説明

ヒンジ機構及びこれを備える電子機器

【課題】 組み立て作業性を向上させることが可能なヒンジ機構を提供する。
【解決手段】 第1部分1と第2部分2とを回動可能に連結するヒンジ機構3である。第1部分1に対して回動軸周りに回動不能な軸受け部材39と、第2部分2に対して回動軸周りに回動不能な軸部材38を備える。軸部材38及び軸受け部材39には、各々の内外を相互に連通させるスリット部384,394が、回動軸方向に沿ってそれぞれ形成されている。第1及び第2部分1、2を特定の回転位相にしスリット部384,394を同一直線上に配置した状態で、両スリット部384,394を介してフレキシブル基板5のカール部51を軸部材38及び軸受け部材39内に入り込ませる。これにより、フレキシブル基板5を軸部材38及び軸受け部材39の内部を通して、第1部分1側から第2部分2側に導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ機構及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1及び第2筐体をヒンジ機構を介して連結することにより開閉可能に構成した電子機器として、例えば、折り畳み式携帯電話機がある。
【0003】
図10は、従来の折り畳み式携帯電話機におけるヒンジ機構近傍を示す分解斜視図である。
【0004】
図10においては、第1筐体を構成する上下のケース部材のうち上部ケース101のみを示し、同様に、第2筐体を構成する上下のケース部材のうち上部ケース102のみを示している。
【0005】
第1筐体側の上部ケース101の一端部には筒状部103が形成されている一方、第2筐体側の上部ケース102の一端部には一対の半筒状部104が形成されている。
【0006】
ヒンジ機構は、筒状部103と、半筒状部104と、ヒンジユニット105と、軸部材106と、軸受け部材107と、第2筐体側の下部ケース(図示略)に形成された一対の半筒状部(図示略)と、を備えて構成されている。
【0007】
ヒンジユニット105は、第1筐体と第2筐体とを相対的に回動させる力に抗するトルクを発生させるトルク発生機構を備えている。
【0008】
すなわち、ヒンジユニット105は、第1部分1051及び第2部分1052を備えて構成され、第1部分1051と第2部分1052とは、ヒンジ機構の軸周りにおいて相対的に回動可能とされているが、この回動は、トルク発生機構により発生されるトルクに抗してなされる。このトルク発生機構は、一対のカムからなるカム機構と、一方のカムを他方のカムに向けて付勢するバネなどの付勢手段と、を備えて構成され、第1部分1051と第2部分1052との回転位相に応じて一対のカムの係合状態が変化することにより、これらカムどうしの間に生じる摩擦力が変化し、所望の回転位相となった状態時において所要のトルクを発生させる。
【0009】
軸部材106は、筒状に形成され、その周面にはヒンジ機構の軸心方向に沿うスリット部1061が形成されている。更に、軸部材106の一端部には、軸受け部材107内に挿入される小径の被挿入部1062が形成されている。
【0010】
軸受け部材107は、筒状に形成され、その周面にはヒンジ機構の軸心方向に沿うスリット部1071が形成されている。更に、軸受け部材107の一端部には、軸部材106の被挿入部1062を軸受けする軸受け部1072が形成されている。
【0011】
更に、第1筐体側の上部ケース101の筒状部103にも、ヒンジ機構の軸心方向に沿うスリット部1031が形成されている。
【0012】
このようなヒンジ機構の組み付けは、以下のように行う。
【0013】
先ず、図11に示すように、ヒンジユニット105の第2部分1052を筒状部103の一端側より該筒状部103内に挿入し、第2部分1052を筒状部103に対して軸周りに回動不能とさせる。
【0014】
他方、軸受け部材107を筒状部103の他端側より該筒状部103内に挿入することにより該軸受け部材107を筒状部103に対して軸周りに回動不能とさせるとともに、軸受け部材107のスリット部1071と筒状部103のスリット部1031とを一致させた状態で、図11に示すように、フレキシブル基板108を軸受け部材107のスリット部1071に通し、更に、軸部材106のスリット部1061をフレキシブル基板108が通るように、該軸部材106の被挿入部1062を軸受け部材107の軸受け部1072内に挿入し、軸受けさせる。
【0015】
この状態で、軸部材106が外れないように注意しながら、第1筐体側の上部ケース101の一端部(ヒンジ機構側)を、第2筐体側の上部ケース102の一対の半筒状部104内に落とし込む。
【0016】
これにより、ヒンジユニット105の第1部分1051は、第2筐体側の上部ケース102の一方の半筒状部104内に収容され、該半筒状部104に対し軸周りに回動不能となる。また、軸部材106は、他方の半筒状部104内に収容され、該半筒状部104に対し軸周りに回動不能となる。
【0017】
よって、第1筐体側の上部ケース101と第2筐体側の上部ケース102とを相互に回動させると、軸部材106が軸受け部材107に軸受けされた状態で該軸受け部材107に対して相対的に軸周りに回動する一方で、ヒンジユニット105の第1部分1051は第2部分1052に対して相対的に軸周りに回動する。
【0018】
なお、第2筐体側の下部ケース(図示略)に形成された一対の半筒状部(図示略)と、第2筐体側の上部ケース102の一対の半筒状部104と、によりそれぞれ筒状部を成すようにこれら上下のケースを組み付けることにより、ヒンジユニット105及び軸部材106が脱落防止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、図10及び図11に示す従来技術の場合、以下に説明するように、組み立て作業性が悪く、生産コスト削減の観点から問題となっていた。
【0020】
先ず、組み立て作業時に、軸部材106の内部にフレキシブル基板108を通した状態で、軸部材106が外れないように押さえながら、第1筐体側の上部ケース102に組み込む必要があり、組み立て作業性が悪かった。
【0021】
また、第1筐体側の上部ケース101の筒状部103、軸受け部材107及び軸部材106にそれぞれ形成されたスリット部1031、1071、1061にフレキシブル基板108を縫うように通す必要があり、フレキシブル基板108の先端に搭載された電気部品(図示略)が邪魔になるなど、組み立て作業性が悪かった。
【0022】
更に、折り畳み式携帯電話機を開閉させる際のフレキシブル基板108へのストレスを低減させるなどの目的で、軸部材106を矢印Dの方向に90°回転させながら半筒状部104内に落し込む場合もあり、この場合にはより一層組み立て作業性が悪かった。
【0023】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、組み立て作業性を向上させることが可能なヒンジ機構、及び、このヒンジ機構を備える電子機器(例えば、携帯電話機など)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明のヒンジ機構は、第1部分と第2部分とを回動軸を中心として相互に回動可能に連結するヒンジ機構において、軸方向が前記回動軸に沿うように配置され、前記第1部分に対して前記回動軸周りに回動不能な第1筒状部と、前記第1筒状部と同一軸心上に配置され、前記第2部分に対して前記回動軸周りに回動不能な第2筒状部と、を備え、前記第1筒状部及び前記第2筒状部には、各々の内外を相互に連通させるスリット部が、前記回動軸方向に沿って、それぞれ形成され、前記第1部分と前記第2部分との相対的な回転位相を特定の回転位相に設定することにより、前記第1及び第2筒状部の双方のスリット部を略同一直線上に配置した状態で、これら両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記第1部分の内部と前記第2部分の内部とを相互に電気的に接続する電気的接続部材の一部を、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませることにより、該電気的接続部材を、前記第1及び第2筒状部の内部を通して、前記第1部分側から前記第2部分側に導くことが可能とされていることを特徴としている。
【0025】
本発明のヒンジ機構においては、前記第1筒状部は、前記第1部分とは別体に構成され、当該ヒンジ機構の組み立ての際に、該第1部分に取り付けられて、該第1部分に対して前記回動軸周りに回動不能とされるものである一方で、前記第2筒状部は、前記第2部分とは別体に構成され、当該ヒンジ機構の組み立ての際に、該第2部分に取り付けられて、該第2部分に対して前記回動軸周りに回動不能とされるものであることが好ましい。
【0026】
本発明のヒンジ機構においては、前記第1及び第2部分は、それぞれ第1及び第2ケースを備えて構成され、前記第1部分の前記第1ケースには、前記第1部分の前記第2ケースに形成された半筒状部との協働で筒状部を構成する半筒状部が形成されている一方で、前記第2部分の前記第1ケースには、前記第2部分の前記第2ケースに形成された半筒状部との協働で筒状部を構成する半筒状部が形成され、前記第1筒状部を前記第1部分の前記第1ケースの半筒状部に取り付ける一方で、前記第2筒状部を前記第2部分の前記第1ケースの半筒状部に取り付けた状態で、前記第1及び第2部分の前記第1ケースどうしの相対的な回転位相を前記特定の回転位相に設定することにより、前記第1及び第2筒状部の双方のスリット部を略同一直線上に配置し、これら両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記電気的接続部材の一部を、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませた後で、前記第1部分の前記第1及び第2ケースの両半筒状部の協働により筒状部を構成させることによって、該筒状部内に前記第1筒状部の少なくとも一部を収容する一方で、前記第2部分の前記第1及び第2ケースの両半筒状部の協働により筒状部を構成させることによって、該筒状部内に前記第2筒状部の少なくとも一部を収容したことが好ましい。
【0027】
本発明のヒンジ機構においては、前記第1及び第2筒状部のうちの一方は軸部であり、他方は該軸部を軸受けする軸受け部であることが好ましい。
【0028】
本発明のヒンジ機構においては、前記電気的接続部材は、フレキシブル基板であることを好ましい一例としている。
【0029】
この場合、前記フレキシブル基板の長手方向における略中央部には、螺旋状に巻回されたカール部が形成され、前記カール部を、前記両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませたことを好ましい一例としている。
【0030】
本発明のヒンジ機構においては、当該ヒンジ機構を組み立て完了後においては前記第1部分と前記第2部分との相対的な回転位相が前記特定の回転位相となってしまうことを阻止する回転阻止部を備えることが好ましい。
【0031】
本発明の電子機器は、ヒンジ機構と、前記第1部分と、前記第2部分と、を備えることを特徴としている。
【0032】
本発明の電子機器は、例えば、移動通信端末装置であることを好ましい一例としている。
【0033】
本発明の電子機器は、例えば、携帯電話機であることを好ましい一例としている。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1部分と第2部分との相対的な回転位相を特定の回転位相に設定することにより双方のスリット部を略同一直線上に配置した状態で、一連のスリット部を介して、電気的接続部材を第1及び第2筒状部内に容易に入り込ませて、該電気的接続部材を、第1及び第2筒状部の内部を通して、第1部分側から第2部分側に導くことができる。よって、ヒンジ機構の組み立て作業が向上する(容易となる)。
【0035】
なお、第1及び第2筒状部が、それぞれ第1及び第2部分とは別体に構成されている場合においては、これら第1及び第2筒状部をそれぞれ第1及び第2部分に取り付けた後、第1部分と第2部分との相対的な回転位相を特定の回転位相に設定することにより双方のスリット部を略同一直線上に配置した状態で、一連のスリット部を介して、電気的接続部材を第1及び第2筒状部内に容易に入り込ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る電子機器の適例としての折り畳み式の携帯電話機についての説明を行う。
【0037】
図1は本実施形態に係る携帯電話機100における主要な構成要素を示す分解斜視図である。
【0038】
本実施形態に係る携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機である。すなわち、携帯電話機100は、第1及び第2筐体1,2と、これら第1及び第2筐体を相互に回動自在に連結するヒンジ機構3と、を備えて構成され、該ヒンジ機構3を介して、該ヒンジ機構3の回動軸を中心として第1及び第2筐体1,2を相対的に回動させることによって、第1及び第2筐体1、2を相互に開いたり、あるいは、折り畳んで相互に閉じたりすることができるように構成されている。
【0039】
このうち第1筐体(第1部分)1は、それぞれ浅底の半筐体状に形成された上部ケース11及び下部ケース12の開口端どうしを合わせるようにして相互に組み付けることにより、ほぼ直方体形の薄い筐体状に形成される。
【0040】
同様に、第2筐体(第2部分)2も、それぞれ浅底の半筐体状に形成された上部ケース21及び下部ケース22の開口端どうしを合わせるようにして相互に組み付けることにより、ほぼ直方体形の薄い筐体状に形成される。
【0041】
第1筐体1は、例えば、表示装置(図示略)を内部に備え、この表示装置の表示画面(図示略)を、上部ケース11に形成された透明材からなる表示窓11Aを介して、外部より視認可能となっている。
【0042】
更に、第1筐体1を構成する上部ケース11には、第1筐体1内に配設されて受話部を構成するスピーカ(図示略)に連通する受話孔13が形成されているとともに、緩衝部材14が設けられている。この緩衝部材14は、携帯電話機100を折り畳んだ際に第2筐体2の前面(上部ケース21の前面)に当接して第2筐体2と第1筐体1との間の衝撃を緩和させるものである。
【0043】
他方、第2筐体2を構成する上部ケース21には、第2筐体2内に配設されて送話部を構成するマイク(図示略)に連通する送話孔23が形成されているとともに、操作部24を構成する各種の操作キーが設けられている。
【0044】
更に、例えば、第2筐体2の内部には、携帯電話機100の電源としての電池26が着脱自在に設けられている。なお、携帯電話機100は、電池26の脱落を防止する蓋部材(図示略)を備えている。この蓋部材は、電池26を第2筐体2内に配置した状態で、該電池26を覆うようにして下部ケース22の背面側に対し、着脱自在に取り付けられる。
【0045】
また、第1筐体1の内部には第1プリント基板15が設けられている一方で、第2筐体2の内部には第2プリント基板25が設けられている。
【0046】
これら第1及び第2プリント基板15,25が備える回路群により、携帯電話機100の制御回路やメモリなどが構成されている。
【0047】
また、第1及び第2プリント基板15,25は、例えば、フレキシブル基板(電気的接続部材)5を介して相互に電気的に接続され、該フレキシブル基板5を介して電気信号の授受を行うことにより、協働で制御動作を行うことが可能とされている。
【0048】
フレキシブル基板5は、ストリップ形状を成しており、例えば、その長手方向における中央部に、螺旋状に1回転だけ巻回させたカール部51を備えている。
【0049】
このフレキシブル基板5は、以下に詳細に説明するように、ヒンジ機構3の内部を通って第1筐体1の内部から第2筐体2の内部へと導かれている。
【0050】
図2は携帯電話機100におけるヒンジ機構3及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【0051】
なお、図2においては、上部ケース11、21の内面側(図1に示している面に対し裏面側)を示している。
【0052】
図2ないしは図1に示すように、ヒンジ機構3は、例えば、筒部31と、半筒部32と、半筒部33(図1)と、筒部34と、筒部35と、半筒部36と、半筒部37(図1)と、軸部材(第2筒状部)38と、軸受け部材(第1筒状部)39と、ヒンジユニット40と、を備えて構成されている。
【0053】
このうち筒部31及び半筒部32は、第1筐体1を構成する上部ケース11の第2筐体2側の端部において、相互に一体的に形成されている。
【0054】
第2半筒部33(図1)は、半筒部32との協働によって、筒部31に連なる筒状部を構成するものであり、筐体1を構成する下部ケース12の第2筐体2側の端部に形成されている。
【0055】
また、筒部34、筒部35及び半筒部36は、第2筐体2を構成する上部ケース21の第1筐体1側の端部に形成されている。
【0056】
筒部34と筒部35とは相互に離間して配置され、半筒部36は筒部35と相互に一体的に形成されている。
【0057】
半筒部37(図1)は、半筒部36との協働によって、筒部35に連なる筒状部を構成するものであり、第2筐体2を構成する下部ケース22の第1筐体1側の端部に形成されている。
【0058】
軸部材38は、筒状に形成され、筒部35から半筒部36及び半筒部37の協働により構成される筒状部にかけての部分に挿入される第1被挿入部381と、この第1被挿入部381よりも小径の筒状に形成され軸受け部材39内に挿入される第2被挿入部382と、第1被挿入部381よりも大径に形成され第3筒部35内には挿入されない頭部383と、第1被挿入部382の先端から第1被挿入部381における頭部383の近傍位置にかけて、ヒンジ機構3の軸心方向に沿って形成されたスリット部384と、を備えて構成されている。
【0059】
このスリット部384は、軸部材38の内部と外部とを相互に連通させている。
【0060】
軸受け部材39は、第1及び第2半筒部32,33により構成される筒状部内に配置される筒状の本体部391と、この本体部391よりも小径の筒状に形成され第1筒部31内に挿入される被挿入部392と、軸部材38の第2被挿入部382が挿入される軸受け部393と、この軸受け部393の先端から本体部391における被挿入部392の近傍位置にかけて、ヒンジ機構3の軸心方向に沿って形成されたスリット部394と、を備えて構成されている。
【0061】
このスリット部394は、軸受け部材39の内部と外部とを相互に連通させている。
【0062】
また、ヒンジユニット40は、第1筐体1と第2筐体2とを相対的に回動させる力に抗するトルクを発生させるトルク発生機構(図示略)を備えている。
【0063】
ヒンジユニット40は、頭部403と、第1被挿入部401と、第2被挿入部402と、を備えて構成され、第1被挿入部401と第2被挿入部402とは、ヒンジ機構3の軸周りにおいて相対的に回動可能とされているが、この回動は、トルク発生機構により発生されるトルクに抗してなされる。このトルク発生機構は、一対のカムからなるカム機構と、一方のカムを他方のカムに向けて付勢するバネなどの付勢手段と、を備えて構成され、第1被挿入部401と第2被挿入部402との回転位相に応じて一対のカムの係合状態が変化することにより、これらカムどうしの間に生じる摩擦力が変化し、所望の回転位相となった状態時において所要のトルクを発生させる。
【0064】
このようなヒンジユニット40の第2被挿入部402は、筒部34内に挿入され、例えば、該筒部34の内周面と第2被挿入部402の外周面に形成された係合機構(図示略)により、該筒部34に対してヒンジ機構3の軸周りに回動不能とされる。他方、第1被挿入部401は、第2被挿入部402よりも小径に形成され筒部31内に挿入されて、例えば、該筒部31の内周面と第1被挿入部401の外周面に形成された係合機構(図示略)により、該筒部31に対してヒンジ機構3の軸周りに回動不能とされる。
【0065】
ヒンジ機構3を構成する以上の構成要素のうち、筒部34と、筒部31と、半筒部32,33により構成される筒状部と、半筒部36,37により構成される筒状部と、筒部35とが、図2に示す矢印A方向においてこの順に同一軸心上に配置されることにより、ヒンジ筒が構成される。
【0066】
次に、ヒンジ機構3の組み立て手順について説明する。
【0067】
先ず、図2に示すように、軸受け部材39の本体部391を半筒部32内に配置するとともに、軸受け部材39の被挿入部392を筒部31内に挿入する。なお、この状態で、軸受け部材39の軸方向は軸部31及び半筒部32の軸方向に一致する。また、軸受け部材39の本体部391は、半筒部32に対し、例えば図示しない係合機構により係合することによって、該半筒部32に対し、ヒンジ機構3の軸心周りに回動不能となる。また、半筒部32の端面321と軸受け部材39の端面395とは、ほぼ面一となる。
【0068】
次に、第1筐体1を構成する上部ケース11と第2筐体2を構成する上部ケース21とを互いに位置決めする。すなわち、筒部31の端面311を筒部34の端面341に合わせるとともに、半筒部32の端面321を半筒部36の端面361に合わせる。
【0069】
次に、トルク発生機構を有するヒンジユニット40を図2の矢印A方向にヒンジ筒内に押し込み、該ヒンジユニット40の第1被挿入部401は筒部31内に挿入し、該第1被挿入部401を該筒部31に対してヒンジ機構3の軸周りに回動不能とさせる一方で、ヒンジユニット40の第2被挿入部402は筒部34内に挿入し、該第2被挿入部402を該筒部34に対してヒンジ機構3の軸周りに回動不能とさせる。
【0070】
他方、軸部材38を図2の矢印B方向にヒンジ筒内に押し込み、該軸部材38の第2被挿入部382を筒部35及び半筒部36を介して軸受け部材39の軸受け部393内に挿入するとともに、該軸部材38の第1被挿入部381を筒部35から半筒部36にかけての部分に挿入する。この状態で、軸部材38の軸方向は軸部35及び半筒部36の軸方向に一致する。また、軸部材38の第1被挿入部381は、筒部35に対し、例えば図示しない係合機構により係合することによって、該筒部35に対し、ヒンジ機構3の軸心周りに回動不能となる。
【0071】
図3は、この状態での軸部材38と軸受け部材39のスリット部384、394の位置関係を説明するための、ヒンジ機構3の軸心方向に対し直交する面で軸部材38を切断した断面図である。
【0072】
図3においては、スリット部384、394の位置関係が分かり易いように、第1筐体1側の上部ケース11と第2筐体2側の上部ケース21とを分離して記載しているが、実際には、軸部材38の軸心J1と軸受け部材39の軸心J2とが一致した状態となっている。
【0073】
次に、スリット部384,394を介してフレキシブル基板5をヒンジ筒内に挿入する。
【0074】
図4は、図3の状態に対して、第1筐体1側の上部ケース11と第2筐体2側の上部ケース21とをヒンジ機構3の軸周りにおいて相対的に回動させることにより、スリット部384とスリット部394とを同一直線状に位置させた状態を示す断面図である。
【0075】
フレキシブル基板5を挿入する際には、図4に示すように、第1筐体1側の上部ケース11と第2筐体2側の上部ケース21とをヒンジ機構3の軸周りにおいて相対的に回動させ、これら両上部ケース11,21の相対的な回転位相を特定の回転位相とさせることによって、スリット部384とスリット部394とを同一直線状に位置させる。
【0076】
図5は図4の状態での実際の位置関係を示す断面図であり、図6は図5の状態からフレキシブル基板5のカール部51をヒンジ筒内に押し込んだ状態を示す断面図である。
【0077】
図5に示すように、フレキシブル基板5のカール部51をスリット部384,394内に矢印C方向に軽く押し込むと、該カール部51が弾性変形してスリット部384,394により構成される一連のスリット部を通り抜け、図6に示すようにヒンジ筒内に入り込む。
【0078】
図7は再び上部ケース11,21を相互に平行に戻した状態を示す断面図である。
【0079】
ここで、カール部51は、スリット部384,394のうちの何れか一方のみを通過することはできないような幅を有している。
【0080】
従って、図7に示すように、再び上部ケース11,21を相互に平行な状態に戻すと、スリット部384,394どうしが同一直線上には位置しない状態となるため、フレキシブル基板5のカール部51はスリット部384,394を通過不能となる。よって、カール部51がヒンジ筒から飛び出てくることはない。
【0081】
次に、折り畳み式携帯電話機は最大の開角度(第1筐体1と第2筐体2との相対的な開角度)が160°程度のものが多いため160°に開いた状態を図8に示し、0°に閉じた状態を図9に示す。
【0082】
開角度が160°〜0°の何れの角度となっても、スリット部384,394が同一直線上に並ぶことはないため、これら両スリット部384,394を介してフレキシブル基板5が飛び出ることはないとともに、開閉動作中にスリット部384,394の端面同士が引っ掛かるような不具合の発生もない。
【0083】
また、図示は省略するが、第1筐体1の上部ケース11に第1筐体1の下部ケース12を組み付けることにより、該下部ケース12の半筒部33と上部ケース11の半筒部32との協働により筒状部が構成され、該筒状部内に軸受け部材39が収容される。これにより、軸受け部材39が完全にヒンジ筒内より脱落防止される。
【0084】
同様に、第2筐体2の上部ケース21に第2筐体2の下部ケース22を組み付けることにより、該下部ケース22の半筒部37と上部ケース21の半筒部36との協働により筒状部が構成され、該筒状部内に軸部材38の第1被挿入部381の一部が収容される。
【0085】
また、これらにより、フレキシブル基板5が半筒部33,37により覆われて、外部より視認不能となる。
【0086】
こうして、フレキシブル基板5は、ヒンジ機構3の内部(より具体的には、軸部材38及び軸受け部材39の内部)を通って第1筐体1の内部から第2筐体2の内部へと導かれる。
【0087】
なお、このように、ヒンジ機構3を組み立てた状態では、第1筐体1及び第2筐体2を最大開角度(例えば160°)以上に開こうとしても、第1筐体1及び第2筐体2の一部どうしが緩衝して、該最大開角度以上には開くことができないようになっている。すなわち、ヒンジ機構3の組み立て完了後においては、上部ケース11,21の相対的な開角度が図4乃至図6に示す角度にはならないようになっている。すなわち、ヒンジ機構3は、第1筐体1と第2筐体2との相対的な回転位相が図4乃至図6に示すような特定の回転位相となってしまうことを阻止する回転阻止部(図示略)を備えている。よって、ヒンジ機構3を組み立てる過程においてのみ、この特定の回転位相に設定可能となり、通常使用時ではこの特定の回転位相には設定することができないため、両スリット部384,394を介してフレキシブル基板5のカール部51が飛び出してしまうことを確実に防止できる。
【0088】
以上のような実施形態によれば、軸受け部材39を第1筐体1の上部ケース11の半筒部32に取り付ける一方で、軸部材38を第2筐体2の上部ケース22の筒部35及び半筒部36に取り付けた後、上部ケース11,22の相対的な回転位相を特定の回転位相に設定することにより軸部材38と軸受け部材39の双方のスリット部384,394を略同一直線上に配置した状態で、一連のスリット部を介して、フレキシブル基板5のカール部51を軸部材38及び軸受け部材39内に容易に入り込ませて、該フレキシブル基板5を、軸部材38及び軸受け部材39の内部を通して、第1筐体1側から第2筐体2側に導くことができる。
【0089】
よって、ヒンジ機構3の組み立て時の作業性を改善することができる。
【0090】
なお、上記の実施形態では、本発明に係る電子機器の好適な一例としての携帯電話機100を例示したが、本発明に係るヒンジ機構は、この例に限らず、例えば、携帯電話機以外の電子機器にも同様に適用可能である。
【0091】
また、本発明に係るヒンジ機構は、相互に回動可能な第1及び第2部分を備える電子機器であれば、折り畳み式以外の電子機器にも同様に適用可能である。
【0092】
また、上記の実施形態では、上部ケース11とは別体の軸受け部材39を使用する例を説明したが、本発明はこの例に限らず、軸受け部材39は、例えば上部ケース11と一体であっても良い。
【0093】
また、上記の実施形態では、第1筐体(表示部側)1のケース部材(上部ケース11及び下部ケース12)に筒部31、半筒部32、33が形成されている一方で、第2筐体(操作部側)2のケース部材(上部ケース21及び下部ケース22)に筒部34,35、半筒部36、37が形成されている例を説明したが、この例とは逆に、第1筐体(表示部側)1のケース部材(上部ケース11及び下部ケース12)には筒部34,35、半筒部36、37を形成する一方で、第2筐体(操作部側)2のケース部材(上部ケース21及び下部ケース22)には筒部31、半筒部32、33を形成しても良い。
【0094】
また、上記の実施形態では、フレキシブル基板5を軸部材38、軸受け部材39内に押し込む際に上部ケース11、21を回転させてこれらの相対的な開角度を調節する例を説明したが、回転させる必要をなくしても良い。すなわち、例えば、スリット部384,394を形成する位置を変更し、上部ケース11、21が相互に水平となっている状態でスリット部384,394が一直線上に並ぶようにすることにより、上部ケース11、21が相互に水平となっている状態でフレキシブル基板5を軸部材38、軸受け部材39内に押し込むことができる。
【0095】
また、上記の実施形態では、フレキシブル基板5がカール部51を有する例を説明したが、本発明はこの例に限らず、フレキシブル基板5は、カール部51を有していなくても良い。すなわち、フレキシブル基板5は、例えば、図10に示すクランク形状(フレキシブル基板108の形状)であっても良い。
【0096】
また、上記の実施形態では、第1プリント基板15と第2プリント基板25とを接続する電気的接続部材としてフレキシブル基板5を例示したが、この例に限らず、電気的接続部材は、例えば、電気ケーブルであっても良い。
【0097】
また、上記の実施形態では、ヒンジユニット40を用いる例を説明したが、ヒンジユニット40を用いないようにしても良い。例えば、板バネを軸部材38に押し当てることにより所望のトルクを発せさせるようにしても良い。
【0098】
また、上記の実施形態では、軸となる部材として軸部材38のみをヒンジ機構3の一端部に備える例を説明したが、該ヒンジ機構3の両端部に軸となる部品を備えるようにしても良い。すなわち、上記の実施形態において、ヒンジユニット40に代えて、軸部材(図示略)を備えるようにしても良い。
【0099】
また、上記の実施形態では、ヒンジユニット40と軸部材38を、それぞれヒンジ筒の両端部から嵌め込む例を説明したが、この例に限らず、例えば、図10及び図11に示したように、半筒部内に落とし込んで組み付ける構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の本実施形態に係る携帯電話機における主要な構成要素を示す分解斜視図である。
【図2】図1の携帯電話機におけるヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図3】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入する一連の手順を説明するための、ヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図4】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入する一連の手順を説明するための、ヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図5】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入する一連の手順を説明するための、ヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図6】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入した状態を示す、ヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図7】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入した状態を示す、ヒンジ機構及びその近傍を示す要部拡大の分解斜視図である。
【図8】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入した状態で、第1筐体(第1部分)と第2筐体(第2部分)の上部ケースどうしの角度を最大の開角度(例えば160°)にした状態を示す。
【図9】ヒンジ機構内にフレキシブル基板を挿入した状態で、第1筐体(第1部分)と第2筐体(第2部分)の上部ケースどうしの角度を最小の開角度(例えば0°)にした状態を示す。
【図10】従来の折り畳み式携帯電話機におけるヒンジ機構近傍を示す分解斜視図である。
【図11】図11のヒンジ機構の組み立て作業を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0101】
1 第1筐体(第1部分)
11 上部ケース(第1ケース)
32 半筒部(半筒状部)
12 下部ケース(第2ケース)
33 半筒部(半筒状部)
2 第2筐体(第2部分)
21 上部ケース(第1ケース)
36 半筒部(半筒状部)
22 下部ケース(第2ケース)
37 半筒部(半筒状部)
38 軸部材(第2筒状部、軸部)
384 スリット部
39 軸受け部材(第1筒状部、軸受け部)
394 スリット部
5 フレキシブル基板(電気的接続部材)
51 カール部
100 携帯電話機(電子機器、移動通信端末装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と第2部分とを回動軸を中心として相互に回動可能に連結するヒンジ機構において、
軸方向が前記回動軸に沿うように配置され、前記第1部分に対して前記回動軸周りに回動不能な第1筒状部と、
前記第1筒状部と同一軸心上に配置され、前記第2部分に対して前記回動軸周りに回動不能な第2筒状部と、
を備え、
前記第1筒状部及び前記第2筒状部には、各々の内外を相互に連通させるスリット部が、前記回動軸方向に沿って、それぞれ形成され、
前記第1部分と前記第2部分との相対的な回転位相を特定の回転位相に設定することにより、前記第1及び第2筒状部の双方のスリット部を略同一直線上に配置した状態で、これら両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記第1部分の内部と前記第2部分の内部とを相互に電気的に接続する電気的接続部材の一部を、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませることにより、該電気的接続部材を、前記第1及び第2筒状部の内部を通して、前記第1部分側から前記第2部分側に導くことが可能とされていることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項2】
前記第1筒状部は、前記第1部分とは別体に構成され、当該ヒンジ機構の組み立ての際に、該第1部分に取り付けられて、該第1部分に対して前記回動軸周りに回動不能とされるものである一方で、
前記第2筒状部は、前記第2部分とは別体に構成され、当該ヒンジ機構の組み立ての際に、該第2部分に取り付けられて、該第2部分に対して前記回動軸周りに回動不能とされるものであることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記第1及び第2部分は、それぞれ第1及び第2ケースを備えて構成され、
前記第1部分の前記第1ケースには、前記第1部分の前記第2ケースに形成された半筒状部との協働で筒状部を構成する半筒状部が形成されている一方で、
前記第2部分の前記第1ケースには、前記第2部分の前記第2ケースに形成された半筒状部との協働で筒状部を構成する半筒状部が形成され、
前記第1筒状部を前記第1部分の前記第1ケースの半筒状部に取り付ける一方で、前記第2筒状部を前記第2部分の前記第1ケースの半筒状部に取り付けた状態で、前記第1及び第2部分の前記第1ケースどうしの相対的な回転位相を前記特定の回転位相に設定することにより、前記第1及び第2筒状部の双方のスリット部を略同一直線上に配置し、
これら両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記電気的接続部材の一部を、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませた後で、
前記第1部分の前記第1及び第2ケースの両半筒状部の協働により筒状部を構成させることによって、該筒状部内に前記第1筒状部の少なくとも一部を収容する一方で、
前記第2部分の前記第1及び第2ケースの両半筒状部の協働により筒状部を構成させることによって、該筒状部内に前記第2筒状部の少なくとも一部を収容したことを特徴とする請求項2に記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記第1及び第2筒状部のうちの一方は軸部であり、他方は該軸部を軸受けする軸受け部であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のヒンジ機構。
【請求項5】
前記電気的接続部材は、フレキシブル基板であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のヒンジ機構。
【請求項6】
前記フレキシブル基板の長手方向における略中央部には、螺旋状に巻回されたカール部が形成され、
前記カール部を、前記両スリット部により構成される一連のスリット部を介して、前記第1及び第2筒状部内に入り込ませたことを特徴とする請求項5に記載のヒンジ機構。
【請求項7】
当該ヒンジ機構を組み立て完了後においては前記第1部分と前記第2部分との相対的な回転位相が前記特定の回転位相となってしまうことを阻止する回転阻止部を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のヒンジ機構。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のヒンジ機構と、前記第1部分と、前記第2部分と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
当該電子機器は、移動通信端末装置であることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
当該電子機器は、携帯電話機であることを特徴とする請求項9に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−153045(P2006−153045A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340629(P2004−340629)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】