説明

ヒートポンプシステム

【課題】大流量時のポンプ揚程不足や低流量時の効率低下等を解消し、常に高効率で運転することができるヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】水ポンプ3を備えている1系統の冷・温水回路2に対して、複数台のヒートポンプチラー4Aないし4Dが接続されているヒートポンプシステム1において、複数台のヒートポンプチラー4Aないし4Dを複数系列に分け、該系列毎にヒートポンプチラー4Aないし4Dを1系統の冷・温水回路2に対して並列に接続する並列回路5と、系列毎のヒートポンプチラー4Aないし4Dを1系統の冷・温水回路2に対して直列に接続する直列回路6と備え、並列回路5および直列回路6が切替え手段7,8,9を介していずれかに切替え可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1系統の冷・温水回路に対して、複数台のヒートポンプチラーが接続されているヒートポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1系統の冷・温水回路に対して、複数台のヒートポンプチラーを接続し、冷水または温水を製造するヒートポンプシステムにおいては、特許文献1,2に示すように、複数台のヒートポンプチラーを1系統の冷・温水回路に対して直列に接続するか、もしくは特許文献3に示すように、複数台のヒートポンプチラーを1系統の冷・温水回路に対して並列に接続するかのいずれかであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−350468号公報
【特許文献2】特開2007−198693号公報
【特許文献3】特開2002−195684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に示す如く、複数台のヒートポンプチラーを冷・温水回路に対して直列に接続したものでは、直列に接続した複数台のヒートポンプチラーに対する冷・温水回路の配管長が長くなることから、大流量の水を流す際、水ポンプの揚程不足によって水を流し切ることができなくなる場合がある。このため、必要以上に高揚程のポンプあるいは大容量のポンプを使用しなければならず、ポンプ動力が大きくなってランニングコストが嵩む等の課題があった。
【0005】
一方、上記特許文献3に示す如く、複数台のヒートポンプチラーを冷・温水回路に対して並列に接続したものでは、低流量時において、並列に接続しているヒートポンプチラーに対して並列回路により水が分流されることから、各ヒートポンプチラーの水回路を流れる水の流量が低下する。このため、冷媒/水熱交換器での水側の熱伝達率が低下し、効率が悪化する等の課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大流量時のポンプ揚程不足や低流量時の効率低下等を解消し、常に高効率で運転することができるヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明のヒートポンプシステムは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるヒートポンプシステムは、水ポンプを備えている1系統の冷・温水回路に対して、複数台のヒートポンプチラーが接続されているヒートポンプシステムにおいて、複数台の前記ヒートポンプチラーを複数系列に分け、該系列毎に前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して並列に接続する並列回路と、前記系列毎の前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して直列に接続する直列回路と備え、前記並列回路および前記直列回路が切替え手段を介していずれかに切替え可能とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、1系統の冷・温水回路に接続されている複数台のヒートポンプチラーを複数系列に分け、系列毎にヒートポンプチラーを1系統の冷・温水回路に対して並列に接続する並列回路と、複数の系列毎のヒートポンプチラーを1系統の冷・温水回路に対して直列に接続する直列回路と備え、該並列回路および直列回路が切替え手段を介していずれかに切替え可能とされているため、1系統の冷・温水回路を流れる水の流量が増大することで、水ポンプが揚程不足により水を流し切ることができなくなる虞がある場合、複数台のヒートポンプチラーへの冷・温水回路を系列毎の並列回路に切替え、複数台のヒートポンプチラーに対する冷・温水回路側の配管長を短くすることによってポンプ揚程を確保し、水を流し切ることができる。一方、水の流量が低流量となり、ポンプ揚程に余裕がある場合、複数台のヒートポンプチラーへの冷・温水回路を直列回路に切替え、複数台のヒートポンプチラーに対して直列に水を流すことにより、冷媒/水熱交換器での水流量の低下を防ぎ、水側の熱伝達率の低下を抑制して各ヒートポンプチラーを高効率で運転することができる。従って、水ポンプを必要以上に高揚程ポンプあるいは大容量ポンプとする必要がなく、水ポンプを低コスト化、省動力化することができるとともに、各ヒートポンプチラーを常に高効率で運転し、COP(成績係数)を向上することができる。
【0009】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上記のヒートポンプシステムにおいて、前記系列毎の前記ヒートポンプチラーは、それぞれ直列に接続されている複数台の前記ヒートポンプチラーにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、系列毎のヒートポンプチラーが、それぞれ直列に接続されている複数台のヒートポンプチラーにより構成されているため、系列毎にヒートポンプチラーを2台あるいは3台と直列に接続するか、もしくは系列を2系列あるいは3系列と増やすことによって、ヒートポンプチラーの接続台数を増減することができる。従って、ヒートポンプシステムとしての能力の調整を容易化することができるとともに、水ポンプや各ヒートポンプチラーのCOPを最適化することができる。
【0011】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上記のヒートポンプシステムにおいて、前記系列毎の複数台の前記ヒートポンプチラーは、一体にモジュール化され、該モジュール毎に前記並列回路または前記直列回路を介して並列または直列に接続可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、系列毎の複数台のヒートポンプチラーが、一体にモジュール化され、該モジュール毎に並列回路または直列回路を介して並列または直列に接続可能とされているため、系列毎に複数台のヒートポンプチラーをモジュール化し、一体で据え付けることができる。従って、ヒートポンプチラーの接続台数が増える程、据え付けの容易化とその低コスト化を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上述のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、前記並列回路は、前記系列毎の前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して、互いに並列に接続する回路とされ、前記直列回路は、一の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の出口側と、他の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の入口側との間を接続する回路とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、並列回路が、系列毎のヒートポンプチラーを1系統の冷・温水回路に対して、互いに並列に接続する回路とされ、直列回路が、一の系列の冷・温水回路のヒートポンプチラーの出口側と、他の系列の冷・温水回路のヒートポンプチラーの入口側との間を接続する回路とされているため、切替え手段によって系列毎に並列に接続されている回路を1系統の冷・温水回路に対して連通状態とするか、または一の系列の冷・温水回路の出口側および他の系列の冷・温水回路の入口側を閉じ、その間を接続する直列回路を連通状態とするかによって、複数台のヒートポンプチラーへの冷・温水回路を並列回路または直列回路のいずれかに簡易に切替えることができる。従って、運転状況に応じて複数台のヒートポンプチラーを直列または並列に切替え接続することにより、状況に応じた最適な運転を行わせることができる。
【0015】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上記のヒートポンプシステムにおいて、前記切替え手段は、前記一の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の出口側に設けられた第1電磁弁、前記他の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の入口側に設けられた第2電磁弁および前記直列回路に設けられた第3電磁弁により構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、切替え手段が、一の系列のヒートポンプチラーの冷・温水回路の出口側に設けられた第1電磁弁、他の系列のヒートポンプチラーの冷・温水回路の入口側に設けられた第2電磁弁および直列回路に設けられた第3電磁弁により構成されているため、第1電磁弁および第2電磁弁を開、第3電磁弁を閉とすることにより、各系列の冷・温水回路を並列に接続した並列回路を形成し、第1電磁弁および第2電磁弁を閉、第3電磁弁を開とすることにより、各系列の冷・温水回路を直列に接続した直列回路を形成することができる。従って、安価な電磁弁を用い、そのON/OFFによって並列回路または直列回路に簡易に切替えることができ、回路切替えの信頼性を確保することができる。
【0017】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上記のヒートポンプシステムにおいて、前記第1電磁弁および前記第3電磁弁は、前記直列回路の前記一の系列の前記冷・温水回路への接続部に設けられた1個の三方切替え弁により代替されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第1電磁弁および第3電磁弁が、直列回路の一の系列の冷・温水回路への接続部に設けられた三方切替え弁により代替されているため、切替え手段を構成する弁の数を低減し、冷・温水回路を簡素化することができる。従って、部品点数および冷・温水回路の配管施工時の工数を低減し、低コスト化を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上述のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、前記冷・温水回路を流れる水の流量を検出し、その流量が設定値以上のとき、前記切替え手段を介して前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路を前記並列回路に切替え、前記流量が設定値以下のとき、前記切替え手段を介して前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路を前記直列回路に切替える制御部を備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、冷・温水回路を流れる水の流量を検出し、その流量が設定値以上のとき、切替え手段を介してヒートポンプチラーの冷・温水回路を並列回路に切替え、水の流量が設定値以下のとき、切替え手段を介してヒートポンプチラーの冷・温水回路を直列回路に切替える制御部を備えているため、制御部が冷・温水回路側での水の変流量を流量計等で検出し、水の流量が設定値以上の大流量となって、水ポンプが揚程不足となる流量を超えた場合、切替え手段を介してヒートポンプチラーの冷・温水回路を直列回路から並列回路に切替えることができる。従って、冷・温水回路側の流量を監視し、水の流量が設定値以上の場合は、並列回路に、設定値以下の場合は、直列回路に自動的に切替えることにより、水ポンプの揚程不足やヒートポンプチラーの効率悪化を解消することができる。
【0021】
さらに、本発明のヒートポンプシステムは、上述のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、前記並列回路および前記直列回路は、手動の操作スイッチにより、前記切替え手段を介して切替え可能とされていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、並列回路および直列回路が、手動の操作スイッチにより、切替え手段を介して切替え可能とされているため、ヒートポンプシステムの用途や負荷側の要求仕様等に対応して、予め並列回路または直列回路のいずれか一方に固定して使用することが望ましい場合は、手動の操作スイッチで並列回路または直列回路のいずれかに固定して使用することが可能となる。従って、手動の操作スイッチを設けることにより、ヒートポンプシステムの使い方を多様化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、1系統の冷・温水回路を流れる水の流量が増大することで、水ポンプが揚程不足により水を流し切ることができなくなる虞がある場合、複数台のヒートポンプチラーへの冷・温水回路を系列毎の並列回路に切替え、複数台のヒートポンプチラーに対する冷・温水回路側の配管長を短くすることによりポンプ揚程を確保し、水を流し切ることができる。一方、水の流量が低流量となり、ポンプ揚程に余裕がある場合、複数台のヒートポンプチラーへの冷・温水回路を直列回路に切替え、複数台のヒートポンプチラーに対して直列に水を流すことにより、冷媒/水熱交換器での水流量の低下を防ぎ、水側の熱伝達率の低下を抑制して各ヒートポンプチラーを高効率で運転することができるため、水ポンプを必要以上に高揚程ポンプあるいは大容量ポンプとする必要がなく、水ポンプを低コスト化、省動力化することができるとともに、各ヒートポンプチラーを常に高効率で運転し、COP(成績係数)を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒートポンプシステムの冷・温水回路の系統図である。
【図2】図1に示すヒートポンプシステムに適用する空冷ヒートポンプチラーの冷媒回路図である。
【図3】図1に示すヒートポンプシステムの冷・温水回路に設けられるポンプの性能特性図である。
【図4】図1に示すヒートポンプシステムに適用する空冷ヒートポンプチラーのCOP特性図である。
【図5】図4に示すCOP特性の入力特性を導く、水の流量とコンプ入力およびポンプ入力との関係を表した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係るヒートポンプシステムの冷・温水回路の系統図が示され、図2には、そのヒートポンプシステムに適用する空冷ヒートポンプチラーの冷媒回路図が示されている。
本実施形態のヒートポンプシステム1は、水ポンプ3を備えた1系統の冷・温水回路2に対して、複数台(本実施形態では、4台)の空冷ヒートポンプチラー(ヒートポンプチラー)4Aないし4Dが接続された構成とされている。
【0026】
この複数台(4台)の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dは、複数の系列(本実施形態では、2系列)の分けられており、空冷ヒートポンプチラー4Aと4Bが一の系列の冷・温水回路2Aに対して直列に接続され、空冷ヒートポンプチラー4Cと4Dが他の系列の冷・温水回路2Bに対して直列に接続された構成とされている。更に、各系列の冷・温水回路2A,2B同士は、1系統の冷・温水回路2に対して並列に接続され、複数台のヒートポンプチラー4Aないし4Dを、1系統の冷・温水回路2に対して、並列に接続する並列回路5を構成している。
【0027】
また、一の系列の冷・温水回路2Aにおける空冷ヒートポンプチラー4A,4Bの出口側と、他の系列の冷・温水回路2Bにおける空冷ヒートポンプチラー4C,4Dの入口側との間に、一方の系列の冷・温水回路2Aと他方の系列の冷・温水回路2Bとを直列に接続し、1系統の冷・温水回路2に対して、複数台(4台)の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dを直列に接続した直列回路6が構成可能とされている。
【0028】
上記並列回路5および直列回路6は、一の系列の冷・温水回路2Aの出口側に設けられた第1電磁弁7、他の系列の冷・温水回路2Bの入口側に設けられた第2電磁弁8、および直列回路6に設けられた第3電磁弁9の3個の電磁弁7,8,9により構成される切替え手段を介して、いずれか一方の回路に切替え可能とされている。つまり、第1電磁弁7および第2電磁弁8を開、第3電磁弁9を閉とすることにより、1系統の冷・温水回路2に対して各々2台の空冷ヒートポンプチラー4A,4Bおよび4C,4Dが互いに並列に接続された並列回路5が形成され、第1電磁弁7および第2電磁弁8を閉、第3電磁弁9を開とすることにより、1系統の冷・温水回路2に対して4台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dの全てが直列に接続された直列回路6が形成されるようになっている。
【0029】
複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dは、図2に示されるように、それぞれ圧縮機10、四方切換弁11、熱源側空気熱交換器12、加熱用電子膨張弁(EEVH)13、可溶栓14付きレシーバ15、冷却用電子膨張弁(EEVC)16、利用側の冷媒/水熱交換器17、およびアキュームレータ18を備えており、これらを冷媒配管19で接続することにより閉サイクルの冷凍サイクル20を構成している。このような冷凍サイクル20自体は、公知のものである。
【0030】
冷媒/水熱交換器17の水配管側には、上記冷・温水回路2A,2Bを構成する入口配管21および出口配管22が接続されるようになっており、該冷媒/水熱交換器17において、水配管側を流れる水と冷媒配管側を流れる冷媒とを熱交換することにより、冷却運転時には冷水、加熱運転時には温水が得られるように構成されている。また、冷却用電子膨張弁(EEVC)16に対しては、加熱運転時に開とされる電磁弁23が並列に接続されているとともに、加熱用電子膨張弁(EEVH)13とレシーバ15との間を接続している液冷媒配管ライン19Bと、アキュームレータ18と圧縮機10との間を接続している吸入配管19Cとの間に、流量調整弁24を備えた液冷媒バイパス回路25が設けられている。
【0031】
さらに、レシーバ15と冷却用電子膨張弁(EEVC)16との間を接続する液冷媒配管ライン19Bには、液冷媒配管ライン19B内を流れる液冷媒を冷却して過冷却を付与する過冷却熱交換器26が設けられている。この過冷却熱交換器26は、例えば二重管熱交換器等によって構成されるものであり、二重管熱交換器の一方の流路に液冷媒配管ライン19Bが接続され、他方の流路に液冷媒配管ライン19Bから分岐した分岐配管により構成される過冷却回路27が接続されている。
【0032】
この過冷却回路27における過冷却熱交換器26の冷媒入口側には、過冷却用電子膨張弁(EEVSC)28が設けられ、過冷却回路27側に分流される冷媒量を調整するとともに、該冷媒を減圧して過冷却熱交換器26に供給可能な構成とされている。また、過冷却回路27の他端側は、過冷却熱交換器26の出口側において、圧縮機10の吸入配管19Cに設けられているアキュームレータ18の入口側に接続されている。
【0033】
また、上記過冷却回路27には、圧縮機10の吐出配管19Aと、過冷却熱交換器26の出口側、すなわち過冷却熱交換器26の吸入配管19C側との間を接続する高圧コントロール用のバイパス回路29が設けられている。バイパス回路29は、切替え手段を構成するバイパス回路29側に設けられた電磁弁30およびバイパス回路29の接続位置よりも吸入配管19C側において過冷却回路27に設けられた電磁弁31を介して接続されており、過冷却回路27を機能させるとき、電磁弁30が閉、電磁弁31が開とされ、高圧コントロール用のバイパス回路29を機能させるとき、電磁弁30が開、電磁弁31が閉とされるようになっている。
【0034】
さらに、ヒートポンプシステム1には、1系統の冷・温水回路2内を流れる水の流量を検出する流量計32が設けられ、該流量計32により検出される水の流量に応じて、切替え手段を構成している第1ないし第3電磁弁7,8,9をON/OFFし、冷・温水回路2を並列回路5または直列回路6のいずれか一方の回路に切替える制御部33が設けられている。制御部33は、冷・温水回路2を流れる水の流量が設定流量以上となって、直列回路6のままでは水ポンプ3が揚程不足により水を流し切ることができなくなる虞がある場合、冷・温水回路2を並列回路5に切替えるものである。
【0035】
水ポンプ3は、図3に示されるように、流量が増えるにつれて機外揚程が漸次小さくなる性能特性を有しており、複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dを、上記の如く直列に接続した場合と並列に接続した場合では、直列に接続した場合の方が、冷・温水回路2の配管長(冷・温水回路2A,2Bおよび直列回路6の配管長の加算値)が長くなる分だけ、機外揚程が並列回路5の場合に比べて小さくなる。従って、流量が或る流量を超えたとき、冷・温水回路2を直列回路6から並列回路5に切替えることにより、水ポンプ3の機外揚程を大きくすることができる。
【0036】
また、空冷ヒートポンプチラー4Aないし4DのCOP(成績係数)特性は、図4に示されるように、冷・温水回路2を並列回路5とした場合よりも、直列回路6とした場合の方の入力が小さくなることから、COPが良くなる。つまり、水の流量と圧縮機入力(コンプ入力)およびポンプ入力の関係を、並列回路5と直列回路6の場合についてそれぞれ比較すると、圧縮機入力は、図5(A)に示されるように、直列回路6の方が並列回路5の場合よりも小さくなり、ポンプ入力は、図5(B)に示されるように、並列接続の方が直列接続の場合よりも小さくなる。
【0037】
図4の入力特性は、図5(A)および(B)の合算値を表したのであり、水流量が或る流量以下の領域では、直列回路6の方の入力値が並列回路5の場合の入力値よりも小さくなることから、直列回路6の方が高効率となり、COPが高くなる。これは、冷・温水回路2を直列回路6に切替え、複数台のヒートポンプチラー4Aないし4Dに対して直列に水を流すことにより、各冷媒/水熱交換器17での水流量の低下を防ぎ、水側の熱伝達率の低下を抑えることができるためである。一方、水流量が或る流量以上の領域では、直列回路6の場合、ポンプ揚程が不足するおそれがあることから、冷・温水回路2を並列回路5に切替える必要があり、並列回路5の場合の入力(COP)が支配的となる。
【0038】
さらに、制御部33は、流量計32の検出値に基づいて、上記の如く、冷・温水回路2を並列回路5または直列回路6に切替えるものであるが、この制御部33に対して、手動操作スイッチ34を設けることができる。この操作スイッチ34は、並列回路5および直列回路6の回路切替えを行う第1ないし第3電磁弁7,8,9のON/OFF切替えを手動操作によって行うものであり、ヒートポンプシステム1の用途や負荷側の要求仕様等に対応して、予め並列回路5または直列回路6のいずれか一方に固定して使用することが望ましい場合、該操作スイッチ34を手動で操作して冷・温水回路2を並列回路5または直列回路6のいずれかに固定して使用することを可能とするものである。
【0039】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記のヒートポンプシステム1によると、水ポンプ3を介して1系統の冷・温水回路2に水を給水し、この水を複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dで順次冷却または加熱することにより、冷水または温水を製造することができ、この冷水または温水を負荷側に供給することで空調等、所要の用途に供することができる。
【0040】
各々の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dでは、冷却運転時、冷媒は四方切換弁11により実線矢印方向に循環され、加熱運転時、冷媒は四方切換弁11により破線矢印方向に循環される。これによって、冷却運転時には、熱源側空気熱交換器12を凝縮器、利用側冷媒/水熱交換器17を蒸発器として機能させ、入口配管21から流入して出口配管22から流出する水を冷却することにより、冷水を製造することができる。また、加熱運転時には、利用側冷媒/水熱交換器17を凝縮器、熱源側空気熱交換器12を蒸発器として機能させ、入口配管21から流入して出口配管22から流出する水を加熱することによって、温水を製造することができる。
【0041】
この間、液冷媒配管ライン19Bを流通する高圧液冷媒の一部を過冷却回路27側に分流し、この冷媒を過冷却用電子膨張弁(EEVSC)28で減圧して過冷却熱交換器26に導入することにより、液冷媒配管ライン19B側を流れる液冷媒と熱交換させ、その蒸発潜熱で液冷媒を冷却して過冷却を付与することができる。過冷却熱交換器26で蒸発された冷媒は、アキュームレータ18の入口側で吸入配管19Cに合流され、圧縮機10へと吸入される。
【0042】
また、低外気温下での冷却運転時や加熱負荷が過大となる加熱運転時等において、高圧圧力が上昇せず、これが原因で低圧保護装置が作動し、運転を継続することが困難となる事態に陥るのを避けるため、外気温や圧力を検出し、必要に応じて電磁弁30を開、電磁弁31を閉とすることにより、圧縮機10から吐出された高圧冷媒ガスの一部をバイパス回路29、過冷却回路27、過冷却熱交換器26、過冷却用電子膨張弁(EEVSC)28を経て液冷媒配管ライン19B側にバイパスし、高圧をコントロールして運転を継続できるようにしている。
【0043】
一方、1系統の冷・温水回路2を流れる水の流量が設定流量以下である場合、流量計32でそれを検出し、制御部33を介して第1電磁弁7および第8電磁弁7を閉、第3電磁弁9を開とすることにより、冷・温水回路2を直列回路6に切替え、4台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dの全てを直列に接続した状態とし、それぞれの冷媒/水熱交換器17に対して直列に水を流通するようにしている。これによって、各冷媒/水熱交換器17を流通する水の流量を確保し、水側の熱伝達率の低下を抑制して各空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dを高効率で運転することができ、冷水または温水を効率よく製造することができる。
【0044】
また、冷・温水回路2を流れる水の流量が増加した場合、図3に示されるように、水ポンプ3の機外揚程が漸次小さくなり、或る流量を超えると、揚程不足により水を流し切ることができなくなる虞がある。しかるに、本実施形態では、流量計32で検出の水流量が設定流量を超えた場合、制御部33により第1電磁弁7および第8電磁弁7を開、第3電磁弁9を閉とし、冷・温水回路2を並列回路5に切替えて水を冷・温水回路2A,2Bに対して平行に流通させ、空冷ヒートポンプチラー4A,4Bおよび4C,4Dに対して並列に水を流すようにしている。このため、冷・温水回路2の配管長を直列回路6とした場合に比べて短くすることでき、図3に示されるように、水ポンプ3の機外揚程を増大することで水を流し切ることができるようになる。
【0045】
このように、本実施形態によると、冷・温水回路2を流れる水の流量が増大し、水ポンプ3が揚程不足により水を流し切ることができなくなる虞がある場合、複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dへの冷・温水回路2を系列毎の並列回路5に切替え、各空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dに対する冷・温水回路2側の配管長を短くすることでポンプ揚程を確保し、水を流し切ることができる。一方、水の流量が低流量となり、ポンプ揚程に余裕がある場合、複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dへの冷・温水回路2を直列回路6に切替え、各空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dに対して直列に水を流すことによって、冷媒/水熱交換器17での水流量の低下を防ぎ、水側の熱伝達率の低下を抑制して各空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dを高効率で運転することができる。
【0046】
その結果、水ポンプ3を必要以上に高揚程ポンプあるいは大容量ポンプとする必要がなくなり、水ポンプ3を低コスト化、省動力化することができるとともに、複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dをそれぞれ高効率で運転し、COP(成績係数)を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態では、並列回路5を複数の系列(冷・温水回路2A,2B)毎の空冷ヒートポンプチラー4A,4Bと4C,4Dとを1系統の冷・温水回路2に対して、互いに並列に接続した回路とし、直列回路6が、一の系列(冷・温水回路2A)の空冷ヒートポンプチラー4A,4Bの冷・温水回路2Aの出口側と、他の系列(冷・温水回路2A)の空冷ヒートポンプチラー4C,4Dの冷・温水回路2Bの入口側との間を接続する回路としている。このため、切替え手段により系列毎に並列に接続されている回路2A,2Bを1系統の冷・温水回路2に対して連通状態とするか、または一の系列の冷・温水回路2Aの出口側および他の系列の冷・温水回路2Bの入口側を閉じ、その間を接続する直列回路6を連通状態とするかによって、複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dへの冷・温水回路2を並列回路5または直列回路6の一方に簡易に切替えできる。従って、運転状況に応じて複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dを直列または並列に切替え接続することで、状況に応じた最適な運転を行わせることができる。
【0048】
また、並列回路5および直列回路6の切替え手段が、一の系列の冷・温水回路2Aの空冷ヒートポンプチラー4A,4Bの出口側に設けられた第1電磁弁7、他の系列の冷・温水回路2Bの空冷ヒートポンプチラー4C,4Dの入口側に設けられた第2電磁弁8および直列回路6に設けられた第3電磁弁9により構成されており、第1電磁弁7および第2電磁弁8を開、第3電磁弁9を閉とすることにより、各系列の冷・温水回路2A,2Bを並列に接続した並列回路5を形成し、第1電磁弁7および第2電磁弁8を閉、第3電磁弁9を開とすることにより、各系列の冷・温水回路2A,2Bを直列に接続した直列回路6を形成することができる。このため、安価な電磁弁7,8,9を用い、そのON/OFFによって並列回路5または直列回路6に簡易に切替えることができ、回路切替えの信頼性を確保することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、制御部33を設け、冷・温水回路2側での水の変流量を流量計32等により検出し、水の流量が設定値以上の大流量となって、水ポンプ3が揚程不足となる流量を超えた場合、第1ないし第3電磁弁7,8,9を介して複数台の空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dの冷・温水回路2を直列回路6から並列回路5に切替えることができる。このように、冷・温水回路2側の流量を監視し、水の流量が設定値以上の場合は、並列回路5に、設定値以下の場合は、直列回路6に自動的に切替えるようにすることで、水ポンプ3の揚程不足や空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dの効率悪化を解消することができる。
【0050】
加えて、手動操作スイッチ34を設け、該操作スイッチ34に手動操作により第1ないし第3電磁弁7,8,9を介して冷・温水回路2を並列回路5または直列回路6のいずれかに切替え可能としているため、ヒートポンプシステム1の用途や負荷側の要求仕様等に対応して、予め並列回路5または直列回6のいずれか一方に固定して使用することが望ましい場合は、手動操作スイッチ34で並列回路5または直列回路6のいずれかに固定して使用することができる。従って、手動操作スイッチ34を設けることにより、ヒートポンプシステム1の使い方を多様化することができる。
【0051】
[他の実施形態]
以下に、本発明の他の実施形態について説明する。
(1)上記した第1実施形態においては、それぞれ2台の空冷ヒートポンプチラー4Aと4Bおよび4Cと4Dを直列に接続し、それを2系列の冷・温水回路2A,2Bに接続することにより、2台の空冷ヒートポンプチラー4A,4Bと4C,4Dとを互いに並列に接続した並列回路5を構成し、これに直列回路6を接続することにより、並列回路5と直列回路6とに切替え可能としているが、2系列の冷・温水回路2A,2Bに設ける空冷ヒートポンプチラーは、各2台に限定されるものではなく、1台あるいは3台以上としてもよく、また、冷・温水回路2を3系列以上に分け、同様の回路構成としてもよい。この場合においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、空冷ヒートポンプチラーの接続台数を容易に増減することができるため、ヒートポンプシステム1としての能力の調整を容易化することができるとともに、水ポンプ3や各空冷ヒートポンプチラーのCOPを最適化することができる。
(2)冷・温水回路2を複数の系列に分け、それぞれの系列に複数台の空冷ヒートポンプチラーを接続する場合、各系列に接続される空冷ヒートポンプチラー同士を一体にモジュール化して設置するようにしてもよく、この場合、系列毎に複数台の空冷ヒートポンプチラーをモジュール化し、一体で据え付けることができるため、空冷ヒートポンプチラーの接続台数が増える程、据え付けの容易化とその低コスト化を図ることができる。
(3)第1実施形態では、並列回路5および直列回路の切替え手段として、3個の第1電磁弁7、第2電磁弁8および第3電磁弁9を設けた構成としているが、第1電磁弁7および第3電磁弁9を、直列回路6の冷・温水回路2Aへの接続部に設け三方切替え弁によって代替することができる。これにより、切替え手段を構成する弁の数を低減し、冷・温水回路2を簡素化することができ、従って、部品点数および冷・温水回路2の配管施工時の工数を低減し、低コスト化を図ることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。空冷ヒートポンプチラー4Aないし4Dは、上記の如く冷媒回路構成としたものに限らず、如何なる冷媒回路構成のヒートポンプチラーであってもよい。また、上記実施形態の如く、冷却運転と加熱運転の切替えができるものに限らず、冷却専用または加熱専用のヒートポンプチラーとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒートポンプシステム
2 冷・温水回路
2A 一の系列の冷・温水回路
2B 他の系列の冷・温水回路
3 水ポンプ
4A,4B,4C,4D 空冷ヒートポンプチラー
5 並列回路
6 直列回路
7 第1電磁弁(切替え手段)
8 第2電磁弁(切替え手段)
9 第3電磁弁(切替え手段)
32 流量計
33 制御部
34 手動操作スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ポンプを備えている1系統の冷・温水回路に対して、複数台のヒートポンプチラーが接続されているヒートポンプシステムにおいて、
複数台の前記ヒートポンプチラーを複数系列に分け、該系列毎に前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して並列に接続する並列回路と、
前記系列毎の前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して直列に接続する直列回路と備え、
前記並列回路および前記直列回路が切替え手段を介していずれかに切替え可能とされていることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記系列毎の前記ヒートポンプチラーは、それぞれ直列に接続されている複数台の前記ヒートポンプチラーにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記系列毎の複数台の前記ヒートポンプチラーは、一体にモジュール化され、該モジュール毎に前記並列回路または前記直列回路を介して並列または直列に接続可能とされていることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記並列回路は、前記系列毎の前記ヒートポンプチラーを前記1系統の冷・温水回路に対して、互いに並列に接続する回路とされ、前記直列回路は、一の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の出口側と、他の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の入口側との間を接続する回路とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記切替え手段は、前記一の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の出口側に設けられた第1電磁弁、前記他の系列の前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路の入口側に設けられた第2電磁弁および前記直列回路に設けられた第3電磁弁により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記第1電磁弁および前記第3電磁弁は、前記直列回路の前記一の系列の前記冷・温水回路への接続部に設けられた1個の三方切替え弁により代替されていることを特徴とする請求項5に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記冷・温水回路を流れる水の流量を検出し、その流量が設定値以上のとき、前記切替え手段を介して前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路を前記並列回路に切替え、前記流量が設定値以下のとき、前記切替え手段を介して前記ヒートポンプチラーの前記冷・温水回路を前記直列回路に切替える制御部を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のヒートポンプシステム。
【請求項8】
前記並列回路および前記直列回路は、手動の操作スイッチにより、前記切替え手段を介して切替え可能とされていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のヒートポンプシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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