ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器
【課題】極めて商品価値の高い画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を提供する。
【解決手段】第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、第一部材若しくは第二部材に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を第二部材若しくは第一部材に設けて、第一部材と第二部材を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成したものである。
【解決手段】第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、第一部材若しくは第二部材に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を第二部材若しくは第一部材に設けて、第一部材と第二部材を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器の枢着部に用いられるヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、操作部を設けた本体部にこの操作部の操作や受信信号などによって表示されるディスプレイ部を設けた重合部を枢着連結し、重合部を重合閉塞状態から開放回動して本体部の操作部を開放露出すると共に、重合部の伏面のディスプレイ部を開放露出する携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器において、この枢着連結部に用いられるヒンジ装置は、例えば一方の部材に取り付ける連結部に軸受部を設け、これと枢着する他方の部材に取り付ける連結部に軸部を設け、この軸受部に軸部が軸支されるように連結する。
【0003】
この場合、この開閉回動がぶらついたりせず、また例えば手で開閉回動する際に手を放した回動位置で止まるフリーストップを実現するために、回動には支障ない程度において重合部の自重に対抗する大きな回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じるように構成したい場合がある。
【0004】
このような電子機器におけるヒンジ装置だけでなく、フリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置として機能させたい場合など他のヒンジ装置においても同様の要請がある。
【0005】
そのため、一方の部材側に設ける軸受部と他方の部材側に設ける軸部との回動に、十分な回動トルクが生じるように、例えば軸受部側を固定側とし、軸部側を相対回動側として説明すると、軸受部側に設ける固定部に対して軸部と共に回動する回動摩擦部を重合状態に設けて固定部に対して回動摩擦部が重合状態で回動することで回動トルクが生じるように構成する。
【0006】
この固定部に対して重合する回動摩擦部の回動トルクを大きくするためには、少なくとも一方をスライド自在に設けてこれを軸部や軸受部に設けたバネで重合付勢し、この重合付勢力を大きくすることで回動トルクを増大させる方法が考えられる。
【0007】
しかし、ある程度の増大は期待できるもののやはり限界があるだけでなく、このバネ力を単に大きくしこのバネ力のみにたよってしまうとバネがへたり易い故に使用を続けると回動トルクが小さくなってしまう場合があり耐久性に劣る場合がある。
【0008】
また、固定部とこれに重合して相対回動する回動摩擦部のいずれかの表面あるいは双方の表面に凹凸やあらし加工を施して回動トルクを増大させる手法をとることも考えられるが、スムーズに回動しつつも十分な回動トルクを生じるようにするにはやはり限界があるし、また前述のバネの場合と同様、使用するにつれて徐々に表面は滑らかとなるおそれがあり同じように耐久性に劣る。
【0009】
また、本出願人が提案する特開2008−45677号のように、軸受部となる固定板と、軸部に設けられ固定板に重合状態で相対回動する回動摩擦板とを複数組設けて積層状態に重合配設し、固定板と回動摩擦板との回動摩擦の総和を大きくして回動トルクを増大させる構造のものもある。
【0010】
以上のように、フリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置としての機能を具備するヒンジ装置が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−45677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人は、例えば本体部と重合部との回動に際して回動トルクが生じるようにしたダンパ装置としての機能を具備するヒンジ装置について更なる研究開発を進め、その結果、従来にないアイデアから秀れた作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設けて、前記第一部材1と前記第二部材2を回動させて前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成し、前記第一摩擦部材3若しくは前記第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が摺動する被摺動部7を前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3に設け、前記被摺動部7を、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定して、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動に際し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、前記摺動凸部6が摺動する前記被摺動部7の前記被摺動面7a,7bが切り替わることで前記摺動凸部6と前記被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、前記被摺動部7は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の回動方向に並設する複数の被摺動面7a,7bを有し、この隣接する被摺動面7a,7b同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されていることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、前記被摺動面7a,7b夫々は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3に突設したことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、前記被摺動部7は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の回動方向に長さを有する凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状であることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0018】
また、前記摺動凸部6は、前記第一摩擦部材3若しくは前記第二摩擦部材4に回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられるか若しくは複数並設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0019】
また、前記第一部材1と前記第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲P1で前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とが相対回動する際、前記摺動凸部6と前記被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L1に比し、前記一の回動範囲P1から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲P2で前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とが相対回動する際、前記摺動凸部6と前記被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L2が長くなるように設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0020】
また、本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、前記本体部に重合する重合部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部と重合部とを前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得る構成の為、例えば強い回動トルクを得たい場合やそうでない場合など必要な回動トルクを調整することが可能であり、しかも、この回動トルクを可変する構成として、被摺動部を、第二摩擦部材若しくは第一摩擦部材の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状に設定することで達成しており、即ち、被摺動部の形状設定という簡易構成で回動トルクを可変し得る構成であり、しかも、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動に際し、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて、摺動凸部が摺動する被摺動部の被摺動面が切り替わることで摺動凸部と被摺動部との当接する位置の回動中心からの距離が可変するという、従来にない発想から回動位置に応じた回動トルクの変化を求める構造であり、前述した回動トルクの調整が確実に達成し得る構成で、製作容易で量産性に秀れた画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0022】
また、請求項2,3,4,5記載の発明においては、より具体的な構成から第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動トルクが可変する構造を一層簡易に実現できる極めて秀れたヒンジ装置となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、前記作用・効果を発揮する本発明をより有効に利用できる一層実用性に秀れたヒンジ装置となる。
【0024】
また、請求項7記載の発明においては、前記作用・効果を発揮するヒンジ装置を用いた携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例の使用状態説明図である。
【図2】本実施例を示す斜視図である。
【図3】本実施例を示す分解斜視図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図5】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図6】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
【図7】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
【図8】本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【図9】本実施例の動作説明図である。
【図10】回動摩擦抵抗(回動トルク)を求める計算式である。
【図11】第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じた回動摩擦抵抗(回動トルク)の変化を表した表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを相対回動させると、この圧接状態で重合される第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間には回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0028】
具体的には、第一摩擦部材3若しくは第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3に設けた被摺動部7を摺動することで回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0029】
本発明は、被摺動部7を、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定しており、この構成から、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。
【0030】
即ち、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが圧接状態で相対回動する際に生じる回動摩擦抵抗(回動トルク)は図10の式により定義されるが、本発明は、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、この摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が可変する構成であり、よって、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。
【0031】
この構成を第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置に適用せしめた場合、例えば第一部材1と第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させるような強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が要求されない場面においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が短くなるように設定し、一方、例えば第一部材1と第二部材2とを開放させてフリーストップを実現させるために強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が得たい場面においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が長くなるように設定するなど、製品の特徴に対応して回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得ることができる。
【実施例】
【0032】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、例えばノート型パソコンの操作部11(キーボード)を設けた本体部1を第一部材1とし、ディスプレイ部12を伏面に設けた重合部2を第二部材2とし、本体部1に対して重合部2を開閉回動して重合閉塞位置から開放位置まで起伏回動自在に重合連結するヒンジ装置Hに適用したもので、所望の最適な回動摩擦抵抗(回動トルク)が得られるヒンジ装置Hを簡易な構成でコスト安に実現可能な構成としている。
【0034】
また、本実施例では、第一部材1若しくは第二部材2に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を第二部材2若しくは第一部材1に設けて、第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成している。
【0035】
具体的には本実施例では、軸受部3(固定板部)を第一部材1に取り付ける第一連結部8に設け、この軸受部3に軸支する軸部10を第二部材2に取り付ける第二連結部9に設けている。尚、第一連結部8及び第二連結部9はいずれも金属製であり、第二連結部9は重合連結する一対の折曲板部材9A・9Aで構成されている。
【0036】
本実施例では、この第一連結部8(軸受部3)を第一摩擦部材3としている。尚、第一摩擦部材3は、後述するもう一つの第一摩擦部材3のように第一連結部8とは別部材で構成しても良い。
【0037】
また、この軸受部3の表裏面に重合配設する複数(一対)の金属製の回動摩擦板4(第二摩擦部材4)を前記軸部10に回り止め状態にしてスライド自在に設けて、前記軸部10と共に前記第二摩擦部材4が軸受部3に対して圧接状態で相対回動することにより回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じるように構成している。
【0038】
また、第一摩擦部材3に対して第二摩擦部材4を皿バネを積層して成る付勢体5の付勢に抗して離反方向に相対移動自在となるように設けており、第一摩擦部材3に第二摩擦部材4は圧接状態で重合配設されている。
【0039】
更に詳述すると、軸受部3を設けた部材、即ち本実施例では第一連結部8に、第一摩擦部材3を設けており、更に、第一連結部8には、軸受部3の表面に重合配設する第二摩擦部材4をサンドイッチ状態で挟み込み重合する金属板製の第一摩擦部材3が設けられている。
【0040】
一方、第二摩擦部材4は軸部10に回り止め状態にして軸方向にスライド自在に設けている。具体的には、第二連結部9に軸部10を突設し、この軸部10の外形状を角形として回り止め外形状部10aを設け、この回り止め外形状部10aに回り止め状態に貫通する角孔の回り止め孔4aを有する形状に前記第二摩擦部材4を設定している。
【0041】
本実施例では、第一連結部8の第一摩擦部材3の表裏に重合配設する第二摩擦部材4を2枚設け、この第二摩擦部材4は同一板形状としている。
【0042】
また、本実施例では、軸部10の先端部に先端支承部13として先端ワッシャ13を設け、基端部にも基端支承部10bを設け、この先端支承部13と前記軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間や基端支承部10bと軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間に、前記軸部10に対してスライド自在な第二摩擦部材4とを配設し、また、先端支承部13と前記軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間に他の第一摩擦部材3を配設し、これらすべてを第二動摩擦部材4同様に軸部10に挿通して並設した複数枚の皿バネ5Aを付勢体5として設けて、積層した第一摩擦部材3と第二摩擦部材4をすべて一挙に基端支承部10bや軸受部3に押圧して重合付勢するように構成している。
【0043】
また、本実施例では、第一摩擦部材3若しくは第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が摺動する被摺動部7を第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3に設け、被摺動部7を、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定して、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成している。
【0044】
具体的には、被摺動部7は、第二摩擦部材4の回動方向に並設する複数の被摺動面7a,7bを有し、この隣接する被摺動面7a,7b同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されている。
【0045】
被摺動面7aは、第二摩擦部材4の表面にして孔4aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられ、被摺動面7bは、第二摩擦部材4の表面にして孔4aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられており、第二摩擦部材4の回動中心からの距離は、被摺動面7aに比し被摺動面7bの方が長い距離に設定されている。
【0046】
また、この被摺動面7a,7b夫々は、第二摩擦部材4に突設したものであり、摺動凸部6と被摺動部7とは凸同士の突き合わせ圧接状態に重合されている。
【0047】
尚、被摺動部7は、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の回動方向に長さを有する一つの凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状としても良い。つまり、図示した被摺動面7a,7b同士を連続させた形状としても良い。
【0048】
また、一方、摺動凸部6は、第一摩擦部材3の表面にして孔3aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられており、この各摺動凸部6は、回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられている。
【0049】
尚、摺動凸部6は、複数並設される構成でも良い。
【0050】
本実施例では、第一部材1(本体部)と第二部材2(重合部)とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲P1で第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが相対回動する際、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L1に比し、一の回動範囲P1から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲P2で第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが相対回動する際、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L2が長くなるように設定されている。
【0051】
前述した一の回動範囲P1とは、例えば第一部材1(第一連結部8)に設けたカム部と第二部材2(第二連結部9)に設けたカム係合部とが凹凸係合する際、第一部材1と第二部材2とを閉塞付勢する回動付勢力(吸い込み力)が生じる範囲であり、他の回動範囲P2とは、例えば前記カム係合部から前記カム部が係脱した部位であり、第一部材1と第二部材2を開放状態として手を放してもその状態を維持するフリーストップ状態が得られる範囲である。
【0052】
以上の構成から成る本実施例に係るヒンジ装置Hは、図9に図示したように第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを相対回動させると、この圧接状態で重合される第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間には回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0053】
具体的には、第一摩擦部材3に設けた一対の摺動凸部6が、第二摩擦部材4に設けた被摺動部7(被摺動面7a,7b)を摺動することで回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0054】
被摺動部7を、第二摩擦部材4の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定しており、具体的には、この被摺動面7a,7b夫々は第二摩擦部材4の被摺動部形成面に突設した凸条の頂面であり、第二摩擦部材4の回動中心からの距離L1が短い被摺動面7aは正面視形状が直線状に形成され、第二摩擦部材4の回動中心からの距離L2が長い被摺動面7bは正面視形状が円弧状に形成されている。
【0055】
この構成から、図8に図示したように第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。また、図11は被摺動面7aから被摺動面7bへの切り替わりによる回動摩擦抵抗(回動トルク)の変化を表した解析による理論Curveである。
【0056】
即ち、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが圧接状態で相対回動する際に生じる回動摩擦抵抗(回動トルク)は図10の式により定義されるが、本実施例は、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、この摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が可変する構成であり、よって、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。尚、本明細書で言う摺動半径とは、部材と部材が圧接状態で相対回動する際に当接する位置の回動中心からの距離で表される。
【0057】
この構成を第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置に適用せしめた場合、例えば第一部材1と第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させるような強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が要求されない場面(第一部材1と第二部材2を閉じ方向に付勢する吸い込み力が生じる場面)においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が短くなるように設定し、一方、例えば第一部材1と第二部材2とを開放させて強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が得たい場面(第一部材1と第二部材2とを所定回角度の開放状態とした際に手を放しても開閉回動せずふらつかないフリーストップ状態を実現させる場面)においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が長くなるように設定するなど、製品の特徴に対応して回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得ることができる。
【0058】
また、被摺動面7a,7bの表面を荒らし処理して回動トルクを更に高めても良い。
【0059】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0060】
1 第一部材
2 第二部材
3 第一摩擦部材
4 第二摩擦部材
6 摺動凸部
7 被摺動部
7a 被摺動面
7b 被摺動面
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器の枢着部に用いられるヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、操作部を設けた本体部にこの操作部の操作や受信信号などによって表示されるディスプレイ部を設けた重合部を枢着連結し、重合部を重合閉塞状態から開放回動して本体部の操作部を開放露出すると共に、重合部の伏面のディスプレイ部を開放露出する携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器において、この枢着連結部に用いられるヒンジ装置は、例えば一方の部材に取り付ける連結部に軸受部を設け、これと枢着する他方の部材に取り付ける連結部に軸部を設け、この軸受部に軸部が軸支されるように連結する。
【0003】
この場合、この開閉回動がぶらついたりせず、また例えば手で開閉回動する際に手を放した回動位置で止まるフリーストップを実現するために、回動には支障ない程度において重合部の自重に対抗する大きな回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じるように構成したい場合がある。
【0004】
このような電子機器におけるヒンジ装置だけでなく、フリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置として機能させたい場合など他のヒンジ装置においても同様の要請がある。
【0005】
そのため、一方の部材側に設ける軸受部と他方の部材側に設ける軸部との回動に、十分な回動トルクが生じるように、例えば軸受部側を固定側とし、軸部側を相対回動側として説明すると、軸受部側に設ける固定部に対して軸部と共に回動する回動摩擦部を重合状態に設けて固定部に対して回動摩擦部が重合状態で回動することで回動トルクが生じるように構成する。
【0006】
この固定部に対して重合する回動摩擦部の回動トルクを大きくするためには、少なくとも一方をスライド自在に設けてこれを軸部や軸受部に設けたバネで重合付勢し、この重合付勢力を大きくすることで回動トルクを増大させる方法が考えられる。
【0007】
しかし、ある程度の増大は期待できるもののやはり限界があるだけでなく、このバネ力を単に大きくしこのバネ力のみにたよってしまうとバネがへたり易い故に使用を続けると回動トルクが小さくなってしまう場合があり耐久性に劣る場合がある。
【0008】
また、固定部とこれに重合して相対回動する回動摩擦部のいずれかの表面あるいは双方の表面に凹凸やあらし加工を施して回動トルクを増大させる手法をとることも考えられるが、スムーズに回動しつつも十分な回動トルクを生じるようにするにはやはり限界があるし、また前述のバネの場合と同様、使用するにつれて徐々に表面は滑らかとなるおそれがあり同じように耐久性に劣る。
【0009】
また、本出願人が提案する特開2008−45677号のように、軸受部となる固定板と、軸部に設けられ固定板に重合状態で相対回動する回動摩擦板とを複数組設けて積層状態に重合配設し、固定板と回動摩擦板との回動摩擦の総和を大きくして回動トルクを増大させる構造のものもある。
【0010】
以上のように、フリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置としての機能を具備するヒンジ装置が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−45677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人は、例えば本体部と重合部との回動に際して回動トルクが生じるようにしたダンパ装置としての機能を具備するヒンジ装置について更なる研究開発を進め、その結果、従来にないアイデアから秀れた作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設けて、前記第一部材1と前記第二部材2を回動させて前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成し、前記第一摩擦部材3若しくは前記第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が摺動する被摺動部7を前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3に設け、前記被摺動部7を、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定して、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動に際し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、前記摺動凸部6が摺動する前記被摺動部7の前記被摺動面7a,7bが切り替わることで前記摺動凸部6と前記被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、前記被摺動部7は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の回動方向に並設する複数の被摺動面7a,7bを有し、この隣接する被摺動面7a,7b同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されていることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、前記被摺動面7a,7b夫々は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3に突設したことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、前記被摺動部7は、前記第二摩擦部材4若しくは前記第一摩擦部材3の回動方向に長さを有する凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状であることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0018】
また、前記摺動凸部6は、前記第一摩擦部材3若しくは前記第二摩擦部材4に回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられるか若しくは複数並設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0019】
また、前記第一部材1と前記第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲P1で前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とが相対回動する際、前記摺動凸部6と前記被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L1に比し、前記一の回動範囲P1から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲P2で前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とが相対回動する際、前記摺動凸部6と前記被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L2が長くなるように設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0020】
また、本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、前記本体部に重合する重合部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部と重合部とを前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得る構成の為、例えば強い回動トルクを得たい場合やそうでない場合など必要な回動トルクを調整することが可能であり、しかも、この回動トルクを可変する構成として、被摺動部を、第二摩擦部材若しくは第一摩擦部材の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状に設定することで達成しており、即ち、被摺動部の形状設定という簡易構成で回動トルクを可変し得る構成であり、しかも、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動に際し、第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて、摺動凸部が摺動する被摺動部の被摺動面が切り替わることで摺動凸部と被摺動部との当接する位置の回動中心からの距離が可変するという、従来にない発想から回動位置に応じた回動トルクの変化を求める構造であり、前述した回動トルクの調整が確実に達成し得る構成で、製作容易で量産性に秀れた画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0022】
また、請求項2,3,4,5記載の発明においては、より具体的な構成から第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動トルクが可変する構造を一層簡易に実現できる極めて秀れたヒンジ装置となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、前記作用・効果を発揮する本発明をより有効に利用できる一層実用性に秀れたヒンジ装置となる。
【0024】
また、請求項7記載の発明においては、前記作用・効果を発揮するヒンジ装置を用いた携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例の使用状態説明図である。
【図2】本実施例を示す斜視図である。
【図3】本実施例を示す分解斜視図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図5】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図6】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
【図7】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
【図8】本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【図9】本実施例の動作説明図である。
【図10】回動摩擦抵抗(回動トルク)を求める計算式である。
【図11】第一摩擦部材と第二摩擦部材との相対回動位置に応じた回動摩擦抵抗(回動トルク)の変化を表した表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを相対回動させると、この圧接状態で重合される第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間には回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0028】
具体的には、第一摩擦部材3若しくは第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3に設けた被摺動部7を摺動することで回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0029】
本発明は、被摺動部7を、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定しており、この構成から、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。
【0030】
即ち、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが圧接状態で相対回動する際に生じる回動摩擦抵抗(回動トルク)は図10の式により定義されるが、本発明は、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、この摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が可変する構成であり、よって、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。
【0031】
この構成を第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置に適用せしめた場合、例えば第一部材1と第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させるような強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が要求されない場面においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が短くなるように設定し、一方、例えば第一部材1と第二部材2とを開放させてフリーストップを実現させるために強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が得たい場面においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が長くなるように設定するなど、製品の特徴に対応して回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得ることができる。
【実施例】
【0032】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、例えばノート型パソコンの操作部11(キーボード)を設けた本体部1を第一部材1とし、ディスプレイ部12を伏面に設けた重合部2を第二部材2とし、本体部1に対して重合部2を開閉回動して重合閉塞位置から開放位置まで起伏回動自在に重合連結するヒンジ装置Hに適用したもので、所望の最適な回動摩擦抵抗(回動トルク)が得られるヒンジ装置Hを簡易な構成でコスト安に実現可能な構成としている。
【0034】
また、本実施例では、第一部材1若しくは第二部材2に設けた第一摩擦部材3に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材4を第二部材2若しくは第一部材1に設けて、第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成している。
【0035】
具体的には本実施例では、軸受部3(固定板部)を第一部材1に取り付ける第一連結部8に設け、この軸受部3に軸支する軸部10を第二部材2に取り付ける第二連結部9に設けている。尚、第一連結部8及び第二連結部9はいずれも金属製であり、第二連結部9は重合連結する一対の折曲板部材9A・9Aで構成されている。
【0036】
本実施例では、この第一連結部8(軸受部3)を第一摩擦部材3としている。尚、第一摩擦部材3は、後述するもう一つの第一摩擦部材3のように第一連結部8とは別部材で構成しても良い。
【0037】
また、この軸受部3の表裏面に重合配設する複数(一対)の金属製の回動摩擦板4(第二摩擦部材4)を前記軸部10に回り止め状態にしてスライド自在に設けて、前記軸部10と共に前記第二摩擦部材4が軸受部3に対して圧接状態で相対回動することにより回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じるように構成している。
【0038】
また、第一摩擦部材3に対して第二摩擦部材4を皿バネを積層して成る付勢体5の付勢に抗して離反方向に相対移動自在となるように設けており、第一摩擦部材3に第二摩擦部材4は圧接状態で重合配設されている。
【0039】
更に詳述すると、軸受部3を設けた部材、即ち本実施例では第一連結部8に、第一摩擦部材3を設けており、更に、第一連結部8には、軸受部3の表面に重合配設する第二摩擦部材4をサンドイッチ状態で挟み込み重合する金属板製の第一摩擦部材3が設けられている。
【0040】
一方、第二摩擦部材4は軸部10に回り止め状態にして軸方向にスライド自在に設けている。具体的には、第二連結部9に軸部10を突設し、この軸部10の外形状を角形として回り止め外形状部10aを設け、この回り止め外形状部10aに回り止め状態に貫通する角孔の回り止め孔4aを有する形状に前記第二摩擦部材4を設定している。
【0041】
本実施例では、第一連結部8の第一摩擦部材3の表裏に重合配設する第二摩擦部材4を2枚設け、この第二摩擦部材4は同一板形状としている。
【0042】
また、本実施例では、軸部10の先端部に先端支承部13として先端ワッシャ13を設け、基端部にも基端支承部10bを設け、この先端支承部13と前記軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間や基端支承部10bと軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間に、前記軸部10に対してスライド自在な第二摩擦部材4とを配設し、また、先端支承部13と前記軸受部3(一の第一摩擦部材3)との間に他の第一摩擦部材3を配設し、これらすべてを第二動摩擦部材4同様に軸部10に挿通して並設した複数枚の皿バネ5Aを付勢体5として設けて、積層した第一摩擦部材3と第二摩擦部材4をすべて一挙に基端支承部10bや軸受部3に押圧して重合付勢するように構成している。
【0043】
また、本実施例では、第一摩擦部材3若しくは第二摩擦部材4に設けた摺動凸部6が摺動する被摺動部7を第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3に設け、被摺動部7を、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定して、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成している。
【0044】
具体的には、被摺動部7は、第二摩擦部材4の回動方向に並設する複数の被摺動面7a,7bを有し、この隣接する被摺動面7a,7b同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されている。
【0045】
被摺動面7aは、第二摩擦部材4の表面にして孔4aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられ、被摺動面7bは、第二摩擦部材4の表面にして孔4aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられており、第二摩擦部材4の回動中心からの距離は、被摺動面7aに比し被摺動面7bの方が長い距離に設定されている。
【0046】
また、この被摺動面7a,7b夫々は、第二摩擦部材4に突設したものであり、摺動凸部6と被摺動部7とは凸同士の突き合わせ圧接状態に重合されている。
【0047】
尚、被摺動部7は、第二摩擦部材4若しくは第一摩擦部材3の回動方向に長さを有する一つの凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状としても良い。つまり、図示した被摺動面7a,7b同士を連続させた形状としても良い。
【0048】
また、一方、摺動凸部6は、第一摩擦部材3の表面にして孔3aを間に配した対向位置に複数(一対)設けられており、この各摺動凸部6は、回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられている。
【0049】
尚、摺動凸部6は、複数並設される構成でも良い。
【0050】
本実施例では、第一部材1(本体部)と第二部材2(重合部)とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲P1で第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが相対回動する際、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L1に比し、一の回動範囲P1から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲P2で第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが相対回動する際、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離L2が長くなるように設定されている。
【0051】
前述した一の回動範囲P1とは、例えば第一部材1(第一連結部8)に設けたカム部と第二部材2(第二連結部9)に設けたカム係合部とが凹凸係合する際、第一部材1と第二部材2とを閉塞付勢する回動付勢力(吸い込み力)が生じる範囲であり、他の回動範囲P2とは、例えば前記カム係合部から前記カム部が係脱した部位であり、第一部材1と第二部材2を開放状態として手を放してもその状態を維持するフリーストップ状態が得られる範囲である。
【0052】
以上の構成から成る本実施例に係るヒンジ装置Hは、図9に図示したように第一部材1と第二部材2を回動させて第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを相対回動させると、この圧接状態で重合される第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間には回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0053】
具体的には、第一摩擦部材3に設けた一対の摺動凸部6が、第二摩擦部材4に設けた被摺動部7(被摺動面7a,7b)を摺動することで回動摩擦抵抗(回動トルク)が生じる。
【0054】
被摺動部7を、第二摩擦部材4の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面7a,7bを有する形状に設定しており、具体的には、この被摺動面7a,7b夫々は第二摩擦部材4の被摺動部形成面に突設した凸条の頂面であり、第二摩擦部材4の回動中心からの距離L1が短い被摺動面7aは正面視形状が直線状に形成され、第二摩擦部材4の回動中心からの距離L2が長い被摺動面7bは正面視形状が円弧状に形成されている。
【0055】
この構成から、図8に図示したように第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動に際し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、摺動凸部6が摺動する被摺動部7の被摺動面7a,7bが切り替わることで摺動凸部6と被摺動部7との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。また、図11は被摺動面7aから被摺動面7bへの切り替わりによる回動摩擦抵抗(回動トルク)の変化を表した解析による理論Curveである。
【0056】
即ち、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とが圧接状態で相対回動する際に生じる回動摩擦抵抗(回動トルク)は図10の式により定義されるが、本実施例は、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて、この摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が可変する構成であり、よって、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗(回動トルク)が可変する。尚、本明細書で言う摺動半径とは、部材と部材が圧接状態で相対回動する際に当接する位置の回動中心からの距離で表される。
【0057】
この構成を第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置に適用せしめた場合、例えば第一部材1と第二部材2とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させるような強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が要求されない場面(第一部材1と第二部材2を閉じ方向に付勢する吸い込み力が生じる場面)においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が短くなるように設定し、一方、例えば第一部材1と第二部材2とを開放させて強い回動摩擦抵抗(回動トルク)が得たい場面(第一部材1と第二部材2とを所定回角度の開放状態とした際に手を放しても開閉回動せずふらつかないフリーストップ状態を実現させる場面)においては、摺動凸部6と被摺動部7とが当接する位置の回動中心からの距離(摺動半径)が長くなるように設定するなど、製品の特徴に対応して回動摩擦抵抗(回動トルク)を可変し得ることができる。
【0058】
また、被摺動面7a,7bの表面を荒らし処理して回動トルクを更に高めても良い。
【0059】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0060】
1 第一部材
2 第二部材
3 第一摩擦部材
4 第二摩擦部材
6 摺動凸部
7 被摺動部
7a 被摺動面
7b 被摺動面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材若しくは前記第二部材に設けた第一摩擦部材に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材を前記第二部材若しくは前記第一部材に設けて、前記第一部材と前記第二部材を回動させて前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成し、前記第一摩擦部材若しくは前記第二摩擦部材に設けた摺動凸部が摺動する被摺動部を前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材に設け、前記被摺動部を、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状に設定して、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動に際し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動位置に応じて、前記摺動凸部が摺動する前記被摺動部の前記被摺動面が切り替わることで前記摺動凸部と前記被摺動部との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記被摺動部は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の回動方向に並設する複数の被摺動面を有し、この隣接する被摺動面同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されていることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記被摺動面夫々は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材に突設したことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記被摺動部は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の回動方向に長さを有する凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状であることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記摺動凸部は、前記第一摩擦部材若しくは前記第二摩擦部材に回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられるか若しくは複数並設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記第一部材と前記第二部材とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲で前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とが相対回動する際、前記摺動凸部と前記被摺動部とが当接する位置の回動中心からの距離に比し、前記一の回動範囲から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲で前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とが相対回動する際、前記摺動凸部と前記被摺動部とが当接する位置の回動中心からの距離が長くなるように設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、前記本体部に重合する重合部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と重合部とを前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材若しくは前記第二部材に設けた第一摩擦部材に圧接状態で重合配設される第二摩擦部材を前記第二部材若しくは前記第一部材に設けて、前記第一部材と前記第二部材を回動させて前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材を相対回動することにより回動摩擦抵抗が生じるように構成し、前記第一摩擦部材若しくは前記第二摩擦部材に設けた摺動凸部が摺動する被摺動部を前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材に設け、前記被摺動部を、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状に設定して、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動に際し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動位置に応じて、前記摺動凸部が摺動する前記被摺動部の前記被摺動面が切り替わることで前記摺動凸部と前記被摺動部との当接する位置の回動中心からの距離が可変し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材との相対回動位置に応じて回動摩擦抵抗が可変するように構成したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記被摺動部は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の回動方向に並設する複数の被摺動面を有し、この隣接する被摺動面同士は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に配されていることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記被摺動面夫々は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材に突設したことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記被摺動部は、前記第二摩擦部材若しくは前記第一摩擦部材の回動方向に長さを有する凸状体で構成され、この凸状体は同一円周上でなく回動中心からの距離が異なる位置に形成した複数の被摺動面を有する形状であることを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記摺動凸部は、前記第一摩擦部材若しくは前記第二摩擦部材に回動中心から径方向に長さを有する形状に設けられるか若しくは複数並設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記第一部材と前記第二部材とが重合する重合閉塞位置から開放方向に回動させた開放回動位置までの一の回動範囲で前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とが相対回動する際、前記摺動凸部と前記被摺動部とが当接する位置の回動中心からの距離に比し、前記一の回動範囲から開放方向に回動させた開放回動位置までの他の回動範囲で前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とが相対回動する際、前記摺動凸部と前記被摺動部とが当接する位置の回動中心からの距離が長くなるように設定したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、前記本体部に重合する重合部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と重合部とを前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−57748(P2012−57748A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202741(P2010−202741)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
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