説明

ヒンジ部構造

【課題】ボード間の連結部の折り曲げ角度に高い自由度があり、安定した復元力を有し、軽量化、省スペース化及び低コスト化を図るのに有効なヒンジ部構造の提供する。
【解決手段】第一ボード10と第二ボード20とを薄肉部で連結したインテグラルヒンジ部30の構造であって、インテグラルヒンジ部30と直交する方向で且つ折り曲げ時に外側となる面に第一ボード10と第二ボード20とにまたがる収容凹部を形成し、当該収容凹部に引きバネ部材40を配置し、当該引きバネ部材40の一方の端部を第一ボード10に固定し、他方の端部を第二ボード20に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のボード間を連結した連結部のヒンジ構造に関し、特に複数のボード間をつなぐ薄肉部を設けることでインテグラルヒンジ部を形成し、このインテグラルヒンジ部を介して連結したボード間に当該ボード同士が平面状に復元する方向の弾性力を付勢したヒンジ構造に係る。
【背景技術】
【0002】
一対のボードあるいは部材を薄肉部で相互に回動自在にインテグラルヒンジ部を介して連結したヒンジ構造は、樹脂成形品の分野では公知である。
このように一対のボードあるいは部材をインテグラルヒンジ部を介して連結した場合に一方のボードに対して他方のボードがヒンジ部を中心にして折り曲げ可能であるとともに折り曲げ状態から平面状に復帰する方向に弾性付勢したものとしては、特許文献1に開示する自動車のラゲッジボード構造が公知である。
【0003】
しかし、特許文献1に開示するヒンジ部構造は、インテグラルヒンジ部と平行な方向にバネ部材を配設し、このバネ部材のねじり復元力にて一対のボードが折り曲げ状態から平面状になる方向に付勢したものであるために次のような技術的課題があった。
同公報に記載されているようにラゲッジボードに対して補助ボードが折れ曲がると、コイルスプリングのコイル部全体が斜めに自由変形(ねじり変形)するものである。
従ってまず第一にラゲッジボードに対して補助ボードが少しでも折れ曲がると復元力が発生するように設定するためには、補助ボードがラゲッジボードに対して水平状態で復元力がゼロになると現実的には、補助ボードが極かに上方に折れ曲がった状態では復元力が発生しないので、補助ボードが逆に下方に折れ曲がる方向に作用するレベルの予備的ねじれ力を加えておく必要があり、水平状態を維持するのが難しかった。
第二にラゲッジボードに対する補助ボードの折り曲げ角度が大きくなるにつれてコイル部全体のねじれ変形量が大きくなるためにこのコイル部全体の斜めになる角度も大きくなる。
しかし、このコイル部材の収納空間部の幅に制限があり、ねじれ量にも限界があることから、同公報に開示するコイル部材の両端部をそれぞれ樹脂プレートにて固定した部分にコイル部の端部がある程度、コイル部中心方向に移動するようにスライド機構を設ける必要があった。
樹脂プレートにてコイル部材の端部をスライド可能に溶着することは、部品点数が多くなり構造も複雑であり、高コストの要因となる。
また、スライド部のスライドに伴う異音が発生するという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−239086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ボード間の連結部の折り曲げ角度に高い自由度があり、安定した復元力を有し、軽量化、省スペース化及び低コスト化を図るのに有効なヒンジ部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第一ボードと第二ボードとを薄肉部で連結したインテグラルヒンジ部の構造であって、インテグラルヒンジ部と直交する方向で且つ折り曲げ時に外側となる面に第一ボードと第二ボードとにまたがる収容凹部を形成し、当該収容凹部に引きバネ部材を配置し、当該引きバネ部材の一方の端部を第一ボードに固定し、他方の端部を第二ボードに固定したことを特徴とする。
【0007】
ここで引きバネ部材は、バネ部材の両端部間に引張り力が発生した場合に収縮方向に復元力が生じるバネ部材をいい、一般的にはコイルスプリングが例として挙げられる。
本発明の特徴は、この引きバネ部材を一対のボード間に設けたインテグラルヒンジ部の折り曲げに対する復元力に用いた点にある。
引きバネ部材は本来、コイル部の両端間に引張り方向の伸びが発生した場合に縮み方向の弾性復元力が生じるようにしたものであるが、隣接ボード間のインテグラルヒンジの折り曲げ外側にこの引きバネ部材をインテグラルヒンジ部と直交する方向に配設し、両端部を隣接する各ボードにそれぞれ固定すると、ボードの折り曲げにより引きバネ部材が折り曲げられると同時にこのバネ部に引張り力が発生することに着目したものである。
【0008】
ここで、第一及び第二ボードは表裏両面の表皮材と当該表皮材の間にコア材を介在した積層ボードであり、表裏両面のうち一方の表皮材側にインテグラルヒンジ部を形成し、他方の表皮材側からプレス加工にて前記収容凹部を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明はインテグラルヒンジ部の折り曲げ外側になる面に、このインテグラルヒンジ部と直交する方向に収容凹部を形成するとともに、この収容凹部に引きバネ部材を配設し、当該引きバネ部材の両端部をそれぞれ対応するボードに固定したので、次の効果がある。
第一に両方のボードが平面状になる状態で引きバネ部材が自由状態になるように引きバネ部材の両端をそれぞれのボードに固定すれば、どのようなバネ定数の引きバネを用いても一対のボードが引きバネ部材が内側になるような逆方向の折り曲げ状態になることはない。
第二に従来のねじり力を利用した場合はバネ部材の両端部にスライド機構付きの固定部を設けないと充分な折り曲げ角度をとることができなかったのに対して、本発明に係るヒンジ部構造はそのようなスライド機構が不要であることから、固定構造が簡単で低コスト化を図ることができ、スライドによる異音が発生することもない。
また、ボードとして樹脂の積層ボードを用いると、プレス等により容易に引きバネ部材の収容凹部を形成することができ、さらに低コストに寄与する。
【0010】
本発明に係るボードのヒンジ部構造にあっては、複数のボードをインテグラルヒンジ部で連結(連設)した製品で折り曲げに対して復元力が必要なものに広く適用できる。
例えば、自動車のリアシートの前側に倒れる可倒式のシートバックの後方に有するラゲッジルーム、トランクルームと称される荷室のフロアに用いられるラゲッジボード、トランクボード等に適用すると、荷室側のメインボードに対して折り曲げ自在(回動自在)に連結したサブボードをシートバックのリクライニング角度に追随するように配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るヒンジ部構造の例を示し、(a)は引きバネ部材を取り付けた側の平面図を示し、(b)はA−A線断面図を示す。
【図2】一対のボードを折り曲げた状態を示す。
【図3】ヒンジ部の部品構成例を示し、(a)は平面視、(b)は側面視を示す。
【図4】本発明に係るヒンジ部構造をラゲッジボード(トランクボード)に適用した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るヒンジ部構造の例を以下図面に基づいて説明するが、本発明の趣旨に沿って適宜、設計変更ができる。
【0013】
本発明に係るヒンジ部構造は図1及び図3に示すように第一ボード10と第二ボード20とを表皮11,21側の薄肉部にてインテグラルヒンジ部30による連結をし、表皮(裏面)12,22側にインテグラルヒンジ部30とは直交する方向に収容凹部31を形成する。
この収容凹部に引きバネ部材40を配設し、引きバネ部材40の一方の端部41を第一ボード10にリベットやビス等の第一固定具51にて固定し、他方の端部42を第二ボード20に第一固定具と同様に第二固定具52を用いて固定する。
なお、本実施例ではリベットによる固定例を示すが、これに限定されない。
また、収容凹部31は引きバネ部材の両端部の固定部を含めて取り付ける長さの凹部でもよいが、安定した復元力を生じさせるには引きバネ部材40のコイル部のみを収容凹部に配置し、両端部41,42は表皮材12,22の面に固定するのが好ましい。
収容凹部31の深さもコイル部が完全に収容されている必要はなく、コイル部の外径よりも浅い収容凹部であってもよい。
【0014】
本実施例は第一、第二ボード10,20を表面となる表皮材11,21と裏面となる表皮材12,22の間にコア材13,23をサンドイッチ構造に積層した樹脂ボードの例になっている。
このような樹脂製の積層ボードを用いると、図3(b)に示すように上方から加熱したパンチ等でプレスするだけで、容易に収容凹部31を形成することができる。
引きバネ部材40の両端部41,42にはリング状に折り返した引掛け部を形成し、リベット51,52をリング状の引掛け部に挿入し、固定孔12b,22bを介してリベット止めした例になっているが、ビス等にてねじ止めにしてもよく固定方法に制限はない。
また、インテグラルヒンジ部30の構造も一対のボードの折り曲げ内側になる部位に薄肉部を有すれば、特に限定がない。
本実施例は、表皮材12,22をコア材13,23ともに反対側の表皮材11,21に溶着することで、傾斜部21a,22aを形成し、インテグラルヒンジにした例である。
【0015】
第一ボード10と第二ボード20とをこのように連結すると、図2に示すように例えば第二ボード20に対して第一ボード10が上方に折れ曲がる(回動する)と、引きバネ部材40が伸びるように折れ曲がり、縮む方向(直線状になる)方向に復元力が生じる。
この引きバネ部材40の復元力を利用すると、第二ボード20に対する第一ボード10の曲げ角度の自由度が高く、安定した復元力を得ることができる。
【0016】
図4は本発明に係るボードのヒンジ部構造を自動車のラゲッジボード(トランクボード)に適用した例である。
リアシート1はリクライニング式のシートバック2を有し、このシートバック2の後方に荷室等が設けられている。
荷室のフロアにメインボード(第一ボード)10を配置し、これにサブボード(第二ボード)20を本発明に係るヒンジ部構造を用いて連結する。
このようにすると、図4(a)に示すようにサブボード20が引きバネ部材40の伸び縮みによりシートバック2のリクライニング角度に追随し、荷室を広くするために図4(b)に示すようにシートバック2を前に倒すと、サブボード20がメインボード10に対して平面状に概ね水平になるので、ボード厚の薄い軽量で低コストのラゲッジボードとなる。
【符号の説明】
【0017】
10 第一ボード
20 第二ボード
30 インテグラルヒンジ部
31 収容凹部
40 引きバネ部材
51 第一固定具
52 第二固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ボードと第二ボードとを薄肉部で連結したインテグラルヒンジ部の構造であって、
インテグラルヒンジ部と直交する方向で且つ折り曲げ時に外側となる面に第一ボードと第二ボードとにまたがる収容凹部を形成し、
当該収容凹部に引きバネ部材を配置し、当該引きバネ部材の一方の端部を第一ボードに固定し、他方の端部を第二ボードに固定したことを特徴とするヒンジ部構造。
【請求項2】
前記第一及び第二ボードは表裏両面の表皮材と当該表皮材の間にコア材を介在した積層ボードであり、表裏両面のうち一方の表皮材側にインテグラルヒンジ部を形成し、他方の表皮材側からプレス加工にて前記収容凹部を形成したことを特徴とする請求項1記載のヒンジ部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201314(P2012−201314A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69831(P2011−69831)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】