説明

ヒンジ装置

【課題】リッド表面にて形成される曲面の延長線上に当該リッドの取付けられる車体側部材の表面が来るように調整することのできる調整機構を設ける。
【解決手段】車体側部材9等への取付けの際の基礎となるベース部材3と、リッドまたはフード61の一方の端部側に取付けられる取付部材6と、これらベース部材3と取付部材6との間に設けられるものであってほぼ平行に設けられる2本のリンク1、2と、からなるとともにこれら2本のリンク1、2のそれぞれの端末部が上記ベース部材3及び取付部材6に対して回転自在なように連結されることによって形成される4リンク機構の4つの連結点のうちのいずれか一つのところに、いずれか一方のリンクの端末部側に設けられた長穴状の切欠穴及び当該切欠穴に係合するように形成されたピンからなる調整機構5を設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リッドあるいはフード等に設けられるヒンジ装置に関するものであり、特に、リッドあるいはフード等の取付面位置を微調整することのできるようにしたヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のヒンジ装置としては、例えば実公平6−24540号公報記載のもののようなラッゲージドアヒンジ構造等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−24540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のもの(先行技術に関するもの)は、フック状の形態からなるものであって、その一方の端部側にはリッドあるいはフード等が取付けられるとともに、もう一方の端部側には車体側に取付けられるヒンジベースに、ヒンジピンを介して回転自在なように取付けられるヒンジアームを主に形成されるようになっているものである。そして、このようなヒンジアームの一方の端部側に設けられるリッドあるいはフード等は、上記ヒンジピンの設けられた点を支点にして回転運動をし、本リッドあるいはフードの開閉作動が行なわれるようになっている。このような構成からなるものにおいて、上記リッドあるいはフードを閉じた状態において、リッドあるいはフードの上面と当該リッド等の周りに設けられる車体側部材の表面とは、全体の見栄え上の観点から段差の無い状態にしたい。すなわち、リッド等の表面にて形成される曲面の延長線上に上記車体側部材の表面が形成されるようにしたい。このように、上記リッド等が車体側部材に取付けられた状態において全体が同一の曲面状態となるようにするために、上記リッド等の組付け後において、ヒンジ装置周りの微調整作業が行なわれることとなる。このような微調整作業を円滑に行なうことのできるようにしたヒンジ装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、車両用のリッドまたはフードを車体側に取付ける役目を果たすヒンジ装置に関して、車体側部材等への取付けの際の基礎となるベース部材と、上記リッドまたはフードの一方の端部側に取付けられる取付部材と、これらベース部材と取付部材との間に設けられるものであってほぼ平行に設けられる2本のリンクと、からなるとともに、上記2本のリンクのそれぞれの端末部が上記ベース部材及び取付部材に対して回転自在なように連結されることによって形成される4リンク機構を基礎に、当該4リンク機構を形成する4つの連結点のうちのいずれか一つのところに、いずれか一方のリンクの端末部側に設けられた長穴状の切欠穴及び当該切欠穴に係合するように形成されたピンからなる調整機構を設け、更に、上記ベース部材のところであって、上記2本のリンクのうちのいずれか一方のリンクのベース部材への連結点近くのところに当該リンクの回転運動を規制するように形成されたストッパを設けるようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記第一の発明のものと同じである。すなわち、本発明においては、請求項1記載のヒンジ装置に関して、上記調整機構を、いずれか一方のリンクの端末部側に設けられた長穴状の切欠穴に係合するものであって径の値が異なるように形成された段付き状ピンを基礎に形成させるとともに、当該段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部のところに上記長穴状の切欠穴を係合させ、一方、当該段付き状ピンの径の値の大きい方の軸部のところにもう一方のリンクの端末部を回転運動可能なように係合させるようにした構成を採ることとした。
【0007】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記第二の発明のものと同じである。すなわち、本発明においては、請求項2記載のヒンジ装置に関して、上記調整機構を形成する段付き状ピンの径の値の大きい方の軸部のところに両フランジ付きのブッシュを介して一方のリンクの端末部を係合させるとともに、当該段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部のところに上記長穴状の切欠穴を係合させ、一方、このような状態の上記長穴状の切欠穴の外側のところに、上記段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部を上記一方のリンクに対して相対回転運動可能なように支持するものであって本段付き状ピンを長穴状の切欠穴を有するリンクに連結する役目を果たす保持部材を設けるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明である第一の発明について説明する。本発明によれば、上記構成を採ることにより、リッドが2本のリンクを介して車体側部材に取付けられてリッドが閉じられた状態において、リッドの表面が周りの車体側部材との間において同一の曲面を形成するように、リッドの取付け状態を調整することができるようになる。すなわち、リッドが閉じられてリンクの一つがストッパに係合した状態において、リッドの表面が周りの車体側部材との間において段差等があるような場合には、上記調整機構を形成する径の値の小さい側の軸部を上記長穴状の切欠穴内にて適当量移動させることによって、4リンク機構の連結点位置関係を微調整する。これによって、リッドが閉じられた状態において、その表面及びリッド表面の延長線上に周りの車体側部材の表面が来るようにすることができるようになり、全体の見栄を向上させることができるようになる。
【0009】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明について説明する。このものも、基本的には上記第一の発明のものと同じである。これらに加えて、本発明のものにおいては、上記調整機構を、いずれか一つのリンクの端末部付近に設けられた長穴状の切欠穴と、当該長穴状の切欠穴に係合するものであってもう一方のリンクの端末部付近に設けられた段付き状ピンと、からなるようにしたことである。このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部のところに長穴状の切欠穴を係合させるとともに、この長穴状の切欠穴に係合するように形成されたピンの軸部を移動させることによって、4リンク機構の作動軌跡を変化させることができるようになる。これによって、リッドが閉じられた状態における、その表面の端末部のところが、周りの車体側部材の表面との間において段差の無い状態に保持することができるようになる。すなわち、リンク機構を微調整することによって、全体を段差の無い状態にすることができるようになる。
【0010】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明について説明する。このものも、基本的には上記請求項2記載の発明である第二の発明のものと同じである。これらに加えて、本発明のものにおいては、段付き状ピンの径の値の大きい方の軸部のところに両フランジ付きのブッシュ、多くの場合にはプラスチック製のブッシュを設けるようにしたことである。そして、このようなブッシュのフランジ部のところに面接触をするように一方のリンクを取付けるようにしたので、二つのリンクは、その連結点において、プラスチック製ブッシュのフランジ部の面を介して相対滑り運動をすることとなり、二つのリンクの相対回転運動が円滑に行なわれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の全体構成を示す立面図である。
【図2】本発明の主要部を成すリンクの構成を示す展開斜視図である。
【図3】本発明におけるリンクの微調整態様を示す説明図である。
【図4】本発明の主要部を成す調整機構周りの構成を示す一部断面図である。
【図5】本発明の主要部を成す調整機構の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、図1ないし図5を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、図1に示す如く、車両用のリッドまたはフード61等を車体側に取付ける役目を果たすヒンジ装置に関するものである。その具体的構成は、車体側部材9等への取付けの際の基礎となるベース部材3と、上記リッドまたはフード61等の一方の端部側に取付けられる取付部材6と、これらベース部材3と取付部材6との間に設けられるものであってほぼ平行に設けられる2本のリンク1、2と、からなるとともに、当該2本のリンク1、2のそれぞれの端末部が上記ベース部材3及び取付部材6に対して相対回転運動可能なように連結されることによって形成される4リンク機構を基礎に形成されるようになっているものである。そして、このような4リンク機構を形成する4つの連結点(O11、O12、O21、22)のうちのいずれか一つのところ、本実施の形態においてはO21点のところに、いずれか一方のリンク(本実施の形態においてはリンク2)の端末部側に設けられた長穴状の切欠穴25及び当該切欠穴25に係合するように形成された段付き状ピン51等からなる調整機構5が設けられるようになっている(図4,図5参照)。また、このような構成からなる上記ベース部材3のところであって、上記2本のリンクのうちのいずれか一方のもの、本実施の形態においてはリンク2のベース部材3への連結点(O21)近くのところには当該リンク2の回転運動を規制するように形成されたストッパ4が設けられるようになっている(図1参照)。
【0013】
このような構成からなるものにおいて、上記リッド61の開閉運動を規制するリンク機構は、例えば図1ないし図3に示す如く、4リンク機構を基礎に形成されるようになっているものである。すなわち、車体側部材9に取付けられる際の基礎となるベース部材3と、当該ベース部材3の異なった2点(O11、O21)に回転可能なように取付けられる2つのリンク1、2と、これら2つのリンク1、2のそれぞれの先端部(O12、O22)のところに相対回転運動が可能なように取付けられるものであってリッド61等の取付けられる基礎となる取付部材6と、からなる4リンク機構が形成されるようになっているものである。
【0014】
そして、このような4リンク機構を形成する取付部材6のところには、例えば図1に示す如く、リッドまたはフード61等の端末部がボルト・ナット等からなる締結手段66等を介して取付けられるようになっているものである。このような構成からなる本ヒンジ装置を形成する上記リンク1、2の回転運動によって、リッド61等の開閉作動が行なわれるようになっているものである。そして更に、このような作動をするリッド61等が閉じられた状態においては本リッド61等の端末部は、その周りに形成される車体側部材9との間において段差の無い状態に設定されることが望ましい。このように、本リッド61等の周辺部が車体側部材9との間において段差の無い状態に調整をするための調整機構5が上記リンク2の取付部のところに設けられるようになっている(図1,図3参照)。
【0015】
次に、調整機構5の構成等について説明する。このものは、図1または図4に示す如く、一方のリンク、すなわち、本実施の形態においては下側に配置されるリンク2のベース部材3への取付部を成す端末部側に形成されるようになっているものである。具体的には、図5に示す如く、段付き状ピン51を基礎に、この段付き状ピン51の径の値の大きい方(大径側)の軸部511のところが両フランジ付きのプラスチック製のブッシュ53を介してベース部材3の縦壁部のところに取付けられるようになっている。そして、このような段付き状ピン51の径の値の小さい方(小径側)の軸部512のところには、もう一方のリンク2の端末部に形成された長穴状の切欠穴25が係合するようになっている。これによって、段付き状ピン51とベース部材3とは上記プラスチック製のブッシュ53を介して相対回転運動をすることができる。そして更に、このような状態の上記長穴状の切欠穴25の外側のところには、上記段付き状ピン51の径の値の小さい方(小径側)の軸部512を一方のリンク2側の長穴状の切欠穴25内の適当な位置のところに保持する保持部材52が設けられるようになっている。
【0016】
すなわち、図1において、リッド61等の面が周りの車体側部材9の表面に対して突出しているような場合には、図3における取付部材6の上面を下方側である−e側へ後退させるように調整機構5を調整する。具体的には、図3における段付き状ピン51の中心位置O21を所定の位置へと移動させる。そして、このような調整作業が済んだ後に、保持部材52の一方の面側に設けられた係合突起部522をリンク2の表面に食い込ませて固定する(図5参照)。そして更に、このような状態において、段付き状ピン51の径の値の小さい側(小径側)の軸部512の先端部515のところをヘッダ加工等にて押しつぶして固定し、段付き状ピン51とリンク2との間を固定する。このような工程を経ることによって、図1におけるリッド61の表面と周りの車体側部材9の表面とを同一の曲面上に来るように形成させることができるようになる。
【0017】
また、上記とは逆に、リッド61等の面が周りの車体側部材9の表面に対して落ち込んでいるような場合には、図3における取付部材6の上面を上方側である+e側へと押上げるように上記調整機構5を調整する。具体的には、図3及び図4における段付き状ピン51を形成する径の値の小さい側(小径側)の軸部512の中心位置O21が長穴状の上記切欠穴25内にて上記の場合とは逆の方向へ相対移動させるようにする。そして、このような位置(状態)にて、上記保持部材52等を介して、段付き状ピン51をリンク2に形成された切欠穴25内の所定の位置に固定させる。このような操作をすることによって、リッド61が閉じられた状態において、リッド61の表面と、その周りに設けられる車体側部材9の表面とは、同一の曲面上に形成されるようになり、全体的に段差のない、きれいな面が形成されることとなる。
【0018】
このように、本実施の形態のものにおいては、上記調整機構5を適宜操作することによって、リッド61が閉じられた状態においてリッド61の表面が周りの車体側部材9との間において同一の曲面を形成するように、リッド61の取付け状態を調整することができるようになっている。すなわち、リッド61が閉じられてリンク2がストッパ4に係合した状態において、リッド61の表面が周りの車体側部材9との間において段差等があるような場合には、上記調整機構5を形成する径の値の小さい側(小径側)の軸部512を上記長穴状の切欠穴25内にて適当量相対移動させることによって、4リンク機構の連結点位置関係を微調整する。これによって、リッド61が閉じられた状態において、その表面及びリッド表面の延長線上に周りの車体側部材9の表面が来るようにすることができるようになり、全体の見栄を向上させることができるようになった。
【0019】
また、本実施の形態のものにおいては、上記調整機構5を、一方のリンク2の端末部付近に設けられた長穴状の切欠穴25と、当該長穴状の切欠穴25に係合するものであってもう一方のリンク2の端末部付近に設けられた段付き状ピン51と、からなるようにしたので、この長穴状の切欠穴25に係合するように形成された段付き状ピン51の軸部512を移動させることによって、4リンク機構の作動軌跡を変化させることができる。これによって、リッド61が閉じられた状態における、その表面の端末部のところが、周りの車体側部材9の表面との間において段差の無い状態に、上記調整機構5を操作することによって円滑に行なうことができるようになった。
【0020】
また、本実施の形態のものにおいては、段付き状ピン51の径の値の大きい方の軸部511のところには両フランジ付きのブッシュ、具体的にはプラスチック製のブッシュ53が設けられるとともに、このようなブッシュ53のフランジ部533のところに面接触をするように一方のリンク2を取付けるようにしたので、二つのリンク1、2は、その連結点において、プラスチック製ブッシュ53のフランジ部533の面を介して相対滑り運動をすることができるようになり、二つのリンクの相対回転運動を円滑に行なわせることができるようになった。
【符号の説明】
【0021】
1 リンク
2 リンク
25 切欠穴
3 ベース部材
4 ストッパ
5 調整機構
51 段付き状ピン
511 軸部(大径側)
512 軸部(小径側)
515 先端部
52 保持部材
522 係合突起部
53 ブッシュ
533 フランジ部
6 取付部材
61 リッドまたはフード
66 締結手段
9 車体側部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のリッドまたはフードを車体側に取付ける役目を果たすヒンジ装置において、車体側部材等への取付けの際の基礎となるベース部材と、上記リッドまたはフードの一方の端部側に取付けられる取付部材と、これらベース部材と取付部材との間に設けられるものであってほぼ平行に設けられる2本のリンクと、からなるとともに、上記2本のリンクのそれぞれの端末部が上記ベース部材及び取付部材に対して回転自在なように連結されることによって形成される4リンク機構を基礎に、当該4リンク機構を形成する4つの連結点のうちのいずれか一つのところに、いずれか一方のリンクの端末部側に設けられた長穴状の切欠穴及び当該切欠穴に係合するように形成されたピンからなる調整機構を設け、更に、上記ベース部材のところであって、上記2本のリンクのうちのいずれか一方のリンクのベース部材への連結点近くのところに当該リンクの回転運動を規制するように形成されたストッパを設けるようにしたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒンジ装置において、上記調整機構を、いずれか一方のリンクの端末部側に設けられた長穴状の切欠穴に係合するものであって径の値が異なるように形成された段付き状ピンを基礎に形成させるとともに、当該段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部のところに上記長穴状の切欠穴を係合させ、一方、当該段付き状ピンの径の値の大きい方の軸部のところにもう一方のリンクの端末部を回転運動可能なように係合させるようにした構成からなることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
請求項2記載のヒンジ装置において、上記調整機構を形成する段付き状ピンの径の値の大きい方の軸部のところに両フランジ付きのブッシュを介して一方のリンクの端末部を係合させるとともに、当該段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部のところに上記長穴状の切欠穴を係合させ、一方、このような状態の上記長穴状の切欠穴の外側のところに、上記段付き状ピンの径の値の小さい方の軸部を上記一方のリンクに対して相対回転運動可能なように支持するものであって本段付き状ピンを長穴状の切欠穴を有するリンクに連結する役目を果たす保持部材を設けるようにした構成からなることを特徴とするヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280287(P2010−280287A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134778(P2009−134778)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390011545)株式会社ティムス (5)
【Fターム(参考)】