説明

ヒートトンネル用加熱装置

【課題】シーズヒータが確実に保持され、放熱効果と整流効果が高く、省エネルギー化を図ることができるヒートトンネル用加熱装置を提供する。
【解決手段】ヒートトンネル14内に風を送るブロア40の近傍に設けられたシーズヒータ52と、シーズヒータ52同士を所定の間隔に連結する保持部材58を備える。保持部材58は、変形可能な金属で作られた板体である。長手方向に沿う一側縁部には、シーズヒータ52が交差して挿通される複数個の半円形の凹部60を有し、長手方向に沿う反対側の側縁部には、櫛刃状に形成された複数個の溝部62を備える。長手方向の両端部には、側方に突出する連結突起64を備える。保持部材62の長手方向がシーズヒータ52の長手方向に交差する方向に当てて複数個の凹部60にシーズヒータ52をそれぞれ差し込み、他方の保持部材62を、反対方向から複数個の凹部60にシーズヒータ52をそれぞれ差し込み、連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱されたトンネル内を被加熱物が通過するヒートトンネル用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加熱物に熱を加えるヒートトンネルとしては、特許文献1に開示されている熱収縮包装装置がある。この熱収縮包装装置は、被加熱物を搬送するコンベアと、このコンベアを覆うヒートトンネルと、ヒートトンネルの内側面に設けられた熱風吹出口と、この熱風吹出口から上記ヒートトンネル内に熱風を送る送風装置と、この送風装置の近傍に設けられたヒータが設けられている。このようなヒータにはシーズヒータが使用され、このシーズヒータは、その他いろいろな加熱装置に使用されている。
【0003】
例えば特許文献2に開示されているドラム加熱ヒータは、ドラムの内面に複数のシーズヒータが装着されている。このシーズヒータには、複数のシーズヒータを互いに所定の間隔に保持するため、ヒータ整列金具が使用されている。ヒータ整列金具は、金属製で一方向に長い板体であり、長手方向に沿う側縁部には、シーズヒータを交差する方向から挿入する溝を有している。溝はシーズヒータの本数に合わせて複数個が所定間隔で形成されている。
【0004】
特許文献3に開示されているシーズヒータは、複数のシーズヒータが送風機に取り付けられているものである。その構造は、シーズヒータに板状の放熱板を取り付け、U字形に屈曲させ、円筒内に放射状に取り付け、シーズヒータが取り付けられた円筒を、送風機に取り付ける。放熱板は、風の流れを一定にするための静翼効果も有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−273116号公報
【特許文献2】特開平11−144845号公報
【特許文献3】特開2003−229237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の場合、シーズヒータを保持する部材には、放熱効果の向上を兼ねた形状のものは無かった。特に、ヒートトンネル用加熱装置について、シーズヒータを確実に保持しなおかつ放熱効果を有する保持部材が求められている。また、ヒートトンネル用加熱装置に設けられている送風装置の風の流れを整えて効率よく空気を流す効果も求められている。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、シーズヒータが確実に保持され、放熱効果と整流効果が高く、省エネルギー化を図ることができるヒートトンネル用加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被加熱物が通過するヒートトンネルの内側面に設けられた熱風吹出口と、前記熱風吹出口から前記ヒートトンネル内に熱風を送る送風装置と、前記送風装置の近傍に設けられたシーズヒータと、前記シーズヒータ同士を所定の間隔に連結する保持部材が設けられ、前記保持部材は変形可能な金属で作られた板体であり、その一方向に沿う一側縁部には、前記シーズヒータが交差して挿通される複数個の半円形の凹部が設けられ、前記一方向に沿う反対側の側縁部には、櫛刃状に形成された複数個の溝部が設けられ、前記一方向の両端部には前記端部から側方に突出する連結突起が設けられ、前記保持部材は同形の2枚が一組として使用され、互いに並べられた前記複数本のシーズヒータに前記保持部材の前記一側縁を、前記保持部材の前記一方向が前記シーズヒータの長手方向に交差する方向に当てて複数個の前記凹部に前記シーズヒータをそれぞれ差し込み、他方の前記保持部材を、反対方向から複数個の前記凹部に前記シーズヒータをそれぞれ差し込み、互いに隣接する前記連結突起を一緒に突出方向に交差してねじり互いに連結し、前記複数本のシーズヒータを連結するヒートトンネル用加熱装置である。
【0009】
前記保持部材の前記連結突起は、前記保持部材の前記凹部が設けられている側縁部に連続して側方に一定長さ突出し、突出した先端部には突出方向に対してほぼ直角に両側へ向かって突出するT字形に形成されている。
【0010】
前記送風装置のブロアは、中心に円形の透孔があるドーナツ状の上面部と、前記上面部とほぼ同形の下面部と、前記上面部と前記下面部の間に取り付けられたファンが設けられ、前記送風装置は、前記下面部の中心の透孔から吸気し、前記上面部と前記下面部の間から放射方向に送風し、前記シーズヒータが、前記送風装置の前記上面部と前記下面部の間の外周を囲んで同心円状に巻き回して設けられ、各シーズヒータは前記保持部材で所定間隔はなれて保持され、前記保持部材は前記送風装置を中心として放射方向に位置して設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヒートトンネル用加熱装置は、複数回巻き回されたシーズヒータが所定間隔で確実に保持され、放熱効果と整流効果が高く、省エネルギー化を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の第一実施形態のヒートトンネル用加熱装置の正面図である。
【図2】この実施形態のヒートトンネル用加熱装置の右側面図である。
【図3】この実施形態のヒートトンネル用加熱装置のヒートトンネルの天井部を下方から見た図である。
【図4】この実施形態のヒートトンネル用加熱装置の保持部材の正面図である。
【図5】この実施形態のヒートトンネル用加熱装置の送風装置とシーズヒータと保持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図5はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のヒートトンネル用加熱装置10は、被加熱物16を載せてほぼ水平に搬送するベルトコンベア12と、図示しないベルトコンベア用駆動モータが設けられている。ヒートトンネル用加熱装置10には、ベルトコンベア12の両端を除いて、ベルトコンベア12を覆うヒートトンネル14が設けられている。ヒートトンネル14の対向する2側面には、ベルトコンベア12とその上の被加熱物16が通過する入口18と出口20が設けられ、入口18と出口20には各々開口部を覆うビニールシート等のカーテン22が吊下げられ、カーテン22には、被加熱物16が容易に通過可能とするために縦に複数のスリット24が設けられている。
【0014】
ヒートトンネル14の内周面に形成され水平方向に開口し四角筒状に形成された内壁部26には、4面全てに、透孔である熱風吹出口28がほぼ均等に複数個設けられている。ヒートトンネル14の内壁部26の外側には空間である熱風循環経路30が一周して設けられ、熱風循環経路30の外側には外壁部32が設けられている。外壁部32の外側には、箱状の覆い部材34が設けられている。外壁部32の外側面の一部と、覆い部材34の内側面の一部には、断熱材36,38がそれぞれ取り付けられている。
【0015】
内壁部26の天井である上面部26aの外側面には、熱風送風装置であるブロア40が設けられている。ブロア40は、熱風循環経路30内に位置し、外壁部32の上面部32aに吊下げられて取り付けられている。ブロア40は、図5他に示すように、円形の上面部42と、上面部42とほぼ同形で中心に円形の透孔があるドーナツ状の下面部44と、上面部42と下面部44の間に取り付けられたファン46が設けられている。上面板42の中心は、ファン46の回転軸48に固定されている。ファン46は、上端が上面部42に、下端が下面部44に固定され、上面部42と下面部44を所定間隔はなれて互いに平行に保持している。ファン46は複数枚が、上面部42と下面部44の放射方向に沿ってそれぞれ設けられている。ファン46は、上面部42、下面部44の外周縁部に近い端部が、下面部44側から見て時計周りの方向に湾曲し、放射方向の中心が、反時計周りの方向に膨出する曲面となるように形成されている。
【0016】
なお、ブロア40は、下面部44の中心の透孔から吸気し、上面部42と下面部44の間のファン46に沿って外側へ送風される。ブロア40回転軸48は、外壁部32の上面部32aと覆い部材34の上面部34aを貫通して、覆い部材34の上面部34a外側に設けられているモータ50の回転軸に連結されている。モータ50には図示しない回転制御装置が接続され、モータ50の風速、風量を調整する。
【0017】
内壁部26の上面部26aの外側面には、ブロア40の周囲に、シーズヒータ52が巻き回されて設けられている。シーズヒータ52の一方の端部52aは、ブロア40の近傍で、外壁部32の上面部32aに貫通して外壁部32の外側面に突出した状態で固定され、上面部32aの外側面に設けられた任意の配線に接続されている。シーズヒータ52の先端は、ブロア40の垂直方向の高さとほぼ同じ長さに上面部32aから下方に直線的に延出してブロア40の下面部44とほぼ同じ位置に延出し、次に下面部44の円周に沿って巻き回されて、直径方向に端部52aとほぼ反対側で下面部44に近づくように折り返されている。さらに、シーズヒータ52は、下面部44の周縁部に近いところを巻き回され、端部52aを通過して下面部44に沿って反対側に延出し、前述の折り返した位置の手前で下面部44の周縁部から離れるように折り返されて、下面部44の周縁部に遠いところを巻き回されて端部52aの近傍に達している。シーズヒータ52の、端部52aと反対の端部52bは、上面部32aに向かって折り曲げられて直線で延出し上面部32aに貫通して外壁部32の外側面に突出した状態で固定され、上面部32aの外側面に設けられた任意の配線に接続されている。
【0018】
シーズヒータ52の、折り返されて2重に巻き回された部分には、保持部材58が取り付けられ、2重に巻き回されたシーズヒータ52が互いに所定間隔で並列に連結されている。保持部材58は、図4に示すように、手で変形可能な柔軟性を有する金属で作られ一方向に長い板体であり、長手方向に沿う一方の側縁部58aには、シーズヒータ52が交差して挿通される複数個の半円形の凹部60が設けられ、凹部60は所定間隔で2個設けられている。長手方向に沿う反対側の側縁部58bには、櫛刃状に形成される複数個の溝部62が設けられ、溝部62の底部や側縁部58bに連続する各角部は面取りされて曲線で形成されている。保持部材58の長手方向の両端部58cには、端部58cから側方に突出する連結突起64が設けられている。連結突起64は、保持部材58の凹部60が設けられている側縁部58aに連続して側方に一定長さ突出し、突出した先端部は突出方向に対してほぼ直角に両側へ向かって突出するT字形に形成されている。
【0019】
保持部材58は同形の2枚が一組として使用され、互いに並べられたシーズヒータ52に保持部材58の一方を、一方向から保持部材58の長手方向がシーズヒータ52の長手方向に交差する方向に当てて凹部60にシーズヒータ52を差し込み、他方の保持部材58を、反対方向から凹部60にシーズヒータ52をそれぞれ差し込む。このとき、一対の保持部材58は、側縁部58a同士がほぼ一定の幅で重なり、二対の連結突起64がほぼ一致して重なる。そして、互いに重なる連結突起64を一緒に突出方向に交差してねじり、互いに連結され、二重のシーズヒータ52を並列に連結する。保持部材58は、複数個がシーズヒータ52の2重に巻き回された部分に、ほぼ等間隔に取り付けられ,保持部材58は、長手方向がブロア40の放射方向に沿って取り付けられている。
【0020】
ブロア40の周囲には、シーズヒータ52と上面部32aの間に、シーズヒータ52とほぼ同形のシーズヒータ54が設けられている。シーズヒータ54は、シーズヒータ52の端部52a,52bよりも僅かに時計回りに移動した位置に端部54a,54bが位置し、シーズヒータ52よりも上面部32aに近い位置で、ブロア40を2重に巻き回してされている。シーズヒータ54と上面部32aの間には、シーズヒータ52とほぼ同形のシーズヒータ56が設けられている。シーズヒータ56は、シーズヒータ54の端部54a,54bよりも少し時計回りに移動した位置に端部56a,56bが位置し、シーズヒータ54よりも上面部32aに近い位置で、ブロア40を2重に巻き回されている。
【0021】
各シーズヒータ54,56の、折り返されて2重に巻き合わされた部分には、保持部材58が取り付けられ、2重に巻き回されたシーズヒータ54,56が互いに所定間隔で並列に連結されている。シーズヒータ52,54,56に取り付けられた各保持部材58は、図2、図5に示すようにブロア40の厚み方向、つまり垂直方向に重ならないようにずらされている。
【0022】
なお、ヒートトンネル14内の温度は、図示しない温度制御装置により一定温度に制御され、温度の設定装置がこの温度制御装置に接続されている。温度の制御は、周知の温度センサを用いて、設定温度となるようにシーズヒータ52,54,56に通電する電力を制御する。
【0023】
この実施形態のヒートトンネル用加熱装置10によれば、各シーズヒータ52,54,56の2重に巻き回された部分を確実に保持し、なおかつ放熱効果を向上させることができる。シーズヒータ52,54,56を保持する保持部材58に、溝部62が多数設けられて、表面積が大きくなり、空気に接触する面積が広くなり、放熱効果を高めることができる。また、保持部材58はブロア40の風の吹き出し方向に沿ってブロア40の放射方向に長手方向がセットされているため、風の流れを妨げず、整流効果が高く、遠くまで空気の流れが十分に届くようになる。放熱効果と整流効果が高いため、ランニングコストが安価で省エネルギーとなる。
【0024】
なお、この発明のヒートトンネル用加熱装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、保持部材は、シーズヒータの巻き方や巻き回す回数に合わせて凹部の形状や間隔、個数を変更することができる。連結突起の形状も、一対の保持部材が簡単で確実に連結されるものであれば良い。保持部材の溝部の形状や数も適宜変更であり、放熱効果を高める形状であれば良い。
【実施例】
【0025】
本願のヒートトンネル用加熱装置について、本願発明の保持部材がシーズヒータに取り付けられたものと、取り付けられていない従来のものと比較する試験を行った。なお、この試験はヒートトンネルの温度を130℃に設定し、朝1回昇温し8時間連続運転したものであり、その結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0026】
この試験によれば、溝部が形成された保持部材を用いることにより、昇温時間が短く、また昇温に要した電力量が約50%削減され、130℃で8時間温調した際の電力量が約26%削減された。これにより、保持部材に溝部が形成されたものは、エネルギー効率が良く、ランニングコストが安価で省エネルギーとなることがわかった。
【符号の説明】
【0027】
10 ヒートトンネル用加熱装置
12 ベルトコンベア
14 ヒートトンネル
26 内壁部
28 熱風吹出口
30 熱風循環経路
32 外壁部
34 覆い部材3
40 ブロア
52,54,56 シーズヒータ
58 保持部材
60 凹部
62 溝部
64 連結突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が通過するヒートトンネルの内側面に設けられた熱風吹出口と、前記熱風吹出口から前記ヒートトンネル内に熱風を送る送風装置と、前記送風装置の近傍に設けられたシーズヒータと、前記シーズヒータ同士を所定の間隔に連結する保持部材が設けられ、前記保持部材は変形可能な金属で作られた板体であり、その一方向に沿う一側縁部には、前記シーズヒータが交差して挿通される複数個の半円形の凹部が設けられ、前記一方向に沿う反対側の側縁部には、櫛刃状に形成された複数個の溝部が設けられ、前記一方向の両端部には前記端部から側方に突出する連結突起が設けられ、前記保持部材は同形の2枚が一組として使用され、互いに並べられた前記複数本のシーズヒータに前記保持部材の前記一側縁を、前記保持部材の前記一方向が前記シーズヒータの長手方向に交差する方向に当てて複数個の前記凹部に前記シーズヒータをそれぞれ差し込み、他方の前記保持部材を、反対方向から複数個の前記凹部に前記シーズヒータをそれぞれ差し込み、互いに隣接する前記連結突起を一緒に突出方向に交差してねじり互いに連結し、前記複数本のシーズヒータを連結することを特徴とするヒートトンネル用加熱装置。
【請求項2】
前記保持部材の前記連結突起は、前記保持部材の前記凹部が設けられている側縁部に連続して側方に一定長さ突出し、突出した先端部には突出方向に対してほぼ直角に両側へ向かって突出するT字形に形成されている請求項1記載のヒートトンネル用加熱装置。
【請求項3】
前記送風装置のブロアは、中心に円形の透孔があるドーナツ状の上面部と、前記上面部とほぼ同形の下面部と、前記上面部と前記下面部の間に取り付けられたファンが設けられ、前記送風装置は、前記下面部の中心の透孔から吸気し、前記上面部と前記下面部の間から放射方向に送風し、前記シーズヒータが、前記送風装置の前記上面部と前記下面部の間の外周を囲んで同心円状に巻き回して設けられ、各シーズヒータは前記保持部材で所定間隔はなれて保持され、前記保持部材は前記送風装置を中心として放射方向に位置して設けられている請求項1記載のヒートトンネル用加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−238566(P2010−238566A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86042(P2009−86042)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000135575)株式会社ハナガタ (8)
【Fターム(参考)】