説明

ヒートシール用不織布

【課題】 ヒートシール加工において、ヒートシール機の熱圧着部に熱接着剤である重合体が融着する等による加工トラブルが発生せず、この融着物により被処理物の品位を落とす等の問題がなく、加工性に優れたヒートシール用不織布を提供することを課題とする。
【解決手段】 高融点重合体が芯部に、低融点重合体が鞘部に配された芯鞘型複合繊維で構成されたヒートシール不織ウェブ層の片面に、該芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体の融点よりも高い融点を有する重合体が、少なくとも繊維表面に配された繊維で構成された不織ウェブ層が積層されているヒートシール用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療資材、衛生資材、一般工業資材、農業資材、生活資材等広い分野において使用可能なヒートシール用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
熱接着による袋体加工が行うことができ、他の材料と貼り合せが容易に行えるヒートシール性を備えた不織布として、鞘部にポリエチレン、芯部にポリエステルやポリプロピレンを配した芯鞘型繊維からなる不織布が知られている(例えば、特許文献1)。このような芯鞘型繊維からなる不織布は、例えばポリエステル単独からなる単相の繊維からなる不織布と比較して強力は劣るものの、ヒートシール部分の強度に優れ、接着強力が高いことから、ヒートシール性に優れる。ヒートシールの際には、熱接着剤として機能する鞘部に配される重合体の融点以上の温度に設定して、ヒートシール加工が施されるが、製袋機の圧着部に溶融した鞘部の重合体の一部が融着し、加工トラブルが発生したり、圧着部に融着した重合体が堆積し、これが、製袋物に付着して、製品の品位を落とす等の問題の原因となる。
【特許文献1】特公平8−14069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題を解決し、ヒートシール加工において、ヒートシール機の熱圧着部に熱接着剤である重合体が融着する等による加工トラブルが発生せず、この融着物により被処理物の品位を落とす等の問題がなく、加工性に優れたヒートシール用不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を達成すべく検討した結果、ヒートシール機能を有する不織布の片面に特定の融点を有する不織布を積層することによって、ヒートシール加工時の加工トラブルを引き起こさないことを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、高融点重合体が芯部に、低融点重合体が鞘部に配された芯鞘型複合繊維で構成されたヒートシール不織ウェブ層の片面に、該芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体の融点よりも高い融点を有する重合体が、少なくとも繊維表面に配された繊維で構成された不織ウェブ層が積層されていることを特徴とするヒートシール用不織布を要旨とするものである。
【0006】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0007】
本発明のヒートシール用不織布におけるヒートシール不織ウェブ層は、高融点重合体が芯部に、低融点重合体が鞘部に配された芯鞘型複合繊維で構成される。ヒートシール不織ウェブ層は、熱が付与された際に、熱接着材として機能する面である。また、ヒートシール不織ウェブ層において、熱が付与されると、鞘部に配された低融点重合体が溶融または軟化して接着剤として機能し、一方、芯部に配された高融点重合体は加熱や加圧によっても溶融または軟化せずに、繊維形態を維持し、ヒートシール用不織布としての強度を保持する。
【0008】
芯鞘型複合繊維を構成する高融点重合体と低融点重合体との融点差は、40℃以上設けることが好ましい。両者の融点差を40℃以上とすることにより、熱を付与してヒートシール加工を行う際に、鞘部の低融点重合体のみが溶融または軟化し、芯部の高融点重合体は熱によるダメージを受けずにヒートシール用不織布としての機械的強力を保持することができる。
【0009】
本発明で用いられる高融点重合体と低融点重合体との組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/低融点ポリエステル共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリアミド、ポリプロピレン/ポリエチレン等が挙げられる。
【0010】
芯鞘型複合長繊維の芯部と鞘部の複合比は、本発明のヒートシール用不織布の用途に応じて適宜決定すればよいが、熱接着剤となる鞘部の比率が少なくなりすぎると、ヒートシール性に劣る傾向となり、一方、鞘部の比率が多くなりすぎると、繊維強度および不織布の強力が劣る傾向となる。芯部と鞘部の複合比(質量比)は、20/80〜80/20の範囲であればよい。
【0011】
また、ヒートシールの際に接着剤として機能する鞘部の低融点重合体に、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の重合体を少量ブレンドしてもよい。ブレンドする量は、30質量%未満が好ましい。
【0012】
本発明のヒートシール用不織布は、前記ヒートシール不織ウェブ層の片面に、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体の融点よりも高い融点を有する重合体が少なくとも繊維表面に配された繊維で構成された不織ウェブ層が積層されている。
【0013】
ヒートシール不織ウェブ層の片面に、前記した特定の繊維で構成された不織ウェブ層が積層されたヒートシール用不織布は、ヒートシール用不織布同士を熱接着により貼り合わせる際や、ヒートシール用不織布と他の材料(フィルムや他の不織布等)とを貼り合わせる際、貼り合わせ面側に熱接着材として機能するヒートシール不織ウェブ層を配置させて、ヒートシール機や熱ロール等の熱処理加工機に接する面側に不織ウェブ層を配置する。不織ウェブ層を構成する繊維の繊維表面に配された重合体は、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部の低融点重合体の融点よりも高い融点を有するため、ヒートシール不織ウェブ層における低融点重合体が、熱接着剤として機能すべく溶融または軟化する温度にあっても、不織ウェブ層を構成する前記特定の繊維は、熱溶融しにくいため、溶融物が熱処理加工機に付着して加工トラブルを起こしにくく、また、熱処理加工機に付着した溶融物が被処理物に付着して製品の品位を落とすといった問題等が発生することを防ぐことができる。
【0014】
不織ウェブ層を構成する繊維の少なくとも繊維表面に配される重合体は、ヒートシール不織ウェブ層における低融点重合体の融点よりも高い融点を有するものであるが、上記した効果をより奏するためには、10℃以上の融点差を設けることが好ましく、安定したヒートシール加工性やヒートシール部の品位の向上を考慮すると、20℃以上の融点差を設けることがより好ましい。また、繊維形態は、ヒートシール不織ウェブ層の低融点重合体よりも高い融点を有する重合体のみからなる単相形態であっても、前記低融点重合体よりも高い融点を有する重合体が鞘部を形成し、芯部に他の重合体を配した芯鞘型等の複合形態であってもよい。
【0015】
ヒートシール不織ウェブ層と不織ウェブ層との積層手段は、熱接着や、繊維交絡等、特に限定されないが、中でも、部分的に熱圧着されることにより熱接着して一体化していることが好ましい。熱接着により一体化する際は、不織ウェブ層を構成する繊維の少なくとも繊維表面に配された重合体が、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体と同種であると、相溶性が良好となるため、接着一体性が良好となり、好ましい。ここで、低融点重合体と不織ウェブ層の繊維表面に配される重合体との組み合わせとしては、高融点ポリプロピレン/低融点ポリプロピレン、高融点ポリエチレン/低融点ポリエチレン、高融点ポリエステル共重合体/低融点ポリエステル共重合体、が挙げられる。ポリプロピレンにおいては、製法(メタロセン法、チーグラー法等)により密度や軟化温度を変化させたものを得ることができるため、適宜選択すればよい。ポリエチレンにおいては、製法(高圧法、チーグラー法等)により密度や軟化温度を変化させたものを得ることができるため、適宜選択すればよい。ポリエステル共重合体においては、同じ共重合成分からなる重合体であって、その共重合比を適宜変更することにより融点差を設けるとよい。
【0016】
また、ヒートシール不織ウェブ層と不織ウェブ層とを熱接着する場合は、機械的強力等の観点から、不織ウェブ層を構成する繊維は、芯鞘型複合形態であって、芯部の重合体は、鞘部の重合体よりも高融点の重合体であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維が、芯部がポリエステル、鞘部が融点75〜115℃のポリエチレン、不織ウェブ層を構成する繊維の繊維表面の重合体が、鞘部のポリエチレンよりも高い融点を有するポリエチレンであることが好ましい。
【0018】
芯鞘型複合繊維の芯部をポリエステルとすることにより、生産性が良好で、また、機械的強力に優れたヒートシール用不織布を得ることができる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが挙げられる。また、前記アルキレンテレフタレートを主成分として他の成分を共重合してなる共重合ポリエステルを用いることもでき、他の成分としては、酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸などのカルボン酸、ジオール成分としてテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール成分が挙げられる。共重合ポリエステルを用いる場合、アルキレンテレフタレート単位が80モル%以上であることが、重合体自体の耐熱性および繊維強度の点から好ましい。共重合成分が20モル%を超えると、繊維の配向性が劣り、また、融点も下がるためである。ポリエステルの融点は、耐熱性を考慮して、160℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。ポリエステルの極限粘度〔η〕は、0.5以上、好ましくは0.6以上のものが、製糸性および得られる繊維の機械的強度の点で好ましい。本発明においては、ポリエチレンテレフタレートがより好ましく、鞘部であるポリエチレンとの融点差を十分に保持することもできる。
【0019】
芯鞘型複合繊維の鞘部は、融点75〜115℃のポリエチレンとすることにより、ヒートシール加工時の設定温度を低温にすることができる。なお、融点が75℃未満のものは、繊維を溶融紡糸する際に、溶融紡出した繊維は冷却されにくいため、繊維表面がべたつき、操業性に劣り、また、スパンボンド法にて製造する場合は、開繊性に劣る傾向にあるため、得られる不織ウェブの地合が劣る。ポリエチレンのより好ましい融点は90〜110℃である。
【0020】
鞘部の融点75〜115℃のポリエチレンは、メタロセン系重合触媒により得られたものであることが好ましく、そのQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が、3.5以下であることが好ましい。Q値が小さい程、ポリエチレンの分子構造において、結晶の大きさが比較的均一であり、分子量分布が狭い。ポリエチレンのQ値が3.5以下とすることにより、低分子量のものが相対的に少ないため、溶融紡糸の際にその低分子量のものが熱分解したり、また発煙を生じたりすることが発生しにくく、製糸性が良好となる。一方、Q値の下限としては、1.5程度がよい。1.5未満のポリエチレンは、ポリエチレン自体の製造が難しく、たとえ製造ができたとしても、製造コストが極めて高い。
【0021】
鞘部のポリエチレンのメルトフローレート(JIS K 6760)は、10〜60g/10分であることが好ましい。メルトフローレートが60g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎるために繊維の均斉度が劣り、ひいては紡糸の状態が悪化する傾向となる。一方、メルトフローレートが10g/10分未満であると、溶融粘度が高すぎるために高速製糸性に劣る傾向となる。
【0022】
鞘部の熱接着剤となる前記ポリエチレンには、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の重合体を少量(多くとも30質量%)ブレンドしてもよい。ブレンドする重合体としては、前記ポリエチレンよりも高温のポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0023】
不織ウェブ層を構成する繊維の繊維表面に配される重合体は、鞘部に配する融点75〜115℃のポリエチレンよりも高い融点のポリエチレンであればよいが、ヒートシール加工性を考慮すると、融点ピーク125℃以上のポリエチレンが好ましい。また、繊維の形態は、芯鞘型複合繊維を採用することが好ましく、この場合、ヒートシール不織ウェブ層の芯部に配されるものと同様のポリエステルを配することが好ましい。
【0024】
本発明のヒートシール用不織布を構成するヒートシール不織ウェブ層および不織ウェブ層の構成繊維の単糸繊度は、特に限定されず、1〜10デシテックス程度がよい。目付については、ヒートシール不織ウェブ層については、用いる用途等に応じて適宜選択すればよいが、10〜100g/m2程度がよい。一方、不織ウェブ層については、本発明の効果を奏するためには、目付の下限は5g/m2程度がよい。また、上限は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0025】
本発明のヒートシール用不織布の好ましい製造方法について説明するが、本発明のヒートシール用不織布は、いわゆるスパンボンド法により効率良く製造することができる。
すなわち、ヒートシール不織ウェブ層を構成する高融点重合体と低融点重合体を用意する。一方、不織ウェブ層を構成する前記低融点重合体よりも高い融点を有する重合体を用意する。なお、不織ウェブ層を構成する繊維として芯鞘型複合繊維を用いる場合は、芯部に配する重合体も用意する。
【0026】
ヒートシール不織ウェブ層を構成する高融点重合体と低融点重合体とを、芯鞘型複合断面となる紡糸口金を用いて、芯部に高融点重合体、鞘部に低融点重合体が配されるように溶融紡糸する。このときの紡糸温度は、芯部の融点よりも30〜40℃高い温度に設定する。次いで、溶融紡出した糸条は吸引装置を用いて、目的繊度となるように牽引細化して引き取る。吸引装置から排出された糸条群は開繊させた後、コンベアネット上に堆積させてヒートシール不織ウェブ層とする。
【0027】
一方、不織ウェブ層を構成する重合体も同様に、所定の繊維断面となる紡糸口金を用いて、溶融紡糸し、溶融紡出した糸条は吸引装置を用いて、目的繊度となるように牽引細化して引き取る。吸引装置から排出された糸条群は開繊させた後、上記のコンベアネット上に堆積してなるヒートシール不織ウェブ上に堆積し、ヒートシール不織ウェブと不織ウェブとを積層堆積した積層ウェブとする。得られた積層ウェブは、一体化手段となる熱エンボス装置に導き、部分的に熱圧着することにより、ヒートシール不織ウェブ層における低融点重合体および不織ウェブ層における少なくとも繊維表面を構成する重合体の両者を溶融または軟化させて、積層一体化して、本発明のヒートシール用不織布を得る。
【0028】
なお、ヒートシール不織ウェブ層と不織ウェブ層とを積層する方法としては、各々別個にコンベアネット上に堆積させた後に、積層して、積層ウェブとしてもよいが、上方法のように、堆積した不織ウェブ層上に、さらに溶融紡出した繊維を堆積させることにより、ウェブ層間において両層の繊維が混在し、かつ両層の繊維同士が抱絡することとなり、層間の剥離が生じにくく、好ましい。
【0029】
本発明のヒートシール用不織布は、上記のような構成を有するものであり、ヒートシール不織ウェブ層における低融点重合体を溶融または軟化させて、これを熱接着成分とし、ヒートシール用不織布同士、もしくは、ヒートシール用不織布と他の材料とを熱接着することにより貼り合わせて使用する。他の材料としては、不織布、織物、編物等の各種布帛や、湿式シート、フィルム等が挙げられる。また、他の材料は、ヒートシール不織ウェブ層の低融点重合体と相溶性を有するものが好ましい。例えば、低融点重合体がポリエチレンの場合は、他の材料としてポリオレフィン系フィルムを用いることが好ましく、これらが貼り合わされて複合化させたポリオレフィン系フィルム複合材は、包装材や衛生材料等に好適に用いることができる。また、ポリオレフィン系フィルムとしては、そのフィルムの構成重合体がポリエチレンであることが好ましい。さらには、低融点重合体として、融点75〜115℃のポリエチレンを用いた場合、その融点が低いため、熱処理設定温度を100℃程度としても、十分に軟化または溶融して、他の材料と複合化することができるため、他の材料が微多孔ポリエチレンフィルムであっても、フィルムが有する微多孔を損することなく、また、フィルムを収縮させることなく、良好に貼り合わせることができる。
【0030】
ヒートシール加工は、ヒートシーラー(ヒートシール機)や、熱ロール、熱風等の熱処理手段を用いて行うとよい。これらの熱処理手段により、熱や圧力等を加えて、ヒートシール不織布同士やヒートシール用不織布と他の材料とを貼り合わせる。なお、熱処理を施す際に、貼り合わせ面側に、ヒートシール不織ウェブ層を配置させ、熱処理加工機と接する面側に不織ウェブ層を配置させることは、前述したとおりである。
【発明の効果】
【0031】
本発明のヒートシール用不織布は、上記したように、特定の低融点重合体と高融点重合体からなる芯鞘型複合繊維からなるヒートシール不織ウェブ層の片面に、低融点重合体よりも高い融点を有する重合体が、少なくとも繊維表面に配された繊維で構成された不織ウェブ層が積層されている。
【0032】
ヒートシール加工を施す際は、熱接着剤として機能するヒートシール不織ウェブ層が貼り合わせ面に配置させて、一方、不織ウェブ層は、熱処理加工機に接する面に配置する。これにより、不織ウェブ層を構成する繊維の繊維表面に配された重合体は、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部の低融点重合体の融点よりも高い融点を有するため、ヒートシール不織ウェブ層における低融点重合体が、熱接着剤として機能すべく溶融または軟化する温度にあっても、不織ウェブ層を構成する繊維は、熱溶融しにくいため、溶融物が熱処理加工機に付着しにくくなり、熱処理加工機に溶融物が付着することによる加工トラブルが発生せず、加工性が良好となり、ヒートシールにより得られる製品の品位を保持することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各特性値は、以下のようにして求めた。
【0034】
(1)ポリエステルの極限粘度[η];フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、測定した。
【0035】
(2)融点(℃);パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
【0036】
(3)ポリエチレンのメルトフローレート(g/10分);JIS K 6922に記載の方法により測定した(温度190℃、荷重21.18N)。
【0037】
(4)引張強力(N/5cm幅);合繊長繊維不織布試験法(JIS L 1906)に準じて、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM−500型)を用いて、幅50mm、長さ200mmの試験片を、把持間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で測定し、試料10点の平均値を求め、引張強力とした。なお、引張強力については、長繊維不織布のMD方向(機械方向)、CD方向(MD方向に直交する方向)共に求めた。
【0038】
(5)ヒートシール加工性;30mm(CD方向)×150mm(MD方向)の試料片2枚を重ね合わせ(本発明品は、ヒートシール不織ウェブ層同士が接するように重ね)、長手方向(MD方向)先端から50mmの位置をヒートシールした。使用したヒートシールテスターの熱圧着条件は、ダイの温度を100℃、110℃、120℃のそれぞれの温度を設定、面圧98N/cm、1秒間、接着面積10mm(MD方向)×30mm(CD方向)とした。ヒートシールの状況につき、以下の3段階でヒートシール加工性を評価した。
○:ヒートシールテスターのダイに試料片が融着しない。
△:ヒートシールテスターのダイに試料片が少し貼り付くが、融着物はない。
×:ヒートシールテスターのダイに試料片が貼り付き、剥がすと若干融着物が残る。
【0039】
(6)ヒートシール強力(N/3cm幅);上記ヒートシール加工性にて、得られたヒートシールしたサンプルについて、剥離強力を測定し、ヒートシール強力とした。剥離強力の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、ヒートシール部の剥離強力は、JIS L 1089のT剥離測定法に準じて、東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM−500型を用いて、幅30mmの試験片を、把持間隔10mm、引張速度100mm/分の条件で測定し、5点の平均値を求め、ヒートシール強力とした。
【0040】
実施例
芯部として、融点260℃、極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを用意し、鞘部として、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたメルトフローレート20g/10分、Q値2.2、密度0.904g/cm3、融点102℃の低密度ポリエチレンを用意し、公知の溶融紡糸装置を用いて、紡糸温度280℃にて芯鞘型複合断面となる紡糸口金より、繊維質量に占める鞘部の質量比率が50質量%となるよう溶融紡糸した。吸引装置により繊度3.3デシテックスとなるように引き取り細化させ、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、移動する捕集面上に捕集・堆積し、目付20g/m2のヒートシール不織ウェブ層とした。
【0041】
一方、不織ウェブ層を構成する重合体として、融点260℃、極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートと、チーグラナッタ系重合触媒を用いて重合されたメルトフローレート25g/10分、0.958g/cm3、融点130℃の高密度ポリエチレンを用意した。公知の溶融紡糸装置にて、紡糸温度285℃にて、芯鞘型複合断面となる紡糸口金より、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部に高密度ポリエチレンを配するようにして、繊維質量に占める鞘部の質量比率が50質量%となるよう溶融紡糸した。吸引装置により繊度3.3デシテックスとなるように引き取り細化させ、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、移動する捕集面上に捕集・堆積したヒートシール不織ウェブ層の上に吹き付けて、捕集堆積させて、ヒートシール不織ウェブ層と不織ウェブ層(目付20g/m2)とが、層間において、両層の繊維同士が抱絡してなる積層ウェブを得た。
【0042】
得られた積層ウエブを、エンボスロール(エンボス突起部の面積率21%、突起部の形状が六角形)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、フラットロールがヒートシール不織ウェブ層に接するように設置し、フラットロールの表面温度が90℃、エンボスロールの表面温度が125℃、線圧294N/cmの条件下で部分的に熱圧着処理を施し、目付40g/m2の本発明のヒートシール用不織布を得た。
【0043】
参考例
実施例において、不織ウェブ層を積層せず、ヒートシール不織ウェブ層のみからなるウェブを作成したこと、前記ウェブの目付を40g/m2としたこと、熱エンボス装置において両ロールの表面温度共に95℃としたこと以外は、実施例と同様にして不織布を得た。
【0044】
得られた本発明のヒートシール用不織布および参考例の不織布についての物性を表1に示す。
【0045】
【表1】

表1からも明らかなように、実施例の不織布は、不織布強力、熱接着性共に優れており、また95〜120℃の温度範囲においてのヒートシールの加工性も良好であった。
【0046】
一方、参考例の不織布は、不織布強力、熱接着性は優れていたが、ヒートシール温度を上げるにつれて、加工時に、ヒートシール機のダイに鞘部ポリエチレンの溶融物が付着してしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点重合体が芯部に、低融点重合体が鞘部に配された芯鞘型複合繊維で構成されたヒートシール不織ウェブ層の片面に、該芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体の融点よりも高い融点を有する重合体が、少なくとも繊維表面に配された繊維で構成された不織ウェブ層が積層されていることを特徴とするヒートシール用不織布。
【請求項2】
不織ウェブ層を構成する繊維の少なくとも繊維表面に配された重合体が、ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部に配された低融点重合体と同種であり、ヒートシール不織ウェブ層と、不織ウェブ層とは、部分的に熱圧着されることにより、一体化していることを特徴とする請求項1記載のヒートシール用不織布。
【請求項3】
ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の低融点重合体が、融点が75〜115℃のポリエチレンであり、不織ウェブ層を構成する繊維の少なくとも繊維表面に配された重合体が、前記低融点重合体よりも高い融点を有するポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシール用不織布。
【請求項4】
ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の低融点重合体と、不織ウェブ層を構成する繊維の少なくとも繊維表面に配された重合体との融点差が、10℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートシール用不織布。
【請求項5】
ヒートシール不織ウェブ層における芯鞘型複合繊維を構成する鞘部のポリエチレンが、メタロセン系重合触媒により得られたものであり、そのQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が3.5以下であることを特徴とする請求項3記載のヒートシール用不織布。
【請求項6】
ヒートシール不織ウェブ層を構成する芯鞘型複合繊維の高融点重合体が、ポリエステルであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のヒートシール用不織布。

【公開番号】特開2007−321311(P2007−321311A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154789(P2006−154789)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】