説明

ヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法及びヒートポンプシステム

【課題】ヒートポンプの位置関係を正しく確認することができ、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることが可能なヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法及びヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートポンプシステム1は、複数台のヒートポンプ2が水配管11に接続され、ヒートポンプ2の水熱交換器が水配管11を流れる水と熱交換するヒートポンプシステム1であって、1台のヒートポンプ2に冷却運転又は加熱運転させる運転制御部14と、複数台のヒートポンプ2に流入する水配管11の水温を検出する水温検出部15と、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプ2と、複数台のヒートポンプ2で検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプ2のそれぞれの位置関係を推測する位置関係推測部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のヒートポンプが水配管を介して接続されるヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法及びヒートポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数台のヒートポンプ(例えば空冷式ヒートポンプチラー)を用いるヒートポンプシステムでは、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換する。これにより、水配管内の水が加熱されたり、冷却されたりする。また、2台のヒートポンプを接続して1ユニットとするモジュールチラーが知られている。
【0003】
特許文献1では、空冷ヒートポンプチラーを吸収式冷温水発生機と一体化することによって、吸収式冷温水発生機の低負荷運転を防止し、システム全体としての低負荷時における運転効率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−195684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したモジュールチラーは、複数台のヒートポンプを同一の水配管に接続する際、ヒートポンプが並列に設置されることが一般的であった。また、水配管の接続は工場等で行われ、モジュールチラーの水配管の接続を設置場所である現地で行うことはなかった。そのため、モジュールチラーでは、直列接続と並列接続を判断する手段や、直列接続の場合に上流側から下流側への順番を判断する手段、これらの接続状態を確認する手段などは存在しなかった。
【0006】
これに対して、現地で水配管の接続を選択し施工できるモジュールチラー、すなわち複数台のヒートポンプを並列で接続するか又は直列で接続するかを選択できるようなモジュールチラーが提案されている。このモジュールチラーの場合、直列接続と並列接続の区別、直列接続の場合の上流側から下流側への順番などを、モジュールチラーの設置者などが手動でマイコンに設定することが考えられる。
【0007】
しかし、手動による設定では、入力ミスが発生し得る。そして、誤った設定のままモジュールチラーを稼動させると、効率の悪い運転を継続することになり、信頼性を損ねる場合もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ヒートポンプの位置関係を正しく確認することができ、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることが可能なヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法及びヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法及びヒートポンプシステムは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法は、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法であって、1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる第1のステップと、複数台のヒートポンプに流入する水配管の水温を検出する第2のステップと、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプと、複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する第3のステップとを備える。
【0010】
この発明によれば、1台のヒートポンプが冷却運転又は加熱運転することによって、水配管を流れる水の温度が変化する。運転しているヒートポンプの下流側に他のヒートポンプが接続されていれば、そのヒートポンプに流入する水配管の水温が変化することから、運転しているヒートポンプの下流に、水温の変化が検出されたヒートポンプが位置することが分かる。また、水温の変化が検出されなかった場合、そのヒートポンプは、運転しているヒートポンプの上流側に設置されている、又は並列して設置されていることが分かる。これにより、各ヒートポンプの位置関係、すなわち水配管を介して接続されている複数台のヒートポンプの接続順番を確認できる。
【0011】
上記発明において、第2のステップで水温が検出された後、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプの運転を停止し、すでに第1のステップで運転したことがあるヒートポンプとは別の1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる第4のステップと、すでに推測されている複数台のヒートポンプの位置関係と、新たに推測された複数台のヒートポンプの位置関係を統合する第5のステップとを備え、複数台のヒートポンプの全ての位置が確定するまで、第1ステップから第5ステップまでを繰り返してもよい。
【0012】
この発明によれば、1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させて、水温が検出された後、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプの運転を停止する。そして、別の1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる。これにより、すでに推測された各ヒートポンプの位置関係とは別に、新たに各ヒートポンプの位置関係が推測される。そして、すでに推測されている各ヒートポンプの位置関係と、新たに推測された各ヒートポンプの位置関係を統合する。統合の結果、各ヒートポンプの位置関係が更に詳しく分かる。そして、本発明の第1ステップから第5ステップを繰り返すことによって、各ヒートポンプの位置関係が明らかになり、全てのヒートポンプの位置が確定する。
【0013】
また、本発明に係るヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法は、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法であって、1台の第1のヒートポンプに冷却運転させ、他の1台の第2のヒートポンプに加熱運転させる第1のステップと、複数台のヒートポンプに流入する水配管の水温を検出する第2のステップと、冷却運転している第1のヒートポンプと、加熱運転している第2のヒートポンプと、複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する第3のステップとを備える。
【0014】
この発明によれば、1台の第1のヒートポンプが冷却運転し、他の一台の第2のヒートポンプが加熱運転することによって、水配管を流れる水の温度が変化する。運転している第1又は第2のヒートポンプの下流側に他のヒートポンプが接続されていれば、そのヒートポンプに流入する水配管の水温が変化することから、運転している第1又は第2のヒートポンプの下流に、水温の変化が検出されたヒートポンプが位置することが分かる。また、水温の変化が検出されなかった場合、そのヒートポンプは、運転している第1又は第2のヒートポンプの上流側に設置されている、又は並列して設置されていることが分かる。これにより、各ヒートポンプの位置関係、すなわち水配管を介して接続されている複数台のヒートポンプの接続順番を確認できる。
【0015】
また、本発明に係るヒートポンプシステムは、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる運転制御部と、複数台のヒートポンプに流入する水配管の水温を検出する水温検出部と、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプと、複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する位置関係推測部とを備える。
【0016】
また、本発明に係るヒートポンプシステムは、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、1台の第1のヒートポンプに冷却運転させ、他の1台の第2のヒートポンプに加熱運転させる運転制御部と、複数台のヒートポンプに流入する水配管の水温を検出する水温検出部と、冷却運転している第1のヒートポンプと、加熱運転している第2のヒートポンプと、複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する位置関係推測部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数台のヒートポンプが水配管を介して接続されるとき、ヒートポンプの位置関係を正しく確認することが可能になり、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムを示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るヒートポンプを示す構成図である。
【図3】同実施形態に係るヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認動作を示すフローチャートである。
【図4】ヒートポンプが水配管を介して直列接続されている状態を示す模式図である。
【図5】ヒートポンプが水配管を介して直列接続されている状態を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプの位置確認動作において、ヒートポンプの運転とヒートポンプの入口における水温変化との関係を示す図表である。
【図7】同実施形態に係るヒートポンプの位置確認動作において、ヒートポンプの運転とヒートポンプの入口における水温変化との関係を示す図表である。
【図8】同実施形態の変形例に係るヒートポンプの位置確認動作において、ヒートポンプの運転とヒートポンプの入口における水温変化との関係を示す図表である。
【図9】同実施形態の変形例に係るヒートポンプの位置確認動作において、ヒートポンプの運転とヒートポンプの入口における水温変化との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、ヒートポンプシステム1の構成を説明する。
本実施形態に係るヒートポンプシステム1は、複数台のヒートポンプ2と、ヒートポンプ2に接続される水配管11などからなる。ヒートポンプ2は、例えば空冷ヒートポンプチラーであり、水配管11を流れる水と熱交換することによって、冷水又は温水を生成できる。ヒートポンプシステム1は、複数台のヒートポンプ2を1ユニットとするモジュールチラーでもよい。
【0020】
ヒートポンプ2は、図2に示すように、圧縮機5と、四方弁6と、水熱交換器7と、膨張弁8と、空気熱交換器9と、アキュムレータ10などからなる。圧縮機5と、四方弁6と、水熱交換器7と、膨張弁8と、空気熱交換器9と、アキュムレータ10は、冷媒配管3によって結ばれ、冷媒回路を構成する。
【0021】
圧縮機5は、インバータによってモータが駆動される。圧縮機5は、インバータの出力周波数によってモータの回転数、すなわち冷媒の吐出量が調整される。
【0022】
空気熱交換器9は、外気と冷媒とを熱交換させ、水熱交換器7は、水と冷媒とを熱交換させる。アキュムレータ10は、蒸発器(水熱交換器7又は空気熱交換器9)でガス化しきれなかった冷媒が液状のまま圧縮機5に吸入されるのを防ぐ。水配管11との接続部分であって水熱交換器7の入口には、温度センサ4が設けられる。温度センサ4で検出された温度は、水配管11内の水温として制御部12の水温検出部15へ送られる。
【0023】
ヒートポンプ2において、加熱運転と冷却(又は除霜)運転とは、四方弁6が切り替えられて、冷媒の流れ方向が変化することによって切り替わる。加熱運転時では、圧縮機5から吐出された冷媒は、水熱交換器7、膨張弁8、空気熱交換器9、アキュムレータ10の順に流れる。水熱交換器7が凝縮器として作用し、空気熱交換器9が蒸発器として作用する。そして、水熱交換器7で加熱された温水が水配管11を介して次のヒートポンプ2又は外部へ供給される。
【0024】
冷却(除霜)運転時では、圧縮機5から吐出された冷媒は、空気熱交換器9、膨張弁8、水熱交換器7、アキュムレータ10の順に流れる。空気熱交換器9が凝縮器として作用し、水熱交換器7が蒸発器として作用する。そして、水熱交換器7で冷却された冷水が水配管11を介して次のヒートポンプ2又は外部へ供給される。
【0025】
本実施形態では、ヒートポンプ2同士を水配管で接続した後、複数台のヒートポンプ2の位置関係、すなわち直列接続であるか又は並列接続であるか、直列の場合は上流側から下流側への接続順番などを自動で確認する。これにより、手動入力による設定ミスを回避することができ、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることが可能になる。本実施形態は、例えばヒートポンシステム1を設置場所へ設置し水配管11の接続を完了したときの試運転時に行われる。また、ヒートポンプシステム1の水配管11の接続替えをした後にも行われるとよい。
【0026】
本実施形態のヒートポンプシステム1は、複数台のヒートポンプ2を運転させたり、ヒートポンプ2の水熱交換器7における水温を検出したり、ヒートポンプ2間の位置関係を推測する制御部12を有する。制御部12と各ヒートポンプ2は、図1に示すように例えば制御ケーブル13によって接続され、制御信号が送受信される。なお、図1では、3台のヒートポンプ2が水配管11を介して直列接続されている場合を示している。
【0027】
制御部12は、例えば運転制御部14と、水温検出部15と、位置関係推測部16などを有する。制御部12は、各ヒートポンプ2とは別に設けられてもよいし、いずれか1台のヒートポンプ2に設けられてもよい。
【0028】
運転制御部14は、本実施形態に係る位置確認動作の際、ヒートポンプ2に冷却運転又は加熱運転させる。例えば冷却運転では、水配管11に接続された水熱交換器7の入口に一定温度(例えば12℃)の水が供給されたとき、水熱交換器7の出口から冷却された一定温度(例えば7℃)の水が外部へ供給されるように運転条件が設定される。また、運転制御部14は、位置確認動作の際、各ヒートポンプ2の水熱交換器7の入口の水温が検出された後、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプ2の運転を停止する。
【0029】
水温検出部15は、温度センサ4の測定値に基づいて、ヒートポンプ2に流入する水配管11の水温、又は該水温を反映した水熱交換器7の表面温度(以下「水温」という。)を検出する。水温検出部15は、ヒートポンプシステム1の全てのヒートポンプ2について、水温を検出する。また、検出された水温は、各ヒートポンプ2の識別子と一対一で対応付けられ、運転条件に応じた温度の変化(例えば、ヒートポンプ2の冷却(加熱)運転開始前の温度と、定常運転時の温度)も制御部12のメモリ等に記憶される。
【0030】
位置関係推測部16は、冷却運転又は加熱運転している1台のヒートポンプ2と、複数台のヒートポンプ2で検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプ2のそれぞれの位置関係を推測する。また、位置関係推測部16は、すでに推測されている複数台のヒートポンプ2の位置関係と、新たに推測された複数台のヒートポンプ2の位置関係を統合する。統合した結果、全てのヒートポンプ2の位置関係が明らかになったとき、制御部12は、位置関係が確定したと判断しアドレス設定する。
【0031】
位置関係の推測方法は、例えば以下のとおりである。1台のヒートポンプ2が冷却運転又は加熱運転することによって、水配管11を流れる水の温度が変化する。運転しているヒートポンプ2の下流側に他のヒートポンプ2が接続されていれば、そのヒートポンプ2に流入する水配管11の水温が変化することから、運転しているヒートポンプ2の下流に、水温の変化が検出されたヒートポンプ2が位置することが分かる。また、水温の変化が検出されなかった場合、そのヒートポンプ2は、運転しているヒートポンプ2の上流側に設置されている、又は並列して設置されていることが分かる。これにより、各ヒートポンプ2の位置関係、すなわち水配管11を介して接続されている複数台のヒートポンプ2の接続順番を確認できる。
【0032】
次に、図3を参照して、ヒートポンプ2の位置確認動作について説明する。
まず、ヒートポンプシステム1における複数台のヒートポンプ2のうち1台のヒートポンプ2を冷却運転又は加熱運転させる(ステップS1)。
【0033】
そして、冷却(加熱)運転前の水配管11との接続部分であって水熱交換器7の入口における水温を検出する。また、ヒートポンプ2の運転によって、水熱交換器7から供給される水配管11の水温が安定する。このときの水熱交換器7の入口における水温も検出する(ステップS2)。
【0034】
安定時の水温が検知されたら、冷却運転又は加熱運転しているヒートポンプ2の運転を停止する(ステップS3)。そして、冷却運転又は加熱運転している1台のヒートポンプ2と、複数台のヒートポンプ2で検出された水温に基づいて、複数台のヒートポンプ2のそれぞれの位置関係を推測する(ステップS4)。次に、すでに推測されている複数台のヒートポンプ2の位置関係と、新たに推測された複数台のヒートポンプ2の位置関係を統合する(ステップS5)。なお、ステップS1〜S4が1回目の場合、すでに推測されている複数台のヒートポンプ2の位置関係は存在しないことから、ステップS5はスキップされる。
【0035】
ステップS5によって全てのヒートポンプ2の位置関係が確定したか否かが判断され(ステップS6)、全てのヒートポンプ2の位置が確定するまで、上記ステップS1からS5が繰り返される。その際、運転させるヒートポンプ2を変更して、別の1台のヒートポンプ2に冷却運転又は加熱運転させる(ステップS8)。
【0036】
全てのヒートポンプ2の位置が確定した場合は、ヒートポンプ2が直列接続であるか、又は並列接続であるかが記録され、直列接続のときはヒートポンプ2の接続順番が記録される。そして、確定した位置関係に基づいて、例えば制御部12にヒートポンプ2のアドレス設定が行われる(ステップS7)。
【0037】
以上の動作によって、ヒートポンプシステム1におけるヒートポンプ2の位置関係が、手動ではなく自動に設定される。従って、誤入力等の人為的ミスの発生を防止でき、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0038】
次に、位置確認動作の実施例について説明する。まず、図4に示すように、各ヒートポンプA、B、C、Dが直列接続されている場合について説明する。初期状態では、制御部12は、ヒートポンプシステム1のヒートポンプAからDはどのような位置関係で、どの順番で接続されているかが不明である。
【0039】
そこで、図6に示す過程で位置確認動作を行う。まず、ヒートポンプAのみを冷却運転させる(ステップS11)。その結果、ヒートポンプAの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプB、C、Dの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(1)ヒートポンプAがヒートポンプB、C、Dに対して上流側、すなわち最上流に設置されていることが推測される。
【0040】
次に、ヒートポンプBのみを冷却運転させる(ステップS12)。その結果、ヒートポンプA、Bの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプC、Dの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(2)ヒートポンプBがヒートポンプC、Dに対して上流側に設置されていることが推測される。また、上記(1)の事実からヒートポンプA→同Bの順番で設置されていることが推測される。
【0041】
また次に、ヒートポンプCのみを冷却運転させる(ステップS13)。その結果、ヒートポンプA、B、Cの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプDの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(3)ヒートポンプCがヒートポンプDに対して上流側に設置されていることが推測される。
【0042】
以上より、ステップS11〜S13によって、上記(1)から(3)の事実からヒートポンプA→同B→同C→同Dの順番で設置されていることが分かる。
【0043】
次に、図5に示すように、ヒートポンプAとBが直列、ヒートポンプCとDが直列であって、A→BとC→Dは並列接続されている場合について説明する。初期状態では、制御部12は、ヒートポンプシステム1のヒートポンプAからDはどのような位置関係で、どの順番で接続されているかが不明である。
【0044】
そこで、図7に示す過程で位置確認動作を行う。まず、ヒートポンプAのみを冷却運転させる(ステップS21)。その結果、ヒートポンプA、C、Dの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプBの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(1)ヒートポンプAがヒートポンプBに対して上流側、すなわち最上流に設置されていること、(2)ヒートポンプAがヒートポンプC、Dに対して下流側に設置されているか、又はヒートポンプAがヒートポンプC、Dと並列に設置されていることが推測される。
【0045】
次に、ヒートポンプBのみを冷却運転させる(ステップS22)。その結果、ヒートポンプA、B、C、Dの水熱交換器7の入口における水温は変化しない。したがって、(3)ヒートポンプBがヒートポンプA、C、Dの下流側に設置されているか、又はヒートポンプBがヒートポンプA、C、Dと並列に設置されていることが推測される。
【0046】
その結果、(4)上記(1)の事実からヒートポンプA→同Bの順番で設置され、(1)と(3)の事実からヒートポンプBがヒートポンプC、Dと並列に設置されていることが分かる。
【0047】
また次に、ヒートポンプCのみを冷却運転させる(ステップS23)。その結果、ヒートポンプA、B、Cの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプDの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(5)ヒートポンプCがヒートポンプDに対して上流側、すなわち最上流に設置されていること、(6)ヒートポンプCがヒートポンプA、Bに対して下流側に設置されているか、又はヒートポンプCがヒートポンプA、Bと並列に設置されていることが推測される。上記(5)の事実からヒートポンプC→同Dの順番で設置されることが推測される。
【0048】
以上より、ステップS21〜S23によって、ヒートポンプAとBが直列、ヒートポンプCとDが直列であって、A→BとC→Dは並列接続されていることが分かる。
【0049】
次に、本実施形態の変形例に係る位置確認動作について説明する。本変形例では、1台のヒートポンプ2に冷却運転をさせ、同時に他の1台のヒートポンプ2に加熱運転をさせる。この方法によれば、1台のヒートポンプのみを冷却運転又は加熱運転させる場合に比べて時間の短縮化を図ることができる。
【0050】
以下、本変形例の位置確認動作の実施例について説明する。まず、図4に示すように、各ヒートポンプA、B、C、Dが直列接続されている場合について説明する。初期状態では、制御部12は、ヒートポンプシステム1のヒートポンプAからDはどのような位置関係で、どの順番で接続されているかが不明である。
【0051】
そこで、図8に示す過程で位置確認動作を行う。まず、ヒートポンプAを冷却運転させ、同時にヒートポンプBを加熱運転させる(ステップS31)。なお、冷却運転による水熱交換器7の入口出口温度差に対し、加熱運転による水熱交換器7の入口出口温度差は例として2倍とする。その結果、ヒートポンプAの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプBの水熱交換器7の入口における水温は下降し、C、Dは上昇する。したがって、(1)ヒートポンプAがヒートポンプBに対して上流側に設置されていることが分かり、ヒートポンプA→同Bの順番で設置されていることが分かる。また、(2)ヒートポンプBがヒートポンプC、Dに対して上流側に設置されていることが推測される。
【0052】
次に、ヒートポンプCを冷却運転させ、同時にヒートポンプDを加熱運転させる(ステップS32)。その結果、ヒートポンプA、B、Cの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプDの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、上記(1)の事実と合わせて、ヒートポンプA→同B→同C→同Dの順番で設置されることが分かる。
【0053】
次に、図5に示すように、ヒートポンプAとBが直列、ヒートポンプCとDが直列であって、A→BとC→Dは並列接続されている場合について説明する。初期状態では、制御部12は、ヒートポンプシステム1のヒートポンプAからDはどのような位置関係で、どの順番で接続されているかが不明である。
【0054】
そこで、図9に示す過程で位置確認動作を行う。まず、ヒートポンプAを冷却運転させ、同時にヒートポンプBを加熱運転させる(ステップS41)。なお、冷却運転による水熱交換器7の入口出口温度差に対し、加熱運転による水熱交換器7の入口出口温度差は例として2倍とする。その結果、ヒートポンプA、C、Dの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプBの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(1)ヒートポンプAがヒートポンプBに対して上流側に設置されていることが分かり、ヒートポンプA→同Bの順番で設置されていることが分かる。また、(2)ヒートポンプC、DがヒートポンプA、Bに対して上流側に設置されているか、ヒートポンプC、DがヒートポンプA、Bと並列に設置されていることが推測される。
【0055】
次に、ヒートポンプCを冷却運転させ、同時にヒートポンプDを加熱運転させる(ステップS42)。その結果、ヒートポンプA、B、Cの水熱交換器7の入口における水温は変化しないが、ヒートポンプDの水熱交換器7の入口における水温は下降する。したがって、(3)ヒートポンプCがヒートポンプDに対して上流側に設置されていることが分かり、ヒートポンプC→同Dの順番で設置されていることが分かる。また、(4)ヒートポンプA、BがヒートポンプC、Dに対して並列に設置されていることが分かる。
【0056】
その結果、上記(3)と(4)の事実から、ヒートポンプAとBが直列、ヒートポンプCとDが直列であって、A→BとC→Dは並列接続されていることが分かる。図8及び図9に示した本実施形態の変形例は、図6及び図7に示した例と比較して過程数が減っており、時間短縮を図ることができるといえる。
【0057】
以上より、本実施形態によれば、直列接続と並列接続の区別、直列接続の場合の上流側から下流側への順番などがマイコン上に自動に設定され、手動による誤入力を防止できる。その結果、効率の良い運転と信頼性の向上を図ることができる。また、水配管11が誤って接続された場合や、水配管11の接続替えがあった場合でも、本実施形態のヒートポンプ2の位置確認方法を実行することによって、直列接続と並列接続の区別、直列接続の場合の上流側から下流側への順番を取得することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ヒートポンプシステム
2 ヒートポンプ
3 冷媒配管
4 温度センサ
5 圧縮機
6 四方弁
7 水熱交換器
8 膨張弁
9 空気熱交換器
10 アキュムレータ
11 水配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法であって、
1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる第1のステップと、
前記複数台のヒートポンプに流入する前記水配管の水温を検出する第2のステップと、
冷却運転又は加熱運転している前記ヒートポンプと、前記複数台のヒートポンプで検出された前記水温に基づいて、前記複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する第3のステップと、
を備えるヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法。
【請求項2】
前記第2のステップで水温が検出された後、冷却運転又は加熱運転している前記ヒートポンプの運転を停止し、すでに前記第1のステップで運転したことがある前記ヒートポンプとは別の1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる第4のステップと、
すでに推測されている前記複数台のヒートポンプの位置関係と、新たに推測された前記複数台のヒートポンプの位置関係を統合する第5のステップと、
を備え、
前記複数台のヒートポンプの全ての位置が確定するまで、前記第1ステップから前記第5ステップまでを繰り返す請求項1に記載のヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法。
【請求項3】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法であって、
1台の第1のヒートポンプに冷却運転させ、同時に他の1台の第2のヒートポンプに加熱運転させる第1のステップと、
前記複数台のヒートポンプに流入する前記水配管の水温を検出する第2のステップと、
冷却運転している前記第1のヒートポンプと、加熱運転している前記第2のヒートポンプと、前記複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、前記複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する第3のステップと、
を備えるヒートポンプシステムにおけるヒートポンプの位置確認方法。
【請求項4】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、
1台のヒートポンプに冷却運転又は加熱運転させる運転制御部と、
前記複数台のヒートポンプに流入する前記水配管の水温を検出する水温検出部と、
冷却運転又は加熱運転している前記ヒートポンプと、前記複数台のヒートポンプで検出された前記水温に基づいて、前記複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する位置関係推測部と、
を備えるヒートポンプシステム。
【請求項5】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、
1台の第1のヒートポンプに冷却運転させ、他の1台の第2のヒートポンプに加熱運転させる運転制御部と、
前記複数台のヒートポンプに流入する前記水配管の水温を検出する水温検出部と、
冷却運転している前記第1のヒートポンプと、加熱運転している前記第2のヒートポンプと、前記複数台のヒートポンプで検出された水温に基づいて、前記複数台のヒートポンプのそれぞれの位置関係を推測する位置関係推測部と、
を備えるヒートポンプシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113556(P2013−113556A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262439(P2011−262439)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】