説明

ヒートセット型光学フィルム

【課題】フィルムを供給し、フィルムを実質的に一軸に配向し、配向したフィルムをヒートセットする光学フィルムを作製する。
【解決手段】光学フィルム32を作製する方法は、フィルム32を供給し、フィルム32を実質的に一軸配向し、及び配向フィルム32をヒートセットすることを含む。フィルム32は、複屈折を発現できる高分子材料を含む。或いはヒートセット工程が、前記フィルム32を、該少なくとも1つの高分子材料のガラス転移温度を超え及びその高分子材料の融点未満の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互対照)
この出願は、「光学フィルム(Heat Setting Optical Films)ヒートセット工程」と題する米国特許仮出願第60/669865号(2005年4月8日出願)から優先の利益を請求する非暫定的出願である。
【背景技術】
【0002】
(発明の分野)
本開示は、光学フィルムを作製するヒートセット工程、並びにこれらの工程で作製されるフィルムに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的に、直線偏光子として機能する光学フィルムは、フィルムの平面に垂直に入射する光に対して面内ブロック状態(「x」方向)及び面内通過状態(「y」方向)を含む。従って、x方向にそろえられた直線偏光状態に対して垂直に入射した光は、最大限ブロックされ(すなわち、最小限透過される)、y方向にそろえられた直線偏光状態に対して垂直に入射した光は、最小限ブロックされる(すなわち、最大限透過される)。垂直外入射光は、フィルムを基準としたその整合の関数として透過性の中間レベルを有する。フィルムの平面に垂直な軸線は、「z」方向と呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、フィルムを供給し、フィルムを実質的に一軸に配向し、配向したフィルムをヒートセットする光学フィルムを作製する方法を記載する。フィルムは、複屈折を発現できる高分子材料を含む。
【0005】
本開示の1以上の実施形態の詳細は、添付図面及び説明の中で以下に詳述する。本開示のその他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、並びに請求項から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】PENに関する主屈折率傾向のプロット。
【図2】延伸フィルムに使用される従来技術のテンター装置の概略平面図。
【図3】図2に図示した従来技術工程における延伸工程前後両方のフィルム部分の斜視図。
【図4】PENにおけるヒートセット時の非対称屈折率増加のプロット。
【図5】CpPENに関する主屈折率傾向のプロット。
【図6】CpPENに関する主屈折率傾向のプロット。
【図7】多層光学フィルムを延伸する従来技術バッチ工程の模式図であり、延伸前後両方のフィルムを示す。
【図8】本開示の1つの実施形態に係る延伸工程の模式図。
【図9】本開示の実施形態に係る工程工程を示すブロック図。
【図10】延伸装置部分の概略平面図。
【図11】図10の装置部分の平面図。
【図12】図10の装置に使用されてよい把持部材の装置の端面図を示す。
【図13】延伸装置の1つの実施形態を示す走路部分の模式図。
【図14】延伸装置の主延伸区域に関する調整可能な走路の1つの実施形態の模式図。
【図15】延伸装置に関する走路及び走路形状制御ユニットの1つの実施形態の概略側面断面図。
【図16】図10の1つの実施形態の走路及び走路形状制御ユニット部分の概略図。
【図17】図10の1つの実施形態の走路及び走路形状制御ユニットの別の部分の概略図。
【図18】延伸装置の主延伸区域に関する走路の他の実施形態の模式図。
【図19】延伸装置の主延伸区域に関する好適な境界軌道の実施例のグラフ。
【図20】異なる放物線形状を有する異なる延伸区域の使用を示す延伸装置の主延伸区域に関する好適な境界軌道の実施例のグラフ。
【図21】好適な放物線状又は実質的に放物線状境界軌道の直線近似である境界軌道を含む延伸装置の主延伸区域に関する好適な境界軌道の実施例のグラフ。
【図22】本開示に係る延伸装置に関する引取装置の1つの実施形態の模式図。
【図23】延伸装置に関する引取装置の別の実施形態の模式図。
【図24】延伸装置に関する引取装置の第3実施形態の模式図。
【図25】延伸装置に関する引取装置の第4実施形態の模式図。
【図26】延伸装置に関する引取装置の第5実施形態の模式図。
【図27】図2に説明したもの等の例えば従来の延伸装置に使用する引取装置の1つの実施形態の模式図。
【図28】組成物についての屈折率傾向のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下で特定した図面は、本開示のいくつかの代表的な実施形態を詳述するが、他の実施形態も意図されている。この開示は、本発明の例証として役立つ実施形態を代表として示しており、限定するものではない。本開示の原理の範囲と精神内に入る多くのその他の修正及び実施形態が、当業者により考案され得る。図面は、縮尺のために作画されていない。
【0008】
更に、実施形態及び構成要素は、「第1」、「第2」、及び「第3」等の表記により引用されているが、これらの記載は、参照の便宜のため付与され、優先の順序を意味するものではないことがわかる。表記は、明瞭さの目的で単に異なる実施形態を区別するため示される。
【0009】
指示がない限り、明細書及び請求項に使用される図の大きさ、量、及び物理特性を表す全ての数字は、全ての場合用語「約」により修正されるものとして理解される。従って、反対の支持がない限り、詳述する数字は、本明細書において開示される教示を使用した所望の属性により変化し得る近似値である。
【0010】
偏光子又は偏光フィルムアプリケーションに使用される多くの光学フィルムは、「y」と「z」主方向間に非対称、例えば、屈折率差を伴う。例えば、軸線外色、すなわち、垂直入射角外の関数としての通過状態の色変化が、y及びz屈折率、各々ny及びnz、間の不整合により拡大又は生じる場合がある。(ここで、nxは、x軸に沿った偏光の屈折率である)。
【0011】
2,6ポリエチレンナフタレート(PEN)からなるフィルム又はフィルムの層に関する典型的な屈折率の組(nx、ny、nz)の区域の実例が、図1に用意されている。実例となる延伸温度130℃で延伸比の関数としての屈折率の発現が、中を塗りつぶした印付きのデータで例示されている。フィルムを実験室規模の延伸装置で初期未配向キャスト試料から延伸した。試料を時間と共に直線的に公称延伸比が増加する延伸特性を用い公称初期レート20%/秒で1つの面内方向に延伸し、同時に、端部に沿って選択した把持点でフィルムを他の面内方向に拘束した。正確な最終延伸比は、屈折率を測定した位置に対する試料にマークされた基準線標示を使用し測定した。図示するために、屈折率は、メトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)(ニュージャージ州、ピカタウェイ(Picataway)のメトリコン(Metricon)から入手できる)、He−Neレーザーにより供給される赤光源を使用し、632.8ナノメートルで測定した。
【0012】
図2には、フィルム走行14方向に対してフィルム12を横に延伸する従来のテンター延伸工程10を示す。フィルム12は、連続してフィードされ、又はフィルム12の不連続部分として導入されてよい。フィルム走行方向は、機械方向(MD)と呼ばれ、延伸方向は、横又はテンター方向(TD)と呼ばれる。フィルム12は、何らかの把持装置、典型的にはテンタークリップ(図2に不図示)を配置し、両端部16で把持される。テンタークリップは、直線的に広がるテンター走路又はレールに沿って乗って行くテンターチェインに接続され得る。この配置が、フィルム走行の機械方向14にフィルムを前進させ、横方向にフィルム12を延伸させる。このようにして、1つの実施例において、フィルムの初期未配向部分18が、最終配向部分20に延伸されてよい。図3に示すように、図2に示したフィルムの未配向部分18は、T(厚さ)、W(幅)及びL(長さ)の寸法を有してよい。フィルムが,λの因子で延伸された後、フィルムのその部分の寸法は、部分20で示したものに変化している。
【0013】
図1のデータは、x及びy方向の両方に沿った不連続端部把持を有するバッチ延伸装置から得られるが、一方、これらのデータは、図2の従来のテンター工程で延伸された典型的なフィルム、すなわち、1方向延伸を例示しており、そこでは、フィルム12は、第1面内主方向に(x)に延伸され、同時に第2面内主方向(y)は、一定又はほぼ一定の延伸比に維持される、例えばy方向延伸比は、殆ど1である。1つの実施形態において、連続フィルムは、横方向延伸装置に一定速度でフィードされ、同じ一定速度で装置を出ていく。
【0014】
図1は、y及びz方向の材料延伸の非対称処理により発現する屈折率の非対称、例えば、nyとnzの差を裏付けている。この例示されたケースにおいて、延伸比は、yで殆ど一定のままであり、一方zでの延伸比は、xでの延伸比の増加とともに(例えば、結晶化での高密度化により弱く調節されるときのおおよその容量保存に必要とされるような)減少する。
【0015】
フィルムが延伸工程の後ヒートセットされる場合、非対称を、更に増加する。この様子は、図1の空のマーカーにより例示される。この場合、フィルムは、175℃で2分間ヒートセットされた。
【0016】
図1は、所定の延伸温度及び速度(又は、同様な意味合いで初期屈折率発現の所定のレベル)で限界延伸比を超え延伸された試料の場合、nxとny値がこれらのヒートセット条件で増加する傾向を示し、一方nz値は低下することを示す。
【0017】
図4は、更に、ヒートセットがどのようにしてnyとnzの屈折率の差を増加させるのかを示す。正方形のマーカーは、ヒートセットの無い延伸後の屈折率差を示し、これに反して三角形のマーカーは、延伸及びヒートセット後の屈折率差を示す。非対称の偏りの増加はほぼ一定であり、ダイアモンドのマーカーで表わしたようにx延伸比の増加とともにわずかに減少した傾斜を有する。従って、y/z「非対称」フィルム、例えば、従来のテンター(図2〜3)で延伸されたもの等の延伸直後のnyとnzに有意差を有するフィルムが、延伸工程後ヒートセットされる場合、屈折率の非対称は増加する。y及びz方向の屈折率のそのような差は、幾つかの適用で望ましくない色効果につながり得る。
【0018】
図1〜4に示した一般的な傾向は、いろいろなポリエステルに適用できる。特に興味を引くものとして挙げられるのは、PEN、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び中間体組成物のコポリマー類である。図5は、コポリマー中PEN様及びPET様部分の85/15モル・パーセント混合物、いわゆる「85/15coPEN」の場合を示す。用語「PEN様」部分は、PENのブロックコポリマー類を含む。用語「PET様」部分は、PETのブロックコポリマー類を含む。延伸方法は、延伸温度を120℃に設定した以外は図1のPENのものと殆ど同じである。
【0019】
図5に示したように、実施形態によっては、ヒートセットは、異なる延伸比で、ヒートセットの無い場合よりも所定の屈折率を達成できる。例えば、約1.8のnxを所望の場合、4.5の延伸比又はより低い2.5の延伸比のいずれかを使用することが可能で、それからフィルムをヒートセットして、両工程は、約1.8に等しいnxに至る。他の実施例として、約1.54のnzが所望の場合、4.25の延伸比又はより低い2.5の延伸比のいずれかを使用することが可能で、それからフィルムをヒートセットして、両工程は、約1.54に等しいnzに至る。
【0020】
図5の条件下では、有意なひずみ誘起結晶化に有効な点は、約2.2のx延伸比においてである。図6は、約2.1のx延伸比に延伸された材料によるこの遷移のするどさを示し、ヒートセット後の等方性への弛緩をあらわす。約2.1のx延伸比未満では、ヒートセット後、nx=ny=nzである。約2.2のx延伸比を超える場合は、屈折率の発現は、ヒートセット後、nx>ny>nzの結果になる。別の実施例において、この点は、選択される材料及び工程条件等の要因により移動することになる。
【0021】
放物線状テンターを使用すると(図10を参照にして以下に記載される)、実施形態によっては、比較的高い延伸比で一軸延伸をもたらすことができる。その他の機械及び工程を使用するとより低い延伸比で一軸延伸をもたらすことができるが、生成したフィルムは、屈折率発現の所望のレベルを欠いている場合がある。図5及び6を参照にして記載したように、ヒートセットが、屈折率発現の所望のレベルを実現するため使用されてよい。場合によっては、より低い延伸比が、ミクロ構造を含むフィルム等の特定のフィルムにより使用される、というのは、より高い延伸比は、ミクロ構造を損傷するおそれがある。これら及びその他の場合において、ヒートセットも使用されてよく、延伸フィルムの屈折率発現を促進する。
【0022】
参照として本明細書に組み込まれる同一所有者の米国特許第6,939,499号、同第6,916、440号、同第6,949,212号、及び同第6,936,209号は、多層光学フィルム等の光学フィルムを処理する連続工程を記載している。前記工程において、光学フィルムは、フィルムの第1面内軸線(x方向)に沿って延伸し、同時にフィルムの第2面内軸線(y又は機械方向(MD))及び厚さ方向(z又は垂直方向(ND))にフィルムを収縮可能とすることにより配向される。延伸は、フィルムの端部部分を把持し、フィルムの第2面内軸線(y)及びフィルムの厚さ方向(z)に、実質的に類似比率の寸法変化に広げる所定の経路に沿って、フィルムの端部部分を移動することにより達成される。
【0023】
代表的な実施形態において、延伸直後のnyとnzに有意差を有する従来の一方向延伸材料のヒートセット挙動とくらべて、y及びz方向に収縮が可能でnyとnzの有意差を最小にする実質的に一軸延伸したフィルムのヒートセットは、全く別の効果を有する。実質的に一軸延伸工程後のヒートセットは、これらのフィルム現有するどんなに小さい屈折率非対称をも維持又は減少する。従って、y及びz方向の屈折率が等しくなればなるほど、望ましくない色効果による問題は、より少なくなる。
【0024】
以下に記載するヒートセット手順は、例えば、多層光学フィルム(MOF)等の光学フィルムの実質的に一軸延伸を提供する以下の全ての工程に適用されてよい。この開示に記載されたヒートセット工手順は、1以上のポリエステル層を含む実質的に一軸延伸されたフィルムに特に有用である。
【0025】
図7には、例えば、偏光子等の光学体に構成要素として使用されるのに好適な多層光学フィルムのような光学フィルムを実質的に一軸延伸するバッチ技術22を示す。フィルム24は、矢印26の方向に延伸され、フィルム24’の2つ端部30が延伸工程後もはや平行にならないように中央部分28を絞っている。フィルム24’の中央部分28が、最も有用な光学特性を備える、というのは、それは、剪断力境界条件から十分遠くに外れ、こうむったキャリパー偏差等の剪断力収差は低いレベルにあるからである。
【0026】
図7に記載したバッチ工程は、場合によっては、好適なフィルム特性を提供するが、全てが参照により本明細書に組み込まれる同一所有者の米国特許第6,939,499号、同第6,916,440号、同第6,949,212号及び同第6,936,209号に記載された実質的な一軸延伸工程が、実施形態によっては特に好適である。
【0027】
一般に、複屈折高分子の一軸配向は、光学フィルム(又はフィルムの層)を提供し、3つの直交方向の内2つの屈折率は、ほぼ同じである(例えば、図8に示したようなフィルムの幅(W)及び厚さ(T)方向)。第3の方向(例えば、フィルムの長さ(L)方向に沿った)の屈折率は、その他の2つの方向の屈折率とは異なる。通常、完全な一軸配向は必要なく、光学フィルムの最終用途アプリケーションを含む様々な要因によるが、最適な条件からのある程度の偏位は、許容できる。更に、本開示は、3つの「直交する方向」を指すが、対応する方向は、フィルムの不均一性のため必ずしも直交しないことが理解される。
【0028】
一般に、実質的な一軸延伸工程は、機械方向(MD)、横方向(TD)、及び垂直方向(ND)に対応する3つの互いに直交する軸線を基準にして記載得るフィルムを延伸する。図8に示したように、これらの軸線は、フィルムの幅、長さ及び厚さに対応する。実質的な一軸延伸工程は、フィルム32を初期形状34から最終形状36に延伸する。機械方向(MD)は、延伸装置、例えば、図10に示した装置を通ってフィルムがそれに沿って走行する一般的な方向である。横方向(TD)は、フィルムの平面内の第2軸線で、機械方向と直交する。垂直方向(ND)は、MD及びTDの両方と直交し、一般にポリマーフィルムの厚さ方向に相当する。
【0029】
図9は、この開示で記載される典型的に実質的な一軸延伸工程38のブロック図である。工程40において、フィルムが、延伸装置に供給又は提供される。工程は、所望により、事前調整工程42を含む。フィルムは、工程44で延伸される。フィルムは、工程46で後調整される。フィルムは、工程48で延伸装置から取り出される。
【0030】
図10は、実質的な一軸延伸を実現するための実質的な一軸延伸工程及び装置50の1つの実施形態を示す。この工程は、この開示に記載されたヒートセット手順と共に使用されてよい。図9に示した工程は、延伸装置とは別の1以上の装置を使用し達成され得る(少なくとも図9の工程44を実施することがわかっている。これらの1以上の追加の装置は、1以上の機能(例えば、図9に示した工程40、42、46及び48で表わされる機能)を行う。
【0031】
図10に例示された実施形態において、装置50は、区域52を含み、そこでフィルム32は、延伸装置50に導入される。フィルム32は、いかなる所望の方法で提供されてもよい。例えば、フィルム32は、ロール又はその他の形態に製造され、それから延伸装置50に提供され得る。他の例としては、延伸装置50は、フィルム32を押出成形機(例えば、フィルム32が押出成形により生成され、押出成形後延伸の準備ができている場合)、コータ(例えば、フィルム32がコーティングにより生成され、1以上のコーティングされた層を受容後延伸の準備ができている場合)、又はラミネータ(例えば、フィルム32が積層により生成され、1以上の積層された層を受容後延伸の準備ができている場合)から受容するよう構成され得る。
【0032】
通常、フィルム32は、フィルムの対向する端部を保持し、フィルムを搬送経路を画定する対向する走路54に沿って搬送する1以上の把持部材の区域52内にある。把持部材(例えば、図12を参照のこと)は、通常フィルム32の端部又は端部の近くでフィルム32を把持する。把持部材で把持されたフィルム32の部分は、多くの場合、延伸後使用されるのに適してない、そのため、把持部材の位置は、通常フィルム32に十分な把持を付与するよう選択され、工程で発生する廃棄材料の量を制御しながら延伸できるようにする。
【0033】
クリップ等の把持部材は、例えば、チェーンに結合された把持部材を有する走路54に沿ってチェーンを回転するローラー56により走路54に沿って誘導され得る。延伸装置50を通って搬送される際、ローラー56は、フィルム32の速度と方向を制御する駆動機構に接続される。又、ローラー56は、ベルト型把持部材を回転させ、ベルト型把持部材の速度を制御するために使用されてよい。ベルト及びローラー56は、所望によりインタロック歯群を含み、ベルトとローラー56との間の滑りを減少又は防止する。
【0034】
所望により、装置50は、1つの実施形態において、延伸の準備時にフィルム32を加熱するためのオーブン60、他の装置、又は設備により囲われる事前調整区域58を含む。事前調整区域58は、予熱領域62、均熱領域64、又は両方を含み得る。少なくとも幾つかの実施形態において、図13の境界軌道により示す把持部材とフィルムとの間の接触を発生させるために少量の延伸があってよい。少なくとも幾つかの事例において、実際には延伸は全くなくてよいが、対向する走路間で離隔の増加は、フィルム32が加熱されるとき少なくとも部分的にフィルム32の熱膨張の原因となる。
【0035】
フィルム32は、主延伸区域66で延伸される。通常、主延伸区域66内で、延伸68を受けたフィルム領域は、フィルム68のポリマー(類)のガラス転移を超える加熱環境で加熱され又は保持される。ポリエステル類の場合、温度範囲は、通常約80℃〜約160℃である。好適な加熱素子の例としては、対流及び放射加熱素子が挙げられるが、その他の加熱素子も使用されて得る。実施形態によっては、フィルム32を加熱するために使用される加熱素子は、個々に又は一組で制御され、可変量の熱を供給してよい。前記制御は、加熱素子の温度、又は加熱素子からフィルム68に向けられる空気の方向若しくは速度の変更を可能にするものを含む様々な方法により行われてよい。必要に応じて、加熱素子の制御が使用されてよく、フィルム68の区域を調節可能に加熱し、フィルム68に対する延伸の均一性を改良ないしは別の方法で変更する。例えば、均一な加熱状態で他の領域と同程度の延伸をしないフィルム68の領域は、より容易に延伸可能とするため、より以上に加熱されてよい。
【0036】
主延伸区域66内では、把持部材は、一般に広がる走路54に追従し、所望の量だけポリマーフィルム68を延伸する。装置50の主延伸区域66及びその他の区域の走路54は、様々な構造体及び材料を使用して形成され得る。主延伸区域66外部では、走路54は、通常、実質的に線状である。対向する線状走路54は、平行であってよく、又は狭まる若しくは広がるよう配置されてよい。主延伸区域66内では、走路54は、一般に広がり、一般に曲線状である。幾つかの代表的な実施形態において、一般に、走路の曲線状形状は、線状走路線分を使用し近似され得る。
【0037】
1つの実施例において、装置50は、典型的に後調整区域70を含む。例えば、フィルム32は、領域72でヒートセットされ、領域74で冷却されてよい。フィルム32は、全ての構成成分が、それらのガラス転移温度未満の温度レベルに到達すると冷却される。幾つかの他の実施形態において、冷却は延伸装置50の外で行われる。
【0038】
図10に示した実施形態において、主延伸区域66からフィルム32を取り出すため引取装置が使用される。例示した実施形態において、この引取装置は、フィルム32が主延伸区域66を介して搬送された走路54から独立している(すなわち、直接接続されていない)。
【0039】
この開示の目的ため、用語ヒートセットは、加熱プロトコルを指し、そこで、フィルム32は、配向後加熱され、例えば、結晶成長、寸法安定性及び/又は全体的な光学性能等のフィルムの性状を向上する。ヒートセットは、温度と時間両方の関数であり、例えば、工業的に有用なフィルムの線速度及び伝熱特性、並びに最終製品の光学的な鮮明度等の要因が考慮されなければならない。代表的な実施形態において、ヒートセット工程において、フィルム32をそれの少なくとも1つの高分子構成成分のガラス転移温度(Tg)を超え、好ましくはそれの全ての高分子構成成分のガラス転移温度(Tg)を超えるまで加熱する。代表的な高分子材料としては、PEN、PET、coPEN類、ポリプロピレン及びシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。ヒートセット工程の1つの実施形態において、要求はされてないが、フィルム32は、フィルム32の延伸温度を超えて加熱される。他の実施形態において、ヒートセット工程では、フィルム32は、フィルム32のTgとフィルム32の融点との間の温度に加熱される。
【0040】
一般に、結晶化速度に関して、系の動力学と熱力学のバランスに起因する最適温度がある。この温度は、ヒートセット時間を最小にすることを主に考慮する場合、有用である。種々の製品と工程との間での考慮すべき事項の最善のバランスを見出すための条件を調節する典型的な開始点は、フィルム32のTgと融点のほぼ中間にある。例えば、PETとPENのガラス転移温度は、乾燥条件下で各々約80℃と120℃である。PET及びPEN(いわゆる「coPEN類」)の中間体組成物のコポリマーのガラス転移温度は、ホモポリマーのガラス転移温度の中間にある。融点は、それらの大きさ及び拘束による物理結晶の不完全な範囲について温度範囲をカバーする。PET及びPENの大まかな融点推測では、PETが約260℃、PENが約270℃である。いわゆるcoPEN類の融点は、典型的にホモポリマーの融点未満であり、例えば示差走査熱量測定(DSC)により近似的に測定できる。
【0041】
従って、PET及びPENのヒートセットの開始点の範囲は、例えば、170〜195℃である。実際の工程セットポイントは、所定の工程内での滞留時間と伝熱によって決まる。滞留時間は、約1秒〜約10分の範囲であってよく、工程条件ばかりではなく、望ましい最終的な結果、例えば結晶化度の量、層間剥離抵抗の増加、ヘイズの最適化、及び特定のその他の性状によって決まる。滞留時間を最小にすることは、多くの場合、機器の大きさを最小にする等を考慮する際に有用である。温度がより高いと結晶化度の特定レベルに達する所要時間を少なくできる。しかしながら、温度がより高いと不完全な結晶構造を融解し、更により大きい構造体に変成されるおそれもある。これにより一部のアプリケーションで不必要なヘイズを生成する場合がある。
【0042】
1つの実施形態において、主延伸区域66を通過する把持部材により把持されたフィルムの部分が、取り外される。ほぼ全ての延伸履歴(図10に示したように)全体を通して実質的な一軸延伸を維持するため、横方向延伸の末端部において、急速に広がる端部部分76は、好ましくは、スリットを付けたポイント78で延伸フィルム68から裁断される。裁断は、スリッティングポイント78で行われてよく、バリ又は使用不可能な部分76は、処分されてよい。
【0043】
1つの実施形態において、工程は、又取り出し区域80を含む。所望によりローラー82が使用され、フィルムを前方に送るが、これは、なくしてよい。1つの実施形態において、付帯する可能性として、ローラー82が、最終フィルム84に接触し、最終フィルム84を損傷するのでローラー82は、使用されない。1つの実施形態において、別の裁断86が行われ、未使用部分88が、処分される。
【0044】
又、取り出し区域80は、選択が自由の分離領域(図10に不図示)を含んでよく、そこでは、フィルム温度が制御され、そり等の望ましくないフィルム性状を減らし及び/又は無くす。分離領域において、フィルムは、ロールに巻きつけられてよいが、巻きつけは、必要ではない。選択が自由の分離領域から取り出された後、フィルムは、所望によりコーティングされ若しくは積層され、又は表面質感若しくは表面構造体を付与する処理が行われる。
【0045】
1つの実施形態において、引取後、完成製品への直接変換が行われる。他の実施形態において、引取装置を離れたフィルム84は、通常、後での使用のためロールに巻きつけられる。1つの実施例において、フィルム84は、巻きつけられず選択が自由の第2加熱ユニットに移動されてよい(図10に不図示)。第2加熱ユニットで、フィルム84は、しわを防止するため、必要に応じて把持され、及び張力がかけられてよい。この工程は、典型的に延伸領域66に適用されたもとの延伸温度未満の温度で行われる。第2加熱ユニットは、単にオーブンであってよく、そこで、フィルム84は、その性状を向上するため、ロール又はシート形態で定置される。例えば、第2均熱手順が、第2加熱領域に適用されてよく、そこでフィルムは、少なくとも1つのフィルム構成成分のTg未満、好ましくは全てのフィルム構成成分のTg未満の温度まで加熱される。再度、第2均熱が、典型的に、延伸領域66のフィルム84に適用された初期延伸温度未満で行われる。第2均熱は、防縮性又は耐クリープ性等の所望のフィルム性能が達成されるまで、例えば数時間若しくは数日等の長期間継続してよい。例えば、PETの均熱は、典型的に約50〜75℃で数時間〜数日行われ、一方PENの均熱は、典型的に約60〜115℃で数時間〜数日行われる。又、均熱は、何らかの処理後作業下で部分的に実現されてよい。例えば、フィルム84は、何らかの均熱効果を有するオーブン内でコーティングされ、乾燥され、又は硬化されてよい。
【0046】
第2加熱領域の後、フィルム84は、所望により第2冷却及び/又は設定領域(図10に不図示)に移動されてよい。第2冷却及び/又は設定領域において、フィルム84は、収束レールに沿って張力をかけられ及び/又はトーインされた状態で定置され、収縮及反りを制御することが可能である。選択の自由な第2冷却及び/又は設定領域の後、フィルムは、再度ロールにされてよい。
【0047】
図11〜12は、把持部材と走路の1つの実施形態を示す。好適な把持部材90の1つの実施例として一連のクリップが挙げられ、対向する表面間に順次フィルム32を把持し、更に走路54まわりを走行する。把持部材は、走路54に沿って溝若しくは通路内に入れ子にし、又は乗って行くことができる。別の実施例は、ベルトシステムで対向するベルト若しくはトレッド、又は一連のベルト若しくはトレッド間にフィルム32を保持し、フィルム32を走路54に沿って誘導する。必要に応じて、ベルト及びトレッドは、可撓性で連続的な、又は半連続的なフィルム搬送機構を設けてよい。種々の対向する多ベルト方式が、例えば、米国特許第5,517,737号及び欧州特許出願第0236171A1に記載されている(各々の全内容が、参照により本明細書に組み入れられる)。ベルトの張力は、所望により調節でき、望ましい把持レベルが得られる。
【0048】
ベルト又はクリップは、任意の材料から作製され得る。例えば、ベルトは、複合物構成を有し獲る。好適なベルトの1つの実施例としては、高張力を支持するため鋼鉄等の金属から作製された内側層とエラストマーの外側層が挙げられ、良好な把持を備える。又、その他のベルトが、使用されてよい。実施形態によっては、ベルトとして、不連続なトレッドが挙げられ、良好な把持を備える。
【0049】
延伸機を介してフィルムを把持及び搬送するその他の方法が既知であり、使用されてよい。実施形態によっては、延伸装置の別の部分には、異なるタイプの把持部材90を使用できる。
【0050】
図11及び12に示した実施形態の把持部材90は、一連のテンタークリップである。これらのクリップは、分割することにより全体として可撓性を提供できる。分離性のクリプは、典型的に密に詰められ、チェイン等の可撓性構造体に取り付けられる。可撓性構造体は、走路54に沿う通路に沿い又は通路内を乗って行く。最大限の効果が得られるように定置されたカム及びカム表面は、所望のポイントでテンタークリップを開け閉めする。クリップ及びチェイン組立品は、所望によりホィール、又はベアリング等に乗って行く。1つの実施例において、把持部材90は、二対の内側及び外側レール間を転がる上部及び下部ベアリングに実装されたテンタークリップである。これらのレールが、少なくとも部分的に走路54を形成する。
【0051】
把持部材90の端部は、延伸されることになるフィルム32の部分について境界端部を画定する。走路54に沿う把持部材90の動きが、少なくとも部分的にフィルム32の動きと延伸をつかさどる境界軌道を提供する。その他の効果(例えば、ダウンウェブ張力及び巻取装置)は、動き及び延伸の他の部分の説明となってよい。境界軌道は、通常、把持部材90が沿って走行する走路54又はレールからより容易に識別される。例えば、把持部材90中央の有効端部、例えばテンタークリップは、そろえられ、走路54又はレールの表面と同じ経路を追従してよい。次に、この表面が、境界軌道と一致する。実際には、把持部材90の有効端部は、把持部材90からのわずかなフィルムの滑り又は把持部材90下からのながれ出しにより、ややはっきりしないが、これらの偏位は、小さくできる。
【0052】
更に、テンタークリップ等の把持部材90は、端部面の長さが実際の境界軌道に影響を及ぼし得る。一般に、クリップが小さくなればなるほど、境界軌道により近づき、延伸の変動はより小さくなる。少なくとも幾つかの実施形態において、クリップ面端部の長さは、対向する境界軌道又は走路間の合計初期距離の約1/2以下である。特定の好適な実施形態において、クリップ面端部の長さは、対向する境界軌道又は走路間の合計初期距離の約1/4以下である。
【0053】
2つの対向する走路54は、所望により2つの分離した若しくは分離できるプラットフォームに配置され、又は別の方法として対向する走路54間の距離が調節できるように構成される。以下に記載するように、このことは、特に異なる大きさのフィルム32が装置50により延伸される場合、又は主延伸区域66の延伸形状を変えたい場合、特に有用である。対向する走路54間の離隔又は変更は、マニュアルで行われてもよく、機械的に行われてもよく(例えば、走路54間の離隔距離を変更できる駆動体を制御するためのコンピュータ又はその他の機器を使用することにより)、又は両方で行われてもよい。
【0054】
フィルム32は、対向する走路54に実装された2組の対向する把持部材90により把持されるため、2つの対向する境界軌道が存在する。少なくとも幾つかの実施形態において、これらの軌道は、延伸フィルム32のMD中央線に対する鏡像である。他の実施形態において、対向する走路54は、鏡像ではない。そのような非鏡像配置は、フィルム32に対する1以上の光学又は物理特性に変化(例えば、主軸線の勾配又は回転)を与えるのに有用であり得る。
【0055】
図13は、供給区域52、その後の事前調整区域58及び主延伸区域66の1つの実施形態を示す。事前調整区域58(又は、所望により供給区域52)内に、走路54がわずかに広げられフィルム32に把持部材90(例えば、テンタークリップ)を取り付ける把持部材設定領域92が設けられる。フィルム32は、所望によりこの領域92内で加熱される。1つの実施形態において、この初期TD延伸は、最終TD延伸の約5%以下であり、通常最終TD延伸の約2%未満であり、多くの場合最終TD延伸の約1%未満である。実施形態によっては、この初期延伸が起こる領域92の後に走路54が実質的に平行で、フィルム32が高温で加熱され又は保持される領域94が続く。
【0056】
延伸装置50の全ての区域において、走路54は、所望により一緒に結合される一連の線状又は曲線状セグメントを使用し形成され得る。走路54は、2つ又はそれ以上(又は、それ全てもの)の個々の区域を分離できる(例えば、整備又は構築のため)セグメントを使用し作製され得る。代替手段、又は特に、区域若しくは区域の組として、走路54が、単一連続構成として形成され得る。走路54は、延伸機50の1以上の隣接した区域52、58、66、70及び80を架け渡す連続的な構成を含むことができる。走路54は、連続的な構成と個々のセグメントのあらゆる組合せを有してよい。
【0057】
実施形態によっては、主延伸区域66内の走路54は結合されるが、先に来る区域の走路54から分離する。実施形態によっては、それに続く後調整又は取り出し区域70及び80の走路は、例えば、図22〜27に示されるように、典型的に主延伸区域66の走路54から分離される。
【0058】
主延伸区域66の走路は、図10において曲線状であるが、線状走路セグメントも、実施形態によっては使用され得る。1つの実施形態において、これらのセグメントは、互いに対してそろえられ(例えば、個々の線状セグメントを軸線まわりに旋回することにより)、望ましい曲線状走路形状の直線近似を作製する。一般に、線状セグメントが短くなればなるほど、よりよい曲線状近似が作製され得る。実施形態によっては、1以上及び好ましくは全ての線状セグメントの位置が、調節でき(軸線まわりに旋回できる)、その結果、走路54の形状は、必要に応じて、調節される。調節は、マニュアルであってよく又は調節は、例えば、駆動体に結合されたコンピュータ又は他の装置の制御下で機械的に行われてよい。曲線状セグメントは、線状セグメントの代わりに又は線状セグメントに加えて使用され得ることがわかる。
【0059】
又、連続走路54は、区域52、58、66、70及び80各々を介して使用され得る。特に、連続曲線状走路54は、主延伸区域66を介して使用され得る。連続曲線状走路54としては、典型的に、把持部材90がそれに沿って走る走路54を画定する少なくとも1つの連続的なレールが挙げられる。1つの実施形態において、曲線状走路54は、4つのレール間を転がる上部及び下部ベアリングに実装されたテンタークリップを有する二対の内側及び外側レールを含む。
【0060】
実施形態によっては、連続走路54は、調節可能である。調節可能な連続走路54を作製する1つの方法として、1以上の走路形状制御ユニットの使用が挙げられる。これらの走路形状制御ユニットは、連続レール等の連続走路54の部分に結合され、必要に応じて抵抗力を走路54に加え走路54を曲げるように構成される。図14は、走路54に結合された走路形状制御ユニット96を有するそのような配置の1つの実施形態を略図で示す。一般に、走路形状制御ユニット96は、実施形態によっては、オン又はオフのいずれかである制御ユニット96に限定されてよいが、走路形状制御ユニット96が加えることができる抵抗力の範囲を有する。
【0061】
走路形状制御ユニット96は、典型的に、フィルム32の中央に向け抵抗力を加えてよく、フィルム32の中央から離れて抵抗力を加えてもよく、好ましくは両方に抵抗力を加えてよい。走路形状制御ユニット96は、調節可能な連続走路54の特定のポイントに結合され得、又は、走路形状制御ユニット96は、走路54が制御ユニット96に沿って横方向に摺動し、同時に更に走路54と制御ユニット96との間の連結具を保持できるように構成され得る。この配置が、より大きい幅の動作を容易にすることができる理由は、制御ユニット96が編成されるとき、この配置は、走路54がより自在に調節されるのを可能とする。一般に、走路形状制御ユニット96は、走路54が走路54の均衡形状から外れる形状範囲、例えば図14の形状54及び54’を通って移動するのを可能とする。走路の均衡及び調節された形状は、線状又は曲線状であってよい。典型的に、走路形状制御ユニット96及び走路54は、動作線98(又は、他の幾何学的形状)に沿って移動し得る。1を超える走路形状制御ユニット96が使用される場合、走路形状制御ユニット96は、同等又は類似動作線を有してよく、動作98又は線の範囲及び個々の走路形状制御ユニット96の動作98範囲は、異なってもよい。
【0062】
実施形態によっては、走路の1以上の点100は、固定されている。固定点100は、主延伸区域66の開始(図14に示したように)又は終了点若しくはその近辺を含む走路54に沿う他の点にあってもよい。又、図18に示すように、固定点100は、走路54に沿った他の点に位置決めされることも可能である。
【0063】
好適な走路形状制御ユニット96と走路54の1つの実施例を図15に示す。この実施形態の走路54として、4つのレール102間を転がるベアリング(不図示)に実装されたテンタークリップ(不図示)を有する4つのレール102が挙げられる。走路形状制御ユニット96は、駆動体(不図示)に結合される基部104、上部及び下部内側接触部材106、並びに上部及び下部外側接触部材108を含む。内側並びに外側接触部材106及び108は、基部104の移動で、接触部材106及び108各々が、抵抗力をレール102の内側及び外側表面に加えることができるように基部104に結合される。
【0064】
代表的な実施形態において、図16及び17(図16は、レール102及び内側接触部材106を示す)に示すように、上又は下から見たとき、内側接触部材106は、接触部材106及び108とレール102との間に小さい接触領域だけを備える形状を有する。前記形状の例としては、円形、卵形、並びに菱形、六角形、又はその他の類似の形状が挙げられ、そこでは、内側接触部材106とレール102間の接触は、これらの形状の頂点で行われる。外側接触部材108は、図17(図17は、レール102及びレール102と接触する外側接触部材108の部分を示す)に示すように、上又は下から見たとき、外側接触部材108の部分が、レール102と接触する点にくるように同様に形成され得る。前記形状を使用することで、走路形状制御ユニット96は、必要に応じて、抵抗力を加えて走路形状を変更でき、同時に走路54は、制御ユニット96に固定されるよりむしろ制御ユニット96によって横方向に摺動できる。又、この構成により、走路54は、制御ユニット96内のその瞬間的な傾を調節できる。これらの理由の一方又は両方のため、走路54は、より広い範囲の形状を調節できる。他の実施形態において、数個又はそれ以上の接触部材106及び108があってよく、又は内側若しくは外側部材106及び108だけがあってもよい。
【0065】
更に図18に示すように、走路54は、異なる延伸特性を有する又は異なる数学式で記載され得る領域110、112及び114を主延伸区域66内に備えるように構成されてよい。実施形態によっては、走路54は、これらの異なる領域110、112及び114を画定する形状を有する。他の実施形態において、走路54は、例えば、上述の走路形状制御ユニット96を使用して調節され、簡単な1官能の配置の範囲を超えた様々な形状116及び118を備えることができる。このことは、主延伸区域66の別の部分が、所望の機能を遂行するのを可能にするために、利点がある。例えば、初期延伸領域は、特定の形状(例えば、以下で記載するようなU>1及びF>1を有する超一軸形状)を有し、その後、異なる形状(例えば、一軸形状)を有する1以上の後部領域を有してよい。所望により、ある形状から別の形状に遷移する中間領域が備えられ得る。実施形態によっては、個々の領域110、112及び114は、固定されている走路54の点100により分離又は画定されてよい。
【0066】
実施形態によっては、走路54は、走路54の長さに沿って非均一断面形状を有し、走路54の曲げ及び成形を容易にする。例えば、走路54に使用される1以上のレール102は、異なる断面形状を有し得る。例として、上述の4レール構成において、レール102の各々又はレール102の部分集合は、走路54の長さに沿って変化する断面を有する。断面は、例えば、走路54の高さ若しくは厚さ(又は、1以上の連続レール102等の走路54の構成要素)のいずれか、又は両方を変え変更することができる。例として、1つの実施形態において、走路54又は走路54の1以上のレール102の厚さは、機械方向の走路54の長さに沿って減少又は増加する。これらの変更は、特定の走路形状又は走路形状の調節性の変動に対応するために使用され得る。例えば、上述したように、走路54は、各々が異なる走路形状54を有するいくつかの異なる領域110,112及び114を有してよい。走路54又は走路54の構成要素の断面の変更は、特定のレール102形状を実現又は推進するため各領域110,112及び114内で変えられてよく、及び領域110,112及び114間で変えられてよい。例として、比較的厚い断面形状を有する領域112が、2つの他の領域110及び114間に配置され、2つの領域110及び114間に遷移空間を分離又は設けることができる。
【0067】
走路54又はレール102断面の変更の例として、走路54又はレール102等の走路部分の厚さプロファイルの設計において、走路54に沿った位置を表わすためアーク長sが使用され得る。延伸開始時のアーク長sは、ゼロと定義され、他方延伸の終了時は、Lと定義され、延伸の開始及び終了時の対応する厚さは、各々h(0)及びh(L)で示される。この特定の実施形態において、走路54又は走路構成要素(例えば、レール102)は、L’〜L’’、s=0とs=L間のはり部分の上にテーパを有し、位置L’での厚さh(L’)は、位置L’’での厚さh(L’’)より大きい。このようにしてL’又はL’’のいずれもがより高いアーク長座標にあってよい(すなわち、L’>L’’又はL’<L’’)。有用な厚さプロファイルの1つの実施例は、L’〜L’’のレール102上のアーク長sの関数として厚さh(s)の関数で与えられるテーパであり、式
h(s)=(h(L’)−h(L’’))(1−(s−L’)/(L’’ −L’))α+h(L’’)
(式中、αは、L’からL’’に厚さが減少するテーパの正の比率である)で与えられる。
【0068】
L’がL’’より小さい場合、アーク長と共に厚さが減少する。L’がL’’より大きい場合、アーク長と共に厚さが増加する。所望により、走路54は、部分に配分されてよく、その各々がそれ自体の局所的なL’、L’’及びテーパ比を有する。走路54又はレール等の走路構成要素の最大厚さは、走路54のその点で必要とされる可撓性の量によって決まる。走路又はレールに適用したはり理論を使用すると、テーパを有する直線状はりの場合、1/3のαの値は、一方の末端部の負荷に応じて放物線状に曲がるはりを提供することが示される。はりが、湾曲した均衡形状から始まる、又はいくつかの制御点により負荷をかけられる場合、おそらく別のテーパがより望ましいであろう。種々のその他の形状全体にわたって形質転換する場合、所定の走路54若しくは走路構成要素内で増加及び減少した厚さの両方、又はこれら部分の全てにわたって数値的に計算された形態を有することが有用である。走路54又は走路構成要素に沿った任意の点での最小厚さは、延伸抵抗力を支えるために必要とされる走路54の強度の大きさによって決まる。最大厚さは、要求される可撓性のレベルの関数であり得る。例えば、走路54又は走路構成要素の永久降伏及び回復調節能力の損失を避けるため走路調節のレベルを走路54又は走路構成要素の弾性範囲内に保持することは一般的に有益である。
【0069】
対向する走路54によって画定された経路は、MD、TD及びND方向のフィルム32の延伸に影響を及ぼす。延伸形質転換は、延伸比の組、すなわち機械方向延伸比(MDDR)、横方向延伸比(TDDR)及び垂直方向延伸比(NDDR)として記載され得る。フィルム32に関して確認する場合、特定の延伸比は、一般に、所望の方向(例えば、TD、MD又はND)のフィルム32の現時点の寸法(例えば、長さ、幅又は厚さ)とそれと同じ方向のフィルム32の初期寸法(例えば、長さ、幅又は厚さ)の比率として定義される。これらの延伸比は、延伸時のポリマーフィルム32の観測結果によって決められてよいが、指示がない限り、MDDR、TDDR及びNDDRに関しては、ポリマーフィルム32を延伸するために使用された走路54により決められた延伸比を指す。
【0070】
延伸工程の任意の所定の点において、TDDRは、境界軌道の現時点の離隔距離Lと延伸開始時の境界軌道の初期離隔距離L0の比率に相当する。換言すれば、TDDR=L/L0である。場合によっては(例えば、図2及び9のように)、TDDRは、記号λで表わされる。延伸工程の任意の所定の点において、MDDRは、発散角θのコサイン、MDと境界軌道、例えば走路54又はレール102の瞬間接線との正の夾角である。コタンジェント(θ)は、その点での走路54瞬間傾斜に等しいことになる(すなわち、1次導関数)。TDDRとMDDRを決定すると、NDDR=1/[(TDDR)(MDDR)]が与えられ、ポリマーフィルム密度は、延伸工程の間一定である。しかしながら、フィルムの密度がρf、ここで、ρf=ρ0/ρ(式中、ρは、延伸工程の現時点での密度であり、ρ0は、延伸開始時における初期密度である)の因子で変化する場合、当然ながら、NDDR=ρf/[(TDDR)(MDDR)]となる。材料の密度変化は、延伸又はその他の処理条件に起因する、例えば、結晶化又は部分結晶化等の相変化による様々な理由で実施することができる。
【0071】
図8に示したように、横方向の寸法増加を伴う完全な一軸延伸条件では、TDDR、MDDR及びNDDRが各々λ、(λ)-1/2、及び(λ)-1/2となる(材料の一定密度を仮定して)。換言すれば、延伸時において均一密度を仮定すると、一軸配向フィルムは、延伸全体を通してMDDR=(TDDR)-1/2となる。一軸特性度Uの有用な尺度は、
【数1】

【0072】
完全な一軸延伸の場合、延伸全体にわたって、Uは、1である。Uが1未満の場合、延伸状態は、「部分一軸」と考えられる。Uが1を超える場合、延伸状態は、「過一軸」と考えられる。図2に示したように、従来のテンター装置では、ポリマーフィルム12は、端部16に沿って直線的にに延伸され、フィルム区域18を延伸区域20に延伸する。この実施例において、、発散角は比較的小さく(例えば、約3°以下)、MDDRは約1であり、Uは概ねゼロである。フィルム12がMDDRが1を超えるように二軸延伸される場合、Uは負となる。実施形態によっては、Uは1を超える値を有してよい。Uが1を超える状態は、過剰弛緩の様々なレベルを表す。これらの過剰弛緩状態では、境界端部からMD圧縮が発生する。MD圧縮のレベルが形状及び材料の剛性に十分である場合、フィルムは、たわみ又はしわになる。
【0073】
当然ながら、Uは、密度変化に対して補正されてよく、下記式によりUfを与える。
【数2】

【0074】
同一平面上にない延伸軌道も許容できるが、図10に示したように、好ましくは、フィルムは面内で延伸される(すなわち、境界軌道及び走路が同一平面上にある)。面内拘束は、多くの変数を減らせるため、面内境界軌道の設計が簡略化される。完全な一軸配向の結果は、面内MD中心線から広がった一対の鏡面対称の、面内の、放物線状の軌道である。放物線は、先ず、TDを「x」方向、MDを「y」方向として定義することにより表わすことが可能である。対向する画定した放物線間のMD中心線は、y座標軸としてよい。座標原点は、主延伸区域66の開始点として選択され、放物線状軌道間の中央形跡の初期中心点に対応する。左右の画定した放物線は、各々(y=0)±x0で開始するように選択される。正のy値の場合、本開示のこの実施形態を具現する右の画定した放物線軌道は、
x/x0=(1/4)(y/x02+1である。
【0075】
左の画定した放物線軌道は、上記式の左側部分に−1を乗じることにより得られる。以下の記載の中に、右の画定軌道を決定する説明と方法を示す。次に、左の画定軌道は、フィルムの中央線上で右の画定軌道の鏡像を取ることにより得ることができる。
【0076】
部分一軸延伸の場合、最終的に正確な一軸特性度は、式
Δnyz=Δnyz(U=0)X(1−U)
(式中、Δnyzは、値のUのMD方向(すなわち、y方向)とND方向(すなわち、z方向)の屈折率の差であり、Δnyz(U=0)は、MDDRが延伸全体を通して1に保持されることを除き理想的に延伸されたフィルムのその屈折率である)により、y(MD)とz(ND)の間で合致した屈折率レベルを推測するため使用されてよい。この関係は、様々な光学フィルムに使用されるポリエステル系(PEN、PET及びPEN又はPETのコポリマーを含む)について正当に予測することわかっている。これらのポリエステル系において、Δnyz(U=0)は、典型的に差Δnxy(U=0)の約1/2、又はそれより多い量で、2つの面内方向、MD(y軸)とTD(x軸)の屈折差である。Δnxy(U=0)の典型的な値は、633ナノメートルで約0.26までの範囲にわたる。Δnyz(U=0)の典型的な値は、633ナノメートルで約0.15までの範囲にわたる。例えば、90/10coPEN、すなわち、約90%のPEN様繰返し単位と10%のPET様繰返し単位を含むコポリエステルは、633ナノメートルで典型的な値約0.14の高い伸びを有する。633ナノメートルで0.02、0.01及び0.003のΔnyzの相当値を備える実際のフィルム延伸比により測定した0.75、0.88及び0.97のU値を有するこの90/10coPENを含むフィルムが、本明細書に記載した方法により作製されている。
【0077】
同一平面上の放物線状軌道は、理想的な状態で一軸配向を提供できる。しかしながら、他の要因が、一軸配向を達成する特性に影響を及ぼす場合があり、それらには、例えば、ポリマーフィルムの不均一厚さ、延伸時のポリマーフィルムの不均一加熱、及び例えば装置のダウンウェブ区域からの追加の張力(例えば、機械方向張力)の適用が含まれる。更に、多くの場合、完全な一軸配向を達成する必要はない。そのかわり、延伸全体又は延伸の特定の部分を通して保持される最小若しくは閾値U値、又は平均U値が、定義され得る。例えば、特定のアプリケーションについて、所望により、又は必要に応じて、許容できる最小/閾値又は平均U値は、0.2、0.5、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、又は0.95であってよい。一般に、0を超える全ての最小/閾値又は平均U値が、好適である。
【0078】
許容できるほぼ一軸アプリケーションの例として、液晶ディスプレー適用に使用される反射偏光子の偏角特性は、TDが主延伸方向のとき、MDとNDの屈折率差により強い影響を受ける。MDとNDの屈折率差0.08は、適用によっては許容できる。0.04の差は、その他の適用で許容できる。より厳しい適用においては、0.02以下の差が好ましい。例えば、0.85の一軸特性度は、多くの場合に十分であり、単一方向横延伸フィルムの場合、ポリエチレンナフタレート(PEN)又はPENのコポリマーを含有するポリエステル系のMDとNDの屈折率差は、633ナノメートルで0.02以下である。ポリエチレンテレフタレート(PET)等の特定のポリエステル系の場合、0.80又は0.75のより低いU値でさえも、実質的に非一軸延伸フィルムのより低い固有屈折率差のため許容されてよい。
【0079】
本開示の方法により作製される配向光学フィルムとしては、多層反射偏光子及び拡散反射偏光子等の反射偏光子が挙げられる。後者の記載は、両方とも「配向可能なポリマーブレンドを有する拡散反射偏光フィルム(Diffuse Reflective Polarizing Films with Orientable Polymer Blends)」と題する同一所有者の米国特許仮出願第60/668944号(2005年4月6日出願)及び米国特許出願第_______号(_________出願)、並びに米国特許第5,825,543号、同第6,057,961号、同第6,590,705号及び同第6,057,961号においてで見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。そのような拡散反射偏光子は、第1熱可塑性ポリマーの連続相及び第2熱可塑性ポリマーの不連続又は分散相を含む。第1若しくは第2ポリマーのいずれか又は両方が複屈折材料であってよい。1つの実施形態において、拡散反射偏光子は、1を超える連続相及び/又は1を超える分散相を含む。
【0080】
他の実施形態において、本開示の方法により作製される配向光学フィルムは、補償素子及び位相差板を含む。代表的な実施形態は、「a−プレート」であり、そしてそれは、例えば、プレート又はフィルム等の複屈折光学要素であり、光学要素のx−y平面内にその主光学軸を有する。正の複屈折a−プレートは、例えばポリビニルアルコール等のポリマーの一軸延伸フィルム、又は正のネマティック光学異方性液晶ポリマー(LCP)材料の一軸配向フィルを使用し製作し得る。負の複屈折a−プレートは、例えばディスコティック化合物を含む負の光学異方性ネマティックLCP材料の一軸配向フィルを使用し形成されてよい。
【0081】
おおよそ同等粘度の高重合体二成分ブレンドの体積分率が、約40%を超え、50%に近付くと、各相は空間で連続となるので分散相と連続相の判別が困難となる。選択する材料にもよるが、又、第1相が、第2相内に分散されているように見える領域がおそらくあり、逆もまた同様である。様々な共連続形態学の説明、並びにそれらを評価し、分析し、及び特性を決定する方法に関しては、スパーリング(Sperling)及びそのなかに引用された参照を参考のこと(L.H.スパーリング(Sperling)、「ミクロ相構造(Microphase Structure)」、エンサイクロピーディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)第2版、第9巻、760〜788頁及びL.H.スパーリング(Sperling)、第1章、「相互侵入高分子網目構造(Interpenetrating Polymer Networks)、概要」、相互侵入網目構造高分子(Interpenetrating Polymer Networks)、D.クレンプナー(D. Klempner)、L.H.スパーリング(Sperling)及びL.A.ウトラッキ(Utracki)編集、アドバンス・イン・ケミストリーシリーズ(Advances in Chemistry Series)、第239巻、3〜38頁、1994年)。
【0082】
特性がほぼ又は実質的に一軸である一組の許容できる放物線状軌道は、以下の方法により決定できる。この記載された方法は、直接「右」境界軌道を決定し、「左」境界軌道は、鏡像として得られる。先ず、対向する境界軌道間で測定されたTDDRとこれらの境界軌道の非負発散角のコサインとして定義されるMDDRの瞬間関数関係をTDDRの選択された範囲にわたって定義することにより、条件を設定する。
【0083】
次に、問題の形状が、放物線状軌道の開示で記載したように定義される。x1は、境界軌道間の初期半距離として定義され、比(x/x1)は、瞬間TDDRとして同定される、ここでxは、境界軌道上の点の現状x位置である。次に、TDDRとMDDRの瞬間関数関係をTDDRと発散角の関係に変換する。Uの具体的な値が選ばれると、上記式は、MDDRとTDDRの具体的な関係を与え、その関係は、更にアルゴリズムに使用でき、Uが1に近付くと限定ケースとして放物線状軌道も含む境界軌道のより広い部類を規定する。次に、境界軌道は、制約され、以下の微分式を満足する。
d(x/x1)/d(y/x1)=tan(θ)
(式中、tan(θ)は、発散角θの接線であり、yは、所定のx座標に対応する右境界軌道上の対向する点の現状位置のy座標である)。次に、微分式を、例えば、TDDRの履歴に沿って1から最大目標値まで1/tan(θ)を積分することにより解き、解析又は数式によるいずれかで右境界軌道の完全な座標の組{(x、y)}を得ることができる。
【0084】
許容できる軌道の他の実施例として、面内軌道の部類が記載でき、そこでは、放物線状軌道は、より小さい又はより大きい初期有効ウェブTD長を使用する。x1が、主延伸区域66入口で2つの対向する境界軌道間の離隔距離の半分の場合(すなわち、初期フィルムTD寸法から対向する境界軌道間の初期半距離である把持部により保持された端部をを減じたもの)、次に、この軌道の部類は、下記式により書き表わされる。
±(x)/(x1)=(1/4)(x1/x0)(y/x12+1
(式中、x1/x0は、換算入口離隔距離として定義される)。上記式が完全な一軸延伸を備えた放物線状走路を要求する場合、量x0は、2つの対向する走路の離隔距離の半分に相当する。換算入口離隔距離、x1/x0は、一軸状態からの軌道の偏位を表す。1つの実施形態において、主延伸領域の2つの対向する走路間の距離は、上述したように調節でき、軌道の操作を可能にし、1と異なるU及びFの値を備える(以下で記載する)。これらの軌道を形成する他の方法も使用されてよく、それらには、例えば、走路形状制御ユニットを使用し、又は目標の軌道を有する固定形状を選定することにより軌道の形状を操作することが含まれてよい。
【0085】
超一軸延伸の場合、しわ度は、オーバーフィードの概念を使用し定量化され得る。オーバーフィードFは、実際のMDDRで除算した一軸MDDR((TDDR)-1/2に等しい)として定義されてよい。実際のMDDRが一軸MDDR未満の場合、オーバーフィードFは1未満で、MDDRは、緩和不足となり、1未満のUという結果になる。Fが1を超える場合、延伸は超一軸であり、MDDRは、一軸の場合を基準として緩和過剰となる。圧縮座屈閾値は、一般的に薄い伸展性フィルムの場合低いので、少なくとも超緩和の部分は、しわとして考慮されてよい。Fが1を超える場合、オーバーフィードは、少なくともおおよそMDに沿ったしわの実際のフィルム輪郭長と面内輪郭長又は空間の比率に相当する。
【0086】
一定密度の場合のTDDRとMDDRの関係から、Fは、
F=1/(MDDRxTDDR1/2)として書き表わされる。
【0087】
典型的に、Fは、設計目的とは無関係の密度として用いられる。工程を通して大きいF値は、いつも大きいしわの原因となり、折り重なり、フィルムの別の部分に密着し、不良の原因となる。少なくともいくつかの実施形態において、オーバーフィードFは、延伸時2以下にとどまり、ひどいしわ若しくは折り重なりを回避又は減少させる。実施形態によっては、オーバーフィードは、延伸の過程全体を通して1.5以下である。フィルムによっては、1.2又は更に1.1のFの最大値が、延伸全体を通して可能である。
【0088】
少なくとも幾つかの実施形態、特に,延伸全体を通してU>1を有する実施形態の場合は、オーバーフィードの定義を置き換えることで最小MDDRの相対的な制限を定め、現状TDDRが与えられる。
MDDR>1/(FmaxxTDDR1/2
ここで、Fmaxは、1を超える任意の好ましいレベルで選択されてよい。例えば、上記したように、Fは、2、1.5、1.2又は1.1となるよう選択されてよい。
【0089】
オーバーフィードが1未満の場合、正確な一軸延伸の場合に望まれるものより事実上より多くのMDに沿った面内区間があり、MDDRは、緩和不足となり、MD張力の原因となる。結果は、1未満のU値であってよい。U、F、MDDR及びTDDRの関係を使用すると、TDDRと共に変化するUとFの対応関係が存在する。限界延伸比2で、最小U値は、約0.9の最小オーバーフィードFに相当する。延伸全体にわたりU>1である境界軌道を含む少なくとも幾つかの境界軌道の場合、MDDRは、延伸の最終部分で特定レベル未満にとどまるよう選択されてよい。例えば、
MDDR<1/(FminxTDDR1/2
ここで、延伸比が2になった後の延伸の最終部分については、Fminは、0.9以上である。
【0090】
実施例として、延伸全体にわたって、MDDR<(TDDR)-1/2(すなわち、U>1)、Fmaxが2、及びフィルムが少なくとも4のTDDRに延伸される軌道が使用されてよい。軌道が同一平面上の場合、フィルムは、少なくとも2.4及び多くの場合少なくとも5.3のTDDRに延伸される。Fmaxが1.5の場合、フィルムは、少なくとも6.8のTDDRに延伸される。軌道が同一平面上の場合、フィルムは、少なくとも2.1及び多くの場合少なくとも4.7のTDDRに延伸される。Fmaxが1.2の場合、フィルムは、同一平面上の軌道を使用し少なくとも1.8及び多くの場合少なくとも4.0のTDDRに延伸される。同一平面上又は非同一平面上境界軌道については、Fが限定されない場合、フィルムは、4を超える及び多くの場合少なくとも6.8のTDDRに延伸される。他の実施例の場合、少なくとも2.1及び多くの場合少なくとも4.7のTDDRに延伸される。延伸全体にわたって、(Fmin)(MDDR)<(TDDR)-1/2、Fmaxが2、Fminが0.9及びフィルムが、少なくとも4.6及び多くの場合少なくとも6.8のTDDRに延伸される同一平面上の軌道が使用されてよい。Fmaxが1.5の場合、フィルムは、少なくとも4.2及び多くの場合少なくとも6.1のTDDRに延伸される。Fmaxが1.2の場合、フィルムは、少なくとも3.7及び多くの場合少なくとも5.4のTDDRに延伸される。Fが限定されない場合、フィルムは、少なくとも8.4のTDDRに延伸される。又、延伸全体にわたって、(Fmin)(MDDR)<(TDDR)-1/2、Fmaxが1.5、Fminが0.9、及びフィルムが少なくとも6.8のTDDRに延伸される。
【0091】
その他の有用な軌道は、Fmaxを使用し定義されてよい。有用な軌道は、同一平面上の軌道を含み、そこで、TDDRは少なくとも5であり、Uは、2.5のTDDRを達成した後延伸の最終部分にわたり少なくとも0.85であり、Fmaxは、延伸時2である。又、有用な軌道は、同一平面上の軌道を含み、そこで、TDDRは少なくとも6であり、Uは、2.5のTDDRを達成した後延伸の最終部分にわたり少なくとも0.7であり、Fmaxは、延伸時2である。
【0092】
更に、その他の有用な軌道は、TDDRが限界値TDDR’を超える延伸の最終部分にわたりMDDR<TDDR-1/2<(Fmax)(MDDR)であるものを含む。以下に、幾つかの代表的な実施形態の軌道について、達成されるべき最小延伸比を示す。TDDR’が2以下のとき、Fmax=2の場合、最小延伸比は3.5であり、Fmax=1.5の場合、最小延伸比は3.2であり、Fmax=2の場合、最小延伸比は2.7である。TDDR’が4以下のとき、Fmax=2の場合、最小延伸比は5.8であり、Fmax=1.5の場合、最小延伸比は5.3であり、Fmax=1.2の場合、最小延伸比は4.8である。TDDR’が5以下のとき、Fmax=2の場合、最小延伸比は7であり、Fmax=1.5の場合、最小延伸比は6.4であり、Fmax=1.2の場合、最小延伸比は5.8である。
【0093】
一般に、曲線状及び線状走路を使用し、様々な許容できる軌道が構成されてよく、その結果、オーバーフィードは、延伸全体にわたって限界最大レベル未満にとどまり、折り重なり不良を防止し、並びに限界最小レベルを超えてとどまり、その生じた性能に合わせ正確な一軸特性の所望のレベルを可能にする。
【0094】
様々な部分一軸及び超一軸軌道が、放物線形状を使用し形成されてよい。図19は、限界TDDR後の異なる最小Uのレベルの実施例を示し、異なる最大オーバーフィードを最終目標TDDRまで示す。曲線は、走路の初期離間距離の半分であるx1によりスケール変更された座標x及びyで表わされる。従って、スケール変更されたx座標、量(x/x1)は、TDDRに等しい。曲線120は、1.0のx1/x0値を有する理想的なケースである。曲線122は、0.653のx1/x0値を有する放物線のケースであり、Uは、2.5の延伸後0.70を超えてとどまる。曲線124は、0.822のx1/x0値を有する放物線のケースであり、Uは、2.5の延伸後0.85以上にとどまる。
【0095】
曲線126、128及び130は、種々のレベルのオーバーフィードを示す。オーバーフィード、TDDR及びスケール変更された入口幅は、
1/x0=(F2(TDDR)-1)/(TDDR-1)により関連付けられる。
【0096】
オーバーフィードは、ここに記載した放物線状軌道のTDDRが増えるとただちに増加することになる。曲線126は、1.52のx1/x0値を有する放物線のケースであり、オーバーフィードは、6.5の最終延伸比まで1.2以下にとどまる。曲線128は、2.477のx1/x0値を有する放物線のケースであり、オーバーフィードは、6.5の最終延伸比まで1.5以下にとどまる。曲線130は、4.545のx1/x0値を有する放物線のケースであり、オーバーフィードは、6.5の最終延伸比まで2以下にとどまる。オーバーフィードのレベルは、これらのケースの最終延伸比の関数である。例えば、4.545よりもむしろ唯一の4.333のx1/x0値を使用すると、延伸は、10の最終TDDRまで可能で、同時にオーバーフィードを2以下に保持できる。
【0097】
放物線状軌道の場合、関係式で固定換算入口幅について任意の所定のTDDRにおけるMDDRの直接計算が可能となる。
MDDR=(TDDR(x1/x0)+(1−x1/x0))-1/2
【0098】
ある観測結果では、MDDRとTDDRの関係は、y位置の明確な関数ではない。このことで、y/x1で垂直に位置を変える放物線状軌道部分を含む複合ハイブリッド曲線の作成が可能となる。図20は、1つの方法を示す。延伸の初期部分の放物線状軌道、曲線132が、選択され、最終部分の放物線状軌道、曲線134が選択される。初期曲線132は、延伸比4.5で最大オーバーフィード2.0を有する超一軸延伸を与えるよう選択される。曲線132は、換算入口幅4.857を有する。最終曲線134は、延伸比4.5で最小U0.9を有する部分一軸延伸であるように選択される。曲線132は、換算入口幅0.868を有する。実際の走路又はレール形状は、TDDR4.5まで曲線132を追従し、次に、曲線134の垂直に位置を変えたバージョンである曲線136に続く。換言すれば、軌道は、
±(x)/(x1)=(1/4)(x1/x0)(y/x12+1
に相当する関数型を有する走路を備える初期延伸領域を有し,次に、
±(x)/(x2)=(1/4)(x2/x0)((y−A)/x22+1
(式中、x1とx2は異なり、Aは、軌道の結合を可能とする垂直移動に相当する)に相当する関数型を有する走路を備える後部延伸領域を有してよい。任意の数の放物線状セグメントが、このようにして一体にされてよい。
【0099】
放物線状軌道及びそれらの複合ハイブリッドが、関連軌道の構築を案内するため使用されてよい。1つの実施形態は、軌道を造るための線状セグメントの使用を含む。これらの直線近似は、限界延伸比TDDR*より大きい選択されたTDDR’で最大オーバーフィード及び最小オーバーフィード(又は、最小U)の放物線状軌道(又は、複合ハイブリッド)の拘束内で行われてよい。1.5、2及び2.5の値の例を有するひずみ誘起結晶化度の発生に関連し、又は1,2若しくは1.1のより低い値さえも有する弾性ひずみ降伏に関連するTDDR*の値が選択されてよい。一般に、TDDR*は、1.05〜3の範囲に入る。TDDR*未満のレール又は走路の部分は、最小オーバーフィード又はUにいかなる特定の拘束も有さず、拘束放物線状軌道の拘束外の範囲に入ってよい。
【0100】
図21において、曲線138は、ここでは6.5の値で示される選択された延伸比TDDR’で最小オーバーフィードの拘束放物線状軌道であるように選択される。実例の場合、最小オーバーフィード拘束放物線状軌道は、1の換算入口幅を有する理想的な曲線として選択されている。オーバーフィード、TDDR及び換算入口幅の関係を使用すると、曲線140は、6.5のTDDR値でFの最大値が2.0である最大オーバーフィード拘束放物線状軌道として識別される。曲線140は、2つの拘束放物線状軌道が、6.5の選択されたTDDR’で合致するよう垂直に位置を変え曲線142を形成する。尚、曲線140及び142は、延伸特性に関しては同等である。曲線142は、単にy/x1の2.489の後部空間値まで延伸が遅れているに過ぎない。線状又は非放物線曲線状セグメントの近似は、TDDR*を超えるこれらの拘束軌道間に位置する傾向がある。
【0101】
TDDRの増加と共に増える発散角を所有する放物線状軌道と異なり、線状軌道は、固定発散角を有する。従って、オーバーフィードは、線状セグメントに沿ってTDDRが増加すると共に減少する。簡単な直線近似は、選択されたTDDRで所望の最小オーバーフィードに等しい発散角を有する直線を選択することにより行われてよい。線セグメントは、オーバーフィードが許容される最大値になるまでTDDRで後方に外挿されてよい。それに続く線状セグメントも同様に開始される。手順は、必要又は所望に応じて度々繰り返される。最大オーバーフィードが減少するにつれ、近似に必要なセグメント数は増える。
【0102】
TDDRがTDDR*未満に低下する場合、最大オーバーフィードの拘束が保持される限り走路又はレールを完成するため任意の数の方法が使用されてよい。図21において、曲線144は、最大オーバーフィード2により拘束される直線近似である。この大きい最大オーバーフィードのため、近似は、2つの直線部分だけを含む。最終線状セグメントは、後方に6.5の選択されたTDDRから1.65のより低いTDDRにまで後方にずっと延びる。この場合、TDDR*は2になる。TDDR2未満でUに拘束がない場合、走路を仕上げる1つの方法は、1.65でのTDDRからy/x1ゼロ点での1のTDDRまで戻って第2線状セグメントを外挿することである。尚、拘束は、TDDR*未満では有効でないので、このことが、第2セグメントをより低い拘束放物線と交差させる。
【0103】
図21において、曲線146は、最大オーバーフィード1.5の場合に、よりタイトな値を使用したときの結果である。ここには、最大オーバーフィードの拘束放物線状軌道は、示していない。3つの線状セグメントが必要とされる。第1セグメントは、6.5のTDDRから2.9のTDDRまで後方に延びる。第2セグメントは、2.9のこのTDDR値で最小オーバーフィードの拘束放物線状軌道に等しい発散角と考えられ、1.3のTDDRまで後方に延びる。この第2セグメントは、TDDR*未満で終了する。最終セグメントは、曲線144に使用されたものとは異なる方法を使用し、曲線146の走路又はレール形状を完成する。ここでは、最後のセグメントと同じ手順が、前のセグメントについても使用され、より高いy/x1値を有する延伸の開始が遅れるという結果となる。走路を完成する第3方法は、1の初期TDDRでオーバーフィードを最大に設定することである。
【0104】
本開示要求に合った一般的な非線状及び非放物線状軌道は、拘束放物線状軌道を使用し構成されてよい。最大オーバーフィード拘束放物線状軌道は、TDDRの関数として最小傾斜、すなわち最大発散角の曲線である。最小オーバーフィード拘束放物線状軌道は、TDDRの関数として最大傾斜、すなわち最小発散角の曲線である。一般に、曲線は、拘束制限の間に位置する傾斜の任意の関数を使用し、選択されたTDDR’から後方に外挿されてよい。
【0105】
これらの拘束間に位置する傾斜の関数を定義する簡単な方法は、包絡面内に既知の曲線の単純な直線組合せを取り入れることである。図21の曲線148は、この簡単な方法を示す。この実施例において、曲線148は、最大オーバーフィード拘束放物線状軌道、曲線142、及び0.7〜0.3の線状重量を有する曲線144の直線近似の直線組合せにより形成される。一般に、単純な直線組合せではない関数も使用されてよい。
【0106】
本開示の種々の非放物線状軌道を記載する前述の方法は、走路の異なる部分に適用されてよい、例えば、TDDRが6.5までの図21の実施例は、異なる要求を有するTDDRが6.5を越える他の部分及び従ってTDDRのそのより高い範囲を越える異なる最大及び最小拘束軌道と組合されてよい。この場合、より低い延伸の前述した部分のTDDR’は、TDDR*の役目を引き受ける。一般に、TDDR’は、所望の延伸範囲全体にわたって選択されてよい。種々の部分が、降伏、ひずみ誘起結晶化、くびれ若しくはその他の延伸不均一性の発生、ひずみ硬化の発生等の延伸の様々な延伸現象、又はフィルム内の様々な性能の発現を説明するため使用されてよい。典型的な破断点としては、TDDR*に関するものが挙げられ、ポリエステル類のひずみ硬化については、3〜7の範囲であり、典型的な最終延伸では、4〜10又は10以上の範囲の値である。
【0107】
本開示の境界軌道を決定する手順、及び選択されたTDDR’からより低いTDDRまで後方に外挿する方法には、選択されたTDDR’からより高いTDDRまで前方に外挿する類似の方法に使用されてよい。再度、2つの拘束軌道が形成され、最も低い選択されたTDDR’で接合される。TDDR’’の好都合な値は、1の初期TDDRである。この方法では、最小オーバーフィード又はUの拘束軌道は、最大オーバーフィード曲線上に位置する。図20は、この方法の実施例を示し、ハイブリッド曲線136は、最小オーバーフィード拘束曲線134と最大オーバーフィード拘束曲線132の間に位置する。
【0108】
更にその他の境界軌道の部類が定義されてよく、実施形態によっては、残留しわ抑制に有用な場合がある。剪断力が無いときの一軸条件は、ゼロの主MDひずみを有するため、有限ひずみ解析を使用することにより、主MDひずみが、これらの条件で実際にわずかに圧縮状態になることが予想される。有限ひずみ解析とネオ−フック弾性固体構造方程式を使用することにより、圧縮ひずみを防止する好適な条件が、任意に下記式により与えられることが見出されている。
((TDDR)(MDDR))-4+((TDDR)(MDDR))2−(TDDR)-2−(MDDR)-2−sin2(θ)((TDDR)(MDDR))-2=0
(式中、MDDRは、発散角のコサインである)。本開示のこの任意の方法は、次に境界軌道のこの部類を明示する。
【0109】
上に示したように、フィルムは、平面外境界軌道、すなわち単一ユークリッド平面内に位置しない境界軌道を使用し、平面外に延伸されてよい。本開示のこの好ましい実施形態に関係する要求に合致する数えきれないがそれにもかかわらず特定の境界軌道が存在する、そのため、実質的な一軸延伸履歴は、平面外境界軌道を使用し維持されてよい。境界は、対称であってよく、中心平面、例えば、境界軌道間の初期中心点、フィルム走行の初期方向、及び未延伸フィルムに直角の初期表面を含む平面により鏡像を形成する。この実施形態において、フィルムが、類似の初期位置、すなわち互に共直線で初期中心点から等しい速度でこれらの境界軌道に沿って走行するとき、フィルムは、2つの対向する境界軌道間の最も短い距離の線状セグメントの組により形成される円筒空間マニホールドに沿って境界軌道間で延伸されてよい。
【0110】
従って、中心平面上のこの理想的なマニホールドの形跡は、理想的な延伸のためフィルム中心経路の跡をたどる。境界軌道から中心平面上のこの中心形跡までのこのマニホールドに沿った距離と境界軌道の開始から初期中心点までのもとの距離の比率が、境界軌道を架け渡すフィルム全体にわたる瞬間公称TDDR、すなわち境界軌道の現状対向点間の半距離と境界軌道の対向点の初期位置間の半距離と比率である。2つの対向点が、対向する境界軌道に沿って一定で同一の速度で移動するとき、中心形跡の弧線、すなわち曲線状MDに沿って測定するとき、中心形跡の対応する中心点は、速度を変化させている。特に、中心形跡は、中心形跡の単位接線上の境界軌道の単位接線の投影に比例して変化する。
【0111】
上記軌道の部類は、例証であって、限定と解釈すべきでない。軌道部類の多数が、本開示の範囲内にあると考えられる。上に示したように、主延伸区域は、異なる延伸条件を備える2つ又はそれ以上の異なる領域を包含してよい。例えば、軌道の第1部類からの一方の軌道は、初期延伸領域のために選択され、軌道の同じ第1部類又は軌道の異なる部類からの他方の軌道は、それに続く延伸領域各々のために選択されてよい。
【0112】
本開示の代表的な実施形態は、U>0の最小値を含むすべての境界軌道を包含するが、本開示の典型的な実施形態は、約0.2、約0.5、約0.7、より好ましくは約0.75、更により好ましくは0.8及び一層より好ましくは0.85のUの最小値を含むほぼ又は実質的に全ての一軸境界軌道を含む。最小U拘束は、好ましくは約2.5、更により好ましくは約2.0及びより好ましくは1.5の限界TDDRで定義される延伸の最終部分全体にわたって適用されてよい。実施形態によっては、限界TDDRは、約4又は5であってよい。限界TDDRを超える場合は、特定の材料、例えば配向可能な及び複屈折ポリエステル類を含む特定のモノリシック及び多層フィルムは、ひずみ誘起結晶化等の構造体の発現のため、それらの弾性又は跳ね戻る能力が失われ始めているおそれがある。限界TDDRは、ひずみ誘起結晶化発生のための限界TDDR等の種々の材料及び工程特有の事象(例えば、温度及びひずみ速度)と一致してよい。前記限界TDDRを超えるUの最小値は、最終フィルムに設定された非一軸特性量と関連し得る。
【0113】
Uが延伸過程の最後で部分一軸の場合、種々の境界軌道が利用できる。特に、有用な境界軌道としては、同一平面上の軌道が挙げられ、そこで、TDDRは、少なくとも5、Uは、2.5のTDDRを達成後延伸の最終部分にわたって少なくとも0.7、及びUは、延伸の最後で1未満である。その他の有用な軌道としては、同一平面上の及び同一平面上にない軌道があげられ、そこで、TDDRは、少なくとも7、Uは、2.5のTDDRを達成後延伸の最終部分にわたって少なくとも0.7、及びUは、延伸の最後で1未満である。又、有用な軌道としては、同一平面上の及び同一平面上にない軌道があげられ、そこで、TDDRは、少なくとも6.5、Uは、2.5のTDDRを達成後延伸の最終部分にわたって少なくとも0.8、及びUは、延伸の最後で1未満である。有用な軌道としては、同一平面上の及び同一平面上にない軌道が挙げられ、そこで、TDDRは、少なくとも6、Uは、2.5のTDDRを達成後延伸の最終部分にわたって少なくとも0.9、及びUは、延伸の最後で1未満である。
【0114】
又、有用な軌道としては、同一平面上の及び同一平面上にない軌道が挙げられ、TDDRは、少なくとも7、及びUは、2.5のTDDRを達成後延伸の最終部分にわたって少なくとも0.85である。
【0115】
実施形態によっては、少ないレベルのMD張力が延伸工程に導入され、しわを抑制する。必ずしも必要ではないが、一般に、前記MD張力量はUの減少とともに増える。実施形態によっては、延伸を行うとき張力を増やすことは有用である。例えば、延伸初期のより小さいU値は、最終フィルムにより非一軸特性を設定する傾向がある。従って、種々の軌道部類の属性を複合軌道と一体にすることは有益である場合がある。例えば、一軸放物線状軌道は、延伸の初期部分では好ましいが、延伸の最終部分では、異なる軌道に収束するおそれがある。他の配置において、Uは、TDDRに対して非増加関数と見てよい。更に他の配置において、オーバーフィードFは、例えば1.5、2又は2.5の限界延伸後のTDDRに対して非増加関数であってよい。
【0116】
一軸放物線状軌道は、フィルムの均一空間延伸と考えられる。フィルムの良好な空間均一性は、延伸開始時及び延伸時の温度分布の注意深い制御に合わせ、初期未延伸フィルム又はウェブのクロスウェブ及びダウンウェブキャリパー(厚さ)の注意深い制御により多くのポリマー系で達成され得る。例えば、初期及び延伸時のフィルム全体にわたる初期均一キャリパーのフィルムの均一な温度分布は、殆どの場合、十分にすべきである。多くのポリマー系は、特に非均一性に対して敏感で、キャリパー及び温度の均一性が不十分な場合、不均一なやり方で延伸することになる。
【0117】
不均一なフィルム延伸は、例えば、不均一なフィルム厚さ又はその他の性状、不均一な加熱等を含む様々な理由で実施され得る。これらの多くの事例において、把持部材に近いフィルム部分は、中心に近いものよりより早く延伸する。このことが、フィルムにMD張力を生じさせ、最終的に均一なMDDRを達成する能力を限定し得る。この問題に対する1つの補正は、放物線状又は他の一軸軌道を修正し、より低いMDDRにすることである。換言すれば、延伸の全て又は一部分に対して、MDDR<(TDDR)-1/2とする。
【0118】
1つの実施形態において、改善された放物線状又はその他の一軸軌道を選択し、そこでは、延伸の全てに対して、MDDR<(TDDR)-1/2とし、より大きい発散角に対応させる。少なくとも幾つかの事例において、1未満のU値は、アプリケーション向けに許容できるため、この条件は緩和されてよい。前記事例において、改善された放物線状又はその他の一軸軌道を選択し、そこでは、(0.9)MDDR<(TDDR)-1/2とする。
【0119】
他の実施形態において、改善された放物線状又はその他の一軸軌道を選択し、そこでは、TDDRが少なくとも0.5又は1だけ増加する初期延伸領域に関して,MDDR<(TDDR)-1/2とする。そして、延伸の残りの部分に関しては、別の軌道が保持される。例えば、後部延伸領域(延伸区域34内)は、放物線状又はその他の一軸軌道を有し、そこでは、MDDRは、(TDDR)-1/2(±5%内及び好ましくは±3%内)に等しい又は概ね等しい。例として、初期延伸部分は、所望の値までTDDRレベルを達成できる。1つの実施形態において、この所望の値は、典型的に約4又は5以下である。次に、後部延伸領域は、(又は、介在延伸領域がある場合、より高い値から)TDDRを初期延伸領域の所望の値から増やすことができる。一般に、後部延伸領域は、TDDR値を0.5又は1若しくはそれ以上増やすために選択される。
【0120】
又、少なくともいくつかの事例において、MDDRとTDDRの関係は、1未満のU値は、アプリケーション向けに許容できるため、再度緩和されてよい。前記事例において、初期延伸領域の改善された放物線状又はその他の一軸軌道を選択し、(0.9)MDDR<(TDDR)-1/2とする。
【0121】
本開示のヒートセット手順は、延伸工程の種々の部分を通して行われてよい。1つの実施形態において、フィルム32は、延伸に続きヒートセットされ、引取装置、すなわち加熱引取領域に渡されてよい。1つの実施形態において、フィルム32は、延伸に続きヒートセットされ、引取装置、すなわち加熱引取領域に渡されてよい。他の実施形態において、フィルム32は、フィルム32の初期冷却及び設定後オンライン領域、例えばフィルム32を再加熱する別のオーブン装置でヒートセットされてよい。更に他の実施形態において、初期工程後ロールに巻き付けられた後で、例えば延伸装置50にオンライン接続されてない別のオーブン装置でヒートセットされることも可能である。
【0122】
ヒートセット時、フィルムを延伸するために使用される延伸比は、実質的に一軸配向させるために使用される延伸比と比べ、増加、維持又は減少されることもある。換言すれば、フィルム32は、更に延伸され、又は延伸は、例えば、全てのこれらの工程の端部把持機構により提供されるようなトーイン(延伸比の減少)によって緩和されてよい。例えば、引取は、トーインされてよく、又は、フィルム32は、クリップ装置内に把持され、及び可変幅プロファイル、例えば、トーイン又は延伸の増おそらく又その後のトーインを有する別のオーブン装置を通ってクリップ装置により搬送されてよい。ヒートセット手順は、連続的に把持され、張力をかけられたフィルムで行われてよく、例えば、対向する把持部の分離プロファイルにより制御されるとき張力を上げ若しくは下げ又はその両方の端部把持プロファイルを使用し、又は狭まり及び広がるレール装置に沿って連続若しくは不連続に把持することにより行われてよい。又、フィルムは、端部で拘束されなくてもよい。
【0123】
又、ヒートセットは、その他のフィルム後処理と一体にされてよい。例えば、フィルムは、何らかのヒートセット効果を有するオーブン内でコーティングされ、及び乾燥又は硬化されてよい。
【0124】
実施形態によっては、図22に示したもののように、引取装置150は、例えば、対向するベルト又はテンタークリップの組等の把持部材を備える走路150及び152等の任意のフィルム搬送構造体を使用してよい。TD収縮制御は、角度が付いた(好適な引取装置150の他の実施形態に使用される走路156及び158と比較し)走路152及び154を使用し達成され得る。例えば、引取装置150の走路152及び154は、少なくとも後調整区域70の部分を通ってゆっくり広がる経路(1つの実施形態において、約5°以下の角度θとする)に追従するよう位置決めされ、冷却によりフィルム32のTD収縮を可能とする。この構成の走路152及び154は、TD収縮の制御を可能とし、収縮の均一性を増加させる。他の実施形態において、実施形態によってはより広い角度が使用されてよいが、2つの対向する走路152及び154は、典型的に約3°以下の角度で広がる。このことは、主延伸区域66のフィルム32のMD張力を増加するのに有効であり、例えば、フィルム32全体にわたり屈折率の主軸の変動等の不均一な状態量を減少できる。
【0125】
実施形態によっては、引取装置150の位置は、調整でき、図23に示したように引取装置150がフィルム32を把持する延伸装置50に沿って位置を変えられる。この調整性は、フィルム32に行われる延伸量を制御する1つの方法をもたらす。延伸(図23に点線で示す)前の引取装置の走路156’及び158’により受容されたフィルム32は、延伸(図23に点線で示す)後に位置決めされた引取装置150の走路156及び158により受容されたフィルムより一般により小さいTDDRを有する。又、引取装置150は、所望により引取装置150の対向する走路152,154,156及び158間の距離の調節を可能とする。更に、引取装置150は、所望により又引取装置150の長さの調節が可能となるよう構成され得る。
【0126】
図25に示した可能な引取装置150の他の実施例は、分離された走路152,154,156及び158を有する少なくとも2つの異なる区域を含む。これらの区域は、図24に示したように対向する走路の2つの別の組152,154及び156、158を使用し形成されてよい。図24に示した1つの実施形態において、第1区域は、収束角度で配置されTD収縮制御を行う走路152及び154を含み、第2区域の走路156及び158は、平行であってよい。他の実施形態において、2つの異なる区域の対向する走路は、上記したように、2つの異なる収束角度に設定されTD収縮制御を行う、又は第1区域は平行の走路を有し、第2区域は、収束角度で配置されTD収縮制御を行ってよい。或いは又はそれに加えて、2つの異なる走路は、2つの異なる引取速度に設定され得、主延伸区域66を引取区域から切り離す、それにより張力を加え、しわを取り除く。
【0127】
図24に示した引取装置150の1つの実施形態において、走路156’及び158’は、フィルム32を受容する前に対向する走路152及び154内に入れ子にされる。フィルム32が、最初に対向する走路152及び154により受容される場合、走路156’及び158’は、図24に示した位置156及び158に移動する。他の実施形態において、図24に示したように対向する走路152,154,156及び158は、いずれのフィルム32も無い部分に位置決めされる(すなわち、入れ子にされない)。引取装置の別の実施例を図25で説明する。この実施例では、フィルム32が、主延伸区域66の走路54を通って搬送されるので、引取装置の走路152及び154は、フィルム32の中心線に対して角度付けられる。
【0128】
2つの対向する搬送機構152及び154の角度は、同じであってよい、例えば、角度β又はその角度は、異なっていてよく、一方の走路152については、β+εと記載でき、他方の走路154については、β−εと記載できる。典型的に、βは、少なくとも約1°であってよく、約5°、10°又は20°若しくはそれ以上に角度付けられてよい。角度εは、上述の狭くなり又は広がる角度に相当し、例えば、TD収縮制御を行う。実施形態によっては、主延伸区域66の走路54も角度φで配置されてよく、走路152及び154は、図25に示したように、φ+β+ε及びφ+β−εで角度付けられる。角度付けられた引取装置150、主延伸区域66又はその両方は、フィルム32を提供するのに有用であり、そこでは、主軸線、又は屈折率軸線若しくは引裂き軸線等のフィルム32の状態量の軸線は、フィルム32に対して角度付けられる。実施形態によっては、引取装置150が、主延伸区域66に対して作る角度は、手動で、又はコンピュータ制御駆動部、その他の制御機構若しくはその両方を使用し機械的に調整できる。
【0129】
実施形態によっては、角度付けされた引取装置150を使用することにより、図25に示したように、2つの対向する走路152及び154が位置決めされ、同じ又はほぼ類似したTDDRを有するフィルム32を受容する(点線160は、同じTDDRでのフィルム32を示す)。他の実施形態において、図26に示したように、2つの対向する走路152及び154が位置決めされ、TDDRが、2つの対向する走路152及び154に対して異なるようにフィルム32を受容する(図26の点線160は、同じTDDRでのフィルム32を示す)。この後者の構成が、フィルム32のTD寸法を変更する特性を有するフィルム32を提供できる。
【0130】
図10に戻って説明すると、連続把持機構からの端部の取り出しは、連続的に行われてよい、しかしながら、テンタークリップ等の別個の把持機構からの取り出しは、好ましくは、任意の所定のクリップ状態にある全ての材料が、直ちに取り外せるように行われるべきである。別個の取り出し機構は、上流の延伸ウェブにより知覚される場合があるひずみのより大きい予期せぬ結果をもたらすおそれがある。1つの実施形態において、独立引取装置の動作を手助けするため、装置内に、例えば、加熱され延伸されたフィルムの中央部分からの端部76の「ホット」スリッティング等の連続端部分離機構を使用することが好ましい。
【0131】
1つの実施形態において、スリッティング位置78は、好ましくは「把持ライン」に十分近く、例えば、引取装置の把持部材による第1有効接触の分離引取点に位置決めされるのが好ましく、その点の上流でのひずみの予期せぬ結果を最小にし又は減少させる。フィルムが引取装置により把持される前に裁断される場合、例えば、不安定な引取が、TDに沿ったフィルム「はめ戻し(snapback)」の原因になるおそれがある。従って、フィルムは、把持ラインで、又は把持ラインの下流で裁断されるのが好ましい。スリッティングは、破壊工程であり、そのような次第で、通常、空間位置に小さいが自然な変動を有する。従って、把持ラインのわずかに下流で裁断し、スリッティングで発生する全ての変動が把持ラインの上流で起こるのを防止するのが好ましい場合がある。フィルムが、実質的に把持ラインの下流で裁断される場合、引取と境界軌道間のフィルムは、TDに沿って延伸し続ける。現在フィルムのこの部分だけが延伸しているので、今度は、フィルムは、境界軌道を基準として拡大延伸比で延伸すると、更に、例えば、上流に伝搬する望ましくないレベルの機械方向張力を上流に伝搬するおそれがあるひずみの予期せぬ結果になる。
【0132】
可変最終横延伸方向比に適用させるのに必要な引取位置の変更又は引取装置の位置調整を変えることができるようにスリッティングは、好ましくは移動でき、再位置決めできる。この種のスリッティング装置の利点は、延伸比が調節でき、一方で引取スリッティング点78を移動することにより簡単に延伸プロファイルを維持できることである。
【0133】
様々なスリッティング技術が使用されてよく、それらには、熱かみそり、熱線、レーザー、強赤外線(IR)放射線の収束ビーム、又は加熱空気の収束噴射が含まれる。空気の加熱噴射の場合、空気は噴射時十分に高温であり、熱軟化、融解又は噴射状態での制御された破壊等によるフィルムの孔を吹きつける。或いは、加熱噴射は、フィルムの集束部分をただ十分に軟化させ、依然として広がっている境界軌道により課せられた延伸を更に局部化する、それによって継続するフィルム延伸の作用によりこの加熱ラインに沿って下流に結局破壊を引き起こす。散在した温度の流れが延伸工程の均一性に予期せぬ結果をもたらすのを防止する制御されたやり方において、特に排気空気が、例えば真空排気により積極的に除去されてよい場合、収束噴射アプローチが好ましい場合がある。例えば、噴射ノズルの周りに同心の排気環が使用されてよい。或いは、例えば、フィルムの他方側への噴射の支配を受けた排気が使用されてよい。排気が、更に相殺され又は下流で補足され、更に延伸領域への散在した流れを上流で減らしてよい。
【0134】
引取装置の1つの実施形態の他の属性は、フィルムが、出力速度と適合性のあるやり方で取り出しできるように速度及び/又はMD張力を制御する方法である。1つの実施形態において、この引取装置は、フィルムの全ての残留しわを抜き取るために使用される。1つの実施例において、しわは、延伸フィルムの最終取り出し部分の出力速度を超え引取速度を一時的に増加させることによりスタートアップ時に最初に抜き取られる。他の実施例において、しわは、延伸最終部分の超一軸延伸の場合等の連続操作中、出力フィルムMD速度を超える一定速度で抜き取られる。更に他の実施例において、引取速度は、把持ラインで境界軌道に沿ってフィルムのMD速度を超え設定される。このことは、又フィルムの性状を変えるため使用されてよい。又、この引取の過剰速度は、最終U値を減少できる、場合によっては、このことは、フィルムの最終用途という文脈で考慮すべき事柄である。
【0135】
又、上記のMD及びTD収縮制御の原理は、図2に示した従来のテンター構成を含む他の延伸装置に適用されてよい。図27は、主延伸区域66(図2に示した線状広がり走路等)からの走路54が、後調整区域70に又は後調整区域70を通って続く実施形態を示す(図10を参照)。次に、フィルムは、所望により必要に応じて、分離引取装置156及び158により捕捉される。フィルムを冷却し、フィルムの収縮を可能にするため、延長した走路54が、使用されてよい。
【0136】
実施形態によっては、延長した走路162が、少なくとも後調整区域70の部分通ってゆっくり狭くなる経路(1つの実施形態において約5°以下の角度θにする)を追従し、冷却と共にフィルムのTD収縮を可能にする。この構成の走路は、TD収縮の制御が収縮の均一性を増加するのを可能にする。実施形態によっては、走路164は、少なくとも後調整区域70の部分通ってより積極的に狭くなる経路(実施形態によっては、少なくとも15°の角度φ及び典型的に20°〜30°の角度にする)を追従し、冷却と共にフィルムのMD収縮を行う。図27に示したように実施形態によっては、後調整区域は70が、ゆっくり狭くなる走路162とより積極的に狭くなる走路164の両方を含む。他の実施形態においては、走路162又は走路164の1つの組だけが使用される。
【0137】
実質的な一軸延伸工程により作製されたフィルムの一軸特性の1つの有用な尺度は、例えば、米国特許第6,939,499号に記載された「一軸特性度」であり、参照により本明細書に組み込まれる。生成したフィルムのおおよその一軸特性は、この方法での測定値により識別されてよい。1つの尺度においては、一軸特性度は、延伸時装置の把持端部で画定した軌道により設定され、更に引取装置の状態により修正される公称延伸比から誘導される。一軸特性度の他の尺度において、フィルムの実際の延伸比は、例えば、初期投入キャストウェブ又はフィルムに既知寸法の格子模様を物理的にマークし、最終フィルム形成後再測定する、例えば、因子ρfにより直接測定されてよい。
【0138】
本開示のヒートセットは、許容できる屈折率の組に対してより広い範囲の制御を可能にする。特に、より高い値は、nxとnuの差により測定されるような光学能一定レベルで得られてよく(以下に記載する)、又は光学能の、より低いレベルで更に高いnu値が得られてよい。
【0139】
熱処理は、延伸で最初にもたらされた主屈折率の組に対する追加の制御の尺度を可能にし、例えば、収縮制御を含む改善された寸法安定性、強化された耐クリープ性、改善されたインプリント性、並びに強化された引裂き抵抗及びその他の物理特性等の追加利点を付与できる。
【0140】
特定の材料系を含むフィルムによっては、熱処理は、生成した最終フィルムの一軸特性度を維持又は更に改善する。光学フィルムの場合、このことで、非垂直入射光線を使用したアプリケーションの性能が維持又は更に改善できる。例えば、輝度増強に使用される多層光学フィルム(MOF)において、いわゆる偏角色性能が、維持又は改善できる。又、偏光ビームスプリッティングに使用されるMOFフィルムが、向上できる。又、その方法は、例えば偏光ビームスプリッティングアプリケーションにおいて、フィルムの表面に形成されたミクロ構造の配向及び性能を向上するために使用されてよい。
【0141】
高い一軸配向度(例えば、正確な一軸延伸工程により達成されるような)を有する多層反射偏光フィルムの場合、より高いレベルのコントラストが、所定の材料構成、すなわち、所定の低屈折率材料で達成されてよい。このことが、一般に、これらのフィルムを使用するアプリケーション、2以上の前記フィルムの積み重ね体にフィルムを単独に又は一緒に使用する、例えば米国特許第6,609,795号及び米国特許出願第2004/0227994号に記載されたような、例えば偏光ビームスプリッティングアプリケーションに適用されてよい。
【0142】
ヒートセット工程を使用することにより、高屈折率表面薄層を使用し、インプリント性が、達成されてよい。多くの系において、インプリント性は、配向表面薄層の結晶化度の増加により増強されてよい。配向表面薄層は、MOFの光学積み重ね体の複屈折層と類似した材料を含んでよく、又はフィルム形成工程で共押し出し及び配向するため好適に選定された別の材料を含んでもよい。
【0143】
又、ヒートセットは、多くの場合延伸後フィルムに残り、例えば、ヒートセット時又はヒートセット後の拘束条件に左右される「残留ひずみ」の存在を軽減できる。トーインにより達成された拘束の緩和は、例えば、ひずみ減少に寄与してよい。このことが、より低いレベルの収縮、より低いレベルの熱膨張、及び反りに対する改善された抵抗性を含む改善された寸法安定性につながる。
【0144】
ヒートセットの他の可能な機械的な改善は、引裂き抵抗の増加又は更に層間剥離抵抗の増加である。系によっては、融点近くの高温ヒートセットが、層間接着を改善する。例えば、ヒートセットは、延伸工程時引き起こされる場合がある層間界面浸透を改善できる。
【0145】
更に、本開示の方法が、ひずみ誘起結晶化ポリエステル表面薄層を含むフィルム構成に適用される場合、フィルムのインプリント性が改善される。低いレベルの熱処理は、有意に結果を変化させないが、より高いレベルの熱処理は、本質的にフィルムをくぼませない。
【0146】
1つの実施形態において、1以上のヒートセットフィルム層は、非晶質のままで、ウェブ処理性及び機械的特性を改善する。代表的な実施形態において、非晶質層は、ポリカーボネート、又はポリカーボネートとコポリエステルのブレンドを含む。
【0147】
特定のポリエステル系において、ヒートセットは、別の方法で延伸だけによって達成されるものよりもより低い延伸比でより高い光学能又は複屈折をもたらす。例えば、PET、PEN及びにPETとPENの両方を含む組成物は、典型的に、4,5及び6又はそれ以上の延伸比に延伸される。これらの材料は、ちょうどひずみ誘起結晶点を超えるまで延伸され、更にヒートセットされ、より高い延伸比のものに匹敵する屈折率を達成する。更なる例として、ミクロ構造化表面を有するフィルムは、横断方向、例えば伸長する方向と垂直に、意図した最終構造体の形状を過度に破壊しなくてよい実質的に低い延伸比で延伸されてよい。例えば、同時係属の共に譲渡された米国特許仮出願第60/638732号、米国特許出願第11/184027(2004年12月23日出願)、参照により本明細書に組み込まれるを参照のこと。高レベルの屈折率は、有意なひずみ誘起結晶化の開始点が、構造体を上回っている限り横断方向に沿ったミクロ構造化構造体により達成されてよい。構造体が、高さ変化、又は延伸方向に垂直の「プロファイル」方向を有する場合、このことは、高複屈折を備える「繊維対称」屈折率の組を有する構造体を作製するのに特に有用である。
【0148】
正確な又はほぼ一軸配向のフィルムの場合、nyとnzは、例えば数百の屈折率ユニット内でほとんど同じである。許容できる屈折率の組の紙面での興味深い及び有益な図が、図28に示したデータ処理で得られてよい。
【0149】
図28にプロットしたデータを得るため、先ず、工程条件にかかわらず、実際に得られたnyとnzの平均値を計算する。ここで「一軸屈折率」の場合nuとして定義された平均値は、「仮想の」正確な一軸条件の予測ny/nz値の測定値である。複屈折と等方性高分子材料の交互の層を含む多層光学フィルム(MOF)において、nuは、複屈折材料の目標通過状態の屈折率値であり、第2の、場合によっては、低屈折率材料層の等方性屈折率に合致する。
【0150】
2番目に、nxとnuの差を得る。この差が、ブロック状態の屈折率差で、仮想状態におけるMOF偏光子の反射能又は光学能の測定値である。
【0151】
3番目に、ブロック状態の屈折率差対仮想の正確な一軸通過状態屈折率nuをプロットする。
【0152】
図28は、種々の延伸条件、すなわち上記した正確な一軸と従来のテンター装置(図2〜3)で実施した単に1方向の両方の結果のプロットを示す。データは、ホモポリマーPENから種々の「coPEN類」を経てホモポリマーPETの範囲にわたるポリエステル類に関して、延伸温度、延伸速度及び延伸比により誘導される広範囲の有効分子配向をカバーする。coPEN類は、モル・パーセンPEN様部分とモル・パーセンPET様部分との比率換算で表わされる。例えば、85/15コポリマー、いわゆる「85/15coPEN」は、85モル・パーセンPEN様部分と15モル・パーセンPET様部分を有するコポリマーである。
【0153】
データの手引として、不適当な、均等に一定の間隔をおいた平行線を、組成物範囲全体にわたって10重量%間隔で配置する。そのように、上端線は、100%PENのトレンドをたどる。次の線は、90%PEN及び10%PETを表し、以下の線は、80%PEN及び20%PETなどを表す。下端線は、100%PETの場合のトレンドをたどる。
【0154】
データは、組成物範囲全体にわたって、顕著にこれらの線の近くの範囲に入る。実質的に一軸配向後のヒートセットの効果をPET、PEN及びPETとPENの両方を含む中間体組成物の例について示す。PETについて説明すると、例えば、ヒートセットは、有効に屈折率の組を線上に移動することがわかる。従って、100%PETは、ヒートセット後、光学的により10%PENと90%PETのcoPENのような特性を示す。PENについて説明すると、例えば、ヒートセットは、又有効に屈折率の組を線上に移動することがわかる。従って、一般にヒートセットは、所定の材料について、特に所定の適合屈折率(x軸)で、より高い光学能(y軸)をもたらす。
【0155】
更に、特定レベルの光学能(y軸)の場合、ヒートセットは、未処理材料と比較し、適合屈折率(x軸)を約0.01以上増加させる。PET等の特定の高屈折率、複屈折材料の場合、nuのよりよい制御が、例えば、MOF等の光学フィルムにおける材料、特に第2の、場合によっては低屈折率材料選択の更なる融通性を可能とする。典型的に、この第2材料は、偏光フィルムにおいて配向ポリエステルのny屈折率に適合するよう選択される。多くの場合、この第2材料は、その屈折率適合性のためばかりではなく、その流れ適合性と機械的な特性のために選定されたコポリエステルである。一般に、より高い屈折率目標は、前記材料のより高いガラス転移を可能にする。従って、更なる利点は、より高いガラス転移温度を有する低屈折率材料を使用したMOF構成体で得られる追加の寸法安定性である。更に、より高い屈折率材料の使用は、より薄い及び/又はより少ない層を備えるMOF構成体を可能にする。
【0156】
注目すべきことは、非対称の場合と異なり、実質的な一軸延伸フィルムの本開示のヒートセットが、フィルムの一軸特性度を保持又は実際に増加させているように見える。
【0157】
一軸特性のその他の測定値は、相対複屈折で、2つの類似屈折率、例えばnyとnzの差と、有意に異なる屈折率、例えば主延伸方向に沿ったnxと2つの類似屈折率の平均、例えばnuの差とを比較する。より厳密には、相対複屈折は、
相対複屈折=|ny-nz|/|nx-nu|
(式中、nuは2つの類似屈折率nyとnzの平均であり、差の絶対値が用いられる)で与えられる。相対複屈折は、フィルムの一軸特性が増すにつれて減少する。
【0158】
幾つかの代表的な実施形態において、本発明のヒートセットは、特に、ヒートセット前の相対複屈折が0.1以下の特定のポリエステル系において、相対複屈折を保持又は実際に減少させているように見える。他の代表的な実施形態において、相対複屈折の増加は少ない。多くの実施形態において、例え0.1以上の(絶対)面内複屈折(例えば、632.8ナノメートルで)が実現されるとしても、最終相対複屈折は、0.1以下であってよい。他の実施形態において、最終相対複屈折は、0.25、又は0.2若しくはそれ以下である。
【0159】
本実施例のヒートセット時の延伸方向(1つの実施例でTD)の張力特性は、屈折率の組の制御において重要な因子である。一般に、ヒートセット工程を通してより高いレベルのTD張力は、ny/nzよりnxを増加させる傾向にあり、一方より低い又はゼロレベルのTD張力は、ny/nzを増加させる傾向にあり、同時にnxはわずかに増加し又はそれどころか値が減少する。従って、低張力は、ny/nz値の増加に有用であり、一方高張力は、既定のnuレベルでの光学能の増加に有用である。従って、本明細書に記載された工程は、既定の材料構成でコントラストを改善する方法を提供する。
【実施例】
【0160】
実施例の全般的な註記
ほぼ正確な一軸フィルムを作製する2つの方法を使用し、2つのポリエステル系構成体を例示する。最初の実施例の組としては、図7を参照にして本明細書に記載したようなバッチテンター工程により作製されたPET外側表面薄層を備える多層光学フィルム(MOF)が挙げられる。第2の実施例の組は、米国特許第6,939,499号、同第6,916,440号、同第6,949,212号及び同第6,936,209号に記載されたもの等の放物線状テンター工程により作製されたPEN外側表面薄層を備えるMOFを含む。
【0161】
ヒートセットは、バッチ延伸装置で実施され、端部把持部によりxとy方向にフィルムを拘束した。又、ヒートセットの過程で、これら拘束方向のひずみを測定した。特に記載されない限り、175℃で3分間フィルムをヒートセットした。
【0162】
実施例において、x方向は、いわゆる横方向(TD)に関連付けられ、y方向は、機械方向に(MD)に関連付けられる。
【0163】
屈折率は、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)に所在するメトリコン(Metricon)からに入手できるメトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を使用して測定された。一般に、2つのモードが、装置により測定されてよい。TEモードは、面内屈折率を測定するために使用される。TMモードは、厚さ方向(例えば、「z」)屈折率を測定するために使用される。従って、面内状態の種々の配向についてはTMモードで測定してよい。例えば、フィルムが、TD方向の面内屈折率を測定するよう配向されている場合、TMモードを使用してよい(TD/zとして註記される)。他の実施例として、TMモードは、MD面内屈折率を測定するため回転されるフィルムが使用されてよい(MD/zとして註記される)。一般に、厚さ方向屈折率は、面内配向に関係なくおおむね同じにすべきである。しかしながら、フィルム配向の関数としての信号の鮮鋭さのため不一致がおこってもよい。
【0164】
PET実施例
PET表面薄層を備えるMOFフィルムを、図7に記載したバッチテンター工程を使用し高度に延伸した(実施例1〜7)。延伸後のPET表面薄層の屈折率発現をメトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を用い「上端」と「下端」側の平均値を使用し測定した。外側PET層が極端に薄いため、反射強度対入射角のプロットでシャープなひざよりむしろ波結合モードが観察された。精度を改善するため、屈折率は、最初の観察モードの前端の位置と同程度に一様に測定された。これは、特定環境下で調和した波モードとかなり一致するが、他の環境下でのnxの過小評価につながってもよい。nyとnzは、典型的にもっと小さいシャープな指数を有する。再度、強度低下の前端を使用した。
【0165】
この方法を使用すると初期屈折率は、632.8ナノメートルにおいて、nx、ny及びnzそれぞれについて平均で1.699、1.541及び1.539であった。従って、これらの屈折率値を使用した初期相対複屈折は、0.013であった。
【0166】
全体的な結果を下記表1に示す。
【表1】

【表2】

【0167】
最初の2つのPET実施例は、追加5%延伸比で終了する小さい連続した延伸を用いヒートセットの活用を行う。これらの実施例では、フィルムをx(TD)及びy(MD)方向にぴーんと張って実装した。端部把持装置の不連続な性質により、MD拘束は、一定初期ひずみ未満である。フィルムは、nx増加させ、nyとnzをほぼ一定にする。非常に小さい非対称の増加が註記される。MD拘束を除くことでこの非対称を減少できる。
【0168】
第3のPET実施例では、フィルムをxとyにぴーんと張って実装したが、ヒートセット時、延伸は、生じなかった。再度、x屈折率(TD屈折率)を増加させ、同時にnyは、ほぼ一定にした。驚いたことに、nzはヒートセットで増加したが、ヒートセット後ひざがシャープになったのでこの効果の一部は、測定に起因する可能性がある。従って、この場合、非対称は、増加又は少なくとも維持できる。
【0169】
第4のPET実施例では、フィルムをx方向にだけにぴーんと張って実装した。ここでは、nxの最も大きい増加が観察された。ny及びnzは、各々わずかに増加した。
【0170】
第5のPET実施例では、フィルムをわずかにゆるめて実装した。6.4cm(2.5インチ)のTD全長は、この緩和により約0.64cm(0.25インチ)平面外に偏向された。この場合、nx増加は、第4のPET実施例のそれのほんの僅か半分であったが、ny増加は、ほぼ倍であった。nzだけがわずかに増加した。ヒートセットの最後には、フィルムは、ぴーんと張られていた。
【0171】
第6及び第7PET実施例では、フィルムは、第5PET実施例の倍の初期緩和が付与された。これらの繰り返しのケースでは、ヒートセット後、フィルムは、わずかな残留緩和を保持した。nyとnzは、殆ど同じ量で増えているが、nxは、これらのケースの場合、本質的には一定であった。第6のケースでは、フィルムは、第1ヒートセット後測定され、再度第2工程に175℃で3分間再実装された。更に、nxとnyの増加が観察され、nxは又ほぼ一定であった。
【0172】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,788,463号に記載されたようにローレンツ−ローレンスの関係の異方性類似体に従って屈折率の増加により推測した密度の推計増加を使用し、ヒートセットの結晶化度レベルに及ぼす影響を評価した(表2及び4のローレンツを参照のこと)。非晶質密度は、1.335g/cc、完全な結晶密度は、1.457g/ccとして得られた。体積分極率は、0.73757cc/gとして得られた。表2に示したように、解析は、結晶化度(例えば、0.32分率の結晶分率は、32%結晶化度に等しい)がこれら試料のちょうど30%を超えて2度処理された第6PET実施例の場合の40%に増加したことを示す。代表的な実施形態において、PETは、33%を超えるヒートセット後結晶化度を有する(例えば、実施例2)、他の代表的な実施形態において、PETは、36%を超える結晶化度を有する(例えば、第1ヒートセット後の実施例3及び6)、他の代表的な実施形態において、PETは、37%を超える結晶化度を有する(例えば、第1ヒートセット後の実施例1及び7)、他の代表的な実施形態において、PETは、38%を超える結晶化度を有する(例えば、実施例5)、他の代表的な実施形態において、PETは、39%を超える結晶化度を有する(例えば、実施例4)、及び他の代表的な実施形態において、PETは、40%を超える結晶化度を有する。(例えば、第2ヒートセット後の実施例6)。
【0173】
時間と温度がより過度となると、結晶化度と屈折率変化のレベルは、更に増すことが予想される。
【表3】

【0174】
PEN実施例
PEN表面薄層を備える多層光学フィルム(MOF)を放物線状テンター工程を使用し高度に延伸した。フィルムは、連続最終フィルムの単一MDレーンから使用し、初期状態の再現性を向上させた。延伸行程後PEN表面薄層の屈折率発現を、メトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を使用し「上端」と「下端」側の平均を用いて計量した。PET実施例に関して、波モードと強度ひざの前端を使用した屈折率測定法を再度使用した。
【0175】
2つのPEN表面薄層繰り返し実施例が行われた(実施例8〜9)。フィルムをわずかにゆるめ、実装した。6.4cm(2.5インチ)のTD全長は、この緩和により約1.3cm(0.5インチ)平面外に偏向された。175℃で3分間ヒートセットした。フィルムは、処理後残留緩和を保持した。ヒートセットによる屈折率変化を表3に示す。
【0176】
以下の表3に示すように、前端法(「ひざによる」)を非常に注意深くメトリコン(Metricon)に付属するソフトウェアに備えられた「オフセット」モード法と比較した。(前端法では、メトリコン(Metricon)に付属するひざ推測ソフトウェアを使用するのではなくオペレータにより推測した)。これらの方法を用いた場合、初期屈折率は、632.8ナノメートルでnx、ny及びnz各々について平均で1.868、1.569及び1.553であった。従って、これらの屈折率値を使用した初期相対複屈折は0.053である。
【表4】

【0177】
PETの低/無張力ケースで見られるように、nyとnzが増加した。しかしながら、これらの条件下では、nxは、実際に有意に低下した。従って、その後のフィルム収縮はより少ないと予測する。これらのケース間の1つの相違点は、現状PENケースは、PETケースが有する延伸後の大きいトーイン状態を有しないことである。従って、この屈折率低下のいくぶんは、ヒートセット時の残留ひずみの除去及び粘弾性緩和と関連がある。ヒートセット後のPEN表面薄層フィルムは、未処理初期フィルムより有意により少ない高温収縮(例えば、ヒートセット温度までのPENのガラス転移を超える温度)を有すると思われる。第2の繰り返しでは、フィルムは、最初のヒートセット後測定され、今回は190℃、3分の第2工程向けに再度実装された。nyとnzの有意な増加が観察され、nxだけがわずかに低下し、第6及び第7PET表面薄層ケースの傾向と一致した。
【0178】
未処理PEN表面薄層フィルム、第1ヒートセット後のフィル及びより厳しい第2ヒートセット後のフィルム全てについて、機械的な耐へこみ性/インプリント性を試験した。インプリント性を試験するため、感圧性接着剤が、フィルムの1つの表面に重ねられ、次にその表面が、ガラススライドに重ねられた。ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社から入手できる一枚のBEF(商標)輝度増強フィルムには、そのミクロ非平坦化表面が150g重量の暴露フィルム表面に接触して上部に定置され、緊密に接触させた。もたらされた圧力は、3.04kPa(200g/平方インチ)と推測された。次にフィルムを85℃で24時間試験した。初期フィルム及び軽い第1ヒートセットを行ったフィルムは、適度にインプリント性であったが、有意なくぼみが起こった。第2のより厳しいヒートセットを行ったフィルムは、ほとんどくぼみが無かった。
【0179】
再度、米国特許第6,788,463号に記載されたようにローレンツ−ローレンスの関係の異方性類似体に従って屈折率の増加により推測した密度の推計増加を使用し、ヒートセットの結晶化度レベルに及ぼす影響を評価した。PENの非晶質密度は、1.329g/cc、完全な結晶密度は、1.407g/ccとして得られた。体積分極率は、0.81501cc/gとして得られた。表4に示すように、解析は、結晶化度が、第1ヒートセット工程で非常にわずかに増加し、更に、屈折率変化の機構について、粘弾性緩和の1つとしての証拠を提供したことを示す。
【0180】
又、このことは、結晶化度のレベルがインプリント性の主な要因であることを示す。より極端なヒートセット後、フィルムは、約48%と推測される非常に高いレベルの結晶化度を得た。このより結晶化した最終フィルムは、この明細書に示した実施例の中で最も高いレベルのインプリント性を示した。
【0181】
代表的な実施形態において、PENは、ヒートセット後28%を超える結晶化度を有する(例えば、実施例8)、他の代表的な実施形態において、PENは、30%を超える結晶化度を有する(例えば、第1ヒートセット後の実施例9)、他の代表的な実施形態において、PENは、48%を超える結晶化度を有する(例えば、第2ヒートセット後の実施例9)。
【0182】
実施例で示したように、第2又はその後のヒートセット工程は、所望のフィルム性状を得るため使用されてよい。
【表5】

【0183】
coPEN実施例
コポリエステル実施例10
PENとPETの組成物中間体であるコポリエステルが、85モル%のPEN(約0.5の固有粘度(IV)を有する)と15モル%のPET(約0.8の固有粘度(IV)を有する)のペレット混合物を押出成形機に投入することにより形成された。これらは、押出成形時、その場でエステル交換し、キャストされ、いわゆる85/15coPENを含む透明で未配向のキャストウェブを形成した。この材料を含むフィルムは、多層光学フィルム、例えば反射偏光子フィルムの複屈折層として使用されてよい。
【0184】
長さ6cm、幅2.5cmのストリップを、キャストウェブから切り取り、実験室延伸装置で延伸した。ストリップは、130℃で1分間予備加熱され、その長さに沿い、その幅で拘束することなく、20%/秒の公称延伸比で、延伸前のフィルムに定置された基準点により測定した5.5の最終延伸比まで延伸された。
【0185】
延伸後、フィルムは、室温まで冷却され、屈折率が、メトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を使用し、632.8ナノメートルで長さ、幅及び厚さ方向に沿って各々1.8436、1.5668及び1.5595として測定された。従って、延伸後0.061の相対複屈折が得られた。
【0186】
次に、配向フィルムを、わずかな初期張力で長さに沿って実装し、幅で拘束せず、170℃で2分間加熱した。フィルムを再度冷却し、屈折率が、メトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を使用し、632.8ナノメートルで長さ、幅及び厚さ方向に沿って各々1.8404、1.5718及び1.5492として測定された。従って、延伸後0.081の相対複屈折が得られた。
【0187】
コポリエステル実施例11
85/15coPENを形成し、実施例10と同じやり方で延伸した。この材料を含むフィルムは、多層光学フィルム、例えば反射偏光子フィルムの複屈折層として使用することが可能である。
【0188】
次に、配向フィルムを、わずかな初期張力で長さに沿って実装し、幅で拘束せず、190℃で30秒間加熱した。フィルムを、更に190℃で90秒以上加熱し、同時に延伸比を延伸後の初期5.5xからヒートセット後の4.7xまで減少した。フィルムを再度冷却し、屈折率が、メトリコンプリズムカップラー(Metricon Prism Coupler)を使用し、632.8ナノメートルで長さ、幅及び厚さ方向に沿って各々1.8185、1.5827及び1.5576として測定された。従って、延伸後0.101の相対複屈折が得られた。
【0189】
ポリカーボネート/コポリエステルブレンドの等方性の層を有するヒートセット一軸配向多層光学フィルム
比較例1
多層光学フィルム-PEN/CoPEN5545HD/CoPEN7525HD反射偏光子
多層反射偏光子フィルムを、ポリエチレンナフタレートから作製された第1光学層、コポリエチレンナフタレート(CoPEN5545HD)から作製された第2光学層、及びより高Tgのコポリエチレンナフタレート(CoPEN7525HD)から作製された表面薄層又は非光学層で構成した。
【0190】
上記PEN及びCoPEN5545HDを多層融解マニホールドにより共押出し、275の第1及び第2光学層を交互に有する多層光学フィルムを作製した。この275層多層積み重ね体を、3つの部分に分割し、積み重ねて825層を形成した。PEN層が、第1光学層であり、CoPEN5545HD層が、第2光学層であった。又、第1及び第2光学層に加えて、CoPEN5545HDを含む非光学層の組を、PBL(保護境界層)として光学層積み重ね体のどちらか一方の側に共押出した。又、CoPEN7525HDを含む2組の表面薄層を、追加の融解口を通してPBL非光学層の外側に共押出した。多層フィルム構成体は、CoPEN7525HD表面薄層、CoPEN5545HDPBL、光学層PEN/CoPEN5545HDの825の交互の層、及び第2表面薄層CoPEN7525HDの層の順であった。
【0191】
多層押し出しフィルムを、15メートル/分(45フィート/分)で冷却ロールにキャストし、オーブン内で150℃(302°F)で30秒間乾燥し、次に5.5:1の延伸比で一軸配向した。配向後、延伸多層フィルムを、200℃で15秒間ヒートセットオーブンに通過させた。厚さ約150μ(6ミル)の反射偏光子フィルムを製造した、フィルムは、ウェブ処理に対して余りにも機械的に脆く、ロールに巻きつき、又は破断することなくフィルム部品に打抜けた。
【0192】
比較例2
多層光学フィルム-CoPEN9010/CoPEN−tbia/CoPEN−tbia反射偏光子
多層反射偏光子フィルムを、コポリエチレンナフタレート(CoPEN9010)から作製された第1光学層、コポリエチレンナフタレート(CoPEN−tbia)から作製された第2光学層、及びコポリエチレンナフタレート(CoPEN−tbia)から作製された表面薄層又は非光学層で構成した。
【0193】
上記CoPEN9010及びCoPEN−tbiaを多層融解マニホールドにより共押出し、275の第1及び第2光学層を交互に有する多層光学フィルムを作製した。CoPEN9010層が、第1光学層であり、CoPEN−tbia層が、第2光学層であった。又、第1及び第2光学層に加えて、CoPEN−tbiaを含む非光学層の組を、PBL(保護境界層)として光学層積み重ね体のどちらか一方の側に共押出した。又、CoPEN−tbiaを含む2組の表面薄層を、追加の融解口を通してPBL非光学層の外側に共押出した。多層フィルム構成体は、CoPEN−tbia表面薄層、PBL層、光学層CoPEN9010/CoPEN−tbiaの275の交互の層、及びCoPEN−tbiaの表面薄層とPBL層の第2の組の順であった。
【0194】
多層押し出しフィルムを、15メートル/分(45フィート/分)で冷却ロールにキャストし、オーブン内で150℃(302°F)で30秒間乾燥し、次に6.5:1の延伸比で一軸配向した。配向後、延伸多層フィルムを、200℃で15秒間ヒートセットオーブンに通過させた。厚さ約37μ(1.5ミル)の反射偏光子フィルムを製造した、フィルムは、ウェブ処理に対して余りにも機械的に脆く、ロールに巻きつき、又は破断することなくフィルム部品に打抜けた。
【0195】
実施例3
多層光学フィルム-PEN/CoPEN5050HH/SA115反射偏光子フィルム
多層反射偏光子フィルムを、ポリエチレンナフタレートから作製された第1光学層、コポリエチレンナフタレート(CoPEN5050HH)から作製された第2光学層、及びイーストマンケミカル社(Eastman Chemical CO.)から商標名「SA115」のもとで市販のシクロ脂肪族ポリエステル/ポリカーボネートブレンドから作製された表面薄層又は非光学層で構成した。
【0196】
上記PEN及びCoPEN5050HHを多層融解マニホールドにより共押出し、275の第1及び第2光学層を交互に有する多層光学フィルムを作製した。この275層多層積み重ね体を、3つの部分に分割し、積み重ねて825層を形成した。PEN層が、第1光学層であり、CoPEN5050HH層が、第2光学層であった。第1及び第2光学層に加えて、又CoPEN5050HHを含む非光学層の組を、PBL(保護境界層)として光学層積み重ね体のどちらか一方の側に共押出した。又、SA115表面薄層の2組を、追加の融解口を通してPBL非光学層の外側に共押出した。構成体は、SA115表面薄層、CoPEN5050HHPBL、PEN及びCoPEN5050HHの光学層の825の交互の層、第2CoPEN5050HHPBL層、及び第2SA115表面薄層の順であった。
【0197】
多層押し出しフィルムを、15メートル/分(45フィート/分)で冷却ロールにキャストし、オーブン内で150℃(302°F)で30秒間乾燥し、次に5.5:1の延伸比で一軸配向した。配向後、延伸多層フィルムを、200℃で15秒間ヒートセットオーブンに通過させた。厚さ約150μ(6ミル)の反射偏光子フィルムを製造した。このフィルムは、機械的に脆くなく、容易にフィルムロールに巻きつき、及び破断することなくフィルム部品に打抜けた。
【0198】
実施例4
多層光学フィルム-CoPEN9010/SA115/SA115反射偏光子フィルム
多層反射偏光子フィルムを、ポリエチレンナフタレート(CoPEN9010)から作製された第1光学層、及びイーストマンケミカル社(Eastman Chemical CO.)からシリーズ商標名「SA115」のもとで市販のシクロ脂肪族ポリエステル/ポリカーボネートブレンドから作製された第2光学層及び表面薄層で構成した。
【0199】
このCoPEN9010をSA115と共に多層融解マニホールドにより共押出し、275の第1及び第2光学層を交互に有する多層光学フィルムを作製した。CoPEN9010層が、第1光学層であり、SA115層が、第2光学層であった。又、第1及び第2光学層に加えて、SA115を含む非光学層の組を、PBL(保護境界層)として光学層積み重ね体のどちらか一方の側に共押出した。又、SA115を含む2つの表面薄層を、追加の融解口を通してPBL非光学層の外側に共押出した。構成体は、SA115外側表面薄層及びPBL層、CoPEN9010とSA115の275の交互の層、及びSA115PBLと外側表面薄層の組の順であった。
【0200】
多層押し出しフィルムを、22メートル/分(66フィート/分)で冷却ロールにキャストし、オーブン内で139℃(283°F)で30秒間乾燥し、次に6:1の延伸比でほぼ正確に一軸配向した。配向後、延伸多層フィルムを、200℃で15秒間ヒートセットオーブンに通過させた。厚さ約30μ(1.2ミル)の反射偏光子フィルムを製造した、フィルムは、機械的に脆くなく、容易にフィルムロールに巻きつき、及び破断することなくフィルム部品に打抜けた。
【0201】
上記実施例のために作製したポリマーの説明
PENの製造
第1光学層を形成するため使用したポリエチレンナフタレート(PEN)は、以下の原料、ジメチルナフタレンジカルボキシレート(136kg)、エチレングリコール(73kg)、酢酸マンガン(II)(27g)、酢酸コバルト(II)(27g)、及び酢酸アンチモン(III)(48g)をバッチ反応器に投入し,合成した。0.2MPa(2気圧(1,520トル又は2x105N/m2))の圧力下、この混合物を254℃に加熱し、同時にメタノール(エステル交換反応副生成物)を除去した。35kgのメタノールを除去後、トリエチルホスホノアセテート(49g)を反応器に投入し、圧力を0.13kPa(1トル(131N/m2))まで徐々に下げ、同時に290℃に加熱した。固有粘度0.48dL/g(フェノール/o−ジクロロベンゼン(60/40重量%)中で測定)を有するポリマーが製造されるまで縮合反応副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。
【0202】
CoPEN9010の製造
第1光学層を形成するため使用したコポリエチレンナフタレート(CoPEN9010)は、以下の原料、ジメチルナフタレンジカルボキシレート126kg、ジメチルテレフタレート11kg、エチレングリコール75kg、酢酸マンガン27g、酢酸コバルト27g、及び三酢酸アンチモン48gをバッチ反応器に投入し,合成した。0.2MPa(2気圧(2x105N/m2))の圧力下、この混合物を254℃に加熱し、同時にメタノールを除去した。36kgのメタノールを除去後、トリエチルホスホノアセテート49gを反応器に投入し、次に、圧力を0.13kPa(1トル)まで徐々に下げ、同時に290℃に加熱した。フェノール/o−ジクロロベンゼン(60/40重量%)中で測定した固有粘度0.50dL/gを有するポリマーが製造されるまで縮合反応副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。
【0203】
CoPEN5545HDの製造
第2光学層を形成するため使用したコポリエチレン−ヘキサメチレンナフタレートポリマー(CoPEN5545HD)は、以下の原料、ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(88.5kg)、ジメチルテレフタレート(57.5kg)、1,6−ヘキサンジオール(4.7kg)、エチレングリコール(81kg)、トリメチロールプロパン(239g)、酢酸コバルト(II)(15g)、酢酸亜鉛(22g)、及び酢酸アンチモン(III)(51g)をバッチ反応器に投入し,合成した。混合物を、0.2MPa(2気圧(2x105N/m2))の圧力で温度254℃まで加熱し、反応させ、同時にメタノール反応生成物を除去した。反応を完結し、メタノール(約39.6kg)を除去後、トリエチルホスホノアセテート(37g)を反応器に投入し、圧力を0.13kPa(1トル(263N/m2))まで下げ、同時に290℃に加熱した。フェノールとo−ジクロロベンゼンの60/40重量%混合物中で測定した固有粘度0.56dL/gを有するポリマーが製造されるまで縮合副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。この方法で製造したCoPEN5545HDポリマーは、示差走査熱量計により温度上昇速度20℃/分で測定したとき94℃のガラス転移温度(Tg)を有した。CoPEN5545HDポリマーは、632ナノメートルで1.612の屈折率を有した。
【0204】
CoPEN7525HDの製造
第2光学層を形成するため使用したコポリエチレン−ヘキサメチレンナフタレートポリマー(CoPEN7525HD)は、以下の原料、ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(114.8kg)、ジメチルテレフタレート(30.4kg)、1,6−ヘキサンジオール(5.9kg)、エチレングリコール(75kg)、トリメチロールプロパン(200g)、酢酸コバルト(II)(15g)、酢酸亜鉛(22g)、及び酢酸アンチモン(III)(51g)をバッチ反応器に投入し,合成した。混合物を、0.2MPa(2気圧(2x105N/m2))の圧力で温度254℃まで加熱し、反応させ、同時にメタノール反応生成物を除去した。反応を完結し、メタノール(約39.6kg)を除去後、トリエチルホスホノアセテート(37g)を反応器に投入し、圧力を0.13kPa(1トル(263N/m2))まで下げ、同時に290℃に加熱した。フェノールとo−ジクロロベンゼンの60/40重量%混合物中で測定した固有粘度0.52dl/gを有するポリマーが製造されるまで縮合副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。この方法で製造したCoPEN7525HDポリマーは、示差走査熱量計により温度上昇速度20℃/分で測定したとき102℃のガラス転移温度(Tg)を有した。CoPEN7525HDポリマーは、632ナノメートルで1.624の屈折率を有した。
【0205】
CoPEN5050HHの製造
第2光学層を形成するため使用したコポリエチレン−ヘキサメチレンナフタレートポリマー(CoPEN5050HH)は、以下の原料、ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(80.9kg)、ジメチルテレフタレート(64.1kg)、1,6−ヘキサンジオール(15.45kg)、エチレングリコール(75.4kg)、トリメチロールプロパン(2kg)、酢酸コバルト(II)(25g)、酢酸亜鉛(40g)、及び酢酸アンチモン(III)(60g)をバッチ反応器に投入し,合成した。混合物を、0.2MPa(2気圧(2x105N/m2))の圧力で温度254℃まで加熱し、反応させ、同時にメタノール反応生成物を除去した。反応を完結し、メタノール(約42.4kg)を除去後、トリエチルホスホノアセテート(55g)を反応器に投入し、圧力を0.13kPa(1トル(263N/m2))まで下げ、同時に290℃に加熱した。フェノールとo−ジクロロベンゼンの60/40重量%混合物中で測定した固有粘度0.55dl/gを有するポリマーが製造されるまで縮合副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。この方法で製造したCoPEN5050HHポリマーは、示差走査熱量計により温度上昇速度20℃/分で測定したとき85℃のガラス転移温度(Tg)を有した。CoPEN5050HHポリマーは、632ナノメートルで1.601の屈折率を有した。
【0206】
CoPEN−tbiaの製造
CoPEN−tbiaポリマーの合成を以下の材料、ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(47.3kg)、ジメチルテレフタレート(18.6kg)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(40.5kg)、ネオペンチルグリコール(15kg)、エチレングリコール(41.8kg)、トリメチロールプロパン(2kg)、酢酸コバルト(II)(36.3g)、酢酸亜鉛(50g)、及び酢酸アンチモン(III)(65g)を投入したバッチ反応器で行った。混合物を、0.2MPa(2気圧(2x105N/m2))の圧力で温度254℃まで加熱し、反応させ、同時にメタノール反応生成物を除去した。
【0207】
反応を完結し、メタノール(約13.1kg)を除去後、第三級ブチルイソフタレート(43.2kg)を反応器に投入した。約7.4kgの水が除去され、反応が完結するまで、反応を254℃で継続した。トリエチルホスホノアセテート(70g)を反応器に投入し、圧力を0.13kPa(1トル(263N/m2))まで下げ、同時に290℃に加熱した。フェノールとo−ジクロロベンゼンの60/40重量%混合物中で測定した固有粘度0.632dl/gを有するポリマーが製造されるまで縮合副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。この方法で製造したCoPEN−tbiaポリマーは、示差走査熱量計により温度上昇速度20℃/分で測定したとき102℃のガラス転移温度(Tg)を有した。CoPEN−tbiaポリマーは、1.567の屈折率を有した。
【0208】
本明細書で言及し又は引用した全ての特許、特許出願、仮出願及び文献は、全ての図及び表を含め、それらが、この明細書の明白な教示と矛盾しない限りそのまま参照により組み込まれる。
【0209】
本明細書に記載した実施例及び実施形態は、説明に役立つ目的だけのためであり、それらを考慮した様々な修正又は変更は、当業者に示唆されたもので、この出願の精神及び範囲内に含まれると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムを作製する方法であって、
複屈折を発現できる高分子材料を含んでなるフィルム(32)を供給し、
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向し、及び
前記配向フィルム(32)をヒートセットする、
ことを含む光学フィルム作製方法。
【請求項2】
前記配向フィルム(32)が、約0.2に等しいか又は約0.2を超える範囲の一軸特性度Uを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配向フィルム(32)が、約0.7に等しいか又は約0.7を超える範囲の一軸特性度Uを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を、該少なくとも1つの高分子材料のガラス転移温度を超え及びその高分子材料の融点未満の温度に加熱することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を約1秒〜約10分の間加熱することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を、該各高分子材料のガラス転移温度を超え及び該各高分子材料の融点未満の温度に加熱することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程を第1温度で実施し、及び
前記ヒートセット工程において、前記フィルム(32)を前記第1温度よりも高い第2温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複屈折を発現できる前記高分子材料が、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリスチレンから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複屈折を発現できる前記高分子材料が、ポリエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複屈折を発現できる前記高分子材料が、半結晶質高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルム(32)が、更にポリエステル/ポリカーボネートブレンドをむ、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記配向光学フィルム(32)が、反射偏光子である、請求項1に記載の工程により作製される光学フィルム(32)。
【請求項13】
前記配向光学フィルム(32)が、多層反射偏光子又は拡散反射偏光子である、請求項12に記載の工程により作製される光学フィルム(32)。
【請求項14】
前記配向光学フィルム(32)が、補償素子である、請求項1に記載の工程により作製される光学フィルム(32)。
【請求項15】
フィルム(32)を供給する前記行程が、フィルムひと巻きを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
フィルム(32)を供給する前記行程が、押出成形機から前記フィルム(32)を供給することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
フィルム(32)を供給する前記行程が、延伸方向の初期屈折率、前記延伸方向と直交する面内方向の初期屈折率及び厚さ方向の初期屈折率を有するフィルム(32)を供給し、並びに
前記ヒートセット工程が、前記延伸方向と直交する前記面内方向の前記初期屈折率より大きい前記延伸方向と直交する前記面内方向の最終屈折率をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒートセット工程が、前記厚さ方向の前記初期屈折率より大きい前記厚さ方向の最終屈折率をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
フィルム(32)を供給する前記行程が、延伸方向の初期屈折率、前記延伸方向と直交する面内方向の初期屈折率及び厚さ方向の初期屈折率を有するフィルム(32)を供給し、並びに
前記ヒートセット工程が、前記厚さ方向の前記初期屈折率より大きい前記厚さ方向の最終屈折率をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
フィルム(32)を供給する前記行程が、延伸方向と直交する面内方向の初期屈折率と厚さ方向の初期屈折率との初期差を有するフィルム(32)を供給し、及び
前記ヒートセット工程が、前記延伸方向と直交する前記面内方向の最終屈折率と前記厚さ方向の最終屈折率の最終差をもたらし、前記最終差が、前記初期差未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
フィルム(32)を供給する前記行程が、延伸方向の初期屈折率、前記延伸方向と直交する面内方向の初期屈折率及び厚さ方向の初期屈折率を有するフィルム(32)を供給し、及び
前記ヒートセット工程が、前記延伸方向の前記初期屈折率より大きい前記延伸方向の最終屈折率をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
フィルム(32)を供給する前記行程が、延伸方向の初期屈折率と延伸方向と直交する面内方向の初期屈折率との初期差を有するフィルム(32)を供給し、また
前記ヒートセット工程が、前記延伸方向の最終屈折率と前記延伸方向と直交する前記面内方向の最終屈折率との初期差をもたらし、前記最終差が前記初期差未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程が、前記フィルム(32)の非連続部分をテンター装置で延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程が、前記フィルム(32)を横方向に延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
更に、前記配向フィルム(32)を冷却することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記フィルム(32)が、複数個の層を含み、及び
前記フィルム(32)が、複数個の層を含み、及び
前記ヒートセット工程が、隣接した層間の接着を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記フィルム(32)が、有意なひずみ誘起結晶化が発生する延伸比であるひずみ誘起結晶点を有し、及び
前記フィルム(32)を実質的に配向にする前記行程が、前記ひずみ誘起結晶点より大きい延伸比で前記フィルム(32)を延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程が、前記フィルム(32)を第1延伸比で延伸方向に延伸することを含み、また
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を前記前記第1延伸比より大きい第2延伸比で前記延伸方向に延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程が、前記フィルム(32)を第1延伸比で延伸方向に延伸することを含み、また
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を前記前記第1延伸比より小さい第2延伸比で前記延伸方向に延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記フィルム(32)を実質的に一軸配向する前記行程が、前記フィルム(32)を第1延伸比で延伸方向に延伸することを含み、また
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を前記前記第1延伸比にほぼ等しい第2延伸比で前記延伸方向に延伸することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記フィルム(32)が、初期密度を備え、また
前記ヒートセット工程が、前記初期密度より大きい最終密度を有する前記フィルム(32)を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
フィルム(32)を供給する前記行程が、層の少なくとも1つが非晶質材料を含む複数個の層を有するフィルム(32)を供給することを含み、また
前記ヒートセット工程が、前記非晶質材料を含む前記層の非晶質特性を保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記非晶質材料が、ポリカーボネート又はポリカーボネートとコポリエステルのブレンドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
更に、第2ヒートセット工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
フィルム(32)を加工する方法であって、
フィルム(32)を機械方向に沿って搬送すると同時に前記フィルム(32)の対向する端部部分を保持する工程、
前記対向する端部部分を広がった曲線状経路に沿って移動することにより前記フィルム(32)を延伸して延伸フィルム(32)を形成する工程、及び
前記延伸フィルム(32)をヒートセット工程を含む方法。
【請求項36】
前記広がった経路が、実質的に放物線状である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を、そのフィルムの少なくとも1つの高分子構成成分のTgを超える温度に加熱することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を、そのフィルムのすべての高分子構成成分のTgを超える温度に加熱する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒートセット工程が、前記フィルム(32)を、前記フィルム(32)のTgと融点の間の温度に加熱することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記フィルム(32)の延伸工程は、前記フィルム(32)を、4を超過する延伸比まで延伸することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
請求項35に記載の工程により作製されるフィルム(32)。
【請求項42】
33%を超える結晶化度を有するポリエチレンテレフタレートを含む光学フィルム(32)。
【請求項43】
36%を超える結晶化度を有するポリエチレンテレフタレートを含む、請求項42に記載の前記光学フィルム(32)。
【請求項44】
39%を超える結晶化度を有するポリエチレンテレフタレートを含む、請求項42に記載の前記光学フィルム(32)。
【請求項45】
28%を超える結晶化度を有するポリエチレンナフタレート(napthalate)を含む光学フィルム(32)。
【請求項46】
30%を超える結晶化度を有するポリエチレンナフタレート(napthalate)を含む、請求項45に記載の前記光学フィルム(32)。
【請求項47】
48%を超える結晶化度を有するポリエチレンナフタレート(napthalate)を含む、請求項45に記載の前記光学フィルム(32)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−123397(P2012−123397A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−9283(P2012−9283)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2008−505460(P2008−505460)の分割
【原出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】