説明

ヒーティングシステム

【課題】 輻射熱発生体より有効とされる遠赤外線・育成光線を放射すると同時に別の蓄熱体に熱伝導して蓄熱してから熱放射させ、さらに蓄熱体から輻射熱発生体に逆に熱伝導して遠赤外線・育成光線を輻射させることにより、元熱源の使用量を少なくし、省エネルギー性の高いヒーティングシステムの提供。
【解決手段】 内外二重管のうち内側の熱源管3に熱源体4を内装し、該熱源体4により熱源管3を介して外側の真空管2内に封入されている作動液5を加熱して作動させ、遠赤外線・育成光線2aを発生させると共に該遠赤外線・育成光線2aを輻射熱として外側の真空管2から放射し、外側の真空管2と接触している潜熱蓄熱体6熱伝導して内蔵している潜熱剤7に蓄熱してから熱を放射し、該潜熱蓄熱体6の温度を感知して、熱源体4を制御して環境温度を設定温度に保持する設定温度制御装置11を設け、潜熱蓄熱体6から外側の真空管2に熱を逆伝導させて遠赤外線・育成光線を輻射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射熱発生体より暖房に有効とされる熱エネルギーを放射すると同時に別の蓄熱体に熱伝導して蓄熱してから熱放射させ、さらに蓄熱体から輻射熱発生体に逆に熱伝導して有効とされる熱エネルギーを輻射させることにより、熱源の使用量を少なくし、省エネルギー、低コストとなるヒーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気熱源を使用した各種の暖房器具が周知であるが、これらの暖房器具は、石油やガスを燃料とする暖房器具に比べて、制御や管理が容易である反面、消費電力が多く、使用コストが高くなるという問題点があった。このような問題点を解決するために、電気ヒータを発熱させて得られた熱エネルギーを蓄熱しておき、電気ヒータの通電を停止してからでも蓄熱したエネルギーを放熱できるようにした技術が、例えば、特許文献1及び特許文献2などで周知である。
【0003】
前記特許文献1に記載の「掘りこたつ用暖房装置」には、シーズヒーター2を発熱させて得た熱エネルギーを蓄熱プレート3に保存させ、シーズヒーター2への通電を停止したときに蓄熱プレート3に蓄えた熱エネルギーを長い時間をかけて徐々に放熱させる構成が開示されている。また特許文献2に記載の「蓄熱式加熱装置、蓄熱素子およびそれを用いた座ぶとん、靴、ちょっき、こたつ、マットレス及び毛布」には、蓄熱体3を収納した槽2、蓄熱体3内に設けたヒータ4、空気循環用のダクト5、ダクト5の一部に設けたファン6、槽2の一部に設けた熱交換機8から構成された蓄熱装置100を、床(または路盤)1と熱的に結合し、蓄熱体3に蓄えた熱を必要量に応じて床(または路盤)1に搬送し、床(または路盤)1の温度を適正に保つ。この方法として熱交換器8と床(または路盤)1に設けた放熱用のパイプ10をパイプ11によって循環路を構成するよう連結し、その内部に入れた液体の循環量をポンプ8を用いて制御する、手段が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−265100号公報
【特許文献2】特開平5−312411号公報
【0005】
一方、熱源により暖房に有効とされる遠赤外線を発生させて放射する各種の暖房装置が周知である。その一つとして、熱源体に粉体からなる酸化マグネシウムを絶縁体として収容し、この酸化マグネシウムに粉体の中に熱源としての電気ヒータを挿入して加熱し、放熱する暖房装置が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1及び特許文献2に開示されている暖房装置は、いずれも電気ヒータにより1つの蓄熱体を加熱して蓄熱し、電気ヒータの通電を停止した状態でも、蓄熱体から熱放射して暖房できるようにしており、このため、電気ヒータのみで加温する場合に比べて省エネルギー化を達成している。しかし、この場合でも、さらに熱源使用量をさらに少なくし、より省エネルギー化を図ることが望まれている。
【0007】
また、前記熱源体により遠赤外線を発生させて放射する暖房装置、あるいは蓄熱体から発熱をさせる暖房装置においては、熱源としての電気ヒータを使用する場合、粉体の酸化マグネシウムの中に電気ヒータを挿入する工程が面倒であり、製造に多くの時間が掛かってコスト高になる、という問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、簡単な構成の装置で、有益な光線とされる遠赤外線・育成光線を発生させて熱放射し、この放射された遠赤外線・育成光線の一部を別の蓄熱体に熱伝導して蓄熱させてから熱放射させ、さらに、潜熱蓄熱体が保持する熱エネルギーを熱源として、遠赤外線・育成光線輻射熱発生体に逆伝導させ遠赤外線・育成光線を輻射させることにより、元熱源の使用量を大幅に少なくすることができ、電気ヒータを熱源とした場合100W以下の容量ですみ、省エネルギー化を図ることができるヒーティングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
A.内外二重管のうち径の細い内側の熱源管に熱源体を内装し、該熱源体により熱源管を介して径の太い外側の真空管内に封入されている作動液を加熱し、該作動液の気化・液化のサイクルにより遠赤外線・育成光線を発生させると共に、該遠赤外線・育成光線を輻射熱として外側の真空管から放射させ、該外側の真空管の外周面に潜熱蓄熱体の外周面を接触させて相互に熱伝導するようにし、潜熱蓄熱体が内蔵している潜熱剤に蓄熱させてから放熱し、該潜熱蓄熱体の温度を感知して前記熱源体を制御して環境温度を設定温度に保持する設定温度制御装置を設け、前記熱源体が加熱を停止している時でも潜熱蓄熱体から蓄熱エネルギーを放射し、かつ潜熱蓄熱体から外側の真空管に熱を逆伝導させて遠赤外線・育成光線を輻射させる。
【0010】
B.前記熱源管は、コアパイプにより形成して外側の真空管を長さ方向に貫通させて熱源体を内装し、外側の真空管は、熱伝導性及び熱放射性の良好な金属により形成し、潜熱蓄熱体は、同じく熱伝導性及び熱放射性の良好な金属により真空に、かつ外周面に放熱用のフィンを設けた蓄熱タンクにより形成し、外側の真空管と蓄熱タンクを接続金具を介して接触させて相互に熱伝導するように構成した。
C.前記熱源体は、グラファイトチューブ若しくは潜熱蓄熱剤をセラミックコーティングしたものにマカロニ状あるいはチョーク状に棒状成型の穴の中に挿入した電気ヒータ、若しくは、マカロニ状あるいはチョーク状に棒状成型した酸化マグネシウムの穴に挿入したカートリッジタイプの電気ヒータ、または循環する温熱水により構成され、前記作動液は、熱源体により加熱されると沸騰して気化し、ジェットとなって外側の真空管の管壁と衝突して遠赤外線・育成光線を発生させて該外側の真空管から放射させ、前記潜熱蓄熱体の蓄熱剤は、パラフィンワックス、高密度ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレンワックスの混合体により構成し、その配合比率、膨張係数、潜熱量を調節可能とした。
D.ヒーティングシステムにより得られた加熱体は、机下の暖房、吊り下げ式または床置き式のこたつ、室内暖房、床暖房、温室暖房、オイルパネルヒーター、足温器などに利用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記A.(請求項1)ないしD.(請求項4)の構成、手段を有することにより、以下の効果を奏することができる。
イ.上記A.の構成により、遠赤外線・育成光線輻射熱発生体である外側の真空管は、熱源体により作動液を加熱すると、作動液により有益な光線とされる遠赤外線・育成光線を発生し、外側の真空管から輻射熱として放射させ、周囲を暖めると共に、外側の真空管と接触している潜熱蓄熱体に熱伝導して内蔵している潜熱剤に蓄熱し、放熱する。潜熱蓄熱体が暖房するのに十分な温度に達すると、熱源体は加熱を停止し、潜熱蓄熱体は蓄熱エネルギーを放熱フィンより空気伝熱放熱しながら環境温度を保ち、かつ潜熱蓄熱体が保持する蓄熱エネルギーを外側の真空管に逆伝導させ遠赤外線・育成光線を放射させる、潜熱蓄熱体の蓄熱エネルギーが減少して潜熱剤の温度が下がり、潜熱蓄熱体の温度が所定温度より低くなると、これを設定温度制御装置が感知して再度熱源体を作動させ、外側の真空管の温度を高めて潜熱蓄熱体の温度を所定温度まで上昇させ、所定温度に達すると熱源体の加熱を停止する。また、外側の真空管の温度が低下すると、潜熱蓄熱体が保持する熱エネルギーを外側の真空管に逆伝導して遠赤外線・育成光線を輻射させる。このようなサイクルを繰り返すことにより、ヒーティングシステムは環境温度を所望温度に保持しながら暖房することができる。その結果、熱源体の使用量を大幅に少なくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。本発明のヒーティングシステムをこたつに用い、熱源体を電気ヒータとした場合に、従来のものでは100V・1200W必要としたが、本発明では100V・100W以下にすることができ、非常に高い省エネルギー性を実現した。
【0012】
ロ.上記B.の構成により、熱源体を内装する内側の熱源管をコアパイプにより形成し、外側の真空管内に作動液を封入しているので、有益な光線とされる遠赤外線・育成光線を発生させて輻射熱として放射する外側の真空管を、簡単に構成することができる。また、外側の真空管及び放熱用のフィンを設けた蓄熱タンクを、熱伝導性及び熱放射性の良好な金属管により形成し、両者を接続金具により接触させて相互に熱伝導するので、両者間は効率よく熱伝導され、蓄熱タンクでは放熱用フィンからも熱放射されて暖房効率を高めることができる。
ハ.上記C.の構成により、熱源体を電気ヒータまたは温熱水の循環により構成したので、暖房装置としての使用範囲を拡大することができる。また、作動液を熱源体により加熱するだけで、有益な光線とされる遠赤外線。育成光線を発生させて外側の真空管から輻射熱として放射させることができる。さらに、潜熱蓄熱体の蓄熱剤をパラフィンワックス、高密度ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレンワックスの混合して構成し、そのを配合比率を特殊にすることで、安定した潜熱量、放熱性が得られる。
ニ.上記D.の構成により、ヒーティングシステムにより得られた熱源は、机下の暖房、吊り下げ式または床置き式のこたつ、室内暖房、床暖房、温室暖房、オイルパネルヒーター、足温器など、広い範囲の暖房器具に安定して利用することができる。オイルパネルヒーターの場合には、従来のものでは100V・1500W必要としたが、本発明では100V・240Wでよかったため、非常に高い省エネルギー性を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明によるヒーティングシステムのフローチャート、図2は、本発明によるヒーティングシステムを吊り下げ式のこたつに適用した斜視図、図3は、本発明によるヒーティングシステムを吊り下げ式のこたつに適用した正面断面図(a)、同床置き式のこたつに適用した正面断面図(b)、図4は、本発明によるヒーティングシステムをオイルパネルヒーターに適用した正面断面図(a)、同他のオイルパネルヒーターに適用した正面断面図(b)、図5は、本発明によるヒーティングシステムを足温器、または床暖房に適用した正面断面図、図6は、本発明のヒーティングシステムにより発生する遠赤外線・育成光線の波長帯の説明図である。
【0014】
図1〜図3において、符号1は本発明に係るヒーティングシステムであり、机下の暖房、吊り下げ式または床置き式のこたつ、室内暖房、オイルパネルヒーター、足温器などの一般家庭の暖房装置、また、床暖房、温室暖房などに用いられる。図2及び図3の(a)は吊り下げ式のこたつ、図3の(b)は床置き式のこたつの実施例で、管体からなる遠赤外線・育成光線輻射熱発生体2は、内外二重管により構成されている。二重管のうち内側の径の細い熱源管3はコアパイプにより形成され、電源4aから通電される電気ヒータ4が内装され、遠赤外線・育成光線輻射熱発生体である径の太い外側の真空管2を長さ方向に沿って貫通している。電気ヒータ4には電源コード4bが接続され、給電される。
【0015】
外側の真空管2内には作動液5が封入されている。この作動液5は、電気ヒータ4によりコアパイプ3を介して加熱されると沸騰し、ジェット(蒸気流)となって外側の真空管2の管壁と衝突し、気化・液化のサイクルにより有益な光線といわれている遠赤外線、育成光線を発生させ、該外側の真空管2から輻射熱として放射する。外側の真空管2は、蓄熱タンクである四角の箱体に潜熱剤7を内蔵し、下側に向け多数の放熱フィン8を突出させた潜熱蓄熱体である蓄熱タンク6の左右両側に、接続金具9及び締め付けバンド10を介して接触し、相互に熱伝導するように連結されている。そして、蓄熱タンク6は、外側の真空管2から伝導された熱を蓄熱剤7に蓄熱してから熱放射する。また、電気ヒータ4の電源回路には、蓄熱タンク6の温度を感知して、電気ヒータ4を制御して環境温度を設定温度に保持する設定温度制御装置(サーモスタット)11を設けている。
【0016】
外側の真空管2は、熱伝導性及び熱放射性の良好な金属管(この実施例ではアルミニウム製であるが、銅製、ニッケル製、チタン製などにしても良い)により真空に形成されたものである。この外側の真空管2に対し、その長さ方向に沿って熱源管であるコアパイプ3が偏心して貫通され、内外二重管を形成している。このコアパイプ3の一端側から電気ヒータ4が挿入され、電源コード4bが接続されている。
【0017】
潜熱蓄熱体である蓄熱タンク6は、外側の真空管2と同様に熱伝導性及び熱放射性の良好な金属により形成されている。図2及び図3の(a)の吊り下げ式のこたつの場合は、放熱フィン8を下向きに突出させ、図3の(b)の床置き式のこたつの場合には、放熱フィン8を上向きに突出させているほかは、吊り下げ式のこたつと同じ構造である。蓄熱タンク6に内蔵される蓄熱剤7は、液体、固体、半液状体、粒体、粉体など何れでも良いものであるが、この実施例では、パラフィンワックス65〜95%、高密度ポリエチレンワックス5〜10%、低密度ポリエチレンワックス10〜20%の配合比率(混合体)により構成し、融点の範囲を115〜160°F、膨張係数を4%以下としている。また、蓄熱剤7の潜熱量を204J/gとした場合の配合比率を、パラフィンワックス85%、高密度ポリエチレンワックス5%、低密度ポリエチレンワックス10%とし、最も好ましい比率としている。これらの配合比率は変更可能である。なお、本実施例の蓄熱剤7は、高温安定性・膨張係数の低下・サイクル試験1万回をパスした材料を使用している。
【0018】
図6に示すように、太陽光線からの赤外線電磁波は、現在のところ大きく近赤外線、中間赤外線、遠赤外線の3つに区分されている。この中で、一般に遠赤外線といわれる波長帯の中でも、中間赤外線に近い波長(6〜14μm)を「育成光線」とし、特に生物に対し有益な作用をもたらす波長帯として分類・区分けされている。地球上に存在する全ての物質はいろいろな分子で構成され、その分子の質量の構造上の集まり方、配列の状態、結合力の違いにより、それぞれ特有の振動と回転の周波数を持っている。つまり、全ての物質は、それぞれ特有の伸縮動、変角振動をしているが、その分子と同じ振動数を持った波長が当たった場合、分子の振動は一層激しくなる。この現象を「共鳴吸収現象」といい、激しくなった振動により分子と分子との摩擦が増大し摩擦熱が生じる。これが暖かくなるメカニズムである。
【0019】
本発明による外側の真空管2には、管内部が真空に保たれた状態で作動液5が封入されており、電気ヒータ4により加熱されると沸騰し、ジェット(蒸気流)となり、電気ヒータ4からの潜熱を含み真空管2の表面に高速で多量の熱を移動させると同時に、管内ジェットの音速に近い早さで管内壁へ衝突し、気化・液化のサイクルにより管表面から直接的な熱と共に赤外線電磁波と超音波が放射される。育成光線は、赤外線電磁波の中でも特に電気極性を持つ分子(水分子など)に対し「共鳴吸収現象」、即ち、運動エネルギーを与える。この育成光線を植物に用いた場合、植物の体内にある水分が活性化することにより、栄養分を吸収し、解毒作用をし、排泄作用を円滑にするなど、細胞本来の働きが促進される。そして、種子の細胞分裂が活発化し、植物の葉先の隅々まで養分が行き届き、炭酸同化作用が促進される。本発明による外側の真空管2において水の吸収選択性(水分子の基準振動数を波長に換算すると、2.65,2.73,6.27μmとなる)がある波長帯を出していることは、東京都立産業技術研究所による分光放射率測定により確認されている。このことから、遠赤外線・育成光線は、動物に対しても有益に作用するものと推測されている。
【0020】
次に、上記構成の吊り下げ式または床置き式のこたつの作用について説明する。遠赤外線・育成光線輻射熱発生体である外側の真空管2は、熱源体である電気ヒータ4により加熱されると作動液5が沸騰し、ジェットとなって、外側の真空管2の管壁と衝突して気化・液化のサイクルにより有益な光線とされる遠赤外線、育成光線を発生させて該外側の真空管2から輻射熱として放射させ、周囲を暖めると同時に、外側の真空管2と接触している潜熱蓄熱体である蓄熱タンク6に熱伝導して内蔵している潜熱剤7に蓄熱する。蓄熱タンク6が暖房するのに十分な温度に達すると、電気ヒータ4は加熱を停止し、外側の真空管2及び蓄熱タンク6は放熱しながら環境気温を暖め、熱放射により蓄熱タンク6の温度が低下すると、熱源体4より熱源管3を通し作動液5を反応させ、外側の真空管2から熱伝導を受け続け、蓄熱タンク6の温度が所定温度より低くなると、これをサーモスタット11が感知して電気ヒータ4を作動させ、外側の真空管2の温度を高めて蓄熱タンク6の温度を所定温度まで上昇させ、所定温度に達すると電気ヒータ4の加熱を停止する。また、外側の真空管2の温度が低下したときは、蓄熱タンク6の熱を逆伝導して外側の真空管2を加熱し、遠赤外線・育成光線を輻射させる。このようなサイクルを繰り返えして、ヒーティングシステム1は環境温度を所望温度に保持しながら省エネルギー暖房をする。なお、この実施例の吊り下げ式または床置き式のこたつの暖房熱源は、部屋暖房としても用いることができる。
【0021】
図4(a)及び(b)に、本発明のヒーティングシステム1を移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター12に用いた実施例を示す。(a)図において、キャスタ14を装備した支持台13に、オイル又は蓄熱剤7aを内蔵した潜熱蓄熱体としての蓄熱タンク6aを立設している。蓄熱タンク6aの左右両側面には、前記こたつと同様の外側の真空管2を、上下に2個ずつ左右のものの位置を上下にずらせて、各々接続金具9aを介して取り付けている。また、蓄熱タンク6aの左右側面には、多数の放熱フィン8aを突出させている。
【0022】
図4(b)に示す移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター12は、蓄熱タンク6aを、キャスタ14を装備した支持台13に支持したタンクに、上方に延びる循環路を連通させ、内蔵しているオイル又は潜熱剤7aを循環させるようにしたものである。この蓄熱タンク6aのタンク部分の下部と、循環路の上部位置に、それぞれ接続金具9aを介して外側の真空管2を取り付けている。また、蓄熱タンク6aの循環路から左右両側に、多数の放熱フィン8aを突出させている。
【0023】
このような構成の移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター12においては、外側の真空管2が電気ヒータ4により加熱されると遠赤外線。育成光線を発生させ、外側の真空管2から輻射熱として放射させて環境温度を暖めると同時に、接続金具9aを介して蓄熱タンク6aに熱伝導して内蔵しているオイル又は潜熱剤7aに蓄熱する。蓄熱タンク6aが暖房するのに十分な温度に達すると、電気ヒータ4は加熱を停止し、外側の真空管2及び蓄熱タンク6aは放熱しながら環境気温を暖め、熱放射により蓄熱タンク6aの温度が低下すると、接続金具9aを介して外側の真空管2から熱伝導を受け続け、蓄熱タンク6aの温度が所定温度より低くなると、これをサーモスタット11が感知して電気ヒータ4を作動させ、外側の真空管2の温度を高めて蓄熱タンク6aの温度を所定温度まで上昇させ、所定温度に達すると電気ヒータ4の加熱を停止する。また、外側の真空管2の温度が低下したときは、蓄熱タンク6aの熱を逆伝導して外側の真空管2を加熱し、遠赤外線・育成光線を輻射させる。このようなサイクルを繰り返えして、ヒーティングシステム1は環境温度を所望温度に保持しながら省エネルギーの暖房を行う。
【0024】
図5は、本発明のヒーティングシステム1を床暖房、または足温器15に用いた実施例である。断熱材16の上側ほぼ中央部に外側の真空管2を設置し、この外側の真空管2の左右両側に、接続金具9aを介して蓄熱剤7bを内蔵した蓄熱タンク6b、6bを配設している。そして、外側の真空管2、接続金具9a及び蓄熱タンク6b、6bの上面が平らになるように構成されている。なお、この実施例においては、熱源としての電気ヒータ4に代えて、ボイラーから供給される温熱水をコアパイプ3に循環する構成にしても良い。この場合には、蓄熱タンク6b、6bの温度を検出して所定温度より低下した場合に、ボイラーからの温熱水の供給温度を上昇させるセンサを設ける。
【0025】
このような構成の床暖房または足温器15においては、外側の真空管2が電気ヒータ4または温熱水の循環により加熱されると遠赤外線。育成光線を発生させ、外側の真空管2から輻射熱として放射させて床または足を暖めると同時に、接続金具9bを介して蓄熱タンク6bに熱伝導して内蔵している潜熱剤7bに蓄熱する。蓄熱タンク6bが暖房するのに十分な温度に達すると、電気ヒータ4または温熱水の循環による加熱を停止し、外側の真空管2及び蓄熱タンク6bは放熱しながら床または足を暖め、熱放射により蓄熱タンク6bの温度が低下すると、接続金具9aを介して外側の真空管2から熱伝導を受け続け、蓄熱タンク6bの温度が所定温度より低くなると、これをサーモスタット11またはセンサが感知して電気ヒータ4またはボイラーを作動させ、外側の真空管2の温度を高めて蓄熱タンク6bの温度を所定温度まで上昇させ、所定温度に達すると電気ヒータ4または温熱水の循環による加熱を停止する。このようなサイクルを繰り返えして、ヒーティングシステム1は環境温度を所望温度に保持しながら省エネルギー暖房を行う。
【0026】
本発明におけるヒーティングシステム1の外側の真空管2は、潜熱蓄熱体である蓄熱タンク4を設けることなく、外側の真空管2を単独で温室やビニールハウス等の園芸施設における暖房装置、あるいは冷房装置として利用することができる。即ち、園芸施設内に外側の真空管2を配設し、熱源には電気ヒータ4か、あるいはボイラーから供給される温熱水をコアパイプ3に循環させて用いる。この場合、外側の真空管2の温度を所定温度に保つために、環境温度を検出して所定の温度になるように電気ヒータ4をオン、オフするサーモスタット、または環境温度を検出してボイラーを制御して循環する温熱水の温度が所定温度になるようにするセンサを設ける。また、温熱水に代えてコアパイプ3に冷水を通すと、外側の真空管2からは遠赤外線。育成光線は発生しないが、冷房機能を発揮することができる。暖房装置として利用する場合、外側の真空管2から遠赤外線、育成光線が輻射熱として放射されるので、植物の育成に効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のヒーティングシステムは、簡単な構成の装置で、有益な光線とされる遠赤外線・育成光線を発生させて熱放射し、この放射された遠赤外線・育成光線の一部を別の蓄熱体に熱伝導して蓄熱させてから熱放射し、さらに、この蓄熱エネルギーを再度、遠赤外線・育成光線輻射熱発生体に逆伝導させ遠赤外線・育成光線を放熱することにより、元熱源の使用量を大幅に少なくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるヒーティングシステムのフローチャートである。
【図2】本発明によるヒーティングシステムを吊り下げ式のこたつに適用した斜視図である。
【図3】本発明によるヒーティングシステムを吊り下げ式のこたつ(a)、床置き式のこたつ(b)に適用した正面断面図である。
【図4】本発明によるヒーティングシステムを移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター(a)、他の移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター(b)に適用した正面断面図である。
【図5】本発明によるヒーティングシステムを足温器、または床暖房に適用した正面断面図である。
【図6】本発明によるヒーティングシステムによって発生する遠赤外線・育成光線の波長帯の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ヒーティングシステム
2 外側の真空管(遠赤外線・育成光線輻射熱発生体) 2a 輻射熱(遠赤外線・育成光線)
3 熱源管(コアパイプ)
4 熱源体(電気ヒータまたは温熱水の循環) 4a 電源またはボイラー 4b 電源コード
5 作動液
6、6a,6b 蓄熱タンク(潜熱蓄熱体)
7,7b 蓄熱剤 7a オイル又は潜熱剤
8,8a 放熱フィン
9,9a,9b 接続金具(接触熱伝導体)
10 締め付けバンド
11 設定温度制御装置(サーモスタット)
12 移動式オイル又は潜熱剤パネルヒーター
13 支持台
14 キャスタ
15 床暖房または足温器
16 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外二重管のうち径の細い内側の熱源管に熱源体を内装し、該熱源体により熱源管を介して径の太い外側の真空管内に封入されている作動液を加熱し、該作動液の気化・液化のサイクルにより遠赤外線・育成光線を発生させると共に、該遠赤外線・育成光線を輻射熱として外側の真空管から放射させ、該外側の真空管の外周面に潜熱蓄熱体の外周面を接触させて相互に熱伝導するようにし、潜熱蓄熱体が内蔵している潜熱剤に蓄熱させてから放熱し、該潜熱蓄熱体の温度を感知して前記熱源体を制御して環境温度を設定温度に保持する設定温度制御装置を設け、前記熱源体が加熱を停止している時でも潜熱蓄熱体から蓄熱エネルギーを放射し、かつ潜熱蓄熱体から外側の真空管に熱を逆伝導させて遠赤外線・育成光線を輻射させることを特徴とするヒーティングシステム。
【請求項2】
前記熱源管は、コアパイプにより形成して外側の真空管を長さ方向に貫通させて熱源体を内装し、外側の真空管は、熱伝導性及び熱放射性の良好な金属により形成し、潜熱蓄熱体は、同じく熱伝導性及び熱放射性の良好な金属により真空に、かつ外周面に放熱用のフィンを設けた蓄熱タンクにより形成し、外側の真空管と蓄熱タンクを接続金具を介して接触させて相互に熱伝導するように構成したことを特徴とする請求項1記載のヒーティングシステム。
【請求項3】
前記熱源体は、グラファイトチューブ若しくは潜熱蓄熱剤をセラミックコーティングしたものにマカロニ状あるいはチョーク状に棒状成型の穴の中に挿入した電気ヒータ、若しくは、マカロニ状あるいはチョーク状に棒状成型した酸化マグネシウムの穴に挿入したカートリッジタイプの電気ヒータ、または循環する温熱水により構成され、前記作動液は、熱源体により加熱されると沸騰して気化し、ジェットとなって外側の真空管の管壁と衝突して遠赤外線・育成光線を発生させて該外側の真空管から放射させ、前記潜熱蓄熱体の蓄熱剤は、パラフィンワックス、高密度ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレンワックスの混合体により構成し、その配合比率、膨張係数、潜熱量を調節可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載のヒーティングシステム。
【請求項4】
ヒーティングシステムにより得られた加熱体は、机下の暖房、吊り下げ式または床置き式のこたつ、室内暖房、床暖房、温室暖房、オイルパネルヒーター、足温器などに利用されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のヒーティングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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