説明

ヒートシンク及びこれを用いた電子機器

【課題】ヒートシンクの側面部における空気の淀みを低減する。
【解決手段】本発明に係るヒートシンク1は、発熱素子の放熱を促進させるための放熱部材15と、放熱部材15を流通する冷却風Aを発生させる送風機2とを備え、送風機2は、冷却風Aが放熱部材15の外縁部の内側だけでなく外縁部の外側にも流通するように構成される。送風機2の回転軸12の位置Xは、放熱部材15の外縁部の内側の冷却領域の中心位置Yからずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載される発熱素子を冷却するためのヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の電子機器において、CPU等の発熱素子を冷却するために、ヒートシンクが利用されている。一般的なヒートシンクは、当該電子機器の内部においてファンの回転等により強制的に空気を対流させることにより、冷却作用を実現する。
【0003】
特許文献1に係るヒートシンクは、放熱効率を安価に高めることを課題として、第1の空気の流路を形成するように受熱部に接続され、受熱部からの熱を第1の空気の流路を通過する空気により放熱する第1の放熱部と、受熱部より離間し、第1の空気の流路の空気が流入可能で第1の空気の流路より狭い第2の空気の流路を形成するように第1の放熱部に接続され、第1の放熱部からの熱を放熱する第2の放熱部とを有するものである。
【0004】
また、ヒートシンクに関する他の先行技術として、特許文献2〜5が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/054490号
【特許文献2】特開2002−134973号公報
【特許文献3】特開2003−282801号公報
【特許文献4】特開2007−172076号公報
【特許文献5】特開2009−076708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4は、ヒートシンク101を搭載した電子機器の内部構成を例示している。当該例に係るヒートシンク101は、タワー型のコンピュータ102内のマザーボード103に搭載され、メインCPU104を冷却することを主要な目的とするものである。マザーボード103は、ケーシング105の側面に対して平行に(地面に対して垂直に)固定されている。ヒートシンク101は、メインCPU104の上面に覆い被さるように配置され、マザーボード103に固定されている。また、マザーボード103には、グラフィックボード106が固定されている。グラフィックボード106は、マザーボード103に対して垂直に(地面に対して平行に)配置されている。グラフィックボード106には、発熱素子としてのCPU107が搭載されている。
【0007】
ヒートシンク101は、送風ユニット111及び放熱ユニット112を有している。送風ユニット111は、ファン等を含んで構成され、矢印Bの方向に冷却風を発生させる。放熱ユニット112は、フィン等を含んで構成され、メインCPU104と熱伝導率の高い部材を介して熱的に接続している。送風ユニット111により発生された冷却風は、放熱ユニット112の内部を流通して、排気ユニット115を介してケーシング105の外部に排出される。
【0008】
上記図4に示すヒートシンク101においては、送風ユニット111により吸入された全ての吸気B1は、放熱ユニット112内に吐出され、冷却風Bとなる。このような構造により、ヒートシンク101の側面部においては、空気の流動が少なく、局所的な空気の淀みが生ずる傾向にある。そのため、当該例のように、ヒートシンク101の側面部にグラフィックボード106等の発熱要素が存在する場合には、図4中領域Sで示すような部分に、熱の停滞が生ずる場合がある。
【0009】
このような局所的な空気の淀みに起因する問題は、上記特許文献1〜5に開示される構成をもってしても解決することはできない。
【0010】
そこで、本発明は、ヒートシンクの側面部における空気の淀みを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、発熱素子の放熱を促進させるための放熱部材と、前記放熱部材を流通する冷却風を発生させる送風機とを備え、前記送風機は、前記冷却風が前記放熱部材の外縁部の内側だけでなく前記外縁部の外側にも流通するように構成されるヒートシンクである。
【0012】
また、本発明の他の態様は、少なくとも1つの発熱素子と、上記ヒートシンクとを有する電子機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、送風機により生ずる冷却風が、放熱部材の内部だけでなく、その外部にも流通するため、ヒートシンクの側面部における空気の流動性が向上する。これにより、ヒートシンクの側面部に発熱素子が配置される場合であっても、熱の停滞が防止され、十分な冷却効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係るヒートシンクの構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すヒートシンクを右斜め後方から見た斜視図である。
【図3】実施の形態1に係るヒートシンクを搭載した電子機器の内部構成を示す図である。
【図4】ヒートシンクを搭載した電子機器の内部構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係るヒートシンク1の構成を示している。ヒートシンク1は、送風ユニット2、放熱ユニット3、及び固定ユニット4を有している。
【0016】
送風ユニット2は、多翼ファン(以下、ファンと略記する)11、ファン11が固定される回転軸12、回転軸12を回転させる図示しない駆動機構、ファンガード13等から構成される。本実施の形態においては、ファン11が回転することにより、矢印Aの方向に冷却風が発生する。
【0017】
放熱ユニット3は、複数のフィン15、熱伝導部材16,17等から構成される。各フィン15は、アルミ等の高い熱伝導率を有する材料から構成され、積層構造を有している。各フィン15の間には空間が形成されており、送風ユニット2からの冷却風は当該空間を通過する。熱伝導部材16,17は、発熱素子と各フィン15とを熱的に接続するものであり、フィン15と同様に高い熱伝導率を有する材料から構成される。熱伝導部材16,17が発熱素子に接触することにより、発熱素子の熱は効率良く各フィン15に伝達される。
【0018】
固定ユニット4は、送風ユニット2及び放熱ユニット3を所定の部材、例えばCPU等の発熱素子が搭載された基板等に固定するものである。本実施の形態に係る固定ユニット4は、4つの脚部19を有している。
【0019】
図1及び図2中、一点鎖線Xは、送風ユニット2の回転軸12の位置を示しており(以下、回転軸位置Xと称する)、一点鎖線Yは、放熱ユニット3のフィン15の積層領域(冷却領域)の中心を通り冷却風の流通方向と平行な線の位置を示している(以下、冷却領域中心位置Yと称する)。本実施の形態に係るヒートシンク1においては、回転軸位置Xと冷却領域中心位置Yとが一致しておらず、両者の間に距離Lのずれが存在している。本実施の形態においては、回転軸位置Xが冷却領域中心位置Yに対して(冷却風の進行方向に対して)左側にずれている。当該ずれにより、図2に示すように、送風ユニット2のファン11の外縁部21が、放熱ユニット3のフィン15の外縁部22より外側に露出する。
【0020】
上記のような送風ユニット2と放熱ユニット3との位置関係により、送風ユニット2から吐出される冷却風は、放熱ユニット3のフィン15の内部を流通する内部冷却風A1と、フィン15の外縁部22の外側を流通する外部冷却風A2とに分流される。
【0021】
図3は、上記ヒートシンク1を搭載したコンピュータ(電子機器)30の内部構造を示している。コンピュータ30は、ケーシング31、マザーボード32、グラフィックボード33、排気ユニット34、電源ユニット35、ドライブベイ36、コネクタ37、ヒートシンク1等を有している。
【0022】
マザーボード32は、ケーシング31内においてケーシング31の側面と平行に(地面に対して垂直に)固定されている。マザーボード32には、発熱素子であるメインCPU41、ヒートシンク1、メモリ42、グラフィックボード33等が固定されている。メインCPU41は、ヒートシンク1の主要な冷却対象である。ヒートシンク1は、メインCPU41に覆い被さるように配置され、脚部19によりマザーボード32に固定されている。この時、上記熱伝導部材16,17がメインCPU41に接触する。
【0023】
グラフィックボード33は、マザーボード32に対して垂直に(地面に対して平行に)固定されている。グラフィックボード33には、発熱素子であるCPU45が搭載されている。当該CPU45は、ヒートシンク1の上記外部冷却風A2が流通する側に位置している。
【0024】
排気ユニット34は、ケーシング32内部の空気を外部に排出するためのものである。本発明は、排気ユニット34の構成に限定を要するものではない。例えばファン、電動モータ、制御回路等から構成される一般的な排気ユニット34を利用することができる。本実施の形態においては、ヒートシンク1から吐出された内部冷却風A1及び外部冷却風A2が効率良く排出される位置に排気ユニット34が配置されている。
【0025】
上記構成により、外部冷却風A2が、グラフィックボード33の発熱素子であるCPU45の近傍を流通する。これにより、CPU45近傍の空気が淀むことが防止され、良好な冷却効果が得られる。
【0026】
このように、本実施の形態に係るヒートシンク1を利用することにより、送風機構の増設、増大化等を要することなく、コンピュータ30内部の局所的な空気の淀みを解消することが可能となる。
【0027】
尚、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【0028】
例えば、ヒートシンクの具体的形態として、図1及び図2を示したが、本発明の構成要素を同図の送風ユニット2、放熱ユニット3等の形態に限定的に解釈するべきではない。本発明は、冷却風を発生させるあらゆる形態の送風機、放熱効果を有するあらゆる形態の放熱部材(ユニット)を適用することが可能なものである。
【0029】
また、上記実施の形態においては、外部冷却風A2を発生させる手法として、回転軸位置Xと冷却領域中心位置Yとをずらすことのみを示したが、本発明はこの手法に限定されるものではない。例えば、ファン12の径を放熱ユニット3の外径より大きくすること等が考えられる。
【0030】
更に、ヒートシンクを利用する電子機器の例として、タワー型のコンピュータ30を例示したが、本発明に係るヒートシンクがその他各種の電子機器にも利用可能であることは明らかである。本発明に係るヒートシンクは、強制対流式の冷却機構を採用する各種機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ヒートシンク
2 送風ユニット(送風機)
3 放熱ユニット(放熱部材)
4 固定ユニット
11 (多翼)ファン
12 回転軸
13 ファンガード
15 フィン
16 熱伝導板
17 熱伝導ブリッジ
19 脚部
30 コンピュータ(電子機器)
31 ケーシング
32 マザーボード
33 グラフィックボード
34 排気ユニット
35 電源ユニット
36 ドライブベイ
37 コネクタ
41 メインCPU
42 メモリ
45 CPU
A1 内部冷却風
A2 外部冷却風
X 回転軸位置
Y 冷却領域中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子の放熱を促進させるための放熱部材と、
前記放熱部材を流通する冷却風を発生させる送風機と、
を備え、
前記送風機は、前記冷却風が前記放熱部材の外縁部の内側だけでなく前記外縁部の外側にも流通するように構成される、
ヒートシンク。
【請求項2】
前記送風機は、ファン部材及び当該ファン部材を回転させる回転軸を有し、
前記回転軸が、前記放熱部材の外縁部の内側の冷却領域の中心からずれている、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記冷却風の流通方向が、前記発熱部材が固定された面に対して平行である、
請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
少なくとも1つの前記発熱素子と、請求項1〜3のいずれか1つに記載のヒートシンクとを有する電子機器。
【請求項5】
第1の発熱素子及び第2の発熱素子を有し、
前記第1の発熱素子は、前記ヒートシンクの前記放熱部材により直接的に冷却され、
前記第2の発熱素子は、前記ヒートシンクの前記外縁部の外側を流通する冷却風が流通する側に配置される、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1の発熱素子は、第1の基板に固定された素子であり、
前記第2の発熱素子は、前記第1の基板に立設された第2の基板に固定された素子である、
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1の基板は、マザーボードである、
請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2の基板は、グラフィックボードである、
請求項7に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−243806(P2012−243806A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109553(P2011−109553)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】