ヒンジ装置並びに開閉装置並びに携帯機器
【課題】 従来公知のホップアップ機構とフリクション機構を組み合わせたヒンジ装置に工夫を加え、組立作業が容易でより操作性を向上させた携帯機器のヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた開閉装置並びに携帯機器を提供する。
【解決手段】 ヒンジ装置のホップアップ機構のヒンジシャフトを、取付部材の両側板に非回転に軸架させ、このヒンジシャフトに回転可能にホップアップカム部材を取り付けると共に、前記ヒンジシャフトに回転可能に支持部材を取り付け、この支持部材の回転を前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けた回転伝達部材で前記ホップアップカム部材へ伝達するように構成すると共に、フリクション機構のフリクショントルク発生手段を構成する回転カム部材を支持部材と共に回転するように成し、この回転カム部材と圧接する固定カム部材をヒンジシャフトに固定させることで解決し、このヒンジ装置を一対用いて開閉装置とし、上記ヒンジ装置と開閉装置を用いて携帯機器とすることで解決した。
【解決手段】 ヒンジ装置のホップアップ機構のヒンジシャフトを、取付部材の両側板に非回転に軸架させ、このヒンジシャフトに回転可能にホップアップカム部材を取り付けると共に、前記ヒンジシャフトに回転可能に支持部材を取り付け、この支持部材の回転を前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けた回転伝達部材で前記ホップアップカム部材へ伝達するように構成すると共に、フリクション機構のフリクショントルク発生手段を構成する回転カム部材を支持部材と共に回転するように成し、この回転カム部材と圧接する固定カム部材をヒンジシャフトに固定させることで解決し、このヒンジ装置を一対用いて開閉装置とし、上記ヒンジ装置と開閉装置を用いて携帯機器とすることで解決した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくにノートパソコン等の携帯機器を構成する第1の筐体と第2の筐体とを互いに重ね合わせた状態で相対的に回転可能に連結する際に用いて好適なヒンジ装置並びに開閉装置並びに携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の一種であるノートパソコンにおいて、キーボード部を上面に設けた第1の筐体と、ディスプレイ部を設けた第2の筐体とを有し、これらの第1の筐体と第2の筐体とを互いにヒンジ装置によって開閉可能に連結したものが公知である。このノートパソコンは、第1の筐体の上面後部に対して第2の筐体がヒンジ装置を介して開閉可能に連結されており、第1の筐体の上面に第2の筐体を重ね合わせて閉成させることができると共に、重ね合わせた状態から第2の筐体を第1の筐体に対し開成してキーボード及びディスプレイ部を露出させることができる。
【0003】
このためのヒンジ装置として、ホップアップ機構とフリクション機構を組み合わせて一つのヒンジ装置とし、第2の筐体の第1の筐体に対する閉成状態から、手動で第2の筐体を第1の筐体に対して少し開くと、後はホップアップ機構で自動的に所定の開成角度まで第2の筐体を第1の筐体に対してホップアップして開かせ、所定の開成角度からフリクション機構で手動によりフリーストップに第2の筐体を第1の筐体に対して開くことのできるようにしたもの、並びにこのような構成のヒンジ装置を一対用いた開閉装置、並びにノートパソコンが、下記特許文献1によって公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−309381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載されているヒンジ装置は、第1の筐体に取り付けられ、ヒンジシャフトを回転可能に軸支する取付部材と、第2筐体に取り付けられると共にヒンジシャフトに当該ヒンジシャフトと共に回転可能となるように取り付けられた支持部材とを有し、取付部材の側に一方向へスライド付勢させたカムスライダーと、このカムスライダーに圧接してヒンジシャフトに取り付けられたカム体から成るホップアップ機構と、支持部材とヒンジシャフトの間に設けられ、ホップアップ機構による第1の筐体に対する第2の筐体の所定の開成位置から支持部材を取付部材に対してフリーストップに開閉させるフリクション機構と、第2の筐体の第1の筐体に対する所定の閉成角度から支持部材を取付部材に対して閉成方向に付勢する吸い込み機構とを備えたものであった。
【0006】
このような構成のヒンジ装置は、これはこれでホップアップ機構とフリクション機構及び吸い込み機構を組み合わせて操作性の向上を図った新しいヒンジ装置であったが、
ヒンジシャフトは、取付部材の両側板に回転可能に軸架されると共に、このヒンジシャフトにホップアップ機構のカム体が固定される構成であり、さらにフリクション機構のカムA体がその中心部軸方向へヒンジシャフトを挿通させると共に、取付部材の側板へ固定される構成であったために、正確に動作するように組み立てることに困難が伴う上に、安定したフリクショントルクが得られないという問題があり、さらにフリクション機構としても安定したフリクショントルクを創出し難いという難点があった。
【0007】
また、このヒンジ装置を一対用いてノートパソコンのような携帯機器の開閉装置とした場合には、ホップアップ機構による第2の筐体の第1の筐体に対するホップアップ時の動作が急激なものとなる上に、吸い込み機構により第2の筐体の第1の筐体に対する閉成操作時の支持部材の回転がより強くなり、第2の筐体が第1の筐体に対して急激に衝撃音を発して閉じられるという難点もあり、操作性の点で工夫の余地があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、従来公知の上記ヒンジ装置に工夫を加え、組立作業が容易でより操作性を向上させたヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた開閉装置並びに携帯機器を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために本発明に係るヒンジ装置は、第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構とから成り、前記ホップアップ機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられるスプリングケースを兼ねる取付部材と、この取付部材内に弾性手段により一方向へ摺動付勢されて収装されたカムスライダーと、前記取付部材の両側板に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、前記カムスライダーに圧接し前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられホップアップカム部材と、前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材の回転を前記ホップアップカム部材へ伝達する回転伝達部材と、で構成したことを特徴とする。
【0010】
その際に本発明は、前記回転伝達部材を、前記ヒンジシャフトに回転可能に嵌着された筒状の部材で構成し、この回転伝達部材の一方の端部を前記支持部材と係合させ、他方の端部を前記ホップアップカム部材に係合させることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構から成り、前記フリクション機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側部に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、このヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材と前記ヒンジシャフトとの間に設けたフリクショントルク発生手段と、で構成し、このフリクショントルク発生手段は、前記第2の筐体の前記第1の筐体に対する閉成位置から所定の開閉角度の範囲と、前記ホップアップ機構の前記第2の筐体に対するホップアップ動作終了時から所定の開閉角度の範囲との間に強いフリクショントルクを発生させるように成したことを特徴とする。
【0012】
その際に本発明は、前記フリクショントルク手段は、前記支持部材と共に回転する回転カム部材と、前記ヒンジシャフトに固定されて前記回転カム部材と圧接する固定カム部材と、前記回転カム部材と前記支持部材の間に前記ヒンジシャフトに回転規制されて設けられたフリクションワッシャ―と、で構成することができる。
【0013】
本発明はまた、携帯機器のキーボード部を設ける第1の筐体と、ディスプレイ部を設ける第2の筐体とを相対的に開閉する開閉装置を、互いにホップアップ機構とフリクション機構を有する一対のヒンジ装置で構成し、この一対のヒンジ装置の前記各ホップアップ機構のホップアップ時の動作開始時を互いにずらせたことを特徴とする。
【0014】
その際に本発明は、上記開閉装置を、請求項1又は請求項3に記載のヒンジ装置の一方或は双方のものを組み合わせて一対とすることによって構成することができる。
【0015】
本発明はまた、上記開閉装置に請求項1に記載のヒンジ装置を用いるに当たり、前記ホップアップ機構の前記カムスライダーの形状を変えることにより、ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、
【0016】
本発明はさらに、上記開閉装置に請求項1に記載のヒンジ装置を用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記ホップアップカム部材の前記ヒンジシャフトに対する取付位置を変えることにより、前記ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成することができる。
【0017】
そして、本発明は、上記各記載のヒンジ装置や開閉装置を有することを特徴とする、携帯機器とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように構成することにより本発明は、ヒンジ装置としては、組立が容易であり、第2の筐体の第1の筐体に対する閉成時にフリクション機構により強いフリクショントルクを創出して第2の筐体が第1の筐体に対して急激に閉じないようにすることができる上に、開閉装置としては、ホップアップ機構が、第2の筐体の第1の筐体に対する開成時に急激にホップアップすることを防止することができ、より一層の操作性の向上を図ることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るヒンジ装置や開閉装置を用いた携帯機器の一例であるノートパソコンの斜視図である。
【図2】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す正面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】図3のB−B線断面図である。
【図7】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体を閉じた状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の状態を説明する説明図である。
【図8】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体を約15°開いた状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図9】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体に対する第2の筐体のホップアップ動作終了時の状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図10】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体の使用開閉角度における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図11】本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置のフリクション機構の動作を説明する説明図であり、(a)は第1の筐体と第2の筐体の閉成状態における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示し、(b)は第1の筐体と第2の筐体を15°開いた状態における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示し、(c)は第2筐体の使用角度範囲における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示すそれぞれ説明図である
【図12】本発明に係るヒンジ装置のホップアップ機構の各構成部材の斜視図であり、(a)は取付部材、(b)は第1スペーサー、(c)は第2スペーサー、(d)はカムスライダー、(e)はホップアップカム部材、(f)は回転伝達部材、(g)はヒンジシャフトをそれぞれ示している。
【図13】本発明に係るヒンジ装置のフリクション機構の各構成部材の斜視図であり、(a)は支持部材の第1支持基板部、(b)は第2支持基板部、(c)は回転カム部材、(d)は固定カム部材、(e)フリクションワッシャーをそれぞれ示している。
【図14】本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の他の実施例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置並びに携帯機器を図面に基づいて説明する。尚、本発明において、ヒンジ装置とは単体としてのヒンジ装置を指し、開閉装置とはこの単体であるヒンジ装置を一対用いた場合を指している。また、携帯機器としては、例えば、ノートパソコン、PDA、ポケットパソコン、ザウルス(商標)、携帯電話機、電卓、携帯ゲーム機等が挙げられる。尚、本発明において携帯機器としては、その他、灰皿、ケース蓋等も含まれる。即ち、本発明に係るヒンジ装置は2つの筐体を互いに開閉可能に連結させるものであれば特にその用途について限定されない。以下の説明では携帯機器の例として、ノートパソコンを例に挙げて説明するが、このものに限定されない。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置を備えた携帯機器の一例を示すノートパソコンの斜視図である。図2〜図6は本発明に係るヒンジ装置の一例を示す図である。図7〜図10は本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。図12は、本発明に係るヒンジ装置のホップアップ機構の各構成部材の斜視図である。図13は、本発明に係るヒンジ装置のフリクション機構を構成する各構成部材の斜視図である。図14は、本発明に係るヒンジ装置の他の実施例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、ノートパソコン1は、キーボード部2aを有する第1の筐体2と図示はしてないがディスプレイ部を有する第2の筐体3を有し、第1の筐体2と第2の筐体3は、図示してはないが丸い想像線a、bで囲んだ部分に取り付けた1対のヒンジ装置を介して開閉可能に連結されている。この一対のヒンジ装置は、実施例1のものと実施例2のものとで構成されているが、このものに限定されず、実施例1のものと実施例2のものをそれぞれ一対ずつ用いるようにしても良い。実施例1のものと実施例2のものは後述するように若干構成が異なるが、ほとんどが同じ構成なので、以下の説明では、丸い想像線a、bで囲まれた一方のヒンジ装置を実施例1のヒンジ装置Aとして説明し、他方のヒンジ装置を実施例2のヒンジ装置Bとして異なる構成の部分のみ説明する。
【0023】
本発明に係るヒンジ装置Aは、図2〜図6に示したように、ホップアップ機構5とフリクション機構20とを組み合わせたもので、ホップアップ機構5は、底板6aとこの底板6aの両側より立ち上げた両側板6b、6bとこの両側板6b、6bの自由端側の略中央部より内側に折り曲げた抱持片6c、6cと、両側板6b、6bの各端部より内側に折り曲げたストッパー片6d、6dと、両側板6b、6bの前側に底板6aより立ち上げて設けた前板6kと、この前板6kから折り曲げた取付板6iと、から成る取付部材6と、この取付部材6の中にスライド可能に収装された後述する弾性手段のスプリングケースを兼ねるカムスライダー7と、このカムスライダー7を一方向へスライド付勢させるために取付部材6内部に収装させた、例えば径の大小の圧縮コイルスプリング8a、8bから成る弾性手段8と、取付部材6の両側板6b、6b間に軸架固定されたヒンジシャフト9と、このヒンジシャフト9へ回転可能に取り付けられ、そのカム凸部10aをカムスライダー7に弾性手段8により圧接させるホップアップカム部材10と、ヒンジシャフト9に回転可能に取り付けられた支持部材11と、この支持部材11の回転をホップアップカム部材10へ伝達するためにその中心部軸方向に設けた挿通孔12cへヒンジシャフト9を挿通させた回転伝達部材12とで構成されている。
【0024】
さらに詳しくは、取付部材6の底板6a上面と、両側板6b、6bのヒンジシャフト9と対向する前板6k側には、ホップアップ機構5の動作時の作動音(ノイズ)を減少させるために、合成樹脂製の第1スペーサー13と第2スペーサー14が取り付けられている。即ち、前者の第1スペーサー13は、底板6aに設けた係止孔6e、6fに係止突起13a、13bを嵌入させて、後者の第2スペーサー14は、両側板6b、6bの間に取付ピン15を介してそれぞれ取り付けられている。第2スペーサー14には弾性手段8を受け入れる凹部14aが設けられており、その係止突起14cを係止孔6fへ嵌入させ、取付ピン15を介して取付部材6の両側板6b、6bと底板6aの間に取り付けられている。取付部材6の底板6aと取付板6iには取付孔6g、6hが設けられ、この取付孔6g、6hを介して取付ネジ16aと16bで第1の筐体2の後部に設けた取付部2cへ取り付けられている。
【0025】
カムスライダー7には、その一端部側に頂部7aと、この頂部7aより一方向に湾曲傾斜させたカム部7bとが設けられている。また、このカム部7bを設けた側とは対向する側には弾性手段8の収容部7cが設けられている。弾性手段8は径の異なる大小の圧縮コイルスプリング8a、8bを軸方向へ2重に重ねてあり、この2重にした用い方で、ヒンジ装置の小型化を図っている。尚、弾性手段8の圧縮コイルスプリング8a、8bは、動作時の異音発生を防止するために互いに逆方向に巻いたものを用いている。また、弾性手段8はゴム製とすることができる。
【0026】
ホップアップカム部材10は、軸方向へ挿通孔10bを設けた断面略水滴形状のもので、挿通孔10bへヒンジシャフト9を挿通させ、このヒンジシャフト9の軸回りに回転自在である。ヒンジシャフト9は、その一端部から第1変形軸部9aと円形軸部9bと第2変形軸部9cと第3変形軸部9dが軸方向に連続して設けられており、第1変形軸部9aを取付部材6の一方の側板6bに設けた変形取付孔6o(図12(a)参照)に挿入させると共に、円形軸部9bを円形取付孔6n(図12(a)参照)に挿入させ、第1変形軸部9aの露出端部をかしめることによって、取付部材6へ非回転に固定されている。さらに、図12(a)に示したように、取付部材6の指示記号6p、6rは、第2スペーサー14を固定させる取付ピン15の取付孔である。
【0027】
支持部材11は、互いに重ね合わされて取付ピン11g、11gでかしめることにより固定された断面アングル形状を呈した第1支持基板部11aと第2支持基板部11cとから成り、第1支持基板部11aには第2の筐体3を支持する長尺の支持片11bが取付ピン11h、11hで取り付けられている。第1支持基板部11aには同じく断面アングル形状を呈した第2支持基板部11cが重ね合わせて固定され、ともにヒンジシャフト9の軸回りに回転可能に取り付けられている。回転伝達部材12は筒状のもので、ヒンジシャフト9をその軸心部に設けた挿通孔12cへ挿通させると共に、その両端部に設けた変形取付部12a、12bの一方の変形取付部12aをホップアップカム部材10の挿通孔10bの端部に軸心を共通にして設けた変形孔10cと係合させ、他方の変形取付部12bを第1支持基板部11aと第2支持基板部11cに設けた各変形取付孔11d、11eと挿入係合させている。取付部材6の両側板6b、6bの一方に取付ピン17aとヒンジシャフト9の第4変形軸部9eを介して取り付けられているものは取付補助部材である。この取付補助部材17は、取付部材6を第1の筐体2へ取り付けた際に強度アップを図るためのもので、3個の取付孔17cを通して図示してない取付ネジで第1の筐体2の取付部2cへ取り付けられている。尚、図2に示したように指示記号17bで示した長孔は、図示してない盗難防止用ロックを固定する取付孔である。
【0028】
フリクション機構20は、上述したホップアップ機構5のヒンジシャフト9及び支持部材11と、フリクショントルク発生手段4とから成り、このフリクショントルク発生手段4を、片側に回転カム部21aを有し、ヒンジシャフト9をその軸方向に設けた挿通孔21bへ回転可能に挿通させて支持部材11の第2支持基板部11cに設けた係止孔11fへその係止片21cを挿入係合させて支持部材11と共に回転するように成した回転カム部材21と、ヒンジシャフト9の第2変形軸部9cをその中心部軸方向に設けた変形挿通孔22aに挿通係合させてヒンジシャフト9に回転規制されて回転カム部材21と支持部材11の第2支持基板部11cとの間に介在されたところの側面に複数の湾曲させた油溜部22bを有するフリクションワッシャー22と、回転カム部材21の回転カム部21aと対向する側に固定カム部23aとを有し、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔23bにヒンジシャフト9の第3変形軸部9dを挿通させることによって回転規制されて設けた固定カム部材23と、この固定カム部材23に隣接してその中心部軸方向に設けた各挿通孔24aへ、ヒンジシャフト9の第4変形軸部9eを挿通させて隣接配置した複数の皿バネ24と、この複数の皿バネ24の端部のものに接してその中心部軸方向に設けた変形取付孔25aにヒンジシャフト9の端部に設けた第4変形軸部9eを挿入係合させ、その露出端部を所定のかしめトルクでかしめることにより、複数の皿バネ24を介して回転カム部材21と固定カム部材23の各回転カム部21aと固定カム部23a同士が圧接状態となるように成した平ワッシャー25とで構成されている。尚、皿バネはこれをスプリングワッシャー、ゴム、或は圧縮コイルスプリングに変えることも可能である。
【0029】
回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aには、その内周側と外周側にそれぞれ対向する側に突出した同心円状で弓形を呈した内側カム部21dと23c及び外側カム部21eと23dが各々位置を変えて設けられており、回転カム部材21の回転時、しかして支持部材11の回転時、即ち第2の筐体3の開閉時に内側カム部21d、23c同士と外側カム部21e、23d同士が接触するときには強いフリクショントルクが発生するように構成されている。尚、各内側カム部21d、23cと外側カム部21e、23dには各両端部にそれぞれ傾斜部21f〜21iと傾斜部23e〜23hが設けられている。
【0030】
次に、本発明に係るヒンジ装置Aをノートパソコン1の開閉装置として2個使用した場合についてその作用を説明する。
【0031】
ノートパソコン1が使用されていない通常の状態では、第1の筐体2と第2の筐体3とが互いに重なり合った閉成状態(0°)である。この時、図7から図10に示したように、第1の筐体2の後部上面に窪所として設けた取付部2cには、取付部材6の底板6aと取付板6iが取付ネジ16a、16bを介して取り付けられており、その上部はカバー2bにより覆われている。また、支持部材11には、第1支持基板11aに設けた取付孔11i、11i、11iと、支持片11bを介して第2の筐体3が取り付けられている。図7に示したように、第1の筐体2と第2の筐体3が互いに閉じられた閉成状態にある時には、カムスライダー7の頂部7aとホップアップカム部材10のカム凸部10aが圧接状態にあって、ホップアップカム部材10を時計方向へ押しているので、その回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達され、この支持部材11を介して第2の筐体3を第1の筐体2側へ押しているので、第1の筐体2と第2の筐体3とは互いに重なり合った閉成状態に保持されている。また、この閉成状態においては、図11の(a)に示したように、回転カム部21aと固定カム部23aの各外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cの各傾斜部21h、23gと21h、23fが互いに圧接状態にあり、各外側カム部21e及び23dと内側カム部21d、23cの間には若干の間隙が生じた状態にある。
【0032】
このように、第1の筐体2と第2の筐体3の閉成状態が維持されることにより、第1の筐体2及び第2の筐体3を閉成状態にロックするためのロック機構を不要にすることができる。
【0033】
ノートパソコン1を使用する場合には、手動で第2の筐体3を第1の筐体2に対して開くと、最初は上述したホップアップ機構5の閉成付勢力とフリクション機構20の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21eと23dの圧接作用による抵抗に会うが、開成角度約15°を超えると、図11の(b)に示したように、フリクション機構20の回転カム部材21の回転カム部21aの外側カム部21eと固定カム部材23の固定カム部23aの外側カム部23dとの間の圧接状態が緩和され、各外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cの圧接状態が弱くなり、さらに、図8に示したように、ホップアップカム部材10のカム凸部10aがカムスライダー7のカム部7b側と当接することになることから、ホップアップカム部材10は反時計方向へ回転付勢され、この回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達されるので、この支持部材11に取り付けられた第2の筐体3は自動的にホップアップして、図9に示したように、所定の例えば60°(ホップアップ角度とも言う)まで開かれることになる。
【0034】
このホップアップ角度まで第2の筐体3が第1の筐体2に対して開かれると、図9に示したように、カムスライダー7によるホップアップカム部材10に対する押圧力は停止され、フリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21eと外側カム部23dが圧接状態となり、しかる後は図11の(c)に示したように、フリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cが圧接状態を維持することと、フリクションワッシャー22が支持部材11の第1支持基板部11aと第2支持基板部11cの間により強く圧接されることから、第2の筐体3は第1の筐体2に対してその使用角度範囲においてフリ−ストップに停止可能に開かれることになる。この状態を示したものが図10である。
【0035】
したがって、ノートパソコン1は、第2の筐体3を第1の筐体2に対してフリーストップに停止できる任意の角度で停止させ、安定保持状態で使用することが可能である。
【0036】
ノートパソコン1の使用後、第2の筐体3を第1の筐体2に対して閉じる際には、最初はフリクション機構20のフリクショントルクによる抵抗に遭遇して閉じられ、しかる後はフリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cが圧接状態から解除されることから、比較的弱いフリクショントルクと、ホップアップ機構5の弾性抵抗に抗して閉じられ、約15°の閉成角度からはホップアップ機構5が、ホップアップカム部材10を閉成方向へ回転付勢させるので、この回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達され、第2の筐体3は自動的に閉じられる。しかしながら、この時には回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dの傾斜部21h、23gと内側カム部21d、23cの傾斜部21f、23fが圧接することになることから、ホップアップ機構5により第2の筐体3に対する自動閉成トルクは緩衝され、第2の筐体3は第1の筐体2に対して音を立てて急激に閉じられることはない。また、弾性手段8を径の異なる大小の圧縮コイルスプリング8a、8bを用いているので、ホップアップ機構5による動作を、ソフトな感じのフィーリングとすることができるものである。
【実施例2】
【0037】
図14は、本発明に係るヒンジ装置の他の実施例を示し、この実施例2に係るヒンジ装置Bは、その構成部材については、カムスライダーの構成を除いて実施例1のヒンジ装置Aと同じである。したがって、その構成部材については、実施例1のヒンジ装置Aのものと同じものは、ホップアップカム部材を除いて同じ指示記号で示してある。この実施例2のヒンジ装置Bのカムスライダー32が実施例1のカムスライダー7と異なるのは、その頂部の幅である。実施例2のカムスライダー32の頂部32aの幅n’は実施例1のカムスライダー7の幅nより広くn<n’の関係にある。
【0038】
したがって、ノートパソコン1の開閉装置として実施例1のヒンジ装置Aと実施例2のヒンジ装置Bを用いると、第2の筐体3の第1の筐体2に対する開成時に、最初はヒンジ装置Aのホップアップカム部材10のカム凸部10aがカムスライダー7の頂部7aから外れ、次いでヒンジ装置Bのホップアップ機構30のホップアップカム部材31のカム凸部31aがカムスライダー32の頂部32aから外れることになる。このため、一対のヒンジ装置A、Aが同時にホップアップ動作を行うものに比べて、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bのホップアップ機構5、30による第2の筐体3に対するホップアップ動作が急激のものとならず、緩やかなものとなることから、第2の筐体3と第1の筐体2の開閉操作時の操作性が向上することになる。
【0039】
次に、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bのホップアップ動作の始動時期を変えるその他の実施例としては、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bの各ホップアップカム部材10と31をヒンジシャフト9へ取り付ける周方向の位置を変えるようにしても良い。このように実施しても、ホップアップカム部材10、31のカム凸部10a、31aがカムスライダー7、32の頂部7a、32aより離れるタイミングを変えることができ、このことによって、急激なホップアップ動作を軽減して、操作性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明に係るヒンジ装置は、組み立てが容易で、第2の筐体の使用角度において安定したフリクショントルクを得ることができるものであり、上記したようにカムスライダー或はホップアップカム部材に工夫を凝らしたヒンジ装置を一対用いて開閉装置とすると、第2の筐体が第1の筐体に対して急激に音を立てて閉じることも防止できることから、操作性が向上し、携帯機器の中でもとくにノートパソコンに用いるヒンジ装置、或は開閉装置、或はこれらのヒンジ装置又は開閉装置を用いた携帯機器として好適なものである。
【符号の説明】
【0041】
A ヒンジ装置
B ヒンジ装置
1 ノートパソコン(携帯機器)
2 第1の筐体
2a キーボード部
3 第2の筐体
4 フリクショントルク発生手段
5 ホップアップ機構
6 取付部材
6b 両側板
7 カムスライダー
8 弾性手段
9 ヒンジシャフト
10 ホップアップカム部材
11 支持部材
12 回転伝達部材
20 フリクション機構
21 回転カム部材
22 フリクションワッシャー
23 固定カム部材
30 ホップアップ機構
31 ホップアップカム部材
32 カムスライダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくにノートパソコン等の携帯機器を構成する第1の筐体と第2の筐体とを互いに重ね合わせた状態で相対的に回転可能に連結する際に用いて好適なヒンジ装置並びに開閉装置並びに携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の一種であるノートパソコンにおいて、キーボード部を上面に設けた第1の筐体と、ディスプレイ部を設けた第2の筐体とを有し、これらの第1の筐体と第2の筐体とを互いにヒンジ装置によって開閉可能に連結したものが公知である。このノートパソコンは、第1の筐体の上面後部に対して第2の筐体がヒンジ装置を介して開閉可能に連結されており、第1の筐体の上面に第2の筐体を重ね合わせて閉成させることができると共に、重ね合わせた状態から第2の筐体を第1の筐体に対し開成してキーボード及びディスプレイ部を露出させることができる。
【0003】
このためのヒンジ装置として、ホップアップ機構とフリクション機構を組み合わせて一つのヒンジ装置とし、第2の筐体の第1の筐体に対する閉成状態から、手動で第2の筐体を第1の筐体に対して少し開くと、後はホップアップ機構で自動的に所定の開成角度まで第2の筐体を第1の筐体に対してホップアップして開かせ、所定の開成角度からフリクション機構で手動によりフリーストップに第2の筐体を第1の筐体に対して開くことのできるようにしたもの、並びにこのような構成のヒンジ装置を一対用いた開閉装置、並びにノートパソコンが、下記特許文献1によって公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−309381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載されているヒンジ装置は、第1の筐体に取り付けられ、ヒンジシャフトを回転可能に軸支する取付部材と、第2筐体に取り付けられると共にヒンジシャフトに当該ヒンジシャフトと共に回転可能となるように取り付けられた支持部材とを有し、取付部材の側に一方向へスライド付勢させたカムスライダーと、このカムスライダーに圧接してヒンジシャフトに取り付けられたカム体から成るホップアップ機構と、支持部材とヒンジシャフトの間に設けられ、ホップアップ機構による第1の筐体に対する第2の筐体の所定の開成位置から支持部材を取付部材に対してフリーストップに開閉させるフリクション機構と、第2の筐体の第1の筐体に対する所定の閉成角度から支持部材を取付部材に対して閉成方向に付勢する吸い込み機構とを備えたものであった。
【0006】
このような構成のヒンジ装置は、これはこれでホップアップ機構とフリクション機構及び吸い込み機構を組み合わせて操作性の向上を図った新しいヒンジ装置であったが、
ヒンジシャフトは、取付部材の両側板に回転可能に軸架されると共に、このヒンジシャフトにホップアップ機構のカム体が固定される構成であり、さらにフリクション機構のカムA体がその中心部軸方向へヒンジシャフトを挿通させると共に、取付部材の側板へ固定される構成であったために、正確に動作するように組み立てることに困難が伴う上に、安定したフリクショントルクが得られないという問題があり、さらにフリクション機構としても安定したフリクショントルクを創出し難いという難点があった。
【0007】
また、このヒンジ装置を一対用いてノートパソコンのような携帯機器の開閉装置とした場合には、ホップアップ機構による第2の筐体の第1の筐体に対するホップアップ時の動作が急激なものとなる上に、吸い込み機構により第2の筐体の第1の筐体に対する閉成操作時の支持部材の回転がより強くなり、第2の筐体が第1の筐体に対して急激に衝撃音を発して閉じられるという難点もあり、操作性の点で工夫の余地があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、従来公知の上記ヒンジ装置に工夫を加え、組立作業が容易でより操作性を向上させたヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた開閉装置並びに携帯機器を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために本発明に係るヒンジ装置は、第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構とから成り、前記ホップアップ機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられるスプリングケースを兼ねる取付部材と、この取付部材内に弾性手段により一方向へ摺動付勢されて収装されたカムスライダーと、前記取付部材の両側板に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、前記カムスライダーに圧接し前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられホップアップカム部材と、前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材の回転を前記ホップアップカム部材へ伝達する回転伝達部材と、で構成したことを特徴とする。
【0010】
その際に本発明は、前記回転伝達部材を、前記ヒンジシャフトに回転可能に嵌着された筒状の部材で構成し、この回転伝達部材の一方の端部を前記支持部材と係合させ、他方の端部を前記ホップアップカム部材に係合させることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構から成り、前記フリクション機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側部に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、このヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材と前記ヒンジシャフトとの間に設けたフリクショントルク発生手段と、で構成し、このフリクショントルク発生手段は、前記第2の筐体の前記第1の筐体に対する閉成位置から所定の開閉角度の範囲と、前記ホップアップ機構の前記第2の筐体に対するホップアップ動作終了時から所定の開閉角度の範囲との間に強いフリクショントルクを発生させるように成したことを特徴とする。
【0012】
その際に本発明は、前記フリクショントルク手段は、前記支持部材と共に回転する回転カム部材と、前記ヒンジシャフトに固定されて前記回転カム部材と圧接する固定カム部材と、前記回転カム部材と前記支持部材の間に前記ヒンジシャフトに回転規制されて設けられたフリクションワッシャ―と、で構成することができる。
【0013】
本発明はまた、携帯機器のキーボード部を設ける第1の筐体と、ディスプレイ部を設ける第2の筐体とを相対的に開閉する開閉装置を、互いにホップアップ機構とフリクション機構を有する一対のヒンジ装置で構成し、この一対のヒンジ装置の前記各ホップアップ機構のホップアップ時の動作開始時を互いにずらせたことを特徴とする。
【0014】
その際に本発明は、上記開閉装置を、請求項1又は請求項3に記載のヒンジ装置の一方或は双方のものを組み合わせて一対とすることによって構成することができる。
【0015】
本発明はまた、上記開閉装置に請求項1に記載のヒンジ装置を用いるに当たり、前記ホップアップ機構の前記カムスライダーの形状を変えることにより、ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、
【0016】
本発明はさらに、上記開閉装置に請求項1に記載のヒンジ装置を用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記ホップアップカム部材の前記ヒンジシャフトに対する取付位置を変えることにより、前記ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成することができる。
【0017】
そして、本発明は、上記各記載のヒンジ装置や開閉装置を有することを特徴とする、携帯機器とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように構成することにより本発明は、ヒンジ装置としては、組立が容易であり、第2の筐体の第1の筐体に対する閉成時にフリクション機構により強いフリクショントルクを創出して第2の筐体が第1の筐体に対して急激に閉じないようにすることができる上に、開閉装置としては、ホップアップ機構が、第2の筐体の第1の筐体に対する開成時に急激にホップアップすることを防止することができ、より一層の操作性の向上を図ることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るヒンジ装置や開閉装置を用いた携帯機器の一例であるノートパソコンの斜視図である。
【図2】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係るヒンジ装置の一例を示す正面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】図3のB−B線断面図である。
【図7】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体を閉じた状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の状態を説明する説明図である。
【図8】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体を約15°開いた状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図9】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体に対する第2の筐体のホップアップ動作終了時の状態における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図10】本発明に係る携帯機器の一例であるノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体の使用開閉角度における同じく本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。
【図11】本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置のフリクション機構の動作を説明する説明図であり、(a)は第1の筐体と第2の筐体の閉成状態における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示し、(b)は第1の筐体と第2の筐体を15°開いた状態における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示し、(c)は第2筐体の使用角度範囲における回転カム部材と固定カム部材の位置関係を示すそれぞれ説明図である
【図12】本発明に係るヒンジ装置のホップアップ機構の各構成部材の斜視図であり、(a)は取付部材、(b)は第1スペーサー、(c)は第2スペーサー、(d)はカムスライダー、(e)はホップアップカム部材、(f)は回転伝達部材、(g)はヒンジシャフトをそれぞれ示している。
【図13】本発明に係るヒンジ装置のフリクション機構の各構成部材の斜視図であり、(a)は支持部材の第1支持基板部、(b)は第2支持基板部、(c)は回転カム部材、(d)は固定カム部材、(e)フリクションワッシャーをそれぞれ示している。
【図14】本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の他の実施例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置並びに携帯機器を図面に基づいて説明する。尚、本発明において、ヒンジ装置とは単体としてのヒンジ装置を指し、開閉装置とはこの単体であるヒンジ装置を一対用いた場合を指している。また、携帯機器としては、例えば、ノートパソコン、PDA、ポケットパソコン、ザウルス(商標)、携帯電話機、電卓、携帯ゲーム機等が挙げられる。尚、本発明において携帯機器としては、その他、灰皿、ケース蓋等も含まれる。即ち、本発明に係るヒンジ装置は2つの筐体を互いに開閉可能に連結させるものであれば特にその用途について限定されない。以下の説明では携帯機器の例として、ノートパソコンを例に挙げて説明するが、このものに限定されない。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置を備えた携帯機器の一例を示すノートパソコンの斜視図である。図2〜図6は本発明に係るヒンジ装置の一例を示す図である。図7〜図10は本発明に係るヒンジ装置並びに開閉装置の動作を説明する説明図である。図12は、本発明に係るヒンジ装置のホップアップ機構の各構成部材の斜視図である。図13は、本発明に係るヒンジ装置のフリクション機構を構成する各構成部材の斜視図である。図14は、本発明に係るヒンジ装置の他の実施例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、ノートパソコン1は、キーボード部2aを有する第1の筐体2と図示はしてないがディスプレイ部を有する第2の筐体3を有し、第1の筐体2と第2の筐体3は、図示してはないが丸い想像線a、bで囲んだ部分に取り付けた1対のヒンジ装置を介して開閉可能に連結されている。この一対のヒンジ装置は、実施例1のものと実施例2のものとで構成されているが、このものに限定されず、実施例1のものと実施例2のものをそれぞれ一対ずつ用いるようにしても良い。実施例1のものと実施例2のものは後述するように若干構成が異なるが、ほとんどが同じ構成なので、以下の説明では、丸い想像線a、bで囲まれた一方のヒンジ装置を実施例1のヒンジ装置Aとして説明し、他方のヒンジ装置を実施例2のヒンジ装置Bとして異なる構成の部分のみ説明する。
【0023】
本発明に係るヒンジ装置Aは、図2〜図6に示したように、ホップアップ機構5とフリクション機構20とを組み合わせたもので、ホップアップ機構5は、底板6aとこの底板6aの両側より立ち上げた両側板6b、6bとこの両側板6b、6bの自由端側の略中央部より内側に折り曲げた抱持片6c、6cと、両側板6b、6bの各端部より内側に折り曲げたストッパー片6d、6dと、両側板6b、6bの前側に底板6aより立ち上げて設けた前板6kと、この前板6kから折り曲げた取付板6iと、から成る取付部材6と、この取付部材6の中にスライド可能に収装された後述する弾性手段のスプリングケースを兼ねるカムスライダー7と、このカムスライダー7を一方向へスライド付勢させるために取付部材6内部に収装させた、例えば径の大小の圧縮コイルスプリング8a、8bから成る弾性手段8と、取付部材6の両側板6b、6b間に軸架固定されたヒンジシャフト9と、このヒンジシャフト9へ回転可能に取り付けられ、そのカム凸部10aをカムスライダー7に弾性手段8により圧接させるホップアップカム部材10と、ヒンジシャフト9に回転可能に取り付けられた支持部材11と、この支持部材11の回転をホップアップカム部材10へ伝達するためにその中心部軸方向に設けた挿通孔12cへヒンジシャフト9を挿通させた回転伝達部材12とで構成されている。
【0024】
さらに詳しくは、取付部材6の底板6a上面と、両側板6b、6bのヒンジシャフト9と対向する前板6k側には、ホップアップ機構5の動作時の作動音(ノイズ)を減少させるために、合成樹脂製の第1スペーサー13と第2スペーサー14が取り付けられている。即ち、前者の第1スペーサー13は、底板6aに設けた係止孔6e、6fに係止突起13a、13bを嵌入させて、後者の第2スペーサー14は、両側板6b、6bの間に取付ピン15を介してそれぞれ取り付けられている。第2スペーサー14には弾性手段8を受け入れる凹部14aが設けられており、その係止突起14cを係止孔6fへ嵌入させ、取付ピン15を介して取付部材6の両側板6b、6bと底板6aの間に取り付けられている。取付部材6の底板6aと取付板6iには取付孔6g、6hが設けられ、この取付孔6g、6hを介して取付ネジ16aと16bで第1の筐体2の後部に設けた取付部2cへ取り付けられている。
【0025】
カムスライダー7には、その一端部側に頂部7aと、この頂部7aより一方向に湾曲傾斜させたカム部7bとが設けられている。また、このカム部7bを設けた側とは対向する側には弾性手段8の収容部7cが設けられている。弾性手段8は径の異なる大小の圧縮コイルスプリング8a、8bを軸方向へ2重に重ねてあり、この2重にした用い方で、ヒンジ装置の小型化を図っている。尚、弾性手段8の圧縮コイルスプリング8a、8bは、動作時の異音発生を防止するために互いに逆方向に巻いたものを用いている。また、弾性手段8はゴム製とすることができる。
【0026】
ホップアップカム部材10は、軸方向へ挿通孔10bを設けた断面略水滴形状のもので、挿通孔10bへヒンジシャフト9を挿通させ、このヒンジシャフト9の軸回りに回転自在である。ヒンジシャフト9は、その一端部から第1変形軸部9aと円形軸部9bと第2変形軸部9cと第3変形軸部9dが軸方向に連続して設けられており、第1変形軸部9aを取付部材6の一方の側板6bに設けた変形取付孔6o(図12(a)参照)に挿入させると共に、円形軸部9bを円形取付孔6n(図12(a)参照)に挿入させ、第1変形軸部9aの露出端部をかしめることによって、取付部材6へ非回転に固定されている。さらに、図12(a)に示したように、取付部材6の指示記号6p、6rは、第2スペーサー14を固定させる取付ピン15の取付孔である。
【0027】
支持部材11は、互いに重ね合わされて取付ピン11g、11gでかしめることにより固定された断面アングル形状を呈した第1支持基板部11aと第2支持基板部11cとから成り、第1支持基板部11aには第2の筐体3を支持する長尺の支持片11bが取付ピン11h、11hで取り付けられている。第1支持基板部11aには同じく断面アングル形状を呈した第2支持基板部11cが重ね合わせて固定され、ともにヒンジシャフト9の軸回りに回転可能に取り付けられている。回転伝達部材12は筒状のもので、ヒンジシャフト9をその軸心部に設けた挿通孔12cへ挿通させると共に、その両端部に設けた変形取付部12a、12bの一方の変形取付部12aをホップアップカム部材10の挿通孔10bの端部に軸心を共通にして設けた変形孔10cと係合させ、他方の変形取付部12bを第1支持基板部11aと第2支持基板部11cに設けた各変形取付孔11d、11eと挿入係合させている。取付部材6の両側板6b、6bの一方に取付ピン17aとヒンジシャフト9の第4変形軸部9eを介して取り付けられているものは取付補助部材である。この取付補助部材17は、取付部材6を第1の筐体2へ取り付けた際に強度アップを図るためのもので、3個の取付孔17cを通して図示してない取付ネジで第1の筐体2の取付部2cへ取り付けられている。尚、図2に示したように指示記号17bで示した長孔は、図示してない盗難防止用ロックを固定する取付孔である。
【0028】
フリクション機構20は、上述したホップアップ機構5のヒンジシャフト9及び支持部材11と、フリクショントルク発生手段4とから成り、このフリクショントルク発生手段4を、片側に回転カム部21aを有し、ヒンジシャフト9をその軸方向に設けた挿通孔21bへ回転可能に挿通させて支持部材11の第2支持基板部11cに設けた係止孔11fへその係止片21cを挿入係合させて支持部材11と共に回転するように成した回転カム部材21と、ヒンジシャフト9の第2変形軸部9cをその中心部軸方向に設けた変形挿通孔22aに挿通係合させてヒンジシャフト9に回転規制されて回転カム部材21と支持部材11の第2支持基板部11cとの間に介在されたところの側面に複数の湾曲させた油溜部22bを有するフリクションワッシャー22と、回転カム部材21の回転カム部21aと対向する側に固定カム部23aとを有し、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔23bにヒンジシャフト9の第3変形軸部9dを挿通させることによって回転規制されて設けた固定カム部材23と、この固定カム部材23に隣接してその中心部軸方向に設けた各挿通孔24aへ、ヒンジシャフト9の第4変形軸部9eを挿通させて隣接配置した複数の皿バネ24と、この複数の皿バネ24の端部のものに接してその中心部軸方向に設けた変形取付孔25aにヒンジシャフト9の端部に設けた第4変形軸部9eを挿入係合させ、その露出端部を所定のかしめトルクでかしめることにより、複数の皿バネ24を介して回転カム部材21と固定カム部材23の各回転カム部21aと固定カム部23a同士が圧接状態となるように成した平ワッシャー25とで構成されている。尚、皿バネはこれをスプリングワッシャー、ゴム、或は圧縮コイルスプリングに変えることも可能である。
【0029】
回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aには、その内周側と外周側にそれぞれ対向する側に突出した同心円状で弓形を呈した内側カム部21dと23c及び外側カム部21eと23dが各々位置を変えて設けられており、回転カム部材21の回転時、しかして支持部材11の回転時、即ち第2の筐体3の開閉時に内側カム部21d、23c同士と外側カム部21e、23d同士が接触するときには強いフリクショントルクが発生するように構成されている。尚、各内側カム部21d、23cと外側カム部21e、23dには各両端部にそれぞれ傾斜部21f〜21iと傾斜部23e〜23hが設けられている。
【0030】
次に、本発明に係るヒンジ装置Aをノートパソコン1の開閉装置として2個使用した場合についてその作用を説明する。
【0031】
ノートパソコン1が使用されていない通常の状態では、第1の筐体2と第2の筐体3とが互いに重なり合った閉成状態(0°)である。この時、図7から図10に示したように、第1の筐体2の後部上面に窪所として設けた取付部2cには、取付部材6の底板6aと取付板6iが取付ネジ16a、16bを介して取り付けられており、その上部はカバー2bにより覆われている。また、支持部材11には、第1支持基板11aに設けた取付孔11i、11i、11iと、支持片11bを介して第2の筐体3が取り付けられている。図7に示したように、第1の筐体2と第2の筐体3が互いに閉じられた閉成状態にある時には、カムスライダー7の頂部7aとホップアップカム部材10のカム凸部10aが圧接状態にあって、ホップアップカム部材10を時計方向へ押しているので、その回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達され、この支持部材11を介して第2の筐体3を第1の筐体2側へ押しているので、第1の筐体2と第2の筐体3とは互いに重なり合った閉成状態に保持されている。また、この閉成状態においては、図11の(a)に示したように、回転カム部21aと固定カム部23aの各外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cの各傾斜部21h、23gと21h、23fが互いに圧接状態にあり、各外側カム部21e及び23dと内側カム部21d、23cの間には若干の間隙が生じた状態にある。
【0032】
このように、第1の筐体2と第2の筐体3の閉成状態が維持されることにより、第1の筐体2及び第2の筐体3を閉成状態にロックするためのロック機構を不要にすることができる。
【0033】
ノートパソコン1を使用する場合には、手動で第2の筐体3を第1の筐体2に対して開くと、最初は上述したホップアップ機構5の閉成付勢力とフリクション機構20の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21eと23dの圧接作用による抵抗に会うが、開成角度約15°を超えると、図11の(b)に示したように、フリクション機構20の回転カム部材21の回転カム部21aの外側カム部21eと固定カム部材23の固定カム部23aの外側カム部23dとの間の圧接状態が緩和され、各外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cの圧接状態が弱くなり、さらに、図8に示したように、ホップアップカム部材10のカム凸部10aがカムスライダー7のカム部7b側と当接することになることから、ホップアップカム部材10は反時計方向へ回転付勢され、この回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達されるので、この支持部材11に取り付けられた第2の筐体3は自動的にホップアップして、図9に示したように、所定の例えば60°(ホップアップ角度とも言う)まで開かれることになる。
【0034】
このホップアップ角度まで第2の筐体3が第1の筐体2に対して開かれると、図9に示したように、カムスライダー7によるホップアップカム部材10に対する押圧力は停止され、フリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21eと外側カム部23dが圧接状態となり、しかる後は図11の(c)に示したように、フリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cが圧接状態を維持することと、フリクションワッシャー22が支持部材11の第1支持基板部11aと第2支持基板部11cの間により強く圧接されることから、第2の筐体3は第1の筐体2に対してその使用角度範囲においてフリ−ストップに停止可能に開かれることになる。この状態を示したものが図10である。
【0035】
したがって、ノートパソコン1は、第2の筐体3を第1の筐体2に対してフリーストップに停止できる任意の角度で停止させ、安定保持状態で使用することが可能である。
【0036】
ノートパソコン1の使用後、第2の筐体3を第1の筐体2に対して閉じる際には、最初はフリクション機構20のフリクショントルクによる抵抗に遭遇して閉じられ、しかる後はフリクション機構20の回転カム部材21と固定カム部材23の回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dと内側カム部21d、23cが圧接状態から解除されることから、比較的弱いフリクショントルクと、ホップアップ機構5の弾性抵抗に抗して閉じられ、約15°の閉成角度からはホップアップ機構5が、ホップアップカム部材10を閉成方向へ回転付勢させるので、この回転トルクは回転伝達部材12を介して支持部材11へ伝達され、第2の筐体3は自動的に閉じられる。しかしながら、この時には回転カム部21aと固定カム部23aの外側カム部21e、23dの傾斜部21h、23gと内側カム部21d、23cの傾斜部21f、23fが圧接することになることから、ホップアップ機構5により第2の筐体3に対する自動閉成トルクは緩衝され、第2の筐体3は第1の筐体2に対して音を立てて急激に閉じられることはない。また、弾性手段8を径の異なる大小の圧縮コイルスプリング8a、8bを用いているので、ホップアップ機構5による動作を、ソフトな感じのフィーリングとすることができるものである。
【実施例2】
【0037】
図14は、本発明に係るヒンジ装置の他の実施例を示し、この実施例2に係るヒンジ装置Bは、その構成部材については、カムスライダーの構成を除いて実施例1のヒンジ装置Aと同じである。したがって、その構成部材については、実施例1のヒンジ装置Aのものと同じものは、ホップアップカム部材を除いて同じ指示記号で示してある。この実施例2のヒンジ装置Bのカムスライダー32が実施例1のカムスライダー7と異なるのは、その頂部の幅である。実施例2のカムスライダー32の頂部32aの幅n’は実施例1のカムスライダー7の幅nより広くn<n’の関係にある。
【0038】
したがって、ノートパソコン1の開閉装置として実施例1のヒンジ装置Aと実施例2のヒンジ装置Bを用いると、第2の筐体3の第1の筐体2に対する開成時に、最初はヒンジ装置Aのホップアップカム部材10のカム凸部10aがカムスライダー7の頂部7aから外れ、次いでヒンジ装置Bのホップアップ機構30のホップアップカム部材31のカム凸部31aがカムスライダー32の頂部32aから外れることになる。このため、一対のヒンジ装置A、Aが同時にホップアップ動作を行うものに比べて、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bのホップアップ機構5、30による第2の筐体3に対するホップアップ動作が急激のものとならず、緩やかなものとなることから、第2の筐体3と第1の筐体2の開閉操作時の操作性が向上することになる。
【0039】
次に、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bのホップアップ動作の始動時期を変えるその他の実施例としては、ヒンジ装置Aとヒンジ装置Bの各ホップアップカム部材10と31をヒンジシャフト9へ取り付ける周方向の位置を変えるようにしても良い。このように実施しても、ホップアップカム部材10、31のカム凸部10a、31aがカムスライダー7、32の頂部7a、32aより離れるタイミングを変えることができ、このことによって、急激なホップアップ動作を軽減して、操作性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明に係るヒンジ装置は、組み立てが容易で、第2の筐体の使用角度において安定したフリクショントルクを得ることができるものであり、上記したようにカムスライダー或はホップアップカム部材に工夫を凝らしたヒンジ装置を一対用いて開閉装置とすると、第2の筐体が第1の筐体に対して急激に音を立てて閉じることも防止できることから、操作性が向上し、携帯機器の中でもとくにノートパソコンに用いるヒンジ装置、或は開閉装置、或はこれらのヒンジ装置又は開閉装置を用いた携帯機器として好適なものである。
【符号の説明】
【0041】
A ヒンジ装置
B ヒンジ装置
1 ノートパソコン(携帯機器)
2 第1の筐体
2a キーボード部
3 第2の筐体
4 フリクショントルク発生手段
5 ホップアップ機構
6 取付部材
6b 両側板
7 カムスライダー
8 弾性手段
9 ヒンジシャフト
10 ホップアップカム部材
11 支持部材
12 回転伝達部材
20 フリクション機構
21 回転カム部材
22 フリクションワッシャー
23 固定カム部材
30 ホップアップ機構
31 ホップアップカム部材
32 カムスライダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構とから成り、前記ホップアップ機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられるスプリングケースを兼ねる取付部材と、この取付部材内に弾性手段により一方向へ摺動付勢されて収装されたカムスライダーと、前記取付部材の両側板に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、前記カムスライダーに圧接し前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられホップアップカム部材と、前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられたところの前記第2の筐体を取り付ける支持部材と、この支持部材の回転を前記ホップアップカム部材へ伝達する回転伝達部材と、で構成したことを特徴とする、ヒンジ装置。
【請求項2】
前記回転伝達部材を、前記ヒンジシャフトに回転可能に嵌着された筒状の部材で構成し、この回転伝達部材の一方の端部を前記支持部材と係合させ、他方の端部を前記ホップアップカム部材に係合させたことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構から成り、前記フリクション機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側部に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、このヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材と前記ヒンジシャフトとの間に設けたフリクショントルク発生手段と、で構成し、このフリクショントルク発生手段は、前記第2の筐体の前記第1の筐体に対する閉成位置から所定の開閉角度の範囲と、前記ホップアップ機構の前記第2の筐体に対するホップアップ動作終了時から所定の開閉角度の範囲との間に強いフリクショントルクを発生させるように成したことを特徴とする、ヒンジ装置。
【請求項4】
前記フリクショントルク発生手段は、さらに前記支持部材と共に回転する回転カム部材と、前記ヒンジシャフトに固定されて前記回転カム部材と圧接する固定カム部材と、前記回転カム部材と前記支持部材の間に前記ヒンジシャフトに回転規制されて設けられたフリクションワッシャーと、を有することを特徴とする、請求項3に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
携帯機器のキーボード部を設ける第1の筐体と、ディスプレイ部を設ける第2の筐体とを相対的に開閉する開閉装置であって、互いにホップアップ機構とフリクション機構を有する一対のヒンジ装置から成り、この一対のヒンジ装置の前記各ホップアップ機構のホップアップ時の動作開始時を互いにずらせたことを特徴とする、開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載の開閉装置は、請求項1又は請求項3に記載のヒンジ装置の一方或は双方のものを、組み合わせて一対とすることによって構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項7】
請求項1に記載のヒンジ装置を組み合わせて一対としたものを、請求項5に記載の開閉装置に用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記カムスライダーの形状を変えることにより、ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項8】
請求項1に記載のヒンジ装置を組み合わせて一対としたものを、請求項5に記載の開閉装置に用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記ホップアップカム部材の前記ヒンジシャフトに対する取付位置を変えることにより、前記ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項9】
請求項1乃至4に各記載のヒンジ装置を有することを特徴とする、携帯機器。
【請求項10】
請求項5乃至8に各記載の開閉装置を有することを特徴とする、携帯機器。
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構とから成り、前記ホップアップ機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられるスプリングケースを兼ねる取付部材と、この取付部材内に弾性手段により一方向へ摺動付勢されて収装されたカムスライダーと、前記取付部材の両側板に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、前記カムスライダーに圧接し前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられホップアップカム部材と、前記ヒンジシャフトに回転可能に取り付けられたところの前記第2の筐体を取り付ける支持部材と、この支持部材の回転を前記ホップアップカム部材へ伝達する回転伝達部材と、で構成したことを特徴とする、ヒンジ装置。
【請求項2】
前記回転伝達部材を、前記ヒンジシャフトに回転可能に嵌着された筒状の部材で構成し、この回転伝達部材の一方の端部を前記支持部材と係合させ、他方の端部を前記ホップアップカム部材に係合させたことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、互いにヒンジシャフトを共通にするホップアップ機構とフリクション機構から成り、前記フリクション機構を、前記第1の筐体側へ取り付けられる取付部材と、この取付部材の両側部に非回転に軸架されたヒンジシャフトと、このヒンジシャフトに回転可能に取り付けられた前記第2の筐体へ取り付けられる支持部材と、この支持部材と前記ヒンジシャフトとの間に設けたフリクショントルク発生手段と、で構成し、このフリクショントルク発生手段は、前記第2の筐体の前記第1の筐体に対する閉成位置から所定の開閉角度の範囲と、前記ホップアップ機構の前記第2の筐体に対するホップアップ動作終了時から所定の開閉角度の範囲との間に強いフリクショントルクを発生させるように成したことを特徴とする、ヒンジ装置。
【請求項4】
前記フリクショントルク発生手段は、さらに前記支持部材と共に回転する回転カム部材と、前記ヒンジシャフトに固定されて前記回転カム部材と圧接する固定カム部材と、前記回転カム部材と前記支持部材の間に前記ヒンジシャフトに回転規制されて設けられたフリクションワッシャーと、を有することを特徴とする、請求項3に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
携帯機器のキーボード部を設ける第1の筐体と、ディスプレイ部を設ける第2の筐体とを相対的に開閉する開閉装置であって、互いにホップアップ機構とフリクション機構を有する一対のヒンジ装置から成り、この一対のヒンジ装置の前記各ホップアップ機構のホップアップ時の動作開始時を互いにずらせたことを特徴とする、開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載の開閉装置は、請求項1又は請求項3に記載のヒンジ装置の一方或は双方のものを、組み合わせて一対とすることによって構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項7】
請求項1に記載のヒンジ装置を組み合わせて一対としたものを、請求項5に記載の開閉装置に用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記カムスライダーの形状を変えることにより、ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項8】
請求項1に記載のヒンジ装置を組み合わせて一対としたものを、請求項5に記載の開閉装置に用いるに当り、前記ホップアップ機構の前記ホップアップカム部材の前記ヒンジシャフトに対する取付位置を変えることにより、前記ホップアップ機構によるホップアップ動作開始時をずらせるように構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項9】
請求項1乃至4に各記載のヒンジ装置を有することを特徴とする、携帯機器。
【請求項10】
請求項5乃至8に各記載の開閉装置を有することを特徴とする、携帯機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−211606(P2012−211606A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76352(P2011−76352)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】
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