状シート全体が両面の熱可塑性樹脂層と一体的になってしまい、その結果、引裂き強度も劣るおそれがあることが判明した。
【0007】
そこで、本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、引っ張り強度及び引裂き強度に優れたヒンジシートの製造方法、この製造方法により得られたヒンジシート、このヒンジシートを用いた無線通信情報保持シート体及び無線通信情報保持冊子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るヒンジシートの製造方法は、
一方の面に離型性を有する基材を用い、この基材の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層し、基材及び熱可塑性樹脂層を有する一次積層シートを得る積層工程と、
一対の上記一次積層シート及び繊維製シートを用い、一対の一次積層シートの互いの熱可塑性樹脂層を対向させかつ一対の一次積層シート間に繊維製シートを配設した状態で熱圧着し、二次積層シートを得る圧着工程と
を有する。
【0009】
当該ヒンジシートの製造方法によれば、予め一次積層シートを形成し、この一次積層シートを用いて二次積層シートを形成でき、つまり基材の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層することにより予め熱可塑性樹脂層(一次積層シート)を形成し、この熱可塑性樹脂層を繊維製シートに熱圧着によって積層接着することができるため、繊維製シートと熱可塑性樹脂層との間の接着は従来のものに比して低温で行うことができる。これにより、当該製造方法によって製造されたヒンジシートにあっては、従来のヒンジシートに比べて、繊維製シートの繊維の熱劣化が軽減され、十分な引っ張り強度を得ることができる。また、このように比較的低温で熱圧着することができるので、従来の製造方法と異なり、繊維製シートの内部に表裏の熱可塑性樹脂層の樹脂が完全に入り込むことがないので、ヒンジシートの引裂き強度も十分なものとなる。
【0010】
当該ヒンジシートの製造方法は、二次積層シートの外面に配設される一対の基材を剥離する剥離工程をさらに有する構成を採用することが可能である。かかる構成を採用することによって、基材が剥離されて外面に表出した熱可塑性樹脂層に他の層を積層することができ、例えばこの熱可塑性樹脂層の外面にアンテナを内蔵する無線通信層と印刷層とを積層して無線通信情報保持シート体を得ることができる。
【0011】
当該ヒンジシートの製造方法は、上記圧着工程において、一対の上記一次積層シート及び繊維製シートを、熱圧着装置の加熱手段によって加熱しつつ、上記熱圧着装置の一対のロール間に通すことで熱圧着を行う構成を採用することも可能である。かかる構成を採用することで、一対のロール及び加熱手段を有する熱圧着装置によって上記圧着工程を容易且つ確実に行うことができ、ヒンジシートを容易且つ確実に製造することができる。
【0012】
当該ヒンジシートの製造方法は、圧着工程において、熱圧着の圧着温度が80℃以上200℃以下である構成を採用することが好ましい。圧着温度が上記下限値以上であるので、熱可塑性樹脂層を繊維製シートに確実に接着できる。また圧着温度が上記上限値以下であるので、繊維製シートの繊維の熱劣化を軽減することができる。
【0013】
当該ヒンジシートの製造方法は、圧着工程において、熱圧着の圧着圧力が0.1MPa以上である構成を採用することが好ましい。圧着圧力が0.1MPa以上であるので、熱可塑性樹脂層を繊維製シートに確実に接着できる。
【0014】
当該ヒンジシートの製造方法は、一対の上記熱可塑性樹脂層のうち少なくとも一方の熱可塑性樹脂層の主成分の熱可塑性樹脂が、ウレタン系樹脂又は低温接着性樹脂である構成を採用することが可能である。主成分の熱可塑性樹脂がウレタン系樹脂である場合には、熱可塑性樹脂層の耐摩耗性及び柔軟性が向上し、ヒンジシートの強度が強くなる。また、主成分の熱可塑性樹脂が低温接着性樹脂である場合には、圧着工程における圧着温度を低く設定しても、熱可塑性樹脂層を確実に繊維製シートに積層接着することができる。
【0015】
また、本発明に係るヒンジシートは、上述した当該製造方法によって製造されたことを特徴とするものである。このため、当該ヒンジシートは、十分な引っ張り強度及び引裂き強度を有する。
【0016】
さらに、本発明に係る無線通信情報保持シート体は、
当該ヒンジシートと、
当該ヒンジシートの一方の面に積層され、アンテナを内蔵する無線通信層と、
この無線通信層の一方の面側に積層される印刷層と
を備え、
当該ヒンジシートが、他の層よりも平面方向に突設した突設部を有するものである。
【0017】
当該無線通信情報保持シート体にあっては、無線通信層を有するので、他の外部無線端末に対して保持する情報を発信することができ、このため例えば電子パスポート等に利用することができる。また、当該無線通信情報保持シート体は、当該ヒンジシートを有するものであるので、引っ張り強度及び引裂き強度に優れており、耐久性に優れている。
【0018】
当該無線通信情報保持シート体は、ヒンジシートの他方の面に積層され、アンテナを内蔵する他の無線通信層と、この無線通信層の他方の面側に積層される他の印刷層とをさらに備える構成を採用することが可能である。これにより、表裏一対の無線通信層によって、より多くの情報を保持することができる。
【0019】
当該無線通信情報保持シート体は、上記ヒンジシートの突設部の突設端部付近において、上記無線通信層と離間し且つ上記ヒンジシートの一方の面に積層されアンテナを内蔵する他の無線通信層と、上記他の無線通信層の一方の面側に積層される他の印刷層とを備える構成を採用することが可能である。これにより、左右(突設部の突設方向を横とした場合)一対の無線通信層によって、より多くの情報を保持することができる。
【0020】
当該無線通信情報保持シート体は、無線通信層が、上記アンテナに接続されたICチップを内蔵する構成を採用することが可能である。これによって、ICチップによって、より多くの情報を保持することができる。
【0021】
当該無線通信情報保持シート体は、印刷層が、レーザ光を照射することで印刷されるレーザ印刷層を有し、無線通信層が、レーザ光を反射するレーザ光反射層を有する構成を採用することが可能である。これによって、上記レーザ印刷層によって視認可能な文字等のデータを表示させることができる。また、無線通信層がレーザ光反射層を有するので、このレーザ印刷に際してレーザ光によるアンテナ故障等の不具合を未然に防止することができる。
【0022】
本発明に係る無線通信情報保持冊子は、当該無線通信情報保持シート体を有するものである。このため、当該無線通信情報保持シート体の無線通信層によって、他の外部無線端末に対して保持する情報を発信することができ、このため例えば電子パスポート等に好適に採用することができる。また、当該無線通信情報冊子は、当該ヒンジシートを有するものであるので、この無線通信情報保持シート体の引っ張り強度及び引裂き強度に優れており、結果として当該無線通信情報保持冊子自体の耐久性も優れる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のヒンジシートの製造方法によれば、引っ張り強度及び引裂き強度に優れたヒンジシートを得ることができる。このため、このヒンジシートを用いた無線通信情報保持シート体及び無線通信情報保持冊子は高い耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒンジシートの製造方法の概略的説明図であって、(A)は積層工程後の概略的断面図、(B)は圧着工程後の概略的断面図、(C)は剥離工程後の概略的断面図である。
【図2】図1の製造方法に用いられる製造装置の概略構成図である。
【図3】図1の製造方法によって得られたヒンジシートを用いた無線通信情報保持シート体の概略的断面図である。
【図4】図3の無線通信情報保持シート体を用いた無線通信情報保持冊子の概略的断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る無線通信情報保持シート体の概略的断面図である。
【図6】図5の無線通信情報保持シート体を用いた無線通信情報保持冊子の概略的断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る無線通信情報保持シート体の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
以下、本発明の実施形態について説明するが、まず、本発明の第一実施形態のヒンジシートの製造方法について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0026】
<ヒンジシート1の製造方法>
本実施形態のヒンジシート1の製造方法(以下、単に製造方法ということがある)は、一次積層シート1Aを得る積層工程、この積層工程によって得た一次積層シート1Aを用いて多層積層体(二次積層シート1B)を得る積層工程、及び積層工程後に一部の層を剥離する剥離工程を有している。
【0027】
具体的には、積層工程は、一方の面に離型性を有するシート状の基材3を用い、この基材3の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層し、基材3及び熱可塑性樹脂層5を有する一次積層シート1Aを得る工程である。また、圧着工程は、上記積層工程によって得られる一対の一次積層シート1A及び繊維製シート7を用い、一対の一次積層シート1Aの互いの熱可塑性樹脂層5を対向させかつ一対の一次積層シート1A間に繊維製シート7を配設した状態で熱圧着し、二次積層シート1Bを得る工程である。さらに、剥離工程は、上記圧着工程によって得られた二次積層シート1Bの外面に配設される一対の基材3を剥離する工程である。なお、この圧着工程及び剥離工程は、図2に示すように、連続的に各工程が施されている。
【0028】
(積層工程)
積層工程は、上述のように基材3に熱可塑性樹脂層5を積層して一次積層シート1Aを形成する工程であり、この積層工程の後の一次積層シート1Aは原反状に捲回され、次工程(図2参照)に送られている。
【0029】
この積層工程において用いられる基材3としては、合成樹脂シート、ゴムシート、紙、布(不織布等)、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なシート状体を用いることができる。但し、基材3としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂シートが好適に用いることができる。この基材3の表面には、熱可塑性樹脂層5との剥離性を高めるため、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を施すことが好ましい。剥離シートの剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類及び/又はその塗工量等を調節することによって制御することができる。
【0030】
また、積層工程においては、熱可塑性樹脂の積層方法としては種々の積層手法を採用することができ、例えば連続的にシート状の基材3を供給し、この基材3の上に溶融した熱可塑性樹脂を積層し、これを硬化させて、基材3上に熱可塑性樹脂層5を積層した一次積層シート1Aを得ることができる。
【0031】
また、熱可塑性樹脂組成物は、主成分の熱可塑性樹脂がウレタン系樹脂又は低温接着性樹脂であるものが好適に用いられる。
【0032】
ウレタン系樹脂としては、ポリヒドロキシル化合物、ジイソシアネート及びジイソシアネートと反応する水素原子を少なくとも2個含有する低分子量の鎖伸長剤とから合成することができるポリウレタン等が挙げられる。製造方法としては、例えば、溶剤中で比較的高分子量のポリウレタンを合成した後、水を少しずつ加えて転相乳化し、減圧により溶剤を除く方法や、ポリマー中に親水性基としてポリエチレングリコールやカルボキシル基等を導入させたウレタンプレポリマーを水に溶解あるいは分散させた後、鎖伸長剤を添加して反応させる方法等がある。
【0033】
上記ウレタン系樹脂の製造に用いられるポリヒドロキシル化合物の例としては、例えばフタル酸、アジピン酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸等のカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどから脱水縮合反応によって得られるポリエステルポリオール類;ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、シュクローズ、スターチ、リン酸などの無機酸を開始剤としたポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール等のポリエーテルポリオール;アクリルポリオール、ヒマシ油の誘導体、トール油誘導体、その他水酸基化合物等が挙げられる。これらのポリヒドロキシル化合物は、単独又は複数種のものを組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記ウレタン系樹脂の製造に用いられるジイソシアネートの例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは、単独又は複数種のものを組み合わせて用いることができる。
【0035】
ウレタン系樹脂の製造に用いられる鎖伸長剤の例としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン−ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール−ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル等のポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等のポリアミン類、ヒドラジン類、及び水が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、単独又は複数種のものを組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、低温接着性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル共重合体;又はポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン−66)、ポリヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−610)、ポリヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−612)等のポリアミド単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ナイロン−6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ナイロン−6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカン二酸共重合体(ナイロン−6/66/612)等のポリアミド共重合体等が挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0037】
また、上記熱可塑性樹脂層5の形成材料には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、フィラー、顔料、可塑剤、劣化防止剤、分散剤等が挙げられる。
【0038】
さらに、上記熱可塑性樹脂層5は、平均厚さが25μm以上60μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下に形成されていることが好ましい。なお、この「平均厚さ」とは、JIS K 7130に準拠して測定される値であり、以下本明細書において同様である。
【0039】
(圧着工程)
圧着工程は、上述のように一対の一次積層シート1Aの間に繊維製シート7を介在させて圧着して二次積層シート1Bを得る工程である。ここで、圧着工程において一対の上記一次積層シート1Aは同一構成のものを用いることも可能であり、また異なる構成の一次積層シート1Aを用いることも可能である。具体的には、例えば一対の一次積層シート1Aとして、対向する面にそれぞれウレタン樹脂製の層(熱可塑性樹脂層5)が積層されたシートを用いることも可能であり、さらに一方の積層シート1Aの熱可塑性樹脂層5がウレタン樹脂製の層からなり、他方の積層シート1Aの熱可塑性樹脂層5が低温接着性樹脂製の層からなるものを用いることも可能である。
【0040】
上記繊維製シート7は、繊維を含みシート状に形成されたものであれば種々のものを採用することができ、例えば繊維を網目状に編んだメッシュクロスから構成することも可能であるが、繊維を織らずにシート状に形成した不織布から構成することが好ましい。これにより、加工性に優れるとともに、製造されるヒンジシート1に十分な強度を持たせることが可能となる。
【0041】
また、繊維製シート7の繊維は、天然繊維を採用することも可能であるが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂からなる繊維、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなる繊維及びこれら樹脂の共重合物、変性物及びこれらの組み合わせからなる合成繊維を採用することが好ましい。なお、これらの繊維を単独で用いることも可能であり、また複数種類の繊維を併せて用いることも可能である。
【0042】
なお、不織布の材料としての繊維は、セルロース系繊維が好適に用いられる。このセルロース系繊維は、綿、パルプ、麻等の他、パルプより得られるビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリオセル等を採用でき、これらのうちの1種を或いは2種以上組み合わせて用いることができる。この繊維の繊度及び繊維長は、特に限定されるものではないが、繊度が0.55デシテックス以上3.3デシテックス以下、繊維長が20mm以上51mm以下のものが好適に用いられる。上記不織布の製造方法としては、水流交絡(スパンレース)法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等の一般的な方法を採用することができる。
【0043】
なお、この繊維製シート7は、平均厚さが25μm以上60μm以下、好ましくは30μm以上50μm以下に形成されていることが好ましい。
【0044】
圧着工程においては、加熱手段及び一対の挟持ロールを有する熱圧着装置が用いられ、具体的には、一対の加熱ロール10(挟持ロール)を有する熱圧着装置が用いられる(図2参照)。なお、この熱圧着装置の加熱ロール10としては、種々のものが採用可能であり、例えば金属ロールやシリコンロールを用いることができる。
【0045】
上記圧着工程における熱圧着の圧着温度は、80℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以上180℃以下、特に好ましくは100℃以上170℃以下である。圧着温度が上記下限値未満であると、熱可塑性樹脂層5と繊維製シート7との接着強度が不十分となるおそれがある。また、圧着温度が上記上限値を超えると、繊維製シート7の繊維の熱劣化が生ずるおそれがある。
【0046】
また、圧着工程における熱圧着の圧着圧力は、0.1MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.3MPa以上、特に好ましくは0.5Mpa以上である。圧着圧力が上記下限値未満であると、熱可塑性樹脂層5と繊維製シート7との接着強度が不十分となるおそれがある。また、熱圧着の圧着圧力の上限値は特に限定されるものではないが、10Mpa以下が好ましく、より好ましくは5MPa以下、特に好ましくは1Mpa以下である。圧着圧力が上記上限値を超えると、繊維製シート7の性能劣化が懸念されるばかりか、圧力付与のために製造ラインの複雑化を招くおそれがある。
【0047】
さらに、圧着工程における熱圧着の熱圧着速度は、0.5m/min以上30m/min以下であることが好ましく、より好ましくは1m/min以上20mm/min以下である。圧着速度が上記下限値未満であると、繊維製シート7の性能劣化が懸念され、また大量生産に不適となるおそれがある。また、圧着速度が上記上限値を超えると、熱可塑性樹脂層5と繊維製シート7との接着強度が不十分となるおそれがある。
【0048】
(剥離工程)
剥離工程は、上述のように、圧着工程後の二次積層シート1Bから外面の各基材3を剥離する工程である。ここで、この基材3の剥離は、上記二次積層シート1Bの表裏面の略同一箇所から剥離するよう設けられていることが好ましい。具体的には、図2に示すように、剥離案内ロール11が上下流の略同一箇所に配設されていることが好ましい。これにより、表裏面からバランス良く基材3を剥離することができる。
【0049】
(ヒンジシート1)
上記製造方法によって形成されたヒンジシート1は、繊維製シート7の両面に熱可塑性樹脂層5が積層された構造からなる。
【0050】
また、当該ヒンジシート1は、平均厚さが、100μm以上150μm以下、好ましくは110μm以上140μm以下、より好ましくは120μm以上130μm以下に形成されていることが好ましい。
【0051】
(電子パスポート用シート体40)
次に、本発明の一実施形態の無線情報保持シート体として、上述した構成からなる当該ヒンジシート1を用いた電子パスポート用シート体40を図3を参酌しつつ、以下説明する。
【0052】
当該電子パスポート用シート体40は、当該ヒンジシート1と、当該ヒンジシート1の一方の面(以下の説明において表面ということがある)に積層されアンテナ(図示省略)を内蔵する無線通信層20と、この無線通信層20の一方の面側に積層される印刷層30とを備えている。また、当該電子パスポート用シート体40は、上記ヒンジシート1の他方の面(以下の説明において裏面ということがある)に積層されアンテナ(図示省略)を内蔵する他の無線通信層20と、この無線通信層20の他方の面側に積層される他の印刷層30とをさらに備えている。つまり、本実施形態の電子パスポート用シート体40にあっては、ヒンジシート1の両面にそれぞれ、無線通信層20及び印刷層30が形成されている。そして、当該電子パスポート用シート体40にあって、ヒンジシート1は、他の層(無線通信層20及び印刷層30)よりも平面方向一側から突設した突設部1aを有している。
【0053】
上記表裏の無線通信層20のうち表面側の無線通信層20は、ICチップ(図示省略)を内蔵するICチップ内蔵層21と、上記アンテナを内蔵するアンテナ内蔵層23とを有している。上記ICチップはアンテナに電気的に接続され、このアンテナを介してICチップが保有する情報を無線通信できるよう構成されている。
【0054】
ICチップ内蔵層21に内蔵されるICチップは、半導体素子を含む集積回路であり、各種データを保存可能に設けられている。ICチップは、電極部(図示省略)を有しており、この電極部は、アンテナの接点部と電気的に接続するように配設されている。
【0055】
上記ICチップはICチップ内蔵層21を形成する樹脂によって囲堯状態されている。このICチップ内蔵層21を形成する樹脂は、種々のものを採用できるが、非結晶性ポリエレテレンテレフタレートコポリマー(以下、PETGということがある)が好適に用いられる。ここで、ICチップ内蔵層21は、平均厚さが150μm以上350μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは200μm以上300μm以下である。
【0056】
上記アンテナ内蔵層23は、アンテナが形成されたアンテナ回路フィルム(図示省略)と、このアンテナ回路フィルムの外面(表面)側に積層されるレーザ光反射層(図示省略)とを備え、さらにアンテナ回路フィルムとレーザ光反射層との間に配設される基材3フィルム(図示省略)を備えている。具体的には、上記ICチップ内蔵層21の表面に上記アンテナ回路フィルムが積層され、このアンテナ回路フィルムの表面に上記基材3フィルムが積層され、この基材3フィルムの表面に上記レーザ光反射層が積層されている。なお、このアンテナ内蔵層23は、平均厚さが90μm以上200μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは100μm以上150μm以下である。
【0057】
レーザ光反射層は、レーザ光を反射することでレーザ印刷時のレーザ光がアンテナ回路フィルム等に到達してアンテナ故障等を招来するのを防止するための層である。レーザ光反射層は、鉄、アルミニウム、マグネシウム等、レーザ光に対する反射性の高い材料が樹脂フィルムに積層されて形成されるものが好適に用いられる。ここで、この樹脂フィルムの材料は特に限定されないが、PETGが好適に用いられる。また、上記レーザ光に対する反射性の高い材料の形成方法は、特に限定されないが、蒸着法、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法等を採用することができる。なお、このレーザ光反射層は、平均厚さが30μm以上200μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0058】
上記基材3フィルムの素材は、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネートを採用することが可能である。また、この基材3フィルムの平均厚さは30μm以上200μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0059】
また、上記アンテナ回路フィルムは、樹脂フィルムにアンテナが形成されて構成されているものであり、ここでアンテナ形成方法は種々の公知の方法を採用でき、例えば印刷等によってアンテナを形成することが可能である。また、このアンテナ回路フィルムを構成する樹脂フィルムの素材は、特に限定されるものではないが、例えばPETGを採用することが可能である。また、この樹脂フィルムの平均厚さは30μm以上200μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0060】
また、裏面側の無線通信層20は、表面側の無線通信層20と異なり、ICチップ内蔵層を有しておらず、アンテナ内蔵層23のみから構成されている。なお、この裏面側のアンテナ内蔵層23の具体的構成は上記説明と同様であるため説明を省略する。
【0061】
上記表裏面の印刷層30は、写真等の画像が印刷される受像層31と、レーザ光の照射により印刷されるレーザ印刷層35とをそれぞれ有している。具体的には、上記無線通信層20の外面に上記受像層31が積層され、この受像層31の外面に接着剤層33を介して上記レーザ印刷層35が積層されている。
【0062】
受像層31は、インクジェット方式、熱転写方式、電子写真方式等により種々の情報を画像として形成するための層である。受像層31は、画像記録用インクを受容、拡散、密着、固定等させることで画像の形成を可能とする。画像記録用インクをインクジェット方式に適用する方法としては、例えば、特開2000−44857号公報や特開平9−71743号公報で記載されているような方法が挙げられる。また、画像記録用インクを熱転写方式に適用する方法としては、例えば、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が挙げられる。
【0063】
受像層31を形成する材料としては、特に限定されるものではなく、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のモノマー(例えばイソブチルエーテル、プロピオン酸ビニル等)との共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、三酢酸セルロース、ポリスチレン、スチレンと他のモノマー(例えばアクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化エチレン等)との共重合体、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、及びそれらの変性物などを挙げることができる。
【0064】
受像層31には、ブロッキング、タック防止の点から各種フィラーを添加することができる。このようなフィラーとしては、フッ素系粒子、メラミン樹脂粒子、シリコン系粒子、タルク、カオリン、炭酸マグネシュウム、炭酸カリウム、酸化チタン、シリカ、デンプン等が挙げられる。また、受像層31には、製膜助剤、塗液安定剤、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0065】
なお、受像層31は、平均厚さが4μm以上8μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは5μm以上7μm以下である。
【0066】
レーザ印刷層35は、遮光インキ層(図示省略)と,レーザ印刷される遮光インキ層の領域を少なくとも隠蔽するように形成された背景インキ層(図示省略)とを有している。ここで、背景インキ層の形成領域(平面方向)は遮光インキ層の形成領域よりもやや広く設けられ、遮光インキ層を隠蔽するように構成されている。
【0067】
上記遮光インキ層の形成にあっては、レーザ光を遮光する金属粒子を含有する印刷インキを用いることができ、具体的には例えばインキ重量に対し平均粒径5μm以上20μm以下のアルミニウム粒子を5重量%以上20重量%以下になるように、アルミニウムペーストをメジウムに分散させた銀インキを用いることができる。
【0068】
また、背景インキ層の形成にあっては、顔料を含む印刷インキを用いることができ、具体的には例えば白色顔料を含有する白インキを用いて背景インキ層30を形成することが好ましく、これによりレーザ印刷される印刷パターンの色は黒色を呈するため、印刷パターンのコントラストが高くなる。この白インキとしては、種々のものを用いることができるが、酸化チタン顔料を用いることが好ましい。
【0069】
レーザ印刷層35は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等の印刷手法によってレーザ印刷層35の基層に遮光インキ層を印刷し、その後遮光インキ層の上に背景インキ層を重ね刷りすることでることで形成できる。
【0070】
なお、レーザ印刷層35は、平均厚さが50μm以上150μm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは70μm以上110μm以下である。
【0071】
上記レーザ印刷層35と上記受像層31とは接着剤層33を介して接着されている。この接着剤の種類は特に限定されるものではなく、種々の接着剤を採用することが可能である。また、接着剤層33の平均厚さは4μm以上8μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上7μm以下である。
【0072】
上記構成からなる当該電子パスポート用シート体40は、平均厚さが1mm以下に設けられていることが好ましく、より好ましくは900μm以下であり、さらに好ましくは800μm以下である。
【0073】
(電子パスポート50)
次に、本発明の無線情報保持冊子の一実施形態として、上述した構成からなる当該無線情報保持シート体40を用いた電子パスポート50を図4を参酌しつつ説明する。
【0074】
当該電子パスポート50は、当該電子パスポート用シート体40を有する冊子であり、電子パスポート用シート体40は、冊子の背の部位の折り返し部の内側に接合されている。ここで、電子パスポート用シート体40は、ヒンジシート1の突出部1aの自由端が接合されており、このヒンジシート1の熱可塑性樹脂層5が熱溶着によって冊子に接合されている。
【0075】
(利点)
当該ヒンジシート1の製造方法は、予め一次積層シート1Aを形成し、この一次積層シート1Aを用いて二次積層シート1Bを形成でき、つまり基材3の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層することにより予め熱可塑性樹脂層5(一次積層シート1A)を形成し、この熱可塑性樹脂層5を繊維製シート7に熱圧着によって積層接着することができるため、繊維製シート7と熱可塑性樹脂層5との間の接着は従来のものに比して低温で行うことができる。これにより、当該ヒンジシート1にあっては、従来のヒンジシート1に比べて、繊維製シート7の繊維の熱劣化が軽減され、十分な引っ張り強度を得ることができる。また、このように比較的低温で熱圧着することができるので、従来の製造方法と異なり、繊維製シート7の内部に表裏の熱可塑性樹脂層5の樹脂が完全に入り込むことがないので、ヒンジシート1の引裂き強度も十分なものとなる。
【0076】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の無線情報保持シート体として、図5に示す電子パスポート用シート体40を説明する。なお、この第二実施形態の電子パスポート用シート体40においても上記第一実施形態のヒンジシート1を用いている。また、第一実施形態と同一構成を有する部分については同一符号を用い、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0077】
第二実施形態の電子パスポート用シート体40も、第一実施形態と同様に、ヒンジシート1の一方の面に積層されアンテナを内蔵する無線通信層20と、この無線通信層20の一方の面側に積層される印刷層30とを備え、ヒンジシート1が、他の層よりも平面方向に突設した突設部1aを有する構造からなる。第二実施形態の電子パスポート用シート体40は、ヒンジシート1の突設部1aの突設端部付近において、上記無線通信層20と離間し且つヒンジシート1の一方の面に積層されアンテナを内蔵する他の無線通信層20と、他の無線通信層20の一方の面側に積層される他の印刷層30とを備えている。換言すれば、第二実施形態の電子パスポート用シート体40は、ヒンジシート1の一方の面に一対の無線通信層20が互いに離間して積層され、この各無線通信層20の一方の面に印刷層30が積層されている。
【0078】
次に、この第二実施形態の電子パスポート用シート体40を用いた電子パスポートについて、本発明の無線通信情報保持冊子の第二実施形態として図6を参酌しつつ説明する。なお、第一実施形態と同一構成を有する部分については同一符号を用い、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0079】
第二実施形態の電子パスポートは、第一実施形態と同様に、冊子の背の部位の折り返し部の内側に接合された第一実施形態の電子パスポート用シート体40を有するとともに、上述した第二実施形態の電子パスポート用シート体40を有している。この第二実施形態の電子パスポート用シート体40は、冊子の表紙(表表紙及び裏表紙)の外側に配設されており、一方の面側が内側となった状態(印刷層30が内側となった状態)で冊子の表紙に貼着されている。
【0080】
この第二実施形態の電子パスポートによれば、上記第一実施形態の電子パスポート用シート体40の無線通信層20のみならず、冊子の表紙に配設された第二実施形態の電子パスポート用シート体40の無線通信層20によっても情報を保持することができるので、より多くの情報を保持することができる。
【0081】
[その他の実施形態]
なお、上記した各実施形態は上記構成によって上記利点を奏するものであったが、本発明は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0082】
つまり、本発明の無線通信情報保持シート体は、複数の無線通信層20を有するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも一つの無線通信層を有するものであれば本発明の意図する範囲内である。
【0083】
また、当該ヒンジシート1の表裏面それぞれに無線通信層20を配設する場合であっても、上記第一実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば図7に示すような無線通信情報保持シート体にすることも適宜設計変更可能な事項である。この図7に示す無線通信情報保持シート体は、ヒンジシート1の表面にアンテナ内蔵層23の一層からなる無線通信層20が積層され、この無線通信層20の表面にレーザ印刷層35の一層からなる印刷層30が積層されている。また、この無線通信情報保持シート体は、ヒンジシート1の裏面にアンテナ保持層一層からなる無線通信層20が積層され、この無線通信層20の裏面に印刷層30が積層されており、この印刷層30が無線通信層20の裏面に積層されたレーザ印刷層35とこのレーザ印刷層35の裏面に積層された受像層31とから構成されている。
【0084】
また、本発明のヒンジシート1は、電子パスポートに好適に用いられるものであるが、用途はこれに限定されるものではなく、例えば無線通信情報を保持するためのその他のシート体にも採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明のヒンジシートの製造方法は、引っ張り強度及び引裂き強度に優れたヒンジシートが製造できるので、このヒンジシートを電子パスポート等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 ヒンジシート
1A 一次積層シート
1B 二次積層シート
3 基材
5 熱可塑性樹脂層
7 繊維製シート
10 加熱ロール
11 剥離案内ロール
20 無線通信層
21 ICチップ内蔵層
23 アンテナ層
30 印刷層
31 受像層
33 接着剤層
35 レーザ印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に離型性を有する基材を用い、この基材の一方の面に熱可塑性樹脂組成物を積層し、基材及び熱可塑性樹脂層を有する一次積層シートを得る積層工程と、
一対の上記一次積層シート及び繊維製シートを用い、一対の一次積層シートの互いの熱可塑性樹脂層を対向させかつ一対の一次積層シート間に繊維製シートを配設した状態で熱圧着し、二次積層シートを得る圧着工程と
を有するヒンジシートの製造方法。
【請求項2】
上記二次積層シートの外面に配設される一対の基材を剥離する剥離工程をさらに有する請求項1に記載のヒンジシートの製造方法。
【請求項3】
上記圧着工程において、一対の上記一次積層シート及び繊維製シートを、熱圧着装置の加熱手段によって加熱しつつ、上記熱圧着装置の一対のロール間に通すことで熱圧着を行う請求項1又は2に記載のヒンジシートの製造方法。
【請求項4】
上記圧着工程において、熱圧着の圧着温度が80℃以上200℃以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のヒンジシートの製造方法。
【請求項5】
上記圧着工程において、熱圧着の圧着圧力が0.1Mpa以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒンジシートの製造方法。
【請求項6】
上熱可塑性樹脂層の主成分の熱可塑性樹脂が、ウレタン系樹脂又は低温接着性樹脂である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のヒンジシートの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒンジシートの製造方法によって得られたヒンジシート。
【請求項8】
請求項7に記載のヒンジシートと、
このヒンジシートの一方の面に積層されアンテナを内蔵する無線通信層と、
この無線通信層の一方の面側に積層される印刷層と
を備え、
上記ヒンジシートが、他の層よりも平面方向に突設した突設部を有する無線通信情報保持シート体。
【請求項9】
上記ヒンジシートの他方の面に積層されアンテナを内蔵する無線通信層と、
この無線通信層の他方の面側に積層される印刷層と
をさらに備える請求項8に記載の無線通信情報保持シート体。
【請求項10】
上記ヒンジシートの突設部の突設端部付近において、
上記無線通信層と離間し且つ上記ヒンジシートの一方の面に積層されアンテナを内蔵する他の無線通信層と、
上記他の無線通信層の一方の面側に積層される他の印刷層と
を備える請求項8に記載の無線通信情報保持シート体。
【請求項11】
上記無線通信層が、アンテナと、このアンテナに接続されたICチップと内蔵する請求項7、請求項8又は請求項9に記載の無線通信情報保持シート体。
【請求項12】
上記印刷層が、レーザ光を照射することで印刷されるレーザ印刷層を有し、
上記無線通信層が、レーザ光を反射するレーザ光反射層を有する請求項8から請求項11の何れか1項に記載の無線通信情報保持シート体。
【請求項13】
上記請求項7から請求項11の何れか1項に記載の無線通信用積層シートを有する無線通信情報保持冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43305(P2013−43305A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181005(P2011−181005)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】