説明

ヒートシールコネクタ

【課題】マイグレーションの発生や抵抗値の増大を抑制でき、導電回路の狭ピッチ化やコストの削減を図ることができる安価なヒートシールコネクタを提供する。
【解決手段】絶縁フィルム層1の表面に導電回路2Aを形成して複数の電気電子部品の導通接続に使用されるコネクタであり、導電回路2Aを金属薄膜により形成するとともに、この導電回路2Aの接続部に導電ペーストを印刷して接続端子5Aを積層形成する。また、これら導電回路2Aと接続端子5Aのうち少なくとも接続端子5Aに異方導電接着剤層6を積層形成する。絶縁フィルム層1に体積の小さい金属薄膜を積層して導電ライン3Aを形成するので、例え高湿時や結露時に導電回路2Aに電圧が印加しても、マイグレーションの発生することがなく、短絡事故やシステムの破壊を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶回路や配線板等からなる電気電子部品の電気的な接続に使用されるヒートシールコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートシールコネクタは、図5に示すように、絶縁フィルム層1の表面に導電回路2がパターン形成され、この導電回路2に複数の接続端子5が接続形成されており、この複数の接続端子5に、配線板等の電子機器に電気的に接続する異方導電接着剤層6が積層形成されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
導電回路2は、複数の導電ライン3が所定の間隔で一列に配列形成されることにより形成されている。各導電ライン3は、絶縁フィルム層1の表面に銀粒子あるいはカーボン粒子を含有する導電ペーストが細長い線条に塗布されて乾燥硬化することで形成される。また、各接続端子5は、絶縁フィルム層1の表面に上記導電ペーストと同様の導電ペーストが細い線条に塗布されて乾燥硬化し、各導電ライン3の端部に揃えて一体化されることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−236944号公報
【特許文献2】特開2005−149898号公報
【特許文献3】特開2006−318638号公報
【特許文献4】特開平7−122320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるヒートシールコネクタは、以上のように絶縁フィルム層1の表面に銀粒子含有の導電ペーストが塗布されることにより、導電回路2の導電ライン3や接続端子5が形成されるので、例えば高湿時や結露時に導電回路2に電圧が印加されると、導電ライン3の銀イオンが溶出して非金属媒体の内部等を横切って移動する現象、すなわちマイグレーション(エレクトロマイグレーションともいう)が生じ、短絡事故やシステムの破壊を招くおそれがある。
【0006】
係るマイグレーションの発生を防止するには、導電ライン3や接続端子5を金属薄膜により形成すれば良いが、接続端子5を金属薄膜で単に形成すると、薄い接続端子5に異方導電接着剤層6の導電粒子が圧接して穴が開き、電子機器の電気的な接続に支障を来たしたり、接続信頼性の低下を招くことがある。また、導電ペーストに銀粒子が含有される場合には、高価なので、コストの削減を図ることができず、導電ペーストにカーボン粒子が含有される場合には、抵抗値が増大したり、導電ライン3の狭ピッチ化を図ることができないという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、マイグレーションの発生や抵抗値の増大を抑制することができ、導電回路の狭ピッチ化やコストの削減を図ることができる安価なヒートシールコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、絶縁層の少なくとも表裏いずれかの面に導電回路を形成したものであって、
導電回路を金属薄膜により形成し、この導電回路の少なくとも接続部に導電ペーストを塗布して接続端子を積層形成し、これら導電回路と接続端子のうち少なくとも接続端子に異方導電接着剤層を積層したことを特徴としている。
【0009】
なお、絶縁層には、導電回路の接続部以外の領域を保護する絶縁性のレジスト層を積層形成することができる。
また、導電回路を、金属蒸着膜あるいは金属スパッタ膜により形成することができる。
また、導電回路を、金属薄膜のケミカルエッチングにより形成することが可能である。
また、導電回路を、レーザによる金属薄膜のドライエッチングにより形成することも可能である。
【0010】
また、ヒートシールコネクタを製造する場合には、絶縁層に金属薄膜を積層して導電回路をパターニングし、この導電回路の複数の導電ラインの端部に導電ペーストを塗布して乾燥硬化させることにより接続端子を形成し、導電ラインの端部以外の領域にレジスト層を設け、その後、接続端子上に異方導電接着剤を塗布して乾燥硬化させることにより、異方導電接着剤層を形成すれば良い。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における絶縁層は、電気的な絶縁性を確保できるのであれば、シートやフィルムを特に問うものではない。また、導電回路は、絶縁層の表面、裏面、表裏面に形成することができる。異方導電接着剤層は、接続端子だけではなく、導電回路の一部と接続端子とにそれぞれ積層することもできる。さらに、本発明に係るヒートシールコネクタは、少なくとも液晶回路や配線板等からなる電気電子部品の電気的な接続に使用することができる。
【0012】
本発明によれば、絶縁層に体積の小さい金属薄膜を積層して導電回路を形成するので、例え高湿時や結露時等に導電回路に電圧が印加しても、マイグレーションの発生することが少ない。また、接続端子を金属薄膜で形成するのではなく、導電性の導電ペーストにより所定の厚さに形成するので、接続端子に異方導電接着剤層の導電粒子が強く接触して穴等が開き、電気的な接続に支障を来たすことが少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マイグレーションの発生や抵抗値の増大を抑制することができ、しかも、導電回路の狭ピッチ化やコストの削減を図ることができるという効果がある。
【0014】
また、導電回路を金属蒸着膜により形成すれば、導電回路を比較的安価に得ることができる。また、導電回路を金属スパッタ膜とすれば、均質な薄さの導電回路を容易に得ることができる。
また、導電回路を、金属薄膜のケミカルエッチングにより形成すれば、導電回路に歪みが生じるのを抑制したり、簡易な大量生産が期待できる。
さらに、導電回路を、レーザによる金属薄膜のドライエッチングにより形成すれば、導電回路を微細に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るヒートシールコネクタの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るヒートシールコネクタの実施形態における絶縁層、導電回路、接続端子を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係るヒートシールコネクタの実施形態における導電回路と接続端子とを模式的に示す部分説明図である。
【図4】本発明に係るヒートシールコネクタの実施形態における効果を説明するための部分説明図である。
【図5】従来のヒートシールコネクタを模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態におけるヒートシールコネクタは、図1ないし図4に示すように、薄い絶縁フィルム層1に導電回路2Aを形成して複数の電気電子部品の導通接続に使用されるコネクタであり、導電回路2Aを1μm以下の厚さを有する導電性の金属薄膜により形成し、この導電回路2Aの接続部に導電ペーストを印刷して複数の接続端子5Aを積層形成し、これら導電回路2Aの接続部と複数の接続端子5Aのうち少なくとも複数の接続端子5Aに異方導電接着剤層6を積層形成するようにしている。
【0017】
絶縁フィルム層1は、特に限定されるものではないが、例えば強靭性、寸法安定性、絶縁性等に優れるポリエチレンテレフタレートやポリエステルフィルム等からなる所定の薄いフィルムを使用して可撓性を有する平面矩形に形成され、10〜80μm、好ましくは20〜50μmの厚さとされる。
【0018】
導電回路2Aは、絶縁フィルム層1の表面に、引き回し用の複数の導電ライン3Aが所定の間隔で横一列に配列形成されることにより形成され、複数の導電ライン3Aの両端部以外の領域に絶縁性を有する平面矩形のレジスト層4が保護層として覆着される。各導電ライン3Aは、絶縁フィルム層1の表面長手方向に、マイグレーションの発生防止が期待できる厚さ100nm程度の薄い金属薄膜が直線的な細長い線条に積層して加工されることで形成される。この導電ライン3Aは、図3や図4に示すように、必要に応じて太く形成されたり、細くされ、両端部、換言すれば、接続部も選択的に細く形成される。
【0019】
金属薄膜は、具体的には安価なアルミニウム、銅等からなる金属蒸着膜あるいは金属スパッタ膜の積層により形成される。また、レジスト層4は、例えばポリメチルメタクリレート等の樹脂組成物がスクリーン印刷されることにより積層形成される。
【0020】
各接続端子5Aは、導電回路2Aの導電ライン3Aの両端部、換言すれば、接続部上に銀粒子を含有した導電ペーストがそれぞれ重ねてスクリーン印刷され、乾燥硬化することで所定の肉厚に積層形成される。
【0021】
異方導電接着剤層6は、導電粒子を含有した異方導電接着剤が絶縁フィルム層1の表面端部における複数の接続端子5A上にスクリーン印刷されるとともに、乾燥硬化することで積層形成され、加熱と加圧により接着性を発現して電気電子部品の接続端子に電気的に接着する。
【0022】
この異方導電接着剤層6は、加熱と加圧により接着性を発現するタイプであれば、熱可塑性や熱硬化性のいずれのタイプでも良く、硬化剤、加硫剤、劣化防止剤、粘着付与剤等が必要に応じて添加される。また、異方導電接着剤の導電粒子は、特に限定されるものではないが、例えば金、銀、銅、カーボン粒子、カーボン粒子に金属を被覆した粒子等があげられる。
【0023】
上記構成において、ヒートシールコネクタを製造する場合には、先ず、絶縁フィルム層1用に用意したフィルムの表面に金属薄膜を積層して導電回路2Aをパターニングし、この導電回路2Aの複数の導電ライン3Aの両端部に導電ペーストをそれぞれスクリーン印刷して乾燥硬化させることにより接続端子5Aを所定の厚さに積層形成し、導電ライン3Aの両端部以外の領域に樹脂組成物をスクリーン印刷して乾燥硬化させることによりレジスト層4を覆着する。
【0024】
金属薄膜を導電回路2Aにパターニングする手法としては、均質な薄膜を形成することができ、しかも、組成の制御が容易なスパッタリング法等があるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、微細加工に好適なレーザによるドライエッチングで金属蒸着膜を導電回路2Aにパターニングしても良い。この場合のレーザとしては、低歪みで良質な切断面を得ることのできるYAGレーザ、高出力で高い熱伝導率のYVOレーザ等が該当する。
【0025】
接続端子5Aとレジスト層4とを配設したら、フィルムの表面端部における複数の接続端子5A上に異方導電接着剤をスクリーン印刷して乾燥硬化させ、レジスト層4と略同じ高さの異方導電接着剤層6を積層形成した後、フィルムを所定の大きさに型抜きして絶縁フィルム層1を形成すれば、ヒートシールコネクタを製造することができる。
【0026】
上記構成によれば、絶縁フィルム層1の表面に導電ペーストを塗布して導電回路2Aの導電ライン3Aを形成するのではなく、体積の小さい金属薄膜を積層して導電ライン3Aを形成するので、例え高湿時や結露時に導電回路2Aに電圧が印加しても、マイグレーションの発生することがなく、短絡事故やシステムの破壊を有効に防ぐことができる。また、導電回路2Aの全体をレジスト層4と異方導電接着剤層6とにより完全に被覆してマイグレーションを防止する必要がないので、ヒートシールコネクタ自体の短絡検査等、電気的な検査が実に容易になる。
【0027】
また、複数の導電ライン3A間のピッチを拡大してマイグレーションを防止する必要もないので、複数の導電ライン3A間のピッチを狭めたり、各導電ライン3Aの幅を狭めることができる。また、導電回路2Aを、1μm以下の厚さを有する金属薄膜により形成するので、例え金属薄膜をスパッタリング法やレーザ加工により導電回路2Aに形成し、接続部を除く複数の導電ライン3Aのパターン間を5μm以上としても、信頼性の高い絶縁性を確保することができる(図3参照)。
【0028】
また、金属薄膜により導電ライン3Aを形成するので、クラックの発生を防止しつつ導電ライン3Aの折り曲げ性を著しく向上させることが可能になる。また、接続端子5Aを金属薄膜で形成するのではなく、銀粒子含有の導電ペーストにより所定の厚さに積層形成するので、接続端子5Aに異方導電接着剤層6の導電粒子が圧接して穴が開き、電子機器の電気的な導通接続に支障を来たすことがない。
【0029】
また、導電ペースト製の接続端子5Aに異方導電接着剤層6の導電粒子が食い込み、楔効果を発揮するので、接続信頼性の低下防止が大いに期待できる。また、銀粒子含有の導電ペーストの使用量が従来よりも大幅に低減するので、コストの削減を図ることが可能になる。また、導電ペーストに抵抗値の増大を招くカーボン粒子を含有しないので、低抵抗のヒートシールコネクタを得ることができ、複数の導電ライン3Aの狭ピッチ化を図ることも可能になる。
【0030】
さらに、電子回路には、信号線等の電流を殆んど流すことのない回路と、電源やグラウンドといった電流をある程度流す回路とがあるので、これらに導電回路を対応させなくてはならない場合がある。しかしながら、従来の導電ペーストによる導電回路2では対応させることが困難であり、電流値の大きい部分では二回路が必要であった。これに対し、上記構成によれば、金属薄膜製の導電ライン3Aを使用するので、図4に示すように導電ライン3Aの太さのみを拡縮変更すれば、二回路を要することなく、容易に対応することが可能になる。
【0031】
なお、上記実施形態では金属薄膜をスパッタリング法やレーザ加工によるドライエッチングで導電回路2Aに形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、多種多様な金属に対応するため、導電回路2Aを金属薄膜のケミカルエッチングにより形成すれば、導電回路2Aに歪みが生じるのを抑制したり、ヒートシールコネクタを簡単に大量生産することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 絶縁フィルム層(絶縁層)
2 導電回路
2A 導電回路
3 導電ライン
3A 導電ライン
5 接続端子
5A 接続端子
6 異方導電接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の少なくとも表裏いずれかの面に導電回路を形成したヒートシールコネクタであって、
導電回路を金属薄膜により形成し、この導電回路の少なくとも接続部に導電ペーストを塗布して接続端子を積層形成し、これら導電回路と接続端子のうち少なくとも接続端子に異方導電接着剤層を積層したことを特徴とするヒートシールコネクタ。
【請求項2】
導電回路を、金属蒸着膜あるいは金属スパッタ膜により形成した請求項1記載のヒートシールコネクタ。
【請求項3】
導電回路を、金属薄膜のケミカルエッチングにより形成した請求項1記載のヒートシールコネクタ。
【請求項4】
導電回路を、レーザによる金属薄膜のドライエッチングにより形成した請求項1記載のヒートシールコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238429(P2011−238429A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107997(P2010−107997)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)