説明

ヒートシンク及びこれを備えた照明装置

【課題】放熱性能を高めることができるヒートシンクを提供すること。
【解決手段】背面に複数の放熱フィン12を平行に立設して成るベースプレート11の表面上のLED(熱源)2からの熱を放熱するためのヒートシンク10において、前記ベースプレート11にスリット11a(又は孔)を形成する。又、前記スリット11a(又は孔)の面積の総和を前記ベースプレート11の表面積に対して(1/5〜4/5)に設定する。従って、熱伝導による冷却フィン12からの放熱に加えてベースプレート11のスリット11a(又は孔)を通過する気流によって放熱による対流効果が促進されるため、ヒートシンク10の放熱性が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源としてLED等の発光素子が搭載されたベースプレートの背面に複数の放熱フィンを立設して成るヒートシンクとこれを備え多照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の消費電力が加速度的に上昇するのに伴って該半導体の発熱量が増加しているため、高性能の冷却システムに対する需要が高まっている。又、小型化のために高密度に集積された回路においても消費される電力は増加傾向にあり、発熱量と同時に発熱密度も急激に上昇している。
【0003】
半導体であるLED(発光ダイオード)やレーザーダイオード等の発光素子においても、明るさの向上に伴って従来の表示用としての用途から照明用としての用途も増えており、その消費電力も増加傾向にある。
【0004】
ところが、LED等の発光素子の最大の問題は、投入した電力の大部分が熱となり、自身が発する熱によって発光効率と寿命が低下するという点である。特に、大電力を消費する発光素子にあっては、チップ当たり数Wもの発熱を受け止められるだけの放熱構造が求められており、この発熱を伝導させるために従来の樹脂基板に代えて熱伝導率の高いメタルコア基板やセラミック基板が実用化されている。
【0005】
又、ベースプレートの背面に複数の放熱フィンを立設して成るヒートシンクによる放熱によってLEDの発熱を抑える冷却構造も実用化されている。ここで、従来のLED照明装置のヒートシンクによる冷却構造の一例を図4に示す。
【0006】
即ち、図4は従来のLED照明装置のヒートシンクによる冷却構造の一例を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のD−D線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図であり、図示のLED照明装置101のヒートシンク110は、熱伝導率の高いアルミニウム合金製であって、矩形プレート状のベースプレート111の背面に、上下方向に長い矩形プレート状の複数枚(図示例では20枚)の放熱フィン112を左右方向に適当な間隔で垂直に立設して構成されている。そして、このヒートシンク110の表面には、縦横3列、計9個のLED102を実装して成る矩形プレート状の基板103が取り付けられており、該基板103とこれに実装されたLED102は矩形のアウタレンズ104によって覆われている。
【0007】
而して、9個のLED102に通電されてこれらが発光すると、該LED102から発せられる熱はヒートシンク110のベースプレート111から各放熱フィン112ヘと伝導し、各放熱フィン112から空気中へと放熱されることによってLED102が冷却されてその温度上昇が抑えられる。
【0008】
ところで、特許文献1には、ヒートシンクの放熱性能を高めるために、筒状体が並列に複数連結された放熱フィンの下端とベースプレート上面との間に空隙を形成する構成が提案されている。これによれば、放熱フィンの下端とベースプレート上面との間の空隙から外部の空気が流入するため、熱源からの熱が伝導するベースプレートの上面を空気が流れてヒートシンクの放熱性が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−159995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に示す従来のヒートシンク110においては、その放熱性能を高めるためには当該ヒートシンク110のサイズを大きくしてその放熱面積を増やす必要があり、このようにヒートシンク110のサイズを大きくするとLED照明装置101が大型化及び項重量化するという問題が発生する。
【0011】
又、ヒートシンク110に対流によるほう熱性能が該ヒートシンク110の設置方向によって低下するという問題があった。特に、ヒートシンクのベースプレートが空気の対流方向(下から上)と垂直になるようにヒートシンクを取り付けた場合、特許文献1や図5に示す構成を採用すると、下から上昇した空気が上方のベースプレート及び側方の放熱フィンに阻まれることによって対流が停滞し、放熱フィンによる対流効果が十分に発揮されない。そのため、ヒートシンクの放熱性が低下するという問題があった。照明装置として使用する場合においては、光源である発光素子の照射方向を任意の方向に向ける必要があるため、特にこの問題が起こり易い。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、放熱性能を高めたヒートシンク及び小型化と軽量化を図ることができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、背面に複数の放熱フィンを平行に立設して成るベースプレートの表面上の熱源からの熱を放熱するためのヒートシンクにおいて、前記ベースプレートにスリット又は孔を形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記スリット又は孔の面積の総和を前記ベースプレートの表面積に対して(1/5〜4/5)に設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の照明装置は、前記ベースプレートの表面又は同ベースプレートの表面上に設けられた基板上に実装された発光素子を前記熱源とする請求項1又は2記載のヒートシンクを有することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記発光素子を覆うアウタレンズを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、3及び4記載の発明によれば、ヒートシンクのベースプレートにスリット又は孔を形成したため、熱伝導による冷却フィンからの放熱に加えてベースプレートのスリット又は孔を通過する気流によって放熱による対流効果が促進される。このため、ヒートシンクの放熱性が高められる。このようにヒートシンクの放熱性能が高められるため、ヒートシンクを小型・軽量化することができ、ベースプレートにスリット又は孔を形成することによるヒートシンクの軽量化とも相俟って照明装置の小型化と軽量化を実現することができる。
【0018】
又、照明装置の光の照射方向が上向きや下向きである場合には放熱による対流効果が高められるためにヒートシンクの放熱性能が一層高められる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、ヒートシンクに形成されたスリット又は孔の面積の総和がベースプレートの面積に対して占める割合を(1/4〜4/5)の範囲に設定することによって、ヒートシンクの放熱性能が効果的に高められる。即ち、ベースプレートに形成されたスリット又は孔の面積の総和がベースプレートの面積に対して占める割合は、熱伝導と対流による放熱のバランスに影響し、両者の間にはトレードオフの関係が成立するが、その割合が(1/5〜4/5)の範囲にあるときにヒートシンクの放熱性能が効果的に高められることが実験的に確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るヒートシンクを備えるLED照明装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るヒートシンクを備えるLED照明装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係るヒートシンクを備えるLED照明装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図である。
【図4】従来のLED照明装置の冷却構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のD−D船断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明に係るLED照明装置の冷却構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図である。
【0023】
本実施の形態に係るLED照明装置1には、光源であるLED2の冷却構造としてヒートシンク10が備えられている。ここで、ヒートシンク10は、熱伝導率の高いアルミニウム合金製であって、ベースプレート11の背面に、上下方向に長い矩形プレート状の複数枚(図示例では20枚)の放熱フィン12を左右方向に適当な間隔で垂直に立設して構成されている。
【0024】
而して、本実施の形態においては。ヒートシンク10の前記ベースプレート11には横方向の4つのスリット11aが上下方向に適当な間隔で形成されている。この結果、ベースプレート11は、スリット11aによって横方向に細長いプレート片11Aに3分割されており、これらのプレート片11Aには、光源である3つのLED2が横方向に適当な間隔で実装された基板3がそれぞれ取り付けられており、各基板3とこれらに実装された3つのLED2はアウタレンズ4によって正面側からそれぞれ覆われている。従って、本実施の形態に係るLED照明装置1においては、計9つのLED2が光源として使用されている。ここで、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成されたスリット11aの面積の総和がベースプレート11の面積に対して占める割合は(1/5〜4/5)に設定されている。
【0025】
以上のように構成されたLED照明装置1において、計9個のLED2に通電されてこれらが発光すると、各LED2から出射する光は、アウタレンズ4を透過して前方(図1(a)の手前側、(d)の左方)へと出射されて前方の照明に供される。
【0026】
又、各LED2の発光によって発生する熱は、ヒートシンク10のベースプレート11から各放熱フィン12ヘと伝導し、各放熱フィン12から空気中へと放熱されることによってLED2が冷却されるとともに、ベースプレート11に形成されたスリット11aを通過する気流によって放熱による対流効果が促進されるため、ヒートシンク10の放熱性が高められ、各LED2の温度上昇が抑えられてその発光効率と寿命が高められる。このようにヒートシンク10の放熱性能が高められるため、該ヒートシンク10を小型・軽量化することができ、ベースプレート11にスリット11aを形成することによるヒートシンク10の軽量化とも相俟ってLED照明装置1の小型化と軽量化を実現することができる。
【0027】
そして、LED照明装置1の光の照射方向が上向きや下向きである場合には放熱による対流効果がヒートシンク10のベースプレート11に形成された4つのスリット11aによって高められるために該ヒートシンク10の放熱性能が一層高められる。
【0028】
又、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された4つのスリット11aの面積の総和がべ^スプレート11の面積に対して占める割合を(1/5〜4/5)の範囲に設定することによって、ヒートシンク10の放熱性能が効果的に高められる。即ち、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された4つのスリット11aの面積の総和がベースプレート11の面積(スリット11aを含む面積)に対して占める割合は、熱伝導と対流による放熱のバランスに影響し、両者の間にはトレードオフの関係が成立するが、その割合が(1/5〜4/5)の範囲にあるときにヒートシンク10の放熱性能が効果的に高められることが実験的に確かめられた。具体的には、ベースプレート11のスリット11aの面積の総和がベースプレート11の面積に対して占める割合が1/5より小さい場合及び4/5よりも大きい場合にはLED2の温度が何れも140℃であるのに対して、(1/5〜4/5)である場合にはLED2の温度は110℃まで下がることが確認された。
【0029】
尚、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に4つのスリット11aを形成したが、スリット11aの形状と数は任意に設定することができる。
【0030】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図2に基づいて以下に説明する。
【0031】
図2は本発明の実施の形態2に係るヒートシンクを備えるLED照明装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図であり、本図においては図1において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0032】
本実施の形態は、ヒートシンク10のベースプレート11の中央部に4つの矩形の孔11bを形成するとともに、同ベースプレート11の周囲に各2ずつ、計12の矩形状の切欠き11cを形成したことを特徴としている。従って、アウタレンズ4は、その正面視形状がヒートシンク10のベースプレート11と同一形状にとされている。又、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された4つの孔11bの面積の総和がベースプレート11の面積に対して占める割合は(1/5〜4/5)に設定されている。
【0033】
而して、各LED2の発光によって発生する熱は、ヒートシンク10のベースプレート11から各放熱フィン12ヘと伝導し、各放熱フィン12から空気中へと放熱されることによってLED2が冷却されるとともに、ベースプレート11に形成された4つの孔11b及び12の切欠き11cを通過する気流によって放熱による対流効果が促進されるため、ヒートシンク10の放熱性が高められ、各LED2の温度上昇が抑えられてその発光効率と寿命が高められる。
【0034】
又、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された4つの孔11bの面積の総和がベースプレート11の面積に対して占める割合を(1/5〜4/5)の範囲に設定したため、前述の理由によってヒートシンク10の放熱性能が効果的に高められる。
【0035】
従って、本実施の形態においても、ヒートシンク10の放熱性能が高められるため、該ヒートシンク10を小型・軽量化することができ、ベースプレート11に4つの孔11bと12の切欠き11cを形成することによるヒートシンク10の軽量化とも相俟ってLED照明装置1の小型化と軽量化を実現することができる。
【0036】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を図3に基づいて以下に説明する。
【0037】
図3は本発明の実施の形態3に係るヒートシンクを備えるLED照明装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は側面図、(e)は背面図、(f)は斜視図であり、本図においても図1において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0038】
本実施の形態は、ヒートシンク10のベースプレート11の中央部に1つの矩形の孔11bを形成したことを特徴としている。そして。本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された1つの孔11bの面積がベースプレート11の面積に対して占める割合が(1/5〜4/5)に設定されている。
【0039】
而して、本実施の形態においても、各LED2の発光によって発生する熱は、ヒートシンク10のベースプレート11から各放熱フィン12ヘと伝導し、各放熱フィン12から空気中へと放熱されることによってLED2が冷却されるとともに、ベースプレート11に形成された1つの孔11bを通過する気流によって放熱による対流効果が促進されるため、ヒートシンク10の放熱性が高められ、各LED2の温度上昇が抑えられてその発光効率と寿命が高められる。
【0040】
又、本実施の形態では、ヒートシンク10のベースプレート11に形成された1つの孔11bの面積がベースプレート11の面積に対して占める割合を(1/4〜4/5)の範囲に設定したため、前述の理由によってヒートシンク10の放熱性能が効果的に高められる。
【0041】
従って、本実施の形態においても、ヒートシンク10の放熱性能が高められるため、該ヒートシンク10を小型・軽量化することができ、ベースプレート11に孔11bを形成することによるヒートシンク10の軽量化とも相俟ってLED照明装置1の小型化と軽量化を実現することができる。
【0042】
尚、実施の形態2,3ではヒートシンク10のベースプレート11に矩形の孔11bを形成したが、ベースプレート11に形成される孔11bの形状と数は任意である。
【0043】
ところで、以上の実施の形態では、光源(熱源)としてLEDを使用するLED照明装置とこれに備えられるヒートシンクに対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、LED以外のレーザーダイオード等の発光素子を光源として使用する照明装置とこれに備えられたヒートシンクに対しても同様に適用可能である。
【0044】
又、以上の実施の形態では、LEDは基板上に実装されているが、LED等の発光素子がヒートシンクのベースプレートに直接実装されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ライトアップ照明、スタジアム照明、街路灯照明、道路灯照明、一般照明等の用途に供せられる照明装置とこれに備えられたヒートシンクに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 LED照明装置
2 LED(熱源)
3 基板
4 アウタレンズ
10 ヒートシンク
11 ベースプレート
11a ベースプレートのスリット
11b ベースプレートの孔
11c ベースプレートの切欠き
12 放熱フィン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に複数の放熱フィンを平行に立設して成るベースプレートの表面上の熱源からの熱を放熱するためのヒートシンクにおいて、
前記ベースプレートにスリット又は孔を形成したことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記スリット又は孔の面積の総和を前記ベースプレートの表面積に対して(1/5〜4/5)に設定したことを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記ベースプレートの表面又は同ベースプレートの表面上に設けられた基板上に実装された発光素子を前記熱源とする請求項1又は2記載のヒートシンクを有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
前記発光素子を覆うアウタレンズを設けたことを特徴とする請求項3記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−93419(P2013−93419A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234088(P2011−234088)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】