説明

ヒートシール缶及びその製造方法

【課題】開封性及び審美性などを向上させたヒートシール缶及びその製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、内カール部153の天面にシール蓋13をヒートシールするヒートシール工程と、シール蓋13のはみ出し部131を、内カール部153の外側面に沿って、接着することなく折り曲げる折り曲げ工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール缶及びその製造方法に関し、特に、開封性及び審美性などを向上させることができるヒートシール缶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸湿性を有する食品などの内容物を収容する容器として、ヒートシール缶が広く使用されている。一般的に、ヒートシール缶は、ガスバリア性及びヒートシール性を有するシール蓋を有しており、このシール蓋は、缶の口頸部に形成されたカール部などにヒートシールされている。
【0003】
(従来例)
次に、従来例にかかるヒートシール缶及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
図4は、従来例にかかるヒートシール缶を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
図4(a)に示すように、ヒートシール缶110は、金属缶11及びシール蓋13などを備え、内容物を充填した後、キャップ12を螺合して使用される。このヒートシール缶110は、たとえば、粉末ココアなどの吸湿性の内容物(図示せず)を収容する。
【0004】
(金属缶)
金属缶11は、素材が錫メッキ鋼板などの金属板であり、通常、この金属板の外面に印刷層及び仕上ニス層が積層され、内面に塗膜が積層される。
また、金属缶11は、円筒状の缶胴14及び口頸部15などを有しており、口頸部15は、ネック部151、ねじ部152及び内カール部153を有している。この金属缶11は、通常、材料切断工程、胴成形・接合部溶接工程、及び、ねじ切り・ネックドイン・カール成形工程を経て製造される。
尚、金属缶11の側面継目は、溶接や接着などにより接合されている。
【0005】
(キャップ)
キャップ12は、天板及び側板を有しており、側板の下部に、口頸部15のねじ部152と螺合する部分的に突出した内カール121が形成されている。また、天板の下面の周縁部に、環状のシール材122を有している。このシール材122は、シール蓋13が取り外された状態でキャップ12が締められると、内カール部153と当接し金属缶11の内部を密封する。
【0006】
(シール蓋)
シール蓋13は、ガスバリア性を有する金属箔、樹脂フィルム及びヒートシール性を有する接着層などの積層体であり、たとえば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、変性ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニル共重合樹脂が積層された可撓性シート(厚みは、約130μm)が用いられる。また、ヒートシール性とは、高温条件下で接着する性質をいう。
尚、金属箔は、アルミ箔に限定されるものではなく、たとえば、スチール箔でもよい。また、金属箔に、印刷層が積層されていてもよい。さらに、接着層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂に限定されるものではなく、ヒートシール性を有する接着剤であればよい。
【0007】
また、シール蓋13は、内カール部153に対応するほぼ円形状であるが、図4(b)に示すように、内カール部153より径方向外側にはみ出るはみ出し部131を有している。このはみ出し部131は、ほぼ円環状の周縁部132、及び、開封する際に摘む摘み部133を有している(図6参照)。
ここで、従来例にかかるヒートシール缶の製造方法は、内カール部153の天面及び外側面にシール蓋13をヒートシールするヒートシール工程を有する方法としてある。これにより、シール蓋13は、接着部134´によって、内カール部153に接着される。
尚、内カール部153の天面とは、斜め上方及び上方を向いている面をいい、図4(b)に示す天面領域にほぼ対応する面である。
【0008】
次に、上記のヒートシール工程について、図面を参照して説明する。
図5は、従来例にかかるヒートシール缶の製造方法を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
図5に示すように、ヒートシール工程において、シール蓋13は、ヒートシール手段200によってヒートシールされる。
ヒートシール手段200は、ベークライトなどからなる往復移動部材230、この往復移動部材230に埋設された高周波誘導加熱用コイル21、及び、往復移動部材230の下面に取り付けられ、シリコンラバーなどからなる押圧部材220などを有している。
【0009】
高周波誘導加熱用コイル21は、内カール部153の上方に設けられており、高周波誘導加熱によって、シール蓋13の金属箔をヒートシール可能な温度まで加熱する。また、押圧部材220は、内カール部153及びシール蓋13を収容する凹部が形成されている。さらに、往復移動部材230は、シリンダなどの往復移動手段(図示せず)によって上下方向に移動する。
【0010】
上記のヒートシール手段200は、まず、シール蓋13が内カール部153に載置されると、往復移動部材230が降下し、押圧部材220がはみ出し部131を折り曲げるとともに、シール蓋13を内カール部153に押圧する。
次に、高周波誘導加熱用コイル21がシール蓋13の金属箔を加熱し、シール蓋13を、内カール部153の天面及び外側面にヒートシールする。
続いて、往復移動部材230が上昇し、ヒートシール工程が終了する。
尚、シール蓋13のヒートシールされた金属缶11は、後工程において、口頸部15が下を向くように反転され、内容物が缶底側から充填され(充填工程)、続いて、底蓋が巻き締められ(巻き締め工程)、その後、キャップ12が取り付けられる(キャップ取り付け工程)。
【0011】
本発明に関連する技術として、次のような技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、ヒート・シール蓋を備えた缶詰の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、筒状体の開口端を肉薄の蓋体で閉塞する開口端の閉塞方法の技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、キャップによりリシール可能な缶容器を使用した無菌充填法の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭56−30044号公報
【特許文献2】特開2008−221225号公報
【特許文献3】特開2007−15720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来例のヒートシール缶の製造方法によって製造されたヒートシール缶110は、図4及び図6に示すように、はみ出し部131に大きなしわ135が多数形成されており、審美性を損なっていた。
また、ヒートシール缶110は、内カール部153の天面及び外側面にシール蓋13がヒートシールされており、シール蓋13を引き剥がす際に大きな開封力を必要とする場合があった。
【0014】
さらに、キャップ12を開閉する際、大きなしわ135がキャップ12の内カール121に接触すると、円滑にかつ快くキャップ12の開閉を行うことができなかった。
また、しわ135の形成状況などによって、内カール部153の外側面とシール蓋13との接着面積がばらつくと、消費者がシール蓋13を引き剥がす際に、開封力の調整を必要とした。
【0015】
また、ヒートシール缶110のシール蓋13のはみ出し部131に大きなしわ135が多数形成されると、しわ135と内カール部153の外側面との間には空隙が存在し、例えば、図4(b)の二点鎖線で示すしわ先端のはみ出し部131と内カール部153の外側面との間には大きな空隙が存在する。そして、このような空隙が存在すると、充填工程(内カール部153が下を向くように反転され、開口された缶底から内容物が充填される工程)において、この空隙に内容物(たとえば、パウダー状の内容物)が混入し、消費者が内容物を取り出すためにキャップ12を開けたり、あるいは、シール蓋13を引き剥がして開封する際に、混入した内容物が落下するといった不具合が発生するおそれがあった。
尚、特許文献1〜3の技術は、本発明に関連する技術ではあるものの、上記課題を解決することはできない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み提案されたものであり、開封性及び審美性などを向上させることができるヒートシール缶及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のヒートシール缶の製造方法は、金属缶の口頸部に形成された内カール部にシール蓋をヒートシールしたヒートシール缶の製造方法において、内カール部の天面にシール蓋をヒートシールするヒートシール工程と、シール蓋のはみ出し部を、内カール部の外側面に沿って、接着することなく折り曲げる折り曲げ工程とを有する方法としてある。
【0018】
また、本発明のヒートシール缶は、上記のヒートシール缶の製造方法によって製造された構成としてある。すなわち、このヒートシール缶は、シール蓋のはみ出し部が、内カール部の外側面に沿って滑らかに(しわがほぼ形成されない状態で)形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のヒートシール缶及びその製造方法によれば、ヒートシール缶の開封性及び審美性などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法により製造されたヒートシール缶を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法により製造されたヒートシール缶の要部の拡大写真を示している。
【図4】図4は、従来例にかかるヒートシール缶を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
【図5】図5は、従来例にかかるヒートシール缶の製造方法を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
【図6】図6は、従来例にかかるヒートシール缶の製造方法により製造されたヒートシール缶の要部の拡大写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[ヒートシール缶及びその製造方法の実施形態]
本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法、及び、この製造方法によって製造されたヒートシール缶について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法により製造されたヒートシール缶を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
図1において、本実施形態の製造方法によって製造されたヒートシール缶1は、上述した従来例のヒートシール缶110と比べると、接着部134´の代わりに、接着部134が形成されている点、及び、はみ出し部131にしわ135がほぼ形成されていない点などが相違する。尚、ヒートシール缶1の他の構成は、従来例のヒートシール缶110とほぼ同様としてある。
したがって、図1において、図4と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態にかかるヒートシール缶の製造方法を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
図2において、本実施形態のヒートシール缶の製造方法は、金属缶11の口頸部15に形成された内カール部153にシール蓋13をヒートシールしたヒートシール缶1の製造方法であり、上述した従来例のヒートシール缶の製造方法と比べると、内カール部153の天面及び外側面にシール蓋13をヒートシールするヒートシール工程の代わりに、内カール部153の天面にシール蓋13をヒートシールするヒートシール工程と、シール蓋13のはみ出し部131を、内カール部153の外側面に沿って、接着することなく折り曲げる折り曲げ工程を有する点などが相違する。尚、本実施形態の製造方法の他の工程は、従来例とほぼ同様としてある。
【0023】
(ヒートシール工程)
図2(a)は、本実施形態のヒートシール工程を説明するための要部の概略拡大断面図を示しており、ヒートシール工程において、シール蓋13の金属箔が高周波誘導加熱によって加熱され、弾性を有する押圧部材22によってシール蓋13が内カール部153の天面に押圧される。本実施形態では、ヒートシール手段2が、内カール部153の天面にシール蓋13をヒートシールする。
【0024】
ヒートシール手段2は、ベークライトなどからなる往復移動部材23、この往復移動部材23に埋設された高周波誘導加熱用コイル21、及び、往復移動部材23の下面に取り付けられ、シリコンラバーなどの弾性を有する押圧部材22などを有している。
また、高周波誘導加熱用コイル21は、内カール部153の天面に対応する上方に設けられており、高周波誘導加熱によって、シール蓋13の金属箔をヒートシール可能な温度まで瞬時に(たとえば、数秒で)加熱する。さらに、押圧部材22は平板状としてあり、往復移動部材23はシリンダなどの往復移動手段(図示せず)によって移動する。
尚、加熱手段として、高周波誘導加熱用コイル21を用いているが、これに限定されるものではなく、たとえば、電熱ヒータなどでもよい。
また、シール蓋13は、通常、金属箔を有しているが、金属箔を有しないシール蓋に対しては、高周波誘導加熱によって内カール部153を加熱し、ヒートシールを行ってもよい。
【0025】
上記のヒートシール手段2は、まず、シール蓋13が内カール部153に載置されると、往復移動部材23が降下し、押圧部材22がシール蓋13を内カール部153に押圧する。
次に、高周波誘導加熱用コイル21がシール蓋13の金属箔をヒートシール可能な温度まで加熱し、シール蓋13は、内カール部153の天面にヒートシールされ、シール蓋13は、接着部134によって内カール部153の天面に接着される(図1(b)参照)。そして、弾性を有する押圧部材22が内カール部153にシール蓋13を押圧するので、内カール部153の天面に沿って確実にヒートシールが行われる。また、内カール部153の天面のみがシール蓋13と接着されているので、従来例と比べると、シール蓋13を引き剥がして開封する開封力を低減でき、開封性を大幅に向上させることができる。
【0026】
続いて、往復移動部材23が上昇し、ヒートシール工程が終了する。
尚、本実施形態では、従来例とほぼ同様に、シール蓋13が内カール部153に載置されると、往復移動部材23が降下する方法としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、吸着孔などにより押圧部材22がシール蓋13を吸着した後に、往復移動部材23が降下する方法としてもよい。すなわち、従来例は、押圧部材220が凹部を有するので(図5参照)、シール蓋13を内カール部153に載置した後、往復移動部材230が降下しているが、本実施形態では、押圧部材22を平板状としてあるので、往復移動部材23及び押圧部材22に吸着孔を形成し、押圧部材22がシール蓋13を吸着した後に、往復移動部材23が降下してもよい。
【0027】
(シール部冷却工程)
図2(b)は、本実施形態のシール部冷却工程を説明するための要部の概略拡大断面図を示しており、シール部冷却工程において、加熱されたシール蓋13及び内カール部153を冷却する。この冷却は、通常、冷却用エアをシール蓋13に吹き付けることによって行われ、シール蓋13の金属箔を、シール蓋13のヒートシール接着剤の接着開始温度より低い温度に冷却する。尚、接着開始温度とは、接着力を発現し始める温度をいい、上記のヒートシール可能な温度より低い温度である。また、シール部とは、ヒートシール工程で接着された部分及びその周辺部をいい、通常、シール蓋13及び内カール部153の高温の部分である。
このように、ヒートシール工程と折り曲げ工程の間に、シール部冷却工程を介在させることにより、折り曲げ工程において、ヒートシールした際の余熱により、はみ出し部131が内カール部153の外側面にヒートシールされるといった不具合を確実に防止することができる。
尚、冷却方法は、上記の空冷に限定されるものではなく、たとえば、冷却用金型(図示せず)をシール蓋13に接触させるなどしてもよい。
【0028】
(折り曲げ工程)
図2(c)は、本実施形態の折り曲げ工程を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。この折り曲げ工程において、シール蓋13のはみ出し部131が、内カール部153の外側面に沿って接着することなく折り曲げられる。本実施形態では、折り曲げ手段3がはみ出し部131を折り曲げる。
【0029】
折り曲げ手段3は、円筒部と上板を有する折り曲げ用金型31、バンドヒータなどのヒータ32、及び、離型を円滑に行うためのノックアウト手段33などを有している。この折り曲げ用金型31は、ヒータ32によって所定の温度に加熱されており、折り曲げ用金型31を内カール部153の外側面に押圧する。尚、ノックアウト手段33は、通常、パッド(円盤)、吊りボルト及びスプリングなどを有する構成としてある。
【0030】
そして、折り曲げ用金型31の所定の温度は、80℃以上、かつ、シール蓋13の接着部の接着開始温度未満とするのが好ましく、90℃以上、かつ、シール蓋13の接着部の接着開始温度−10℃未満とするのがより好ましい。
このような所定の温度に設定することにより、シール蓋13のはみ出し部131が内カール部153の外側面にヒートシールされるといった不具合が確実に防止され、消費者がシール蓋13を引き剥がす際の開封力の調整が必要なくなり、円滑にかつ快くシール蓋13を開封することができる。
また、シール蓋13が(二軸延伸)ポリエステルなどの樹脂層を有する場合、容易に折り曲げることができ、さらに、折り曲げた形状を保持することができので、スプリングバックなどによるしわの発生を大幅に抑制することができる。これにより、消費者は、キャップ12を開閉する際、円滑にかつ快くキャップ12を開閉することができる。
【0031】
尚、上記折り曲げ用金型の所定の温度が80℃未満の場合は、スプリングバックによって、シール蓋13のはみ出し部131(あるいは、はみ出し部131の先端)と口頸部15の側面との間に隙間が形成され、一方、シール蓋13の接着部の接着開始温度以上の場合は、シール蓋13のはみ出し部131が内カール部153の外側面にヒートシールされるといった不具合を生じる。
【0032】
また、折り曲げ用金型31の押圧面311と内カール部153の外側面とのクリアランス(半径クリアランス)は、シール蓋13の厚み−15μm以上、かつ、シール蓋13の厚み+50μm以下が好ましく、より好ましくは、シール蓋13の厚み−5μm以上、かつ、シール蓋13の厚み+35μm以下である。そして、上記クリアランスが、この範囲を下回ると折り曲げ工程でシール蓋13のはみ出し部131が破断する恐れがあり、一方、この範囲を上回るとシール蓋13のはみ出し部131に大きなしわが発生する恐れがある。
従って、上記クリアランスを適正な範囲とすることにより、折り曲げ手段3によってあたかもアイロンをかけられた状態で、シール蓋13のはみ出し部131が、内カール部153の外側面とほぼ接触する状態で折り曲げられるので、シール蓋13のはみ出し部131に大きなしわが発生せず、審美性を大幅に向上させることができる。
尚、折り曲げ用金型31は、従来例とほぼ同様にシリンダなどの往復移動手段(図示せず)によって移動する。
【0033】
次に、上記の折り曲げ手段3による折り曲げ工程について説明する。
まず、ヒータ32によって折り曲げ用金型31が所定の温度に加熱されている。ここで、折り曲げ用金型31は、はみ出し部131に対して大きな熱容量を有しているので、温度制御が精度よく行われる。
次に、折り曲げ手段3は、冷却用エアの吹き付けが停止すると、折り曲げ用金型31が降下し、はみ出し部131は、内カール部153の天面外周縁のはみ出し部131から順に下方に向かって、内カール部153の外側面に沿って接着することなく折り曲げられる。この際、上述したように、シール蓋13のはみ出し部131は、あたかも、アイロンをかけられる状態で折り曲げられるので、図3に示すように、周縁部132においては、しわが発生せず、また、摘み部133においては、しわが発生したとしても、しわ135のように内カール部153の外側面から大きく突き出ていないので、審美性を大幅に向上させることができる。さらに、充填工程において、はみ出し部131と内カール部153の外側面との間に空隙が存在しないので、内容物(たとえば、パウダー状の内容物)が混入するといった不具合をより確実に回避することができる。
【0034】
続いて、折り曲げ用金型31が上昇し、折り曲げ工程が終了する。また、折り曲げ用金型31の降下開始から上昇完了までは、通常、0.数秒である。
尚、シール蓋13のはみ出し部131が折り曲げられた金属缶11は、後工程において、口頸部15が下を向くように反転され、内容物が缶底側から充填され(充填工程)、続いて、底蓋が巻き締められ(巻き締め工程)、その後、キャップ12が取り付けられる(キャップ取り付け工程)。
【0035】
また、本発明のヒートシール缶1は、上記の製造方法によって製造された構成としてある。これにより、図3に示すように、シール蓋13のはみ出し部131の周縁部132にしわが形成されない、あるいは、しわが低減されており、さらに、摘み部133のしわが低減された構成としてある。これにより、図6に示す従来例と比べると、審美性などを大幅に向上させることができる。
また、シール蓋13のはみ出し部131は、内カール部の153の外側面に沿って形成されている。これにより、しわが発生したとしても、このしわは、内カール部153の外側面から大きく突き出ていないので、はみ出し部131と内カール部153の外側面との間に大きな空隙が存在せず、内容物(たとえば、パウダー状の内容物)が混入するといった不具合をより確実に回避することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のヒートシール缶1及びその製造方法によれば、ヒートシール缶1の開封性及び審美性などを大幅に向上させることができる。
また、消費者は、円滑にかつ快くキャップ12を開閉でき、また、円滑にかつ快くシール蓋13を引き剥がして開封することができ、さらに、充填工程において、はみ出し部131と内カール部153の外側面との間に、内容物が混入するといった不具合を回避することができるので、商品としての付加価値を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明のヒートシール缶及びその製造方法について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係るヒートシール缶及びその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。
例えば、上記実施形態の製造方法を適用できるヒートシール缶は、上記のヒートシール缶1の構成に限定されるものではなく、様々な構成のヒートシール缶に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1、110 ヒートシール缶
2、200 ヒートシール手段
3 折り曲げ手段
11 金属缶
12 キャップ
13 シール蓋
14 缶胴
15 口頸部
21 高周波誘導加熱用コイル
22、220 押圧部材
23、230 往復移動部材
31 折り曲げ用金型
32 ヒータ
33 ノックアウト手段
121 内カール
122 シール材
131 はみ出し部
132 周縁部
133 摘み部
134 接着部
135 しわ
151 ネック部
152 ねじ部
153 内カール部
311 押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属缶の口頸部に形成された内カール部にシール蓋をヒートシールしたヒートシール缶の製造方法において、
前記内カール部の天面に前記シール蓋をヒートシールするヒートシール工程と、
前記シール蓋のはみ出し部を、前記内カール部の外側面に沿って、接着することなく折り曲げる折り曲げ工程と
を有することを特徴とするヒートシール缶の製造方法。
【請求項2】
前記ヒートシール工程と前記折り曲げ工程の間に、シール部冷却工程を有することを特徴とする請求項1に記載のヒートシール缶の製造方法。
【請求項3】
前記ヒートシール工程において、前記シール蓋の金属箔が高周波誘導加熱によって加熱され、前記シール蓋が弾性を有する押圧部材によって前記内カール部の天面に押圧されることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシール缶の製造方法。
【請求項4】
前記折り曲げ工程において、折り曲げ用金型が、所定の温度に加熱されており、該折り曲げ用金型が、前記はみ出し部を前記内カール部の外側面に押圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒートシール缶の製造方法。
【請求項5】
前記折り曲げ用金型の所定の温度が、80℃以上であり、かつ、前記シール蓋のヒートシール接着剤の接着開始温度未満であることを特徴とする請求項4に記載のヒートシール缶の製造方法。
【請求項6】
前記折り曲げ工程において、前記折り曲げ用金型の押圧面と前記内カール部の外側面とのクリアランスが、前記シール蓋の厚み−15μm以上であり、かつ、前記シール蓋の厚み+50μm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載のヒートシール缶の製造方法。
【請求項7】
上記請求項1〜6のいずれか一項に記載されたヒートシール缶の製造方法によって製造されたことを特徴とするヒートシール缶。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66916(P2013−66916A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207865(P2011−207865)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(390031369)本州製罐株式会社 (5)
【Fターム(参考)】